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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099988
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/169 20210101AFI20240719BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20240719BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240719BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240719BHJP
【FI】
H01M50/169
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/176
H01M50/55 101
H01M50/588
H01M50/593
H01G11/84
H01G11/78
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003660
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】土屋 詔一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正孝
(72)【発明者】
【氏名】立山 望美
(72)【発明者】
【氏名】浅野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】内村 将大
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】永柄 雄己
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA12
5E078AB02
5E078AB06
5E078BA18
5E078BA27
5E078HA04
5E078HA05
5E078HA12
5E078HA13
5E078HA25
5H011AA09
5H011BB03
5H011CC06
5H011DD13
5H011EE04
5H011FF03
5H011GG09
5H011HH02
5H011KK01
5H011KK02
5H043AA19
5H043CA04
5H043DA09
5H043EA01
5H043HA31D
5H043HA32D
5H043KA22D
5H043KA30D
5H043KA45D
(57)【要約】
【課題】蓋体、端子部材および樹脂製の絶縁部材が一体成型された蓋アッセンブリと、ケース本体とのレーザー溶接時において、絶縁部材の劣化が抑制され、かつ、溶接強度が高い電池を実現する製造方法を提供すること。
【解決手段】ここに開示される製造方法は、蓄電デバイスの製造方法であって、開口の周縁部12eが平面であるケース本体11と、蓋体15、端子部材30および絶縁部材40が一体成型された蓋アッセンブリとを用意する工程と、ケース本体11の開口に蓋アッセンブリを装着する工程と、周縁部12eと前記外縁部15eとの境界に対して蓋体15の外表面17側からレーザー光を照射する工程とを含む。蓋アッセンブリは、傾斜部15sが外表面17からケース本体11との境界に向けて薄肉化するように配置され、蓋体15の外表面17が開口の周縁部12eよりも高く、かつ、蓋体15の内表面16が開口の周縁部12eよりも低い位置に配置される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側面が開口した有底のケース本体と、端子装着孔を有し、前記開口を封口する蓋体と、を備える電池ケースと、
前記電池ケースに収容された電極体と、
一端が前記電池ケースの内部で前記電極体と電気的に接続され、他端が前記端子装着孔に挿通されて前記蓋体の外側に露出した端子部材と、
前記蓋体の表面であって、前記開口を封口した状態で前記電池ケースの外側にある外表面と、前記端子部材と、を絶縁する樹脂製の絶縁部材と、
を備える蓄電デバイスの製造方法であって、
前記開口の周縁部が平面であるケース本体と、前記蓋体、前記端子部材および前記絶縁部材が一体成型された蓋アッセンブリと、を用意する工程と、
前記ケース本体の前記開口に前記蓋アッセンブリを装着する工程と、
前記周縁部と前記蓋体の外縁部との境界に対して前記蓋体の前記外表面側からレーザー光を照射し、前記ケース本体と前記蓋アッセンブリとをレーザー溶接する工程と、
を含み、
ここで、
前記用意工程で用意される前記蓋アッセンブリの前記蓋体は、少なくとも前記蓋体の前記外縁部と前記絶縁部材とが最も近接する領域において、該蓋体の中央側から該外縁部に向けて薄肉化する傾斜部を有しており、
前記装着工程において、前記蓋アッセンブリは、前記傾斜部が前記外表面から前記ケース本体との境界に向けて薄肉化するように配置され、
前記蓋体の外表面が前記開口の前記周縁部よりも高く、かつ、前記蓋体の内表面が前記開口の前記周縁部よりも低い位置に配置される、蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記用意工程で用意されるケース本体は、矩形状の開口と、該開口と対向する矩形状の底面と、該底面から延び互いに対向する一対の第1側壁と、該底面から延び互いに対向する一対の第2側壁と、を有し、
