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2025-100143露光方法、露光装置、および物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100143
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】露光方法、露光装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217295
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 禎
(72)【発明者】
【氏名】漆原 宏亮
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197BA05
2H197BA09
2H197BA10
2H197CA03
2H197CA05
2H197CA07
2H197CB16
2H197CB19
2H197CC16
2H197CC22
2H197CD12
2H197CD13
2H197CD15
2H197CD17
2H197CD41
2H197DB03
2H197DB06
2H197DB07
2H197DB11
2H197DB23
2H197DC02
2H197DC06
2H197DC12
2H197HA03
2H197JA22
(57)【要約】
【課題】多重焦点露光を精度よく制御するために有利な技術を提供する。
【解決手段】投影光学系を有する露光装置において、基板と前記投影光学系の焦点との間の距離を複数の距離のそれぞれに変更して前記基板上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を行う露光方法は、現像後の前記フォトレジスト層に形成される開口の断面形状を評価するための評価指標が許容範囲に収まるように、前記複数の距離のそれぞれにおいて前記フォトレジスト層に照射する光の光量を前記複数の距離のそれぞれに応じて異ならせる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光学系を有する露光装置において、基板と前記投影光学系の焦点との間の距離を複数の距離のそれぞれに変更して前記基板上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を行う露光方法であって、
現像後の前記フォトレジスト層に形成される開口の断面形状を評価するための評価指標が許容範囲に収まるように、前記複数の距離のそれぞれにおいて前記フォトレジスト層に照射する光の光量を前記複数の距離のそれぞれに応じて異ならせる、ことを特徴とする露光方法。
【請求項2】
前記投影光学系の焦点が前記フォトレジスト層の表面にあるときの前記距離を第1距離とし、前記投影光学系の焦点が前記フォトレジスト層と前記基板との界面にあるときの前記距離を第2距離とした場合、前記距離と前記光量との関係が前記第1距離と前記第2距離との平均距離に対して非対称になるように、前記複数の距離のそれぞれに応じて前記光量を異ならせる、ことを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項3】
前記距離に対して前記光量を一定とした場合に得られる前記断面形状を示す情報に基づいて、前記評価指標を前記許容範囲に収めることができる前記距離と前記光量との関係を決定し、前記関係に基づいて前記光量を異ならせる、ことを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項4】
前記多重焦点露光において前記距離が狭くなるほど前記光量を増加または減少させる、ことを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項5】
前記多重焦点露光において前記光量を部分的に変更する、ことを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項6】
前記評価指標は、前記断面形状のテーパ角、前記開口の側面の角度、前記フォトレジスト層の表面における前記開口の幅、前記基板と前記フォトレジスト層との界面における前記開口の幅、および、前記表面と前記界面とでの前記開口の幅の比率のうち少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項7】
前記基板と前記投影光学系との相対的な駆動、前記基板に転写されるパターンを有する原版と前記投影光学系との相対的な駆動、および、前記投影光学系の光学素子の駆動のうち少なくとも1つによって前記距離が制御される、ことを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項8】
前記投影光学系から射出される光の波長を変更することによって前記距離が制御される、ことを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項9】
前記フォトレジスト層に照射する光の強度、前記フォトレジスト層に光を照射する時間、および、前記距離を変更する速度のうち少なくとも1つによって前記光量が制御される、ことを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項10】
前記多重焦点露光は、前記距離が互いに異なる複数の状態の各々において前記フォトレジスト層を露光する、ことを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項11】
前記多重焦点露光は、前記距離を変更しながら前記フォトレジスト層を露光する、ことを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の露光方法を用いて基板を露光する露光工程と、
露光工程で露光された前記基板を加工する加工工程と、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造する製造工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【請求項13】
