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2025-100326感光性樹脂組成物、硬化物、積層体、硬化物の製造方法、積層体の製造方法、半導体デバイスの製造方法、半導体デバイス、化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100326
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化物、積層体、硬化物の製造方法、積層体の製造方法、半導体デバイスの製造方法、半導体デバイス、化合物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20250626BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20250626BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20250626BHJP
   C08F 283/04 20060101ALI20250626BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20250626BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20250626BHJP
   C08K 5/159 20060101ALI20250626BHJP
   C08K 5/19 20060101ALI20250626BHJP
   C08L 51/08 20060101ALI20250626BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20250626BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20250626BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20250626BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20250626BHJP
   C08F 4/00 20060101ALI20250626BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20250626BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20250626BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/037 501
G03F7/027 514
C08F283/04
C08K5/18
C08K5/06
C08K5/159
C08K5/19
C08L51/08
C08L79/08
C08K5/103
C08G73/10
C08F2/50
C08F4/00
C08F20/00 510
C08F290/14
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024152334
(22)【出願日】2024-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2023215995
(32)【優先日】2023-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】尾田 和也
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J002
4J011
4J015
4J026
4J043
4J127
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA05
2H197CA06
2H197CE01
2H197HA03
2H225AC21
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(57)【要約】
【課題】
本発明は解像性に優れた硬化物が得られる感光性樹脂組成物、上記感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物、上記硬化物を含む積層体、上記硬化物の製造方法、上記積層体の製造方法、上記硬化物の製造方法を含む半導体デバイスの製造方法、及び、上記硬化物を含む半導体デバイスを提供すること、また、新規な化合物を提供すること。
【解決手段】
ポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群より選択される樹脂と、光重合開始剤と、下記式(A-1)又は式(A-2)で表わされる化合物Aとを含み、下記条件1及び条件2の少なくとも一方を満たす感光性樹脂組成物、上記組成物を硬化してなる硬化物及びその製造方法、硬化物を含む積層体およびその製造方法、並びに、半導体デバイス及びその製造方法、また、化合物;
条件1:上記樹脂が重合性基を有する;
条件2:感光性樹脂組成物が、重合性化合物を更に含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群より選択される樹脂と、
光重合開始剤と、
下記式(A-1)又は式(A-2)で表わされる化合物Aとを含み、
下記条件1及び条件2の少なくとも一方を満たす
感光性樹脂組成物。
条件1:前記樹脂が重合性基を有する。
条件2:感光性樹脂組成物が、重合性化合物を更に含む。
【化1】
式(A-1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R11及びR12のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基を含み、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n1は2以上の整数を表し、n1が2である場合、Xは単結合又は2価の連結基を表し、n1が3以上である場合、Xはn1価の連結基を表す。
式(A-2)中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R21及びR22のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基を含み、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n2は2以上の整数を表す。
【化2】
式(R-1)中、RR1及びRR2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、m個のRR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、m個のRR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、mは2以上の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【請求項2】
前記化合物Aが前記式(A-1)で表される化合物であり、前記式(A-1)中のR11及びR12はいずれも式(R-1)で表される基であり、式(R-1)中のmが2である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物Aが下記式(AA-1)、式(AA-2)、又は式(AA-3)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化3】
【請求項4】
下記式(X-1)、式(X-2)、又は式(X-3)で表される化合物Xを含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】
【請求項5】
化合物Xの含有量が化合物Aの含有量を100質量部としたときに、0.001~10質量部である、請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記化合物Aとして、式(AA-1)で表される化合物を含み、かつ、下記式(Y-1-1)で表される化合物を含む、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【化5】
【請求項7】
前記樹脂が、下記式(1-1)で表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化6】
式(1-1)中、Xは4価の有機基であり、Yは2価の有機基であり、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子または下記式(III)で表される基である。
【化7】
式(III)において、R200は、水素原子、メチル基、エチル基又はメチロール基を表し、R201は、炭素数2~12のアルキレン基、-CHCH(OH)CH-、シクロアルキレン基又はポリアルキレンオキシ基を表し、*は酸素原子との結合部位を表す。
【請求項8】
前記条件2を満たす、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記重合性化合物が、下記式(M-1)で表される化合物を含む、請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【化8】
式(M-1)中、pは2以上の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【請求項10】
前記光重合開始剤が、オキシム化合物である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記光重合開始剤が、下記式(P-1)で表される化合物を含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化9】
【請求項12】
下記式(B-1)で表される化合物Bを更に含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化10】
式(B-1)中、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、RB1及びRB2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、RB1及びRB2のうち少なくとも一方は上述の式(R-1)で表される基を含む。
【請求項13】
前記化合物Aと化合物Bの合計含有量が、前記光重合開始剤の合計含有量を100質量部としたときに30~200質量部である、請求項12に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
前記樹脂が、前記式(1-1)で表される繰り返し単位であって、式(1-1)中のXが下記式(a)で表される繰返し単位A、及び、前記式(1-1)で表される繰り返し単位であって、式(1-1)中のXが下記式(b)で表される繰返し単位Bを含む、請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【化11】
式(a)又は式(b)中、*は式(1-1)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【請求項15】
前記繰返し単位A及び前記繰返し単位Bの合計モル量に対する、前記繰返し単位Aの含有モル量が、50~80モル%である、請求項14に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項16】
前記樹脂のイミド化率が10%以上30%未満である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項17】
前記樹脂の平均重量分子量が、8,000以上40,000以下である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項18】
溶剤を更に含み、前記溶剤がγ-ブチロラクトン及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される1つ以上の溶剤と乳酸エチルとを含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項19】
溶剤がジメチルスルホキシドを更に含む、請求項18に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項20】
プリン誘導体を、前記樹脂100質量部を基準として0.01~10質量部更に含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項21】
再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項22】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項23】
請求項22に記載の硬化物からなる層を2層以上含み、前記硬化物からなる層同士のいずれかの間に金属層を含む積層体。
【請求項24】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含む、硬化物の製造方法。
【請求項25】
前記膜を選択的に露光する露光工程及び前記膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含む、請求項24に記載の硬化物の製造方法。
【請求項26】
前記膜を50~450℃で加熱する加熱工程を含む、請求項25に記載の硬化物の製造方法。
【請求項27】
請求項24に記載の硬化物の製造方法を含む、積層体の製造方法。
【請求項28】
請求項24に記載の硬化物の製造方法を含む、半導体デバイスの製造方法。
【請求項29】
請求項22に記載の硬化物を含む、半導体デバイス。
【請求項30】
下記式(A-1)又は式(A-2)で表わされる化合物。
【化12】
式(A-1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R11及びR12のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基であり、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n1は2であり、Xは単結合又は2価の連結基を表す。
式(A-2)中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R21及びR22のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基であり、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n2は2である。
【化13】
式(R-1)中、RR1及びRR2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、m個のRR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、m個のRR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、mは2以上の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、硬化物、積層体、硬化物の製造方法、積層体の製造方法、半導体デバイスの製造方法、半導体デバイス、及び、化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代では様々な分野において、樹脂を含む感光性樹脂組成物から製造された樹脂材料を活用することが行われている。
例えば、ポリイミド等の樹脂は、耐熱性及び絶縁性等に優れるため、様々な用途に適用されている。上記用途としては、特に限定されないが、実装用の半導体デバイスを例に挙げると、絶縁膜や封止材の材料、又は、保護膜としての利用が挙げられる。また、フレキシブル基板のベースフィルムやカバーレイなどとしても用いられている。
【0003】
例えば上述した用途において、ポリイミド等の樹脂は、ポリイミド前駆体等の樹脂を含む感光性樹脂組成物の形態で用いられる。
このような感光性樹脂組成物を、例えば塗布等により基材に適用して感光膜を形成し、その後、必要に応じて露光、現像、加熱等を行うことにより、硬化物を基材上に形成することができる。
感光性樹脂組成物は、公知の塗布方法等により適用可能であるため、例えば、適用される樹脂組成物の適用時の形状、大きさ、適用位置等の設計の自由度が高いなど、製造上の適応性に優れるといえる。ポリイミドが有する高い性能に加え、このような製造上の適応性に優れる観点から、上述の感光性樹脂組成物の産業上の応用展開がますます期待されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、(イ)特定構造の繰返し単位を有する重合体、(ロ)特定構造のオキシム化合物、および、(ハ)特定構造のクマリン化合物を含有して成る新しい感光性組成物が記載されている。
特許文献2には、以下の成分:(A)特定構造のポリイミド前駆体;(B)イミダゾールシラン化合物;及び(C)光重合開始剤;を含み、上記(B)イミダゾールシラン化合物は、イミダゾール環に結合した(トリヒドロキシシリルプロピル)アミノメチル基、(メトキシジヒドロキシシリルプロピル)アミノメチル基、(ヒドロキジメトキシシシリルプロピル)アミノメチル基、(トリメトキシシシリルプロピル)アミノメチル基、トリヒドロキシシリルプロピル基、メトキシジヒドロキシシリルプロピル基、ヒドロキジメトキシシシリルプロピル基、トリメトキシシシリルプロピル基、(トリヒドロキシシリルプロピル)ウレイドプロピル基、(メトキシジヒドロキシシリルプロピル)ウレイドプロピル基、(ヒドロキジメトキシシシリルプロピル)ウレイドプロピル基、(トリメトキシシシリルプロピル)ウレイドプロピル基、および(トリメトキシシシリルプロピル)ウレイドエチル基からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む置換基を有している、感光性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01-048857号公報
【特許文献2】特開2023-023169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、チップ間配線の信号高速化がますます重要になってきており、チップ間を接続する再配線の微細化が進行している。そのため、再配線形成、絶縁等を目的としたパターンを形成する用途で用いられる感光性樹脂組成物の硬化物においても、さらなる高解像化の要求が高まっている。
【0007】
本発明は解像性に優れた硬化物が得られる感光性樹脂組成物、上記感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物、上記硬化物を含む積層体、上記硬化物の製造方法、上記積層体の製造方法、上記硬化物の製造方法を含む半導体デバイスの製造方法、及び、上記硬化物を含む半導体デバイスを提供することを目的とする。
また、本発明は新規な化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の代表的な実施態様の例を以下に示す。
<1> ポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群より選択される樹脂と、
光重合開始剤と、
下記式(A-1)又は式(A-2)で表わされる化合物Aとを含み、
下記条件1及び条件2の少なくとも一方を満たす
感光性樹脂組成物。
条件1:上記樹脂が重合性基を有する。
条件2:感光性樹脂組成物が、重合性化合物を更に含む。
【化1】
式(A-1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R11及びR12のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基を含み、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n1は2以上の整数を表し、n1が2である場合、Xは単結合又は2価の連結基を表し、n1が3以上である場合、Xはn1価の連結基を表す。
式(A-2)中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R21及びR22のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基を含み、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n2は2以上の整数を表す。
【化2】
式(R-1)中、RR1及びRR2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、m個のRR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、m個のRR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、mは2以上の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
<2> 上記化合物Aが上記式(A-1)で表される化合物であり、上記式(A-1)中のR11及びR12はいずれも式(R-1)で表される基であり、式(R-1)中のmが2である、<1>に記載の感光性樹脂組成物。
<3> 上記化合物Aが下記式(AA-1)、式(AA-2)、又は式(AA-3)で表される化合物である、<1>又は<2>に記載の感光性樹脂組成物。
【化3】
<4> 下記式(X-1)、式(X-2)、又は式(X-3)で表される化合物Xを含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
【化4】
<5> 化合物Xの含有量が化合物Aの含有量を100質量部としたときに、0.001~10質量部である、<4>に記載の感光性樹脂組成物。
<6> 上記化合物Aとして、式(AA-1)で表される化合物を含み、かつ、下記式(Y-1)で表される化合物を含む、<3>に記載の感光性樹脂組成物。
【化5】
<7> 上記樹脂が、下記式(1-1)で表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
【化6】
式(1-1)中、Xは4価の有機基であり、Yは2価の有機基であり、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子または下記式(III)で表される基である。
【化7】
式(III)において、R200は、水素原子、メチル基、エチル基又はメチロール基を表し、R201は、炭素数2~12のアルキレン基、-CHCH(OH)CH-、シクロアルキレン基又はポリアルキレンオキシ基を表し、*は酸素原子との結合部位を表す。
<8> 上記条件2を満たす、<1>~<7>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<9> 上記重合性化合物が、下記式(M-1)で表される化合物を含む、<8>に記載の感光性樹脂組成物。
【化8】
式(M-1)中、pは2以上の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
<10> 上記光重合開始剤が、オキシム化合物である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<11> 上記光重合開始剤が、下記式(P-1)で表される化合物を含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
【化9】
<12> 下記式(B-1)で表される化合物Bを更に含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
【化10】
式(B-1)中、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、RB1及びRB2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、RB1及びRB2のうち少なくとも一方は上述の式(R-1)で表される基を含む。
<13> 上記化合物Aと化合物Bの合計含有量が、上記光重合開始剤の合計含有量を100質量部としたときに30~200質量部である、<12>に記載の感光性樹脂組成物。
