IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

特開2024-99999電池部材のリーク検査方法および電池の製造方法
<>
  • 特開-電池部材のリーク検査方法および電池の製造方法 図1
  • 特開-電池部材のリーク検査方法および電池の製造方法 図2
  • 特開-電池部材のリーク検査方法および電池の製造方法 図3
  • 特開-電池部材のリーク検査方法および電池の製造方法 図4
  • 特開-電池部材のリーク検査方法および電池の製造方法 図5
  • 特開-電池部材のリーク検査方法および電池の製造方法 図6
  • 特開-電池部材のリーク検査方法および電池の製造方法 図7
  • 特開-電池部材のリーク検査方法および電池の製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099999
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】電池部材のリーク検査方法および電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240719BHJP
   H01M 50/627 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20240719BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20240719BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/627
H01M50/184 A
H01M50/186
H01M10/052
H01M10/0585
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003676
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】原 尊
(72)【発明者】
【氏名】浅井 真也
【テーマコード(参考)】
5H011
5H023
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011AA09
5H011GG01
5H011JJ12
5H023AA03
5H023AS03
5H023AS07
5H023CC01
5H028AA07
5H028AA10
5H028BB01
5H028BB03
5H028BB11
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC19
5H028HH05
5H029AJ14
5H029BJ12
5H029BJ17
5H029BJ21
5H029CJ13
5H029CJ28
5H029DJ03
5H029DJ14
5H029HJ04
5H029HJ12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リーク検査ガスの検出時間を短縮可能な電池部材のリーク検査方法を提供する。
【解決手段】電極積層体の厚さ方向に延在する側面に配置され、かつ、電極積層体の内部に通じる貫通孔に接続された注液口を有する注液枠を備える電池部材を準備する準備工程S1と、注液口が露出するように、かつ、電極積層体における側面が露出した枠状の密閉空間が形成されるように、電池部材の外周部に枠型チャンバーを配置する工程S2と、工程S2の後に、電極積層体内部を減圧する第1減圧工程S3と、密閉空間を減圧する第2減圧工程S4と、第1減圧工程及び第2減圧工程の後に、電極積層体の内部にリーク検査ガスを印加するガス印加工程S5と、ガス印加工程の後に、電極積層体の内部から電極積層体の側面を介して密閉空間に、リーク検査ガスがリークしているか否かを検査する検査工程S6と、を有する電池部材のリーク検査方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に積層された複数の電極を含む電極積層体と、前記電極積層体において前記厚さ方向に延在する側面に配置され、かつ、前記電極積層体の内部に通じる貫通孔に接続された注液口を有する注液枠と、を備える電池部材を準備する準備工程と、
前記電池部材における前記注液口が露出するように、かつ、前記電極積層体における前記側面が露出した枠状の密閉空間が形成されるように、前記電池部材の外周部に枠型チャンバーを配置するチャンバー配置工程と、
前記チャンバー配置工程の後に、前記注液口を介して、前記電極積層体の前記内部を減圧する第1減圧工程と、
