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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100079
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】ゲート駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20250626BHJP
   H03K 17/0412 20060101ALI20250626BHJP
   H03K 17/0812 20060101ALI20250626BHJP
   H03K 17/04 20060101ALN20250626BHJP
   H03K 17/08 20060101ALN20250626BHJP
   H03K 17/16 20060101ALN20250626BHJP
   H03K 17/695 20060101ALN20250626BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/0412
H03K17/0812
H03K17/04 E
H03K17/08 C
H03K17/16 H
H03K17/695
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217178
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高 杭賢
(72)【発明者】
【氏名】田中 信太朗
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740AA05
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB05
5H740BB09
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM01
5J055AX02
5J055AX22
5J055AX34
5J055BX16
5J055CX13
5J055CX20
5J055CX28
5J055DX22
5J055DX56
5J055DX59
5J055EX07
5J055EY01
5J055EY05
5J055EY10
5J055EY12
5J055EY21
5J055EZ10
5J055EZ63
5J055FX12
5J055GX01
5J055GX04
(57)【要約】
【課題】対アームおよび自アーム側の合計のスイッチング損失を低減することができるゲート駆動装置の提供。
【解決手段】ゲート駆動装置60A,60Bは、上下アームのゲート放電経路のインピーダンスを個別に制御するインピーダンス調整部としてのターンオン検知部601、ターンオフ検知部621、ロジック回路602およびインピーダンス調整回路Z、を備える。ロジック回路602は、対アームのオン切替期間における自アームのゲート放電経路の第1インピーダンスを、対アームのオフ切替期間における自アームのゲート放電経路の第2インピーダンスよりも高く設定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下アームの半導体素子を駆動するゲート駆動装置であって、
前記上下アームのゲート放電経路のインピーダンスを個別に制御するインピーダンス調整部を備え、
前記インピーダンス調整部は、前記上下アームのうちの一方のアームのオン切替期間における他方のアームのゲート放電経路の第1インピーダンスを、前記一方のアームのオフ切替期間における前記他方のアームのゲート放電経路の第2インピーダンスよりも高く設定する、ゲート駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記インピーダンス調整部は、前記一方のアームのターンオン完了からターンオフ開始までの間に、前記他方のアームのゲート放電経路のインピーダンスを前記第1インピーダンスから前記第2インピーダンスに変更する、ゲート駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記インピーダンス調整部は、前記半導体素子のゲートとソースの間のインピーダンスを前記第2インピーダンスに保持するミラークランプ回路を含む、ゲート駆動装置。
【請求項4】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記第1インピーダンスは、前記一方のアームのターンオンによって前記他方のアームの半導体素子がセルフターンオンする値に設定される、ゲート駆動装置。
【請求項5】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記インピーダンス調整部は、前記一方のアームのゲート情報に基づいて、前記他方のアームのゲート放電経路のインピーダンスを前記第1および第2インピーダンスに制御する、ゲート駆動装置。
【請求項6】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記インピーダンス調整部は、前記他方のアームの主電圧情報を検知する主電圧検知部と、前記他方のアームの主電流情報を検知する主電流検知部との少なくとも一方を備え、
前記インピーダンス調整部は、前記主電圧情報および前記主電流情報の少なくとも一方に基づいて、前記他方のアームのゲート放電経路のインピーダンスを前記第1および第2インピーダンスに制御する、ゲート駆動装置。
【請求項7】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記インピーダンス調整部はインピーダンス調整用素子として容量素子を含む、ゲート駆動装置。
【請求項8】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記インピーダンス調整部はインピーダンス調整用素子としてダイオードを含む、ゲート駆動装置。
【請求項9】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記上下アームの各々は並列接続された複数の半導体素子で構成され、
前記他方のアームの複数の半導体素子の各ゲートインピーダンスは、前記一方のアームのターンオン時における該複数の半導体素子のリカバリサージが均等になるように設定される、ゲート駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置の三相スイッチングアームは、相ごとに上下アームのスイッチング素子を有する。ところで、上下アームのスイッチング素子の一方がスイッチングするときに、クロストークにより他方のアームのスイッチング素子がセルフターンオンするという現象が生じる場合がある。その場合、上下アームが同時に導通し、上下アームの半導体素子の間に短絡電流が流れる。この短絡電流はスイッチング素子の損失を増加させるおそれがある。
【0003】
