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特開2024-99972医療支援システム、医療支援方法、医用情報処理装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099972
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】医療支援システム、医療支援方法、医用情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20240719BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003635
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 章浩
(72)【発明者】
【氏名】平田 宏司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 康雄
(72)【発明者】
【氏名】出口 勝彰
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】個人差に対応した再生医療の提供を実現すること。
【解決手段】実施形態に係る医療支援システムは、データ取得部と、生成部と、表示部とを備える。データ取得部は、検査又は治療の対象者の生体情報データを取得する。生成部は、生体情報データに基づいて、対象者の生体試料に基づく将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する。表示部は、将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査又は治療の対象者の生体情報データを取得するデータ取得部と、
前記生体情報データに基づいて、前記対象者の生体試料に基づく将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する生成部と、
前記将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を表示する表示部と、
を備える、医療支援システム。
【請求項2】
前記データ取得部は、時系列の前記生体情報データを取得し、
前記生成部は、前記時系列の生体情報データに基づいて前記将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する、請求項1に記載の医療支援システム。
【請求項3】
前記細胞作製における成功の確率に関する情報は、細胞の樹立確率に関する情報を含む、請求項1に記載の医療支援システム。
【請求項4】
前記生体情報データは、前記対象者の血液の幹細胞含有率を含む、請求項3に記載の医療支援システム。
【請求項5】
前記生成部は、血液の幹細胞含有率と前記細胞の樹立確率との相関関係に基づいて、前記生体情報データに含まれる前記対象者の血液における幹細胞含有率から前記細胞の樹立確率に関する情報を生成する、請求項4に記載の医療支援システム。
【請求項6】
前記細胞作製における成功の確率に関する情報は、細胞の分化確率に関する情報を含む、請求項1に記載の医療支援システム。
【請求項7】
前記生成部は、前記対象者の疾患リスクの高い部位を示す情報を特定し、当該疾患リスクの高い部位について前記分化確率に関する情報を生成する、請求項6に記載の医療支援システム。
【請求項8】
前記生成部は、樹立された細胞の特性に基づいて、前記細胞の分化確率に関する情報を生成する、請求項6に記載の医療支援システム。
【請求項9】
前記生成部は、現在の細胞作製における成功の確率に関する情報をさらに生成する、請求項1に記載の医療支援システム。
【請求項10】
前記生成部は、生活習慣を変更した場合の将来の細胞作製における成功の確率に関する情報をさらに生成し、
前記表示部は、生活習慣を変更した場合の将来の細胞作製における成功の確率に関する情報をさらに表示する、請求項1に記載の医療支援システム。
【請求項11】
前記生体情報データは、前記対象者の年齢、身長及び体重、並びに血液の幹細胞含有率のうちの少なくとも1つ又は当該少なくとも1つに基づくデータを含む、請求項1に記載の医療支援システム。
【請求項12】
前記生成部は、前記対象者のBMI(Body Mass Index)の変化と幹細胞含有率の変化とから将来の幹細胞含有率を推定し、推定した幹細胞含有率に基づいて、将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する、請求項2に記載の医療支援システム。
【請求項13】
前記表示部は、前記将来の細胞作製における成功の確率に関する情報とともに、当該将来の細胞作製に要する費用に関する情報を表示する、請求項1に記載の医療支援システム。
【請求項14】
前記生成部は、細胞の樹立確率に関する情報と細胞の保存期間とに基づいて、細胞の樹立時期に関する情報をさらに生成する、請求項1に記載の医療支援システム。
【請求項15】
前記細胞作製における成功の確率に関する情報は、iPS(induced pluripotent stem)細胞の樹立確率に関する情報を含む、請求項1に記載の医療支援システム。
【請求項16】
検査又は治療の対象者の生体情報データを取得するステップと、
前記生体情報データに基づいて、前記対象者の生体試料に基づく将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成するステップと、
前記将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を表示するステップと、
を含む、医療支援方法。
【請求項17】
医療従事者又は検査若しくは治療の対象者が使用する第1の端末とネットワークを介して通信可能な医用情報処理装置であって、
前記対象者の生体情報データを前記第1の端末又は他の装置から取得するデータ取得部と、
前記生体情報データに基づいて、前記対象者の生体試料に基づく将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する生成部と、
前記将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を、前記ネットワークを介して前記第1の端末へ出力する出力部と、
を備える、医用情報処理装置。
【請求項18】
検査又は治療の対象者の生体情報データを取得するデータ取得部と、
前記生体情報データに基づいて、前記対象者の生体試料に基づく将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する生成部と、
を備える、医用情報処理装置。
【請求項19】
コンピュータを、
検査又は治療の対象者の生体情報データに基づいて、前記対象者の生体試料に基づく将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する生成手段、及び
