(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100349
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】暗い色のフォトルミネセンス材料
(51)【国際特許分類】
C09K 11/64 20060101AFI20250626BHJP
C09K 11/02 20060101ALI20250626BHJP
C09B 45/16 20060101ALI20250626BHJP
C09B 5/62 20060101ALN20250626BHJP
C09B 31/072 20060101ALN20250626BHJP
【FI】
C09K11/64
C09K11/02 Z
C09B45/16 A
C09B5/62
C09B31/072
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024188399
(22)【出願日】2024-10-25
(31)【優先権主張番号】23219378.9
(32)【優先日】2023-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー・テレス
【テーマコード(参考)】
4H001
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001XA08
4H001XA13
4H001XA38
4H001YA63
4H001YA66
(57)【要約】
【課題】 良好な発光特性を有しつつ光の下で美しい暗い色を有するフォトルミネッセンス材料を得る。
【解決手段】 本発明は、19.8~54.8重量%のポリマーマトリックスと、45~80重量%のフォトルミネセンス化合物と、0.2~5重量%の第1の色素系とを含み、随意的に、0~1重量%の多孔質シリカ、第2の色素系又は添加剤を含むフォトルミネセンス材料に関し、第2の色素系と添加剤の合計割合は、0~15重量%であり、第1の色素系は、緑色顔料、青色顔料及び赤色顔料によって形成される三色顔料、及び合成黒色顔料から選択される一又は複数種類の色素を含む。本発明は、さらに、全体的にこのフォトルミネッセンス材料によって作られている又は被覆されている物品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
19.8~54.8重量%のポリマーマトリックスと、45~80重量%のフォトルミネセンス化合物と、0.2~5重量%の第1の色素系とを含み、随意的に、0~1重量%の多孔質シリカ、第2の色素系又は添加剤を含むフォトルミネセンス材料であって、
前記第2の色素系と前記添加剤の合計割合は、0~15重量%であり、前記第1の色素系は、緑色顔料、青色顔料及び赤色顔料によって形成される三色顔料、及び合成黒色顔料から選択される一又は複数種類の色素を含む
ことを特徴とするフォトルミネセンス材料。
【請求項2】
前記合成黒色顔料は、ソルベントブラック27、ブリリアントブラックBN、ペリレンブラック、又はこれら3つの組み合わせである
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスを29.7~49.7重量%含み、前記フォトルミネッセンス化合物を50~70重量%含み、前記第1の色素系を0.3~4重量%含む
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項4】
前記ポリマーマトリックスを29.7~49.7重量%含み、前記フォトルミネッセンス化合物を50~70重量%含み、前記第1の色素系を0.3~4重量%含む
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項5】
前記第1の色素系は、0.5~4重量%、好ましくは0.7~2重量%、の三色の顔料を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項6】
前記第1の色素系は、フォトルミネセンス材料の合計重量に対して0.2~3重量%、好ましくは0.4~1.5重量%、より好ましくは0.4~1重量%、の三色の顔料と、フォトルミネセンス材料の合計重量に対して0.01~1重量%、好ましくは0.02~0.5重量%、より好ましくは0.02~0.2重量%、の合成黒色顔料とからなる
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項7】
緑色顔料、青色顔料及び赤色顔料の割合はそれぞれ、三色の顔料の合計重量に対して20~40重量%である
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項8】
緑色顔料、青色顔料及び赤色顔料は、三色の顔料において同じ割合で含まれる
