(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100446
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】CXPI通信のノイズ耐性評価システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024221028
(22)【出願日】2024-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2023215793
(32)【優先日】2023-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】溝口 幸
(72)【発明者】
【氏名】梶田 治
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA10
2G036BA13
2G036CA10
(57)【要約】
【課題】AM変調されたノイズ信号を用いてCXPI通信ICのノイズ耐性を評価することができるCXPI通信のノイズ耐性評価システムを提供する。
【解決手段】送信側のCXPI通信ICと受信側のCXPI通信ICとが通信線で接続された通信装置と、信号発生器から出力されるノイズ信号を通信線に印加するノイズ印加装置と、を備え、信号発生器は、ノイズ信号を特定の方式によって変調させる機能を有する、CXPI通信のノイズ耐性評価システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CXPI通信のノイズ耐性評価システムであって、
送信側のCXPI通信ICと受信側のCXPI通信ICとが通信線で接続された通信装置と、
信号発生器から出力されるノイズ信号を前記通信線に印加するノイズ印加装置と、を備え、
前記信号発生器は、前記ノイズ信号を特定の方式によって変調させる機能を有する、CXPI通信のノイズ耐性評価システム。
【請求項2】
前記信号発生器は、ノイズ印加条件を制御するコントローラの指示に従って、前記ノイズ信号にAM変調を施す、請求項1に記載のCXPI通信のノイズ耐性評価システム。
【請求項3】
前記UARTフレームは、最終ビットのみが論理値1となる10ビット列である、請求項2に記載のCXPI通信のノイズ耐性評価システム。
【請求項4】
前記ノイズ印加装置は、前記UARTフレームのビットが論理値1となる位置に前記AM変調された前記ノイズ信号の腹および節が合うように、前記ノイズ信号を前記通信線に印加する、請求項3に記載のCXPI通信のノイズ耐性評価システム。
【請求項5】
前記信号発生器は、ノイズ印加条件を制御するコントローラの指示に従って、前記ノイズ信号に、CXPI通信で規定されているビット幅またはフレーム長の単位で変化するパルス変調を施す、請求項1に記載のCXPI通信のノイズ耐性評価システム。
【請求項6】
前記送信側のCXPI通信ICが前記通信線に出力するUARTフレームは、CXPI通信で規定されているインターバルビットを含む論理値がランダムのビット列である、請求項5に記載のCXPI通信のノイズ耐性評価システム。
【請求項7】
前記ノイズ印加装置は、前記UARTフレームのビットが論理値1となる位置に前記パルス変調された前記ノイズ信号のピーク部分が合うように、前記ノイズ信号を前記通信線に印加する、請求項6に記載のCXPI通信のノイズ耐性評価システム。
【請求項8】
前記ノイズ印加装置が前記ノイズ信号を前記通信線に印加する時間は、前記ノイズ信号の各周波数において2秒以上である、請求項4または7に記載のCXPI通信のノイズ耐性評価システム。
【請求項9】
前記コントローラによって前記ノイズ印加条件が変更された場合、前記ノイズ印加装置が前記変更された前記ノイズ印加条件に基づく前記ノイズ信号を前記通信線に印加する前に、前記送信側のCXPI通信ICおよび前記受信側のCXPI通信ICの学習機能を初期化する制御部を、さらに備える、請求項2に記載のCXPI通信のノイズ耐性評価システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記送信側のCXPI通信ICおよび前記受信側のCXPI通信ICの電源をリセットすることで前記学習機能を初期化する、請求項9に記載のCXPI通信のノイズ耐性評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)通信を行う通信ICのノイズ耐性を評価するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、DPI(Direct Power Injection)試験において、試験対象の電気回路である通信ICのノイズ耐性を、この通信ICに到達する電圧で評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、DPI試験に用いられるノイズ信号について、信号全体の大きさ(振幅)は制御されるものの、信号に変調を施すことについては何ら言及されていない。