前記用意工程で用意される蓋アッセンブリは、矩形状の蓋体を有しており、前記傾斜部は該蓋体の外縁部の全周に亘って設けられている、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記用意工程で用意される蓋アッセンブリは、前記蓋体の最大厚みを100%としたときに、前記外表面から厚み方向に50%以内の領域に前記傾斜部が設けられている、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記装着工程では、前記蓋体の最大厚みを100%としたときに、前記内表面から厚み方向に25%以上50%未満の領域に前記開口の周縁部が配置される、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極体と、該電極体を収容するケース本体と、ケース本体の開口を封口し、端子装着孔を有する蓋体と、該蓋体の端子装着孔に装着される端子部材と、を備える電池が知られている。上記したケース本体と蓋体とは、例えばレーザー溶接などで溶接されて密閉される。
【0003】
例えば特許文献1には、外装缶の開口端面を端子部材から外方かつ下方に向けて傾斜させた外装缶と、蓋体とを溶接することが記載されている。特許文献2では、開口部の内壁に蓋体を据え付け可能な段を有し、当該段の上に蓋体を据え付けたときに蓋体の上面の位置が開口部の上端部よりも高くなる電池筐体に対して、レーザー溶接を行うことが開示されている。特許文献3には、金属製の蓋にガスケットを介して端子が装着されており、当該蓋を金属製のケースの上端面より高くなるように嵌着して、レーザー溶接することが記載されている。また、特許文献4には、電池缶と電池蓋との間には、側壁部の高さ方向に交差する横方向の横境界面(Fx)と、横境界面に交差して側壁部の高さ方向に沿った縦方向の縦境界面(Fy)とが形成されており、側壁部の高さ方向に沿った縦方向に照射されるレーザ(EB)によって横境界面の少なくとも一部と縦境界面の少なくとも一部が溶接されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-183012号公報
【特許文献2】特開2010-97770号公報
【特許文献3】特開平11-213967号公報
【特許文献4】国際公開第2015/072010号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の高エネルギー密度化された電池では、蓋体と端子部材と樹脂製の絶縁部材とが一体成型された蓋アッセンブリが用いられている。かかる蓋アッセンブリでは、密着強度向上の観点等から蓋の外縁部と絶縁部材との間隔が狭くなりがちである。特許文献1~4に開示される技術を、上記したような蓋アッセンブリとケース本体とを溶接接合する際に適用しようとすると、レーザー溶接する箇所と樹脂製の絶縁部材とが近接しているために、絶縁部材が焼き焦げてしまうことがある。その結果、絶縁部材が劣化して、絶縁性の低下や電池の気密性が低下することがある。
【0006】
また、例えば特許文献1に開示されるように、外装缶の開口端面に傾斜を設けた場合、照射されたレーザー光の当たる面積が小さく、溶ける金属量が少なくなる。このため、溶接強度の観点からも未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、蓋体、端子部材および樹脂製の絶縁部材が一体成型された蓋アッセンブリと、ケース本体とのレーザー溶接時において、絶縁部材の劣化が抑制され、かつ、溶接強度が高い電池を実現する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示される製造方法は、一側面が開口した有底のケース本体と、端子装着孔を有し、上記開口を封口する蓋体と、を備える電池ケースと、上記電池ケースに収容された電極体と、一端が上記電池ケースの内部で上記電極体と電気的に接続され、他端が上記端子装着孔に挿通されて上記蓋体の外側に露出した端子部材と、上記蓋体の表面であって、上記開口を封口した状態で上記電池ケースの外側にある外表面と、上記端子部材と、を絶縁する樹脂製の絶縁部材と、を備える蓄電デバイスの製造方法である。かかる製造方法は、上記開口の周縁部が平面であるケース本体と、上記蓋体、上記端子部材および上記絶縁部材が一体成型された蓋アッセンブリと、を用意する工程と、上記ケース本体の上記開口に上記蓋アッセンブリを装着する工程と、上記周縁部と上記外縁部との境界に対して上記蓋体の上記外表面側からレーザー光を照射し、上記ケース本体と上記蓋アッセンブリとをレーザー溶接する工程と、を含む。ここで、上記用意工程で用意される上記蓋アッセンブリの上記蓋体は、少なくとも上記蓋体の上記外縁部と上記絶縁部材とが最も近接する領域において、該蓋体の中央側から該外縁部に向けて薄肉化する傾斜部を有している。上記装着工程において、上記蓋アッセンブリは、上記傾斜部が上記外表面から上記ケース本体との境界に向けて薄肉化するように配置され、上記蓋体の外表面が上記開口の上記周縁部よりも高く、かつ、上記蓋体の内表面が上記開口の上記周縁部よりも低い位置に配置される。
【0009】
かかる構成によれば、蓋体の外側から照射されたレーザー光が傾斜部に反射されて、絶縁部材から離れる方向に反射されやすい。このため、絶縁部材と蓋体の外縁部とが近接していても絶縁部材の焦げを抑制することができる。また、ケース本体の開口の周縁部は平面であるため、レーザー光が照射される面積が増え、溶け込む金属量を増加させることができる。これにより、溶接強度を高くすることができる。したがって、絶縁部材の劣化が抑制され、かつ、溶接強度が高い電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、一実施形態に係る電池の分解斜視図である。
