(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100066
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】導電性高分子化合物、導電性高分子組成物、及び、電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 9/028 20060101AFI20250626BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20250626BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20250626BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20250626BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20250626BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20250626BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
H01G9/028 G
H01G9/15
H01M10/0565
C08G61/12
C08L65/00
C08L101/12
C08K5/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217158
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小城原 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】須賀 郁美
(72)【発明者】
【氏名】川崎 隆志
(72)【発明者】
【氏名】上田 裕喜
【テーマコード(参考)】
4J002
4J032
5H029
【Fターム(参考)】
4J002AA00X
4J002CE00W
4J002EV256
4J002FD206
4J002GQ00
4J032BA14
4J032BB01
4J032BC22
4J032BC29
4J032BC32
5H029AJ06
5H029AM16
5H029HJ02
(57)【要約】
【課題】固体電解質層の導電率を十分に向上できる導電性高分子化合物などを提供する。
【解決手段】本開示の実施形態に係る導電性高分子化合物は、3位に置換基を有するピロールを繰り返し単位として含有し、前記置換基が、ハロゲン化アルキル基、ホルミル基、または、ホルムアミド基であり、前記ハロゲン化アルキル基は、CnH2n+1-mXm(ただし、nは1以上の整数であり、mは1≦m≦2n+1を満たす整数であり、Xは、フッ素元素、塩素原子、臭素元素、または、ヨウ素元素を示す。)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3位に置換基を有するピロールを繰り返し単位として含有し、
前記置換基が、ハロゲン化アルキル基、ホルミル基、または、ホルムアミド基であり、
前記ハロゲン化アルキル基は、CnH2n+1-mXm(ただし、nは1以上の整数であり、mは1≦m≦2n+1を満たす整数であり、Xは、フッ素元素、塩素原子、臭素元素、または、ヨウ素元素を示す。)である、
導電性高分子化合物。
【請求項2】
前記置換基が、CH2X、CHX2、CX3、CHO、及び、NHCHOからなる群から選ばれる1種である、
請求項1に記載の導電性高分子化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の導電性高分子化合物を含む、
導電性高分子組成物。
【請求項4】
前記導電性高分子化合物を2種以上含む、
請求項3に記載の導電性高分子組成物。
【請求項5】
ドーパント化合物をさらに含む、
請求項3に記載の導電性高分子組成物。
【請求項6】
前記ドーパント化合物がナフタレンスルホン酸またはその塩である、
請求項5に記載の導電性高分子組成物。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれか1項に記載の導電性高分子組成物によって形成された固体電解質層を備える、
電子部品。
【請求項8】
前記電子部品は、タンタル電解コンデンサ、アルミ電解コンデンサ、及び、固体電池からなる群から選択される1種である、
請求項7に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子化合物、導電性高分子組成物、及び、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電解コンデンサにおいて、液状成分(電解液など)に代えて導電性高分子によって形成された導電性高分子層(固体電解質層)を用いることによって、電解質の導電率を向上させることが知られている(例えば、下記特許文献1)。電解コンデンサにおいては、上記のように電解質の導電率を向上させることによって、等価直列抵抗(ESR)を低下させることができる。上記のような固体電解質層を備える電解コンデンサは、通常、陽極体と、陽極体を覆う誘電体層と、誘電体層を覆う固体電解質層と、固体電解質層上に形成された陰極引出層とを含むコンデンサ素子を有している。
【0003】
下記特許文献1には、電解コンデンサにおいて、誘電体層を覆う第1固体電解質層と該第1固体電解質層を覆う第2固体電解質層との2層によって固体電解質層を構成することが記載されている。より具体的には、下記特許文献1には、ポリチオフェンを基本骨格とする第1導電性高分子化合物を含み、かつ、2S/cm以下の導電率を示すように第1固体電解質層を構成し、ポリピロールを基本骨格とする第2導電性高分子化合物を含むように第2固体電解質層を構成することが記載されている。そして、下記特許文献1には、第1固体電解質層及び第2固体電解質層を上記のように構成することにより、固体電解質層の導電率を向上させて電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)を低下させることが記載されている。換言すれば、下記特許文献1には、固体電解質層を特性の異なる2種類の導電性高分子化合物を含むものとすることによって、該固体電解質層の導電率を向上させて電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)を低下させることが記載されている。
【0004】
下記特許文献2には、特定構造を有する3-アルキル複素五員環化合物の2~10個を、アルキル基を頭尾規制しつつ複素五員環の2位と5位とを結合して特定構造のモノマーを得ること、及び、該特定構造のモノマーを重合させて導電性高分子化合物を得ることが記載されている。また、下記特許文献2には、電解コンデンサの固体電解質層を上記のような導電性高分子化合物を含むものとすることにより、該固体電解質層の導電率を向上させて電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)を低下させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/017574号
【特許文献2】特開2009-209259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、電解コンデンサにおいては、固体電解質層の導電率を向上させために、該固体電解質層に含ませる導電性高分子化合物について種々の検討がなされているものの、その検討は未だ十分になされているとは言い難い。
【0007】
また、上記のように、固体電解質層の導電率を向上させることは、固体電解質層を備える他の電子部品(例えば、固体電池など)においても望まれているものの、その検討についても未だ十分になされているとは言い難い。
【0008】
