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特開2025-100384温度に依存する調節手段を備える、測時器調速部材のためのひげぜんまい
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100384
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】温度に依存する調節手段を備える、測時器調速部材のためのひげぜんまい
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/22 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
G04B17/22
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024205133
(22)【出願日】2024-11-26
(31)【優先権主張番号】23219393.8
(32)【優先日】2023-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョフレ・シャサン
(57)【要約】
【課題】温度に依存する調節手段を備える、測時器調速部材のためのひげぜんまいを提供すること。
【解決手段】本発明は、特に測時器調速部材のためのひげぜんまいに関し、ひげぜんまい(100)は、自軸回りに複数回巻回する可撓性ストリップ(2)を備え、ストリップ(2)は、予め規定された剛性を有し、ひげぜんまい(100)は、ストリップ(2)の剛性を調節する手段を備え、ひげぜんまい(1)は、調節手段を作動する作動手段(10)を備え、作動手段(10)は、周囲温度に応じて調節手段を作動することを特徴とする。
本発明は、更に、そのようなひげぜんまいを備える測時器調速部材に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に測時器調速部材のためのひげぜんまいであって、前記ひげぜんまい(1)は、自軸回りに複数回巻回する可撓性ストリップ(2)を備え、前記ストリップ(2)は、予め規定された剛性を有し、前記ひげぜんまい(1)は、前記ストリップ(2)の剛性を調節する手段を備え、前記ひげぜんまい(1)は、前記調節手段を作動する作動手段(10)を備える、ひげぜんまいにおいて、前記作動手段(10)は、周囲温度に応じて前記調節手段を作動することを特徴とする、ひげぜんまい。
【請求項2】
前記作動手段(10)は、周囲温度に応じて変形し得る要素(11)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のひげぜんまい。
【請求項3】
前記変形可能要素(11)は、温度に敏感な材料を備えることを特徴とする、請求項2に記載のひげぜんまい。
【請求項4】
前記変形可能要素(11)は、バイメタル付加物を備えることを特徴とする、請求項2に記載のひげぜんまい。
【請求項5】
前記変形可能要素(11)は、微細構造体又はナノ構造体を備えることを特徴とする、請求項2に記載のひげぜんまい。
【請求項6】
前記作動手段(10)は、支持体(12)を備え、前記支持体(12)は、前記変形可能要素(11)によって移動し得、前記変形可能要素(11)の変形に応じて、前記支持体(12)を複数の位置に移動させることを特徴とする、請求項2に記載のひげぜんまい。
【請求項7】
前記調節手段は、前記ストリップ(2)と直列に配置される可撓性要素(5)を備え、前記可撓性要素(5)は、前記ストリップ(2)に更なる剛性を加えるように前記ストリップ(2)の端部(4、9)を固定支持器(53)に接続し、前記可撓性要素(5)は、好ましくは、前記ストリップ(2)の剛性を超える剛性を有することを特徴とする、請求項2に記載のひげぜんまい。
【請求項8】
前記調節手段は、前記可撓性要素(5)の剛性を変化させるように、可変力又はトルクを前記可撓性要素(5)に印加する応力印加手段(6)を備えることを特徴とする、請求項7に記載のひげぜんまい。
