(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010037
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】医療用電子ビーム出力装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A61N5/10 F
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024105188
(22)【出願日】2024-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2023-0084840
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2024-0074851
(32)【優先日】2024-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522416217
【氏名又は名称】ラデクセル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RADEXEL INC.
【住所又は居所原語表記】301-ho, 10, Chunghon-gil 52beon-gil, Chuncheon-si, Gangwon-do 24437, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヌリ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミンシク
(72)【発明者】
【氏名】バン,ジョンベ
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AA01
4C082AC06
4C082AE01
4C082AG12
4C082AR02
4C082AR05
(57)【要約】
【課題】加速された電子ビームの方向を調整して出力することによって、電子ビームを狭い領域を通過させてターゲット部位に照射することができ、電子ビームを加速された方向の直線出力領域だけでなく、直線出力領域から外れた側面領域にも照射できる医療用電子ビーム出力装置を提供すること。
【解決手段】本開示は、医療用電子ビーム出力装置に関し、本電子ビーム出力装置は、ペンシルビーム状の電子ビームを発生させる電子ビーム発生部と、前記電子ビーム発生部で発生した前記電子ビームを受信し、前記受信した電子ビームを加速させる電子ビーム加速部と、前記電子ビーム加速部から受信した前記電子ビームが通過し、ターゲット部位に対向して配置されるか、又は前記ターゲット部位の内部通路に進入するためのカテーテルと、前記カテーテルに設けられ、前記カテーテルから出力される前記電子ビームを屈折させる磁場を発生させる第1磁場発生部とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンシルビーム状の電子ビームを発生させる電子ビーム発生部と、
前記電子ビーム発生部で発生した前記電子ビームを受信し、前記受信した電子ビームを加速させる電子ビーム加速部と、
前記電子ビーム加速部から受信した前記電子ビームが通過し、ターゲット部位に対向して配置されるか、又は前記ターゲット部位の内部通路に進入するためのカテーテルと、
前記カテーテルに設けられ、前記カテーテルから出力される前記電子ビームを屈折させる磁場を発生させる第1磁場発生部と、
を含む、電子ビーム出力装置。
【請求項2】
前記第1磁場発生部は、
前記カテーテルの末端部の周囲に沿って配列される複数の磁性体を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項3】
前記第1磁場発生部は、
前記カテーテルの末端部に互いに対向して配置される第1磁性体及び第2磁性体を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項4】
前記第1磁性体と前記第2磁性体は、
円弧状の断面形状を有する永久磁石であることを特徴とする請求項3に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項5】
前記第1磁性体と前記第2磁性体は、
前記カテーテルを通過する前記電子ビームのパルスと同期化された磁場を発生させるパルス電磁石であることを特徴とする請求項3に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項6】
前記第1磁場発生部は、前記カテーテルに対して相対回転及び相対移動が可能に連結され、
前記電子ビーム出力装置は、前記カテーテルに対して前記第1磁場発生部を相対回転及び相対移動させる第1磁場発生部駆動部を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項7】
前記電子ビーム発生部は、第1出力強度の電子ビームを発生させる第1出力モード又は第2出力強度の電子ビームを発生させる第2出力モードで作動し、
前記第1出力強度は、前記第2出力強度よりも小さい強度を有することを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項8】
前記電子ビーム加速部は、
高周波を発生させるRF発生部と、
前記RF発生部から送信された前記高周波によって生成された電場によって前記電子ビーム発生部から受信した前記電子ビームを加速させる加速管と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項9】
前記電子ビーム加速部は、
前記加速管を冷却させる加速管冷却部を更に含むことを特徴とする請求項8に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項10】
前記加速管、前記カテーテル及び前記第1磁場発生部のうちの少なくとも1つに真空を形成する真空ポンプを更に含むことを特徴とする請求項8に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項11】
前記カテーテルは、
前記加速管に分離可能に連結されることを特徴とする請求項8に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項12】
前記カテーテルは、
前記加速管に一体に連結されることを特徴とする請求項8に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項13】
前記カテーテルは、前記加速管に対して相対回転可能に連結され、
前記電子ビーム出力装置は、前記加速管に対して前記カテーテルを相対回転させるカテーテル駆動部を更に含むことを特徴とする請求項8に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項14】
前記カテーテルは、長さ調整が可能であり、
前記電子ビーム出力装置は、前記カテーテルの長さが調整されるように前記カテーテルの特定部位を前記加速管から近づく方向、又は前記加速管から遠ざかる方向に移動させるカテーテル駆動部を更に含むことを特徴とする請求項8に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項15】
前記カテーテルは、長さ調整が可能であり、
前記カテーテル駆動部は、前記カテーテルの長さが調整されるように前記カテーテルの特定部位を前記加速管から近づく方向、又は前記加速管から遠ざかる方向に移動させ、
