(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010067
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】軟磁性体平面を有するパネル、及び該パネルの非磁性壁面への設置方法
(51)【国際特許分類】
A47G 29/00 20060101AFI20250109BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A47G29/00 A
E04F13/08 H
A47G29/00 U
A47G29/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106190
(22)【出願日】2024-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2023109852
(32)【優先日】2023-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000110893
【氏名又は名称】ニチレイマグネット株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前橋 清
(72)【発明者】
【氏名】前橋 義幸
(72)【発明者】
【氏名】玉熊 千秋
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雅治
(72)【発明者】
【氏名】笠原 修
【テーマコード(参考)】
2E110
3K100
【Fターム(参考)】
2E110AA60
2E110AB04
2E110BB03
2E110BB04
2E110BC02
2E110DC15
2E110GA22W
2E110GB03W
2E110GB42X
3K100AA13
3K100AB04
3K100AE01
3K100AF04
3K100AG03
3K100AH30
3K100AJ02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本来磁石が吸着しなかった石膏ボードや木質壁等の非磁性壁面を、磁石の吸着する壁面に変貌させる軟磁性体平面を有するパネルにおいて、構造が簡単且つ軽量で安価に製造できしかも非磁性壁面への設置が容易に実現できるようにすること。
【解決手段】軟磁性体を材質とした薄い軟磁性板を備えるパネルP1であって、三角形又は多角形の平面4を有し、前記平面4の少なくとも二辺において該平面4から20度以上60度以下に折り曲げられた側面7bをそれぞれ有すると共に、該側面7bを成す軟磁性板が、前記平面4に平行になるように更に折り曲げられて底面8bを成している構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性体を材質とした薄い軟磁性板を備えるパネルであって、三角形又は多角形の平面を有し、前記平面の少なくとも二辺において該平面から20度以上60度以下に折り曲げられた側面をそれぞれ有すると共に、該側面を成す軟磁性板が、前記平面に平行になるように更に折り曲げられて底面を成していることを特徴とする、軟磁性体平面を有するパネル。
【請求項2】
側面に該側面を表面から裏面に貫通する小穴を設けていることを特徴とする、請求項1に記載の軟磁性体平面を有するパネル。
【請求項3】
底面の先端が、側面に設けた小穴の位置から該側面に垂直な方向に位置することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の軟磁性体平面を有するパネル。
【請求項4】
パネルの展開図を想定した軟磁性板を、打ち抜き法等の加工で製作し折り曲げられたことを特徴とする、請求項1に記載の軟磁性体平面を有するパネル。
【請求項5】
平面の裏側に、プラスチックやその発泡体又は木材等の補強材を装着していることを特徴とする、請求項1に記載の軟磁性体平面を有するパネル。
【請求項6】
軟磁性板の表面に表装又は塗装が施されていることを特徴とする、請求項1に記載の軟磁性体平面を有するパネル。
【請求項7】
軟磁性板における平面の一部に開口を設けるとともに、この開口を被覆するように平面における非開口部に固着した強磁性シートを有することを特徴とする、請求項1に記載の軟磁性体平面を有するパネル。
【請求項8】
請求項3に記載のパネルを非磁性壁面に設置する方法であって、