ことを特徴とする請求項7に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項9】
前記第1の色素系は、0.2~2重量%、好ましくは0.3~1.5重量%、より好ましくは0.3~1重量%、の割合の合成黒色顔料からなる
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項10】
前記第2の色素系は、フォトルミネセンス材料の合計重量に対して0.01~1重量%、好ましくは0.01~0.5重量%、より好ましくは0.01~0.3重量%の割合でカーボンブラックを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項11】
前記多孔質シリカは、0.01~1重量%、好ましくは0.07~0.3重量%、より好ましくは0.09~0.2重量%の割合で含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項12】
前記多孔質シリカは、珪藻の骨格から得られたものである
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項13】
前記フォトルミネセンス化合物は、希土類ドープされたアルミン酸アルカリ土類の誘導体である顔料を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項14】
前記顔料は、式SrxAlyOz:Eu2+、Dy3+のユーロピウム及びジスプロシウムドープされたアルミン酸アルカリ土類である
ことを特徴とする請求項13に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項15】
前記顔料は、Sr4Al14O25:Eu2+、Dy3+である、かつ/又はSrAl2O4:Eu2+、Dy3+である
ことを特徴とする請求項14に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項16】
前記フォトルミネセンス化合物は、有機又は鉱物性の透光性の殻内に封入された前記顔料からなる
ことを特徴とする請求項13に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項17】
前記ポリマーマトリックスは、アクリルファミリー、ポリアミドファミリー、ポリオレフィンファミリー、エポキシファミリー、ポリウレタンファミリー、フルオロエラストマーファミリー及びシリコーンから選択される一又は複数種類の樹脂を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項18】
有機の前記透光性の殻は、アクリルファミリー、ポリアミドファミリー、ポリオレフィンファミリー、エポキシファミリー、ポリウレタンファミリー、フルオロエラストマーファミリー及びシリコーンから選択される一又は複数種類の樹脂を含み、
鉱物性の前記透光性の殻は、シリカを含む
ことを特徴とする請求項16に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項19】
前記フォトルミネッセンス化合物は、様々な粒径を有する顔料を含む
ことを特徴とする請求項13に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項20】
前記顔料は、500nm~10μmの直径D1を中心とする少なくとも第1の粒径範囲と、10μm~500μmの直径D2を中心とする第2の粒径範囲とを有する
ことを特徴とする請求項19に記載のフォトルミネセンス材料。
【請求項21】
請求項1に記載のフォトルミネッセンス材料によって作られている又は被覆されている
ことを特徴とする物品。
【請求項22】
計時器のコンポーネントである
ことを特徴とする請求項21に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光性能が最適化された暗い色のフォトルミネッセンス材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、透光性ないし半透光性の材料と、希土類元素ドープされた鉱物酸化物から作られたフォトルミネッセンス顔料との混合物によって作られた蓄光材料が開示されている。例として、50%のホウケイ酸塩と50%のユーロピウム及びジスプロシウムドープされたアルミン酸ストロンチウムとの混合物(Eu2+、Dy3+:SrAl2O4)、50%のアクリル樹脂と50%のユーロピウム及びジスプロシウムドープされたアルミン酸ストロンチウムとの混合物がある。これらの材料の発光減衰は、初期は指数関数的である。光エネルギーで飽和させた後に暗所に置かれた材料に対して数十Cd/m2の輝度から始まると、暗所における10分後の輝度は、1Cd/m2未満になる。そして、発光減衰は、数mCd/m2で漸近値の方へとゆっくり近づく。このおかげで、これらの材料が最大12時間暗所で可視性の発光を持続させる。ダイビング機器の受動的可読性が良好であるためには、これらの発光材料が必要であり、したがって、発光性能の進歩が待ち望まれている。
