(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100169
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】接続構造
(51)【国際特許分類】
H01M 50/296 20210101AFI20250626BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20250626BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20250626BHJP
H01M 50/579 20210101ALI20250626BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
H01M50/296
H01M50/284
H01M50/242
H01M50/579
H02H7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217345
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下東 忠明
【テーマコード(参考)】
5G053
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5G053AA02
5G053CA01
5G053EA05
5G053EC01
5H040AA07
5H040AA18
5H040AA27
5H040AA37
5H040AS04
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY03
5H040AY06
5H040CC17
5H040DD08
5H040DD09
5H040DD13
5H040DD14
5H040DD22
5H040NN01
5H040NN03
5H043AA04
5H043AA13
5H043CA21
5H043GA00
(57)【要約】
【課題】電子機器側で短絡が発生しても電池セルの発熱を回避することができる接続構造を提供すること。
【解決手段】電子機器と電池モジュールとがコネクタを介して電気的に接続された接続構造であって、電子機器側の第1コネクタは、高電圧回路が設けられた基盤と一体化され、電子機器は、基盤を収容する筐体の内部に、基盤に対して記第2コネクタの接続を解除する方向へと相対移動して第2コネクタの接続を解除する解除部材を有し、解除部材は、筐体から第2コネクタの接続を解除する方向の荷重が入力された際に、第2コネクタの接続を解除する方向へと移動して第1コネクタとの接続を解除する荷重を第2コネクタに付与する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧回路を有する電子機器と、複数の電池セルを有する電池モジュールとがコネクタを介して電気的に接続された接続構造であって、
前記コネクタは、
前記高電圧回路と電気的に接続された前記電子機器側の第1コネクタと、
前記第1コネクタに接続する前記電池モジュール側の第2コネクタと、を含み、
前記第1コネクタは、前記高電圧回路が設けられた基盤と一体化され、
前記電子機器は、前記基盤を収容する筐体の内部に、前記基盤に対して前記第2コネクタの接続を解除する方向へと相対移動して前記第2コネクタの接続を解除する解除部材を有し、
前記解除部材は、前記筐体から前記解除する方向の荷重が入力された際に、前記第2コネクタの接続を解除する方向へと移動して前記第1コネクタとの接続を解除する荷重を前記第2コネクタに付与する
ことを特徴とする接続構造。
【請求項2】
前記第2コネクタは、抜け防止のために前記第1コネクタに係止する爪を有し、
前記第1コネクタは、前記爪が係止する被係止部を有し、
前記第2コネクタの接続を解除する方向の荷重が前記解除部材に入力された際、前記解除部材は前記接続を解除する方向に移動し、前記爪と前記被係止部との係止状態を解除させる方向に前記爪を押す
ことを特徴とする請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
前記解除部材は、
前記基盤と水平方向に対向し、前記基盤に対して前記第1コネクタとは反対側に配置された平板部と、
前記平板部から水平方向で前記第1コネクタ側に突出し、前記爪を前記被係止部から外すための解除ピンと、を有し、
前記解除部材が前記接続を解除する方向に移動していない状態では、前記基盤と前記平板部との間の水平方向距離が、前記解除ピンと前記爪との間の水平方向距離よりも長い
ことを特徴とする請求項2に記載の接続構造。
【請求項4】
前記被係止部は、前記爪よりも前記接続を解除する方向側に位置する部位である
