(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100460
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】コンクリート裏面補強工法およびコンクリート構造物
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20250626BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
E04G23/02 D
E04H9/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024221879
(22)【出願日】2024-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2023216646
(32)【優先日】2023-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良輔
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慶次
(72)【発明者】
【氏名】山上 大智
(72)【発明者】
【氏名】盛岡 実
(72)【発明者】
【氏名】原田 耕司
【テーマコード(参考)】
2E139
2E176
【Fターム(参考)】
2E139AA28
2E139AC08
2E139AC19
2E139AC26
2E139AD01
2E139AD07
2E176AA01
2E176AA17
2E176BB29
(57)【要約】
【課題】飛翔体の衝突によるコンクリートの裏面破壊を抑制する技術を提供する。
【解決手段】裏面破壊を防止するために、コンクリート1の裏面12に繊維シート3を取り付けるコンクリート裏面補強工法であって、コンクリート1の裏面12に繊維シート3を取り付ける工程は、コンクリート1の裏面12に第1接着剤51を塗布する工程と、第1接着剤51の上から繊維シート3を貼りつける工程を含み、試験用コンクリート101の裏面12に繊維シート3を取り付けた後に、裏面破壊に至るまでの衝突エネルギーの累積値である破壊累積値が7.0kJ以上であり、飛翔体2の一回当たりの衝突エネルギーが0.1kJ以上7.0kJ未満であり、試験用コンクリート101は、タテ1100mm×ヨコ1100mm×厚さ150mmの形状であり、圧縮強度が24N/mm
2以上である、コンクリート裏面補強工法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの一方の面に飛翔体の衝突によって前記一方の面と反対側の他方の面が破壊される裏面破壊を防止するために、前記他方の面に繊維シートを取り付けるコンクリート裏面補強工法であって、
前記コンクリートの前記他方の面に前記繊維シートを取り付ける樹脂シート取付工程は、前記コンクリートの前記他方の面に第1接着剤を塗布し、前記第1接着剤の上から前記繊維シートを貼りつける工程を含み、
前記コンクリートを試験用コンクリートとして用意し、前記試験用コンクリートの前記他方の面に前記繊維シートを取り付けた後に、前記一方の面に前記飛翔体が衝突して前記裏面破壊に至るまでの衝突エネルギーの累積値である破壊累積値が7.0kJ以上であり、前記飛翔体の一回当たりの衝突エネルギーが0.1kJ以上7.0kJ未満であり、
前記試験用コンクリートは、タテ1100mm×ヨコ1100mm×厚さ150mmの形状を呈しており、その圧縮強度が24N/mm2以上である、
コンクリート裏面補強工法。
【請求項2】
前記樹脂シート取付工程は、さらに、前記コンクリートの裏面に前記第1接着剤により取り付けた前記繊維シートの上に第2接着剤を塗布する工程を含む、請求項1に記載のコンクリート裏面補強工法。
【請求項3】
前記第1接着剤と前記第2接着剤は、(メタ)アクリル樹脂系接着剤およびエポキシ樹脂系接着剤の少なくとも一方を含む、請求項2に記載のコンクリート裏面補強工法。
【請求項4】
前記第1接着剤の塗布量Aは100g/m2以上1000g/m2以下であり、
前記第2接着剤の塗布量Bは0g/m2以上1500g/m2以下である、請求項2または3に記載のコンクリート裏面補強工法。
【請求項5】
前記第1接着剤の塗布量であるAkg/m2と、前記第2接着剤の塗布量であるBkg/m2と、の比B/Aは0以上4.0以下である、請求項2または3に記載のコンクリート裏面補強工法。
【請求項6】
前記繊維シートの目付が50g/m2以上1000g/m2以下である、請求項1~3までのいずれか1項に記載のコンクリート裏面補強工法。
【請求項7】
前記繊維シートは、繊維が互いに異なる2つの軸方向のそれぞれに沿って配置された2方向シート、または、繊維が1つの軸方向に沿って配置された2枚の一方向シートが、前記軸方向が互いに交わるように積層された積層シートを含む、請求項1~3までのいずれか1項に記載のコンクリート裏面補強工法。
【請求項8】
前記繊維シートは、アラミド繊維シートである、請求項1~3までのいずれか1項に記載のコンクリート裏面補強工法。
【請求項9】
前記破壊累積値が10kJ以上である、請求項1~3までのいずれか1項に記載のコンクリート裏面補強工法。
【請求項10】
高圧空気式飛翔体発生装置を用いて下記実験条件のもとで前記繊維シートが取り付けられた前記試験用コンクリートに対して飛翔体を3回衝突させたときに裏面破壊が発生しない、請求項1~3までのいずれか1項に記載のコンクリート裏面補強工法。
実験条件:
・装置:高圧空気式飛翔体発生装置
・飛翔体質量:4.5kg (Φ90mm)
・飛翔体設定速度:20m/s、40m/s
【請求項11】
前記飛翔体の一回当たりの衝突エネルギーが0.5kJ以上1.5kJ未満であり、
前記破壊累積値が15.0kJ以上である、請求項1~3までのいずれか1項に記載のコンクリート裏面補強工法。
【請求項12】
前記飛翔体の一回当たりの衝突エネルギーが3.0kJ以上4.0kJ未満であり、
前記破壊累積値が25.0kJ以上である、請求項1~3までのいずれか1項に記載のコンクリート裏面補強工法。
【請求項13】
請求項1~3までのいずれか1項に記載のコンクリート裏面補強工法を用いて補強されたコンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート裏面補強工法およびコンクリート構造物(「コンクリート構造体」ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物に、落石・土石流・雪崩のような比較的質量の大きい物体が低い速度で衝突する場合には、コンクリートに曲げ破壊やせん断破壊等の大変形を伴う全体破壊が生じる。一方、砲弾や爆破物の衝突、台風や竜巻による飛来物衝突等、比較的質量が小さい物体が高速で衝突する場合には、コンクリート表面の破壊・貫入・裏面剥離・貫通のプロセスで局所破壊が進行する。このように、飛翔体の速度が数十m/sから数百m/sの高速衝突を受けるコンクリート部材では、曲げ破壊やせん断破壊による全体破壊とは全く様相が異なる。
【0003】
従来、高速飛翔体の衝突を受けるコンクリート部材として、圧縮強度で400N/mm2程度の高い強度を持つ無孔性コンクリートが検討されている(非特許文献1)。このコンクリートは、28N/mm2程度の一般的なコンクリートと比べて、圧縮強度は14倍以上であるが、部材厚さは30%程度しか薄肉化できないものであった。また、たった1つの欠陥も許さない無孔性を工業的に量産することは困難であり、無孔性であることを担保するためには、全数検査を実施する必要もあり、実用性に乏しいものであった。
【0004】
別の研究でも、コンクリートの圧縮強度の増加による表面局部貫入はやや抑制されるものの、裏面剥離の抑制効果は認められないことが報告されている(非特許文献2)。以上より、コンクリートはマスプロダクションの製作に欠かすことのできない材料であるが、高速飛翔体の衝突に対する裏面破壊を抑制するためには、コンクリートの高強度化は解決策にならないことが明らかである。
【0005】
一方、セラミックスを用いた高速飛翔体の耐衝撃部材も提案されている(特許文献1)。しかしながら、セラミックスはマスプロダクションに適用するには高価な材料であり、経済的な負担が大きくなり過ぎて、適用範囲が限定的である。
【0006】
また、高速飛翔体の衝突によるコンクリートの裏面破壊を防止する方法として、コンクリートの裏面にアラミド繊維や炭素繊維のシートを貼り付ける補強方法も提案されている(非特許文献3)。非特許文献3には、
図8に示すように、裏面剥離の発生過程が示されている。
図9には裏面剥離の例の画像を示す。
図9(a)は非特許文献3に記載されている例であり、
図9(b)、9(c)は非特許文献4に記載されている例である。これらは、特にシートによる補強はされていない例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】河野ほか、「高速飛翔体衝突に対する繊維補強PFCパネルの防護性能」太平洋セメント研究報告、第180号(2021)
【非特許文献2】南ほか、「高速飛翔体の衝突に対する各種コンクリート耐衝撃性能評価」コンクリート工学年次論文集、Vol.35、No.1、pp.1255-1260(2013)
【非特許文献3】別府ほか、「高速衝突を受けるコンクリート板の裏面剥離発生メカニズムと連続繊維シート補強の効果」土木学会論文集A1(構造・地震工学)、Vol.68、No.2、pp.398-412(2012)