前記チャンバー配置工程の後に、前記密閉空間を減圧する第2減圧工程と、
前記第1減圧工程および前記第2減圧工程の後に、前記注液口を介して、前記電極積層体の前記内部にリーク検査ガスを印加するガス印加工程と、
前記ガス印加工程の後に、前記電極積層体の前記内部から前記電極積層体の前記側面を介して前記密閉空間に、前記リーク検査ガスがリークしているか否かを検査する検査工程と、
を有する電池部材のリーク検査方法。
【請求項2】
前記電極は、集電体と、前記集電体上に配置された活物質層とを有し、
前記電極積層体は、前記厚さ方向から見て、前記集電体の外縁に沿って配置されたシール部を有し、
前記貫通孔は、前記シール部を貫通する孔である、請求項1に記載の電池部材のリーク検査方法。
【請求項3】
前記電極積層体は、前記電極として、複数のバイポーラ電極を有する、請求項1に記載の電池部材のリーク検査方法。
【請求項4】
前記電極積層体の形状は、前記厚さ方向から見て、四角形であり、
前記四角形における各辺の長さは、それぞれ30cm以上である、請求項1に記載の電池部材のリーク検査方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の電池部材のリーク検査方法により、前記電池部材のリークを検査するリーク検査工程と、
前記リーク検査工程においてリークが発生していないと判定された前記電池部材に対して、前記注液口を介して、前記電極積層体の前記内部に電解液を注液する注液工程と、
前記注液工程の後に、前記注液口を封止する封止工程と、
を有する電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池部材のリーク検査方法および電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池を製造する際に、リーク検査ガス(例えば、ヘリウムガス)を用いて、電池の密閉性を検査する場合がある。例えば、特許文献1には、電極体が収容された電池ケースを用意し、その後、電池ケース内を減圧し、その後、減圧された電池ケースに、電解液およびリーク検査ガスを入れ、その後、電池ケースを封止し、その後、封止された電池ケースからリーク検査ガスが漏れているか否かを検査する、電池製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/010024号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、電極体が収容された電池ケース全体を、気密容器に入れ、電池ケース内を減圧している。例えば電池が大型化すると、気密容器も大型化するため、リークしたガスを検出するまでに要する時間が増大する。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、リーク検査ガスの検出時間を短縮可能な電池部材のリーク検査方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
厚さ方向に積層された複数の電極を含む電極積層体と、上記電極積層体において上記厚さ方向に延在する側面に配置され、かつ、上記電極積層体の内部に通じる貫通孔に接続された注液口を有する注液枠と、を備える電池部材を準備する準備工程と、
上記電池部材における上記注液口が露出するように、かつ、上記電極積層体における上記側面が露出した枠状の密閉空間が形成されるように、上記電池部材の外周部に枠型チャンバーを配置するチャンバー配置工程と、
上記チャンバー配置工程の後に、上記注液口を介して、上記電極積層体の上記内部を減圧する第1減圧工程と、
上記チャンバー配置工程の後に、上記密閉空間を減圧する第2減圧工程と、
上記第1減圧工程および上記第2減圧工程の後に、上記注液口を介して、上記電極積層体の上記内部にリーク検査ガスを印加するガス印加工程と、
上記ガス印加工程の後に、上記電極積層体の上記内部から上記電極積層体の上記側面を介して上記密閉空間に、上記リーク検査ガスがリークしているか否かを検査する検査工程と、
を有する電池部材のリーク検査方法。
【0007】
[2]
上記電極は、集電体と、上記集電体上に配置された活物質層とを有し、
上記電極積層体は、上記厚さ方向から見て、上記集電体の外縁に沿って配置されたシール部を有し、
上記貫通孔は、上記シール部を貫通する孔である、[1]に記載の電池部材のリーク検査方法。
【0008】
[3]
上記電極積層体は、上記電極として、複数のバイポーラ電極を有する、[1]または[2]に記載の電池部材のリーク検査方法。
【0009】
[4]
上記電極積層体の形状は、上記厚さ方向から見て、四角形であり、