そのため、特許文献1では、セルフターンオンを抑制する方法が提案されている。特許文献1に記載の技術では、ゲート駆動装置にインピーダンス調整回路を設け、ターンオンおよびターンオフ時におけるゲート-ソース間のインピーダンスをインピーダンス調整回路により低減するようにしている。それにより、一方のアームのスイッチング素子がターンオンおよびターンオフした時の、他方のアームのスイッチング素子のセルフターンオンおよびゲート電圧の負サージを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-151039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように対アームターンオン時に自アーム側のインピーダンスを低減すると、自アームスイッチング素子の還流ダイオードが導通状態から遮断状態に移行するときに発生するリンキングのサージ電圧(リカバリサージ)が大きくなる。このリカバリサージの増大を抑制するためにはスイッチング速度を抑える必要があり、スイッチング損失の増大を招く。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によるゲート駆動装置は、上下アームの半導体素子を駆動するゲート駆動装置であって、前記上下アームのゲート放電経路のインピーダンスを個別に制御するインピーダンス調整部を備え、前記インピーダンス調整部は、前記上下アームのうちの一方のアームのオン切替期間における他方のアームのゲート放電経路の第1インピーダンスを、前記一方のアームのオフ切替期間における前記他方のアームのゲート放電経路の第2インピーダンスよりも高く設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対アームターンオン時において、自アームのリカバリサージを抑制しつつターンオンスピードの向上が図れ、対アームおよび自アーム側の合計のスイッチング損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電力変換装置の一例を示す図である。
図2】単相回路の従来構成を示す図である。
図3】比較例を示す図である。
図4】ゲート駆動装置の第1の実施形態を示す図である。
図5】インピーダンス制御動作を説明する図であり、波形(A)~波形(D)を示す。
図6】第1の実施形態の変形例1を示す図である。
図7】第1の実施形態の変形例2を示す図である。
図8A】インピーダンス調整回路の変形例1を示す図である。
図8B】インピーダンス調整回路の変形例2を示す図である。
図8C】インピーダンス調整回路の変形例3を示す図である。
図8D】インピーダンス調整回路の変形例4を示す図である。
図8E】インピーダンス調整回路の変形例5を示す図である。
図9】ゲート駆動装置の第2の実施形態を示す図である。
図10】ゲート駆動装置の第3の実施形態を示す図である。
図11】ゲート駆動装置の第4の実施形態を示す図である。
図12】ゲート駆動装置の第5の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、以下の説明では、同一または類似の要素および処理には同一の符号を付し、重複説明を省略する場合がある。なお、以下に記載する内容はあくまでも本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではなく、他の種々の形態でも実施する事が可能である。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、電力変換装置の一例を示す図である。第1の実施形態では、車両1000に搭載された電力変換装置20を例に説明する。電力変換装置20は、車両1000に搭載された電動モータ30を駆動する。車両1000には蓄電装置10が設けられ、電力変換装置20は蓄電装置10から供給される直流電力を交流電力に変換し、電動モータ30を駆動する。
【0011】
電動モータ30は、例えば、車輪を回転させるための走行用モータである。電動モータ30は、所定のパターンで結線される3相コイルを有する。結線パターンとしては、図1に示すY字パターンに限られず、デルタパターンのような他の結線パターンでも良い。電力変換装置20から所定の通電パターンを3相コイルに印加することにより、電動モータ30が回転駆動される。
【0012】
蓄電装置10は、正極端子10aおよび負極端子10bを有する。電力変換装置20は、正極バス線21p、負極バス線21n、平滑コンデンサ11および三相スイッチングアーム50(U,V,W)を有する。正極バス線21pは、蓄電装置10の正極端子10aに接続される。負極バス線21nは、蓄電装置10の負極端子10bに接続される。平滑コンデンサ11および三相スイッチングアーム50(U,V,W)の両端は、正極バス線21pと負極バス線21nとに接続される。
【0013】
三相スイッチングアーム50(U,V,W)のそれぞれには、上アームのスイッチング素子70Aと下アームのスイッチング素子70Bとが設けられている。スイッチング素子70A,70Bは、例えばパワースイッチング素子であり、例えば、IGBTあるいはMOSFET等が用いられる。各スイッチング素子70A,70Bは、並列接続された還流ダイオード(または、ボディーダイオード)を有する。なお、実施形態では、スイッチング素子70A,70BがMOSFETの場合を例に説明する。
【0014】
上アームのスイッチング素子70Aと下アームのスイッチング素子70Bとは直列に接続されている。上アームのスイッチング素子70Aと下アームのスイッチング素子70Bとの接続点は、電動モータ30の対応する相のコイルの一端に接続されている。なお、図1に示す例では、各上下アームに1つのスイッチング素子が設けられているが、複数のスイッチング素子を並列使用する構成であっても良い。
【0015】
電力変換装置20は、ゲート駆動装置60A,60Bを制御する制御回路40を備える。制御回路40は、ゲート駆動装置60A,60Bに対してPWM制御指令P1,P2を出力し、各スイッチング素子70A,70Bを個別に制御する。制御回路40は、例えば、内部にCPU、RAM、ROM、通信回路等を有している。PWM制御指令P1,P2は所定のパルス幅を有するパルス信号であり、制御回路40はスイッチング素子70A,70BをPWM制御する。PWM制御指令P1,P2によって、同一の相の上下アームのスイッチング素子70A,70Bは、同時にオンにならない範囲で交互にオン/オフ制御される。その結果、蓄電装置10からの直流電力が交流電力に変換されて電動モータ30が回転駆動される。
【0016】
なお、本実施形態では、図1に示すようなインバータを構成する電力変換装置20を例に説明するが、本発明は、これに限られず、DC/DCコンバータ、AC/ACコンバータ、AC/DCインバータ等にも適用することができる。
【0017】
<クロストーク現象の説明>
図2は、一相のスイッチングアーム50における単相回路の従来構成を示す図である。ゲート駆動装置61A,61Bは、従来の一般的な構成である場合を示す。ゲート駆動装置61Aとゲート駆動装置61Bとは同一構成を有しており、ゲートドライバIC610と、ターンオンの速度を制御するゲート抵抗Ronおよびターンオフの速度を制御するゲート抵抗Roffとを備える。なお、図2では、ゲート駆動装置61AのゲートドライバIC610を符号610aで表すことにし、ゲート駆動装置61BのゲートドライバIC610を符号610bで表すことにする。
【0018】
各スイッチング素子70A,70Bはドレイン電極D、ソース電極S、およびゲート電極Gを有する。各スイッチング素子70A,70Bのゲート電極Gおよびソース電極Sは、各々ゲート駆動装置61A,61Bに接続される。以下では、下アームのスイッチング素子70Bを自アームスイッチング素子70Bと称し、上アームのスイッチング素子70Aを対アームスイッチング素子70Aと称する場合がある。
【0019】
対アームスイッチング素子70Aのソース電極Sおよび自アームスイッチング素子70Bのドレイン電極Dは、AC端子に接続される。各スイッチング素子70A,70Bは、ゲート電極Gとソース電極Sとの間の電圧(ゲート電圧)Vgsによって導通(ターンオン)または遮断(ターンオフ)を切り替える。例えば、ゲート電圧Vgsが所定のターンオン閾値電圧より高いときに導通状態となり、ゲート電圧Vgsがターンオン閾値電圧より低いときに遮断状態になる。
【0020】