<14> 上記樹脂が、上記式(1-1)で表される繰り返し単位であって、式(1-1)中のXが下記式(a)で表される繰返し単位A、及び、上記式(1-1)で表される繰り返し単位であって、式(1-1)中のXが下記式(b)で表される繰返し単位Bを含む、<7>に記載の感光性樹脂組成物。
【化11】
式(a)又は式(b)中、*は式(1-1)中のカルボニル基との結合部位を表す。
<15> 上記繰返し単位A及び上記繰返し単位Bの合計モル量に対する、上記繰返し単位Aの含有モル量が、50~80モル%である、<14>に記載の感光性樹脂組成物。
<16> 上記樹脂のイミド化率が10%以上30%未満である、<1>~<15>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<17> 上記樹脂の平均重量分子量が、8,000以上40,000以下である、<1>~<16>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<18> 溶剤を更に含み、上記溶剤がγ-ブチロラクトン及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される1つ以上の溶剤と乳酸エチルとを含む、<1>~<17>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<19> 溶剤がジメチルスルホキシドを更に含む、<18>に記載の感光性樹脂組成物。
<20> プリン誘導体を、上記樹脂100質量部を基準として0.01~10質量部更に含む、<1>~<19>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<21> 再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、<1>~<20>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<22> <1>~<21>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
<23> <22>に記載の硬化物からなる層を2層以上含み、上記硬化物からなる層同士のいずれかの間に金属層を含む積層体。
<24> <1>~<21>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含む、硬化物の製造方法。
<25> 上記膜を選択的に露光する露光工程及び上記膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含む、<24>に記載の硬化物の製造方法。
<26> 上記膜を50~450℃で加熱する加熱工程を含む、<24>又は<25>に記載の硬化物の製造方法。
<27> <24>~<26>のいずれか1つに記載の硬化物の製造方法を含む、積層体の製造方法。
<28> <24>~<26>のいずれか1つに記載の硬化物の製造方法を含む、半導体デバイスの製造方法。
<29> <22>に記載の硬化物を含む、半導体デバイス。
<30> 下記式(A-1)又は式(A-2)で表わされる化合物。
【化12】
式(A-1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R11及びR12のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基であり、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n1は2であり、Xは単結合又は2価の連結基を表す。
式(A-2)中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R21及びR22のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基であり、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n2は2である。
【化13】
式(R-1)中、RR1及びRR2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、m個のRR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、m個のRR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、mは2以上の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、解像性に優れた硬化物が得られる感光性樹脂組成物、上記感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物、上記硬化物を含む積層体、上記硬化物の製造方法、上記積層体の製造方法、上記硬化物の製造方法を含む半導体デバイスの製造方法、及び、上記硬化物を含む半導体デバイスが提供される。
また、本発明によれば、新規な化合物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の主要な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、明示した実施形態に限られるものではない。
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成できる限りにおいて、他の工程と明確に区別できない工程も含む意味である。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有しない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた露光も含む。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線又は放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方、又は、いずれかを意味する。
本明細書において、構造式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また本明細書において、固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率である。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法を用いて測定した値であり、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000、及び、TSKgel Super HZ2000(以上、東ソー(株)製)を直列に連結して用いることによって求めることができる。それらの分子量は特に述べない限り、溶離液としてNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を用いて測定したものとする。ただし、溶解性が低い場合など、溶離液としてNMPが適していない場合にはTHF(テトラヒドロフラン)を用いることもできる。また、GPC測定における検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
本明細書において、積層体を構成する各層の位置関係について、「上」又は「下」と記載したときには、注目している複数の層のうち基準となる層の上側又は下側に他の層があればよい。すなわち、基準となる層と上記他の層の間に、更に第3の層や要素が介在していてもよく、基準となる層と上記他の層は接している必要はない。特に断らない限り、基材に対し層が積み重なっていく方向を「上」と称し、又は、樹脂組成物層がある場合には、基材から樹脂組成物層へ向かう方向を「上」と称し、その反対方向を「下」と称する。なお、このような上下方向の設定は、本明細書中における便宜のためであり、実際の態様においては、本明細書における「上」方向は、鉛直上向きと異なることもありうる。
本明細書において、特段の記載がない限り、組成物は、組成物に含まれる各成分として、その成分に該当する2種以上の化合物を含んでもよい。また、特段の記載がない限り、組成物における各成分の含有量とは、その成分に該当する全ての化合物の合計含有量を意味する。
本明細書において、特に述べない限り、温度は23℃、気圧は101,325Pa(1気圧)、相対湿度は50%RHである。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0011】
(感光性樹脂組成物)
本発明の感光性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、ポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群より選択される樹脂と、光重合開始剤と、式(A-1)又は式(A-2)で表わされる化合物Aとを含み、下記条件1及び条件2の少なくとも一方を満たす。
条件1:上記樹脂が重合性基を有する。
条件2:感光性樹脂組成物が、重合性化合物を更に含む。
また、本明細書において「ポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群より選択される樹脂」を、「特定樹脂」ともいう。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、露光及び現像に供される感光膜の形成に用いられることが好ましく、露光及び有機溶剤を含む現像液を用いた現像に供される膜の形成に用いられることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、例えば、半導体デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜、ストレスバッファ膜等の形成に用いることができ、再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、ネガ型感光性樹脂組成物であることが好ましい。
本発明において、ネガ型現像とは、露光及び現像において、現像により非露光部が除去される現像をいい、ポジ型現像とは、現像により露光部が除去される現像をいう。
上記露光の方法、上記現像液、及び、上記現像の方法としては、例えば、後述する硬化物の製造方法の説明における露光工程において説明された露光方法、現像工程において説明された現像液及び現像方法が使用される。
【0013】
本発明の樹脂組成物によれば、解像性に優れた硬化物が得られる。
従来から、ポリイミド又はその前駆体を含む感光性樹脂組成物を露光、現像してパターニングを行う際に、露光感度の向上等を目的として、N-フェニルジエタノールアミン等の増感剤が使用されている。
ここで、本発明者らは、感光性樹脂組成物に式(A-1)又は式(A-2)で表される化合物Aを用いることにより、解像性がさらに向上することを見出した。
上記効果が得られる理由は定かではないが、以下のように推測される。
式(A-1)又は式(A-2)で表される化合物Aは、式(R-1)で表される構造を有するアミノ基であって、芳香環に連結基を介さずに単結合で結合するアミノ基をn個含む。このような構造とすることにより、化合物Aの分子量が大きくなり、露光前の感光膜の形成時等に化合物Aの揮発が抑制され、感光膜中に残りやすいため、増感作用が効率的に発生すると考えられる。
さらに、上記n個のアミノ基がラジカル源となり、硬化物中で上記樹脂又は重合性化合物に存在する重合性基と反応して、これらの化合物間に化合物Aによる架橋が形成されることも解像性の向上に寄与すると考えられる。
また、組成物から得られる硬化物においては、硬化物に残存する上記化合物Aが酸化防止作用を発揮するため、硬化物が長期間に渡って劣化しにくく、信頼性も向上すると考えられる。
【0014】
ここで、特許文献1及び2には、化合物Aを含む樹脂組成物については記載されていない。
【0015】
以下、本発明の樹脂組成物の詳細について説明する。
【0016】
<条件1、条件2>
本発明の樹脂組成物は、上述の条件1及び条件2の少なくとも一方を満たし、条件2を少なくとも満たすことが好ましい。
また、条件1及び条件2を満たすことも、本発明の好ましい態様の一つである。
条件1における重合性基の好ましい態様、及び、条件2における重合性化合物の好ましい態様については後述する。
【0017】
<特定樹脂>
本発明の樹脂組成物は、ポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群より選択される樹脂(特定樹脂)を含む。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、解像性等の観点からはポリイミド前駆体を含むことが好ましい。
また、硬化時の収縮が抑制される等の観点からはポリイミドを含むことが好ましい。
本発明の樹脂組成物がポリイミド前駆体を含む場合、後述の式(1-1)で表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体であることが好ましい。
本明細書において、ポリイミドとは分子鎖内にイミド構造を含む繰返し単位を有する樹脂をいい、分子鎖内にイミド環構造を含む繰返し単位を有する樹脂であることが好ましい。
また、ポリイミドが直鎖状の樹脂である場合、ポリイミドは主鎖内にイミド構造を含む繰返し単位を有する樹脂であることが好ましく、主鎖内にイミド環構造を含む繰返し単位を有する樹脂であることがより好ましい。
本明細書において、「主鎖」とは、樹脂分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、「側鎖」とはそれ以外の結合鎖をいう。
本明細書において、イミド構造とは、*-C(=O)N(-*)C(=O)-*で表される構造をいい、*は他の構造との結合部位を表し、炭素原子との結合部位であることが好ましく、第四級炭素原子との結合部位であることがより好ましい。
本明細書において、イミド環構造とは、上記イミド構造における炭素原子2つと窒素原子の全てを環員として含む環構造をいう。イミド環構造は、5員環であることが好ましい。
ポリイミドは、イミド構造に加えて、分子鎖内にアミド構造を有する、いわゆるポリアミドイミドであってもよい。本明細書において、アミド結合とは*-C(=O)N(-#)-*で表される構造をいい、*は他の構造との結合部位を表し、炭素原子との結合部位であることが好ましく、第四級炭素原子との結合部位であることがより好ましい。また#は他の構造との結合部位を表し、水素原子又は炭素原子との結合部位であることが好ましく、水素原子との結合部位であることがより好ましい。
【0019】
本発明において、ポリイミド前駆体とは、外部刺激により化学構造の変化を生じてポリイミドとなる樹脂をいい、熱により化学構造の変化を生じてポリイミドとなる樹脂が好ましく、熱により閉環反応を生じて環構造が形成されることによりポリイミドとなる樹脂がより好ましい。
形成されるポリイミドの好ましい態様は上述の通りである。
【0020】
〔重合性基〕
特定樹脂は重合性基を有することが好ましい。
重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、エポキシ基、オキセタニル基、ベンゾオキサゾリル基等が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。
上記エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基などが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルフェニル基又はマレイミド基が好ましく、反応性の観点からは、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。また、誘電正接を低下させる等の観点からは、ビニルフェニル基又はマレイミド基が好ましい。
また、重合性基としてはラジカル重合性基が好ましい。
【0021】
特定樹脂の全質量に対する重合性基の含有量(重合性基価)は、0.2~5.0mmol/gが好ましく、0.25~4.0mmol/gがより好ましく、0.3~3.0mmol/gが更に好ましい。本明細書において、重合性基価は、1モルの化合物に含まれる重合性基のモル量/化合物の数平均分子量として定義される。
【0022】
〔式(1-1)で表される繰返し単位〕
特定樹脂は、下記式(1-1)で表される繰返し単位を含むことが好ましく、下記式(1-1)で表される繰返し単位を含むポリイミド前駆体であることがより好ましい。
【化14】
式(1-1)中、Xは4価の有機基であり、Yは2価の有機基であり、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子または下記式(III)で表される基である。
【化15】
式(III)において、R200は、水素原子、メチル基、エチル基又はメチロール基を表し、R201は、炭素数2~12のアルキレン基、-CHCH(OH)CH-、シクロアルキレン基又はポリアルキレンオキシ基を表し、*は酸素原子との結合部位を表す。
【0023】
-X-
式(1-1)中、Xの炭素数は、4以上であることが好ましく、4~50であることがより好ましく、6~40であることがさらに好ましい。
式(1-1)中、Xは特開2023-003421号公報の段落0055~0057に記載のテトラカルボン酸二無水物から無水物基の除去後に残存するテトラカルボン酸残基であることが好ましい。
【0024】
これらの中でも、式(1-1)中のXは下記式(a)~式(i)のいずれかであることが好ましく、下記式(a)又は下記式(b)で表される基であることがより好ましい。
特に硬化物において得られる樹脂がスタックされやすく、溶剤の浸透性を下げることにより耐薬品性を向上する観点からは、式(b)で表される基であることが好ましい。
【化16】
式(a)~式(d)中、*は式(1-1)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【0025】
特に、特定樹脂は、上記式(1-1)で表される繰り返し単位であって、式(1-1)中のXが上記式(a)で表される繰返し単位A、及び、上記式(1-1)で表される繰り返し単位であって、式(1-1)中のXが上記式(b)で表される繰返し単位Bを含むことが好ましい。
【0026】
上記繰返し単位A及び上記繰返し単位Bの合計モル量に対する、上記繰返し単位Aの含有モル量は、30~90モル%であることが好ましく、40~85モル%であることがより好ましく、50~80モル%であることが更に好ましい。
【0027】
また、特定樹脂の全ての繰返し単位における上記繰返し単位A及び上記繰返し単位Bの合計モル量の割合は、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましく、80モル%以上であることが特に好ましく、90モル%以上であることが一層好ましい。
上記割合の上限は特に限定されず、100モル%であってもよい。
【0028】
また、Xは構造中にイミド結合を含まないことが好ましい。
また、Xは構造中にウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合を含まないことが好ましい。
本発明において、ウレタン結合とは*-O-C(=O)-NR-*で表される結合であり、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、*はそれぞれ、炭素原子との結合部位を表す。Rは水素原子又は炭化水素基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
本発明において、ウレア結合とは、*-NR-C(=O)-NR-*で表される結合であり、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、*はそれぞれ、炭素原子との結合部位を表す。Rの好ましい態様は上述の通りである。
更に、Xは構造中にエステル結合を含まないことが好ましい。
本発明において、エステル結合とは、*-O-C(=O)-*で表される結合である。
これらの中でも、Xはイミド結合、ウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合を含まないことが好ましく、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合及びエステル結合を含まないことがより好ましい。
【0029】
-Y-
式(1-1)中、Yの炭素数は、4以上であることが好ましく、4~50であることがより好ましく、6~40であることがさらに好ましい。
Yは特開2023-003421号公報の段落0042~0053に記載の基であることが好ましい。
【0030】
これらの中でも、式(1-1)中のYは下記式(Ya)~式(Yr)のいずれかであることが好ましい。これらの構造におけるベンゼン環の水素原子は、炭素数1~4のアルキル基、トリフルオロメチル基等の置換基により置換されていてもよい。
【化17】
式(Ya)~式(Yr)中、*は式(1-1)中の窒素原子との結合部位を表す。
【0031】
また、Yは構造中にイミド結合を含まないことが好ましい。
また、Yは構造中にウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合を含まないことが好ましい。
更に、Yは構造中にエステル結合を含まないことが好ましい。
これらの中でも、Yはイミド結合、ウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合を含まないことが好ましく、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合及びエステル結合を含まないことがより好ましい。
【0032】
-R、R
式(1-1)中、R及びRのうち少なくとも一方は式(III)で表される基であることが好ましく、両方が式(III)で表される基であることがより好ましい。
【0033】
式(III)において、R200は、水素原子、メチル基、エチル基又はメチロール基を表し、水素原子又はメチル基が好ましい。
式(III)において、*は他の構造との結合部位を表す。
式(III)において、R201は、炭素数2~12のアルキレン基、-CHCH(OH)CH-、シクロアルキレン基又はポリアルキレンオキシ基を表す。
好適なR201の例は、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基等のアルキレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、-CHCH(OH)CH-、ポリアルキレンオキシ基が挙げられ、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、-CHCH(OH)CH-、シクロヘキシル基、ポリアルキレンオキシ基がより好ましく、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、又はポリアルキレンオキシ基が更に好ましい。
本発明において、ポリアルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシ基が2以上直接結合した基をいう。ポリアルキレンオキシ基に含まれる複数のアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
ポリアルキレンオキシ基が、アルキレン基が異なる複数種のアルキレンオキシ基を含む場合、ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレンオキシ基の配列は、ランダムな配列であってもよいし、ブロックを有する配列であってもよいし、交互等のパターンを有する配列であってもよい。
上記アルキレン基の炭素数(アルキレン基が置換基を有する場合、置換基の炭素数を含む)は、2以上であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、2~6であることがより一層好ましく、2~5であることが更に好ましく、2~4であることが更に一層好ましく、2又は3であることがより更に好ましく、2であることが特に好ましい。
また、上記アルキレン基は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
また、ポリアルキレンオキシ基に含まれるアルキレンオキシ基の数(ポリアルキレンオキシ基の繰返し数)は、2~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~6が更に好ましい。