図3図3は、蓋体の平面図である。
図4図4は、図1のIV-IV線に沿う模式的な縦断面図である。
図5図5は、溶接工程における蓋体とケース本体との境界部分を模式的に示す縦断面図である。
図6図6は、従来の電池の溶接工程を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、ここで開示される技術の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、ここに開示される技術を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と、当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0012】
本明細書において、「蓄電デバイス」とは、電解質を介して一対の電極(正極および負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電反応が生じるデバイスをいう。
かかる蓄電デバイスは、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の二次電池;リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ;を包含する。
以下では、ここに開示される製造方法によって製造される蓄電デバイスの一例として、上述した蓄電デバイスのうちリチウムイオン二次電池を例に挙げて、ここに開示される技術の一実施形態について説明する。また、以下では、まずリチウムイオン二次電池の構成について説明し、次いで、ここに開示される製造方法について説明する。
【0013】
<電池100>
図1は、電池100の斜視図である。図2は、電池100の構成を説明する分解斜視図である。以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表す。また、図面中の符号Xは「電池の短辺方向」を示し、符号Yは「電池の長辺方向」を示し、符号Zは「電池の上下方向」を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池の設置形態を何ら限定するものではない。
【0014】
図1および図2に示すように、電池100は、電池ケース10と、電極体20と、端子部材30と、絶縁部材40と、を備えている。図示は省略するが、電池100は、ここではさらに電解液を備えている。なお、図2では、電池ケース10の蓋体15に、端子部材30と絶縁部材40とが一体成型されたアッセンブリ部品(以下、「蓋アッセンブリ15A」ともいう。)と、その他の部品とを分離して図示している。さらに図2では、一方側(図2の右側)の電極に関して、蓋体15と端子部材30と絶縁部材40とを分離して図示している。
【0015】
電池ケース10は、ケース本体11と、蓋体15と、を備えている。図1に示すように、電池ケース10は、ここでは扁平な直方体形状(角型)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10(ケース本体11および蓋体15)は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、鉄、鉄合金等からなっている。電池ケース10は、ここではアルミニウム製である。
【0016】
ケース本体11は、図2に示すように、電極体20と電解液とを収容する筐体である。ケース本体11は、一側面(ここでは上面)に開口12を有する有底かつ角型の容器である。開口12は、ここでは略矩形状である。ケース本体11は、図1に示すように、長辺および短辺を有する矩形状の底面11aと、底面11aの長辺から上方に延び相互に対向する一対の長側壁11bと、底面11aの短辺から上方に延び相互に対向する一対の短側壁11cと、を備えている。長側壁11bは第1側壁の一例であり、短側壁11cは第2側壁の一例である。
なお、ケース本体は、一側面に開口を有する有底の容器であれば特に限定されない。例えば、ケース本体は、有底の円筒形状のケースであってもよい。
【0017】
蓋体15は、ここでは矩形状であり、ケース本体11の開口12を封口するプレート状の部材である。蓋体15の外形は、ケース本体11の開口12よりも小さい。蓋体15は、ケース本体11の底面11aと対向している。蓋体15は、電池100の内部側(すなわち、電極体20と対向する側)を向いた内表面16と、電池100の外部側を向いた外表面17とを有する。蓋体15は、内表面16と外表面17とを貫通する2つの端子装着孔18を有する。端子装着孔18は、蓋体15の長辺方向Yの両端部に1個ずつ設けられている。一方側(図2の左側)の端子装着孔18は正極用であり、他方側(図2の右側)の端子装着孔18は負極用である。蓋体15の平均厚み(平均板厚)は、耐久性等の観点から、概ね0.3mm以上、例えば0.5mm以上であるとよく、コストやエネルギー密度の観点から、概ね2mm以下、例えば1.5mm以下であるとよい。
【0018】
図1に示すように、蓋体15には、注液孔(図示せず)と、ガス排出弁15hとが設けられている。注液孔は、ケース本体11に蓋体15を組み付けた後、電池ケース10の内部に電解液を注液するための貫通孔である。注液孔は、電解液の注液後に封止部材(図示せず)によって封止されている。ガス排出弁15hは、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。
