(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099980
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】膜厚制御装置
(51)【国際特許分類】
B21D 43/00 20060101AFI20240719BHJP
C23G 5/04 20060101ALI20240719BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B21D43/00 J
C23G5/04
B30B15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003646
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】591033010
【氏名又は名称】株式会社小矢部精機
(74)【代理人】
【識別番号】100210295
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 誠心
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正道
(72)【発明者】
【氏名】砂 博信
(72)【発明者】
【氏名】玉井 涼二
(72)【発明者】
【氏名】高長 昌志
【テーマコード(参考)】
4E088
4K053
【Fターム(参考)】
4E088FA01
4E088FA07
4K053PA02
4K053PA13
4K053QA05
4K053XA41
4K053XA50
(57)【要約】
【課題】組立作業・メンテナンス作業が容易で、かつ、油の膜厚の緻密な調節が可能な膜厚制御装置を提供すること。
【解決手段】膜厚制御装置1は、周面の接触でブランク材10の表面の余分な油を拭き取るロール2と、配管4を介してロール2で拭き取られた油を吸引する真空ポンプ3とを有し、配管4は、途中で主管5と枝管6とに分岐し、主管5にのみ吸引された油が流れ、枝管6に外気導入手段7が設けられている。外気導入手段7は、枝管6からの外気導入によって、配管4の真空度及び油の流量を調節できるようになっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面の接触でブランク材の表面の余分な油を拭き取るロールと、
配管を介してロールで拭き取られた油を吸引する真空ポンプとを有し、
配管は、途中で主管と枝管とに分岐し、
主管にのみ吸引された油が流れ、
枝管に外気導入手段が設けられており、
外気導入手段は、枝管からの外気導入によって、主管の真空度及び油の流量を調節できることを特徴とする膜厚制御装置。
【請求項2】
膜厚制御装置は、ロールで拭き取られたブランク材の表面の油の膜厚を測定する膜厚測定手段を有しており、
測定された膜厚のデータに基づいて、サーボモータを制御することを特徴とする請求項1に記載の膜厚制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランク材の表面に形成される油膜を任意の厚さに調節することができる膜厚制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブランク材である鋼板のプレス加工を行う前に、鋼板を洗浄する必要がある。
【0003】
この鋼板の洗浄の一例として、鋼板の表面を洗浄油とブラシとで洗浄し、不織布をまいたロールで油を拭き取ることによって行われる。このような洗浄油を使用する洗浄機は「湿式洗浄機」と呼ばれている。
【0004】
ロールは連続して油を拭き取れるように、吸引ポンプによってロールから油を回収できるようになっている。
【0005】
このプレス加工前の鋼板の洗浄では、プレス成形性向上のために、任意の厚さの油膜を鋼板表面に形成する必要がある。
【0006】
例えば、自動車用の鋼板のプレス加工では、鋼板の洗浄後に鋼板表面に形成する油膜の厚さが、成形形状などのプレス加工条件によって異なる。
【0007】
そのため、鋼板の洗浄後に鋼板表面に形成する油膜の厚さを緻密に調節する必要がある。
【0008】
このような鋼板の洗浄後に鋼板表面に形成する油膜の厚さを調節する装置として、特許文献1に示すようなブランク材の油膜層の膜厚制御装置がある。
【0009】
特許文献1に示す膜厚制御装置では、吸引ロールに接続された真空ポンプの吸引圧を、インバータでモータの周波数(回転数)をPID制御することにより、設定真空圧に収束させることによって、油膜の厚さを所定範囲に制御しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
実際の油の膜厚の緻密な調整を実現するためには、吸引ロールに接続されている配管において、吸引圧だけではなく、吸引量も制御する必要がある。
【0012】
特許文献1では、真空ポンプの吸引量と吸引圧との両方を制御できそうに見えるが、真空ポンプは、回転数が変化すると異なる性能曲線に推移するという特性がある。
【0013】
例えば、モータの回転数を下げた場合、真空ポンプの性能曲線の推移によって、真空ポンプの吸引量と吸引圧との両方が急激に変化してしまう。したがって、インバータを使ってモータの回転数を制御にしても、油の膜厚の緻密な調整が難しいという問題がある。
【0014】
さらに、ロールで拭き取られた油によって配管に油膜が形成されてしまうと、ロールの油拭き取り能力が低下する場合があるという問題がある。
【0015】
そこで、本発明は、油の膜厚の緻密な調節が可能で、かつ、ロールの油の拭き取り能力低下を防ぐことができる膜厚制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の請求項1の膜厚制御装置は、周面の接触でブランク材の表面の余分な油を拭き取るロールと、配管を介してロールで拭き取られた油を吸引する真空ポンプとを有し、配管は、途中で主管と枝管とに分岐し、主管にのみ吸引された油が流れ、枝管に外気導入手段が設けられており、外気導入手段は枝管からの外気導入によって、主管の真空度及び油の流量を調節できるようになっている。