基板上のフォトレジスト層を露光する露光装置であって、
投影光学系と、
前記基板と前記投影光学系の焦点との間の距離を変更する変更部と、
前記変更部により前記距離を複数の距離のそれぞれに変更して前記基板上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を制御する制御部と、
前記制御部は、現像後の前記フォトレジスト層に形成される開口の断面形状を評価するための評価指標が許容範囲に収まるように、前記複数の距離のそれぞれにおいて前記フォトレジスト層に照射する光の光量を前記複数の距離のそれぞれに応じて異ならせる、ことを特徴とする露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光方法、露光装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の製造工程(リソグラフィ工程)では、投影光学系を介して基板上のフォトレジスト層を露光することにより原版のパターンを当該フォトレジスト層に転写する露光装置が用いられうる。露光装置では、基板上のフォトレジスト層を露光する方法の1つとして、基板と投影光学系の焦点との距離を変更して基板上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64-224425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、露光装置では、厚膜のフォトレジスト層が設けられた基板が用いられることがあり、このような基板に対しては、焦点深度を向上させる観点から多重焦点露光が行われうる。この場合において、現像後に基板上のフォトレジスト層に形成される開口(パターン)が所望の断面形状になるように多重焦点露光を精度よく制御することが望まれる。
【0005】
そこで、多重焦点露光を精度よく制御するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての露光方法は、投影光学系を有する露光装置において、基板と前記投影光学系の焦点との間の距離を複数の距離のそれぞれに変更して前記基板上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を行う露光方法であって、現像後の前記フォトレジスト層に形成される開口の断面形状を評価するための評価指標が許容範囲に収まるように、前記複数の距離のそれぞれにおいて前記フォトレジスト層に照射する光の光量を前記複数の距離のそれぞれに応じて異ならせる、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、多重焦点露光を精度よく制御するために有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】露光装置の構成例を示す概略図
図2】実施例1の多重焦点露光を説明するための図
図3】実施例2の多重焦点露光を説明するための図
図4】実施例3の多重焦点露光を説明するための図
図5】多重焦点露光の制御例1を示すフローチャート
図6】多重焦点露光の制御例2を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
本明細書及び添付図面では、投影光学系の光軸に平行な方向をZ方向とするXYZ座標系で方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに平行な方向をX方向、Y方向及びZ方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転及びZ軸周りの回転のそれぞれを、θX、θY及びθZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御及び駆動(移動)は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御又は駆動(移動)を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御又は駆動は、それぞれ、X軸に平行な軸周りの回転、Y軸に平行な軸周りの回転、Z軸に平行な軸周りの回転に関する制御又は駆動を意味する。
【0012】
本発明に係る一実施形態について説明する。図1は、本実施形態における露光装置100の構成例を示す概略図である。露光装置100は、基板上のフォトレジスト層(感光材層)を露光して原版(レチクル、マスク)のパターンの転写像を当該フォトレジスト層に潜像パターンとして形成する装置である。基板上のフォトレジスト層に形成された潜像パターンは、現像処理によって物理的な開口を有するパターンに変換されうる。
【0013】
光源部LSは、光源101と楕円鏡102とを含み、光を射出する。光源101としては、ランプ、レーザ、LED等が用いられうる。光源部LSから射出された光は、第1照明光学系104に入射し、第1照明光学系104によって所定のビーム形状に整形される。第1照明光学系104により整形された光は、ミラー105で反射されて第2照明光学系106に入射する。第2照明光学系106は、オプティカルインテグレータ(不図示)により、原版109を均一な照度分布で照明するための二次光源を形成する。なお、光源部LSから射出される光の強度は、主制御部130による制御下において、照明系制御部125によって制御されうる。
【0014】
第2照明光学系106の光路上には、波長選択部107と光検出部108とが設けられている。波長選択部107は、第2照明光学系106に入射した光のうち基板114の露光に用いる波長の光を選択的に通過させるユニットである。具体的には、波長選択部107は、例えば、互いに異なる波長の光を通過させる複数の波長板を有しており、当該複数の波長板のうち光路に配置する波長板を変更することによって、基板114の露光に用いる波長の光を選択的に通過させることができる。複数の波長板は、例えばターレットに配置されうる。光検出部108は、光の強度を検出するフォトセンサ108aと、第2照明光学系106に入射した光の一部を反射してフォトセンサ108aに導くハーフミラー108bとを含む。フォトセンサ108aは、光の強度に応じた信号を出力する。ハーフミラー108bを通過した光は、原版109を照明する。なお、波長選択部107および光検出部108は、主制御部130による制御下において、照明系制御部125によって制御されうる。