ことを特徴とする請求項3に記載の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池モジュールを搭載した電動車両において、フロアパネルにより形成された空間内で電池モジュールと電子機器と電気的に接続された接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、電動車両が衝突するなどしてフロアパネルが変形し、電子機器を収容する機器ボックスが圧壊すると、高電圧回路を含む電子機器が潰れて短絡してしまう。電子機器が短絡すると、導電部材を介して電子機器から電池セルに大きな電流が流れ、電池セルが発熱する虞がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、電子機器側で短絡が発生しても電池セルの発熱を回避することができる接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、高電圧回路を有する電子機器と、複数の電池セルを有する電池モジュールとがコネクタを介して電気的に接続された接続構造であって、前記コネクタは、前記高電圧回路と電気的に接続された前記電子機器側の第1コネクタと、前記第1コネクタに接続する前記電池モジュール側の第2コネクタと、を含み、前記第1コネクタは、前記高電圧回路が設けられた基盤と一体化され、前記電子機器は、前記基盤を収容する筐体の内部に、前記基盤に対して前記第2コネクタの接続を解除する方向へと相対移動して前記第2コネクタの接続を解除する解除部材を有し、前記解除部材は、前記筐体から前記解除する方向の荷重が入力された際に、前記第2コネクタの接続を解除する方向へと移動して前記第1コネクタとの接続を解除する荷重を前記第2コネクタに付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、筐体から解除部材に入力される荷重によって物理的に第1コネクタと第2コネクタとの接続を解除させることができる。これにより、電子機器側で短絡が発生しても電池セルの発熱を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態における接続構造を模式的に示す図である。
【
図2】電池ECUの構造を説明するための図である。
【
図3】電池ECU側の雄コネクタに電池モジュール側の雌コネクタが接続した状態を説明するための斜視図である。
【
図4】電池ECU側の雄コネクタに電池モジュール側の雌コネクタが接続した状態を説明するための上面図である。
【
図5】電池ECU側の雄コネクタに電池モジュール側の雌コネクタが接続した状態を説明するための側面図である。
【
図8】圧壊による荷重が解除部材に作用する場合の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態における接続構造について具体的に説明する。なお、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0010】
図1は、実施形態における接続構造を模式的に示す図である。接続構造1は、電池モジュール2と電池ECU3とが電気的に接続された構造である。接続構造1は電動車両に適用される。電動車両は走行用のモータを備える車両であり、ハイブリッド車(HEV)やプラグイン式ハイブリッド車(PHEV)や電気自動車(BEV)などである。電池モジュール2と電池ECU3とは電池パックの収容ケース内に収容された状態で電動車両に搭載されている。電池パックの収容ケース内では、電池モジュール2がモジュールケース4に収容されているとともに、電池ECU3が機器ボックス5に収容されている。モジュールケース4と機器ボックス5とは電池パックの収容ケースに固定されている。
【0011】
電池モジュール2は、複数の電池セルにより構成された組電池である。電池モジュール2はモジュールケース4の内部に収容されている。電池モジュール2は雌コネクタ6を介して電池ECU3と電気的に接続されている。雌コネクタ6と電池モジュール2とはFPC7を介して電気的に接続されている。
【0012】
電池ECU3は、電池モジュール2を制御する電子制御装置である。電池ECU3はプロセッサとメモリとを備える。電池ECU3は記憶部に格納されたプログラムをメモリの作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部などを制御することにより、所定の目的に合致した機能を実現する。電動車両に搭載された各種センサからの信号が電池ECU3に入力される。電池ECU3は各種センサから入力された信号に基づいて電池制御を実行する。電池ECU3は電池制御に応じて各種の指令信号を電池モジュール2に出力する。その際、電池ECU3から雌コネクタ6を介して電池モジュール2に指令信号が伝達される。
【0013】
図2に示すように、電池ECU3は、高電圧回路11と、基盤12と、筐体13と、雄コネクタ14とを備える。
【0014】
