IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッドの特許一覧

特開2025-10065多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法
<>
  • 特開-多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法 図1
  • 特開-多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法 図2
  • 特開-多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法 図3A
  • 特開-多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法 図3B
  • 特開-多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法 図4
  • 特開-多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法 図5
  • 特開-多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法 図6
  • 特開-多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法 図7
  • 特開-多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法 図8
  • 特開-多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法 図9
  • 特開-多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法 図10
  • 特開-多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010065
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】多電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の相殺、並びにECG深さ及び径方向レンズを作成する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/287 20210101AFI20250109BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20250109BHJP
【FI】
A61B5/287 200
A61B5/367
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024106035
(22)【出願日】2024-07-01
(31)【優先権主張番号】63/523,976
(32)【優先日】2023-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/756,903
(32)【優先日】2024-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
(72)【発明者】
【氏名】リアット・ツォレフ
(72)【発明者】
【氏名】アビ・シャルギ
(72)【発明者】
【氏名】ハイム・ロドリゲス
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG10
4C127HH13
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】心筋組織内の様々な深さにおける心内ECG(IECG)信号を分離させるための電気解剖学的マッピングシステムを提供すること。
【解決手段】電気的活動の心電図(ECG)の深さを決定するための方法及びシステムの実施形態。カテーテルの複数の電極からの電気的活動を受信して、電気的活動内で、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別する。いくつかの実施形態では、複数の電極のうちの各電極について、電気的活動の空間電極信号分析が実施され得る。いくつかの実施形態では、電気的活動内の信号成分の線形結合及び/又は非線形結合が計算され得る。いくつかの実施形態では、ニューラルネットワークに、電気信号が提供され得、ニューラルネットワークが複数の電極のうちの少なくとも1つについて、最も近い活性化までの推定距離を決定し得る。表示のために、心臓組織内の指定の深さにおける識別された電気信号の視覚化が提供され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
マッピングエンジンのソフトウェアを記憶するメモリと、
1つ又は2つ以上のプロセッサであって、前記マッピングエンジンを実行して、
カテーテルの複数の電極からの電気的活動を受信して、
前記電気的活動内で、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別するように構成された、1つ又は2つ以上のプロセッサと、を含む、システム。
【請求項2】
前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、前記電気的活動内で、前記心臓組織の心内膜表面から発生している電気信号を識別するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、前記複数の電極のうちの各電極について、前記電気的活動の空間電極信号分析を実施するように更に構成されており、
心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することが、前記電気的活動内の各信号成分に、訓練済みモデルを介して決定された対応する重みを乗算することを更に含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の前記信号成分の非線形結合を計算することを更に含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、ニューラルネットワークへの入力として、前記複数の電極からの前記電気的活動を提供し、前記ニューラルネットワークを介して、前記複数の電極のうちの少なくとも1つについて、対応する電極から最も近い活性化までの推定距離を決定するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、前記複数の電極の各々について、数学モデル及び前記複数の電極の既知の電極位置を適用して、各既知の電極位置における期待信号を計算するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
受信された前記電気的活動が、前記複数の電極からのリアルタイム心電図(ECG)読み取り値を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、シミュレートされたECGデータで訓練された機械学習モデルを実行するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、前記心臓組織内の指定の深さにおける識別された前記電気信号の視覚的表示を生成するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
方法であって、
1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されるマッピングエンジンによって、カテーテルの複数の電極からの電気的活動を受信することと、
前記電気的活動内で、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記電気的活動内で、前記心臓組織の心内膜表面から発生している電気信号を識別することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マッピングエンジンによって、前記複数の電極のうちの各電極について、前記電気的活動の空間電極信号分析を実施することを更に含み、
心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することが、前記電気的活動内の各信号成分に、訓練済みモデルを介して決定された対応する重みを乗算することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の前記信号成分の非線形結合を計算することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、ニューラルネットワークへの入力として、前記複数の電極からの前記電気的活動を提供することと、前記ニューラルネットワークを介して、前記複数の電極のうちの少なくとも1つについて、対応する電極から最も近い活性化までの推定距離を決定することと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記複数の電極の各々について、数学モデル及び前記複数の電極の既知の電極位置を適用して、各既知の電極位置における期待信号を計算することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
受信された前記電気的活動が、前記複数の電極からのリアルタイム心電図(ECG)読み取り値を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、シミュレートされたECGデータで訓練された機械学習モデルを実行することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記マッピングエンジンによって、前記心臓組織内の指定の深さにおける識別された前記電気信号の視覚的表示を生成することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月13日に出願された米国仮出願第63/288,966号の優先権を主張する、2022年12月1日に出願された「Intracardiac Unipolar Far Field Cancelation Using Multiple Electrode Catheters」と題する米国特許出願第18/072,793号の一部継続としての優先権の利益を主張するものであり、2023年6月29日に出願された「Intracardiac Unipolar Far Field Cancelation Using Multiple Electrode Catheters and Methods for Creating an ECG Depth and Radial Lens」と題する米国仮出願第63/523,976号の優先権も主張するものである。上述した出願の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本明細書のシステム及び方法は、概して、心臓電気生理学の分野に関するものであり、より具体的には、心筋組織内の様々な深さにおける心内ECG(intracardiac ECG、IECG)信号を分離させるための電気解剖学的マッピングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
一般に、従来の心臓マッピングは、心臓の三次元マップを生成するコンピュータ処理動作である。医療専門家は、不整脈の正確な源の場所を決定するために、又は心房細動(atrial fibrillation、aFib)を治療するための心臓アブレーションなどの医療処置を実施するときに、三次元マップを使用することができる。
【0004】
一例として、従来の心臓マッピングでは、心臓の三次元マップは、医療専門家(例えば、医師)が、カテーテルが心臓内に入るまで、患者の血管を通してカテーテルを案内するときに作成される。カテーテルが電気的活動を感知し、コンピュータ処理動作がその電気的活動を分析して心臓の三次元マップを生成する。従来の心臓マッピングに関する問題は、遠方場信号が電気的活動内の局所場信号をマスクするか、又は局所場信号に干渉することである。更に、従来のコンピュータ処理動作は、遠方場信号の対処には適していない。例えば、コンピュータ処理動作は、全ての遠方場信号がカテーテルの全ての電極上で同一であると仮定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠方場からの干渉を低減又は相殺しながら、カテーテルからの電気的活動を抽出して分析するためのシステム及び方法が必要である。
【0006】
加えて、心臓アブレーション処置中に収集された心内ECGは、二次元であり、心内組織の表面だけの電気的活動/電圧を反映する。心筋組織の表面下(例えば、心組織内の0.5~10mmの深さ)の電気伝導を反映するECG信号を三次元で識別及び視覚化する手段の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例示的な実施形態、方法、及びシステムが提供される。これらの方法を実行する方法及びシステムは、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されるマッピングエンジンによって実装され得る。本方法は、カテーテルの複数の電極からの電気的活動を受信することと、電気的活動内で、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することと、を含み得る。本方法は、複数の電極のうちの各電極について、電気的活動の空間電極信号分析を実施することと、電気的活動内の信号成分の線形結合及びいくつかの実施形態では非線形結合を実施することと、を含み得る。いくつかの実施形態では、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することは、ニューラルネットワークへの入力として、複数の電極からのリアルタイムECG読み取り値を受信することと、ニューラルネットワークによって、複数の電極のうちの少なくとも1つについて、最も近い活性化までの推定距離を決定することと、を含み得る。いくつかの実施形態では、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することは、複数の電極の各々について、数学モデル及び複数の電極の既知の電極位置を適用して、各既知の電極位置における期待信号を計算することを含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、心臓組織内の指定の深さにおける識別された電気信号をディスプレイ上に視覚化することを含み得る。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、上記の例示的な方法は、装置、システム、及び/又はコンピュータプログラム製品として実装され得る。
【0008】
いくつかの態様では、本開示は、方法を対象とするものである。本方法は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されるマッピングエンジンによって、カテーテルの複数の電極からの電気的活動を受信することと、電気的活動内で、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することと、を含む。いくつかの実装形態では、本方法は、電気的活動内で、心臓組織の心内膜表面から発生している電気信号を識別することを含む。いくつかの実装形態では、本方法は、マッピングエンジンによって、複数の電極のうちの各電極について、電気的活動の空間電極信号分析を実施することを含み、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することは、電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することを含む。更なる実装形態では、本方法は、電気的活動内の各信号成分に、訓練済みモデルを介して決定された対応する重みを乗算することによって、電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することを含む。別の更なる実装形態では、本方法は、電気的活動内の信号成分の非線形結合を計算することによって、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することを含む。
【0009】
いくつかの実装形態では、本方法は、ニューラルネットワークへの入力として、複数の電極からの電気的活動を提供することによって、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することと、ニューラルネットワークを介して、複数の電極のうちの少なくとも1つについて、対応する電極から最も近い活性化までの推定距離を決定することと、を含む。
【0010】
いくつかの実装形態では、本方法は、複数の電極の各々について、数学モデル及び複数の電極の既知の電極位置を適用して、各既知の電極位置における期待信号を計算することによって、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することを含む。いくつかの実装形態では、受信された電気的活動は、複数の電極からのリアルタイム心電図(electrocardiogram、ECG)読み取り値を含む。いくつかの実装形態では、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することは、シミュレートされたECGデータで訓練された機械学習モデルを実行することを含む。いくつかの実装形態では、本方法は、マッピングエンジンによって、心臓組織内の指定の深さにおける識別された電気信号の視覚的表示を生成することを含む。
【0011】
別の態様では、本開示は、システムであって、マッピングエンジンのソフトウェアを記憶するメモリと、1つ又は2つ以上のプロセッサであって、マッピングエンジンを実行して、カテーテルの複数の電極からの電気的活動を受信して、電気的活動内で、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別するように構成された、1つ又は2つ以上のプロセッサと、を含む、システムを対象とする。