【請求項9】
前記支持体(12)は、前記応力印加手段(6)と接触することを特徴とする、請求項8に記載のひげぜんまい。
【請求項10】
前記支持体(11)は、棒材(13)を備え、前記棒材(13)は、前記変形可能要素(12)上に組み付けられる第1の端部(17)と、前記応力印加手段(6)上に組み付けられる第2の端部(18)とを備えることを特徴とする、請求項9に記載のひげぜんまい。
【請求項11】
前記作動手段(10)は、前記棒材(13)がレバーを形成することを可能にする固定ピン(21)を備えることを特徴とする、請求項9に記載のひげぜんまい。
【請求項12】
前記可撓性要素(5)は、2つの可撓性部品(15、16)を備え、2つの前記可撓性部品(15、16)のそれぞれは、前記ストリップ(2)を前記固定支持器(53)に接続し、2つの前記可撓性部品(15、16)は、軸(A)に沿って互いに対して軸方向に対称に配置され、前記軸(A)は、好ましくは、前記ひげぜんまいの中心(O)を実質的に通過することを特徴とする、請求項7に記載のひげぜんまい。
【請求項13】
前記応力印加手段(6)は、それぞれが前記可撓性部品(15、16)に接続される2つの可撓性レバー(14、26)を備えることを特徴とする、請求項11に記載のひげぜんまい。
【請求項14】
2つの前記レバー(14、26)は、可動体(19)を介して互いに接続されることを特徴とする、請求項13に記載のひげぜんまい。
【請求項15】
振動おもりを備える、特に測時器ムーブメントのための調速部材において、前記調速部材は、請求項1に記載のひげぜんまい(1)を備えることを特徴とする、調速部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測時器調速部材のためのひげぜんまいに関し、ひげぜんまいは、温度に依存する調節手段を備える。本発明は、そのようなひげぜんまいを備える測時器調速部材に更に関する。
【背景技術】
【0002】
大部分の機械式時計において、針(例えば、分針及び時針)の回転に必要なエネルギーは、香箱内に蓄えられ、次に、ひげぜんまい-てん輪システムによって送出され、ひげぜんまい-てん輪システムは、てん輪と呼ばれるはずみ車を備え、てん輪は、ひげぜんまいと呼ばれる渦巻き形に巻回するストリップの形態のばねと組み合わせられる。
【0003】
ひげぜんまいの内側端部は、てん輪と共にひげぜんまいを回転させる天真に取り付けられ、ひげぜんまいの外側端部は、ひげ持に取り付けられ、ひげ持は、ひげ持受上に組み付けられ、ひげ持受自体は、固定栓に厳密に接続される。
【0004】
脱進機構によって、てん輪の回転が維持され、てん輪の振動が計数され、脱進機構は、低振幅の振動運動によって駆動されるアンクル・レバーを備え、アンクル・レバーは、がんぎ車の歯と係合する2本のアンクルを備える。がんぎ車がこのように係合すると、がんぎ車を段階的に回転させ、がんぎ車の回転数は、アンクル・レバーの振動数によって決定される。アンクル・レバー自体は、ひげぜんまい-てん輪の振動数に設定される。
【0005】
従来の脱進機構において、振動数は、約4Hz、又は約28,800振動/時(V/h)である。優れた時計製造業者の目的の1つは、てん輪の振動の等時性及び規則性(又はてん輪の速度の安定性)を保証することである。
【0006】
てん輪の速度は、ひげぜんまいの有効長を調節することによって、公知の様式で調速し得、ひげぜんまいの有効長は、ひげぜんまいの内側端部と計数点との間の曲線の長さとして規定され、ひげぜんまいの外側端部の近傍に位置し、典型的には、緩急針システム上に組み付けられるキーによって支持される一対の停止部によって規定される。
【0007】
動作中、この緩急針システムは、ひげぜんまいの軸回りに回転することはできない。しかし、緩急針システムの角度位置は、人の介入によって、例えば、ねじ回しを使用して、緩急針システム上でカムのように作用する偏心器を枢動させることによって微調整し得る。
【0008】
