IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DMノバフォーム株式会社の特許一覧

特開2024-99996マスターバッチ組成物及びこれを含む発泡体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099996
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】マスターバッチ組成物及びこれを含む発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20240719BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240719BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240719BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20240719BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20240719BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20240719BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20240719BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08J3/22 CES
C08L23/00
C08K3/22
C08K3/34
C08L23/04
C08L23/10
C08L25/04
C08K5/20
C08K5/10
C08K5/098
C08J9/04 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003672
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000214788
【氏名又は名称】DMノバフォーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 祐治
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋一郎
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AC15
4F070AC22
4F070AC43
4F070AC47
4F070AE09
4F070AE30
4F070FA03
4F070FB04
4F070FB06
4F070FC05
4F074AA20
4F074AA21
4F074AA22
4F074AA98
4F074AC32
4F074AD13
4F074BA38
4F074BC12
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA24
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA40
4F074DA57
4F074DA59
4J002BB03W
4J002BB03X
4J002BB05W
4J002BB05X
4J002BB06W
4J002BB06X
4J002BB07X
4J002BB08X
4J002BB12W
4J002BB15W
4J002BB15X
4J002BB20X
4J002BC03W
4J002DE146
4J002DJ006
4J002EG037
4J002EH057
4J002EP017
4J002FD177
4J002FD206
4J002GG02
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】燃焼焼却時の炭酸ガス発生量を低減するためのマスターバッチ組成物及びこれを含む発泡体の提供。
【解決手段】マスターバッチ組成物は、ポリオレフィン系樹脂、二酸化炭素吸収剤及び滑剤を含む。二酸化炭素吸収剤は、(a)水酸化アルミニウム、(b)ケイ酸マグネシウム、及び、(c)ケイ酸マグネシウムを含む混合物、からなる群から選択される。二酸化炭素吸収剤の平均粒子径は、5μm以上200μm以下である。発泡体は、このマスターバッチ組成物と、基材樹脂と、を含む。基材樹脂100重量部に対する二酸化炭素吸収剤の量は、0.5重量部以上15重量部以下であり、滑剤の量は、0.01重量部以上10重量部以下である。この発泡体の製造方法は、二酸化炭素吸収剤がミクロンオーダーで分散したマスターバッチ組成物を得る工程を有している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂と、二酸化炭素吸収剤と、滑剤と、を含み、
上記二酸化炭素吸収剤が、(a)水酸化アルミニウム、(b)ケイ酸マグネシウム、及び、(c)ケイ酸マグネシウムを含む混合物、からなる群から選択され、
上記二酸化炭素吸収剤の平均粒子径が5μm以上200μm以下である、二酸化炭素削減用マスターバッチ組成物。
【請求項2】
上記ケイ酸マグネシウムを含む混合物(c)が、ケイ酸マグネシウムと、金属水酸化物又は金属酸化物との混合物である、請求項1に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項3】
上記金属水酸化物が、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムからなる群から選択され、
上記金属酸化物が、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムからなる群から選択される、請求項2に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項4】
上記ケイ酸マグネシウムを含む混合物(c)が、ケイ酸マグネシウムと、ケイ酸マグネシウム以外のケイ酸塩との混合物である、請求項1に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項5】
上記ケイ酸マグネシウム以外のケイ酸塩が、ケイ酸アルミニウムである、請求項4に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項6】
上記ケイ酸マグネシウムを含む混合物(c)中、ケイ酸マグネシウムの比率が2重量%を超えて、98重量%未満である、請求項1に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項7】
上記滑剤が、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル及び脂肪酸金属塩から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項8】
