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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099963
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】シートパッド
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/15 20060101AFI20240719BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20240719BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A47C27/15 Z
B60N2/56
A47C7/74 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003620
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 有信
(72)【発明者】
【氏名】浅野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】篠原 寿充
(72)【発明者】
【氏名】野本 達也
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B084JA05
3B087DE10
3B096AB07
3B096AC12
(57)【要約】
【課題】硬質パッド部を含む積層構造に通風路を適切に設けることが可能なシートパッドを提供すること。
【解決手段】シートパッド1は、パッド本体2と、パッド本体2のパッド裏側に積層状に設けられる硬質パッド部3と、を有する。また、シートパッド1は、パッド本体2と硬質パッド部3とに跨ってパッド厚さ方向に貫通する通風路Hと、パッド本体2と硬質パッド部3との間に介在する面状の蓋部材4と、を有する。通風路Hが、パッド本体2に形成される第1通気口2Aと、硬質パッド部3の第1通気口2Aから外れた位置に形成されるパッド表側から凹む配風溝3A及び配風溝3Aから凹形状を連ねるように延び出て第1通気口2Aと連通する第2通気口3Bと、配風溝3Aに貫通形成される第3通気口3Cと、を有する。蓋部材4が、第2通気口3Bの第1通気口2Aと対向する対向領域A1を残す非対向領域A2の全域と配風溝3Aの全域とをパッド表側から覆う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体と、該パッド本体のパッド裏側に積層状に設けられる前記パッド本体よりも硬質なビーズ発泡成形体から成る硬質パッド部と、を有するシートパッドであって、
前記パッド本体と前記硬質パッド部とに跨ってパッド厚さ方向に貫通するように形成される通風路と、
前記パッド本体と前記硬質パッド部との間に介在する面状の蓋部材と、を有し、
前記通風路が、前記パッド本体にパッド厚さ方向に貫通するように形成される第1通気口と、前記硬質パッド部の前記第1通気口から外れた位置にパッド表側からパッド厚さ方向に凹むように形成される配風溝及び該配風溝からパッド表側から凹む凹形状を連ねるように延び出て前記第1通気口と連通する第2通気口と、前記配風溝にパッド厚さ方向に貫通するように形成される第3通気口と、を有し、
前記蓋部材が、前記第2通気口の前記第1通気口とパッド厚さ方向に対向する対向領域を残す非対向領域の全域と前記配風溝の全域とをパッド表側から覆うように前記硬質パッド部に接合されるシートパッド。
【請求項2】
ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体と、該パッド本体のパッド裏側に積層状に設けられる前記パッド本体よりも硬質なビーズ発泡成形体から成る硬質パッド部と、を有するシートパッドであって、
前記パッド本体と前記硬質パッド部とに跨ってパッド厚さ方向に貫通するように形成される通風路と、
前記硬質パッド部のパッド裏側に積層状に設けられる面状の蓋部材と、を有し、
前記通風路が、前記パッド本体にパッド厚さ方向に貫通するように形成される第1通気口と、前記硬質パッド部にパッド裏側からパッド厚さ方向に凹むように形成される配風溝及び該配風溝からパッド厚さ方向に貫通して前記第1通気口と連通する第2通気口と、を有し、