ところで、図2の単相回路においては、片方のアームがスイッチングするときにクロストークという現象が生じる。ここでは、対アームスイッチング素子70Aがターンオン時に発生するクロストークについて説明する。各スイッチング素子70A,70Bには、ゲート-ドレイン間およびゲート-ソース間に寄生容量Cgd,Cgsが存在する。
【0021】
図示のように対アームスイッチング素子70Aがターンオンすると、対アームスイッチング素子70Aのソース電極Sおよび自アームスイッチング素子70Bのドレイン電極Dの電位が急激に上昇する。この場合、自アームスイッチング素子70Bのドレイン電極Dの電位上昇に伴って、電位変化速度(dV/dt)に比例した大きさ(dV/dt)×Cgdの電流が流れ、自アームスイッチング素子70Bの寄生容量Cgdを充電する。また、大きさ(dV/dt)×Cgdの電流の一部はゲート抵抗Roffを介してソース電極Sに流れ、寄生容量Cgsを充電する。
【0022】
自アームスイッチング素子70Bのゲート電圧Vgsの変化率の大きさ|Vgs/dt|は、次式(1)で表すことができる。式(1)において、Zgsはゲート-ソース間のインピーダンスである。この場合、インピーダンスZgsは主にゲート抵抗Roffである。
|Vgs/dt|=1/Cgs[Cgd×|dV/dt|-(Vgs/Zgs)] …(1)
【0023】
このように寄生容量CgdおよびCgsの充電によって自アームスイッチング素子70Bのゲート電圧Vgsがターンオン閾値電圧を超えることで、これまでオフ状態であった自アームスイッチング素子70Bが導通状態になる。この現象を寄生ターンオンまたはセルフターンオンという。式(1)に示すように、(dV/dt)あるいはゲート抵抗Roffが大きいほどゲート電圧Vgsが上昇しやすくなり、セルフターンオンしやすくなる。セルフターンオンが発生すると、対アームスイッチング素子70Aと自アームスイッチング素子70Bが同時に導通し、両スイッチング素子70A,70Bの間に短絡電流が流れる。この短絡電流は対アームスイッチング素子70Aおよび自アームスイッチング素子70Bの損失を増加させるおそれがある。
【0024】
また、図示しないが、対アームスイッチング素子70Aのターンオフ時に、自アームスイッチング素子70Bのドレイン電極Dの電位が急激に減少((dV/dt)がマイナスの値)する。この場合、自アームスイッチング素子70Bのソース電極Sから電流が流れ、寄生容量CgdおよびCgsが放電される。これにより、自アームスイッチング素子70Bのゲート電圧Vgsが減少し、負サージが発生する。この場合、式(1)に示したように、(dV/dt)またはゲート抵抗Roffの大きさが大きいほどゲート電圧Vgsが減少しやすくなり、負サージが生じやすくなる。このゲート電圧Vgsの負サージはゲート酸化膜にストレスを与え、スイッチング素子の寿命を短縮させる。そのため、負サージを抑制できる対策を取る必要がある。
【0025】
上述した(dV/dt)に起因するセルフターンオンおよび負サージを抑制する対策としては、例えば、対アームスイッチング素子70Aのスイッチングスピードを遅くしたり、自アームスイッチング素子70Bのゲート電極Gに負バイアスを設けたり、ゲート-ソース間のインピーダンスを低減したりするなどの対策があげられる。なお、特許文献1に記載の発明では、自アームスイッチング素子70Bのゲート-ソース間のインピーダンスを低減する回路が提案されている。
【0026】
図3は、ゲート駆動装置にゲート-ソース間のインピーダンスを低減する従来の回路を設けた場合の一例を示す図である。以下では、図3に示す構成を、本実施形態に対する比較例と称することにする。ゲート駆動装置62A,62Bは同一構成であり、ここでは代表して上アーム側のゲート駆動装置62Aの構成について説明する。比較例のゲート駆動装置62Aは、ゲートドライバIC620aと、ゲート抵抗Ron,Roffと、インピーダンス調整回路Zとを備えている。ゲート駆動装置62AのゲートドライバIC620aには、制御回路40からPWM制御指令P1が入力される。なお、下アームのゲート駆動装置62BのゲートドライバIC620bには、制御回路40からPWM制御指令P2が入力される。
【0027】
インピーダンス調整回路Zは、スイッチング素子70Aのゲート-ソース間インピーダンスを調整する回路である。インピーダンス調整回路Zは、スイッチング素子70Aのゲート電極Gに接続される。図3に示す例では、インピーダンス調整回路Zはスイッチ素子で構成される。ゲートドライバIC620aは、制御回路40から入力されるPWM制御指令P1に基づいてスイッチング素子70Aのオンオフを制御する回路である。ゲートドライバIC620aは、インピーダンス調整に関係する構成としてターンオフ検知部621およびロジック回路622を備えている。
【0028】
スイッチング素子70Aのターンオフ動作を検知するターンオフ検知部621は、ゲートオン側においてゲート電圧をモニタする。図3に示す例では、ターンオフ検知部621はコンパレータで構成され、モニタされたゲート電圧Vgsと閾値電圧Vamcとを比較し、Vgs<Vamcである場合にHIGH信号(検知信号)をロジック回路622に出力する。ロジック回路622は、PWM制御指令P1とターンオフ検知部621からの信号に基づいてインピーダンス調整回路Zの制御信号を生成する。
【0029】
インピーダンス調整回路Zは、ロジック回路622からの制御信号によりゲート-ソース間のインピーダンスを変更する。図3に示す例では、制御信号としてインピーダンス調整回路Zのスイッチング素子をオンオフするON/OFF信号が入力される。インピーダンス調整回路ZにON信号が入力されると、ゲート-ソース間がショートされインピーダンスが低くなる。一方、インピーダンス調整回路ZにOFF信号が入力されると、ゲート-ソース間のショートが解除されインピーダンスが高くなる。
【0030】
図4は、第1実施形態のゲート駆動装置60A,60Bを示す図である。ゲート駆動装置60A,60Bの場合も両方とも同一の構成とされ、ここでは、代表してゲート駆動装置60Aの構成を説明する。ゲート駆動装置60Aは、ゲートドライバIC600aと、ゲート抵抗Ron,Roffと、インピーダンス調整回路Zとを備えている。ゲート抵抗Ron,Roffおよびインピーダンス調整回路Zについては、上述した比較例(図3)の場合と同一の構成である。ゲートドライバIC600aについては、インピーダンス調整に関係する構成がゲートドライバIC620aと異なる。なお、ゲート駆動装置60BのゲートドライバICは符号620bで示しているが、ゲートドライバIC620aと同一構成である。
【0031】
ゲートドライバIC600aは、インピーダンス調整に関係する構成として、ターンオン検知部601、ターンオフ検知部621およびロジック回路602を備えている。ターンオフ検知部621は、上述したゲートドライバIC620aに設けられているターンオフ検知部621と同一のものである。また、ロジック回路602は、ロジック回路622と制御内容が異なるだけなので、比較例のロジック回路622をそのまま流用することが可能である。
【0032】
スイッチング素子70Aのターンオン動作を検知するターンオン検知部601は、ゲートオフ側においてゲート電圧をモニタする。図4に示す例では、ターンオン検知部601はコンパレータで構成され、モニタされたゲート電圧Vgsと閾値電圧Vptoとを比較し、Vgs>Vptoである場合にHIGH信号(検知信号)をロジック回路602に出力する。
【0033】
上アーム側のドライバIC600aのロジック回路602には、PWM制御指令P1と、ターンオフ検知部621からの信号と、下アーム側のPWM制御指令P2と、下アーム側のドライバIC600bのターンオン検知部601からの信号(スイッチング素子70Bのゲートターンオン信号)とが入力される。一方、下アーム側のドライバIC600bのロジック回路602には、PWM制御指令P2と、ターンオフ検知部621からの信号と、上アーム側のPWM制御指令P1と、上アーム側のドライバIC600aのターンオン検知部601からの信号(スイッチング素子70Aのゲートターンオン信号)とが入力される。各ドライバIC600a,600bのロジック回路602は、入力された信号に基づいてインピーダンス調整回路Zの制御信号を生成する。