上記二酸化炭素吸収剤の含有量が1重量%以上80重量%以下であり、
上記滑剤の含有量が0.1重量%以上5.0重量%以下である、請求項1に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のマスターバッチ組成物と、基材樹脂と、を含み、
上記二酸化炭素吸収剤の量が、上記基材樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上15重量部以下であり、
上記滑剤の量が、上記基材樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下である、発泡体。
【請求項10】
上記基剤樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選択される、請求項9に記載の発泡体。
【請求項11】
ポリオレフィン系樹脂と二酸化炭素吸収剤と滑剤とを混合して、上記二酸化炭素吸収剤がミクロンオーダーで分散したマスターバッチ組成物を得る工程と、
上記マスターバッチ組成物と基剤樹脂とを含む発泡用組成物を準備する工程と、
上記発泡用組成物を発泡成形する工程と、
を有している、請求項9に記載の発泡体の製造方法。
【請求項12】
上記マスターバッチ組成物が、上記ポリオレフィン系樹脂と二酸化炭素吸収剤と滑剤とのドライブレンドにより得られる、請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスターバッチ組成物に関する。詳細には、本開示は、発泡体の製造に用いるマスターバッチ組成物及びこれを含む発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡体は、弾力性、柔軟性、断熱性等の性質を利用して、包装材、断熱材、緩衝材等の各種用途で多用されている。各用途で使用された発泡体の多くは、廃棄されて焼却処理される。発泡体の焼却処理時には、二酸化炭酸が発生する。二酸化炭素は、地球温暖化の原因ガスの一つとして知られている。地球温暖化防止の観点から、焼却処理時に炭酸ガス発生量の少ない発泡体及びその材料が求められている。
【0003】
特許第6170652号(特許文献1)には、二酸化炭素吸収剤と分散助剤と分散溶媒との混合物を超臨界流体処理又は超音波照射処理による分散処理した後、樹脂に添加してなる発泡用二酸化炭素排出量削減樹脂組成物が開示されている。特許第6060451号(特許文献2)では、二酸化炭素吸収剤と、ポリオレフィン系樹脂の結晶核剤とを内包するように超臨界逆相蒸発法によって形成されたリポソームをポリオレフィン系樹脂に添加する二酸化炭素排出量削減樹脂組成物の製造方法が提案されている。
【0004】
特開2008-106171号公報(特許文献3)には、強度等の機械的特性に優れると共に、樹脂組成物を焼却した際に発生するHClやCOガス発生の少ない樹脂組成物として、炭酸カルシウム70~93質量部、アルミナ珪酸塩5~20質量部、水酸化カルシウム2~10質量部からなる無機充填剤を含む樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6170652号
【特許文献2】特許第6060451号
【特許文献3】特開2008-106171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に開示された製造方法には、特殊な分散処理が必要である。特に、超臨界流体処理では超臨界状態の二酸化炭素が使用され、樹脂組成物の製造時に大量の炭酸ガスが大気中に放出される問題がある。特許文献3では、高分子との相溶性が低い無機充填剤が使用されているため、樹脂組成物中で無機充填剤の凝集が生じる。凝集によって無機充填剤の比表面積が低下するため、炭酸ガスの吸着効果が阻害される問題がある。
【0007】
本開示の目的は、燃焼焼却時の炭酸ガス発生量を効果的に低減することができるマスターバッチ組成物及びこれを含む発泡体の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る二酸化炭素削減用マスターバッチ組成物は、ポリオレフィン系樹脂と、二酸化炭素吸収剤と、滑剤と、を含む。二酸化炭素吸収剤は、(a)水酸化アルミニウム、(b)ケイ酸マグネシウム、及び、(c)ケイ酸マグネシウムを含む混合物、から選択される。二酸化炭素吸収剤の平均粒子径は、5μm以上200μm以下である。
【0009】
本開示に係る発泡体は、二酸化炭素削減用マスターバッチ組成物と、基材樹脂と、を含む。基材樹脂100重量部に対する二酸化炭素吸収剤の量は、0.5重量部以上15重量部以下である。基材樹脂100重量部に対する滑剤の量は、0.01重量部以上10重量部以下である。この発泡体は、ポリオレフィン系樹脂と二酸化炭素吸収剤と滑剤とを混合して、二酸化炭素吸収剤がミクロンオーダーで分散したマスターバッチ組成物を得る工程と、このマスターバッチ組成物と基剤樹脂とを含む発泡用組成物を得る工程と、この発泡用組成物を発泡成形する工程と、を有する製造方法により得られる。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る二酸化炭素削減用マスターバッチ組成物を配合して得られる発泡体は、焼却処理時の二酸化炭素の発生量が少ない。このマスターバッチ組成物及びこれを含む発泡体は、特殊な製造設備を要することなく、また、大量の炭酸ガスを排出することなく、製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせは、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0012】
なお、本願明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」の意味であり、「体積%」は「vol%」と記載される場合があり、「重量部」は「phr」と記載される場合がある。特に注釈のない限り、試験温度は全て室温(20℃±5℃)である。
【0013】
[二酸化炭素削減用マスターバッチ組成物]
本開示の二酸化炭素削減用マスターバッチ組成物(以下、マスターバッチ、又はマスターバッチ組成物と称する場合がある)は、ポリオレフィン系樹脂と、二酸化炭素吸収剤と、滑剤と、を含む。二酸化炭素吸収剤は、(a)水酸化アルミニウム、(b)ケイ酸マグネシウム、及び、(c)ケイ酸マグネシウムを含む混合物、から選択される。この二酸化炭素吸収剤の平均粒子径は、5μm以上200μm以下である。本開示の効果が阻害されない範囲で、マスターバッチ組成物が、ポリオレフィン系樹脂、二酸化炭素吸収剤及び滑剤以外に、既知の添加剤を含んでもよい。
【0014】