高電圧回路11は、基盤12上に設けられている。基盤12は、ECU基盤である。筐体13は、ECU筐体である。雄コネクタ14は、基盤12に取り付けられている。雄コネクタ14は基盤12と一体化されている。雄コネクタ14は高電圧回路11と電気的に接続されたピンを有する。電池ECU3では筐体13の内部に高電圧回路11と基盤12とが収容されている。電池ECU3は高電圧回路11を有する電子機器である。雄コネクタ14は筐体13の外部から雌コネクタ6が接続することが可能な構造を有する。筐体13の外部から雌コネクタ6が雄コネクタ14に嵌合し、雌コネクタ6の端子と雄コネクタ14のピンとが電気的に接続することにより、電池ECU3と電池モジュール2とが雌コネクタ6を介して電気的に接続される。接続構造1では、雄コネクタ14が第1コネクタであり、雌コネクタ6が第2コネクタである。
【0015】
このように構成された電池モジュール2と電池ECU3とを含む電池パックでは、その構造上、機器ボックス5が圧壊すると、高電圧回路11を有する電池ECU3が潰れて短絡する虞がある。その際、FPC7を介して電池モジュール2に大きな電流が流れ、電池セルが発熱する。つまり、電池ECU3が圧壊すると、内蔵されている高電圧回路11が短絡し、大電流が電池セルに流れてしまい発熱に至る。この発熱を回避するために、通常はヒューズによる回路遮断を行うが、電池パックの体格や搭載性の制限により、定格に合致するヒューズの使用が困難である。そこで、接続構造1では、圧壊時の荷重を利用して、物理的に雌コネクタ6を外すことにより短絡回路を遮断するように構成されている。
図2に示すように、接続構造1は電池ECU3の筐体13内部に、雌コネクタ6の接続を解除するための解除部材30を備える。
【0016】
解除部材30は、雌コネクタ6と雄コネクタ14との接続状態を解除するための部材である。解除部材30は樹脂等の絶縁体により構成されている。例えば解除部材30は樹脂により一体成形されている。解除部材30は、雌コネクタ6と雄コネクタ14との接続を解除するために雌コネクタ6を解除方向に押圧する押し出し機構として機能する。
【0017】
図3に示すように、解除部材30は、平板部31と、解除ピン32と、押圧部33とを有する。
【0018】
平板部31は、解除部材30の本体部であり、基盤12と水平方向に対向する平面形状の板部である。平板部31は解除部材30を解除方向に移動させる荷重を受けるための部位である。平板部31は基盤12に対して雄コネクタ14とは反対側に配置されている。平板部31は基盤12から水平方向に離れた位置に配置されている。平板部31は、水平方向において雄コネクタ14とは反対側を向く平面31aを有する。平面31aは、筐体13が圧壊した際に筐体13から解除方向の荷重が入力される面である。
【0019】
解除ピン32は、平板部31から雌コネクタ6側に突出するピン形状の凸部である。解除ピン32は雌コネクタ6の爪61を解除するための部位である。雌コネクタ6は、雄コネクタ14から解除方向に脱落しないように雄コネクタ14の本体に係止する爪61を有する。爪61は、雌コネクタ6の抜けを防止するための係止爪である。解除ピン32は爪61を外す位置に設けられている。
【0020】
解除ピン32は、平板部31から基盤12を貫通して雄コネクタ14の案内部14aの内部に配置されている。基盤12は、解除ピン32が挿通される貫通孔12aと、押圧部33が挿通される貫通孔12bとを有する。雄コネクタ14は、解除ピン32が挿入される案内部14aを有する。貫通孔12aは解除ピン32に対応する位置に設けられる。案内部14aは貫通孔12aに対応する位置に設けられ、貫通孔12aと連通している。案内部14aは水平方向に沿って直線状に延在する切り欠き部により形成されている。
図3および
図4に示すように、解除ピン32は貫通孔12aに挿通され、案内部14aの内部に配置される。案内部14aのうち雌コネクタ6の本体側に爪61が設けられている。雄コネクタ14は、爪61が係止する立壁部14bを有する。立壁部14bは雄コネクタ14本体の一部であり、水平方向において案内部14aと雌コネクタ6との間に位置する部位である。立壁部14bは被係止部である。爪61が立壁部14bに係止することにより、雌コネクタ6が雄コネクタ14に嵌合した状態が維持される。
【0021】
押圧部33は、平板部31から雌コネクタ6側に突出する棒形状の凸部である。押圧部33は雌コネクタ6を解除方向に押し出すための部位である。押圧部33は、解除ピン32と同一方向に突出しており、解除ピン32を挟むように雄コネクタ14の両側に二つ設けられている。
図3および
図4に示すように、押圧部33は、雌コネクタ6の受け部62に対応する位置に設けられている。水平方向において押圧部33と受け部62とが対向している。
図4に示すように、爪61が雄コネクタ14に係止している状態では、押圧部33と受け部62とは接触していない。筐体13の圧壊により解除部材30が解除方向に移動すると、押圧部33は雌コネクタ6の受け部62に当接して受け部62を解除方向に押圧する。