上記四角形における各辺の長さは、それぞれ30cm以上である、[1]から[3]までのいずれかに記載の電池部材のリーク検査方法。
【0010】
[5]
[1]から[4]までのいずれかの請求項に記載の電池部材のリーク検査方法により、上記電池部材のリークを検査するリーク検査工程と、
上記リーク検査工程においてリークが発生していないと判定された上記電池部材に対して、上記注液口を介して、上記電極積層体の上記内部に電解液を注液する注液工程と、
上記注液工程の後に、上記注液口を封止する封止工程と、
を有する電池の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示における電池部材のリーク検査方法は、リーク検査ガスの検出時間を短縮できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示における電池部材のリーク検査方法を例示するフロー図である。
図2】本開示における準備工程およびチャンバー配置工程を例示する概略斜視図および概略断面図である。
図3】本開示における第1減圧工程、第2減圧工程、ガス印加工程および検査工程を例示する概略平面図である。
図4】本開示における電池部材を例示する概略断面図、および、本開示における注液枠を例示する概略斜視図である。
図5】本開示における電極積層体の作製方法を例示する概略断面図(分解図)である。
図6】本開示における注液枠および枠型チャンバーを例示する概略側面図である。
図7】本開示における電極積層体および枠型チャンバーを例示する概略断面図である。
図8】本開示における電池の製造方法を例示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示における実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0014】
A.電池部材のリーク検査方法
図1は、本開示における電池部材のリーク検査方法を例示するフロー図である。図2(a)は本開示における準備工程を例示する概略斜視図であり、図2(b)は本開示におけるチャンバー配置工程を例示する概略斜視図であり、図2(c)は図2(b)における線分pを含むようにy-z平面で電池部材および枠型チャンバーを切断した概略断面図である。図3は、本開示における第1減圧工程、第2減圧工程、ガス印加工程および検査工程を例示する概略平面図である。
【0015】
図1に示すように、本開示における電池部材のリーク検査方法では、電池部材を準備する(準備工程S1)。図2(a)に示すように、電池部材30は、電極積層体10と、電極積層体10において厚さ方向(z軸方向)に延在する側面SSに配置され、かつ、注液口21を有する注液枠20と、を備える。また、図2(a)に示す電極積層体10は、厚さ方向(z軸方向)において互いに対向する、主面MSおよび主面MSを有する。また、図2(a)に示す電極積層体10は、主面MSおよび主面MSを結ぶ側面として、側面SS、側面SS、側面SSおよび側面SSを有する。
【0016】
次に、図1に示すように、準備工程S1の後に、電池部材に対して枠型チャンバーを配置する(チャンバー配置工程S2)。図2(b)、(c)に示すように、枠型チャンバー40は、電池部材30における注液枠20の注液口21が露出するように、かつ、電極積層体10における側面SSが露出した枠状の密閉空間SPが形成されるように、電池部材30の外周部(外縁部)に配置される。また、電極積層体10の一部は、枠型チャンバー40から露出している。図2(b)においては、主面MSの一部、および、主面MSの一部が、枠型チャンバー40から露出している。
【0017】
次に、図1に示すように、チャンバー配置工程S2の後に、注液口を介して電極積層体の内部を減圧し(第1減圧工程S3)、上記密閉空間を減圧する(第2減圧工程S4)。図3に示すように、注液枠20の注液口21にノズル50を配置し、ノズル50に対して配管51を介して接続された真空ポンプ(図示せず)により、電極積層体10の内部を減圧する。一方、図3に示す枠型チャンバー40は、密閉空間SPに接続された配管41を有する。密閉空間SPに対して配管41を介して接続された真空ポンプ(図示せず)により密閉空間SPを減圧する。
【0018】