前記将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を出力する出力手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医療支援システム、医療支援方法、医用情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療(例えば、iPS(induced pluripotent stem)細胞を利用した臓器再生等)では、免疫拒絶リスクを低減するために、HLA(Human Leukocyte Antigen:ヒト白血球型抗原)型が一致するドナーを探し、そのドナーから提供された細胞を利用した他家移植が行われている。しかしながら、他家移植では、免疫拒絶リスクの低減に一定の限界があるため、患者自身の細胞(例えば、血液等)を利用した自家移植による再生医療の実現が免疫拒絶リスクを避ける解決手段の1つとして検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-279399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、個人差に対応した再生医療の提供を実現することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医療支援システムは、データ取得部と、生成部と、表示部とを備える。データ取得部は、検査又は治療の対象者の生体情報データを取得する。生成部は、前記生体情報データに基づいて、前記対象者の生体試料に基づく将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する。表示部は、前記将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る医療支援システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る医療支援システムの概要を説明するための図である。
図3A図3Aは、第1の実施形態に係る幹細胞含有率とiPS細胞の樹立確率との相関関係を説明するための図である。
図3B図3Bは、第1の実施形態に係る幹細胞含有率とiPS細胞の樹立確率との相関関係を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る表示情報の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置の処理手順の例を示すフローチャートである。
図6図6は、第2の実施形態に係る医療支援システムの概要を説明するための図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る表示情報の一例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置の処理手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、医療支援システム、医療支援方法、医用情報処理装置及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。なお、本願に係る医療支援システム、医療支援方法、医用情報処理装置及びプログラムは、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医療支援システム100の構成の一例を示す図である。例えば、図1に示すように、本実施形態に係る医療支援システム100は、端末装置1と、データサーバ2と、医用情報処理装置3とを含み、ネットワーク4を介して相互に通信可能に接続されている。ここで、ネットワーク4は、例えば、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)を含む。なお、図1に示すネットワーク4には、その他種々の装置及びシステムが接続される場合でもよい。
【0009】
端末装置1は、病院内に勤務する医師や検査技師などの医療従事者や、検査若しくは治療の対象者によって各種情報の入力や、閲覧などが行われる装置(第1の端末)である。例えば、端末装置1は、医療従事者や対象者により操作されるパーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)やタブレット式PC、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話等によって実現される。例えば、端末装置1は、対象者の生体情報データの入力を受け付け、受け付けた生体情報データをデータサーバ2や、医用情報処理装置3に送信する。また、端末装置1は、医用情報処理装置3から処理結果を受信して、受信した処理結果を自装置のディスプレイに表示する。ここで、端末装置1のディスプレイは、表示部の一例である。なお、処理結果については、後に詳述する。
【0010】
データサーバ2は、対象者の生体情報データを保管する。具体的には、データサーバ2は、ネットワーク4を介して端末装置1から生体情報データを受信し、当該生体情報データを自装置内の記憶回路に記憶させて保管する。例えば、データサーバ2は、対象者の年齢、身長及び体重、幹細胞含有率を含む血液検査の結果、バイオマーカーの解析結果などを含む生体情報データを保管する。
【0011】
医用情報処理装置3は、医療支援システム100における各装置から種々の情報を取得して、取得した情報を用いて各種の情報処理を行う。具体的には、医用情報処理装置3は、対象者の生体情報データを取得し、取得した生体情報データに基づいて、対象者の生体試料に基づく将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する。例えば、医用情報処理装置3は、サーバやワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0012】
医用情報処理装置3は、再生医療サービスを提供する管理会社によって管理され、例えば、通信インターフェース31と、入力インターフェース32と、ディスプレイ33と、記憶回路34と、処理回路35とを備える。
【0013】
通信インターフェース31は、医用情報処理装置3と、ネットワーク4を介して接続された外部装置(端末装置1やデータサーバ2など)との間で送受信される各種データの伝送及び通信を制御する。具体的には、通信インターフェース31は、処理回路35に接続されており、外部装置から受信したデータを処理回路35に送信、又は、処理回路35から受信したデータを外部装置に送信する。例えば、通信インターフェース31は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0014】