側面に開けられた小穴に通したピン又は釘の先端でパネル底面の先端を探し当て、ピン又は釘を非磁性壁面に押し込むことを特徴とする、軟磁性体平面を有するパネルの非磁性壁面への設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性体平面を有するパネル、及び該パネルの非磁性壁面への設置方法に関する。より詳しくは、磁気吸着力でもって物品を係留する平面を有するパネルと、該パネルを非磁性壁面に設置して、本来磁石が吸着しなかった非磁性壁面を、磁石の吸着する壁面に変貌させるときの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁性パネルが人気を呼んでいる。磁性パネルは磁石の吸着する壁材であり、壁面として用いた場合、裏面に磁石を装着した額縁やホワイトボード、棚などの物品を磁力により着脱自在に固定できる。磁性パネルでは、これら物品の固定に取付金具等の部品が不要であり、固定の際に工具を要さないため、元々の壁面状態が維持できるとともに配置変えなどが自由且つ容易にできる(特許文献1参照)。
磁性パネルは、例えば軟磁性体を非磁性基材に貼るか装着することで達成される。該パネルは難燃性や不燃性が謳われ、非磁性基材がパネルの剛性を担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-36650号公報
【特許文献2】実用新案登録第3140291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、本来磁石が吸着しなかった石膏ボードや木質壁等の非磁性壁面を、磁石の吸着する壁面に変貌させるには、既設の非磁性壁にねじや釘で磁性パネルを固定する方法が主である。例えば特許文献2では、石膏ボード等の壁に重量物を高強度に取り付けることができる壁構造体を開示している。この壁構造体では、固定用のピンを斜めに打つが、その際、ガイドのための下穴の開いた金具を取り付け、打ち込んでいる。この技術を上記磁性パネルの取付けに用いることもできるが、別途金具を有するため、部品点数が多く構造が混み入るとともに全体としての重量とコストも増す。またピンを適切な角度で打ち込む作業に手間を要する。
【0005】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、本来磁石が吸着しなかった石膏ボードや木質壁等の非磁性壁面を、磁石の吸着する壁面に変貌させる軟磁性体平面を有するパネルにおいて、構造が簡単且つ軽量で安価に製造できしかも非磁性壁面への設置が容易に実現できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために次のような手段をとる。なお、本欄(「課題を解決するための手段」の欄)において各構成手段に付した括弧書きの符号は、後述する代表的な実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すための参考用のものであり、本発明の構成手段をこれに限定するものではない。
【0007】
本発明の一の態様は、軟磁性体を材質とした薄い軟磁性板を備えるパネル(P1,P2,P3)であって、三角形又は多角形の平面(4,41)を有し、前記平面(4,41)の少なくとも二辺において該平面(4,41)から20度以上60度以下に折り曲げられた側面(7,71)をそれぞれ有すると共に、該側面(7,71)を成す軟磁性板が、前記平面(4,41)に平行になるように更に折り曲げられて底面(8,81)を成していることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の態様では、側面(7,71)に該側面を表面から裏面に貫通する小穴(3,31)を設けていることを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様では、底面(8,81)の先端(80,810)が、側面(7,71)に設けた小穴(3,31)の位置から該側面(7,71)に垂直な方向に位置することを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様では、パネル(P1,P2,P3)は、その展開図を想定した軟磁性板を、打ち抜き法等の加工で製作し折り曲げられたことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様では、平面(4,41)の裏側に、プラスチックやその発泡体又は木材等の補強材(2,21)を装着していることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