(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010038
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】容器に収容された植物生育促進剤組成物及びそれを収容する容器
(51)【国際特許分類】
A01N 43/08 20060101AFI20250109BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20250109BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20250109BHJP
A01G 7/06 20060101ALI20250109BHJP
A01G 22/40 20180101ALI20250109BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A01N43/08 H
A01P21/00
A01N25/02
A01G7/06 A
A01G22/40
A01N25/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024105189
(22)【出願日】2024-06-28
(31)【優先権主張番号】202310788607.X
(32)【優先日】2023-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202410830833.4
(32)【優先日】2024-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 春香
(72)【発明者】
【氏名】大西 厚輝
(72)【発明者】
【氏名】藤松 輝久
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 圭二
(72)【発明者】
【氏名】川崎 彰子
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ベイベイ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,イェン
(72)【発明者】
【氏名】マ,シチン
(72)【発明者】
【氏名】ミヘルス,トーマス
【テーマコード(参考)】
2B022
4H011
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB15
2B022EA01
2B022EA10
4H011AB03
4H011BA04
4H011BB08
4H011BC03
4H011BC08
4H011DA13
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】容器に収容された豆類に包含されるマメ科植物の生育を促進するための組成物及びそれを収容する容器を提供する
【解決手段】(A)アスコルビン酸又はその塩を含有する第1剤と、(B)酸化防止剤及び(C)有機溶剤を含有する第2剤を組み合わせてなる豆類に包含されるマメ科植物の生育促進剤組成物であって、(B)酸化防止剤が少なくともトコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上であり、(C)有機溶剤が炭素数5以下のアルコール及びジメチルスルホキシドから選ばれる1種以上であり、(A)アスコルビン酸又はその塩の割合(質量比)が、成分(B)を1とした場合10~3,000,000であるか又は(C)有機溶剤の割合(質量比)が、成分(B)を1とした場合が4~100,000であり、前記第1剤及び第2剤が、第一の瓶体と第二の瓶体が連結部材で接続された二頭型瓶体のいずれかの瓶体内にそれぞれ収容されている、組成物。
【選択図】
図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アスコルビン酸又はその塩を含有する第1剤と、(B)酸化防止剤及び(C)有機溶剤を含有する第2剤を組み合わせてなる豆類に包含されるマメ科植物の生育促進剤組成物であって、(B)酸化防止剤が少なくともトコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上であり、(C)有機溶剤が炭素数5以下のアルコール及びジメチルスルホキシドから選ばれる1種以上であり、(A)アスコルビン酸又はその塩の割合(質量比)が、成分(B)を1とした場合10~3,000,000であるか又は(C)有機溶剤の割合(質量比)が、成分(B)を1とした場合が4~100,000であり、前記第1剤及び第2剤が、第一の瓶体と第二の瓶体が連結部材で接続された二頭型瓶体のいずれかの瓶体内にそれぞれ収容されている、組成物。
【請求項2】
第一の瓶体が底部に外ネジ部を有する瓶胴部、細口瓶頭部及び蓋体を備え、第二の瓶体が瓶胴部と広口瓶頭部を備える、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1剤が第二の瓶体、第2剤が第一の瓶体に収容された、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物を収容する瓶体であって、底部に外ネジ部を有する瓶胴部、細口瓶頭部及び蓋体を備える第一の瓶体の下部に、瓶胴部と広口瓶頭部を備える第二の瓶体が連結部材を介して接続された二頭型瓶体。
【請求項5】
連結部材が、カバープレートと、該カバープレートの外周縁に沿って上方に延在する第1のリング壁と、該第1のリング壁が下向きに折り畳まれて形成された第2のリング壁とを備え、第一の瓶体の瓶胴部の底部に設けられた外ネジ部が連結部材の第1のリング壁の内側壁に設けられた内ネジ部と螺合し、第二の瓶体2の広口瓶頭部が連結部材の第2のリング壁の内側壁に設けられた内ネジ部と螺合することにより第一の瓶体と第二の瓶体が接続されている、請求項4に記載の瓶体。
【請求項6】
連結部材が、カバープレートと、該カバープレートの外周縁に垂直方向にそれぞれ突出する第1リング壁と第2リング壁とを備え、第一の瓶体の瓶胴部の底部に設けられた外ネジ部が連結部材の第1のリング壁の内側壁に設けられた内ネジ部と螺合し、第二の瓶体の広口瓶頭部が連結部材の第2のリング壁の内側壁に設けられた内ネジ部と螺合することにより第一の瓶体と第二の瓶体が接続されている、請求項4に記載の瓶体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に収容された豆類に包含されるマメ科植物の生育を促進するための組成物及びそれを収容する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
地球上における陸地の約3分の1は乾燥地に属し、今後の温暖化からさらなる乾燥地の増加が予想される。また人口増加による深刻な食糧不足対策として、ダイズ、イネ、ムギ、トウモロコシ等の穀物にとって乾燥地域、塩類集積地域、高温、低温とされる地域、すなわち生育が困難であるか、或いは生育が悪化し収量が低下する地域において、収量を改善、維持、増加する技術開発が急務となっている。特に、ダイズは重要な穀物であり、日本を始め世界中で広く食されている。またダイズは他の穀物と異なり、タンパク質及び脂質の割合が高く栄養価も豊富である。そのため飼料や油脂原料としても重要であり、収量を増加させる技術の開発が行われている。
【0003】
多くの動植物にとって酸素は生存のために不可欠な物質であるが、一方で酸素は動植物の細胞内で反応性の高い、活性酸素を発生し、生体に遺伝子の損傷や酵素の失活などによる重大なダメージを与える。そのために植物体内にはL-アスコルビン酸を含む多くの抗酸化物質が蓄えられ、細胞のさまざまな場でこの抗酸化物質を用いて活性酸素を消去する複雑な酵素系が働いている。
【0004】
このような観点から、植物に施用して成長を促す素材には、アスコルビン酸を含む抗酸化剤を配合することがしばしば行われている。例えば、非特許文献1には、オリーブやサトウキビ、コムギなどでアスコルビン酸の施用による生育促進や収量増加効果が開示されている。また、非特許文献2では、マメ科作物に蒸留水で溶解した一定濃度のアスコルビン酸水溶液を計3回、栄養成長期または生殖成長期に葉面散布処理した場合に最大30%の増収効果を発揮できることが開示されている。また、特許文献1には、鉄(II)化合物及びL-アスコルビン酸を含有する水性組成物を用いて植物の生育を促進すること、特許文献2にはグリチルリチンとL-アスコルビン酸を含む水溶液を用いて植物の生育を促進することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-202805号公報
【特許文献2】特開平08-143406号公報
【0006】
【非特許文献1】Akram et al.(2017)Ascorbic Acid-A Potential Oxidant Scavenger and Its Role in Plant Development and Abiotic Stress Tolerance. Frontiers in Plant Science,8:613)
【非特許文献2】Zarghamnejad et al.,(2014)Chickpea response to ascorbic acid foliar application at vegetative and reproductive stages. International Journal of Biosciences, 5:166-170)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、容器に収容された豆類に包含されるマメ科植物の生育を促進するための組成物及びそれを収容する容器を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、アスコルビン酸を用いた植物の生育促進について検討した結果、水道水や井戸水といった農業現場で使用する水で溶解したアスコルビン酸溶液を豆類に包含されるマメ科植物に散布した場合には、アスコルビン酸による生育促進効果は殆ど得られないことを発見した。そして、アスコルビン酸を、有機溶剤に溶解させた特定の酸化防止剤を組み合わせて用いること、具体的には、それらを別々の容器に収容し用時混合する態様で使用することにより、根粒活性促進効果及び生育促進効果が発揮されることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の1)~2)に係るものである。
1)(A)アスコルビン酸又はその塩を含有する第1剤と、(B)酸化防止剤及び(C)有機溶剤を含有する第2剤を組み合わせてなる豆類に包含されるマメ科植物の生育促進剤組成物であって、(B)酸化防止剤が少なくともトコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上であり、(C)有機溶剤が炭素数5以下のアルコール及びジメチルスルホキシドから選ばれる1種以上であり、(A)アスコルビン酸又はその塩の割合(質量比)が、成分(B)を1とした場合10~3,000,000であるか又は(C)有機溶剤の割合(質量比)が、成分(B)を1とした場合が4~100,000であり、前記第1剤及び第2剤が、第一の瓶体と第二の瓶体が連結部材で接続された二頭型瓶体のいずれかの瓶体内にそれぞれ収容されている、組成物。
2)1)に記載の組成物を収容する瓶体であって、底部に外ネジ部を有する瓶胴部、細口瓶頭部及び蓋体を備える第一の瓶体の下部に、瓶胴部と広口瓶頭部を備える第二の瓶体が連結部材を介して接続された二頭型瓶体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、豆類に包含されるマメ科植物の生育量を増加させ、根粒活性を促進し、当該植物の果実や種子、或いは子実の収量増大を図ることができる。また、本発明によれば、役割の異なる第1剤と第2剤を良好な密封性を有する独立した瓶体に収容すると共に、販売時には一体として販売され、使用時に消費者が接続された2つの瓶体を分離して、第1剤と第2剤を所定の比率で混合した混合物を容易に調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】BHTとイソブチルアルコールの混合比を変えた場合の溶解性。
【
図3】BHTと有機溶剤混合物(1:4)の溶解性。
【
図5】葉面散布1週間後のダイズ溢泌液中に含まれるアラントイン酸量。
【
図6】葉面散布1週間後のダイズ溢泌液中に含まれるアラントイン量。
【
図7】葉面散布1週間後のダイズ溢泌液中に含まれるアラントイン酸量。
【
図8】試験区7の葉面散布1週間後のダイズ植物体。
【