そこで、本開示は、固体電解質層の導電率を十分に向上できる導電性高分子化合物、該導電性高分子化合物を含む導電性高分子組成物、及び、該導電性高分子組成物によって形成された固体電解質層を備える電子部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、3位に置換基を有するピロールを繰り返し単位として含有し、前記置換基が、ハロゲン化アルキル基、ホルミル基、ホルムアミド基であり、前記ハロゲン化アルキル基は、CnH2n+1-mXm(ただし、nは1以上の整数であり、mは1≦m≦2n+1を満たす整数であり、Xは、フッ素元素、塩素原子、臭素元素、または、ヨウ素元素を示す。)である、導電性高分子化合物に関する。
【0010】
本発明の他の側面は、上記導電性高分子化合物を含む、導電性高分子組成物に関する。
【0011】
本発明のさらに他の側面は、上記導電性高分子組成物によって形成された固体電解質層を備える、電子部品に関する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、固体電解質層の導電率を十分に向上できる導電性高分子化合物、該導電性高分子化合物を含む導電性高分子組成物、及び、該導電性高分子組成物によって形成された固体電解質層を備える電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】3位にホルムアミド基を有するピロールの合成経路を示す図である。
【
図2】3位にホルミル基を有するピロールの合成経路を示す図である。
【
図3A】3位にハロゲン化メチル基を有するピロールの第1の合成経路を示す図である。
【
図3B】3位にハロゲン化メチル基を有するピロールの第2の合成経路を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。
【
図5】
図4の領域Vを模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、置換基を有するピロール(以下、置換基含有ピロールともいう)が複数結合されて得られる高分子化合物において、該高分子化合物の主鎖(複数の置換基含有ピロールどうしが結合して得られる鎖状部分)の分子軌道のエネルギー準位が、置換基の種類によって変化することを見出した。そして、高分子化合物の分子軌道のエネルギー準位が上昇すると高分子化合物において電子遷移が生じやすくなるので、このような高分子化合物を用いて形成された固体電解質層(導電性高分子層)では導電率が向上する一方で、分子軌道のエネルギー準位が低下すると高分子化合物において電子遷移が生じ難くなるので、このような高分子化合物を用いて形成された固体電解質層(導電性高分子層)では導電率が低下すると考えられる。そのため、本発明者らは、置換基含有ピロールが複数結合されて得られる高分子化合物において、分子軌道のエネルギー準位を上昇させ得る置換基に着目した。そして、本発明者らは、このような置換基について鋭意検討することにより、本発明を完成するに至った。
【0015】
以下では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値、材料等を適用してもよい。なお、本開示に特徴的な部分の構成要素には、公知の構成要素を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値Bの範囲」という場合、当該範囲には数値Aおよび数値Bが含まれる。
【0016】
以下の説明において、特定の物性や条件などに関する数値の下限と上限とを例示した場合、下限が上限以上とならない限り、例示した下限のいずれかと例示した上限のいずれかを任意に組み合わせることができる、複数の材料が例示される場合、特に言及しない限り、その中から1種を選択して単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
また、本開示には、添付の特許請求の範囲に記載の複数の請求項から任意に選択される2つ以上の請求項に記載の事項の組み合わせを包含する。つまり、技術的な矛盾が生じない限り、添付の特許請求の範囲に記載の複数の請求項から任意に選択される2つ以上の請求項に記載の事項を組み合わせることができる。
【0018】
[導電性高分子化合物]
本開示の実施形態に係る導電性高分子化合物は、3位に置換基を有するピロールを繰り返し単位として含有する。3位に置換基を有するピロールは、下記式(1)で表される構造を有している。なお、下記式(1)において、Rは置換基である。置換基Rは、ハロゲン化アルキル基、ホルミル基(CHO)、または、ホルムアミド基(NHCHO)である。
【0019】
【0020】
本開示の実施形態に係る導電性高分子化合物は、置換基Rの向きが同一方向に揃うように、3位に置換基を有するピロールの複数が結合された構造を有していてもよいし(下記式(2a)参照)、置換基Rの向きが同一方向に揃わないように、3位に置換基を有するピロールの複数が結合された構造を有していてもよい(下記式(2b)参照)。本開示の実施形態に係る導電性高分子化合物が下記式(2b)で表されるような構造を有する場合、上記式(1)で表される第1構成単位と、N(窒素原子)と前記Nに直接結合したH(水素原子)とを結ぶ線分に対して第1構成単位の線対称の位置に置換基Rが存在する第2構成単位との比率(モル比)は、第1構成単位:第2構成単位=1:1~1:10であってもよい。なお、本開示の実施形態に係る導電性高分子化合物は、通常、下記式(2b)で表される構造を有していることが多い。
【0021】
【0022】
ハロゲン化アルキル基は、CnH2n+1-mXm(ただし、nは1以上の整数であり、mは1≦m≦2n+1を満たす整数であり、Xは、フッ素元素、塩素原子、臭素元素、または、ヨウ素元素を示す。)である。なお、nの上限値は、9である。ハロゲン化アルキル基は、CH2X、CHX2、または、CX3であることが好ましい。すなわち、本開示の実施形態に係る導電性高分子化合物においては、置換基Rは、CH2X、CHX2、CX3、CHO、及び、NHCHOからなる群から選ばれる1種であることが好ましい。
【0023】
置換基Rが、CH2X、CHX2、CX3、及び、CHOである場合、これらの置換基Rは、炭素原子を介してピロールの3位に結合される。そして、これらの置換基Rにおいては、X(ハロゲン元素)またはO(酸素原子)の影響によってピロールの3位の炭素原子の正の帯電量が減少する。同様に、置換基RがNHCHOである場合、窒素原子の影響によってピロールの3位の炭素原子の正の帯電量が減少する。このように、置換基Rは、ピロールの3位に結合されているので、このようなピロールを繰り返し単位として含有する導電性高分子化合物の主鎖では、該主鎖の正の帯電量の減少の影響によって電子遷移が生じ易くなっていると考えらえる。すなわち、上記のようなピロールを繰り返し単位として含有する導電性高分子化合物の主鎖では、エネルギー準位が上昇し易くなっていると考えられる。上記のような理由により、本開示の実施形態に係る導電性高分子化合物は、高い導電率を有するものになると考えられる。
【0024】
3位にホルムアミド基(NHCHO)を有するピロールは、
図1に示したように、3位にアミノ基を有するピロールとギ酸(HCOOH)とを用いて、アミノ基上でホルミル化反応を進行させて得ることができる。アミノ基上でのホルミル化反応の進行を促進させるために、ホルミル化試薬(例えば、N-ホルミルサッカリンなど)を用いてもよい。
【0025】
3位にホルミル基(CHO)を有するピロールは、
図2に示したように、ジクロロメタン(CH
2Cl
2)中において、3位にヒドロキシメチル基(CH
2OH)を有するピロールにおけるヒドロキシメチル基をクロロクロム酸ピリジニウム(PCC)によってアルデヒドに酸化して得ることができる。
【0026】
次に、3位にハロゲン化メチル基を有するピロールの合成について、
図3A及び3Bを参照しながら説明する。
【0027】
3位にCH
2X1を有するピロールは、3位にメチル基(CH
3)を有するピロールとX1
2分子との共存下(気相中)において、光照射することにより得ることができる。具体的には、光照射によってX1