次に、図1に示すように、第1減圧工程S3および第2減圧工程S4の後に、注液口を介して、電極積層体の内部にリーク検査ガスを印加する(ガス印加工程S5)。図3に示すように、注液枠20の注液口21にノズル50を配置し、ガスボンベ(図示せず)および配管51を介して、ノズル50からリーク検査ガス(例えばヘリウムガス)を電極積層体10の内部に印加する。次に、図1に示すように、ガス印加工程S5の後に、電極積層体の内部から電極積層体の側面を介して密閉空間に、リーク検査ガスがリークしているか否かを検査する(検査工程S6)。図2(c)に示すように、電極積層体10の内部から、電極積層体10の側面SSを介して、密閉空間SPに、リーク検査ガスがリークすると、密閉空間SPにおいてリーク検査ガスが検出される。図3に示す枠型チャンバー40は、密閉空間SPに接続された配管42を有する。密閉空間SPに対して配管42を介して接続された検出器(図示せず)により、リークの発生を検査する。
【0019】
本開示によれば、枠型チャンバーを用いることで、リーク検査ガスの検出時間を短縮できる。上述したように、特許文献1においては、電極体が収容された電池ケース全体を、気密容器に入れ、電池ケース内を減圧している。例えば電池が大型化すると、気密容器も大型化するため、リークしたガスを検出するまでに要する時間が増大する。これに対して、本開示においては、枠型チャンバーを用いて、電極積層体の側面が露出した枠状の密閉空間が形成されるように、電池部材の外周部を選択的に密閉する。例えば図4(a)に示すように、集電体1の外縁に沿ってシール部5が配置された電池部材30においては、リーク経路として、シール部5と集電体1との溶着部分、または、シール部5を構成する枠部材同士の溶着部分が想定される。そのため、上記溶着部分を包含する密閉空間が形成されるように、電池部材の外周部を枠型チャンバーで選択的に密閉する。これにより、例えば電極積層体が大型化しても、電極積層体の全体を密閉する場合に比べて、リーク検査ガスが拡散する密閉空間の増加を抑制できる。具体的には、図2(b)に示すように、主面MSの一部、および、主面MSの一部は、リーク検査ガスが拡散する密閉空間に含まれなくなる。その結果、リーク検査ガスの検出時間を短縮できる。また、リーク検査ガスが拡散する密閉空間の増加を抑制することで、リーク検査ガスの濃度低下が抑制され、リーク検査ガスの検出精度も向上する。
【0020】
1.準備工程
本開示における準備工程は、厚さ方向に積層された複数の電極を含む電極積層体と、上記電極積層体において上記厚さ方向に延在する側面に配置され、かつ、上記電極積層体の内部に通じる貫通孔に接続された注液口を有する注液枠と、を備える電池部材を準備する工程である。
【0021】
(1)電極積層体
本開示における電極積層体は、厚さ方向に積層された複数の電極を含む。電極は、集電体と、上記集電体の少なくとも一方の面上に配置された活物質層(正極活物質層または負極活物質層)とを有する。
【0022】
図4(a)に示すように、電極積層体10は、厚さ方向(z軸方向)に積層された複数の電極Eを含む。図4(a)に示す電極積層体10は、電極Eとして、バイポーラ電極BP、バイポーラ電極BP、正極側端部電極CA、および、負極側端部電極ANを有する。バイポーラ電極BPおよびバイポーラ電極BPは、それぞれ、集電体1と、集電体1の一方の面上に配置された正極活物質層2と、集電体1の他方の面上に配置された負極活物質層3と、を有する。正極側端部電極CAは、集電体1と、集電体1の一方の面上に配置された正極活物質層2と、を有する。負極側端部電極ANは、集電体1と、集電体1の一方の面上に配置された負極活物質層3と、を有する。
【0023】
図4(a)に示すように、電極積層体10は、電極Eとして、集電体1と、集電体1の一方の面上に配置された正極活物質層2と、集電体1の他方の面上に配置された負極活物質層3と、を有するバイポーラ電極BPを有していてもよい。本開示における電極積層体は、バイポーラ電極BPを1つのみ有していてもよく、2以上有していてもよい。一方、本開示における電極積層体は、厚さ方向に積層された複数の電極Eを含むものであれば特に限定されず、バイポーラ電極を有しなくてもよい。
【0024】
図4(a)に示すように、電極積層体10は、発電単位U(U~U)を備える。発電単位Uは、正極活物質層2と、負極活物質層3と、正極活物質層2および負極活物質層3の間に配置されたセパレータ4と、を有する。正極活物質層2、負極活物質層3およびセパレータ4には、後述する注液工程において、貫通孔51を介して電解液が供給される。その結果、正極活物質層2、負極活物質層3およびセパレータ4には、それぞれ、電解液が含浸される。また、本開示における電極積層体は、発電単位を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。
【0025】
