IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特開2025-100144決定方法、プログラム、露光装置、および物品製造方法
<>
  • 特開-決定方法、プログラム、露光装置、および物品製造方法 図1
  • 特開-決定方法、プログラム、露光装置、および物品製造方法 図2
  • 特開-決定方法、プログラム、露光装置、および物品製造方法 図3
  • 特開-決定方法、プログラム、露光装置、および物品製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100144
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】決定方法、プログラム、露光装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217296
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】漆原 宏亮
(72)【発明者】
【氏名】荒井 禎
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197BA04
2H197BA09
2H197BA11
2H197CA05
2H197CA07
2H197CB16
2H197CC16
2H197CC22
2H197CD12
2H197CD13
2H197CD41
2H197CD48
2H197DB03
2H197DB06
2H197DB07
2H197DB10
2H197DB11
2H197DC02
2H197DC12
2H197EA04
2H197HA03
2H197JA22
(57)【要約】
【課題】露光装置による製造物の多様性を増やすために有利な技術を提供する。
【解決手段】原版のパターンを基板に転写する露光装置により、基板と投影光学系の焦点との間の距離を複数の距離のそれぞれに変更して基板の上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を行うための露光パラメータ値を決定する決定方法が提供される。決定方法は、複数の距離のそれぞれの露光パラメータ値のセットである露光パラメータ値セットと、露光パラメータ値セットに従い多重焦点露光を行い現像した場合に得られる、フォトレジスト層の断面形状を示すレジストプロファイルとの関係を得る取得工程と、得られた関係に基づいて、目標レジストプロファイルを得るための目標露光パラメータ値セットを決定する決定工程とを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原版のパターンを基板に転写する露光装置により、前記基板と投影光学系の焦点との間の距離を複数の距離のそれぞれに変更して前記基板の上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を行うための露光パラメータ値を決定する決定方法であって、
前記複数の距離のそれぞれの露光パラメータ値のセットである露光パラメータ値セットと、前記露光パラメータ値セットに従い前記多重焦点露光を行い現像した場合に得られる、前記フォトレジスト層の断面形状を示すレジストプロファイルとの関係を得る取得工程と、
前記得られた関係に基づいて、目標レジストプロファイルを得るための目標露光パラメータ値セットを決定する決定工程と、
を有することを特徴とする決定方法。
【請求項2】
前記取得工程は、
第1露光パラメータ値セットに従い前記多重焦点露光を行い現像した場合の第1レジストプロファイルを得る工程と、
前記第1露光パラメータ値セットとは異なる第2露光パラメータ値セットに従い前記多重焦点露光を行い現像した場合の第2レジストプロファイルを得る工程と、
を含み、前記第1露光パラメータ値セットと前記第2露光パラメータ値セットとの差と、前記第1レジストプロファイルと前記第2レジストプロファイルとの差とに基づいて、前記関係を得る、ことを特徴とする請求項1に記載の決定方法。
【請求項3】
前記取得工程は、
前記第1レジストプロファイルから、現像後の前記フォトレジスト層に形成される開口の断面形状の評価値である第1評価値を求める第1工程と、
前記第2レジストプロファイルから、現像後の前記フォトレジスト層に形成される開口の断面形状の評価値である第2評価値を求める第2工程と、
前記第1露光パラメータ値セットにおける第1露光パラメータ値と前記第2露光パラメータ値セットにおける第2露光パラメータ値との差と、前記第1評価値と前記第2評価値との差とに基づいて、露光パラメータ値の単位変化あたりの評価値変化量を示す敏感度を求める第3工程と、