しかしながら、CXPI通信は、他方式の通信と比較して通信速度が低い。このため、CXPI通信を行う通信IC(以下「CXPI通信IC」という)のノイズ耐性の評価については、特定の方式によって変調(AM変調やパルス変調など)されたノイズ信号に対して実施することが望ましい。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、特定の方式によって変調されたノイズ信号を用いてCXPI通信ICのノイズ耐性を評価することができる、CXPI通信のノイズ耐性評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、CXPI通信のノイズ耐性評価システムであって、送信側のCXPI通信ICと受信側のCXPI通信ICとが通信線で接続された通信装置と、信号発生器から出力されるノイズ信号を通信線に印加するノイズ印加装置と、を備え、信号発生器は、ノイズ信号を特定の方式によって変調させる機能を有する、CXPI通信のノイズ耐性評価システムである。
【発明の効果】
【0007】
本開示のCXPI通信のノイズ耐性評価システムによれば、特定の方式によって変調されたノイズ信号を用いてCXPI通信ICのノイズ耐性を評価することができるので、評価精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係るCXPI通信のノイズ耐性評価システムの概略構成図
【
図2B】パルス変調されたノイズ信号の一例を示す図
【
図3C】インターバルビットが付加されたUARTフレームの一例を示す図
【
図4A】UARTフレームに印加されるAM変調されたノイズ信号の一例を示す図
【
図4B】UARTフレームに印加されるパルス変調されたノイズ信号の一例を示す図
【
図5】他のCXPI通信のノイズ耐性評価システムの概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、低速な通信であるCXPI通信において、特定の方式によって変調されたノイズによって通信ICの耐性が低下することを見出した。本開示は、DPI試験において特定の方式によって変調されたノイズ信号を用いてCXPI通信ICのノイズ耐性を評価することができるシステムを実現させる。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係るCXPI通信のノイズ耐性評価システム10の概略構成を示す機能ブロック図である。
図1に例示したノイズ耐性評価システム10は、通信装置100と、ノイズ印加装置200と、コントローラ300と、を備える。
【0011】
(1)通信装置
通信装置100は、試験対象となる通信ICのノイズ耐性を評価するための試験用装置である。この通信装置100は、送信側の回路となるCXPI通信IC111、通信回路112、マイコン113、および電源回路114と、受信側の回路となるCXPI通信IC121、通信回路122、マイコン123、および電源回路124と、ノイズ印加回路130と、を備える。
【0012】
CXPI通信IC111は、マイコン113の動作に従って電源回路114から供給される電力で動作する通信ICである。このCXPI通信IC111は、CXPI通信IC121との間でCXPI通信を行う。通信回路112は、CXPI通信IC111が出力する信号を、バスなどの通信線140を介して通信回路122に送信する。マイコン113は、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)通信によって所定のUART信号をCXPI通信IC111に送出する。電源回路114は、CXPI通信IC111およびマイコン113に所定電圧の電力を供給する。
【0013】