前記蓋部材が、前記配風溝の全域をパッド裏側から覆うように前記硬質パッド部に接合され、かつ、前記配風溝と連通するようにパッド厚さ方向に貫通する前記通風路を成す第3通気口を有するシートパッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシートパッドであって、
前記パッド本体が、前記蓋部材の接合された前記硬質パッド部と一体成形されるシートパッド。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のシートパッドであって、
当該シートパッドが、3人掛け可能なベンチシートのシートクッションに適用され、
前記第3通気口が、前記シートクッションの中央席部分の直下に配置され、前記第1通気口及び前記第2通気口が、前記シートクッションの一方及び/又は他方のサイド席部分の直下に配置されるシートパッド。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のシートパッドであって、
前記第1通気口及び前記第2通気口が複数形成されるシートパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッドに関する。詳しくは、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体と、パッド本体のパッド裏側に積層状に設けられるパッド本体よりも硬質なビーズ発泡成形体から成る硬質パッド部と、を有するシートパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートパッドが、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体と、パッド本体の裏面部に埋め込み状に設けられるビーズ発泡成形体から成る硬質パッド部と、の積層構造から成るものが開示されている。硬質パッド部は、板状に成形された2枚の部材が重ね合わされた2層構造から成る。上記パッド本体と硬質パッド部とには、シート表面より風を吸い込んでシート裏側へと配出するための通風路が形成されている。
【0003】
具体的には、硬質パッド部の下層に、送風機と接続される貫通形状の接続口が形成される。また、硬質パッド部の上層裏面に、接続口と連通して面内方向に延びる凹状の配風溝が形成される。更に、硬質パッド部の上層に、配風溝の所々の箇所からパッド本体に形成された通気口と連通するよう貫通する通気口が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6894675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成では、硬質パッド部の各層に通気口や配風溝や接続口を分けて形成し、これらを組み合わせて通風路を形成するという複雑かつ部品点数の多い構成となっている。そこで、本発明は、硬質パッド部を含む積層構造に通風路を適切に設けることが可能なシートパッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する手段として、本発明のシートパッドは、次の手段をとる。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明は、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体と、該パッド本体のパッド裏側に積層状に設けられる前記パッド本体よりも硬質なビーズ発泡成形体から成る硬質パッド部と、を有するシートパッドであって、前記パッド本体と前記硬質パッド部とに跨ってパッド厚さ方向に貫通するように形成される通風路と、前記パッド本体と前記硬質パッド部との間に介在する面状の蓋部材と、を有し、前記通風路が、前記パッド本体にパッド厚さ方向に貫通するように形成される第1通気口と、前記硬質パッド部の前記第1通気口から外れた位置にパッド表側からパッド厚さ方向に凹むように形成される配風溝及び該配風溝からパッド表側から凹む凹形状を連ねるように延び出て前記第1通気口と連通する第2通気口と、前記配風溝にパッド厚さ方向に貫通するように形成される第3通気口と、を有し、前記蓋部材が、前記第2通気口の前記第1通気口とパッド厚さ方向に対向する対向領域を残す非対向領域の全域と前記配風溝の全域とをパッド表側から覆うように前記硬質パッド部に接合されるシートパッドである。
【0008】
