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特開2025-100013通信装置、その制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100013
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】通信装置、その制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/15 20180101AFI20250626BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20250626BHJP
   H04W 72/0457 20230101ALI20250626BHJP
   H04W 12/08 20210101ALI20250626BHJP
【FI】
H04W76/15
H04W84/12
H04W72/0457 110
H04W12/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217086
(22)【出願日】2023-12-22
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勇気
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA33
5K067DD34
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】一定以上のセキュリティ強度のデータ通信を実現することができる通信装置を提供する。
【解決手段】STA102は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信装置と無線通信を行う。STA102は、無線通信装置であるAP101からBeaconやProbe Response等のフレームを受信する。STA102は、受信したフレームに、Basic Multi-Link elementが含まれている場合、AP101において動作可能な複数の周波数チャネルにそれぞれ対応するaffiliated AP1~3のうち、セキュリティ強度が閾値を超えるaffiliated APとリンクを確立する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IEEE802.11シリーズの規格であってMulti-Link通信に対応する規格に準拠した無線通信装置と無線通信を行う通信装置であって、
前記無線通信装置から前記無線通信を行うための通信接続に必要となる情報を含む信号を受信する手段と、
前記信号に基づいて前記無線通信装置とリンクを確立する手段とを備え、
前記信号に前記無線通信装置が前記Multi-Link通信に対応することを示す所定の情報が含まれる場合、前記リンクを確立する手段は、前記無線通信装置が備える複数の通信手段であって異なる周波数チャネルで動作する複数の通信手段のうち、セキュリティ強度が所定の条件を満たす通信手段とリンクを確立することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記無線通信装置の通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定する手段を更に備え、
前記受信する手段は、前記複数の通信手段からそれぞれ前記信号を受信し、
前記判定する手段は、前記信号に基づいて、当該信号を送信した通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記判定する手段は、前記信号に含まれる情報であって当該信号を送信した通信手段のセキュリティ規格を示す情報に基づいて、当該通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記判定する手段は、前記信号に含まれる情報であって当該信号を送信した通信手段で使用される暗号方式を示す情報に基づいて、当該通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記判定する手段は、前記信号に含まれる情報であって当該信号を送信した通信手段で使用される認証方式を示す情報に基づいて、当該通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項6】
前記判定する手段は、前記信号に含まれる情報であって前記無線通信装置の利用用途を示す所定のモードの情報に基づいて、当該信号を送信した通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項7】
前記判定する手段は、前記信号に含まれる情報であって当該信号を送信した通信手段が動作する周波数帯を示す情報に基づいて、当該通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項8】
前記判定する手段によって2つ以上の通信手段が前記セキュリティ強度が閾値を超えると判定された場合、前記リンクを確立する手段は、当該2つ以上の通信手段とリンクを確立することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項9】
前記判定する手段によって1つの通信手段が前記セキュリティ強度が閾値を超えると判定された場合、前記リンクを確立する手段は、当該1つの通信手段とリンクを確立することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項10】
IEEE802.11シリーズの規格であってMulti-Link通信に対応する規格に準拠した無線通信装置と無線通信を行う通信装置の制御方法であって、
前記無線通信装置から前記無線通信を行うための通信接続に必要となる情報を含む信号を受信する工程と、
前記信号に基づいて前記無線通信装置とリンクを確立する工程とを有し、
前記信号に前記無線通信装置が前記Multi-Link通信に対応することを示す所定の情報が含まれる場合、前記リンクを確立する工程は、前記無線通信装置が備える複数の通信手段であって異なる周波数チャネルで動作する複数の通信手段のうち、セキュリティ強度が所定の条件を満たす通信手段とリンクを確立することを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項11】
IEEE802.11シリーズの規格であってMulti-Link通信に対応する規格に準拠した無線通信装置と無線通信を行う通信装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記通信装置の制御方法は、
前記無線通信装置から前記無線通信を行うための通信接続に必要となる情報を含む信号を受信する工程と、
前記信号に基づいて前記無線通信装置とリンクを確立する工程とを有し、