栓と、緩急針システムと、キーと、ひげ持受と、ひげ持と、天真と、ぜんまいと、てん輪とを備える組立体は、一般に、「調速部材」と呼ばれる。調速部材の例は、共に時計製造業者のETAが出願した国際公開第2016/192957号及び欧州特許出願公開第2876504号明細書において示される。
【0009】
ひげぜんまいの端部が取り付けられるひげ持受を有する緩急針システムがあり、緩急針システムのキーは、ひげぜんまいが2つの停止部の間を移動可能であるような遊びを残す。しかし、時刻測定特性、特に、振幅に応じて変化する非等時性は、緩急針のキーの遊びにかなり敏感に反応し、この遊びは正確に制御することが困難である。
【0010】
いくつかのデバイスにおいて、特にひげぜんまいが動作中の際の遊びをなくすため、停止部を調節してひげぜんまいを留め得る。この場合、まず、緩急針のキーの移動によって調速し、次に、ひげぜんまいをキーに留める。しかし、ひげぜんまいを緩急針のキーに留めると、ひげぜんまいに応力がかかり、特に巻線の中心がずれるために時刻測定に誤差をもたらす危険がある。更に、遊びを除くことにより速度も変化させ、また、一旦ひげぜんまいを留めると、速度の微調整を完成させるためにひげぜんまいに沿って緩急針のキーを移動させることはもはやできない。
【0011】
他のひげぜんまいは、一体化された調速デバイスを有する。これらのひげぜんまいにおいて、ひげぜんまいの有効長の変更によって調速するのではなく、ひげぜんまいと直列に配置された弾性要素に力又はトルクを印加することによって調速される。より詳細には、可撓性要素は、ストリップの端部と固定支持器との間にストリップと直列に置かれ、取付け点の剛性を修正し、共振器をより柔軟にする。したがって、共振器の有効剛性は、ストリップの剛性及び可撓性要素の剛性を含む。
【0012】
この場合、可変力又はトルクは、可撓性要素に応力を印加するように印加される。可撓性要素に応力を印加することによって、てん輪上に作用する戻り力が部分的に得られる可撓性要素の剛性は変化する一方で、ストリップの剛性は変化しないままである。可撓性要素の剛性を修正することによって、共振器全体の剛性(ストリップの剛性及び可撓性要素の剛性)は変化し、この結果、共振器の速度を修正し、時間基準の振動数を正確に調節可能にする。唯一の要素が剛性の調節に使用されるため、これにより、調速の際に高い精度をもたらす。
【0013】
弾性要素を備えるそのようなひげぜんまいは、例えば、Omega SAによって出願された欧州特許出願公開第4009115号明細書に記載されている。
【0014】
しかし、周囲温度は、そのようなひげぜんまいとはずみ車とを備える調速部材の速度に著しい影響を与える。この理由は、てん輪及び/又はひげぜんまいが周囲温度に応じて膨張又は収縮するためである。これらの寸法の変動は、調速部材の速度に変動をもたらす。
【0015】
更に、弾性係数も周囲温度に応じて変化するため、ひげぜんまいの剛性を変更させる。
【0016】
これらの変動を低減するため、温度の影響を補償するように構成される調速部材が開発されている。例えば、バイメタルのてん輪を使用する際、又はシリコン製のひげぜんまいの場合、ひげぜんまいを作製したシリコンの熱弾性係数とは反対の熱弾性係数を有するシリコン酸化物層が追加される(欧州特許第1422436号明細書を参照)。
【0017】
しかし、これらの構成は、予め規定された特定温度の周囲でのみ効果的であり、温度がこの特定温度から逸脱するともはや十分に効果的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2016/192957号
【特許文献2】欧州特許出願公開第2876504号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第4009115号明細書