前記カテーテル駆動部は、まず前記カテーテルの長さを調整して前記カテーテルの末端部を特定の深さにある前記ターゲット部位の内部通路に固定させた後、前記カテーテルを回転させて前記カテーテルの末端部が前記ターゲット部位に向かうようにすることを特徴とする請求項13に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項16】
前記電子ビーム発生部と前記電子ビーム加速部を取り囲んで前記カテーテルが連通し、前記電子ビーム発生部と前記電子ビーム加速部から漏れる前記電子ビーム又は2次的に発生するX線を遮蔽する遮蔽部を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項17】
前記電子ビーム加速部に連結され、前記電子ビーム加速部、前記カテーテル及び前記第1磁場発生部を移動及び回転させるロボットアームを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項18】
前記電子ビーム発生部、前記電子ビーム加速部及び前記第1磁場発生部に電源を供給する電源部を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム出力装置。
【請求項19】
前記カテーテルの末端部の円周に沿って配置され、加速された電子ビームを前記カテーテルの中心軸に集中させる更に他の磁場を発生させる第2磁場発生部を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用電子ビーム出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用放射線出力装置は、ターゲット部位の治療のためにターゲット部位に放射線を出力する装置である。ここで、ターゲット部位は病変組織であり、病変組織は良性腫瘍組織と悪性腫瘍組織を含むことができる。そして、放射線はターゲット部位に出力され、ターゲット部位の成長を遅延するか、又はターゲット部位を破壊することができる。例えば、放射線はX線、電子ビーム、陽子及び炭素イオンを含むことができる。
【0003】
医療用放射線出力装置は、ターゲット部位に出力する放射線の種類に応じて、医療用X線出力装置、医療用電子ビーム出力装置、医療用陽子出力装置及び医療用炭素イオン出力装置に分類することができる。前記医療用放射線出力装置のうち、医療用電子ビーム出力装置は、電子ビームをターゲット部位の表面と深部組織(underlying tissue)の一定の深さに集中させることができる。前記医療用電子ビーム出力装置は、ターゲット部位の周辺及び一定の深さ以上に位置する正常部位に伝達される線量を最小化できるという長所から広く用いられている。ここで、正常部位は正常組織であり得る。
【0004】
従来の医療用電子ビーム出力装置は、加速された電子ビームが散乱され、前方の広い領域に向かって噴射され、電子ビームのうちターゲット部位に向かうものを除いた残りは、アプリケータに吸収されることによって、電子ビームがターゲット部位と類似する形状を有する状態でターゲット部位に照射された。
【0005】
ところが、従来の医療用電子ビーム出力装置は、電子ビームが前方に散乱及び拡散する形状(cone beam shape)にのみ出力できるので、電子ビームの出力領域が、電子ビームが加速された方向である前方に向かい合う平面領域に制限されていた。
【0006】
そのため、従来の医療用電子ビーム出力装置は、電子ビームを生体内部の狭い進入路を通過させて生体内部の空間に位置するターゲット部位に出力する場合、電子ビームをターゲット部位の側面部位に出力する場合及び電子ビームの出力領域を複数の区域に分けてターゲット部位に互いに異なる強度で出力する場合、電子ビームをターゲット部位に目標した線量だけ伝達し難いという問題があった。
【0007】
具体的に、従来技術では、電子ビームを生体内部の狭い進入路を通過させて生体内部の空間に位置するターゲット部位に出力させる場合、電子ビームを生体内部の狭い進入路に通過させるために、生体内部の狭い進入路の両側面に電子ビームを吸収するアプリケータを設けることによって、電子ビームが生体の内部空間のうち前方に位置する一部の領域にのみ出力される恐れがあり、ターゲット部位の治療効果に乏しいという問題があった。
【0008】
また、従来技術では、生体内部の狭い進入路の両側面に電子ビームを吸収するアプリケータを設けていない場合、電子ビームがターゲット部位以外の正常部位まで照射され、正常部位に副作用が発生するという問題があった。
【0009】
更に、従来技術では、ターゲット部位の区域によって病変の大きさと病変の進行の程度が異なり、ターゲット部位の各区域に出力される電子ビームの線量の調整が必要であるにもかかわらず、ターゲット部位に出力される電子ビームの線量を調整できないという問題があった。
【0010】
例えば、電子ビームを生体内部の狭い進入路を通過させて生体内部の空間に位置するターゲット部位に出力する場合は、腹腔鏡、胸腔鏡を用いた最小侵襲手術、乳癌における乳房温存手術、口腔、鼻腔、鼻咽頭、咽頭、喉頭、食道、気道、肛門、直腸、大腸などの腫瘍に対する治療であり、電子ビームの強度をターゲット部位の区域に応じて調整する場合は、多様な腫瘍から肉眼で確認される部位に高線量を、顕微鏡的に腫瘍の存在が予想される部位に低線量を照射する治療であり得る。
【0011】
また、従来技術は、加速された電子ビームがアプリケータを通過してターゲット部位に到達するまで複数の部分で散乱又は吸収されるため、電子ビームの出力効率が低下するという問題があった。具体的に、従来技術は、加速された電子ビームの散乱過程の吸収、電子ビームのアプリケータの吸収、電子ビームのアプリケータから生体部位まで到達する間に空気中への吸収などによって、加速された電子ビームのうち相当な割合がターゲット部位に到達できなかった。そのため、従来技術は、低出力の装置では迅速な治療ができず、迅速な治療のためには、高出力の装置が必要であるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、加速された電子ビームの方向を調整して出力することによって、電子ビームを狭い領域を通過させてターゲット部位に照射することができ、電子ビームを加速された方向の直線出力領域だけでなく、直線出力領域から外れた側面領域にも照射できる医療用電子ビーム出力装置を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、電子ビームの強度を調整して出力することによって、ターゲット部位の区域に応じて適した線量の電子ビームが照射され得る医療用電子ビーム出力装置を提供することにある。
【0014】
更に、本発明の別の目的は、電子ビームの散乱及び拡散を最小化したペンシルビーム状に電子ビームを出力することによって、損失される電子ビームを最小化して出力効率の高い医療用電子ビーム出力装置を提供することにある。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に限定されず、言及していない更に他の課題は、以下の記載から通常の技術者が明確に理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施例に係る医療用ペンシルビーム状の電子ビーム出力装置は、ペンシルビーム状の電子ビームを発生させる電子ビーム発生部と、前記電子ビーム発生部で発生した前記電子ビームを受信し、前記受信した電子ビームを加速させる電子ビーム加速部と、前記電子ビーム加速部から受信した前記電子ビームが通過し、ターゲット部位に対向して配置されるか、又は前記ターゲット部位の内部通路に進入するためのカテーテルと、前記カテーテルに設けられ、前記カテーテルから出力される前記電子ビームを屈折させる磁場を発生させる第1磁場発生部とを含むことができる。