前記信号に前記無線通信装置が前記Multi-Link通信に対応することを示す所定の情報が含まれる場合、前記リンクを確立する工程は、前記無線通信装置が備える複数の通信手段であって異なる周波数チャネルで動作する複数の通信手段のうち、セキュリティ強度が所定の条件を満たす通信手段とリンクを確立することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、その制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)等の通信技術の開発が進められている。無線LANの主要な通信規格として、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11規格シリーズが知られている。IEEE802.11規格シリーズには、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax等の規格が含まれる。例えば、IEEE802.11axでは、OFDMA(直交周波数多元接続)を用いて、最大9.6ギガビット毎秒(Gbps)という高いピークスループットに加え、混雑状況下での通信速度を向上させる技術が規格化されている(例えば、特許文献1参照。)。尚、OFDMAは、Orthogonal frequency-division multiple accessの略である。
【0003】
また、更なるスループットの向上、周波数の利用効率の改善、通信レイテンシの改善を目指した後継規格であるIEEE802.11beを策定するtask groupが発足された。IEEE802.11beでは、例えば、1台のAP(Access Point)が異なる複数の周波数チャネルを介して1台のSTA(Station)と複数のリンクを確立し、並行して通信を行うMulti-Link通信が検討されている。
【0004】
従来のIEEE802.11規格シリーズでは、STAはAPに接続し、単一のリンクでAPとデータ通信を行っていた。一方、IEEE802.11beでは、STAはAPと2つ以上のリンクを確立し、確立した2つ以上のリンクで同時にデータ通信を行うことで、スループット向上を実現することができる。また、IEEE802.11beでは、利用可能な周波数帯を拡張するために、6GHz帯のサポートも検討されている。なお、2つ以上のリンクは同一周波数バンド(サブGHz帯、2.4GHz帯、3.6GHz帯、4.9及び5GHz帯、60GHz帯、及び6GHz帯のいずれか)から2つ以上を選択しても良く、異なる周波数バンドからそれぞれ選択しても良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-50133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにAPと2つ以上のリンクを確立可能な構成において、確立されたリンクの中にセキュリティ強度が低いリンクが含まれると、このリンクに起因して脆弱性が高まる懸念がある。
【0007】
本発明は、一定以上のセキュリティ強度のデータ通信を実現することができる通信装置、その制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の通信装置は、IEEE802.11シリーズの規格であってMulti-Link通信に対応する規格に準拠した無線通信装置と無線通信を行う通信装置であって、前記無線通信装置から前記無線通信を行うための通信接続に必要となる情報を含む信号を受信する手段と、前記信号に基づいて前記無線通信装置とリンクを確立する手段とを備え、前記信号に前記無線通信装置が前記Multi-Link通信に対応することを示す所定の情報が含まれる場合、前記リンクを確立する手段は、前記無線通信装置が備える複数の通信手段であって異なる周波数チャネルで動作する複数の通信手段のうち、セキュリティ強度が所定の条件を満たす通信手段とリンクを確立することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一定以上のセキュリティ強度のデータ通信を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る通信装置としてのSTAを含む通信システムの一例を示す構成図である。
図2図1のSTAとAPがMulti-Link通信を行う際のシーケンス図である。
図3】Multi-Link通信に対応するaffiliated APによって発信されるフレームに含まれるRNR elementの一例を示す図である。
図4図1のSTAのハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。
図5図1のSTAの機能構成の一例を示すブロック図である。
図6図1のSTAによって実行されるリンク確立制御処理の手順を示すフローチャートである。
図7図6のS608の判定処理の手順を示すフローチャートである。
図8図1のSTAによって実行されるリンク確立制御処理の別の手順を示すフローチャートである。
図9図8のS808の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る通信装置としてのSTA102を含む通信システムの一例を示す構成図である。この通信システムは、STA102、及び無線通信装置としてのAP(アクセスポイント)101で構成される。図1において、円100はAP101が形成するネットワークを示す。例えば、STA102が円100で示す領域内に存在する場合、STA102はAP101から送信されたBeaconやProbe Response等のフレーム(信号)を受信することができる。
【0013】
STA102は、AP101が構成するネットワークに参加しており、AP101とSTA102はIEEE802.11be(EHT)規格に準拠した無線通信を実行することができる。EHTは、Extremely High Throughputの略である。なお、EHTは、Extreme High Throughputの略であると解釈してもよい。AP101及びSTA102は何れも、2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯といった複数の周波数帯において通信可能である。なお、AP101及びSTA102が通信可能な周波数帯は、これらに限られず、例えば、60GHz帯のように、他の周波数帯でも通信可能な構成であってもよい。また、AP101及びSTA102は何れも、20GHz、40MHz、80MHz、160MHz、320MHzの帯域幅を使用して通信可能である。なお、AP101及びSTA102が使用する帯域幅は、これらに限られず、例えば、240MHz、4MHzのように、他の帯域幅を使用してもよい。
【0014】