を含み、前記複数の距離のそれぞれに対して前記第1工程、前記第2工程、および前記第3工程を繰り返すことにより、距離別敏感度を得る、ことを特徴とする請求項2に記載の決定方法。
【請求項4】
前記決定工程は、前記距離別敏感度に基づく補間演算により、前記目標露光パラメータ値セットを決定する、ことを特徴とする請求項3に記載の決定方法。
【請求項5】
前記評価値は、前記開口の幅を示すCD値、前記断面形状の側壁角度、前記開口の上端幅と下端幅の比、の少なくともいずれかを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の決定方法。
【請求項6】
前記距離の変更は、前記基板、前記原版、前記投影光学系のレンズ、の少なくともいずれかを移動することにより行われる、ことを特徴とする請求項1に記載の決定方法。
【請求項7】
前記距離の変更は、露光波長を変更することにより行われる、ことを特徴とする請求項1に記載の決定方法。
【請求項8】
前記露光パラメータ値は、照射光量、開口数、有効光源分布、露光波長、波長幅、の少なくともいずれかである、ことを特徴とする請求項1に記載の決定方法。
【請求項9】
コンピュータに、請求項1から8のいずれか1項に記載の決定方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
原版のパターンを基板に転写する露光装置であって、
前記原版のパターンを前記基板に投影する投影光学系と、
前記基板と前記投影光学系の焦点との間の距離を複数の距離のそれぞれに変更する変更部と、
前記変更部により前記距離を前記複数の距離のそれぞれに変更して前記基板の上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を行う制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記複数の距離のそれぞれの露光パラメータ値のセットである露光パラメータ値セットと、前記露光パラメータ値セットに従い前記多重焦点露光を行い現像した場合に得られる、前記フォトレジスト層の断面形状を示すレジストプロファイルとの関係に基づいて、目標レジストプロファイルを得るための目標露光パラメータ値セットを決定する、
ことを特徴とする露光装置。
【請求項11】
請求項10に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
前記露光された基板を現像する工程と、
を有し、前記現像された基板から物品を製造する、ことを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、決定方法、プログラム、露光装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の製造工程のうちの1つであるリソグラフィ工程においては、投影光学系を介して基板上のフォトレジスト層を露光することにより原版のパターンを当該フォトレジスト層に転写する露光装置が使用されうる。近年の露光装置による製造物の多様化に伴い、露光装置は様々なプロセスに対応する必要が出てきた。例えば特許文献1には、ステッパのレンズと基板の相対距離をベストフォーカス位置からずらして焦点ずれの露光を行い、レジスト側面に緩やかなテーパーをつけることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01-024425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さまざまな構造体を作製することができるようにするため、基板には厚膜フォトレジスト層が形成されうる。基板に厚膜フォトレジスト層が形成される場合、自由な構造体を作製するために厚膜フォトレジスト層のプロファイルをコントロールする必要性がある。
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術では、テーパー角を緩やかにすることは可能であるが、反対にテーパー角を急峻にしたい場合、あるいは、テーパー角を部分的に変えたい場合など、多様な製造物を作製する要望に応えることはできない。
【0006】