【0034】
(1.インピーダンス制御動作の説明)
第1実施形態におけるロジック回路602の制御例を、比較例のロジック回路622の制御と比較して説明する。図5はロジック回路602,622の制御動作を説明する図であり、スイッチング素子70A,70BをPWM制御する際の各信号の波形例を示す図である。図5において、波形(A)は、上下アームのPWM制御指令P1,P2を示す。太い実線で示す波形がPWM制御指令P1の波形であり、細い実線で示す波形がPWM制御指令P2の波形である。
【0035】
波形(B)は、スイッチング素子70A,70Bのゲート電圧Vgsを示す。太い実線で示す波形がスイッチング素子70Aのゲート電圧Vgs1であり、細い実線および破線で示す波形がスイッチング素子70Bのゲート電圧Vgs2である。なお、第1実施形態と比較例とではゲート電圧Vgs2の波形が異なり、破線は第1実施形態におけるゲート電圧Vgs2を示し、実線は比較例におけるゲート電圧Vgs2を示す。
【0036】
波形(C)は、スイッチング素子70A,70Bの主電圧(ドレイン-ソース間電圧)Vdsを示す。太い実線はスイッチング素子70Aの主電圧Vds1を示し、細い実線および破線はスイッチング素子70Bの主電圧Vds2を示す。なお、主電圧Vds2を示す波形の内、破線は第1実施形態における主電圧Vds2を示し、実線は比較例における主電圧Vds2を示す。
【0037】
波形(D)は、下アームのスイッチング素子70Bのゲート-ソース間のインピーダンスZgs2を示す。破線は第1実施形態におけるインピーダンスZgs2を示し、実線は比較例におけるインピーダンスZgs2を示す。インピーダンスZgs2は、インピーダンス調整回路Zによりゲート-ソース間がショートされるとLowになり、ゲート-ソース間のショートが解除されるとインピーダンスがHighになる。
【0038】
波形(E)は、スイッチング素子70A,70Bの主電流(ドレイン電流)Idsを示す。太い実線はスイッチング素子70Aの主電流Ids1であり、細い実線および破線はスイッチング素子70Bの主電流Ids2である。なお、主電流Ids2を示す波形の内、破線は第1実施形態における主電流Ids2を示し、実線は比較例における主電流Ids2を示す。
【0039】
波形(A)に示すPWM制御指令波形は、上アームのスイッチング素子70Aをオンオフして通電する場合のPWM制御指令P1,P2の波形パターンを示したものである。この場合、PWM制御指令P1がONとなる時刻t3から時刻t5までが通電期間で、PWM制御指令P1がOFFとなる期間が還流期間である。還流期間において、下アームのスイッチング素子70BがOFFの場合には還流ダイオードに還流電流が流れ、スイッチング素子70BがON(同期整流)の場合にはスイッチング素子70Bに還流電流が流れる。
【0040】
なお、以下の動作説明において、通電電流が流れるスイッチング素子が上述した対アームスイッチング素子であり、還流電流が流れるスイッチング素子が上述した自アームスイッチング素子である。すなわち、図5に示す通電パターンでは、上アームのスイッチング素子70Aが対アームスイッチング素子に対応し、下アームのスイッチング素子70Bが自アームスイッチング素子に対応する。一方、図2において通電電流がAC端子を図示右側から左側に流れる通電パターンの場合には、通電電流はスイッチング素子70Bを流れるので、スイッチング素子70Bが対アームスイッチング素子に対応し、スイッチング素子70Aが自アームスイッチング素子に対応する。
【0041】
通電電流が流れる対アームスイッチング素子(図2のスイッチング素子70A)のオンオフ動作において、波形(A)のPWM制御指令P1がONに立ち上がる時刻t3から、波形(B)のゲート電圧Vgs1が所定の閾値電圧Vptoとなる時刻t4までの期間が、対アームスイッチング素子70Aがターンオンする際の「オン切替期間」である。また、PWM制御指令P1がONからOFFに切り替わる時刻t5から、波形(E)の主電流Ids1がゼロになる時刻t51までの期間が、対アームスイッチング素子70Aがターンオフする際の「オフ切替期間」である。
【0042】
(1-1.比較例の制御)
まず、図3に示す比較例の場合のインピーダンス制御動作について説明する。比較例では、インピーダンス調整回路Zによりゲート-ソース間のインピーダンスを低減することで、対アームスイッチング素子(上アームのスイッチング素子)70Aの(dV/dt)に起因するセルフターンオンおよび負サージを抑制するようにしている。図3に示すゲートドライバIC620bに設けられたロジック回路622は、波形(D)の実線で示すようにスイッチング素子70Bのゲート-ソース間のインピーダンスZgs2を制御する。すなわち、インピーダンスZgs2を時刻t2においてHIGHからLOWに切り替え、時刻t6においてLOWからHIGHに戻す。
【0043】
波形(A)に示すように、対アームスイッチング素子70Aと自アームスイッチング素子70BとはON状態を交互に繰り返す。図5では、自アームスイッチング素子70Bは時刻t1から時刻t6までOFF状態に制御され、対アームスイッチング素子70Aは時刻t3から時刻t5までON状態に制御される。時刻t1になると、下アームのゲートドライバIC620bにOFFのPWM制御指令P2が入力される。しばらくすると、自アームスイッチング素子70Bのゲート電圧Vgs2が減少し始める。
【0044】
ゲートドライバIC620bのターンオフ検知部621は、モニタしている自アームスイッチング素子70Bのゲート電圧Vgs2と閾値電圧Vamcとを比較し、Vgs2<Vamcとなる時刻t2においてHIGH信号をロジック回路622に出力する。ロジック回路622は、PWM制御指令P1がOFF、かつ、ターンオフ検知部621の出力がHIGHの場合に、HIGH状態のインピーダンスZgs2をLOWに低下させる信号(すなわち、ON信号)を出力する。インピーダンス調整回路ZにON信号が入力されると、自アームスイッチング素子70Bのゲート-ソース間がショートされ、インピーダンスZgs2がHIGHからLOWに切り替えられる。
【0045】
時刻t3においてPWM制御指令P1がOFFからONに切り替わると、対アームスイッチング素子70Aがターンオン動作を開始する。しばらくすると、対アームスイッチング素子70Aのゲート電圧Vgs1が上昇し始め、主電圧Vds1が減少し始める。比較例では、自アームスイッチング素子70BのインピーダンスZgs2がLOWであるため、クロストークによるゲート電圧Vgs2の上昇(矢印S1で示す箇所におけるスパイク)が抑制される。一方で、インピーダンスZgs2をLOWとしたことにより、波形(C)の細い実線で示すように、自アームスイッチング素子70Bの還流ダイオードが導通状態から遮断状態に移行するときに発生するリンキングのサージ電圧(主電圧Vds2のリカバリサージ)が大きくなる。このことはスイッチング速度の高速化を阻害し、スイッチング損失の増大を招く。
【0046】
時刻t5においてPWM制御指令P1がONからOFFに切り替わると、対アームスイッチング素子70Aがターンオフ動作を開始する。しばらくすると、対アームスイッチング素子70Aのゲート電圧Vgsが減少し始め、主電圧Vds1が上昇し始める。比較例では、自アームスイッチング素子70BのインピーダンスZgs2がLOWであるため、クロストークによる自アームスイッチング素子70Bのゲート電圧Vgs2の負スパイク(矢印S2で示す箇所のスパイク)が抑制される。