【0012】
いくつかの実装形態では、1つ又は2つ以上のプロセッサは、電気的活動内で、心臓組織の心内膜表面から発生している電気信号を識別するように更に構成されている。いくつかの実装形態では、1つ又は2つ以上のプロセッサは、複数の電極のうちの各電極について、電気的活動の空間電極信号分析を実施するように更に構成されており、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することは、電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することを含む。更なる実装形態では、電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することは、電気的活動内の各信号成分に、訓練済みモデルを介して決定された対応する重みを乗算することを含む。別の更なる実装形態では、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することは、電気的活動内の信号成分の非線形結合を計算することを含む。
【0013】
いくつかの実装形態では、1つ又は2つ以上のプロセッサは、ニューラルネットワークへの入力として、複数の電極からの電気的活動を提供し、ニューラルネットワークを介して、複数の電極のうちの少なくとも1つについて、対応する電極から最も近い活性化までの推定距離を決定するように更に構成されている。いくつかの実装形態では、1つ又は2つ以上のプロセッサは、複数の電極の各々について、数学モデル及び複数の電極の既知の電極位置を適用して、各既知の電極位置における期待信号を計算するように更に構成されている。いくつかの実装形態では、受信された電気的活動は、複数の電極からのリアルタイム心電図(ECG)読み取り値を含む。いくつかの実装形態では、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することは、シミュレートされたECGデータで訓練された機械学習モデルを実行することを含む。
【0014】
別の態様では、本開示は、方法を対象とする。本方法は、1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)によって実行されるマッピングエンジン(101)によって、カテーテル(14)の複数の電極(26)からの電気的活動を受信することと、電気的活動内で、心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することと、を含む。いくつかの実装形態では、本方法は、電気的活動内で、心臓組織(12)の心内膜表面から発生している電気信号を識別することを含む。いくつかの実装形態では、本方法は、マッピングエンジン(101)によって、複数の電極(26)のうちの各電極(26)について、電気的活動の空間電極信号分析を実施することを含み、心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することは、電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することを含む。更なる実装形態では、電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することは、電気的活動内の各信号成分に、訓練済みモデルを介して決定された対応する重みを乗算することを含む。別の更なる実装形態では、心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することは、電気的活動内の信号成分の非線形結合を計算することを含む。
【0015】
いくつかの実装形態では、心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することは、ニューラルネットワークへの入力として、複数の電極(26)からの電気的活動を提供することと、ニューラルネットワークを介して、複数の電極(26)のうちの少なくとも1つについて、対応する電極(26)から最も近い活性化までの推定距離を決定することと、を含む。いくつかの実装形態では、心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することは、複数の電極(26)のうちの各電極(26)について、数学モデル及び複数の電極(26)の既知の電極位置を適用して、各既知の電極位置における期待信号を計算することを含む。
【0016】
いくつかの実装形態では、受信された電気的活動は、複数の電極(26)からのリアルタイム心電図(ECG)読み取り値を含む。いくつかの実装形態では、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することは、シミュレートされたECGデータで訓練された機械学習モデルを実行することを含む。いくつかの実装形態では、本方法は、マッピングエンジン(101)によって、心臓組織(12)内の指定の深さにおける識別された電気信号の視覚的表示(20)を生成することを含む。
【0017】
別の態様では、本開示は、システムであって、マッピングエンジン(101)のソフトウェアを記憶するメモリ(62)と、1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)であって、マッピングエンジン(101)を実行して、カテーテル(14)の複数の電極(26)からの電気的活動を受信して、電気的活動内で、心臓組織(12)内の深さ(802)から発生している電気信号を識別するように構成された、1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)と、を含む、システムを対象とする。
【0018】
いくつかの実装形態では、1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)は、電気的活動内で、心臓組織(12)の心内膜表面から発生している電気信号を識別するように更に構成されている。いくつかの実装形態では、1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)は、複数の電極(26)のうちの各電極(26)について、電気的活動の空間電極信号分析を実施するように更に構成されており、心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することは、電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することを含む。更なる実装形態では、電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することは、電気的活動内の各信号成分に、訓練済みモデルを介して決定された対応する重みを乗算することを含む。別の更なる実装形態では、心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することは、電気的活動内の信号成分の非線形結合を計算することを含む。
【0019】
いくつかの実装形態では、1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)は、ニューラルネットワークへの入力として、複数の電極(26)からの電気的活動を提供し、ニューラルネットワークを介して、複数の電極(26)のうちの少なくとも1つについて、対応する電極(26)から最も近い活性化までの推定距離を決定するように更に構成されている。いくつかの実装形態では、1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)は、複数の電極(26)のうちの各電極(26)について、数学モデル及び複数の電極(26)の既知の電極位置を適用して、各既知の電極位置における期待信号を計算するように更に構成されている。
【0020】
いくつかの実装形態では、受信された電気的活動は、複数の電極(26)からのリアルタイム心電図(ECG)読み取り値を含む。いくつかの実装形態では、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することは、シミュレートされたECGデータで訓練された機械学習モデルを実行することを含む。いくつかの実装形態では、1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)は、心臓組織(12)内の指定の深さにおける識別された電気信号の視覚的表示(20)を生成するように更に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
より詳細な理解は、添付の図面と併せて例として示される以下の説明から得ることができ、図中の同様の参照番号は、同様の要素を示す。
図1】1つ又は2つ以上の実施形態によって、本開示の主題の1つ又は2つ以上の特徴を実装することができる例示的なシステムの図を示す。
図2】1つ又は2つ以上の実施形態によるシステムの図を示す。
図3A】1つ又は2つ以上の実施形態による方法を示す。
図3B】1つ又は2つ以上の実施形態によるグラフを示す。
図4】1つ又は2つ以上の実施形態による方法を示す。
図5】1つ又は2つ以上の実施形態による例示的なカテーテルを示す。
図6】1つ又は2つ以上の実施形態による例示的なカテーテルを示す。
図7】1つ又は2つ以上の実施形態による方法を示す。
図8】1つ又は2つ以上の実施形態による、電極の場所からの異なる距離における電気的活性化信号を識別するように構成された例示的なシステムの例示的なカテーテルを示す。
図9】1つ又は2つ以上の実施形態による、多電極マッピングカテーテルから収集されたECG情報を使用して、心臓の組織内のある距離(例えば、深さ)における電気信号を分離させるための例示的な方法を示す。
図10】1つ又は2つ以上の実施形態による、多電極マッピングカテーテルから収集されたECG情報を使用して、心臓の組織内のある距離(例えば、深さ)における電気信号を分離させるための代替的な例示的な方法を示す。
図11】1つ又は2つ以上の実施形態による、多電極マッピングカテーテルから収集されたECG情報を使用して、心臓の組織内のある距離(例えば、深さ)における電気信号を分離させるための別の代替的な例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書のシステム及び方法は、一般に、信号処理に関する。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、本明細書のシステム及び方法は、複数の電極カテーテルを使用した、心内単極遠方場の低減又は相殺を提供する。一例として、本明細書のシステム及び方法は、マッピングエンジンに関して説明される。
【0023】
マッピングエンジンは、医療デバイス機器によるプロセス動作及び医療デバイス機器のハードウェアの処理に必然的に基づいたプロセッサ実行可能コード又はソフトウェアとして実装することができる。説明を簡単にするために、マッピングエンジンは、心臓をマッピングすることに関して本明細書で説明されるが、しかしながら、任意の解剖学的構造、身体部分、器官、又はその一部分を、本明細書に記載されるマッピングエンジンによるマッピングの標的とすることができる。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、マッピングエンジンは、全ての遠方場信号が全ての電極上で同じであるという従来の心臓マッピングの仮定を不要にする。従来の心臓マッピングとは対照的に、マッピングエンジンは、遠方場信号は同様であるが全く同じでない、という新しい仮定をインテリジェントに実装している。その結果、マッピングエンジンは、電極間共通の信号成分を識別するために、距離に反比例して電極に加重する。この共通信号成分は、遠方場の干渉を正確に低減又は相殺するために、マッピングエンジンによって使用される。マッピングエンジンによって遠方場の干渉を低減又は相殺することは、改善された心臓マッピングのためのよりクリーンな近接場信号を生成する。追加的又は代替的に、いくつかの実施形態では、マッピングエンジンは、距離に反比例して電極に加重することによって生成された情報を使用して、心筋組織内の深さを含む、電極から特定の距離において放射された信号を識別し得る。
【0024】
マッピングエンジンの1つ又は2つ以上の利点、技術的効果、及び/又は利益としては、遠方場の干渉を除去すること、並びに電極距離及び方向歪みなどのそれらの不利点であることが知られている双極信号の必要性に代わる、単極信号から純粋な局所活動(例えば、特に非常に複雑なマッピングの場合)を推定することを挙げることができる。したがって、特に単極信号を利用及び変換することによって、マッピングエンジンは、分析される電極の数を2倍にして、空間挙動解像度を獲得又は向上させる。追加的に、後期活性化の場合、マッピングエンジンはまた、持続的なaFibの近接-遠位場信号を除去して、aFibの標的の検出を高めることもできる。
【0025】
追加の利点、技術的効果、及び/又は利益としては、電気解剖学的マッピングシステム(本明細書では相互交換可能に「心臓マッピング」システムと称される)において、心筋組織内の心臓の内面下(例えば、心組織内の0.5~10mmの深さ)の電気的活動を三次元で識別及び/又は視覚化する能力を可能にすることが挙げられる。更に、心筋組織内の深さ及び場所別に電気的活動を識別することによって、電気解剖学的モデルの異なる深さにおける電気的マップ(「マップ」とも称される)の構築された層若しくは「シェル」表面が挙げられるが、これらに限定されない、様々な様式で、対応するECG情報が電気解剖学的マッピングシステムのユーザに提示され得、及び/又は医師若しくはシステム操作者が、組織内の選択可能な深さのECG波形を視認することを可能にする。心筋組織内の電気的活動の識別、分離、及び/又は視覚化を可能にする、本明細書に記載された方法及びシステムによって可能になる新規な能力は、ECG深さ及び径方向レンズの作成として説明され得る。
【0026】
図1は、本明細書の主題の1つ又は2つ以上の特徴を1つ又は2つ以上の実施形態に従って実装することができる、システム10として示される例示的なシステム(例えば、医療デバイス機器及び/又はカテーテルベースの電気生理学的マッピング及びアブレーション)の図である。システム10の全部又は一部は、情報(例えば、生体測定データ及び/又は訓練データセット)を収集するために使用することができ、かつ/又は本明細書に記載されるようにマッピングエンジン101を実装するために使用することができる。システム10は、図示されるように、レコーダ11と、心臓12と、カテーテル14と、モデル又は解剖学的マップ20と、電位図21と、スプライン22と、患者23と、医師24(又は医療専門家若しくは臨床医)と、場所パッド25と、電極26と、ディスプレイデバイス27と、遠位先端部28と、センサ29と、コイル32と、患者インターフェースユニット(patient interface unit、PIU)30と、電極皮膚パッチ38と、アブレーションエネルギー発生器50と、ワークステーション55(少なくとも1つのプロセッサ61と、その内部でマッピングエンジン101を記憶する少なくとも1つのメモリ62とを含む)とを含む。システム10の各要素及び/又はアイテムは、その要素及び/又はそのアイテムのうちの1つ又は2つ以上の代表であることに留意されたい。図1に示されるシステム10の例を変形して、本明細書に開示される実施形態を実装することができる。本開示の実施形態も、他のシステム構成要素及び設定を使用して、同様に適用することができる。追加的に、システム10は、電気的活動及び/又は生理学的信号を感知するための要素、有線又は無線コネクタ、処理デバイス及びディスプレイデバイスなどの、付加的な構成要素を含んでもよい。
【0027】
システム10は、患者23の血管系を通じて、心臓12の心腔又は血管構造内に医師24によって経皮的に挿入される複数のカテーテル14を含む。典型的には、送達シースカテーテル(カテーテル14の一例である)は、心臓12内の所望の場所付近の左心房又は右心房に挿入される。その後、複数のカテーテル14を送達シースカテーテルに挿入して、所望の場所に到達させることができる。複数のカテーテル14は、心内電位図(Intracardiac Electrogram、IEGM)信号の感知専用のカテーテル、アブレーション専用のカテーテル、及び/又は感知及びアブレーションの両方に専用のカテーテルを含み得る。IEGMを感知するように構成された例示的なカテーテル14が本明細書に示されている。医師24は、心臓12の標的部位を感知するために、カテーテル14の遠位先端部28を心臓壁と接触させる。アブレーションのために、医師24は、同様に、アブレーションカテーテルの遠位端をアブレーションのための標的部位に運ぶ。
【0028】
カテーテル14は、遠位先端部28において複数のスプライン22にわたって任意選択的に分布し、IEGM信号を感知するように構成された1つ、好ましくは複数の電極26を含む例示的なカテーテルである。カテーテル14は、遠位先端部28の位置及び配向を追跡するために、遠位先端部28内又はその近くに埋め込まれたセンサ29を追加的に含んでもよい。任意選択的にかつ好ましくは、位置センサ29は、三次元(three-dimensional、3D)位置及び配向を感知するための3つの磁気コイルを含む磁気ベースの位置センサである。
【0029】
センサ29(例えば、位置ベース又は磁気ベースの位置センサ)は、所定の作業体積内に磁場を生成するように構成された複数の磁気コイル32を含む場所パッド25とともに動作してもよい。カテーテル14の遠位先端部28のリアルタイム位置は、場所パッド25によって生成され、センサ29によって感知される磁場に基づいて追跡されてもよい。磁気ベースの位置感知技術の詳細は、米国特許第5,5391,199号、同第5,443,489号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、同第6,239,724号、同第6,332,089号、同第6,484,118号、同第6,618,612号、同第6,690,963号、同第6,788,967号、同第6,892,091号、に記載されている。