図10】葉面散布1週間後のダイズ溢泌液中に含まれるアラントイン酸量。
【
図11】葉面散布1週間後のアズキ地上部乾燥重量。
【
図12】葉面散布1週間後のアズキ地下部乾燥重量。
【
図13】葉面散布1週間後のヒヨコマメ地上部乾燥重量。
【
図18】1剤型または2剤型組成物の1週間保存後の外観。
【
図19】葉面散布1週間後のダイズ溢泌液中に含まれるアラントイン酸量。
【
図20】葉面散布1週間後のダイズ地上部乾燥重量。
【
図21】葉面散布1週間後のダイズ地下部乾燥重量。
【
図22】第1の実施形態である二頭型瓶体(第一の瓶体と第二の瓶体が接続された状態)を示す正面図及び断面図。
【
図25】第2の実施形態である二頭型瓶体(第一の瓶体と第二の瓶体が接続された状態)を示す正面図及び断面図。
【
図28】第1の実施形態である二頭型瓶体の斜視図。左:第一の瓶体と第二の瓶体が接続され状態、右:第一の瓶体が分離した状態。
【
図29】第2の実施形態である二頭型瓶体の斜視図。左:第一の瓶体と第二の瓶体が接続され状態、右:第一の瓶体が分離した状態。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<豆類に包含されるマメ科植物の生育促進剤組成物>
本発明の豆類に包含されるマメ科植物の生育促進剤組成物(以下、「本発明の組成物」とも称する)において、「生育促進」とは、豆類に包含されるマメ科植物の生育量(生重量、伸長量等)を増加させ、果実や種子、或いは子実の収量を増大することを意味する。 また、植物が根粒形成植物である場合、その生育促進には根粒活性の促進が包含される。根粒活性促進とは、根粒活性、すなわち根粒によって発揮される宿主植物における窒素固定機能を促進させることを意味する。ここで、「根粒」とは、細菌(根粒菌)との共生によって植物の根に生じる瘤を意味する。根粒菌は、根粒中で大気中の窒素を還元してアンモニア態窒素に変換し、宿主へと供給するいわゆる共生的窒素固定を行う。
【0013】
本発明において、豆類に包含されるマメ科(Fabaceae)植物としては、ダイズ(エダマメを含む)、アズキ、ヒヨコマメ、ミヤコグサ 、インゲンマメ、ラッカセイ、ソラマメ、エンドウ、ベニバナインゲン、ライマビーン、リョクトウ、ササゲ、ブラックアイビーン、フジマメ、ナタマメ、ヒラマメ、シカクマメ等のその種実が収穫され使用される、所謂「豆類」である。豆類に包含されるマメ科植物としては、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、エンドウ、ソラマメ、ヒヨコマメ、ミヤコグサが好ましく、ダイズがより好ましい。
【0014】
本発明の組成物は、(A)アスコルビン酸又はその塩を含有する第1剤と、(B)酸化防止剤及び(C)有機溶剤を含有する第2剤を組み合わせてなる豆類に包含されるマメ科植物の生育促進剤組成物であって、(B)酸化防止剤が少なくともトコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上であり、(C)有機溶剤が炭素数5以下のアルコール及びジメチルスルホキシドから選ばれる1種以上であり、(A)アスコルビン酸又はその塩の割合(質量比)が、成分(B)を1とした場合10~3,000,000であるか又は(C)有機溶剤の割合(質量比)が、成分(B)を1とした場合が4~100,000であり、前記第1剤及び第2剤が、第一の瓶体と第二の瓶体が連結部材で接続された二頭型瓶体のいずれかの瓶体内にそれぞれ収容されている。当該組成物は、使用時に両者を合わせることにより使用される。
【0015】
本発明において、成分(A)であるアスコルビン酸のIUPAC系統名は(R)-3,4-ジヒドロキシ-5-((S)- 1,2-ジヒドロキシエチル)フラン-2(5H)-オンである。アスコルビン酸は、D体、L体、及びDL体のいずれであってもよいが、L体(所謂、L-アスコルビン酸)であることが好ましい。
アスコルビン酸としては、各種グレードの市販品を用いることができる。
アスコルビン酸の塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アンモニウム塩、ピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジエチルアミンなどの含窒素有機塩基との塩等を挙げることができる。
【0016】
本発明の組成物を植物に施用する際の組成物中の(A)アスコルビン酸又はその塩の濃度は、例えば、100質量ppm以上、300,000質量ppm以下の範囲で、供給方法に応じて適宜調整可能である。例えば、散布機(例えば、ブームスプレーヤ)等を用いて散布する場合は、散布液中100質量ppm以上が好ましく、300質量ppm以上がより好ましく、更に500質量ppm以上が好ましく、且つ20,000質量ppm以下が好ましく、10,000質量ppm以下がより好ましく、更に4,500質量ppm以下がより好ましい。また、100~20,000質量ppmが好ましく、300~10,000質量ppmがより好ましく、更に500~4,500質量ppmがより好ましい。
また、空中散布する場合は、散布液中20,000質量ppm以上が好ましく、80,000質量ppm以上がより好ましく、更に150,000質量ppm以上が好ましく、且つ300,000質量ppm以下が好ましく、250,000質量ppm以下がより好ましく、更に200,000質量ppm以下がより好ましい。また、20,000~300,000質量ppmが好ましく、80,000~250,000質量ppmがより好ましく、更に150,000~200,000質量ppmがより好ましい。
【0017】
本発明の組成物において、成分(B)である酸化防止剤は、具体的には、少なくともトコフェロール(ビタミンE)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)及びブチルヒドロキシアニソール(BHA)から選ばれる1種以上である。このうち、好ましくはフェノール系酸化防止剤であるBHT及びBHAであり、さらに好ましくはBHTである。
なお、本発明においては、酸化防止剤として、トコフェロール、BHT及びBHA以外の酸化防止剤、例えばエリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、クロロゲン酸、カテキン、グルタチオン、尿酸等、好ましくは亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、クロロゲン酸、カテキン、グルタチオン及び尿酸から選ばれる1種以上を併せて使用することもできる。
したがって、成分(B)である酸化防止剤として、BHT及びBHAから選ばれるフェノール系酸化防止剤の1種以上を用い、当該フェノール系酸化防止剤に加えて、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、グルタチオン及び尿酸から選ばれる1種以上を組み合わせて使用することも好適な態様として挙げられる。
【0018】
アスコルビン酸を水道水等の金属イオンを含む水に溶解すると、金属イオンとアスコルビン酸が反応して過酸化水素が発生し、さらに過酸化水素は金属イオンとフェントン反応を起こしてヒドロキシラジカルを生成する。そして、ヒドロキシラジカルが植物体内に侵入すると、細胞膜などに存在する脂質と反応する連続的脂質過酸化反応が引き起こされ、脂質ラジカルや脂質ペルオキシラジカルを生成する。酸化防止剤を使用することによって、斯かるラジカルを補足することが可能となる。
本発明において、(B)酸化防止剤を(C)有機溶剤に溶解した溶液状態で使用されることで、アスコルビン酸による植物生育促進又は根粒活性促進効果が効果的に発揮される。
【0019】
また、本発明の成分(A)を含有する製剤(第1剤)と、成分(B)及び(C)を含有する製剤(第2剤)を別々に調製して組み合わせた2剤型の組成物によれば、成分(A)、成分(B)及び(C)をすべて含有する製剤を保存した場合に生ずる変色を抑制することができる。
なお、成分(A)を含有する第1剤には、トコフェロール、BHT及びBHAとは異なる酸化防止剤、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、クロロゲン酸、カテキン、グルタチオン及び尿酸から選ばれる1種以上を含有させることができる。
【0020】
本発明の組成物を植物に施用する際の組成物(第1剤と第2剤の混合物)中の(B)酸化防止剤の濃度は、0.001質量ppm以上が好ましく、0.01質量ppm以上がより好ましく、更に0.1質量ppm以上が好ましく、且つ100質量ppm以下が好ましく、20質量ppm以下がより好ましく、更に5質量ppm以下がより好ましい。また、0.001~100質量ppmが好ましく、0.01~20質量ppmがより好ましく、更に0.1~5質量ppmがより好ましい。
【0021】
成分(C)である有機溶剤は、(B)酸化防止剤を溶解するために用いられる溶剤であり、具体的には、炭素数5以下のアルコール及びジメチルスルホキシド(DMSO)から選ばれる1種以上である。
ここで、炭素数5以下のアルコールとしては、好ましくは、エタノール、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル2-プロパノール、イソブチルアルコール、1-ペンタノール、3-メチル1-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール等が挙げられ、より好ましくはイソブチルアルコール及びDMSOである。
【0022】
(B)酸化防止剤として、BHT及びBHAから選ばれる1種以上を用いる場合には、(C)有機溶剤としては、DMSO、イソブチルアルコール又はこれらの混合物を用いるのが好ましい。
【0023】
本発明の組成物を植物に施用する際の組成物(第1剤と第2剤の混合物)中の(C)有機溶剤の濃度は、質量1ppm以上、質量100,000ppm以下の範囲で、供給方法に応じて適宜調整可能である。
例えば、散布機(例えば、ブームスプレーヤ)等を用いて散布する場合は、散布液中1質量ppm以上が好ましく、10質量ppm以上がより好ましく、更に50質量ppm以上が好ましく、且つ10,000質量ppm以下が好ましく、5,000質量ppm以下がより好ましく、更に1,000質量ppm以下がより好ましい。また、1~10,000質量ppmが好ましく、10~5,000質量ppmがより好ましく、更に50~1,000質量ppmがより好ましい。
また、空中散布する場合は、散布液中100質量ppm以上が好ましく、1,000質量ppm以上がより好ましく、更に5,000質量ppm以上が好ましく、且つ100,000質量ppm以下が好ましく、50,000質量ppm以下がより好ましく、更に10,000質量ppm以下がより好ましい。また、100~100,000質量ppmが好ましく、1,000~50,000質量ppmがより好ましく、更に5,000~10,000質量ppmがより好ましい。
【0024】
(A)アスコルビン酸又はその塩、(B)酸化防止剤及び(C)有機溶剤の組み合わせの割合(質量比)は、成分(B)を1とした場合、成分(A)は、好ましくは10以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは500以上であり、そして、好ましくは3,000,000以下、より好ましくは2,000,000以下、更に好ましくは200,000以下である。また、好ましくは10~3,000,000、より好ましくは100~2,000,000、更に好ましくは500~200,000である。このうち、散布機による散布の場合には500~45,000が好ましく、空中散布による散布の場合には150,000~2,000,000が好ましく、更に、散布機による散布の場合には500~4,500がより好ましく、空中散布で散布の場合には150,000~200,000が好ましい。
また、成分(B)を1とした場合、成分(C)は、好ましくは4以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは50以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは20,000以下、更に好ましくは10,000以下である。また、好ましくは4~100,000、より好ましくは10~50,000、更に好ましくは20~20,000、更に好ましくは50~10,000である。このうち、散布機による散布の場合には20~10,000が好ましく、空中散布による散布の場合には2,000~100,000が好ましい。更に、散布機による散布の場合には50~1,000がより好ましく、空中散布で散布の場合には5,000~10,000がより好ましい。