2分子を光開裂させてX1ラジカルを得て、該X1ラジカルによってメチル基(CH
3)から水素原子(H)を1個引き抜くことによって得ることができる(
図3Aの第1A反応)。光照射は、例えば、UVランプを光源として紫外線を照射することにより実施できる。照射する紫外線の波長としては、例えば、200nm以上430nm以下が挙げられ、積算光量としては、例えば、100mJ以上1000mJ以下が挙げられる。なお、
図3A中において、hνは光照射を意味している。ここで、X1は、フッ素(F)元素、塩素(Cl)元素、または、ホウ素(Br)元素である。
【0028】
3位にCHX1
2を有するピロールは、3位にCH
2X1を有するピロールとX1
2分子との共存下(気相中)において、光照射することにより得ることができる。具体的には、光照射によって得られたX1ラジカルによって、CH
2X1から水素原子(H)を1個引き抜くことによって得ることができる(
図3Aの第2A反応)。光照射は、上記した条件で実施することができる。なお、3位にCH
2X
1を有するピロールは、
図3Aの第1A反応によって得られたものを用いることができる。
【0029】
3位にCX1
3を有するピロールは、3位にCHX1
2を有するピロールとX1
2分子との共存下(気相中)において、光照射することより得ることができる。具体的には、光照射によって得られたX1ラジカルによって、CHX1
2から水素原子(H)を1個引き抜くことにより得ることができる(
図3Aの第3A反応)。光照射は、上記した条件で実施することができる。なお、3位にCHX1
2を有するピロールは、
図3Aの第2A反応によって得られたものを用いることができる。
【0030】
なお、
図3Aの第1A反応~第3A反応は、X1ラジカルなどのラジカル種が存在することによって連続的に進行する。そのため、3位にCH
2X1を有するピロール、3位にCHX1
2を有するピロール、及び、3位にCX1
3を有するピロールは、ラジカル停止反応後にシリカゲルカラムクロマトグラフィで分級することによって、それぞれ高純度で得ることができる。シリカゲルクロマトグラフィでの分級は、ヘキサン及び酢酸エチルの少なくとも一方を含む溶剤を移動相として用いて実施することができる。なお、本明細書では、分級とは特定の物質を抽出するための一連の操作を意味する。
【0031】
一方で、ハロゲン化メチル基が有するハロゲン元素Xがヨウ素(I)元素である場合には、上記とは異なる経路で合成することができる。
【0032】
3位にCH
2Iを有するピロールは、3位にCH
2Clを有するピロールとヨウ化ナトリウム(NaI)とをアセトン中(液相中)で反応させることにより得ることができる。具体的には、CH
2Clの塩素原子をヨウ化ナトリウム(NaI)のヨウ素原子(I)で置換することにより得ることができる(
図3Bの第1B反応)。ここで、第1B反応後には、3位にCH
2Clを有するピロールの未反応分などが残存している。そのため、第1B反応後にシリカゲルクロマトグラフィで分級することによって、3位にCH
2Iを有するピロールを高純度で得ることができる。シリカゲルクロマトグラフィでの分級は、上で説明したように、ヘキサン及び酢酸エチルの少なくとも一方を含む溶剤を移動相として用いて実施することができる。なお、3位にCH
2Clを有するピロールは、
図3Aの第1A反応によって得られたものを用いることができる。
【0033】
3位にCHI
2を有するピロールは、3位にCHCl
2を有するピロールとヨウ化ナトリウム(NaI)とをアセトン中(液相中)で反応させることにより得ることができる。具体的には、CHCl
2の塩素原子2個をヨウ化ナトリウム(NaI)のヨウ素原子(I)で置換することにより得ることができる(
図3Bの第2B反応)。3位にCHI
2を有するピロールも、シリカゲルクロマトグラフィでの分級によって高純度で得ることができる。シリカゲルクロマトグラフィでの分級は、上で説明したように、ヘキサン及び酢酸エチルの少なくとも一方を含む溶剤を移動相として用いて実施することができる。なお、3位にCHCl
2を有するピロールは、
図3Aの第2A反応によって得られたものを用いることができる。
【0034】
3位にCI
3を有するピロールは、3位にCCl
3を有するピロールとヨウ化ナトリウム(NaI)とをアセトン中(液相中)で反応させることにより得ることができる。具体的には、CCl
3の塩素原子3個をヨウ化ナトリウム(NaI)のヨウ素原子(I)と置換することにより得ることができる(
図3Bの第3B反応)。3位にCI
3を有するピロールも、シリカゲルクロマトグラフィでの分級によって高純度で得ることができる。シリカゲルクロマトグラフィでの分級は、上で説明したように、ヘキサン及び酢酸エチルの少なくとも一方を含む溶剤を移動相として用いて実施することができる。なお、3位にCCl
3を有するピロールは、
図3Aの第3A反応によって得られたものを用いることができる。
【0035】
本開示の実施形態に係る導電性高分子化合物は、3位にホルムアミド基(NHCHO)を置換基として有するピロールを繰り返し単位として含有していることが好ましい。このような置換基を有することにより、本開示の実施形態に係る導電性高分子化合物は特に高い導電率を示すようになる。そして、このような導電性高分子化合物を含む固体電解質層も特に高い導電率を示すようになる。これにより、このような固体電解質層を備える電解コンデンサは特に低い等価直列抵抗(ESR)を示すものとなる。
【0036】
本開示の実施形態に係る導電性高分子化合物の重合度は、6以上1100以下であってもよい。重合度は、10以上であってもよいし、50以上であってもよいし、100以上であってもよい。また、重合度は、800以下であってもよいし、500以下であってもよいし、300以下であってもよい。重合度は、導電高分子化合物の重量平均分子量Mwを該導電性高分子化合物における基本構造の構成単位であるモノマーの式量で除することによって求めることができる。なお、導電性高分子化合物の重量平均分子量Mwは、後述する方法によって測定することができる。
【0037】
本実施形態に係る導電性高分子化合物の重量平均分子量Mwは、5.6×102以上4.6×105以下であることが好ましい。重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定されるポリスチレン換算値である。なお、GPC測定は、Shodex OHpak SB804HQとSB8025HQとの2本を連結したカラムを用い、LiBrもしくはNaOH3を50mMで溶解させたジメチルスルホキシド(DMSO)もしくはジメチルホルムアミド(DMF)溶液を溶離液として用い、RI検出器を用いた上で、カラム温度を40℃から120℃とし、溶離液の流量を0.2mL/minとし、分析時間を40minとすることにより実施することができる。また、測定試料は、前記溶離液に濃度1.0g/Lとなるように導電性高分子化合物を溶解させて調整することができる。
【0038】
各置換基を有する導電性高分子化合物は、それぞれ、下記表1に示した範囲の重量平均分子量Mwを有していることが好ましい。
【0039】
【0040】
本開示の実施形態に係る導電性高分子化合物は、3位に置換基を有するピロールを化学酸化重合または電解重合させて得ることができる。なお、以下では、3位に置換基を有するピロールを3位置換ピロールと称する。
【0041】
3位置換ピロールを化学酸化重合させる方法(以下、化学酸化重合法ともいう)について、以下に説明する。まず、反応溶媒としては、3位置換ピロール及び使用する酸化剤を溶解可能な溶媒を単独で用いてもよいし、3位置換ピロールを溶解可能な溶媒と、使用する酸化剤を溶解可能な溶媒とを組み合わせて用いてもよい。すなわち、化学酸化重合は、不均一系で実施されてもよい。このような溶媒としては、例えば、水、硫酸、メタノール、エタノール、プロパノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドラフラン、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0042】