【0030】
システム10は、場所パッド25の場所参照及び電極26のインピーダンスベースの追跡を確立するために、皮膚接触のために患者23上に配置された1つ又は2つ以上の電極パッチ38を含む。インピーダンスベースの追跡のために、電流が電極26に向けられ、パッチ38において感知され、それにより、各電極の場所をパッチ38を介して三角測量することができる。インピーダンスベースの場所追跡技術の詳細は、米国特許第7,536,218号、同第7,756,576号、同第7,848,787号、同第7,869,865号及び同第8,456,182号に記載され、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
レコーダ11は、電極18(例えば、体表面心電図(ECG)電極)で捕捉された電位図21と、カテーテル14の電極26で捕捉されたIEGMと、を表示する。レコーダ11は、心拍リズムをペーシングするためのペーシング能力を含んでもよく、及び/又は独立型ペーサに電気的に接続されてもよい。
【0032】
システム10は、アブレーションするように構成されたカテーテル14の遠位先端部28にある1つ又は2つ以上の電極26にアブレーションエネルギーを伝達するように適合されたアブレーションエネルギー発生器50を含んでもよい。アブレーションエネルギー発生器50によって生成されるエネルギーは、不可逆エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)もたらすために使用され得るような単極又は双極高電圧DCパルスを含む、無線周波数(radiofrequency、RF)エネルギー若しくはパルス場アブレーション(pulsed-field ablation、PFA)エネルギー、又はこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。PIU30は、カテーテルと、電気生理学的機器と、電源と、システム10の動作を制御するワークステーション55との間の電気通信を確立するように構成されたインターフェースである。システム10の電気生理学的機器は、例えば、複数のカテーテル14、場所パッド25、体表面ECG電極18、電極パッチ38、アブレーションエネルギー発生器50、及びレコーダ11を含んでもよい。任意選択的に、かつ好ましくは、PIU30は、カテーテルの場所のリアルタイム計算を実装し、ECG計算を実施するための処理能力を追加的に含む。
【0033】
ワークステーション55は、本明細書で更に説明されるように、メモリ62と、適切なオペレーティングソフトウェアがロードされたメモリ62又は記憶装置を有するプロセッサユニット61と、ユーザインターフェース機能とを含む。ワークステーション55は、任意選択的に、(1)心内膜解剖学的構造を三次元(3D)でモデリングし、モデル又は解剖学的マップ20をディスプレイデバイス27上に表示するためにレンダリングすることと、(2)記録された電位図21からコンパイルされた活性化シーケンス(又は他のデータ)を、レンダリングされた解剖学的マップ20上に重ね合わされた代表的な視覚的指標又は画像でディスプレイデバイス27上に表示することと、(3)心腔内の複数のカテーテルのリアルタイム場所及び配向を表示することと、(5)アブレーションエネルギーが印加された場所などの関心部位をディスプレイデバイス27上に表示することと、を含む、複数の機能を提供してもよい。システム10の要素を具現化する1つの市販製品は、Biosense Webster,Inc.,31A Technology Drive,Irvine,CA 92618から入手可能なCARTO(登録商標)3システムとしてから入手可能である。
【0034】
システム10は、(例えば、マッピングエンジン101を使用して)心臓の状態を検出、診断、及び/又は治療するために利用することができる。心不整脈などの心臓の状態は、特に老年人口において一般的かつ危険な医学的疾患として根強く残っている。例えば、システム10は、生体測定データ(例えば、心臓12など本明細書に記載されるような患者の器官の解剖学的及び電気的測定値)を取得し、心臓アブレーション処置を実施するように構成された外科用システム(例えば、Biosense Websterより販売されているCARTO(登録商標)システム)の一部とすることができる。より詳細には、心不整脈などの心臓の状態の治療では、心臓組織、心腔、静脈、動脈、及び/又は電気的経路の詳細なマッピングを得ることがしばしば求められる。例えば、(本明細書に記載されるような)カテーテルアブレーションを成功裏に実施するための前提条件として、心不整脈の原因が心臓12の心腔において正確に位置特定されることがある。このような位置特定は、電気生理学的検査によって行われて、その調査の間に、心臓12の心腔内に導入されたマッピングカテーテル(例えば、カテーテル14)によって空間的に分解された電位を検出することができる。この電気生理学的検査、いわゆる電気解剖学的マッピングは3Dマッピングデータを提供し、これをディスプレイデバイス27上に表示することができる。多くの場合、マッピング機能及び治療機能(例えば、アブレーション)は単一のカテーテル又は一群のカテーテルによって提供され、マッピングカテーテルはまた、同時に治療(例えば、アブレーション)カテーテルとしても動作する。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、マッピングエンジン101は、カテーテル14によって直接記憶及び実行することができる。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、マッピングエンジン101は、心電計及び/又は心内電位図(electrocardiograph and/or an intracardiac electrogram、ECG/ICEG)を実施する。ECG/ICEGは、複数の電極18及び電極26の生理学的信号(例えば、ICEGでは、電極26のうちの少なくとも1つが心臓12の内側にある)を使用して、心臓12の電気的活動を分解/分析/記録するプロセスである。すなわち、システム100が心臓の状態を検出、診断、及び/又は治療することを支援する際に、医師24によって、1つ又は2つ以上のカテーテル14を患者23の心臓12に誘導することができる。次に、複数の電極18及び電極26は、信号(別名、生理学的信号)を検出及び提供し、マッピングエンジン101は、各心拍間の脱分極の心筋の電気生理学的パターンから生じる小さな電気的変化を識別するためにこれを使用する。ECG/ICEGは、例えば、10秒などの一定期間にわたって実施することができる。これによって、心臓12の電気的脱分極の全体の大きさ及び方向が、心周期にわたる各瞬間に捕捉される。ECG/ICEGは、診断又は治療処置の間に記録することができる。この処置の時間の長さは、数十分~数時間で異なり得る。各治療処置中に、通常は、数十回のアブレーションセッションがあり、各セッションは、例えば、数秒から最長で約1分間続く。
【0035】
1つ又は2つ以上の実施形態によれば、マッピングエンジン101は、数学的多信号分解動作又は数学的次元削減技術を実装するアルゴリズムなどの、1つ又は2つ以上のアルゴリズムを含み、実行することができる。マッピングエンジン101は、マッピングエンジン101が正確な近接場成分、活性化時間(例えば、最小微分を使用して)、及び電圧レベル(例えば、最大-最小)を提供するので、波面アルゴリズムの必要性を低減する。1つ又は2つ以上のアルゴリズムの例としては、特異値分解(singular value decomposition、SVD)、主成分分析(principal component analysis、PCA)、及び/又は他の行列分解若しくは因数分解が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
1つ又は2つ以上の更なる実施形態によれば、マッピングエンジン101は、SVD又はPCAアルゴリズムなどの数学的次元削減アルゴリズムによって生成された情報を更に利用して、心臓組織内の推定深さから発生している電気信号を識別し得る。マッピングエンジン101が、SVD又はPCAによって生成された直交信号を生成する場合、各直交信号成分は、特定の電極に対する特定の距離又は深さから発生している電気的活動に対応し得る。信号成分の線形結合が適用され、各直交信号に割り当てられた重みが最終コンポジット信号への重みの寄与を決定する。任意選択的に、電極からの距離に依存する信号の劣化又は減衰を補償するために、信号成分の非線形結合も実施され得る。各信号に適用される重みは、深層学習、又は他の人工知能(artificial intelligence、AI)若しくは機械学習(machine learning、ML)アルゴリズムを採用することによるものを含む、無数の方法で調整することができる。システムは、数学的組み合わせ(線形又は非線形)を通して、直交信号に含まれる空間情報を考慮し、かつそれらの寄与を操作することによって、心筋組織内の深さを含む、特定の電極の周りの様々な距離から発生している電気信号を区別して抽出することができる。
【0037】
代替的に、いくつかの実施形態では、数学的次元アルゴリズムを使用せずに、深層学習又は機械学習モデルが独立して採用され得る。そのような実施形態では、マッピングカテーテルの電極からのECG信号は、訓練済みモデルに入力され得、次に、訓練済みモデルがECG信号を直接処理して、電極からの特定の距離又は深さと関連付けられたパターン又は特徴を識別し、これは、組織の深さの範囲内の電気的伝搬に関する電気的マッピング及び対応する情報に基づいたその訓練と一致する。
【0038】
1つ又は2つ以上の代替的な実施形態によれば、マッピングエンジン101は、心筋組織内の異なる深さにおける電気的活動を表す心内ECG信号を識別するように構成されたニューラルネットワークを実装し得る。ECG読み取り値に基づいて心筋組織内の最も近い活性化までの距離を推定するために、訓練済みの機械学習モデル、具体的にはニューラルネットワークが使用され得る。このモデルは、異なるカテーテル場所、膜電位の場所、及び心筋組織の活性化状態(例えば、健康、瘢痕化、線維性、など)などの様々なシナリオを包含する、シミュレートされたデータを使用して訓練され得る。モデルは、マッピングエンジン101の一部などの心臓マッピングシステム10の一部として採用される場合、多電極カテーテルの電極からの入力ECG信号を受信して、心筋組織内の指定の距離又は深さにおける電気信号を識別する形態で、出力を生成し得る。
【0039】
更に別の代替の実施形態では、マッピングエンジン101は、心筋組織内の異なる深さにおける電気的活動を表すECG信号を識別するために、モデル、場の投影の計算、並びに最適化及び逆問題解法を実装し得る。この実施形態では、心臓組織の電気的活動は、心腔の表面及び組織の深さに分配された双極子などの一群の源として表される。かかる各双極子は、活性化時間を有し、全てが同期的に稼働して活性化波の伝搬を生成する。これは、電極からの測定値と比較される、電極の場所への場の投影を有する。測定値を最も多く再サンプリングする双極子のグリッドが活性化される時間及び距離を探す数学的最小化問題を解くことで、電極から最も近い活性化までの距離が推定され得る。心筋組織内の特定の場所における電気的活動を推定するために、場の投影は、マッピングカテーテル上の電極の場所に基づいて計算される。
【0040】
したがって、いくつかの実施形態では、マッピングエンジン101は、ニューラルネットワーク、分類器、機械学習エンジン、又は同様のモデルを実装するためのハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせを備え得る。例えば、マッピングエンジン101は、中央処理ユニット、グラフィックス処理ユニット、テンソル処理ユニット、ベクトル処理ユニット、又は他のタイプのプロセッサ若しくはコプロセッサなどの、デバイス又はシステムの1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されるソフトウェアを含み得る。多くの実装形態では、マッピングエンジン101は、(例えば、器具のクラスタ、仮想コンピューティングデバイスのクラウド、サーバファーム、などとして)複数のコンピューティングデバイスによって実行され得る。多くのかかる実装形態では、マッピングエンジン101の機能は、複数のプロセッサ及び/又はコンピューティングデバイスにわたって分散され得る。例えば、いくつかの実装形態では、第1の場所における電気的活動の第1の推定は、第1のプロセッサ及び/又は第1の物理若しくは仮想コンピューティングデバイスによって実施され得、同じ第1の場所における(例えば、異なる時間の)又は異なる第2の場所における(例えば、同じ時間若しくは異なる時間の)電気的活動の第2の推定は、第2のプロセッサ及び/又は第2の物理若しくは仮想コンピューティングデバイスによって実施され得る。これは、非常に複雑な推定の場合であっても、スケーラビリティ及び結果の低遅延の生成を可能にし得る。
【0041】
正常洞調律(normal sinus rhythm、NSR)を有する患者(例えば、患者23)では、心房、心室、及び興奮性伝導組織を含む心臓(例えば、心臓12)は、電気的に興奮して、同期したパターン化された様式で拍動する。この電気的興奮は、心内心電図(intracardiac electrocardiogram、IC ECG)データ、などとして検出することができることに留意されたい。
【0042】
1つ又は2つ以上の実施形態によれば、心不整脈(例えば、aFib)を有する患者(例えば、患者23)では、心臓組織の異常領域は、正常な伝導性組織に伴う同期した拍動周期に従わず、NSRを有する患者とは対照的である。これに対して、心組織の異常領域は隣接組織に異常伝導し、このため心臓周期が乱れて非同期的な心臓リズムになる。この非同期的心律動はまた、IC ECGデータとして検出することができる点に留意されたい。こうした異常伝導は、例えば、房室(atrioventricular、AV)結節の伝導経路に沿った洞房(sino-atrial、SA)結節の領域、又は心室及び心房の壁を形成する心筋組織など、心臓12の様々な領域で生じることがこれまでに知られている。異常な導電性の組織のパターンがリエントリー経路につながることにより、洞律動の複数倍になり得る規則的なパターンで心腔が拍動する、心房粗動などの他の状態も存在する。
【0043】
例として、システム10が心臓の状態を検出、診断、及び/又は治療することを支援する際に、医師24はベッド上に横たわる患者23の心臓12内にカテーテル14を誘導することができる。例えば、医師24は、カテーテル14の近位端の近くのマニピュレータ及び/又はシースからの偏向を用いてシャフトの遠位端を操作しながら、シースを通してシャフトを挿入することができる。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、カテーテル14をシャフトの遠位端に取り付けることができる。カテーテル14は、折り畳まれた状態でシースを通して挿入することができ、次いで、心臓12内で拡張させることができる。
【0044】
一般に、心臓12内のある点における電気的活動は典型的には、遠位先端部又はその近く(例えば、少なくとも1つの電極26)に電気センサ(例えば、センサ29)を収容したカテーテル14を心臓12内のその点へと前進させ、組織を電気センサと接触させ、その点におけるデータを取得することによって測定することができる。単一の遠位先端電極だけを含むタイプのカテーテルを使用して心室をマッピングすることに関する1つの欠点は、心室全体としての詳細なマップに必要とされる必要数の点にわたって点ごとにデータを集積するために長い時間が必要とされることである。したがって、心腔内の複数の点における電気的活動を同時に測定するために、多電極カテーテル(例えば、カテーテル14)が開発されてきた。
【0045】
少なくとも1つの電極26及びその本体に結合されたカテーテル針を含むことができるカテーテル14は、体内器官(例えば、心臓12)の電気信号などの生体データを得るように、及び/又はその組織領域(例えば、心臓12の心腔)をアブレーションするように構成することができる。電極26は、追跡コイル、圧電変換器、電極、又は組織領域をアブレーションするか又は生体測定データを取得するように構成された要素の組み合わせなどの任意の同様の要素を代表するものである点に留意されたい。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、カテーテル14は、軌跡情報を決定するために使用される1つ又は2つ以上の位置センサを含むことができる。この軌跡情報を使用して、組織の収縮性などの運動特性を推測することができる。
【0046】
生体測定データ(例えば、患者生体測定値、患者データ、又は患者生体測定データ)は、局所興奮時間(local activation time、LAT)、電気的活動、トポロジー、双極マッピング、基準活動、心室活動、優位周波数、インピーダンスなどのうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。LATは、正規化された初期開始点に基づいて計算された、局所活性化に対応する閾値活動の時点であり得る。電気的活動は、1つ又は2つ以上の閾値に基づいて測定され得る任意の適用可能な電気信号であってもよく、信号対ノイズ比及び/又は他のフィルタに基づいて、感知及び/又は拡張され得る。トポロジーは、身体部分又は身体部分の一部分の物理的構造に対応し得、身体部分の異なる部分に関する、又は異なる身体部分に関する物理的構造における変化に対応し得る。優位周波数は、身体部分の一部分で一般的に見られる周波数又は周波数の範囲であってよく、同じ身体部分の異なる部分において異なり得る。例えば、心臓のPVの優位周波数は、同じ心臓の右心房の優位周波数と異なり得る。インピーダンスは、身体部分の特定の領域における抵抗測定値であり得る。
【0047】