【0017】
本発明のその他の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0018】
一実施例に係る電子ビーム出力装置は、加速された電子ビームの方向を調整して出力することによって、電子ビームを狭い領域を通過させてターゲット部位に照射することができ、電子ビームを加速された方向の直線出力領域だけでなく、直線出力領域から外れた側面領域に出力できるという効果を奏する。
【0019】
また、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、電子ビームの強度を調整して出力することによって、ターゲット部位の区域ごとに適した線量の電子ビームを出力できるという効果がある。
【0020】
更に、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、既存の電子散乱部及びアプリケータが不要であり、電子ビーム発生部で発生する電子ビームの損失を最小化でき、電子ビーム発生部で消費電力を低減でき、電子ビーム発生部で発生する電子ビームの強度が向上し得るという効果を奏する。
【0021】
本発明の効果は、以上で言及した効果に限定されず、言及していない更に他の効果は、以下の記載から通常の技術者が明確に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施例に係る電子ビーム出力装置を示す概略図である。
【
図2】一実施例に係る電子ビーム出力装置の制御部を示す概略図である。
【
図3a】一実施例に係る電子ビーム出力装置を示す概略図である。
【
図3b】一実施例に係る電子ビーム出力装置を示す概略図である。
【
図4a】一実施例に係る電子ビーム出力装置を示すブロック構成図である。
【
図4b】一実施例に係る電子ビーム出力装置を示すブロック構成図である。
【
図4c】一実施例に係る電子ビーム出力装置を示すブロック構成図である。
【
図4d】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第2磁場発生部を示す概略図である。
【
図4e】他の実施例に係る電子ビーム出力装置の第2磁場発生部を示す概略図である。
【
図5】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部の一例を示す側面図である。
【
図6a】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部の他の例を示す斜視図である。
【
図6b】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部の一例を示す断面図である。
【
図7】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームがターゲット部位に出力された状態の一例を示す概略図である。
【
図8a】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームがターゲット部位に出力された状態の他の例を示す概略図である。
【
図8b】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームがターゲット部位に出力された状態の他の例を示す概略図である。
【
図8c】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームがターゲット部位に出力された状態の他の例を示す概略図である。
【
図8d】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームがターゲット部位に出力された状態の他の例を示す概略図である。
【
図9a】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームがターゲット部位に出力された状態の更に他の例を示す概略図である。
【
図9b】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームがターゲット部位に出力された状態の更に他の例を示す概略図である。
【
図9c】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームがターゲット部位に出力された状態の更に他の例を示す概略図である。
【
図9d】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームがターゲット部位に出力された状態の更に他の例を示す概略図である。
【
図10a】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームの形状を示す側面図である。
【
図10b】一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームの形状を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に制限されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現できる。但し、本実施例は本発明の開示を完全なものにし、本発明の属する技術分野における通常の技術者に本発明の範疇を完全に理解させるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇により定義されるに過ぎない。
【0024】
本明細書で用いられた用語は、実施例を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数型は特に言及しない限り複数型も含む。明細書で用いられる「含む(comprises)」及び/又は「含んでいる(comprising)」は、言及された構成要素以外に1つ以上の他の構成要素の存在又は追加を排除しない。明細書全体に亘って同一の図面符号は同一の構成要素を示し、「及び/又は」は言及された構成要素のそれぞれ及び1つ以上の全ての組み合わせを含む。たとえ、「第1」、「第2」などが多様な構成要素を叙述するために用いられていても、これらの構成要素は、これらの用語により制限されないのはもちろんである。これらの用語は、単に1つの構成要素を他の構成要素と区別するために用いる。従って、以下で言及される第1構成要素は、本発明の技術的思想内で第2構成要素でもあり得るのは言うまでもない。
【0025】
他の定義がなければ、本明細書で用いられる全ての用語(技術及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の技術者が共通して理解できる意味として用いられる。また、一般に用いられる辞典に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り、理想的に又は過度に解釈されない。
【0026】
一般的な従来の医療用電子ビーム出力装置は、散乱膜(scattering foil)などを用いて電子ビームの進行方向前方の広い範囲に散乱される電子ビームを用いた。一実施例において、ペンシルビームという用語は散乱されない電子ビームを意味し得る。一例として、ペンシルビームの側面形状は、