【0047】
時刻t6において、PWM制御指令P1がOFFからONに切り替わると、ゲートドライバIC620bのロジック回路622は、LOW状態のインピーダンスZgs2をHIGHに上昇させるOFF信号を出力する。インピーダンス調整回路ZにOFF信号が入力されると、ゲート-ソース間のショートが解除されインピーダンスZgs2がLOWからHIGHに切り替えられる。
【0048】
(1-2.第1実施形態の制御)
次に、図4に示す第1実施形態の場合のインピーダンス制御動作について説明する。図4に示すゲートドライバID600bに設けられたロジック回路602は、図5の波形(D)の破線で示すように自アームスイッチング素子70BのインピーダンスZgs2を制御する。すなわち、インピーダンスZgs2を時刻t2においてHIGHからLOWに切り替え、時刻t3においてLOWからHIGHに戻し、時刻t4において再びHIGHからLOWに切り替え、時刻t6において再びLOWからHIGHに戻す。
【0049】
ここで、インピーダンスZgs2の値HIGHは、対アームスイッチング素子70Aのターンオンによって自アーム側の持ち上げられるゲート電圧Vgs2が閾値電圧Vth(図5の波形(B)を参照)を超えるような、すなわち自アームスイッチング素子70Bがセルフターンオンするようなインピーダンスに設定される。一方、値LOWは、対アームスイッチング素子70Aのターンオン時に、自アームスイッチング素子70Bがセルフターンオンしないインピーダンスに設定される。
【0050】
対アームスイッチング素子70Aのターンオン時の自アームスイッチング素子70Bのゲート電圧Vgs2は、上述した式(1)の左辺を積分したもので表される。積分期間はターンオン時間(オン切替期間)であり、この期間中にゲート電圧Vgs2が閾値電圧Vthを超えるタイミングがあるようなインピーダンスZgs2は、セルフターンオンするインピーダンスHIGHに相当する。一方、期間中に閾値電圧Vthを超えるタイミングがない場合のインピーダンスZgs2は、セルフターンオンしないインピーダンスLOWに相当する。
【0051】
まず、図5の時刻t1においてゲートドライバIC600bにOFFのPWM制御指令P2が入力されてからしばらくすると、自アームスイッチング素子70Bのゲート電圧Vgs2が減少し始める。ゲートドライバIC600bのターンオフ検知部621は、モニタしている自アームスイッチング素子70Bのゲート電圧Vgs2と閾値電圧Vamcとを比較し、Vgs2<Vamcとなる時刻t2においてHIGH信号をロジック回路602に出力する。ロジック回路602は、PWM制御指令P1がOFF、かつ、ターンオフ検知部621の出力がHIGHの場合に、HIGH状態のインピーダンスZgs2をLOWに低下させるON信号を出力する。インピーダンス調整回路ZにON信号が入力されると、自アームスイッチング素子70Bのゲート-ソース間がショートされインピーダンスZgs2がHIGHからLOWに切り替えられる。
【0052】
時刻t3においてPWM制御指令P1がOFFからONに切り替わると、ゲートドライバIC600bのロジック回路602は、LOW状態のインピーダンスZgs2をHIGHに上昇させるOFF信号を出力する。インピーダンス調整回路ZにOFF信号が入力されると、インピーダンスZgs2がLOWからHIGHに切り替えられる。
【0053】
時刻t3において対アームスイッチング素子70Aがターンオン動作を開始し、しばらくすると対アームスイッチング素子70Aのゲート電圧Vgs1が上昇し始め、主電圧Vds1が減少し始める。第1実施形態の場合にはインピーダンスZgs2がHIGHなので、対アームスイッチング素子70Aのターンオン期間中に、クロストークにより自アームスイッチング素子70Bにおいて発生するゲート電圧Vgs2のスパイクが閾値電圧Vthを超える。その結果、自アームスイッチング素子70Bがしばらくの間導通状態になることで還流ダイオードのリンキングがクランプされ、主電圧Vds2のリカバリサージが比較例の場合よりも大きく低減される。
【0054】
時刻t4以降の動作は、波形(D)に示すようにインピーダンスZgs2が比較例の場合と同様に制御される。そのため、時刻t5以後のターンオフ期間中に発生する自アームスイッチング素子70Bの負スパイク(矢印S2で示す箇所のスパイク)は、比較例の場合と同様に抑制される。
【0055】
上述したように、比較例では時刻t2から時刻t6までインピーダンスZgs2をLOW状態に切り替えているので、対アームターンオン時の自アームのセルフターンオンを防止すると共に、対アームターンオフ時の負サージを抑制することができる。しかしながら、対アームターンオン時の自アームのリカバリサージが大きくなり、スイッチングの高速化の阻害要因となる。
【0056】
一方、第1実施形態では、波形(D)の破線で示すように、対アームターンオン期間においてインピーダンスZgs2をLOWからHIGHに戻すような制御を行う。それにより、対アームターンオン時に自アームのゲートインピーダンスをHIGHに上昇させることで、自アームのゲートのキャリアを引き抜く速度が遅くなりセルフターンオンに誘導することができる。その結果、クロストークによるゲート電圧Vgs2のスパイクが閾値電圧Vthを超えることによって還流ダイオードのリンキングがクランプされ、主電圧Vds2のリカバリサージを大きく低減することができる。そして、対アームターンオン時の自アームリカバリサージを抑制しつつターンオン速度をより高速にすることが可能となり、対アーム側と自アーム側とを合わせた合計のスイッチング損失を低減することができる。さらに、比較例の場合と同様に、対アームターンオフ時の自アーム側のゲート負サージも抑えることができる。
【0057】
(変形例1)
図6は、図5の波形(D)の破線のようなインピーダンス制御を行う第1実施形態の変形例1を示す図である。変形例1におけるゲートドライバIC600a,600bでは、ターンオン検知部601が省略され、ロジック回路602Aに入力される信号が上述したロジック回路602の場合と異なる。ゲートドライバIC600aのロジック回路602Aには、PWM制御指令P1、ターンオフ検知部621からの信号および下アーム側のPWM制御指令P2が入力される。一方、ゲートドライバIC600bのロジック回路602Aには、PWM制御指令P2、ターンオフ検知部621からの信号および上アーム側のPWM制御指令P1が入力される。ゲート駆動装置60A,60Bのその他の構成は、図4に示した第1実施形態の場合と同様である。
【0058】
ロジック回路602AによるインピーダンスZgs2の制御動作について説明する。変形例1においても、インピーダンスZgs2の制御パターンは上述した第1実施形態の場合と同様であり、図5の波形(D)の破線で示すように制御する。時刻t2では、第1実施形態の場合と同様に、ターンオフ検知部621においてVgs2<Vamcを検知することにより、インピーダンスZgs2をHIGHからLOWに切り替える。
【0059】
時刻t3では、第1実施形態の場合と同様に、対アーム側のPWM制御指令P1がOFFからONに切り替わると、ロジック回路602Aは、LOW状態のインピーダンスZgs2をHIGHに上昇させるOFF信号を出力する。さらに、ロジック回路602Aは、PWM制御指令P1のOFFからONへの切り替わりを検知してから所定の遅延時間Δt1が経過すると、インピーダンスZgs2をHIGHからLOWに切り替える。ここで、遅延時間Δt1は、ターンオンされる対アームスイッチング素子70Aのオン切替期間以上であって、ターンオフ開始(時刻t5)までの期間内に設定される。時刻t6では、第1実施形態の場合と同様に、自アーム側のPWM制御指令P2がOFFからONに切り替わると、インピーダンスZgs2をLOWからHIGHに戻す。
【0060】