なお、本実施の形態では、AP101及びSTA102は、IEEE802.11be規格に加えて、IEEE802.11be規格より前の規格であるレガシー規格に対応していてもよい。具体的には、AP101及びSTA102は、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax規格の少なくとも1つに対応していてもよい。また、AP101及びSTA102は、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax/be等のIEEE802.11シリーズ規格に加えて、Bluetooth(登録商標)、NFC、UWB、ZigBee、MBOA等の他の通信規格に対応していてもよい。なお、UWBはUltra Wide Bandの略であり、MBOAはMulti Band OFDM Allianceの略である。また、NFCはNear Field Communicationの略である。UWBには、ワイヤレスUSB、ワイヤレス1394、WiNET等が含まれる。また、有線LAN等の有線通信の通信規格に対応していてもよい。AP101の具体例としては、無線LANルーターやパーソナルコンピュータ(PC)等が挙げられるが、これらに限られない。また、AP101は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信を実行することができる無線チップ等の情報処理装置であってもよい。また、STA102の具体的な例としては、カメラ、タブレット、スマートフォン、PC、携帯電話、ビデオカメラ、ヘッドセット等が挙げられるが、これらに限られない。また、STA102は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信を実行することができる無線チップ等の情報処理装置であってもよい。
【0015】
AP101及びSTA102は、複数の周波数チャネルを介してリンクを確立して通信を行うMulti-Link通信を実行する。IEEE802.11シリーズ規格では、各周波数チャネルの帯域幅は20MHzとして定義されている。ここで、周波数チャネルとは、IEEE802.11シリーズ規格に定義された周波数チャネルであって、IEEE802.11シリーズ規格では、2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯、60GHz帯の各周波数帯に複数の周波数チャネルが定義されている。なお、隣接する周波数チャネルとボンディングすることで、1つの周波数チャネルにおいて40MHz以上の帯域幅を利用してもよい。例えば、AP101は、STA102と5GHz帯の第1の周波数チャネルを介したリンク103を確立して通信を行うことができる。STA102は、これと並行してAP101と6GHz帯の第2の周波数チャネルを介したリンク104を確立して通信を行うことができる。この場合に、STA102は、第1の周波数チャネルを介したリンク103と並行して、第2の周波数チャネルを介したリンク104を維持するMulti-Link通信を実行する。
【0016】
なお、Multi-Link通信では、通信装置間において、周波数帯の異なる複数のリンクを確立してもよい。例えば、AP101及びSTA102は、5GHz帯におけるリンク103と、6GHz帯におけるリンク104に加えて、2.4GHz帯における第3のリンクを確立してもよい。また、Multi-Link通信では、通信装置間において、同じ周波数帯に含まれる異なる複数の周波数チャネルを介してリンクを確立してもよい。例えば、AP101及びSTA102は、6GHz帯における15chを第1のリンクとして、これに加えて6GHz帯における207chを第2のリンクとして確立するようにしてもよい。なお、周波数帯が同じリンクと異なるリンクとが混在していてもよい。例えば、AP101及びSTA102は、5GHz帯における36chのリンク103に加えて、5GHz帯における149chのリンクと、6GHz帯における15chのリンクを確立してもよい。このように、STA102は、AP101と周波数チャネルが異なる複数のリンクを確立することで、確立した複数のリンクのうち、一のリンクが混雑している場合であっても、他のリンクで通信を行うことができる。その結果、STA102は、AP101との通信におけるスループットの低下や通信遅延を防ぐことができる。
【0017】
図2は、図1のSTA102とAP101がMulti-Link通信を行う際のシーケンス図である。なお、Multi-Link通信に対応するAP、STAは、それぞれAP MLD、STA MLDと呼ばれ、図2では、AP101をAP MLD101と記載し、STA102をSTA MLD102と記載している。なお、MLDはMulti-Link Deviceの略である。また、AP MLDに関連付けられ互いに異なる周波数チャネルで動作するAPをaffiliated APと呼び、STA MLDに関連付けられ互いに異なる周波数チャネルで動作するSTAをaffiliated STAと呼ぶ。図2には、2.4GHz帯で動作するaffiliated AP1、affiliated STA1が示されている。また、図2には、5GHz帯で動作するaffiliated AP2、affiliated STA2が示されている。更に、図2には、6GHz帯で動作するaffiliated AP3、affiliated STA3が示されている。
【0018】
AP101は、Multi-Link通信に対応する装置であることを示すBasic Multi-Link elementをBeaconやProbe Response等のフレームに付加する。affiliated AP1~3は、それぞれ対応する周波数チャネルで、このフレームを発信する。
【0019】
STA102は、受信したフレームにBasic Multi-Link elementが含まれるか否かに基づいて、このフレームの発信元がMulti-Link通信に対応するか否かを判定する。
【0020】
例えば、このフレームの発信元がAP101に属するaffiliated AP1である場合、このフレームには、図3に示すようなRNR(Reduced Neighbor Report) elementが含まれている。STA102は、RNR elementから、このフレームを発信したaffiliated AP1と同じAP101に属する他のaffiliated AP2、3の周波数チャネルの情報を取得する。なお、受信したフレームが同じAP101に属するaffiliated AP2、3から発信されたフレームであるかについて、RNR elementに含まれるMLD IDに基づいて判定される。MLD IDは、AP101に一意に割り当てられた識別情報である。STA102は、取得した情報が示す周波数チャネルに切り替えて、affiliated AP2、3から発信されたBeaconやProbe ResponsAe等のフレームをそれぞれ受信する。STA102は、受信したフレームに基づいて、affiliated AP1~3とそれぞれリンクを確立する。これにより、STA102は、AP101とMulti-Link通信可能となり、AP101との通信におけるスループットを向上させることができる。
【0021】
一方、このフレームの発信元がMulti-Link通信に対応するAPでない場合、STA102は、このフレームの発信元と単一の周波数チャネルでリンクを確立する。
【0022】
図4は、図1のSTA102のハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。図4において、STA102は、記憶部401、制御部402、機能部403、入力部404、出力部405、通信部406、及びアンテナ407を備える。記憶部401、制御部402、機能部403、入力部404、出力部405、通信部406はバス408を介して互いに接続されている。
【0023】
