IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンディスプレイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099991
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003665
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐野 匠
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA03
5E338AA05
5E338AA12
5E338AA16
5E338BB75
5E338CC01
5E338CD15
5E338CD17
5E338EE13
5E338EE27
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い、ストレッチャブル電子装置を実現する。
【解決手段】
本発明の構成は次のとおりである。アクティブ領域5と端子領域6が連続して形成されたストレッチャブル電子装置であって、前記アクティブ領域5には、ミアンダ構造の走査線とミアンダ構造の信号線が形成され、前記端子領域6には、第2の方向に延在して、第1の方向に配列した基材の上に、端子配線200と端子210が形成され、前記基材は、前記端子210が形成された部分において、前記第1の方向に連続している補強材300を構成することを特徴とするストレッチャブル電子装置。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミアンダ構造部と、素子領域部と、を有する基材と、
前記ミアンダ構造部に位置する配線と、
前記素子領域部に位置し、前記配線と接続する素子と、を備える電子装置であって、
前記電子装置は、アクティブ領域と、端子領域と、を有し、
前記アクティブ領域には、複数の前記素子領域部が設けられ、各素子領域部を接続するように前記ミアンダ構造部が形成され、
前記端子領域には、第1方向に配列した複数の端子が形成され、
前記基材は、前記端子領域において、連結部を有しており、
前記複数の端子は、前記連結部に位置し、
前記連結部は、前記第1方向に連続して形成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記連結部の前記第1方向と交差する第2方向の幅は、前記端子の前記第2の方向の幅と同じであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記連結部の前記第1方向と交差する第2方向の幅は、前記端子の前記第2の方向の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項4】
前記基材はポリイミドで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項5】
前記連結部は、前記複数の端子の間に位置する絶縁層を有しており、
前記絶縁層は、前記基材とは異なる材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項6】
前記絶縁層の厚さは前記基材の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の電子装置。
【請求項7】
前記絶縁層のヤング率は、前記基材のヤング率よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の電子装置。
【請求項8】
前記絶縁層の前記第1方向と交差する第2方向の幅は、前記複数の端子の前記第2方向の幅と同じであることを特徴とする請求項5に記載の電子装置。
【請求項9】
前記複数の端子は、前記第1方向に配列した第1の行と、前記第1の行と前記第1方向と交差する第2方向に離隔した第2の行を有することを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項10】
アクティブ領域と端子領域が連続して形成された電子装置であって、
前記電子装置は、ミアンダ構造部と、素子領域部と、を有する基材と、
前記ミアンダ構造部に位置する配線と、
前記素子領域部に位置し、前記配線と接続する素子と、を有し、
前記アクティブ領域には、複数の前記素子領域部が設けられ、各素子領域部を接続するように前記ミアンダ構造部が形成され、
前記端子領域には、第1方向に配列した複数の端子が形成され、
前記複数の端子は、前記基材の一方の面の上に形成され、
前記基材の他方の面において、前記複数の端子と対応した部分には、連結部が形成されており、