【0025】
本発明においては、(A)アスコルビン酸又はその塩、(B)酸化防止剤及び(C)有機溶剤と共に、(D)界面活性剤を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤を用いることで、植物表面への(A)アスコルビン酸又はその塩の濡れ性、付着性、浸透性を向上し、(A)アスコルビン酸又はその塩の効果を増強させ、あるいは効率よく効果を発揮することができる。
(D)界面活性剤は、成分(B)及び(C)を含有する第2剤に含有するのが好ましい。
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤及び/又は陰イオン界面活性剤を含むことができる。
非イオン界面活性剤としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキルポリグリコシド及びショ糖脂肪酸エステル等から選ばれる1種以上が挙げられ、陰イオン界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩及びポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、脂肪酸塩、ピロリン酸塩、ラウリルリン酸、ポリカルボン酸型高分子、ポリオキシエチレンアルキレンアルキル酢酸、芳香族スルホン酸塩ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンジスチレン化エーテル硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等から選ばれる1種以上が挙げられる。
このうち、過剰施用の際の植物に対する薬害防止の観点から、非イオン界面活性剤としてはソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルポリグリコシド及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種以上が好ましく、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましく、陰イオン界面活性剤としてはアルキル硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等)及び脂肪酸塩から選ばれる1種以上が好ましい。
【0026】
本発明の組成物を植物に施用する際の組成物(第1剤と第2剤の混合物)中の(D)界面活性剤の濃度は、10質量ppm以上、30,000質量ppm以下の範囲で、供給方法に応じて適宜調整可能である。
例えば、散布機(例えば、ブームスプレーヤ)等を用いて散布する場合は、散布液中10質量ppm以上が好ましく、100質量ppm以上がより好ましく、更に200質量ppm以上が好ましく、且つ5,000質量ppm以下が好ましく、1,000質量ppm以下がより好ましく、更に500質量ppm以下がより好ましい。また、10~5,000質量ppmが好ましく、10~1,000質量ppmがより好ましく、更に100~500質量ppmがより好ましい。
また、空中散布する場合は、散布液中100質量ppm以上が好ましく、500質量ppm以上がより好ましく、更に質量1,000ppm以上が好ましく、且つ質量10,000ppm以下が好ましく、質量8,000ppm以下がより好ましく、更に質量5,000ppm以下がより好ましい。また、100~10,000質量ppmが好ましく、500~8,000質量ppmがより好ましく、更に1,000~5,000質量ppmがより好ましい。
また、(D)界面活性剤を組み合わせる場合の割合(質量比)は、成分(B)を1とした場合、成分(D)は、好ましくは10以上、より好ましくは50以上、更に好ましくは100以上であり、そして、好ましくは300,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは5,000以下である。また、好ましくは10~300,000、より好ましくは50~100,000、更に好ましくは100~5,000である。このうち散布機による散布の場合には100~5,000が好ましく、空中散布による散布の場合には1,000~50,000が好ましい。更に、散布機による散布の場合には100~500がより好ましく、空中散布による散布の場合には1,000~5,000がより好ましい。
【0027】
また、本発明においては、(A)アスコルビン酸又はその塩、(B)酸化防止剤及び(C)有機溶剤と共に、(E)キレート剤を組み合わせて用いることができる。
キレート剤を用いることで、(A)アスコルビン酸又はその塩の安定性を向上でき、その結果、アスコルビン酸又はその塩の効果を安定させることができる。
(E)キレート剤は、成分(A)を含有する第1剤に含有するのが好ましい。
キレート剤としては、例えばアミノカルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤、多価カルボン酸系キレート剤等が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)及びこれらの塩等が挙げられる。 ホスホン酸系キレート剤としては、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)及びこれらの塩等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸系キレート剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸及びこれらの塩等が挙げられる。
多価カルボン酸系キレート剤としては、コハク酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マロン酸及びこれらの塩等が挙げられる。
【0028】
本発明の組成物を植物に施用する際の組成物(第1剤と第2剤の混合物)中の(E)キレート剤の濃度は、0.01質量ppm以上が好ましく、0.1質量ppm以上がより好ましく、更に1質量ppm以上が好ましく、且つ100質量ppm以下が好ましく、50質量ppm以下がより好ましく、更に10質量ppm以下がより好ましい。また、0.01~100質量ppmが好ましく、0.1~50質量ppmがより好ましく、更に1~10質量ppmがより好ましい。
また、(E)キレート剤を組み合わせる場合の割合(質量比)は、成分(B)を1とした場合、成分(E)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは1以上であり、そして、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは10以下である。また、好ましくは0.01~100、より好ましくは0.1~100、より好ましくは1~100、更に好ましくは、1~10である。
【0029】
(A)アスコルビン酸と共に使用される、(B)酸化防止剤、(C)有機溶剤、(D)界面活性剤の好適な組み合わせとしては、例えば以下のものが挙げられる。
・成分(B)がBHT及びBHAから選ばれる1種以上を含む酸化防止剤であり、成分(C)がイソブチルアルコール又はDMSOを含む有機溶剤であり、成分(D)がソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる1種以上、及び所望によりさらにアルキル硫酸塩を含む界面活性剤である組み合わせ。
・成分(B)がBHT、亜硫酸ナトリウム、グルタチオン及び尿酸を含む酸化防止剤であり、成分(C)がイソブチルアルコール又はDMSOを含む有機溶剤であり、成分(D)がソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる1種以上、及び所望によりさらにアルキル硫酸塩を含む界面活性剤である組み合わせ。
【0030】
後記実施例に示すように、根粒形成植物であるダイズの種子を播種後、根粒菌を接種してダイズを栽培する場合において、アスコルビン酸(第1剤)に、BHTのような酸化防止剤と有機溶剤(第2剤)を組み合わせて添加すると、根粒重量および根粒活性が増加し、根粒に基づくウレイドの生成が促進され、宿主植物の生育が促進することが示された。
したがって、アスコルビン酸(第1剤)と、特定の酸化防止剤及び有機溶剤(第2剤)の組み合わせは、豆類に包含されるマメ科植物の生育を促進するため、根粒活性を促進するための組成物となる。根粒に由来するウレイド量は、子実収量と相関することが報告されている(輪換畑大豆の全量基肥窒素診断法 茨城県農業総合センタ- 農業研究所 H18主要成果;http://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/noken/seika/h18pdf/documents/27.pdf)ことから、本発明の組成物は、子実収量の増大にも有用である。
なお、宿主植物における窒素固定機能はウレイド生成能又はアミド生成能として評価できることから、本発明の組成物による根粒活性の促進効果は、具体的には湿根粒重量当りのウレイド生成量又はアミド生成量として評価できる。斯かるウレイド生成量又はアミド生成量は、植物体を切断(例えば、地上部を子葉直下で切断)した場合に採取される溢泌液中のウレイド量又はアミド量を測定し算出することができる。ここで、ウレイドとしては、アラントイン、アラントイン酸又はシトルリンが挙げられ、アミドとしてはアスパラギン又はグルタミンが挙げられるが、アラントイン酸またはアスパラギン量を測定するのが好ましい。
【0031】
上記の第1剤と第2剤を組み合わせてなる組成物は、豆類に包含されるマメ科植物の生育又は根粒活性を促進するため、果実や種子或いは子実の収量を増大するための組成物となり、例えば、各種農業または園芸資材、或いは土壌、培地、養液栽培用溶液等の植物を栽培するための栽培基材に添加・配合するための製剤となり得る。
上記組成物の形態は、液状又はゲル状組成物であってもよく、また粉末状、顆粒状の組成物であってもよい。
そして、当該第1剤及び第2剤は、第一の瓶体と第二の瓶体が連結部材で接続された二頭型瓶体のいずれかの瓶体内にそれぞれ収容される。
【0032】
上記組成物には、上記成分(A)~(C)、更には(D)、(E)の他に、任意の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、溶媒(例えば、水、緩衝液、培地、養液栽培用溶液等)、担体(例えば、ゼオライト、シリカ、ベントナイト、芒硝、珪藻土、バーミキュライト、パーライト、ピートモス、活性炭、ヒューマス、タルク、クレー、カーボンブラック、パルプ、藁、大豆かす、カオリン、モンモリロナイト、アルミナ等)、前記化合物の溶解を促すためのpH調整剤、植物体又は土壌への展着力を高めるための展着剤、肥効を高めるための肥料成分、農薬成分、バインダー、増量剤、根粒菌や菌根菌等の植物生育促進微生物、植物の必須栄養素、フラボノイド、有機酸、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸塩基、糖、1価アルコール、食品添加物、微生物抽出物、植物ホルモン、nod因子すなわちリポ-キトオリゴ糖、合成リポ-キトオリゴ糖、キトオリゴ糖、キチン性化合物、リノール酸又はその誘導体類、リノレン酸又はその誘導体類、カリキン、アシル-ホモセリンラクトン誘導体、ベタイン化合物、フェノール類化合物等が挙げられる。
【0033】
また、空中散布のための組成物においては、ポリオキシエチレン酸脂肪酸エステル等の乳化剤、デシルアルコール等の油剤を含有することができる。
【0034】
本発明の組成物の態様としては、例えば、本発明の組成物を含む栽培基材(例えば、農業用もしくは園芸用の養液栽培用溶液等)、肥料、水やり用の水、根粒菌資材等の微生物資材、土壌改良剤、農薬、播種用資材、植物用サプリメント(例えば、活性化剤、栄養剤等)、などが挙げられるが、これらに限定されない。このうち、肥料、微生物資材、土壌改良剤、播種用資材、植物用サプリメントは、植物を栽培する土壌の改良に資するため好ましい。該肥料、微生物資材、土壌改良剤、播種用資材、植物用サプリメントは、固体であっても液体であってもよく、固体の場合は粉末もしくは顆粒であることが好ましい。該肥料、微生物資材、土壌改良剤、播種用資材、植物用サプリメントは、成分(A)~(C)を有効成分として含む以外に、通常、植物の栽培に使用される肥料、微生物資材、土壌改良剤、播種用資材、植物用サプリメントの成分を含み得る。
【0035】