第1の発明によれば、シートパッドが、パッド本体のパッド裏側に硬質パッド部が積層される構成とされても、これらに跨って面内方向に延びる配風溝を含む形状を持つ通風路を比較的単純かつ少ない部品構成によって適切に形成することができる。詳しくは、硬質パッド部に形成される配風溝がパッド表側から凹む凹形状とされることから、硬質パッド部のパッド裏側に設置対象に対する広い硬質の支持面を確保することができる。
【0009】
本発明の第2の発明は、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体と、該パッド本体のパッド裏側に積層状に設けられる前記パッド本体よりも硬質なビーズ発泡成形体から成る硬質パッド部と、を有するシートパッドであって、前記パッド本体と前記硬質パッド部とに跨ってパッド厚さ方向に貫通するように形成される通風路と、前記硬質パッド部のパッド裏側に積層状に設けられる面状の蓋部材と、を有し、前記通風路が、前記パッド本体にパッド厚さ方向に貫通するように形成される第1通気口と、前記硬質パッド部にパッド裏側からパッド厚さ方向に凹むように形成される配風溝及び該配風溝からパッド厚さ方向に貫通して前記第1通気口と連通する第2通気口と、を有し、前記蓋部材が、前記配風溝の全域をパッド裏側から覆うように前記硬質パッド部に接合され、かつ、前記配風溝と連通するようにパッド厚さ方向に貫通する前記通風路を成す第3通気口を有するシートパッドである。
【0010】
第2の発明によれば、シートパッドが、パッド本体のパッド裏側に硬質パッド部が積層される構成とされても、これらに跨って面内方向に延びる配風溝を含む形状を持つ通風路を比較的単純かつ少ない部品構成によって適切に形成することができる。詳しくは、硬質パッド部に形成される配風溝がパッド裏側から凹む凹形状とされることから、硬質パッド部のパッド表側にパッド本体に対する広い硬質の支持面を確保することができる。
【0011】
本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記パッド本体が、前記蓋部材の接合された前記硬質パッド部と一体成形されるシートパッドである。
【0012】
第3の発明によれば、硬質パッド部に接合される蓋部材により、硬質パッド部の配風溝に適切に蓋をして、パッド本体を第2通気口と第1通気口とを適切に連通させられるように硬質パッド部と一体成形することができる。
【0013】
本発明の第4の発明は、上記第1又は第2の発明において、当該シートパッドが、3人掛け可能なベンチシートのシートクッションに適用され、前記第3通気口が、前記シートクッションの中央席部分の直下に配置され、前記第1通気口及び前記第2通気口が、前記シートクッションの一方及び/又は他方のサイド席部分の直下に配置されるシートパッドである。
【0014】
第4の発明によれば、補助的な用途で着座使用される中央席部分の直下に第3通気口が配置されることで、サイド席部分の着座使用時に、第3通気口に接続されるファンやダクト等の硬質部材が異物感として感じられにくくなる。
【0015】
本発明の第5の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記第1通気口及び前記第2通気口が複数形成されるシートパッドである。
【0016】
第5の発明によれば、第1通気口及び第2通気口が複数に増えても、蓋部材で硬質パッド部の配風溝に蓋をするのみの簡単な構成によって通風路を構成することができる。したがって、通風路の通風性能を簡便かつ適切に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態に係るシートパッドが適用されたベンチシートの概略構成を表す斜視図である。
図2】シートパッドの一部を模式的に表す斜視図である。
図3図2の分解斜視図である。
図4図3を下方から見た分解斜視図である。
図5図2の平面図である。
図6図5のVI-VI線断面図である。
図7図5のVII-VII線断面図である。
図8】第2の実施形態に係るシートパッドの一部を模式的に表す斜視図である。
図9図8の分解斜視図である。
図10図9を下方から見た分解斜視図である。
図11図8の平面図である。
図12図11のXII-XII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
《第1の実施形態》