酸化剤としては、第二酸化鉄、トリ(p-トルエンスルホン酸)鉄(III)、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過マンガン酸カリウムなどが挙げられる。
【0043】
化学酸化重合法においては、ドーパント化合物が用いられてもよい。ドーパント化合物としては、例えば、硫酸、アルキル硫酸(ヘプチル硫酸、オクチル硫酸など)、アルキルベンゼンスルホン酸(ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸など)、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸(メチルナフタレンスルホン酸など)、ナフタレンジスルホン酸、アルキルナフタレンジスルホン酸(メチルナフタレンジスルホン酸など)などが挙げられる。また、ドーパント化合物は、先に説明した各種酸の塩であってもよい。各種酸の塩としては、ナトリウム塩及びアンモニウム塩などが挙げられる。本開示の実施形態においては、化学酸化重合法のドーパント化合物として、ナフタレンスルホン酸またはその塩を用いることが好ましい。また、ナフタレンスルホン酸の塩は、ナトリウム塩(ナフタレンスルホン酸ナトリウム)であることが好ましい。
【0044】
前記溶媒、前記酸化剤、及び、必要に応じて前記ドーパント化合物を用いて、3位置換ピロールを化学酸化重合させる。以下では、ドーパント化合物を用いて不均一系(以下、単に不均一系という)にて3位置換ピロールを化学酸化重合させる例について説明する。不均一系においては、3位置換ピロールを溶媒に溶解させて得られる第1溶液と、酸化剤及びドーパント化合物を溶媒に溶解させて得られる第2溶液とを用いる。不均一系においては、第1溶液に第2溶液を滴下させて3位置換ピロールを化学酸化重合させる。第1溶液において、3位置換ピロールの濃度は、1mmol/L以上1000mmol/L以下であることが好ましく、10mmol/L以上200mmol/L以下であることがより好ましい。第2溶液において、酸化剤の濃度は、1mmol/L以上1000mmol/L以下であることが好ましく、10mmol/L以上200mmol/L以下であることが好ましく、ドーパント化合物の濃度は、5mmol/L以上5000mmol/L以下であることが好ましく、50mmol/L以上1000mmol/L以下であることがより好ましい。3位置換ピロール、酸化剤、及び、ドーパント化合物のそれぞれが、上記範囲内の濃度であることにより、副反応が抑制されるようになって、得られる導電性高分子化合物の導電率が低くなることを抑制できる。また、3位置換ピロールの化学酸化重合を十分に進行させることができる。反応温度は、-40℃以上110℃以下であることが好ましく、-20℃以上40℃以下であることがより好ましく、-20℃以上10℃以下であることがより好ましい。反応温度が上記範囲内であることにより、副反応が抑制されるようになって、得られる導電性高分子化合物の導電率が低くなることを抑制できる。反応温度は、使用する溶媒が凍結しない温度から溶媒の沸点までの範囲から選択することが好ましい。反応を穏やかに進行させる上においては、溶媒が凍結しなく、かつ、粘度上昇が生じないような可能な限り低温で実施することが好ましい。反応時間は、0.1時間以上72時間以下であることが好ましく、0.1時間以上10時間以下で行うことがより好ましい。
【0045】
3位置換ピロールを電解重合させる方法(以下、電解重合法ともいう)について、以下に説明する。電解重合法においては、重合溶媒中において3位置換ピロールを重合させる。電解重合法においては、ドーパント化合物を用いることが好ましい。重合溶媒としては、3位置換ピロール及びドーパント化合物を溶解可能な溶媒を用いることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、水、硫酸、メタノール、エタノール、プロパノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0046】
ドーパント化合物は、重合溶媒に溶解させて用いられる。ドーパント化合物としては、例えば、硫酸、アルキル硫酸(ヘプチル硫酸、オクチル硫酸など)、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸(トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸など)、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸(メチルナフタレンスルホン酸など)、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンジスルホン酸(メチルナフタレンジスルホン酸など)が挙げられる。本開示の実施形態においては、電解重合においても、ドーパント化合物として、ナフタレンスルホン酸またはその塩を用いることが好ましい。また、ナフタレンスルホン酸の塩は、ナトリウム塩(ナフタレンスルホン酸ナトリウム)であることが好ましい。
【0047】
電解重合法としては、3位置換ピロール及びドーパント化合物を溶解させた重合溶媒(以下、ピロール含有重合溶媒という)にポテンショスタットを用いて電位掃引法または定電圧法を適用して3位置換ピロールを重合させる方法、ピロール含有重合溶媒にガルバノスタットを用いて定電流法を適用して3位置換ピロールを重合させる方法が挙げられる。電解重合法において、3位置換ピロールの濃度及びドーパント化合物の濃度には上記範囲を採用することができる。なお、ドーパント化合物は、ピロール含有重合溶媒中において電解質として機能する。
【0048】
電解重合法を電位掃引法で実施する場合、標準水素電極に対して-500mV以上2500mV以下の範囲で電位を掃引させることが好ましく、0mV以上2000mV以下の範囲で電位を掃引させることがより好ましい。上記範囲内で電位を掃引することにより、過酸化によって3位置換ピロールが分解することを抑制できる。反応時間は、0.1時間以上72時間以下であることが好ましく、0.1時間以上10時間以下であることがより好ましい。反応時間が上記範囲内であることにより、重合生成物を粉状ではなくフィルム状で得ることができる。フィルム状の重合生成物は、取り扱いに優れることに加えて、高い導電率を示すという利点がある。
【0049】
電解重合法を定電圧法で実施する場合、標準水素電極に対して0mV以上2500mV以下の範囲内の電圧を採用することが好ましく、500mV以上2000mV以下の範囲内の電圧を採用することがより好ましい。上記範囲内の電圧を採用することにより、過酸化によって3位置換ピロールが分解することを抑制できる。反応時間は、0.1時間以上72時間以下であることが好ましく、0.1時間以上10時間以下であることがより好ましい。反応時間が上記範囲内であることにより、重合生成物を粉状ではなくフィルム状で得ることができる。フィルム状の重合生成物は、取り扱いに優れることに加えて、高い導電率を示すという利点がある。
【0050】
電解重合法を定電流法で実施する場合、用いる作用電極の面積に対して、0.1mA/cm2以上50mA/cm2以下の範囲内の電流を採用することが好ましく、0.1mA/cm2以上10mA/cm2以下の範囲内の電流を採用することがより好ましい。反応時間は、0.1時間以上72時間以下であることが好ましく、0.1時間以上10時間以下であることがより好ましい。反応時間が上記範囲内であることにより、重合生成物を粉状ではなくフィルム状で得ることができる。フィルム状の重合生成物は、取り扱い性に優れることに加えて、高い導電率を示すという利点がある。
【0051】
[導電性高分子組成物]