前記連結部は、前記基材よりもヤング率が大きい材料によって形成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項11】
前記連結部の厚さは、前記基材の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項10に記載の電子装置。
【請求項12】
前記連結部の前記第1方向と交差する第2方向における幅は、前記複数の端子の幅と同じであることを特徴とする請求項10に記載の電子装置。
【請求項13】
前記連結部は金属であることを特徴とする請求項10に記載の電子装置。
【請求項14】
前記連結部はITOであることを特徴とする請求項10に記載の電子装置。
【請求項15】
前記連結部は無機絶縁膜であることを特徴とする請求項10に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可撓性および伸縮性を有した電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性あるいは伸縮性を有する電子装置への需要が高まっている。このようなストレッチャブル電子装置の用途は、例えば、曲面を有する電子機器の筐体に貼り付ける、曲面を有する表示媒体に取り付ける、センサとして人体等に取り付ける等がある。素子としては、例えばタッチセンサ、温度センサ、圧力センサ、加速度センサなどのセンサ、あるいは、種々の表示装置を構成する発光素子、光バルブ等が挙げられる。
【0003】
センサ装置では、各素子を制御するために、走査線や信号線が用いられる。ストレッチャブル電子装置においては、装置が湾曲や伸縮に耐える必要がある。特許文献1には、走査線及び映像信号線を蛇行させる(以後ミアンダ構造とも言う)ことによって、曲げや伸縮に耐える構成とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-106199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走査線や信号線をミアンダ構造とすることによって、ストレッチャブル電子装置を伸縮させたり湾曲させたりすることに対してはある程度の耐性を得ることが出来る。伸縮可能な表示装置であっても、外部から電源や信号を供給する必要がある。このような、電源や信号の供給は、フレキシブル配線基板を介して行われる。
【0006】
ところで、フレキシブル配線基板は、フレキシブルに湾曲させることは出来るが、伸縮することは期待できない。したがって、伸縮可能な電子装置を伸縮させると、フレキシブル配線基板と表示装置との間にストレスが発生することになる。また、フレキシブル配線基板は湾曲して使用される場合が多いが、湾曲した時に、フレキシブル配線基板と伸縮可能な電子装置との間にストレスが発生しやすい。
【0007】
フレキシブル配線基板と伸縮可能な表示装置との接続は、複数の端子を介して行われる。したがって、このストレスは端子部において、発生する。ストレスが大きくなると、端子部の剥離が生ずる。また、剥離に至らない場合であっても、端子における接続抵抗が大きくなる。この接続抵抗の変化は、ノイズとして観測される。
【0008】
本発明の課題は、フレキシブル配線基板と伸縮可能な電子装置の接続部におけるストレスを回避し、接続部における接続不良あるはノイズの発生を防止することである。そして、信頼性が高い、伸縮可能な電子装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を実現するものであり、代表的な手段は次のとおりである。
【0010】
(1)アクティブ領域と端子領域が連続して形成されたストレッチャブル電子装置であって、前記アクティブ領域には、ミアンダ構造の走査線とミアンダ構造の信号線が形成され、前記端子領域には、第2の方向に延在して、第1の方向に配列した基材の上に、端子配線と端子が形成され、前記基材は、前記端子が形成された部分において、前記第1の方向に連続していることを特徴とするストレッチャブル電子装置。
【0011】
(2)アクティブ領域と端子領域が連続して形成されたストレッチャブル電子装置であって、前記アクティブ領域には、ミアンダ構造の走査線とミアンダ構造の信号線が形成され、前記端子領域には、第2の方向に延在して、第1の方向に配列した基材の上に、端子配線と端子が形成され、前記基材は、第1の基板の上に形成され、前記基板の前記基材が形成された面と反対側の面には、前記端子と対応した部分に、前記基材よりも大きなヤング率を有する材料によって、第1の層が形成されていることを特徴とするストレッチャブル電子装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】比較例としてのストレッチャブル電子装置の平面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】アクティブ領域の拡大平面図である。