(シートパッド1の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートパッド1の構成について、図1図7を用いて説明する。なお、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図7のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るシートパッド1は、自動車のベンチシート10のシートクッション12に適用されている。ベンチシート10は、左右に3人掛け可能な横長なシート形状を備える。ベンチシート10は、着座乗員の背凭れ部となるシートバック11と、着座部となるシートクッション12と、を備える。
【0021】
シートクッション12は、クッション部となるシートパッド1と、シートパッド1を覆うファブリック製のシートカバーCと、シートパッド1にインサート成形された強度部材となる金属製のインサートワイヤ(不図示)と、を有する。シートクッション12は、自動車のフロアパネル(不図示)上に組み付けられている。
【0022】
シートクッション12は、風の吸引により着座時の快適性を向上させる空調機能を備える。具体的には、シートクッション12は、シート裏側に設置されたファンFの圧力により、シート表面から風を吸い込んでシート裏側へと配出する機能を備える。上記風の吸引を行うため、シートパッド1には、パッド厚さ方向に貫通する通風路Hが形成されている。
【0023】
以下、シートパッド1及び通風路Hの具体的な構成について、図2図7を用いて詳しく説明する。なお、図2図7では、シートパッド1の構成を分かりやすく示すため、シートパッド1を単純化した模式図で示している。
【0024】
図2図5に示すように、シートパッド1は、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体2と、発泡ポリプロピレンのビーズ発泡成形体から成る硬質パッド部3と、が1つに組み合わされた構成から成る。硬質パッド部3は、パッド本体2よりも硬質とされ、パッド本体2のパッド裏側に積層状に設けられている。
【0025】
シートパッド1は、予め成形された硬質パッド部3をパッド本体2の発泡成形型にセットし、パッド本体2の原料となる発泡樹脂原料を流し込んで一体発泡成形することで、パッド本体2が硬質パッド部3と一体に成形された構成とされる。なお、厳密には、硬質パッド部3の他に、パッド本体2の形状出しをするための不図示のインサートワイヤも発泡成形型にセットされてパッド本体2と一体発泡成形されている。硬質パッド部3は、シートパッド1の下部を硬くすることで、着座乗員が衝突時にシートパッド1内に潜り込む、いわゆるサブマリン現象の発生を防止する潜り込み防止部として機能する。
【0026】
図3図4に示すシートパッド1は、構成を分かりやすく示すため、実際には硬質パッド部3と一体成形されるパッド本体2を硬質パッド部3から分離させて示している。これらの図に示すように、シートパッド1には、パッド本体2と硬質パッド部3とに跨って、上述した通風路Hがパッド厚さ方向に貫通するように形成されている。
【0027】
具体的には、図3に示すように、通風路Hは、パッド本体2の複数箇所にパッド厚さ方向に貫通するように形成された丸穴状の第1通気口2Aを有する。また、通風路Hは、硬質パッド部3にパッド表側からパッド厚さ方向に凹むように形成されたシート幅方向に延びる配風溝3Aを有する。また、通風路Hは、配風溝3Aの所々の箇所から前方又は後方に延び出る第2通気口3Bを有する。
【0028】
各第2通気口3Bは、シート幅方向に延びる配風溝3Aの所々の箇所から、前方又は後方に延び出る形状とされる。詳しくは、各第2通気口3Bは、配風溝3Aのパッド表側から凹む凹形状を前方又は後方に拡張させるように配風溝3Aから連なって延び出る形状とされる。各第2通気口3Bは、それらの前方又は後方に延び出た先の部分(対向領域A1)において、パッド本体2に形成される対応する各第1通気口2Aとパッド厚さ方向に真っ直ぐ連なるように連通する構成とされる。
【0029】
また、通風路Hは、硬質パッド部3の配風溝3Aにパッド厚さ方向に貫通するように形成された丸穴状の第3通気口3Cを更に有する。第3通気口3Cは、配風溝3Aから前方又は後方に延び出る各第2通気口3Bの形成領域からシート幅方向の内側に外れた領域に形成されている。第3通気口3Cは、硬質パッド部3のパッド裏側に開口する。
【0030】
第3通気口3Cは、図1で前述したファンFの吸込口(不図示)と接続される接続口とされる。ファンFは、不図示のフロアパネル上に固定され、シートパッド1のフロアパネル上への設置に伴い、不図示の吸込口が図4に示す第3通気口3Cにシール部材Sを介して密封された状態に流路接続される。