(変形例2)
図7は、図5の波形(D)の破線のようなインピーダンス制御を行う第1実施形態の変形例2を示す図である。変形例2におけるゲートドライバIC600a,600bでは、ロジック回路602Bに入力される信号が第1実施形態の場合のロジック回路602と異なる。上アーム側のゲートドライバIC600aのロジック回路602Bには、PWM制御指令P1と、ターンオフ検知部621からの信号と、下アーム側のゲートドライバIC600bのターンオン検知部601からの信号とが入力される。一方、下アーム側のゲートドライバIC600bのロジック回路602Bには、PWM制御指令P2と、ターンオフ検知部621からの信号と、上アーム側のゲートドライバIC600aのターンオン検知部601からの信号とが入力される。ゲート駆動装置60A,60Bのその他の構成は、図4に示した第1実施形態の場合と同様である。
【0061】
ロジック回路602BによるインピーダンスZgs2の制御動作について説明する。時刻t2では、第1実施形態の場合と同様に、ターンオフ検知部621においてVgs2<Vamcを検知することにより、インピーダンスZgs2をHIGHからLOWに切り替える。ロジック回路602Bは、上アーム側のターンオン検知部601を介して上アーム側のゲート電圧Vgs1をモニタし、ゲート電圧Vgs1が増加し始めたならばインピーダンスZgs2をLOWからHIGHに戻す。このタイミングが図5の時刻t3に相当する。
【0062】
その後、上アーム側のターンオン検知部601からHIGH信号が入力されたならば(時刻t4)、インピーダンスZgs2を再びHIGHからLOWに切り替える。そして、下アーム側のPWM制御指令P2がOFFからONに切り替わったならば(時刻t6)、インピーダンスZgs2を再びLOWからHIGHに戻す。
【0063】
(2.インピーダンス調整回路Z)
上述した実施形態および変形例では、インピーダンス調整回路Zを配線上に設けられた一つのスイッチ素子で構成した。スイッチ素子をオンするとインピーダンスはLOWとなり、オフするとHIGHとなる、以下では、インピーダンス調整回路Zの他の構成について説明する。
【0064】
図8Aは、インピーダンス調整回路Zの変形例1を示す図である。変形例1では、インピーダンス調整回路Zを、スイッチ素子80とキャパシタ81との直列回路とした。スイッチ素子80がオンするとインピーダンスはHIGHとなり、オフするとLOWとなる。キャパシタ81のインピーダンスは、容量Cに対して1/Cとなるので、容量Cが小さいほどインピーダンスが大きくなる。それにより、リカバリサージを抑え込むことができる。
【0065】
図8Bは、インピーダンス調整回路Zの変形例2を示す図である。変形例2では、インピーダンス調整回路Zを、スイッチ素子80と抵抗82との直列回路とした。スイッチ素子80がオンするとインピーダンスはLOWとなり、オフするとHIGHとなる。インピーダンス調整回路Zのインピーダンスの大きさは抵抗82のインピーダンスに依存し、オン時もオフ時も同一値となる。
【0066】
図8Cは、インピーダンス調整回路Zの変形例3を示す図である。変形例3では、インピーダンス調整回路Zを、スイッチ素子80とダイオード83との直列回路とした。ダイオード83は、カソードがゲート側となるように接続されるのが望ましい。スイッチ素子80をオンするとインピーダンスはLOWとなり、スイッチ素子80をオフするとインピーダンスはHIGHになる。
【0067】
対アームのターンオフ時にスイッチ素子80をオンすると、ゲート負スパイク発生時はソースからゲートに向かってスパイク電流が流れる。ゲート負スパイクの大きさはこの電流とゲートに向かうインピーダンスとの積に比例し、ダイオード83によりゲートに向かうインピーダンスを低減することでゲート負スパイクを低減することができる。
【0068】
図8Dは、インピーダンス調整回路Zの変形例4を示す図である。変形例4では、抵抗82とダイオード83との並列回路をスイッチ素子80に対して直列接続した。並列回路の部分に関して、図示上側から下側の流れに対しては抵抗82のインピーダンスとなり、対アームターンオン時のリカバリサージが低減する。一方、下側から上側への流れに対してはダイオード83が支配的になりインピーダンスがゼロになるので、対アームターンオフ時の負サージが低減する。なお、図8Cの変形例3では、図示上側から下側の流れに対してはインピーダンスが無限大となるので、変形例4の構成の方が好ましい。なお、ダイオード、抵抗およびキャパシタの3つの素子の並列回路としても良い。
【0069】
図8Eは、インピーダンス調整回路Zの変形例5を示す図である。変形例5では、スイッチ素子80Aおよび抵抗82Aの直列回路と、スイッチ素子80Bおよび抵抗82Bの直列回路とを並列接続する構成とした。各スイッチ素子80A,80Bを以下のように動作させることで、インピーダンスを複数段で変化させることができる。
【0070】
スイッチ素子80A,80Bを同時にオフすると、インピーダンスは最も大きなZ1となる。逆に、スイッチ素子80A,80Bを同時にオンすると、インピーダンスは最も小さなZ4となる。スイッチ素子80Aをオンかつスイッチ素子80Bをオフにした場合のインピーダンスをZ2、スイッチ素子80Aをオフかつスイッチ素子80Bをオンにした場合のインピーダンスをZ3とする。ここでは、Z2>Z3となるように抵抗82A,82Bの値を設定する。すなわち、スイッチ素子80A,80Bのオンオフ制御により、インピーダンスをZ1,Z2,Z3,Z4(Z1>Z2>Z3>Z4)の4段階に制御することができる。
【0071】
図5の波形(D)の時刻t3から時刻t4までの期間のインピーダンス調整回路Zのインピーダンスを、前半をZ1(HIGHに対応)に設定し、後半をZ2またはZ3に設定する。そして、時刻t2~t3およびt4~t6は、インピーダンスをZ4(LOWに対応)に設定する。このように、時刻t3~t4のインピーダンスをスイッチング素子70A,70Bの状態に応じて制御することにより、適切なリカバリサージまで抑制でき、損失を最適化できる。それにより、過度なサージ抑制による損失の増加を防止することができる。なお、図8Eでは2並列としたが3並列以上としても良く、より細かなインピーダンス調整が可能となる。
【0072】
また、時刻t3~t4におけるインピーダンス値を調整する方式として、スイッチング素子70A,70Bの状態(主電圧、主電流、ジャンクション温度)に基づいて調整するようにしても良い。例えば、ジャンクション温度T1,T2(>T1)に関して、ジャンクション温度T1においては時刻t3~t4のインピーダンス値をZ1に設定し、ジャンクション温度T2においては時刻t3~t4のインピーダンス値をZ2またはZ3に設定するような制御方式でも良い。
【0073】
主電流Idsに基づいた例としては、第1主電流と、第1主電流より高い第2主電流とを考える。この場合、第1主電流においては時刻t3~t4のインピーダンス値をZ1にして、第2主電流においては時刻t3~t4のインピーダンス値をZ2またはZ3にするような制御方式もよい。
【0074】
(第2の実施形態)
図9は、ゲート駆動装置の第2の実施形態を示す図である。図9に示すように、ゲートドライバIC600a,600bは、ターンオン検知部601およびロジック回路602Cを備えている。第2実施形態においては、自アーム側のPWM制御指令と対アーム側のターンオン検知部601の信号とに基づいて、インピーダンス調整回路Zの制御信号を生成する。
【0075】
上アーム側のゲートドライバIC600aのロジック回路602Cは、PWM制御指令P1と、下アーム側のゲートドライバIC600bのターンオン検知部601の出力信号とに基づいて、インピーダンス調整回路Zの制御信号を生成する。一方、下アーム側のゲートドライバIC600aのロジック回路602Cは、PWM制御指令P2と、上アーム側のゲートドライバIC600bのターンオン検知部601の出力信号とに基づいて、インピーダンス調整回路Zの制御信号を生成する。