当該栽培基材、肥料、根粒菌資材等の微生物資材、土壌改良剤、農薬、播種用資材、植物用サプリメントは、通常の栽培基材(例えば、農業用もしくは園芸用の土壌、培土、培地、養液栽培用溶液、水等)、肥料、根粒菌資材等の微生物資材、土壌改良剤、農薬、播種用資材、植物用サプリメント(例えば、活性化剤、栄養剤等)などに、本発明の組成物を添加することによって調製されてもよい。
【0036】
本発明の組成物は、使用の際に接続された2つの瓶体が分離され、第1剤と第2剤を所定の比率で混合した混合物として使用されるが、第1剤の質量比率は、第2剤を1とした場合、1~100、好ましくは1~50、より好ましくは1~25である。
第1剤及び第2剤をそれぞれ水に溶解して調製する場合、第1剤の水溶液中の濃度は100質量ppm以上、300,000質量ppm以下とするのが好ましく、第2剤の水溶液中の濃度は10質量ppm以上、100,000質量ppm以下とするのが好ましい。
【0037】
本発明の組成物の供給方法としては、本発明の効果を発揮できるように植物に施用すれば、その態様は特に限定されない。
すなわち、豆類に包含されるマメ科植物の植物体又は植物の根圏の土壌に、組成物(第1剤と第2剤の混合物)が接触するか、又は送達される限り特に制限されず、土壌への表面散布、潅注、鋤込み、植物への葉面散布、肥料に混合しての施用、水耕溶液への添加、又は、播種前の種子への塗布もしくは塗抹(例えば種子粉衣)等が挙げられるが、本発明の成分が水で希釈された散布液の状態にて適用されるのが好ましく、特に葉面散布が好適に用いられる。
なお、散布液は、施用時に調製されても良く、この場合に使用される希釈水は、農業用水、井戸水、地下水、河川水、湖沼、水道水等のいずれであっても良い。
【0038】
散布する方法としては特に限定されないが、例えば、スプレー法すなわち噴霧することにより散布液を霧状に散布する方法が挙げられる。斯かる方法によれば、本発明の豆類に包含されるマメ科植物の生育促進剤又は根粒活性促進剤が植物に付着した後、植物上で展着性が良好に発現される。
スプレー法により散布する方法として、具体的には、霧吹き、噴霧器、散布機(例えば、ブームスプレーヤ)等を用いて人手により散布する方法や、飛行機、ヘリコプター、ドローンなどを用いて空中散布する方法などが挙げられる。
【0039】
本発明の組成物の施用量は、施用する際の組成物中に含まれる成分(A)~(C)の濃度に依存する。例えば、散布液中に含まれる成分(A)の濃度が100~300,000質量ppmである場合、該組成物のうち、成分(A)の植物1株あたりの使用量は、好ましくは1mg以上、より好ましくは5mg以上、より好ましくは10mg以上であり、且つ好ましくは150mg以下、より好ましくは100mg以下、より好ましくは50mg以下である。また、好ましくは1~150mg、より好ましくは5~100mg、より好ましくは10~50mgである。組成物は、一度に前記範囲の量を施用してもよく、複数回に分けて施用してもよい。
【0040】
施用の時期及び回数は、豆類に包含されるマメ科植物の種類等によっても異なり得るが、ダイズの場合は、通常、土壌等の栽培基材への表面散布、潅注、鋤込み、若しくは種子粉衣により施用する場合は播種前若しくは播種と同時に1回又は1~3回施用することが好ましく、また播種後に施用する場合には、生殖生長期に入る前の栄養成長期初期から生殖生長期に入った後の子実肥大期の間が好ましい。
【0041】
<本発明の組成物を収容するための二頭型瓶体>
本発明の組成物は、前記第1剤及び第2剤が、第一の瓶体と第二の瓶体が連結部材で接続された二頭型瓶体のいずれかの瓶体内にそれぞれ収容されている。
本発明の二頭型瓶体は、底部に外ネジ部を有する瓶胴部、細口瓶頭部及び蓋体を備える第一の瓶体と、瓶胴部と広口瓶頭部を備える第二の瓶体が連結部材を介して接続された二つの瓶頭部を有する二頭型の瓶体である。連結部材の構造の相違により、第1の実施形態として
図22~24で示される二頭型瓶体、第2の実施形態として
図25~27で示される二頭型瓶体が挙げられる。
何れの場合においても、第一の瓶体は、底部に外ネジ部を有する瓶胴部3と、細口瓶頭部4と蓋体5を備え、第二の瓶体は、瓶胴部6と広口瓶頭部7とを備える(
図23、
図26)。第一の瓶体の細口瓶頭部4と第二の瓶体の広口瓶頭部7の外側壁には、それぞれ、蓋体5又は連結部材8若しくは18と螺合するための外ネジ部が設けられている。
【0042】
<第1の実施形態>
連結部材8を備えた二頭型瓶体について、
図22~24を用いて説明する。
連結部材8は、カバープレート9と、カバープレート9の外周縁に沿って上方に延在する第1のリング壁10と、第1のリング壁10が下向きに折り畳まれて形成された第2のリング壁11と、を備える(
図24)。第1のリング壁10の内側壁には、内ネジ部15が設けられている。また、第2のリング壁11の内側壁には内ネジ部17が設けられている(
図24)。
【0043】
第一の瓶体1の瓶胴部3の底部に設けられたが外ネジ部が螺合構造13を介して連結部材8の第1リング壁10に接続され、前記連結部材8は第二の瓶体2の広口瓶頭部7と螺合構造14を介して接続される(
図23)。
【0044】
前記螺合構造13は、第一の瓶体1の底部に外ネジ部を有する瓶胴部3の外ネジ部12と、第1のリング壁10の内側壁に設けられた内ネジ部15で構成される。また、前記螺合構造14は、第二の瓶体2の広口瓶頭部7の外側壁に設けられた外ネジ部16と、第2リング壁11の内側壁に設けられた内ネジ部17で構成される(
図23)。
すなわち、前記第1リング壁10の内ネジ部15は、第一の瓶体1の底部に外ネジ部を有する瓶胴部3の外ネジ部12と螺合し、前記第2リング壁11の内ネジ部17は、第二の瓶体2の広口瓶頭部7の外側壁に設けられた外ネジ部16と螺合する(
図23)。
第一の瓶体1と連結部材8との螺合構造13の螺合方向は、第二の瓶体2と連結部材8との螺合構造14の螺合方向と同じであっても、異なっていてもよい。
【0045】
<第2の実施形態>
連結部材18を備えた二頭型瓶体について、
図25~27を用いて説明する。
連結部材18は、カバープレート19と、カバープレート19の外周縁に垂直方向にそれぞれ突出する第1リング壁20と、第2リング壁21と、を備える(
図27)。第1のリング壁20の内側壁には内ネジ部22が設けられている。また、第2のリング壁21の内側壁には内ネジ部24が設けられている(
図27)。
【0046】
第一の瓶体1の瓶胴部3の底部に設けられたが外ネジ部が螺合構造23を介して連結部材18の第1リング壁20に接続され、前記連結部材18は第二の瓶体2の広口瓶頭部7と螺合構造25を介して接続される(
図26)。
【0047】
前記螺合構造23は、第一の瓶体1の底部に外ネジ部を有する瓶胴部3の外ネジ部12と、第1のリング壁20の内側壁に設けられた内ネジ部22で構成される。また、前記螺合構造25は、第二の瓶体2の広口瓶頭部7の外側壁に設ける外ネジ部16と、第2リング壁21の内側壁に設けられた内ネジ部24で構成される(
図26)。
すなわち、前記第1リング壁20の内ネジ部22は、第一の瓶体1の底部に外ネジ部を有する瓶胴部3の外ネジ部12と螺合し、前記第2リング壁21の内ネジ部24は、第二の瓶体2の広口瓶頭部7の外側壁に設けられた外ネジ部16と螺合する(
図26)。
第一の瓶体1と連結部材18との螺合方向は、第二の瓶体2と連結部材18との螺合方向と同じであっても、異なっていてもよい。
【0048】
前記第一の瓶体及び第二の瓶体の材質は、合成樹脂や金属を用いることができる。合成樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレ-ト、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、塩化ビニル等が挙げられる。金属としてはアルミやブリキ等が挙げられる。合成樹脂は透明または不透明の何れでもよい。
斯かる合成樹脂や金属製の第一の瓶体及び第二の瓶体は、金型を用いた射出成形やプレスブロー成形により製造できる。
第一の瓶体の底部に外ネジ部を有する瓶胴部と細口瓶頭部、第二の瓶体の瓶胴部と広口瓶頭部は、それぞれ合成樹脂で作られた一体品であるのが好ましい。
【0049】
連結部材の材質は、第一の瓶体及び第二の瓶体の材質として挙げた各種のものとすることができる。斯かる連結部材の材質は、瓶体と同じ材質であってもよい。螺条の成形性及び取扱い性の観点から、連結部材の材質は、合成樹脂であることが好ましい。連結部材の材質が合成樹脂である場合、金型を用いた射出成形により製造できる。連結部材は、合成樹脂で作られた一体品であるのが好ましい。
【0050】
上記第一の瓶体と第二の瓶体には、(A)アスコルビン酸又はその塩を含有する第1剤と、(B)酸化防止剤及び(C)有機溶剤を含有する第2剤が、別々に収容されるが、第1剤及び第2剤は、第一の瓶体と第二の瓶体の何れに収容してもよい。
(A)アスコルビン酸又はその塩を含有する第1剤は、粉末状又は顆粒状の形態で収容されることがあり得るが、その場合には、瓶体に水道水、農業用水、井戸水等を加えて、液剤を調製することができる。
【0051】
第一の瓶体と第二の瓶体は、使用の際に分離され(
図28,
図29)、第1剤と第2剤が混合されるが、その態様は、例えば、第一の瓶体中の組成物を第二の瓶体中に入れ、あるいは、第一の瓶体中の組成物と第二の瓶体中の組成物をそれぞれ別の容器に入れて混合することが挙げられる。
【0052】
例えば、一態様として、粉末状の第1剤を第二の瓶体に収容し、液状の第2剤を第一の瓶体に収容する。次いで、別の容器に加えておいた水道水、農業用水、井戸水等に、第一の瓶体に収容した液状の第2剤を溶解した後、第二の瓶体に収容した粉末状の第1剤を溶解すること、あるいは第1剤と第2剤をその逆の順序で溶解することで液剤を調製することが挙げられる。
【0053】
上述した実施形態に関し、本発明においてはさらに以下の態様が開示される。
<1>(A)アスコルビン酸又はその塩を含有する第1剤と、(B)酸化防止剤及び(C)有機溶剤を含有する第2剤を組み合わせてなる豆類に包含されるマメ科植物の生育促進剤組成物であって、(B)酸化防止剤が少なくともトコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上であり、(C)有機溶剤が炭素数5以下のアルコール及びジメチルスルホキシドから選ばれる1種以上であり、(A)アスコルビン酸又はその塩の割合(質量比)が、成分(B)を1とした場合10~3,000,000であるか又は(C)有機溶剤の割合(質量比)が、成分(B)を1とした場合が4~100,000であり、前記第1剤及び第2剤が、第一の瓶体と第二の瓶体が連結部材で接続された二頭型瓶体のいずれかの瓶体内にそれぞれ収容されている、組成物。
<2>第一の瓶体が底部に外ネジ部を有する瓶胴部、細口瓶頭部及び蓋体を備え、第二の瓶体が瓶胴部と広口瓶頭部を備える、<1>に記載の組成物。
<3>前記第1剤が第二の瓶体、第2剤が第一の瓶体に収容された、<1>又は<2>に記載の組成物。
<4>(A)アスコルビン酸又はその塩及び(C)有機溶剤の割合(質量比)が、成分(B)を1とした場合、成分(A)が10~3,000,000、好ましくは100~2,000,000、より好ましくは500~200,000で、成分(C)が4~100,000、好ましくは10~50,000、より好ましくは20~20,000、更に好ましくは50~10,000である、<1>~<3>のいずれかに記載の組成物。
<5>(B)酸化防止剤が、さらに亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、グルタチオン及び尿酸から選ばれる1種以上を含む、<1>~<3>のいずれかに記載の組成物。
<6>(C)有機溶剤がイソブチルアルコール及びジメチルスルホキシドから選ばれる1種以上である、<1>~<3>のいずれかに記載の組成物。
【0054】
<7>さらに、第2剤に(D)界面活性剤を組み合わせてなる、<1>~<6>のいずれかに記載の剤。
<8>(D)界面活性剤の割合(質量比)が、成分(B)を1とした場合、好ましくは10~300,000、より好ましくは50~100,000、更に好ましくは100~5,000である、<7>に記載の組成物。
<9>(D)界面活性剤が非イオン系界面活性剤及び/又は陰イオン系界面活性剤を含む、<7>又は<8>に記載の組成物。
<10>(D)非イオン系界面活性剤がソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる1種以上であり、陰イオン系界面活性剤がアルキル硫酸エステル塩である<9>に記載の組成物。
<11>(D)界面活性剤が非イオン系界面活性剤及び陰イオン系界面活性剤を含む、<9>に記載の剤。
<12>(D)非イオン系界面活性剤がソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる1種以上であり、陰イオン系界面活性剤がアルキル硫酸エステル塩及び脂肪酸塩から選ばれる1種以上である<11>に記載の組成物。