【0031】
図3及び図5図7に示すように、シートパッド1は、硬質パッド部3の配風溝3Aにパッド表側から蓋をする形にセットされる矩形平面状の蓋部材4を更に有する。蓋部材4は、不織布から成り、硬質パッド部3にパッド本体2を一体発泡成形する前に、硬質パッド部3に被せられて接着剤により接着されている。
【0032】
具体的には、蓋部材4は、硬質パッド部3の配風溝3Aの全域と、各第2通気口3Bの各第1通気口2Aとパッド厚さ方向に対向する対向領域A1を残す非対向領域A2の全域と、をパッド表側から覆うように硬質パッド部3に被せられる。そして、蓋部材4は、その硬質パッド部3の天板面に重ねられる周縁部分が、接着剤を用いて硬質パッド部3の天板面に接着されている。
【0033】
上記蓋部材4を接着した後、硬質パッド部3は、パッド本体2の発泡成形型(不図示)にセットされ、パッド本体2が一体発泡成形される。その際、硬質パッド部3に形成された各第2通気口3Bの対向領域A1には、発泡成形型の一方の型から延びるピン(不図示)がそれぞれ通される。それにより、各ピンと蓋部材4とによって、硬質パッド部3の配風溝3Aと各第2通気口3Bとがキャビティと連通しないように塞がれた状態とされて、パッド本体2が硬質パッド部3と一体発泡成形される。
【0034】
この一体発泡成形により、キャビティ内で発泡成形されたパッド本体2に、上述した各ピン(不図示)の形状によって、各第2通気口3Bと連通する各第1通気口2Aが形成される。また、不織布から成る蓋部材4は、キャビティ内に注入された液体状態の発泡樹脂原料の含浸を伴う熱硬化によって、パッド本体2とも一体的に接合された状態に成形される。なお、上記一体発泡成形時に、蓋部材4が発泡樹脂原料の発泡圧により撓むことを抑制するために、配風溝3A内に中子を設定しても良い。
【0035】
上記成形により、シートパッド1がパッド本体2のパッド裏側に硬質パッド部3が積層される構成とされても、これらに跨って面内方向に延びる配風溝3Aを含む形状を持つ通風路Hを比較的単純かつ少ない部品構成によって形成することができる。図1に示すように、シートパッド1は、実際には、左右対称な形状とされ、シートクッション12の中央席部分12Aの直下に第3通気口3Cが左右に並んで形成される構成とされる。
【0036】
そして、シートパッド1は、各第3通気口3C(図3参照)から、右側或いは左側の各サイド席部分12Bに向かって配風溝3Aがシート幅方向に延び、各サイド席部分12Bの直下に複数の第1通気口2A及び第2通気口3Bが形成される構成とされる。このように、補助的な用途で着座使用される中央席部分12Aの直下に第3通気口3Cが配置されることで、各サイド席部分12Bの着座使用時に、各第3通気口3Cに接続されるファンFやダクト(不図示)等の硬質部材が異物感として感じられにくくなっている。
【0037】
また、シートパッド1は、硬質パッド部3に形成される配風溝3Aがパッド表側から凹む凹形状とされ、蓋部材4が配風溝3Aにパッド表側から被せられる構成とされる。そのようなことから、シートパッド1は、硬質パッド部3のパッド裏側において、設置対象となるフロアパネル(不図示)に対する広い硬質の支持面を確保できるようになっている。
【0038】
以上をまとめると、本実施形態に係るシートパッド1は、次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0039】
すなわち、シートパッド(1)は、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体(2)と、パッド本体(2)のパッド裏側に積層状に設けられるパッド本体(2)よりも硬質なビーズ発泡成形体から成る硬質パッド部(3)と、を有する。また、シートパッド(1)は、パッド本体(2)と硬質パッド部(3)とに跨ってパッド厚さ方向に貫通するように形成される通風路(H)と、パッド本体(2)と硬質パッド部(3)との間に介在する面状の蓋部材(4)と、を有する。
【0040】
通風路(H)が、パッド本体(2)にパッド厚さ方向に貫通するように形成される第1通気口(2A)と、硬質パッド部(3)の第1通気口(2A)から外れた位置にパッド表側からパッド厚さ方向に凹むように形成される配風溝(3A)及び配風溝(3A)からパッド表側から凹む凹形状を連ねるように延び出て第1通気口(2A)と連通する第2通気口(3B)と、配風溝(3A)にパッド厚さ方向に貫通するように形成される第3通気口(3C)と、を有する。蓋部材(4)が、第2通気口(3B)の第1通気口(2A)とパッド厚さ方向に対向する対向領域(A1)を残す非対向領域(A2)の全域と配風溝(3A)の全域とをパッド表側から覆うように硬質パッド部(3)に接合される。