様では、軟磁性板の表面に表装又は塗装が施されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様では、軟磁性板における平面(4)の一部に開口(16)を設けるとともに、この開口(16)を被覆するように平面(4)における非開口部(17)に固着した強磁性シート(40)を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様では、パネル(P1,P2,P3)を非磁性壁面(5,51)に設置する方法であって、側面(7,71)に開けられた小穴(3,31)に通したピン(6)又は釘の先端で底面(8,81)の先端(80,810)を探し当て、ピン(6)又は釘を非磁性壁面(5,51)に押し込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、本来磁石が吸着しなかった石膏ボードや木質壁等の非磁性壁面を、磁石の吸着する壁面に変貌させる軟磁性体平面を有するパネルにおいて、構造が簡単且つ軽量で安価に製造できしかも非磁性壁面への設置が容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態のパネルの使用例を示す外観斜視図である。
【
図2】第1実施形態のパネルの構造を示す斜視図であり、(a)図は表側から見たときの図、(b)図は裏側から見たときの図を示す。
【
図3】第1実施形態のパネルを三方向から見たときの2次元図であり、(a)図は正面断面図、(b)図は表側から見た平面図、(c)図は裏側から見た底面図である。
【
図4】本発明のパネルを非磁性壁面に設置する手順を示す側断面図である。
【
図5】設置後のパネルに物品を磁石で係留した際の状態を説明するための側断面図である。
【
図6】第2実施形態のパネルの軟磁性シートの展開図である。
【
図7】第2実施形態のパネルを円柱の側面を成す非磁性壁面に設置した状態を示す斜視図である。
【
図8】第3実施形態のパネルの斜視図であり、(a)図は外観図を示し、(b)図は分解図を示す。
【
図9】第3実施形態のパネルに用いる本体部の変形例の斜視図であり、(a)図は第1の変形例を示し、(b)図は第2の変形例を示す。
【
図10】パネルの取外し補助具を示す斜視図であり、(a)図はパネルの非取外し時の状態、(b)図はパネルの取外し時の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態のパネルP1の使用例を示す外観斜視図である。
図2は第1実施形態のパネルP1の構造を示す外観斜視図であり、(a)図は表側、即ち物品を磁気吸着させる面の側から見たときの図、(b)図は裏側、即ち非磁性壁面に接する側から見たときの図を示す。
図3は第1実施形態のパネルP1を三方向から見たときの2次元図であり、(a)図は正面断面図、(b)図は(a)図のパネルP1をAの矢印の方向、即ち表側から見た平面図、(c)図は(a)図のパネルP1をBの矢印の方向、即ち裏側から見た底面図である。
図4は本発明のパネルP1を非磁性壁面5に設置する手順を示す側断面図、
図5は設置後のパネルP1に物品Lを磁石で係留した際の状態を説明するための側断面図である。なお、断面図のハッチングは省略している。
また、これら各図では、パネル表面の表装材や塗装の部分は省略している。また、同じ数字の符号であっても、説明又は他の図面との関連の上で特に区別した方がわかりやすい箇所については、符号の数字の直後に「a」「b」等の小文字のアルファベットを付した。また本明細書では「磁気吸着」のことを単に「磁着」と記すことがある。
【0018】
パネルP1は、
図1のように、石膏ボードや木質壁等の非磁性壁面5に取り付けることにより、本来磁石が吸着しなかった壁面を、磁石の吸着する壁面、すなわち磁気吸着力でもって物品Lを係留する壁面(磁性壁面)に変貌させるためのものであり、
図2,3のように、本体部1と補強材2を有する。物品Lとしては、裏面にマグネットシートや焼結磁石の貼り付けられたアイテム、例えばフック、アクセサリー、小物置棚などがある。
本体部1は、所定の厚さの軟磁性板を材質とし、
図2,3のように、平面4と、平面4の上下両側に一対として設けられた側面7aと、平面4の左右両側に一対として設けられた側面7bと、平面4を基準に上下一対として設けられた底面8aと、平面4を基準に左右一対として設けられた底面8bを備える。
【0019】
本発明で採用する軟磁性板は、磁性鋼材(例えばSS400)、磁性ステンレス(例えばSUS416)等が使用され、その厚さは特に制限されないが、0.2~0.5mmが特に好ましい。