【0015】
光源部LSと第1照明光学系104との間には、シャッタ103が設けられる。シャッタ103は、光源部LSと第1照明光学系104との間の光路上に挿入されたり当該光路上から抜去されたりするように、駆動部117によって駆動される。駆動部117によるシャッタ103の駆動により、基板114上のフォトレジスト層への光の照射/非照射が切り替えられる。即ち、基板114上のフォトレジスト層の露光の開始と終了とが制御される。なお、駆動部117は、主制御部130によって制御されうる。
【0016】
原版109は、原版ステージ110によって保持される。原版ステージ110は、X方向、Y方向およびZ方向の各々に移動可能に構成されており、駆動部119によって駆動される。つまり、原版ステージ110によって保持されている原版109が駆動部119によってX方向、Y方向およびZ方向の各々に駆動される。原版109には、基板114上のフォトレジスト層に転写すべきパターンが形成されている。なお、駆動部119は、主制御部130による制御下において、原版制御部126によって制御されうる。
【0017】
投影光学系111は、原版109のパターンの像を所定の倍率で基板114上のフォトレジスト層に投影する。投影光学系111を構成する光学素子112(例えばレンズ)は、投影光学系111の光軸と平行な方向(Z方向)に沿って移動可能に構成され、駆動部120によって駆動されうる。これにより、投影光学系111の光学特性、例えば投影光学系111の焦点位置を変更(調整)することができる。また、投影光学系111の瞳面(原版109が配置される面(物体面)に対するフーリエ変換面)には、開口絞り113が配置されている。開口絞り113の開口の径は、駆動部121によって制御されうる。なお、駆動部120~121は、主制御部130による制御下において、投影系制御部127によって制御されうる。
【0018】
基板114は、基板ステージ115によって保持される。基板ステージ115は、X方向、Y方向およびZ方向の各々に移動可能に構成されており、駆動部129によって駆動される。つまり、基板ステージ115によって保持されている基板114が駆動部129によってX方向、Y方向およびZ方向の各々に駆動される。基板114上には、事前にフォトレジスト(感光材)が塗布されることによってフォトレジスト層(感光材層)が設けられている。また、基板ステージ115には、基板ステージ115の位置を計測するためのミラー116が設けられている。なお、駆動部129は、主制御部130による制御下において、基板制御部128によって制御されうる。
【0019】
フォーカス計測部122は、基板114の表面高さ(Z方向の位置)を計測する。例えば、フォーカス計測部122は、基板114上のフォトレジストを感光させない波長の光を基板114に向けて投光する投光器と、投光器によって投光されて基板114で反射された光を受光する受光器とを有する。フォーカス計測部122は、受光器の受光面における光の入射位置に基づいて、基板114の表面高さを計測することができる。なお、フォーカス計測部122は、主制御部130による制御下において、基板制御部128によって制御されうる。
【0020】
高さ計測部123は、基板ステージ115のZ方向の位置(高さ)を計測する。例えば、高さ計測部123は、レーザ干渉計を含み、当該レーザ干渉計によってミラー116のZ方向の変位を検出することで、基板ステージ115の高さを計測することができる。また、位置計測部124は、基板ステージ115(即ち基板114)のX方向およびY方向の位置を計測する。例えば、位置計測部124は、レーザ干渉計を含み、当該レーザ干渉計によってミラー116のX方向およびY方向の変位を検出することで、基板ステージ115のX方向およびY方向の位置を計測することができる。なお、高さ計測部123および位置計測部124は、主制御部130による制御下において、基板制御部128によって制御されうる。
【0021】
主制御部130は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサおよびメモリ等の記憶部を含む情報処理装置(コンピュータ)で構成され、各制御部125~128を統括的に制御する。これにより、主制御部130は、露光装置100で行われる各種処理を制御することができる。本実施形態の露光装置100では、主制御部130および制御部125~128が個別に設けられているが、主制御部130および制御部125~128が1つの制御部として設けられていてもよい。
【0022】
このように構成された露光装置100では、近年、厚膜のフォトレジスト層が設けられた基板114が用いられることがあり、このような基板114に対しては、焦点深度を向上させる観点から多重焦点露光が行われうる。多重焦点露光は、基板114と投影光学系111の焦点とのZ方向の距離(以下では、「焦点距離」と表記することがある)を変更して基板114上のフォトレジスト層を多重露光するものである。例えば、多重焦点露光は、焦点距離が互いに異なる複数の状態の各々(即ち、複数の焦点距離の各々)において基板114上のフォトレジスト層を露光することによって行われうる。または、多重焦点露光は、焦点距離を連続的に変更しながら基板114上のフォトレジスト層を露光することによって行われてもよい。
【0023】
従来の多重焦点露光では、焦点距離に関わらず、基板114上のフォトレジスト層に照射する光の光量(以下では、照射光量と表記することがある)を一定としていた。そのため、例えば基板114上のフォトレジスト層が厚くなるにつれて、現像後に基板114上のフォトレジスト層に形成される開口(パターン)を所望の断面形状にすることが困難であった。そこで、本実施形態では、現像後に基板114上のフォトレジスト層に形成される開口の断面形状を評価するための評価指標が許容範囲に収まるように、多重焦点露光における照射光量を焦点距離に応じて異ならせる。照射光量は、例えば、露光装置100のユーザインタフェースを介してユーザが設定した値(設定値)として理解されてもよい。
