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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099993
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】楽器
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/02 20060101AFI20240719BHJP
   G10D 1/08 20060101ALI20240719BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20240719BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G10D3/02
G10D1/08
H04R7/04
H04R1/00 310F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003667
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】江國 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】保野 秀久
(72)【発明者】
【氏名】石井 潤
【テーマコード(参考)】
5D002
5D016
【Fターム(参考)】
5D002AA04
5D002CC02
5D002CC03
5D016AA01
(57)【要約】
【課題】加振器を音響部材に取り付けても、音響部材の振動特性の変動を抑制することができる楽器を提供する。
【解決手段】発音源の振動が伝達される響板15を含む本体10と、入力信号に応じて前記響板15を加振する加振器30と、を含み、前記加振器30は、前記響板15に固定され、前記入力信号に応じて前記響板15を加振する加振部34と、前記入力信号に応じて前記加振部34に対して変位する変位部33と、弾性部材37を含み、前記本体10に対して前記弾性部材37を介して前記変位部33を支持する支持部32と、を含み、前記加振器30の少なくとも一部が、前記響板15のうち前記加振部34との接触領域から幅方向に延在する領域の中心と重畳する、楽器。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発音源の振動が伝達される響板を含む本体と、
入力信号に応じて前記響板を加振する加振器と、
を含み、
前記加振器は、
前記響板に固定され、前記入力信号に応じて前記響板を加振する加振部と、
前記入力信号に応じて前記加振部に対して変位する変位部と、
弾性部材を含み、前記本体に対して前記弾性部材を介して前記変位部を支持する支持部と、
を含み、
前記加振器の少なくとも一部が、前記響板のうち前記加振部との接触領域から幅方向に延在する領域の中心と重畳する、楽器。
【請求項2】
発音源の振動が伝達される響板を含む本体と、
入力信号に応じて前記響板を加振する加振器と、
を含み、
前記加振器は、
前記響板に固定され、前記入力信号に応じて前記響板を加振する加振部と、
前記入力信号に応じて前記加振部に対して変位する変位部と、
弾性部材を含み、前記本体に対して前記弾性部材を介して前記変位部を支持する支持部と、
を含み、
前記響板のうち前記加振部との接触領域の中心と、前記接触領域から幅方向に延在する領域の中心との距離は、前記支持部の前記幅方向の長さの1/2以下である、楽器。
【請求項3】
発音源の振動が伝達される響板を含む本体と、
入力信号に応じて前記響板を加振する加振器と、
を含み、
前記加振器は、
前記響板に固定され、前記入力信号に応じて前記響板を加振する加振部と、
前記入力信号に応じて前記加振部に対して変位する変位部と、
弾性部材を含み、前記本体に対して前記弾性部材を介して前記変位部を支持する支持部と、
を含み、
前記加振器の少なくとも一部が、前記響板における所定の振動モードの対称軸上に重畳する、楽器。
【請求項4】
前記入力信号は、前記発音源の振動を示す信号に基づいて生成される、請求項1乃至3の何れか一項に記載の楽器。
【請求項5】
前記変位部の重さは、前記加振部の重さよりも重い、請求項1乃至3の何れか一項に記載の楽器。
【請求項6】
前記加振器の少なくとも一部は、前記変位部の少なくとも一部である、請求項1又は3に記載の楽器。
【請求項7】
前記加振器の少なくとも一部は、前記加振部の少なくとも一部である、請求項1又は3に記載の楽器。
【請求項8】
前記本体はギターであり、
前記加振部の少なくとも一部は、前記響板の面に垂直な方向から見たときに前記本体の表板に設けられたサウンドホールよりもブリッジ側に位置する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