入力インターフェース32は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インターフェース32は、処理回路35に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路35に送信する。例えば、入力インターフェース32は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力インターフェース、及び音声入力インターフェース等によって実現される。なお、本明細書において、入力インターフェース32は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ送信する電気信号の処理回路も入力インターフェース32の例に含まれる。
【0015】
ディスプレイ33は、各種情報及び各種データを表示する。具体的には、ディスプレイ33は、処理回路35に接続されており、処理回路35から受信した各種情報及び各種データを表示する。例えば、ディスプレイ33は、将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を表示する。例えば、ディスプレイ33は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、タッチパネル等によって実現される。ここで、ディスプレイ33は、表示部の一例である。
【0016】
記憶回路34は、各種データ及び各種プログラムを記憶する。具体的には、記憶回路34は、処理回路35に接続されており、処理回路35から受信したデータを記憶、又は、記憶しているデータを読み出して処理回路35に送信する。例えば、記憶回路34は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。なお、記憶回路34は、医用情報処理装置3とネットワーク4を介して接続されたクラウドコンピュータにより実現されることとしてもよい。
【0017】
処理回路35は、医用情報処理装置3の全体を制御する。例えば、処理回路35は、入力インターフェース32を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、各種処理を行う。例えば、処理回路35は、外部装置から送信されたデータを、通信インターフェース31を介して受信し、受信したデータを記憶回路34に格納する。また、例えば、処理回路35は、記憶回路34から受信したデータを通信インターフェース31に送信することで、当該データを外部装置に送信する。また、例えば、処理回路35は、記憶回路34から受信したデータをディスプレイ33に表示する。また、処理回路35は、対象者の生体試料に基づく将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成して表示させる処理を実行する。
【0018】
例えば、処理回路35は、図1に示すように、制御機能351と、データ取得機能352と、生成機能353と、出力機能354とを実行する。ここで、データ取得機能352は、データ取得部の一例である。また、生成機能353は、生成部の一例である。また、出力機能354は、出力部の一例である。
【0019】
制御機能351は、入力インターフェース32を介した操作に応じて、種々のGUI(Graphical User Interface)や、種々の表示情報をディスプレイ33に表示するように制御する。例えば、制御機能351は、生成機能355によって生成された表示情報をディスプレイ33に表示させる。
【0020】
データ取得機能352は、検査又は治療の対象者の生体情報データを取得する。なお、データ取得機能352による処理については、後に詳述する。
【0021】
生成機能353は、生体情報データに基づいて、対象者の生体試料に基づく将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する。なお、生成機能353による処理については、後に詳述する。
【0022】
出力機能354は、将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を、ネットワーク4を介して端末装置1(第1の端末)へ出力する。なお、出力機能354による処理については、後に詳述する。
【0023】
上述した処理回路35は、例えば、プロセッサによって実現される。その場合に、上述した各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路34に記憶される。そして、処理回路35は、記憶回路34に記憶された各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、処理回路35は、各プログラムを読み出した状態で、図1に示した各処理機能を有することとなる。
【0024】
なお、処理回路35は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、処理回路35が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、処理回路35が有する各処理機能は、回路等のハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されても構わない。また、ここでは、各処理機能に対応するプログラムが単一の記憶回路34に記憶される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、各処理機能に対応するプログラムが複数の記憶回路が分散して記憶され、処理回路35が、各記憶回路から各プログラムを読み出して実行する構成としても構わない。なお、処理回路35が有する各処理機能の一部は、医用情報処理装置3とネットワーク4を介して接続されたクラウドコンピュータにより実現されることとしてもよい。
【0025】
以上、本実施形態に係る医療支援システム100の構成例について説明した。かかる構成のもと、医療支援システム100は、個人差に対応した再生医療の提供を実現する。上述したように、再生医療では、免疫拒絶リスクを避ける解決手段の1つとして、自家移植が検討されているが、再生医療の対象者(患者)毎の細胞には必ず個人差があるため、広く医療として提供するには、この個人差を吸収して、必要な細胞、臓器等を確実に樹立・分化し提供することが求められる。しかしながら、現状では、細胞、臓器等の樹立・分化の生物学的機序に不明な点も残り、幅広い個人差を吸収して適切な品質で自家移植を提供することは難しい。
【0026】
そこで、本実施形態に係る医療支援システム100は、対象者の生体情報データに基づいて、当該対象者の将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成することで、個人差に対応した再生医療の提供を実現する。ここで、本実施形態に係る医療支援システム100は、細胞作製における成功の確率に関する情報として、iPS細胞の樹立の成功の確率に関する情報を生成する。
【0027】