【非特許文献4】別府ほか、「鋼製剛飛翔体の高速衝突を受けるコンクリート板の局部破壊に関する実験的研究」土木学会論文集E,Vol.63,No.1,pp.178-191(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、火山噴石の衝突による避難所の被害や竜巻飛来物による建物への被害が多く報告されており、シェルター、防護壁、ビル等のコンクリート構造物の補強方法の確立が求められていた。このような災害では飛来物(飛翔体)が構造物に繰り返して衝突する可能性がある。これまで、単一衝突に対する裏面補強効果の評価は行われているが、飛翔体が繰り返し衝突する場合に関する検討は行われていなかった。
【0010】
本発明は、飛翔体が繰り返し衝突する場合にコンクリートの裏面破壊を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば次の技術が提供される。
[1]
コンクリートの一方の面に飛翔体の衝突によって前記一方の面と反対側の他方の面が破壊される裏面破壊を防止するために、前記他方の面に繊維シートを取り付けるコンクリート裏面補強工法であって、
前記コンクリートの前記他方の面に前記繊維シートを取り付ける樹脂シート取付工程は、前記コンクリートの前記他方の面に第1接着剤を塗布し、前記第1接着剤の上から前記繊維シートを貼りつける工程を含み、
前期コンクリートとして試験用コンクリートを用意し、前記試験用コンクリートの前記他方の面に前記繊維シートを取り付けた後に、前記一方の面に前記飛翔体が衝突して前記裏面破壊に至るまでの衝突エネルギーの累積値である破壊累積値が7.0kJ以上であり、前記飛翔体の一回当たりの衝突エネルギーが0.1kJ以上7.0kJ未満であり、
前記試験用コンクリートは、タテ1100mm×ヨコ1100mm×厚さ150mmの形状を呈しており、その圧縮強度が24N/mm2以上である、
コンクリート裏面補強工法。
[2]
前記樹脂シート取付工程は、さらに、前記コンクリートの裏面に前記第1接着剤により取り付けた前記繊維シートの上に第2接着剤を塗布する工程を含む、[1]に記載のコンクリート裏面補強工法。
[3]
前記第1接着剤と前記第2接着剤は、(メタ)アクリル樹脂系接着剤およびエポキシ樹脂系接着剤の少なくとも一方を含む、[2]に記載のコンクリート裏面補強工法。
[4]
前記第1接着剤の塗布量Aは100g/m2以上1000g/m2以下であり、
前記第2接着剤の塗布量Bは0g/m2以上1500g/m2以下である、[2]または[3]に記載のコンクリート裏面補強工法。
[5]
前記第1接着剤の塗布量であるAkg/m2と、前記第2接着剤の塗布量であるBkg/m2と、の比B/Aは0以上4.0以下である、[2]~[4]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[6]
前記繊維シートの目付が50g/m2以上1000g/m2以下である、[1]~[5]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[7]
前記繊維シートは、繊維が互いに異なる2つの軸方向のそれぞれに沿って配置された2方向シート、または、繊維が1つの軸方向に沿って配置された2枚の一方向シートが、前記軸方向が互いに交わるように積層された積層シートを含む、[1]~[6]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[8]
前記繊維シートは、アラミド繊維シートである、[1]~[7]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[9]
前記破壊累積値が10kJ以上である、[1]~[8]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[10]
高圧空気式飛翔体発生装置を用いて下記実験条件のもとで、前記試験用コンクリートの前記他方の面に前記繊維シートを取り付けた後に、前記試験用コンクリートに対して飛翔体を3回衝突させたときに裏面破壊が発生しない、[1]~[9]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
実験条件:
・装置:高圧空気式飛翔体発生装置
・飛翔体質量:4.5kg (Φ 90mm)
・飛翔体設定速度:20m/s、40m/s
[11]
前記飛翔体の一回当たりの衝突エネルギーが0.5kJ以上1.5kJ未満であり、
前記破壊累積値が15.0kJ以上である、[1]~[10]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[12]
前記飛翔体の一回当たりの衝突エネルギーが3.0kJ以上4.0kJ未満であり、
前記破壊累積値が25.0kJ以上である、[1]~[10]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[13]
[1]~[12]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法を用いて補強されたコンクリート構造物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、飛翔体が繰り返し衝突する場合にコンクリートの裏面破壊を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る裏面に繊維シートを取り付けたコンクリートを示す図である。
【
図2】実施形態に係る
図1(b)の領域Aの拡大図である。
【
図3】実施形態に係るコンクリート裏面補強工法を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係るコンクリート裏面補強工法の各工程におけるコンクリートへの繊維シートの取付工程を示す画像である。
【
図5】実施形態に係る実験に用いる高圧空気式飛翔体発生装置を示す図である。
【
図6】実施形態に係る裏面補強済みコンクリートを示す図である。
【
図7】実施形態に係る高圧空気式飛翔体発生装置からコンクリートに向けて発射させる試験用飛翔体の図である。
【
図10】実施例1~3の裏面破壊の状態を説明する画像である。
【
図11】実施例4~6の裏面破壊の状態を説明する画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本実施形態の概要>
本実施形態では、コンクリート裏面補強技術について説明する。
図1は裏面12に繊維シート3を取り付けたコンクリート1を示す図であり、
図1(a)は正面図、
図1(b)は側面図、
図1(c)は背面図を示す。
図2は
図1(b)の領域Aの拡大図である。
図2ではコンクリート1をハッチングで表記している。コンクリート1を採用できるコンクリート建造物(構造物)としては、(1)公共施設関係設備、(2)生活インフラ、通信、交通関係設備、(3)国防上重要な施設や防災施設が例示できる。より具体的には次の通りである。
(1)公共施設関係設備としては、例えば、学校、研究施設、病院、警察署、消防署、体育館、公民館、役所、図書館、博物館、美術館、スタジアム等が挙げられる。
(2)生活インフラ、通信、交通関係設備としては、例えば、発電所、変電所、ガス施設、水道局、通信基地、放送局、駅、地下鉄、港湾施設、空港等が挙げられる。
(3)国防上重要な施設や防災施設としては、例えば、自衛隊の駐屯地・基地・飛行場、原子力施設(原子炉、原子力発電所、核燃料加工施設、再処理施設、使用済燃料貯蔵施設)、シェルター、山小屋等が挙げられる。
なお、上記コンクリート建造物は、例示であり、上記以外のコンクリート建造物においても適用可能である。
【0015】
本実施形態のコンクリート裏面補強技術は、コンクリート1の一方の面(以下、「表面11」という)に飛翔体2が衝突したときに、表面11と反対側の他方の面(以下、「裏面12」という)が破壊される現象である裏面破壊を防止するために、裏面12に繊維シート3を取り付ける。なお、コンクリート1の表面11と裏面12は特に構造等により区別するものではなく、繊維シート3が取り付けられているか否かの違いに基づく。換言すると、コンクリート1の裏面12とは、飛翔体2が衝突する面(表面11)ではなく、その背面を言う。
【0016】
試験用に規格化されたコンクリート1(以下、「試験用コンクリート101」という)を用意し、後述する工程(
図3、4参照)により、試験用コンクリート101の裏面12に繊維シート3を取り付ける。以下、繊維シート3を裏面12に取り付けた試験用コンクリート101を「裏面補強済みコンクリート102」という。
【0017】
裏面補強済みコンクリート102の表面11に飛翔体2が衝突して裏面破壊に至るまでの衝突エネルギーEAの累積値である破壊累積値ESを評価する。すなわち、破壊累積値ESが所定値以上の場合に、裏面破壊を考慮した一定強度を有する、繊維シート3を裏面12に有するコンクリート1が施工されていると評価する。
評価には、飛翔体2の一回当たりの衝突エネルギーEAの大きさに応じて、次の評価条件1~3の3通りの評価を行う。
評価条件1:
飛翔体2の一回当たりの衝突エネルギーEAが0.1kJ以上7.0kJ未満であり、破壊累積値ESが7.0kJ以上である。
評価条件2:
飛翔体2の一回当たりの衝突エネルギーEAが0.5kJ以上1.5kJ未満であり、破壊累積値ESが15.0kJ以上である。