【0019】
蓋アッセンブリ15Aは、端子装着孔18を有する蓋体15と、端子部材30と、絶縁部材40とが一体成型された部材である。蓋アッセンブリ15Aは、上記ケース本体11の開口12を塞ぐように装着される。具体的には、ケース本体11の側壁の内壁11dと蓋体15の側面とが突き合わされている。後述するように、蓋アッセンブリ15Aは、蓋体15の外表面17が開口12の周縁部12eよりも高い位置に配置され、内表面16が開口12の周縁部12eよりも低い位置に配置された状態で溶接工程を実施する。蓋体15によってケース本体11の開口12が隙間なく塞がれた状態で溶接接合することにより、電池ケース10が密閉される。蓋アッセンブリ15Aとケース本体11との境界(すなわち、両部材の対向面)の一部を含む所定領域においては、溶接により形成された溶接部50が形成されている。
【0020】
図3は、図1を上面側からみたときの平面図である。図3に示すように、溶接部50は、蓋体15の外表面17側に位置している。溶接部50は、平面視において、ケース本体11と蓋体15の外縁部15eとの境界に沿って、略環状に連続して形成されている。ここでは、図3に示すように、端子部材30と絶縁部材40とが長辺方向Yの両端部にそれぞれ設けられている。このため、溶接部50は、長辺方向Yの両端部で絶縁部材40と近接している。溶接部50は、ここでは長辺方向Yの両端部の領域Aにおいて絶縁部材40と最も接近している。領域Aは、絶縁部材40の長辺方向Yの長さと略同等(±1mm程度の誤差を許容する。)の長さの範囲である。領域Aは、「蓋体の外縁部と絶縁部材とが最も近接する領域」の一例である。特に限定されるものではないが、領域Aでは、溶接部50と絶縁部材40との距離が、概ね5mm以下、典型的には3mm以下、例えば1~2mm程度でありうる。
【0021】
図4は、図1のIV-IV線に沿う断面図である。なお、図4では、ケース本体11の片方の長側壁11bのみを表し、もう片方の長側壁11bを省略している。図4に示すように、ケース本体11は、内壁11dからケース内側方向に向けて突出する支持部11eを備えていてもよい。支持部11eは、蓋体15を所望する位置に配置するための部位である。例えば蓋体15が支持部11e上に載置されることにより、蓋体15の外表面17が開口12の周縁部12eよりも高い位置に配置され、内表面16が開口12の周縁部12eよりも低い位置に配置された状態で溶接を実施することができる。支持部11eは、ケース本体11の開口12の全周に設けられていてもよいし、短側壁11cの内表面にのみ設けられていてもよい。あるいは、支持部11eは、ケース本体11の4つの角部にそれぞれ設けられていてもよい。
【0022】
電極体20は、ケース本体11の内部に収容されている。電極体20は、例えば、樹脂
性の絶縁フィルム(図示せず)等で覆われた状態で、ケース本体11に収容されている。電極体20は、正極シートと、負極シートと、正極シートと負極シートとの間に配置されたセパレータシートと、を備えている。電極体20は、ここでは帯状の正極シートと帯状の負極シートとが2枚の帯状のセパレータシートを介して絶縁された状態で積層され、捲回軸を中心として長手方向に捲回されてなる捲回電極体である。ただし、電極体20は、方形状の正極と方形状の負極とが絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。なお、図2における符号WDは、電極体20の捲回軸方向(幅方向でもある)を示している。
【0023】
正極シートは、正極集電体(例えば、アルミニウム箔)の少なくとも一方の表面上に、正極活物質を含む正極活物質層が固着されている部材である。正極シートの構成は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。正極活物質としては、従来公知の材料を特に制限なく使用できる。一例として、リチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。負極シートは、負極集電体(例えば、銅箔)の少なくとも一方の表面上に、負極活物質を含む負極活物質層が固着されている部材である。負極シートの構成は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。負極活物質としては、従来公知の材料を特に制限なく使用できる。一例として、黒鉛等の炭素材料が挙げられる。セパレータシートは、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁性の樹脂シートである。セパレータシートの構成は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。
【0024】
電極体20は、捲回軸方向WDが上下方向Zと略一致するようにケース本体11の内部に収容されている。言い換えれば、電極体20は、捲回軸方向WDが、長側壁11bおよび短側壁11cと略平行になり、かつ底面11aおよび蓋体15と略直交する向きで、電池ケース10の内部に配置されている。
【0025】
正極シートは、捲回軸方向WDの一方の端辺から外側(図2の上側)に向かって複数の正極タブ21tが突出している。正極タブ21tは、正極活物質層が形成されていない領域である。また、負極シートは、捲回軸方向WDの一方の端辺から外側(図2の上側)に向かって複数の負極タブ22tが突出している。なお、図2では分離状態で図示されているが、電池100の完成品では、正極シートおよび負極シートには、それぞれ端子部材30が電気的に接合されている。