【0076】
第2実施形態では、以下のような制御信号生成方法により、図5の波形(D)の破線で示すような制御パターンを生成する。自アーム側(下アーム側)のロジック回路602Cは、自アーム側のPWM制御指令P2のOFFタイミング(時刻t1)から所定の遅延時間Δt2が経過したタイミング(時刻t2に相当)で、インピーダンスZgs2をHighからLOWに切り替える。その後、ロジック回路602Cは、対アーム側のターンオン検知部601を介して対アーム側のゲート電圧Vgs1をモニタし、ゲート電圧Vgs1が増加し始めたならばインピーダンスZgs2をLOWからHIGHに戻す(時刻t3に相当)。
【0077】
ロジック回路602Cは、対アーム側のターンオン検知部601からHIGH信号が入力されると(時刻t4)、インピーダンスZgs2をHighからLOWに切り替える。その後、ロジック回路602Cは、自アーム側のPWM制御指令P2がLOWからHIGHに切り替わると(時刻t6)、インピーダンスZgs2を再びLOWからHighに戻す。その結果、第2実施形態の場合も、第1実施形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0078】
(第3の実施形態)
図10は、ゲート駆動装置の第3の実施形態を示す図である。ゲートドライバIC600a,600bのロジック回路602Dには、自アーム側および対アーム側のPWM制御指令P1,P2が入力される。ロジック回路602Dは、PWM制御指令P1,P2に基づいてインピーダンス調整回路Zの制御信号を生成する。
【0079】
第3実施形態では、以下のような制御信号生成方法により、図5の波形(D)の破線で示すような制御パターンを生成する。自アーム側(下アーム側)のロジック回路602Dは、自アーム側のPWM制御指令P2のOFFタイミング(時刻t1)から所定の遅延時間Δt2が経過したタイミング(時刻t2に相当)で、インピーダンスZgs2をHighからLOWに切り替える。その後、ロジック回路602Dは、対アーム側のPWM制御指令P1がOFFからONに切り替わると(時刻t3)、インピーダンスZgs2をLOWからHighに戻す。
【0080】
ロジック回路602Dは、対アーム側のPWM制御指令P1がONに切り替わるタイミング(時刻t3)から所定の遅延時間Δt1が経過したタイミング(時刻t4に相当)で、インピーダンスZgs2をHighからLOWに切り替える。その後、ロジック回路602Dは、自アーム側のPWM制御指令P2がLOWからHIGHに切り替わると(時刻t6)、インピーダンスZgs2を再びLOWからHighに戻す。その結果、第3実施形態の場合も、第1実施形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0081】
(第4の実施形態)
図11は、ゲート駆動装置の第4の実施形態を示す図である。ゲートドライバIC600a,600bは、主電圧検知部603、主電流検知部604およびロジック回路602Eを備えている。主電圧検知部603および主電流検知部604は、例えばコンパレータで構成される。各ゲートドライバIC600a,600bの主電圧検知部603は、対応するスイッチング素子70A,70Bの主電圧(ドレイン-ソース間電圧)Vds1,Vds2と基準電圧とを比較し、主電圧Vds1,Vds2が基準電圧以上の場合にVds検知信号をロジック回路602Eへ出力する。各ゲートドライバIC600a,600bの主電流検知部604は、対応するスイッチング素子70A,70Bの主電流(ドレイン電流)Ids1,Ids2と基準電流とを比較し、主電流Ids1,Ids2が基準電流以下の場合にIds検知信号をロジック回路602Eへ出力する。ロジック回路602Eは、PWM制御指令と、Vds検知信号およびIds検知信号の少なくとも一方とに基づいて、インピーダンスZgs2を制御する。
【0082】
第4実施形態では、以下のような制御信号生成方法により、図5の波形(D)の破線で示すような制御パターンを生成する。自アーム側(下アーム側)のロジック回路602Eは、自アーム側のPWM制御指令P2のOFFタイミング(時刻t1)から所定の遅延時間Δt2が経過したタイミング(時刻t2に相当)で、インピーダンスZgs2をHighからLOWに切り替える。ロジック回路602Eは、自アームのIds検知信号およびVds検知信号の少なくとも一方が入力されると(時刻t31)、インピーダンスZgs2を再びLOWからHighに戻す。ここで、時刻t31は第1実施形態の時刻t3に相当する。
【0083】
次いで、ロジック回路602Eは、時刻t31から所定の遅延時間Δt3が経過したタイミング(時刻t4に相当)において、再びインピーダンスZgs2をHighからLOWに切り替える。その後、ロジック回路602Eは、自アーム側のPWM制御指令P2がLOWからHIGHに切り替わると(時刻t6)、インピーダンスZgs2を再びLOWからHighに戻す。その結果、第4実施形態の場合も、第1実施形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0084】
対アーム(上アーム)側と自アーム(下アーム)側とではグランド電位が異なるが、図11に示す構成では、対アームは対アーム側の信号に基づいてインピーダンス制御を行い、一方、自アームは自アーム側の信号に基づいてインピーダンス制御を行うように、上下アームで独立している。例えば、図4に示す構成では上下アームが独立していないので、上下アーム間で信号のやり取りをするための絶縁素子を必要とする。一方、図11に示す構成では上下アームで独立しているのでそのような絶縁素子を必要とせず、コスト低減を図ることができる。
【0085】
(第5の実施形態)
図12は、第5の実施形態に係る単相回路の構成を示す図である。第5実施形態では、第1実施形態において、上下アームのスイッチング素子を、並列接続された複数のスイッチング素子で構成するようにした。図12に示す例では、上アーム側には並列接続されたスイッチング素子70A1,70A2が設けられ、下アーム側には並列接続されたスイッチング素子70B1,70B2が設けられている。
【0086】
スイッチング素子70A1のゲート端子には、インピーダンスZ1aを有する電子部品(例えば、抵抗、インダクタ)91aが接続される。また、スイッチング素子70A2のゲート端子には、インピーダンスZ1bを有する電子部品91bが接続される。電子部品91a,91bの他端はゲートドライバIC600aと接続される。インピーダンスZ1a,Z1bは、リカバリ期間中のスイッチング素子70A1,70A2のリカバリサージが同程度の値(例えば、差が50V以内)になるように設定する。
【0087】
同様に、スイッチング素子70B1のゲート端子には、インピーダンスZ2aを有する電子部品92aが接続される。また、スイッチング素子70B2のゲート端子には、インピーダンスZ2bを有する電子部品92bが接続される。電子部品92a,92bの他端はゲートドライバIC600bと接続される。インピーダンスZ2a,Z2bは、リカバリ期間中のスイッチング素子70B1,70B2のリカバリサージが同程度の値(例えば、差が50V以内)になるように設定する。
【0088】
このように、複数のスイッチング素子を並列接続した構成においても、第1実施形態の場合と同様のゲート駆動装置60A,60Bを備え、図5の波形(D)に示すようなインピーダンス制御を行うことにより、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、第2実施形態から第4実施形態までの構成に対して、図12の場合と同様に複数のスイッチング素子を並列接続した構成を適用しても良い。