【0003】
美的な理由のために、これらのフォトルミネッセンス材料を顔料や添加剤の混合物である色素系を用いて染色することができる。
【0004】
色素顔料を含むフォトルミネッセンス材料に用いられる化合物に、発光特性を抑制する性質があることが認識されている。蓄光材料の発光は、フォトルミネッセンス材料の様々な化合物の間の物理化学的相互作用の結果として発生する。
【0005】
したがって、色づけ性能と発光性能を一緒に最適化することは難しい。黒色に対して、そして、一般的には暗い色に対して、様々なカーボンブラックを用いて試験を行った。このカーボンブラックが蓄光顔料の吸収と発光の範囲において過度に光を吸収し、このことが材料の発光性能に影響を与えたことを観察した。したがって、色とフォトルミネセンスの間で、最適なものを常に見つける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、良好な発光特性を有しつつ、光の下で美しい黒色、一般的には光の下で美しい暗い色、を得ることを可能にする新規の組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような状況で、本発明は、赤色、緑色及び青色である三原色の三色である顔料の混合物、又はC.1ソルベントブラック27、ブリリアントブラックBN又はペリレンブラックのタイプの合成黒色顔料、又は三色の顔料と合成黒色顔料の組み合わせを配合物に加えることを提案するものである。この組成物は、暗い色を得るために三原色の三色を含むことができ、この場合、合成黒色顔料を加えることによって色が調整される。代わりに、少量のカーボンブラックを加えることによって色を調整することができる。別の実施形態において、蓄光の強さが良好な黒色を得るために、組成物は、合成黒色顔料のみを含み、随意的に、少量のカーボンブラックも含む。
【0008】
随意的に、前記フォトルミネセンス材料は、さらに、発光特性を高めるために藻類から得られた多孔質シリカを含む。前記多孔質シリカは、珪藻の骨格から得られたものである。これらの珪藻の骨格は、シリカ骨格を有する単細胞生物である微細藻類である。実際に、最新の生物学的研究によると、プランクトンを構成する単細胞藻類である珪藻は、暗い深海においても太陽光を非常に高い効率で吸収して効率的に光合成することができるシリカナノセルによって構成している。フォトルミネッセンス材料に対して1重量%以下の限られた割合の多孔質シリカを加えることのおかげで、発光特性を向上させることができる。
【0009】
具体的には、本発明は、19.8~54.8重量%のポリマーマトリックスと、45~80重量%のフォトルミネセンス化合物と、0.2~5重量%の第1の色素系とを含み、随意的に、0~1重量%の多孔質シリカ、第2の色素系又は添加剤を含み、前記第2の色素系と前記添加剤の合計割合は、0~15重量%であり、前記第1の色素系は、緑色顔料、青色顔料及び赤色顔料によって形成される三色顔料、及び合成黒色顔料から選択される一又は複数種類の色素を含む、フォトルミネセンス材料に関する。
【0010】
本発明は、さらに、全体的に前記フォトルミネッセンス材料によって作られた、又は前記フォトルミネッセンス材料で被覆された、物品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、全体的に物品を作るために、また、物品を被覆するために、用いることができる暗い色のフォトルミネセンス材料に関する。この物品は、例えば、計時器のコンポーネントであることができる。特に、前記物品は、ミドル部、裏部、ベゼル、リュウズ、押しボタン、ブレスレットリンク、ブレスレット、タングバックル、クラスプ、表盤、フランジ、日付ディスク、針、及び表盤のインデックスからなる群から選択される外側のコンポーネントであることができる。なお、これらがすべてを網羅しているわけではない。
【0012】
前記フォトルミネッセンス材料は、ポリマーマトリックス、フォトルミネッセンス化合物、第1の色素系を含み、随意的に、多孔質シリカ、添加剤、及び第2の色素系を含む(からなる)。
【0013】
本発明のより具体的な主題を構成する第1の色素系は、赤色、緑色及び青色によって形成される三原色の原色顔料と、好ましくはソルベントブラック27、ペリレンブラック及び/又はブリリアントブラックBNである、合成黒色顔料とから選択される一又は複数の色素を含む。前記第1の色素系は、0.2~5重量%、好ましくは0.3~4重量%、より好ましくは0.4~2重量%、含まれる。
【0014】