評価条件3:
飛翔体2の一回当たりの衝突エネルギーEAが3.0kJ以上4.0kJ未満であり、破壊累積値ESが25.0kJ以上である。
以下、具体的に説明する。
【0018】
本実施形態において、裏面破壊(「裏面剥離」ともいう)とは、表面11への飛翔体2の衝突により、裏面12に剥離が生じた状態を言う。裏面破壊の例は上述の
図8、
図9を参照されたい。
【0019】
<コンクリート(試験用コンクリート)>
裏面補強済みコンクリート102は、試験用に規格化されたコンクリート1である試験用コンクリート101と、試験用コンクリート101の裏面12に取り付けられた繊維シート3とを有する。繊維シート3は、後述する工程により、試験用コンクリート101の裏面12に接着剤50(第1接着剤51、第2接着剤52)により取り付けられる。
【0020】
まず、裏面補強が施されるコンクリート1について説明する。つづいて、試験用コンクリート101および裏面補強済みコンクリート102について説明する。
【0021】
本実施形態において、コンクリート1は、コンクリート、モルタル、セメントペーストを総称するものである。また、コンクリート1は、無筋コンクリートであってもよいし鉄筋コンクリートであってもよい。
【0022】
コンクリート1は、コンクリートに短繊維を混和した繊維補強コンクリートとしてもよい。混和される短繊維は1種類であってもよいし複数種類であってもよい。
短繊維として、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート、ビニロンを用いることができる。短繊維の大きさとしては、例えば、繊維径を0.01mm~0.1mm、繊維長さを10mm~30mmにすることができる。
【0023】
繊維補強コンクリートは、飛翔体2が衝突した際の衝撃を分散する効果や、コンクリート片が飛び散ることを抑制する効果が期待できる。短繊維の使用量は、例えば体積割合で1~5Vol.%とすることができる。1Vol.%以上だと、耐衝撃性や壊れたコンクリート片の飛散防止が十分になり、5Vol.%以下だと十分な性能が期待できる。
【0024】
コンクリート1の強度レベルは、飛翔体2の衝突に起因する裏面破壊を防止する観点において、圧縮強度で18N/mm2~200N/mm2程度のものが好適である。18N/mm2以上だと、耐衝撃性が十分になり、200N/mm2以下だと、コンクリート板の製作が容易になり、生産性が良くなり、コスト安となる傾向にある。
【0025】
衝突する飛翔体2の質量や速度、すなわち1回当たりの衝突エネルギーによって、要求される圧縮強度は異なってくる。例えば、1回当たりの衝突エネルギーが大きい条件において1回耐えられる圧縮強度を求めるのか、1回当たりの衝突エネルギーがそれほど大きく無いが複数回の衝突に耐えられる圧縮強度を求めるのかにより、要求される圧縮強度は異なってくる。
【0026】
本実施形態では、試験用コンクリート101の裏面12に繊維シート3を取り付けた裏面補強済みコンクリート102に対する、飛翔体2の一回当たりの衝突エネルギーEAが0.1kJ以上7.0kJ未満であって、破壊累積値ESが7.0kJ以上になるような条件を想定したときに、試験用コンクリート101の圧縮強度は24N/mm2以上にすることができる。
【0027】
圧縮強度の下限は、好ましくは30N/mm2以上であり、より好ましくは40N/mm2以上である。圧縮強度の上限は、特に限定はないが、例えば60N/mm2以下であり好ましくは55N/mm2以下であり、より好ましくは50N/mm2以下である。圧縮強度は、想定される飛翔体2の運動エネルギー(衝突エネルギー)に応じて設定される。すなわち、試験用コンクリート101にどの程度の強度が必要とされるかに応じて設定される。
【0028】
試験用コンクリート101は、タテ1100mm×ヨコ1100mm×厚さ150mmの直方体の形状を有する。タテ×ヨコで規定される一方の面が表面11であり、他方の面が裏面12である。
【0029】
<繊維シート>
繊維シート3は、接着剤50(後述の第1接着剤51、第2接着剤52)を用いて、コンクリート1の裏面12に取り付けられる。詳細は後述するが、コンクリート1の裏面12に、下塗り材として第1接着剤51を塗布し、繊維シート3を取り付けたのち、必要に応じて上塗り材として第2接着剤52を塗布する。
【0030】
繊維シート3として、例えば、アラミド繊維、炭素繊維等の繊維で構成されるシートが挙げられる。強度および接着剤50との親和性の観点から、アラミド繊維シートが好適に用いることができる。
【0031】
アラミド繊維シートとしては、繊維を経糸および緯糸として2方向に配列した織物のシートが好ましく用いられ、なかでも、経糸と緯糸を構成するアラミド繊維の種類、太さ、フィラメント数が同じである等方シートが特に好ましく用いられる。
【0032】
アラミド繊維シートを構成する繊維の引張強度は、例えば、1cN/dtex以上40cN/dtex以下にすることができる。下限は、好ましくは5cN/dtex以上であり、より好ましくは10cN/dtex以上である。上限は、好ましくは35cN/dtex以下であり、より好ましくは25cN/dtex以下である。アラミド繊維シートを構成する繊維の引張強度を上記範囲にすることで、コンクリート1が破断した場合であっても、破断したコンクリート1(またはコンクリート1に含まれる鉄筋等の部材)が飛び出してしまうことを抑制できる。引張強度が1cN/dtex以上だと、コンクリート1に配設されている鉄筋(鋼材)の長さにもよるが、鉄筋の破断時、その飛び出しを十分に防止できる。一方、引張強度が40cN/dtex以下だと、そのような高い引張強度を実現するためにフィラメントの本数や太さが減り、接着剤50の含浸が十分に進行する。
【0033】
アラミド繊維シートの繊維量は、例えば50g/m2以上1000g/m2以下にすることができる。下限は、好ましくは100g/m2以上であり、より好ましくは180g/m2以上である。上限は、好ましくは800g/m2以下であり、より好ましくは650g/m2以下である。繊維量が50g/m2以上だと、アラミド繊維シートの引張強度が不足しない。繊維量が1000g/m2以下だと、接着剤50の含浸が十分に進行し十分な接着強度が得られる。
【0034】
繊維シート3は、繊維束を1方向に配列して形成された単軸シート(UD材)であってもよいし、繊維束を経糸および緯糸として2軸で織ってなる2軸シート(クロスシート)であってもよい。織り方としては、平織りや綾織、朱子織等といった織物の経糸と緯糸を交差させるパターンが多数あるがそのパターンを限定するものではない。また、2軸シートの場合、2つの単軸シートを繊維束の方向が異なるように積層したシート(積層シート)であってもよい。また、2軸シートの場合、繊維束の方向が直交せず多少傾いてもよい。また、単軸シートや2軸シートを組み合わせて3層以上に積層した多軸シートであってもよい。多軸シートの場合には、異なる種類の繊維シート3(例えばアラミド繊維シートと炭素繊維シート)が積層されてもよい。繊維シート3に接着剤50を含浸させる観点からは、平織りに織ってなる2軸シートが好ましい。すなわち、平織りにより形成される繊維シート3の表面および裏面の凹凸に接着剤が含浸しやすくなる。
【0035】
<繊維シートの目付>
繊維シート3の目付(または「目付量」ともいう)は、適宜設定されるが、例えば50g/m2以上1000g/m2以下にすることができる。目付の下限は、好ましくは100g/m2以上であり、より好ましくは180g/m2以上である。目付の上限は、好ましくは800g/m2以下であり、より好ましくは650g/m2以下である。
【0036】
目付が50g/m2以上だと、繊維が多くなり、繊維シート3として所望の強度(すなわち裏面破壊を防止することができる強度)が得られる。また、繊維の隙間が広くなりすぎないために、繊維シート3をコンクリート1に取り付けるために必要となる接着剤50が多くなりすぎず、接着剤50の量の増加に伴って硬化時間が長くなることがなく、施工性が向上する。
【0037】
目付が1000g/m2以下だと、接着剤50が繊維間に含浸しやすくなり所望の接着性を得ることが容易になる。
【0038】
<接着剤(第1接着剤、第2接着剤)>
接着剤50として、下塗り材として第1接着剤51が、上塗り材として第2接着剤52が用いられる。第1接着剤51と第2接着剤52は、同じ種類の接着剤であってもよいし異なってもよい。第1接着剤51と第2接着剤52とがあることで、繊維シート3を通して、第1接着剤51と第2接着剤52とが接触し接着強度が高くなる。なお、繊維シート3の目付が小さい場合には、第2接着剤52の塗布を省くことができる。目付が小さい場合とは、例えば、目付が200g/m2以下の場合をいう。繊維シート3の目付が小さい場合、上述のように繊維間の間隔が広くなるため、第1接着剤51の使用量が多くなるとともに、繊維シート3の表側まで第1接着剤51が染み出てくる場合がある。そのため、下塗り材である第1接着剤51の使用だけで、上塗り材である第2接着剤52を使用した場合と同様の効果が得られる場合がある。そのような場合には、第2接着剤52を省くことができる。
【0039】