試験に使用されるUART信号としては、先頭の1ビット(start bit)とデータの8ビットと最終の1ビット(end bit)とで構成される10ビット列のUARTフレームが繰り返される信号や、このUARTフレームにCXPI通信で規定されているインターバルビット(任意の1~8ビット)をさらに加えた11~18ビット列が繰り返される信号を、例示することができる。前者の信号は、例えばUARTフレームのみの評価が可能なシミュレーション試験における使用が適しており、後者の信号は、例えばCXPIルールに則った実際の通信が行われる実機における使用が適している。
【0014】
CXPI通信IC121は、マイコン123の動作に従って電源回路124から供給される電力で動作する通信ICである。このCXPI通信IC121は、CXPI通信IC111との間でCXPI通信を行う。通信回路122は、通信回路112から通信線140を介して信号を受信し、この受信した信号をCXPI通信IC121に出力する。マイコン123は、CXPI通信IC121との間で所定のUART通信を行う。電源回路124は、CXPI通信IC121およびマイコン123に所定電圧の電力を供給する。
【0015】
ノイズ印加回路130は、通信線140上に設けられ、ノイズ印加装置200から出力されるノイズ信号を、通信線140を流れる信号に印加する。
【0016】
なお、通信装置100は、送信側のCXPI通信IC111、通信回路112、マイコン113、および電源回路114と、受信側のCXPI通信IC121、通信回路122、マイコン123、および電源回路124とを、別々の基板でそれぞれ構成してもよい。
【0017】
(2)ノイズ印加装置
ノイズ印加装置200は、通信装置100にノイズ信号を印加するための試験用装置である。このノイズ印加装置200は、 シグナルジェネレータ(SG)210と、アンプ(AMP)220と、方向性結合器230と、進行波パワーセンサ240と、反射波パワーセンサ250と、パワーメータ260と、を備える。
【0018】
シグナルジェネレータ(SG)210は、正弦波の高周波のノイズ信号(CW)を発生する機能と、ノイズ信号(CW)に特定の方式による変調を施す機能と、を有している。特定の変調方式としては、AM変調やパルス変調を例示できる。よって、このシグナルジェネレータ(SG)210は、所定のAM変調がなされたノイズ信号や所定のパルス変調がなされたノイズ信号を出力することができる。このノイズ信号は、コントローラ300の指示に基づいて生成および出力される。アンプ(AMP)220は、シグナルジェネレータ(SG)210が出力するノイズ信号を所定のゲインで増幅する。方向性結合器230は、アンプ(AMP)220で増幅されたノイズ信号を、通信装置100のノイズ印加回路130に出力する。
【0019】
また、方向性結合器230は、アンプ(AMP)220で増幅されたノイズ信号を、通信装置100に向かう進行波成分と通信装置100から戻ってくる反射波成分とに分離する。進行波パワーセンサ240は、方向性結合器230で分離された進行波成分の電力を測定する。反射波パワーセンサ250は、方向性結合器230で分離された反射波成分の電力を測定する。パワーメータ260は、進行波パワーセンサ240で測定された進行波電力と反射波パワーセンサ250で測定された反射波電力とを、コントローラ300に送出することができる。
【0020】
(3)コントローラ
コントローラ300は、ノイズ印加装置200が通信装置100の通信線140に印加するノイズ信号の条件(ノイズ印加条件)を、変更(制御)するための装置である。このコントローラ300は、ノイズ印加装置200のシグナルジェネレータ(SG)210に対して指示を行い、シグナルジェネレータ(SG)210が出力するノイズ信号を制御する。
【0021】
[制御]
次に、
図2、
図3、および
図4をさらに参照して、ノイズ耐性評価システム10が実施するノイズ信号の制御手法(試験条件設定)を説明する。
【0022】
(1)第1の制御手法
ノイズ印加装置200のシグナルジェネレータ(SG)210は、コントローラ300からの指示に従って、特定の変調方式によって変調されたノイズ信号を生成する。特定の変調方式としては、AM変調とパルス変調とを示せる。
【0023】
図2Aに、AM変調されたノイズ信号の一例を示す。このAM変調されたノイズ信号は、所定の周期(例えば、1~500MHz)を有する正弦波搬送波を、予め定めた条件でAM変調した信号である。この条件としては、変調周波数1kHzかつ変調度80%とする条件を例示することができる。さらに好ましくは、後述する第3の制御手法を考慮して、AM変調の周期を、送信側のCXPI通信IC111が通信線140に出力するUARTフレームの略2倍の長さにしてもよい。