図4(a)に示すように、電極積層体10は、厚さ方向(z軸方向)に積層された、複数の発電単位U(U、U、U)を有していてもよい。図4(a)に示すように、複数の発電単位U(U、U、U)は、互いに、直接接続されていてもよい。また、特に図示しないが、複数の発電単位は、互いに、並列接続されていてもよい。複数の発電単位は、互いに電解液が流通しないように、それぞれ独立している。図4(a)において、複数の発電単位U(U、U、U)は、互いに電解液が流通しないように、それぞれ独立している。例えば、発電単位Uと発電単位Uとは、集電体1およびシール部5によって区画され、互いに独立している。
【0026】
1つの発電単位は、2つのバイポーラ電極を用いて構成されていてもよい。図4(a)において、電極積層体10は、厚さ方向(z軸方向)において、バイポーラ電極BPおよびバイポーラ電極BPを有する。隣り合うバイポーラ電極BPおよびバイポーラ電極BPの間に、セパレータ4が配置されている。発電単位Uは、バイポーラ電極BPにおける正極活物質層2と、バイポーラ電極BPにおける負極活物質層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、から構成されている。一方、発電単位Uは、バイポーラ電極BPにおける正極活物質層2と、負極側端部電極ANにおける負極活物質層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、から構成されている。また、発電単位Uは、バイポーラ電極BPにおける負極活物質層3と、正極側端部電極CAにおける正極活物質層2と、それらの間に配置されたセパレータ4と、から構成されている。
【0027】
図4(a)に示すように、厚さ方向(z軸方向)から見て、集電体1の外縁に沿って、枠状のシール部5が配置されている。図4(a)に示すように、集電体1の外縁に沿ってシール部5が配置された電池部材30においては、リーク経路として、シール部5と集電体1との溶着部分、または、シール部5を構成する枠部材同士の溶着部分が想定される。そのため、上記溶着部分を包含する密閉空間が形成されるように、電池部材の外周部を枠型チャンバーで選択的に密閉する。シール部は、樹脂であることが好ましい。上記樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が挙げられる。また、図4(a)に示すように、貫通孔51は、シール部5を貫通する孔であることが好ましい。図4(a)に示すように、貫通孔51は、z軸方向に直交するx軸方向に延在していることが好ましい。
【0028】
電極積層体の平面視形状(z軸方向から見た形状)は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形等の四角形が挙げられる。電極積層体の各辺の長さは、それぞれ、例えば30cm以上であり、50cm以上であってもよく、100cm以上であってもよい。一方、上記各辺の長さは、それぞれ、例えば200cm以下である。
【0029】
電極積層体の作製方法は、特に限定されない。図5は、本開示における電極積層体の作製方法を例示する概略断面図(分解図)である。図5に示すように、バイポーラ電極BPおよびバイポーラ電極BPを準備する。バイポーラ電極BPは、集電体1の一方の面に配置された正極活物質層2と、集電体1の他方の面に配置された負極活物質層3と、を有する。
【0030】
さらに、バイポーラ電極BPは、集電体1の外縁に沿って配置された、シール部形成用の枠部材5aを有する。z軸方向から見て、枠部材5aは、通常、集電体1の外縁全周に沿って配置される。例えば、集電体1の外縁形状が四角形である場合、その四角形の外縁全周に沿って、枠部材5aが配置される。また、図5に示すように、枠部材5aは、集電体1の一方の主面pの一部と、集電体1の他方の主面qの一部と、集電体1の外縁を構成する側面rの全体と、を覆うことが好ましい。
【0031】
図5に示すように、バイポーラ電極BPは、集電体1の一方の面に配置された正極活物質層2と、集電体1の他方の面に配置された負極活物質層3と、を有する。さらに、バイポーラ電極BPは、集電体1の外縁に沿って配置された、シール部形成用の枠部材5bを有する。バイポーラ電極BPの詳細については、上述したバイポーラ電極BPの詳細と同様である。
【0032】
図5に示すように、バイポーラ電極BPにおける負極活物質層3と、バイポーラ電極BPにおける正極活物質層2とを、セパレータ4を介して、対向させる。この際、セパレータ4の外縁の少なくとも一部が、枠部材5aおよび枠部材5bの間に配置される。また、図5に示すように、バイポーラ電極BPにおける枠部材5aと、バイポーラ電極BPにおける枠部材5bとの間に、入れ子6および枠部材(スペーサ)5cを配置する。次に、特に図示しないが、図4(a)と同様に、正極側端部電極CAおよび負極側端部電極ANを、それぞれセパレータ4を介して、バイポーラ電極BPおよびバイポーラ電極BPに積層する。その後、積層された複数の枠部材を溶着することで、各々の発電単位を封止するシール部が形成される。このようにして、入れ子が挿入された電極積層体が得られる。その後、電極積層体の側面に、後述する注液枠を配置し、その後、入れ子を抜くことで、電池部材が得られる。