図4図3のB-B断面図である。
図5図3のC-C断面図である。
図6】素子及びその周辺を示す平面図である。
図7図6のD-D断面図である。
図8】比較例としてのストレッチャブル電子装置の平面図である。
図9図8のE-E断面図である。
図10図8のF-F断面図である。
図11図8のG-G断面図である。
図12図8のストレッチャブル電子装置にフレキシブル配線基板を接続した状態を示す平面図である。
図13図12のH-H断面図である。
図14図12のI-I断面図である。
図15】実施例1のストレッチャブル電子装置の平面図である。
図16図15のJ-J断面図である。
図17図15のK-K断面図である。
図18図15のストレッチャブル電子装置にフレキシブル配線基板を接続した状態を示す平面図である。
図19図18のL-L断面図である。
図20】実施例1の第2の形態を示す平面図である。
図21図20のM-M断面図である。
図22】第2の比較例によるストレッチャブル電子装置の平面図である。
図23】実施例1の第3の形態を示す平面図である。
図24】第3の比較例によるストレッチャブル電子装置の平面図である。
図25図24のN-N断面図である。
図26】実施例2によるストレッチャブル電子装置の平面図である。
図27図26のO-O断面図である。
図28】実施例2の第2の形態によるストレッチャブル電子装置の平面図である。
図29図28のP-P断面図である。
図30】第4の比較例によるストレッチャブル電子装置の平面図である。
図31】実施例2の第3の形態によるストレッチャブル電子装置の平面図である。
図32】実施例3のストレッチャブル電子装置の平面図である。
図33図32のR-R断面図である。
図34図32のS-S断面図である。
図35図32のT-T断面図である。
図36】実施例3の第3の形態によるストレッチャブル電子装置の平面図である。
図37】実施例3の第4の形態によるストレッチャブル電子装置の平面図である。
図38】実施例3の第5の形態によるストレッチャブル電子装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に実施例を用いて本発明の内容を詳細に説明する。以後、伸縮可能な電子装置のことを、ストレッチャブル電子装置とも言う。
【実施例0014】
本発明は、特にストレッチャブル電子装置の端子領域の構成に関するものであるが、端子領域6はアクティブ領域5と同時に形成されるので、まず、アクティブ領域5の構成について説明する。図1は、アクティブ領域5の構成を説明するための、ストレッチャブル電子装置1の平面図である。アクティブ領域5については、比較例と、後で説明する実施例とは、ほぼ、同様な構成となっている。図1のストレッチャブル電子装置1は全体としては平板状となっているが、z方向に湾曲させたり、x-y平面上において、伸ばしたりすることが出来る。破断伸長率、すなわち、ストレッチャブル電子装置1が破壊するまでの伸び率は、ストレッチャブル電子装置1を構成する材料によっても異なるが、延性に富む有機材料が主となっている場合は、伸び率は30%程度が可能である、場合によっては、60%程度が可能な場合もある。一方、無機材料が比較的多く使用されていれば、伸び率は、10%乃至15%程度である。
【0015】
図1において、ストレッチャブル電子装置1は、アクティブ領域5が大きな領域を占めている。アクティブ領域5には、電子素子100がマトリクス状に配置している。電子素子100としては、例えば、センサ、半導体素子、アクチュエータ等を配置することが出来る。センサとしては、例えば、可視光あるいは赤外光を検出する光センサ、温度センサ、圧力センサ、タッチセンサ等を配置することが出来る。半導体素子としては、例えば、発光素子、受光素子、ダイオード、トランジスタ等を配置することが出来る。アクチュエータとしては、例えば、ピエゾ素子等を使用することができる。
【0016】
各電子素子100は走査線110及び信号線120と接続している。走査線110は横方向(x方向)に延在し、縦方向(y方向)に配列している、信号線120は縦方向に延在し、横方向に配列している。図1では、走査線110も信号線120も直線状に延在しているが、これは、図を複雑にしないためであり、実際には、図3に示すように、蛇行して走査線110は横方向に延在し、信号線120は縦方向に延在している。
【0017】