記憶部401は、ROMやRAM等の1以上のメモリにより構成され、後述する各種動作を行うためのプログラムや、無線通信を行うための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。なお、ROMはRead Only Memoryの略であり、RAMはRandom Access Memoryの略である。なお、記憶部401として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVD等の記憶媒体を用いてもよい。また、記憶部401が複数のメモリ等を備えていてもよい。
【0024】
制御部402は、例えば、CPUやMPU等の1以上のプロセッサにより構成され、記憶部401に記憶されたプログラムを実行することにより、STA102の全体を制御する。なお、制御部402は、記憶部401に記憶されたプログラムとOS(Operating System)との協働により、STA102の全体を制御してもよい。また、制御部402は、他の通信装置との通信において、送信するデータやフレームを生成する。なお、CPUはCentral Processing Unitの略であり、MPUはMicro Processing Unitの略である。また、制御部402がマルチコア等の複数のプロセッサを備え、これら複数のプロセッサによりSTA102の全体を制御してもよい。
【0025】
また、制御部402は、機能部403を制御して、無線通信や、撮像、印刷、投影等の所定の処理を実行する。機能部403は、STA102が所定の処理を実行するためのハードウェアである。
【0026】
入力部404は、ユーザから各種操作を受け付る。出力部405は、モニタ画面やスピーカーを介して、ユーザに対して各種情報を出力する。ここで、出力部405による出力とは、モニタ画面上への表示や、スピーカーによる音声出力、振動出力等であってもよい。なお、タッチパネルのように入力部404と出力部405の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。また、入力部404及び出力部405は、それぞれSTA102と一体であってもよいし、別体であってもよい。
【0027】
通信部406は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信の制御を行う。また、通信部406は、IEEE802.11be規格に加えて、他のIEEE802.11シリーズ規格に準拠した無線通信の制御や、有線LAN等の有線通信の制御を行ってもよい。通信部406は、アンテナ407を制御して、制御部402によって生成された無線通信を行うためのフレームを外部装置へ送信する。
【0028】
なお、STA102がIEEE802.11be規格に加えて、NFC規格やBluetooth規格等に対応している場合、通信部406は、これらの通信規格に準拠した無線通信の制御を行ってもよい。また、STA102が複数の通信規格に準拠した無線通信を実行できる場合、STA102は、各通信規格に対応する通信部とアンテナを個別に有する構成であってもよい。STA102は、通信部406を介して、画像データ、文書データ、映像データ等のデータを、AP101等の外部装置と送受信する。なお、アンテナ407は、通信部406と別体として構成されていてもよいし、通信部406と合わせて一つのモジュールとして構成されていてもよい。
【0029】
アンテナ407は、2.4GHz帯、5GHz帯、及び6GHz帯における通信が可能なアンテナである。本実施の形態では、STA102は、2つのアンテナを備える構成としたが、この構成に限られない。例えば、STA102は、周波数帯毎に異なるアンテナを備える構成、つまり、2.4GHz帯、5GHz帯、及び6GHz帯にそれぞれ対応する3つのアンテナを備える構成であっても良い。また、STA102は、複数のアンテナを備える構成において、各アンテナに対応する複数の通信部を備える構成であっても良い。
【0030】
図5は、図1のSTA102の機能構成の一例を示すブロック図である。図5において、STA102は、機能構成として、マルチリンク制御部501、affiliated STA設定部502、フレーム生成部503、フレーム送受信部504、及び通信品質測定部505を備える。
【0031】
マルチリンク制御部501は、STA102がAP101との無線通信に用いる1以上のリンクを確立するための通信開始処理や、通信開始後のリンクの追加や削除処理、全リンクを削除する通信終了処理を制御する。接続処理は、具体的に、Authentication処理、Association処理、4-Way-Hand-Shake(4WHS)処理から構成される。
【0032】
affiliated STA設定部502は、入力部404でユーザによって設定されたMulti-Link通信におけるaffiliated STAの選択及び決定を行う。また、affiliated STA設定部502は、フレーム送受信部504に対して、使用する周波数チャネルの通知を行う。
【0033】
フレーム生成部503は、affiliated STA設定部502の設定に従って送信するフレームを生成する。
【0034】
フレーム送受信部504は、affiliated STA設定部502から受け取った通知が示す周波数チャネルで、相手装置からBeaconやProbe Response等のフレームを受信する。
【0035】
通信品質測定部505は、フレーム送受信部504で受信したBeaconやProbe Response等のフレームの通信品質の測定を行う。なお、通信品質の測定では、例えば、RSSIやSNR等が用いられる。
【0036】
次に、STA102がAP101とリンクを確立する処理について説明する。
【0037】
図6は、図1のSTA102によって実行されるリンク確立制御処理の手順を示すフローチャートである。図6のリンク確立制御処理は、制御部402が記憶部401に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。図6のリンク確立制御処理は、例えば、STA102において、Multi-Link通信を行うためのMulti-Linkモードがユーザによって設定された状態で、STA102がAP101へ接続試行を開始する際に実行される。若しくは、電波環境が悪くなる等で接続するAPを再決定する際に実行される。
【0038】
図6において、まず、制御部402は、affiliated STA1~3の中から、ユーザに指定されたaffiliated STAを介して、BeaconやProbe Response等のフレームを受信する(S601)。例えば、ユーザがaffiliated STA1を指定した場合、S601では、affiliated STA1と同じ周波数チャネルで動作するaffiliated AP1から発信されたフレームが受信される。
【0039】
次いで、制御部402は、STA102がMulti-Link通信に対応しているか否かを判定する(S602)。
【0040】
S602にて、STA102がMulti-Link通信に対応していないと判定された場合、本処理はS603へ進む。S603では、制御部402は、ユーザに指定されたaffiliated STA1と同じ周波数チャネルで動作するaffiliated AP1とリンクを確立する。その後、本処理は終了する。
【0041】