【0033】
(2)注液枠
本開示における注液枠は、上記電極積層体において厚さ方向に延在する側面に配置され、かつ、上記電極積層体の内部に通じる貫通孔に接続された注液口を有する。注液枠は、樹脂製であることが好ましい。注液枠を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0034】
図4(a)、(b)に示すように、注液枠20は、注液口21を有する。注液口21は、電極積層体10の内部に通じる貫通孔51に接続されている。また、図4(b)に示すように、注液枠20は、z軸方向に配置された、複数の注液口21(21a、21b、21c)を有していてもよい。一方、特に図示しないが、注液枠は、注液口を一つのみ有していてもよい。
【0035】
x軸方向から見て、注液口の外縁形状は、特に限定されないが、長方形、正方形等の四角形が挙げられる。また、x軸方向から見て、注液口を備える注液枠の外縁形状は、特に限定されないが、長方形、正方形等の四角形が挙げられる。また、電極積層体の側面に注液枠を配置する方法としては、例えば、射出成形法等の樹脂成形法が挙げられる。また、注液枠を予め準備し、準備した注液枠を、電極積層体の側面に溶着してもよい。
【0036】
2.チャンバー配置工程
本開示におけるチャンバー配置工程は、上記電池部材における上記注液口が露出するように、かつ、上記電極積層体における上記側面が露出した枠状の密閉空間が形成されるように、上記電池部材の外周部に枠型チャンバーを配置する工程である。
【0037】
枠型チャンバーは、注液枠の注液口が露出するように配置される。例えば図2(b)に示すように、注液口21が露出するように、枠型チャンバー40が配置される。注液口21を介して、後述する第1減圧工程およびガス印加工程が行われるため、特に、リーク検査ガスが電極積層体の内部を経由せずに枠型チャンバーの上記空間に流入することがないように、枠型チャンバーが配置される。注液枠の周囲と枠型チャンバーとの間の隙間は、例えば、後述する第1減圧工程やガス印加工程で用いるノズルを注液枠に取付けた際に同時にシールされる。また、枠型チャンバーにおける注液枠と対向する部分にOリング等の不図示のシール部材を設けて、両部材間をシールしてもよい。例えば図6に示すように、注液枠20の外縁を囲むように、枠型チャンバー40を配置する。
【0038】
枠型チャンバーは、電極積層体における側面が露出した枠状の密閉空間が形成されるように配置される。例えば図2(c)に示すように、電極積層体10における側面SSが露出した枠状の密閉空間SPが形成されるように、枠型チャンバー40が配置される。すなわち、厚さ方向(z軸方向)における断面において、電極積層体10における側面SSと、枠型チャンバー40と、により、閉断面が構成される。閉断面は、閉断面を構成する辺として、側面SSにより規定される辺と、枠型チャンバー40により規定される辺と、を有する。枠型チャンバー40における電極積層体10の最外集電体(図示せず)に当接する部分には、例えば、Oリング等の不図示のシール部材が配置されており、これにより密閉空間SPがシールされる。図7は、本開示における電極積層体および枠型チャンバーを例示する概略断面図である。なお、図7では、電極積層体10の構成要素の一つであるシール部5の一部を強調して示している。図7に示すように、枠型チャンバー40と、電極積層体10とは、厚さ方向(z軸方向)から見て、シール部5よりも、電極積層体10の中央側の位置において、シールされていることが好ましい。
【0039】
枠型チャンバーは、電極積層体の一部が露出するように配置される。例えば、電極積層体の全体をチャンバーに入れ、電極積層体を減圧する場合、電極積層体が大型化すると、チャンバーも大型化するため、リークしたガスを検出するまでに要する時間が増大する。これに対して、例えば図2(b)に示すように、電極積層体10における主面MSの一部、および、電極積層体10における主面MSの一部が枠型チャンバー40から露出するように、電池部材30に対して枠型チャンバー40を配置する。これにより、リーク検査ガスの検出時間を短縮できる。
【0040】