(a)水酸化アルミニウム、(b)ケイ酸マグネシウム、及び、(c)ケイ酸マグネシウムを含む混合物、から選択される二酸化炭素吸収剤は、ポリオレフィン系樹脂との親和性に優れる。滑剤は、ポリオレフィン系樹脂に対する二酸化炭素吸収剤の分散性を向上させる。本開示のマスターバッチでは、ミクロンオーダーの粒子サイズを有する二酸化炭素吸収剤が、滑剤の作用によって、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするマトリックスに均一に分散されている。
【0015】
本開示のマスターバッチ組成物は、後述する発泡用組成物の基材樹脂とも高い混和性を有している。さらに、マスターバッチ中の滑剤が、二酸化炭素吸収剤の凝集抑制に寄与し得る。このマスターバッチを配合して、発泡成形することにより、二酸化炭素吸収剤が均一に分散された発泡体が得られうる。この発泡体によれば、二酸化炭素吸収剤の効果が、十分に発揮されるので、燃焼焼却時の炭酸ガスの発生量が大幅に低減される。
【0016】
(二酸化炭素吸収剤)
二酸化炭素吸収剤の平均粒子径は、5μm以上200μm以下である。本開示のマスターバッチ組成物によれば、ポリオレフィン系樹脂との高い親和性と、滑剤による分散作用との相乗効果によって、ミクロンサイズの二酸化炭素吸収剤が均一分散されることにより、十分な炭素ガス削減効果が奏される。分散性向上の観点から、二酸化炭素吸収剤の平均粒子径は、190μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましく、一方、製造容易との観点から、8μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。なお、本開示において、平均粒子径は、体積基準の粒子径分布における累積50%径(メジアン径)として表される。
【0017】
本開示の第一の態様は、マスターバッチ組成物が、水酸化アルミニウム(a)及びケイ酸マグネシウム(b)から選択される1種類の二酸化炭素吸収剤を含む。水酸化アルミニウム及びケイ酸マグネシウムは、ポリオレフィン樹脂との親和性に優れ、かつ、従来既知のケイ酸アルミニウムと近似した炭酸ガス削減効果を発揮する。
【0018】
本開示の第二の態様における二酸化炭素吸収剤は、ケイ酸マグネシウムを含む混合物(c)である。換言すれば、第二の態様のマスターバッチ組成物では、ケイ酸マグネシウムと、他の二酸化炭素吸収剤とが、併用される。ケイ酸マグネシウムを含む2種以上の二酸化炭素吸収剤による相乗効果により、炭酸ガス削減効果が顕著になる。
【0019】
第二の態様において、ケイ酸マグネシウムを含む混合物(c)は、ケイ酸マグネシウムと、金属水酸化物又は金属酸化物との混合物であってよく、また、ケイ酸マグネシウムと、ケイ酸マグネシウム以外のケイ酸塩との混合物であってよい。炭酸ガス削減効果に優れるとの観点から、ケイ酸マグネシウムと、ケイ酸マグネシウム以外のケイ酸塩との混合物が好ましい。
【0020】
ケイ酸マグネシウムと併用される金属水酸化物として、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等が例示される。水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される金属水酸化物が好ましい。
【0021】
ケイ酸マグネシウムと併用される金属酸化物として、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化第二銅、酸化タングステン等が例示される。酸化マグネシウム及び酸化カルシウムからなる群から選択される金属酸化物が好ましい。
【0022】
ケイ酸マグネシウム以外のケイ酸塩としては、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、カオリナイト、ムライト、イライト、長石、ゼオライト等が例示される。相乗効果が得られるとの観点から、ケイ酸マグネシウムとケイ酸アルミニウムとの混合物が好ましい。
【0023】
ケイ酸マグネシウムを含む混合物におけるケイ酸マグネシウムの比率は、併用される他の二酸化炭素吸収剤の種類に応じて、適宜選択される。ポリオレフィン系樹脂との親和性向上及び炭酸ガス削減効果向上の観点から、ケイ酸マグネシウムを含む混合物中、ケイ酸マグネシウムの比率は、2重量%を超えてよく、5重量%以上であってよく、10重量%以上であってよく、また、98重量%未満であってよく、95重量%以下であってよく、90重量%以下であってよい。
【0024】
本開示の効果がえられる限り、マスターバッチ組成物中の二酸化炭素吸収剤の含有量は特に限定されない。二酸化炭素吸収剤の種類及び滑剤の種類に応じて、マスターバッチ組成物中に均一分散される範囲内で、適宜選択される。均一分散が得られやすいとの観点から、マスターバッチ組成物中の二酸化炭素吸収剤の含有量は、80重量%以下であってよく、60重量%以下であってよく、50重量%以下であってよい。少量のマスターバッチ組成物により炭酸ガス削減効果を付与できるとの観点から、マスターバッチ組成物中の二酸化炭素吸収剤の含有量は、1重量%以上であってよく、5重量%以上であってよく、10重量%以上であってよく、12重量%以上であってよい。2種以上の二酸化炭素吸収剤が併用される場合、その合計量が前述した範囲を満たすことが好ましい。
【0025】
(滑剤)
前述した二酸化炭素吸収剤の分散性向上に寄与する限り、滑剤の種類は特に限定されない。代表的には、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩及びセルロースナノファイバーから選択される1種又は2種以上の滑剤が挙げられる。
【0026】
脂肪酸アミドとしては、例えば、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、イソステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド(エイコサン酸アミド)、ベヘン酸アミド等のC10-24飽和脂肪酸アミド;ミリストレイン酸アミド、パルミトレイン酸アミド、ペトロセリン酸アミド、オレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、リシノール酸アミド、エライジン酸アミド、ガトレン酸アミド、アラキドン酸アミド、エルカ酸アミド、ブラシジン酸アミド等のC10-24不飽和脂肪酸アミド;メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、テトラメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等のC1-10アルキレンビスC8-24飽和脂肪酸アミド;メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等のC1-10アルキレンビスC8-24不飽和脂肪酸アミド;N,N′-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N′-ジステアリルセバシン酸アミド等のC6-12アルカンジカルボン酸と飽和C8-24高級アミンとの反応により生成するビスアミド;N,N′-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N′-ジオレイルセバシン酸アミド等のC6-12アルカンジカルボン酸と不飽和C8-24高級アミンとの反応により生成するビスアミド等が挙げられる。これら脂肪酸アミドは、単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