図10aに示すように、ライン状、上側から中央に行くほど左右幅が次第に狭くなった後、中央から下側に行くほど左右幅が次第に広くなる形状、上側から下側に行くほど左右幅が次第に広くなる形状、上側から下側に行くほど左右幅が次第に狭くなる形状などの多様な形状を有することができる。他の例として、ペンシルビームの背面形状は、
図10bに示すように、ポイント形状、円形状、楕円形状、四角形状、六角形状などの多様な形状を有することができる。
【0027】
一実施例に係る電子ビーム出力装置は、電子ビームの方向と強度を調整して生体のターゲット部位に出力するものであって、以下のような用途に活用できる。
【0028】
一例として、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、内視鏡手術及び施術に必要な電子ビームを提供する用途に活用できる。このとき、カテーテル30又は内視鏡が硬性材質からなる場合、頭蓋腔、腹腔、胸腔、骨盤腔、鼻腔、副鼻腔、耳、口腔、咽頭、喉頭、気管、食道、直腸、肛門、膀胱、関節、脊椎/脊髄などに電子ビームを提供できる。また、カテーテル30又は内視鏡が軟性材質からなる場合、カテーテル30の進入が容易な食道、胃、十二指腸、気管、気管支、大腸、直腸、膀胱などに電子ビームを提供できる。
【0029】
一例として、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、ロボット内視鏡手術に必要な電子ビームを提供する用途に活用できる。
【0030】
一例として、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、従来の近接治療装置に代わって、皮膚、乳房、目(結膜、網膜など)、口腔、子宮、子宮頸部、直腸に必要な電子ビームを提供する用途に活用できる。
【0031】
以下、添付の図面を参照して、一実施例について詳細に説明する。
【0032】
図1は、一実施例に係る電子ビーム出力装置を示す概略図であり、
図2は、一実施例に係る電子ビーム出力装置の制御部110を示す概略図であり、
図3a及び
図3bは、一実施例に係る電子ビーム出力装置を示す模式図であり、
図4a乃至
図4cは、一実施例に係る電子ビーム出力装置を示すブロック構成図である。
【0033】
図1乃至
図4cに示すように、一実施例に係る医療用ペンシルビーム状の電子ビーム出力装置は、電子ビーム発生部10、電子ビーム加速部20、カテーテル30、カテーテル駆動部40、第1磁場発生部50、第1磁場発生部駆動部60、真空ポンプ70、遮蔽部80、ロボットアーム90、電源部100及び制御部110を含むことができる。ここで、電子ビーム発生部10、電子ビーム加速部20、カテーテル30、第1磁場発生部50、真空ポンプ70及び遮蔽部80は、電子ビーム出力装置のヘッドであり得る。また、ロボットアーム90と電源部100は、電子ビーム出力装置の本体であり得る。更に、制御部110は、電子ビーム出力装置のコンソールであり得る。ここで、電子ビーム出力装置のヘッドは、現在流通している電子ビーム出力装置の電源部に互換して使用できる。
【0034】
電子ビーム発生部10は、電子ビームを発生させる役割を果たす。このような電子ビーム発生部10は、後述する電源部100から電源の供給を受けて、電子ビームを発生させることができる。また、電子ビーム発生部10で発生した電子ビームは、電子ビーム加速部20で形成した電場によって加速された後、ペンシルビーム状にカテーテル30を通過した後、第1磁場発生部50で形成した磁場によって屈折され、ターゲット部位に出力されることができる。このとき、電子ビームは、ペンシルビーム状を有することによって、電子ビームの屈折に必要な磁場領域の大きさを減少させることができるので、第1磁場発生部50の小型化が可能になる。更に、第1磁場発生部50の小型化が可能なことから、カテーテル30と第1磁場発生部50をターゲット部位の狭い内部通路に容易に挿入させることができる。
【0035】
一例として、電子ビーム発生部10は、1~50MeVの強度を有する電子ビームを発生させることができ、より好ましくは1~10MeVの強度を有する電子ビームを発生させることができる。また、電子ビーム発生部10は、40Gy/s以上の線量率を有する電子ビームを放出できる。
【0036】
電子ビーム発生部10は、第1出力強度の電子ビームが発生する第1出力モード又は第2出力強度の電子ビームが発生する第2出力モードで作動できる。ここで、第1出力強度は、第2出力強度よりも小さくすることができる。
【0037】
一例として、電子ビーム発生部10は、第1出力モードでのみ作動できる。このように、第1出力モードだけで作動する電子ビーム発生部10は、予熱過程の省略が可能であり、小型化が可能になり得る。
【0038】
他の例として、電子ビーム発生部10は、第2出力モードでのみ作動できる。このように、第2出力モードだけで作動する電子ビーム発生部10は、第1出力強度よりも大きい強度の第2出力強度を有する電子ビームを出力することによって、電子ビームをターゲット部位に出力する時間を短縮させることができ、フラッシュ(FLASH)効果を発揮できる。なお、フラッシュ(FLASH)効果は、電子ビームを含む放射線を40Gy/s以上の線量率でターゲット部位に出力する際に発生するものであって、一般的な放射線出力装置の線量率が0.1Gy/sであり、特殊な条件では10Gy/s程度であることを考慮するとき、フラッシュ効果のための線量率が一般的な放射線の線量率よりも400倍高い。一般的な0.1Gy/sの線量率を提供する医療用X線出力装置は、加速された電子がタングステンなどによってX線に変換される際に99%の線量率の減少が発生し、flattening filterで50%の線量率の減少、X線の発生地点から100cmほど離れたところまで広がり、99%の線量率の減少が累積されて、加速された電子ビームの線量率に比べて約0.006%の線量率を有するX線が最終のターゲット部位に照射されることになる。従って、本発明の一例は、加速されたペンシルビーム状の電子ビームの損失を最小化してターゲット部位に照射することによって、一般的な医療用X線発生装置と比較して約16、000倍の線量率で放射線の照射を行うことができ、フラッシュ(FLASH)効果を示すことができる。また、フラッシュ(FLASH)効果は、電子ビームの出力によってターゲット部位に隣接する正常組織の損傷を低減でき、ターゲット部位に電子ビームを出力して治療する時間を短縮させることができる。
【0039】
電子ビーム加速部20は、電子ビーム発生部10から電子ビームを受信し、前記受信した電子ビームを加速させる。一例として、電子ビーム加速部20は、電子ビーム発生部10で発生した電子ビームが放出される部位と連結できる。一例として、電子ビーム加速部20は、第1出力モードだけで作動する電子ビーム発生部10と連結されている場合、小型化できる。
【0040】
電子ビーム加速部20は、RF(Radio Frequency)発生部22、加速管24及び加速管冷却部26、RFサーキュレータ、RF負荷(dummy load)を含むことができる。
【0041】
RF発生部22は、高周波を発生することができる。このようなRF発生部22は、後述する電源部100から電源の供給を受けて高周波を発生することができる。
【0042】
一例として、RF発生部22は、第1出力モードだけで作動する電子ビーム発生部10と連結されている場合、小型化できる。
【0043】
一例として、RF発生部22を、電源部100に内蔵することができる(
図3a参照)。他の例として、RF発生部22を、後述する遮蔽部80に内蔵することができる。
【0044】