【0089】
なお、図12では2並列の場合を示したが、3以上のスイッチング素子を並列接続した構成にも適用できる。その場合も、各スイッチング素子におけるリカバリサージが同程度の値となるようにインピーダンスが設定された電子部品を、各スイッチング素子のゲート端子に接続するように構成する。
【0090】
以上説明した本発明の実施形態および変形例によれば、以下の作用効果を奏する。
【0091】
(C1)図4,5等に示すように、上下アームのスイッチング素子(半導体素子)70Aを駆動するゲート駆動装置60A,60Bであって、上下アームのゲート放電経路のインピーダンスを個別に制御するインピーダンス調整部としてのターンオン検知部601,ターンオフ検知部621,ロジック回路602およびインピーダンス調整回路Z,を備え、ロジック回路602は、上下アームのうちの対アーム(一方のアーム)のオン切替期間における自アーム(他方のアーム)のゲート放電経路の第1インピーダンス(HIGH)を、一方のアームのオフ切替期間における他方のアームのゲート放電経路の第2インピーダンス(LOW)よりも高く設定する。
【0092】
そのように第1インピーダンスを設定することにより、対アームターンオン時に自アームのゲートインピーダンスをHIGHに上昇させることで、自アームのゲートのキャリアを引き抜く速度を遅くすることでセルフターンオンに誘導する。その結果、自アームのリカバリサージを抑制しつつ対アームターンオンスピードを向上させることができ、対アーム側および自アーム側の両方を合わせた合計のスイッチング損失を低減することができる。
【0093】
(C2)上記(C1)において、図5に示すように、インピーダンス調整部のロジック回路602は、対アーム(一方のアーム)のターンオン完了(時刻t4)からターンオフ開始(時刻t5)までの間に、自アーム(他方のアーム)のゲート放電経路のインピーダンスをHIGH(第1インピーダンス)からLOW(第2インピーダンス)に変更する。ターンオフ期間(オフ切替期間)は自アームのゲート放電経路のインピーダンスがLOWに設定されるので、ゲートの酸化膜へのダメージを防止でき、ゲートの信頼性低下を防止することができる。
【0094】
(C3)上記(C1)において、図4等に示すように、インピーダンス調整部は、スイッチング素子70A,70Bのゲートとソースの間のインピーダンスをLOW(第2インピーダンス)に保持するミラークランプ回路を含む。比較例である図3の構成において、ターンオフ検知部621、ロジック回路622およびインピーダンス調整回路Zは、ミラークランプ回路を構成している。図5に示す第1実施形態におけるインピーダンス調整部は、このミラークランプ回路を利用して構成されているので、回路の簡素化を図ることができる。もちろん、ミラークランプ回路を使わずに上記インピーダンス調整部の機能を有する回路を構成しても構わない。
【0095】
(C4)上記(C1)において、図5等に示すように、第1インピーダンス(HIGH)は、対アーム(一方のアーム)のターンオンによって自アーム(他方のアーム)のスイッチング素子70Bがセルフターンオンする値HIGHに設定される。このように、自アームスイッチング素子70Bにセルフターンオンが発生することにより、自アームのリカバリサージを低減することができる。
【0096】
(C5)上記(C1)において、図4,5,10等に示すように、インピーダンス調整部のロジック回路602は、対アーム(一方のアーム)のゲート情報に基づいて、自アーム(他方のアーム)のゲート放電経路のインピーダンスをHIGHおよびLOWに制御する。ゲート情報の例としては、図4に示す構成の場合には、対アームのPWM制御指令P1およびターンオン検知部601からの信号で図10に示す構成の場合には、対アームのPWM制御指令P1である。このように自アームのゲートインピーダンス調整タイミングを対アームのゲート情報から判断することで、回路の簡素化を図ることができる。
【0097】
(C6)上記(C1)において、図5,11等に示すように、インピーダンス調整部は、自アーム(他方のアーム)の主電圧Vds2(主電圧情報)を検知する主電圧検知部603と、自アームの主電流Ids2(主電流情報)を検知する主電流検知部604との少なくとも一方を備え、インピーダンス調整部のロジック回路602Eは、主電圧Vds2および主電流Ids2の少なくとも一方に基づいて、自アームのゲート放電経路のインピーダンスをHIGH(第1インピーダンス)およびLOW(第2インピーダンス)に制御する。
【0098】
図11に示す構成において、対アーム(上アーム)側と自アーム(下アーム)側とではグランド電位が異なる。上述のように、対アームは対アーム側の信号に基づき、また、自アームは自アーム側の信号に基づいてインピーダンス制御を行うことにより、上下アーム間で信号のやり取りをする場合に必要な絶縁素子を省略した構成とすることができ、コスト低減を図ることができる。
【0099】
(C7)上記(C1)において、図8A等に示すように、インピーダンス調整部はインピーダンス調整用素子としてキャパシタ81(容量素子)を含む。ゲートインピーダンスを調整する場合には、一般的に抵抗(0Ωのシャント抵抗、ジャンパも含む)で構成されるが、上述のように容量素子(容量C)で調整することも可能である。インピーダンスは1/Cに比例するため、容量Cが大きいほどインピーダンスが低くなる。それにより、リカバリサージを抑え込むことができる。
【0100】
(C8)上記(C1)において、図8C,8D等に示すように、インピーダンス調整部はインピーダンス調整用素子としてダイオード83を含む。ダイオード83を設けることにより、ゲートに向かってのインピーダンスが低減され、ゲート負スパイクを低減することができる。
【0101】
(C9)上記(C1)において、図12等に示すように、上アームは並列接続された複数のスイッチング素子70A1,70A2で構成され、下アームは並列接続された複数のスイッチング素子70B1,70B2で構成される。自アーム(他方のアーム)の複数のスイッチング素子70B1,70B2のゲート配線に設けられる各電子部品92a,92bのインピーダンス(ゲートインピーダンス)は、対アーム(一方のアーム)のターンオン時におけるスイッチング素子70B1,70B2のリカバリサージが均等になるように設定される。
【0102】
図12のように並列接続されたスイッチング素子70B1,70B2のゲートインピーダンスを同じ値に調整した場合、異なるリカバリサージが発生する場合がある。その場合、リカバリサージの大きいほうのスイッチング素子が早期故障する可能性がある。そこで、スイッチング素子70B1,70B2のゲート配線にインピーダンス調整用の電子部品92a,92bを設け、発生するリカバリサージが均等になるように電子部品92a,92bのインピーダンスを設定する。それにより、スイッチング素子70B1,70B2のいずれか一方が早期故障するという不都合の発生を防止することができる。
【0103】
以上説明した各実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
10…蓄電装置、20…電力変換装置、30…電動モータ、40…制御回路、60A,60B,61A,61B,62A,62B…ゲート駆動装置、70A,70B…スイッチング素子、600a,600b,610(610a,610b),620a,620b…ゲートドライバIC、601…ターンオン検知部、602,602A,602B,602C,602D,622…ロジック回路、603…主電圧検知部、604…主電流検知部、621…ターンオフ検知部、P1,P2…PWM制御指令、Z…インピーダンス調整回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10
図11
図12