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特開2024-99973温度センサ共用システム、二次電池保護集積回路、バッテリ装置及び温度検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099973
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】温度センサ共用システム、二次電池保護集積回路、バッテリ装置及び温度検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/00 20060101AFI20240719BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240719BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01K7/00 321G
H02J7/04 L
G01K1/14 L
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003638
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛史
(72)【発明者】
【氏名】竹下 順司
【テーマコード(参考)】
2F056
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2F056CL07
5G503BB01
5G503CB11
5G503CB13
5G503FA18
5H030AA01
5H030AS20
5H030FF22
(57)【要約】
【課題】複数の装置で温度センサを共用すること。
【解決手段】第1装置は、抵抗値又は電圧値である物理量が温度変化により変化する温度センサが接続される端子の端子電圧が第1電圧領域にあるか否かを判定し、前記端子電圧が前記第1電圧領域にあると判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定し、前記端子電圧が前記第1電圧領域にないと判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定することを解除し、前記端子電圧に基づいて温度を検出し、第2装置は、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域とは異なる第2電圧領域に設定し、前記端子電圧に基づいて温度を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗値又は電圧値である物理量が温度変化により変化する温度センサと、
前記温度センサが接続される端子と、
第1装置と、
第2装置と、
を備え、
前記第1装置は、
前記端子の端子電圧が第1電圧領域にあるか否かを判定する判定回路と、
前記端子電圧が前記第1電圧領域にあると前記判定回路により判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定し、前記端子電圧が前記第1電圧領域にないと前記判定回路により判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定することを解除する第1制御回路と、
前記端子電圧を検出する第1検出回路と、を含み、
前記第2装置は、
前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域とは異なる第2電圧領域に設定する第2制御回路と、
前記端子電圧を検出する第2検出回路と、を含む、温度センサ共用システム。
【請求項2】
前記第2制御回路は、前記端子電圧が前記物理量に変化に応じて変化する領域を前記第2電圧領域に設定することを、所定の第1時間よりも短い時間で解除する、請求項1に記載の温度センサ共用システム。
【請求項3】
前記第1検出回路は、前記第1電圧領域外の前記端子電圧または前記第1電圧領域に含まれる所定の領域外の前記端子電圧が前記第1時間継続して検出された場合、前記端子電圧が所定電圧範囲から外れたことを表す所定の信号をアサートする、請求項2に記載の温度センサ共用システム。
【請求項4】
前記第1装置は、
二次電池と、
前記二次電池に接続される電流経路に設けられるトランジスタと、を含み、
前記第1制御回路は、前記所定の信号がアサートされた場合、前記トランジスタを制御して前記電流経路を遮断する、請求項3に記載の温度センサ共用システム。
【請求項5】
前記判定回路は、前記端子電圧を第1閾値電圧と比較することで、前記端子電圧が前記第1電圧領域にあるか否かを判定し、
前記第1検出回路は、前記端子電圧を前記第1電圧領域に含まれる第2閾値電圧と比較することで、前記端子電圧が前記所定の領域外か否かを判定する、請求項3に記載の温度センサ共用システム。
【請求項6】
前記第1装置は、
第1基準電圧源を含み、
前記第1制御回路は、前記端子と前記第1基準電圧源との間の接続をオンにすることで、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定し、前記端子と前記第1基準電圧源との間の接続をオフにすることで、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定することを解除する、請求項1に記載の温度センサ共用システム。
【請求項7】
前記第2装置は、
第2基準電圧源を含み、
前記第2制御回路は、前記端子と前記第2基準電圧源との間の接続をオンにすることで、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第2電圧領域に設定し、前記端子と前記第2基準電圧源との間の接続をオフにすることで、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第2電圧領域に設定することを解除する、請求項1に記載の温度センサ共用システム。
【請求項8】
前記第1装置は、
第1基準電圧源を含み、
前記第1制御回路は、前記端子と前記第1基準電圧源との間の電気抵抗を第1抵抗値に設定することで、前記端子電圧が前記抵抗値の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定し、
前記第2装置は、
第2基準電圧源を含み、
前記第2制御回路は、前記端子と前記第2基準電圧源との間の電気抵抗を第2抵抗値に設定することで、前記端子電圧が前記抵抗値の変化に応じて変化する領域を前記第2電圧領域に設定する、請求項1から7のいずれか一項に記載の温度センサ共用システム。
【請求項9】
前記第1装置は、
第1基準電圧源を含み、
前記第1制御回路は、前記端子と前記第1基準電圧源との間に流れる電流を第1定電流値に設定することで、前記端子電圧が前記電圧値の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定し、
前記第2装置は、
第2基準電圧源を含み、
前記第2制御回路は、前記端子と前記第2基準電圧源との間に流れる電流を第2定電流値に設定することで、前記端子電圧が前記電圧値の変化に応じて変化する領域を前記第2電圧領域に設定する、請求項1から7のいずれか一項に記載の温度センサ共用システム。