以下、図2を用いて、第1の実施形態に係る医療支援システム100の概要を説明する。図2は、第1の実施形態に係る医療支援システム100の概要を説明するための図である。例えば、医療支援システム100においては、図2に示すように、自身の生体情報データを提供することを許諾した提供者(患者)から生体情報データを取得して、生体情報データに基づく分析を行う。
【0028】
提供者は、検査や治療の対象者であり、再生医療サービス(ここでは、iPS細胞提供サービス)を受けることを検討している人である。このような提供者は、例えば、毎年受信する定期健康診断(人間ドッグ等)の結果を、生体情報データとして医療支援システム100に提供する。ここで、生体情報データは、図2に示すように、例えば、年齢、BMI(Body Mass Index)、血液検査での幹細胞含有率等を含む。また、BMIや幹細胞含有率は、毎年の結果に基づく経時変化の情報も含む。
【0029】
医療支援システム100においては、医用情報処理装置3が、上記した生体情報データを端末装置1又はデータサーバ2から取得して、取得した生体情報データに基づく分析を行う。具体的には、医用情報処理装置3は、図2に示すように、現時点でのiPS細胞樹立確率と、現在の生活を続けた場合の将来のiPS細胞樹立確率とを予測する。
【0030】
これにより、提供者は、現時点でのiPS細胞樹立確率が良ければ、今のうちにサービスを申し込むことを検討することができる。また、提供者は、現時点でのiPS細胞樹立確率が悪ければ、現在の生活を続けた場合の将来のiPS細胞樹立確率に基づいて、生活習慣の改善によりiPS細胞樹立確率が改善するか否かを検討し、改善の可能性がある場合には、生活習慣を改善して申し込むことを検討することができる。
【0031】
また、医用情報処理装置3は、iPS細胞樹立確率に基づいて、iPS細胞作製に係る費用を算出して提示することもできる。具体的には、医用情報処理装置3は、現時点でのiPS細胞樹立確率とその費用、及び、生活習慣を改善した場合のiPS細胞樹立確率とその費用を提供者に提示する。
【0032】
提供者は、提示された情報(iPS細胞樹立確率とその費用)を確認して、最終的な決定を行う。一般的に、iPS細胞の樹立確率が高ければ、iPS細胞作製に係る費用を抑えることができる。したがって、提示された情報をもとに最終的な決定を行うことで、提供者は、品質の高いiPS細胞提供サービスを低価格で利用することができるというメリットを受けることができる。また、iPS細胞提供サービスを提供する管理会社は、より広い患者に適切な価格で、個人差に対応した再生医療の提供を実現することができる。
【0033】
また、上述したように、実際のiPS細胞の樹立確率を提示することで、健康不安意識が高い患者だけではなく、健康不安意識が低い若い年代の対象者のサービス利用へのモチベーションアップを図ることもできる。一般に、若年層では、iPS細胞の樹立確率が高く、良好なiPS細胞を作成できる割合が高いが、健康不安意識が低いため、再生医療サービス(iPS細胞提供サービス)を利用するモチベーションが低い。しかしながら、このような若年層に対して、自身の現時点のiPS細胞の樹立確率と将来のiPS細胞の樹立確率を提示することで、iPS細胞提供サービスに関する理解が得られ、サービス利用を促すことができる。
【0034】
また、生活習慣の改善によりiPS細胞の樹立確率が改善した場合に、再生医療サービスの利用料を割引することで、体質改善してサービス利用する動機付けを行うようにしてもよい。
【0035】
以上、第1の実施形態に係る医療支援システム100の概要について説明した。次に、第1の実施形態に係る医療支援システム100による処理の詳細について説明する。
【0036】
(生体情報データの取得処理)
第1の実施形態に係るデータ取得機能352は、iPS細胞の樹立確率の分析に対する対象者の申し込みに応じて、当該対象者の生体情報データを取得する。例えば、医療従事者又は対象者本人によって操作された端末装置1からiPS細胞の樹立確率の分析の申し込みを受信すると、データ取得機能352は、端末装置1又はデータサーバ2から対象者の生体情報データを取得する。
【0037】
ここで、データ取得機能352によって取得される生体情報データは、対象者の年齢、身長及び体重、並びに血液の幹細胞含有率のうちの少なくとも1つ又は当該少なくとも1つに基づくデータを含む。例えば、生体情報データは、対象の年齢、BMI、血液の幹細胞含有率を含む。なお、上記した生体情報データの例はあくまでも一例であり、その他の情報(例えば、血中コレステロール値など)を含む場合でもよい。
【0038】
データ取得機能352は、対象者から定期的収集された上記生体情報データを取得する。すなわち、データ取得機能352は、時系列の生体情報データを取得する。これにより、データ取得機能352は、例えば、BMIの経時変化や、幹細胞含有率の経時変化などの情報を取得することができる。
【0039】
(現時点のiPS細胞の樹立確率の推定処理)
第1の実施形態に係る生成機能353は、細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する。ここで、細胞作製における成功の確率に関する情報は、細胞の樹立確率に関する情報を含み、本実施形態では、iPS細胞の樹立確率に関する情報である。
【0040】
生成機能353は、データ取得機能352によって取得された生体情報データに基づいて、現在の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する。具体的には、生成機能353は、血液の幹細胞含有率と細胞の樹立確率との相関関係に基づいて、生体情報データに含まれる対象者の血液における幹細胞含有率から細胞の樹立確率に関する情報を生成する。すなわち、生成機能353は、幹細胞含有率とiPS細胞の樹立確率との相関関係に基づいて、対象者の血液における幹細胞含有率から対象者のiPS細胞の樹立確率を推定する。
【0041】
図3A及び図3Bは、第1の実施形態に係る幹細胞含有率とiPS細胞の樹立確率との相関関係を説明するための図である。ここで、図3Aは、幹細胞含有率とiPS細胞の樹立確率との相関関係を評価する手法を説明するための図を示す。また、図3Bは、縦軸にiPS細胞の樹立確率を示し、横軸に幹細胞含有率を示したグラフを示す。
【0042】
以下、幹細胞含有率とiPS細胞の樹立確率との相関関係を、CD34陽性細胞率と、SeV(Sendai Virus:センダイウイルス)の感染効率との関係によって評価した場合の結果を説明する。図3Aに示すように、この評価では、まず、単核球(市販品もしくはボランティア血液由来)を培養して、培養後の細胞におけるCD34陽性細胞の割合(CD34陽性細胞率)を取得する。なお、CD34陽性細胞とは、幹細胞が発するマーカー(信号)であるCD34が陽性となった細胞(すなわち、幹細胞)である。したがって、CD34陽性細胞率は、培養後の細胞における幹細胞の含有率を示す。
【0043】