<13>さらに、第1剤に(E)キレート剤を組み合わせてなる、<1>~<12>のいずれかに記載の組成物。
<14>(A)アスコルビン酸又はその塩、(C)有機溶剤、(D)界面活性剤及び(E)キレート剤の割合(質量比)が、成分(B)を1とした場合、成分(A)が10~3,000,000、好ましくは100~2,000,000、より好ましくは500~200,000で、成分(C)が4~100,000、好ましくは10~50,000、より好ましくは20~20,000、更に好ましくは50~10,000であり、成分(D)が好ましくは10~300,000、より好ましくは50~100,000、更に好ましくは100~5,000であり、成分(E)が好ましくは0.01~100、より好ましくは0.1~100、より好ましくは1~100、更に好ましくは、1~10である、<13>に記載の組成物。
<15>(E)キレート剤がエチレンジアミン四酢酸及びエチレンジアミン-N,N‘-ジコハク酸から選ばれる1種以上である、<13>又は<14>に記載の組成物。
【0055】
<16><1>~<15>において、豆類に包含されるマメ科植物が好ましくはダイズ、アズキ、ヒヨコマメ、ミヤコグサ 、インゲンマメ、ラッカセイ、ソラマメ、エンドウ、ベニバナインゲン、ライマビーン、リョクトウ、ササゲ、フジマメ及びナタマメから選ばれる豆類、より好ましくはダイズ、アズキ、インゲンマメ、エンドウ、ソラマメ、ヒヨコマメ及びミヤコグサから選ばれる豆類、より好ましくはダイズである。
【0056】
<17><1>に記載の組成物を収容する瓶体であって、底部に外ネジ部を有する瓶胴部、細口瓶頭部及び蓋体を備える第一の瓶体の下部に、瓶胴部と広口瓶頭部を備える第二の瓶体が連結部材を介して接続された二頭型瓶体。
<18>連結部材が、カバープレートと、該カバープレートの外周縁に沿って上方に延在する第1のリング壁と、該第1のリング壁が下向きに折り畳まれて形成された第2のリング壁とを備え、第一の瓶体の瓶胴部の底部に設けられた外ネジ部が連結部材の第1のリング壁の内側壁に設けられた内ネジ部と螺合し、第二の瓶体2の広口瓶頭部が連結部材の第2のリング壁の内側壁に設けられた内ネジ部と螺合することにより第一の瓶体と第二の瓶体が接続されている、<17>に記載の瓶体。
<19>連結部材が、カバープレートと、該カバープレートの外周縁に垂直方向にそれぞれ突出する第1リング壁と第2リング壁とを備え、第一の瓶体の瓶胴部の底部に設けられた外ネジ部が連結部材の第1のリング壁の内側壁に設けられた内ネジ部と螺合し、第二の瓶体の広口瓶頭部が連結部材の第2のリング壁の内側壁に設けられた内ネジ部と螺合することにより第一の瓶体と第二の瓶体が接続されている、<17>に記載の瓶体。
【実施例0057】
試験例1 アスコルビン酸溶解水の施用効果に対する影響
アスコルビン酸を水に溶解したアスコルビン酸水溶液と、脱イオン水に溶解したアスコルビン酸水溶液を用意し、ダイズ(Glycine max)において、アスコルビン酸溶解水の施用効果に対する影響を検証した。
500質量ppmのアスコルビン酸を1回葉面散布した場合のダイズ収量に与える影響を評価した。評価した試験区1~3は以下の通りである。
1区画:コントロール(施用なし)
2区画:アスコルビン酸500質量ppm葉面散布(水道水で溶解)
3区画:アスコルビン酸500質量ppm葉面散布(脱イオン水で溶解)
【0058】
(1)栽培条件
ダイズ栽培は栃木県内の圃場で実施し、ダイズ栽培品種は「里のほほえみ」を用いた。圃場のうち、周辺部を除いた畝の幅2mを1区画として葉面散布処理を行った。1試験区につき、コントロール(試験区1)は12区画、アスコルビン酸の施用区(試験区2および3)は3区画試験を行った。1区画として設定した2mの範囲には平均19個体が栽培されていた。
【0059】
(2)葉面散布処理と子実重量の測定
アスコルビン酸として、扶桑化学工業株式会社製「食品添加物グレード ビタミンC(L-アスコルビン酸)ファインメッシュTypeSSS」を用いた。アスコルビン酸の500質量ppm水溶液を水道水または脱イオン水に溶解することで作製した。乾電池式噴霧器(GT-5HS、株式会社工進)を用いて、1株当たりアスコルビン酸水溶液20mLをダイズ植物体全体にかかるように散布した。散布は播種60日目に行い、生育ステージは子実肥大期に相当する時期であった。播種後108日目に収穫を行った。収穫後の各個体から全子実を回収し、100℃にて48時間乾燥させた。収量データとして、乾燥子実質量を測定した。
【0060】
(3)結果
1区画内の各個体の平均子実重量を算出後、3区画の平均値および標準偏差を算出した(
図1)。図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。同濃度のアスコルビン酸を葉面散布
した場合に、水道水と脱イオン水では種子重量に与える効果が異なることが示された。すなわち、農業現場で使用する水(水道水)ではアスコルビン酸の効果が消失するという課題が明らかになった。
【0061】
試験例2 ジブチルヒドロキシトルエンの各種溶剤への溶解性
イソブチルアルコール100μLに対して、溶解するBHT量を変化させた。BHTが25mg、すなわちBHT:イソブチルアルコール=1:4の割合までは均一に溶解することを確認した(
図2)。他の溶媒に関しても同様にBHT:溶剤=1:4の割合での溶解性を確認した。検討した溶剤のうち、グリセリンを除くエタノール、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノールおよびジメチルスルホキシド(DMSO)では均一に溶解した(
図3)。BHTは水には難溶であることが知られている。なお、各試薬は富士フィルム和光純薬株式会社製を使用した。
【0062】
実施例1 植物生育促進、根粒活性促進効果及び増収効果を有する散布液の調製
(1)2剤型組成物の調製
下記配合成分を用いて、表1に示す2剤型組成物を調製した。成分(B)である、BHT、BHAおよびトコフェロールから選ばれる1種以上を予め成分(C)に溶解後、さらに成分(D)を混合して、第2剤を調製した。次に、成分(A)および成分(E)から選ばれる1種以上を混合して第1剤を調製した。表2に示す各組成例は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)および成分(E)が表中の配合量となる2剤型組成物として調製した。
【0063】
(2)散布液の調製および溶解性評価
30℃に加温した水道水100mLに対し、調製した2剤型の組成物を溶解して散布液の溶解性を評価した。すなわち、第2剤を加温した水道水に溶解させたのち、更に第1剤を溶解させ、その溶解性を評価した。
【0064】
(3)使用した試薬
アスコルビン酸は扶桑化学工業株式会社製「食品添加物グレード ビタミンC(L-アスコルビン酸)ファインメッシュTypeSSS」を用いた。アスコルビン酸ナトリウム、トコフェロール、BHT、BHA、エタノール、メタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール、1-ブタノール、DMSO、クエン酸は富士フィルム和光純薬株式会社製を使用した。EDTAは株式会社同仁化学研究所製を使用した。界面活性剤としてソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレートを使用した。
【0065】
(4)溶解性評価の結果
各組成物を用いて調製した散布液の水溶液溶解性について、外観を下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
〇:溶け残りがなく、均一な水溶液である。
△:やや溶け残りがみられるが、攪拌直後は均一となる。
×:溶け残りがみられ、攪拌直後も均一にならない。
【0066】
表2の結果から、組成例1~17においては、植物生育促進剤としての散布に適する均一な散布液を得られることが示された。
【0067】
【0068】
【0069】
実施例2 根粒重量および根粒活性の評価
(1)土壌の準備と播種
中期肥効型培土(タキイ含水セル培土中期肥効型、タキイ種苗株式会社)とバーミキュライト細粒(あかぎ園芸株式会社)を体積比1:1で混合し、当該土壌をポリポット(直径10.5cm、高さ9cm)に充填した。ダイズ種子は「エンレイ」(日光種苗株式会社より購入)を使用した。水道水を1ポットあたり250mL給水させた後、種子を各ポットに2粒、土壌表面から約1~2cmの深さに1粒ずつ播種した。なお、各試験区の反復数は6とした(n=6)。
【0070】
(2)根粒菌の接種
Yeast-Mannitol(YM)培地(K2HPO4 0.5g、MgSO4・7
H2O 0.2g、NaCl 0.1g、Yeast Extract 0.4g、Ma
nnitol 10g、蒸留水1L(pH6.8))に1.5%の寒天(和光純薬工業株式会社)を加えて固形培地を調製し、当該固形培地上でダイズ根粒菌(Bradyrhizobium japonicum) NBRC14783T株を生育させた。生育した根粒菌を一白金耳とり、容積500mLの坂口フラスコ中のYM液体培地50mLに植菌し、30℃にて約36時間振盪培養した。菌体の濁度OD600の値が0.3程度の根粒菌培養液を調製した。播種後にマイクロピペッターを用いて、根粒菌培養液1mLを種子に滴下接種した。
【0071】
(3)栽培条件
播種から間引きまでの間の栽培は人工気象器(LPH-411SP、株式会社日本医化器械製作所)の中で行い、光条件は明期(光量440~480μmol/m2/s)16
時間/暗期8時間、温度は明期30℃/暗期25℃、湿度は50%とした。播種から7日
後に、1ポットあたり1植物となるように間引きを行った。間引き後は屋外にて栽培を行った。水やりは、ポットの下に置いたバットの水がなくなった後に、新たにポットの下部5cm程度が浸かる量の水道水をバットに加えることで行った。
【0072】
(4)葉面散布処理
表3に示す散布液を調製し、播種14日目に、霧吹きを用いて1株あたり6.7mL散布した。葉面散布は1回のみとし、7種類の試験区を検討した。
散布液の調製は、成分(B)のうち、BHTを予め成分(C)のDMSOに溶解後、成分(C)と成分(D)を混合して、第2剤を調製した。次に、成分(A)、尿酸(酸化防止剤)および成分(E)を混合して、第1剤を調製した。第2剤を使用水に溶解させたのち、更に第1剤を溶解させることによって、散布液を調製した。
【0073】
ここで、アスコルビン酸は扶桑化学工業株式会社製「食品添加物グレード ビタミンC(L-アスコルビン酸)ファインメッシュTypeSSS」を用いた。BHT、尿酸、DMSOおよびEDTAは富士フィルム和光純薬株式会社製、EDDSはキレスト株式会社製の「キレストEDDS-35」を使用した。成分(C)として、DMSO及びイソブタノールを使用した。成分(D)のうち、ノニオン系界面活性剤として、ソルビタンモノラウレートまたはソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステルを使用した。また、成分(D)のうち、アニオン系界面活性剤として脂肪酸石けんカリウム塩を使用した。
【0074】
【0075】
(5)根粒活性の指標となるウレイド態窒素量測定のための溢泌液回収方法
21日間栽培を行った後、剪定ばさみを使用して、ダイズ茎を子葉節の場所で切断し、1.5mL容のマイクロチューブ(エッペンドルフ株式会社)に綿球#10(川本産業株式会社)を詰めたものを被せ、茎の切断面から出液する溢泌液を2時間回収した。溢泌液回収後の綿球は-80℃の冷凍庫で保管した。また、溢泌液回収前後の綿球の重さを比較することにより、溢泌液の液量を算出した。
【0076】
(6)綿球に回収した溢泌液成分の抽出操作
綿球に含まれる溢泌液成分を超純水で溶出させ、マイクロバイオスピンクロマトグラフィーカラム(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社)を使用してろ過した。カラムに残ったろ液は遠心分離機(CR15RN、株式会社日立製作所)を15,000rpmで1分間運転することにより遠心回収した。1,000倍に希釈したろ液を定量した。
【0077】
(7)ウレイド態窒素量の定量に使用する装置および測定方法