【特許文献4】欧州特許第1422436号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、効果的な調節手段を備えるひげぜんまいを提供することによって、上述の欠点の一部又は全部を克服すること、特に、周囲温度の変化に対する調速部材の感度を最小化することであり、この調節手段は、温度変動が著しい場合でさえ周囲温度に適合する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的で、本発明は、特に測時器調速部材のためのひげぜんまいに関し、ひげぜんまいは、自軸回りに複数回巻回する可撓性ストリップを備え、ストリップは、予め規定された剛性を有し、ひげぜんまいは、ストリップの剛性を調節する手段を備え、ひげぜんまいは、調節手段を作動する作動手段を備える。
【0021】
本発明は、作動手段が周囲温度に応じて調節手段を作動することを特徴とする。
【0022】
作動手段のおかげで、温度によるひげぜんまい及び/又はてん輪の寸法の変動、並びにひげぜんまいの熱弾性の変動が補償され、特に、調速部材の速度に対する温度の二次的影響が補償される。したがって、温度変動から生じる、前記ひげぜんまいとはずみ車とを備える調速部材の速度の変動は、防止される。
【0023】
本発明の特定の実施形態によれば、作動手段は、温度に依存する変形可能要素を備える。
【0024】
本発明の特定の実施形態によれば、変形可能要素は、温度に敏感な材料を備える。
【0025】
本発明の特定の実施形態によれば、変形可能要素は、バイメタル付加物である。
【0026】
本発明の特定の実施形態によれば、変形可能要素は、微細構造体又は更にナノ構造体を備える。
【0027】
本発明の特定の実施形態によれば、作動手段は、支持体を備え、支持体は、変形可能要素によって移動し得、変形可能要素の変形に応じて、支持体を複数の位置に移動させる。
【0028】
本発明の特定の実施形態によれば、調節手段は、ストリップと直列に配置される可撓性要素を備え、可撓性要素は、ストリップに更なる剛性を加えるようにストリップの一端部を固定支持器に接続し、可撓性要素は、好ましくは、ストリップの剛性を超える剛性を有する。
【0029】
本発明の特定の実施形態によれば、調節手段は、可撓性要素の剛性を変化させるため、可変力又はトルクを可撓性要素に印加する応力印加手段を備える。
【0030】
本発明の特定の実施形態によれば、支持体は、応力印加手段と接触する。
【0031】
本発明の特定の実施形態によれば、支持体は、棒材を備え、棒材は、変形可能要素上に組み付けられる第1の端部と、応力印加手段上に組み付けられる第2の端部とを有する。
【0032】
本発明の特定の実施形態によれば、作動手段は、棒材がレバーを形成することを可能にする固定ピンを備える。
【0033】
本発明の特定の実施形態によれば、可撓性要素は、2つの可撓性部品を備え、2つの可撓性部品のそれぞれは、ストリップを固定支持器に接続し、2つの可撓性部品は、軸に沿って互いに対して軸方向に対称に配置され、この軸は、好ましくは、ひげぜんまいの中心を実質的に通過する。
【0034】
本発明の特定の実施形態によれば、応力印加手段は、可撓性部品にそれぞれ接続される2つの可撓性レバーを備える。
【0035】
本発明の特定の実施形態によれば、2つのレバーは、互いに可動体によって接続される。
【0036】
本発明は、更に、特に測時器ムーブメントのための調速部材に関し、調速部材は、振動おもりと、そのようなひげぜんまいとを備える。
【0037】
本発明の目的、利点及び特徴は、ただ例示のために提供され、添付の図面を参照しながら示されるいくつかの実施形態を読めば明らかになるであろう。いくつかの実施形態は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1の実施形態によるひげぜんまいの概略上面図であり、ひげぜんまいは、第1の構成にある。
図2図1に示されるひげぜんまいの概略上面図であり、ひげぜんまいは、第2の構成にある。
図3図1に示されるひげぜんまいの概略上面図であり、ひげぜんまいは、第3の構成にある。
図4】温度変動に対する調節手段の効果を示すグラフである。
図5】本発明の第2の実施形態によるひげぜんまいの概略上面図である。