図4および
図5に示すように、受け部62は雌コネクタ6の本体両側に設けられている。
図4~
図6に示すように、押圧部33は基盤12の貫通孔12bを挿通して受け部62の近くまで解除方向に沿って直線状に延在している。
【0022】
図4,
図6,
図7に示すように、解除部材30が雌コネクタ6の接続を解除する方向に移動していない状態では、基盤12と平板部31との間の水平方向距離は、解除ピン32と爪61との間の水平方向距離よりも長く、かつ押圧部33と受け部62との間の水平方向距離よりも長い。これにより、解除方向において平板部31が基盤12に当接する前に、解除ピン32が爪61に当接するとともに、押圧部33が受け部62に当接することが可能である。また、この状態では、押圧部33と受け部62との間の水平方向距離が、解除ピン32と爪61との間の水平方向距離よりも長い。これにより、解除方向において押圧部33が受け部62に当接する前に、解除ピン32が爪61に当接することが可能である。さらに、この状態では、解除ピン32と立壁部14bとの間の水平方向距離が、押圧部33と受け部62との間の水平方向距離よりも長い。これにより、解除方向において解除ピン32が立壁部14bに当接する前に、押圧部33が受け部62に当接することが可能である。
【0023】
機器ボックス5が圧壊した場合、筐体13が押し潰されていくと、
図8に示すように、圧壊される荷重が平板部31の平面31aに入力され、平板部31が圧壊の荷重で解除方向に押される。平板部31が解除方向に押されることにより解除部材30が解除方向に移動し、解除ピン32の先端部32aが雌コネクタ6の爪61を押し下げて外す。つまり、解除部材30は解除方向に移動し、爪61と立壁部14bとの係止状態を解除させる方向に爪61を押す。爪61が外れるまで押圧部33は雌コネクタ6に接触しないように隙間が設定されている。爪61が外れた状態で解除部材30がさらに解除方向に移動すると、押圧部33が受け部62に当接し、押圧部33が雌コネクタ6の本体を解除方向に押す。その結果、雌コネクタ6が雄コネクタ14のピンから外れる位置まで雌コネクタ6を解除方向に押し出すことができ、物理的に雌コネクタ6を高電圧回路11から切り離すことができる。
【0024】
機器ボックス5の圧壊に伴い筐体13が圧壊すると、筐体13が解除部材30に当接する。その際、筐体13から解除部材30に解除方向の荷重が入力されると、解除部材30は雌コネクタ6の接続を解除する方向へと移動して雄コネクタ14との接続を解除する荷重を雌コネクタ6に付与する。このように、解除部材30は基盤12に対して雌コネクタ6の接続を解除する方向へと相対移動して雌コネクタ6の接続を解除する。
【0025】
以上説明した通り、実施形態によれば、電池ECU3が圧壊する際の荷重を利用して、高電圧回路11から物理的に電池セルを切り離すことができる。これにより、電池ECU3が押し潰されて筐体13と基盤12とが接触し、あるいは基盤12同士が接触しても、高電圧回路11と電池セルとの短絡回路とならないため、電池セルの発熱を回避することができる。接続構造1によれば、ヒューズで保護することができない短絡回路から電池セルの発熱を防止することが可能になり、安全性を確保できる構造となる。
【0026】
なお、各図に示す矢印UPRは電動車両の上方向を表す。同様に、矢印RHは電動車両の右方向を表し、矢印FRは電動車両の前方向を表す。矢印UPRの反対方向は電動車両の下方向である。矢印RHの反対方向は電動車両の左方向を表す。矢印FRの反対方向は電動車両の後方向を表す。雌コネクタ6の接続が解除される方向、すなわち解除方向は、矢印RHの反対方向(電動車両の左方向)である。爪61と立壁部14bとの係止状態を解除させる方向は、矢印UPRの反対方向(電動車両の下方向)である。水平方向は、電動車両の左右方向(電動車両の車幅方向)である。
【0027】
また、雌コネクタ6と電池モジュール2との間を電気的に接続する部材はFPC7に限定されず、バスバや、可撓性を有する導電部材などであってよい。
【0028】
また、雌コネクタ6の接続を解除する方向は矢印RHの反対方向(電動車両の左方向)に限定されず、任意の水平方向であればよい。例えば、雌コネクタ6の接続を解除する方向は矢印RH(電動車両の右方向)であってもよく、矢印FR(電動車両の前方向)であってもよく、矢印FRの反対方向(電動車両の後方向)であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 接続構造
2 電池モジュール
3 電池ECU
4 モジュールケース
5 機器ボックス
6 雌コネクタ
7 FPC
11 高電圧回路
12 基盤
12a,12b 貫通孔
13 筐体
14 雄コネクタ
14a 案内部
14b 立壁部
30 解除部材
31 平板部
31a 平面
32 解除ピン
32a 先端部
33 押圧部
61 爪
62 受け部