HPLC装置および質量分析装置は、それぞれAgilent 1260 Infinity LCシステム(アジレント・テクノロジー株式会社)およびAB SCIEX TripleQuad 4500 システム(株式会社エービー・サイエックス)を使用した。カラムはScherzo SS-C18(100mm×2mm、3μm)(インタクト株式会社)を用い、オーブン温度は40℃とした。適宜希釈したサンプル5μLを注入し、流速0.5mL/min,溶離液は0.1%ギ酸水溶液(溶離液A)と50mM酢酸アンモニウム/メタノール溶液(溶離液B)を用い、溶離液A:溶離液B=95:5で平衡化した後にサンプルを供し、5分後に溶離液A:溶離液B=80:20となるようなリニアグラジェントによりウレイド態窒素の溶出を行った。
【0078】
(8)使用した標準品と定量
LC-MSにて溢泌液中のウレイド態窒素量を分析した。標準品には、アラントイン(東京化成工業株式会社)およびアラントイン酸(Toronto Research Chemicals Inc.)を用いた。標準品をLC-MS分析し、10―1000ppbの範囲で検量線を作成した。
各サンプルについて、各試薬との保持時間、精密質量、MS/MSスペクトルの一致からアラントインおよびアラントイン酸を同定した。また検量線から、サンプル中のアラントインおよびアラントイン酸を定量し、植物1個体当たりの総量を求めた。
【0079】
(9)結果
根粒重量および根粒活性の測定結果を
図4および
図5に示す。各試験区6反復のうち、最も高い値と低い値を除いた、4反復分のデータで平均値および標準偏差を算出した。図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。
試験例1では、アスコルビン酸を溶解する水質の違いがダイズ収量に与えることを示した。本実施例の試験区1~3より、ダイズ初期成育段階においても、脱イオン水でアスコルビン酸を溶解した場合に根粒重量および根粒活性が増加し、水道水で溶解した場合にはアスコルビン酸の施用効果が低下する傾向が確認された。試験区4と5の比較から、水道水でアスコルビン酸を溶解することによって低下した根粒活性の回復には有機溶媒の添加が必要であることが示された。また、試験区6と7の比較から、キレート剤はEDTAの方が根粒活性の回復にはより好ましいことが示唆された。
【0080】
実施例3 アスコルビン酸と酸化防止剤の混合比率の検討
土壌の準備と播種、根粒菌の接種、根粒活性の指標となるウレイド態窒素量測定のための溢泌液回収方法、溢泌液を定量する前の実験操作、ウレイド態窒素量の定量に使用する装置および測定方法、使用した標準品と定量の項目は実施例2と同様で、ダイズの栽培は21日間行った。
【0081】
(1)栽培条件
栽培は人工気象器(LPH-411SP、株式会社日本医化器械製作所)の中で行い、光条件は明期(光量440~480μmol/m2/s)16時間/暗期8時間、温度は明期30℃/暗期25℃、湿度は50%とした。播種から7日後に、1ポットあたり1植物となるように間引きを行った。水やりは、ポットの下に置いたバットの水がなくなった後に、新たにポットの下部5cm程度が浸かる量の水道水をバットに加えることで行った。
【0082】
(2)葉面散布処理
実施例2と同様に、下記表4に示す散布液を調製し、播種14日目に霧吹きを用いて1株あたり6.7mL散布した。葉面散布は1回のみとし、7種類の試験区を検討した(表4)。散布する水量は一定とし、1株あたりのアスコルビン酸量を変更することで、散布液中のアスコルビン酸の濃度を調整した。使用した試薬類は実施例2と同じものである。
【0083】
【0084】
(3)結果
根粒活性の測定結果を
図6および
図7に示す。図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。
図6および
図7において、水道水で溶解したアスコルビン酸の葉面散布時は根粒活性が施用なしの場合と比較して、変わらないか、むしろ低下した。アスコルビン酸を含まない組成である試験区3では根粒活性は低下したが、試験区3の組成にアスコルビン酸を加えることで根粒活性は回復、若しくは向上した。散布機(例えば、ブームスプレーヤ)等を用いて散布する場合を想定した水量での試験においては、試験区4のアスコルビン酸:BHT=500:1の試験区が最も根粒活性が高く、試験区7のアスコルビン酸:BHT=20,000:1では根粒活性が低下する傾向を示した。また、アスコルビン酸:BHT=20,000:1では
図8に示したように葉色が抜ける障害が発生したことから、アスコルビン酸、成分(B)、成分(C)の混合割合は100~20,000:1:2~100が好ましいことが示された。また、成分(C)はイソブチルアルコールを使用した場合も根粒活性回復効果があることが示された。
【0085】
実施例4 圃場におけるダイズ増収効果
1,500ppmのアスコルビン酸を含む組成物を葉面散布した場合のダイズ収量に与える影響を評価した。葉面散布は1回のみとし、8種類の試験区を検討した(表5)。
【0086】
【0087】
(1)栽培条件
ダイズ栽培は栃木県内の圃場で実施し、ダイズ栽培品種は「里のほほえみ」を用いた。圃場のうち、周辺部を除いた畝の幅2mを1区画として葉面散布処理を行った。1試験区につき3区画試験を行った。1区画として設定した2mの範囲には平均10個体が栽培されていた。
【0088】
(2)葉面散布処理と子実重量の測定
実施例2に記載した試薬の他に、ノニオン系界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルを使用した。また、尿素、リン酸二水素カリウム、亜硫酸ナトリウム、グルタチオンおよびEDTAは富士フィルム和光純薬株式会社製を使用した。
試薬を水道水または脱イオン水に溶解することで散布液を作製した。乾電池式噴霧器(GT-5HS、株式会社工進)を用いて、1株当たりアスコルビン酸水溶液6.7mLをダイズ植物体全体にかかるように散布した。散布は播種75日目に行い、生育ステージは子実肥大期に相当する時期であった。播種後173日目に収穫を行った。収穫後の各個体から全子実を回収し、100℃にて48時間乾燥させた。収量データとして、乾燥子実質量を測定した。
【0089】
(3)結果
1区画内の各個体の平均子実重量を算出後、8区画の平均値および標準偏差を算出した(
図9)。図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。
同濃度のアスコルビン酸を葉面散布した場合に、水道水と脱イオン水では種子重量に与える効果が異なることが再度確認された。アスコルビン酸に成分(B)、成分(C)および成分(D)を添加することで、水道水を使用した場合にも増収効果が得られることが示された。また、成分(D)はポリオキシエチレンラウリルエーテルを使用した場合も増収効果を有することが示された。
【0090】
実施例5 アスコルビン酸高濃度施用による根粒活性の評価
土壌の準備と播種、根粒菌の接種、栽培条件、根粒活性の指標となるウレイド態窒素量測定のための溢泌液回収方法、溢泌液を定量する前の実験操作、ウレイド態窒素量の定量に使用する装置および測定方法、使用した標準品と定量の項目は実施例3と同様で、ダイズの栽培は21日間行った。
【0091】
(1)葉面散布処理
播種14日目に葉面散布処理を行った。実施例2、3および4に記載した試薬の他に、ノニオン系界面活性剤として、ポリエチレングリコールモノラウレート及びグリセリン脂肪酸エステルを使用した。試薬を水道水または脱イオン水に溶解することで散布液を作製した。葉面散布は1回のみとし、空中散布を想定し、アスコルビン酸を高濃度含む8種類の試験区を検討した(表6)。試験区2および3は霧吹きを用いて1株あたり6.7mL散布し、試験区4~8は1株当たり0.125mL散布した。
【0092】
【0093】
(2)結果
根粒活性の測定結果を
図10に示す。各試験区6反復のうち、最も高い値と低い値を除いた、4反復分のデータで平均値および標準偏差を算出した。図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。
図10において、アスコルビン酸を少水量で散布した試験区4および5では、試験区2および試験区3と比較して、ダイズの根粒活性が上昇する傾向がみられた。散布に使用する水量に関わらず、アスコルビン酸の溶解に脱イオン水を使用した場合は水道水を使用した場合と比較して、根粒活性が向上した。試験区5と試験区6の比較から、アスコルビン酸に化合物(B)としてBHT、化合物(C)としてDMSO、化合物(D)としてポリエチレングリコールモノラウレートを添加することで、最も根粒活性が高かった。一方、試験区7ではアスコルビン酸濃度を300,000ppmまで増加させた場合、試験区6と比較して根粒活性が低下していたことから、少水量で散布を行う場合にはアスコルビン酸濃度は300,000ppm以下が好ましいことが示された。また、試験区8と試験区6の比較から、化合物(C)はDMSOの方がイソブチルアルコールよりも好ましいことが示された。また、化合物(D)はポリエチレングリコールモノラウレートを使用した場合にも根粒活性回復効果があることが示された。
【0094】
実施例6 アズキにおける初期生育指標の評価
(1)土壌の準備と播種
中期肥効型培土(タキイ含水セル培土中期肥効型、タキイ種苗株式会社)とバーミキュライト細粒(あかぎ園芸株式会社)を体積比1:1で混合し、当該土壌をポリポット(直径10.5cm、高さ9cm)に充填した。アズキ種子は「丹波大納言小豆」(タキイ種苗株式会社より購入)を使用した。水道水を1ポットあたり250mL給水させた後、種子を各ポットに2粒、土壌表面から約1~2cmの深さに1粒ずつ播種した。なお、各試験区の反復数は6とした(n=6)。
【0095】
(2)根粒菌の接種
Yeast-Mannitol(YM)培地(K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.2g、NaCl 0.1g、Yeast Extract 0.4g、Mannitol 10g、蒸留水1L(pH6.8))に1.5%の寒天(和光純薬工業株式会社)を加えて固形培地を調製し、当該固形培地上でダイズ根粒菌(Bradyrhizobium japonicum) NBRC14783T株を生育させた。生育した根粒菌を一白金耳とり、容積500mLの坂口フラスコ中のYM液体培地50mLに植菌し、30℃にて約36時間振盪培養した。菌体の濁度OD600の値が0.3程度の根粒菌培養液を調製した。播種後にマイクロピペッターを用いて、根粒菌培養液1mLを種子に滴下接種した。
【0096】
(3)栽培条件
栽培は人工気象器(LPH-411SP、株式会社日本医化器械製作所)の中で行い、光条件は明期(光量440~480μmol/m2/s)16時間/暗期8時間、温度は明期25℃/暗期20℃、湿度は50%とした。播種から7日後に、1ポットあたり1植物となるように間引きを行った。水やりは、ポットの下に置いたバットの水がなくなった後に、新たにポットの下部5cm程度が浸かる量の水道水をバットに加えることで行った。
【0097】
(4)葉面散布処理
散布液を調製し、播種21日目に、霧吹きを用いて1株あたり6.7mLを1回のみ散布した。散布液の調製は、BHTをイソブチルアルコールに溶解後イソブチルアルコールとソルビタンモノラウレートを混合した後に、水に溶解させる。その後、アスコルビン酸を水に溶解することによって調製した。使用した試薬は実施例2と同様である。評価した試験区1~4は以下の通りである。
播種28日目に、植物体を90℃で24時間乾燥させたのち、植物体の地上部乾燥重量及び地下部乾燥重量を測定した。
【0098】
1区画:コントロール(施用なし)
2区画:アスコルビン酸1,500質量ppm葉面散布(水道水で溶解)
3区画:アスコルビン酸1,500質量ppm葉面散布(脱イオン水で溶解)
4区画:アスコルビン酸1,500質量ppm+BHT1質量ppm+イソブチルアルコール50質量ppm+ソルビタンモノラウレート350質量ppm葉面散布(水道水で溶解)
【0099】
(5)結果
地上部乾燥重量及び地下部乾燥重量の測定結果を
図11および
図12に示す。図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。
試験例1および実施例2から、ダイズにおいて、同濃度のアスコルビン酸を葉面散布した場合に、水道水と脱イオン水では種子重量および初期生育指標に与える効果が異なることが示されている。アズキにおいても、ダイズと同様にアスコルビン酸を溶解する水質によって、初期生育指標に与える効果が異なることが示された。試験区2と4の比較から、アスコルビン酸に成分(B)、成分(C)および成分(D)を添加することで、水道水を使用した場合にも生育促進効果が得られることが示された。
【0100】
実施例7 ヒヨコマメにおける初期生育指標の評価
(1)土壌の準備と播種