本発明は、露光装置による製造物の多様性を増やすために有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、原版のパターンを基板に転写する露光装置により、前記基板と投影光学系の焦点との間の距離を複数の距離のそれぞれに変更して前記基板の上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を行うための露光パラメータ値を決定する決定方法であって、前記複数の距離のそれぞれの露光パラメータ値のセットである露光パラメータ値セットと、前記露光パラメータ値セットに従い前記多重焦点露光を行い現像した場合に得られるレジストプロファイルとの関係を得る取得工程と、前記得られた関係に基づいて、目標レジストプロファイルを得るための目標露光パラメータ値セットを決定する決定工程と、を有することを特徴とする決定方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、露光装置による製造物の多様性を増やすために有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】露光装置の構成を示す図。
図2】目標露光パラメータ値セットを決定するための決定方法を示すフローチャート。
図3】多重焦点露光における露光パラメータ、現像により得られるレジストプロファイルを例示する図。
図4】多重焦点露光における露光パラメータ、現像により得られるレジストプロファイルを例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、実施形態における、原版のパターンを基板に転写する露光装置100の構成を示す図である。本明細書および図面においては、水平面をXY平面とするXYZ座標系において方向が示される。一般には、被露光対象である基板114はその表面が水平面(XY平面)と平行になるように基板ステージ115の上に置かれる。よって以下では、基板ステージ115の基板載置面に沿う平面内で互いに直交する方向をX軸およびY軸とし、X軸およびY軸に垂直な方向をZ軸とする。また、以下では、XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向という。
【0012】
光源ユニット102に収容された光源101は、遠紫外領域、例えば波長365nmの放射光を射出しうる。光源101における波長安定化のための制御、放電印加電圧の制御等は、照明系制御部125によって行われうる。
【0013】
光源101から射出された放射光は、放射光整形光学系104で所定の形状に整形される。放射光整形光学系104を出た光束は、ミラー105、照明光学系106を介して、原版ステージ110によって保持された原版109へ導かれ、原版109が照明される。照明光学系106は、照明光調整ユニット107、ハーフミラー108、光量センサ118を含みうる。照明光調整ユニット107は、照明光学系106に入射した光のうち基板114の露光に用いる波長の光を選択的に通過させる波長選択部の機能を備えている。波長選択部としての照明光調整ユニット107は、例えば、互いに異なる波長の光を通過させる複数の波長板を有しうる。照明光調整ユニット107は、複数の波長板のうち光路に配置する波長板を変更することによって、基板114の露光に用いる波長の光を選択的に通過させることができる。複数の波長板は、例えばターレットに配置されうる。照明光調整ユニット107は、照明系制御部125によって制御されうる。照明光調整ユニット107を出た光束は、ハーフミラー108を介して光量センサ118にも導かれる。光量センサ118による検出結果は、照明系制御部125を介して主制御部130に提供されうる。また、照明系制御部125は、主制御部130により指定した所望の有効光源分布に応じて、照明光調整ユニット107を制御することができる。なお、「有効光源分布」とは、原版を照明する照明光学系の瞳面における光強度分布をいう。
【0014】
原版109には、焼き付けを行うための半導体素子の回路パターンが形成されている。原版109を保持する原版ステージ110は、原版ステージ制御部126を介して原版ステージ駆動部119によって制御されうる。
【0015】
投影光学系111は、原版109を通過した露光光を、基板ステージ115上に載置された基板114に導光する。これにより、フォトレジストが塗布された基板114上(の一つのショット領域)に原版109のパターンが結像投影される。投影光学系111にはフィールドレンズ112が設けられている。レンズ駆動部120は、フィールドレンズ112を光軸方向に移動させることができる。投影系制御部127がレンズ駆動部120を介してフィールドレンズ112の光軸方向の位置を制御することで、投影光学系111の諸収差を抑制しうる。また、投影系制御部127がレンズ駆動部120を介してフィールドレンズ112の光軸方向の位置を制御することにより焦点距離を変更することも可能である。また、投影光学系111は、開口数制御のための絞りユニット113を備える。絞り駆動部121は、絞りユニット113を駆動する。絞り駆動部121は、投影系制御部127によって制御される。投影系制御部127は、主制御部130により指定した所望の開口数になるように、絞り駆動部121に駆動指令を出す。絞り駆動部121は、駆動指令に応じて、絞りユニット113を駆動する。