【請求項10】
二次電池に接続される電流経路に設けられるトランジスタを制御することで、前記二次電池を保護する二次電池保護集積回路であって、
抵抗値又は電圧値である物理量が温度変化により変化する温度センサを接続可能な端子と、
前記端子の端子電圧が第1電圧領域にあるか否かを判定する判定回路と、
前記端子電圧が前記第1電圧領域にあると前記判定回路により判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定し、前記端子電圧が前記第1電圧領域にないと前記判定回路により判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定することを解除する制御回路と、
前記端子電圧を検出する検出回路と、を含む、二次電池保護集積回路。
【請求項11】
前記制御回路は、前記第1電圧領域外の前記端子電圧または前記第1電圧領域に含まれる所定の領域外の前記端子電圧が第1時間継続して検出された場合、前記トランジスタを制御して前記電流経路を遮断する、請求項10に記載の二次電池保護集積回路。
【請求項12】
前記制御回路は、前記第1電圧領域外の前記端子電圧または前記第1電圧領域に含まれる前記所定の領域外の前記端子電圧が前記第1時間継続して検出された場合、前記二次電池の充電異常または放電異常が検出されていなくても、前記トランジスタを制御して前記電流経路を遮断する、請求項11に記載の二次電池保護集積回路。
【請求項13】
二次電池と、
前記二次電池に接続される電流経路に設けられるトランジスタと、
抵抗値又は電圧値である物理量が温度変化により変化する温度センサと、
前記温度センサが接続される端子と、
前記端子の端子電圧が第1電圧領域にあるか否かを判定する判定回路と、
前記端子電圧が前記第1電圧領域にあると前記判定回路により判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定し、前記端子電圧が前記第1電圧領域にないと前記判定回路により判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定することを解除する制御回路と、
前記端子電圧を検出する検出回路と、を含む、バッテリ装置。
【請求項14】
第1装置は、
抵抗値又は電圧値である物理量が温度変化により変化する温度センサが接続される端子の端子電圧が第1電圧領域にあるか否かを判定し、
前記端子電圧が前記第1電圧領域にあると判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定し、前記端子電圧が前記第1電圧領域にないと判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定することを解除し、
前記端子電圧に基づいて温度を検出し、
第2装置は、
前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域とは異なる第2電圧領域に設定し、
前記端子電圧に基づいて温度を検出する、温度検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度センサ共用システム、二次電池保護集積回路、バッテリ装置及び温度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池パック内にNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタを設け、電池パックに接続される充電器等の外部機器へ信号を出力することで、外部機器による温度保護を行う技術が知られている(例えば、特許文献1の図2参照)。高温時にNTCサーミスタの抵抗値が減少するので、外部機器は、NTCサーミスタの抵抗値がある程度低下した場合には、温度が所定以上になったと判断して、電流を遮断して充電を停止する等の温度保護を行う。
【0003】
一方、外部機器が温度保護機能を持たない場合、電池パック内にNTCサーミスタを設け、電池パック自身で温度保護を行う技術が知られている(例えば、特許文献1の図1参照)。電池パック内の保護ICは、NTCサーミスタの抵抗値がある程度低下した場合、充電制御用FETをオフ状態として充電を停止する温度保護を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-100605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電池パック等の第1装置と充電器等の第2装置が温度検出機能をそれぞれ有する場合、NTCサーミスタのような温度センサを第1装置と第2装置とで個別に設けると、小型化やコストダウンが難しくなる。
【0006】
本開示は、複数の装置で温度センサを共用することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の温度センサ共用システムは、
抵抗値又は電圧値である物理量が温度変化により変化する温度センサと、
前記温度センサが接続される端子と、
第1装置と、
第2装置と、
を備え、
前記第1装置は、
前記端子の端子電圧が第1電圧領域にあるか否かを判定する判定回路と、
前記端子電圧が前記第1電圧領域にあると前記判定回路により判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定し、前記端子電圧が前記第1電圧領域にないと前記判定回路により判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定することを解除する第1制御回路と、
前記端子電圧を検出する第1検出回路と、を含み、
前記第2装置は、
前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域とは異なる第2電圧領域に設定する第2制御回路と、
前記端子電圧を検出する第2検出回路と、を含む。
【0008】
本開示の一態様の二次電池保護集積回路は、
二次電池に接続される電流経路に設けられるトランジスタを制御することで、前記二次電池を保護する二次電池保護集積回路であって、
抵抗値又は電圧値である物理量が温度変化により変化する温度センサを接続可能な端子と、
前記端子の端子電圧が第1電圧領域にあるか否かを判定する判定回路と、
前記端子電圧が前記第1電圧領域にあると前記判定回路により判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定し、前記端子電圧が前記第1電圧領域にないと前記判定回路により判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定することを解除する制御回路と、
前記端子電圧を検出する検出回路と、を含む。
【0009】
本開示の一態様のバッテリ装置は、
二次電池と、
前記二次電池に接続される電流経路に設けられるトランジスタと、
抵抗値又は電圧値である物理量が温度変化により変化する温度センサと、
前記温度センサが接続される端子と、
前記端子の端子電圧が第1電圧領域にあるか否かを判定する判定回路と、