ポリアルキレンオキシ基としては、溶剤溶解性及び耐溶剤性の観点からは、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、ポリトリメチレンオキシ基、ポリテトラメチレンオキシ基、又は、複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基が好ましく、ポリエチレンオキシ基又はポリプロピレンオキシ基がより好ましく、ポリエチレンオキシ基が更に好ましい。上記複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基において、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とはランダムに配列していてもよいし、ブロックを形成して配列していてもよいし、交互等のパターン状に配列していてもよい。これらの基におけるエチレンオキシ基等の繰返し数の好ましい態様は上述の通りである。
【0034】
式(1-1)において、Rが水素原子である場合、又は、Rが水素原子である場合、特定樹脂はエチレン性不飽和結合を有する3級アミン化合物と対塩を形成していてもよい。このようなエチレン性不飽和結合を有する3級アミン化合物の例としては、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリレートが挙げられる。
【0035】
また、特定樹脂は、下記式(3)、式(4)及び式(5)のいずれかで表される繰返し単位を更に含んでもよい。
例えば、式(1-1)で表される繰返し単位の一部が閉環し、イミド構造を形成すると、下記式(3)、式(4)及び式(5)のいずれかで表される繰返し単位となる。
【化18】
式(3)、式(4)及び式(5)中、Yは2価の有機基を表し、Xは4価の有機基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0036】
式(3)、式(4)及び式(5)中、X、Y、R及びRの好ましい態様は、それぞれ式(1-1)中のX、Y、R及びRの好ましい態様と同様である。
【0037】
本発明における特定樹脂がポリイミド前駆体である場合の一実施形態として、式(1-1)で表される繰返し単位の含有量が、全繰返し単位の50モル%以上である態様が挙げられる。上記含有量は、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが更に好ましく、90モル%超であることが特に好ましい。上記含有量の上限は、特に限定されず、末端を除くポリイミド前駆体における全ての繰返し単位が、式(1-1)で表される繰返し単位であってもよい。
【0038】
また、本発明における特定樹脂がポリイミド前駆体である場合の別の一実施形態として、式(1-1)で表される繰返し単位、式(3)で表される繰返し単位、式(4)で表される繰返し単位及び式(5)で表される繰返し単位の合計含有量が、全繰返し単位の50モル%以上である態様が挙げられる。上記合計含有量は、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが更に好ましく、90モル%超であることが特に好ましい。上記合計含有量の上限は、特に限定されず、末端を除くポリイミド前駆体における全ての繰返し単位が、式(1-1)で表される繰返し単位、式(3)で表される繰返し単位、式(4)で表される繰返し単位又は式(5)で表される繰返し単位であってもよい。
【0039】
特定樹脂がポリイミド前駆体である場合、ポリイミド前駆体のイミド化率(「閉環率」ともいう)は、得られる有機膜の膜強度、絶縁性等の観点からは、70%未満であることが好ましく、50%未満であることがより好ましく、30%未満であることが更に好ましい。上記イミド化率の下限は、0%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。
上記イミド化率は後述の方法により測定される。
【0040】
〔式(2)で表される繰返し単位〕
特定樹脂は、下記式(2)で表される繰返し単位を含むことが好ましく、下記式(2)で表される繰返し単位を含むポリイミドであることがより好ましい。
【化19】
式(2)中、Xは炭素数4以上の有機基を表し、Yは炭素数4以上の有機基を表し、Rはそれぞれ独立に、式(R-1)で表される構造を表し、n及びmはそれぞれ独立に0~4の整数を表し、n+mは1以上である。
【化20】
式(R-1)中、Lはa1+1価の連結基を表し、Aは重合性基を表し、a1は1以上の整数を表し、*は式(2)中のX又はYとの結合部位を表す。
【0041】
-X
式(2)中、Xの炭素数は、4以上であり、4~50であることが好ましく、4~40であることがより好ましい。
の好ましい態様は、Rとの結合部位を有してもよい以外は、上述の式(1-1)におけるXの好ましい態様と同様である。Rとの結合部位を有する場合、上述のXにおける水素原子がRにより置換される態様とすることができる。
【0042】
-Y
式(2)中、Yの炭素数は、4以上であり、4~50であることが好ましく、4~40であることがより好ましい。
の好ましい態様は、Rとの結合部位を有してもよい以外は、上述の式(1-1)におけるYの好ましい態様と同様である。Rとの結合部位を有する場合、上述のYにおける水素原子がRにより置換される態様とすることができる。
【0043】
-R
式(2)のRは式(R-1)で表される基である。
式(R-1)中、Lは下記式(L-2)で表される基であることが好ましい。
【化21】
式(L-2)中、Zは-O-、-NR-、-C(=O)O-又は-C(=O)NR-を表し、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、a1が1である場合、Lは単結合又は2価の連結基を表し、a1が2以上である場合、Lはa1+1価の連結基を表し、a1は1以上の整数を表し、*は式(2)中のX又はY中の他の構造との結合部位を表し、#は式(R-1)中のAとの結合部位を表す。
【0044】
式(L-2)中、Zは-O-又は-C(=O)O-であることが好ましい。また、Zが-NR-である場合、Rは水素原子又は炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基又はフェニル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
式(L-2)中、a1が1である場合、Lはアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であることが更に好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。
式(L-2)中、a1が2以上である場合、Lは炭化水素基、ヘテロ環基、又は、これらの組み合わせにより表される基であることが好ましく、炭素数2~20の飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数3~15の飽和脂肪族炭化水素基であることが更に好ましい。
式(L-2)中、a1は式(R-1)中のa1と同義である。
【0045】
式(R-1)中、Aは重合性基を表す。重合性基の好ましい態様は、上述の特定樹脂が有する重合性基の好ましい態様の通りである。
ここで、Aは(メタ)アクリロキシ基、マレイミド基又はビニルフェニル基であることが好ましく、硬化物の誘電正接を低下させる等の観点からはマレイミド基又はビニルフェニル基であることがより好ましい。また、反応性等の観点からは(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
【0046】
これらの中でも、式(R-1)におけるAがビニルフェニル基であり、Lが式(L-2-1)で表される基であることが好ましい。
【化22】
式(L-2-1)中、LX2は炭化水素基を表し、a1は1以上の整数を表す。
式(L-2-1)中、LX2は脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。
a1が1の場合、LX2はアルキレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基が更に好ましく、メチレン基が特に好ましい。
式(L-2-1)中、a1は式(R-1)中のa1と同義である。
【0047】
また、式(R-1)におけるAがマレイミド基であり、Lが式(L-2)で表される基であって、Lが芳香族基、又は、炭素数4以上の脂肪族飽和炭化水素基であることが好ましい。
上記芳香族基としては、芳香族炭化水素基、芳香族ヘテロ環基のいずれであってもよいが、芳香族炭化水素基が好ましい。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6~10の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6の芳香族炭化水素基がより好ましい。
芳香族ヘテロ環基におけるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。芳香族ヘテロ環基におけるヘテロ原子の数は、1又は2が好ましい。また、芳香族ヘテロ環基としては、上記ヘテロ原子を含む5員環又は6員環が好ましい。更に、芳香族ヘテロ環基には、他の芳香族ヘテロ環基又は他の芳香族炭化水素環基が縮合していてもよい。
炭素数4以上の脂肪族飽和炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状、又はこれらの組み合わせにより表される構造のいずれであってもよい。
炭素数4以上の脂肪族飽和炭化水素基の炭素数は、4~20であることが好ましく、5~10であることがより好ましい。
【0048】
式(R-1)中、a1は1~4の整数であることが好ましく、1~2の整数であることがより好ましい。また、a1が1である態様も、本発明の好ましい態様の一つである。
【0049】
また、式(R-1)中に含まれるエステル結合の数は1又は0であることが好ましい。
【0050】
-n及びm-
式(2)中、mは0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。また、mが0である態様も、本発明の好ましい態様の一つである。
式(2)中、nは1又は2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0051】
特定樹脂がポリイミドである場合、特定樹脂の全質量に対する、式(2)で表される繰返し単位の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。上記含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
また、特定樹脂が式(2)で表される繰返し単位を含む場合、構造の異なる式(2)で表される繰返し単位を2種以上含有してもよい。その場合、合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0052】
特定樹脂がポリイミドである場合、ポリイミドのイミド化率(「閉環率」ともいう)は、得られる有機膜の膜強度、絶縁性等の観点からは、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。上記イミド化率の上限は特に限定されず、100%以下であればよい。
また、特定樹脂がポリイミドである場合、特定樹脂におけるイミド構造の含有量は、3mmol/g以下が好ましく、2.5mmol/g以下が更に好ましい。上記含有量の下限は特に限定されないが、例えば、0.5mmol/g以上とすることができる。
上記イミド化率は、例えば下記方法により測定される。
特定樹脂の赤外吸収スペクトルを測定し、イミド構造由来の吸収ピークである1377cm-1付近のピーク強度P1を求める。次に、その特定樹脂を350℃で1時間熱処理した後、再度、赤外吸収スペクトルを測定し、1377cm-1付近のピーク強度P2を求める。得られたピーク強度P1、P2を用い、下記式に基づいて、特定樹脂のイミド化率を求めることができる。
イミド化率(%)=(ピーク強度P1/ピーク強度P2)×100
【0053】
特定樹脂の重量平均分子量(Mw)は、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましく、40,000以下であることが更に好ましい。
また、上記Mwは5,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることが更に好ましく、15,000以上であることが特に好ましい。
特定樹脂の数平均分子量(Mn)は、40,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、20,000以下が更に好ましい。
また、上記Mnは2,000以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましく、4,000以上であることがさらに好ましい。
上記特定樹脂の分子量の分散度は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。上記分散度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。
本明細書において、分子量の分散度とは、重量平均分子量/数平均分子量により算出される値である。
樹脂組成物が特定樹脂として複数種の樹脂を含む場合、少なくとも1種の樹脂の重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が上記範囲であることが好ましい。また、上記複数種の樹脂を1つの樹脂として算出した重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が、それぞれ、上記範囲内であることも好ましい。
【0054】
〔特定樹脂の製造方法〕
特定樹脂は、例えば、国際公開第2022/145355号の段落0134~0136に記載の方法又はこの方法を参考にして合成することができる。上記記載は本明細書に組み込まれる。また、その他公知の方法を参考に合成してもよい。
【0055】
〔含有量〕
本発明の樹脂組成物における特定樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが一層好ましい。また、本発明の樹脂組成物における樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、99.5質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、98質量%以下であることが更に好ましく、97質量%以下であることが一層好ましく、95質量%以下であることがより一層好ましい。
本発明の樹脂組成物は、特定樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0056】
<他の樹脂>
本発明の樹脂組成物は、上述した特定樹脂と、特定樹脂とは異なる他の樹脂(以下、単に「他の樹脂」ともいう)とを含んでもよい。
他の樹脂としては、フェノール樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリシロキサン、シロキサン構造を含む樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、スチリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
例えば、(メタ)アクリル樹脂を更に加えることにより、塗布性に優れた樹脂組成物が得られ、また、耐溶剤性に優れたパターン(硬化物)が得られる。
例えば、後述する重合性化合物に代えて、又は、後述する重合性化合物に加えて、重量平均分子量が20,000以下の重合性基価の高い(例えば、樹脂1gにおける重合性基の含有モル量が1×10-3モル/g以上である)(メタ)アクリル樹脂を樹脂組成物に添加することにより、樹脂組成物の塗布性、パターン(硬化物)の耐溶剤性等を向上させることができる。
【0057】
<化合物A>
本発明の樹脂組成物は、下記式(A-1)又は式(A-2)で表わされる化合物Aを含み、下記式(A-1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化23】
式(A-1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R11及びR12のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基を含み、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n1は2以上の整数を表し、n1が2である場合、Xは単結合又は2価の連結基を表し、n1が3以上である場合、Xはn1価の連結基を表す。
式(A-2)中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R21及びR22のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基を含み、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n2は2以上の整数を表す。
【化24】
式(R-1)中、RR1及びRR2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、m個のRR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、m個のRR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、mは2以上の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【0058】
〔R11及びR12
式(A-1)中、R11及びR12はいずれも式(R-1)で表される基であることが好ましい。
11及びR12の一方が水素原子又は式(R-1)で表される基とは異なる1価の有機基である場合、R11及びR12の一方は式(R-1)で表される基とは異なる1価の有機基であることが好ましい。
式(R-1)で表される基とは異なる1価の有機基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0059】
-式(R-1)で表される基-
式(R-1)で表される基において、RR1及びRR2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、水素原子又はアルキル基を表すことが好ましく、水素原子又はメチル基を表すことがより好ましい。また、RR1及びRR2がいずれも水素原子であることも好ましい態様の一つである。
式(R-1)中、mは2以上の整数を表し、2~4の整数が好ましく、2又は3がより好ましく、2が更に好ましい。
以下に、式(R-1)で表される基の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。下記具体例中、*は式(R-1)中の*と同義である。
【化25】
【0060】
〔Ar
式(A-1)中、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表す。
式(A-1)中、Arにおける芳香環構造としては、芳香族炭化水素環構造、芳香族複素環構造のいずれであってもよいが、芳香族炭化水素環構造が好ましく、ベンゼン環構造がより好ましい。
上記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記縮環としては、シクロアルカン、芳香族環等が挙げられ、シクロプロパン環が好ましい。
【0061】
〔n1〕
式(A-1)中、n1は2~4の整数を表し、2又は3であることが好ましく、2であることがさらに好ましい。
【0062】
〔X〕
式(A-1)中、n1が2である場合、Xは単結合又は2価の連結基を表す。上記2価の連結基としては、アルキレン基、ハロアルキレン基、アリーレン基、又はこれらの組み合わせにより表される基であることが好ましい。これらの基における水素原子は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子等の公知の置換基により置換されていてもよい。
上記アルキレン基としては、炭素数1~4のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基又はイソプロピレン基がより好ましい。
上記アリーレン基としては、芳香族炭化水素基であっても芳香族複素環基であってもよいが、芳香族炭化水素基であることが好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0063】
式(A-1)中、n1が3以上である場合、Xはn1価の連結基を表す。上記n1価の連結基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族基、又はこれらの組み合わせにより表される基であることが好ましい。これらの基における水素原子は、ヒドロキシ基等の公知の置換基により置換されていてもよい。
上記脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~4の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。
上記芳香族基としては、芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6の芳香族炭化水素基がより好ましい。
【0064】
以下に、X及びArにより形成される構造の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。下記具体例中、*は式(A-1)中の窒素原子との結合部位を表す。
【化26】
【0065】
〔R21及びR22
式(A-2)中、R21及びR22の好ましい態様は、式(A-1)中のR11及びR12の好ましい態様と同様である。
【0066】
〔Ar
式(A-2)中、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表す。
上記芳香環構造としては、ベンゼン環構造、カルバゾール環構造、フルオレン環構造等が挙げられる。
上記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記縮環としては、シクロアルカン、芳香族環等が挙げられ、シクロプロパン環が好ましい。
以下に、Arの具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。下記具体例中、*は式(A-2)中の窒素原子との結合部位を表す。
【化27】
【0067】
これらの中でも、上記化合物Aが上記式(A-1)で表される化合物であり、上記式(A-1)中のR11及びR12はいずれも式(R-1)で表される基であり、式(R-1)中のmが2である態様が好ましい。
上記態様における他の符号の好ましい態様は、上述の式(A-1)の説明において記載した通りである。
【0068】
また、化合物Aは、下記式(AA-1)、式(AA-2)、又は式(AA-3)で表される化合物であることが好ましい。
【化28】
【0069】
〔分子量〕
化合物Aの分子量は、1,000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましい。
上記分子量の下限は特に限定されないが、例えば150以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましい。
【0070】
〔合成方法〕
化合物Aは、例えば、後述する実施例に記載の方法により合成することができる。ただし、特定化合物に該当する構造を得ることができれば、合成方法は特に限定されるものではない。その他、市販の化合物があれば、これを用いることもできる。
【0071】
〔具体例〕
化合物Aの具体例としては、後述する実施例に記載の(A-1)-1~(A-1)-31、(A-2)-1~(A-2)-3等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
〔含有量〕
本発明の樹脂組成物における化合物Aの含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.1~10.0質量%であることが好ましく、0.2~5.0質量%であることがより好ましく、0.3~3.0質量%であることが更に好ましい。
本発明の樹脂組成物において、特定樹脂の含有量を100質量部とした場合の化合物Aの含有量は、0.1~10.0質量部であることが好ましく、0.2~5.0質量部であることがより好ましく、0.3~3.0質量部であることが更に好ましい。