図6】本発明の第3の実施形態によるひげぜんまいの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1から図3はそれぞれ、特に測時器調速部材のためのひげぜんまい1の第1の実施形態を概略的に示す。3つの図は、ひげぜんまい1の3つの異なる構成を示す。
【0040】
この場合、ひげぜんまい1は、実質的に1つの平面内に延在する。ひげぜんまい1は、自軸回りに複数回巻回する可撓性ストリップ2を備え、ストリップ2は、予め規定された剛性を有する。
【0041】
ひげぜんまいは、ストリップ2の剛性を調節する手段を備える。例えば、調節手段は、特にひげぜんまいを調速部材内に組み付ける際、特に測時器ムーブメントの板上に組み立てる際に作動させ得る。
【0042】
調節手段は、ストリップ2と直列に配置される可撓性要素5を備え、可撓性要素5は、前記ストリップ2の外側端部4を固定支持器53に接続し、ストリップ2の外側端部4と一体である。可撓性要素5は、ストリップ2の剛性に更なる剛性を加える。可撓性要素5は、好ましくは、ストリップ2よりも堅い。可撓性要素5は、ストリップ2の後にストリップ2に接続して配置される。好ましくは、調節手段5及びストリップ2は、一体部品であるか、又は更に同じ材料から作製される。ひげぜんまい1は、可変力又はトルクを可撓性要素5に印加する応力印加手段6を更に含む。このように、ひげぜんまい1の剛性は、特にムーブメントの速度の精度を改善するために調節し得る。
【0043】
ひげぜんまいのこの実施形態では、可撓性要素5は、それぞれがストリップ2を固定支持器53に接続する2つの可撓性部品15、16を備える。
【0044】
2つの可撓性部品15、16は、互いに対し、ひげぜんまい1の軸Aに沿って軸対称に配置される。言い換えれば、2つの可撓性部品15、16は、前記軸Aに対して対称であるように配置される。
【0045】
一方で、軸Aは、ひげぜんまいの中心Oを実質的に通過し、もう一方で、軸Aは、好ましくは、ストリップ2の外側端部4を通過する。
【0046】
したがって、2つの可撓性部品15、16は、ひげぜんまいの外周部上に配置され、2つの可撓性部品15、16が、ひげぜんまい1の中心Oから同じ距離で配置されるようにする。
【0047】
2つの可撓性部品15、16は、好ましくは、互いに対して、軸Aに対する「鏡のような」位置で配置される。この目的で、2つの可撓性部品15、16は、好ましくは、実質的に同一である。
【0048】
可撓性部品15、16はそれぞれ、湾曲可撓性羽根55を備え、湾曲可撓性羽根55は、好ましくは、半円を形成し、固定支持器53の端部から延在する。各湾曲可撓性羽根55は、主要可撓性羽根7によってストリップ2の外側端部4にも接続される。この場合、主要可撓性羽根7は、湾曲可撓性羽根55と互いに連続して配置される。
【0049】
湾曲羽根55は、半円湾曲部を形成し、一方の端部で単一可撓性羽根7によって、もう一方の端部で固定支持器53によって延在する。支持器自体の端部56は、湾曲羽根55の湾曲部とは反対の相補形湾曲部を形成する。支持器53の端部56は、部分的に変形し得るように半剛体である。
【0050】
湾曲部及び相補形湾曲部のこの構成により、調節手段を使用して速度を修正する際に調速部材の等時性が修正されるのを防止し得る。より詳細には、湾曲羽根55の上部に加えられる力は、図14の矢印によって示されるように、端部56の相補形湾曲部の反力によって補償される。したがって、単一可撓性羽根7のみが、応力印加手段6によって印加される力又はトルクを受ける。
【0051】
固定支持器53は、長辺に、ストリップ2の外側端部4に向かう開放台形形状を有する。
【0052】
ひげぜんまい1を調節する手段は、可変力又はトルクを可撓性要素5に印加する応力印加手段6を更に含む。このようにして、ひげぜんまい1の剛性を調節し得る。トルク又は力は、応力印加手段6のために連続的に調節可能である。言い換えれば、トルク又は力は、1回限りの値に制限されない。したがって、可撓性要素5の剛性は、多大な精度で調節し得る。
【0053】