本開示の実施形態に係る導電性高分子組成物は、本開示の実施形態に係る導電性高分子化合物を含む。すなわち、本開示の実施形態に係る導電性高分子組成物は、3位に置換基を有するピロールを繰り返し単位として含有し、置換基が、ハロゲン化アルキル基、ホルミル基、または、ホルムアミド基である導電性高分子化合物を含む。具体的には、本開示の実施形態に係る導電性高分子組成物は、上記式(2a)または(2b)で表されるような構造を有する導電性高分子化合物を含む。なお、ハロゲン化アルキル基は、CnH2nX、CnHnX2、または、CnX3(ただし、nは1以上の整数であり、Xは、フッ素元素、塩素原子、臭素元素、または、ヨウ素元素を示す。)である。本開示の導電性高分子組成物は上記のような導電性高分子化合物を含んでいるので、高い導電率を有するものとなる。
【0052】
本開示の実施形態に係る導電性高分子組成物は、上記の導電性高分子化合物を2種以上含んでいてもよい。
【0053】
本開示の実施形態に係る導電性高分子組成物は、上記以外の導電性高分子化合物を含んでいてもよい。上記以外の導電性高分子化合物としては、例えば、置換基を有さないピロール化合物を繰り返し単位として含む導電性高分子化合物、置換基としてアルキル基を有するピロールを繰り返し単位として含有する導電性高分子化合物などが挙げられる。本開示の実施形態に係る導電性高分子組成物は、本開示の実施形態に係る導電性高分子化合物を50質量%以上含んでいることが好ましく、60質量%以上含んでいることがより好ましく、70質量%以上含んでいることがより好ましく、80質量%以上含んでいることがより好ましく、90質量%以上含んでいることがより好ましい。また、本開示の実施形態に係る導電性高分子組成物は、本開示の導電性高分子化合物のみを含んでいてもよい。
【0054】
本開示の実施形態に係る導電性高分子組成物は、ドーパント化合物を含んでいることが好ましい。上で説明したように、ドーパント化合物の存在下において3位置換ピロールを重合させて得られた導電性高分子化合物を導電性高分子組成物に含ませることによって、該導電性高分子組成物はドーパント化合物を含むものとなる。
【0055】
[電子部品]
本開示の実施形態に係る電子部品は、本開示の実施形態に係る導電性高分子組成物によって形成された固体電解質層を備える。電子部品としては、電解コンデンサ及び固体電池が挙げられる。電解コンデンサとしては、タンタル電解コンデンサ及びアルミ電解コンデンサが挙げられる。すなわち、本開示の実施形態に係る電子部品は、タンタル電解コンデンサ、アルミ電解コンデンサ、及び、固体電池からなる群から選択される1種であることが好ましい。なお、タンタル電解コンデンサとは、後述する陽極体が弁作用金属としてタンタルを含み、前記陽極体の表面に誘電体層としてTa2O5を備えた電解コンデンサのことである。タンタル電解コンデンサでは、陽極体は、通常、タンタル粒子の焼結体で構成される。また、アルミ電解コンデンサとは、後述する陽極体が弁作用金属としてアルミニウムを含み、前記陽極体の表面に誘電体層としてAl2O3を備えた電解コンデンサのことである。アルミ電解コンデンサでは、陽極体は、通常、アルミニウム箔で構成される。
【0056】
(電解コンデンサ)
本開示の実施形態に係る電解コンデンサは、コンデンサ素子を備える。コンデンサ素子は、陽極体と、陽極体を覆う誘電体層と、誘電体層を覆う陰極部と、を備える。陰極部は、誘電体層を覆う固体電解質層と、固体電解質層を覆う陰極引出層とを備える。
【0057】
<陽極体>
陽極体は、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、および、弁作用金属を含む化合物などを含むことができる。これらの材料は、一種単独で用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。弁作用金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンなどが使用されることが好ましい。陽極体には、表面から中心部に向けて、多孔質部が形成されていてもよい。多孔質部は、弁作用金属を含む基材(箔状または板状の基材など)の表面をエッチングなどで粗面化することにより形成することができる。陽極体は、弁作用金属を含む粒子の成形体またはその焼結体であってもよい。焼結体は、多孔質構造を有する。そのため、多孔質構造を有する焼結体は、その全体が多孔質部になり得る。
【0058】
<誘電体層>
誘電体層は、例えば、弁作用金属を含む陽極体を化成処理(陽極酸化処理)することにより形成される。誘電体層は、陽極体の少なくとも一部を覆うように形成されていればよい。誘電体層は、通常、少なくとも、陽極体の表面(主面)に形成される。陽極体において、表面から中心部に向けて多孔質部が形成されている場合、誘電体層は、多孔質部の少なくとも一部に形成されていることが好ましい。誘電体層は、多孔質部の表面(外表面)に形成された上で、孔(ピット)の内部にも侵入するように形成されていることが好ましい。
【0059】
誘電体層は、弁作用金属の酸化物を含む。例えば、弁作用金属としてタンタルを用いた場合、誘電体層はTa2O5を含み、弁作用金属としてアルミニウムを用いた場合、誘電体層はAl2O3を含む。なお、誘電体層は、上記に限られず、誘電体として機能するものであればどのようなものでも用いることができる。
【0060】
<陰極部>
陰極部は、誘電体層の少なくとも一部を覆うように形成されていればよい。上で説明したように、陰極部は、誘電体層を覆う固体電解質層と、固体電解質層を覆う陰極引出層と、を備える。すなわち、陰極部は、固体電解質層によって誘電体層の少なくとも一部を覆っていればよい。また、陰極引出層は、固体電解質層の少なくとも一部を覆うように形成されていればよい。
【0061】
上で説明したように、固体電解質層は誘電体層の少なくとも一部を覆っていればよい。固体電解質層は誘電体層の全体(表面全体)を覆っていてもよい。上で説明したように、固体電解質層は、本開示の実施形態に係る導電性高分子組成物によって形成されている。上で説明したように、本開示の実施形態に係る導電性高分子組成物は高い導電率を有するので、このような導電性高分子組成物によって形成された固体電解質層も高い導電率を有するものとなる。例えば、後述する実施例に示したように、65S/cmを上回る高い導電率を有するものとなる。したがって、このような固体電解質層を備える電解コンデンサでは、等価直列抵抗(ESR)を十分に低下させることができる。
【0062】
陰極引出層は、固体電解質層を覆うカーボン層と、カーボン層を覆う銀ペースト層とを有する。カーボン層は、必ずしも、固体電解質層の全体(表面全体)を覆うように形成される必要はなく、固体電解質層の少なくとも一部を覆うように形成されていればよい。また、銀ペースト層は、必ずしも、カーボン層の全体(表面全体)を覆うように形成される必要はなく、カーボン層の少なくとも一部を覆うように形成されていればよい。カーボン層は、導電性を有していればよく、例えば、導電性炭素材料(黒鉛など)を用いて構成することができる。銀ペースト層は、例えば、銀粉末とバインダ樹脂(エポキシ樹脂など)とを含む組成物によって構成することができる。陰極引出層の構成は、上記に限られず、集電機能を有していればどのような構成であってもよい。
【0063】
以下、
図4及び5を参照しながら、本開示の一実施形態に係る固体電解コンデンサの具体的構成について説明する。
図4は、本開示の一実施形態に係る固体電解コンデンサの模式断面図であり、
図5は、
図4の領域Vを模式的に示す拡大断面図である。
【0064】
図4に示すように、固体電解コンデンサ1は、コンデンサ素子2と、コンデンサ素子2を封止する樹脂外装体3と、樹脂外装体3の外部にそれぞれ少なくともその一部が露出する陽極端子4および陰極端子5と、を備えている。陽極端子4および陰極端子5は、例えば、銅または銅合金などの金属で構成することができる。樹脂外装体3は、ほぼ直方体の外形を有しており、固体電解コンデンサ1もほぼ直方体の外形を有している。樹脂外装体3の素材としては、例えば、エポキシ樹脂を用いることができる。
【0065】