中期肥効型培土(タキイ含水セル培土中期肥効型、タキイ種苗株式会社)とバーミキュライト細粒(あかぎ園芸株式会社)を体積比1:1で混合し、当該土壌をポリポット(直径10.5cm、高さ9cm)に充填した。ヒヨコマメはカブリ種(日光種苗株式会社より購入)の種子を使用した。水道水を1ポットあたり250mL給水させた後、種子を各ポットに2粒、土壌表面から約1~2cmの深さに1粒ずつ播種した。なお、各試験区の反復数は6とした(n=6)。
【0101】
(2)根粒菌の接種
Yeast-Mannitol(YM)培地(K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.2g、NaCl 0.1g、Yeast Extract 0.4g、Mannitol 10g、蒸留水1L(pH6.8))に1.5%の寒天(和光純薬工業株式会社)を加えて固形培地を調製し、当該固形培地上でヒヨコマメ根粒菌(Mesorhizobium ciceri)NBRC100389T株を生育させた。生育した根粒菌を一白金耳とり、容積500mLの坂口フラスコ中のYM液体培地50mLに植菌し、30℃にて約36時間振盪培養した。菌体の濁度OD600の値が0.3程度の根粒菌培養液を調製した。播種後にマイクロピペッターを用いて、根粒菌培養液1mLを種子に滴下接種した。
【0102】
(3)葉面散布処理
栽培条件および葉面散布処理の方法は実施例6(アズキの実施例)と同様である。評価した試験区1~4は以下の通りである。
播種28日目に、植物体を90℃で24時間乾燥させたのち、植物体の地上部乾燥重量を測定した。
【0103】
1区画:コントロール(施用なし)
2区画:アスコルビン酸1,500質量ppm葉面散布(水道水で溶解)
3区画:アスコルビン酸1,500質量ppm葉面散布(脱イオン水で溶解)
4区画:アスコルビン酸1,500質量ppm+BHT1質量ppm+イソブチルアルコール50質量ppm+ソルビタンモノラウレート350質量ppm葉面散布(水道水で溶解)
【0104】
(4)結果
地上部乾燥重量の測定結果を
図13に示す。各試験区6反復のうち、最も高い値と低い値を除いた、4反復分のデータで平均値および標準偏差を算出した。図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。
試験例1および実施例2から、ダイズにおいて、同濃度のアスコルビン酸を葉面散布した場合に、水道水と脱イオン水では種子重量および初期生育指標に与える効果が異なることが示されている。ヒヨコマメにおいても、ダイズと同様にアスコルビン酸を溶解する水質によって、初期生育指標に与える効果が異なることが示された。試験区2と4の比較から、アスコルビン酸に成分(B)、成分(C)および成分(D)を添加することで、水道水を使用した場合にも生育促進効果が得られることが示された。
【0105】
実施例8:ミヤコグサにおける子実重量の評価
(1)土壌の準備
中期肥効型培土(タキイ含水セル培土中期肥効型、タキイ種苗株式会社)とバーミキュライト細粒(あかぎ園芸株式会社)を体積比1:1で混合し、当該土壌をポリポット(直径6cm、高さ5.5cm)に充填した。
【0106】
(2)発芽処理と播種
ミヤコグサ種子はMiyakojima MG-20系統を使用した。種子を1/3程度入れた2mL容のマイクロチューブ(エッペンドルフ株式会社)に濃硫酸(富士フィルム和光純薬製)を1mL加え、10分間静置した。水道水で5回すすぎ後、2時間浸水させた。水道水を1ポットあたり100mL給水させた後、発芽処理を行った種子を各ポットに3粒、土壌表面から約1~2cmの深さに1粒ずつ播種した。なお、各試験区の反復数は8とした(n=8)。
【0107】
(3)根粒菌の接種
Yeast-Mannitol(YM)培地(K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.2g、NaCl 0.1g、Yeast Extract 0.4g、Mannitol 10g、蒸留水1L(pH6.8))に1.5%の寒天(和光純薬工業株式会社)を加えて固形培地を調製し、当該固形培地上でミヤコグサ根粒菌(Mesorhizobium loti) MAFF303099(ML GUS)株を生育させた。生育した根粒菌を一白金耳とり、容積500mLの坂口フラスコ中のYM液体培地50mLに植菌し、30℃にて約36時間振盪培養した。菌体の濁度OD600の値が0.3程度の根粒菌培養液を調製した。播種後にマイクロピペッターを用いて、根粒菌培養液1mLを種子に滴下接種した。
【0108】
(4)栽培条件
栽培は屋内で行い、栽培条件は、明期16時間、25℃、LED光源(オーゲツ株式会社;型番:VGL-1200W)、光量400~440μmol/m2/s とした。播種から10日後に、1ポットあたり1植物となるように間引きを行った。水やりは、ポットの下に置いたバットの水がなくなった後に、新たにポットの下部5cm程度が浸かる量の水道水をバットに加えることで行った。播種3週間後から、週に1回ハイグレード開花促進(株式会社ハイポネックスジャパン)1,000倍希釈を水やりの水に加えた。
【0109】
(5)葉面散布処理
表7に示す散布液を調製し、播種6週間後に、霧吹きを用いて試験区2~6は1株あたり6.7mL、試験区7~9は1株あたり0.125mLを1回のみ散布した。表13に示す散布液を調製し、播種14日目に、霧吹きを用いて1株あたり6.7mL散布した。葉面散布は1回のみとし、7種類の試験区を検討した。
散布液の調製は、成分(B)のBHTを予め成分(C)に溶解後、成分(C)と成分(D)を混合して、第2剤を調製した。次に、成分(A)およびその他の成分を混合して、第1剤を調製した。第2剤を使用水に溶解させたのち、更に第1剤を溶解させることによって、散布液を調製した。成熟した子実から順次収穫し、播種16週間後に栽培を終了した。各株の莢数および種子重量を測定した。
【0110】
【0111】
(6)結果
莢数の測定結果を
図14、種子重量の測定結果を
図15に示す。図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。
試験例1および実施例2から、ダイズにおいて、同濃度のアスコルビン酸を葉面散布した場合に、水道水と脱イオン水では種子重量に与える効果が異なることが示されている。ミヤコグサにおいても、ダイズと同様にアスコルビン酸を溶解する水質によって、種子重量に与える効果が異なることが示された。試験区3と4の比較から、アスコルビン酸に成分(B)、成分(C)および成分(D)を添加することで、水道水を使用した場合にも莢数および種子重量が増加することが示された。試験区5から、組成物に肥料成分を添加した場合にも増収効果が得られることが示された。また、試験区6に示されるように、組成物の濃度を半量にした場合にも十分な施用効果が得られた。
実施例5から、ダイズにおいて、高濃度の組成物を施用した場合に、初期生育における根粒活性が向上することが示されている。ミヤコグサにおいても、ダイズと同様にアスコルビン酸に成分(B)、成分(C)成分(D)を添加することで、水道水を使用して高濃度少水量での散布を行った場合にも増収効果が得られることが示された。
【0112】
実施例9 ソラマメにおける子実重量の評価
(1)土壌の準備と栽培条件
プランター(幅65.3cm、奥行24.5cm、高さ18.5cm)に鉢底石を2L充填した後、中期肥効型培土(タキイ含水セル培土中期肥効型、タキイ種苗株式会社)を9L充填した。水道水を1つのプランターあたり2L給水させた後、ホームセンターで購入したソラマメ苗(品種:仁徳一寸、タキイ種苗株式会社)を3株ずつ移植した。なお、各試験区の反復数は3とした(n=3)。栽培は屋外で行った。
【0113】
(2)葉面散布処理
散布液を調製し、苗の植え付けから51日目に、霧吹きを用いて1株あたり6.7mL散布した。葉面散布は1回のみとし、4種類の試験区を検討した。
散布液の調製は、成分(B)のうち、BHTを予め成分(C)に溶解後、成分(C)と成分(D)を混合して、第2剤を調製した。次に、成分(A)およびその他の成分を混合して、第1剤を調製した。第2剤を使用水に溶解させたのち、更に第1剤を溶解させることによって、散布液を調製した。試薬類は実施例1と同じである。評価した試験区1~4は以下の通りである。
成熟した子実から順次収穫し、植え付けから96日後に栽培を終了した。各株の豆数および子実重量を測定した。
1区画:コントロール(施用なし)
2区画:アスコルビン酸1,500質量ppm葉面散布(脱イオン水で溶解)
3区画:アスコルビン酸1,500質量ppm葉面散布(水道水で溶解)
4区画:アスコルビン酸1,500質量ppm+BHT1質量ppm+イソブチルアルコール50質量ppm+ソルビタンモノラウレート350質量ppm葉面散布(水道水で溶解)
【0114】
(3)結果
1個体あたりの豆数の測定結果を
図16、種子重量の測定結果を
図17に示す。図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。試験区1と4の比較から、アスコルビン酸に成分(B)、成分(C)および成分(D)を添加することで、1株あたりの豆数が7.5%増加、子実重量が32.9%増加し、ソラマメに対しても増収効果が得られることが示された。また、試験区3と4の比較から、アスコルビン酸に成分(B)、成分(C)および成分(D)を添加することで、増収効果が高まることが示された。
【0115】
実施例10 植物生育促進、及び根粒活性促進効果及び増収効果を有する組成物の保存安定性試験
(1)1剤型または2剤型組成物の調製
成分(A)としてアスコルビン酸20g、成分(B)としてBHT13.3mg、成分(C)としてイソブチルアルコール0.67mL、成分(D)としてソルビタンモノラウレート4.7mLをそれぞれ使用して、下記の方法により1剤型または2剤型組成物を作製した。成分(B)を成分(C)に溶解後、さらに成分(D)を混合したものに成分(A)を混和することによって、1剤型組成物を作製した。2剤型組成物の作製は以下の方法で行った。成分(B)を予め成分(C)に溶解後、さらに成分(D)を混合して、第2剤を調製した。次に、成分(A)のみを第1剤とした。試薬類は実施例1と同じである。
【0116】
(2)保存安定性試験
作製した1剤型または2剤型組成物を半量ずつ透明ガラス瓶2つに分注した。設定温度4℃の冷蔵庫または設定温度50℃の保管庫に1週間保存した。1週間後、外観の評価および保存後の製剤を水に500倍希釈した際の水溶液溶解性を評価した。
【0117】
(3)製剤の外観および溶解性評価の結果
製剤の外観を評価した結果を
図18に示す。写真左が2剤型組成物の50℃保管後の第1剤および第2剤、写真中央が2剤型組成物の4℃保管後の第1剤および第2剤、写真右が50℃保管後の1剤型組成物および4℃保管後の1剤型組成物である。
【0118】
図18の結果から、2剤型組成物は4℃で保管したサンプルと50℃で保管したサンプルの外観には違いがみられなかった。一方、1剤型組成物は保管温度によって、外観の色に違いがみられた。また、1剤型、2剤型のいずれにおいても、植物生育促進剤としての散布に適する均一な散布液を得られることが示された。検討結果から、1剤型は保管中の変色の程度が大きく、外観の観点から2剤型の方が優れていることが示唆された。
【0119】
実施例11 有機溶剤の混合比率の検討
土壌の準備と播種、根粒菌の接種、根粒活性の指標となるウレイド態窒素量測定のための溢泌液回収方法、溢泌液を定量する前の実験操作、ウレイド態窒素量の定量に使用する装置および測定方法、使用した標準品と定量の項目は実施例2と同様で、ダイズの栽培は21日間行った。
【0120】
(1)栽培条件
栽培は人工気象器(LPH-411SP、株式会社日本医化器械製作所)の中で行い、光条件は明期(光量440~480μmol/m2/s)16時間/暗期8時間、温度は明期30℃/暗期25℃、湿度は50%とした。播種から7日後に、1ポットあたり1植物となるように間引きを行った。水やりは、ポットの下に置いたバットの水がなくなった後に、新たにポットの下部5cm程度が浸かる量の水道水をバットに加えることで行った。
【0121】
(2)葉面散布処理
表8に示す散布液を調製し、播種14日目に、霧吹きを用いて試験区1~5は1株あたり6.7mL、試験区6~8は1株あたり0.125mLを1回のみ散布した。葉面散布は1回のみとし、7種類の試験区を検討した(表8)。使用した試薬類は実施例5と同じものである。
【0122】
【0123】
(3)結果
根粒活性の測定結果を
図19に示す。図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。
試験区2と試験区3~8の比較から、アスコルビン酸に成分(B)、成分(C)および成分(D)を添加することで、溶解に水道水を使用したアスコルビン酸を単独で散布した場合よりも高い根粒活性向上効果が得られることが示された。また、成分(B)、成分(C)の混合割合を1:10~10000としても効果が発揮されることが示された。