図1において、アクティブ領域5の外側には、駆動回路115、125や端子領域6が配置している。アクティブ領域5のx方向両側には走査線駆動回路115が配置し、アクティブ領域5のy方向上側には、電子素子100に電源を供給するための電源回路130が存在し、アクティブ領域5のy方向下側には信号線駆動回路125が配置している。信号線駆動回路125のさらに下側には、端子領域6が配置している。端子領域6にはストレッチャブル電子装置1に電源や信号を供給し、また、信号を外部に送るためのフレキシブル配線基板150が接続している。なお、図示していないが、フレキシブル配線基板150は、さらに他の配線基板に接続している。
【0018】
図2図1のA-A断面図である。図2は概略断面図である。図2において、図1で説明した電子素子100、走査線110、信号線120等は素子層2に存在している。つまり、ストレッチャブル電子装置1としての機能は素子層2に存在している。この素子層2を上側から上保護層3、下側から下保護層4によって覆っている。上保護層3も下保護層4も、弾性変形をしやすい、すなわち、ヤング率の小さい材料によって形成されている。
【0019】
図2において、アクティブ領域5及び駆動回路115、125等は、上保護層3と下保護層4によって覆われている。素子層2の端部には、上保護層3に覆われていない部分があり、この部分が端子領域6となっている。端子領域6は、下保護層4のみによって保護されている。端子領域6には、フレキシブル配線基板150が接続している。
【0020】
図3はアクティブ領域5の拡大平面図である。図3は、図2で示す素子層2の主要構成部分を示している。すなわち、図2で示す素子層2は、単一の平面基板として存在しているのではなく、図3に示すような、走査線110と信号線120が形成されたミアンダ構造部102、及び、走査線110と信号線120の交差部に形成される素子領域部101が存在する基材10で構成されている。言い換えると、基材10は、網目状の構造を有している。
【0021】
図3において、ミアンダ構造部102及び交点に存在する素子領域部101は、ポリイミド等の樹脂で構成されている。この樹脂を基材10として、その上に走査線110、信号線120、素子100等が形成されている。図3において、素子領域部101に、素子100が存在している。このような構成とするのは、ストレッチャブル電子装置1を引き延ばしたときにも、各部品に対する応力を軽減するためである。
【0022】
図3において、素子100のx方向の径、及び、y方向の径は、例えば、各々100μmである。素子100のx方向のピッチ及びy方向のピッチは、例えば、250μmである。また、ミアンダ構造部102における走査線110、映像信号線120等を含む基材10の幅は、例えば30μmである。
【0023】
図4は、図3のB-B断面図であり、走査線110を含むミアンダ構造部102の断面図である。図4において、基材10の上に第1有機絶縁膜20が形成されている。第1有機絶縁膜20の上に走査線110が形成されている。走査線110を覆って第2有機絶縁膜30が形成されている。図3における走査線110を含むミアンダ構造部102の平面図は、基材10の平面形状を表している。
【0024】
基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30は、例えばポリイミドで形成されている。ポリイミドは、機械的な強度、耐熱性等で優れた性能を持つので、走査線110や信号線120の基材10として好適である。すなわち、ストレッチャブル電子装置1を引き延ばした場合、ミアンダ構造部102に発生する応力は、基材10や第1有機絶縁膜20などを形成するポリイミドが引き受けるので、金属で形成された走査線110等にかかる応力は軽減される。
【0025】
走査線110は例えばTAT(Ti-Al-Ti、チタンーアルミニウムーチタン)構造を有する。三層構造において、導電性は主としてAlが担い、TiはAlの保護、あるいは、他の配線との接合の改良のために使用される。走査線110の材料はこのほかに、MoW(モリブデンータングステン合金)等、ストレッチャブル電子装置1の用途により種々の構成をとることが出来る。
【0026】
図3に示すように、走査線110を有するミアンダ構造部102(以後単に走査線110ともいう)は、形状が不安定なので、上下から保護層(図2で示す3、4)で固定している。まず、走査線110が形成されたミアンダ構造部102を有機材料で形成された上バッファー層40で覆う。その上を有機材料で形成された保護層50で覆う。基材10の下面には、有機材料で形成された下バッファー層60が配置し、その下に有機材料で下保護層70が形成されている。
【0027】