接着剤50の種類とし、(メタ)アクリル系樹脂を含む接着剤((メタ)アクリル樹脂系接着剤)、エポキシ系樹脂を含む接着剤(エポキシ樹脂系接着剤)等を用いることができる。(メタ)アクリル樹脂系接着剤は、(メタ)アクリル酸やその誘導体(メタクリル酸メチル等)を主成分としており、本実施形態では、メタクリル(MMA)系樹脂を含む接着剤(MMA樹脂系接着剤)を含む。第1接着剤51と第2接着剤52とが同じ種類とは、例えば、両方とも同じ種類(成分)のアクリル樹脂系接着剤である場合と、成分が異なるが別種類の(メタ)アクリル樹脂系接着剤である場合とを含む。第1接着剤51と第2接着剤52は、どのような種類のものが選択される場合であっても、所望の接着性・施工性が実現されればよい。
【0040】
[(メタ)アクリル系モノマーおよびそのオリゴマー]
本実施形態は(メタ)アクリル系接着剤成分として、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリル系モノマーや、これらの(メタ)アクリル系モノマーが複数個結合した(メタ)アクリルオリゴマーを含有する。(メタ)アクリル系接着剤成分はラジカル重合可能な成分である。
【0041】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸またはその誘導体、(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体等が挙げられ、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
上記の(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0043】
(i)以下の式(1)で表される単量体。
Z-O-R1 (1)
(式中、Zは(メタ)アクリロイル基、CH2=CHCOOCH2-CH(OH)CH2O-基またはCH2=C(CH3)COOCH2-CH(OH)CH2O-基を示し、R1は水素、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基、ベンジル基、フェニル基、テトラヒドロフルフリル基、グリシジル基、ジシクロペンチル基、ジシクロペンテニル基、(メタ)アクリロイル基およびイソボルニル基を示す)
【0044】
このような単量体としては例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、グリセロール(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0045】
(ii)以下の式(2)で表される単量体。
Z-O-(R2O)p-R1 (2)
(式中、ZおよびR1は前述の通りである。R2は-C2H4-、-C3H6-、-CH2CH(CH3)-、-C4H8-または-C6H12-を示し、pは1~25の整数を表す)
【0046】
このような単量体としては例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
(iii)以下の式(3)で表される単量体。
【0048】
【化1】
(式中、ZおよびR
2は前述の通りである。Z’は(メタ)アクリロイル基、CH
2=CHCOOCH
2-CH(OH)CH
2O-基またはCH
2=C(CH
3)COOCH
2-CH(OH)CH
2O-基を示し、R’
2は-C
2H
4-、-C
3H
6-、-CH
2CH(CH
3)-、-C
4H
8-または-C
6H
12-を示し、R
3、R’
3は水素または炭素数1~4のアルキル基を示し、q+q’は0~20の整数を表し、好ましくは0~8の整数を表す。Z、Z’は同一でも異なってもよい。R
2、R
2’は同一でも異なってもよい。R
3、R’
3は同一でも異なってもよい。)
【0049】
このような単量体としては例えば、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパンおよび2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0050】
(iv)上記(i)、(ii)または(iii)記載の単量体に含まれない多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル。
【0051】
このような単量体としては例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
(v)(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタンプレポリマー。
このような単量体は、例えば水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、有機ポリイソシアネートおよび多価アルコールを反応することにより得られる。
【0053】
ここで水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルおよび(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。
【0054】
上記の有機ポリイソシアネートとしては例えば、トルエンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0055】
上記の多価アルコールとしては例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0056】
上記の(i)~(v)の単量体は、1種または2種以上を使用することができる。これらの中では、接着性が大きく、接着後の被着体の接着歪みが小さい点で、(i)と(iii)からなる群の1種または2種以上が好ましく、(i)と(iii)を併用することがより好ましい。(i)と(iii)を併用した場合、その組成比は質量比で(i):(iii)=50~95:5~50が好ましく、60~80:20~40がより好ましい。
【0057】
[エポキシ系モノマーおよびそのオリゴマー]
本実施形態はエポキシ系接着剤成分として、エポキシ系モノマー、またはこれらのエポキシ系モノマーが複数個結合したエポキシオリゴマーを含有してもよい。
【0058】
エポキシ系モノマーとしては、例えば、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ビスフェノールAD系、ブロム含有ビスフェノールA系等のビスフェノール系、フェノールノボラック系、クレゾールノボラック系、ポリフェノール系、直鎖脂肪族系、ブタジエン系、ウレタン等のグリシジルエステル型エポキシモノマー;ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー型グリシジルエステル、芳香族系、環状脂肪族系等の脂肪族グリシジルエステル型のエポキシモノマー;エステル系、高分子量エーテルエステル系、エーテルエステル系、ブロム系ノボラック系等のメチル置換型エポキシモノマー;複素環型のエポキシモノマー;トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン型のエポキシモノマー;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ大豆油等の線状脂肪族型エポキシモノマー;環状脂肪族型エポキシモノマー、ナフタレン系ノボラック型エポキシモノマー;ジグリシジルオキシナフタレン型エポキシモノマー等が挙げられる。これらのエポキシ系モノマーは、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0059】
<エラストマー(B)>
本実施形態において、エラストマー(B)を用いることにより、接着剤組成物の靭性を高め、密着性、接着性を向上させることができる。また、エラストマー(B)は反応成分(A)に可溶であることが好適である。
【0060】
エラストマー(B)としては、メチル(メタ)アクリレート・ブタジエン・スチレン共重合(MBS樹脂等)、ブタジエンゴム、ブタジエン・(メタ)アクリロニトリル共重合体(NBR(ニトリルゴム)等)、メチル(メタ)アクリレート・(メタ)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂等)等の(メタ)アクリロニトリル共重合体、および変性ポリビニルアルコールからなる群から選択される1種または2種以上を挙げることができる。なかでも、相溶性の点から、ブタジエン・(メタ)アクリロニトリル共重合体、メチル(メタ)アクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体、メチル(メタ)アクリレート・(メタ)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体からなる群の1種または2種以上が好ましく、ブタジエン・(メタ)アクリロニトリル共重合体、メチル(メタ)アクリレート・(メタ)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体からなる群の1種または2種以上がより好ましく、ブタジエン・(メタ)アクリロニトリル共重合体、メチル(メタ)アクリレート・(メタ)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体を併用することがさらに好ましい。ブタジエン・(メタ)アクリロニトリル共重合体、メチル(メタ)アクリレート・(メタ)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体を併用する場合、その併用割合は、ブタジエン・(メタ)アクリロニトリル共重合体、メチル(メタ)アクリレート・(メタ)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体の合計100質量部中、ブタジエン・(メタ)アクリロニトリル共重合体:メチル(メタ)アクリレート・(メタ)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体=10~90:10~90が好ましく、25~75:25~75がより好ましく、40~60:40~60がさらに好ましい。