前記端子電圧が前記第1電圧領域にあると前記判定回路により判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定し、前記端子電圧が前記第1電圧領域にないと前記判定回路により判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定することを解除する制御回路と、
前記端子電圧を検出する検出回路と、を含む。
【0010】
本開示の一態様の温度検出方法は、
第1装置は、
抵抗値又は電圧値である物理量が温度変化により変化する温度センサが接続される端子の端子電圧が第1電圧領域にあるか否かを判定し、
前記端子電圧が前記第1電圧領域にあると判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定し、前記端子電圧が前記第1電圧領域にないと判定された場合、前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域に設定することを解除し、
前記端子電圧に基づいて温度を検出し、
第2装置は、
前記端子電圧が前記物理量の変化に応じて変化する領域を前記第1電圧領域とは異なる第2電圧領域に設定し、
前記端子電圧に基づいて温度を検出する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、複数の装置で温度センサを共用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態における二次電池保護集積回路を含むシステムの一例を示す回路ブロック図である。
図2】端子電圧の挙動の一例を示すタイミングチャートである。
図3】電子機器内のPMICが温度をモニタするときの回路状態を例示する図である。
図4】バッテリ装置内の保護ICが温度をモニタするときの回路状態を例示する図である。
図5】第1電圧領域で変化する端子電圧と第2電圧領域で変化する端子電圧について温度をパラメータとして表した図である。
図6】判定回路と検出回路の構成例を示す図である。
図7】温度検出回路の動作波形の一例を示す図である。
図8】温度検出回路の動作波形の一例を示す図である。
図9】第2実施形態における二次電池保護集積回路を含むシステムの一例を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、第1実施形態における二次電池保護集積回路を含むシステムの一例を示す回路ブロック図である。図1に示すシステム100は、バッテリ装置200及び電子機器300を有する。例えば、電子機器300は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、イヤホンなどのポータブル機器である。なお、電子機器300は、バッテリ装置200が接続される機器であれば、ポータブル機器に限定されない。
【0015】
システム100は、温度センサ共用システムの一例であり、この例では、バッテリ装置200と電子機器300で温度検出素子204を共用する。バッテリ装置200は、第1装置の一例である。電子機器300は、第2装置の一例である。温度検出素子204は、温度センサの一例である。
【0016】
バッテリ装置200は、例えば、電子機器300内に着脱自在に収納される電池パックであり、電子機器300に接続された状態で電子機器300に電力を供給可能である。バッテリ装置200と電子機器300とは、図1に丸印で示す複数の端子(正側の電源端子(端子P+)、負側の電源端子(端子P-)及び温度検出端子(端子TH))を介して、相互に接続される。例えば、端子P+及び端子P-は、二次電池210を充電するときに、電子機器300の図示しないUSB(Universal Serial Bus)ポート等を介して充電器又は電源アダプタ等に接続される。電子機器300自体が充電器又は電源アダプタ等でもよい。
【0017】
バッテリ装置200は、二次電池210、スイッチ回路203、保護IC(Integrated Circuit)220、抵抗素子R21、R22、R23、コンデンサC21、C22及び温度検出素子204を有する。保護IC220は、二次電池210を保護する二次電池保護集積回路の一例である。
【0018】
二次電池210は、充電が可能なリチウムイオン電池又はリチウムポリマ電池などである。二次電池210は、正極211と負極212を有する。二次電池210は、端子P+と端子P-に接続される電子機器300に電力を供給する。
【0019】
正極211と端子P+とは、正側の電流経路である電源線201によって接続されている。電源線201は、正極211と端子P+との間を接続する電源経路である。電源線201は、二次電池210の充電電流が流れる充電経路及び二次電池210の放電電流が流れる放電経路として機能する。
【0020】
負極212と端子P-とは、負側の電流経路である接地線202によって接続されている。接地線202は、負極212と端子P-との間を接続する電源経路である。接地線202は、二次電池210の充電電流が流れる充電経路及び二次電池210の放電電流が流れる放電経路として機能する。
【0021】
スイッチ回路203は、負極212と端子P-との間の接地線202に設けられている。スイッチ回路203は、例えば、充電制御トランジスタTR1と放電制御トランジスタTR2を備え、充電制御トランジスタTR1と放電制御トランジスタTR2が直列に接続された直列回路である。充電制御トランジスタTR1は、二次電池210の充電経路を遮断する半導体スイッチング素子である。放電制御トランジスタTR2は、二次電池210の放電経路を遮断する半導体スイッチング素子である。
【0022】
図1の場合、充電制御トランジスタTR1は、二次電池210の充電電流が流れる接地線202を遮断し、放電制御トランジスタTR2は、二次電池210の放電電流が流れる接地線202を遮断する。充電制御トランジスタTR1及び放電制御トランジスタTR2は、接地線202を導通するか遮断するか切り替えるスイッチング素子であり、接地線202に直列に挿入されている。充電制御トランジスタTR1及び放電制御トランジスタTR2は、例えば、Nチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0023】
充電制御トランジスタTR1は、ドレインとソースとの間に、二次電池210の充電電流の向きとは逆の向きを順方向とする寄生ダイオードD1を有する。充電制御トランジスタTR1は、寄生ダイオードD1の順方向が二次電池210の放電電流の流れる方向に一致するように接地線202に直列に挿入されたスイッチ素子である。
【0024】
放電制御トランジスタTR2は、ドレインとソースとの間に、二次電池210の放電電流の向きとは逆の向きを順方向とする寄生ダイオードD2を有する。放電制御トランジスタTR2は、寄生ダイオードD2の順方向が二次電池210の充電電流の流れる方向に一致するように接地線202に直列に挿入されたスイッチ素子である。
【0025】
保護IC220は、二次電池保護集積回路の一例である。保護IC220は、二次電池210を電源として動作する。
【0026】