加速管24は、RF発生部22から伝送された高周波によって電場を形成し、電子ビーム発生部10から受信した電子ビームを加速することができる。具体的に、加速管24に形成された電場は、加速管24に伝達された電子ビームをカテーテル30に向けて押す役割を果せる。
【0045】
RFサーキュレータは、RF発生部22で発生した高周波を加速管24に一方向に伝達する役割を果たす。
【0046】
ダミーロードは、加速管24周辺の不要な高周波を吸収して除去する役割を果たす。
【0047】
加速管冷却部26は、加速管24を冷却する役割を果せる。一例として、加速管冷却部26は、加速管24を水冷、空冷、油冷方式のうちの少なくとも1つの方式で冷却することができる。
【0048】
一例として、加速管冷却部26は、第1出力モードだけで作動する電子ビーム発生部10と連結されている場合、装置全体が小型化され、加速管の温度上昇率が減少することによって、加速管冷却部26は、相対的に少ない流量でも加速管24を冷却することができる。
【0049】
カテーテル30は、電子ビーム加速部20から受信した電子ビームが通過し、ターゲット部位に対向して配置されるか、又はターゲット部位の内部通路に進入できる。
【0050】
一例として、カテーテル30の内部には、チャネルが形成されることによって、電子ビーム加速部20から伝達された電子ビームが通過できる。このとき、カテーテル30のチャネルには、電子ビームの散乱を低減するために、後述する真空部による真空を形成することができる。また、カテーテル30のチャネルには、電子ビームの散乱を低減するために、ヘリウムを充填することもできる。更に、カテーテル30のチャネルには、電子ビームの散乱を低減するために、空気を充填することもできる。このように、カテーテル30のチャネルは、真空が形成されるか、又はヘリウムが充填され、加速管24とカテーテル30との間には、散乱膜(scattering foil)が存在しない。従って、加速管24とカテーテル30を通過する電子ビームの損失が最小化されることによって、ペンシルビーム状の電子ビームを出力できる。
【0051】
一例として、カテーテル30は、10~50cmの長さを有することができ、より好ましくは20~30cmの長さを有することができる。また、カテーテル30は0.2~5cmの外径を有することができ、より好ましくは0.3~3cmの外径を有することができる。但し、カテーテル30の長さが10cmよりも小さいと、カテーテル30が人体の切開孔に容易に進入するか、多様な方向に接近し難く、カテーテル30の長さが50cmよりも大きいと、カテーテル30を手術室のように限られた空間で使用し難い。従って、カテーテル30の長さは、10~50cmであることが好ましい。また、カテーテル30の外径が0.2cmよりも小さいと、カテーテル30がペンシルビーム状の電子ビームを移送できず、カテーテル30の外径が5cmよりも大きいと、人体の切開孔に進入し難い。従って、カテーテル30の外径は、0.2~5cmであることが好ましい。
【0052】
一例として、カテーテル30は、可撓性のある材質からなることによって、ターゲット部位の内部通路に進入するとき、ターゲット部位の内部通路に沿って撓い、ターゲット部位の内部通路に容易に進入できる。
【0053】
一例として、カテーテル30は、プラスチック材質からなることによって、一部の電子ビームがカテーテル30に衝突することにより発生する2次的なX線の発生量を低減できる。
【0054】
一例として、カテーテル30は、加速管24に分離可能に連結することができる。本例示において、カテーテル30は、加速管24と螺合できる。
【0055】
一例として、カテーテル30は、加速管24に一体に連結することができる。本例示において、カテーテル30は加速管24と接合できる。また、カテーテル30は加速管24と溶接できる。
【0056】
一例として、カテーテル30は、加速管24に対して相対回転可能に連結することができ、後述するカテーテル駆動部40によって加速管24に対して相対回転できる。
【0057】
一例として、カテーテル30は長さを調整でき、後述するカテーテル駆動部40によって長さを調整できる。ここで、カテーテル30は、長さ調整が可能なように可撓性のある材質からなることができる。また、カテーテル30は、長さ調整が可能なようにベローズ形状を有することができる。このようなカテーテル30は、後述するカテーテル駆動部40によって長さを調整できる。
【0058】
カテーテル駆動部40は、加速管24に対してカテーテル30を相対回転させ、カテーテル30の長さを調整できるように、カテーテル30の特定部位を加速管24から近づく方向、又は加速管24から遠ざかる方向に移動させることができる。例えば、カテーテル駆動部40は、加速管24に対してカテーテル30を左右方向、前後方向及び上下方向のうちの少なくとも1つ以上の方向に相対回転させることができる。また、カテーテル駆動部40は、カテーテル30の特定部位に固定された状態でカテーテル30を左右方向、前後方向及び上下方向のうちの少なくとも1つ以上の方向に移動させることができる。
【0059】
第1磁場発生部50は、カテーテル30に設けられ、カテーテル30を通過する電子ビーム又はカテーテル30から出力される電子ビームを屈折させる磁場を発生し得る。このように第1磁場発生部50によって屈折された電子ビームを、ターゲット部位に出力することができる。このような第1磁場発生部50を、カテーテル30の末端部に設けることができる。従って、第1磁場発生部50がカテーテル30の末端部に設けられることによって、第1磁場発生部50で発生した磁場がカテーテル30を完全に通過した電子ビームを屈折させる。その結果、カテーテル30を完全に通過した電子ビームは、第1磁場発生部50で発生した磁場によってカテーテル30の末端部を基準に多様な屈折角度で屈折される。これにより、本発明は、カテーテル30の末端部が人体の切開孔の特定の深さに固定された状態で、カテーテル30を完全に通過した電子ビームを、第1磁場発生部50で発生した磁場によってカテーテル30の末端部を基準に多様な屈折角度で屈折し、人体の切開孔の側面の多様な地点に出力することができる。
【0060】
一例として、第1磁場発生部50は、カテーテル30の末端部の周囲に沿って配列される複数の磁性体52、54を含むことができる。即ち、複数の磁性体52、54を、カテーテル30の末端部の周囲に環状に配列することができ、このような複数の磁性体が取り囲む空間には、カテーテル30を通過するか、カテーテル30から出力される電子ビームを屈折させる磁場を形成することができる。
【0061】
図5は、一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部50の一例を示す側面図であり、
図6aは、一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部50の一例を示す斜視図であり、
図6bは、一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部の一例を示す断面図である。
【0062】
図5乃至
図6bを参照すると、第1磁場発生部50は、カテーテル30の末端部に互いに対向して配置される第1磁性体52及び第2磁性体54を含むことができる。このような第1磁性体52と第2磁性体54との間には、カテーテル30を通過するか、又はカテーテル30から出力される電子ビームを屈折させる磁場を形成することができる。
【0063】