【0061】
反応成分(A)と、エラストマー(B)との合計含有量100質量部に対する、エラストマー(B)の含有量は、好ましくは15~35質量部であり、より好ましくは15~30質量部であり、さらに好ましくは15~28質量部である。
当該エラストマー(B)の含有量を、上記下限値以上とすることにより、応力緩和性が良好になる。一方、当該エラストマー(B)の含有量を上記上限値以下とすることにより、塗工性が良好になる。
【0062】
本実施形態の接着剤組成物は、さらに以下の成分を含んでもよい。
【0063】
<重合開始剤(C)>
本実施形態の接着剤組成物は、反応成分(A)を反応させるための重合開始剤(C)を含有することが好ましい。
なかでも重合開始剤(C)としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物は、加熱によって分解して遊離ラジカルを発生し、(メタ)アクリル系モノマーおよびそのオリゴマーへの付加反応を起こすことで、接着剤の硬化を促進させることができる。
有機過酸化物としては、本実施形態の接着剤組成物の貯蔵安定性を向上させる点から、1時間の半減期を得るための分解温度(1時間半減期温度)が100℃以上のものを用いることが好ましい。
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルパーオキシベンゾエート(1時間半減期温度:125℃)、t-ブチルパーオキシアセテート(1時間半減期温度:121℃)、t-ブチルパーオキシラウレート(1時間半減期温度:118℃)等のパーオキシエステル類、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(1時間半減期温度:111℃)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1時間半減期温度:107℃)等のパーオキシケタール類、p-メンタンハイドロパーオキサイド(1時間半減期温度:151℃)、クメンハイドロパーオキサイド(1時間半減期温度:188℃)、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(1時間半減期温度:173℃)等のハイドロパーオキサイド類を挙げることができる。なかでも、安定性の点で、クメンハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0064】
重合開始剤(C)の含有量は、反応成分(A)100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、1.2~8質量部がさらに好ましい。
重合開始剤(C)の含有量を上記下限値以上とすることにより、硬化速度を向上しやすくなる。一方、重合開始剤(C)の含有量を上記上限値以下とすることにより、良好な貯蔵安定性が保持できる。
【0065】
[還元剤(D)]
還元剤(D)は、重合開始剤(C)と反応し、ラジカルを発生するものであればよく、公知の還元剤を使用できる。還元剤(D)としては、例えば、第3級アミン、チオ尿素誘導体および遷移金属塩等が挙げられる。
【0066】
上記の第3級アミンとしては例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンおよびN,N-ジメチルパラトルイジン等が挙げられる。
上記のチオ尿素誘導体としては例えば、2-メルカプトベンズイミダゾール、メチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素およびエチレンチオ尿素等が挙げられる。
上記の遷移金属塩としては、例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅およびバナジルアセチルアセトナート等が挙げられる。これらの中では、反応性の点で、遷移金属塩が好ましい。遷移金属塩の中では、オクチル酸コバルトがより好ましい。
【0067】
還元剤(D)の含有量は、反応成分(A)100質量部に対して0.05~15質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
還元剤(D)の含有量を上記下限値以上とすることにより、硬化速度を高めることができる。一方、還元剤(D)の含有量を上記上限値以下とすることにより、保管時に硬化が進んでしまうことを抑制し、良好な貯蔵安定性を保持できる。
【0068】
<硬化剤または硬化促進剤>
本実施形態の接着剤組成物が、エポキシ系モノマーおよびそのオリゴマーを含む場合、これらを硬化または効果を促進させるための硬化剤または硬化促進剤を用いることができる。
硬化剤または硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化用に一般的に用いられるものを広く用いることができ、例えば、酸無水物、フェノ-ル性水酸基含有樹脂、リン化合物、イミダゾール化合物、ポリアミン化合物、アミド化合物、イミダゾリン化合物、尿素系化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
上記の酸無水物としては、例えば、オクテニル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水メチルナジック酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0069】
上記のフェノ-ル性水酸基含有樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミン等でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核およびアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0070】
上記のリン化合物は、例えば、エチルホスフィン、ブチルホスフィン等のアルキルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジプロピルホスフィン等のジアルキルホスフィン;ジフェニルホスフィン、メチルエチルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィン、リン酸エステル等が挙げられる。
【0071】
上記のイミダゾール化合物は、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、3-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、5-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、3-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、5-エチルイミダゾール、1-n-プロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、2-n-ブチルイミダゾール、1-イソブチルイミダゾール、2-イソブチルイミダゾール、2-ウンデシル-1H-イミダゾール、2-ヘプタデシル-1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,3-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、2-フェニル-1H-イミダゾール、4-メチル-2-フェニル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(2-シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール塩酸塩等が挙げられる。
硬化剤または硬化促進剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
硬化剤の含有量は硬化剤の官能基当量および選択した反応成分(A)の反応性基当量(例えば、エポキシ系モノマーおよびそのオリゴマーの場合はエポキシ当量)を元に計算される。一般的には、硬化剤または硬化促進剤の含有量は、例えば、エポキシ系モノマーおよびそのオリゴマー100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、2~8質量部がさらに好ましい。
硬化剤または硬化促進剤の含有量を、上記下限値以上とすることにより、良好な硬化が得られる。一方、硬化剤または硬化促進剤の含有量を、上記上限値以下とすることにより、接着剤組成物によって得られる接着層の保存安定性を良好にできる。
【0073】
<その他>