このように、上下に配置したバッファー層40、60及び保護層50、70によって、形状を安定させている。ところで、本発明の電子装置は、ストレッチャブル電子装置であるから、外部からの引っ張り応力に対して、伸縮可能である必要がある。したがって、ミアンダ構造部102を挟むバッファー層40、60及び保護層50、70は、基材10や第1有機絶縁膜20などを形成するポリイミドよりも延伸しやすい材料、すなわち、ヤング率の小さい材料であることが望ましい。このような材料としては、たとえば、アクリル、ウレタン、エポキシ、シリコーン等の樹脂が挙げられる。
【0028】
図5は、図3のC-C断面図であり、信号線120を有するミアンダ構造部102の断面図である。図5のミアンダ構造部102では、基材10の上に第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30が連続して形成されている。信号線120は、第2有機絶縁膜30の上に形成されている。実施例1においては、信号線120は、走査線と同じ材料、すなわち、TAT(Ti-Al-Ti)構造を有しているが、ストレッチャブル電子装置の用途によって他の材料と変えてもよい。その他の構造は、図4で説明した走査線110部分の断面形状と同じである。
【0029】
図6は、素子領域部101の拡大平面図である。素子領域部101は、島状に形成された基材10からなる。図6における素子領域部101は概略8角形のような形となっているが、他の形状でも良い。図6においては、走査線110も信号線120も直線となっているが、図6よりも外側では、図3に示すようなミアンダ構造となっている。
【0030】
図6において、素子領域部101に、素子100が配置している。素子領域部101において、信号線120と走査線110が絶縁膜を介して交差している。ただし、図6は模式図であり、実際の装置では、走査線110、映像信号線120とも、素子100を駆動するトランジスタ等と接続する。
【0031】
図7図6のD-D断面図である。図7において、基材10の上に無機絶縁膜80が形成されている。無機絶縁膜80は、その上側に形成される素子100等に対して、下側から侵入する不純物などをブロックする。図7では、無機絶縁膜80は基材10の上に形成されているが、これは例であり、必要に応じて、素子100に近い層に形成してもよい。
【0032】
無機絶縁膜80は、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン酸化膜(SiO膜)、あるいは、これらの積層膜で形成される。場合によっては、アルミニウム酸化膜(AlO)が使用される場合もある。無機絶縁膜80は剛性が高いが、素子領域部101にのみ形成されているので、ストレッチャブル電子装置1の伸縮性に対する影響は小さい。
【0033】
無機絶縁膜80を覆って第1有機絶縁膜20が、例えばポリイミドで形成されている。第1有機絶縁膜20の上に走査線110が横方向(x方向)に延在している。走査線110及び第1有機絶縁膜20を覆って、例えばポリイミドによって第2有機絶縁膜30が形成されている。第2有機絶縁膜30の上を信号線120がy方向に延在している。
【0034】
そして信号線120を覆って素子100が配置している。図7は模式図であり、素子100と、走査線110や信号線120等の接続構造は省略されている。一例としては、素子100と走査線110あるいは信号線120との間に薄膜トランジスタ(TFT)を配置し、薄膜トランジスタを走査線制御回路115、信号線制御回路125によって制御することによって、素子100からの信号、あるいは、素子100への信号を制御する。
【0035】
図7において、素子100としてどのようなものを配置するかによって、図7における素子100と信号線120との間の配線構造は異なる。素子領域101では、複数の有機または無機の絶縁膜が形成される可能性もある。
【0036】
図6に示す平面構造は、図7における基材10から素子100までの断面構造に対応する。このままだと、平面形状は図3に示すようなものになり、不安定である。そこで、図4で説明したように、上バッファー層40、上保護層50、下バッファー層60、下保護層70を形成し、全体を平板状にまとめて形状を安定化している。また、図4で説明したように、上バッファー層40、上保護層50、下バッファー層60、下保護層70は、基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30等よりも、ヤング率の小さい材料を使用しているので、ストレッチャブル電子装置1の伸縮性を損なわない構成となっている。
【0037】