分散性向上及び発泡成形時の発泡倍率向上の観点から、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、イソステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド(エイコサン酸アミド)、ベヘン酸アミド等のC12-18飽和脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等のC1-4アルキレンビスC10-18飽和脂肪酸アミドが好ましい。
【0028】
脂肪酸エステルとしては、一価又は二価の長鎖脂肪酸とアルコールとのエステルが挙げられる。一価又は二価の長鎖脂肪酸としては、C10-30飽和又は不飽和脂肪酸等が例示される。アルコールとしては、メタノール、エタノール等の一価アルコールであってよく、エチレングリコール等の二価アルコールであってよく、グリセリン、トリメチロールプロパン等の三価アルコールであってよく、ペンタエリスリトール等の四価アルコールであってよい。長鎖脂肪酸と一価アルコールとのエステルの例としては、ブチルステアレート、2-エチルヘキシルベヘネート等のC16-24飽和脂肪酸のC1-10アルキルエステル;ブチルオレエート等のC16-24不飽和脂肪酸のC1-10アルキルエステル等が挙げられる。長鎖脂肪酸と多価アルコールとのエステルの例としては、エチレングリコールモノステアリン酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリントリステアリン酸エステル、エチレングリコールモノオレイン酸エステル、エチレングリコールジオレイン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、グリセリンジオレイン酸エステル、グリセリントリオレイン酸エステル等が挙げられる。これら脂肪酸エステルは、単独で使用してもよく、二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0029】
脂肪酸金属塩としては、前述した長鎖脂肪酸の金属塩であってよく、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。2種以上を併用してもよい。
【0030】
分散性向上及び発泡成形時の発泡倍率向上の観点から、好ましい滑剤としては、ステアリン酸アミド、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。脂肪酸アミド、脂肪酸エステル及び脂肪酸金属塩を併用して使用してもよい。
【0031】
本開示の効果が示される限り、マスターバッチ組成物中の滑剤の含有量は、特に限定されない。二酸化炭素吸収剤の種類及び滑剤の種類に応じて、二酸化炭素吸収剤がマスターバッチ組成物中に均一分散される範囲内で、適宜選択される。分散効果が得られやすいとの観点から、マスターバッチ組成物中の滑剤の含有量は、0.1重量%以上であってよく、0.5重量%以上であってよく、0.8重量%以上であってよい。費用効果の観点から、マスターバッチ組成物中の滑剤の含有量は、5.0重量%以下であってよく、4.5重量%以下であってよい。2種以上の滑剤が併用される場合、その合計量が前述した範囲を満たすことが好ましい。
【0032】
(ポリオレフィン系樹脂)
マスターバッチ組成物に配合するポリオレフィン系樹脂の種類は、特に限定されず、発泡体を形成するための基剤樹脂として既知のポリオレフィン系樹脂から、適宜選択されて用いられる。発泡体の基材樹脂として、代表的なポリオレフィン系樹脂は、非架橋性ポリオレフィン系樹脂及び架橋性ポリオレフィン系樹脂であり、例えば、オレフィン類の単独重合体又は共重合体、オレフィン類と共重合性単量体との共重合体等が挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂は、ランダム共重合体であってよく、ブロック共重合体であってよい。
【0033】
オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等のα-C2-20オレフィン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。α-C2-10オレフィンが好ましく、α-C2-4オレフィンがより好ましく、α-C2-3オレフィンがさらに好ましい。ポリオレフィン系樹脂は、これらオレフィン類の単独重合体であってよく、2種以上のオレフィン類の共重合体であってよい。
【0034】
オレフィン類との共重合体を形成するための共重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン等の環状オレフィン類;ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン等のジエン類等が挙げられる。2種以上の共重合性単量体と、オレフィン類とを組み合わせて共重合体としてもよい。
【0035】
代表的なポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂である。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低、中又は高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-(4-メチルペンテン-1)共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ビニルシランでグラフトされたエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体又はその金属塩、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、ビニルシラングラフトポリエチレン、ビニルシランでグラフトされた低、中又は高密度ポリエチレン、環状オレフィンコポリマー、ビニルシランでグラフトされた環状オレフィンコポリマー、また、植物由来の原料から得られたエチレンによって製造されたポリエチレン(植物由来ポリエチレン)、ビニルシランでグラフトされた植物由来ポリエチレン等が例示される。ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体等のプロピレン含有80モル%以上のプロピレン-α-オレフィン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、ビニルシランでグラフトされたポリプロピレン、メタロセン触媒ポリプロピレン等が挙げられる。2種以上のポリオレフィン系樹脂を併用してもよい。