【0024】
また、
図2Bに、パルス変調されたノイズ信号の一例を示す。このパルス変調されたノイズ信号は、所定の周期(例えば、1~500MHz)を有する正弦波搬送波を、予め定めた条件でパルス変調した信号である。この条件としては、CXPI通信で規定されているビット幅またはフレーム長の単位で変化するという条件を例示することができる。よって、このパルス変調されたノイズ信号は、通信信号フレームの周期相当の低周波ノイズと言える。一例として、ISO_7637-3で規定された低速過渡パルス(パルス2a)の信号を用いることが可能である。
【0025】
(2)第2の制御手法
通信装置100のCXPI通信IC111は、CXPI通信信号をCXPI通信IC121に送信する。このCXPI通信信号には、先頭ビットが論理値「0」、最終ビットが論理値「1」、およびインターバルビットが全て論理値「1」という条件を満たす、いわゆるCXPIルールを遵守したランダムな信号が用いられる。
【0026】
例えば、
図3Aのように、最終ビットのみが論理値「1」となる10ビット列のUARTフレーム“0000000001”のCXPI通信信号は、CXPIで論理判定のタイミングを毎回学習する論理値「1」のデータが1箇所のみであるため、論理判定のタイミングを学習しない論理値「0」の期間が長いケースにおけるCXPI通信信号のノイズ耐性の劣化を評価する場合に有用である。
【0027】
また、
図3Bのように、先頭ビットのみが論理値「0」となる10ビット列のUARTフレーム“0111111111”のCXPI通信信号は、論理判定のタイミングを学習しない論理値「0」の期間が短いケースにおけるCXPI通信信号のノイズ耐性の劣化を評価する場合に有用である。
【0028】
さらには、
図3Cのように、10ビット列のUARTフレームにインターバルビット(
図3Cの例では3ビット)を付加したCXPI通信信号にすれば、実際のCXPI通信により近い状況でノイズ耐性の劣化を評価することが可能となる。
【0029】
(3)第3の制御手法
ノイズ印加装置200は、シグナルジェネレータ(SG)210から出力される特定の方式によって変調されたノイズ信号を、通信装置100のノイズ印加回路130を介してCXPI通信信号に印加する。この特定の方式によって変調されたノイズ信号のCXPI通信信号への印加は、通信線140の信号を検知して、任意のタイミングおよび周期で行うことが可能である。
【0030】
試験条件を厳しくするためには、例えばAM変調されたノイズ信号であれば、そのノイズ信号の「腹」と「節」とがUARTフレームの論理値「1」のビット位置に重畳するタイミングおよび周期で、CXPI通信信号に印加することが望ましい。
図4Aに、UARTフレームの論理値「1」のビット位置に、AM変調されたノイズ信号の「腹」および「節」が重なった(同期した)イメージを示す。
【0031】
また、例えばパルス変調されたノイズ信号であれば、そのノイズ信号のピーク部分をUARTフレームの論理値「1」のビット位置に重畳するタイミングで、CXPI通信信号に印加することが望ましい。
図4Bに、UARTフレームの論理値「1」のビット位置に、パルス変調されたノイズ信号のピークが重なった(同期した)イメージを示す。なお、
図4Bでは、CXPI通信で規定されているビット幅の単位で変化するパルス変調が施されたノイズ信号の例を示しているが、フレーム長の単位で変化するパルス変調が施されたノイズ信号を用いてもよい。
【0032】
このような、UARTフレームの論理値「1」のビット位置に、AM変調されたノイズ信号の「腹」および「節」を重ねる制御(設定)やパルス変調されたノイズ信号のピーク部分を重ねる制御(設定)は、
図5に示すCXPI通信のノイズ耐性評価システム20の構成を用いれば容易である。
図5は、
図1に示したノイズ耐性評価システム10の構成に対して、オシロスコープ400を追加してコントローラ300の制御を発展させた構成である。
【0033】
オシロスコープ400は、通信装置100の通信線140の電圧をモニタしており、UARTフレームの論理値「1」のビット位置を検出してコントローラ300に通知する。コントローラ300は、オシロスコープ400からの通知に従って、AM変調されたノイズ信号の「腹」および「節」またはパルス変調されたピーク部分がUARTフレームの論理値「1」のビット位置に重なる(タイミングや周期が一致する)ように、シグナルジェネレータ(SG)210からノイズ印加回路130を介して、通信線140を流れるCXPI通信信号に印加するタイミングや周期を制御する。