生体測定データの例としては、これらに限定されるものではないが、患者識別データ、IC ECGデータ、双極心内基準信号、解剖学的及び電気的測定値、軌跡情報、身体表面(body surface、BS)ECGデータ、履歴データ、脳生体測定値、血圧データ、超音波信号、無線信号、音声信号、二次元又は三次元(3D)画像データ、血糖データ、温度データ、他の電気的活動及び/又は生理学的信号が挙げられる。生体測定データは一般的に、心血管疾患(例えば、不整脈、心筋症、及び冠動脈疾患)、及び自己免疫疾患(例えば、I型及びII型糖尿病)などの任意の数の様々な疾患を監視、診断、及び治療するために使用され得る。BS ECGデータは、患者の表面上の電極から収集されたデータ及び信号を含むことができ、IC ECGデータは、患者体内の電極から収集されたデータ及び信号を含むことができ、アブレーションデータは、アブレーションされた組織から収集されたデータ及び信号を含み得る点に留意されたい。更に、BS ECGデータ、IC ECGデータ、及びアブレーションデータは、カテーテル電極位置データとともに、1つ又は2つ以上の処置記録から導出され得る。
【0048】
例えば、カテーテル14は、電極26を使用して血管内超音波及び/又はMRIカテーテル法を実装して心臓12を画像化する(例えば、生体測定データを取得及び処理する)ことができる。心臓12の心腔内部の、カテーテル14を拡大図で示す。1つ又は2つ以上の電極26を含む任意の形状が、本明細書に開示される実施形態を実装するために使用され得ることが理解されるであろう。
【0049】
カテーテル14の例としては、これらに限定されるものではないが、複数の電極を有する直線状カテーテル、バルーンを形成する複数のスパイン上に分散した電極を含むバルーンカテーテル、ラッソ、グリッド形状の複数の電極を有するカテーテル若しくは複数の電極を有するループカテーテル、高密度カテーテル、又は他の任意の適用可能な形状若しくは複合体が挙げられる。直線状カテーテルは、受信信号に基づいて及び/又は直線状カテーテルに対する外力(例えば、心臓組織)の作用に基づいて、捻れ、折れ曲がり、及び/又は他の形でその形状を変化させることができるように、完全に又は部分的に弾性であってよい。バルーンカテーテルは、患者の身体内に配備される際、その電極を心内膜表面に対して密接に接触した状態に保持することができるように設計することができる。一例として、バルーンカテーテルは、肺静脈(pulmonary vein、PV)などの管腔内に挿入され得る。バルーンカテーテルは収縮状態でPVに挿入することができ、それにより、PVに挿入されている間にバルーンカテーテルがその最大体積を占有することはない。バルーンカテーテルは、PVの内側にある間に拡張することができ、それにより、バルーンカテーテル上の電極は、PVの円形部分全体と接触する。PV又は任意の他の管腔の円形部分全体とのこのような接触は、効率的な撮像及び/又はアブレーションを可能とする。カテーテル14の他の例としては、PentaRay(登録商標)カテーテル及びConstellationカテーテルが挙げられる。下でより詳細に説明されるように、カテーテル14の例はまた、図5図6に関しても記載されている。
【0050】
他の例によれば、身体パッチ及び/又は身体表面電極(例えば、1つ又は2つ以上の電極パッチ38)を患者23の身体上又は身体に近接して配置してもよい。1つ又は2つ以上の電極26を有するカテーテル14を身体内(例えば、心臓12内)に配置することができるが、カテーテル14の位置を、カテーテル14の1つ又は2つ以上の電極26と身体パッチ及び/又は身体表面電極との間で送受信される信号に基づいて100システムにより決定することができる。追加的に、電極26は、心臓12内などの患者23の身体内から生体測定データを感知することができる(例えば、電極26は、組織の電位をリアルタイムで感知する)。生体測定データは、決定されたカテーテル14の位置と関連付けることができ、それにより、患者の身体部分(例えば、心臓12)のレンダリングを表示し、身体部分の形状に重ね合わされた生体測定データを示すことができる。
【0051】
更なる例として、カテーテル14及びシステム10の他のアイテムは、ワークステーション55に接続することができる。ワークステーション55は、ML/AIアルゴリズム(マッピングエンジン101に含めることができる)を用いる任意のコンピューティングデバイスを含み得る。例示的な実施形態によれば、ワークステーション55は、1つ又は2つ以上のプロセッサ61(任意のコンピューティングハードウェア)及びメモリ62(任意の非一時的有形媒体)を含み、1つ又は2つ以上のプロセッサ61は、マッピングエンジン101に関するコンピュータ命令を実行し、メモリ62は、1つ又は2つ以上のプロセッサ61により実行するためのこれらの命令を記憶する。例えば、ワークステーション55は、生体測定データを受信及び処理して特定の組織領域が電気を伝導するかどうかを判定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、ワークステーション55は、アブレーション処置ガイダンス方法の機能を実行するために、マッピングエンジン101(ソフトウェア内)によって更にプログラムされ得る。例えば、アブレーション処置ガイダンス方法は、入力(例えば、1つ又は2つ以上の画像及び伝導速度ベクトル推定値を含む)を受信することと、画像及び伝導速度ベクトル推定値を利用して、解剖学的構造のデジタルツインを生成することと、デジタルツインを提示させて、解剖学的構造の精密アブレーションガイダンスを提供させ、解剖学的構造の電気生理学情報を提供させることと、を含むことができる。
【0052】
1つ又は2つ以上の実施形態によれば、マッピングエンジン101は、ワークステーション55の外部にあってもよく、例えばカテーテル14内、外部デバイス内、モバイルデバイス内、クラウドベースのデバイス内に位置してもよく、又はスタンドアロン型プロセッサであってもよい。この点に関して、マッピングエンジン101は、ネットワークを介して電子形態で転送可能/ダウンロードすることができる。
【0053】
一例では、ワークステーション55は、ソフトウェア(例えば、マッピングエンジン101)及び/又は、カテーテル14への信号及びそのカテーテルからの信号を送信及び受信するとともに、システム10の他の構成要素を制御するための好適なフロントエンド回路及びインターフェース回路を備えた汎用コンピュータなどのハードウェア(例えば、プロセッサ61及びメモリ62)を含む、本明細書に記載の任意のコンピューティングデバイスであってもよい。例えば、フロントエンド回路及びインターフェース回路は、ワークステーション55が少なくとも1つの電極26から信号を受信及び/又は少なくとも1つの電極26に信号を伝送することを可能にする入出力(input/output、I/O)通信インターフェースを含む。ワークステーション55は、典型的には、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)として構成されたリアルタイムノイズ低減回路を含み得る。リアルタイムノイズ低減回路の後にはアナログデジタル(analog-to-digital、A/D)ECG又は心電図/筋電図(electromyogram、EMG)信号変換集積回路が続く。ワークステーション55は、A/D ECG又はEMG回路から別のプロセッサへ信号を伝えることができ、及び/又は本明細書に開示される1つ又は2つ以上の機能を実施するようにプログラムすることができる。
【0054】
生体測定データを視覚的に提示するための任意の電子デバイスであり得るディスプレイデバイス27は、ワークステーション55に接続されている。例示的な実施形態によれば、処置中、ワークステーション55は、ディスプレイデバイス27上で、医師24への身体部分のレンダリングの提示を促進し、身体部分のレンダリングを表すデータをメモリ62に記憶することができる。例えば、運動特性を示すマップを、心臓12内の十分な数の点でサンプリングされた軌跡情報に基づいてレンダリング/構築することができる。例として、ディスプレイデバイス27は、身体部分のレンダリングを提示することに加えて、医師24からの入力を受けるように構成され得るタッチスクリーンを含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、医師24は、タッチパッド、マウス、キーボード、ジェスチャ認識装置などの1つ又は2つ以上の入力デバイスを使用して、システム10の要素及び/又は身体部分のレンダリングを操作してもよい。例えば、入力デバイスを使用して、レンダリングが更新されるようにカテーテル14の位置を変更することができる。ディスプレイデバイス27は、同じ場所、又は別の病院若しくは別の医療提供者ネットワークなどの遠隔の場所に位置し得る点に留意されたい。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、システム10は、超音波、コンピュータ断層撮影(computed tomography、CT)、MRI、又はカテーテル14若しくは他の医療機器を利用する他の医療撮像技術を使用して生体測定データを得ることもできる。例えば、システム10は、1つ又は2つ以上のカテーテル14又は他のセンサを使用して、心臓12のECGデータ及び/又は解剖学的及び電気的測定値(例えば、生体測定データ)を得ることができる。より詳細には、ワークステーション55は、ケーブルによって、患者23に貼付された接着皮膚パッチを含むBS電極に接続することができる。BS電極は、BS ECGデータの形態で生体データを取得/生成する。例えば、プロセッサ61は、患者23の身体部分(例えば、心臓12)内のカテーテル14の位置座標を決定する。位置座標は、身体表面電極と、カテーテル14又は他の電磁構成要素の電極26との間で測定されるインピーダンス又は電磁場に基づいている。追加的に、又は代替的に、操縦に使用される磁場を生成する場所パッドは、ベッド(又はテーブル)の表面上に位置し得、また、ベッドとは別個であり得る。生体測定データは、ワークステーション55に送信し、メモリ62に記憶させることができる。代替的又は追加的に、生体データは、本明細書で更に説明されるようなネットワークを使用して、ローカル又はリモートであり得るサーバに送信される。
【0056】
1つ又は2つ以上の実施形態によれば、カテーテル14は、心臓12の心腔の組織領域をアブレーションするように構成され得る。例えば、心臓12の心腔内のカテーテル14を拡大図で示す。更に、少なくとも1つの電極26などのアブレーション電極は、体内器官(例えば、心臓12)の組織領域にエネルギーを提供するように構成されている。エネルギーは、熱エネルギーであってもよく、組織領域の表面から始まって組織領域の厚さに延びる組織領域への損傷を引き起こす可能性がある。アブレーション処置に関する生体測定データ(例えば、アブレーション組織、アブレーション場所など)は、アブレーションデータとみなすことができる。
【0057】
一例によれば、生体データを取得することに関して、多電極カテーテル(例えば、カテーテル14)を心臓12の心腔に前進させる。電極の各々の位置及び配向を確立するために、前後方向(anteroposterior、AP)及び横方向の蛍光写真を取得することができる。ECGは、BS ECGからの洞律動におけるP波の発生及び/又は冠状静脈洞内に配置されたカテーテル14の電極26からの信号などの時間基準と関係のある心臓表面と接触する電極26の各々から記録することができる。本明細書で更に開示されるシステムは、電気的活動を記録する電極と、心内膜壁に近接していないことにより電気的活動を記録しない電極と、を区別することができる。最初のECGが記録された後、カテーテルは、典型的には、再位置決めされ得、蛍光写真及びECGが再び記録され得る。次に、(例えば、心臓マッピングを介して)電気的マップは、上記のプロセスの反復から構築することができる。
【0058】
心臓マッピングは、1つ又は2つ以上の技術を使用して実装することができる。一般に、心臓12の心臓領域、組織、静脈、動脈、及び/又は電気経路などの心臓領域のマッピングによって、瘢痕組織、不整脈源(例えば、電気的ローター)などの問題領域、健康な領域などの特定につながり得る。心臓領域は、本明細書に更に開示されるように、マッピングされた心臓領域の視覚的レンダリングがディスプレイを使用して提供されるようにマッピングされる。追加的に、心臓マッピング(心臓撮像の一例である)は、これらに限定されるものではないが、LAT、局所興奮速度、電気的活動、トポロジー、双極マッピング、優位周波数、又はインピーダンスなどの1つ又は2つ以上のモダリティに基づくマッピングを含み得る。複数のモダリティに対応するデータ(例えば、生体測定データ)は、患者の身体に挿入されたカテーテル(例えば、カテーテル14)を使用して取得してもよく、対応する設定及び/又は医師24の好みに基づいて、同時に又は異なる時間にレンダリングするために与えてもよい。
【0059】
第1の技術の一例として、心臓マッピングは、心臓12内の正確な場所の関数として、心臓組織の電気的特性、例えばLATを感知することによって実装してもよい。対応するデータ(例えば、生体測定データ)は、心臓12内に前進させられ、かつその遠位先端部に電気センサ及び場所センサ(例えば、電極26)を有する、1つ又は2つ以上のカテーテル(例えば、カテーテル14)により取得してもよい。具体例として、場所及び電気的活動は、心臓12の内側表面上の約10~約20箇所の点で最初に測定してもよい。これらのデータ点は一般に、心臓表面の予備再構成又はマップを満足な品質で生成するのに十分であり得る。予備マップは多くの場合、追加の点で測定されたデータと結合されて心臓の電気的活動のより包括的なマップが生成され得る。臨床現場では、心腔の電気的活動の詳細な包括的マップを生成するために100箇所又はそれ以上の部位(例えば、数千)のデータを集積することも珍しいことではない。その後、生成された詳細なマップは、心臓の電気的活動の伝播を変化させ、正常な心律動を回復させるための治療活動方針、例えば、本明細書に記載される組織のアブレーションについての決定を行うための基準となり得る。
【0060】
更に、心臓マッピングは、心内電位場(例えば、いずれが、IC ECGデータ及び/又は双極心内基準信号の一例である)の検出に基づいて生成される。大量の心臓電気的情報を同時に取得するために非接触的な方法を実装することができる。例えば、遠位端部分を有するカテーテルタイプは、その表面上にわたって分布し、信号感知及び処理手段への接続のために絶縁導電体に接続された一連のセンサ電極を備えることができる。端部分のサイズ及び形状は、電極が心腔の壁から大きな間隔を隔てて配置されるようなものとすることができる。心内電位場は、1回の心拍の間に検出することができる。一例によれば、センサ電極は、互いに間隔を置いた平面内に位置する一連の円周上に分布させることができる。これらの平面は、カテーテルの端部の長軸に対して垂直であってよい。少なくとも2個の追加の電極を、端部の長軸の両端に隣接して配設することができる。より具体的な例として、カテーテルは、各円周上に等角で間隔を置いて配置された8つの電極を有する4つの円周を含んでもよい。したがって、この特定の実装形態では、カテーテルは、少なくとも34個の電極(32個の周方向電極及び2つの端部電極)を含むことができる。別のより具体的な例として、カテーテルは、5本の柔軟な可撓性分枝、8本の放射状スプライン、又は平行なスプラインを有するフライ返し型(例えば、いずれも合計42個の電極を有し得る)などの他の多スプライン型カテーテルを含み得る。
【0061】
電気的又は心臓マッピングの例として、非接触式及び非拡張式多電極カテーテル(例えば、カテーテル14)に基づく電気生理学的心臓マッピングシステム及び技術を実装することができる。ECGは、複数の電極(例えば、42~122個の電極など)を有する1つ又は2つ以上のカテーテル14を用いて取得してもよい。この実装形態により、プローブ及び心内膜の相対的な幾何学的形状の知見を、経食道心エコー法などの独立した撮像モダリティによって得ることができる。独立した撮像の後、非接触式電極を使用して心臓表面電位を測定し、この表面電位からマップを構築することができる(例えば、場合によっては、双極心内基準信号を使用する)。この技術は、(独立した撮像工程の後に)以下の工程を含むことができる。すなわち、(a)心臓12内に配置されたプローブ上に配置された複数の電極を用いて電位を測定する工程、(b)プローブ表面と心内膜表面及び/又は他の基準との幾何学的関係を決定する工程、(c)プローブ表面と心内膜表面との幾何学的関係を表す係数の行列を生成する工程、及び(d)電極電位及び係数の行列に基づいて心内膜電位を決定する工程。
【0062】
電気的又は心臓マッピングの別の例として、心腔の電位分布をマッピングするための技術及び装置を実装することができる。心内多電極マッピングカテーテルアセンブリは、心臓12に挿入される。マッピングカテーテル(例えば、カテーテル14)アセンブリは、好ましくは、1つ又は2つ以上の一体型基準電極(例えば、1つ又は複数の電極26)を有する多電極アレイ又はコンパニオン基準カテーテルを含む。
【0063】
1つ又は2つ以上の実施形態によれば、電極は、ほぼ球状のアレイの形態で展開することができ、この球状のアレイは、基準電極によって、又は心内膜表面と接触させられる基準カテーテルによって心内膜表面上の点に対して空間的に参照することができる。好ましい電極アレイカテーテルは、多数の個々の電極部位(例えば、少なくとも24個)を有することができる。追加的に、この例示的な技術は、アレイ上の電極部位の各々の場所を知ること、及び心臓の幾何学的形状を知ることで実装することができる。これらの場所は好ましくは、インピーダンスプレチスモグラフィ法によって決定される。
【0064】
電気的又は心臓マッピングの観点から、また、別の例によれば、カテーテル14は、多数の電極部位を画定する電極アレイを含む、心臓マッピングカテーテルアセンブリである。この心臓マッピングカテーテルアセンブリはまた、心臓壁をプローブするために使用される遠位先端部電極アセンブリを有する基準カテーテルを重用するための管腔も含む。マップ心臓マッピングカテーテルアセンブリは、絶縁ワイヤの編組(例えば、編組内に24~64本のワイヤを有する)を含み、ワイヤの各々を使用して、電極部位が形成され得る。心臓マッピングカテーテルアセンブリは、第1の組の非接触電極部位及び/又は第2の組の接触電極部位から電気的活動情報を取得するために使用されるように、心臓12内に容易に位置決め可能である。
【0065】