一例として、第1磁性体52と第2磁性体54は永久磁石であり、永久磁石は円弧状の断面形状を有することができる。このような第1磁性体52と第2磁性体54との間には、円弧状の磁場が形成されることによって、カテーテル30を通過するか、又はカテーテル30から出力される電子ビームを屈折させることができる。
【0064】
他の例として、第1磁性体52と第2磁性体54が永久磁石である場合、第1磁性体52と第2磁性体54との間に形成された磁場によって電子ビームが屈折される角度は、第1磁性体52と第2磁性体54の位置調整と第1磁性体52と第2磁性体54との間の間隔調整によって調整できる。具体的に、第1磁性体52と第2磁性体54が互いに近づくほど、第1磁性体52と第2磁性体54との間の磁場の強度が増加し得る。また、第1磁性体と第2磁性体54が互いに遠ざかるほど、第1磁性体52と第2磁性体54との間の磁場の強度が減少し得る。一方、第1磁性体52と第2磁性体54の位置調整と第1磁性体52と第2磁性体54との間の間隔調整は、後述する第1磁場発生部駆動部60によって行うことができる。
【0065】
更に他の例として、第1磁性体52と第2磁性体54が永久磁石である場合、第1磁性体52と第2磁性体54との間に形成された磁場によって電子ビームが屈折される角度は、電子ビーム加速部20で加速される電子ビームの加速速度の調整によって調整することもできる。
【0066】
一方、
図5乃至
図6aを参照すると、第1磁性体52と第2磁性体54が永久磁石である場合、第1磁性体52と第2磁性体54は複数に構成することができる。そして、複数の第1磁性体52は、互いに異なる曲率半径と長さを有することができ、複数の第2磁性体54は、それぞれ複数の第1磁性体52に対応する曲率半径と長さを有することができる。このような複数の第1磁性体52のうちの何れか1つと複数の第2磁性体54のうちの何れか1つをカテーテル30の末端部に選択的に配置することによって、第1磁性体52と第2磁性体54との間に形成された磁場によって電子ビームが屈折される角度を調整することもできる。
【0067】
一例として、第1磁性体52と第2磁性体54はパルス電磁石であり、パルス電磁石は、カテーテル30を通過する電子ビームのパルスと同期化された磁場を発生させることができる。このような第1磁性体52と第2磁性体54との間には、カテーテル30を通過する電子ビームのパルスと同期化された磁場が形成されることによって、カテーテル30を通過するか、又はカテーテル30から出力される電子ビームを屈折させることができる。一方、パルス電磁石から発生する磁場の強度は、0.1~1.0テスラ(Tesla)であり得る。
【0068】
一例として、
図6bを参照すると、第1磁場発生部50の周囲には、磁場遮蔽体56を設けることができる。このように、磁場遮蔽体56によって第1磁場発生部50で発生する磁場が遮蔽されることによって、第1磁場発生部50で発生する磁場の強度を増加し、磁場の均質度を向上し、磁場の外部漏洩を減少し得る。なお、
図6bにおいて、第1磁性体52と第2磁性体54との間には、電子ビームの通過空間が形成され、
図6bのL1は、第1磁性体52と第2磁性体54がそれぞれ形成する磁場の方向であり、
図6bのL2は、第1磁性体52と第2磁性体54との間に第1磁性体52の磁場と第2磁性体54の磁場が合成された合成磁場の方向であり得る。
【0069】
一例として、第1磁場発生部50には、電子ビームの出力方向を中心に第1磁場発生部50の重量配分を調整するための重りを設けることができる。これにより、第1磁場発生部50の回転時に発生する振動を低減できる。
【0070】
第1磁場発生部50は、カテーテル30に対して相対回転及び相対移動が可能に連結され、後述する第1磁場発生部駆動部60によってカテーテル30に対して相対回転及び相対移動が可能である。
【0071】
第1磁場発生部駆動部60は、カテーテル30に対して第1磁場発生部50を相対回転及び相対移動することができる。例えば、第1磁場発生部駆動部60は、カテーテル30に対して第1磁場発生部50を左右方向、前後方向及び上下方向のうちの少なくとも1つ以上の方向に相対回転することができる。また、第1磁場発生部駆動部60は、カテーテル30に対して第1磁場発生部50を左右方向、前後方向及び上下方向のうちの少なくとも1つ以上の方向に相対移動することができる。
【0072】
一例として、第1磁場発生部駆動部60は、アクチュエータと駆動モータを含むことができる。また、第1磁場発生部駆動部60を、壁体のような外部構造物に固定することができる。
【0073】
一例として、第1磁場発生部駆動部60は、第1磁性体52と第2磁性体54が永久磁石である場合、第1磁性体52と第2磁性体54の位置を調整でき、第1磁性体52と第2磁性体54との間の間隔を調整できる。
【0074】
真空ポンプ70は、加速管24、カテーテル30及び第1磁場発生部50のうちの少なくとも1つに真空を形成できる。例えば、真空ポンプ70は、加速管24に連結され、加速管24にのみ真空を形成できる。また、真空ポンプ70は加速管24に連結され、加速管24とカテーテル30に真空を形成できる。更に、真空ポンプは加速管24に連結され、加速管24、カテーテル30及び第1磁場発生部50に真空を形成できる。
【0075】
遮蔽部80は、電子ビーム発生部10と電子ビーム加速部20を取り囲んでカテーテル30が連通し、電子ビーム発生部10と電子ビーム加速部20から漏れる電子ビームを遮蔽できる。このような遮蔽部80は、電子ビーム発生部10と電子ビーム加速部20から放出される放射線(電子ビーム又は電子ビームによって2次発生したX線)がその周辺に位置する医療陣や医療機器を被爆するのを防止する効果を発揮できる。
【0076】
一例として、遮蔽部80は、小型化するように電子ビーム加速部20の末端部のみを取り囲む構造を有することができる。
【0077】
一例として、遮蔽部80は、電子ビーム発生部10と電子ビーム加速部20に起立する隔壁を含むことができる。
【0078】
一例として、遮蔽部80は、ターゲット部位の周囲をカバーするガウンを含むことができる。
【0079】
ロボットアーム90は、電子ビーム加速部20に連結され、電子ビーム加速部20、カテーテル30及び第1磁場発生部50を移動及び回転することができる。このとき、ロボットアーム90を、電子ビーム加速部20の重心に連結することができる。
【0080】
一例として、ロボットアーム90を、遮蔽部80に連結し、電子ビーム加速部20、カテーテル30及び第1磁場発生部50を移動及び回転することができる。このとき、ロボットアーム90を、遮蔽部80で電子ビーム加速部20に対向する一面の中央に連結することができる。
【0081】
一例として、ロボットアーム90は、電子ビーム加速部20、カテーテル30及び第1磁場発生部50を6軸に移動及び回転することができる、即ち、ロボットアーム90は、電子ビーム加速部20、カテーテル30及び第1磁場発生部50を左右方向、前後方向及び上下方向のうちの少なくとも1つ以上の方向に回転することができ、電子ビーム加速部20、カテーテル30及び第1磁場発生部50を前後方向、前後方向及び上下方向のうちの少なくとも1つ以上の方向に移動することができる。
【0082】
一例として、ロボットアーム90は、電子ビーム加速部20に連結される複数のセグメント92と、互いに隣接する2つのセグメント92を回転可能に連結する複数のリンク94と、リンク94に設けられ、互いに隣接する2つのセグメント92のうちの1つを回転させる駆動モータを含むことができる(
図1参照)。ここで、電子ビーム加速部20とセグメント92との間には、電子ビーム加速部20をリニア移動させるためのリニアガイド(図示せず)を設けることができる。リニアガイドは、電子ビーム加速部20に結合されるリニアレールと、セグメント92に結合されてリニアレールに沿ってリニア移動される移動体と、移動体をリニア移動させるアクチュエータとを含むことができる。