次に、抽出したCD34陽性細胞にセンダイウイルスを感染させ、iPS細胞を作製するための初期化因子をCD34陽性細胞に導入させる。そして、細胞内のGFP(Green Fluorescent Protein)陽性の有無により、センダイウイルスの感染の有無を評価し、センダイウイルスが感染した細胞を1つずつ単一ウェルで培養して、iPS細胞の樹立の有無を評価する。
【0044】
図3Bは、幹細胞含有率としてCD34陽性細胞率を用い、iPS細胞の樹立確率としてセンダイウイルスの感染効率(CD34陽性細胞に対してセンダイウイルスが感染した率)を用いた場合のグラフを示す。また、図3Bは、人種、性別、年齢が異なる5人について、CD34陽性細胞率とセンダイウイルスの感染効率とを取得し、取得した値をプロットしたグラフを示す。図3Bに示すように、CD34陽性細胞率とセンダイウイルスの感染効率とは相関があり、幹細胞含有率からiPS細胞の樹立確率が推定可能であることがわかる。なお、図3Bに示すグラフはあくまでも一例である。
【0045】
例えば、生成機能353は、図3Bに示すCD34陽性細胞率(幹細胞含有率)とセンダイウイルスの感染効率(iPS細胞の樹立確率)との相関関係に基づいて、対象者のiPS細胞の樹立確率を推定する。一例を挙げると、生成機能353は、対象者の生体情報データから現時点のCD34陽性細胞率の数値を抽出する。そして、生成機能353は、CD34陽性細胞率とセンダイウイルスの感染効率との相関関係に基づいて、抽出したCD34陽性細胞率の数値からセンダイウイルスの感染効率の数値を推定する。なお、この場合、データ取得機能352によって取得される生体情報データに含まれる幹細胞含有率は、CD34陽性細胞率である。
【0046】
このように、生成機能353は、対象者のCD34陽性細胞率の数値からセンダイウイルスの感染効率を推定することで、対象者のiPS細胞の樹立確率を推定する。
【0047】
(将来のiPS細胞の樹立確率の推定処理)
生成機能353は、時系列の生体情報データに基づいて将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する。具体的には、生成機能353は、時系列の生体情報データにおける幹細胞含有率の変化に基づいて、将来の幹細胞含有率を推定し、推定した幹細胞含有率に基づいて、将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する。
【0048】
例えば、生成機能353は、データ取得機能352によって取得された時系列の生体情報データからCD34陽性細胞率の経時変化を取得する。そして、生成機能353は、取得したCD34陽性細胞率の経時変化の傾向に基づいて、将来(所定の期間後)におけるCD34陽性細胞率の数値を推定する。さらに、生成機能353は、上述したCD34陽性細胞率とセンダイウイルスの感染効率との相関関係に基づいて、推定したCD34陽性細胞率の数値からセンダイウイルスの感染効率の数値を推定する。これにより、生成機能353は、将来(所定の期間後)におけるiPS細胞の樹立確率を推定する。
【0049】
また、生成機能353は、生活習慣を変更した場合の将来の細胞作製における成功の確率に関する情報をさらに生成する。具体的には、生成機能353は、対象者のBMIの変化と幹細胞含有率の変化とから将来の幹細胞含有率を推定し、推定した幹細胞含有率に基づいて、将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する。
【0050】
例えば、生成機能353は、データ取得機能352によって取得された時系列の生体情報データからCD34陽性細胞率の経時変化と、BMIの経時変化とを取得する。そして、生成機能353は、CD34陽性細胞率とBMIの値との対応関係から、対象者のBMIが変化した場合のCD34陽性細胞率を推定する。一例を挙げると、生成機能353は、BMIの値が標準の範囲内に含まれていない対象者が、生活習慣を変更してBMIの値を標準の範囲内とした場合のCD34陽性細胞率を推定する。
【0051】
(iPS細胞樹立の最適時期の推定処理)
生成機能353は、細胞の樹立確率に関する情報と細胞の保存期間とに基づいて、細胞の樹立時期に関する情報をさらに生成する。具体的には、生成機能353は、推定したiPS細胞の樹立確率と、iPS細胞の保存期間中の経年劣化とに基づいて、対象者にとってiPS細胞を樹立するのに最適な時期を推定する。
【0052】
例えば、生成機能353は、対象者の年齢から再生医療を適用する年齢までの期間を算出し、算出した期間内でどの時期にiPS細胞を樹立するのが最適であるかを推定する。なお、再生医療を適用する年齢は、対象者の既往歴や、再生医療サービスを利用した患者の平均などに基づいて設定される。
【0053】
かかる場合には、生成機能353は、対象者のiPS細胞の樹立確率が上記期間においてどのように変化するか(将来の経時変化)を推定する。そして、生成機能353は、推定したiPS細胞の樹立確率の将来の経時変化と、iPS細胞の保存期間と劣化(例えば、分化が失敗する確率)との対応関係とに基づいて、対象者にとってiPS細胞を樹立するのに最適な時期を推定する。例えば、生成機能353は、上記期間の各時期におけるiPS細胞の樹立確率それぞれに対して、それぞれの保存期間に対応する劣化を加味した場合に、分化の成功に対して最も影響が少ない時期を、最適な時期として推定する。一例を挙げると、生成機能353は、分化が成功する細胞数が最も多くなる時期を、最適な時期として推定する。
【0054】
(表示情報の生成処理)
生成機能353は、推定した情報に関する表示情報を生成する。具体的には、生成機能353は、対象者のiPS細胞の樹立確率を含む表示情報を生成する。図4は、第1の実施形態に係る表示情報の一例を示す図である。例えば、生成機能353は、図4に示すように、(I)現時点のiPS細胞の樹立確率と、(II)生活習慣を改善した後のiPS細胞の樹立確率と、(III)iPS細胞の最適樹立時期と、を含む分析結果を表示するための表示情報を生成する。
【0055】
ここで、(I)現時点には、「iPS細胞の樹立確率:A%」の他、現時点でiPS細胞を樹立した場合の「値段:B円」を含ませることもできる。また、(II)改善後には、「iPS細胞の樹立確率:D%」の他、改善後のBMIの値「C以下」や、改善後にiPS細胞を樹立した場合の「値段:E円」を含ませることもできる。なお、iPS細胞の樹立確率ごとの費用に関する情報は、予め記憶回路34に格納されており、生成機能353は、当該情報を記憶回路34から読み出すことで、図4に示す値段の情報を取得する。
【0056】
(表示情報の表示処理)
制御機能351は、生成機能353によって生成された表示情報をディスプレイ33に表示させる。例えば、制御機能351は、図4に示す情報をディスプレイ33に表示させる。すなわち、ディスプレイ33は、将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を表示する。また、ディスプレイ33は、生活習慣を変更した場合の将来の細胞作製における成功の確率に関する情報をさらに表示する。また、ディスプレイ33は、将来の細胞作製における成功の確率に関する情報とともに、当該将来の細胞作製に要する費用に関する情報を表示する。