図8は、比較例によるストレッチャブル電子装置1の端子領域6の詳細平面図である。図8において、アクティブ領域5の構成は、図1乃至図7で説明したのと同じである。図8において、端子配線200がアクティブ領域5の信号線120と同様に縦方向(y方向)に延在している。端子領域6の下側端部には、複数の端子210が横方向(x方向)に配列している。
【0038】
図9図8のE-E断面図である。図9において、アクティブ領域5で説明した、上バッファー層40及び上保護膜50はまとめて上保護層3として記載されている。また、下バッファー層60及び下保護膜70はまとめて下保護層4として記載されている。さらに、基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30は、まとめて、基材15として記載されている。以下の図面でも同じである。図9に示すように、端子配線200及び端子210の存在している部分では、基材15が端部まで存在している。
【0039】
図10図8のF-F断面図である。図10に示すように、端子領域6においても、端子配線200及び端子210の存在していない部分では基材15は存在していない。端子領域6においても、ストレッチャブル構造を維持するためである。図11図8のG-G断面図である。図11において、端子210の存在している部分にのみ、基材15が存在している。
【0040】
図12図8に示す端子領域6にフレキシブル配線基板150を接続した状態を示す平面図である。図12において、端子領域6の端子210とフレキシブル配線基板の配線152が接続している。
【0041】
図13は、図12のH-H断面図である。図13において、フレキシブル配線基板150は概略、基材151、配線152及びオーバーコート膜153によって構成されている。図13において、端子領域6の端子200とフレキシブル配線基板150の配線152は、ACF(Anisotropic Conductive Film)160によって接続している。
【0042】
図14は、図12のI-I断面図である。この部分では、端子領域6には、端子配線200及び端子210は存在しないので、対応するフレキシブル配線基板150においても配線152は存在していない。但し、ACF160はフレキシブル配線基板150と端子領域6の接着のために存在している。
【0043】
図12に示すように、ストレッチャブル電子装置1の端子領域6は、アクティブ領域5で説明したと同様に、他の有機材料よりも硬いポリイミドで形成された基材15は、ミアンダ構造の配線200及び端子210が形成された部分にのみ記載されている。一方、フレキシブル配線基板150はこのような構造ではなく、基板151全面がポリイミドで形成されている。そうすると、特に、横方向(x方向)において、端子領域6とフレキシブル配線基板150の延伸性の差が非常に大きくなる。
【0044】
つまり、ストレッチャブル電子装置1を延伸させた場合、特に横方向(x方向)において、端子領域6とフレキシブル配線基板150の間にストレスが生ずる。このストレスは、フレキシブル配線基板150の配線152と端子領域6の端子210の間に集中して生ずる。そうすると、フレキシブル配線基板150とストレッチャブル電子装置1との接続が不安定になり、信頼性に影響を与えることになる。
【0045】
本発明は、この問題を対策するものである。図15は、実施例1における端子領域6の構成を示す平面図である。図15が比較例である図8と異なる点は、端子210の間を接続するように、連結部300が形成されている点である。
【0046】
図15において、連結部300は、基材15と同じ材料で形成されている。すなわち、基材15を形成するときに同時に形成することが出来るので、プロセス数は増加しない。
【0047】
図15においては、連結部300の縦方向(y方向)の幅w1は端子210の縦方向(y方向)の幅w2よりも小さい。しかし、これに限らず、連結部300の縦方向(y方向)の幅w1は、端子領域6の横方向(x方向)の延伸性を考慮して、調整すればよい。例えば、連結部300の縦方向(y方向)の幅w1の好ましい範囲は3μm以上、端子210の縦方向(y方向)の幅w2と同等以下である。ところで、延伸性は、ヤング率の大きさで表現することも出来る。すなわち、連結部300の幅によって、端子領域6における、端子210部分の横方向(x方向)のヤング率を調整することが出来る。
【0048】
図16図15のJ-J断面図である。図17図15のK-K断面図である。図17において、基材15と連結部300は、連続して、同じポリイミドで形成されているので、現実には境界は存在していないが、図17では、わかりやすくするために、点線で区別している。端子210は、基材15の上にのみ形成されている。
【0049】