保護IC220は、スイッチ回路203を制御することによって、二次電池210を過放電等から保護する機能を有する。例えば、保護IC220は、充電異常(例えば、過充電、充電方向の過電流(充電過電流)など)が検出回路222により検出された場合、充電制御トランジスタTR1をオフにすることによって、二次電池210を充電異常から保護する。一方、保護IC220は、放電異常(例えば、過放電、放電方向の過電流(放電過電流)など)が検出回路222により検出された場合、放電制御トランジスタTR2をオフにすることによって、二次電池210を放電異常から保護する。
【0027】
保護IC220は、スイッチ回路203を制御することによって、二次電池210を温度異常から保護する機能を有する。例えば、保護IC220は、温度異常(例えば、異常高温又は異常低温)が検出回路222により検出された場合、充電制御トランジスタTR1をオフすることによって、異常高温又は異常低温の状態で二次電池210に流れる充電電流を遮断できる。例えば、保護IC220は、温度異常(例えば、異常高温又は異常低温)が検出回路222により検出された場合、放電制御トランジスタTR2をオフすることによって、異常高温又は異常低温の状態で二次電池210に流れる放電電流を遮断できる。
【0028】
保護IC220は、例えば、充電制御端子(端子COUT)、放電制御端子(端子DOUT)、監視端子(端子VM)、電源端子(端子VDD)、グランド端子(端子VSS)、電流検出端子(端子CS)及び温度検出端子(端子THA)を備える。これらの端子は、保護IC220の内部回路を保護IC220の外部と接続するための外部接続端子である。
【0029】
端子COUTは、充電制御トランジスタTR1のゲート(制御電極)に接続され、充電制御トランジスタTR1をオン又はオフさせる信号を出力する。端子DOUTは、放電制御トランジスタTR2のゲート(制御電極)に接続され、放電制御トランジスタTR2をオン又はオフさせる信号を出力する。
【0030】
端子VMは、端子P-の電位の監視に使用され、端子P-に接続されている。端子VMは、例えば、保護IC220内の検出回路222が電子機器300又は充電器の接続の有無を監視するのに使用される。端子VMは、スイッチ回路203と端子P-との間において接地線202に抵抗素子R23を介して接続されている。
【0031】
端子VDDは、保護IC220の電源端子であり、二次電池210の正極211及び電源線201に抵抗素子R21を介して接続されている。端子VSSは、保護IC220のグランド端子であり、二次電池210の負極212に接続されている。コンデンサC21は、端子VDDと端子VSSとの間に接続されている。端子VSSは、スイッチ回路203と負極212との間において接地線202に接続されている。この例では、端子VSSは、抵抗素子R22と負極212との間において接地線202に接続されている。
【0032】
端子CSは、抵抗素子R22とスイッチ回路203(放電制御トランジスタTR2のソース)とを接続する接続ノードND1に接続される。また、端子CSは、コンデンサC22を介して端子VSSに接続される。抵抗素子R22は、接地線202に直列に挿入されている。抵抗素子R22は、一端が端子VSSに接続され、他端が端子CSに接続されている。保護IC220は、端子VSSと端子CSとの間の電位差を検出することで、二次電池210に流れる充電過電流又は放電過電流を検出できる。抵抗素子R22は、二次電池210に流れる電流を検出するセンス抵抗として機能する。
【0033】
端子THAは、温度検出用の端子の一例であり、抵抗素子R1と温度検出素子204との間に設けられる。抵抗素子R1は、第1抵抗値(例えば、100kΩ)を有する。抵抗素子R1及び温度検出素子204は、基準電圧源224と接地線202との間に直列に接続される。抵抗素子R1の一端は、端子THAに接続され、抵抗素子R1の端子THAと反対側の他端は、基準電圧源224に接続される。図1の例では、スイッチ225が抵抗素子R1と基準電圧源224との間に介在するので、抵抗素子R1の端子THAと反対側の他端は、スイッチ225を介して基準電圧源224に接続されている。しかし、スイッチ225と抵抗素子R1の配置位置は、互いに置換されてもよい。
【0034】
基準電圧源224は、一定の基準電圧Vrefを生成する回路である。基準電圧源224は、例えば、バンドギャップリファレンス電圧(約1.25ボルト)を分圧することより、一定の基準電圧Vref(例えば、0.5ボルト)を生成する。基準電圧源224は、第1基準電圧源の一例である。
【0035】
温度検出素子204は、一方の端部が端子TH及び端子THAに接続され、他方の端部がスイッチ回路203と端子P-との間で接地線202に接続されている。温度検出素子204は、抵抗値又は電圧値である物理量が温度変化により変化する感温素子である。温度検出素子204は、バッテリ装置200内の二次電池210の周囲温度を検出する。温度検出素子204は、例えば、NTCサーミスタである。NTCサーミスタは、自己の温度によってその抵抗値が負の温度特性で変化する測温抵抗体である。温度検出素子204は、抵抗値又は電圧値である物理量が温度変化により変化するセンサであれば、NTCサーミスタ以外のセンサでもよい。
【0036】
保護IC220は、基準電圧源224、検出回路222、制御回路221及び判定回路223を含む。検出回路222は、第1検出回路の一例である。制御回路221は、第1制御回路の一例である。
【0037】
検出回路222は、端子VDDと端子VSSとの間の電源電圧を監視することで二次電池210の過充電を検出するとともに、端子VSSと端子CSとの電位差を監視することで二次電池210の充電過電流を検出する。
【0038】
制御回路221は、二次電池210の過充電又は充電過電流が所定の検出遅延時間継続して検出回路222により検出された場合、充電制御トランジスタTR1をオンからオフに切り替える信号(例えば、ローレベルのゲート制御信号)を端子COUTから出力する。制御回路221は、充電制御トランジスタTR1をオフにすることによって、二次電池210を充電する方向の電流が接地線202に流れることを禁止する。これにより、二次電池210の充電が停止するので、保護IC220は、二次電池210を過充電又は充電過電流から保護できる。
【0039】
検出回路222は、端子VDDと端子VSSとの間の電源電圧を監視することで二次電池210の過放電を検出するとともに、端子VSSと端子CSとの電位差を監視することで二次電池210の放電過電流を検出する。
【0040】
制御回路221は、二次電池210の過放電又は放電過電流が所定の検出遅延時間継続して検出回路222により検出された場合、放電制御トランジスタTR2をオンからオフに切り替える信号(例えば、ローレベルのゲート制御信号)を端子DOUTから出力する。制御回路221は、放電制御トランジスタTR2をオフにすることによって、二次電池210を放電させる方向の電流が接地線202に流れることを禁止する。これにより、二次電池210の放電が停止するので、保護IC220は、二次電池210を過放電又は放電過電流から保護できる。
【0041】
判定回路223は、端子THAの端子電圧Vaが第1電圧領域(以下、第1電圧領域A1とも称する)にあるか否かを判定する。
【0042】