S602にて、STA102がMulti-Link通信に対応していると判定された場合、本処理はS604へ進む。S604では、制御部402は、S601で受信したフレームにBasic Multi-Link elementが含まれているか否かを判定する。つまり、S601で受信したフレームの発信元の装置であるAP101がMulti-Link通信に対応しているか否かを判定する。
【0042】
S604にて、S601で受信したフレームにBasic Multi-Link elementが含まれていないと判定された場合、つまり、AP101がMulti-Link通信に対応していない場合、本処理はS603へ進む。
【0043】
S604にて、S601で受信したフレームにBasic Multi-Link elementが含まれていると判定された場合、つまり、AP101がMulti-Link通信に対応している場合、本処理はS605へ進む。
【0044】
S605では、制御部402は、S601で受信したフレームから、このフレームを発信したaffiliated AP1と同じAP MLD(AP101)に属する他のaffiliated AP2、3の周波数チャネルの情報を取得する。
【0045】
次いで、制御部402は、S605で取得した情報が示す周波数チャネルに切り換えて、この周波数チャネルで動作するaffiliated AP2、3から発信されたフレームをそれぞれ受信する(S606)。なお、S606では、AP101以外のAP MLDに属するaffiliated APから発信されたフレームを受信することもある。このため、制御部402は、S606で受信したフレームの発信元が、S601で受信したフレームの発信元と同じAP MLDに属するかについて判定する。この判定は、S601、S606でそれぞれ受信したフレームに含まれるMLD IDに基づいて行われる。例えば、これらのMLD IDが一致しない場合、S606で受信したフレームの発信元が、S601で受信したフレームの発信元と異なるAP MLDに属すると判定される。一方、これらのMLD IDが一致する場合、S606で受信したフレームの発信元が、S601で受信したフレームの発信元と同じAP MLDに属すると判定される。以降の処理では、S606で受信した複数のフレームのうち、S601で受信したフレームの発信元と同じAP MLDに属するaffiliated APから発信されたフレームのみが使用される。
【0046】
次いで、制御部402は、S601、S606で受信したフレームから、それぞれaffiliated AP1~3のセキュリティ強度に関する情報を取得する(S607)。セキュリティ強度に関する情報は、例えば、発信元のaffiliated APのセキュリティ規格を示す情報、発信元のaffiliated APで使用される暗号方式を示す情報、発信元のaffiliated APで使用される認証方式を示す情報、発信元のaffiliated APが属するAP MLDの利用用途を示すモードの情報等が挙げられるが、これに限定されない。
【0047】
次いで、制御部402は、後述する図7のセキュリティ強度が閾値を上回るaffiliated APの個数判定処理を行う(S608)。
【0048】
S608にてセキュリティ強度が閾値を上回ると判定されたaffiliated APの個数が複数である場合、本処理はS609へ進む。S609では、制御部402は、AP101に属するaffiliated AP1~3のうち、セキュリティ強度が閾値を上回ると判定された複数のaffiliated APとそれぞれリンクを確立する。例えば、affiliated AP1~3の全てについて、そのセキュリティ強度が閾値を上回ると判定された場合、制御部402は、affiliated AP1~3とそれぞれリンクを確立する。また、affiliated AP1~3のうちの2つについて、そのセキュリティ強度が閾値を上回ると判定された場合、制御部402は、セキュリティ強度が閾値を上回ると判定された2つのaffiliated APとそれぞれリンクを確立する。その後、本処理は終了する。
【0049】
S608にてセキュリティ強度が閾値を上回ると判定されたaffiliated APの個数が1つである場合、本処理はS610へ進む。S610では、制御部402は、AP101に属するaffiliated AP1~3のうち、セキュリティ強度が閾値を上回ると判定された1つのaffiliated APとリンクを確立する。その後、本処理は終了する。このように、本実施の形態では、AP101に属するaffiliated AP1~3の中で、セキュリティ強度が閾値を上回ると判定されたaffiliated APとリンクが確立される。S610で1つのリンクを確立する場合は、ユーザにセキュリティ強度の高い1つのリンクで通信を確立させるか、セキュリティ強度の高くないリンクを含む複数のリンクで通信を確立するかを問い合わせ、ユーザの指示に基づいて1つのリンクを確立するか複数のリンクを確立するかを制御するようにしても良い。
【0050】
S608にてセキュリティ強度が閾値を上回ると判定されたaffiliated APの個数が0である場合、本処理はS611へ進む。S611では、制御部402は、AP101に属するaffiliated AP1~3の何れともリンクを確立しない。この際、出力部405には、例えば、AP101とリンクが確立されていないことを示す通知が表示される。その後、本処理は終了する。S608で条件をみたすリンクが無いと判断された場合は、ユーザに通信の確立を行わないか、セキュリティ強度の高くないリンクを含む複数もしくは1つのリンクで通信を確立するかを問い合わせ、ユーザの指示に基づいて1つのリンクを確立するかリンクを確立しないかを制御するようにしても良い。
【0051】
図7は、図6のS608の判定処理の手順を示すフローチャートである。なお、図7の判定処理は、S601、S606で受信したフレームに対し、それぞれ実行される。本実施の形態では、一例として、S601で受信したフレーム、つまり、affiliated AP1から発信されたフレームに対する処理について説明する。
【0052】
図7において、制御部402は、S607で取得したセキュリティ強度に関する情報に基づいて、affiliated AP1のセキュリティ規格がWPA2又はWPA3であるかについて判定する(S701)。なお、本実施の形態では、S607で取得したセキュリティ強度に関する情報に、affiliated AP1のセキュリティ規格を示す情報として、例えば、WPA3、WPA2、WPA、WEPの何れかを示す情報が含まれる。セキュリティ規格のセキュリティ強度は、WPA3、WPA2、WPA、WEPの順に強く、本実施の形態では、一例として、セキュリティ規格のセキュリティ強度に関する閾値をWPA2に設定した場合について説明する。セキュリティ規格のセキュリティ強度に関する閾値について、予め固定値が設定されていても良く、ユーザによって変更可能な構成であっても良い。
【0053】