【0036】
二酸化炭素吸収剤との親和性及び後述する発泡用組成物への均一配合の観点から、好ましいポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂である。低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、シラングラフトポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ビニルシランでグラフトされたエチレン-酢酸ビニル共重合体、植物由来ポリエチレン、ビニルシランでグラフトされた植物由来ポリエチレン、環状オレフィンコポリマー、ビニルシランでグラフトされた環状オレフィンコポリマーからなる群から選択されるポリエチレン系樹脂がより好ましい。また、これらポリエチレン系樹脂に、ポリプロピレン系樹脂、ビニルシランでグラフトされたポリプロピレン及びポリスチレン系樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上を併用してもよい。
【0037】
マスターバッチ組成物中のポリオレフィン系樹脂の含有量は特に限定されず、二酸化炭素吸収剤及び滑剤の含有量に応じて適宜変更される。例えばポリオレフィン系樹脂の含硫量は、15重量%以上であってよく、18重量%以上であってよく、20重量%以上であってよく、また、98重量%以下であってよく、95重量%以下であってよく、90重量%以下であってよい。なお、ポリスチレン系樹脂を併用する場合、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂の合計含有量が、上記範囲を満たすことが好ましい。
【0038】
(発泡体)
本開示の発泡体は、前述した二酸化炭素削減用マスターバッチ組成物と、基材樹脂とを含む樹脂組成物から形成されている。この発泡体は、マスターバッチ組成物により導入された二酸化炭素吸収剤を含む。本開示で用いられる二酸化炭素吸収剤は、発泡体の基剤樹脂との親和性にも優れている。そのため、この発泡体では、基剤樹脂との優れた親和性と、滑剤の分散作用とにより、二酸化炭素吸収剤が、基材樹脂を主成分とするマトリックスに、均一に分散される。この発泡体の燃焼焼却時には、均一分散した二酸化炭素吸収剤が効果的に機能して、炭酸ガスの発生量が顕著に低減される。
【0039】
この発泡体における二酸化炭素吸収剤の量は、基材樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上15重量部以下であるところ、炭酸ガス削減の観点から、0.8重量部以上が好ましく、1.0重量部以上がより好ましい。発泡倍率及び破断伸びへの影響が少ないとの観点から、二酸化炭素吸収剤の量は、基材樹脂100重量部に対して、14重量部以下が好ましく、12重量部以下がより好ましい。二種以上の二酸化炭素吸収剤を併用する場合には、その合計量が当該範囲を満たすことが好ましい。
【0040】
この発泡体における記滑剤の量は、基材樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下であるところ、二酸化炭素吸収剤の分散性向上の観点から、0.02重量部以上が好ましく、0.03重量部以上がより好ましい。費用効果の観点から、滑剤の量は、基材樹脂100重量部に対して、8重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましい。二種以上の滑剤を併用する場合には、その合計量が当該範囲を満たすことが好ましい。
【0041】
発泡体の基剤樹脂としては、前述したポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂を使用することができる。発泡体の基剤樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選択されてよい。ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選択される2種以上の混合物を基材樹脂としてもよい。
【0042】
発泡体をなす樹脂組成物が、さらに核剤を含んでもよい。核剤としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、タルク、ゼオライト、チタン酸カリウム等が挙げられる。核剤の量は、基材樹脂100重量部に対し、0.05重量部以上であってよく、0.1重量部以上であってよく、0.3重量部以上であってよく、0.5重量部以上であってよく、また、5.0重量部以下であってよく、4.0重量部以下であってよい。
【0043】
本開示の効果を阻害しない範囲で、発泡体をなす樹脂組成物が、さらに、界面活性剤、無機充填剤、安定剤、着色剤、ハロゲン系難燃剤、ノンハロゲン系難燃剤等既知の添加剤を含んでもよい。
【0044】
本開示の効果が得られる限り、発泡体は独立気泡構造であってもよく、連続気泡構造であってもよく、その両方を含む構造であってよい。一般に、連続気泡構造は吸水性、通気性等に優れ、一方、独立気泡構造は、衝撃吸収性、加工性等に優れる。発泡体の用途及び所望の物性に応じて、連続気泡構造及び/又は独立気泡構造を選択することができる。
【0045】
本開示の効果が得られる限り、発泡体の発泡倍率は特に限定されない。例えば、発泡体の発泡倍率は、5倍以上であってよく、10倍以上であってよく、また、100倍以下であってよく、90倍以下であってよく、70倍以下であってよく、50倍以下であってよい。
【0046】
発泡体の発泡倍率とは、発泡成形による体積増加率として定義される。具体的には、発泡倍率は、発泡体の体積V1(cm)、発泡体の重量W1(g)及び発泡体を形成する樹脂組成物の見掛密度d(g/cm)を用いて、以下の式により求められる。
B=V1/(W1/d)
【0047】
発泡体の密度(見掛密度)は、0.18g/cm以下であってよく、0.13g/cm以下であってよく、0.10g/cm以下であってよく、また、0.01g/cm以上あってよく、0.015g/cm以上であってよく、0.02g/cm以上であってよい。発泡体の見掛密度は、JIS K6767に記載された方法を参考にして測定される。