更に、別の例によれば、心臓内の電気生理学的活動のマッピングを実装することができるカテーテル14は、心臓をペーシングするための刺激パルスを送達するように適合された遠位先端部、又は先端部と接触する組織をアブレーションするためのアブレーション電極を含む。このカテーテル14は、直交電極の近傍の局所的な心臓電気的活動を示す差分信号を生成するための少なくとも一対の直交電極を更に含むことができる。
【0066】
本明細書で述べられるように、システム10を利用して、心臓の状態を検出、診断、及び/又は治療する。例示的な動作では、心腔内の電気生理学的データを測定するためのプロセスは、システム10によって実装される。このプロセスは、部分的に、一組の能動電極及び受動電極を心臓12内に配置することと、能動電極に電流を供給し、それによって心腔内に電場を生成することと、受動電極部位の電場を測定することと、を含む。受動電極は、バルーンカテーテルの膨張可能なバルーン上に配置されたアレイに含まれる。好ましい実施形態では、アレイは60~64個の電極を有すると言われる。
【0067】
別の例示的な動作として、心臓マッピングは、1つ又は2つ以上の超音波トランスデューサを使用して、システム10によって実装される。超音波トランスデューサは、患者の心臓12に挿入されてもよく、心臓12内の様々な場所及び配向の複数の超音波スライス(例えば、二次元又は3Dスライス)を収集してもよい。所与の超音波トランスデューサの場所及び配向は既知であり、収集された超音波スライスは、後で表示することができるように記憶される。カテーテル14(例えば、治療カテーテル)の位置に対応する1つ又は2つ以上の超音波スライスが後で表示され、カテーテル14は、1つ又は2つ以上の超音波スライス上へ重ね合わせられる。
【0068】
システム10を考慮すると、心房性不整脈を含めた心不整脈は、心房の周りで散乱して、しばしば自己伝播する電気インパルスの複数の非同期的ループを特徴とする、マルチウェーブレット・リエントラント型であり得ることが分かる(例えば、IC ECGデータの別の例)。マルチウェーブレット・リエントラント型の代わりに、又はそれに加えて、心不整脈はまた、心房の組織の被識別領域が、急速反復様式で自律的に興奮する場合などの、巣状興奮源を有する場合もある(例えば、IC ECGデータの別の例)。心室頻拍(V-tach又はVT)は、心室のうちの1つから発生する頻脈症又は高速な心律動である。これは、心室細動及び突然死につながり得るため、潜在的に致死性の不整脈である。
【0069】
例えば、aFibは、洞房結節によって生成される通常の電気インパルス(例えば、IC ECGデータの別の例)が心房静脈及びPVで生じる無秩序な電気インパルス(例えば、信号干渉)によって圧倒され、不規則なインパルスを心室に伝導させる場合に発生する。その結果、不規則な心拍が生じ、数分~数週間、又は更には数年間持続する場合がある。多くの場合、aFibは、しばしば脳卒中による死亡リスクをわずかに増加させる慢性的な状態である。aFibの治療方針は、心拍数を遅くする、又は心臓の律動を正常に戻す、投薬治療である。追加的に、aFibを有する患者は、脳卒中のリスクから守るために抗凝血剤を投与される場合が多い。そのような抗凝血剤の使用は、それ自体のリスクである内出血を伴う。一部の患者では、投薬治療は十分ではなく、その患者のaFibは、薬剤不応、すなわち、標準的な薬理学的介入では治療不可能であると判断される。同期された電気的除細動もまた、aFibを通常の心律動に変換するために使用することができる。代替的に、aFibの患者には、カテーテルアブレーションによる治療も行われる。
【0070】
カテーテルアブレーションベースの治療には、心臓組織、特に心内膜及び心臓容積の電気的特性をマッピングすること、並びにエネルギーの印加によって心臓組織を選択的にアブレーションすることが含まれてもよい。電気又は心臓マッピング(例えば、本明細書に記載される任意の電気生理学的心臓マッピングシステム及び技術によって実装される)には、心臓組織に沿った波伝播の電位マップ(例えば、電圧マップ)、又は様々な組織内に位置する点への到達時間のマップ(例えば、LATマップ)を作成することが含まれる。局所的な心臓組織の機能不全を検出するために、電気的又は心臓マッピング(例えば、心臓マップ)を使用することができる。心臓マッピングに基づくアブレーションなどのアブレーションは、不要な電気信号の、心臓12のある部分から別の部分への伝播を停止又は変化させることができる。
【0071】
アブレーションプロセスは、非導電性の損傷部を形成することによって望ましくない電気経路に損傷を与える。様々なエネルギー送達の様式が、損傷部を形成する目的でこれまでに開示されており、心臓組織壁に沿って伝導ブロックを作るためのマイクロ波、レーザ、及びより一般的には無線周波エネルギーの使用が挙げられる。エネルギー送達法の別の例としては、細胞膜を損傷する高い電場を与える不可逆的エレクトロポレーション(IRE)が挙げられる。2段階の処置(マッピングと、その後に続くアブレーション)においては、典型的には、1つ又は2つ以上の電気センサ(例えば、電極26)を収容したカテーテル14を心臓12内に前進させ、多数の点におけるデータ(例えば、一般には生体測定データとして、又は具体的にはECGデータとして)を取得/獲得することによって、心臓12内の点における電気的活動が感知及び測定される。次いでECGデータを用いて、アブレーションを実施する心内膜の標的領域が選択される。
【0072】
心房細動及び心室頻拍などの困難な状態を医師が治療する際の心臓アブレーション及び他の心臓の電気生理学的処置は、ますます複雑化している。難治性不整脈の治療は現在、対象となる心腔の解剖学的構造を再構成するうえで3Dマッピングシステムの使用を頼りにすることができる。これに関して、本明細書でシステム10によって採用されたマッピングエンジン101は、一般には生体データを又は具体的にはECGデータを操作及び評価して、異常な心拍若しくは不整脈を治療するためのより正確な診断、画像、スキャン、及び/又はマップを可能にする、改善された組織データを生成する。例えば、心臓専門医は、ECGデータを生成及び分析するうえで、Biosense Webster,Inc.(Diamond Bar,Calif.)により製造されるCARTO(登録商標)3 3DマッピングシステムのComplex Fractionated Atrial Electrograms(CFAE)モジュールなどのソフトウェアに依存する。システム10のマッピングエンジン101は、改善された生体データを生成及び分析するようにこのソフトウェアを強化し、これは、それは更に、aFibの心臓基質(解剖学的及び機能的)を表す心臓12(瘢痕組織を含む)の電気生理学的特性に関する複数の情報を提供する。
【0073】
したがって、システム10は、異常なECGの検出に関して心筋症の潜在的な不整脈源性基質の位置を特定するために、CARTO(登録商標)3 3Dマッピングシステムなどの3Dマッピングシステムを実装している。これらの心臓の状態に関連する基質は、心室腔(右及び左)の心内膜及び/又は心外膜層の細分化及び遅延ECGの存在と関連付けられている。例えば、低電圧又は中電圧の領域は、ECGの細分化及び遅延活動を示し得る。更に、洞律動の間において低電圧又は中電圧の領域は、持続性のまとまりのある心室性不整脈において識別される臨界峡部(critical isthmus)に対応し得る(例えば、許容されない心室頻拍、並びに心房内に当てはまる)。一般に、異常組織は、低電圧のECGによって特徴付けられる。しかしながら、心内膜-心外膜マッピングにおける初期の臨床経験によって、低電圧の領域は、こうした患者における唯一の不整脈発生機序として常に存在するとは限らないことが示されている。実際に、低電圧又は中電圧の領域は、洞律動の間にECGの細分化及び遅延活動を示す場合があり、これは、持続性のまとまりのある心室性不整脈の際に識別される臨界峡部(critical isthmus)に対応する(例えば、許容されない心室頻拍のみに当てはまる)。更に、多くの場合、ECGの細分化及び遅延活動は、正常又はほぼ正常な電圧振幅(>1~1.5mV)を示す領域で観察される。後者の領域は、電圧振幅に従って評価することができるが、心内信号によれば正常とはみなされず、したがって真の不整脈源性基質を表している。3Dマッピングは、主要疾患の進展によって分布にばらつきがあり得る、右/左心室の心内膜及び/又は心外膜層上の不整脈源性基質の位置を特定することができる。
【0074】
別の例示的な動作として、心臓マッピングは、1つ又は2つ以上の多電極カテーテル(例えば、カテーテル14)を使用してシステム10によって実装することもできる。多電極カテーテルは、心臓12内の電気的活動を刺激及びマッピングし、異常な電気的活動が見られる部位をアブレーションするために使用される。使用時には、多電極カテーテルは、主要な静脈又は動脈、例えば大腿静脈に挿入された後、対象となる心臓12の心腔内へと案内される。典型的なアブレーション処置では、その遠位端に少なくとも1つの電極26を有するカテーテル14を心腔内に挿入することを伴う。基準電極が、患者の皮膚にテープで貼り付けられるか、あるいは心臓内又は心臓付近に配置される第2のカテーテルによって、あるいはカテーテル14の1つ又は他の電極26から選択することによって、提供される。高周波(RF)電流がアブレーションカテーテル14の先端電極26に印加され、先端電極の周囲の媒質(すなわち、血液及び組織)を通り、基準電極に向かって電流が流れる。電流分布は、組織よりも伝導率の高い血液と比べて、組織に接触している電極表面量によって決まる。その電気抵抗が原因で組織の加熱が発生する。組織が十分に加熱されると、心臓組織において細胞破壊が引き起こされ、結果として、心臓組織内に電気的に非伝導性である損傷が形成される。このプロセスでは、加熱された組織から電極自体への伝導によって先端電極26の加熱も生じる。電極の温度が十分に高くなり、場合により60℃を超えると、脱水された血中タンパク質の薄く透明な皮膜が、電極26の表面上に形成され得る。温度が上昇し続けると、この脱水層が徐々に厚くなり得、電極表面上に血液が凝固する。脱水された生物学的材料は、心内膜組織よりも高い電気抵抗を有するため、電気エネルギーの組織内部への流れに対するインピーダンスもまた増大する。インピーダンスが十分に高くなると、インピーダンス上昇が起こり、カテーテル14を身体から抜き取り、先端電極26を洗浄しなければならない。
【0075】
ここで図2を参照すると、1つ又は2つ以上の例示的な実施形態による、本開示の主題の1つ又は2つ以上の特徴を実装することができるシステム200の図が例解されている。システム200は、患者202(例えば、図1の患者23の例)に関連して、装置204、ローカルコンピューティングデバイス206、リモートコンピューティングシステム208、第1のネットワーク210、及び第2のネットワーク211を含む。更に、装置204は、生体認証センサ221(例えば、図1のカテーテル14の一例)と、プロセッサ222と、ユーザ入力(user input、UI)センサ223と、メモリ224と、及びトランシーバ225と、を含む。説明を容易とし、簡潔にするため、図1のマッピングエンジン101を図2で再使用している点に留意されたい。一実施形態によれば、装置204は、図1のシステム100の一例であり、装置204は、患者202の内部にある構成要素と、患者202の外部にある構成要素と、を含むことができる。別の実施形態によれば、装置204は、取り付け可能なパッチ(例えば、患者の皮膚に取り付ける)を含む、患者202の外部にある装置である。別の実施形態によれば、装置204は、患者202の身体の内部のもの(例えば、皮下移植可能な)とすることができ、装置204を、経口注入、静脈若しくは動脈を介した外科的挿入、内視鏡手術、又は腹腔鏡手術を含む任意の適用可能な方法によって患者202の体内に挿入することができる。一実施形態によれば、単一の装置204が図2に示されているが、例示的なシステムは、複数の装置を含むことができる。
【0076】
したがって、装置204、ローカルコンピューティングデバイス206、及び/又はリモートコンピューティングシステム208は、マッピングエンジン101に関するコンピュータ命令を実行するようにプログラムすることができる。一例として、メモリ223は、装置204が生体認証センサ201を介して生体データを受信して処理することができるように、プロセッサ222によって実行するためのこれらの命令を記憶している。このように、プロセッサ222及びメモリ223は、ローカルコンピューティングデバイス206及び/又はリモートコンピューティングシステム208のプロセッサ及びメモリを代表するものである。
【0077】
装置204、ローカルコンピューティングデバイス206、及び/又はリモートコンピューティングシステム208は、マッピングエンジン101及びその機能を個別又は集合的に記憶、実行、及び実装するソフトウェア及び/又はハードウェアの任意の組み合わせとすることができる。更に、本明細書に記載されるように、装置204、ローカルコンピューティングデバイス206、及び/又はリモートコンピューティングシステム208は、様々な通信技術を利用した任意の数及び組み合わせのコンピューティングデバイス及びネットワークを含む、及び/又は採用した電子的コンピュータフレームワークとすることができる。装置204、ローカルコンピューティングデバイス206、及び/又はリモートコンピューティングシステム208は、容易にスケーラブルで、拡張可能で、かつモジュール式であり、異なるサービスに変更する能力、又は他の特徴とは独立にいくつかの特徴を再構成する能力を有する。
【0078】
ネットワーク210及び211は、有線ネットワーク、無線ネットワークであってもよく、又は1つ若しくは2つ以上の有線及び無線ネットワークを含んでもよい。一実施形態によれば、ネットワーク210は、近距離ネットワーク(例えば、ローカルエリアネットワーク(local area network、LAN)又はパーソナルエリアネットワーク(personal area network、PAN))の一例である。情報は、Bluetooth、Wi-Fi、Zigbee、Z-Wave、近接場通信(near field communication、NFC)、ウルトラバンド、Zigbee、又は赤外線(infrared、IR)などの様々な近距離無線通信プロトコルのうちのいずれか1つを使用して、装置204とローカルコンピューティングデバイス206との間で近距離ネットワーク210を介して送信することができる。更に、ネットワーク211は、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(wide area network、WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(metropolitan area network、MAN)、直接接続若しくは一連の接続、セルラー電話ネットワーク、又はローカルコンピューティングデバイス206とリモートコンピューティングシステム208との間の通信を容易にすることが可能な任意の他のネットワーク若しくは媒体のうちの1つ又は2つ以上のものの一例である。情報は、様々な長距離無線通信プロトコル(例えば、TCP/IP、HTTP、3G、4G/LTE、又は5G/New Radio)のうちのいずれか1つを使用して、ネットワーク211を介して送信することができる。なお、ネットワーク210及び211の有線接続は、イーサネット、ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus、USB)、RJ-11、又は任意の他の有線接続を使用して実装することができ、無線接続は、Wi-Fi、WiMAX、及びBluetooth、赤外線、セルラーネットワーク、衛星通信、又は任意の他の無線接続法を使用して実装することができる。
【0079】
動作中、装置204は、ネットワーク210を介して、患者202に関連する生体測定データを、連続的又は定期的に、取得、監視、記憶、処理、及び通信することができる。更に、装置204、ローカルコンピューティングデバイス206、及び/又はリモートコンピューティングシステム208は、ネットワーク210及び211を介して通信する(例えば、ローカルコンピューティングデバイス206は、装置204とリモートコンピューティングシステム208との間のゲートウェイとして構成することができる)。例えば、装置204は、ネットワーク210を介してローカルコンピューティングデバイス206と通信するように構成された図1のシステム100の一例であり得る。ローカルコンピューティングデバイス206は、例えば、固定/独立型デバイス、基地局、デスクトップ/ラップトップコンピュータ、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、又はネットワーク211及び210を介して他のデバイスと通信するように構成された他のデバイスとすることができる。ネットワーク211上の、若しくはネットワーク211に接続された物理サーバとして、又はネットワーク211のパブリッククラウドコンピューティングプロバイダ(例えば、Amazon Web Services(AWS)(登録商標))内の仮想サーバとして実装されるリモートコンピューティングシステム208は、ネットワーク211を介してローカルコンピューティングデバイス206と通信するように構成することができる。したがって、患者202に関連する生体測定データを、システム200全体を通じて通信することができる。
【0080】
装置204の要素がここで説明される。生体測定センサ221は、例えば、異なる種類の生体測定データが観察/取得/入手されるように、1つ又は2つ以上の環境条件を電気信号に変換するように構成された1つ又は2つ以上のトランスデューサを含むことができる。例えば、生体測定センサ221は、電極(例えば、図1の電極18及び26)、温度センサ(例えば、熱電対)、血圧センサ、血糖センサ、血中酸素センサ、pHセンサ、加速度計、及びマイクロフォン、のうちの1つ又は2つ以上を含む。
【0081】