楽器の中には、発音源の振動が伝達される響板等を加振器により振動させて発音させる楽器がある。このような楽器として、例えば、特許文献1には、入力された信号に応じて裏板を振動させる加振器が取り付けられたアコースティックギターが開示されている。また、特許文献2には、ボディに取り付けられ、該ボディを振動させる加振器が取り付けられた弦楽器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-129694号公報
【特許文献2】米国特許第11308929号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アコースティックギターの表板または裏板のような音響部材に所定の重量を有する加振器が取り付けられる場合、音響部材の振動特性は、加振器の重量に影響を受ける。そのため、加振器が取り付けられていない場合と、加振器が取り付けられた場合とで、音響部材の振動特性が異なってしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的の一つは、加振器を音響部材に取り付けても、音響部材の振動特性の変動を抑制することができる楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、発音源の振動が伝達される響板を含む本体と、入力信号に応じて前記響板を加振する加振器と、を含み、前記加振器は、前記響板に固定され、前記入力信号に応じて前記響板を加振する加振部と、前記入力信号に応じて前記加振部に対して変位する変位部と、弾性部材を含み、前記本体に対して前記弾性部材を介して前記変位部を支持する支持部と、を含み、前記加振器の少なくとも一部が、前記響板のうち前記加振部との接触領域から幅方向に延在する領域の中心と重畳する、楽器が提供される。
【0007】
一実施形態によれば、発音源の振動が伝達される響板を含む本体と、入力信号に応じて前記響板を加振する加振器と、を含み、前記加振器は、前記響板に固定され、前記入力信号に応じて前記響板を加振する加振部と、前記入力信号に応じて前記加振部に対して変位する変位部と、弾性部材を含み、前記本体に対して前記弾性部材を介して前記変位部を支持する支持部と、を含み、前記響板のうち前記加振部との接触領域の中心と、前記接触領域から幅方向に延在する領域の中心との距離は、前記支持部の前記幅方向の長さの1/2以下である、楽器が提供される。
【0008】
一実施形態によれば、発音源の振動が伝達される響板を含む本体と、入力信号に応じて前記響板を加振する加振器と、を含み、前記加振器は、前記響板に固定され、前記入力信号に応じて前記響板を加振する加振部と、前記入力信号に応じて前記加振部に対して変位する変位部と、弾性部材を含み、前記本体に対して前記弾性部材を介して前記変位部を支持する支持部と、を含み、前記加振器の少なくとも一部が、前記響板における所定の振動モードの対称軸上に重畳する、楽器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加振器を音響部材に取り付けても、音響部材の振動特性の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態に係るアコースティックギターを示す正面図である。
図2図1に示したギターのボディの裏板の内側部分を示す平面図である。
図3図2におけるA1-A2線に沿った断面図である。
図4】加振器が取り付けられる位置を説明するための図である。
図5】加振器が取り付けられる位置の一例を説明するための図である。
図6】加振器が取り付けられる位置の一例を説明するための図である。
図7】加振器が取り付けられる位置の一例を説明するための図である。
図8】加振器が取り付けられていないギター本体の裏板の振動モードの一例を示す図である。
図9】加振器が取り付けられているギター本体の裏板の振動モードの一例を示す図である。
図10】加振器が取り付けられているギター本体の裏板の振動モードの一例を示す図である。
図11】加振部の面を内側面側からZ軸方向に向かって見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、Bなど付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。図面は、説明を明確にするために、寸法比率が実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりして、模式的に説明される場合がある。
【0012】
一実施形態に係る楽器は、所定の重量を有する加振器を音響部材に取り付け可能である。一実施形態に係る楽器において、加振器が音響部材に取り付けられた場合であっても、加振器による音響部材の振動特性の変動は抑制される。つまり、音響部材の振動は、加振器によって制約されにくい。これは、音響部材における加振器の取り付け位置を調整することにより実現される。以下、一実施形態に係る楽器について説明する。以下に説明する実施形態では、一例として、楽器がアコースティックギターである場合を説明する。尚、本発明に係る楽器は、アコースティックギターに限定されるわけではない。