図2(c)に示すように、枠型チャンバー40は、厚さ方向(z軸方向)において分割可能な、第1部材45および第2部材46を有していてもよい。分割された第1部材45および第2部材46を、電極積層体10に対して、それぞれ上下から挟むように配置することで、電池部材に対して枠型チャンバーを配置できる。例えば図7に示すように、第1部材45および第2部材46を、電極積層体10に対して、それぞれ上下から挟むように配置する。第1部材45と第2部材46との間の隙間は、両部材が対向する部分にOリング等の不図示のシール部材を設けて、両部材間をシールしてもよい。
【0041】
図3に示すように、枠型チャンバー40は、厚さ方向(z軸方向)から見て、電極積層体10の外縁全周に連続的に配置される。図3における電極積層体10の外縁は、電極積層体10の側面SSにより規定される。また、密閉空間SPは、厚さ方向(z軸方向)から見て、電極積層体10の外縁全周に連続的に配置される。
【0042】
図3に示すように、枠型チャンバー40は、密閉空間SPに接続された、減圧用の配管41を有していてもよい。同様に、枠型チャンバー40は、密閉空間SPに接続され、リークしたリーク検査ガスを検出器(図示せず)に導入するための配管42を有していてもよい。
【0043】
3.第1減圧工程
本開示における第1減圧工程は、上記チャンバー配置工程の後に、上記注液口を介して、上記電極積層体の内部を減圧する工程である。本開示において、「減圧」とは、大気圧よりも低い圧力をいう。
【0044】
注液口を介して電極積層体の内部を減圧する方法としては、例えば図3に示すように、注液枠20の注液口21にノズル50を配置し、ノズル50に対して配管51を介して接続された真空ポンプ(図示せず)により、電極積層体10の内部を減圧する方法が挙げられる。また、配管51には、開閉弁が設けられていることが好ましい。
【0045】
減圧後における電極積層体の内部の圧力は、例えば10Pa以下であり、10Pa以下であってもよい。一方、減圧後における電極積層体の内部の圧力は、例えば10-5Pa以上であり、10-1Pa以上であってもよい。
【0046】
4.第2減圧工程
本開示における第2減圧工程は、上記チャンバー配置工程の後に、上記密閉空間を減圧する工程である。
【0047】
上記密閉空間(電極積層体における側面が露出した密閉空間)を減圧する方法としては、例えば図3に示すように、枠型チャンバー40が、密閉空間SPに接続された配管41を有し、密閉空間SPに対して配管41を介して接続された真空ポンプ(図示せず)により、枠型チャンバー40の密閉空間SPを減圧する方法が挙げられる。また、配管41には、開閉弁(図示せず)が設けられていることが好ましい。
【0048】
減圧後における上記密閉空間の圧力は、例えば10Pa以下であり、10Pa以下であってもよい。一方、減圧後における上記密閉空間の圧力は、例えば10-5Pa以上であり、10-1Pa以上であってもよい。
【0049】
第1減圧工程および第2減圧工程を行うことにより、空気中に存在する微量ガス成分(特に、使用するリーク検査ガスと同じガス成分)の影響を小さくすることができ、リーク検査の精度が高くなる。また、第2減圧工程は、第1減圧工程の後に行ってもよく、第1減圧工程の前に行ってもよく、第1減圧工程と同時に行ってもよい。
【0050】
5.ガス印加工程
本開示におけるガス印加工程は、上記第1減圧工程および上記第2減圧工程の後に、上記注液口を介して、上記電極積層体の上記内部にリーク検査ガスを印加する工程である。
【0051】
リーク検査ガスとしては、例えば、ヘリウムガス、水素ガス、ハロゲンガスが挙げられ、中でも、ヘリウムガスが好ましい。ヘリウムガスは、分子サイズが小さく、かつ、質量も小さいので、微細な孔によるリークも検出しやすいためである。また、リーク検査ガスの印加量は、電極積層体の内部の体積に応じて、適宜選択される。
【0052】
注液口を介して電極積層体の内部にリーク検査ガスを印加する方法としては、例えば図3に示すように、注液枠20の注液口21にノズル50を配置し、ガスボンベ(図示せず)および配管51を介して、ノズル50からリーク検査ガスを電極積層体10の内部に印加する方法が挙げられる。第1減圧工程において、電極積層体の内部を減圧するために用いられるノズルと、ガス印加工程において、電極積層体の内部にリーク検査ガスを印加するために用いられるノズルとは、同一であることが好ましい。
【0053】
6.検査工程
本開示における検査工程は、上記ガス印加工程の後に、上記電極積層体の上記内部から上記電極積層体の上記側面を介して上記密閉空間に、上記リーク検査ガスがリークしているか否かを検査する工程である。
【0054】