【0016】
基板ステージ115は、基板114を保持して、投影光学系111の光軸方向(Z方向)、及びZ方向に垂直な面内において互いに直交するX方向及びY方向に移動することができる。レーザ干渉計124は、基板ステージ115に固定された移動鏡116との間の距離を計測することで、基板ステージ115のXY面内における位置を計測することができる。基板ステージ制御部128は、レーザ干渉計124によって計測された基板ステージ115の位置に基づいてモータ等で構成される基板ステージ駆動部129を制御することで、基板ステージ115をXY面内における所定の位置へ移動させる。
【0017】
レーザ干渉計123は、移動鏡116との間の距離を計測することで、基板ステージ115のZ方向の位置を計測することができる。基板ステージ制御部128は、レーザ干渉計123によって計測された基板ステージ115のZ方向の位置に基づいて基板ステージ駆動部129を制御することで、基板ステージ115をZ方向に移動させることができる。
【0018】
フォーカスユニット122は、フォーカス面検出機能を有する。フォーカスユニット122は、投影光学系111を介して基板114の上のフォトレジストを感光させない非露光光からなる複数個の光束を投光する。これらの光速は、基板114上に各々集光されて反射され、フォーカスユニット122の検出光学系に入射される。検出光学系には各反射光束に対応させて複数個の位置検出用の受光素子が配置されている。各受光素子の受光面と基板114上での各光束の反射点とは、結像光学系によりほぼ共役となるように構成されている。投影光学系111の光軸方向における基板114の表面の位置ずれは、フォーカスユニット122内の位置検出用の受光素子上の入射光束位置ずれとして計測される。
【0019】
主制御部130は、照明系制御部125、原版ステージ制御部126、投影系制御部127、基板ステージ制御部128を統括的に制御する。主制御部130は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサおよびメモリ等の記憶部を含む情報処理装置(コンピュータ)で構成されうる。図1に示した露光装置100には、主制御部130によって制御される各種制御部(照明系制御部125、原版ステージ制御部126、投影系制御部127、基板ステージ制御部128)が個別に設けられている。しかし、主制御部130および各制御部が1つの制御部として設けられていてもよい。また、主制御部130は、露光装置100の筐体内に配置されてもよいし、露光装置100の外部に配置されてもよい。露光装置100の外部に配置される主制御部130は、例えば、露光装置100にネットワーク接続された制御サーバとして機能するコンピュータによって実現されてもよい。
【0020】
また、光源ユニット102と放射光整形光学系104との間に露光シャッター103が配置されてもよい。露光シャッター103の開閉駆動は、露光シャッター駆動ユニット117によって行われうる。主制御部130は、露光シャッター駆動ユニット117を介して、露光/非露光を制御することができる。
【0021】
実施形態における露光装置100の構成は概ね以上のとおりである。さまざまな構造体を作製することができるようにするため、基板114には厚膜フォトレジスト層が形成されうる。基板114に厚膜フォトレジスト層が形成される場合、自由な構造体を作製するために厚膜フォトレジスト層のプロファイルをコントロールする必要性がある。以下では、フォトレジスト層の断面形状を「レジストプロファイル」という。
【0022】
本実施形態では、レジストプロファイルの自由度の高いコントロールを実現するために、露光装置100により多重焦点露光が行われる。多重焦点露光は、基板114と投影光学系111の焦点との間のZ方向の距離(以下では、「焦点距離」と表記することがある。)を変更して基板114上のフォトレジスト層を多重露光するものである。多重焦点露光は、例えば、基板114と投影光学系111の焦点との間の距離を複数の距離のそれぞれに変更して基板114上のフォトレジスト層を露光することにより行われうる。あるいは、多重焦点露光は、基板114と投影光学系111の焦点との間の距離を連続的に変化させながら基板114上のフォトレジスト層を露光することにより行われてもよい。あるいは、多重焦点露光は、基板114を傾けて斜めに駆動することで投影光学系111の焦点との間の距離を連続的に変化させながら基板114上のフォトレジスト層を露光することにより行われてもよい。