コンデンサ素子2は、陽極体6と、陽極体6を覆う誘電体層7と、誘電体層7を覆う陰極部8とを備える。陰極部8は、誘電体層7を覆う固体電解質層9と、固体電解質層9を覆う陰極引出層10とを備える。図示例において、陰極引出層10は、第1層としてのカーボン層11および第2層としての銀ペースト層12を有する。固体電解コンデンサ1においては、固体電解質層9は、導電性組成物によって形成された導電性高分子層であり、該導電性高分子層は、上で説明した本開示の一実施形態に係る導電性高分子化合物を含んでいる。
【0066】
陽極体6は、陰極部8と対向する領域(以下、単に、対向領域という)と、陰極部8と対向しない領域(以下、単に非対向領域という)とを含む。非対向領域のうち、陰極部8と隣接する一端側には陽極体6の表面(露出面)を帯状に覆うように絶縁性の分離層13が形成されていて、陰極部8と陽極体6との接触が規制されている。非対向領域のうち、陰極部8と隣接していない他端側には陽極端子4が溶接によって電気的に接続されている。陰極端子5は、導電性接着剤によって形成された接着層14を介して陰極部8と電気的に接続されている。
【0067】
陽極端子4の主面4Sおよび陰極端子5の主面5Sは、樹脂外装体3の同一面側において露出している。すなわち、陽極端子4の主面4Sおよび陰極端子5の主面5Sは、露出面を構成している。これらの露出面は、固体電解コンデンサ1を搭載すべき基板(図示せず)との半田接続などに用いられる。
【0068】
カーボン層11は、導電性を有していればよく、例えば、導電性炭素材料(黒鉛など)を用いて構成することができる。銀ペースト層12には、例えば、銀粉末とバインダ樹脂(エポキシ樹脂など)を含む組成物を用いることができる。なお、陰極引出層10の構成は、これに限られず、集電機能を有する構成であればよい。
【0069】
固体電解質層9は、誘電体層7を覆うように形成されている。詳しくは、
図5に示したように、誘電体層7は、陽極体6の表面(多孔質部6aの外表面Sおよび孔Pの内壁面)に沿って形成される。誘電体層7の表面には、陽極体6の表面の形状に応じた凹凸形状が形成されている(
図5を参照)。固体電解質層9は、このような誘電体層7の凹凸を埋めるように形成されていることが好ましい。
【0070】
本開示の実施形態に係る電解コンデンサは、上記構造の電解コンデンサに限定されず、様々な構造の電解コンデンサに適用することができる。具体的には、巻回型の電解コンデンサなどにも、本開示の実施形態に係る電解コンデンサを適用することができる。また、本開示の実施形態に係る電解コンデンサは、固体高分子層(導電性高分子層)に加えて液状成分(電解液など)を含むハイブリッド型電解コンデンサにも適用することができる。陽極体は、陽極リードの一部が埋設された多孔質体であってもよい。陽極体では、陽極端子と陽極リードとが電気的に接続されていてもよい。
【0071】
(固体電池)
本開示の実施形態に係る固体電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に設けられる固体電解質層とを備える。そして、固体電解質層が本開示の実施形態に係る導電性高分子組成物によって形成されている。したがって、この固体電解質層も高い導電率を有するものとなる。
【0072】
(付記)
上記記載によって以下の技術が開示される。
(技術1)
3位に置換基を有するピロールを繰り返し単位として含有し、
前記置換基が、ハロゲン化アルキル基、ホルミル基、または、ホルムアミド基であり、
前記ハロゲン化アルキル基は、CnH2n+1-mXm(ただし、nは1以上の整数であり、mは1≦m≦2n+1を満たす整数であり、Xは、フッ素元素、塩素原子、臭素元素、または、ヨウ素元素を示す。)である、
導電性高分子化合物。
(技術2)
前記置換基が、CH2X、CHX2、CX3、CHO、及び、NHCHOからなる群から選ばれる1種である、
技術1に記載の導電性高分子化合物。
(技術3)
技術1または2に記載の導電性高分子化合物を含む、
導電性高分子組成物。
(技術4)
前記導電性高分子化合物を2種以上含む、
技術3に記載の導電性高分子組成物。
(技術5)
ドーパント化合物をさらに含む、
技術3または4に記載の導電性高分子組成物。
(技術6)
前記ドーパント化合物がナフタレンスルホン酸またはその塩である、
技術5に記載の導電性高分子組成物。
(技術7)
技術3ないし6のいずれか1つに記載の導電性高分子組成物によって形成された固体電解質層を備える、
電子部品。
(技術8)
前記電子部品は、タンタル電解コンデンサ、アルミ電解コンデンサ、及び、固体電池からなる群から選択される1種である。
【0073】
本発明を現時点での好ましい実施形態に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【実施例0074】
以下、本開示を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
[実施例1A]
(1)陽極体の作製
陽極体として、陽極リードの一部が埋設されたタンタル焼結体(多孔質体)を準備した。タンタル焼結体は直方体形状を有していた。陽極リードの一部は、タンタル焼結体の一端面側に埋設されていた。すなわち、陽極リードは、タンタル焼結体の一端面から外方に向けて突出するように設けられていた。陽極体についてリン酸水溶液中(リン酸の濃度は0.010質量%)で陽極酸化を実施して、前記陽極体の表面に酸化タンタル(Ta2O5)を含む誘電体層を形成した。陽極酸化は、70Vの直流電圧を20分間印加する条件にて実施した。
【0076】
(2)固体電解質層の形成
3位にホルムアミド基(NHCHO)を有するピロール(以下、3位ホルムアミド基含有ピロールという)と、ドーパント化合物(ナフタレン骨格を有するスルホン酸塩)とを含む水分散液を調製した。なお、水分散液中において、3位ホルムアミド基含有ピロールの濃度を0.5mol/Lとし、ドーパント化合物の濃度を0.3mol/Lとした。なお、3位ホルムアミド基含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法によって合成した。
【0077】
誘電体層が形成された陽極体と対電極とを浸漬させ、液温25℃、かつ、重合電圧3V(銀参照電極に対する重合電位)の条件でホルムアミド基含有ピロールを電解重合させた。これにより、誘電体層上に固体電解質層を形成した。なお、固体電解質層の厚みは100nmであった。固体電解質層の導電率(単位はS/cm)の値を以下の表2に示した。固体電解質層の導電率は、該固体電解質層と同組成となるように金属基板上に形成した試料膜の導電率を測定することにより得ることができる。前記試料膜は、上記の水分散液と同組成の試料液を調製し、該試料液を金属基板に浸漬し、該金属基板に電流を流して、3位ホルムアミド基含有ピロールを電解重合させて形成することができる。試料膜の導電率の測定には、日東精工アナリテック社製のロレスターGX及びPSPプローブを用いることができる。
【0078】
(3)陰極引出層の形成
固体電解質層の表面に、黒鉛粒子を水に分散させた分散液を塗布した後、乾燥することによりカーボン層を形成した。乾燥は、130~180℃で10~30分間実施した。次いで、カーボン層の表面に、銀粒子とバインダ樹脂(エポキシ樹脂)とを含む銀ペーストを塗布した後、バインダ樹脂を熱硬化させて銀ペースト層を形成した。バインダ樹脂の熱硬化は、150~200℃で10~60分間実施した。これにより、固体電解質の表面に、カーボン層と銀ペースト層とで構成される陰極引出層を形成した。このようにして、実施例1Aに係るコンデンサ素子を得た。
【0079】
(4)電解コンデンサの作製
コンデンサ素子に陽極端子(陽極リードフレーム)及び陰極端子(陰極リードフレーム)を取り付けた後、陽極端子及び陰極端子のそれぞれの一部を露出させるように、コンデンサ素子、陽極端子及び陰極端子のそれぞれの残部を樹脂封止材で封止した。このようにして、実施例1Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。具体的には、