【0013】
[第1実施形態]
図1図3を参照して、本発明の一実施形態に係る楽器について説明する。図1は、第一実施形態に係るアコースティックギターを示す正面図である。図2は、図1に示したギターのボディの裏板の内側面を該内側面に垂直な方向から見た平面図である。図3は、図2におけるA1-A2線に沿った断面図である。
【0014】
図1に示すように、アコースティックギター1(以下、ギター1と呼ぶ)は、ギター本体10(楽器本体)と、加振器30と、を備える。ギター本体10は、ボディ11と、ネック12と、弦13と、を備える。
【0015】
ボディ11は、内部に空洞を有する箱状に形成されている。ボディ11は、表板14、裏板15及び側板16を有する。表板14及び裏板15は、互いに同一形状とされた平板である。表板14と裏板15とは、これらの板厚方向に互いに間隔をあけて配される。側板16は、裏板15の周縁から表板14の周縁まで延びる。これら表板14、裏板15及び側板16によって、内部に空洞を有するボディ11が構成される。以下の説明では、表板14と裏板15とが並ぶ方向(Z軸方向)を上下方向と呼ぶことがある。
【0016】
表板14には、その板厚方向に貫通する響孔17(サウンドホール)が形成されている。響孔17は、ボディ11の空洞をボディ11の外側の空間につなぐ。また、表板14の外面には、弦13の長手方向の第一端を留めるブリッジ18が設けられている。
【0017】
ネック12は、ボディ11から、上下方向(Z軸方向)に概ね直交する方向に延びている。ネック12の先端には、弦13の長手方向の第二端側を巻き取るためのヘッド19が設けられている。以下の説明では、上下方向に直交し、ネック12が主に延びる方向(Y軸方向)を前後方向と呼ぶことがある。また、上下方向及び前後方向に直交する方向を左右方向(X軸方向)と呼ぶことがある。
【0018】
弦13は、前後方向においてボディ11とネック12とにわたって張られている。具体的には、弦13の第一端がボディ11のブリッジ18に留められ、弦13の第二端側がヘッド19において巻き取られる。これにより、弦13は、ブリッジ18とヘッド19との間で張られる。
【0019】
弦13と表板14の外面との間には、振動伝達部20(サドル)が設けられている。これにより、ギター1では、弦13の振動が振動伝達部20を介して表板14に伝達されることで、表板14が振動し、また、裏板15や側板16も振動する。これにより、ボディ11内(空洞)の空気が共鳴し、音がボディ11の外側に放射される。
【0020】
ボディ11の裏板15は、上下方向において表板14に対向する内側面15aを有する。図2に示すように、裏板15の内側面15aには、四つの響棒24が取り付けられている。響棒24は、それぞれ内側面15aに対して接着等によって所定の位置に固定されている。図2に例示する響棒24の形状、本数、位置等は、一例であり、裏板15の剛性を高める目的やギター1の音色を調整する図る目的などに応じて、位置等は適宜変更されてよい。
【0021】
四つの響棒24は、それぞれ内側面15aに沿って延びる棒状に形成されている。各響棒24は、その長手方向が左右方向に向くように配置されている。四つの響棒24は、前後方向に間隔をあけて並んでいる。裏板15のうち響棒24を設けた部分は、裏板15の他の部分と比較して剛性が高い。このため、裏板15のうち響棒24の設置部分は、裏板15の他の部分よりも振動し難く、振動の節となる可能性が高い。
【0022】
図2において図示はしていないが、内側面15aには剥ぎ止めが設けられてもよい。剥ぎ止めは、内側面15aに沿って延びる帯板状に形成されている。剥ぎ止めは、その長手方向が前後方向に向くように、左右方向における裏板15の内側面15aの中央部に配置されている。剥ぎ止めは、二枚の板材を左右方向の中央で接着して構成された裏板15の接着の剥がれを防ぐ。
【0023】
図3に示すように、加振器30は、加振器本体31(以下、本体31と呼ぶ)と、支持部32と、を備える。
【0024】
本体31は、前述したボディ11の裏板15(響板)を加振する。本体31は、変位部33と、加振部34と、を有する。本体31は、図示しない出力装置に接続される。本体31は、出力装置と有線で接続されてもよいし、あるいは、本体31に設けられた無線ユニット(図示せず)が出力装置からの信号を受信するように出力装置と無線で接続されてもよい。出力装置は、予め記憶された楽曲データや音響・音声のデータ、又はギター1の発音源(弦13)の振動を示す信号に基づいて生成される入力信号(電気信号)を本体31に出力する。加振器30の本体31は、出力装置から供給された入力信号を受信する。本体31は、入力信号に応じて裏板15を加振する。
【0025】