【0048】
発泡体の機械的強度は特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。例えば、発泡体の引張強さは、40N/cm以上であってよく、45N/cm以上であってよく、また、100N/cm以下であってよく、90N/cm以下であってよい。発泡体の破断伸びは、20%以上であってよく、25%以上であってよく、また、200%以下であってよく、150%以下であってよい。発泡体の引張強さ及び破断伸びは、JIS K6767の記載に準じた引張試験により測定される。
【0049】
本開示の効果が得られる限り、発泡体の形状は特に制限されず、例えば、棒状、紐状等の一次元的形状であってよく、シート状、フィルム状、二次元網目(ネット)状等の二次元的形状であってよく、ブロック状、板状、三次元網目状、パイプ状等の三次元的形状であってよい。また、発泡体の表面は平滑であってもよく、凹凸を有していてもよい。
【0050】
(発泡体の製造方法)
本開示の発泡体の製造方法は、前述したポリオレフィン系樹脂と二酸化炭素吸収剤と滑剤とを混合して、二酸化炭素吸収剤がミクロンオーダーで分散したマスターバッチ組成物を得る工程と、このマスターバッチ組成物と基剤樹脂とを含む発泡用組成物を準備する工程と、この発泡用組成物を発泡成形する工程と、を有している。本開示の効果が得られる限り、マスターバッチ組成物を得る工程と発泡用組成物を準備する工程と、を連続しておこなってもよく、断続しておこなってもよい。
【0051】
マスターバッチ組成物を得る工程では、既知の手法を用いて、ポリオレフィン系樹脂と二酸化炭素吸収剤と滑剤とを混合する。この混合は、所謂ドライブレンドであってよく、溶融混練であってもよい。
【0052】
通常、ドライブレンドとは、溶融することなく、また、溶剤等を添加することなく、粉粒状又はペレット状の形態で混合することを意味する。ドライブレンドの場合、例えば、タンブラー、V型ブレンダー等の混合機が好適に用いられる。エネルギー効率の観点から、マスターバッチ組成物が、ポリオレフィン系樹脂と二酸化炭素吸収剤と滑剤とのドライブレンドにより得られることが好ましく、室温でのドライブレンドがより好ましい。
【0053】
溶融混練の場合、ニーダー、一軸押出機、二軸押出機等の溶融混練機が用いられうる。タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機等の混合機を用いて、ポリオレフィン系樹脂、二酸化炭素吸収剤及び滑剤を予備混合した後、得られた混合物を溶融混練機に供給して、溶融混練してもよい。また、所定量のポリオレフィン系樹脂、二酸化炭素吸収剤及び滑剤を、順次、溶融混練機に供給して溶融混練することにより、マスターバッチ組成物を得てもよい。溶融混練温度は特に限定されないが、例えば、150~300℃であってよく、160~280℃であってよく、170~250℃であってもよい。必要に応じて、加圧状態で溶融混練してもよい。溶融混練時の圧力は、例えば1~100MPaであってよく、5~50MPaであってよく、10~30MPaであってよい。
【0054】
本開示のマスターバッチ組成物は、ペレット状の形態で得られてもよく、溶融混合物の状態で得られてもよい。溶融混合物として得られたマスターバッチ組成物を、慣用のペレット化手段(ペレタイザー等)により、ペレット化してもよい。溶融混合物として得られたマスターバッチ組成物を、連続的に、発泡用組成物を得る工程及び発泡成形する工程に供してもよい。
【0055】
発泡用組成物を得る工程では、通常、一軸押出機、二軸押出機等の溶融混練機が用いられる。この溶融混練機に、前述したマスターバッチ組成物と基剤樹脂とを供給して溶融混練することにより、発泡用組成物が得られうる。基材樹脂としては、前述したポリオレフィン系樹脂が用いられうる。ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂が好ましい。必要に応じて、後述する核剤等他の成分を、本工程で配合してもよい。また、マスターバッチ組成物の構成成分(即ち、ポリオレフィン系樹脂、二酸化炭素吸収剤及び滑剤)と、基剤樹脂と、他の成分と、を順次、溶融混練機に供給して、溶融混練することにより、発泡用組成物を得てもよい。
【0056】
発泡用組成物を得るための溶融混練温度は特に限定されないが、例えば、150~300℃であってよく、160~280℃であってよく、170~250℃であってもよい。必要に応じて、加圧状態で溶融混練してもよい。溶融混練時の圧力は、例えば1~100MPaであってよく、5~50MPaであってよく、10~30MPaであってよい。
【0057】
本開示の効果が得られる限り、発泡用組成物は、ペレット状の形態で得られてもよく、溶融混合物の状態で得られてもよい。溶融混合物として得られた発泡用組成物を、慣用のペレット化手段(ペレタイザー等)により、ペレット化してもよい。溶融混合物として得られた発泡用組成物を、連続的に、発泡成形する工程に供してもよい。
【0058】
発泡成形する工程において、発泡用組成物を発泡成形する方法は特に限定されず、押出成形方法、押出発泡成形方法、射出成形方法等が適宜選択されて用いられる。また、発泡用組成物を発泡させる方法も特に限定されない。例えば、反応生成ガスを利用する方法、発泡剤を使用する方法、可溶性物質を除去する方法等が挙げられる。成形性及び汎用性の観点から、発泡剤を使用する方法が好ましく、発泡用組成物に発泡剤を配合して押出発泡成形することがより好ましい。
【0059】
押出発泡成形に用いる装置は特に限定されず、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等を使用することができる。また、押出等の成形条件も特に限定はなく、樹脂組成物及び発泡剤の種類、発泡体の用途等に応じて適宜選択される。例えば、発泡用組成物の成形温度は、120~300℃であってよく、130~280℃であってよく、140~260℃であってよい。また、成形圧力は、1~50MPaであってよく、2~40MPaであってよく、2.5~20MPaであってよく、5~10MPaであってよい。
【0060】
発泡成形に使用する発泡剤の種類も特に限定されず、所謂有機系物理発泡剤を好適に用いることができる。有機系物理発泡剤としては、少なくともイソブタンを含有すればよく、イソブタン単独であってもよく、イソブタンと他の有機系物理発泡剤とを組み合わせて用いてもよい。他の有機系物理発泡剤としては、プロパン、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;三塩化フッ化メタン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルエーテル、石油エーテル等のエーテル類;アセトン等のケトン類等が挙げられる。これらの他の有機系物理発泡剤から選択される1種又は二種以上を、イソブタンと組み合わせて用いてもよい。イソブタン単独が好ましく、イソブタンと併用する場合は、イソブタンと脂肪族炭化水素類との組み合わせが好ましく、n-ブタン、n-ペンタン及びイソペンタンから選択されたる1種又は2種以上とイソブタンとの組み合わせがより好ましい。