図4に示したような電解コンデンサを得た。なお、陽極端子の取り付けは、コンデンサ素子の陽極リードに陽極端子を溶接することにより実施し、陰極端子の取り付けは、コンデンサ素子の陰極引出層に陰極端子を導電性接着剤により接続することにより実施した。
【0080】
[実施例2A]
固体電解質層を形成するときに、3位にホルミル基(CHO)を有するピロール(以下、3位ホルミル基含有ピロールという)を用いた以外は、実施例1Aと同様にして、実施例2Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。なお、実施例2Aについても固体電解質層の導電率の測定結果を以下の表2に示した。なお、3位ホルミル基含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって合成した。
【0081】
[実施例3A]
固体電解質層を形成するときに、3位にCH2Fを有するピロール(以下、3位CH2F含有ピロールという)を用いた以外は、実施例1Aと同様にして、実施例3Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。実施例3Aについても固体電解質層の導電率の測定結果を以下の表2に示した。なお、3位CH2F含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって合成した。
【0082】
[実施例4A]
固体電解質層を形成するときに、3位にCHF2を有するピロール(以下、3位CHF2含有ピロールという)を用いた以外は、実施例1Aと同様にして、実施例4Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。実施例4Aについても固体電解質層の導電率の測定結果を以下の表2に示した。なお、3位CHF2含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって合成した。
【0083】
[実施例5A]
固体電解質層を形成するときに、3位にCF3を有するピロール(以下、3位CF3含有ピロールという)を用いた以外は、実施例1Aと同様にして、実施例5Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。実施例5Aについても固体電解質層の導電率の測定結果を以下の表2に示した。なお、3位CF3含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって合成した。
【0084】
[実施例6A]
固体電解質層を形成するときに、3位にCH2Clを有するピロール(以下、3位CH2Cl含有ピロールという)を用いた以外は、実施例1Aと同様にして、実施例6Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。実施例6Aについても固体電解質層の導電率の測定結果を以下の表2に示した。なお、3位CH2Cl含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって合成した。
【0085】
[実施例7A]
固体電解質層を形成するときに、3位にCHCl2を有するピロール(以下、3位CHCl2含有ピロールという)を用いた以外は、実施例1Aと同様にして、実施例7Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。実施例7Aについても固体電解質層の導電率の測定結果を以下の表2に示した。なお、3位CHCl2含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって合成した。
【0086】
[実施例8A]
固体電解質層を形成するときに、3位にCCl3を有するピロール(以下、3位CCl3含有ピロールという)を用いた以外は、実施例1Aと同様にして、実施例8Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。実施例8Aについても固体電解質層の導電率の測定結果を以下の表2に示した。なお、3位CCl3含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって合成した。
【0087】
[実施例9A]
固体電解質層を形成するときに、3位にCH2Brを有するピロール(以下、3位CH2Br含有ピロールという)を用いた以外は、実施例1Aと同様にして、実施例9Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。実施例9Aについても固体電解質層の導電率の測定結果を以下の表2に示した。なお、3位CH2Br含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって合成した。
【0088】
[実施例10A]
固体電解質層を形成するときに、3位にCHBr2を有するピロール(以下、3位CHBr2含有ピロールという)を用いた以外は、実施例1Aと同様にして、実施例10Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。実施例10Aについても固体電解質層の導電率の測定結果を以下の表2に示した。なお、3位CHBr2含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって合成した。
【0089】
[実施例11A]
固体電解質層を形成するときに、3位にCBr3を有するピロール(3位CBr3含有ピロール)を用いた以外は、実施例1Aと同様にして、実施例11Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。実施例11Aについても固体電解質層の導電率の測定結果を以下の表2に示した。なお、3位CBr3含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって合成した。
【0090】
[実施例12A]
固体電解質層を形成するときに、3位にCH2Iを有するピロール(以下、3位CH2I含有ピロールという)を用いた以外は、実施例1Aと同様にして、実施例12Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。実施例12Aについても固体電解質層の導電率の測定結果を以下の表2に示した。なお、3位CH2I含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって合成した。
【0091】
[実施例13A]
固体電解質層を形成するときに、3位にCHI2を有するピロール(以下、3位CHI2含有ピロールという)を用いた以外は、実施例1Aと同様にして、実施例13Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。実施例13Aについても固体電解質層の導電率の測定結果を以下の表2に示した。なお、3位CHI2含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって合成した。
【0092】
[実施例14A]
固体電解質層を形成するときに、3位にCI3を有するピロール(以下、3位CI3含有ピロールという)を用いた以外は、実施例1Aと同様にして、実施例14Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)を得た。実施例14Aについても固体電解質層の導電率の測定結果を以下の表2に示した。なお、3位CI3含有ピロールは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって合成した。
【0093】
[比較例1]