S701にて、affiliated AP1のセキュリティ規格がWPA2又はWPA3であると判定された場合、制御部402は、affiliated AP1の暗号方式がAESであるか否かを判定する(S702)。なお、本実施の形態では、S607で取得したセキュリティ強度に関する情報に、affiliated AP1で使用される暗号方式を示す情報として、例えば、AES、TKIP、RC4の何れかを示す情報が含まれる。暗号方式のセキュリティ強度は、AES、TKIP、RC4の順に強く、本実施の形態では、一例として、暗号方式のセキュリティ強度に関する閾値をAESに設定した場合について説明する。暗号方式のセキュリティ強度に関する閾値について、予め固定値が設定されていても良く、ユーザによって変更可能な構成であっても良い。
【0054】
S702にて、affiliated AP1の暗号方式がAESであると判定された場合、制御部402は、affiliated AP1の認証方式がSAEであるか否かを判定する(S703)。なお、本実施の形態では、S607で取得したセキュリティ強度に関する情報に、affiliated AP1で使用される認証方式を示す情報として、例えば、SAE、PSK、共通鍵認証、オープンシステム認証の何れかを示す情報が含まれる。認証方式のセキュリティ強度は、SAE、PSK、共通鍵認証、オープンシステム認証の順に強く、本実施の形態では、一例として、認証方式のセキュリティ強度に関する閾値をSAEに設定した場合について説明する。認証方式のセキュリティ強度に関する閾値について、予め固定値が設定されていても良く、ユーザによって変更可能な構成であっても良い。
【0055】
S703にて、affiliated AP1の認証方式がSAEであると判定された場合、制御部402は、affiliated AP1のモードがEnterpriseであるか否かを判定する(S704)。なお、本実施の形態では、S607で取得したセキュリティ強度に関する情報に、affiliated AP1が属するAP MLDの利用用途を示す情報として、例えば、企業向けであることを示す「Enterprise」、個人向けであることを示す「Personal」の何れかが含まれる。モードのセキュリティ強度は、Enterprise、Personalの順に強く、本実施の形態では、一例として、モードのセキュリティ強度に関する閾値をEnterpriseに設定した場合について説明する。モードのセキュリティ強度に関する閾値について、予め固定値が設定されていても良く、ユーザによって変更可能な構成であっても良い。
【0056】
S704にて、affiliated AP1のモードがEnterpriseであると判定された場合、制御部402は、affiliated AP1のセキュリティ強度が閾値を上回ると判定する(S705)。その後、本処理は終了する。
【0057】
S701にて、affiliated AP1のセキュリティ規格がWPA2及びWPA3の何れでもないと判定された場合、本処理はS706へ進む。また、S702にて、affiliated AP1の暗号方式がAESでないと判定された場合も、本処理はS706へ進む。また、S703にて、affiliated AP1の認証方式がSAEでないと判定された場合も、本処理はS706へ進む。更に、S704にて、affiliated AP1のモードがEnterpriseでないと判定された場合も、本処理はS706へ進む。S706では、制御部402は、affiliated AP1のセキュリティ強度が閾値を下回ると判定する。その後、本処理は終了する。本実施の形態では、図7の処理をS606で受信したフレームに対しても行われ、affiliated AP2、3についても、そのセキュリティ強度が閾値を上回るか否かが判定される。
【0058】
上述した実施の形態によれば、受信したフレームにBasic Multi-Link elementが含まれている場合、affiliated AP1~3(通信手段)のうち、セキュリティ強度が閾値を超えるaffiliated APとリンクが確立される。これにより、一定以上のセキュリティ強度のデータ通信を実現することができる。
【0059】
また、上述した実施の形態では、受信したフレームに基づいて、当該フレームを送信したaffiliated APのセキュリティ強度が閾値を超えるか否かが判定される。これにより、フレームを送信したaffiliated APのうち、セキュリティ強度が閾値を超えるaffiliated APのみとリンクを確立する制御を行うことができる。
【0060】
また、上述した実施の形態では、受信したフレームに含まれる情報であって当該フレームを送信したaffiliated APのセキュリティ規格を示す情報に基づいて、当該affiliated APのセキュリティ強度が閾値を超えるか否かが判定される。これにより、フレームを送信したaffiliated APのセキュリティ規格に基づいて、当該affiliated APのセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを容易に判定することができる。
【0061】
また、上述した実施の形態では、受信したフレームに含まれる情報であって当該フレームを送信したaffiliated APで使用される暗号方式を示す情報に基づいて、当該affiliated APのセキュリティ強度が閾値を超えるか否かが判定される。これにより、フレームを送信したaffiliated APで使用される暗号方式に基づいて、当該affiliated APのセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを容易に判定することができる。
【0062】
また、上述した実施の形態では、受信したフレームに含まれる情報であって当該フレームを送信したaffiliated APで使用される認証方式を示す情報に基づいて、当該affiliated APのセキュリティ強度が閾値を超えるか否かが判定される。これにより、フレームを送信したaffiliated APで使用される認証方式に基づいて、当該affiliated APのセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを容易に判定することができる。
【0063】
また、上述した実施の形態では、受信したフレームに含まれる情報であって当該フレームを送信したaffiliated APが属するAPの利用用途を示すモードの情報に基づいて、当該affiliated APのセキュリティ強度が閾値を超えるか否かが判定される。これにより、フレームを送信したaffiliated APが属するAPの利用用途に基づいて、当該affiliated APのセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを容易に判定することができる。
【0064】
また、上述した実施の形態では、受信したフレームにBasic Multi-Link elementが含まれている場合、affiliated AP1~3のうち、セキュリティ強度が閾値を超える2つ以上のaffiliated APとリンクが確立される。これにより、一定以上のセキュリティ強度のMulti-Link通信を実現することができる。
【0065】