【0023】
従来の多重焦点露光では、焦点距離に関わらず、基板114上のフォトレジスト層に照射する光の光量(以下では、「照射光量」と表記することがある。)を一定としていた。そのため、従来の多重焦点露光によってレジストプロファイルを自由にコントロールすることは困難であった。これに対し、本実施形態では、多重焦点露光における照射光量を焦点距離に応じて異ならせることにより、所望のレジストプロファイルを得るようにした。
【0024】
焦点距離の変更は、基板114、原版109、投影光学系111のレンズ(フィールドレンズ112)、の少なくともいずれかを移動することにより行われうる。基板114の移動は、例えば、基板ステージ駆動部129により基板ステージ115をZ方向に駆動することで行われうる。原版109の移動は、例えば、原版ステージ駆動部119により原版ステージ110をZ方向に駆動することで行われうる。投影光学系111のフィールドレンズ112の移動は、例えば、レンズ駆動部120によりフィールドレンズ112をZ方向に駆動することで行われうる。なお、以下では、基板ステージ115をZ方向に駆動することによって焦点距離の変更が行われる例を説明する。
以上のように、基板ステージ駆動部129、原版ステージ駆動部119、レンズ駆動部120は、焦点距離を変更するための変更部として機能することができる。
【0025】
焦点距離の変更は、露光波長を変更することにより行われてもよい。露光波長は、投影光学系111から射出される光の波長をいう。露光波長の変更は、例えば、照明光調整ユニット107によって行われうる。照明光調整ユニット107は、投影光学系111から射出される光が所望の波長になるように照明系制御部125によって制御される。また、露光波長の変更は、光源ユニット102によって行われてもよい。例えば、光源101がレーザ光源であれば、光源ユニット102に含まれる回折格子の位置をピエゾ素子等のアクチュエータによって変化させることで露光波長の変更が行われてもよい。あるいは、光源101が、波長が互いに異なるレーザ光を射出する複数のレーザ光源である場合、複数のレーザ光源のうち少なくとも1つにレーザ光を射出させることで波長の変更が行われてもよい。
【0026】
照射光量は、基板114上のフォトレジスト層に照射する光の強度、基板114上のフォトレジスト層に光を照射する時間、および、焦点距離を変化させる速度のうち少なくとも1つによって制御(変更)されうる。基板114上のフォトレジスト層に照射する光の強度は、例えば、光源ユニット102から射出される光の強度を変更することによって制御されうる。光源ユニット102から射出される光の強度は、主制御部130により指示された光の強度になるように照明系制御部125によって制御される。基板114上のフォトレジスト層に光を照射する時間は、例えば、露光シャッター駆動ユニット117により露光シャッター103を駆動することで制御されうる。焦点距離を変化させる速度は、例えば、基板114と投影光学系111との相対的な駆動速度、原版109と投影光学系111との相対的な駆動速度、および、投影光学系111のフィールドレンズ112の駆動速度のうち少なくとも1つによって制御されうる。また、焦点距離を変化させる速度は、投影光学系111から射出される光の波長の変更速度によって制御(変更)されてもよい。波長の変更速度の制御は、前述した波長の変更と同様の制御でありうる。波長の変更速度の制御は、光源101がレーザ光源であれば、波長ごとの発振時間を変化させることで行われてもよいし、各パルスでの波長存在確率を変化させることで行われてもよいし、波長が互いに異なる複数のレーザ光の強度を変えることで行われてもよい。
【0027】
(実施例1)
以下では、多重焦点露光の方式として、基板114と投影光学系111の焦点との間の距離を複数の距離のそれぞれに変更して基板114の上のフォトレジスト層を露光する方式が採用されるものとする。多重焦点露光を実施するにあたり、複数の距離(複数の焦点距離)のそれぞれの露光パラメータ値のセット(露光パラメータ値セット)を決定する必要がある。本実施形態において、目標レジストプロファイルを得るための目標露光パラメータ値セットを決定するための決定方法は、以下のように行われる。
【0028】