本発明の樹脂組成物は化合物Aを1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。化合物Aを2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0073】
<化合物B>
本発明の樹脂組成物は、下記式(B-1)で表される化合物Bを更に含むことが好ましい。
【化29】
式(B-1)中、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、RB1及びRB2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、RB1及びRB2のうち少なくとも一方は上述の式(R-1)で表される基を含む。
【0074】
式(B-1)中、Arの好ましい態様は、上述の式(A-2)中のArの好ましい態様と同様である。
式(B-1)中、RB1及びRB2並びに式(R-1)の好ましい態様は、上述の式(A-2)中のR21及びR22並びに式(R-1)の好ましい態様と同様である。
【0075】
〔分子量〕
化合物Bの分子量は、1,000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましく、300以下であることが特に好ましい。
上記分子量の下限は特に限定されないが、例えば100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましい。
【0076】
〔具体例〕
化合物Bの具体例としては、後述する実施例に記載の(B-1)-1~(B-1)-10等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
〔含有量〕
本発明の樹脂組成物における化合物Bの含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.1~10.0質量%であることが好ましく、0.2~5.0質量%であることがより好ましく、0.3~3.0質量%であることが更に好ましい。
本発明の樹脂組成物において、特定樹脂の含有量を100質量部とした場合の化合物Aの含有量は、0.1~10.0質量部であることが好ましく、0.2~5.0質量部であることがより好ましく、0.3~3.0質量部であることが更に好ましい。
化合物Aと化合物Bの合計含有量は、上記光重合開始剤の合計含有量を100質量部としたときに30~200質量部であることが好ましく、40~150質量部であることがより好ましく、50~100質量部であることが更に好ましい。
本発明の樹脂組成物は化合物Bを1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。化合物Bを2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0078】
<化合物X>
本発明の樹脂組成物は、下記式(X-1)、式(X-2)、又は式(X-3)で表される化合物Xを含むことが好ましい。
【化30】
【0079】
化合物Xを含むことにより、組成物の保存安定性が向上する。その理由は定かではないが、化合物Xは極性が高いため、組成物中の成分の溶剤溶解性が向上し経時析出が抑制される等の効果のためと考えられる。
【0080】
樹脂組成物の全固形分に対する化合物Xの含有量は、0.00001~1質量%であることが好ましく、0.00005~0.5質量%であることがより好ましく、0.0001~0.1質量%であることがさらに好ましい。
また、樹脂組成物に含まれる化合物Aの含有量を100質量部とした場合の化合物Xの含有量は、0.001~20質量部であることが好ましく、0.005~10質量部であることがより好ましく、0.01~5質量部であることがより好ましい。
樹脂組成物は化合物Xを2種以上含んでもよい。化合物Xを2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0081】
<化合物Y>
樹脂組成物は、下記式(Y-1)で表される化合物Yを更に含んでもよい。
化合物Yは、化合物Aの誘導体として樹脂組成物に含まれてもよい。
【化31】
式(Y-1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R11及びR12のうち少なくとも一方は上述の式(R-1)で表される基を含み、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R13及びR14のうち少なくとも一方は上述の式(R-1)で表される基を含み、m1は1以上の整数を表し、m2は1以上の整数を表し、m1+m2が2である場合、Xは2価の連結基を表し、m1+m2が3以上である場合、Xはm1+m2価の連結基を表す。
【0082】
式(Y-1)中、R11、R12及びArの好ましい態様は、上述の式(A-1)におけるR11、R12及びArの好ましい態様と同様である。
式(Y-1)中、R13及びR14の好ましい態様は、上述の式(A-1)におけるR13及びR14の好ましい態様と同様である。
また、R11、R12、R13及びR14における上述の式(R-1)で表される基の好ましい態様も上述の通りである。
式(Y-1)中、Xは脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらの結合により表される基であることが好ましい。これらの炭化水素基における水素原子は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子等の公知の置換基により置換されていてもよい。
式(Y-1)中、m1+m2が2である場合、Xは炭素数1~4の脂肪族炭化水素基が好ましく、*=CH-*がより好ましい。
式(Y-1)中、m1+m2が3である場合、Xは炭素数1~4の脂肪族炭化水素基が好ましく、*=C(-*)-*がより好ましい。
式(Y-1)中、m1は1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
式(Y-1)中、m2は1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0083】
化合物Yの具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、下記式(Y-1)で表される化合物は上述の式(AA-1)で表される化合物がカチオン体となった構造として得ることができる。その他、化合物Aに該当する構造がカチオン体となった構造の化合物を化合物Yとして使用することができる。
【化32】
【0084】
化合物Yを含むことにより、組成物の保存安定性が向上する。その理由は定かではないが、化合物Yが樹脂や組成物中の酸性成分と塩を形成することで安定性が向上するためと考えられる。
【0085】
樹脂組成物の全固形分に対する化合物Yの含有量は、0.00001~1質量%であることが好ましく、0.00005~0.5質量%であることがより好ましく、0.0001~0.1質量%であることがさらに好ましい。
また、樹脂組成物に含まれる化合物Aと化合物Yの合計含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.1~10.0質量%であることが好ましく、0.15~5.0質量%であることがより好ましく、0.2~3.0質量%であることが更に好ましい。
樹脂組成物は化合物Yを2種以上含んでもよい。化合物Yを2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0086】
<重合性化合物>
本発明の樹脂組成物は、重合性化合物を含むことが好ましい。
重合性化合物としては、ラジカル重合性基を有する重合性化合物(ラジカル架橋剤)、又は、他の架橋剤が挙げられる。
【0087】
〔ラジカル架橋剤〕
本発明の樹脂組成物は、ラジカル架橋剤を含むことが好ましい。
ラジカル架橋剤は、ラジカル重合性基を有する化合物である。ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基が好ましい。上記エチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基などが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルフェニル基が好ましく、反応性の観点からは、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
特に、本発明の樹脂組成物は、重合性化合物として(メタ)アクリロイル基を含む化合物を含むことが好ましい。
【0088】
ラジカル架橋剤は、エチレン性不飽和結合を1個以上有する化合物であることが好ましいが、2個以上有する化合物であることがより好ましい。ラジカル架橋剤は、エチレン性不飽和結合を3個以上有していてもよい。
上記エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物としては、エチレン性不飽和結合を2~15個有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合を2~10個有する化合物がより好ましく、2~6個有する化合物が更に好ましい。
得られるパターン(硬化物)の膜強度の観点からは、本発明の樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合を2個有する化合物と、上記エチレン性不飽和結合を3個以上有する化合物とを含むことも好ましい。
【0089】
ラジカル架橋剤の分子量は、2,000以下が好ましく、1,500以下がより好ましく、900以下が更に好ましい。ラジカル架橋剤の分子量の下限は、100以上が好ましい。
【0090】
ラジカル架橋剤としては、国際公開第2023/190064の段落0125~0144に記載の化合物が挙げられる。
【0091】
これらの中でも、本発明の樹脂組成物は、重合性化合物として下記式(M-1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化33】
式(M-1)中、pは2以上の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
式(M-1)中、pは2~10の整数であることが好ましく、2~6の整数であることがより好ましい。また、pが4である態様も、本発明の好ましい態様の一つである。
【0092】
ラジカル架橋剤を含有する場合、ラジカル架橋剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0質量%超60質量%以下であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
【0093】
ラジカル架橋剤は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を併用する場合にはその合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0094】
〔他の架橋剤〕
本発明の樹脂組成物は、上述したラジカル架橋剤とは異なる、他の架橋剤を含むことも好ましい。
他の架橋剤とは、上述したラジカル架橋剤以外の架橋剤をいい、光酸発生剤、又は、光塩基発生剤の感光により、組成物中の他の化合物又はその反応生成物との間で共有結合を形成する反応が促進される基を分子内に複数個有する化合物であることが好ましく、組成物中の他の化合物又はその反応生成物との間で共有結合を形成する反応が酸又は塩基の作用によって促進される基を分子内に複数個有する化合物が好ましい。
他の架橋剤としては、国際公開第2022/145355号の段落0179~0207に記載の化合物が挙げられる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
【0095】
他の架橋剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、0.5~15質量%であることが更に好ましく、1.0~10質量%であることが特に好ましい。他の架橋剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。他の架橋剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0096】
〔重合開始剤〕
本発明の樹脂組成物は、重合開始剤を含む。重合開始剤は熱重合開始剤であっても光重合開始剤であってもよいが、特に光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する光ラジカル重合開始剤が好ましい。また、光励起された増感剤と作用し、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。
【0097】
光ラジカル重合開始剤は、波長約240~800nm(好ましくは330~500nm)の範囲内で少なくとも約50L・mol-1・cm-1のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶剤を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0098】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノンなどのα-アミノケトン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどのα-ヒドロキシケトン化合物、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。これらの詳細については、特開2016-027357号公報の段落0165~0182、国際公開第2015/199219号の段落0138~0151の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特許第6301489号公報に記載された化合物、MATERIAL STAGE 37~60p,vol.19,No.3,2019に記載されたパーオキサイド系光重合開始剤、国際公開第2018/221177号に記載の光重合開始剤、国際公開第2018/110179号に記載の光重合開始剤、特開2019-043864号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-044030号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-167313号公報に記載の過酸化物系開始剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0099】
ケトン化合物としては、例えば、特開2015-087611号公報の段落0087に記載の化合物が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品では、カヤキュア-DETX-S(日本化薬(株)製)も好適に用いられる。
【0100】
本発明の一実施態様において、光ラジカル重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、及び、アシルホスフィン化合物を好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤を用いることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0101】
α-ヒドロキシケトン系開始剤としては、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127(以上、IGM Resins B.V.社製)、IRGACURE 184(IRGACUREは登録商標)、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE-2959、IRGACURE 127(以上、BASF社製)を用いることができる。
【0102】
α-アミノケトン系開始剤としては、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG(以上、IGM Resins B.V.社製)、IRGACURE 907、IRGACURE 369、及び、IRGACURE 379(以上、BASF社製)を用いることができる。
【0103】
アミノアセトフェノン系開始剤、アシルホスフィンオキシド系開始剤、メタロセン化合物としては、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0161~0163に記載の化合物も好適に使用することができる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0104】
光ラジカル重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物を用いることにより、露光ラチチュードをより効果的に向上させることが可能になる。オキシム化合物は、露光ラチチュード(露光マージン)が広く、かつ、光硬化促進剤としても働くため、特に好ましい。
【0105】
オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物、国際公開第2013/167515号に記載の化合物などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0106】
好ましいオキシム化合物としては、例えば、下記の構造の化合物や、3-(ベンゾイルオキシ(イミノ))ブタン-2-オン、3-(アセトキシ(イミノ))ブタン-2-オン、3-(プロピオニルオキシ(イミノ))ブタン-2-オン、2-(アセトキシ(イミノ))ペンタン-3-オン、2-(アセトキシ(イミノ))-1-フェニルプロパン-1-オン、2-(ベンゾイルオキシ(イミノ))-1-フェニルプロパン-1-オン、3-((4-トルエンスルホニルオキシ)イミノ)ブタン-2-オン、及び2-(エトキシカルボニルオキシ(イミノ))-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。樹脂組成物においては、特に光ラジカル重合開始剤としてオキシム化合物を用いることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としてのオキシム化合物は、分子内に>C=N-O-C(=O)-の連結基を有する。
【0107】
【化34】
【0108】
オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02、IRGACURE OXE 03、IRGACURE OXE 04(以上、BASF社製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光ラジカル重合開始剤2)、TR-PBG-304、TR-PBG-305(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-730、NCI-831及びアデカアークルズNCI-930((株)ADEKA製)、DFI-091(ダイトーケミックス(株)製)、SpeedCure PDO(SARTOMER ARKEMA製)が挙げられる。また、下記の構造のオキシム化合物を用いることもできる。
【化35】
【0109】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0169~0171に記載のフルオレン環を有するオキシム化合物、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。
また、国際公開第2021/020359号に記載の段落0208~0210に記載のニトロ基を有するオキシム化合物、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物、カルバゾール骨格にヒドロキシ基を有する置換基が結合したオキシム化合物を用いることもできる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0110】
これらの中でも、光重合開始剤は、下記式(P-1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化36】
【0111】
その他、光重合開始剤としては、特開2023-058585号公報の段落0113~0117に記載の化合物を用いることもできる。この記載は本願明細書に組み込まれる。
【0112】
樹脂組成物が光重合開始剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましく、0.5~15質量%が更に好ましく、1.0~10質量%が更により好ましい。光重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光重合開始剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
なお、光重合開始剤は熱重合開始剤としても機能する場合があるため、オーブンやホットプレート等の加熱によって光重合開始剤による架橋を更に進行させられる場合がある。
【0113】
〔増感剤〕
樹脂組成物は、増感剤を含んでいてもよい。増感剤は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などと接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤は化学変化を起こして分解し、ラジカル、酸又は塩基を生成する。
使用可能な増感剤として、ベンゾフェノン系、ミヒラーズケトン系、クマリン系、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アントラセン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系等の化合物を使用することができる。
増感剤としては、国際公開第2023/190064の段落0202に記載の化合物が挙げられる。
【0114】
樹脂組成物が増感剤を含む場合、増感剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.01~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、0.5~10質量%が更に好ましい。増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0115】
〔連鎖移動剤〕
本発明の樹脂組成物は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、例えば高分子辞典第三版(高分子学会編、2005年)683-684頁に定義されている。連鎖移動剤としては、例えば、分子内に-S-S-、-SO-S-、-N-O-、SH、PH、SiH、及びGeHを有する化合物群、RAFT(Reversible Addition Fragmentation chain Transfer)重合に用いられるチオカルボニルチオ基を有するジチオベンゾアート、トリチオカルボナート、ジチオカルバマート、キサンタート化合物等が用いられる。これらは、低活性のラジカルに水素を供与して、ラジカルを生成するか、若しくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。特に、チオール化合物を好ましく用いることができる。
【0116】
また、連鎖移動剤は、国際公開第2015/199219号の段落0152~0153に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0117】
樹脂組成物が連鎖移動剤を有する場合、連鎖移動剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部が更に好ましい。連鎖移動剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。連鎖移動剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0118】
また、本発明の樹脂組成物が、重合開始剤として、2種以上の重合開始剤を含むことも本発明の好ましい態様の一つである。
具体的には、本発明の樹脂組成物は、光重合開始剤及び後述の熱重合開始剤を含んでもよい。
【0119】
光重合開始剤及び後述の熱重合開始剤を含むことにより、露光によるパターン形成が可能となり、かつ、後述の加熱工程による硬化時にラジカル重合も進行しやすくなり、耐薬品性等の性能が向上する場合が有る。