図18は、図15の端子領域6にフレキシブル配線基板150を接続した状態を示す平面図である。図18の基本的な構成は、図15で説明したのと同じである。すなわち、端子210とフレキシブル配線基板150の接続部分は、図12のH-H断面と同じである。図18において、L-L断面図が図12の構成と異なる点である。
【0050】
図19は、図18のL-L断面図である。この部分は、端子配線200及び端子210が存在しない部分である。図19において、ACF160は、連結部300とフレキシブル配線基板150の基材151を接続している。連結部300の存在によって、図19における横方向(x方向)の、フレキシブル配線基板150とストレッチャブル電子装置1の端子領域6における端子210部分のヤング率の差を小さくしている。
【0051】
図20は実施例1の他の形態を示す端子領域6の平面図である。図20図15と異なる点は、端子210と端子210の間に連結部300に加えて、第2連結部350が形成されている点である。なお、第2連結部350は、端子210と端子210の間に形成されるので、ブリッジ層350と呼ぶことも出来る。なお、図20では、連結部300及び350の幅w1も端子領域6の端子210部分が、所定のヤング率を持つように調整すればよい。
【0052】
図21は、図20のM-M断面図である。図21において、連結部300の上に第2連結部350が形成されている。第2連結部350の材料は、絶縁物である限りどのような材料でもよい。例えば、横方向(x方向)の引っ張り強度を効果的に調整するために、酸化シリコン(SiO)あるいは、窒化シリコン(SiN)等の無機膜を使用してもよい。また、第2連結部350は、基材15よりも硬い材料を使用するので、厚さは、基材15よりも薄くてよい。
【0053】
ストレッチャブル電子装置1の端子領域6の縦方向(y方向)の延伸性は小さくてもよい場合がある。この場合、端子領域6において、端子配線200は直線状とする場合もある。図22はこの例を示す平面図である。図22において、アクティブ領域5における、走査線110、信号線120等はミアンダ構造であるが、端子配線200は、縦方向(y方向)に直線となっている。しかし、横方向(x方向)にはストレッチャブルな構造を維持するために、基材15は、端子配線200及び端子210の下のみに形成されている。そうすると、図8乃至図14で説明したのと同様な問題が生ずる。
【0054】
しかし、横方向(x方向)において、端子領域6とフレキシブル配線基板150の延伸性に起因する、端子210のストレスの問題は、端子配線200がミアンダ構造の場合と直線構造の場合とでは同じである。図23は、図15の構成を、端子配線200が直線の場合に対して適用した場合の平面図である。連結部300及びその他の構成は、図15の場合と同様である。このように、図15ないし図21において説明したのと同じ構成によって、図23の構成においても、端子210におけるストレスを対策することが出来る。
【実施例0055】
端子配線200の密度が大きくなると、端子210を複数行に配置する場合がある。図24は、端子配線200をミアンダ構造にして、端子210を2行に配置した構造の平面図である。図25は、図24のN-N断面図である。図25は、実施例1の図11と同じ構成となっている。一方、図24に接続するフレキシブル配線基板の端子配置も図24と同様に2行配置となっている。したがって、図24の構成も実施例1で説明したのと同様な問題を有している。
【0056】
図26は、端子を2行に配置した場合の構成において、本発明を適用した場合の平面図である。端子は2行に形成されているので、引っ張り強度の調整は、横方向(x方向)のみでなく、縦方向(y方向)にも行う必要がある。したがって、図26では、連結部300を横方向(x方向)及び縦方向(y方向)に形成している。端子210部分における引っ張り強度は、連結部300の幅w1によって調整可能である。
【0057】
図27は、図26のO-O断面図である。図27において、基材15と連結部300の間の点線は、単に説明のためのものであり、実際は同一のポリイミドで形成されおり、境界は存在していない。また、基材15と連結部300とは同じ材料で形成されており、プロセス数は増加しない。
【0058】
図28は、実施例2の他の形態を示す平面図である。図28図26と異なる点は、連結部300の上に第2連結部350が形成されている点である。図29は、図28のP-P断面図である。実施例1で説明したと同様に、第2連結部350の材料は、絶縁物である限りどのような材料でもよい。横方向(x方向)のヤング率を効果的に調整するために、酸化シリコン(SiO)あるいは、窒化シリコン(SiN)等の無機膜を使用してもよい。
【0059】