例えば、赤色の主顔料は、カーミン(コチニール由来のラッカー顔料)、アゾ、キナクリドン又はペリレンのタイプであることができる。緑色の主顔料はフタロシアニン又はナフトールのタイプであってもよく、青色の主顔料はアントラキノン、フタロシアニン又はペリレンのタイプであってもよい。ソルベントブラック27は、式C17H13N3O4Cr1/2を有する。たとえば、ブランド名、Polysynthren(登録商標) Black H、として販売されている。ブリリアントブラックBNは、ブラックPNとも呼ばれ、アゾ族の色素であり、式C28H17N5Na4O14S4を有する。例えば、Sensient Cosmetic Technologiesによってブランド名、NOIR BRILLLANT BN 80% E151、として得ることができる。当業者であれば、ペリレンブラックを使用することも可能である。
【0015】
第1の代替的実施形態によると、第1の色素系は、三色の顔料のみを含む(からなる)。この代替的実施形態において、フォトルミネセンス材料の合計重量に対する三色の割合は、0.5~4重量%、好ましくは0.7~2重量%、である。好ましくは、3つの顔料は、同じ割合で存在する。例えば、三色の顔料を1.5重量%まで加えると、各顔料は合計重量に対して0.5重量%となるように加えられる。この同じ割合は、各顔料の割合を20~40%とすることによって、無視することもできる。第2の代替的実施形態において、第1の色素系は、フォトルミネセンス材料の合計重量に対して0.2~3重量%、好ましくは0.4~1.5重量%、より好ましくは0.4~1重量%、の三色の顔料と、フォトルミネセンス材料の合計重量に対して0.01~1重量%、好ましくは0.02~0.5重量%、より好ましくは0.02~0.2重量%、の合成黒色顔料とを含む(からなる)。第3の代替的実施形態において、第1の色素系は、フォトルミネセンス材料の合計重量に対して0.2~2重量%、好ましくは0.3~1.5重量%、より好ましくは0.3~1重量%の合成黒色顔料のみを含む。
【0016】
前記ポリマーマトリックスは、19.8~54.8重量%、好ましくは29.7~49.7重量%、より好ましくは34.6~44.6重量%、含まれる。なお、前記ポリマーマトリックスの上限は、多孔質シリカを含まず、第2の色素系を含まず、添加剤を含まないフォトルミネセンス材料に対して計算される。これらの化合物の1つの存在下で、この上限値は、フォトルミネセンス材料におけるすべての化合物が100%を超えないように削減される。ポリマーマトリックスの場合、ポリマーマトリックスは、可視領域において透光性ないし半透光性のすべてのポリマーを含みうる。例えば、前記ポリマーマトリックスは、アクリルファミリー、ポリアミドファミリー、ポリオレフィンファミリー、エポキシファミリー、ポリウレタンファミリー、フルオロエラストマーファミリー及びシリコーンから選択される一又は複数種類の樹脂であるポリマーであることができる。
【0017】
前記フォトルミネセンス化合物は、45~80重量%、好ましくは50~70重量%、より好ましくは55~65重量%、含まれる。前記フォトルミネセンス化合物は、顔料、又は透光性の殻内に封入された顔料からなることができる。前記顔料は、好ましくは、希土類ドープされたアルミン酸アルカリ土類の誘導体である。特に、前記顔料は、式SrxAlyOz:Eu2+、Dy3+のユーロピウム及びジスプロシウムドープされたアルミン酸ストロンチウムである。特に、前記顔料は、Sr4Al14O25:Eu2+、Dy3+、又はSrAl2O4:Eu2+、Dy3+であることができ、随意的に、フォトルミネセンス化合物中に両方が含まれていることができる。有利なことに、前記顔料は、体積において顔料を最適に分布させ自由空間を避けるように、異なる粒径を有することができる。また、このように体積において異なる粒径が存在することのおかげで、短期間にわたっての高い光強度の原因となる浅い表面トラップを形成する小さな粒子と、長期間にわたっての光残留の原因となるより深いトラップを形成する大きな粒子とを組み合わせることが可能になる。例として、前記顔料は、500nm~10μm、理想的には500nm~5μm、の直径D1を中心とする第1の粒径範囲、10μm~500μm、理想的には10μm~20μm、の直径D2を中心とする第2の粒径範囲、を有することができ、粒径は、レーザー粒径分析ISO 13320:2020によって測定され、これは随意的に、二次電子イメージングを用いたSEM分析によって補足される。なお、2つを超える数の粒径の小部分をふるいにかけてから組み合わせることができる。例えば、20重量%の500nm~5μmの第1の小部分、60重量%の5μm~20μmの第2の小部分、20重量%の20μm~50μmの第3の小部分を有することが可能となる。
【0018】
随意的に、前記顔料を透光性の有機又は鉱物性の殻内に封入することができる。前記有機殻は、典型的には、ポリマーマトリックスに対して言及したポリマーから選択することができる。鉱物性の殻は、例えば、ゾルゲル法によって得られるシリカ(SiO2)殻であることができる。鉱物性の殻の他の例としては、酸化ジルコニウム(ZrO2)や酸化アルミニウム(Al2O3)などがある。