【0061】
イソブタンと併用する場合、有機系物理発泡剤全体におけるイソブタンの割合は、20重量%以上であってよく、30重量%以上であってよく、40重量%であってよく、その上限値は100重量%程度であってよい。
【0062】
有機系物理発泡剤の沸点(常圧における沸点)は、発泡剤全体の平均として、例えば、-40℃~+15℃であってよく、-35℃~+10℃であってよく、-30℃~+10℃であってよい。例えば、沸点が-42℃であるプロパンを単独で発泡剤として用いると、気泡が破泡し易く、発泡体中の連続気泡率が高くなる。なお、この沸点の平均値は、各有機系物理発泡剤の沸点(℃)と、有機系物理発泡剤全体を1としたときの各有機系物理発泡剤の割合(重量比)との積の総和として表される。
【0063】
有機系物理発泡剤の使用量は特に限定されず、使用する発泡剤の種類、所望の発泡倍率等に応じて適宜設定することができる。例えば、基剤樹脂100重量部に対して、0.01~40重量部であってよく、0.1~35重量部であってよく、1~30重量部であってよい。2種以上の有機系物理発泡剤を併用する場合、その合計量が前述の範囲内となるように選択される。発泡成形による発泡倍率が5~100倍であり、得られる発泡体の密度が0.01~0.18g/cmとなるように、前述した範囲内で、発泡剤の使用量を設定することが好ましい。
【0064】
また、必要により、有機系物理発泡剤とともに、他の発泡剤を併用してもよく、有機系物理発泡剤に替えて、他の発泡剤を使用してもよい。この他の発泡剤としては、窒素、炭酸ガス等のガス、水等の揮発性発泡剤;重炭酸ナトリウム、クエン酸、アゾジカルボン酸アミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、N,N′-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)等の分解性発泡剤が例示される。
【0065】
前述した発泡用組成物を準備する工程において、本開示のマスターバッチ組成物及び基材樹脂とともに、有機系物理発泡剤、及び必要に応じて他の発泡剤を溶融混練機に投入して溶融混練することにより、当該発泡剤を含む発泡用組成物を準備し、これを発泡成形することにより、本開示の発泡体を得てもよい。また、既知の押出機に、本開示のマスターバッチ組成物及び基材樹脂を含む発泡用組成物を投入して溶融混練し、この押出機の途中部から、有機系物理発泡剤、及び、必要により他の発泡剤を注入して、さらに溶融混練した後、低圧域(通常、大気圧下)に押し出すことにより、本開示の発泡体を得てもよい。
【0066】
用途に応じて所望の形状を付与するために、得られた発泡体に二次加工を施してもよい。例えば、シート状発泡体を真空成形、圧空成形、真空圧空成形、マッチモールド成形等熱成形することにより、種々の形状の発泡成形品を得ることができる。
【0067】
[用途]
本開示のマスターバッチ組成物は、種々の樹脂組成物に配合することができる。このマスターバッチ組成物を配合して得られる発泡体は、基材樹脂の種類、添加剤の配合、発泡条件等を選択することにより、クッション材、緩衝材(緩衝保護材)、包装材、吸音材、吸湿剤、防振材、断熱材等種々の用途に適用することができる。
【実施例0068】
以下、実施例によって本開示の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本開示が限定的に解釈されるべきではない。
【0069】
[実施例1]
(マスターバッチ組成物の製造)
1.0重量%のステアリン酸アミド(花王社製の商品名「脂肪酸アマイドT」)、20重量%のケイ酸マグネシウム(協和化学工業社製、平均粒子径44.77μm)及び79重量%の低密度ポリエチレンLDPE(東ソー社製の商品名「ペトロセン173R」)を、タンブラーミキサーに供給して混合した。低密度ポリエチレン粒子の表面にケイ酸マグネシウムを含む粉末が付着するまで混合した後、バレル温度を180℃に設定した口径25mmの単軸押出機に投入し、圧力10MPaで溶融混練することにより、マスターバッチ組成物Aを得た。組成物Aの配合を、下表1に示す。
【0070】
(発泡体の製造)
得られたマスターバッチ組成物A、低密度ポリエチレンLDPE(前述の「ペトロセン173R」)及び核剤(日本タルク社製のタルク、商品名「ミクロエースK-1」)を、下表3に示す配合となるように、φ25mmの単軸押出機に投入し、温度180℃、圧力3MPaで溶融混練した。続いて、単軸押出機の先端近くに設けた発泡剤注入口から、低密度ポリエチレンLDPEの総量100重量%に対して、10重量%のイソブタンを注入して混合した後、ダイスから大気中に押し出すことにより、円柱状(直径15mm)である実施例1の発泡体を得た。
【0071】
[実施例2-28及び比較例1-5]
下表1及び2に示される配合に変更した他は、マスターバッチ組成物Aと同様にして、マスターバッチ組成物B-Kを製造した。得られたマスターバッチ組成物を使用し、配合を下表3-6に示されるものに変更した他は実施例1と同様にして、実施例2-28及び比較例1-5の発泡体を得た。
【0072】
[発泡体の物性]
実施例1-28及び比較例1-5の発泡体について、以下の方法及び条件にて、見掛密度、発泡倍率、引張強さ、破断伸び及び炭酸ガス発生量を測定した。結果が、下表3-6に示されている。
【0073】
(a)見掛密度
実施例及び比較例の発泡体の見掛密度D(g/cm3)を、下記式に基づいて算出した。3回測定した平均値を見掛密度とした。
D=A×(ρ-d)/(A-B)+d
なお、式中のAは空気中の試料の質量(g)であり、Bは水中の試料の質量(g)であり、ρは水の密度(g/cm3)であり、dは空気の密度(約0.001(g/cm3))である。
【0074】
(b)発泡倍率
実施例及び比較例の発泡倍率B(倍)を、下記式に基づいて算出した。
B=V1/(W1/D2)
なお、式中、V1は発泡体の体積(cm)であり、W1は発泡体の重量(g)であり、D2は各発泡体を形成する樹脂組成物の見掛密度(g/cm)である。
【0075】
(c)引張強さ及び破断伸び
JIS K6767に記載された方法を参考にして引張試験をおこない、実施例及び比較例の発泡体の押出方向(MD方向)の引張強さ(N/cm)及び破断伸び(%)を求めた。測定装置及び測定条件は、以下の通りである。3回測定した平均値を、引張強さ(N/cm)及び破断伸び(%)とした。
装置:引張試験機(島津製作所社製)
チャック間距離:40mm
引張速度:500mm/分
試験温度:23℃±2℃
【0076】