具体的には、入力信号に応じて、変位部33が加振部34に対して変位する。変位部33は、入力信号に応じて加振部34に対して変位するように振動する。変位部33は、支持部32によって支持されているため、変位部33の振動によって加振部34が振動する。加振部34は、裏板15の内側面15aに接触して固定されている。加振部34は、裏板15を加振する。本体31は、例えばボイスコイル型のアクチュエータであってよい。この場合、変位部33が磁性体部を有し、加振部34がボイスコイルを有してよい。変位部33の重量は、加振部34の重量と比較して十分に重い。これにより、変位部33の振動により加振部34も振動させることができる。尚、図示はしないが、変位部33と加振部34との間に、加振部34の振動をガイドするための弾性部材が設けられてもよい。
【0026】
支持部32は、裏板15と変位部33との間に介在している。支持部32は、裏板15の内側面15aに取り付けられている。支持部32は、加振部34が裏板15の内側面15aに接触するように、また、変位部33が裏板15に対して弾性的に変位するように、変位部33を支持する。以下、支持部32の具体的な構成について説明する。
【0027】
支持部32は、支持脚35と、ブラケット36と、弾性部材37と、を備える。支持脚35は、裏板15の内側面15aから上方(Z軸正方向)に延びている。本実施形態では、二つの支持脚35が、裏板15の内側面15aにおいて前後方向に隣り合う二つの響棒24にそれぞれ固定されている。支持脚35は、接着剤(図示せず)等によって響棒24に固定されてよい。
【0028】
ブラケット36は、本体31を固定する部材である。ブラケット36は、上下方向を厚さ方向とする板状又はシート状に形成されている。ブラケット36は、支持脚35の先端に設けられている。具体的には、ブラケット36の縁部分が支持脚35によって支持されている。これにより、ブラケット36は、上下方向において裏板15の内側面15aに対して間隔をあけて配置される。ブラケット36は、ネジや接着剤(図示せず)等によって支持脚35の先端に固定されてよい。
【0029】
裏板15の内側面15aに対向するブラケット36の対向面36a側には、弾性部材37を介して変位部33が固定されている。弾性部材37は、可撓性を有している。弾性部材37を構成する材料は、樹脂材料や金属材料などであってよい。弾性部材37が可撓性を有していることで、弾性部材37を介してブラケット36に固定された変位部33は、裏板15に対して弾性的に変位する。
【0030】
図4乃至図7は、裏板15において、加振器30が取り付けられる位置を説明するための図である。図4乃至図6では、図2と同様に、裏板15の内側面15aを内側面15aから垂直な方向(Z軸方向)から見た平面図を示している。図4乃至図6に示すように、内側面15aを内側面15aから垂直な方向から見たとき、加振器30は、加振器30の少なくとも一部が、裏板15(響板)のうち加振部34との接触領域Aから幅方向に延在する領域Bの中心C1と重畳するように配置される。ここで、裏板15(響板)の幅方向とは、ネック12が延長する方向と垂直な方向、即ち、左右方向(X軸方向)である。領域Bは、接触領域Aの前後方向(Y方向)に平行な幅と同一の幅を有し、左右方向(X軸方向)における裏板15の両端部15e1、15e2を含む領域である。
【0031】
内側面15aを内側面15aから垂直な方向から見たとき、領域Bの中心C1と重畳する加振器30の少なくとも一部は、支持部32のブラケット36の少なくとも一部であってもよく、変位部33の少なくとも一部であってもよく、或いは、加振部34の少なくとも一部(加振部34のうち接触領域Aに接する部分に囲まれた領域)であってもよい。図4では、一例として、ブラケット36の一部、変位部33の一部、及び加振部34のうち接触領域Aと接する部分に囲まれた領域が領域Bの中心C1と重畳している場合を示している。図5では、ブラケット36の一部、及び変位部33の一部が、領域Bの中心C1と重畳している場合を示している。図6では、ブラケット36の一部が、領域Bの中心C1と重畳している場合を示している。
【0032】
換言すると、加振器30は、裏板15(響板)のうち加振部34との接触領域Aの中心と、接触領域Aから幅方向、即ち、左右方向(X軸方向)に延在する領域Bの中心C1との距離が、左右方向(X軸方向)における支持部32のブラケット36の幅の1/2以下である。接触領域Aの中心と領域Bの中心C1との距離は、例えば、左右方向(X軸方向)における変位部33の幅の1/2であってもよく、左右方向(X軸方向)における加振部34の幅の1/2であってもよい。
【0033】
図7では、図5に示した加振器30の位置と同様に、加振器30の変位部33の一部、及びブラケット36の一部が、領域Bの中心C1と重畳している場合における、加振器30近傍を示している。換言すると、図7では、裏板15のうち加振部34との接触領域Aの中心C2と、接触領域Aから幅方向、即ち、左右方向(X軸方向)に延在する領域Bの中心C1との距離は、左右方向(X軸方向)における変位部33の幅の1/2以下である。
【0034】