光重合開始剤及び後述の熱重合開始剤を含む場合の含有比率としては、光重合開始剤及び熱重合開始剤の合計含有量に対し、熱重合開始剤の含有量が20~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。
【0120】
光ラジカル重合開始剤及び光酸発生剤を含むことにより解像性等の性能が向上する場合が有る。
光重合開始剤及び光酸発生剤を含む場合の含有比率としては、光重合開始剤及び光酸発生剤の合計含有量に対し、光酸発生剤の含有量が20~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。
【0121】
〔熱重合開始剤〕
熱重合開始剤としては、例えば、熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。熱ラジカル重合開始剤は、熱のエネルギーによってラジカルを発生し、重合性を有する化合物の重合反応を開始又は促進させる化合物である。熱ラジカル重合開始剤を添加することによって樹脂及び重合性化合物の重合反応を進行させることもできるので、より耐溶剤性を向上できる。
【0122】
熱ラジカル重合開始剤として、具体的には、特開2008-063554号公報の段落0074~0118に記載されている化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0123】
熱重合開始剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、0.5~15質量%であることが更に好ましい。熱重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。熱重合開始剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0124】
<塩基発生剤>
本発明の樹脂組成物は、塩基発生剤を含んでもよい。ここで、塩基発生剤とは、物理的または化学的な作用によって塩基を発生することができる化合物である。好ましい塩基発生剤としては、熱塩基発生剤および光塩基発生剤が挙げられる。
特に、樹脂組成物が環化樹脂の前駆体を含む場合、樹脂組成物は塩基発生剤を含むことが好ましい。樹脂組成物が熱塩基発生剤を含有することによって、例えば加熱により前駆体の環化反応を促進でき、硬化物の機械特性や耐薬品性が良好なものとなり、例えば半導体パッケージ中に含まれる再配線層用層間絶縁膜としての性能が良好となる。
塩基発生剤としては、イオン型塩基発生剤でもよく、非イオン型塩基発生剤でもよい。塩基発生剤から発生する塩基としては、例えば、2級アミン、3級アミンが挙げられる。
塩基発生剤は特に限定されず、公知の塩基発生剤を用いることができる。公知の塩基発生剤としては、例えば、カルバモイルオキシム化合物、カルバモイルヒドロキシルアミン化合物、カルバミン酸化合物、ホルムアミド化合物、アセトアミド化合物、カルバメート化合物、ベンジルカルバメート化合物、ニトロベンジルカルバメート化合物、スルホンアミド化合物、イミダゾール誘導体化合物、アミンイミド化合物、ピリジン誘導体化合物、α-アミノアセトフェノン誘導体化合物、4級アンモニウム塩誘導体化合物、イミニウム塩、ピリジニウム塩、α-ラクトン環誘導体化合物、アミンイミド化合物、フタルイミド誘導体化合物、アシルオキシイミノ化合物等が挙げられる。
非イオン型塩基発生剤の具体例としては、国際公開第2022/145355号の段落0249~0275に記載の化合物が挙げられる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
【0125】
塩基発生剤としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
【化37】
【化38】
【0127】
非イオン型塩基発生剤の分子量は、800以下が好ましく、600以下がより好ましく、500以下が更に好ましい。下限は、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上が更に好ましい。
【0128】
イオン型塩基発生剤の具体的な好ましい化合物としては、例えば、国際公開第2018/038002号の段落番号0148~0163に記載の化合物が挙げられる。
【0129】
アンモニウム塩の具体例としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【化39】
【0130】
イミニウム塩の具体例としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【化40】
【0131】
また、塩基発生剤としては、保存安定性およびキュア時に脱保護で塩基を発生させる観点からアミノ基がt-ブトキシカルボニル基によって保護されたアミンであることが好ましい。
【0132】
t-ブトキシカルボニル基によって保護されたアミン化合物としては、例えば、エタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-1-ブタノール、1-アミノ-2-ブタノール、3-アミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール、バリノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、チラミン、ノルエフェドリン、2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオール、2-アミノシクロヘキサノール、4-アミノシクロヘキサノール、4-アミノシクロヘキサンエタノール、4-(2-アミノエチル)シクロヘキサノール、N-メチルエタノールアミン、3-(メチルアミノ)-1-プロパノール、3-(イソプロピルアミノ)プロパノール、N-シクロヘキシルエタノールアミン、α-[2-(メチルアミノ)エチル]ベンジルアルコール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、3-ピロリジノール、2-ピロリジンメタノール、4-ヒドロキシピペリジン、3-ヒドロキシピペリジン、4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリジン、4-(3-ヒドロキシフェニル)ピペリジン、4-ピペリジンメタノール、3-ピペリジンメタノール、2-ピペリジンメタノール、4-ピペリジンエタノール、2-ピペリジンエタノール、2-(4-ピペリジル)-2-プロパノール、1,4-ブタノールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、2,2’-オキシビス(エチルアミン)、1,14-ジアミノ-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン、1-アザ-15-クラウン5-エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,11-ジアミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン、又は、アミノ酸及びその誘導体のアミノ基をt-ブトキシカルボニル基によって保護した化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
樹脂組成物が塩基発生剤を含む場合、塩基発生剤の含有量は、樹脂組成物中の樹脂100質量部に対し、0.1~50質量部が好ましい。下限は、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が更に好ましい。上限は、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましく、10質量部以下が一層好ましく、5質量部以下がより一層好ましく、4質量部以下が特に好ましい。
塩基発生剤は、1種又は2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0134】
<溶剤>
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含む。
溶剤は、公知の溶剤を任意に使用できる。溶剤は有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、環状炭化水素類、スルホキシド類、アミド類、ウレア類、アルコール類などの化合物が挙げられる。
【0135】
エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸へキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等が好適なものとして挙げられる。
【0136】
エーテル類として、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が好適なものとして挙げられる。
【0137】
ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、3-メチルシクロヘキサノン、レボグルコセノン、ジヒドロレボグルコセノン等が好適なものとして挙げられる。
【0138】
環状炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族炭化水素類、リモネン等の環式テルペン類が好適なものとして挙げられる。
【0139】
スルホキシド類として、例えば、ジメチルスルホキシドが好適なものとして挙げられる。
【0140】
アミド類として、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-ホルミルモルホリン、N-アセチルモルホリン等が好適なものとして挙げられる。
【0141】
ウレア類として、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が好適なものとして挙げられる。
【0142】
アルコール類として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n-アミルアルコール、メチルアミルアルコール、および、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。
【0143】
溶剤は、塗布面性状の改良などの観点から、2種以上を混合する形態も好ましい。
【0144】
本発明では、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、トルエン、ジメチルスルホキシド、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、レボグルコセノン、ジヒドロレボグルコセノンから選択される1種の溶剤、又は、2種以上で構成される混合溶剤が好ましい。ジメチルスルホキシドとγ-ブチロラクトンとの併用、ジメチルスルホキシドとγ-バレロラクトンとの併用、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドとγ-ブチロラクトンとの併用、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドとγ-ブチロラクトンとジメチルスルホキシドとの併用、又は、N-メチル-2-ピロリドンと乳酸エチルとの併用が特に好ましい。これらの併用された溶剤に、更にトルエンを溶剤の全質量に対して1~10質量%程度添加する態様も、本発明の好ましい態様の1つである。
特に、樹脂組成物の保存安定性等の観点からは、溶剤としてγ-バレロラクトンを含む態様も、本発明の好ましい態様の1つである。このような態様において、溶剤の全質量に対するγ-バレロラクトンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。また、上記含有量の上限は、特に限定されず100質量%であってもよい。上記含有量は、樹脂組成物に含まれる特定樹脂などの成分の溶解度等を考慮して決定すればよい。
また、ジメチルスルホキシドとγ-バレロラクトンとを併用する場合、溶剤の全質量に対して、60~90質量%のγ-バレロラクトンと10~40質量%のジメチルスルホキシドとを含むことが好ましく、70~90質量%のγ-バレロラクトンと10~30質量%のジメチルスルホキシドとを含むことがより好ましく、75~85質量%のγ-バレロラクトンと15~25質量%のジメチルスルホキシドとを含むことが更に好ましい。
【0145】
また、本発明の樹脂組成物は、溶剤としてγ-ブチロラクトン及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される1つ以上の溶剤と乳酸エチルとを含むことが好ましい。
乳酸エチルを含むことにより成膜性に優れる。これは、乳酸エチルは親水性が低いため、これを含むことにより組成物の乾燥時に残留溶媒中の水分による樹脂の析出が抑制されるためであると考えられる。
上記態様において、γ-ブチロラクトン及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される1つ以上の溶剤と乳酸エチルとの合計含有量は、溶剤の全質量に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。上記含有量の上限は、特に限定されず100質量%以下であればよい。
また、上記態様において、γ-ブチロラクトン及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される1つ以上の溶剤と乳酸エチルとの合計含有量に対する、γ-ブチロラクトン及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される1つ以上の溶剤の含有量は、80~99.9質量%であることが好ましく、90~99.5質量%であることがより好ましく、90~99.0質量%であることが更に好ましい。
また、上記態様において、本発明の樹脂組成物は、溶剤としてジメチルスルホキシドを更に含むことが好ましい。
ジメチルスルホキシドを含むことにより組成物の保存安定性が向上する。これは、ジメチルスルホキシドは極性が高いため、樹脂の組成物中での凝集が抑制されるためであると推測される。
ジメチルスルホキシドを含む場合、溶剤の全質量に対するジメチルスルホキシドの含有量は、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることが更に好ましい。
【0146】
溶剤の含有量は、塗布性の観点から、本発明の樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量とすることが好ましく、5~75質量%となる量にすることがより好ましく、10~70質量%となる量にすることが更に好ましく、20~70質量%となるようにすることが一層好ましい。溶剤含有量は、塗膜の所望の厚さと塗布方法に応じて調節すればよい。溶剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0147】
<金属接着性改良剤>
本発明の樹脂組成物は、電極や配線などに用いられる金属材料との接着性を向上させる観点から、金属接着性改良剤を含むことが好ましい。金属接着性改良剤としては、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤、アルミニウム系接着助剤、チタン系接着助剤、スルホンアミド構造を有する化合物及びチオウレア構造を有する化合物、リン酸誘導体化合物、βケトエステル化合物、アミノ化合物等が挙げられる。
【0148】
〔シランカップリング剤〕
シランカップリング剤及びアルミニウム系接着助剤としては、国際公開第2023/190064の段落0202に記載の化合物が挙げられる。
【0149】
その他の金属接着性改良剤としては、特開2014-186186号公報の段落0046~0049に記載の化合物、特開2013-072935号公報の段落0032~0043に記載のスルフィド系化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0150】
金属接着性改良剤の含有量は特定樹脂100質量部に対して、0.01~30質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部が更に好ましい。上記下限値以上とすることでパターンと金属層との接着性が良好となり、上記上限値以下とすることでパターンの耐熱性、機械特性が良好となる。金属接着性改良剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上用いる場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0151】
<マイグレーション抑制剤>
本発明の樹脂組成物は、マイグレーション抑制剤を更に含むことが好ましい。マイグレーション抑制剤を含むことにより、例えば、樹脂組成物を金属層(又は金属配線)に適用して膜を形成した際に、金属層(又は金属配線)由来の金属イオンが膜内へ移動することを効果的に抑制することができる。
【0152】
マイグレーション抑制剤としては、特に制限はないが、複素環(ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H-ピラン環及び6H-ピラン環、トリアジン環)を有する化合物、チオ尿素類及びスルファニル基を有する化合物、ヒンダードフェノール系化合物、サリチル酸誘導体系化合物、ヒドラジド誘導体系化合物が挙げられる。特に、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール系化合物、1H-テトラゾール、5-フェニルテトラゾール、5-アミノ―1H-テトラゾール等のテトラゾール系化合物が好ましく使用できる。
【0153】
マイグレーション抑制剤としては、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉するイオントラップ剤を使用することもできる。
【0154】
その他のマイグレーション抑制剤としては、特開2013-015701号公報の段落0094に記載の防錆剤、特開2009-283711号公報の段落0073~0076に記載の化合物、特開2011-059656号公報の段落0052に記載の化合物、特開2012-194520号公報の段落0114、0116及び0118に記載の化合物、国際公開第2015/199219号の段落0166に記載の化合物などを使用することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0155】
マイグレーション抑制剤の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。
【0156】
【化41】
【0157】
本発明の樹脂組成物がマイグレーション抑制剤を有する場合、マイグレーション抑制剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.05~2.0質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることが更に好ましい。
【0158】
マイグレーション抑制剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。マイグレーション抑制剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0159】
<プリン誘導体>
また、本発明の樹脂組成物は、信頼性の向上の観点から、プリン誘導体を含むことも好ましい。プリン誘導体は、プリン環を基本骨格とする化合物で、その骨格から誘導される化合物を称してプリン誘導体とする。
プリン誘導体を用いることにより、銅又は銅合金の変色抑制効果、信頼性の向上効果が得られる。上記効果が得られる理由は定かではないが、窒素原子を分子内に含有するプリン誘導体と、酸素原子又は窒素原子などのヘテロ原子を含有する特定樹脂とが、水素結合等で適度に相互作用することで、樹脂と銅との過度な相互作用が抑制されるものと推察される。
プリン誘導体の具体例としては、プリン、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、テオブロミン、カフェイン、尿酸、イソグアニン、2,6-ジアミノプリン、9-メチルアデニン、2-ヒドロキシアデニン、2-メチルアデニン、1-メチルアデニン、N-メチルアデニン、N,N-ジメチルアデニン、2-フルオロアデニン、9-(2-ヒドロキシエチル)アデニン、グアニンオキシム、N-(2-ヒドロキシエチル)アデニン、8-アミノアデニン、6-アミノ‐8-フェニル‐9H-プリン、1-エチルアデニン、6-エチルアミノプリン、1-ベンジルアデニン、N-メチルグアニン、7-(2-ヒドロキシエチル)グアニン、N-(3-クロロフェニル)グアニン、N-(3-エチルフェニル)グアニン、2-アザアデニン、5-アザアデニン、8-アザアデニン、8-アザグアニン、8-アザプリン、8-アザキサンチン、8-アザヒポキサンチン等及びその誘導体が挙げられる。これらの中でも、特に8-アザアデニンが好ましい。
【0160】
その他、プリン誘導体としては、特開2012-194520号公報の段落0115~0119に記載の化合物が挙げられる。
【0161】
プリン誘導体の含有量は、特定樹脂100質量部を基準として0.01~10質量部であることが好ましく、0.03~5質量部であることがより好ましく、0.05~2質量部であることがさらに好ましい。
プリン誘導体は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。プリン誘導体が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0162】
<光吸収剤>
本発明の樹脂組成物は、露光によりその露光波長の吸光度が小さくなる化合物(光吸収剤)を含むことも好ましい。
光吸収剤としては、国際公開第2022/202647号の段落0159~0183に記載の化合物、特開2019-206689号公報の段落0088~0108に記載の化合物等が挙げられる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0163】
<重合禁止剤>
本発明の樹脂組成物は、重合禁止剤を含むことが好ましい。重合禁止剤としてはフェノール系化合物、キノン系化合物、アミノ系化合物、N-オキシルフリーラジカル化合物系化合物、ニトロ系化合物、ニトロソ系化合物、ヘテロ芳香環系化合物、金属化合物などが挙げられる。
【0164】
重合禁止剤の具体的な化合物としては、国際公開第2021/112189の段落0310に記載の化合物、p-ヒドロキノン、o-ヒドロキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルフリーラジカル、フェノキサジン、1,4,4-トリメチル-2,3-ジアザビシクロ[3.2.2]ノナ-2-エン-N,N-ジオキシド等が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0165】
本発明の樹脂組成物が重合禁止剤を有する場合、重合禁止剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%であることが好ましく、0.02~15質量%であることがより好ましく、0.05~10質量%であることが更に好ましい。
【0166】
重合禁止剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。重合禁止剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0167】
<その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が得られる範囲で、必要に応じて、各種の添加物、例えば、界面活性剤、高級脂肪酸誘導体、熱重合開始剤、無機粒子、紫外線吸収剤、有機チタン化合物、酸化防止剤、光酸発生剤、凝集防止剤、フェノール系化合物、他の高分子化合物、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、消泡剤、難燃剤など)等を含んでいてもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。これらの添加剤を配合する場合、その合計含有量は本発明の樹脂組成物の固形分の3質量%以下とすることが好ましい。
【0168】
〔界面活性剤〕