本実施形態の接着剤組成物は、上記の成分の他、パラフィン類、酸化防止剤、重合禁止剤、無機微粒子、無機フィラー、紫外線吸収剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、難燃剤、可塑剤、シランカップリング剤、有機ビーズ、脱泡剤、防曇剤、着色剤、および有機溶剤等を含有していてもよい。これら各種成分は所望の性能に応じて任意の量を添加してよい。
【0074】
[接着剤の製造方法]
本実施形態の接着剤組成物は、上記の各種の成分を、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミル、ホモディスパー、プラネタリーミキサー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて均一に混合することにより調製することができる。
混合方法は、原料成分に応じて適宜設定され、各成分を一括で混合する方法、任意の成分を混合した後、残りの成分を一括または順次混合する方法等、種々の方法を採用することができる。また、混合時の攪拌速度、攪拌時間、温度等の設定も、原料に応じて適宜調整される。
【0075】
[使用態様]
本実施形態の本発明の実施態様として、好ましくは、二剤型の接着剤組成物として使用することが挙げられる。二剤型については、本実施形態の接着剤組成物の必須成分全てを貯蔵中は混合せず、接着剤組成物を第一剤および第二剤に分け、第一剤に重合開始剤を、第二剤に還元剤を別々に貯蔵する。二剤型は貯蔵安定性に優れる点で好ましい。この場合、両剤を同時にまたは別々に塗布して接触、硬化することによって、二剤型の接着剤組成物として使用できる。
【0076】
<接着剤(第1接着剤、第2接着剤)の塗布量>
接着剤50の塗布量は、100g/m2以上1500g/m2以下である。接着剤50の塗布量の下限値は、好ましくは150g/m2以上であり、より好ましくは200g/m2以上である。上限値は、好ましくは1300g/m2以下であり、より好ましくは1000g/m2以下である。
【0077】
接着剤50の塗布量は、第1接着剤51と第2接着剤52の塗布量の合計とすることができる。すなわち、第1接着剤51の塗布量と第2接着剤52の塗布量の合計が、上記接着剤50の塗布量の範囲にある。具体的には、第1接着剤51の塗布量Aは100g/m2以上1000g/m2以下である。第1接着剤51の塗布量Aの下限は、好ましくは150g/m2以上であり、より好ましくは200g/m2以上である。上限は、好ましくは900g/m2以下であり、より好ましくは800g/m2以下である。
【0078】
第2接着剤52の塗布量Bは0g/m2以上1500g/m2以下である。
第2接着剤52の塗布量Bの下限値は、好ましくは50g/m2以上であり、より好ましくは100g/m2以上である。上限は、好ましくは1300g/m2以下であり、より好ましくは1000g/m2以下である。
【0079】
第1接着剤51の塗布量であるAkg/m2と、第2接着剤52の塗布量であるBkg/m2との比B/Aは0以上4.0以下である。比B/Aの下限は、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上である。比B/Aの上限は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.5以下である。
【0080】
第1接着剤51の塗布量Aや第2接着剤52の塗布量Bは、繊維シート3の目付に応じて適宜調整され、例えば次のように設定することができる。
繊維シート3の目付量が小さい場合(例えば50~200g/m2)、第1接着剤51の塗布量Aは100g/m2以上600g/m2以下とし、第2接着剤52の塗布量Bは0g/m2以上600g/m2以下とする。さらに、第1接着剤51の塗布量Aと第2接着剤52の塗布量Bの合計(すなわち接着剤50の塗布量)は上述の100g/m2以上1500g/m2以下とし、比B/Aを0以上4.0以下にする。
【0081】
繊維シート3の目付量が小さい場合、繊維間隔が広く繊維シート3の表面に第1接着剤51が染み出る場合があるため、そのような場合は、上塗り材である第2接着剤52の塗布量は省いたり少なくしたりする。一方、繊維シート3の目付量が小さい場合であっても、繊維シート3が薄く表面が均一の構造の場合には、繊維シート3の表面に第1接着剤51が染み出るとは限らない。そのような場合には、一定量の第2接着剤52を塗布する。繊維シート3の表面が均一である場合、表面を均す必要性が低いため第2接着剤52を塗布量は少なくてもよい。
【0082】
繊維シート3の目付量が中程度の場合(例えば200~500g/m2)、第1接着剤51の塗布量Aは300g/m2以上800g/m2以下とし、第2接着剤52の塗布量Bは0g/m2以上1300g/m2以下とする。さらに、第1接着剤51の塗布量Aと第2接着剤52の塗布量Bの合計(すなわち接着剤50の塗布量)は上述の100g/m2以上1500g/m2以下とし、比B/Aを0以上4.0以下にする。
【0083】
繊維シート3の目付量が大きい場合(例えば500~1000g/m2)、第1接着剤51の塗布量Aは400g/m2以上1000g/m2以下とし、第2接着剤52の塗布量Bは0g/m2以上1500g/m2以下とする。さらに、第1接着剤51の塗布量Aと第2接着剤52の塗布量Bの合計(すなわち接着剤50の塗布量)は上述の100g/m2以上1500g/m2以下とし、比B/Aを0以上4.0以下にする。例えば、繊維シート3の目付量が大きい場合、繊維間隔が狭くなり第1接着剤51が繊維シート3に含浸する量が少なくなる傾向がある。一方、繊維シート3の凹凸(具体的には平織りの凹凸)が大きくなるため、それを均すために多くの樹脂量を要する場合がある。そこで、上塗り剤である第2接着剤52の量を多くし、繊維シート3の凹凸を均すことで、裏面破壊の視認性を良好に確保することができる。
【0084】
なお、上記例では、繊維シート3の目付量を3段階で分けたが、これに限る趣旨では無く、2段階や4段階以上に分けてもよい。さらに、繊維シート3の表面の凹凸や厚みに応じて接着剤50(第1接着剤51、第2接着剤52)の塗布量を調整してもよい。
【0085】
<衝突エネルギーと破壊累積値>
本実施形態では、繊維シート3によって裏面12が補強済みの試験用コンクリート101の表面11に飛翔体2が衝突して、裏面破壊に至るまでの衝突エネルギーEAの累積値である破壊累積値ESを評価する。飛翔体2の衝突エネルギー(すなわち運動エネルギー)としてそれほど大きくない場合として、次の評価条件1~3の3通りの条件を想定する。
評価条件1:
飛翔体2の一回当たりの衝突エネルギーEAが0.1kJ以上7.0kJ未満であり、破壊累積値ESが7.0kJ以上である。
評価条件2:
飛翔体2の一回当たりの衝突エネルギーEAが0.5kJ以上1.5kJ未満であり、破壊累積値ESが15.0kJ以上である。
評価条件3:
飛翔体2の一回当たりの衝突エネルギーEAが3.0kJ以上4.0kJ未満であり、破壊累積値ESが25.0kJ以上である。
【0086】
評価条件1の場合:
飛翔体2が衝突して裏面破壊に至るまでの衝突エネルギーの累積値(すなわち破壊累積値ES)が7.0kJ以上である。すなわち、飛翔体2が複数回衝突したときに、破壊累積値ESが7.0kJ未満の場合には裏面破壊に至らない。破壊累積値ESが所定値以上の場合に、裏面破壊を考慮した一定強度を有するように、繊維シート3を裏面12に有するコンクリート1が施工されていると評価する。
破壊累積値ESの下限は好ましくは10kJ以上であり、より好ましくは15kJ以上である。破壊累積値ESの上限は特に限定は無いが、現実的な値として、50kJ以下であり、40kJ以下であってもよく、また30kJ以下であってもよい。例えば、想定される飛翔体2の運動エネルギー(衝突エネルギー)が小さい場合には、破壊累積値ESとして「7.0kJ以上」に設定する。また、火山等に近く飛翔体2の運動エネルギー(衝突エネルギー)が大きい場合や繰り返し衝突することが想定される場合には、「15kJ以上」に設定する。設定する破壊累積値ESに応じて、複数段階の評価ランクをつけるようにすることで、施工されるコンクリート構造物が、求められる強度を有するか否かを判断しやすくなる。
【0087】
評価条件2の場合:
飛翔体2が衝突して裏面破壊に至るまでの衝突エネルギーの累積値(すなわち破壊累積値ES)が15kJ以上である。すなわち、飛翔体2が複数回衝突したときに、破壊累積値ESが15kJ未満の場合には裏面破壊に至らない。破壊累積値ESが所定値以上の場合に、裏面破壊を考慮した一定強度を有するように、繊維シート3を裏面12に有するコンクリート1が施工されていると評価する。
破壊累積値ESの下限は好ましくは20kJ以上であり、より好ましくは25kJ以上である。破壊累積値ESの上限は特に限定は無いが、現実的な値として、50kJ以下であり、45kJ以下であってもよく、また40kJ以下であってもよい。例えば、想定される飛翔体2の運動エネルギー(衝突エネルギー)が小さい場合には、破壊累積値ESとして「15kJ以上」に設定する。また、火山等に近く飛翔体2の運動エネルギー(衝突エネルギー)が大きい場合や繰り返し衝突することが想定される場合には、「25kJ以上」に設定する。設定する破壊累積値ESに応じて、複数段階の評価ランクをつけるようにすることで、施工されるコンクリート構造物が、求められる強度を有するか否かを判断しやすくなる。
【0088】
評価条件3の場合:
飛翔体2が衝突して裏面破壊に至るまでの衝突エネルギーの累積値(すなわち破壊累積値ES)が25kJ以上である。すなわち、飛翔体2が複数回衝突したときに、破壊累積値ESが25kJ未満の場合には裏面破壊に至らない。破壊累積値ESが所定値以上の場合に、裏面破壊を考慮した一定強度を有するように、繊維シート3を裏面12に有するコンクリート1が施工されていると評価する。
破壊累積値ESの下限は好ましくは30kJ以上であり、より好ましくは35kJ以上である。破壊累積値ESの上限は特に限定は無いが、現実的な値として、50kJ以下であり、45kJ以下であってもよく、また40kJ以下であってもよい。例えば、想定される飛翔体2の運動エネルギー(衝突エネルギー)が小さい場合には、破壊累積値ESとして「25kJ以上」に設定する。また、火山等に近く飛翔体2の運動エネルギー(衝突エネルギー)が大きい場合や繰り返し衝突することが想定される場合には、「30kJ以上」に設定する。設定する破壊累積値ESに応じて、複数段階の評価ランクをつけるようにすることで、施工されるコンクリート構造物が、求められる強度を有するか否かを判断しやすくなる。
【0089】
上記の評価条件は、評価条件3が一番厳しく、次に評価条件2が厳しい。評価条件1は、3通りの評価条件のなかでは一番厳しくない条件となる。このように、評価条件の厳しさが異なる複数の指標を設けることで、適用する施設に応じてよりきめ細かい施工条件を提案できる。すなわち、施設の種類、施工位置および必要な耐久年数に応じて、要求される施工水準に過不足がない最適な施工条件を決定できる。
【0090】
<コンクリート裏面補強工法>
図3および
図4を参照して、コンクリート裏面補強工法を説明する。
図3はコンクリート裏面補強工法を示すフローチャートである。
図4はコンクリート裏面補強工法の各工程におけるコンクリート1への繊維シート3の取付工程(特に取付状態)を示す画像である。なお、
図4では、繊維シート3は裏面12だけでなく側面等にも取り付ける例を示している。
【0091】
本実施形態のコンクリート裏面補強工法は、部材準備工程S10と樹脂シート取付工程S20とを含む。
【0092】
部材準備工程S10:
部材準備工程S10は、コンクリート準備工程S11と、繊維シート準備工程S12とを含む。コンクリート準備工程S11と繊維シート準備工程S12の順は特に限定はしない。
【0093】
コンクリート準備工程S11は、繊維シート3を取り付ける対象のコンクリート1を準備する工程である。コンクリート1は、新設のコンクリート構造物であってもよいし、既設のコンクリート構造物であってもよい。このとき、コンクリート1の裏面12には、下地処理としてプライマーやパテ材により塗装されてもよい。プライマーやパテ材として第1接着剤51と同様の材料を用いることで、施工期間を短縮することができる。なお、当該下地処理は、後述する樹脂シート取付工程S20において行われてもよい。
【0094】
繊維シート準備工程S12は、コンクリート1に取り付ける繊維シート3を準備する工程である。繊維シート3は、上述したように、樹脂(すなわち接着剤50)を含浸させてプリプレグ化することが好ましい。
【0095】
樹脂シート取付工程S20:
樹脂シート取付工程S20は、コンクリート1の裏面12に繊維シート3を取り付ける工程であって、具体的には、下塗り材塗布工程S21と、繊維シート貼付工程S22と、上塗り材塗布工程S23とを含む。
【0096】
下塗り材塗布工程S21は、部材準備工程S10において準備された、コンクリート1の裏面12に、下塗り材として第1接着剤51を塗布する工程である。このとき、裏面12では、少なくとも繊維シート3が取り付けられる領域を覆うように第1接着剤51の塗膜が形成される。第1接着剤51の塗布量Aは、上述のように100g/m2以上1000g/m2以下が好ましく、繊維シート3の目付に応じて調整される。
【0097】
繊維シート貼付工程S22は、第1接着剤51の上から繊維シート3を貼りつける工程である。繊維シート3は、下塗り材である第1接着剤51の乾燥や硬化が完了する前に取り付けることが好ましい。これにより、繊維シート3を第1接着剤51の塗膜の上に適切に貼り付けることができる。
【0098】
上塗り材塗布工程S23は、コンクリート1に第1接着剤51により貼りつけられた繊維シート3の上に、上塗り材として第2接着剤52を塗布する工程である。具体的には、第1接着剤51および繊維シート3を覆うように上塗り材である第2接着剤52による塗布を行い、第2接着剤52の塗膜を形成させる。この工程は、施工期間の短縮の観点から、第1接着剤51の乾燥や硬化が完了する前に、繊維シート3の貼り付けと第2接着剤52の塗布までを終わらせることが好ましい。
【0099】
第2接着剤52の塗布量Bは、上述のように0g/m2以上1500g/m2以下であり、繊維シート3の目付やプリプレグ化の状態、第1接着剤51の塗布量Aに応じて調整される。第1接着剤51の塗布量Aと第2接着剤52の塗布量Bの比B/Aは0以上4.0以下になるように調整される。
【0100】
<裏面補強済みコンクリートの特性>
上記条件で製造された裏面補強済みコンクリート102は、次の実験条件で試験を行った場合に、裏面破壊が発生しない。換言すると、事前実験を行い、裏面破壊が発生しないように設計を行い、補強対象のコンクリート1に対して繊維シート3を上記工程により施工する。
【0101】
図5は、実験に用いる高圧空気式飛翔体発生装置90および裏面補強済みコンクリート102を示す図である。
図6は裏面補強済みコンクリート102を示す図である。
図7は高圧空気式飛翔体発生装置90からコンクリート1に向けて発射させる試験用飛翔体21(飛翔体2に相当)の図である。高圧空気式飛翔体発生装置90は、裏面補強済みコンクリート102に対して、空気圧で試験用飛翔体21を所定の速度まで加速させて衝突させるための装置である。
【0102】
図5に示すように、高圧空気式飛翔体発生装置90は、上流側から順に、空気圧縮器91と、エアチャンバー93と、発射管94と、跳ね返り防止冶具97とを有する。また、跳ね返り防止冶具97には、速度センサー95が取り付けられている。跳ね返り防止冶具97の前方には、裏面補強済みコンクリート102が反力壁80に固定されて配置されており、飛翔体2(高速飛翔体)が裏面補強済みコンクリート102の表面11の中心に垂直に衝突するようになっている。空気圧縮器91の最大容量は例えば4MPaである。
【0103】
空気圧縮器91(コンプレッサー)で圧縮された空気がエアチャンバー93に送り込まれ、試験用飛翔体21の設定速度に応じた圧力まで増圧される。増圧する前に、試験用飛翔体21をエアチャンバー93の飛翔体固定部98に油圧で設置する。エアチャンバー93の先端には発射管94が取り付けられ、設定の圧力まで圧縮された圧縮空気を所定のタイミング(実験者による操作や設定によるタイミング)により発射管94に供給する。
【0104】
発射管94は、試験用飛翔体21の外径より若干大きな内径(100mm)であって長さが2200mmであり、エアチャンバー93から導入された圧縮空気により、内部で試験用飛翔体21を所望の速度まで加速させて発射口96から発射させる。発射される試験用飛翔体21の速度は、速度センサー95により測定される。反力壁80にはロードセル81が設置されており、飛翔体2が衝突したときの荷重を測定することができる。
【0105】
図6は実験に用いられる裏面補強済みコンクリート102であり、
図6(a)は背面図、
図6(b)は
図6(a)のA-A断面図である。裏面補強済みコンクリート102は、試験用コンクリート101と、裏面12に取り付けられた繊維シート3とを有する。
【0106】
試験用コンクリート101の寸法は、1100mm×1100mm×150mmである。試験用コンクリート101の圧縮強度が30N/mm2である。飛翔体2の衝突後のコンクリート破片化を防止するために、D13鉄筋15を12本(1体)、鉄筋比0.57%(裏面指示具内で0.49%)で配筋している。試験用コンクリート101の周縁領域(繊維シート3が設けられていない領域)には、図示のように、表面11から裏面12へ貫通する貫通孔16が複数設けられている。貫通孔16は、裏面補強済みコンクリート102を反力壁80にネジ固定するために用いられる。
【0107】
試験用コンクリート101の裏面12には繊維シート3が接着剤50(第1接着剤51、第2接着剤52)により取り付けられている。取り付けられる繊維シート3の面積は830mm×830mmである。繊維シート3や接着剤50(第1接着剤51、第2接着剤52)として、上述した材料を用いることができる。
【0108】
図7に示すように、試験用飛翔体21は、ドーム形状に形成された先端部と、先端部を固定する円柱形状の胴体部とを有する。先端部は、合金工具鋼によって半径90mm、長さ55mmの寸法に形成されている。胴体部はジュラルミンによって長さ225mmに形成されている。試験用飛翔体21の質量は4.5kgである。
【0109】
試験用飛翔体21の発射速度、すなわち、コンクリート1に衝突させるときの飛翔体設定速度は、20m/s、40m/sの2種類である。
【0110】
高圧空気式飛翔体発生装置90を用いて裏面補強済みコンクリート102に対して試験用飛翔体21を3回衝突させたときに、いずれの飛翔体設定速度においても裏面破壊が発生しない場合に、飛翔体2の衝突に対して、求められる強度を有すると判断できる。
【0111】
<本実施形態のまとめ>
[1]