【0024】
評価指標は、現像後に基板114上のフォトレジスト層に形成される開口(以下では、単に開口と表記することがある)の断面形状を評価(規定)するための指標である。評価指標は、テーパ角、サイドウォールアングル、トップ寸法、ボトム寸法、T/Bのうち少なくとも1つを含みうる。テーパ角は、開口の断面形状のテーパ角のことである。サイドウォールアングルは、開口の側面の角度のことである。トップ寸法は、フォトレジスト層の表面における開口の幅(線幅、CD幅)のことであり、フォトレジスト層の表面における開口の幅が基板114とフォトレジスト層との界面における開口の幅よりも狭まるトッピングを含みうる。ボトム寸法は、基板114とフォトレジスト層との界面における開口の幅(線幅、CD幅)のことであり、基板114とフォトレジスト層との界面における開口の幅がフォトレジスト層の表面における開口の幅よりも狭まるフッティングを含みうる。フッティングは、いわゆる裾引きを含むものとして理解されてもよい。T/Bは、フォトレジストの表面と界面とでの開口の幅の比率のことである。即ち、T/Bは、トップ寸法とボトム寸法との比率のことである。
【0025】
焦点距離は、基板114と投影光学系111との相対的な駆動、原版109と投影光学系111との相対的な駆動、および、投影光学系111の光学素子112の駆動のうち少なくとも1つによって制御(変更)されうる。基板114と投影光学系111との相対的な駆動は、例えば、駆動部129により基板114(基板ステージ115)をZ方向に駆動することで行われうる。駆動部129は、主制御部130により指示された位置に基板114が配置されるように基板制御部128によって制御される。原版109と投影光学系111との相対的な駆動は、例えば、駆動部119により原版109(原版ステージ110)をZ方向に駆動することで行われうる。駆動部119は、主制御部130により指示された位置に原版109が配置されるように原版制御部126によって制御される。投影光学系111の光学素子112の駆動は、例えば、駆動部120により光学素子112をZ方向に駆動することで行われうる。駆動部120は、主制御部130により指示された位置に光学素子112が配置されるように投影系制御部127によって制御される。以下では、基板114(基板ステージ115)をZ方向に駆動することによって焦点距離を変更する例を説明する。
【0026】
焦点距離は、投影光学系111から射出される光の波長を変更することで制御(変更)されてもよい。波長の変更は、波長選択部107によって行われうる。波長選択部107は、投影光学系111から射出される光が所望の波長になるように照明系制御部125によって制御される。また、波長の変更は、光源部LSによって行われてもよい。例えば、光源101がレーザ光源であれば、光源部LSに含まれる回折格子の位置をピエゾ素子等のアクチュエータによって変化させることで波長の変更が行われてもよい。或いは、光源部LSが、波長が互いに異なるレーザ光を射出する複数のレーザ光源を有する場合であれば、複数のレーザ光源のうち少なくとも1つにレーザ光を射出させることで波長の変更が行われてもよい。なお、駆動部119、駆動部120、駆動部129および波長選択部107のうち少なくとも1つは、焦点距離を変更する変更部を構成しうる。
【0027】
照射光量は、基板114上のフォトレジストに照射する光の強度、基板114上のフォトレジスト層に光を照射する時間、および、焦点距離を変更する速度のうち少なくとも1つによって制御(変更)されうる。基板114上のフォトレジストに照射する光の強度は、例えば、光源部LSから射出される光の強度を変更することによって制御されうる。光源部LSから射出される光の強度は、主制御部130により指示された光の強度になるように照明系制御部125によって制御される。基板114上のフォトレジスト層に光を照射する時間は、例えば、駆動部117によりシャッタ103を駆動することで制御されうる。駆動部117は、所望のタイミングでシャッタ103が光路上に挿抜されるように主制御部130によって制御される。焦点距離を変更する速度は、例えば、基板114と投影光学系111との相対的な駆動速度、原版109と投影光学系111との相対的な駆動速度、および、投影光学系111の光学素子112の駆動速度のうち少なくとも1つによって制御されうる。各駆動速度の制御は、前述した焦点距離の変更と同様の制御でありうる。また、焦点距離を変更する速度は、投影光学系111から射出される光の波長の変更速度によって制御(変更)されてもよい。波長の変更速度の制御は、前述した波長の変更と同様の制御でありうる。波長の変更速度の制御は、光源101がレーザ光源であれば、波長ごとの発振時間を変更すること、各パルスでの波長存在確率を変更すること、および/または、波長が互いに異なる複数のレーザ光の強度を変更することで行われてもよい。
【0028】
以下、本実施形態における多重焦点露光の実施例について説明する。以下の実施例では、多重焦点露光として、複数の焦点距離の各々において基板114上のフォトレジスト層を露光する例を説明する。焦点距離は、基板114上のフォトレジスト層における投影光学系111の焦点位置として理解されてもよく、以下では、説明の分かりやすさから、「焦点位置」と表記することがある。
【0029】
[実施例1]
実施例1では、現像後のフォトレジスト層に形成される開口の断面形状におけるテーパ角を制御する例について説明する。図2は、上記の露光装置100により多重焦点露光を実行した現像後のフォトレジスト層の断面を示している。図2において、点線は、多重焦点露光における焦点位置を表しており、各焦点位置に付されている丸の大きさは、各焦点位置での照射光量の大きさを表している。また、図2(a)~(b)における右図は、焦点位置(焦点距離)と照射光量との関係(プロファイル)を示している。なお、実施例1では、4つの焦点位置で露光を行う多重焦点露光の例を説明するが、焦点位置は4つに限られるものではなく、2つ以上であればよい。