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。界面活性剤はノニオン型界面活性剤であってもよく、カチオン型界面活性剤であってもよく、アニオン型界面活性剤であってもよい。
【0169】
本発明の樹脂組成物に界面活性剤を含有させることで、塗布液組成物を調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上し、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。即ち、界面活性剤を含有する塗布液を用いて膜形成する場合、被塗布面と塗布液との界面張力が低下して、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、厚みムラが小さい均一な膜の形成をより好適に行うことができる。
【0170】
フッ素系界面活性剤としては、国際公開第2021/112189号の段落0328に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができ、例えば、下記化合物が挙げられる。
【化42】
【0171】
上記化合物の重量平均分子量は、3,000~50,000であることが好ましく、5,000~30,000であることがより好ましい。
フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体をフッ素系界面活性剤として用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落0050~0090および段落0289~0295に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、市販品としては、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K等が挙げられる。
【0172】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましく、7~25質量%が特に好ましい。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0173】
シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤、ノニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、アニオン型界面活性剤としては、それぞれ、国際公開第2021/112189号の段落0329~0334に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0174】
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%が好ましく、0.005~1.0質量%がより好ましい。
【0175】
〔無機粒子〕
無機粒子として、具体的には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、ガラス等が挙げられる。
【0176】
無機粒子の平均粒子径は、0.01~2.0μmが好ましく、0.02~1.5μmがより好ましく、0.03~1.0μmがさらに好ましく、0.04~0.5μmが特に好ましい。
無機粒子の上記平均粒子径は、一次粒子径であり、また体積平均粒子径である。体積平均粒子径は、例えば、Nanotrac WAVE II EX-150(日機装社製)による動的光散乱法で測定できる。
上記測定が困難である場合は、遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法で測定することもできる。
【0177】
〔有機チタン化合物〕
樹脂組成物が有機チタン化合物を含有することにより、低温で硬化した場合であっても耐薬品性に優れる樹脂層を形成できる。
【0178】
使用可能な有機チタン化合物としては、チタン原子に有機基が共有結合又はイオン結合を介して結合しているものが挙げられる。
有機チタン化合物の具体例を、以下のI)~VII)に示す:
I)チタンキレート化合物:樹脂組成物の保存安定性がよく、良好な硬化パターンが得られることから、アルコキシ基を2個以上有するチタンキレート化合物がより好ましい。具体的な例は、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタニウムジ(n-ブトキサイド)ビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)等である。
II)テトラアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、チタニウムテトラエトキサイド、チタニウムテトラ(2-エチルヘキソキサイド)、チタニウムテトライソブトキサイド、チタニウムテトライソプロポキサイド、チタニウムテトラメトキサイド、チタニウムテトラメトキシプロポキサイド、チタニウムテトラメチルフェノキサイド、チタニウムテトラ(n-ノニロキサイド)、チタニウムテトラ(n-プロポキサイド)、チタニウムテトラステアリロキサイド、チタニウムテトラキス[ビス{2,2-(アリロキシメチル)ブトキサイド}]等である。
III)チタノセン化合物:例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム等である。
IV)モノアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムトリス(ジオクチルホスフェート)イソプロポキサイド、チタニウムトリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキサイド等である。
V)チタニウムオキサイド化合物:例えば、チタニウムオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタニウムオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、フタロシアニンチタニウムオキサイド等である。
VI)チタニウムテトラアセチルアセトネート化合物:例えば、チタニウムテトラアセチルアセトネート等である。
VII)チタネートカップリング剤:例えば、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等である。
【0179】
なかでも、有機チタン化合物としては、より良好な耐薬品性の観点から、上記I)チタンキレート化合物、II)テトラアルコキシチタン化合物、及びIII)チタノセン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。特に、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、及びビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムが好ましい。
【0180】
また、有機チタン化合物として、又は、有機チタン化合物に代えて、下記式(T-1)で表される化合物を含むことも好ましい。
【化43】
式(T-1)中、Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、l1は、0~2の整数であり、l2は0又は1であり、l1+l2×2は0~2の整数であり、mは0~4の整数、nは0~2の整数であり、l1+l2+m+n×2=4であり、R11は各々独立に置換もしくは無置換のシクロペンタジエニル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、又は、置換もしくは無置換のフェノキシ基であり、R12は置換若しくは無置換の炭化水素基であり、Rは各々独立に、下記式(T-2)で表される構造を含む基であり、Rは各々独立に、下記式(T-2)で表される構造を含む基であり、Xはそれぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子である。
【化44】
式(T-2)中、X~Xはそれぞれ独立に、-C(-*)=又は-N=を表し、*はそれぞれ他の構造との結合部位を表し、#は金属原子との結合部位を表す。
【0181】
式(T-1)中、組成物の保存安定性の観点からは、Mはチタンであることが好ましい。
式(T-1)中、l1及びl2が0である態様も、本発明の好ましい態様の一つである。
式(T-1)中、mは2又は4であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(T-1)中、nは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
ここで、式(T-1)中、l1及びl2が0であり、mが0、2又は4であることも好ましい。
【0182】
式(T-1)中、特定金属錯体の安定性の観点からは、R11は置換又は無置換のシクロペンタジエニル配位子が好ましい。
また、R11におけるシクロペンタジエニル基、アルコキシ基及びフェノキシ基は置換されていてもよいが、無置換である態様も本発明の好ましい態様の一つである。
【0183】
式(T-1)中、R12は炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましく、炭素数2~10の炭化水素基であることがより好ましい。
12における炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれであってもよいが、芳香族炭化水素基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基であっても不飽和脂肪族炭化水素基であってもよいが、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6~20の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6~10の芳香族炭化水素基がより好ましく、フェニレン基が更に好ましい。
12における置換基としては、1価の置換基が好ましく、ハロゲン原子等が挙げられる。また、R12が芳香族炭化水素基である場合、置換基としてアルキル基を有してもよい。
これらの中でも、式(T-1)中、R12は無置換のフェニレン基であることが好ましい。また、R12におけるフェニレン基は1,2-フェニレン基であることが好ましい。
【0184】
式(T-1)中、mが2以上であり、Rが2以上含まれる場合、その2以上のRの構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
式(T-1)中、nが2以上であり、Rが2以上含まれる場合、その2以上のRの構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0185】
式(T-2)中、X~Xはそれぞれ独立に、-C(-*)=又は-N=を表し、少なくとも1つが-C(-*)=を表すことが好ましく、少なくとも2つが-C(-*)=を表すことがより好ましい。
【0186】
式(T-1)で表される化合物の具体例としては、実施例におけるI-1~I-2に該当する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0187】
有機チタン化合物を含む場合、その含有量は、特定樹脂100質量部に対し、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。含有量が0.05質量部以上である場合、得られる硬化パターンの耐熱性及び耐薬品性がより良好となり、10質量部以下である場合、組成物の保存安定性により優れる。
【0188】
有機チタン化合物を含む場合、その含有量は、特定樹脂100質量部に対し、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~2質量部であることがより好ましい。含有量が0.05質量部以上である場合、得られる硬化パターンの耐熱性及び耐薬品性がより良好となり、10質量部以下である場合、組成物の保存安定性により優れる。
他の添加剤としては、国際公開第2022/145355号の段落0249~0282、0316~0358に記載の化合物が挙げられる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
【0189】
<樹脂組成物の特性>
本発明の樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物の固形分濃度により調整できる。塗布膜厚の観点から、1,000mm/s~12,000mm/sが好ましく、2,000mm/s~10,000mm/sがより好ましく、2,500mm/s~8,000mm/sが更に好ましい。上記範囲であれば、均一性の高い塗布膜を得ることが容易になる。1,000mm/s以上であれば、例えば再配線用絶縁膜として必要とされる膜厚で塗布することが容易であり、12,000mm/s以下であれば、塗布面状に優れた塗膜が得られる。
【0190】
<樹脂組成物の含有物質についての制限>
本発明の樹脂組成物の含水率は、2.0質量%未満であることが好ましく、1.5質量%未満であることがより好ましく、1.0質量%未満であることが更に好ましい。2.0%未満であれば、樹脂組成物の保存安定性が向上する。
水分の含有量を維持する方法としては、保管条件における湿度の調整、保管時の収容容器の空隙率低減などが挙げられる。
【0191】
本発明の樹脂組成物の金属含有量は、絶縁性の観点から、5質量ppm(parts per million)未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満が更に好ましい。金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、銅、クロム、ニッケルなどが挙げられるが、有機化合物と金属との錯体として含まれる金属は除く。金属を複数含む場合は、これらの金属の合計が上記範囲であることが好ましい。
【0192】
また、本発明の樹脂組成物に意図せずに含まれる金属不純物を低減する方法としては、本発明の樹脂組成物を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、本発明の樹脂組成物を構成する原料に対してフィルターろ過を行う、装置内をポリテトラフルオロエチレン等でライニングしてコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。
【0193】
本発明の樹脂組成物は、半導体材料としての用途を考慮すると、ハロゲン原子の含有量が、配線腐食性の観点から、500質量ppm未満が好ましく、300質量ppm未満がより好ましく、200質量ppm未満が更に好ましい。中でも、ハロゲンイオンの状態で存在するものは、5質量ppm未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満が更に好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。塩素原子及び臭素原子、又は塩素イオン及び臭素イオンの合計がそれぞれ上記範囲であることが好ましい。
ハロゲン原子の含有量を調節する方法としては、イオン交換処理などが好ましく挙げられる。
【0194】
本発明の樹脂組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。収容容器としては、原材料や本発明の樹脂組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0195】
<樹脂組成物の硬化物>
本発明の樹脂組成物を硬化することにより、樹脂組成物の硬化物を得ることができる。
本発明の硬化物は、樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
樹脂組成物の硬化は加熱によるものであることが好ましく、加熱温度が120℃~400℃がより好ましく、140℃~380℃が更に好ましく、170℃~350℃が特に好ましい。樹脂組成物の硬化物の形態は、特に限定されず、フィルム状、棒状、球状、ペレット状など、用途に合わせて選択することができる。本発明において、硬化物は、フィルム状であることが好ましい。樹脂組成物のパターン加工によって、壁面への保護膜の形成、導通のためのビアホール形成、インピーダンスや静電容量あるいは内部応力の調整、放熱機能付与など、用途にあわせて、硬化物の形状を選択することもできる。硬化物(硬化物からなる膜)の膜厚は、0.5μm以上150μm以下であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物を硬化した際の収縮率は、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下が更に好ましい。ここで、収縮率は、樹脂組成物の硬化前後の体積変化の百分率を指し、下記の式より算出することができる。
収縮率[%]=100-(硬化後の体積÷硬化前の体積)×100
【0196】
<樹脂組成物の硬化物の特性>
本発明の樹脂組成物の硬化物のイミド化反応率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。70%以上であれば、機械特性に優れた硬化物となる場合がある。
本発明の樹脂組成物の硬化物の破断伸びは、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。
本発明の樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、180℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、230℃以上であることがさらに好ましい。
【0197】
<樹脂組成物の調製>
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を混合して調製することができる。混合方法は特に限定はなく、従来公知の方法で行うことができる。
混合方法としては、撹拌羽による混合、ボールミルによる混合、タンクを回転させる混合などが挙げられる。
混合中の温度は10~30℃が好ましく、15~25℃がより好ましい。
【0198】
本発明の樹脂組成物中のゴミや微粒子等の異物を除去する目的で、フィルターを用いたろ過を行うことが好ましい。フィルター孔径は、例えば5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下が更に好ましく、0.1μm以下が更により好ましい。フィルターの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン又はナイロンが好ましい。フィルターの材質がポリエチレンである場合はHDPE(高密度ポリエチレン)であることがより好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルターろ過工程では、複数種のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種のフィルターを使用する場合は、孔径又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。接続態様としては、例えば、1段目として孔径1μmのHDPEフィルターを、2段目として孔径0.2μmのHDPEフィルターを、直列に接続した態様が挙げられる。また、各種材料を複数回ろ過してもよい。複数回ろ過する場合は、循環ろ過であってもよい。また、加圧してろ過を行ってもよい。加圧してろ過を行う場合、加圧する圧力は例えば0.01MPa以上1.0MPa以下が好ましく、0.03MPa以上0.9MPa以下がより好ましく、0.05MPa以上0.7MPa以下が更に好ましく、0.05MPa以上0.5MPa以下が更により好ましい。
フィルターを用いたろ過の他、吸着材を用いた不純物の除去処理を行ってもよい。フィルターろ過と吸着材を用いた不純物除去処理とを組み合わせてもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができる。例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材が挙げられる。
フィルターを用いたろ過後、ボトルに充填した樹脂組成物を減圧下に置き、脱気する工程を施しても良い。
【0199】
(硬化物の製造方法)
本発明の硬化物の製造方法は、樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含むことが好ましい。
硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、膜形成工程により形成された膜を選択的に露光する露光工程、及び、露光工程により露光された膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含むことがより好ましい。
硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、上記露光工程、上記現像工程、並びに、現像工程により得られたパターンを加熱する加熱工程及び現像工程により得られたパターンを露光する現像後露光工程の少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
また、硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、及び、上記膜を加熱する工程を含むことも好ましい。
以下、各工程の詳細について説明する。
【0200】
<膜形成工程>
本発明の樹脂組成物は、基材上に適用して膜を形成する膜形成工程に用いることができる。
本発明の硬化物の製造方法は、樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含むことが好ましい。
【0201】
〔基材〕
基材の種類は、用途に応じて適宜定めることができ、特に限定されない。基材としては、例えば、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基材、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基材(例えば、金属から形成された基材、及び、金属層が例えばめっきや蒸着等により形成された基材のいずれであってもよい)、紙、SOG(Spin On Glass)、TFT(薄膜トランジスタ)アレイ基材、モールド基材、プラズマディスプレイパネル(PDP)の電極板などが挙げられる。基材は、特に、半導体作製基材が好ましく、シリコン基材、Cu基材およびモールド基材がより好ましい。
これらの基材にはヘキサメチルジシラザン(HMDS)等による密着層や酸化層などの層が表面に設けられていてもよい。
基材の形状は特に限定されず、円形状であってもよく、矩形状であってもよい。
基材のサイズは、円形状であれば、例えば直径が100~450mmが好ましく、200~450mmがより好ましい。矩形状であれば、例えば短辺の長さが100~1000mmが好ましく、200~700mmがより好ましい。
基材としては、例えば板状、好ましくはパネル状の基材(基板)が用いられる。
【0202】
樹脂層(例えば、硬化物からなる層)の表面や金属層の表面に樹脂組成物を適用して膜を形成する場合は、樹脂層や金属層が基材となる。
【0203】
樹脂組成物を基材上に適用する手段としては、塗布が好ましい。
適用する手段としては、具体的には、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スプレーコート法、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット法などが挙げられる。膜の厚さの均一性の観点から、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、又は、インクジェット法が好ましく、膜の厚さの均一性の観点および生産性の観点からスピンコート法およびスリットコート法がより好ましい。適用する手段に応じて樹脂組成物の固形分濃度や塗布条件を調整することで、所望の厚さの膜を得ることができる。また、基材の形状によっても塗布方法を適宜選択でき、ウエハ等の円形基材であればスピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が好ましく、矩形基材であればスリットコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が好ましい。スピンコート法の場合は、例えば、500~3,500rpmの回転数で、10秒~3分程度適用することができる。