リーク検査ガスがリークしているか否かを検査する方法としては、例えば図3に示すように、枠型チャンバー40が密閉空間SPに接続された配管42を有し、密閉空間SPに対して配管42を介して接続された検出器(図示せず)により、リークの検査する方法が挙げられる。例えば、検出器により検出されたリーク検査ガスの濃度が、所定の値以上である場合に、リーク検査ガスが検出されたと判定され、検出器により検出されたリーク検査ガスの濃度が、所定の値未満である場合に、リーク検査ガスが検出されなかったと判定される。検出器については、リーク検査ガスの種類に応じて、公知の検出器を使用することができる。
【0055】
検査工程は、通常、電極積層体の内部の圧力が、上記密閉空間(電極積層体における側面が露出した密閉空間)の圧力と同じ状態、または、上記密閉空間の圧力よりも高い状態で行われる。例えば、第1減圧工程および第2減圧工程の際に、電極積層体の内部の圧力、および、上記密閉空間の圧力を予め調整してもよい。あるいは、ガス印加工程の後、かつ、検査工程の前に、電極積層体の内部の圧力、および、上記密閉空間の圧力を調整してもよい。
【0056】
B.電池の製造方法
図8は、本開示における電池の製造方法を例示するフロー図である。図8に示すように、本開示における電池の製造方法では、上述した電池部材のリーク検査方法により、電池部材のリークを検査する(リーク検査工程S11)。次に、リーク検査工程S11においてリークが発生していないと判定された電池部材に対して、注液口、電極積層体の内部に電解液を注液する(注液工程S12)。次に、注液口を封止する(封止工程S13)。これにより、電池が得られる。
【0057】
本開示によれば、特定のリーク検査工程を行うことにより、リーク検査ガスの検出時間を短縮できる。これにより、電池の生産性が向上する。
【0058】
1.リーク検査工程
本開示におけるリーク検査工程は、上述した電池部材のリーク検査方法により、電池部材のリークを検査する工程である。電池部材のリーク検査方法の詳細については、「A.電池部材のリーク検査方法」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0059】
2.注液工程
本開示における注液工程は、上記リーク検査工程においてリークが発生していないと判定された上記電池部材に対して、上記注液口を介して、上記電極積層体の上記内部に電解液を注液する工程である。電解液の注液方法は、特に限定されず、例えば、注液装置を用いた公知の方法が用いられる。電解液は、注液口および貫通孔(例えば図4(a)における注液口21および貫通孔51)を介して、電極積層体の内部に供給される。
【0060】
3.封止工程
本開示における封止工程は、上記注液工程の後に、上記注液口を封止する工程である。封止工程は、減圧雰囲気で行うことが好ましい。注液口の封止方法は、特に限定されないが、例えば、フィルム部材で注液口を覆うように、フィルム部材を注液枠に熱溶着させる方法が挙げられる。
【0061】
フィルム部材は、厚さ方向において、第1樹脂層と、金属層と、第2樹脂層とを、この順に有することが好ましい。第1樹脂層を設けることで、樹脂製の注液枠との密着性が向上し、金属層を設けることで、ガスバリア性が向上し、第2樹脂層を設けることで、絶縁性が向上する。第1樹脂層は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。第1樹脂層の厚さは、例えば、40μm以上100μm以下である。また、金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が挙げられる。金属層の厚さは、例えば、30μm以上60μm以下である。また、第2樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂を含有することが好ましい。第2樹脂層の厚さは、例えば、40μm以上100μm以下である。
【0062】
4.電池
本開示における電池は、二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)であることが好ましい。また、電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0063】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0064】
1…集電体
2…正極活物質層
3…負極活物質層
4…セパレータ
5…シール部
10…電極積層体
20…注液枠
21…注液口
30…電池部材
40…枠型チャンバー
100…電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8