まず、露光パラメータ値セットと、この露光パラメータ値セットに従い多重焦点露光を行い現像した場合に得られるレジストプロファイルとの関係が取得される(取得工程)。この取得工程において、レジストプロファイルは、実際に露光および現像を行い、電子顕微鏡によってフォトレジスト層の断面を観察することにより得てもよい。あるいは、レジストプロファイルは、主制御部130またはその他のコンピュータを用いたシミュレーションによって得てもよい。その後、得られた露光パラメータ値セットとレジストプロファイルとの関係に基づいて、目標露光パラメータ値セットが決定される。
【0029】
以下、目標レジストプロファイルを得るための目標露光パラメータ値セットを決定するための決定方法の具体例を説明する。図2は、決定方法を示すフローチャートである。決定方法がシミュレーションにより行われる場合には、このフローチャートに対応するプログラムが例えば主制御部130の記憶部に記憶され主制御部130によって実行される。
【0030】
S201では、第1露光パラメータ値セットに従い、焦点距離を複数の距離のそれぞれに変更して多重焦点露光を行い現像した場合の第1レジストプロファイルを得る。図3(a)には、基板114に対し、第1露光パラメータ値セットに従い、複数の焦点距離303、304、305、306のそれぞれに変更して多重焦点露光を行い現像した場合に得られる第1レジストプロファイル302の例が示されている。焦点距離303は、露光前のフォトレジスト層の表面(現像後のフォトレジスト層に形成される開口(以下では、単に「開口」と表記することがある。)の上端)の位置に対応し、焦点距離306は、フォトレジスト層と基板114との界面の位置に対応する。露光パラメータは照射光量とする。よって、第1露光パラメータ値セットは、各焦点位置における照射光量307、308、309、310を含む。図3(a)には、第1露光パラメータ値セットを構成する各焦点位置における照射光量307、308、309、310の大きさが円の大きさで表されている。ここでは、図3(a)に示されているように、第1露光パラメータ値セットを構成する各焦点位置における照射光量307、308、309、310は、同一としている。
【0031】
S202では、第2露光パラメータ値セットに従い、焦点距離を複数の距離のそれぞれに変更して多重焦点露光を行い現像した場合の第2レジストプロファイルを得る。図3(b)には、基板114に対し、第2露光パラメータ値セットに従い、複数の焦点距離303、304、305、306のそれぞれに変更して多重焦点露光を行い現像した場合に得られる第2レジストプロファイル312の例が示されている。第2露光パラメータ値セットは、各焦点位置における照射光量313、314、315、316を含む。図3(b)には、第2露光パラメータ値セットを構成する各焦点位置における照射光量313、314、315、316の大きさが円の大きさで表されている。ここでは、図3(b)に示されているように、第2露光パラメータ値セットを構成する各焦点位置における照射光量313、314、315、316は徐々に大きくなるように設定されている。すなわち、
照射光量313<照射光量314<照射光量315<照射光量316
である。
【0032】
S203では、複数の焦点距離303、304、305、306のうちの1つ(例えば焦点距離303)を着目焦点距離として設定する。
【0033】
S204では、S201で得られた第1レジストプロファイルから、着目焦点距離における、現像後のフォトレジスト層に形成される開口の断面形状の評価値である第1評価値を求める(第1工程)。評価値は、例えば、開口の幅(線幅)を示すCD(Critical Dimension)値とする。
【0034】
S205では、S201で得られた第2レジストプロファイルから、着目焦点距離における、現像後のフォトレジスト層に形成される開口の断面形状の評価値である第2評価値(CD値)を求める(第2工程)。
【0035】
S206では、着目焦点距離における、第1露光パラメータ値(照射光量)と第2露光パラメータ値(照射光量)との差と、第1評価値と第2評価値との差とに基づいて、敏感度を求める(第3工程)。敏感度は、露光パラメータ値(照射光量)の単位変化(単位照射量変化)あたりの評価値変化量(CD値変化量)を示す。例えば、第1露光パラメータ値(照射光量)をE1、第2露光パラメータ値(照射光量)をE2、第1評価値(CD値)をCD1、第2評価値(CD値)をCD2とすると、敏感度Sensは、
Sens=(CD2-CD1)/(E2-E1)
で表される。
【0036】