【0041】
上記構成によれば、シートパッド(1)が、パッド本体(2)のパッド裏側に硬質パッド部(3)が積層される構成とされても、これらに跨って面内方向に延びる配風溝(3A)を含む形状を持つ通風路(H)を比較的単純かつ少ない部品構成によって適切に形成することができる。詳しくは、硬質パッド部(3)に形成される配風溝(3A)がパッド表側から凹む凹形状とされることから、硬質パッド部(3)のパッド裏側に設置対象に対する広い硬質の支持面を確保することができる。
【0042】
また、パッド本体(2)が、蓋部材(4)の接合された硬質パッド部(3)と一体成形される。上記構成によれば、硬質パッド部(3)に接合される蓋部材(4)により、硬質パッド部(3)の配風溝(3A)に適切に蓋をして、パッド本体(2)を第2通気口(3B)と第1通気口(2A)とを適切に連通させられるように硬質パッド部(3)と一体成形することができる。
【0043】
また、シートパッド(1)が、3人掛け可能なベンチシート(10)のシートクッション(12)に適用される。第3通気口(3C)が、シートクッション(12)の中央席部分(12A)の直下に配置される。第1通気口(2A)及び第2通気口(3B)が、シートクッション(12)の一方及び/又は他方のサイド席部分(12B)の直下に配置される。上記構成によれば、補助的な用途で着座使用される中央席部分(12A)の直下に第3通気口(3C)が配置されることで、サイド席部分(12B)の着座使用時に、第3通気口(3C)に接続されるファン(F)やダクト等の硬質部材が異物感として感じられにくくなる。
【0044】
また、第1通気口(2A)及び第2通気口(3B)が複数形成される。上記構成によれば、第1通気口(2A)及び第2通気口(3B)が複数に増えても、蓋部材(4)で硬質パッド部(3)の配風溝(3A)に蓋をするのみの簡単な構成によって通風路(H)を構成することができる。したがって、通風路(H)の通風性能を簡便かつ適切に高めることができる。
【0045】
《第2の実施形態》
(シートパッド101の概略構成)
続いて、本発明の第2の実施形態に係るシートパッド101の構成について、図8図12を用いて説明する。なお、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図8図12のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0046】
本実施形態に係るシートパッド101も、自動車のベンチシート10のシートクッション12に適用されている(図1参照)。シートパッド101には、シート表面からの風の吸引を行うための通風路Jが形成されている。
【0047】
以下、シートパッド101及び通風路Jの具体的な構成について説明する。なお、図8図12では、シートパッド101の構成を分かりやすく示すため、シートパッド101を単純化した模式図で示している。なお、パッド本体2については、第1の実施形態で示したものと実質的に同一の構成となっているため、同一の符号を付している。
【0048】
図8図11に示すように、シートパッド101は、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体2と、発泡ポリプロピレンのビーズ発泡成形体から成る硬質パッド部103と、が1つに組み合わされた構成から成る。硬質パッド部103は、パッド本体2よりも硬質とされ、パッド本体2のパッド裏側に積層状に設けられている。
【0049】
シートパッド101は、予め成形された硬質パッド部103をパッド本体2の発泡成形型にセットし、パッド本体2の原料となる発泡樹脂原料を流し込んで一体発泡成形することで、パッド本体2が硬質パッド部103と一体に成形された構成とされる。硬質パッド部103は、シートパッド101の下部を硬くすることで、着座乗員が衝突時にシートパッド101内に潜り込む、いわゆるサブマリン現象の発生を防止する潜り込み防止部として機能する。
【0050】
図9図10に示すシートパッド101は、構成を分かりやすく示すため、実際には硬質パッド部103と一体成形されるパッド本体2を硬質パッド部103から分離させて示している。これらの図に示すように、シートパッド101には、パッド本体2と硬質パッド部103とに跨って、上述した通風路Jがパッド厚さ方向に貫通するように形成されている。