【0026】
端子部材30は、図1および図2に示すように、蓋体15の長辺方向Yの両端部に1個ずつ設けられている。図2に示すように、一端が電池ケース10の内部に配置され、他端が端子装着孔18に挿通されて蓋体15の外部に配置されている。正極側の端子部材30は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金からなっている。負極側の端子部材30は、例えば、銅、銅合金からなっている。
【0027】
図2および図4に示すように、端子部材30は、電極体接続部31と、軸部32と、外部接続部33と、を有している。電極体接続部31は、電池ケース10の内部に配置されている。電極体接続部31は、図2に示すように、ここでは四角形の平板状に構成され、蓋体15の内表面16に沿って水平方向に延びている。電極体接続部31の長辺方向Yの端部は、電池ケース10の内部で電極体20の正極タブ21tまたは負極タブ22tに電気的に接続されている。
【0028】
軸部32は、電極体接続部31と外部接続部33との間に配置され、端子装着孔18に挿通されている。軸部32は、電極体接続部31から上方に延びている。外部接続部33は、電池ケース10の外表面17に露出するように配置されている。外部接続部33は、軸部32の上方に設けられている。外部接続部33は、端子装着孔18に挿通可能な大きさに構成されている。電極体接続部31、軸部32、および外部接続部33の大きさの差により、軸部32は電極体接続部31および外部接続部33に対してくびれたようになっている。
【0029】
絶縁部材40は、蓋体15と端子部材30との導通を防止する樹脂製の部材である。絶縁部材40は、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂材料から構成されることが好ましい。合成樹脂材料には無機フィラー等が添加されてもよい。図4に示すように、絶縁部材40は、第1鍔部41と、第2鍔部42と、筒状部43とを有している。ここでは、第1鍔部41と第2鍔部42と筒状部43とは一体に形成されている。
【0030】
筒状部43は、端子装着孔18と端子部材30の軸部32との間に位置している。筒状部43は、端子装着孔18と軸部32とを絶縁している。第1鍔部41は、蓋体15の内表面16に沿って水平方向に延びている。第1鍔部41は、蓋体15の内表面16と電極体接続部31とを絶縁している。第2鍔部42は、筒状部43から、蓋体15の外表面17に沿って水平方向に延びている。第2鍔部42は、蓋体15の外表面17と外部接続部33とを絶縁している。第1鍔部41および第2鍔部42の外形は、端子部材30の電極体接続部31および外部接続部33の外形よりも大きい。図3および図4に示すように、第2鍔部42は、平面視において、端子部材30(外部接続部33)よりも外側にはみ出し、外部に露出している。
【0031】
蓋アッセンブリ15Aは、図2に示すように、蓋体15に、端子部材30と絶縁部材40とがインサート成形(一体成形)で組み付けられたアッセンブリ部品である。蓋アッセンブリ15Aでは、端子部材30はかしめ加工されることなく、絶縁部材40によって蓋体15に固定されている。また、端子部材30は、絶縁部材40によって固定されることにより蓋体15と直接接触することなく、蓋体15に固定されている。図示は省略するが、蓋体15および端子部材30には、例えば粗面化処理がなされた粗面化処理部が設けられていてもよい。これにより、蓋体15、端子部材30、および絶縁部材40がさらに強固に固定することができる。
【0032】
<電池の製造方法>
以下、ここに開示される製造方法について説明する。かかる製造方法は、ケース本体11と、上記した蓋アッセンブリ15Aを用意する用意工程と、ケース本体11に蓋アッセンブリ15Aを装着する装着工程と、ケース本体11の開口12と蓋体15の周縁部との境界をレーザー溶接する溶接工程とを少なくとも含む。そして、用意工程において、開口12の周縁部12eが平面であるケース本体11と、傾斜部15sを有する蓋体15を備える蓋アッセンブリ15Aとを用意する。蓋アッセンブリ15Aは、蓋体15の傾斜部15sが外表面17からケース本体11との境界に向けて薄肉化するように配置され、さらに蓋体15の外表面17が開口12の周縁部12eよりも高く、かつ、蓋体15の内表面16が開口12の周縁部12eよりも低い位置に配置される。ここに開示される製造方法は、上記したような用意工程、装着工程および溶接工程を実施することにより特徴づけられており、それ以外の製造プロセスは従来と同様であってもよい。また、任意の段階でさらに他の工程を含んでいてもよい。
【0033】
図5は、溶接工程におけるケース本体11と蓋体15との境界の近傍を模式的に示す縦断面図である。ここに開示される製造方法によれば、図5の太い矢印で示すように外表面17側から照射されたレーザー光ILは、蓋体15の一部と、開口12の周縁部12eの一部とに当たる。蓋体15および開口12の周縁部12eの一部に当たったレーザー光ILは、図5の細い矢印で示すように境界で反射して反射光RLが外方に反射し得る。このため、絶縁部材40と近接する領域を溶接する際にも、絶縁部材40の損傷を抑制することができる。また、開口12の周縁部12eが平面であるケース本体11を用いることで、レーザー光ILが照射される面積が大きくなり、より強固な溶接部50を形成することができる。かかる製造方法によれば、蓋体15、端子部材30および樹脂製の絶縁部材40が一体成型された蓋アッセンブリと、ケース本体11とのレーザー溶接時において、絶縁部材40の劣化が抑制され、かつ、溶接強度が高い電池100を実現することができる。