S207では、次の着目すべき焦点距離があるかどうかを判定する。4つの焦点距離について全て敏感度を求めた場合には、処理はS208へ進み、そうでなければ処理はS203へ戻り、次の着目焦点距離について処理を繰り返す。こうして、複数の焦点距離のそれぞれに対して第1工程、第2工程、および第3工程を繰り返すことにより、距離別敏感度が得られる。距離別敏感度とは、複数の焦点距離303、304、305、306のそれぞれに対する敏感度Sensのセットであり、これが、露光パラメータ値セットと得られるレジストプロファイルとの関係を表している。
【0037】
S208では、距離別敏感度に基づく補間演算により、目標露光パラメータ値セットを決定する。
【0038】
上述の例においては、評価値として開口の幅(線幅)を示すCD値を用いたが、これに限定されない。評価値は、開口の断面形状を指標であればよい。例えば、評価値は、CD値、開口の断面形状の側壁角度、開口の上端幅と下端幅の比(T/B)、の少なくともいずれかを含みうる。
【0039】
また、上述の例においては、複数の焦点距離の数を4点としたが、これに限定されない。フォトレジスト層の厚み、レジストプロファイルの形状に要求される複雑さ等に応じて、複数の焦点距離の数を5点以上にしてもよいし、3点以下にしてもよい。
【0040】
(実施例2)
また、上述の実施例1においては、露光パラメータ値として照射光量を用いたが、これに限定されない。露光パラメータ値は、照射光量、開口数、有効光源分布、露光波長、波長幅、の少なくともいずれかであってもよい。
【0041】
図4(a)および(b)には、露光パラメータ値として開口数を用いた場合のレジストプロファイルの例が示されている。開口数は、投影光学系111の絞りユニット113を絞り駆動部121により駆動することで制御されうる。図4(a)には、基板114に対し、第1露光パラメータ値(開口数)セットに従い、複数の焦点距離403、404、405、406のそれぞれに変更して多重焦点露光を行い現像した場合に得られる第1レジストプロファイル402の例が示されている。焦点距離403は、露光前のフォトレジスト層の表面(開口の上端)の位置に対応し、焦点距離406は、フォトレジスト層と基板114との界面の位置に対応する。第1露光パラメータ値セットは、各焦点位置における開口数407、408、409、410を含む。図4(a)には、第1露光パラメータ値セットを構成する各焦点位置における開口数407、408、409、410が円の大きさで表されている。ここでは、図4(a)に示されているように、第1露光パラメータ値セットを構成する各焦点位置における開口数407、408、409、410は、同一としている。
【0042】
図4(b)には、基板114に対し、第2露光パラメータ値セットに従い、複数の焦点距離403、404、405、406のそれぞれに変更して多重焦点露光を行い現像した場合に得られる第2レジストプロファイル412の例が示されている。第2露光パラメータ値(開口数)セットは、各焦点位置における開口数413、414、415、416を含む。図4(b)には、第2露光パラメータ値セットを構成する各焦点位置における開口数413、414、415、416が円の大きさで表されている。ここでは、図4(b)に示されているように、第2露光パラメータ値セットを構成する各焦点位置における開口数413、414、415、416は徐々に大きくなるように設定されている。すなわち、
開口数413<開口数414<開口数415<開口数416
である。
【0043】
このように、実施例1において露光パラメータ値として用いた照射光量のかわりに、開口数を用いることができる。したがって、実施例1で示した目標レジストプロファイルを得るための目標露光パラメータ値セットを決定するための決定方法(図2)の説明については、照射光量を開口数に読み替えて適用することができる。
【0044】
<物品製造方法の実施形態>
本発明の実施形態に係る物品製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品製造方法は、基板に塗布された感光剤に上記の露光装置を用いて潜像パターンを形成する工程(基板を露光する工程)と、かかる工程で潜像パターンが形成された基板を現像する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0045】
(他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0046】
本明細書の開示は、少なくとも以下の技術的思想を含む。
(項目1)