【0057】
(情報の出力処理)
出力機能354は、生成機能353によって生成された情報(例えば、表示情報)を、通信インターフェース31を介してネットワーク4に接続された他の装置に出力する。例えば、出力機能354は、図4に示す情報を端末装置1に出力する。すなわち、医療支援システム100では、ネットワーク4を介した他の装置からの分析依頼を受領し、分析結果を送信する分析サービスも提供することができる。
【0058】
次に、医用情報処理装置3による処理の手順について、図5を用いて説明する。図5は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3の処理手順の例を示すフローチャートである。
【0059】
例えば、図5に示すように、本実施形態では、データ取得機能352が、端末装置1又はデータサーバ2から対象者の生体情報データを取得する(ステップS101)。この処理は、例えば、処理回路35が、データ取得機能352に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0060】
続いて、生成機能353が、取得された生体情報データに含まれる幹細胞含有率に基づいて、iPS細胞の樹立確率を推定する(ステップS102)。ここで、生成機能353は、現時点のiPS細胞の樹立確率と、将来のiPS細胞の樹立確率とをそれぞれ推定する。この処理は、例えば、処理回路35が、生成機能353に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0061】
続いて、生成機能353が、iPS細胞の樹立確率に基づいて、iPS細胞作製に係る費用を算出する(ステップS103)。この処理は、例えば、処理回路35が、生成機能353に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0062】
続いて、生成機能353が、iPS細胞の最適な樹立時期を推定して(ステップS104)、表示情報を生成する(ステップS105)。この処理は、例えば、処理回路35が、生成機能353に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0063】
続いて、制御機能351が、ディスプレイ33に表示情報を表示させる。(ステップS106)。この処理は、例えば、処理回路35が、制御機能351に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0064】
なお、図5においては、iPS細胞の最適な樹立時期の推定を含む処理手順について説明したが、iPS細胞の最適な樹立時期の推定を含まない場合でもよい。また、図5においては、iPS細胞作製に係る費用の算出を含む処理手順について説明したが、iPS細胞作製に係る費用の算出を含まない場合でもよい。また、図5においては、現時点のiPS細胞の樹立確率と、将来のiPS細胞の樹立確率とをそれぞれ推定する場合の処理手順について説明したが、将来のiPS細胞の樹立確率のみを推定する場合でもよい。
【0065】
上述したように、第1の実施形態によれば、データ取得機能352は、検査又は治療の対象者の生体情報データを取得する。生成機能353は、生体情報データに基づいて、対象者の生体試料に基づく将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する。ディスプレイ33は、将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を表示する。したがって、第1の実施形態に係る医療支援システム100は、対象者ごとに将来の細胞作製における成功の確率を取得することができ、対象者ごとの個人差に対応した再生医療の提供を実現することを可能にする。
【0066】
また、第1の実施形態によれば、データ取得機能352は、時系列の生体情報データを取得する。生成機能353は、時系列の生体情報データに基づいて将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する。したがって、第1の実施形態に係る医療支援システム100は、対象者の傾向に応じた将来の細胞作製における成功の確率を取得することを可能にする。
【0067】
また、第1の実施形態によれば、細胞作製における成功の確率に関する情報は、細胞の樹立確率に関する情報を含む。したがって、第1の実施形態に係る医療支援システム100は、個人差に対応した細胞の樹立に関する情報を提供することを可能にする。
【0068】
また、第1の実施形態によれば、生体情報データは、対象者の血液の幹細胞含有率を含む。また、第1の実施形態によれば、生成機能353は、血液の幹細胞含有率と細胞の樹立確率との相関関係に基づいて、生体情報データに含まれる対象者の血液における幹細胞含有率から細胞の樹立確率に関する情報を生成する。したがって、第1の実施形態に係る医療支援システム100は、細胞の樹立確率に関する情報を容易に推定することを可能にする。
【0069】
また、第1の実施形態によれば、生成機能353は、現在の細胞作製における成功の確率に関する情報をさらに生成する。したがって、第1の実施形態に係る医療支援システム100は、対象者ごとに現時点の細胞作製における成功の確率を取得することができ、対象者ごとの個人差により対応した再生医療の提供を実現することを可能にする。
【0070】
また、第1の実施形態によれば、生成機能353は、生活習慣を変更した場合の将来の細胞作製における成功の確率に関する情報をさらに生成する。ディスプレイ33は、生活習慣を変更した場合の将来の細胞作製における成功の確率に関する情報をさらに表示する。したがって、第1の実施形態に係る医療支援システム100は、将来の細胞作製における成功の確率の改善の可能性を提示することを可能にする。
【0071】
また、第1の実施形態によれば、生体情報データは、対象者の年齢、身長及び体重、並びに血液の幹細胞含有率のうちの少なくとも1つ又は当該少なくとも1つに基づくデータを含む。したがって、第1の実施形態に係る医療支援システム100は、対象者ごとの特性を示す情報を取得することを可能にする。
【0072】
また、第1の実施形態によれば、生成機能353は、対象者のBMIの変化と幹細胞含有率の変化とから将来の幹細胞含有率を推定し、推定した幹細胞含有率に基づいて、将来の細胞作製における成功の確率に関する情報を生成する。したがって、第1の実施形態に係る医療支援システム100は、生活習慣を改善した場合の幹細胞含有率の変化を容易に推定することを可能にする。
【0073】
また、第1の実施形態によれば、ディスプレイ33は、将来の細胞作製における成功の確率に関する情報とともに、当該将来の細胞作製に要する費用に関する情報を表示する。したがって、第1の実施形態に係る医療支援システム100は、適切な価格での再生医療サービスの提供を可能にする。