【0034】
用意工程では、ケース本体11と蓋アッセンブリ15Aとを用意する。さらに、その他上記したような必要部材を用意する。ケース本体11は、開口12の周縁部12eが平面であるケースを用意する。より詳細には、周縁部12eは、蓋体15の厚み方向に直交する平面である。
【0035】
蓋体15は、該蓋体15の中央側から外縁部15eに向けて蓋体15の厚みが薄くなるように傾斜した傾斜部15sを有している。蓋体15は、当該傾斜部15sよりも径方向の内側に平坦部15f(図4参照)を有している。傾斜部15sにおける蓋体15の平均厚みは、平坦部15fにおける蓋体15の平均厚みよりも小さくなっている。蓋体15が傾斜部15sを有することにより、照射されたレーザー光ILが傾斜部15sに当たって絶縁部材40とは逆方向に飛散するため、絶縁部材40を好適にレーザー光から保護することができる。
【0036】
傾斜部15sは、後述する装着工程においてケース本体11と突き合わせたときに、外表面17から蓋体15とケース本体11との境界に向けて傾斜角θ1で傾斜する傾斜面を有する。傾斜部15sは、例えば図4に示すように、絶縁部材40から離れるほど薄肉化するように傾斜しているとよい。傾斜角θ1は、蓋体15の外表面17(ここでは水平面と同じ)を基準とした傾斜角である。詳しくは、傾斜角θ1は、蓋体15の外表面17の延長線と傾斜部15sの延長線とのなす角のうち小さい方の角度である。傾斜部15sにおいて、傾斜角θ1は、ここでは一定である。
【0037】
傾斜角θ1は、上記したようにレーザー光ILを好適に反射させることができる角度であれば特に限定されない。傾斜角θ1は、少なくとも1°以上であり、5°以上であることが好ましく、10°以上であってもよく、20°以上であることがより好ましい。傾斜角θ1は、90°以下であることが好ましく、例えば80°以下であり、60°以下であることがより好ましい。傾斜角θ1を所定値以上とすることで、レーザー溶接時にレーザー光ILが絶縁部材40側に反射されにくくなり、絶縁部材40の焼け焦げをより高いレベルで抑制できる。傾斜角θ1を所定値以下とすることで、レーザー溶接時に溶融金属が傾斜に沿って流れにくくなり、溶接性を向上することができる。
【0038】
特に限定されないが、傾斜部15sは、蓋体15の厚み方向において、外表面17側に設けられていることが好ましい。具体的には、蓋体15の最大厚みt(上下方向Zの長さ。以下同じ。)を100%としたときに、傾斜部15sは、厚み方向において外表面から50%以内の領域に設けられていることが好ましく、例えば40%以内の領域に設けられていてもよい。これにより、上方から照射されたレーザー光の反射光を好適に飛散させ、絶縁部材40を保護することができる。一方で、傾斜部15sは、蓋体15の厚み方向において、内表面側に設けられていないことが好ましい。すなわち、傾斜部15sは、蓋体15の最大厚みtを100%としたときに、厚み方向において内表面から50%未満の領域には設けられていないことが好ましい。例えば、蓋体15は、厚み方向に沿った縦断面において、厚み方向において内表面から50%未満の領域には、ケース本体11の側壁(ここでは長側壁11b)と平行な面を有していることが好ましい。これにより、蓋体15とケース本体11との隙間を減じることができる。このため、例えば蓋体15とケース本体11との境界の隙間から、レーザーが直接的にケース内部に進入するいわゆる「レーザー抜け」を好適に抑制することができる。
【0039】
上記したような傾斜部15sの形成方法は特に限定されない。例えば、蓋体15の周縁部に対して切削加工を行うことにより、所望する形状の傾斜部15sを有する蓋体15を作製することができる。あるいは、蓋体の外表面側と側壁の外側に治具を配置した状態で外縁部を斜め方向から叩くことにより加工(コイニング)してもよい。このとき、外表面側に金属(余肉)が移動してやや膨らむことや、側壁の下方側(内表面側)に余肉が流れることがあるが、ここに開示される技術の効果を損なわない限りにおいては許容され得る。
【0040】
用意工程は、インサート成型(一体成型)工程を含み得る。インサート成型工程では、蓋体15に端子部材30と絶縁部材40とを一体化して、アッセンブリ部品(例えば、蓋アッセンブリ15A)を作製する。蓋アッセンブリ15Aは、蓋体15、端子部材30、および絶縁部材40をインサート成型することで作成することができる。これにより、部品点数を削減できるとともに、従来のリベットを用いる方法に比べて導通経路を簡便に形成することができる。蓋アッセンブリ15Aは、例えば、下型と上型とを有する成形金型を用いて、部品セット工程、位置決め工程、上型セット工程、射出成形工程、上型リリース工程、および部品取出工程、を含む方法によって作製できる。
【0041】
部品セット工程では、2つの端子部材30が蓋体15の端子装着孔18のそれぞれに挿通された後、当該蓋体15が下型に装着される。位置決め工程では、端子部材30が位置決めされ、固定される。上型セット工程では、上型が、下型とともに蓋体15および端子部材30を上下方向に挟むように装着される。射出成形工程では、まず成形金型が加熱される。次に、成形金型に溶融樹脂が注入される。溶融樹脂は上型から端子装着孔18を通って下型に流される。その後、成形金型と成形品とが冷却される。これにより、絶縁部材40と蓋体15と端子部材30とが一体化される。上型リリース工程では、上型が下型から離間される。部品取出工程では、成形品が下型から取り外される。