図30は、端子配線200が直線の場合である。但し、アクティブ領域5における各配線はミアンダ構造である。図30のQ-Q断面図は、図25と同じである。したがって、端子配線200が直線の場合も、端子配線200がミアンダ構造である場合と同様な問題点を有している。図31は、図30の構成に対して本発明を適用した場合の端子領域6の平面図である。図31におけるR-R断面図は、図27と同様である。このように、図30のような構成に対しても、図26乃至図29で説明したような、構造をとることによって、端子領域6とフレキシブル配線基板150の延伸性の差によるストレスを軽減することが出来る。
【実施例0060】
実施例1及び2の構成は、下保護層4等において、端子210あるいは端子配線200が形成されている側において、基材15と同じ材料によって連結部300を形成する、あるいは、基材15とは別な材料によって、第2連結部350を形成する、等の構成をとるものである。この構成は、端子領域6の端子210部分において、端子210の配列方向の引っ張り強度を大きくし、その結果、ストレッチャブル電子装置の端子領域6とフレキシブル配線基板の間のストレスを緩和する効果を得るものである。
【0061】
実施例3では、下保護層4等において、端子210あるいは端子配線200が形成されている側に、下保護層40あるいは基材15等よりもヤング率の大きい材料を形成することによって、端子領域6において、端子210の配列方向の引っ張り強度を大きくする構成をとる。これによって端子領域6の端子210とフレキシブル配線基板150の間のストレスを緩和する効果を得るものである。
【0062】
図32は、実施例3の第1の形態を示す平面図である。図32の端子領域において、端子210や端子配線200が形成されている側の構成は、図8で説明したのと同じ構成である。図32の特徴は、下保護層4の裏側において、端子210と同じ程度の幅で、横方向(x方向)に延在する第3連結部400を形成する構成である。
【0063】
図33図32のR-R断面図であり、図34図32のS-S断面図であり、図35図32のT-T断面である。図33乃至図35に示す第3連結部400の材料のヤング率は、下保護層4を構成する材料、及び、基材15を構成する材料のヤング率よりも大きい。これは、第3連結部400の厚さを大きくしなくとも、所定の効果を得るためである。
【0064】
第3連結部400が形成されている側には端子配線200あるいは端子210は形成されていないので、第3連結部400の材料として、導電性の材料を用いることが出来る。例えば、ITO(Indiun Tin Oxide)等の透明導電膜、あるいは、金属を用いることが出来る。透明導電膜であれば、端子領域の外観はほとんど変化しない。このような材料を使用した場合、第3連結部400の厚さは例えば50nm程度であれば、効果を得ることが出来る。
【0065】
第3連結部400として、絶縁性の膜を形成しても問題はない。例えば、酸化シリコン(SiO)あるいは窒化シリコン(SiN)は、大きなヤング率を有し、かつ、透明なので、第3連結部400としては好適である。
【0066】
図32では、第3連結部400の幅は、端子210と同程度であるが、この幅は、必要に応じて変えることが出来る。図36は第3連結部400の幅が端子210の幅よりも小さい場合である。第3連結部400の幅は、横方向(x方向)における必要な引っ張り強度、第3連結部を形成する材料のヤング率、厚さ等を勘案して変化させることが出来る。
【0067】
図32乃至図36は端子領域6の端子配線200がミアンダ構造の場合であるが、端子配線200が直線の場合も、同様に、第3連結部400を適用することが出来る。図37は、図32に対応する平面図である。図38は、図36に対応する平面図である。いずれの場合も、第3連結部400の構造については、ミアンダ構造において説明した構成を適用することが出来る。
【符号の説明】
【0068】
1…ストレッチャブル電子装置、 2…素子層、 3…上保護層、 4…下保護層、 5…アクティブ領域、 6…端子領域、 10…基材、 15…基材、 20…第1有機絶縁膜、 30…第2有機絶縁膜、 40…上バッファー層、 50…上保護膜、 60…下バッファー層、 70…下保護膜、 80…無機絶縁膜、 100…素子、 101…素子領域部、 102…ミアンダ構造部、 110…走査線、 115…走査線駆動回路、 120…信号線、 125…信号線駆動回路、 130…電源回路、 150…フレキシブル配線基板、 151…フレキシブル配線基板の基材、 152…配線、 153…オーバーコート、 160…ACF(異方性導電性接着材)、 200…端子配線、 210…端子、 300…連結部、 350…第2連結部、 400…第3連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38