好ましくは、応力印加手段6は、第3の本体19に印加される単一力Fにより、2つのレバー14、26を介して実質的に同一の力又はトルクを各可撓性部品15、16に印加する。力の方向は、好ましくは、軸Aに対して実質的に対称である。
【0054】
応力印加手段6は、2つのレバー14、26を更に備え、2つのレバー14、26はそれぞれ、湾曲羽根55を同じ、好ましくは硬質の可動体19に接続し、可動体19は、固定支持器53に対してひげぜんまい1の反対側に配置される。この場合、可動体19は、円弧形状である。
【0055】
可変力又はトルクは、可動体19に印加される。可変力又はトルクは、レバー14、26を介して、可撓性要素5の可撓性部品15、16の主要可撓性羽根7に少なくとも部分的に伝達される。
【0056】
好ましくは、トルク又は力は、応力印加手段6のおかげで連続的に調節可能である。言い換えれば、トルク又は力は、1回限りの値に制限されない。したがって、可撓性要素5の剛性は、多大な精度で調節し得る。
【0057】
ひげぜんまい1は、応力印加手段6を作動する作動手段10を更に含む。
【0058】
本発明によれば、作動手段10は、周囲温度に応じて応力印加手段6を作動する。したがって、作動手段10は、ひげぜんまい1に作用し、調速部材を一定速度に維持するために、剛性を修正することによって、調速部材の温度変化の影響を補償することを可能にする。
【0059】
この目的で、作動手段10は、温度に応じて変形し得る要素11を備える。変形可能要素11は、制御された様式で温度に応じて変形するという利点を有する。
【0060】
代替実施形態では、変形可能要素11は、例えば、例えば温度計に使用される、水銀又はアルコール等の変形可能液体又は半液体要素を備える。この液体又は半液体要素は、可動壁を備える筐体内に収容され、可動壁は、温度に応じて変化する液体又は半液体要素の変形に応じて移動する。
【0061】
代替的に、変形可能要素11は、温度に高度に敏感な金属である。
【0062】
作動手段10は、応力印加手段6、この場合では可動体19と接触する支持体12を更に備える。支持体12は、変形可能要素11とも接触する。したがって、支持体12は、変形可能要素により移動可能である。
【0063】
例えば、変形可能要素として液体又は半液体である場合、支持体12は、可動壁と接触し、これにより、変形可能要素11の変形に応じて支持体12を移動させる。
【0064】
金属材料の場合、支持体12は、金属材料と直接接触する。
【0065】
図面において、支持体12は、応力印加手段6に対するレバーを形成する棒材13を備える。棒材13は、2つの端部17、18を備え、第1の端部17は、変形可能要素11上に組み付けられ、第2の端部18は、応力印加手段6に対して組み付けられる。
【0066】
作動手段10は、ピン21を更に備え、ピン21は、調速部材の台に対して静止したままであることが意図され、棒材13は、ピン21と接触し得る。ピン21は、支承点として作用し、棒材がレバーを形成可能であるようにする。ピン21は、調速部材の速度のための基準点も形成する。
【0067】
ピン21は、例えば、棒材13のほぼ中間に位置する。したがって、棒材13がピン21と接触すると、棒材13はピン21に寄りかかり、変形可能要素11の変形がもたらした力を伝達する。
【0068】
好ましくは、ピン21は、変形可能要素11の作動を調節するための非円形断面を有する。
【0069】
図1において、棒材13は、応力印加手段6の可動体19と接触し、ピン21にもたれている。ひげぜんまい1の所定の剛性が得られるように、棒材13は、可動体19に対して力を加えている。例えば、所定の剛性は、20度の周囲温度のために選択される。
【0070】
代替実施形態では、ピン21は、棒材13を作動する際により大きな応力中心距離を有するように、棒材13の中心からずらされる。
【0071】
図2に示される構成において、変形可能要素11は、より高温の結果として膨張している。変形可能要素11は、棒材13を押し返し、棒材13はピン21ともはや接触していない。移動体19上に加えられる力が増大すると、可撓性要素5の剛性を変化させる。