このように、加振器30を、加振器30の少なくとも一部が、裏板15のうち加振部34との接触領域Aから幅方向、即ち、左右方向(X軸方向)に延在する領域Bの中心C1と重畳するように配置することにより、加振器30を裏板15に取り付けてギター1を演奏する際に、加振器30の重量による裏板15の振動特性の変動を抑制することができる。特に、ギター1の低音域での振動特性の変動を抑制することができ、ギター1の音響特性を向上させることができる。
【0035】
さらに、加振器30を取り付ける位置をギター1の低音域での振動特性の変動を抑制する場合、裏板15(響板)の面に垂直な方向から見たときに、加振部34の少なくとも一部、具体的には加振部34のうちの裏板15と接触する部分が、表板14に設けられた響孔17(サウンドホール)よりもブリッジ18側に位置することが好ましい。
【0036】
[第2実施形態]
以上に述べた第1実施形態では、図4乃至図6を参照し、加振器30は、加振器30の少なくとも一部が、裏板15(響板)のうち加振部34との接触領域Aから幅方向、即ち、左右方向(X軸方向)に延在する領域Bの中心C1と重畳するように配置されることを説明した。しかしながら、加振器30は、加振器30の少なくとも一部が、裏板15(響板)における所定の振動モードの対象軸上に重畳するよう配置されてもよい。
【0037】
ギター本体10のボディ11には、所定の周波数(所定の周波数帯域)に対応する振動モードが存在する。振動モードとは、所定の周波数(所定の周波数帯域)に対応する共振点と該共振点の振動パターンを意味する。
【0038】
図8は、加振器30を取り付けていないギター本体10の裏板15の振動モードの一例を示す図である。図8では、(0,0)モード、(0,1)モード、(0,2)モード、(0,3)モード、及び(1,1)モードに対応する五つの振動パターンの一例を示している。図8に示した振動パターンにおいて、白色で示す部分の変位が最も大きく、色が濃くなるにつれて変位は漸次小さくなり、黒色で示す部分の変位は最も小さい。
【0039】
図8に示すように、ギター本体10の裏板15における各振動モードに対応する振動パターンは、軸ASを中心に略線対称である。つまり、軸ASは対称軸である。対称軸ASは、裏板15の左右方向(X軸方向)における幅の略中心線である。このようなギター本体10に加振器30を取り付ける場合、加振器30の少なくとも一部が所定の振動モードの対称軸AS上に重畳するように配置することにより、加振器30を裏板15(響板)に取り付けても、裏板15の振動特性の変動を抑制することができる。
【0040】
図9は、加振器30の少なくとも一部を、裏板15の各振動モードの対称軸AS上に重畳するように配置した場合における、裏板15の振動モードの一例を示す図である。図9に示すように、加振器30は、裏板15に取り付けられた四つの響棒24のうち、図中の右側及び右から二番目の響棒24の間に設置した。図9では、(0,0)モード、(0,1)モード、(0,2)モード、(0,3)モード、及び(1,1)モードに対応する振動パターンを示している。図9に示した振動パターンにおいて、白色で示す部分の変位が最も大きく、色が濃くなるにつれて変位は漸次小さくなり、黒色で示す部分の変位は最も小さい。
【0041】
図9に示すように、加振器30の少なくとも一部を、裏板15の各振動モードの対称軸AS上に重畳するように配置した場合、図8に示した加振器30を取り付けていないギター本体10の裏板15と略同様の振動パターンを示しており、振動パターンの対称性は崩れていない。これは、加振器30が取り付けられていない場合と、加振器30が取り付けられた場合とで、裏板15(響板)の振動特性がほとんど変動していない、つまり、加振器30を裏板15に取り付けてギター1を演奏する際に、裏板15の振動特性の変動を抑制することができることを示している。
【0042】
図10は、加振器30が、裏板15の各振動モードの対称軸AS上に重畳しないように配置された場合における、裏板15の振動モードの一例を示す図である。具体的には、図10では、加振器30が裏板15の各振動モードの対称軸AS上に重畳しないように、裏板15の左右方向(X軸方向)における幅の中心線CLから約10cm離れた位置に加振器30の中心が位置するように、加振器30を裏板15に取り付けた場合における、裏板15の振動モードを示している。図10では、(0,0)モード、(0,1)モード、(0,2)モード、(0,3)モード、及び(1,1)モードに対応する振動パターンを示している。図10に示した振動パターンにおいて、白色で示す部分の変位が最も大きく、色が濃くなるにつれて変位は漸次小さくなり、黒色で示す部分の変位は最も小さい。
【0043】
図10に示すように、加振器30を、裏板15の各振動モードの対称軸AS上に重畳しないように配置した場合、いずれの振動モードにおいても振動パターンの対称性が崩れており、特に(0,3)モード及び(1,1)モードでは、振動パターンの対称性が大きく崩れていることが分かる。つまり、加振器30を裏板15の各振動モードの対称軸AS上に重畳しないように配置した場合、加振器30が取り付けられていない場合と、加振器30が取り付けられた場合とで、裏板15(響板)の振動特性が、加振器30の重量によって変動したことを示している。