また、上述した実施の形態では、受信したフレームにBasic Multi-Link elementが含まれている場合、affiliated AP1~3のうち、セキュリティ強度が閾値を超える1つのaffiliated APとリンクが確立される。これにより、脆弱性が高くなる懸念があるMulti-Link通信が行われるのを防止することができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、S608にてセキュリティ強度が閾値を上回ると判定されたaffiliated APが0である場合、S612では、AP101に属するaffiliated AP1~3のうち、セキュリティ強度が最も高いaffiliated APとリンクを確立してもよい。
【0067】
また、本実施の形態では、図7の処理において、セキュリティ強度を周波数帯で判定しても良い。例えば、受信したフレームの発信元が動作する周波数帯が6GHz帯である場合、この発信元のセキュリティ強度が閾値を上回ると判定される。これは6GHzではWPA3のセキュリティ規格を使用することが決まっているからである。一方、受信したフレームの発信元が動作する周波数帯が5GHz帯、2.4GHz帯、その他の周波数帯である場合、この発信元のセキュリティ強度が閾値を下回ると判定される。これにより、フレームを送信したaffiliated APが動作する周波数帯に基づいて、当該affiliated APのセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを容易に判定することができる。つまり、例えば確立可能なリンクが6GHz帯で2つ、2.4GHz帯で1つであった場合、STAは6GHz帯の2つのリンクを選択して通信接続を確立する。
【0068】
セキュリティ強度が高いと判定する基準はSTAの装置設定によって動的に変更されるようにしても良い。例えば、STAの操作部からSTAのセキュリティ強度を設定でき、セキュリティ強度が「高」の装置設定が為されている場合は、セキュリティ強度の閾値を高くし、WPA3のリンクでしか通信を確立しないようにする。
【0069】
次に、AP101と既にリンクを確立したSTA102が、AP101とのリンクを追加する処理について説明する。
【0070】
図8は、図1のSTA102によって実行されるリンク確立制御処理の別の手順を示すフローチャートである。図8のリンク確立制御処理は、上述した図6のリンク確立制御処理に類似する処理であり、以下では、特に、上述した図6のリンク確立制御処理と異なる内容について説明する。図8のリンク確立制御処理も、上述した図6のリンク確立制御処理と同様に、制御部402が記憶部401に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。図8のリンク確立制御処理は、例えば、STA102がユーザから、Single-Link通信を行うためのSingle-LinkモードからMulti-Linkモードへのモード変更指示を受けた際や、周囲の電波環境等によってMulti-Link通信が実行可能であると判断された場合などに実行される。ここでは、一例として、Single-Linkモードにおいて、STA102が、AP101に属するaffiliated AP1~3の中の一つ、例えば、affiliated AP1とリンクを確立していたこととする。
【0071】
図8において、上述したS601と同様の処理であるS801が行われる。なお、ここでは、既にリンクが確立されているaffiliated AP1と同じ周波数チャネルで動作するaffiliated STA1が、ユーザに指定されたこととする。次いで、上述したS602~S607と同様の処理であるS802~S807が行われる。
【0072】
次いで、制御部402は、後述する図9のセキュリティ強度が閾値を上回るaffiliated APの個数判定処理を行う(S808)。S808では、S806で受信したフレーム、具体的に、既にリンクが確立されているaffiliated AP1以外のaffiliated AP2、3から発信されたフレームに対して処理が行われる。
【0073】
S808にてセキュリティ強度が閾値を上回ると判定されたaffiliated APの個数が複数である場合、本処理はS809へ進む。S809では、制御部402は、S808にてセキュリティ強度が閾値を上回ると判定された複数のaffiliated AP、具体的に、AP101に属するaffiliated AP2、3とそれぞれリンクを確立する。つまり、既に確立していたaffiliated AP1とのリンクの他に、affiliated AP2とのリンク、affiliated AP3とのリンクが追加される。その後、本処理は終了する。
【0074】
S808にてセキュリティ強度が閾値を上回ると判定されたaffiliated APの個数が1つである場合、本処理はS810へ進む。S810では、制御部402は、S808の処理対象となるフレームを発信したAP101に属するaffiliated AP2、3のうち、セキュリティ強度が閾値を上回ると判定された1つのaffiliated APとリンクを確立する。例えば、S808にてAP101に属するaffiliated AP2のセキュリティ強度が閾値を上回ると判定された場合、既に確立していたaffiliated AP1とのリンクの他に、affiliated AP2とのリンクが追加される。その後、本処理は終了する。
【0075】
S808にてセキュリティ強度が閾値を上回ると判定されたaffiliated APの個数が0である場合、本処理はS811へ進む。S811では、制御部402は、AP101とのリンクを追加しない。すなわち、affiliated AP1とのリンクの確立がそのまま保持される。この際、出力部405には、例えば、AP101とMulti-Link通信が行われないことを示す通知が表示される。その後、本処理は終了する。
【0076】
図9は、図8のS808の判定処理の手順を示すフローチャートである。なお、図9の判定処理は、上述したようにS806で受信したフレームに対し、それぞれ実行される。本実施の形態では、一例として、S806で受信したフレームであってaffiliated AP2から発信されたフレームに対する処理について説明する。
【0077】
図9において、制御部402は、affiliated AP2のセキュリティ規格のセキュリティ強度がaffiliated AP1以上であるか否かを判定する(S901)。
【0078】
S901にて、affiliated AP2のセキュリティ規格のセキュリティ強度がaffiliated AP1以上であると判定された場合、本処理はS902へ進む。S902では、制御部402は、affiliated AP2の暗号方式のセキュリティ強度がaffiliated AP1以上であるか否かを判定する。
【0079】
S902にて、affiliated AP2の暗号方式のセキュリティ強度がaffiliated AP1以上であると判定された場合、本処理はS903へ進む。S903では、制御部402は、affiliated AP2の認証方式のセキュリティ強度がaffiliated AP1以上であるか否かを判定する。
【0080】
S903にて、affiliated AP2の認証方式のセキュリティ強度がaffiliated AP1以上であると判定された場合、本処理はS904へ進む。S904では、制御部402は、affiliated AP2のモードのセキュリティ強度がaffiliated AP1以上であるか否かを判定する。