厚いと機械強度は十二分だが、パネルへの加工が難しくなると共に重量が大きくなり好ましくない。逆に薄いと、軽量且つ打ち抜き加工や折り曲げ加工が容易となるが、機械強度が低下すると共にパネルへの永久磁石の磁気吸着力も低下する傾向があり、本発明の目的の達成が難しくなる。
後述する実施例では、厚さ0.35mmの圧延磁性鋼鈑を採用した。
【0020】
該軟磁性板は、パネルに加工する前から表装が施され或いは塗装されていてもよいが、加工後の仕上げ段階で施されてもよい。
但しその表装材や塗装の厚さが0.2~0.3mmを超えると、パネルに磁着させる永久磁石の種類によっては磁気吸着力が低下する場合がある。
【0021】
平面4は、
図3のように、長辺40aと短辺40bをもつ長方形状を呈し、表側が磁石を吸着するときの面である。
一対の側面7aは、平面4における対向する長辺40aでそれぞれ裏側に向けた折り曲げ加工により一定角度(約50度
図5のθ参照)で傾斜し、長辺40aから見て末広がりの等脚台形状を成す。
一対の側面7bは、平面4における対向する短辺40bでそれぞれ裏側に向けた折り曲げ加工により一定角度(約50度)で傾斜し、短辺40bから見て末広がりの等脚台形状を成す。これらの角度は約50度としたが、20度以上60度以下であればよい。
一対の底面8aは、側面7aにおける対向する長辺70aでそれぞれ裏側に向けた折り曲げ加工により平面4に平行とされ、長辺70aから見て末窄まりの等脚台形状を成す。
一対の底面8bは、側面7bにおける対向する短辺70bでそれぞれ裏側に向けた折り曲げ加工により平面4に平行とされ、短辺70bから見て末窄まりの等脚台形状を成す。
【0022】
ここで、一対の底面8aと一対の底面8bとは、平面4に平行な同一平面上にある。また、側面7a及び側面7bには、それぞれ表側から裏側に90度角で貫通する小穴3a及び小穴3bを備える。上側の側面7aにおける小穴3aは、等脚台形の長さ方向に沿った一直線上に等間隔で5個備え、下側の側面7aにおける小穴3aは、等脚台形の長さ方向に沿った一直線上に等間隔で3個備える。また、左右の側面7bにおける小穴3bは、等脚台形の長さ方向に沿った一直線上に等間隔で3個備える。
【0023】
そして、
図5のように、小穴3aから側面7aに対して垂直な方向に、底面8aの先端80aが位置し、同様に小穴3bから側面7bに対して垂直な方向に、底面8bの先端80bが位置している。つまり、小穴3aの中心軸14aの方向に底面8aの先端80aが配置され、小穴3bの中心軸14bの方向に底面8bの先端80bが配置される。
小穴3a及び小穴3bは、非磁性壁面5に固定するための、先尖りとされ後端に径大の頭を備えたピン6(
図4参照)を挿入するための穴である。
【0024】
補強材2は、パネルP1の平面部分の裏側に組み込まれている。補強材2はプラスチックやその発泡体、或いは木材等の板材であり、比重が小さいことが好ましい。補強材2は、平面4がペコペコと不安定に凹むことを防ぐための板状体で、平面4の裏に、例えば両面粘着テープや接着剤で固定され、結果的にパネルP1の機械強度を高めている。補強材2は、裏側(
図3参照)の底板8の各先端80a,80bで形成できる長方形か若しくはそれよりやや小さい面積の底面を有している。
【0025】
次に、本発明のパネルP1を非磁性壁面5に設置する方法を説明する。
図4において、非磁性壁面5上で本発明のパネルP1を設置する位置を決めたら、片方の手でパネルP1を支えながら他方の手でもってピン6を側面7aの小穴3aに差し込み、ピン6の先端で底面8aの先端80aを探し当てる。このとき、小穴3aのあけられている側面7aにピン6が略垂直であることを確認する。確認できたらピン6の頭を側面7aに向けて垂直方向に押し込む。押し込んだり打ち込んだりする作業は誰か他人に頼んでもよいが、例えば非磁性壁面5が石膏ボードの場合、10円硬貨を当てて指で押し込むことが可能である。
【0026】
図4の下方にあるピン6は、非磁性壁面5に押し込まれた状態を示している。
図5はパネルP1が非磁性壁面5に設置された状態で、パネルP1に係留された物品Lの比較的軽い重量Wが下方へ掛かっている状態を示している。
軟磁性板は剛性を有しているので、重量Wは底面8aの先端80aで接しているピン6に伝わり、壁面に固定されているピン6が支えている。ここにピン6は、壁面に対して20度以上上向きになっているので、しっかりと支えることができる。
【0027】
ピン6を通す小穴3は、設置したパネルP1における上方(垂直方向)にある側面7aに数多く設けることが好ましい。押し込むピン6が多いほど耐荷重が増えるからである。