制御回路221は、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にあると判定回路223により判定された場合、スイッチ225をオンにすることによって、端子THAを基準電圧源224に抵抗素子R1を介してプルアップする。一方、制御回路221は、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にないと判定回路223により判定された場合、スイッチ225をオフにすることによって、端子THAを基準電圧源224に抵抗素子R1を介してプルアップすることを解除する。
【0043】
検出回路222は、抵抗素子R1を含む。検出回路222は、端子THAを基準電圧源224にプルアップする抵抗素子R1を用いて、端子THAの端子電圧Vaを検出する。検出回路222は、所定の第1電圧範囲を超える端子電圧Vaが所定の温度検出遅延時間継続して検出された場合、所定の信号Sをアサートする。信号Sのアサートは、端子電圧Vaが所定の第1電圧範囲から外れたこと(つまり、端子電圧Vaに対応する温度が所定の第1温度範囲から外れたこと)を表す。
【0044】
制御回路221は、所定の信号Sがアサートされた場合、充電制御トランジスタTR1と放電制御トランジスタTR2の一方又は両方をオフにすることで接地線202を遮断する。これにより、異常高温又は異常低温の状態で二次電池210に流れる電流が遮断されるので、保護IC220は、バッテリ装置200及び二次電池210を温度異常から保護できる。
【0045】
電子機器300は、抵抗素子R2とPMIC(Power Management IC)310を備える。PMIC310は、電源端子(端子VD)、グランド端子(端子GND)、電圧出力端子(端子VREG)及び温度モニタ端子(端子THB)を備える集積回路である。これらの端子は、PMIC310の内部回路をPMIC310の外部と接続するための外部接続端子である。端子VREGまたは端子THBは、汎用入出力端子でもよい。
【0046】
端子VDは、端子P+に電源線301を介して接続されている。端子GNDは、端子P-に接地線302を介して接続されている。PMIC310は、電源線301及び接地線302を介して、端子VDと端子GNDとの間に印加される電源電圧を受けて動作する。
【0047】
端子THBは、端子THに接続されている。端子THBは、端子THを介して、端子THA及び温度検出素子204に接続されている。
【0048】
抵抗素子R2の一端は、端子TH及び端子THBに接続され、抵抗素子R2の他端は、端子VREGに接続されている。抵抗素子R2の一端は、端子THを介して、端子THA及び温度検出素子204に接続されている。抵抗素子R2は、第1抵抗値よりも低い第2抵抗値(例えば、10kΩ)を有する。
【0049】
PMIC310は、制御回路314及び検出回路315を含む。制御回路314は、第2制御回路の一例である。検出回路315は、第2検出回路の一例である。
【0050】
制御回路314は、バッテリ装置200の温度をモニタする場合、端子VREGのレベルをアクティブレベル(この例では、ハイレベル)に設定する。例えば、制御回路314は、バッファ313をオンすることによって、基準電圧源312により生成される一定の基準電圧Vregを端子VREGに出力し、端子VREGをハイレベルに設定する。一方、制御回路314は、バッテリ装置200の温度のモニタを停止する場合、端子VREGをハイインピーダンスに設定する。例えば、制御回路314は、バッファ313をオフにすることによって、端子VREGへの基準電圧Vregの出力を停止し、端子VREGをハイインピーダンスに設定する。
【0051】
基準電圧源312は、一定の基準電圧Vregを生成する回路である。基準電圧源312は、例えば、基準電圧Vrefよりも電圧値が高い一定の基準電圧Vreg(例えば、3.3ボルト)を生成する。基準電圧源312は、第2基準電圧源の一例である。
【0052】
検出回路315は、端子TH及び端子THBを基準電圧源312にプルアップする抵抗素子R2を用いて、端子TH及び端子THBを介して入力される端子電圧Vaを検出する。制御回路314は、端子VREGのレベルをアクティブレベル(この例では、ハイレベル)に設定している期間に検出回路315により検出される端子電圧Vaに基づいて、バッテリ装置200の温度を検出する。検出回路315は、例えば、端子THBから入力されるアナログの端子電圧Vaをデジタル値に変換するADC(Analog to Digital Converter)311を含む。制御回路314は、端子VREGのレベルをアクティブレベル(この例では、ハイレベル)に設定している期間にADC311により検出される端子電圧Vaのデジタル値に基づいて、バッテリ装置200の温度を検出する。
【0053】
例えば、制御回路314は、検出回路315により検出された端子電圧Vaが所定の第2電圧範囲内にある場合、充電器がバッテリ装置200内の二次電池210を充電することを許可する。これにより、PMIC310は、充電器が適正な温度環境下でバッテリ装置200内の二次電池210を充電することを許可できる。一方、制御回路314は、検出回路315により検出された端子電圧Vaが所定の第2電圧範囲外にある場合、充電器がバッテリ装置200内の二次電池210を充電することを禁止する。これにより、PMIC310は、充電器が不適正な温度環境下でバッテリ装置200内の二次電池210を充電することを禁止できる。
【0054】
次に、電子機器300(PMIC310)とバッテリ装置200(保護IC220)が共通の温度検出素子204を用いて温度を検出する動作について、より詳細に説明する。
【0055】
図1に示す第1実施形態では、電子機器300内の制御回路314は、バッテリ装置200の温度をモニタする場合、端子THAと基準電圧源312との間の接続をバッファ313によりオンにする。この例では、制御回路314は、バッファ313をオンすることによって、端子VREGのレベルをアクティブレベル(この例では、ハイレベル)に設定する。バッファ313のオンにより、抵抗素子R2が有効化される。このように、制御回路314は、バッファ313をオンにすることで、端子電圧Vaが温度検出素子204の抵抗値の変化に応じて変化する領域を、上記の第1電圧領域A1とは異なる第2電圧領域A2に設定する(図2参照)。
【0056】
端子電圧Vaが温度検出素子204の抵抗値の変化に応じて変化する領域が第2電圧領域A2に設定されると、端子電圧Vaは第2電圧領域A2に遷移するので、バッテリ装置200内の判定回路223は、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にないと判定する。バッテリ装置200内の制御回路221は、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にないと判定回路223により判定された場合、スイッチ225をオフにする。制御回路221は、スイッチ225をオフにすることによって、端子THAを基準電圧源224に抵抗素子R1を介してプルアップすることを解除する(図3参照)。スイッチ225のオフにより、抵抗素子R1は、無効化される。このように、制御回路221は、端子THAと基準電圧源224との間の接続をスイッチ225によりオフにすることで、端子電圧Vaが温度検出素子204の抵抗値の変化に応じて変化する領域を第1電圧領域A1に設定することを解除する。したがって、図3に示すように、検出回路315は、抵抗素子R1の抵抗値に影響されずに、基準電圧Vregを抵抗素子R2と温度検出素子204により抵抗分圧された電圧を端子電圧Vaとして検出できる。