【0030】
図2(a)は、従来の多重焦点露光を行った場合において現像後のフォトレジスト層200に形成された開口201の断面形状を示している。従来の多重焦点露光では、複数(4つ)の焦点位置202~205で露光が行われ、複数の焦点位置202~205で照射光量206~209を一定(同一)としている。
【0031】
従来の多重焦点露光では、基板114上のフォトレジスト層200に対し、4つの焦点位置202~205において同一の照射光量206~209でそれぞれ露光が行われる。この場合、1つの焦点位置で露光を行うと、フォトレジスト層200のうち当該1の焦点位置と異なる位置(部分)においても、デフォーカス部分のエネルギが吸収されて化学反応が進みうる。例えば、焦点位置205で露光を行った場合、そのデフォーカス部分エネルギがフォトレジスト層200の表面(上面)にも吸収されるため、フォトレジスト層200の表面においても化学反応が進みうる(即ち、当該表面における積算露光量が増加しうる)。その結果、フォトレジスト層200における下部の積算露光量よりも上部の積算露光量の方が大きくなるため、現像後にフォトレジスト層200に形成される開口201の断面形状がテーパ角を有するものとなる。
【0032】
図2(b)は、本実施形態(実施例1)の多重焦点露光を行った場合において現像後のフォトレジスト層210に形成された開口211の断面形状を示している。実施例1の多重焦点露光では、複数(4つ)の焦点位置212~215で露光が行われ、評価指標が許容範囲に収まるように(例えば、開口211が目標断面形状になるように)、焦点位置212~215に応じて照射光量216~219を異ならせている。この場合において、焦点位置と照射光量との関係が第1焦点位置と第2焦点位置との平均位置に対して非対称になるように、焦点位置212~215に応じて照射光量216~219を異ならせるとよい。第1焦点位置は、フォトレジスト層210の表面にある焦点位置212のことであり、第2焦点位置は、基板114とフォトレジスト層210との界面にある焦点位置215のことである。また、焦点位置は焦点距離として表すことができるため、「焦点距離と照射光量との関係が第1焦点距離と第2焦点距離との平均距離に対して非対称になるように、焦点位置に応じて照射光量を異ならせる」と理解されてもよい。第1焦点距離は、投影光学系111の焦点がフォトレジスト層210の表面にあるときの焦点距離のことである。第2焦点距離は、投影光学系111の焦点が基板114とフォトレジスト層210との界面にあるときの焦点距離のことである。
【0033】
実施例1の多重焦点露光では、焦点位置がフォトレジスト層210の表面から離れるほど、即ち、焦点距離が狭くなるほど、照射光量を増加させている。つまり、フォトレジスト層210の上部における焦点位置212での照射光量216よりも、フォトレジスト層210の下部における焦点位置215での照射光量219の方が大きくなるように、照射光量216~219を段階的に大きくしている。これにより、フォトレジスト層210における下部の積算露光量と上部の積算露光量との差が低減されるため、現像後のフォトレジスト層210に形成される開口211の断面形状が急峻な角度になる(即ち、テーパ角が低減される)。つまり、現像後にフォトレジスト層210に形成される開口211の断面形状を精度よく制御することができる。
【0034】
ここで、実施例1では、焦点位置がフォトレジスト層210の表面から離れるほど、即ち、焦点距離が狭くなるほど、照射光量を増加させている例を示した。但し、それに限られるものではなく、開口211の目標断面形状によっては、焦点位置がフォトレジスト層210の表面から離れるほど、即ち、焦点距離が狭くなるほど、照射光量を減少させることもありうる。また、実施例1では、照射光量216~219を段階的に変更する例を示したが、焦点距離を連続的に変更しながら基板114上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を行う場合には、焦点光量を連続的に変更してもよい。さらに、実施例1では、評価指標としてテーパ角を用いたが、それに限られるものではなく、サイドウォールアングルやT/Bなどの他の評価指標が用いられてもよい。
【0035】
[実施例2]
実施例2では、現像後のフォトレジスト層に形成される開口の断面形状における裾引き(フッティング)を制御する例について説明する。図3は、上記の露光装置100により多重焦点露光を実行した現像後のフォトレジスト層の断面を示している。図3において、点線は、多重焦点露光における焦点位置を表しており、各焦点位置に付されている丸の大きさは、各焦点位置での照射光量の大きさを表している。また、図3(a)~(b)における右図は、焦点位置(焦点距離)と照射光量との関係(プロファイル)を示している。なお、実施例2では、4つの焦点位置で露光を行う多重焦点露光の例を説明するが、焦点位置は4つに限られるものではなく、2つ以上であればよい。
【0036】
図3(a)は、従来の多重焦点露光を行った場合において現像後のフォトレジスト層300に形成された開口301の断面形状を示している。従来の多重焦点露光では、複数(4つ)の焦点位置302~305で露光が行われ、複数の焦点位置302~305で照射光量306~309を一定(同一)としている。
【0037】
従来の多重焦点露光では、基板114上のフォトレジスト層300に対し、4つの焦点位置302~305において同一の照射光量306~309でそれぞれ露光が行われる。この場合、基板114とフォトレジスト層300との密着性や、基板114の光透過率によっては、フォトレジスト層300の下部において裾引きAが生じることがある。裾引きAとは、フォトレジストの残存により、硬化後のフォトレジスト層300に形成された開口301のボトム寸法が目標値よりも小さくなる現象のことである。
【0038】