【0051】
具体的には、図9に示すように、通風路Jは、パッド本体2の複数箇所にパッド厚さ方向に貫通するように形成された丸穴状の第1通気口2Aを有する。また、図10に示すように、通風路Jは、硬質パッド部103にパッド裏側からパッド厚さ方向に凹むように形成されたシート幅方向に延びる配風溝103Aを有する。
【0052】
また、通風路Jは、配風溝103Aの所々の箇所からパッド厚さ方向に貫通するように形成された丸穴状の第2通気口103Bを有する。各第2通気口103Bは、パッド本体2に形成される対応する各第1通気口2Aとパッド厚さ方向に真っ直ぐ連なるように連通する構成とされる。
【0053】
図10図12に示すように、シートパッド101は、硬質パッド部103の配風溝103Aにパッド裏側から蓋をする形にセットされる矩形平面状の蓋部材104を更に有する。蓋部材104は、非通気性の樹脂層を全面に備えるフェルトから成り、硬質パッド部103にパッド本体2を一体発泡成形する前、或いは一体発泡成形した後に、硬質パッド部103に被せられて接着剤により接着されている。
【0054】
蓋部材104は、硬質パッド部103の配風溝103Aの全域をパッド裏側から覆うように硬質パッド部103に被せられる。そして、蓋部材104は、その硬質パッド部103の底板面に重ねられる周縁部分が、全周縁に亘って接着剤を用いて密封されるように接着されている。
【0055】
蓋部材104には、厚さ方向(パッド厚さ方向)に貫通するように形成された丸穴状の第3通気口104Aが形成されている。第3通気口104Aは、配風溝103Aをシートパッド101のパッド裏側に開口させる通風路Jの一部として構成される。第3通気口104Aは、配風溝103Aの各第2通気口103Bの形成領域からシート幅方向の内側に外れた溝領域に形成されている。
【0056】
第3通気口104Aは、図1で前述したファンFの吸込口(不図示)と接続される接続口とされる。ファンFは、不図示のフロアパネル上に固定され、シートパッド101のフロアパネル上への設置に伴い、不図示の吸込口が図10に示す第3通気口104Aにシール部材Sを介して密封された状態に流路接続される。
【0057】
硬質パッド部103は、予め成形された後、パッド本体2の発泡成形型(不図示)にセットされて、パッド本体2が一体発泡成形される。その際、硬質パッド部103に形成された各第2通気口103Bには、発泡成形型の一方の型から延びるピン(不図示)がそれぞれ通される。それにより、各ピンによって、硬質パッド部103の各第2通気口103Bがキャビティと連通しないように塞がれた状態とされて、パッド本体2が硬質パッド部103と一体発泡成形される。
【0058】
この一体発泡成形により、キャビティ内で発泡成形されたパッド本体2に、上述した各ピン(不図示)の形状によって、各第2通気口103Bと連通する各第1通気口2Aが形成される。上記成形により、シートパッド101がパッド本体2のパッド裏側に硬質パッド部103が積層される構成とされても、これらに跨って面内方向に延びる配風溝103Aを含む形状を持つ通風路Jを比較的単純かつ少ない部品構成によって形成することができる。
【0059】
上記シートパッド101は、硬質パッド部103に形成される配風溝103Aがパッド裏側から凹む凹形状とされ、蓋部材104が配風溝103Aにパッド裏側から被せられる構成とされる。そのようなことから、シートパッド101は、硬質パッド部103のパッド表側において、パッド本体2に対する広い硬質の支持面を確保できるようになっている。上記以外の構成は、第1の実施形態で示したシートパッド1の構成と同一の構成となっている。したがって、同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
以上をまとめると、本実施形態に係るシートパッド101は、次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0061】
すなわち、シートパッド(101)は、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体(2)と、パッド本体(2)のパッド裏側に積層状に設けられるパッド本体(2)よりも硬質なビーズ発泡成形体から成る硬質パッド部(103)と、を有する。また、シートパッド(101)は、パッド本体(2)と硬質パッド部(103)とに跨ってパッド厚さ方向に貫通するように形成される通風路(J)と、硬質パッド部(103)のパッド裏側に積層状に設けられる面状の蓋部材(104)と、を有する。