【0057】
次に、電子機器300内の制御回路314は、バッテリ装置200の温度のモニタを停止する場合、端子THAと基準電圧源312との間の接続をバッファ313によりオフにする。この例では、制御回路314は、バッファ313をオフすることによって、端子VREGをハイインピーダンスに設定する(図2参照)。端子VREGがハイインピーダンスに設定されることで、抵抗素子R2は無効化されるので、端子電圧Vaは、第2電圧領域A2から第1電圧領域A1に遷移する(図2参照)。このように、制御回路314は、バッファ313をオフにすることで、端子電圧Vaが温度検出素子204の抵抗値の変化に応じて変化する領域を、第2電圧領域A2に設定することを解除する。
【0058】
端子電圧Vaが第1電圧領域A1に遷移すると、バッテリ装置200内の判定回路223は、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にあると判定する。バッテリ装置200内の制御回路221は、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にあると判定回路223により判定された場合、スイッチ225をオンにする。制御回路221は、スイッチ225をオンにすることによって、端子THAを基準電圧源224に抵抗素子R1を介してプルアップする(図4参照)。スイッチ225のオンにより、抵抗素子R1は、有効化される。このように、制御回路221は、端子THAと基準電圧源224との間の接続をスイッチ225によりオンにすることで、端子電圧Vaが温度検出素子204の抵抗値の変化に応じて変化する領域を第1電圧領域A1に設定する。したがって、図4に示すように、検出回路222は、抵抗素子R2の抵抗値に影響されずに、基準電圧Vrefを抵抗素子R1と温度検出素子204により抵抗分圧された電圧を端子電圧Vaとして検出できる。
【0059】
このように、図1に示す第1実施形態によれば、電子機器300(PMIC310)とバッテリ装置200(保護IC220)で温度検出素子204を温度検出のために共用できる。
【0060】
第1実施形態では、バッテリ装置200内の制御回路221は、端子THAと基準電圧源224との間の電気抵抗を第1抵抗値に抵抗素子R1により設定する。制御回路221は、端子THAと基準電圧源224との間の電気抵抗を第1抵抗値に設定することで、端子電圧Vaが温度検出素子204の抵抗値の変化に応じて変化する領域を第1電圧領域A1に設定する。一方、電子機器300内の制御回路314は、端子THAと基準電圧源312との間の電気抵抗を第2抵抗値に抵抗素子R2により設定する。制御回路314は、端子THAと基準電圧源312との間の電気抵抗を第2抵抗値に設定することで、端子電圧Vaが温度検出素子204の抵抗値の変化に応じて変化する領域を第2電圧領域A2に設定する。
【0061】
図2に示すように、電子機器300の制御回路314は、例えば、端子電圧Vaが温度検出素子204の抵抗値の変化に応じて変化する領域を第2電圧領域A2に設定することを、保護IC220の上記の温度検出遅延時間よりも短い時間で解除する。これにより、バッテリ装置200において、所定の第1電圧範囲を超える端子電圧Vaが所定の温度検出遅延時間継続して検出回路222により検出されないので、検出回路222が所定の信号Sを誤ってアサートすることを防止できる。温度検出遅延時間は、所定の第1時間の一例であり、この例では、保護IC220の検出回路222に予め設定されている。
【0062】
検出回路222は、第1電圧領域A1外の端子電圧Vaまたは第1電圧領域A1に含まれる所定の領域A3外の端子電圧Vaが所定の温度検出遅延時間継続して検出された場合、所定の信号Sをアサートする。これにより、端子電圧Vaが所定の第1電圧範囲から外れた場合、検出回路222は、所定の温度検出遅延時間を経過してから速やかに所定の信号Sをアサートできる。
【0063】
領域A3は、図2に示すように、閾値電圧Vth2と閾値電圧Vth3との間に挟まれた電圧範囲である。閾値電圧Vth2と閾値電圧Vth3は、第1電圧領域A1に含まれている。閾値電圧Vth2は、保護IC220が二次電池210に流れる電流を遮断する時の最低閾値温度(異常低温)に対応する上限電圧でもよい。閾値電圧Vth3は、保護IC220が二次電池210に流れる電流を遮断する時の最高閾値温度(異常高温)に対応する下限電圧でもよい。領域A3は、電流が二次電池210に流れることを保護IC220が許容する温度範囲に対応する電圧範囲でもよい。
【0064】
制御回路221は、第1電圧領域A1外の端子電圧Vaまたは第1電圧領域A1に含まれる所定の領域A3外の端子電圧Vaが所定の温度検出遅延時間継続して検出された場合(所定の信号Sがアサートされた場合)、スイッチ回路203(図1参照)を制御する。例えば、制御回路221は、スイッチ回路203内の充電制御トランジスタTR1と放電制御トランジスタTR2の一方又は両方をオフにすることで接地線202を遮断する。これにより、保護IC220は、バッテリ装置200及び二次電池210を温度異常から保護できる。
【0065】
制御回路221は、所定の信号Sがアサートされた場合、二次電池210の充電異常または放電異常が検出されていなくても、スイッチ回路203を制御することで接地線202を遮断してもよい。これにより、二次電池210の充電異常または放電異常が検出されていなくても温度異常が検出されていれば、保護IC220は、バッテリ装置200及び二次電池210を温度異常から保護できる。
【0066】
図5は、第1電圧領域A1で変化する端子電圧Vaと第2電圧領域A2で変化する端子電圧Vaについて温度をパラメータとして表した図である。判定回路223は、例えば、端子電圧Vaを閾値電圧Vth1と比較することで、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にあるか否かを判定する。この場合、判定回路223は、閾値電圧Vth1よりも低い端子電圧Vaが検出された場合、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にあると判定する。一方、判定回路223は、閾値電圧Vth1よりも高い端子電圧Vaが検出された場合、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にないと判定する(端子電圧Vaが第2電圧領域A2にあると判定してもよい)。なお、閾値電圧Vth1は、第1閾値電圧の一例である。
【0067】