【0072】
したがって、調速部材に対する温度上昇の影響は、応力印加手段6上に加えられる力の増大によって補償される。
【0073】
図3に示される構成において、周囲温度が下がり、変形可能要素を収縮させている。この結果、棒材13がピン21に戻るだけでなく、てこの作用のために可動体19も押し返している。より詳細には、棒材がピン21を押圧するため、第2の端部が応力印加手段6の可動体19を押圧することになる。
【0074】
この結果、可撓性要素5の剛性は、調速部材に対する周囲温度下降の影響を補償するように修正される。
【0075】
どちらの場合も、周囲温度の下降又は上昇にかかわらず、作動手段10は、可撓性要素5の剛性を修正するように可動体19を押圧する。
【0076】
図4において、グラフは、3つの重ねられた曲線22、23、24を示し、調速部材の速度に対する温度の影響を示す。
【0077】
下の曲線24は、本発明による補償がない場合の、温度に応じて変化する速度の変動を表す。したがって、温度が増加又は減少すると、23℃における速度と比較した速度の差は、減少する。そのような曲線は、特許EP1605182に記述されるひげぜんまいで達成し得る。
【0078】
上の曲線22は、本発明による作動手段10によって得られる速度の変動を表す。
【0079】
中間の曲線23は、周囲温度が変動する際の、本発明による作動手段10によって調速部材の速度に対して得られる効果を表す。速度は、温度が大幅に変動するにもかかわらず、ほぼ一定のままである。
【0080】
より具体的には、作動手段10のおかげで、上の曲線22に示される作動手段10の作用は、下の曲線24に示される温度変動の影響を補償し、温度差にもかかわらず速度をほぼ一定のままにする。
【0081】
ひげぜんまい1の第2の実施形態は、図5に示され、調節手段10の変形可能要素27を除き、ひげぜんまい1は、第1の実施形態とほぼ同一である。この場合、変形可能要素27は、温度に応じて変形するバイメタル付加物を備える。
【0082】
バイメタル付加物は、湾曲しており、第1の端部29を備え、第1の端部29は、ひげぜんまい1の外部にある固定支持器31に組み立てられる。バイメタル付加物の第2の端部28は、棒材12の第1の端部17に関連付けられる。バイメタル付加物の第2の端部28は、棒材12の第1の端部17と接触している。
【0083】
周囲温度が変化するにつれて、バイメタル付加物は、程度の差はあれ、屈曲する。したがって、バイメタル付加物の第2の端部28は、棒材12の第1の端部17を押し引きし、応力印加手段6を稼働させる。
【0084】
この結果、バイメタル付加物の曲率に応じて、棒材13は、第1の実施形態の棒材13と同様に移動する。
【0085】
そのようなバイメタル付加物は、当業者に周知である。
【0086】
図6に示される第3の実施形態では、変形可能要素28は、温度に応じて変形する微細構造体又はナノ構造体、例えばハニカム構造体を備える。そのような微細構造体又はナノ構造体は、第1の実施形態の変形と同様に変形するように構成される。
【0087】
この結果、微細構造体又はナノ構造体の変形に応じて、棒材13は、第1の実施形態の棒材13と同様に移動する。
【0088】
ひげぜんまいの様々な実施形態で記載される可撓性羽根は、図面で典型的であるように、連続可撓性羽根とし得るか、又は剛性区分と剛性区分を接続する可撓性カラーとを有する羽根とし得る。
【0089】
本発明は、特に測時器ムーブメントのための、図示しない調速部材に更に関する。調速部材は、例えば、振動おもりと、上記したひげぜんまいとを備える。振動おもりは、例えば、環状てん輪である。振動おもりは、振動おもりが支持器と一体であるようにひげぜんまいに接合される。
【符号の説明】
【0090】
1 ひげぜんまい
2 可撓性ストリップ
4 端部
6 応力印加手段
9 端部
10 作動手段
11 変形可能要素
12 支持体
13 棒材
14 可撓性レバー
15 可撓性部品
16 可撓性部品
17 第1の端部
18 第2の端部
19 可動体
21 固定ピン
26 可撓性レバー