図3(b)は、本実施形態(実施例2)の多重焦点露光を行った場合において現像後のフォトレジスト層310に形成された開口311の断面形状を示している。実施例2の多重焦点露光では、上記の実施例1と同様に、複数(4つ)の焦点位置312~315で露光が行われ、評価指標が許容範囲に収まるように、焦点位置312~315に応じて照射光量316~319を異ならせている。この場合においても、上記の実施例1と同様に、焦点位置と照射光量との関係が第1焦点位置と第2焦点位置との平均位置に対して非対称になるように、焦点位置312~315に応じて照射光量316~319を異ならせるとよい。
【0039】
実施例2の多重焦点露光では、複数の焦点位置における照射光量を部分的に変更している。つまり、複数の焦点位置312~315の一部における照射光量を、他の部分における照射光量と異ならせている。裾引きAを解消する場合、図3(b)に示すように、焦点位置315での照射光量319を、他の焦点位置312~314での照射光量316~318よりも大きくしている。これにより、フォトレジスト層310の下部におけるフォトレジストの残存が低減されるため、現像後のフォトレジスト層310に形成される開口311の断面形状において裾引きが解消(低減)される。つまり、現像後にフォトレジスト層310に形成される開口311の断面形状を精度よく制御することができる。
【0040】
ここで、実施例2では、裾引きを解消するために、複数の焦点位置における照射光量を部分的に変更する例を示した。裾引きは、基板114とフォトレジスト層との界面で生じる開口の形状異常であるフッティングの一例である。フッティングの例には、例えば、基板114の光透過率が低く、基板114の近傍におけるフォトレジストが露光され過ぎてしまい、ボトム寸法が目標値よりも大きくなる場合もある。この場合には、焦点位置315での照射光量319を、他の焦点位置312~314での照射光量316~318よりも小さくするとよい。また、実施例2では、複数の照射位置で行われる照射光量を部分的に変更する例を示したが、焦点距離を連続的に変更しながら基板114上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を行う場合には、焦点光量を一時的に変更してもよい。さらに、実施例2では、評価指標としてフッティング(裾引き)を用いたが、それに限られるものではなく、テーパ角やサイドウォールアングル、T/Bなどの他の評価指標が用いられてもよい。
【0041】
[実施例3]
実施例3では、現像後のフォトレジスト層に形成される開口の断面形状におけるトッピングを制御する例について説明する。図4は、上記の露光装置100により露光を実行した現像後のフォトレジスト層の断面を示している。図4において、点線は、露光における焦点位置を表しており、各焦点位置に付されている丸の大きさは、各焦点位置での照射光量の大きさを表している。また、図4(a)~(b)における右図は、焦点位置(焦点距離)と照射光量との関係(プロファイル)を示している。なお、実施例3では、2つの焦点位置で露光を行う多重焦点露光の例を説明するが、焦点位置は2つに限られるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0042】
図4(a)は、従来の露光を行った場合において現像後のフォトレジスト層400に形成された開口401の断面形状を示している。図4(a)では、従来の露光として、基板114とフォトレジスト層400との境界にある1つの焦点位置402において照射光量406で露光を行う例を示している。従来の露光では、照射光量406が足りない場合などにおいてトッピングBが生じることがある。トッピングBとは、硬化後のフォトレジスト層の表面で生じる開口の形状異常のことであり、例えば、硬化後のフォトレジスト層400に形成された開口401のトップ寸法が目標値よりも小さくなる現象のことである。
【0043】
図4(b)は、本実施形態(実施例3)の多重焦点露光を行った場合において現像後のフォトレジスト層410に形成された開口411の断面形状を示している。実施例3の多重焦点露光では、上記の実施例1~2と同様に、複数(2つ)の焦点位置412~413で露光が行われ、評価指標が許容範囲に収まるように、焦点位置412~413に応じて照射光量416~417を異ならせている。この場合においても、上記の実施例1~2と同様に、焦点位置と照射光量との関係が第1焦点位置と第2焦点位置との平均位置に対して非対称になるように、焦点位置412~413に応じて照射光量416~417を異ならせるとよい。
【0044】
実施例3の多重焦点露光では、実施例1の多重焦点露光と同様に、焦点位置がフォトレジスト層210の表面から離れるほど、即ち、焦点距離が狭くなるほど、照射光量を増加させている。また、実施例3の多重焦点露光は、実施例2の多重焦点露光と同様に、複数の焦点位置における照射光量を部分的に変更していると考えることもできる。具体的には、実施例3の多重焦点露光では、フォトレジスト層400の表面に焦点位置412があるときと、基板114とフォトレジスト層400との界面に焦点位置413があるときとの各々で露光を行う。そして、焦点位置412での照射光量416を、焦点位置413での照射光量417を小さくしている。これにより、フォトレジスト層410の上部における積算露光量が増加するため、現像後のフォトレジスト層410に形成される開口411の断面形状においてトッピングBが解消(低減)される。つまり、現像後にフォトレジスト層410に形成される開口411の断面形状を精度よく制御することができる。
【0045】
ここで、実施例3では、トッピングのうちトップ寸法が目標値よりも小さくなる現象を解消するために、焦点位置に応じて照射光量を異ならせる例を示した。トッピングの例には、例えば、トップ寸法が目標値よりも大きくなる場合もある。この場合においても、トップ寸法が目標値になるように焦点位置に応じて照射光量を異ならせるとよい。また、実施例3では、複数の照射位置で行われる照射光量を部分的に変更する例を示したが、焦点距離を連続的に変更しながら基板114上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を行う場合には、焦点光量を一時的に変更してもよい。さらに、実施例3では、評価指標としてトッピングを用いたが、それに限られるものではなく、テーパ角やサイドウォールアングル、T/Bなどの他の評価指標が用いられてもよい。