【0081】
S904にて、affiliated AP2のモードのセキュリティ強度がaffiliated AP1以上であると判定された場合、制御部402は、affiliated AP2のセキュリティ強度が閾値を上回ると判定する(S905)。その後、本処理は終了する。
【0082】
S901にて、affiliated AP2のセキュリティ規格のセキュリティ強度がaffiliated AP1未満であると判定された場合、本処理はS906へ進む。また、S902にて、affiliated AP2の暗号方式のセキュリティ強度がaffiliated AP1未満であると判定された場合も、本処理はS906へ進む。また、S903にて、affiliated AP2の認証方式のセキュリティ強度がaffiliated AP1未満であると判定された場合も、本処理はS906へ進む。更に、S904にて、affiliated AP2のモードのセキュリティ強度がaffiliated AP1未満であると判定された場合も、本処理はS906へ進む。S906では、制御部402は、affiliated AP2のセキュリティ強度が閾値を下回ると判定する。その後、本処理は終了する。本実施の形態では、図8の判定処理をS806で受信したaffiliated AP3のフレームに対しても行われ、affiliated AP3についても、そのセキュリティ強度が閾値を上回るか否かが判定される。
【0083】
上述した実施の形態では、セキュリティ強度が閾値を超えるaffiliated APとのリンクが追加で確立される。これにより、一定以上のセキュリティ強度のMulti-Link通信を実現することができる。
【0084】
なお、上述したS901~S904の判定において、affiliated AP1のセキュリティ強度を基準にするではなく、上述した図7の判定処理のように、設定された閾値に基づいて行っても良い。
【0085】
上述の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体をシステムあるいは装置に供給し、システムあるいは装置のコンピュータ(CPU、MPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行するようにしてもよい。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述の実施形態の機能を実現することとなり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は上述の装置を構成することになる。
【0086】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVDなどを用いることができる。
【0087】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSが実際の処理の一部または全部を行い、上述の機能を実現してもよい。OSとは、Operating Systemの略である。
【0088】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードを、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込む。そして、そのプログラムコードの指示に基づき、機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUが実際の処理の一部または全部を行い、上述の機能を実現してもよい。
【0089】
なお、本実施形態の開示は、以下の構成および方法を含む。
(構成1)IEEE802.11シリーズの規格であってMulti-Link通信に対応する規格に準拠した無線通信装置と無線通信を行う通信装置であって、前記無線通信装置から前記無線通信を行うための通信接続に必要となる情報を含む信号を受信する手段と、前記信号に基づいて前記無線通信装置とリンクを確立する手段とを備え、前記信号に前記無線通信装置が前記Multi-Link通信に対応することを示す所定の情報が含まれる場合、前記リンクを確立する手段は、前記無線通信装置が備える複数の通信手段であって異なる周波数チャネルで動作する複数の通信手段のうち、セキュリティ強度が所定の条件を満たす通信手段とリンクを確立することを特徴とする通信装置。
(構成2)前記無線通信装置の通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定する手段を更に備え、前記受信する手段は、前記複数の通信手段からそれぞれ前記信号を受信し、前記判定する手段は、前記信号に基づいて、当該信号を送信した通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定することを特徴とする構成1に記載の通信装置。
(構成3)前記判定する手段は、前記信号に含まれる情報であって当該信号を送信した通信手段のセキュリティ規格を示す情報に基づいて、当該通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定することを特徴とする構成2に記載の通信装置。
(構成4)前記判定する手段は、前記信号に含まれる情報であって当該信号を送信した通信手段で使用される暗号方式を示す情報に基づいて、当該通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定することを特徴とする構成2又は3に記載の通信装置。
(構成5)前記判定する手段は、前記信号に含まれる情報であって当該信号を送信した通信手段で使用される認証方式を示す情報に基づいて、当該通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定することを特徴とする構成2乃至4の何れか1つに記載の通信装置。
(構成6)前記判定する手段は、前記信号に含まれる情報であって前記無線通信装置の利用用途を示す所定のモードの情報に基づいて、当該信号を送信した通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定することを特徴とする構成2乃至5の何れか1つに記載の通信装置。
(構成7)前記判定する手段は、前記信号に含まれる情報であって当該信号を送信した通信手段が動作する周波数帯を示す情報に基づいて、当該通信手段のセキュリティ強度が閾値を超えるか否かを判定することを特徴とする構成2に記載の通信装置。
(構成8)前記判定する手段によって2つ以上の通信手段が前記セキュリティ強度が閾値を超えると判定された場合、前記リンクを確立する手段は、当該2つ以上の通信手段とリンクを確立することを特徴とする構成2乃至7の何れか1つに記載の通信装置。
(構成9)前記判定する手段によって1つの通信手段が前記セキュリティ強度が閾値を超えると判定された場合、前記リンクを確立する手段は、当該1つの通信手段とリンクを確立することを特徴とする構成2乃至8の何れか1つに記載の通信装置。
【符号の説明】
【0090】
101 AP
102 STA
402 制御部
406 通信部
501 マルチリンク制御部
504 フレーム送受信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9