他方で、少なくとも他の側面7もピン6で固定することが重要である。それは、平面4を上方の直線状に並んだピン6の両端と、直線上にない他の点が作る三角形の頂点でパネルP1を固定することになるからである。このことから、パネルP1では、下方の側面7aの小穴3a及び側面7bの小穴3bについても同様な作業でピン6を通して留める。
【0028】
本発明のパネルP1は、所定の厚さの磁性鋼鈑又は磁性ステンレスをレーザー照射、或いは打ち抜き法でもって所定の形状にカットし、それを順次折り曲げて作られる。側面7に設ける小穴3もこのとき開けておく。
【0029】
本発明のパネルP1の平面4は、少なくとも2つの直線状の端、つまり長辺40a及び短辺40bで囲まれている。その形状は正方形、長方形、ひし形、又は五角形以上の多角形若しくは三角形でもよいが、曲線部分があってもよい。曲線を取り入れるとデザイン的には多様な表現が可能となるので、壁面のデザインや展示等がインパクトあるものとなる。但し曲線部分の側面に相当する箇所は単純な折り曲げでは物理的に不可能であり、別途工夫が必要である。側面7を形成しないことも選択肢である。
【0030】
以上、本発明のパネルP1は非磁性壁面5にピン6を押し込んで留めることを前提にしているが、底面8の裏面が平面状であるので、ピン6が役立たない壁面には両面粘着シートや接着剤でもって簡単に設置することができるので便利である。
【0031】
なお、本パネルP1を非磁性壁面に設置する前に、軟磁性板の端が隣接する箇所12や折り曲げた箇所10及び折り曲げた箇所が隣接する箇所9(
図3の(b)図と(c)図参照)の部分に、保護テープ13(
図1参照)を貼ることが好ましい。本パネルP1の製作時に発生するバリや角等でもって、設置時に負傷することを防止するためである。
【0032】
このように、パネルP1によると、側面7の小穴3にピン6を通し、底面8の先端80を探し当て、ここで押し込むことで、ピン6の傾き角度を適切にでき、確実且つ容易に設置作業ができる。また磁石の吸着面となる平面4と、平面4を固定するための部位である側面7とが1枚物からなり、構造が簡単且つ軽量で安価に製造できる。
【0033】
〔第2実施形態〕
本発明のパネルは、円柱状の柱の側面に対応することが可能である。
図6は第2実施形態のパネルP2の本体部11の展開図である。
図7は第2実施形態のパネルP2を円柱の側面を成す非磁性壁面51に設置した状態を示す図である。
図6に示す展開図の本体部11は、第1実施形態で採用した材質と同じものを採用している。
【0034】
図7のように、パネルP2は、本体部11と補強材21を有する。
本体部11は、
図6の展開図のように、平面41と、平面41の上側に設けられた側面71aと、平面41の左右両側に一対として設けられた一対の側面71bと、側面71aの先に設けられた底面81aと、一対の側面71bの先に左右両側に一対として設けられた一対の底面81bを備える。この展開図を折り曲げ加工して、次のような略扁平な形状となる。なお、
図6,7の説明において、符号「41」で示される面は、厳密には平面では無く円柱の側面、すなわち「曲面」であるが、本明細書では、便宜上「平面」と呼ぶ。
【0035】
平面41は、長方形状を呈した平面体であり、表側が磁石の磁着面とされる。
側面71aは、平面41における一方の長辺の中央で裏側に向けた折り曲げ加工により一定角度(約50度)で傾斜し、長辺から見て末窄まりの等脚台形状を成す。
一対の側面71bは、平面41における対向する短辺でそれぞれ裏側に向けた折り曲げ加工により一定角度(約50度)で傾斜し、長方形状を成す。
底面81aは、側面71aにおける短辺で裏側に向けた折り曲げ加工により平面41に平行とされ、長方形状を成す。
一対の底面81bは、側面71bにおける対向する長辺でそれぞれ裏側に向けた折り曲げ加工により平面41に平行とされ、長方形状を成す。
【0036】
ここで、底面81aと一対の底面81bとは、平面41に平行な同一平面上にある。また、側面71a及び側面71bには、表側から裏側に90度角で貫通する小穴31a及び小穴31bを備える。
そして、小穴31aから側面71aに対して垂直な方向に、底面81aの先端810aが位置し、小穴31bから側面71bに対して垂直な方向に、底面81bの先端810bが位置している。
小穴31a及び小穴31bは、非磁性壁面51に固定するための頭付のピン6(
図7では小穴31bの一部だけに図示)を挿入するための穴である。