検出回路222は、端子電圧Vaを閾値電圧Vth2または閾値電圧Vth3と比較することで、端子電圧Vaが所定の領域A3外か否かを判定する。この場合、判定回路223は、閾値電圧Vth3よりも低い又は閾値電圧Vth2よりも高い端子電圧Vaが検出された場合、端子電圧Vaが領域A3外にあると判定する。閾値電圧Vth3よりも低い端子電圧Vaは、最高閾値温度tha2よりも高い温度が温度検出素子204により検出されている状態を表す。閾値電圧Vth2よりも高い端子電圧Vaは、最低閾値温度tha1よりも低い温度が温度検出素子204により検出されている状態を表す。一方、判定回路223は、閾値電圧Vth3よりも高く且つ閾値電圧Vth2よりも低い端子電圧Vaが検出された場合、端子電圧Vaが領域A3内にあると判定する。閾値電圧Vth3よりも高く且つ閾値電圧Vth2よりも低い端子電圧Vaは、最低閾値温度tha1よりも高く最高閾値温度tha2よりも低い温度が温度検出素子204により検出されている状態を表す。なお、閾値電圧Vth2または閾値電圧Vth3は、第2閾値電圧の一例である。
【0068】
図6は、判定回路223と検出回路222の構成例を示す図である。図6に例示する判定回路223は、端子電圧Vaを閾値電圧Vth1と比較することで端子電圧Vaが第1電圧領域A1にあるか否かを判定する。図6に例示する検出回路222は、端子電圧Vaを閾値電圧Vth2および閾値電圧Vth3と比較することで、端子電圧Vaが所定の領域A3外か否かを判定する。
【0069】
図6において、判定回路223は、端子電圧Vaを一定の閾値電圧Vth1と比較する比較器226と、一定の閾値電圧Vth1を生成する閾値電圧源227と、を含む。比較器226は、端子電圧Vaが閾値電圧Vth1よりも低い場合、スイッチ225をオンする信号を出力し、端子電圧Vaが閾値電圧Vth1よりも高い場合、スイッチ225をオフする信号を出力する。閾値電圧源227は、例えば、バンドギャップリファレンス電圧(約1.25ボルト)を分圧することより、一定の閾値電圧Vth1(例えば、0.6ボルト)を生成する。
【0070】
図6において、検出回路222は、温度検出回路238及び温度検出回路239を含む。温度検出回路238は、端子THAを基準電圧源224にプルアップする抵抗素子R1を用いて、閾値電圧Vth2よりも高い端子電圧Vaに対応する異常低温を検出する回路である。温度検出回路239は、端子THAを基準電圧源224にプルアップする抵抗素子R1を用いて、閾値電圧Vth3よりも低い端子電圧Vaに対応する異常高温を検出する回路である。
【0071】
温度検出回路238は、閾値電圧源230、比較器231,遅延回路232及び論理積回路233を含む。閾値電圧源230は、例えば、バンドギャップリファレンス電圧(約1.25ボルト)を分圧することより、最低閾値温度tha1に対応する一定の閾値電圧Vth2(例えば、0.4ボルト)を生成する。比較器231は、端子電圧Vaを一定の閾値電圧Vth2と比較する。比較器231は、端子電圧Vaが閾値電圧Vth2よりも低い場合、ローレベルの信号Vbを出力し、端子電圧Vaが閾値電圧Vth2よりも高い場合、ハイレベルの信号Vbを出力する。遅延回路232は、信号Vbを上記の温度検出遅延時間だけ遅延させた信号Vdを出力する。論理積回路233は、信号Vbと信号Vdとの論理積である信号S1を出力する。信号S1は、上記の所定の信号Sの一例である。
【0072】
温度検出回路239は、閾値電圧源237、比較器234,遅延回路235及び論理積回路236を含む。閾値電圧源237は、例えば、バンドギャップリファレンス電圧(約1.25ボルト)を分圧することより、最高閾値温度tha2に対応する一定の閾値電圧Vth3(例えば、0.1ボルト)を生成する。比較器234は、端子電圧Vaを一定の閾値電圧Vth3と比較する。比較器234は、端子電圧Vaが閾値電圧Vth3よりも低い場合、ハイレベルの信号Vcを出力し、端子電圧Vaが閾値電圧Vth3よりも高い場合、ローレベルの信号Vcを出力する。遅延回路235は、信号Vcを上記の温度検出遅延時間だけ遅延させた信号Veを出力する。論理積回路236は、信号Vcと信号Veとの論理積である信号S2を出力する。信号S2は、上記の所定の信号Sの一例である。
【0073】
図7は、温度検出回路238及び温度検出回路239の動作波形(端子電圧Vaが変化する領域を第2電圧領域A2に設定することを温度検出遅延時間よりも短い時間で電子機器300により解除される場合)の一例を示すタイミングチャートである。この場合、比較器231から出力される信号Vb(又は、比較器234から出力される信号Vc)がハイレベルとなる時間は、温度検出遅延時間よりも短くなるため、信号S1(又は、信号S2)はアサートされない。このように、温度検出回路238(又は、温度検出回路239)は、端子電圧Vaが変化する領域を第2電圧領域A2に設定することが温度検出遅延時間よりも短い時間で解除されれば、信号S1又は信号S2を誤ってアサートしない。
【0074】
図8は、温度検出回路238及び温度検出回路239の動作波形(端子電圧Vaが変化する領域を第2電圧領域A2に設定することを温度検出遅延時間よりも長い時間で電子機器300により解除される場合)の一例を示すタイミングチャートである。この場合、比較器231から出力される信号Vb(又は、比較器234から出力される信号Vc)がハイレベルとなる時間は、温度検出遅延時間よりも長くなるため、信号S1(又は、信号S2)は、アサートされる。このように、温度検出回路238(又は、温度検出回路239)は、端子電圧Vaが変化する領域を第2電圧領域A2に設定することが温度検出遅延時間よりも長ければ、信号S1又は信号S2をアサートする。これにより、検出回路222は、何らかの異常があることを制御回路221に通知できる。
【0075】
図9は、第2実施形態における二次電池保護集積回路を含むシステムの一例を示す回路ブロック図である。第2実施形態において、上述の実施形態と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。第2実施形態は、温度検出素子204が電源線201と端子THAとの間に接続される点で、第1実施形態と相違する。
【0076】
第2実施形態におけるシステム102は、バッテリ装置251及び電子機器351を有する。システム102は、温度センサ共用システムの一例であり、この例では、バッテリ装置251と電子機器351で温度検出素子204を共用する。
【0077】
制御回路221は、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にあると判定回路223により判定された場合、スイッチ225をオンにすることによって、端子THAを基準電圧源224に抵抗素子R1を介してプルダウンする。一方、制御回路221は、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にないと判定回路223により判定された場合、スイッチ225をオフにすることによって、端子THAを基準電圧源224に抵抗素子R1を介してプルダウンすることを解除する。第2実施形態では、基準電圧源224は、端子VSSと同じ電位である。
【0078】
バッテリ装置251内の検出回路222は、抵抗素子R1を含む。検出回路222は、端子THAを基準電圧源224にプルダウンする抵抗素子R1を用いて、端子THAの端子電圧Vaを検出する。一方、電子機器351内の検出回路315は、端子TH及び端子THBを基準電圧源312にプルダウンする抵抗素子R2を用いて、端子TH及び端子THBを介して入力される端子電圧Vaを検出する。第2実施形態では、基準電圧源312は、端子GNDと同じ電位である。