【0042】
蓋体15と端子部材30と絶縁部材40とをインサート成形で一体化させる場合、密着性を高めるために、蓋体15と絶縁部材40との接触面積を大きくすることが望ましい。このため、外部接続部33および/または第2鍔部42が従来よりも大きくなる傾向にあり、蓋体15の外表面17で絶縁部材40(より詳細には第2鍔部42)と溶接個所とが近接しやすい。したがって、ここに開示される技術を適用することが特に効果的である。
【0043】
例えば、図示されるように略平板状の蓋体15と、ケース本体11とを溶接する場合、長辺方向Yの両端部の領域A(図4参照)において、蓋体15の外縁部15eと絶縁部材40とが最も接近している。このため、ここに開示される技術では、蓋体15は少なくとも領域Aにおいて傾斜部15sを有していることが好ましい。これにより、一体成型された蓋アッセンブリ15Aを用いた場合でも、絶縁部材40を好適に保護しながら溶接を実施することができる。蓋体15は、例えば溶接時において、蓋体15の外縁部15eと絶縁部材40との距離が3mm以下(例えば2mm以下)の領域においては、少なくとも傾斜部15sが設けられているとよい。好ましくは、傾斜部15sは、ケース本体11と蓋体15との境界に沿って、略環状に連続して形成されているとよい。これにより、より確実に絶縁部材40を保護することができる。
【0044】
装着工程では、ケース本体11の開口12に蓋アッセンブリ15Aを装着する。このとき、蓋アッセンブリ15Aは、図4に示すように、上記した傾斜部15sがケース本体11との境界に向けて蓋体15の厚みが薄くなるように配置される。そして、蓋体15の外表面17が開口12の周縁部12eよりも高く、かつ、蓋体15の内表面16が開口12の周縁部12eよりも低い位置に配置される。これにより、レーザー光ILが傾斜部15sに好適に当たりやすくなり、レーザー光が絶縁部材40から離れる方向に反射されやすくなる。
【0045】
特に限定されないが、装着工程では、蓋体15の厚み方向において内表面側の領域に開口12の周縁部12eが配置されることが好ましい。すなわち、蓋体15の最大厚みを100%としたときに、厚み方向において内表面16から50%未満の領域に開口12の周縁部12eが配置されることが好ましい。より好ましくは、厚み方向において内表面16から25%以上50%未満の領域に開口12の周縁部12eが配置されるとよい。あるいは、蓋体15の最大厚みをtとしたときに、最大厚みtに対して周縁部12eから蓋体15の内表面16までの距離が(t/4)~(t/2)であるとよい。これにより、傾斜部15sによる絶縁部材40の保護効果を発揮させつつ、蓋体15とケース本体11とが接触する面積を十分に確保することができ、溶接性を向上させることができる。また、上記したレーザー抜けも好適に防止することができる。
【0046】
蓋体15の外表面17と開口12の周縁部12eとの距離(上下方向Zの長さ)は、電池100の大きさや蓋体15の厚み、ケース本体11の厚み等により異なるため特に限定されないが、例えば0.05mm以上0.6mm以下であるとよく、例えば0.05mm以上0.1mm以下であることが好ましい。
【0047】
特に限定されるものではないが、蓋アッセンブリ15Aは、ケース本体11と組付けられる前に電極体20と電気的に接続され得る。具体的には、蓋体15と一体化された端子部材30の電極体接続部31と、正極タブ21tおよび負極タブ22tとを電気的に接続することによって、蓋アッセンブリ15Aに電極体20が取り付けられる。そして、蓋アッセンブリ15Aに取り付けられた電極体20を、電極体ホルダ(図示せず)で覆った後に、ケース本体11の内部に収容するとよい。ここでは電極体20の捲回軸方向WDが上下方向Zと略一致するようにケース本体11の内部に収容される。
【0048】
蓋アッセンブリ15Aとケース本体11とを上記したような位置に配置する方法は特に限定されない。例えば、図4に示すように、ケース本体11の内壁11dにおいて、蓋体15が所望する位置に配置されるように支持部11eが設けられていてもよい。これにより、簡便な方法で蓋体15を所望する位置に配置することができる。あるいは、電極体20の高さ(上下方向Zの長さ。以下同じ。)を高くすることにより、当該電極体20に接続される蓋体15の配置を調整してもよいし、蓋体15の厚みを厚くすることによって、蓋体15の配置を調整してもよい。
【0049】
溶接工程では、電池ケース10の内部に電極体20が収容された後、ケース本体11と、蓋アッセンブリ15A(より詳細には蓋体15)との境界に対してレーザー光を照射することにより、ケース本体11と蓋アッセンブリ15Aとをレーザーによって溶接接合する。これにより、ケース本体11と蓋体15との境界に溶接部50が形成される。
【0050】
ここに開示される製造方法では、図5に示すように、レーザー光ILは、ケース本体11と蓋体15との境界に対してケース本体11の外表面側から照射される。特に限定されるものではないが、レーザー照射方向と蓋体15の外表面17(水平面)とのなす角は、例えば90±10°程度であることが好ましく、90±5°程度であってもよい。なお、レーザー光の種類やレーザー溶接の条件については、この種の電池において用いられるレーザー溶接の方法と同様であってよく、特に限定されない。
【0051】