マッピングエンジン101を実行するうえで、プロセッサ222は、生体測定センサ221によって取得された生体測定データを受信、処理、及び管理し、かつ生体測定データを、記憶させるためにメモリ224に、及び/又は送受信機225を介してネットワーク210全体に通信するように構成することができる。1つ又は2つ以上の他の装置204からの生体測定データはまた、送受信機225を介してプロセッサ222によって受信されてもよい。また、以下でより詳細に説明するように、プロセッサ222は、UIセンサ223から受信される異なるタッピングパターン(例えば、シングルタップ又はダブルタップ)に選択的に応答して、パッチの異なるタスク(例えば、データの取得、記憶、又は送信)が、検出されたパターンに基づいて起動されるように構成することができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ222は、ジェスチャの検出に関して可聴フィードバックを生成することができる。
【0082】
UIセンサ223は、例えば、タップ又はタッチなどのユーザ入力を受信するように構成された圧電センサ又は静電容量センサを含む。例えば、UIセンサ223は、患者202が装置204の表面をタップ又はタッチすることに応答して、容量性結合を実装するように制御されてもよい。ジェスチャ認識は、抵抗容量性、表面容量性、投影容量性、表面超音波、圧電及び赤外線タッチなどの、様々な容量型のうちのいずれか1つにより実装することができる。静電容量センサは、表面のタップ又はタッチが監視デバイスを起動させるように、表面の小さい領域又は長さにわたって配置されてもよい。
【0083】
メモリ224は、磁気、光学、又は電子メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ又はハードディスクドライブなどの任意の好適な揮発性及び/又は不揮発性メモリ)などの任意の非一時的有形媒体である。メモリ224は、プロセッサ222によって実行されるコンピュータ命令を記憶する。送受信機225は、別個の送信機及び別個の受信機を含み得る。代替的に、送受信機225は、単一のデバイスに一体化された送信機及び受信機を含み得る。動作中、マッピングエンジン101を利用する装置204は、生体測定センサ221を介して患者202の生体測定データを観察し/取得して、メモリ内に生体測定データを記憶し、送受信機225を介してシステム200全体でこの生体測定データを共有する。マッピングエンジン101は、次いで、モデル、ニューラルネットワーク、機械学習、及び/又は人工知能を利用して、複数の電極カテーテルを使用した心内単極遠方場の低減又は相殺を提供することができる。
【0084】
ここで図3Aを参照すると、1つ又は2つ以上の例示的な実施形態による(例えば、図1及び/又は図2のマッピングエンジン101によって実施される)方法300が示されている。方法300は、複数の電極カテーテル(例えば、カテーテル14)を使用した心内単極遠方場の低減又は相殺を提供する一例である。方法300は、一例では、(後期局所活性化及びアノテーションにかかわらず)QRS内で、心房の局所活性化の検出、並びに心室の検出を実施する。複数の電極カテーテルを使用することが、空間的な利点を提供し、マッピングエンジン101は、周囲の空間電極情報に基づいて、各電極18及び26、並びに対応する各心内電圧信号を分析することに留意されたい。これに関して、マッピングエンジン101は、純粋な局所単極信号を有意に強調しながら、全ての電極から遠方場の情報を低減又は除去する。マッピングエンジン101は、空間電極の方向及び距離の不利点に対する既知の双極感受性よりも優れているので、マッピングエンジン101はまた、正確な活性化アノテーションに加えて、局所活性化の振幅に基づく瘢痕の検出も提供する。
【0085】
方法300は、ブロック310から始まり、マッピングエンジン101は、複数の電極の各々について空間電極信号分析を実施する。空間電極信号分析は、電極加重情報を提供すること、及び一般的な信号成分を決定することに依存する空間的場所である、遠方場の情報の推定であり得る遠方場特性を補償する。空間電極信号分析のために、少なくとも1つの特定の電極が選択される。各特定の電極について、全ての他の電極情報が考慮されて、その特定の電極に関して相関される。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、空間電極信号分析は、各電極が特定の電極である状態で繰り返される。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、各多電極カテーテル安定部位のサンプリング時間窓について、全ての電極が1つずつ分析される。更に、各特定の電極について、全ての他の電極の情報が、本明細書で更に説明されるように考慮される。
【0086】
空間電極信号分析の1つ又は2つ以上の実施形態によれば、特定の電極を取り囲む電極は、その特定の電極からの距離に反比例して加重される。例えば、カテーテル14は、2ミリメートルなどの距離だけ分離された、一列に並んだ3つの電極を含む。マッピングエンジン101は、第1の電極を分析し、また、重み関数を割り当てることができる。例示的な重み関数は1-0.25×Dを含み、式中、Dは、第1の電極から別の電極までの距離である。次に、マッピングエンジン101は、加重ベクトルを生成し、特定の電極について基準電極からの距離が増加するにつれて、重みが減少する(例えば、遠く離れるほど、加重が小さくなる)。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、特定の距離を越えた電極は、除外することができる(距離は、カテーテルに依存し、いくつかの場合では5ミリメートルであることに留意されたい)。マッピングエンジン101は、次いで、1つ又は2つ以上のアルゴリズム(例えば、数学的多信号分解動作)を使用して、電極加重情報を分析する。1つ又は2つ以上のアルゴリズムの例としては、特異値分解(SVD)、主成分分析(PCA)、及び/又は他の行列分解若しくは因数分解が挙げられるが、これらに限定されない。SVDは、実行列又は複素行列(例えば、電極重み行列W)を因数分解して、正規直交固有基底を有する正方正規行列の固有値分解を一般化することができる。マッピングエンジン101は、電極加重情報を分析することによって、全ての信号内に隠された共通信号成分を推定する。共通信号成分は、最大分解成分/信号を取ることによって、マッピングエンジン101によって推定される。一般的な信号成分の他の例としては、最大共通信号成分及び遠方場の情報の推定が挙げられる。
【0087】
ブロック320で、マッピングエンジン101が、共通信号成分(マッピングエンジン101及び/又は空間電極信号分析によって識別される)をスケーリングする。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、マッピングエンジン101は、共通信号成分だけを使用して、逆分解式を適用することによって共通信号成分を自動的にスケーリングする。次いで、スケーリングされた共通信号を取ることによって、遠方場信号が推定される。
【0088】
1つ又は2つ以上の実施形態によれば、マッピングエンジン101は、分析された電極信号に最も良く適合するように、共通信号成分をスケーリングする。例えば、図3Bのグラフ325に示されるように、スケーリングは、スカラー乗算によって示される。グラフ325は、x軸のサンプルインデックスと、y軸のミリ電圧と、を含む。グラフは、元の信号326、共通信号327、スケーリングされた共通信号328(すなわち、遠方場)、及び残差局所信号329(すなわち、近接場)を示す。更に、残差信号が決定される。すなわち、スケーリングされて適合されると、共通信号成分が減算されて、残差信号だけが残る。残差信号は、純粋な局所情報を推定する。局所情報としては、電極によって検出された電気的活動内の局所場信号を挙げることができるが、これに限定されない。
【0089】
ブロック340で、マッピングエンジン101が、純粋な局所情報を分析して、局所単極活性化を識別/生成/提供する。局所単極活性化は、二重活性化パターンといった複雑な場合を含み得る。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、LATマッピングのために、マッピングエンジン101は、最小純粋局所情報微分を利用して、心周期内の瞬間の活性化を検出する。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、マッピングエンジン101は、電圧(voltage、V)マッピングのために、心周期内の局所活性化ピークツーピークを取る。両方のマップについて、マッピングエンジン101は、いくつかの心周期の最終局所結果を平均して、全ての異なる空間局所結果を組み合わせることによって空間の平滑化を加える。ブロック350で、マッピングエンジン101が結果を表示する。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、マッピングエンジンは、ディスプレイ165のユーザインターフェースの固定ゼロ背景の上に局所単極活性化(例えば、各電極について、全ての局所活性化パターン)を提供する。局所活性化パターンのディスプレイ165による視覚的表現は、整合性分析のための長い持続時間を含むことができる。
【0090】
ここで図4を参照すると、1つ又は2つ以上の例示的な実施形態による(例えば、図1及び/又は図2のマッピングエンジン101によって実施される)方法400が示されている。方法400は、図3Aのブロック310に関して説明されているような、遠方場の情報の推定の一例である。方法400は、ブロック410から始まり、マッピングエンジン101は、複数の電極18及び26から電極信号sを受信する。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、マッピングエンジン101は、カテーテル14の電極26から電極信号sを受信する。
【0091】
ブロック420で、マッピングエンジン101が、複数の電極18及び26の基準電極qを決定する。基準電極qは、カテーテルの電極26のうちのいずれかから選択することができる。更に、1つを超える基準電極qは、方法400を各基準電極qについて実行するように決定することができる。
【0092】
ブロック430で、マッピングエンジン101が、基準電極qに基づく電極重み行列Wに従って重みを決定する。電極重み行列Wは、カテーテル14の構造に基づくことができる。電極重み行列Wは、特定の電極からの距離に反比例してその特定の電極を取り囲む電極の重みを記憶して管理することに留意されたい。高密度マッピングカテーテルの例としては、Biosense Webster,Inc.による、OCTARAY(商標)マッピングカテーテル、PENTARAY(登録商標)NAV ECO高密度マッピングカテーテル、及び/又はOPTRELL(商標)高密度マッピングカテーテルを挙げることができるが、これらに限定されない。図5図6は、例示的なカテーテル14を示す。
【0093】
図5は、1つ又は2つ以上の実施形態によるカテーテル500を示す。カテーテル500は、少なくとも20個の電極などの、複数の電極534を有するカテーテルであり得る。示されるように、複数の電極は、複数のスパイン537にわたって位置するか、又は複数のスパイン537に分散させたちょうど48個の電極を含むことができる。スパイン537別に広い領域に散在するかかる多数の電極534を使用することで、広い領域にわたって大量の電気的活動を一度に捕捉することが可能となる。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、複数のスパイン537は、収縮状態でシースを通して移動させて、図1の患者23の体内に入った時点で拡張され得る。心臓12内の任意の焦点における電気的活動は、典型的には、カテーテル500を前進させ、カテーテル500と心組織とを接触させ、その地点での電気的活動に関連したデータを取得することによって測定され得る。電極534のうちの1つ又は2つ以上を基準電極qとして選択することができる。
【0094】
例えば、電極560が基準電極qに指定される。更に、電極560からの距離が増加するにつれて、重みが減少する。このようにして、電極562は、電極564よりも電極560に近いので、電極562は、電極564よりも重い重みを有する。更に、電極566は、電極562よりも電極560から遠いので、電極566は、電極562よりも軽い重みを有する。電極534の各々の間の距離は、三次元空間に関して(すなわち、x、y、z座標を使用して)測定することができることに留意されたい。その結果、電極564及び566は、同じ重みを有する場合もあれば、有しない場合もある。
【0095】
図6は、1つ又は2つ以上の実施形態によるカテーテル500を示す。カテーテル600は、1つ又は2つ以上の生理的信号を提供する複数の電極605を有するカテーテルである。例えば、電極605の数は、群の任意の組み合わせで配置された少なくとも3つであり得る。図6に示されるように、一群の3つの電極612、614、及び612は、一群の2つの電極622及び624と同じスプライン620上にある。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、カテーテル600は、少なくとも5つのアーム(図6に示される)を含み、また、いくつかの場合では8つ又はそれ以上のアームを含み、電極は、互いに1ミリメートル又は2ミリメートル離れて対又は組で位置決めされた20個又は48個の単極電極を含むことができる(例えば、密度が高くなるほど、性能が向上する)。
【0096】
方法400に戻ると、ブロック440で、マッピングエンジン101が、電極重み行列W及び電極信号sに従って、重みのドット積を決定する。
【0097】
ブロック450で、マッピングエンジン101が、1つ又は2つ以上のアルゴリズムを使用してドット積を処理して、直交信号を生成する。一般に、マッピングエンジン100の1つ又は2つ以上のアルゴリズムは、数学的多信号分解動作を含む。1つ又は2つ以上のアルゴリズムの例としては、特異値分解(SVD)、主成分分析(PCA)、及び/又は他の行列分解若しくは因数分解が挙げられるが、これらに限定されない。SCVは、実行列又は複素行列(例えば、電極重み行列W)を因数分解して、正規直交固有基底を有する正方正規行列の固有値分解を一般化することができる。
【0098】
ブロック460で、マッピングエンジン101が、直交信号のうちの最も大きい信号を選択する。ブロック455で、マッピングエンジン101が、最も大きい信号に対する基準電極qの信号の相関を実施し、投影値を提供する。ブロック470で、マッピングエンジン101が、最も大きい信号及び投影値のテンソル積を取って、遠方場の推定(例えば、空間電極信号分析によって推定された電気的活動の共通信号成分)を提供する。
【0099】
ここで図7を参照すると、1つ又は2つ以上の例示的な実施形態による(例えば、図1及び/又は図2のマッピングエンジン101によって実施される)方法700が示されている。方法700は、図3Aのブロック310に関して説明されるような、心周期特異的電極信号分析の一例である。
【0100】
ブロック708で、マッピングエンジン101が第1の入力を受信する。第1の入力は、グローバルなP×P重み行列を含む。ブロック709で、第2の入力を受信する。第2の入力は、特異的電極インデックスKを含む。
【0101】
ブロック710で、マッピングエンジン101が第1のピーク動作を実行する。第1のピーク動作は、行列の行ベクトルKをピークすることを含む。ブロック715で、マッピングエンジン101が、グローバルなP×P重み行列を対角行列に変換する。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、マッピングエンジン101は、電極Kについて、Wkk=1である特異的P×P重み行列を出力する。
【0102】
ブロック718で、マッピングエンジン101が第3の入力を受信する。第3の入力は、N×P行列内にP個の電極情報を有するN個の時間サンプルを含む。ブロック720で、マッピングエンジン101が行列乗算を実施する。行列乗算は、加重された情報N×P行列を出力するために、N×P行列と対角行列との間の乗算を含む。ブロック725で、マッピングエンジン101が、加重された情報N×P行列の直角分解を実施し、直交成分N×P行列を生成する。
【0103】
ブロック730で、マッピングエンジン101が第2のピーク動作を実行する。第2のピーク動作は、直交成分N×P行列をピークして、最も大きい成分を見出す。最も大きい成分が共通成分である。
【0104】
ブロック735で、マッピングエンジン101が共通成分の直交合成を実施する。マッピングエンジン101は、ブロック725の直交分解から、直交成分のN×P行列を利用することができる。マッピングエンジン101は、合成したN×P行列に基づいて共通成分を提供する。ブロック740で、マッピングエンジン101が列Kを選択する。ブロック745で、マッピングエンジン101が出力を提供する。出力は、電極Kについて推定された遠方場信号を含む。
【0105】
ブロック755で、マッピングエンジン101がまた、列Kを選択して、電極Kの元々の情報を決定する。ブロック760で、マッピングエンジン101が、ブロック745の出力を使用して、元々の情報に遠方場の減算を実施し、残差情報を決定する。ブロック765で、マッピングエンジン101が出力を提供する。出力は、電極ごとに推定された局所情報を含む。
【0106】
図8は、1つ又は2つ以上の実施形態による、電極場所から異なる距離における電気的活性化信号を識別するように構成された例示的なシステムの例示的なカテーテルを示す。示されるように、例示的なマッピングカテーテル500は、心室性頻脈に対処するための心臓アブレーション処置中に実施され得るように、患者23の心臓12の左心室(左心室804の心筋組織を通る横断面として示される)に挿入される。下で更に説明される特定の実施形態によれば、心臓マッピングシステム10のマッピングエンジン101は、左心室804の心内膜と接触する電極、例えば電極810又は電極814に関する、心筋組織の表面下(例えば、心組織内の0.5~10mmの深さ)の電気的活動を三次元で識別及び/又は視覚化するように構成され得る。
【0107】