【0044】
以上に述べたように、ギター本体10の裏板15(響板)に加振器30を取り付ける場合、加振器30の少なくとも一部が、裏板15の所定の振動モードの対称軸AS上に重畳するように配置することにより、加振器30を裏板15に取り付けてギター1を演奏する際に、加振器30の重量による裏板15の振動特性の変動を抑制することができる。
【0045】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることがあり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。各実施形態の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換をすることが可能である。以下、一部の変形例について説明する。
【0046】
(1)以上の実施形態では、加振器30をギター本体10の裏板15に取り付ける態様について説明した。しかしながら、加振器30が取り付けられる音響部材は、裏板15に限定されない。例えば、加振器30は、ギター本体10の表板14または側板16に取り付けられてもよい。加振器30が表板14に取り付けられる場合、加振器30は響孔17(サウンドホール)に重畳しないように配置される。
【0047】
(2)以上の実施形態では、加振器30が取り付けられた楽器の本体として、ギターを例に挙げて説明した。しかしながら、本発明の楽器は、ギターに限らず、他の弦楽器や、ピアノ、打楽器等であってよい。加振器30が取り付けられる音響部材は、例えば、振動に応じて音を放射するピアノの響板などであってもよい。音響部材がアップライトピアノの響板である場合、響板の幅方向は、響板の短辺に平行な方向である。また、音響部材がグランドピアノの響板である場合、響板の幅方向は、鍵が並ぶ方向(スケール方向)に平行な方向である。
【0048】
(3)以上の実施形態では、ギター本体10の裏板15の内側面15aに、加振器30の本体31における加振部34が、裏板15の内側面15aに接触して固定されている。加振部34は、内側面15aに対向する面の全面が内側面15aに接触してもよく、内側面15aに対向する面の一部が内側面15aに接触してもよい。図11は、裏板15の内側面15aに対向する加振部34の面を、内側面15a側からZ軸方向に向かって見た図である。
【0049】
図11における(a)~(d)は、加振部34のうち、内側面15aに接する部分(接触面)のバリエーションを示している。例えば、(a)に示すように、加振部34のうち、内側面15aに対向する面の全面が、接触面34aとして内側面15aにおける接触領域に接触してもよい。また、(b)~(d)に示すように、加振部34のうち、内側面15aに対向する面の一部が、接触面34aとして内側面15aにおける接触領域に接触してもよい。(b)では、加振部34は、内側面15aに対向して接触する面として、二つの接触面34b1、34b2を有している。(c)では、加振部34は、内側面15aに対向して接触する面として、三つの接触面34c1、34c2、34c3を有している。(d)では、加振部34は、内側面15aに対向して接触する面として、四つの接触面34d1、34d2、34d3、34d3を有している。図11に示すように、加振部34のうち、内側面15aに接する部分(接触面)は一つ以上であればよい。この場合、裏板15における、加振部34と接触する接触領域Aは、各接触面を含む、当該接触面によって囲まれた領域である。接触領域Aの中心は、各接触面が内接する仮想の円のうち最小の円の中心であってもよく、接触面全体の重心であってもよい。尚、図11において、内側面15aに対向する加振部34の面が円形であり、各接触面は該円の円周に沿って配置されているが、接触面は、円周に沿って配置されていなくてもよい。また、加振部34及び変位部33の平面視の形状は円形に限定されるわけではない。例えば、加振部34及び変位部33の平面視の形状はそれぞれ、三角形、四角形などの多角形であってもよい。この場合、内側面15aに対向する加振部34の面も多角形であってもよい。この場合、接触領域Aの中心は、多角形の各辺、または各頂点から等距離にある点であってもよく、各接触面が内接する仮想の円のうち最小の円の中心であってもよく、接触面全体の重心であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…ギター(楽器)、10…ギター本体、11…ボディ、12…ネック、13…弦、14…表板、15…裏板(響板)、30…加振器、31…本体、32…支持部、33…変位部、34…加振部、35…支持脚、36…ブラケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11