【0046】
[多重焦点露光の制御例1]
次に、本実施形態における多重焦点露光(露光方法)の制御例1について説明する。図5は、本実施形態における多重焦点露光の制御例1を示すフローチャートである。制御例1では、複数の焦点距離の各々において基板114上のフォトレジスト層を逐次的に露光する多重焦点露光について説明する。図5のフローチャートは、主制御部130によって実行されうる。
【0047】
ステップS11で、主制御部130は、n個の焦点距離F(1)~F(n)を決定する。「n」は、2以上の自然数である。例えば、主制御部130は、基板114上に設けられうるフォトレジスト層を厚さ方向に分割することにより、n個の焦点距離F(1)~F(n)を決定することができる。焦点距離の数「n」は、現像後のフォトレジスト層における開口の形成精度に応じて設定されうる。焦点距離の数「n」および/または形成精度は、例えば、露光装置100のユーザインタフェースを介してユーザにより設定されうる。なお、前述したように、焦点距離は、基板114上のフォトレジスト層における投影光学系111の焦点位置として理解されてもよい。
【0048】
ステップS12で、主制御部130は、n個の焦点距離F(1)~F(n)の各々での照射光量E(1)~E(n)を決定する。例えば、主制御部130は、焦点距離に対して照射光量を一定として多重焦点露光を行った場合にフォトレジスト層に形成されうる開口の断面形状を示す基準情報を取得する。そして、主制御部130は、当該基準情報に基づいて、評価指標を許容範囲に収めることができる焦点距離と照射光量との関係を決定する。具体的には、基準情報の断面形状と目標断面形状とを比較し、基準情報の断面形状よりも目標断面形状の方が小さい部分では照射光量を小さくし、基準情報の断面形状よりも目標断面形状の方が大きい部分では照射光量を大きくする。これにより、主制御部130は、当該関係に基づいて、各焦点位置F(1)~F(n)での照射光量E(1)~E(n)、即ち、焦点距離と照射光量との関係を決定することができる。ここで、基準情報は、図5のフローチャートを開始する前に、露光装置100を用いた実験によって、或いは、主制御部130または外部装置を用いたシミュレーションによって取得されうる。
【0049】
ステップS13で、主制御部130は、多重焦点露光における露光回数を示す「i」を「1」に設定する(即ち、「i=1」に設定する)。次いで、ステップS14で、主制御部130は、焦点距離F(i)になるように基板114と投影光学系111の焦点とを相対的に駆動し、その状態で、基板114上のフォトレジスト層を照射光量E(i)で露光する。当該露光の開始および終了は、駆動部117によりシャッタ103を駆動することによって制御されうる。また、焦点距離F(i)の制御および照射光量E(i)の制御は、前述したとおりであるため、ここでの説明を省略する。
【0050】
ステップS15で、主制御部130は、多重焦点露光においてn回の露光が行われたか否かを判定する。多重焦点露光においてn回の露光が行われた場合には終了する。一方、多重焦点露光においてn回の露光が行われていない場合にはステップS16に進み、主制御部130は、多重焦点露光における露光回数を示す「i」に「1」を加算してからステップ104を実行する。
【0051】
[多重焦点露光の制御例2]
次に、本実施形態における多重焦点露光(露光方法)の制御例2について説明する。図6は、本実施形態における多重焦点露光の制御例2を示すフローチャートである。制御例2では、焦点距離を連続的に変更しながら基板114上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光について説明する。図6のフローチャートは、主制御部130によって実行されうる。
【0052】
ステップS21で、主制御部130は、n個の焦点距離F(1)~F(n)を決定する。次いで、ステップS22で、主制御部130は、n個の焦点距離F(1)~F(n)の各々での照射光量E(1)~E(n)を決定する。これにより、評価指標を許容範囲に収めることができる焦点距離と照射光量との関係を決定することができる。なお、ステップS21~S22は、図5のフローチャートのステップS11~S12と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0053】
ステップS23で、主制御部130は、時間tに対する焦点距離の変更速度V(t)および光強度I(t)を決定する。例えば、主制御部130は、焦点距離と照射光量との関係に基づいて、当該関係を実現するための焦点距離の変更速度V(t)および光強度I(t)を生成する。ここで、制御例2では、焦点距離の変更速度V(t)および光強度I(t)の双方を決定する例を示したが、それに限られず、焦点距離の変更速度V(t)および光強度I(t)の一方のみを決定してもよい。例えば、焦点距離の変更速度V(t)を一定とする場合には光強度I(t)のみを決定してもよいし、光強度I(t)を一定とする場合には焦点距離の変更速度V(t)のみを決定してもよい。
【0054】
ステップS24で、主制御部130は、駆動部129により基板ステージ115を駆動することで、基板114を露光開始位置に配置する。次いで、ステップS25で、主制御部130は、ステップS23で決定した焦点距離の変更速度V(t)および光強度I(t)に基づいて、多重焦点露光を実行する。具体的には、主制御部130は、焦点距離の変更速度V(t)に従って焦点距離を変更しながら、光強度I(t)に従って、投影光学系111から射出される光の強度を変更する。この際、主制御部130は、フォーカス計測部122に基板114の表面高さをリアルタイムに計測させ、その計測結果に基づいて、基板ステージ115を駆動する駆動部129のフィードバック制御を行う。これにより、正確な速度で焦点距離を変更することができる。また、主制御部130は、光検出部108に光の強度をリアルタイムに検出させ、その検出結果に基づいて、光源部LSから射出される光の強度のフィードバック制御を行う。光源部LSから射出される光の強度を時間変化させる場合、光源部LSの光源101としてレーザやLEDが用いられるとよい。