【0017】
請求項1の膜厚制御装置は、主管にのみ吸引された油が流れ、途中で主管から分岐し、油が流れない枝管に設けられた外気導入手段で主管の真空度及び油の流量を調節する。真空ポンプの回転数を変化による真空ポンプの性能曲線の推移の影響を排除できるので、外気導入手段によって、主管の真空度及び油の流量をきめ細かく調節することができる。
【0018】
また、請求項1の膜厚制御装置は、外気導入手段による外気導入によって、配管内に空気脈動を生じさせることができる。この空気脈動により、配管に形成された油膜を振動させて吸引除去することができる。これにより、ロールの油の拭き取り能力低下を防ぐことができる
【0019】
本発明の請求項2の膜厚制御装置は、請求項1の膜厚制御装置において、膜厚制御装置は、ロールで拭き取られたブランク材の表面の油の膜厚を測定する膜厚測定手段を有しており、測定された膜厚のデータに基づいて、サーボモータを制御する。
【0020】
請求項2の膜厚制御装置は、請求項1の膜厚制御装置と同様の作用に加えて、膜厚測定手段で測定されて油の膜厚のデータをフィードバックして、外気導入手段の主管の真空度の調節に活用することができる。これにより、任意の様々な膜厚に速やかに対応することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の膜厚制御装置によれば、緻密な油の膜厚の調節が可能で、かつ、連続運転でのロールの油の拭き取り能力低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の膜厚制御装置の一実施形態について説明する。
【0024】
膜厚制御装置1は、ブランク材10の表面に形成される油膜を任意の厚さに調節することを目的としている。
【0025】
ブランク材10は、膜厚制御装置1での工程の前に、その表面を洗浄油とブラシによって洗浄される。
【0026】
図1に示すように、膜厚制御装置1は、ロール2と、真空ポンプ3と、ロール2と真空ポンプ3を接続する配管4とを有する。
【0027】
ロール2の周面は、例えば不織布などの油を吸収できる素材で覆われている。
【0028】
このロール2の周面が洗浄後のブランク材10の表面に接触することによって、余分な油を拭き取ることができるようになっている。
【0029】
ロール2は、ブランク材10の表面の油を完全に除去するのではなく、膜厚制御装置1の後の工程のため、任意の厚さの油膜をブランク材10の表面に残存させる。
【0030】
真空ポンプ3は、モータ31を動力として運転する。
【0031】
真空ポンプ3の運転によって、配管4の主管5の真空度が低くなり負圧となる。これにより、ロール2で拭き取られた油が配管4を通してロール2から吸引されるようになっている。
【0032】
配管4は、一端がロール2に接続されており、他端が真空ポンプ3に接続されている。
【0033】
配管4は途中で主管5と枝管6とに分岐する。
【0034】
主管5にのみ、吸引された油が矢印aの方向に流れるようになっている。
【0035】
枝管6には外気導入手段7が設けられている。
【0036】
外気導入手段7は、バタフライ弁8とサーボモータ9とを有する。サーボモータ9でバタフライ弁8の開度を調節できるようになっている。
【0037】
バタフライ弁8を開くと、矢印bに示すように、枝管6の端部から負圧となっている配管4に外気が導入されるようになっている。
【0038】
サーボモータ9でバタフライ弁8の開度を調節して、枝管6を導入される空気量を変化させることができる。これにより、外気導入手段7は、主管5の真空度を調節できるようになっている。
【0039】
また、バタフライ弁8の細かな開閉によって、配管内に空気脈動を生じさせることができる。
【0040】
図1では記載を省略しているが、ロール2で拭き取たれた後のブランク材10の表面の膜厚を測定できる膜厚測定手段を有する。
【0041】
測定された膜厚のデータと気温等の諸条件等に基づいて、サーボモータ9を制御しバタフライ弁8の開度を調節して、最適な任意の厚さの油膜をブランク材10の表面に残すことができる。
【0042】
上記実施形態では、ロール2の周面は、例えば不織布である場合について説明したが、これに限定されることはない。ロールの周面は、油を吸収できる素材であればよい。
【0043】
上記実施形態では、真空ポンプは、モータを動力として運転する場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、モータが組み込まれた真空ポンプで主管内部の真空度を低くするようになっていてもよい。
【0044】
上記実施形態では、外気導入手段7は、バタフライ弁8とサーボモータ9とを有する場合について説明したが、これに限定されることはない。外気導入手段は、枝管から外気を導入して主管の真空度を調節できるものであればよい。
【0045】
上記実施形態では、
図1に示すように、ロール2,2のそれぞれに独立した配管が接続されている場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、ロール2,2のそれぞれから延びる配管が途中で合流した上で真空ポンプに接続されていてもよい。また、例えば、途中で合流する箇所の前にロール2,2のそれぞれから延びる配管が主管と枝管とが分岐している場合や、配管が途中で合流する箇所の後に主管と枝管とが分岐している場合等、主管と枝管との分岐する位置は、ロールから真空ポンプまでの間で、自由に決めることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 膜厚制御装置
2 ロール
3 真空ポンプ
4 配管
5 主管
6 枝管
7 外気導入手段
8 バタフライ弁
9 サーボモータ
10 ブランク材
31 モータ