例えば、マッピングエンジン101は、左心室804の心筋組織の内面の電気的活動だけを検出するのではなく、表面における及び/又は表面の下の1つ又は2つ以上の深さにおける電気的活動を決定するために利用され得る。示される例では、組織深さ820は、左心室804の心筋組織の内面の下の1mm、2mm、3mm、及び4mmであるが、しかしながら、本明細書の方法の適用は、標的の不整脈及び治療処置(例えば、心臓の別の1つ又は複数の心室の内面、その1つ又は複数の心室の心筋組織内の深さ)に関連する心臓の任意の表面の任意の組織深さについて適用され得ることが認識されるであろう。上で論じたように、電気的活動は、近接場成分、活性化時間(例えば、最小微分を使用する)、及び/又は電圧レベル(例えば、最大-最小)として検出又は識別され得る。有利には、図9図11に関して本明細書に記載される例示的な方法は、心筋組織内の各指定の深さ(例えば、深さ820)において異なる電気信号を識別することを可能にする。
【0108】
図9は、図8の例に示されるように、多電極マッピングカテーテルから収集されたECG情報を使用して、心臓の組織内のある距離(例えば、深さ)における電気信号を分離させるための例示的な方法を示す。ブロック902で、特定の電極からの異なる距離又は深さにおけるECG信号を識別するための重みを計算するように、深層学習又は機械学習モデルを訓練する。かかるモデルを訓練するためのデータ収集プロセスは、様々な方法で行われ得る。一例では、データは、臨床前研究を通して収集される。収集されたデータは、心筋組織の表面及び心筋組織内の複数の場所における、電気的活動(例えば、近接場成分、活性化時間(例えば、最小微分を使用する)、及び/又は電圧レベル(例えば、最大-最小))のサンプルを含み得る。例えば、収集されたデータは、複数の時間(例えば、活性化の前、その間、及び/又はその後)における複数の点(例えば、ポイントクラウド、ボクセルクラウド、又は他の三次元構造)の各々に関する電気的活動を含み得る。いくつかの実装形態では、収集されたデータは、電気解剖学的マッピング(electroanatomical mapping、EAM)を介して収集され得る。例えば、いくつかの実装形態では、研究は、心筋梗塞(myocardial infarction、MI)瘢痕又はチャネルを体内に含む動物又は人間のモデルを使用することを含み得る。いくつかの実装形態では、EAMは、電気信号を捕捉して、モデルをマッピングするために実施され得る。その後、研究後の解剖中に、瘢痕又はチャネルの深さ測定値を取って、グラウンドトゥルース深さ情報を取得する。いくつかの実装形態では、訓練データは、シミュレートされたECG信号(例えば、あたかもECG信号が診断用カテーテルに由来しているかのように見え、以前に測定された信号と同様の信号)を含み得る。かかるECG信号を生成することは、実際のデータを変化させること、実際のデータを混合する(例えば、複数の研究又は患者から測定された信号を混合する)こと、(例えば、入力データセットの平均を決定して、データを1つ又は2つ以上の標準偏差内で変化させることによって)統計学的に代表的なデータを生成すること、などによって行われ得る。入力データは、電圧値のアレイなどの任意の好適なフォーマットであり得る。かかる電圧値は、典型的にはmVで与えられ、いくつかの実装形態では0~5mVの範囲で変動し得、又はより広い範囲(例えば、0~10mV、0~20mV、など)にわたり得る。訓練データはまた、異なる部分における組織、心室の解剖学的構造、及び伝導率のシミュレーションも含み得る。例えば、瘢痕をシミュレートする訓練データは、より高い伝導率を有する健常組織と比較して、より低い伝導率を有し得る。
【0109】
追加的に又は代替的に、心筋組織内の異なる組織深さから発生している電波のシミュレーションが行われ得、それによって、電気供給源の既知の深さを有する分析信号を生成する。例えば、瘢痕を伴う及び伴わない、又は異なる深さ及びサイズを有する瘢痕を伴う、心臓組織の異なる構造の変異を含む、心臓の解剖学的構造及び伝導率がシミュレートされ得る。異なる瘢痕、構造のサイズ、貫壁性、部分的な瘢痕、などの周りの変異に関して、カテーテルを使用してその領域の電気的活動をマッピングした場合に測定されるECG信号がシミュレートされ得る。いくつかの実装形態では、解剖学的構造もまた変化し得る。
【0110】
畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network、CNN)、リカレントニューラルネットワーク(recurrent neural network、RNN)、又はトランスフォーマが挙げられるが、これらに限定されない、様々な深層学習又は機械学習モデルアーキテクチャが、収集されたデータの特定の特性に応じて、収集されたデータで訓練され得る。訓練データは、選択されたモデルに送給されて、確率的勾配降下法(stochastic gradient descent、SGD)又はAdam最適化などの、適切な最適化アルゴリズムを使用して訓練され得る。訓練プロセスを通して、モデルは、入力ECG信号をそれらのそれぞれの深さ又は距離と関連付けることを学習し、信号の成分を線形結合するための加重を効果的に学習する。いくつかの実装形態では、入力データは、訓練データ及び試験データに分けられ得、モデルの精度及び/又は感受性の試験及び確認を可能にする。いくつかの実装形態では、入力データは、例えば追加のデータを生成することによって、一般化を高めるように強化され得る(例えば、スケーリング、回転、転位、などを介して入力データから生成され、それと同様の疑似データ又は仮想データであり、影データ、一般化データ、又は同様の用語として称される)。モデルの訓練及び評価に成功すると、組織の様々な深さにおいて信号を識別するために、マッピングエンジン101の実施形態で展開することができる。
【0111】
次のブロック904で、心臓組織と接触するマッピングカテーテルの複数の電極の各々について、空間電極信号分析が実施され得る。空間電極信号分析は、複数の直交信号成分を生成するために、限定されないがSVD又はPCAなどの、多信号分解動作を含む、上記の方法300又は方法400に従って実施され得る。具体的には、いくつかの実装形態では、局所単極信号が識別され、遠方場信号が抑制されて、心室の内面の細胞の電気的活動をマッピングし得る。特定の点において測定されるECG信号は、その点で受信された異なる電気信号の合計であり、いくつかの信号は遠方場であり(より遠隔の心臓組織によって生成される)、他の信号は局所であり(内面の心臓組織によって生成される)、更に他の信号は、これら2つの間にある(すなわち、近傍であるが、表面ではない)。遠方場信号が除去されると、局所及び近傍の信号が保持される。
【0112】
ブロック906で、異なる成分の数学的組み合わせが実施されて、複数の電極内の特定の電極からの異なる距離又は深さにおけるECG信号を識別する。数学的組み合わせは、対象電極からの信号の距離に依存する信号の劣化又は減衰を補償するために、線形結合及びいくつかの実施形態では非線形結合を含む。例えば、いくつかの実装形態では、信号には、加重係数(例えば、aX+bY+cZ)が加えられ得る。他の実装形態では、信号は、組織の深さに基づいて加えられ得(例えば、X(z)+Y(z^2)、zは、表面の下から信号源までの深さである)。他の実装形態では、信号は、電極からの距離(例えば、信号源と電極との間のx、yデカルト距離)に基づいて加えられ得る。様々な加重関数及び/又は指数関数が利用され得る。重み又は加重係数は、ブロック902を参照して上で説明された様式で、そのデータを使用して訓練された深層学習又は他の人工知能(AI)若しくは機械学習(ML)アルゴリズムを採用することによるものを含む、無数の方法で調整することができる。マッピングエンジン101は、直交信号に含まれる空間情報(例えば、x、y座標、x、y、z座標、z深さ測定値、など)を考慮することによって、及び数学的組み合わせを通してそれらの寄与を操作することによって、心筋組織内の深さを含む特定の電極の周りの様々な距離から発生している電気信号を区別及び抽出(すなわち、識別)し得る。
【0113】
最後に、ブロック908で、電極からの複数の距離又は深さのECG信号がディスプレイ上に視覚化される。視覚化は、従来の電位図21の形態を取り得、ディスプレイに示される電位図は、複数の距離、例えば、心筋組織内への組織深さ(例えば、1、2、3、4、...、10mm)に基づいて選択可能であり得る。追加的に又は代替的に、視覚化は、電気解剖学的3Dの形態を取り得、マップは、複数の「シェル」を含み、各シェルは、心筋組織内への特定の組織深さ(例えば、1、2、3、4、...、10mm又はそれ以上)に対応する。各シェルは、Biosense WebsterからCARTO(登録商標)3システムで入手可能なものなどの3D心臓マップにおいて、組織の表面に沿って信号伝搬を表すように、電気解剖学的システムによって使用されるものと同じ様式で構築され得る。いくつかの実装形態では、視覚化は、ポイントクラウド、ボクセルクラウド、又は他の三次元表現を提供し得る。いくつかの実装形態では、視覚化は、組織内の選択可能な深さにおいて平滑面を示し得る(例えば、深さ2mmのマップを示す)。ユーザ又は医師によって異なる深さが選択され得る。いくつかの実装形態では、視覚化は、異なる深さを周期的に示すようにアニメーション化され得る(例えば、経時的に順番に、又は一回に1つの点において、各深さを反復的にステップスルーする)。
【0114】
図10は、図8の例に示されるように、多電極マッピングカテーテルから収集されるECG情報を使用して心臓の組織内の距離(例えば、深さ)における電気信号を分離させるための、代替の例示的な方法を示す。ブロック1002から始まって、様々な条件について、シミュレートされたデータが生成される。より具体的には、一組のシミュレートされたデータが生成され得、このデータは、様々なカテーテルの場所、膜電位の場所、及び心筋組織の活性化状態(例えば、健康、瘢痕化、線維性)が挙げられるが、これらに限定されない、様々な状態を含む。データは、所与の時点での電位のアレイ、座標及び電圧値(例えば{x、y、z、v})を有するボクセルのアレイ、深さマップ、又は任意の他のかかるフォーマット、などの、任意の好適なフォーマットであり得る。シミュレーションはまた、好ましくは、膜電位(例えば、0.5mV、1mV、0.5V、又は任意の他の適切な電圧閾値などの、決定された閾値電圧)の非活性化状態から活性状態への転移点も考慮する。
【0115】
次のブロック1004として、ニューラルネットワークが、シミュレートされたデータを使用して訓練され、ネットワークが、多電極カテーテルからの入力ECG読み取り値(又は様々な活性化状態における心筋組織のモデルからのシミュレートされた読み取り値)として取り、心筋組織の中で最も近い活性化までの推定距離を出力する。訓練プロセスは、コスト関数を使用して、具体的には、各点でのネットワーク出力と、電極からの活性化の距離との間の差を使用して、ネットワークの重みを調整することを含む。いくつかの実装形態では、上で論じたように、入力又はシミュレートされたデータは、第1の組の訓練データ及び第2の組の試験データに分けられ得る。重みは、一般のデータに関する訓練済みモデルの精度及び/又は感度を高めるように修正され得る。
【0116】
ブロック1006で、マッピングエンジン101が、訓練済みモデルを実装して、多電極カテーテルからのECG読み取り値を分析して、各電極について、最も近い活性化までの推定距離をリアルタイムで出力し得る。最も近い活性化は、心筋組織の内面にあり得るか、又はより深い組織内にあり得、また、活性化までの深さ又は距離によって識別され得る。いくつかの実装形態では、これは、複数の深さについて繰り返され得る(例えば、マッピングエンジン101は、訓練済みモデルを実装して多電極カテーテルからのECG読み取り値を分析し、各電極について、1mmなどの第1の深さにおける最も近い活性化までの推定距離を出力し、次いで、2mmの深さ、3mmの深さ、などについて工程を繰り返し得る)。他の実装形態では、プロセスは、反復的である必要はなく、代わりに、訓練済みモデルは、深さ及び各深さ当たりの電圧信号のリストを提供し得る。
【0117】
最後に、ブロック1008で、電極からの複数の距離又は深さについて、電気信号がディスプレイ上に視覚化される。例示的な視覚化は、図9のブロック908に関して上で説明したような形態を取り得る。
【0118】
図11は、図8の例に示されるように、多電極マッピングカテーテルから収集されるECG情報を使用して心臓の組織内の距離(例えば、深さ)における電気信号を分離させるための、更に別の代替的な例示的な方法を示す。ブロック1102で、マッピングエンジン101が、表面に分配されて心臓組織内に画定された一群の源(例えば、双極子)を含む数学モデルを実装し得、このモデルは、好ましくは、双極子ソースの空間分布、活性化時間、及び他の関連パラメータの表現を含む。
【0119】
次に、ブロック1104で、各電極について、数学モデル及び既知の電極位置を適用して、各電極場所における期待信号(すなわち、場の投影)を計算する。この計算は、双極子活性化及びそれらの位置に基づいて、各電極における電位を決定することを含み得る。
【0120】
次いで、ブロック1106で、最適化及び逆問題解法を適用して、入力されたECG読み取り値を、計算された場の投影と適合させる(すなわち、最良に整合させる)双極子活性化を決定する。いくつかの実施形態では、最適化及び逆問題解法は、反復的に双極子活性化を調整して、目的関数を最小にするために、勾配降下、レーベンバーグマーカート、又は遺伝的アルゴリズムなどの、最適化アルゴリズムを含み得る。
【0121】
最後に、ブロック1108で、電極からの複数の距離又は深さについて、電気信号がディスプレイ上に視覚化される。例示的な視覚化は、図9のブロック908に関して上で説明したような形態を取り得る。
【0122】
図中のフロー図及びブロック図は、本発明の様々な実施形態に基づくシステム、方法、及びコンピュータプログラム製品の可能な実装形態のアーキテクチャ、機能性、及び動作を示す。この点に関して、流れ図又はブロック図における各ブロックは、示された論理機能を実装するための1つ又は2つ以上の実行可能な命令を含むモジュール、セグメント、又は命令の部分を表し得るものである。いくつかの代替的な実装形態において、ブロックに示される機能は、図に示される順序以外の順序で行われてもよい。例えば、連続して示す2つのブロックは、実際に、実質的に同時に実行されてもよく、あるいはそれらのブロックは、ときには、関連する機能性に応じて、逆の順序で実行されてもよい。また留意されたい点として、ブロック図及び/又はフロー図の各ブロック、並びにブロック図及び/又はフロー図のブロックの組み合わせは、特定の機能又は動作を実施する専用のハードウェアベースシステムによって実装されてもよく、あるいは、専用のハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせを動作させること又は実行することもできる。特徴及び要素が特定の組み合わせにて上記で説明されたが、当業者であれば、各特徴又は要素を単独で使用することもでき、又は他の特徴及び要素と組み合わせて使用することもできることを理解するであろう。加えて、本明細書に説明される方法は、コンピュータ又はプロセッサで実行するために、コンピュータ可読媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアにおいて実装され得る。コンピュータ可読媒体は、本明細書で使用される場合、電波又は他の自由に伝搬する電磁波、導波管若しくは他の伝送媒体を通って伝搬する電磁波(例えば、光ファイバケーブルを通過する光パルス)、又は動線を通して伝送される電気信号などの、それ自体が一過性の信号であるものとして解釈されるべきではない。
【0123】
コンピュータ可読媒体の例としては、電気信号(有線又は無線接続を介して送信される)及びコンピュータ可読記憶媒体が挙げられる。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、内部ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気媒体、光磁気媒体、コンパクトディスク(compact disk、CD)及びデジタル多用途ディスク(digital versatile disk、DVD)などの光学媒体、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(erasable programmable read-only memory、EPROM又はフラッシュメモリ)、スタティックランダムアクセスメモリ(static random access memory、SRAM)、及びメモリスティックなどが挙げられるが、これらに限定されない。プロセッサをソフトウェアとともに使用して、端末、基地局、又は任意のホストコンピュータで使用するための無線周波数送受信機を実装することができる。
【0124】
本明細書で使用される用語は、あくまで特定の実施形態を説明する目的のものに過ぎず、限定を目的としたものではない。本明細書で使用するとき、文脈上特に明記されない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の形態をも含むものとする。「含む(comprise)」及び/又は「含んでいる(comprising)」という用語は、本明細書で用いられる場合、記載された特徴、整数、工程、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を示すものであるが、1つ若しくは他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を除外するものではない点を更に理解されたい。本明細書の異なる実施形態の説明は例示の目的で示されたものであるが、網羅的であることも開示される実施形態に限定されることも意図していない。多くの改変及び変形が、記載される実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実用的な用途、又は市場に見られる技術と比較した技術的改良点を最も良く説明するため、又は当業者による本明細書に開示される実施形態の理解を可能とするために選択されたものである。
【0125】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されるマッピングエンジンによって、カテーテルの複数の電極からの電気的活動を受信することと、