53 固定支持器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-11-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に測時器調速部材のためのひげぜんまいであって、前記ひげぜんまい(1)は、自軸回りに複数回巻回する可撓性ストリップ(2)を備え、前記可撓性ストリップ(2)は、予め規定された剛性を有し、前記ひげぜんまい(1)は、前記可撓性ストリップ(2)の剛性を調節する調節手段を備え、前記ひげぜんまい(1)は、前記調節手段を作動する作動手段(10)を備える、ひげぜんまいにおいて、前記作動手段(10)は、周囲温度に応じて前記調節手段を作動することを特徴とする、ひげぜんまい。
【請求項2】
前記作動手段(10)は、周囲温度に応じて変形し得る変形可能要素(11)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のひげぜんまい。
【請求項3】
前記変形可能要素(11)は、温度に敏感な材料を備えることを特徴とする、請求項2に記載のひげぜんまい。
【請求項4】
前記変形可能要素(11)は、バイメタル付加物を備えることを特徴とする、請求項2に記載のひげぜんまい。
【請求項5】
前記変形可能要素(11)は、微細構造体又はナノ構造体を備えることを特徴とする、請求項2に記載のひげぜんまい。
【請求項6】
前記作動手段(10)は、支持体(12)を備え、前記支持体(12)は、前記変形可能要素(11)によって移動し得、前記変形可能要素(11)の変形に応じて、前記支持体(12)を複数の位置に移動させることを特徴とする、請求項2に記載のひげぜんまい。
【請求項7】
前記調節手段は、前記可撓性ストリップ(2)と直列に配置される可撓性要素(5)を備え、前記可撓性要素(5)は、前記可撓性ストリップ(2)に更なる剛性を加えるように前記可撓性ストリップ(2)の端部(4、9)を固定支持器(53)に接続し、前記可撓性要素(5)は、好ましくは、前記可撓性ストリップ(2)の剛性を超える剛性を有することを特徴とする、請求項6に記載のひげぜんまい。
【請求項8】
前記調節手段は、前記可撓性要素(5)の剛性を変化させるように、可変力又はトルクを前記可撓性要素(5)に印加する応力印加手段(6)を備えることを特徴とする、請求項7に記載のひげぜんまい。
【請求項9】
前記支持体(12)は、前記応力印加手段(6)と接触することを特徴とする、請求項8に記載のひげぜんまい。
【請求項10】
前記支持体(11)は、棒材(13)を備え、前記棒材(13)は、前記変形可能要素(12)上に組み付けられる第1の端部(17)と、前記応力印加手段(6)上に組み付けられる第2の端部(18)とを備えることを特徴とする、請求項9に記載のひげぜんまい。
【請求項11】
前記作動手段(10)は、前記棒材(13)がレバーを形成することを可能にする固定ピン(21)を備えることを特徴とする、請求項10に記載のひげぜんまい。
【請求項12】
前記可撓性要素(5)は、2つの可撓性部品(15、16)を備え、2つの前記可撓性部品(15、16)のそれぞれは、前記可撓性ストリップ(2)を前記固定支持器(53)に接続し、2つの前記可撓性部品(15、16)は、軸(A)に沿って互いに対して軸方向に対称に配置され、前記軸(A)は、好ましくは、前記ひげぜんまいの中心(O)を実質的に通過することを特徴とする、請求項8に記載のひげぜんまい。
【請求項13】
前記応力印加手段(6)は、それぞれが前記可撓性部品(15、16)に接続される2つの可撓性レバー(14、26)を備えることを特徴とする、請求項12に記載のひげぜんまい。
【請求項14】
2つの前記可撓性レバー(14、26)は、可動体(19)を介して互いに接続されることを特徴とする、請求項13に記載のひげぜんまい。
【請求項15】
振動おもりを備える、特に測時器ムーブメントのための調速部材において、前記調速部材は、請求項1に記載のひげぜんまい(1)を備えることを特徴とする、調速部材。
【外国語明細書】