コンクリート1の一方の面(表面11)に飛翔体2の衝突によって前記一方の面(表面11)と反対側の他方の面(裏面12)が破壊される裏面破壊を防止するために、前記他方の面(裏面12)に繊維シート3を取り付けるコンクリート裏面補強工法であって、
前記コンクリート1の前記他方の面(裏面12)に前記繊維シート3を取り付ける樹脂シート取付工程S20は、前記コンクリート1の前記他方の面(裏面12)に第1接着剤51(下塗り材)を塗布する工程(下塗り材塗布工程S21)と、前記第1接着剤51の上から前記繊維シート3を貼りつける工程(繊維シート貼付工程S22)を含み、
試験用コンクリート101の前記他方の面(裏面12)に前記繊維シート3を取り付けた後に、前記一方の面(表面11)に前記飛翔体2が衝突して前記裏面破壊に至るまでの衝突エネルギーEAの累積値である破壊累積値ESが7.0kJ以上であり、前記飛翔体2の一回当たりの衝突エネルギーEAが0.1kJ以上7.0kJ未満であり、
前記試験用コンクリート101は、タテ1100mm×ヨコ1100mm×厚さ150mmの形状を呈しており、その圧縮強度が24N/mm2以上である、
コンクリート裏面補強工法。
[2]
前記樹脂シート取付工程S20は、さらに、前記コンクリート1の裏面12に前記第1接着剤により取り付けた前記繊維シート2の上に第2接着剤(上塗り材)を塗布する工程(上塗り材塗布工程S23)を含む、[1]に記載のコンクリート裏面補強工法。
[3]
前記第1接着剤と前記第2接着剤は、(メタ)アクリル樹脂系接着剤およびエポキシ系樹脂の少なくとも一方を含む、[2]に記載のコンクリート裏面補強工法。
[4]
前記第1接着剤の塗布量Aは100g/m2以上1000g/m2以下であり、
前記第2接着剤の塗布量Bは0g/m2以上1500g/m2以下である、[2]または[3]に記載のコンクリート裏面補強工法。
[5]
前記第1接着剤の塗布量であるAkg/m2と、前記第2接着剤の塗布量であるBkg/m2と、の比B/Aは0以上4.0以下である、[2]~[4]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[6]
前記繊維シート3の目付が50g/m2以上1000g/m2以下である、[1]~[5]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[7]
前記繊維シート3は、繊維が互いに異なる2つの軸方向のそれぞれに沿って配置された2方向シート、または、繊維が1つの軸方向に沿って配置された2枚の一方向シートが、前記軸方向が互いに交わるように積層された積層シートを含む、[1]~[6]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[8]
前記繊維シート3は、アラミド繊維シートである、[1]~[7]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[9]
前記破壊累積値が10kJ以上である、[1]~[8]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[10]
高圧空気式飛翔体発生装置を用いて下記実験条件のもとで前記規格化したコンクリート1に対して飛翔体2を3回衝突させたときに裏面破壊が発生しない、[1]~[9]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
実験条件:
・装置:高圧空気式飛翔体発生装置(防衛大学校)
・コンクリート供試体(規格化したコンクリート):1100mm×1100mm×150mm
・飛翔体質量:4.5kg (Φ90mm)
・飛翔体設定速度:20m/s、40m/s
[11]
前記飛翔体2の一回当たりの衝突エネルギーが0.5kJ以上1.5kJ未満であり、
前記破壊累積値が15.0kJ以上である、[1]~[10]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[12]
前記飛翔体2の一回当たりの衝突エネルギーが3.0kJ以上4.0kJ未満であり、
前記破壊累積値が25.0kJ以上である、[1]~[10]までのいずれか1に記載のコンクリート裏面補強工法。
[1]~[12]のいずれか一項に記載のコンクリート裏面補強工法を用いて補強されたコンクリート構造物(裏面補強済みコンクリート102)。
【実施例0112】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0113】
上述の
図5~7で説明した、高圧空気式飛翔体発生装置および裏面補強済みコンクリート(実施例1~6)および裏面補強をしないコンクリート(比較例1~3)をコンクリート供試体として準備し、飛翔体2を回衝突させ、裏面破壊に至るまでの衝突回数およびそのときの裏面の状態を観察する実験を行った。
【0114】
実験条件の概要は次の通りである。なお、実施形態では、飛翔体設定速度として20m/sと40m/sの2種類を説明した。本実施例では、参考例として比較例3に飛翔体設定速度60m/sの実験を行った。
・装置:高圧空気式飛翔体発生装置(防衛大学校)
・コンクリート供試体:1100mm×1100mm×150mm、28日圧縮強度30N/mm2(JIS A 1108:2018に準拠し測定)
・繊維シート面積:830mm×830mm
・飛翔体質量:4.5kg
・飛翔体設定速度: 20m/s(実施例1~3、比較例1)
40m/s(実施例4~6、比較例2)
60m/s(比較例3)
【0115】
実施例1~6では上記コンクリート供試体に補強用の繊維シートを取りつけた。比較例1~3ではコンクリート供試体をそのまま用いた。実施例1~6に用いた繊維シートの仕様(試験水準(繊維シート補強))は表1の通りである。
繊維シートとして、目付量が異なる3種類(180g/m2、330g/m2、650g/m2)の2方向アラミド繊維シートを用いた。表2に2方向アラミド繊維シートの種類毎の、目付量、プライマー、塗布量および接着剤塗布量(下塗/上塗)を示している。
プライマーとして、2液型アクリル系樹脂接着剤(製品名:デンカDK550-003、デンカ社製)を用いた。
接着剤として、2液型アクリル系樹脂接着剤(製品名:デンカアクリセーブK、デンカ社製)を用いた。
【0116】
【0117】
実施例1~6の裏面補強済みコンクリートのコンクリート供試体は、
図3および
図4により説明したコンクリート裏面補強工法により準備した。
具体的には、まず、下地処理としてコンクリート供試体に対してケレン処理を施し、コンクリート供試体の素地調整をおこなった。つづいて、コンクリート供試体の繊維シートが貼り付けられる領域にプライマーを塗布した。
その後、実施例1~6に対応するそれぞれの繊維シートを、プライマーが塗布されている領域に貼り付け、所定時間養生した。
【0118】
得られた裏面補強済みコンクリート(実施例1~6)および裏面補強をしないコンクリート(比較例1~3)を試験体として、上述の高圧空気式飛翔体発生装置を用いて飛翔体を試験体に衝突させて裏面剥離が生じる衝突回数および累積運動エネルギーを算出した。
【0119】
結果を表3に示す。また、
図10に実施例1~3の最終衝突回数後の裏面の状態を画像で示す。
図11に実施例4~6の最終衝突回数後の裏面の状態を画像で示す。
【0120】
実施例1~6の試験体について、繊維シート補強により裏面剥離を防止できることが確認できた。比較例1~3では、繊維シート補強がなく、裏面剥離が確認された。
【0121】
なお、実施例1~6は、全ての試験体において、衝突回数を増加させても繊維シートが破断・はく離せず、シート中央部が膨れる結果となった。これは、飛翔体を複数回衝突させたときに、試験体から飛翔体が抜けなくなり、実験を継続できなくなるおそれがあると判断されたときに、以降の実験を中断したためである。
このため、裏面剥離限界エネルギーは直接的に算出できなかったが、次の衝突において繊維シートの破断・はく離が発生する蓋然性が高いと判断し、中断時までの累積運動エネルギーを評価する値として採用した。
また、比較例1~3の累積運動エネルギーは、比較例1で6.3kJ、比較例2で7.2kJ、比較例3で8.1kJであったが、比較例2および比較例3の1回当たりの衝突エネルギーが3.6kJと8.1kJであり、衝突回数が1回増えたときの累積運動エネルギーの増加量を考慮すると、裏面剥離が生じたときの累積運動エネルギーは7kJ未満と推定された。
【表3】
前記樹脂シート取付工程は、さらに、前記コンクリートの裏面に前記第1接着剤により取り付けた前記繊維シートの上に第2接着剤を塗布する工程を含む、請求項1に記載のコンクリート裏面補強工法。
前記第1接着剤と前記第2接着剤は、(メタ)アクリル樹脂系接着剤およびエポキシ樹脂系接着剤の少なくとも一方を含む、請求項2に記載のコンクリート裏面補強工法。
前記繊維シートは、繊維が互いに異なる2つの軸方向のそれぞれに沿って配置された2方向シート、または、繊維が1つの軸方向に沿って配置された2枚の一方向シートが、前記軸方向が互いに交わるように積層された積層シートを含む、請求項1~3までのいずれか1項に記載のコンクリート裏面補強工法。
高圧空気式飛翔体発生装置を用いて下記実験条件のもとで前記繊維シートが取り付けられた前記試験用コンクリートに対して飛翔体を3回衝突させたときに裏面破壊が発生しない、請求項1~3までのいずれか1項に記載のコンクリート裏面補強工法。
実験条件:
・装置:高圧空気式飛翔体発生装置
・飛翔体質量:4.5kg (Φ90mm)
・飛翔体設定速度:20m/s、40m/s