図5の太い矢印で示すように外表面側から照射されたレーザー光ILは、蓋体15の一部と、開口12の周縁部12eの一部とに当たる。かかるレーザー光ILの反射光RLは、絶縁部材40の方向に向けて反射し難い。ここに開示される製造方法では、蓋体15が傾斜部15sを有し、さらに、蓋体15の外表面17が開口12の周縁部12eよりも上方に配置され、かつ、内表面16が開口12の周縁部12eよりも下方に配置されている。これにより、入射角と反射角との関係から傾斜部15sにレーザー光ILが当たりやすく、絶縁部材40から離れる方向にレーザー光ILが反射されるためと推測される。また、照射されたレーザー光ILの拡散光DLがわずかに傾斜部15sに向けて反射され得るが、傾斜部15sに当たることで絶縁部材40とは反対側の方向に再び反射される。すなわち、ここに開示される技術によれば、開口12の近傍で発生する二次的な反射光(例えば拡散光)からも絶縁部材40を保護することができる。したがって、溶接個所と絶縁部材40とが近接している場合であっても絶縁部材の劣化が好適に抑制される。
【0052】
図6は、従来の電池の溶接工程を説明するための縦断面図である。図6に示すように、ケース本体111の開口の周縁部112eが傾斜部112sを有していた場合、照射されたレーザー光ILは、傾斜部112sの一部と蓋体115の一部とに照射される(すなわち、レーザー光を点で受ける)。このため、図6に示す従来技術では溶ける金属量が少なく、溶接強度が低くなる。一方で、図5に示すように、ここに開示される製造方法では、開口12の周縁部12eは平面であり、蓋体15に傾斜部15sを設け、外表面17が周縁部12eよりも上方に配置されている。このため、レーザー光ILは、傾斜部15sの一部と周縁部12eの一部とに照射される(すなわち、レーザー光を面で受けることができる)。したがって、溶ける金属量が多く、溶接強度を高くすることができる。これらにより、端子装着孔18を有する蓋体15、端子部材30および樹脂製の絶縁部材40が一体成型された蓋アッセンブリ15Aと、ケース本体11とのレーザー溶接時において、絶縁部材40の劣化が抑制され、かつ、溶接強度が高い電池100を実現することができる。
【0053】
<電池の用途>
ここに開示される製造方法によって製造される電池は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。電池は、組電池の構築においても好適に用いることができる。
【0054】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0055】
以上のとおり、ここに開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:一側面が開口した有底のケース本体と、端子装着孔を有し、上記開口を封口する蓋体と、を備える電池ケースと、上記電池ケースに収容された電極体と、一端が上記電池ケースの内部で上記電極体と電気的に接続され、他端が上記端子装着孔に挿通されて上記蓋体の外側に露出した端子部材と、上記蓋体の表面であって、上記開口を封口した状態で上記電池ケースの外側にある外表面と、上記端子部材と、を絶縁する樹脂製の絶縁部材と、
を備える蓄電デバイスの製造方法であって、上記開口の周縁部が平面であるケース本体と、上記蓋体、上記端子部材および上記絶縁部材が一体成型された蓋アッセンブリと、を用意する工程と、上記ケース本体の上記開口に上記蓋アッセンブリを装着する工程と、上記周縁部と上記蓋体の外縁部との境界に対して上記蓋体の外表面側からレーザー光を照射し、上記ケース本体と上記蓋アッセンブリとをレーザー溶接する工程と、を含み、ここで、上記用意工程で用意される上記蓋アッセンブリの上記蓋体は、少なくとも上記蓋体の上記外縁部材と上記絶縁部材とが最も近接する領域において、該蓋体の中央側から該外縁部に向けて薄肉化する傾斜部を有しており、上記装着工程において、上記蓋アッセンブリは、上記傾斜部が上記外表面から上記ケース本体との境界に向けて薄肉化するように配置され、上記蓋体の外表面が上記開口の上記周縁部よりも高く、かつ、上記蓋体の内表面が上記開口の上記周縁部よりも低い位置に配置される、蓄電デバイスの製造方法。
項2:上記用意工程で用意されるケース本体は、矩形状の開口と、該開口と対向する矩形状の底面と、該底面から延び互いに対向する一対の第1側壁と、該底面から延び互いに対向する一対の第2側壁と、を有し、上記用意工程で用意される蓋アッセンブリは、矩形状の蓋体を有しており、上記傾斜部は該蓋体の外縁部の全周に亘って設けられている、項1に記載の製造方法。
項3:上記用意工程で用意される蓋アッセンブリは、上記蓋体の最大厚みを100%としたときに、上記外表面から厚み方向に50%以内の領域に上記傾斜部が設けられている、項1または2に記載の製造方法。
項4:上記装着工程では、上記蓋体の最大厚みを100%としたときに、上記内表面から厚み方向に25%以上50%未満の領域に上記開口の周縁部が配置される、項1~3のいずれか一つに記載の製造方法。
【符号の説明】
【0056】
10 電池ケース
11 ケース本体
11a 底面
11b 長側壁
11c 短側壁
11d 内壁
11e 支持部
12 開口
12e 周縁部
15 蓋体
15A 蓋アッセンブリ
15e 外縁部
15f 平坦部
15h ガス排出弁
15s 傾斜部
16 内表面
17 外表面
18 端子装着孔
20 電極体
21t 正極タブ
22t 負極タブ
30 端子部材
31 電極体接続部
32 軸部
33 外部接続部
40 絶縁部材
41 第1鍔部
42 第2鍔部
43 筒状部
50 溶接部
100 電池
111 ケース本体
112 開口
112e 周縁部
112s 傾斜部
115 蓋体

図1
図2
図3
図4
図5
図6