(d)CO排出量
JIS K7217の記載を参考にして、プラスチック燃焼試験機を用いて、実施例及び比較例の発泡体の燃焼時の二酸化炭素の発生量を測定した。詳細には、各発泡体から測定試料として0.1gを採取し、空気供給量0.5L/分、燃焼温度425℃の条件下で、10分間燃焼させて、その際に発生したガスをテドラーバッグに捕集した後、ガスクロマトグラフ法によりガス中の二酸化炭素を定量した。測定値に基づいて、発泡体1g当たりの二酸化炭素の発生量を算出し、CO排出量[mg/g]とした。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表1及び2に示された化合物の詳細は、以下の通りである。
LDPE:東ソー社製の商品名「ペトロセン173R」
ケイ酸マグネシウム:協和化学工業社製、平均粒子径44.77μm
ケイ酸アルミニウム:協和化学工業社製、平均粒子径91.2μm
水酸化アルミニウム:林化成社製、平均粒子径10μm
水酸化マグネシウム:神島化学工業社製、平均粒子径6.5μm
酸化カルシウム:古手川産業社製、平均粒子径150μm
酸化マグネシウム:協和化学工業社製、平均粒子径20μm
ステアリン酸アミド:花王社製の商品名「脂肪酸アマイドT」
ステアリン酸モノグリセライド:理研ビタミン社製
ステアリン酸カルシウム:日油社製
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
表3-6に示された化合物の詳細は、以下の通りである。
LDPE:東ソー社製の低密度ポリエチレン、商品名「ペトロセン173R」
LLDPE:宇部丸善ポリエチレン社製の直鎖状低密度ポリエチレン、商品名「ユメリット1520F」
EVA:東ソー社製のエチレン-酢酸ビニル共重合体、商品名「ウルトラセン630」
植物由来PE:ブラスケム社製の低密度ポリエチレン、商品名「SBF0323HC」
PP1:日本ポリプロ社製のポリプロピレン、商品名「WFX6」
PP2:日本ポリプロ社製のポリプロピレン、商品名「WFX4M」
GPPS:東洋スチレン社製のGPポリスチレン、商品名「HRM26」
【0085】
表3-6に示されるように、実施例は、比較例の製造方法に比べて評価が高い。例えば、二酸化炭素吸収剤及び滑剤を含まない比較例2を規準として、実施例2及び15と比較例1とを対比することにより、ケイ酸マグネシウム及び水酸化アルミニウムが、ケイ酸アルミニウムに近い炭酸ガス削減効果を示すことがわかる。また、実施例19-27と、実施例2又は比較例1との対比から、ケイ酸マグネシウムと他の二酸化炭素吸収剤とを併用することにより、同量の添加量で、ケイ酸マグネシウム単独又はケイ酸アルミニウム単独と比べて、炭酸ガス削減効果向上することがわかる。比較例3及び4と実施例1-3との対比から、発泡体の基材樹脂100重量部に対し、二酸化炭素吸収剤が0.5重量部未満では、十分な炭酸ガス削減効果が得られず、15重量部を超えると、発泡倍率及び破断伸びが低下することがわかる。実施例3-5と比較例5との対比から、所定量の滑剤の配合によって炭酸ガス削減効果が発揮されることがわかる。これらの評価結果から、本開示の優位性は明らかである。
【0086】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態を開示する。
【0087】
[項目1]
ポリオレフィン系樹脂と、二酸化炭素吸収剤と、滑剤と、を含み、
上記二酸化炭素吸収剤が、(a)水酸化アルミニウム、(b)ケイ酸マグネシウム、及び、(c)ケイ酸マグネシウムを含む混合物、からなる群から選択され、
上記二酸化炭素吸収剤の平均粒子径が5μm以上200μm以下である、二酸化炭素削減用マスターバッチ組成物。
【0088】
[項目2]
上記ケイ酸マグネシウムを含む混合物(c)が、ケイ酸マグネシウムと、金属水酸化物又は金属酸化物との混合物である、項目1に記載のマスターバッチ組成物。
【0089】
[項目3]
上記金属水酸化物が、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムからなる群から選択され、
上記金属酸化物が、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムからなる群から選択される、項目2に記載のマスターバッチ組成物。
【0090】
[項目4]
上記ケイ酸マグネシウムを含む混合物(c)が、ケイ酸マグネシウムと、ケイ酸マグネシウム以外のケイ酸塩との混合物である、項目1に記載のマスターバッチ組成物。
【0091】
[項目5]
上記ケイ酸マグネシウム以外のケイ酸塩が、ケイ酸アルミニウムである、項目4に記載のマスターバッチ組成物。
【0092】
[項目6]
上記ケイ酸マグネシウムを含む混合物(c)中、ケイ酸マグネシウムの比率が2重量%を超えて、98重量%未満である、項目1から5のいずれかに記載のマスターバッチ組成物。
【0093】
[項目7]
上記滑剤が、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル及び脂肪酸金属塩から選択される1種又は2種以上である、項目1から6のいずれかに記載のマスターバッチ組成物。
【0094】
[項目8]
上記二酸化炭素吸収剤の含有量が5重量%以上80重量%以下であり、
上記滑剤の含有量が0.1重量%以上5.0重量%以下である、項目1から7のいずれかに記載のマスターバッチ組成物。
【0095】
[項目9]
項目1から8のいずれかに記載のマスターバッチ組成物と、基材樹脂と、を含み、
上記二酸化炭素吸収剤の量が、上記基材樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上15重量部以下であり、
上記滑剤の量が、上記基材樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下である、発泡体。
【0096】
[項目10]
上記基剤樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選択される、項目9に記載の発泡体。
【0097】
[項目11]
ポリオレフィン系樹脂と二酸化炭素吸収剤と滑剤とを混合して、上記二酸化炭素吸収剤がミクロンオーダーで分散したマスターバッチ組成物を得る工程と、
上記マスターバッチ組成物と基剤樹脂とを含む発泡用組成物を準備する工程と、
上記発泡用組成物を発泡成形する工程と、
を有している、項目9に記載の発泡体の製造方法。
【0098】
[項目12]
上記マスターバッチ組成物が、上記ポリオレフィン系樹脂と二酸化炭素吸収剤と滑剤とのドライブレンドにより得られる、項目11に記載の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明されたマスターバッチ組成物は、発泡体以外の種々の成形品の製造にも適用されうる。