原版のパターンを基板に転写する露光装置により、前記基板と投影光学系の焦点との間の距離を複数の距離のそれぞれに変更して前記基板の上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を行うための露光パラメータ値を決定する決定方法であって、
前記複数の距離のそれぞれの露光パラメータ値のセットである露光パラメータ値セットと、前記露光パラメータ値セットに従い前記多重焦点露光を行い現像した場合に得られる、前記フォトレジスト層の断面形状を示すレジストプロファイルとの関係を得る取得工程と、
前記得られた関係に基づいて、目標レジストプロファイルを得るための目標露光パラメータ値セットを決定する決定工程と、
を有することを特徴とする決定方法。
(項目2)
前記取得工程は、
第1露光パラメータ値セットに従い前記多重焦点露光を行い現像した場合の第1レジストプロファイルを得る工程と、
前記第1露光パラメータ値セットとは異なる第2露光パラメータ値セットに従い前記多重焦点露光を行い現像した場合の第2レジストプロファイルを得る工程と、
を含み、前記第1露光パラメータ値セットと前記第2露光パラメータ値セットとの差と、前記第1レジストプロファイルと前記第2レジストプロファイルとの差とに基づいて、前記関係を得る、ことを特徴とする項目1に記載の決定方法。
(項目3)
前記取得工程は、
前記第1レジストプロファイルから、現像後の前記フォトレジスト層に形成される開口の断面形状の評価値である第1評価値を求める第1工程と、
前記第2レジストプロファイルから、現像後の前記フォトレジスト層に形成される開口の断面形状の評価値である第2評価値を求める第2工程と、
前記第1露光パラメータ値セットにおける第1露光パラメータ値と前記第2露光パラメータ値セットにおける第2露光パラメータ値との差と、前記第1評価値と前記第2評価値との差とに基づいて、露光パラメータ値の単位変化あたりの評価値変化量を示す敏感度を求める第3工程と、
を含み、前記複数の距離のそれぞれに対して前記第1工程、前記第2工程、および前記第3工程を繰り返すことにより、距離別敏感度を得る、ことを特徴とする項目2に記載の決定方法。
(項目4)
前記決定工程は、前記距離別敏感度に基づく補間演算により、前記目標露光パラメータ値セットを決定する、ことを特徴とする項目3に記載の決定方法。
(項目5)
前記評価値は、前記開口の幅を示すCD値、前記断面形状の側壁角度、前記開口の上端幅と下端幅の比、の少なくともいずれかを含む、ことを特徴とする項目3または4に記載の決定方法。
(項目6)
前記距離の変更は、前記基板、前記原版、前記投影光学系のレンズ、の少なくともいずれかを移動することにより行われる、ことを特徴とする項目1から5のいずれか1項目に記載の決定方法。
(項目7)
前記距離の変更は、露光波長を変更することにより行われる、ことを特徴とする項目1から5のいずれか1項目に記載の決定方法。
(項目8)
前記露光パラメータ値は、照射光量、開口数、有効光源分布、露光波長、波長幅、の少なくともいずれかである、ことを特徴とする項目1から7のいずれか1項目に記載の決定方法。
(項目9)
コンピュータに、項目1から8のいずれか1項目に記載の決定方法の各工程を実行させるためのプログラム。
(項目10)
原版のパターンを基板に転写する露光装置であって、
前記原版のパターンを前記基板に投影する投影光学系と、
前記基板と前記投影光学系の焦点との間の距離を複数の距離のそれぞれに変更する変更部と、
前記変更部により前記距離を前記複数の距離のそれぞれに変更して前記基板の上のフォトレジスト層を露光する多重焦点露光を行う制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記複数の距離のそれぞれの露光パラメータ値のセットである露光パラメータ値セットと、前記露光パラメータ値セットに従い前記多重焦点露光を行い現像した場合に得られる、前記フォトレジスト層の断面形状を示すレジストプロファイルとの関係に基づいて、目標レジストプロファイルを得るための目標露光パラメータ値セットを決定する、
ことを特徴とする露光装置。
(項目11)
項目10に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
前記露光された基板を現像する工程と、
を有し、前記現像された基板から物品を製造する、ことを特徴とする物品製造方法。
【0047】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0048】
100:露光装置、109:原版、111:投影光学系、114:基板、115:基板ステージ、130:主制御部
図1
図2
図3
図4