【0074】
また、第1の実施形態によれば、生成機能353は、細胞の樹立確率に関する情報と細胞の保存期間とに基づいて、細胞の樹立時期に関する情報をさらに生成する。したがって、第1の実施形態に係る医療支援システム100は、適切なタイミングでの再生医療サービスの利用を可能にする。
【0075】
また、第1の実施形態によれば、生細胞作製における成功の確率に関する情報は、iPS細胞の樹立確率に関する情報を含む。したがって、第1の実施形態に係る医療支援システム100は、iPS細胞の樹立確率の提供を可能にする。
【0076】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、細胞作製における成功の確率に関する情報として、iPS細胞の樹立の成功の確率に関する情報を生成する場合について説明した。第2の実施形態では、細胞作製における成功の確率に関する情報として、細胞の分化確率に関する情報を生成する場合について説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、データ取得機能352による処理と、生成機能353による処理とが異なる。以下、これらを中心に説明する。
【0077】
まず、図6を用いて、第2の実施形態に係る医療支援システム100の概要を説明する。図6は、第2の実施形態に係る医療支援システム100の概要を説明するための図である。例えば、第2の実施形態に係る医療支援システム100においては、図6に示すように、自身の生体情報データを提供することを許諾した提供者(患者)から生体情報データを取得して、生体情報データに基づく分析を行う。
【0078】
第2の実施形態に係る生体情報データは、図6に示すように、例えば、アラート内容を含めた、年齢、BMI、血液検査での幹細胞含有率等の結果である。また、BMIや幹細胞含有率は、毎年の結果に基づく経時変化の情報も含む。ここで、アラート内容とは、再検査が必要となる検査結果(例えば、胃がんや大腸がんのCEA、CA-19-9などのがんマーカーの陽性結果など)である。
【0079】
第2の実施形態に係る医療支援システム100においては、医用情報処理装置3が、上記した生体情報データを端末装置1又はデータサーバ2から取得して、取得した生体情報データに基づく分析を行う。具体的には、医用情報処理装置3は、図6に示すように、アラート内容に対応する対象臓器へのiPS細胞からの分化確率について、現時点の確率と、現在の生活を続けた場合の将来の確率とを予測する。
【0080】
これにより、提供者は、現時点での分化確率が良ければ、今のうちに臓器分化のサービスに申し込むことを検討することができる。また、提供者は、現時点での分化確率が悪ければ、現在の生活を続けた場合の将来の分化確率に基づいて、生活習慣の改善により分化確率が改善するか否かを検討し、改善の可能性がある場合には、生活習慣を改善して申し込むことを検討することができる。
【0081】
また、医用情報処理装置3は、対象臓器へのiPS細胞からの分化確率に基づいて、臓器分化に係る費用を算出して提示することもできる。具体的には、医用情報処理装置3は、現時点での分化確率とその費用、及び、生活習慣を改善した場合の分化確率とその費用を提供者に提示する。
【0082】
提供者は、提示された情報(分化確率とその費用)を確認して、最終的な決定を行う。一般的に、iPS細胞から臓器への分化には長い期間と多額の費用を要する。また、分化確率が低い場合、より費用を要することとなる。したがって、提示された情報をもとに最終的な決定を行うことで、提供者は、より分化確率の高いサービスを低価格で利用することができるというメリットを受けることができる。また、サービスを提供する管理会社は、より広い患者に適切な価格で、個人差に対応した再生医療の提供を実現することができる。
【0083】
以上、第2の実施形態に係る医療支援システム100の概要について説明した。次に、第2の実施形態に係る医療支援システム100による処理の詳細について説明する。
【0084】
(生体情報データの取得処理)
第2の実施形態に係るデータ取得機能352は、対象臓器へのiPS細胞からの分化確率の分析に対する対象者の申し込みに応じて、当該対象者の生体情報データを取得する。例えば、医療従事者又は対象者本人によって操作された端末装置1から分化確率の分析の申し込みを受信すると、データ取得機能352は、端末装置1又はデータサーバ2から対象者の生体情報データを取得する。ここで、データ取得機能352によって取得される生体情報データは、上記したアラート内容を含む。
【0085】
(現時点の分化確率の推定処理)
第2の実施形態に係る生成機能353は、対象者の疾患リスクの高い部位を示す情報を特定し、当該疾患リスクの高い部位について分化確率に関する情報を生成する。具体的には、生成機能353は、データ取得機能352によって取得された生体情報データに含まれるアラート内容に基づいて、対象者の疾患リスクの高い部位を特定する。そして、生成機能353は、特定した部位(対象の臓器)へのiPS細胞からの分化確率を推定する。
【0086】
ここで、生成機能353は、樹立された細胞の特性に基づいて、細胞の分化確率に関する情報を生成する。例えば、生成機能353は、対象者の血液をもとに予備的に樹立されたiPS細胞の特性を取得し、取得した特性に基づいて、対象の臓器への分化確率を推定する。すなわち、生成機能353は、実際に樹立されたiPS細胞の特性から、当該iPS細胞が対象の臓器に分化しやすいか否かを推定する。
【0087】
ここで、iPS細胞の特性は、例えば、バイオマーカーによって得られてもよい。例えば、発生の初期において、細胞は、内胚葉、中胚葉、外肺葉の三胚葉に分化する。そして、内胚葉、中胚葉、外肺葉は、それぞれ分化する組織・器官が決まっている。そこで、生成機能353は、実際に樹立されたiPS細胞に対して実行された上記三胚葉に関するバイオマーカーの解析結果を取得し、取得した解析結果に基づいて、iPS細胞が対象の臓器に分化しやすいか否かを推定する。
【0088】
例えば、対象の臓器が大腸である場合、生成機能353は、iPS細胞に対する内胚葉マーカーの解析結果に基づいて、分化確率を推定する。すなわち、生成機能353は、iPS細胞において内胚葉マーカーの強い発現が確認された場合に、分化確率が高いと推定する。一方、iPS細胞において内胚葉マーカーの発現が弱い場合、生成機能353は、分化確率が低いと推定する。
【0089】
(将来の分化確率の推定処理)
生成機能353は、将来のiPS細胞の樹立確率に基づいて、将来の分化確率を推定する。具体的には、生成機能353は、将来のiPS細胞の樹立確率が上がる(改善する)場合には、将来の分化確率が上がると推定し、将来のiPS細胞の樹立確率が下がる場合には、将来の分化確率が下がると推定する。すなわち、生成機能353は、第1の実施形態において説明したように、時系列の生体情報データから将来のiPS細胞の樹立確率を推定し、推定した樹立確率に基づいて、現時点の分化確率が上がるか、或いは、下がるかを推定する。