【0124】
実施例12 酸化防止剤低濃度における初期生育指標の評価
土壌の準備と播種、根粒菌の接種は実施例2と同様で、ダイズの栽培は21日間行った。
【0125】
(1)栽培条件
栽培は人工気象器(LPH-411SP、株式会社日本医化器械製作所)の中で行い、光条件は明期(光量440~480μmol/m2/s)16時間/暗期8時間、温度は明期30℃/暗期25℃、湿度は50%とした。播種から7日後に、1ポットあたり1植物となるように間引きを行った。水やりは、ポットの下に置いたバットの水がなくなった後に、新たにポットの下部5cm程度が浸かる量の水道水をバットに加えることで行った。
【0126】
(2)葉面散布処理
散布液を調製し、播種14日目に、霧吹きを用いて1株あたり6.7mLを1回のみ散布した。散布液の調製は、BHTをイソブチルアルコールに溶解後イソブチルアルコールとソルビタンモノラウレートを混合した後に、水に溶解させる。その後、アスコルビン酸を水に溶解することによって調製した。使用した試薬は実施例2と同様である。評価した試験区1~3は以下の通りである。播種21日目に、植物体を90℃で24時間乾燥させたのち、植物体の地上部乾燥重量を測定した。
【0127】
1区画:コントロール(施用なし)
2区画:アスコルビン酸1,500質量ppm葉面散布(水道水で溶解)
3区画:アスコルビン酸1,500質量ppm+BHT0.01質量ppm+イソブチルアルコール50質量ppm+ソルビタンモノラウレート350質量ppm葉面散布(水道水で溶解)
【0128】
(3)結果
地上部乾燥重量の測定結果を
図20に示す。図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。
試験区2と3の比較から、成分(B)のBHTの濃度を0.01質量ppmとした場合においても、アスコルビン酸に成分(B)、成分(C)および成分(D)を添加することで、溶解に水道水を使用したアスコルビン酸を単独で散布した場合よりも高い生育促進効果が得られることが示された。
【0129】
実施例13 アニオン系界面活性剤使用時における初期生育指標の評価
土壌の準備と播種、根粒菌の接種は実施例2と同様で、ダイズの栽培は21日間行った。
【0130】
(1)栽培条件
栽培は人工気象器(LPH-411SP、株式会社日本医化器械製作所)の中で行い、光条件は明期(光量440~480μmol/m2/s)16時間/暗期8時間、温度は明期30℃/暗期25℃、湿度は50%とした。播種から7日後に、1ポットあたり1植物となるように間引きを行った。水やりは、ポットの下に置いたバットの水がなくなった後に、新たにポットの下部5cm程度が浸かる量の水道水をバットに加えることで行った。
【0131】
(2)葉面散布処理
播種14日目に葉面散布処理を行った。実施例2に記載した試薬の他に、アニオン系界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミンを使用した。試薬を水道水に溶解することで散布液を作製した。葉面散布は1回のみとし、5種類の試験区を検討した(表9)。散布液を調製し、霧吹きを用いて1株あたり6.7mLを散布した。播種21日目に、植物体を90℃で24時間乾燥させたのち、植物体の地下部乾燥重量を測定した。
【0132】
【0133】
(3)結果
地下部乾燥重量の測定結果を
図21に示す。図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。試験区2と3、4、5の比較から、成分(D)はラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミンといったアニオン系界面活性剤を使用した場合においても、アスコルビン酸に成分(B)、成分(C)および成分(D)を添加することで、溶解に水道水を使用したアスコルビン酸を単独で散布した場合よりも高い生育促進効果が得られることが示された。
【0134】
実施例14 ダイズ根粒活性の評価
(1)土壌の準備と播種
中期肥効型培土(タキイ含水セル培土中期肥効型、タキイ種苗株式会社)とバーミキュライト細粒(あかぎ園芸株式会社)を体積比1:1で混合し、当該土壌をポリポット(直径10.5cm、高さ9cm)に充填した。ダイズ種子は「エンレイ」(日光種苗株式会社より購入)を使用した。水道水を1ポットあたり250mL給水させた後、種子を各ポットに2粒、土壌表面から約1~2cmの深さに1粒ずつ播種した。なお、各試験区の反復数は6とした(n=6)。
【0135】
(2)根粒菌の接種
Yeast-Mannitol(YM)培地(K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.2g、NaCl 0.1g、Yeast Extract 0.4g、Mannitol 10g、蒸留水1L(pH6.8))に1.5%の寒天(富士フィルム和光純薬株式会社)を加えて固形培地を調製し、当該固形培地上でダイズ根粒菌(Bradyrhizobium japonicum) NBRC14783T株を生育させた。生育した根粒菌を一白金耳とり、容積500mLの坂口フラスコ中のYM液体培地50mLに植菌し、30℃にて約36時間振盪培養した。菌体の濁度OD600の値が0.3程度の根粒菌培養液を調製した。播種後にマイクロピペッターを用いて、根粒菌培養液1mLを種子に滴下接種した。
【0136】
(3)栽培条件
播種から間引きまでの間の栽培は人工気象器(LPH-411SP、株式会社日本医化器械製作所)の中で行い、光条件は明期(光量440~480μmol/m2/s)16時間/暗期8時間、温度は明期30℃/暗期25℃、湿度は50%とした。播種から7日後に、1ポットあたり1植物となるように間引きを行った。水やりは、ポットの下に置いたバットの水がなくなった後に、新たにポットの下部5cm程度が浸かる量の水道水をバットに加えることで行った。
【0137】
(4)葉面散布処理
散布液を調製し、播種14日目に、霧吹きを用いて1株あたり6.7mL散布した。葉面散布は1回のみとし、3種類の試験区を検討した。評価した試験区1~3は以下の通りである。
<散布液>
・1区画:コントロール(施用なし)
・2区画:アスコルビン酸1,500質量ppm葉面散布(水道水で溶解)
・3区画:アスコルビン酸1,500質量ppm+BHT1質量ppm+ジエチレングリコール200質量ppm+ソルビタンモノラウレート350質量ppm葉面散布(水道水で溶解)
【0138】
(5)根粒活性の指標となるウレイド態窒素量測定のための溢泌液回収方法
21日間栽培を行った後、剪定ばさみを使用して、ダイズ茎を子葉節の場所で切断し、1.5mL容のマイクロチューブ(エッペンドルフ株式会社)に綿球#10(イワツキ株式会社)を詰めたものを被せ、茎の切断面から出液する溢泌液を2時間回収した。溢泌液回収後の綿球は-80℃の冷凍庫で保管した。また、溢泌液回収前後の綿球の重さを比較することにより、溢泌液の液量を算出した。
【0139】
(6)綿球に回収した溢泌液成分の抽出操作
綿球に含まれる溢泌液成分を超純水で溶出させ、マイクロバイオスピンクロマトグラフィーカラム(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社)を使用してろ過した。カラムに残ったろ液は遠心分離機(CR15RN、株式会社日立製作所)を10,000rpmで1分間運転することにより遠心回収した。3,000倍に希釈したろ液を定量した。
【0140】
(7)ウレイド態窒素量の定量に使用する装置および測定方法
HPLC装置および質量分析装置は、それぞれAgilent 1260 Infinity LCシステム(アジレント・テクノロジー株式会社)およびAB SCIEX TripleQuad 4500 システム(株式会社エービー・サイエックス)を使用した。カラムはScherzo SS-C18(100mm×2mm、3μm)(インタクト株式会社)を用い、オーブン温度は40℃とした。適宜希釈したサンプル5μLを注入し、流速0.5mL/min,溶離液は0.1%ギ酸水溶液(溶離液A)と50mM酢酸アンモニウム/メタノール溶液(溶離液B)を用い、溶離液A:溶離液B=95:5で平衡化した後にサンプルを供し、5分後に溶離液A:溶離液B=80:20となるようなリニアグラジェントによりウレイド態窒素の溶出を行った。
【0141】
(8)使用した標準品と定量
LC-MSにて溢泌液中のウレイド態窒素量を分析した。標準品には、アラントイン酸(Toronto Research Chemicals Inc.)を用いた。標準品をLC-MS分析し、10―1000ppbの範囲で検量線を作成した。
各サンプルについて、各試薬との保持時間、精密質量、MS/MSスペクトルの一致からアラントイン酸を同定した。また検量線から、サンプル中のアラントイン酸を定量し、植物1個体当たりの総量を求めた。
【0142】
(9)結果
根粒活性の測定結果を
図30に示す。各図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。
試験区2と試験区3の比較から、アスコルビン酸に成分(B)、成分(C)および成分(D)を添加することで、溶解に水道水を使用したアスコルビン酸を単独で散布した場合よりも高い根粒活性向上効果が得られることが示された。
【0143】
実施例15 ダイズ生育への効果
(1)土壌の準備と播種
中期肥効型培土(タキイ含水セル培土中期肥効型、タキイ種苗株式会社)とバーミキュライト細粒(あかぎ園芸株式会社)を体積比1:1で混合し、当該土壌をポリポット(直径10.5cm、高さ9cm)に充填した。ダイズ種子は「エンレイ」(日光種苗株式会社より購入)を使用した。水道水を1ポットあたり250mL給水させた後、種子を各ポットに2粒、土壌表面から約1~2cmの深さに1粒ずつ播種した。なお、各試験区の反復数は6とした(n=6)。
【0144】
(2)根粒菌の接種
Yeast-Mannitol(YM)培地(K2HPO4 0.5g、MgSO4・7
H2O 0.2g、NaCl 0.1g、Yeast Extract 0.4g、Ma
nnitol 10g、蒸留水1L(pH6.8))に1.5%の寒天(富士フィルム和光純薬株式会社)を加えて固形培地を調製し、当該固形培地上でダイズ根粒菌(Bradyrhizobium japonicum) NBRC14783T株を生育させた。生育した根粒菌を一白金耳とり、容積500mLの坂口フラスコ中のYM液体培地50mLに植菌し、30℃にて約36時間振盪培養した。菌体の濁度OD600の値が0.3程度の根粒菌培養液を調製した。播種後にマイクロピペッターを用いて、根粒菌培養液1mLを種子に滴下接種した。
【0145】
(3)栽培条件
栽培は人工気象器(LPH-411SP、株式会社日本医化器械製作所)の中で行い、光条件は明期(光量440~480μmol/m2/s)16時間/暗期8時間、温度は明期30℃/暗期25℃、湿度は50%とした。発芽後に、1ポットあたり1植物となるように間引きを行った。水やりは、ポットの下に置いたバットの水がなくなった後に、新たにポットの下部5cm程度が浸かる量の水道水をバットに加えることで行った。
【0146】
(4)葉面散布処理
散布液を調製し、播種7日目に、霧吹きを用いて1株あたり6.7mL散布した。葉面散布は1回のみとし、5種類の試験区を検討した。評価した試験区1~5は以下の通りである。
<散布液>
・1区画:コントロール(施用なし)
・2区画:アスコルビン酸1,500質量ppm葉面散布(水道水で溶解)
・3区画:アスコルビン酸1,500質量ppm+BHT1質量ppm+グリセリン50質量ppm(水道水で溶解)
・4区画:アスコルビン酸1,500質量ppm+BHT1質量ppm+プロピレングリコール50質量ppm(水道水で溶解)
・5区画:アスコルビン酸ナトリウム1,500質量ppm+トコフェロール10質量ppm+グリセリン50質量ppm(水道水で溶解)
【0147】
(5)結果
播種9日目に、植物体を100℃で7時間乾燥させたのち、植物体の地上部乾燥重量を測定した。地上部乾燥重量の測定結果を
図31に示す。各図中のグラフは平均値±標準偏差を表す。試験区1~5の比較から、アスコルビン酸を水道水に溶解して葉面散布した場合には生育促進効果が確認されなかったが、アスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウムに成分(B)および成分(C)を添加することで、溶解水として水道水を使用した場合にも生育促進効果が得られることが示された。コントロールと比較して、試験区3では地上部乾燥重量が平均約3.7%、試験区4では平均約9.1%、試験区5では平均約2.1%増加した。