前記電気的活動内で、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することと、を含む、方法。
(2) 前記電気的活動内で、前記心臓組織の心内膜表面から発生している電気信号を識別することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記マッピングエンジンによって、前記複数の電極のうちの各電極について、前記電気的活動の空間電極信号分析を実施することを更に含み、
心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することが、前記電気的活動内の各信号成分に、訓練済みモデルを介して決定された対応する重みを乗算することを更に含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の前記信号成分の非線形結合を計算することを更に含む、実施態様3に記載の方法。
【0126】
(6) 心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、ニューラルネットワークへの入力として、前記複数の電極からの前記電気的活動を提供することと、前記ニューラルネットワークを介して、前記複数の電極のうちの少なくとも1つについて、対応する電極から最も近い活性化までの推定距離を決定することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記複数の電極の各々について、数学モデル及び前記複数の電極の既知の電極位置を適用して、各既知の電極位置における期待信号を計算することを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 受信された前記電気的活動が、前記複数の電極からのリアルタイム心電図(ECG)読み取り値を含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、シミュレートされたECGデータで訓練された機械学習モデルを実行することを含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記マッピングエンジンによって、前記心臓組織内の指定の深さにおける識別された前記電気信号の視覚的表示を生成することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
【0127】
(11) システムであって、
マッピングエンジンのソフトウェアを記憶するメモリと、
1つ又は2つ以上のプロセッサであって、前記マッピングエンジンを実行して、
カテーテルの複数の電極からの電気的活動を受信して、
前記電気的活動内で、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別するように構成された、1つ又は2つ以上のプロセッサと、を含む、システム。
(12) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、前記電気的活動内で、前記心臓組織の心内膜表面から発生している電気信号を識別するように更に構成されている、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、前記複数の電極のうちの各電極について、前記電気的活動の空間電極信号分析を実施するように更に構成されており、
心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することを含む、実施態様11に記載のシステム。
(14) 前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することが、前記電気的活動内の各信号成分に、訓練済みモデルを介して決定された対応する重みを乗算することを更に含む、実施態様13に記載のシステム。
(15) 心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の前記信号成分の非線形結合を計算することを更に含む、実施態様13に記載のシステム。
【0128】
(16) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、ニューラルネットワークへの入力として、前記複数の電極からの前記電気的活動を提供し、前記ニューラルネットワークを介して、前記複数の電極のうちの少なくとも1つについて、対応する電極から最も近い活性化までの推定距離を決定するように更に構成されている、実施態様11に記載のシステム。
(17) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、前記複数の電極の各々について、数学モデル及び前記複数の電極の既知の電極位置を適用して、各既知の電極位置における期待信号を計算するように更に構成されている、実施態様11に記載のシステム。
(18) 受信された前記電気的活動が、前記複数の電極からのリアルタイム心電図(ECG)読み取り値を含む、実施態様11に記載のシステム。
(19) 前記プロセッサが、シミュレートされたECGデータで訓練された機械学習モデルを実行するように更に構成されている、実施態様11に記載のシステム。
(20) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、前記心臓組織内の指定の深さにおける識別された前記電気信号の視覚的表示を生成するように更に構成されている、実施態様11に記載のシステム。
【0129】
(21) 方法であって、
1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)によって実行されるマッピングエンジン(101)によって、カテーテル(14)の複数の電極(26)からの電気的活動を受信することと、
前記電気的活動内で、心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することと、を含む、方法。
(22) 前記電気的活動内で、前記心臓組織(12)の心内膜表面から発生している電気信号を識別することを更に含む、実施態様21に記載の方法。
(23) 前記マッピングエンジン(101)によって、前記複数の電極(26)のうちの各電極(26)について、前記電気的活動の空間電極信号分析を実施することを更に含み、
心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することを含む、実施態様21に記載の方法。
(24) 前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することが、前記電気的活動内の各信号成分に、訓練済みモデルを介して決定された対応する重みを乗算することを更に含む、実施態様23に記載の方法。
(25) 心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の前記信号成分の非線形結合を計算することを更に含む、実施態様23に記載の方法。
【0130】
(26) 心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することが、ニューラルネットワークへの入力として、前記複数の電極(26)からの前記電気的活動を提供することと、前記ニューラルネットワークを介して、前記複数の電極(26)のうちの少なくとも1つについて、対応する電極(26)から最も近い活性化までの推定距離を決定することと、を含む、実施態様21に記載の方法。
(27) 心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することが、前記複数の電極(26)のうちの各電極(26)について、数学モデル及び前記複数の電極(26)の既知の電極位置を適用して、各既知の電極位置における期待信号を計算することを含む、実施態様21に記載の方法。
(28) 受信された前記電気的活動が、前記複数の電極(26)からのリアルタイム心電図(ECG)読み取り値を含む、実施態様21に記載の方法。
(29) 心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、シミュレートされた心電図(ECG)データで訓練された機械学習モデルを実行することを含む、実施態様21に記載の方法。
(30) 前記マッピングエンジン(101)によって、前記心臓組織(12)内の指定の深さにおける識別された前記電気信号の視覚的表示(20)を生成することを更に含む、実施態様21に記載の方法。
【0131】
(31) システムであって、
マッピングエンジン(101)のソフトウェアを記憶するメモリ(62)と、
1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)であって、前記マッピングエンジン(101)を実行して、
カテーテル(14)の複数の電極(26)からの電気的活動を受信して、
前記電気的活動内で、心臓組織(12)内の深さ(802)から発生している電気信号を識別するように構成された、1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)と、を含む、システム。
(32) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)が、前記電気的活動内で、前記心臓組織(12)の心内膜表面から発生している電気信号を識別するように更に構成されている、実施態様31に記載のシステム。
(33) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)が、前記複数の電極(26)のうちの各電極(26)について前記電気的活動の空間電極信号分析を実施するように更に構成されており、
心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することを含む、実施態様31に記載のシステム。
(34) 前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することが、前記電気的活動内の各信号成分に、訓練済みモデルを介して決定された対応する重みを乗算することを更に含む、実施態様33に記載のシステム。
(35) 心臓組織(12)内の深さ(820)から発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の前記信号成分の非線形結合を計算することを更に含む、実施態様33に記載のシステム。
【0132】
(36) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)が、ニューラルネットワークへの入力として、前記複数の電極(26)からの前記電気的活動を提供し、前記ニューラルネットワークを介して、前記複数の電極(26)のうちの少なくとも1つについて、対応する電極(26)から最も近い活性化までの推定距離を決定するように更に構成されている、実施態様31に記載のシステム。
(37) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)が、前記複数の電極(26)のうちの各電極(26)について、数学モデル及び前記複数の電極(26)の既知の電極位置を適用して、各既知の電極位置における期待信号を計算するように更に構成されている、実施態様31に記載のシステム。
(38) 受信された前記電気的活動が、前記複数の電極(26)からのリアルタイム心電図(ECG)読み取り値を含む、実施態様31に記載のシステム。
(39) 前記プロセッサが、シミュレートされた心電図(ECG)データで訓練された機械学習モデルを実行するように更に構成されている、実施態様31に記載のシステム。
(40) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサ(61)が、前記心臓組織(12)内の指定の深さにおける識別された前記電気信号の視覚的表示(20)を生成するように更に構成されている、実施態様31に記載のシステム。
【0133】
(41) 方法であって、
1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されるマッピングエンジンによって、カテーテルの複数の電極からの電気的活動を受信することと、
前記電気的活動内で、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することと、を含む、方法。
(42) 前記電気的活動内で、前記心臓組織の心内膜表面から発生している電気信号を識別することを更に含む、実施態様41に記載の方法。
(43) 前記マッピングエンジンによって、前記複数の電極のうちの各電極について、前記電気的活動の空間電極信号分析を実施することを更に含み、
心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することを含む、実施態様41又は42に記載の方法。
(44) 前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することが、前記電気的活動内の各信号成分に、訓練済みモデルを介して決定された対応する重みを乗算することを更に含む、実施態様43に記載の方法。
(45) 心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の前記信号成分の非線形結合を計算することを更に含む、実施態様43に記載の方法。
【0134】
(46) 心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、ニューラルネットワークへの入力として、前記複数の電極からの前記電気的活動を提供することと、前記ニューラルネットワークを介して、前記複数の電極のうちの少なくとも1つについて、対応する電極から最も近い活性化までの推定距離を決定することと、を含む、実施態様41~45のいずれかに記載の方法。
(47) 心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記複数の電極の各々について、数学モデル及び前記複数の電極の既知の電極位置を適用して、各既知の電極位置における期待信号を計算することを含む、実施態様41~46のいずれかに記載の方法。
(48) 受信された前記電気的活動が、前記複数の電極からのリアルタイム心電図(ECG)読み取り値を含む、実施態様41~47のいずれかに記載の方法。
(49) 心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、シミュレートされた心電図(ECG)データで訓練された機械学習モデルを実行することを含む、実施態様41~48のいずれかに記載の方法。
(50) 前記マッピングエンジンによって、前記心臓組織内の指定の深さにおける識別された前記電気信号の視覚的表示を生成することを更に含む、実施態様41~49のいずれかに記載の方法。
【0135】
(51) システムであって、
マッピングエンジンのソフトウェアを記憶するメモリと、
1つ又は2つ以上のプロセッサであって、前記マッピングエンジンを実行して、
カテーテルの複数の電極からの電気的活動を受信して、
前記電気的活動内で、心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別するように構成された、1つ又は2つ以上のプロセッサと、を含む、システム。
(52) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、前記電気的活動内で、前記心臓組織の心内膜表面から発生している電気信号を識別するように更に構成されている、実施態様51に記載のシステム。
(53) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、前記複数の電極のうちの各電極について、前記電気的活動の空間電極信号分析を実施するように更に構成されており、
心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することを含む、実施態様51又は52に記載のシステム。
(54) 前記電気的活動内の信号成分の線形結合を計算することが、前記電気的活動内の各信号成分に、訓練済みモデルを介して決定された対応する重みを乗算することを更に含む、実施態様53に記載のシステム。
(55) 心臓組織内の深さから発生している電気信号を識別することが、前記電気的活動内の前記信号成分の非線形結合を計算することを更に含む、実施態様53に記載のシステム。
【0136】
(56) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、ニューラルネットワークへの入力として、前記複数の電極からの前記電気的活動を提供し、前記ニューラルネットワークを介して、前記複数の電極のうちの少なくとも1つについて、対応する電極から最も近い活性化までの推定距離を決定するように更に構成されている、実施態様51~55のいずれかに記載のシステム。
(57) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、前記複数の電極の各々について、数学モデル及び前記複数の電極の既知の電極位置を適用して、各既知の電極位置における期待信号を計算するように更に構成されている、実施態様51~56のいずれかに記載のシステム。
(58) 受信された前記電気的活動が、前記複数の電極からのリアルタイム心電図(ECG)読み取り値を含む、実施態様51~57のいずれかに記載のシステム。
(59) 前記プロセッサが、シミュレートされた心電図(ECG)データで訓練された機械学習モデルを実行するように更に構成されている、実施態様51~58のいずれかに記載のシステム。
(60) 前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、前記心臓組織内の指定の深さにおける識別された前記電気信号の視覚的表示を生成するように更に構成されている、実施態様51~59のいずれかに記載のシステム。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【外国語明細書】