【0090】
(表示情報の生成処理)
生成機能353は、対象の臓器へのiPS細胞からの分化確率を含む表示情報を生成する。図7は、第2の実施形態に係る表示情報の一例を示す図である。例えば、生成機能353は、図7に示すように、(I)現時点の対象臓器への分化確率と、(II)生活習慣を改善した後の対象臓器への分化確率と、を含む分析結果を表示するための表示情報を生成する。
【0091】
ここで、(I)現時点には、「対象臓器への分化確率:F%」の他、現時点で対象臓器に分化させた場合の「値段:G円」を含ませることもできる。また、(II)改善後には、「対象臓器への分化確率:I%」の他、改善後のBMIの値「H以下」や、改善後に対象臓器へ分化させた場合の「値段:J円」を含ませることもできる。なお、分化確率ごとの費用に関する情報は、予め記憶回路34に格納されており、生成機能353は、当該情報を記憶回路34から読み出すことで、図7に示す値段の情報を取得する。
【0092】
次に、第2の実施形態に係る医用情報処理装置3による処理の手順について、図8を用いて説明する。図8は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置3の処理手順の例を示すフローチャートである。
【0093】
例えば、図8に示すように、本実施形態では、データ取得機能352が、端末装置1又はデータサーバ2から対象者の生体情報データを取得する(ステップS201)。この処理は、例えば、処理回路35が、データ取得機能352に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0094】
続いて、生成機能353が、生体情報データに基づいて対象の臓器を特定し、iPS細胞の予備樹立を経た対象の臓器への分化確率を推定する(ステップS202)。ここで、生成機能353は、現時点の分化確率と、将来の分化確率とをそれぞれ推定する。この処理は、例えば、処理回路35が、生成機能353に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0095】
続いて、生成機能353が、分化確率に基づいて、対象臓器への分化に係る費用を算出して(ステップS203)、表示情報を生成する(ステップS204)。この処理は、例えば、処理回路35が、生成機能353に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0096】
続いて、制御機能351が、ディスプレイ33に表示情報を表示させる。(ステップS106)。この処理は、例えば、処理回路35が、制御機能351に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0097】
なお、図8においては、対象臓器への分化に係る費用の算出を含む処理手順について説明したが、対象臓器への分化に係る費用の算出を含まない場合でもよい。
【0098】
上述したように、第2の実施形態によれば、細胞作製における成功の確率に関する情報は、細胞の分化確率に関する情報を含む。したがって、第2の実施形態に係る医療支援システム100は、個人差に対応した分化確率に関する情報を提供することを可能にする。
【0099】
また、第2の実施形態によれば、生成機能353は、対象者の疾患リスクの高い部位を示す情報を特定し、当該疾患リスクの高い部位について分化確率に関する情報を生成する。したがって、第2の実施形態に係る医療支援システム100は、対象者ごとに異なる対象臓器への分化確率を推定することができ、個人差に対応した再生医療の提供を実現することを可能にする。
【0100】
また、第2の実施形態によれば、生成機能353は、樹立された細胞の特性に基づいて、細胞の分化確率に関する情報を生成する。したがって、第2の実施形態に係る医療支援システム100は、細胞の分化確率を推定することを可能にする。
【0101】
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、対象者の体質の改善をBMIによって判定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限られず、例えば、血中コレステロールなどの指標が用いられる場合でもよい。
【0102】
なお、上述した実施形態では、本明細書におけるデータ取得部、生成部、出力部を、それぞれ、処理回路のデータ取得機能、生成機能、出力機能によって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書におけるデータ取得部、生成部、出力部は、実施形態で述べたデータ取得機能、生成機能、出力機能によって実現する他にも、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0103】
また、上述した実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0104】
ここで、プロセッサによって実行される医用情報処理プログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、この医用情報処理プログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、この医用情報処理プログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることによって提供又は配布されてもよい。例えば、この医用情報処理プログラムは、上述した各処理機能を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体から医用情報処理プログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0105】
また、上述した実施形態及び変形例において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散又は統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0106】
また、上述した実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0107】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、個人差に対応した再生医療の提供を実現することができる。
【0108】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0109】
1 端末装置
3 医用情報処理装置
33 ディスプレイ
100 医療支援システム
352 データ取得機能
353 生成機能
354 出力機能

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8