また、あらかじめ仮支持体上に上記付与方法によって付与して形成した塗膜を、基材上に転写する方法を適用することもできる。
転写方法に関しては特開2006-023696号公報の段落0023、0036~0051や、特開2006-047592号公報の段落0096~0108に記載の作製方法を好適に用いることができる。
また、基材の端部において余分な膜の除去を行なう工程を行なってもよい。このような工程の例には、エッジビードリンス(EBR)、バックリンスなどが挙げられる。
樹脂組成物を基材に塗布する前に基材を種々の溶剤を塗布し、基材の濡れ性を向上させた後に樹脂組成物を塗布するプリウェット工程を採用しても良い。
【0204】
<乾燥工程>
上記膜は、膜形成工程(層形成工程)の後に、溶剤を除去するため、形成された膜(層)を乾燥する工程(乾燥工程)に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、膜形成工程により形成された膜を乾燥する乾燥工程を含んでもよい。
上記乾燥工程は膜形成工程の後、露光工程の前に行われることが好ましい。
乾燥工程における膜の乾燥温度は50~150℃が好ましく、70℃~130℃がより好ましく、90℃~110℃が更に好ましい。また、減圧により乾燥を行っても良い。乾燥時間としては、30秒~20分が例示され、1分~10分が好ましく、2分~7分がより好ましい。
【0205】
<露光工程>
上記膜は、膜を選択的に露光する露光工程に供されてもよい。
硬化物の製造方法は、膜形成工程により形成された膜を選択的に露光する露光工程を含んでもよい。
選択的に露光するとは、膜の一部を露光することを意味している。また、選択的に露光することにより、膜には露光された領域(露光部)と露光されていない領域(非露光部)が形成される。
露光量は、本発明の樹脂組成物を硬化できる限り特に限定されないが、例えば、波長365nmでの露光エネルギー換算で50~10,000mJ/cmが好ましく、200~8,000mJ/cmがより好ましい。
【0206】
露光波長は、190~1,000nmの範囲で適宜定めることができ、240~550nmが好ましい。
【0207】
露光波長は、光源との関係でいうと、(1)半導体レーザー(波長 830nm、532nm、488nm、405nm、375nm、355nm etc.)、(2)メタルハライドランプ、(3)高圧水銀灯、g線(波長 436nm)、h線(波長 405nm)、i線(波長 365nm)、ブロード(g,h,i線の3波長)、(4)エキシマレーザー、KrFエキシマレーザー(波長 248nm)、ArFエキシマレーザー(波長 193nm)、Fエキシマレーザー(波長 157nm)、(5)極紫外線;EUV(波長 13.6nm)、(6)電子線、(7)YAGレーザーの第二高調波532nm、第三高調波355nm等が挙げられる。本発明の樹脂組成物については、特に高圧水銀灯による露光が好ましく、露光感度の観点で、i線による露光がより好ましい。
露光の方式は特に限定されず、本発明の樹脂組成物からなる膜の少なくとも一部が露光される方式であればよいが、フォトマスクを使用した露光、レーザーダイレクトイメージング法による露光等が挙げられる。
【0208】
<露光後加熱工程>
上記膜は、露光後に加熱する工程(露光後加熱工程)に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、露光工程により露光された膜を加熱する露光後加熱工程を含んでもよい。
露光後加熱工程は、露光工程後、現像工程前に行うことができる。
露光後加熱工程における加熱温度は、50℃~140℃が好ましく、60℃~120℃がより好ましい。
露光後加熱工程における加熱時間は、30秒間~300分間が好ましく、1分間~10分間がより好ましい。
露光後加熱工程における昇温速度は、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~12℃/分が好ましく、2~10℃/分がより好ましく、3~10℃/分が更に好ましい。
また、昇温速度は加熱途中で適宜変更してもよい。
露光後加熱工程における加熱手段としては、特に限定されず、公知のホットプレート、オーブン、赤外線ヒーター等を用いることができる。
また、加熱に際し、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流す等により、低酸素濃度の雰囲気下で行うことも好ましい。
【0209】
<現像工程>
露光後の上記膜は、現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、露光工程により露光された膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含んでもよい。
現像を行うことにより、膜の露光部及び非露光部のうち一方が除去され、パターンが形成される。
ここで、膜の非露光部が現像工程により除去される現像をネガ型現像といい、膜の露光部が現像工程により除去される現像をポジ型現像という。
【0210】
〔現像液〕
現像工程において用いられる現像液としては、アルカリ水溶液、又は、有機溶剤を含む現像液が挙げられる。
【0211】
現像液がアルカリ水溶液である場合、アルカリ水溶液が含みうる塩基性化合物としては、無機アルカリ類、第一級アミン類、第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩が挙げられ、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリアミルアンモニウムヒドロキシド、ジブチルジペンチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジンが好ましく、より好ましくはTMAHである。現像液における塩基性化合物の含有量は、現像液全質量中0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.3~3質量%が更に好ましい。
【0212】
現像液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤としては、国際公開第2021/112189号の段落0387に記載の化合物を用いることができる。この内容は本明細書に組み込まれる。また、アルコール類として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、オクタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルイソブチルカルビノール、トリエチレングリコール等、アミド類として、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等も好適に挙げられる。
【0213】
現像液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤は1種又は、2種以上を混合して使用することができる。本発明では特にシクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、及び、シクロヘキサノンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む現像液が好ましく、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン及びジメチルスルホキシドよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む現像液がより好ましく、シクロペンタノンを含む現像液が特に好ましい。
【0214】
現像液が有機溶剤を含む場合、現像液の全質量に対する有機溶剤の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。また、上記含有量は、100質量%であってもよい。
【0215】
現像液は、他の成分を更に含んでもよい。
他の成分としては、例えば、公知の界面活性剤や公知の消泡剤等が挙げられる。
【0216】
〔現像液の供給方法〕
現像液の供給方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、膜が形成された基材を現像液に浸漬する方法、基材上に形成された膜にノズルを用いて現像液を供給するパドル現像、または、現像液を連続供給する方法がある。ノズルの種類は特に制限は無く、ストレートノズル、シャワーノズル、スプレーノズル等が挙げられる。
現像液の浸透性、非画像部の除去性、製造上の効率の観点から、現像液をストレートノズルで供給する方法、又はスプレーノズルにて連続供給する方法が好ましく、画像部への現像液の浸透性の観点からは、スプレーノズルで供給する方法がより好ましい。
また、現像液をストレートノズルにて連続供給後、基材をスピンし現像液を基材上から除去し、スピン乾燥後に再度ストレートノズルにて連続供給後、基材をスピンし現像液を基材上から除去する工程を採用してもよく、この工程を複数回繰り返しても良い。
現像工程における現像液の供給方法としては、現像液が連続的に基材に供給され続ける工程、基材上で現像液が略静止状態で保たれる工程、基材上で現像液を超音波等で振動させる工程及びそれらを組み合わせた工程などが挙げられる。
【0217】
現像時間としては、10秒~10分間が好ましく、20秒~5分間がより好ましい。現像時の現像液の温度は、特に定めるものではないが、10~45℃が好ましく、18℃~30℃がより好ましい。
【0218】
現像工程において、現像液を用いた処理の後、更に、リンス液によるパターンの洗浄(リンス)を行ってもよい。また、パターン上に接する現像液が乾燥しきらないうちにリンス液を供給するなどの方法を採用しても良い。
【0219】
〔リンス液〕
現像液がアルカリ水溶液である場合、リンス液としては、例えば水を用いることができる。現像液が有機溶剤を含む現像液である場合、リンス液としては、例えば、現像液に含まれる溶剤とは異なる溶剤(例えば、水、現像液に含まれる有機溶剤とは異なる有機溶剤)を用いることができる。
【0220】
リンス液が有機溶剤を含む場合の有機溶剤としては、上述の現像液が有機溶剤を含む場合において例示した有機溶剤と同様の有機溶剤が挙げられる。
リンス液に含まれる有機溶剤は、現像液に含まれる有機溶剤とは異なる有機溶剤であることが好ましく、現像液に含まれる有機溶剤よりも、パターンの溶解度が小さい有機溶剤がより好ましい。
【0221】
リンス液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤は1種又は、2種以上を混合して使用することができる。有機溶剤は、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、PGMEA、PGMEが好ましく、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、PGMEA、PGMEがより好ましく、シクロヘキサノン、PGMEAがさらに好ましい。
【0222】
リンス液が有機溶剤を含む場合、リンス液の全質量に対し、有機溶剤は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。また、リンス液の全質量に対し、有機溶剤は100質量%であってもよい。
【0223】
リンス液は、他の成分を更に含んでもよい。
他の成分としては、例えば、公知の界面活性剤や公知の消泡剤等が挙げられる。
【0224】
〔リンス液の供給方法〕
リンス液の供給方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、基材をリンス液に浸漬する方法、基材に液盛りによりリンス液を供給する方法、基材にリンス液をシャワーで供給する方法、基材上にストレートノズル等の手段によりリンス液を連続供給する方法がある。
リンス液の浸透性、非画像部の除去性、製造上の効率の観点から、リンス液をシャワーノズル、ストレートノズル、スプレーノズルなどで供給する方法があり、スプレーノズルにて連続供給する方法が好ましく、画像部へのリンス液の浸透性の観点からは、スプレーノズルで供給する方法がより好ましい。ノズルの種類は特に制限は無く、ストレートノズル、シャワーノズル、スプレーノズル等が挙げられる。
すなわち、リンス工程は、リンス液を上記露光後の膜に対してストレートノズルにより供給、又は、連続供給する工程であることが好ましく、リンス液をスプレーノズルにより供給する工程であることがより好ましい。
リンス工程におけるリンス液の供給方法としては、リンス液が連続的に基材に供給され続ける工程、基材上でリンス液が略静止状態で保たれる工程、基材上でリンス液を超音波等で振動させる工程及びそれらを組み合わせた工程などが採用可能である。
【0225】
リンス時間としては、10秒~10分間が好ましく、20秒~5分間がより好ましい。リンス時のリンス液の温度は、特に定めるものではないが、10~45℃が好ましく、18℃~30℃がより好ましい。
【0226】
<加熱工程>
現像工程により得られたパターン(リンス工程を行う場合は、リンス後のパターン)は、上記現像により得られたパターンを加熱する加熱工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターンを加熱する加熱工程を含んでもよい。
また、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程を行わずに他の方法で得られたパターン、又は、膜形成工程により得られた膜を加熱する加熱工程を含んでもよい。
加熱工程において、ポリイミド前駆体等の樹脂は環化してポリイミド等の樹脂となる。
また、特定樹脂、又は特定樹脂以外の架橋剤における未反応の架橋性基の架橋なども進行する。
加熱工程における加熱温度(最高加熱温度)としては、50~450℃が好ましく、150~350℃がより好ましく、150~250℃が更に好ましく、160~250℃が一層好ましく、160~230℃が特に好ましい。
【0227】
加熱工程は、加熱により、上記塩基発生剤から発生した塩基等の作用により、上記パターン内で上記ポリイミド前駆体の環化反応を促進する工程であることが好ましい。
【0228】
加熱工程における加熱は、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~12℃/分の昇温速度で行うことが好ましい。上記昇温速度は2~10℃/分がより好ましく、3~10℃/分が更に好ましい。昇温速度を1℃/分以上とすることにより、生産性を確保しつつ、酸又は溶剤の過剰な揮発を防止することができ、昇温速度を12℃/分以下とすることにより、硬化物の残存応力を緩和することができる。
加えて、急速加熱可能なオーブンの場合、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~8℃/秒の昇温速度で行うことが好ましく、2~7℃/秒がより好ましく、3~6℃/秒が更に好ましい。
【0229】
加熱開始時の温度は、20℃~150℃が好ましく、20℃~130℃がより好ましく、25℃~120℃が更に好ましい。加熱開始時の温度は、最高加熱温度まで加熱する工程を開始する際の温度のことをいう。例えば、本発明の樹脂組成物を基材の上に適用した後、乾燥させる場合、この乾燥後の膜(層)の温度であり、例えば、樹脂組成物に含まれる溶剤の沸点よりも、30~200℃低い温度から昇温させることが好ましい。
【0230】
加熱時間(最高加熱温度での加熱時間)は、5~360分が好ましく、10~300分がより好ましく、15~240分が更に好ましい。
【0231】
特に多層の積層体を形成する場合、層間の密着性の観点から、加熱温度は30℃以上であることが好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましく、120℃以上が特に好ましい。
上記加熱温度の上限は、350℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、240℃以下が更に好ましい。
【0232】
加熱は段階的に行ってもよい。例として、25℃から120℃まで3℃/分で昇温し、120℃にて60分保持し、120℃から180℃まで2℃/分で昇温し、180℃にて120分保持する、といった工程を行ってもよい。また、米国特許第9159547号明細書に記載のように紫外線を照射しながら処理することも好ましい。このような前処理工程により膜の特性を向上させることが可能である。前処理工程は10秒間~2時間程度の短い時間で行うとよく、15秒~30分間がより好ましい。前処理は2段階以上のステップとしてもよく、例えば100~150℃の範囲で1段階目の前処理工程を行い、その後に150~200℃の範囲で2段階目の前処理工程を行ってもよい。
更に、加熱後冷却してもよく、この場合の冷却速度としては、1~5℃/分であることが好ましい。
【0233】
加熱工程は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流す、減圧下で行う等により、低酸素濃度の雰囲気で行うことが特定樹脂の分解を防ぐ観点で好ましい。酸素濃度は、50ppm(体積比)以下が好ましく、20ppm(体積比)以下がより好ましい。
加熱工程における加熱手段としては、特に限定されないが、例えばホットプレート、赤外炉、電熱式オーブン、熱風式オーブン、赤外線オーブンなどが挙げられる。
【0234】
<現像後露光工程>
現像工程により得られたパターン(リンス工程を行う場合は、リンス後のパターン)は、上記加熱工程に代えて、又は、上記加熱工程に加えて、現像工程後のパターンを露光する現像後露光工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターンを露光する現像後露光工程を含んでもよい。本発明の硬化物の製造方法は、加熱工程及び現像後露光工程を含んでもよいし、加熱工程及び現像後露光工程の一方のみを含んでもよい。
現像後露光工程においては、例えば、光塩基発生剤の感光によってポリイミド前駆体等の環化が進行する反応や、光酸発生剤の感光によって酸分解性基の脱離が進行する反応などを促進することができる。
現像後露光工程においては、現像工程において得られたパターンの少なくとも一部が露光されればよいが、上記パターンの全部が露光されることが好ましい。
現像後露光工程における露光量は、感光性化合物が感度を有する波長における露光エネルギー換算で、50~20,000mJ/cmが好ましく、100~15,000mJ/cmがより好ましい。
現像後露光工程は、例えば、上述の露光工程における光源を用いて行うことができ、ブロードバンド光を用いることが好ましい。
【0235】
<金属層形成工程>
現像工程により得られたパターン(加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方に供されたものが好ましい)は、パターン上に金属層を形成する金属層形成工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターン(加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方に供されたものが好ましい)上に金属層を形成する金属層形成工程を含むことが好ましい。
【0236】
金属層としては、特に限定なく、既存の金属種を使用することができ、銅、アルミニウム、ニッケル、バナジウム、チタン、クロム、コバルト、金、タングステン、錫、銀及びこれらの金属を含む合金が例示され、銅及びアルミニウムがより好ましく、銅が更に好ましい。
【0237】
金属層の形成方法は、特に限定なく、既存の方法を適用することができる。例えば、特開2007-157879号公報、特表2001-521288号公報、特開2004-214501号公報、特開2004-101850号公報、米国特許第7888181B2、米国特許第9177926B2に記載された方法を使用することができる。例えば、フォトリソグラフィ、PVD(物理蒸着法)、CVD(化学気相成長法)、リフトオフ、電解めっき、無電解めっき、エッチング、印刷、及びこれらを組み合わせた方法などが考えられる。より具体的には、スパッタリング、フォトリソグラフィ及びエッチングを組み合わせたパターニング方法、フォトリソグラフィと電解めっきを組み合わせたパターニング方法が挙げられる。めっきの好ましい態様としては、硫酸銅やシアン化銅めっき液を用いた電解めっきが挙げられる。
【0238】
金属層の厚さとしては、最も厚肉の部分で、0.01~50μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
【0239】
<用途>
本発明の硬化物の製造方法、又は、硬化物の適用可能な分野としては、電子デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜、ストレスバッファ膜などが挙げられる。そのほか、封止フィルム、基板材料(フレキシブルプリント基板のベースフィルムやカバーレイ、層間絶縁膜)、又は上記のような実装用途の絶縁膜をエッチングでパターン形成することなどが挙げられる。これらの用途については、例えば、サイエンス&テクノロジー(株)「ポリイミドの高機能化と応用技術」2008年4月、柿本雅明/監修、CMCテクニカルライブラリー「ポリイミド材料の基礎と開発」2011年11月発行、日本ポリイミド・芳香族系高分子研究会/編「最新ポリイミド 基礎と応用」エヌ・ティー・エス,2010年8月等を参照することができる。
【0240】
本発明の硬化物の製造方法、又は、本発明の硬化物は、オフセット版面又はスクリーン版面などの版面の製造、成形部品のエッチングへの使用、エレクトロニクス、特に、マイクロエレクトロニクスにおける保護ラッカー及び誘電層の製造などにも用いることもできる。
【0241】
(積層体、及び、積層体の製造方法)
本発明の積層体とは、本発明の硬化物からなる層を複数層有する構造体をいう。
積層体は、硬化物からなる層を2層以上含む積層体であり、3層以上積層した積層体としてもよい。
上記積層体に含まれる2層以上の上記硬化物からなる層のうち、少なくとも1つが本発明の硬化物からなる層であり、硬化物の収縮、又は、上記収縮に伴う硬化物の変形等を抑制する観点からは、上記積層体に含まれる全ての硬化物からなる層が本発明の硬化物からなる層であることも好ましい。
【0242】
すなわち、本発明の積層体の製造方法は、本発明の硬化物の製造方法を含むことが好ましく、本発明の硬化物の製造方法を複数回繰り返すことを含むことがより好ましい。
【0243】
本発明の積層体は、硬化物からなる層を2層以上含み、上記硬化物からなる層同士のいずれかの間に金属層を含む態様が好ましい。上記金属層は、上記金属層形成工程により形成されることが好ましい。
すなわち、本発明の積層体の製造方法は、複数回行われる硬化物の製造方法の間に、硬化物からなる層上に金属層を形成する金属層形成工程を更に含むことが好ましい。金属層形成工程の好ましい態様は上述の通りである。
上記積層体としては、例えば、第一の硬化物からなる層、金属層、第二の硬化物からなる層の3つの層がこの順に積層された層構造を少なくとも含む積層体が好ましいものとして挙げられる。
上記第一の硬化物からなる層及び上記第二の硬化物からなる層は、いずれも本発明の硬化物からなる層であることが好ましい。上記第一の硬化物からなる層の形成に用いられる本発明の樹脂組成物と、上記第二の硬化物からなる層の形成に用いられる本発明の樹脂組成物とは、組成が同一の組成物であってもよいし、組成が異なる組成物であってもよい。本発明の積層体における金属層は、再配線層などの金属配線として好ましく用いられる。
【0244】
<積層工程>
本発明の積層体の製造方法は、積層工程を含むことが好ましい。
積層工程とは、パターン(樹脂層)又は金属層の表面に、再度、(a)膜形成工程(層形成工程)、(b)露光工程、(c)現像工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方を、この順に行うことを含む一連の工程である。ただし、(a)膜形成工程および(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方を繰り返す態様であってもよい。また、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方の後には(e)金属層形成工程を含んでもよい。積層工程には、更に、上記乾燥工程等を適宜含んでいてもよいことは言うまでもない。
【0245】
積層工程後、更に積層工程を行う場合には、上記露光工程後、上記加熱工程の後、又は、上記金属層形成工程後に、更に、表面活性化処理工程を行ってもよい。表面活性化処理としては、プラズマ処理が例示される。表面活性化処理の詳細については後述する。
【0246】