3位にヘプチル基((CH2)6CH3)を有するピロール(以下、3位ヘプチル基含有ピロールという)を化学酸化重合させて、比較例1に係る導電性高分子化合物を得た。化学酸化重合は、溶媒としてアセトニトリルを用い、酸化剤として第二塩化鉄を用い、ドーパント化合物としてナフタレン骨格を有するスルホン酸塩を用いて実施した。すなわち、化学酸化重合は、3位ヘプチル基含有ピロール、酸化剤、及び、ドーパント化合物がアセトニトリル中に含有された混合溶液中で実施した。なお、3位ヘプチル基含有ピロールの濃度は50mmol/Lとし、酸化剤の濃度は100mmol/Lとし、ドーパント化合物の濃度は300mmol/Lとした。また、反応時間は1時間とし、反応温度は25℃とした。比較例1に係る導電性高分子化合物を含む混合溶液をガラス基板上に滴下して乾燥させた。これにより、ガラス板上に導電性高分子化合物の被膜(以下、導電性高分子被膜ともいう)を形成した。そして、比較例1に係る導電性高分子被膜について、上で説明したのと同様にして、導電率を測定した。その測定結果を以下の表2に示した。
【0094】
<評価>
実施例1A~14Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)について、4端子測定用のLCRメータを用いて、20℃の環境下にて、周波数100kHzでの初期のESR(単位はmΩ)を測定した。また、4端子測定用のLCRメータを用いて、20℃の環境下にて、周波数120kHzでの初期の静電容量(単位はμF)を測定した。各例について、初期のESR及び初期の静電容量は10個の検体について実施し、それぞれの算術平均値を算出した。その結果を以下の表2に示した。
【0095】
【0096】
表2に示したように、実施例1A~14Aに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)では、固体高分子層の導電率は65S/cmを上回る高い値を示していた。そして、これらの電解コンデンサでは、ESRの値が最大でも6.02mΩと低い値を示していた。また、これらの電解コンデンサでは、静電容量の値は、いずれも、453μFという高い値を示していた。一方で、比較例1の導電性高分子被膜の導電率は60S/cmであり十分に高い値とは言えなかった。
【0097】
[実施例1B]
(1)陽極体の作製
陽極体として、両表面(両主面)が粗面化されたアルミニウム箔(厚さ100μm)を準備した。アルミニウム箔の粗面化は、エッチングにより実施した。陽極体についてリン酸水溶液中(リン酸の濃度は0.010質量%)で陽極酸化を実施して、前記陽極体の表面に酸化アルミニウム(Al2O3)を含む誘電体層を形成した。陽極酸化は、70Vの直流電圧を20分間印加する条件にて実施した。
【0098】
(2)固体電解質層の形成
実施例1Aと同様にして、誘電体層上に固体電解質層を形成した。
【0099】
(3)陰極引出層の形成
実施例1Aと同様にして、固体電解質層の表面に、カーボン層と銀ペースト層とで構成される陰極引出層を形成した。このようにして、実施例1Bに係るコンデンサ素子を得た。
【0100】
(4)電解コンデンサの作製
コンデンサ素子から突出した陽極体の一端部に陽極端子(陽極リードフレーム)の一端部をレーザ溶接した以外は、実施例1Aと同様にして、コンデンサ素子に陽極端子(陽極リードフレーム)及び陰極端子(陰極リードフレーム)を取り付けた。また、実施例1Aと同様にして、コンデンサ素子、陽極端子及び陰極端子のそれぞれの残部を樹脂封止材で封止した。このようにして、実施例1Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0101】
[実施例2B]
固体電解質層を形成するときに、3位ホルミル基含有ピロールを用いた以外は、実施例1Bと同様にして、実施例2Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0102】
[実施例3B]
固体電解質層を形成するときに、3位CH2F含有ピロールを用いた以外は、実施例1Bと同様にして、実施例3Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0103】
[実施例4B]
固体電解質層を形成するときに、3位CHF2含有ピロールを用いた以外は、実施例1Bと同様にして、実施例4Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0104】
[実施例5B]
固体電解質層を形成するときに、3位CF3含有ピロールを用いた以外は、実施例1Bと同様にして、実施例5Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0105】
[実施例6B]
固体電解質層を形成するときに、3位CH2Cl含有ピロールを用いた以外は、実施例1Bと同様にして、実施例6Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0106】
[実施例7B]
固体電解質層を形成するときに、3位CHCl2含有ピロールを用いた以外は、実施例1Bと同様にして、実施例7Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0107】
[実施例8B]
固体電解質層を形成するときに、3位CCl3含有ピロールを用いた以外は、実施例1Bと同様にして、実施例8Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0108】
[実施例9B]
固体電解質層を形成するときに、3位CH2Br含有ピロールを用いた以外は、実施例1Bと同様にして、実施例9Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0109】
[実施例10B]
固体電解質層を形成するときに、3位CHBr2含有ピロールを用いた以外は、実施例1Bと同様にして、実施例10Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0110】
[実施例11B]
固体電解質層を形成するときに、3位CBr3含有ピロールを用いた以外は、実施例1Bと同様にして、実施例11Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0111】
[実施例12B]
固体電解質層を形成するときに、3位CH2I含有ピロールを用いた以外は、実施例1Bと同様にして、実施例12Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0112】
[実施例13B]
固体電解質層を形成するときに、3位CHI2含有ピロールを用いた以外は、実施例1Bと同様にして、実施例13Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0113】
[実施例14B]
固体電解質層を形成するときに、3位CI3含有ピロールを用いた以外は、実施例1Bと同様にして、実施例14Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)を得た。
【0114】
<評価>
実施例1B~14Bに係る電解コンデンサ(タンタル電解コンデンサ)について、実施例1A~14Aに係る電解コンデンサと同様にして、初期のESR及び初期の静電容量を測定した。その結果を以下の表3に示した。また、以下の表3に、実施例1B~14Bの固体電解質層の導電率の値についても示した。
【0115】
【0116】
表3に示したように、実施例1B~14Bに係る電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ)においても、固体高分子層の導電率は65S/cmを上回る高い値を示していた。そして、これらの電解コンデンサでは、ESRの値が2.05mΩ~2.07mΩと低い値を示していた。また、これらの電解コンデンサでは、静電容量の値は、いずれも、380μFという高い値を示していた。一方で、比較例1の導電性高分子被膜の導電率は60S/cmであり十分に高い値とは言えなかった。
1:電解コンデンサ、2:コンデンサ素子、3:樹脂外装体、4:陽極端子、4S:陽極端子の主面、5:陰極端子、5S:陰極端子の主面、6:陽極体、7:誘電体層、8:陰極部、9:固体電解質層、10:陰極引出層、11:カーボン層、12:銀ペースト層、13:分離層、14:接着層。