【0062】
通風路(J)が、パッド本体(2)にパッド厚さ方向に貫通するように形成される第1通気口(2A)と、硬質パッド部(103)にパッド裏側からパッド厚さ方向に凹むように形成される配風溝(103A)及び配風溝(103A)からパッド厚さ方向に貫通して第1通気口(2A)と連通する第2通気口(103B)と、を有する。蓋部材(104)が、配風溝(103A)の全域をパッド裏側から覆うように硬質パッド部(103)に接合され、かつ、配風溝(103A)と連通するようにパッド厚さ方向に貫通する通風路(J)を成す第3通気口(104A)を有する。
【0063】
上記構成によれば、シートパッド(101)が、パッド本体(2)のパッド裏側に硬質パッド部(103)が積層される構成とされても、これらに跨って面内方向に延びる配風溝(103A)を含む形状を持つ通風路(J)を比較的単純かつ少ない部品構成によって適切に形成することができる。詳しくは、硬質パッド部(103)に形成される配風溝(103A)がパッド裏側から凹む凹形状とされることから、硬質パッド部(103)のパッド表側にパッド本体(2)に対する広い硬質の支持面を確保することができる。
【0064】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を2つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態の他、各種の形態で実施することができるものである。
【0065】
1.本発明のシートパッドは、鉄道等の自動車以外の車両の他、航空機や船舶等の車両以外の乗物用に供されるシートに適用されるものであっても良い。また、シートパッドは、乗物の他、スポーツ施設や劇場、コンサート会場、イベント会場等の各種施設に設置されるシートやマッサージシート等の乗物以外のシートに適用されるものであってもよい。
【0066】
シートパッドは、シートクッションの他、シートバックに適用されるものであっても良い。また、シートパッドは、二人以上腰掛けることができるベンチシートの他、一人掛け用のセパレートシートに適用されるものであっても良い。シートパッドが3人掛け可能なベンチシートに適用される場合、第1通気口及び第2通気口は、どちらか一方のサイド席部分の直下にのみ形成される構成であっても良い。
【0067】
また、シートパッドは、フロアパネル等のボデーパネルに取り付けられて支持されるものの他、シートフレームに取り付けられてシートフレームに架橋されるいわゆるSバネや布バネ等の弾性体、或いはクッションパン等のパネルフレームにより支持されるものであっても良い。
【0068】
2.硬質パッド部は、パッド本体よりも硬質なビーズ発泡成形体から成るものであれば良く、発泡ポリプロピレンの他、発泡スチロールを含むビーズ発泡成形体から成るものであっても良い。また、硬質パッド部は、発泡ポリプロピレンと発泡スチロールとを組み合わせたビーズ発泡成形体から成るものであっても良い。
【0069】
3.通風路は、シート表面より風を吸い込んでシート裏側へと配出する吸込み用途の他、シート裏側より風を吸い込んでシート表面より配出する吹き出し用途で用いられるものであっても良い。配風溝は、シートパッドの面内方向に延びるものであれば良く、必ずしもシート幅方向に延びるものでなくても良い。第1通気口及び第2通気口は、少なくとも1つ設けられる構成であれば良い。
【0070】
4,シートパッドは、パッド本体と硬質パッド部とを別々に発泡成形し、成形後に組み合わされて構成されるものであっても良い。蓋部材は、不織布や非通気性の樹脂層を備えるフェルトの他、樹脂パネルから成るものであっても良い。
【符号の説明】
【0071】
1,101 シートパッド
2 パッド本体
2A 第1通気口
3,103 硬質パッド部
3A,103A 配風溝
3B,103B 第2通気口
3C 第3通気口
4,104 蓋部材
104A 第3通気口
10 ベンチシート
11 シートバック
12 シートクッション
12A 中央席部分
12B サイド席部分
F ファン
S シール部材
C シートカバー
A1 対向領域
A2 非対向領域
H,J 通風路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12