【0055】
上述したように、本実施形態の露光装置100は、多重焦点露光において、評価指標が許容範囲に収まるように照射光量を焦点距離に応じて異ならせる。これにより、現像後のフォトレジスト層に形成される開口の断面形状が目標断面形状になるように、多重焦点露光を精度よく制御することができる。
【0056】
<物品の製造方法の実施形態>
本発明の実施形態にかかる物品製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品製造方法は、上記の露光装置(露光方法)を用いて基板を露光する露光工程(基板上にパターンを形成する工程)と、露光工程で露光された基板を加工する加工工程と、加工工程で加工された基板から物品を製造する製造工程とを含む。加工工程は、露光工程で露光された基板を現像する工程を含んでもよい。更に、かかる物品製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0057】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0058】
<実施形態のまとめ>
本明細書の開示は、少なくとも以下の露光方法、露光装置、および物品製造方法を含む。
(項目1)
投影光学系を有する露光装置において、基板と前記投影光学系の焦点との距離を複数の距離のそれぞれに変更して前記基板上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を行う露光方法であって、
現像後の前記フォトレジスト層に形成される開口の断面形状を評価するための評価指標が許容範囲に収まるように、前記複数の距離のそれぞれにおいて前記フォトレジスト層に照射する光の光量を前記複数の距離のそれぞれに応じて異ならせる、ことを特徴とする露光方法。
(項目2)
前記投影光学系の焦点が前記フォトレジスト層の表面にあるときの前記距離を第1距離とし、前記投影光学系の焦点が前記フォトレジスト層と前記基板との界面にあるときの前記距離を第2距離とした場合、前記距離と前記光量との関係が前記第1距離と前記第2距離との平均距離に対して非対称になるように、前記複数の距離のそれぞれに応じて前記光量を異ならせる、ことを特徴とする項目1に記載の露光方法。
(項目3)
前記距離に対して前記光量を一定とした場合に得られる前記断面形状を示す情報に基づいて、前記評価指標を前記許容範囲に収めることができる前記距離と前記光量との関係を決定し、前記関係に基づいて前記光量を異ならせる、ことを特徴とする項目1又は2に記載の露光方法。
(項目4)
前記多重焦点露光において前記距離が狭くなるほど前記光量を増加または減少させる、ことを特徴とする項目1乃至3のいずれか1項目に記載の露光方法。
(項目5)
前記多重焦点露光において前記光量を部分的に変更する、ことを特徴とする項目1乃至3のいずれか1項目に記載の露光方法。
(項目6)
前記評価指標は、前記断面形状のテーパ角、前記開口の側面の角度、前記フォトレジスト層の表面における前記開口の幅、前記基板と前記フォトレジスト層との界面における前記開口の幅、および、前記表面と前記界面とでの前記開口の幅の比率のうち少なくとも1つを含む、ことを特徴とする項目1乃至5のいずれか1項目に記載の露光方法。
(項目7)
前記基板と前記投影光学系との相対的な駆動、前記基板に転写されるパターンを有する原版と前記投影光学系との相対的な駆動、および、前記投影光学系の光学素子の駆動のうち少なくとも1つによって前記距離が制御される、ことを特徴とする項目1乃至6のいずれか1項目に記載の露光方法。
(項目8)
前記投影光学系から射出される光の波長を変更することによって前記距離が制御される、ことを特徴とする項目1乃至7のいずれか1項目に記載の露光方法。
(項目9)
前記フォトレジスト層に照射する光の強度、前記フォトレジスト層に光を照射する時間、および、前記距離を変更する速度のうち少なくとも1つによって前記光量が制御される、ことを特徴とする項目1乃至8のいずれか1項目に記載の露光方法。
(項目10)
前記多重焦点露光は、前記距離が互いに異なる複数の状態の各々において前記フォトレジスト層を露光する、ことを特徴とする項目1乃至9のいずれか1項目に記載の露光方法。
(項目11)
前記多重焦点露光は、前記距離を変更しながら前記フォトレジスト層を露光する、ことを特徴とする項目1乃至9のいずれか1項目に記載の露光方法。
(項目12)
項目1乃至11のいずれか1項目に記載の露光方法を用いて基板を露光する露光工程と、
露光工程で露光された前記基板を加工する加工工程と、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造する製造工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
(項目13)
基板上のフォトレジスト層を露光する露光装置であって、
投影光学系と、
前記基板と前記投影光学系の焦点との間の距離を変更する変更部と、
前記変更部により前記距離を複数の距離のそれぞれに変更して前記基板上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を制御する制御部と、
前記制御部は、現像後の前記フォトレジスト層に形成される開口の断面形状を評価するための評価指標が許容範囲に収まるように、前記複数の距離のそれぞれにおいて前記フォトレジスト層に照射する光の光量を前記複数の距離のそれぞれに応じて異ならせる、ことを特徴とする露光装置。
【0059】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0060】
100:露光装置、109:原版、110:原版ステージ、111:投影光学系、114:基板、115:基板ステージ、130:主制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6