【0083】
電源部100は、電子ビーム発生部10、電子ビーム加速部20及び第1磁場発生部50に電源を供給する役割を果たせる。一例として、電源部100は、キャパシタであり得る。
【0084】
制御部110は、電子ビーム発生部10、電子ビーム加速部20、カテーテル30、カテーテル駆動部40、第1磁場発生部50、第1磁場発生部駆動部60、真空ポンプ70、遮蔽部80、ロボットアーム90及び電源部100を制御する役割を果たすことができる。このような制御部110は、電子ビーム発生部10で発生する電子ビームの強度、線量、線量率及び発生タイミング、第1磁場発生部50で発生する磁場の強度、方向及び発生タイミングを制御する役割も果たすことができる。また、制御部110は、ターゲット部位を撮影した映像を示すディスプレイ112を含むことができる。また、制御部110は、電子ビーム発生部10、電子ビーム加速部20、カテーテル30、カテーテル駆動部40、第1磁場発生部50、第1磁場発生部駆動部60、真空ポンプ70、遮蔽部80、ロボットアーム90及び電源部100の手動操作のための操作部114を含むことができる。例えば、操作部は、複数のボタンに具現できる。
【0085】
一例として、制御部110を、電源部100に一体に連結することができる。
【0086】
他の例として、制御部110を電源部100と連結されず、放射線が遮蔽される別途の遮蔽室に設けることができる。
【0087】
図7は、一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームがターゲット部位に出力された状態の一例を示す概略図である。
【0088】
図7に示すように、制御部110は、カテーテル駆動部40がカテーテル30をターゲット部位1の内部通路の特定の深さに固定するようにカテーテル駆動部40を制御した後、第1磁場発生部駆動部60が第1磁場発生部50の角度を調整するように第1磁場発生部駆動部60を制御し、カテーテルからターゲット部位に出力される電子ビームの分布を調整できる。但し、
図7は、制御部110の制御によってカテーテル30からターゲット部位に出力される電子ビームの分布が調整される例示に過ぎず、一実施例に係る電子ビーム出力装置のターゲット部位に出力される電子ビームの分布を調整する方式はこれに限定されない。
【0089】
図8a乃至
図8dは、一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームがターゲット部位に出力された状態の他の例を示す概略図である。
【0090】
図8a乃至
図8dに示すように、制御部110は、カテーテル30がターゲット部位に対向する状態で、カテーテル駆動部40がカテーテル30を移動及び回転させるようにカテーテル駆動部40を制御することによって、カテーテル30からターゲット部位1に出力される電子ビームの分布を調整できる。但し、
図8a乃至
図8dは、制御部110の制御によってカテーテル30からターゲット部位に出力される電子ビームの分布が調整される例示に過ぎず、一実施例に係る電子ビーム出力装置のターゲット部位に出力される電子ビームの分布を調整する方式はこれに限定されない。
【0091】
具体的に、
図8aでは、ターゲット部位1が乳癌組織である場合、制御部110がカテーテル駆動部40を制御し、カテーテル30から出力される電子ビームの分布が乳癌組織に集中する例を示した。
【0092】
また、
図8bでは、ターゲット部位1が脳腫瘍組織である場合、制御部110がカテーテル駆動部40を制御し、カテーテル30から出力される電子ビームの分布が脳腫瘍組織に集中する例を示した。
【0093】
更に、
図8cでは、ターゲット部位1が皮膚癌組織である場合、制御部110が電子ビーム発生部10を第1出力モード及び第2出力モードで順次作動させ、カテーテル駆動部40を制御してカテーテル30から出力された電子ビームが、皮膚癌細胞が高い密度で分布する中心区域1aには長時間照射された後、皮膚癌細胞が低い密度で分布する周辺区域1bには中心区域1aよりも短時間照射される例を示した。その結果、高い線量の電子ビームが皮膚癌の中心区域1aに照射されることによって、皮膚癌組織が効果的に破壊され、周辺区域1bには低い線量の電子ビームが照射されることによって、正常組織を保護できる。
【0094】
また、
図8dでは、ターゲット部位1に内視鏡カメラと手術器具が設けられる場合、制御部110が、内視鏡カメラが撮影したターゲット部位1の位置と手術器具の位置を読み取り、カテーテル駆動部40を制御し、カテーテル30から出力される電子ビームの分布がターゲット部位1に集中する例を示した。
【0095】
図9a乃至
図9dは、一実施例に係る電子ビーム出力装置の第1磁場発生部によって屈折された電子ビームがターゲット部位に出力された状態の更に他の例を示す概略図である。
【0096】
図9aに示すように、カテーテル30の末端部と第1磁場発生部50がターゲット部位1の内部通路に直接挿入される場合、電子ビームをターゲット部位1の側面に出力することができる。
【0097】
その後、
図9bに示すように、カテーテル30の末端部と第1磁場発生部50がターゲット部位1の内部通路に追加で挿入される場合、
図9aに比べて電子ビームをターゲット部位1の側面の下側に出力することができる。
【0098】
図9cに示すように、カテーテル30の末端部のみターゲット部位1の内部通路に挿入される場合、電子ビームをターゲット部位1の底面に出力することができる。
【0099】
図9dに示すように、
図9aに比べてカテーテル30の末端部に曲率半径が大きい第1磁場発生部50が固定される場合、電子ビームをターゲット部位1の側面に、より容易に出力することができる。
【0100】
一実施例に係る電子ビーム出力装置は、第2磁場発生部120を更に含むことができる。
図4aを参照すると、第2磁場発生部120を、カテーテル30の周囲に設けることができる。
図4bを参照すると、第2磁場発生部120を、カテーテル駆動部40に隣接するカテーテル30の一端部の周囲に設けることができる。
図4cを参照すると、第2磁場発生部120を、カテーテル駆動部40に隣接する加速管24の一端部の周囲に設けることができる。
【0101】
図4dは、一実施例に係る電子線出力装置の第2磁場発生部の一例を示す概略図であり、
図4eは、一実施例に係る電子線出力装置の第2磁場発生部の他の例を示す概略図である。
【0102】
一例として、
図4dに示すように、カテーテル30の周囲に設けられる第2磁場発生部120は、並列コイル状の電磁石で構成されることができる。
【0103】
他の例として、
図4eに示すように、カテーテル30の周囲に設けられる第2磁場発生部120は、直列コイル状の電磁石で構成されることができる。
【0104】
第2磁場発生部120は、カテーテル30の遠位部の周囲に沿って配置され、加速された電子ビームをカテーテル30の中心軸に集束させる磁場を発生し得る。従って、第2磁場発生部120で発生した磁場が加速された電子ビームをカテーテル30の中心軸に集束させることによって、加速された電子ビームがカテーテル30を通過する際にカテーテル30の内壁に衝突するのを防止でき、加速された電子ビームがカテーテル30を通過する際に加速された電子ビームの内壁衝突による出力損失を防止できる。ここで、カテーテル30の遠位部は、カテーテル30の両端部のうちターゲット部位から遠く配置される末端部を意味し、カテーテル30の近位部は、カテーテル30の両端部のうちターゲット部位に隣接して配置される末端部を意味する。即ち、カテーテル30の遠位部は、加速管24に隣接するカテーテル30の一端部であり、カテーテル30の近位部は、第1磁場発生部50に隣接するカテーテル30の他端部であり得る。