上記積層工程は、2~20回行うことが好ましく、2~9回行うことがより好ましい。
例えば、樹脂層/金属層/樹脂層/金属層/樹脂層/金属層のように、樹脂層を2層以上20層以下とする構成が好ましく、2層以上9層以下とする構成が更に好ましい。
上記各層はそれぞれ、組成、形状、膜厚等が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0247】
本発明では特に、金属層を設けた後、更に、上記金属層を覆うように、上記本発明の樹脂組成物の硬化物(樹脂層)を形成する態様が好ましい。具体的には、(a)膜形成工程、(b)露光工程、(c)現像工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方、(e)金属層形成工程、の順序で繰り返す態様、又は、(a)膜形成工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方、(e)金属層形成工程の順序で繰り返す態様が挙げられる。本発明の樹脂組成物層(樹脂層)を積層する積層工程と、金属層形成工程を交互に行うことにより、本発明の樹脂組成物層(樹脂層)と金属層を交互に積層することができる。
【0248】
(表面活性化処理工程)
本発明の積層体の製造方法は、上記金属層および樹脂組成物層の少なくとも一部を表面活性化処理する、表面活性化処理工程を含むことが好ましい。
表面活性化処理工程は、通常、金属層形成工程の後に行うが、上記現像工程の後(好ましくは、加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方の後)、樹脂組成物層に表面活性化処理工程を行ってから、金属層形成工程を行ってもよい。
表面活性化処理は、金属層の少なくとも一部のみに行ってもよいし、露光後の樹脂組成物層の少なくとも一部のみに行ってもよいし、金属層および露光後の樹脂組成物層の両方について、それぞれ、少なくとも一部に行ってもよい。表面活性化処理は、金属層の少なくとも一部について行うことが好ましく、金属層のうち、表面に樹脂組成物層を形成する領域の一部または全部に表面活性化処理を行うことが好ましい。このように、金属層の表面に表面活性化処理を行うことにより、その表面に設けられる樹脂組成物層(膜)との密着性を向上させることができる。
表面活性化処理は、露光後の樹脂組成物層(樹脂層)の一部または全部についても行うことが好ましい。このように、樹脂組成物層の表面に表面活性化処理を行うことにより、表面活性化処理した表面に設けられる金属層や樹脂層との密着性を向上させることができる。特にネガ型現像を行う場合など、樹脂組成物層が硬化されている場合には、表面処理によるダメージを受けにくく、密着性が向上しやすい。
表面活性化処理は、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0415に記載の方法により実施することができる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0249】
(半導体デバイス及びその製造方法)
本発明は、本発明の硬化物、又は、積層体を含む半導体デバイスも開示する。
また、本発明は、本発明の硬化物の製造方法、又は、積層体の製造方法を含む半導体デバイスの製造方法も開示する。
本発明の樹脂組成物を再配線層用層間絶縁膜の形成に用いた半導体デバイスの具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0213~0218の記載及び図1の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0250】
(化合物)
本発明の化合物は、下記式(A-1)又は式(A-2)で表わされる化合物である。
【化45】
式(A-1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R11及びR12のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基であり、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n1は2であり、Xは単結合又は2価の連結基を表す。
式(A-2)中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R21及びR22のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基であり、Arは置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n2は2である。
【化46】
式(R-1)中、RR1及びRR2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、m個のRR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、m個のRR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、mは2以上の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
式(A-1)又は式(A-2)の好ましい態様は、上述の化合物Aにおいて説明したとおりである。
【実施例0251】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。「部」、「%」は特に述べない限り、質量基準である。
【0252】
<ポリマーの合成>
〔合成例P-1:樹脂(P-1)の合成〕
4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.11gをセパラブルフラスコに入れ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)134.0g及びγ-ブチロラクトン400mLを加えた。室温下で撹拌しながら、ピリジン79.1gを加えることにより、反応混合物を得た。反応による発熱の終了後、室温まで放冷し、更に16時間静置した。
次に、氷冷下において、反応混合物に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ-ブチロラクトン180mLに溶解した溶液を、撹拌しながら40分かけて加えた。続いて、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル96.0gをγ-ブチロラクトン350mlに懸濁した懸濁液を、撹拌しながら60分かけて加えた。更に室温で2時間撹拌した後、エチルアルコール30mLを加えて1時間撹拌した。その後、γ-ブチロラクトン400mlを加えた。反応混合物に生じた沈殿物を、ろ過により取得し、反応液を得た。
得られた反応液を3Lのエチルアルコールに加えて、粗ポリマーからなる沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾取し、テトラヒドロフラン1.5Lに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28Lの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾取した後に真空乾燥することにより、粉末状の樹脂P-1を得た。樹脂P-1は、下記式(P-1)で表される繰返し単位を含む構造であることをH-NMRにより確認した。樹脂P-1の重量平均分子量、イミド化率は後述の表に記載した。
【0253】
〔重量平均分子量の測定方法〕
以上及び以下の合成例において、特に記載しない限り、重量平均分子量及び数平均分子量は以下の方法で測定した。
高速GPC装置HLC-8420GPC(東ソー(株)製)を用い、ガードカラムとして、TSK gurdcolumn Super AW-H(4.6mm×35mm)、カラムとして、TSKgel Super AWM-H(4.6mm×150mm)2本を直列に連結してGPC測定を行った。溶離液としては、0.01mol/LのリチウムブロマイドのNMP(N-メチル-2-ピロリドン)溶液を用いた。
【0254】
〔イミド化率の測定方法〕
後述の樹脂をγ-ブチロラクトンに溶解させ、2,000mPa・sになるよう希釈し、スピンコート法でシリコンウエハ上に適用して樹脂層を形成した。得られた樹脂層を適用したシリコンウエハをホットプレート上で、110℃で5分間乾燥し、シリコンウエハ上に製膜後の膜厚が約15μmの均一な厚さの樹脂層を得た。
また、樹脂A-3、A-6については、反応時間を変更することによりイミド化率を16.0%、14.0%とした樹脂についても合成した。
上記樹脂層をNicolet iS20(Thermofisher社製)でATR法にて測定し、測定範囲4000~700cm-1、測定回数50回で測定を行った。1380cm-1付近(1350~1450cm-1、複数ピークがある場合はピーク強度が最大のもの)のピーク高さと1500cm-1付近(1460~1550cm-1、複数ピークがある場合はピーク強度が最大のもの)のピーク高さで割った値を樹脂のイミド化指数Aとし、窒素雰囲気下で10℃/分の昇温速度で昇温し350℃で1時間加熱した膜について、同様の方法でイミド化指数Bを算出し、イミド化指数Aをイミド化指数Bで割った値を樹脂のイミド化率として算出した。
【化47】
【0255】
〔合成例P-2~P-26:樹脂(P-2)~(P-26)の合成〕
合成例P-1において使用する原料の酸無水物、ジアミンの種類、仕込み比率を適宜変更した以外は樹脂(P-1)と同様の方法で樹脂(P-2)~(P-26)を合成した。樹脂(P-2)~(P-26)は、それぞれ、下記式(P-2)~(P-26)で表される繰返し単位を有する樹脂である。各繰返し単位の構造は、H-NMRスペクトルから決定した。下記構造中、括弧に添えた記号は後述の表に記載の値であり、各構造の含有モル比を表す。樹脂(P-3)~(P-20)については各構造の含有モル比であるA及びBについて後述する表に記載した。また、これらの樹脂の重量平均分子量(Mw)、イミド化率(%)については後述する表に記載した。
構造が同一であってMwが異なる樹脂は、ジアミン等量を適宜変更することにより得られた。また、構造が同一であってイミド化率が異なる樹脂は、反応温度を適宜変更することにより得られた。
【化48】
【化49】
【化50】
【0256】
〔合成例P-27:樹脂(P-27)の合成〕
4,4’-オキシジフタル酸二無水物 19.8g(63.8mmol)と、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル12.4g(57.4mmol)と4-アミノフェノール1.39g(12.8mmol)をNMP125mL中に溶解させたものを、窒素雰囲気下、200℃で3時間撹拌し、ポリイミドを得た。次いで室温でTEMPO(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル) 0.1gと2-イソシアナトエチルメタクリレート 29.7g(191.2mmol)を添加し、60℃に昇温した後にネオスタンU-600(日東化成(株)製、無機ビスマス)0.1gを加え、3時間撹拌した。得られたポリイミド溶液にテトラヒドロフラン 375mLを加え、メタノール1500mLに滴下し、ポリマーを沈殿させた。ろ過して採取したポリマーを減圧下、40℃で1日間乾燥し粉体としてポリイミドである樹脂(P-27)を得た。
【化51】
【0257】
〔合成例P-28~P-29:樹脂(P-28)~(P-29)の合成〕
合成例P-1において使用する原料の酸無水物、ジアミンの種類、仕込み比率、重合性基を有する化合物を適宜変更した以外は樹脂(P-27)と同様の方法で樹脂(P-28)~(P-29)を合成した。樹脂(P-28)~(P-29)は、それぞれ、下記式(P-28)~(P-29)で表される繰返し単位を有する樹脂である。各繰返し単位の構造は、H-NMRスペクトルから決定した。下記構造中、括弧に添えた記号は後述の表に記載の値であり、各構造の含有モル比を表す。また、これらの樹脂の重量平均分子量(Mw)、イミド化率(%)については後述する表に記載した。
【化52】
【化53】
【0258】
〔合成例P-30~P-32:樹脂(P-30)~(P-32)の合成〕
合成例P-1において使用する原料の酸無水物、ジアミンの種類、仕込み比率を適宜変更した以外は樹脂(P-1)と同様の方法で樹脂(P-30)~(P-32)を合成した。
樹脂(P-30)~(P-32)は、それぞれ、下記式(P-30)~(P-32)で表される繰返し単位を有する樹脂である。各繰返し単位の構造は、H-NMRスペクトルから決定した。下記構造中、括弧に添えた記号は後述の表に記載の値であり、各構造の含有モル比を表す。樹脂(P-30)~(P-32)については各構造の含有モル比であるA及びBについて後述する表に記載した。また、これらの樹脂の重量平均分子量(Mw)、イミド化率(%)については後述する表に記載した。
【化54】
【0259】
【表1】
【0260】
<実施例及び比較例>
各実施例において、それぞれ、下記表に記載の成分を混合し、各樹脂組成物を得た。また、各比較例において、それぞれ、下記表に記載の成分を混合し、各比較用組成物を得た。
具体的には、表に記載の各成分の含有量は、表の各欄の「質量部」の欄に記載の量(質量部)とした。溶剤の使用量は、組成物の固形分濃度が表の「固形分濃度(質量%)」となる量とし、各溶剤の「比率」の欄に記載の混合比(質量比)で混合したものを使用した。
得られた樹脂組成物及び比較用組成物を、孔径0.8μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルタを用いて加圧ろ過した。
また、表中、「-」の記載は該当する成分を組成物が含有していないことを示している。
【0261】
【表2】
【0262】
【表3】
【0263】
【表4】
【0264】
【表5】
【0265】
【表6】
【0266】
【表7】
【0267】
【表8】
【0268】
【表9】
【0269】
〔樹脂〕
・P-1~P-32:上記で合成した樹脂(P-1)~(P-32)
【0270】
〔重合性化合物〕
・C-1:NKエステル4G(新中村化学工業(株)製
・C-2:NKエステルTMPT(新中村化学工業(株)製)
・C-3:下記構造の化合物
・C-4:下記構造の化合物
・C-5:ビスコート#802(大阪有機化学工業(株)製)
・C-6:A-DCP(新中村化学工業(株)製)
・C-7:NKエステルA-9300S(新中村化学工業(株)製)
・C-8:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)
【化55】
【0271】
〔光重合開始剤〕
・D-1:下記構造の化合物
・D-2:IRGACURE OXE 01(BASF社製)
・D-3:TR-PBG-304(常州強力電子新材料社製)
・D-4:TR-PBG-3057(常州強力電子新材料社製)
・D-5:下記構造の化合物
・D-6:下記構造の化合物
【化56】
【0272】
〔化合物A〕
・(A-1)-1~(A-1)-31:下記構造の化合物
・(A-2)-1~(A-2)-3:下記構造の化合物
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【0273】
-化合物(A-1)-1の合成-
フラスコ中、4,4’-ジアミノジフェニルメタン 5.00 g、ブロモ酢酸エチル 23.1 g、炭酸カリウム 17.4 g、ヨウ化カリウム 10.5 g、アセトニトリル 79.0 gを混合し、加熱還流下で5時間撹拌した。室温に冷却後、酢酸エチル500 mLを添加し、ろ過で固体を除いた後に、ろ液を加熱減圧下で濃縮した。濃縮物を酢酸エチル100 mLで希釈後、ヘキサン400 mLを添加し、再結晶によりエステル体X-1を9.8 g得た(収率80%)。
1H-NMR,400MHz,δ(DMSO-d6) ppm:3.63 (12H, s), 3.65 (2H, s), 4.16 (8H, s), 6.43 (4H, d, J=8.7 Hz), 6.96 (4H, d, J=8.6 Hz).
フラスコ中、エステル体X-1 10.0 g、水素化アルミニウムリチウム 4.7 g、テトラヒドロフラン 364.0 gを混合し、加熱還流下で3時間撹拌した。0 ℃に冷却後、水 13.3 gを添加し、室温で1時間撹拌した。ろ過で固体を除いた後に、ろ液を加熱減圧下で濃縮した。得られた固体を水 50 mLに懸濁させ、50 ℃で1時間撹拌した後に、溶液と固体をろ過により分離した。得られた固体を風乾することで、化合物(A-1)-1を2.4 g得た(収率 31%)。
H-NMR,400MHz,δ(DMSO-d6) ppm:3.30-3.40 (8H, m), 3.50 (8H, q, J=6.06 Hz), 3.62 (2H, s), 4.71 (4H, t, J=5.44 Hz), 6.56 (4H, d, J=8.76 Hz), 6.93 (4H, d, J=8.68 Hz).
また、同様の方法により、化合物(A-1)-2~(A-1)-31、(A-2)-1~(A-2)-3を合成した。
【化61】
【化62】
【0274】
〔化合物B〕
・(B-1)-1~(B-1)-10:下記構造の化合物
【化63】
【0275】
〔増感剤〕
・E-1~E-6:下記式(E-1)~式(E-6)で表される化合物
【化64】
【0276】
〔酸化防止剤〕
・F-1:下記構造の化合物
・F-2:アデカスタブ CDA-10(ADEKA製)
・F-3:下記構造の化合物
【化65】
【0277】
〔金属接着性改良剤〕
・G-1:下記構造の化合物
・G-2:X-12-1293(信越化学工業株式会社製)
・G-3:KR-513(信越化学工業株式会社製)
・G-4:下記構造の化合物
・G-5:下記構造の化合物
【化66】
【0278】
〔マイグレーション抑制剤〕
・H-1~H-5:下記構造の化合物
【化67】
・H-5: CDAー1M(株式会社ADEKA製)
【0279】
〔金属錯体〕
・I-1~I-2:下記構造の化合物
【化68】
【0280】
〔光吸収剤〕
・J-1:2,2’,3,3’-テトラヒドロ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビ(1H-インデン)-5,5’,6,6’,7,7’ヘキサノールと1,2-ナフトキノン-(2)-ジアゾ-5-スルホン酸とのエステル(NQD(ナフトキノンジアジド))
・J-2:下記構造の化合物
・J-3:下記構造の化合物
【化69】
【0281】
〔塩基発生剤〕
・K-1~K-4:下記構造の化合物
【化70】
【0282】
〔化合物X〕
・X-1~X-3:下記構造の化合物
【化71】
【0283】
〔化合物Y〕
・Y-1~Y-7:下記構造の化合物
【化72】
【0284】
〔溶剤〕
・L-1:γ-ブチロラクトン
・L-2:ジメチルスルホキシド
・L-3:乳酸エチル
・L-4:N-メチル-2-ピロリドン
・L-5:γ-バレロラクトン
・L-6:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
・L-7:3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
【0285】
〔界面活性剤〕
・M-1:F-554(DIC社製)
・M-2:BYK-333(BYK社製)
【0286】
<評価>
〔解像性の評価〕
各実施例又は比較例で調製した樹脂組成物又は比較用組成物を、表面に銅薄層が形成された樹脂基材の銅薄層の表面にスピンコート法により層状に適用して、110℃で5分間乾燥し、製膜後の膜厚が4μmの樹脂組成物層を形成した後、得られた樹脂組成物層を、0.5~10μmまで0.5μm刻みのパターンが形成されたスクエアビアマスクを用いて、i線ステッパー(Canon社製:FPA-3000i5、NA=0.5、σ=0.7)を使用して100~800mJ/cmの範囲で50mJ/cm刻みの各露光量で露光した。続いてシクロペンタノンで未露光部が除去されるまで現像し、PGMEAで30秒間リンスし、さらに窒素雰囲気下で10℃/分の昇温速度で昇温し、230℃で1時間加熱した。
得られた硬化物の最小開口マスク径を走査型顕微鏡S-4800(日立ハイテクノロジーズ製)で開口パターン部の断面観察により判定し、下記の評価基準に従って評価した。最小開口マスク径は、上記の各露光量のうち、少なくとも1つの露光量で開口パターンが形成されたマスク径のうち、最小のものとした。また、400mJ/cmで露光した際の現像前後の膜厚より残膜率(%、現像後の膜厚/現像前の膜厚×100)を算出した。残膜率が80%未満となる場合、開口マスクサイズによらず、再配線層を形成する上で好ましくない。
(評価基準)
A:最小開口マスク径が3μm以下であり、かつ現像残膜率が90%以上であった。
B:最小開口マスク径が3μmを超え4μm以下であり、かつ現像残膜率が90%以上であった。
C:最小開口マスク径が4μmを超え5μm以下であり、かつ現像残膜率が90%以上であった。
D:最小開口マスク径が5μmを超えるか、現像残膜率が80%未満であった。
【0287】
〔耐薬品性〕
各実施例又は比較例で調製した樹脂組成物又は比較用組成物を、それぞれ、シリコンウエハ上にスピンコート法により層状に適用して、110℃で5分間乾燥し、製膜後の膜厚が15μmの樹脂組成物層を形成した。次いで、樹脂組成物層に対し、ブロードバンド露光機(ウシオ電機株式会社製:UX-1000SN-EH01)を使用して、400mJ/cmで全面露光を行った。次いで、クリーンオーブン(Koyo製、CLH-21)を用いてN雰囲気下で230℃で1時間の加熱処理を行い、樹脂組成物又は比較用組成物の硬化膜を得た。得られた硬化膜について下記の薬品に下記の浸漬条件で浸漬し、浸漬前後の膜厚より残膜率(浸漬後膜厚/浸漬前膜厚×100(%))を算出した。下記評価基準に従い評価を行い、評価結果を「薬品耐性」の欄に記載した。残膜率が高いほど、耐薬品性に優れているといえる。
・薬品:ジメチルスルホキシド(DMSO)と2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液の90:10の混合物
・浸漬条件:60℃で30分
-評価基準-
A:上記残膜率が95%以上であった。
B:上記残膜率が80%以上95%未満であった。
【0288】
〔信頼性〕
各実施例及び比較例において、それぞれ、樹脂組成物又は比較用組成物をCuの2μmL/S(ラインアンドスペース)配線が形成されたシリコンウエハ上にスピンコート法により塗布し樹脂組成物層を形成した。得られた樹脂組成物層を適用したシリコンウエハをホットプレート上で、110℃で5分間乾燥し、シリコンウエハ上に製膜後の膜厚が約15μmの厚さの均一な樹脂組成物層を得た。得られた樹脂組成物層に対して、ウシオ露光機(光源: 500W/m超高圧水銀灯)により400mJ/cmの露光エネルギーでシリコンウエハ全面を露光した。上記露光後の樹脂組成物層を、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で昇温し、230℃で1時間加熱し硬化物を得た。
得られた硬化物に対し、150℃/1000時間を実施し、Cu配線と硬化物の界面の酸化銅の膜厚を走査型電子顕微鏡(S-4800)((株)日立ハイテクノロジーズ製)にて観察した。測定は10か所を観察した平均値で算出した。
(評価基準)
A:酸化銅の膜厚は150nm未満であった。
B:酸化銅の膜厚は150nm以上200nm未満であった。
【0289】
〔製膜性〕
各実施例又は比較例で調製した樹脂組成物又は比較用組成物を、それぞれ、温度23℃、湿度50%の環境下において、シリコンウエハ上にスピンコート法により3000rpmで塗布し、スピンコート直後および、スピンコート後に5分間静置した後の膜面を目視により観察した。
-評価基準-
A:スピンコート直後、および静置後に、膜の白濁が観察されなかった。
B:スピンコート直後に膜の白濁が観察されなかったが、静置後に膜の白濁が観察された。
【0290】
〔保存安定性〕
各実施例又は比較例で調製した樹脂組成物又は比較用組成物を、23℃恒温槽で168時間保管したときの沈殿の発生有無および粘度変化率=|((保管後の粘度/保管前の粘度)×100)|を評価した。粘度測定はTV-100E形粘度計(東機産業製)を用いて行った。
(評価基準)
A: 粘度変化率が2%未満であり、沈殿は観察されなかった。
B: 粘度変化率が2%以上5%未満であり、沈殿は観察されなかった。
C: 粘度変化率が5%以上10%未満であり、沈殿は観察されなかった。
【0291】
以上の結果から、本発明に係る樹脂組成物を用いることにより解像性が向上することが分かる。これと比較して、化合物Aを含有しない比較例1に係る組成物を用いた場合には、解像性に劣ることが分かる。