このようなパネルP2は、平面41と補強材21を撓ませ湾曲させることで、円柱の曲面に設置できる。
湾曲部の側面71a及び底面81aは、湾曲の曲率とパネルP2の厚さに従って例えば
図6の符号15で示されている形状となる。
【0037】
湾曲部対応の側面71a及び底面81aは、平面41の端の部分で折り曲げられる。これにより、平面41の端の部分が円柱の曲面に沿った湾曲を成すことができないので、少し歪に成らざるを得ない。
そこで、
図6のように、湾曲部の側面71aと底面81aをそれぞれ1個だけで済ましてもよく、なくても構わない。本図では平面41の他の辺(対向辺)には省略した例を示している。
【0038】
本パネルP2に掛かる荷重は、側面71の小穴31から押し込むピン6で十分支えることができる。また
図7のように、平面41が円柱の側面に沿って湾曲しており、更に円柱状壁面51と平面41の間には、補強材21が装着されているので、機械的強度が増す。
【0039】
〔第3実施形態〕
本発明のパネルは、金属製の軟磁性板だけでなく、軟磁性シートを用いて磁着面とすることが可能である。
図8は第3実施形態のパネルP3の斜視図であり、(a)図は外観図を示し、(b)図は分解図を示す。
第3実施形態のパネルP3は、第1実施形態のパネルP1に対し、次の点が異なる。すなわち、パネルP3は、パネルP1における本体部1に代えて本体部111を有するとともに、軟磁性シート40を有する。
【0040】
本体部111は、本体部1の平面4に表側から裏側に貫通する開口16を有するが、その他の構成、つまり側面7、底面8、各小穴3などはパネルP1と同様である。また、や補強材2についても同様である。
軟磁性シート40は、上記開口16を被覆するように平面4における非開口部(開口部16の周囲の縁部分)17に固着される。固着には例えば接着剤が用いられる。
軟磁性シート40は、それ自体は永久磁石の性質をもたないが、磁石が吸着する可撓性シートであり、軟磁性材料の微粉末と、粘結材となる少量の有機高分子エラストマーとの混合体を、圧延または押出しなどの成形方式により、厚さ0.5~2mmのシート状に成形したものである。
【0041】
軟質磁性材料粉としては、フェロ磁性体のうち低保磁力で高透磁力の強磁性体(以下、「フェロ磁性体粉」という。)、フェリ磁性体のうち低保磁力で高透磁力の強磁性体(「フェリ磁性体粉」という。)、または、フェロ磁性体粉とフェリ磁性体粉の混合物を用いることができる。フェロ磁性体粉としては、鉄粉、磁性ステンレス粉、センダスト粉などを用いることができる。フェリ磁性体粉としては、ソフトフェライトであるマンガン亜鉛フェライト粉、ニッケル亜鉛フェライト粉、マグネタイト粉=四三酸化鉄粉など用いることができる。
【0042】
粘結材となる少量の有機高分子エラストマーとしては、例えば塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニール共重合体、エチレン・プロピレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴムなどを用いることができる。このような軟磁性シート21として、例えば出願人社製のアイアンシート(登録商標)が用いられる。なお、軟磁性シート21に代えて、硬磁性材料の微粉末と、粘結材となる有機高分子エラストマーとの混合体を、シート状に成形し、その少なくとも一面に着磁を施したマグネットシートを用いることも可能である。つまり強磁性シートであればよい。
【0043】
第3実施形態のパネルP3では、第1実施形態のパネルP1における平面4の磁着機能を軟磁性シート40が担うことになる。即ち、軟磁性シート40の表面42が磁石の吸着面となる。
軟磁性シート40は、金属板よりも比重が小さく、同じ厚みでもそれなりに強い磁着力が得られるため、パネルの軽量化を図ることができる。
【0044】
また、この形態を用いた場合、軟磁性シート40の裏面に高周波電流の流れる送電コイルを配置し、受電コイルとマグネット片を備えた発光アイテムを軟磁性シート40の表側面に磁着させることで、磁着平面上の任意の位置に磁着可能で且つワイヤレス給電により発光アイテムが発光する電飾システムとすることができる。この場合、軟磁性シート40、引いては強磁性シートが優利な理由は次の通りである。すなわちワイヤレス給電を適用するに際し、金属板の裏面に送電コイルを設けると、給電効率が落ち、また発熱も生じる。厚さ0.1mm程度の薄い金属板であれば給電できるが、機械強度が確保できない。そこで、平面4部分に開口16を設けた本体部111を用い、金属板の平面に代えて非金属性の強磁性シート40でこの開口16を被覆し磁気吸着面としたのである。