【0034】
(4)第4の制御手法
ノイズ印加装置200は、DPI試験に用いる複数のノイズ信号の各周波数において、AM変調またはパルス変調されたノイズ信号をCXPI通信信号に印加する時間を2秒以上とする。DPI試験では、劣化するケースを出来るだけ長い時間を評価することで評価の精度が向上する。よって、BCI試験において規定されている「2秒」を、ノイズ信号の印加時間の最低条件とする。この第4の制御手法は、第3の制御手法を採用しない場合において特に有用である。
【0035】
(5)第5の制御手法
通信装置100の電源回路114および電源回路124は、CXPI通信IC111に供給する電源電圧と、CXPI通信IC121に供給する電源電圧との間に、電圧差をつける。電源電圧を低くすればCXPI通信信号の振幅が小さくなり、ビット判定を行う閾値に対するマージが少なくなってノイズ耐性が低下するので、この電圧差は大きくすればするほど厳しい試験となる。なお、CXPI通信IC111および121に供給する電源電圧は、ISOで定義されている範囲で変化させることが望ましい。
【0036】
(6)第6の制御手法
通信装置100は、GND電位を、CXPI通信IC111とCXPI通信IC121とで差をつける。この制御手法を用いる場合には、送信側のCXPI通信IC111、通信回路112、マイコン113、および電源回路114のGNDと、受信側のCXPI通信IC121、通信回路122、マイコン123、および電源回路124のGNDとが、電気的に分離されている必要がある。このGND電位差についても、電源電圧差と同様に、大きくなるとビット判定を行う閾値に対するマージが少なくなってノイズ耐性が低下する。このCXPI通信IC111および121のGND電位も、ISOに記載された範囲で変化させることが望ましい。
【0037】
(7)第7の制御手法
より高精度にCXPI通信ICのノイズ耐性を評価するためには、ノイズ印加条件を様々に変更して試験を行うことが望ましい。しかしながら、CXPIで定められた論理判定のタイミングを毎回学習する機能が、評価結果に影響を及ぼすおそれがある。
【0038】
よって、コントローラ300によってノイズ印加条件が変更された場合には、ノイズ印加装置200が変更されたノイズ印加条件に基づくノイズ信号を通信線140に印加する前に、送信側のCXPI通信IC111および受信側のCXPI通信IC121の学習機能を初期化することが望ましい。この学習機能の初期化は、例えば、電源回路114および124がCXPI通信IC111および121へ供給する電源をマイコン113および123などの制御部がリセットすることによって可能である。
【0039】
上述した第1~第7の制御手法(試験条件設定)のうち、第1の制御手法は必須の項目であり、第2および第3の制御手法は、DPI試験の精度を向上させるために第1の制御手法と組み合わせて適用することが望ましい。また、第4~第7の制御手法は、通信ICのノイズ耐性をさらに厳しく評価する場合に有用な項目であり、第1~第3の制御手法と適宜組み合わせて用いることができる。
【0040】
<作用・効果>
以上説明したように、本開示の一実施形態に係るCXPI通信のノイズ耐性評価システムによれば、送信側のCXPI通信ICと受信側のCXPI通信ICとが通信線で接続された通信装置と、信号発生器から出力されるノイズ信号を通信線に印加するノイズ印加装置と、を用いてDPI試験を実施する。信号発生器は、ノイズ信号を特定の方式によって変調させる機能を有しているので、特定方式の変調が施されたノイズ信号を用いてCXPI通信ICのノイズ耐性を評価することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示のCXPI通信のノイズ耐性評価システムは、CXPI通信を行う通信ICのノイズ耐性を評価する場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
10、20 ノイズ耐性評価システム
100 通信装置
111、121 CXPI通信IC
112、122 通信回路
113、123 マイコン
114、124 電源回路
130 ノイズ印加回路
140 通信線
200 ノイズ印加装置
210 シグナルジェネレータ(SG)
220 アンプ(AMP)
230 方向性結合器
240 進行波パワーセンサ
250 反射波パワーセンサ
260 パワーメータ
300 コントローラ
400 オシロスコープ