【0019】
前記フォトルミネセンス材料は、随意的に、さらに、合計で、0~15重量%、好ましくは0~5重量%、第2の色素系及び添加剤を含む。有利なことに、前記フォトルミネセンス材料は、0.5~5重量%の色素系及び添加剤を含む。前記第2の色素系は、好ましくは、フォトルミネッセンス顔料の発光波長範囲において吸収しない有機色素を含む。この有機色素は、吸収がよりUV範囲にあり発光が可視スペクトルにある蛍光顔料又は色素であることができる。例えば、商品名RadiantやAralon(登録商標)のような有機蛍光顔料又は色素である。また、蓄光顔料の発光波長において吸収率が低い半透光性の顔料又は色素であることができる。例えば、Clariantによる半透光性の顔料又は色素であることができる。前記第2の色素系は、暗い色を調整するためにカーボンブラックを含むこともできる。カーボンブラックの割合は0~1重量%であり、好ましくは最大0.5重量%、より好ましくは最大0.3重量%、である。カーボンブラックが存在する場合の下限は0.01重量%である。したがって、カーボンブラックの割合は、0.01~1重量%、好ましくは0.01~0.5重量%、より好ましくは0.01~0.3重量%、である。
【0020】
金属性顔料及び真珠光沢効果がある顔料、ポリマーマトリックスを保護するための耐UV添加剤、添加剤の分散を促進させるシランのような分散剤、混合物の粘度パラメーターに適応させるためのシリカタイプのナノメートル規模のフィラーのような他の添加剤も加えることができる。
【0021】
随意的に、前記フォトルミネセンス材料は、珪藻の骨格から得られた多孔質シリカを含むことができる。典型的には、孔の平均直径は、500nmのオーダーであることができる。随意的に、前記多孔質シリカは、合成多孔質シリカであることができる。合成シリカの場合、孔の平均直径は、典型的には、0.1μm~3μmである。前記多孔質シリカは、0~1重量%、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.07~0.3重量%、さらに好ましくは0.09~0.2重量%、含まれる。
【0022】
全体的にフォトルミネセンス材料から作られた物品を製造する方法は、ポリマーマトリックスを形成するように意図された一又は複数種類のポリマーを、好ましくは分散剤と、混合することを伴う。この初期の混合は、随意的に事前に封入されていてもよい、フォトルミネッセンス顔料に対して、行われる。そして、第1の色素系を、任意の第2の色素系、添加剤及び多孔質シリカとともに、この第2の混合物に加える。この混合物は、スピードミキサーやパドルミキサーを用いて液体樹脂から作ることができる。そして、得られた混合物を押し出しによって成形することができる。また、熱可塑性混合物を製造し、射出成形に再利用可能な顆粒に変換するために、混合物を二軸押出機又は高速ミキサーによって作ることもできる。
【0023】
フォトルミネセンス材料で被覆された物品を製造する方法は、スクリーン印刷、パッド印刷、スプレーコーティングなどの技術によって基材上に被覆を堆積させることを伴う。
【0024】
全体的に前記フォトルミネセンス材料によってサンプルを作るための試験を、三原色とソルベントブラック27を含む色素系を、SrAl2O3:Eu2+、Dy3+のフォトルミネッセンス顔料を60重量%のフィラー含有量を有するエポキシ樹脂に加えることによって、行った。3原色は0.6重量%含まれ、各色について同じ分布であり、ソルベントブラック27の割合は0.05重量%であった。また、同じベース材料を用い、合計重量に対して0.4重量%の割合のソルベントブラック27を色素系として用いて試験を行った。また、同じベース材料を用い、合計重量に対して1.5重量%三原色を、各色ごとに0.5重量%の割合で、色素系として用いて試験を行った。
【0025】
また、追加の0.2重量%の多孔質シリカを用いて試験を行った。
【0026】
サンプルをD65ライトブースの下で観察した。並行して、異なる粒径と異なる構造を有するカーボンブラック、を含む様々な黒色顔料、又は同じベース材料を用いた酸化鉄III(Fe3O4)のような鉱物、を用いて比較試験を行った。
【0027】
この材料を真空注型成形によって成形した。
【0028】
鉱物酸化物を用いると、発光材料が非常に早く消える。カーボンブラックを用いると、色は非常に暗くなるが、単独で用いると、輝度の低下が大きすぎる。三原色単独、ソルベントブラック27単独及びこれら2つの組み合わせを用いた試験によって、光の下で満足できる色が得られ、発光性能が15%向上した。多孔質シリカを用いた試験では、10分後に20%発光特性が増加した。この発光特性は、ISO 17514-2003に従って測定した。
【外国語明細書】