【0045】
ここで、開口16の面積が広いと本体部111の剛性が低下し、機械的強度が減るので、開口16の面積は平面4の面積の80パーセント以下であることが好ましい。また、本体部の強度を補うために、
図9のように、開口16を架橋する形で対向する非開口部17同士を連結する補強バー18,19を設けてもよい。なお、補強バー18,19をあえて設けず、剛性を低い状態にしておき、曲面への取付けを容易にすることも選択肢である。
パネルP3を非磁性壁面5に設置する方法については、パネルP1のときと同様であるので省略する。
【0046】
以上のように本発明のパネルP1,P2,P3は、保護テープ貼りや壁面への取り付け(設置)が簡単にできる上に、取り外しやレイアウトの変更も容易であり、正にDIY感覚で作業できる。
更にまた、下地が石膏ボードの場合はパネルを取り付けているピンを素手で(指で)引き抜くことができる上に、引き抜いた後の穴は小さく殆ど目立たないのである。
【0047】
本発明のパネルは、物品Lとの組み合わせ次第で、任意の壁面ディスプレーが可能となる。例えば、店舗における単なる装飾や小物グッズのディスプレー、更には薄型テレビを係留して動画等を表示することも可能である。
【0048】
また、本発明のパネルは不燃認定を目指すことが可能である。金属製の軟磁性板又は薄型の軟磁性シート自体は不燃であり、表装材や塗料及び補強材を不燃性素材に変更すれば、それらの組み合わせにより、パネルとしての不燃性認定の可能性は高いと考えられる。
【0049】
また、ピン6を1本1本引き抜く労力を軽減させるために、
図10のような取外し補助具Xを使用することも可能である。
取外し補助具Xは、例えば太さ0.2mm~0.8mmのステンレス等の金属ワイヤーからなる。この金属ワイヤーは、互いに隣り合う2枚の側面7a,7bにおける小穴3a,3bのうち四隅の角部で最も近接する小穴3a,3bを通り抜けるとともに、開放端同士を連結させて略リング状としたものである。
パネルの非取外し時は、(a)図のように、金属ワイヤーの引っ張り部分X1を角部の裏側に配置することで目立たないようにしておき、取外し時は、爪または先尖器具を使って、(b)図のように、引っ張り部分X1を表側に露出させ、非磁性壁面5の法線方向手前に向けて引っ張ることでピン6を複数本まとめて抜くことができる。このような取外し補助具Xは、パネルの四隅全てに設けてもよいが一部でもよい。
【実施例0050】
新日本製鉄(株)製の白色塗装済の圧延鋼鈑(厚さ0.35mm)を4隅に切り込みのある長方形状に断裁し折り曲げて、一辺の長さが30cmの正方形の平面4を有するパネルP1を製作した。
側面7と平面4とが成す角度を45度とし、側面7は更に折り曲げて底面8を形成している。このとき、底面8は10mmの幅を折り込んで形成している。
側面7の幅は約14.2mmあるが、その中央部分に直径1mmの小穴3が開けられていて、小穴3から側面7に対して垂直な方向に、底面8の先端が位置している。
小穴3は、平面4の1つの辺(30cm)の長さ方向に相当する側面の中央部と、更に、該30cmの辺の両端から5mm中央寄り位置とに、計3個開けた。
【0051】
補強材2は、発泡PS(ポリスチレン;発泡倍率50倍)を1辺30cmの正方形で厚さが1cmに切り出して、平面4の裏に両面粘着テープで貼り付けた。
このとき、パネル重量は約320grであった。
【0052】
次に、パネルP1を石膏ボードの壁面に次の要領で取り付けた。
即ち、FANYBRANDの平頭2.2(太さ径0.9mm、長さ22mm/ユニクロムメッキ)の市販の頭付のピンを、側面の小穴に通し、底面の先端を探し当てた。ピンは側面に対して略垂直であった。次にその位置でピンの頭に10円硬貨を当てて、親指で押し込んだ。
ピンは、パネルの上方に位置する側面に3本、下方に位置する側面と両側に位置する側面には、それぞれ2本使用した。
【0053】
石膏ボードに設置されたパネルを壁面に対して平行に軽く押してみたが、びくともしなかった。本例では、市販の磁石でメモ用紙をパネルの平面に係留することができた。また、磁気フックを磁着させ該フックに6kgの負荷をかけたが、フックはパネルに磁着して外れることはなくまた、パネルに異常はなかった。
本発明のパネルは、非磁性の壁面、例えば石膏ボードの壁、木質の壁等の一部又は全面を、磁石が吸着する壁面に変貌させることができるものとして利用できる。また、本パネルは家庭ではメモや連絡帳の掲示用として、会社や学校、官公庁での掲示用として採用できる便利さがある。さらに、本パネルの設置は簡単である。