【0079】
図9に示す第2実施形態では、電子機器351内の制御回路314は、バッテリ装置251の温度をモニタする場合、端子THAと基準電圧源312との間の接続をバッファ313によりオンにする。この例では、制御回路314は、バッファ313をオンすることによって、端子VREGのレベルをアクティブレベル(この例では、ローレベル)に設定する。バッファ313のオンにより、抵抗素子R2が有効化される。このように、制御回路314は、バッファ313をオンにすることで、端子電圧Vaが温度検出素子204の抵抗値の変化に応じて変化する領域を、第1電圧領域A1とは異なる第2電圧領域A2に設定する。
【0080】
端子電圧Vaが温度検出素子204の抵抗値の変化に応じて変化する領域が第2電圧領域A2に設定されると、端子電圧Vaは第2電圧領域A2に遷移するので、バッテリ装置251内の判定回路223は、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にないと判定する。バッテリ装置251内の制御回路221は、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にないと判定回路223により判定された場合、スイッチ225をオフにする。制御回路221は、スイッチ225をオフにすることによって、端子THAを基準電圧源224に抵抗素子R1を介して接続することを解除する。スイッチ225のオフにより、抵抗素子R1は、無効化される。このように、制御回路221は、端子THAと基準電圧源224との間の接続をスイッチ225によりオフにすることで、端子電圧Vaが温度検出素子204の電圧値の変化に応じて変化する領域を第1電圧領域A1に設定することを解除する。したがって、検出回路315は、抵抗素子R1の抵抗値に影響されずに、端子VDと端子GNDとの間の電源電圧を抵抗素子R2と温度検出素子204により抵抗分圧された電圧を端子電圧Vaとして検出できる。
【0081】
次に、電子機器351内の制御回路314は、バッテリ装置251の温度のモニタを停止する場合、端子THAと基準電圧源312との間の接続をバッファ313によりオフにする。この例では、制御回路314は、バッファ313をオフすることによって、端子VREGをハイインピーダンスに設定する。端子VREGがハイインピーダンスに設定されることで、抵抗素子R2は無効化されるので、端子電圧Vaは、第2電圧領域A2から第1電圧領域A1に遷移する。このように、制御回路314は、バッファ313をオフにすることで、端子電圧Vaが温度検出素子204の抵抗値の変化に応じて変化する領域を、第2電圧領域A2に設定することを解除する。
【0082】
端子電圧Vaが第1電圧領域A1に遷移すると、バッテリ装置251内の判定回路223は、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にあると判定する。バッテリ装置251内の制御回路221は、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にあると判定回路223により判定された場合、スイッチ225をオンにする。制御回路221は、スイッチ225をオンにすることによって、端子THAを基準電圧源224に抵抗素子R1を介してプルダウンする。スイッチ225のオンにより、抵抗素子R1は、有効化される。このように、制御回路221は、端子THAと基準電圧源224との間の接続をスイッチ225によりオンにすることで、端子電圧Vaが温度検出素子204の抵抗値の変化に応じて変化する領域を第1電圧領域A1に設定する。したがって、検出回路222は、抵抗素子R2の抵抗値に影響されずに、電源線201と端子VSSとの間の電源電圧を抵抗素子R1と温度検出素子204により抵抗分圧された電圧を端子電圧Vaとして検出できる。
【0083】
このように、図9に示す第2実施形態によれば、電子機器351(PMIC310)とバッテリ装置251(保護IC220)で温度検出素子204を温度検出のために共用できる。
【0084】
なお、第1実施形態及び第2実施形態における抵抗素子R1及び抵抗素子R2は、定電流源に置換されてもよく、抵抗値が温度変化により変化する温度検出素子204は、電圧値が温度変化により変化する温度検出素子204に置換されてもよい。
【0085】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0086】
例えば、充電制御トランジスタTR1と放電制御トランジスタTR2の配置位置は、図示の位置に対して互いに置換されてもよい。
【0087】
また、本開示の技術は、充電制御トランジスタTR1及び放電制御トランジスタTR2が接地線202に挿入された形態に適用する場合に限られず、充電制御トランジスタTR1及び放電制御トランジスタTR2が電源線201に挿入された形態にも適用できる。
【0088】
また、上記の実施形態では、バッテリ装置(保護IC)は、抵抗値又は電圧値である物理量が温度変化により変化する温度センサが接続される端子の端子電圧Vaが第1電圧領域A1にあるか否かを判定し、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にあると判定された場合、端子電圧Vaが当該物理量の変化に応じて変化する領域を第1電圧領域A1に設定し、端子電圧Vaが第1電圧領域A1にないと判定された場合、端子電圧Vaが当該物理量の変化に応じて変化する領域を第1電圧領域A1に設定することを解除し、端子電圧Vaに基づいて温度を検出する、という第1温度検出機能を有する。電子機器は、端子電圧Vaが当該物理量の変化に応じて変化する領域を第1電圧領域A1とは異なる第2電圧領域A2に設定し、端子電圧Vaに基づいて温度を検出するという第2温度検出機能を有する。しかし、バッテリ装置(保護IC)が第2温度検出機能を有し、電子機器が第1温度検出機能を有してもよい。
【0089】
また、第2電圧領域A2は、第1電圧領域A1よりも電圧値が高い領域に限られず、第1電圧領域A1よりも電圧値が低い領域でもよい。
【0090】
バッファ313は、スイッチに置換されてもよい。スイッチ225は、バッファに置換されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
100 システム
200 バッテリ装置
201 電源線
202 接地線
203 スイッチ回路
204 温度検出素子
210 二次電池
211 正極
212 負極
220 保護IC
221 制御回路
222 検出回路
223 判定回路
224 基準電圧源
225 スイッチ
251 バッテリ装置
300 電子機器
301 電源線
302 接地線
310 PMIC
311 ADC
312 基準電圧源
313 バッファ
314 制御回路
315 検出回路
351 電子機器
TR1 充電制御トランジスタ
TR2 放電制御トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9