【0105】
一例として、第2磁場発生部120は、1つ以上の磁性体(図示せず)で構成され、カテーテル30の遠位部の周囲に沿ってカテーテル30の中心軸と平行に配置され、カテーテル30で加速された電子ビームが通過する方向と平行なベクトル方向の磁場のみ発生するものとして具現できる。具体的に、第2磁場発生部120が4つの磁性体を含む場合、4つの磁性体は2つずつ互いに対称に配置され、4つの磁性体のN極をカテーテルの内部に対向して配置することができる。但し、本例示において、磁性体の個数及び複数の磁性体の配置方向は制限されない。他の例として、補助磁場発生部は、カテーテル30の遠位部の周囲に沿って配置される四重極(Quadrupole)を含むことができる。
【0106】
一実施例に係る電子ビーム出力装置は、ターゲット部位の内部通路を確保するためのバルーンが用いられることができる。バルーンは、ターゲット部位の内部通路に挿入された後、内部に空気を注入することによって、ターゲット部位の内部通路を確保できる。バルーンの形状は球、半球、円筒、四角柱であり、好ましくは球であり得る。バルーンの材質は、電子ビームに感光される材質を含むことができる。従って、ターゲット部位の内部通路に挿入されたバルーンにおいて電子ビームによって感光される領域をターゲット部位の内部通路の電子ビーム出力領域として表示することができる。
【0107】
また、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、ターゲット部位の電子ビーム出力領域を表示するために、ターゲット部位にインク又はレーザを噴射する噴射部を設けることができる。
【0108】
更に、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、ターゲット部位の撮影のためのカメラと、ターゲット部位に照明を提供するための照明部と、ターゲット部位に冷却流体を供給するための冷却流体供給部を設けることができる。ここで、カメラは、カテーテルに回転可能に連結され、ターゲット部位の一定区間を撮影した映像を3次元に合成できる。また、カメラ、照明部及び冷却流体供給部は、カテーテルの末端部に設けることができる。
【0109】
更に、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、前述したカメラ、照明部及び冷却流体供給部をターゲット部位の内部通路に伝達するためのウンドリトラクタを設けることができる。
【0110】
また、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、ターゲット部位に出力される電子ビームの位置と線量をモニタリングするためのモニタリング部を設けることができる。このようなモニタリング部は、カテーテルの内部に設けることができる。更に、モニタリング部は、ターゲット部位に出力される電子ビームの位置と線量をセンシングする放射線モニタセンサを用いることができる。
【0111】
本発明によると、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、加速された電子ビームの方向を調整して出力することによって、電子ビームを狭い領域を通過させてターゲット部位に照射することができ、電子ビームが加速された方向の直線出力領域だけでなく、直線出力領域から外れた側面領域に出力できるという効果がある。
【0112】
また、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、電子ビームの強度を調整して出力することによって、ターゲット部位の区域ごとに適した線量の電子ビームを出力できるという効果がある。
【0113】
更に、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、既存の電子散乱部及びアプリケータが不要であり、電子ビーム発生部10で発生する電子ビームの損失を最小化でき、電子ビーム発生部10で消費電力を低減でき、電子ビーム発生部10で発生する電子ビームの強度を向上し得るという効果がある。
【0114】
また、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、ペンシルビーム状の電子ビームを出力することによって、電子ビームをターゲット部位の特定領域に集中的に出力でき、電子ビームがターゲット部位以外の他の正常組織まで出力されるのを防止できるという効果がある。これについて対比して説明すると、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、ペンシルビーム状の電子ビームをターゲット部位の狭い単位面積(例えば、0.5×0.5cm2)に出力するのに対し、従来の電子ビーム出力装置は、電子ビームをターゲット部位の広い単位面積(例えば、20×20cm2)に出力する。従って、従来の電子ビーム出力装置における電子ビーム散乱部の電子ビームの吸収比率が50%前後であり、ペンシルビーム状の電子ビームが出力されるターゲット部位の狭い単位面積に比べて電子ビームが出力されるターゲット部の広い単位面積が1、600倍であることを考慮するとき、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、電子ビームをターゲット部位に3、000倍ほど集中的に出力できることが確認できる。
【0115】
更に、一実施例に係る電子ビーム出力装置は、電子ビームを約300Gy/sの線量率でターゲット部位に出力することによって、ターゲット部位にフラッシュ(FLASH)効果を発揮できる。ここで、フラッシュ(FLASH)効果は、電子ビームを40Gy/s以上の線量率でターゲット部位に出力する際に発生する。一般的な放射線発生装置の出力線量率が0.1Gy/sであり、特殊な条件では10Gy/s程度であることを考慮するとき、一実施例に係る電子ビーム出力装置における電子ビームの出力線量率(output dose rate)は、一般的な放射線の出力線量率よりも3、000倍高い方である。なお、フラッシュ(FLASH)効果は、電子ビームの出力によってターゲット部位に隣接する正常組織の損傷を低減でき、ターゲット部位に電子ビームを出力して治療する時間を短縮させることができる。
【0116】
以上、添付の図面を参照して一実施例を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の技術者は、本発明がその技術的思想や必須な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に実施され得るということが理解できる。従って、以上で述べた実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、制限的ではないものとして理解すべきである。
【0117】
本発明の概念は、実施例を参照して説明されたが、当業者には本発明の概念の精神と範囲から逸脱せず、多様な変更及び修正が行われることが明らかである。従って、前記実施例は制限的なものではなく、例示的なものであることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0118】
10:電子ビーム発生部
20:電子ビーム加速部
30:カテーテル
50:第1磁場発生部