(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010076
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】可塑剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/04 20060101AFI20250109BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20250109BHJP
C08K 5/1535 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08L101/04
C08K5/12
C08K5/1535
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106528
(22)【出願日】2024-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2023110579
(32)【優先日】2023-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大城 幸純
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC091
4J002BB241
4J002BB271
4J002BD041
4J002BD061
4J002BD071
4J002BD081
4J002BD101
4J002BN171
4J002EH147
4J002EL076
4J002FD026
4J002FD027
4J002GA01
4J002GB01
4J002GC00
4J002GG01
4J002GG02
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GL00
4J002GQ01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ハロゲン系樹脂組成物に用いられることで優れた耐熱性を有するハロゲン系樹脂組成物を与える可塑剤組成物を提供すること。
【解決手段】フタル酸ジエステルからなる可塑剤Aと、一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)を含有する可塑剤Bとを含む、可塑剤組成物。
(一般式(II)中、R
3及びR
4は、それぞれ互いに異なる炭素数である直鎖又は分岐状アルキル基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されるフタル酸ジエステルからなる可塑剤Aと、一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)を含有する可塑剤Bとを含む、可塑剤組成物。
【化1】
(一般式(I)中、R
1及びR
2は、それぞれ互いに同じでも異なっていてもよい、炭素数8以上14以下の直鎖又は分岐状アルキル基である。)
【化2】
(一般式(II)中、R
3及びR
4は、それぞれ互いに異なる炭素数である直鎖又は分岐状アルキル基である。)
【請求項2】
前記一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)において、R3及びR4は、それぞれ炭素数7以上9以下の直鎖又は分岐状アルキル基である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項3】
前記一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)が、イソソルバイド(オクタン酸/デカン酸)ジエステルである、請求項2に記載の可塑剤組成物。
【請求項4】
前記可塑剤Bが、一般式(III)で表されるイソソルバイドジエステル(b2)を更に含有し、
前記可塑剤B中の前記イソソルバイドジエステル(b1)の含有量が10質量%以上である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【化3】
(一般式(III)中、R
5及びR
6は、それぞれ互いに同じ炭素数である直鎖又は分岐状アルキル基である。)
【請求項5】
前記一般式(III)で表されるイソソルバイドジエステル(b2)において、R5及びR6は、それぞれ炭素数7以上9以下の直鎖又は分岐状アルキル基である、請求項4に記載の可塑剤組成物。
【請求項6】
前記可塑剤Bに対する前記可塑剤Aの質量比(可塑剤A/可塑剤B)が5/95以上85/15以下である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の可塑剤組成物を含むハロゲン系樹脂組成物。
【請求項8】
一般式(I)で表されるフタル酸ジエステルからなる可塑剤Aと、一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)を含有する可塑剤Bとを混合する、可塑剤組成物の製造方法。
【化4】
(一般式(I)中、R
1及びR
2は、それぞれ互いに同じ又は異なる炭素数である炭素数8以上14以下の直鎖又は分岐状アルキル基である。)
【化5】
(一般式(II)中、R
3及びR
4は、それぞれ互いに異なる炭素数である直鎖又は分岐状アルキル基である。)
【請求項9】
前記可塑剤Bが、イソソルバイドと、炭素数の異なる直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸を少なくとも2種含むカルボン酸原料とをエステル化することにより得られる、請求項8に記載の可塑剤組成物の製造方法。
【請求項10】
前記炭素数の異なる直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸が、炭素数8以上10以下の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸である、請求項9に記載の可塑剤組成物の製造方法。
【請求項11】
前記炭素数8以上10以下の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸がオクタン酸及びデカン酸である、請求項10に記載の可塑剤組成物の製造方法。
【請求項12】
前記カルボン酸原料中の炭素数10の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸に対する炭素数8の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸のモル比(炭素数8のカルボン酸/炭素数10のカルボン酸)が5/95以上92/8以下である、請求項10又は11に記載の可塑剤組成物の製造方法。
【請求項13】
前記可塑剤Aが、フタル酸原料と、炭素数8以上14以下の直鎖又は分岐状脂肪族アルコールを含むアルコール原料とをエステル化することにより得られる、請求項8に記載の可塑剤組成物の製造方法。
【請求項14】
前記アルコール原料中の分岐状脂肪族アルコールに対する直鎖脂肪族アルコールのモル比(直鎖脂肪族アルコール/分岐状脂肪族アルコール)が70/30以上100/0以下である請求項13に記載の可塑剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑剤組成物及びそれを含むハロゲン系樹脂組成物、並びに可塑剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂(PVC)等のハロゲン系樹脂は、汎用ポリマーとして様々な分野で使用される重要な樹脂である。例えば、PVCは、壁紙等の住宅内装品;玩具等の汎用品;シーリング材等の自動車関係材料等の各種用途に用いられる。
ハロゲン系樹脂を用いる場合には、例えば、ハロゲン系樹脂の樹脂粉体に、可塑剤、希釈剤、減粘剤、炭酸カルシウム等のフィラー、顔料、難燃剤、発泡剤、安定剤等が配合されて、ハロゲン系樹脂組成物が調製される。
【0003】
しかし、ハロゲン系樹脂組成物の加工性を改善するために配合される可塑剤は、高温に晒されることでハロゲン系樹脂組成物の表面から揮発し、ハロゲン系樹脂組成物が硬化することにより割れ等が生じるという、耐熱性の問題を有する。
【0004】
特許文献1には、組成物であって、(A)と(B)の総重量に対して:少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールエステル(A)であって、前記エステル(A)のモル質量が255~345g.mol-1の範囲であり、イソソルビド、イソマンニド並びにイソイジドのモノエステルおよびジエステルから選択されるエステル(A)を0.1重量%~99重量%と、少なくとも1種の化合物(B)であって、前記化合物(B)の前記モル質量が345g.mol-1より大きく、以下イソソルビド、イソマンニド並びにイソイジドのモノエステルおよびジエステルから選択される1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールエステル、1~24個の炭素原子を含んでなる基、好ましくは6~12個の炭素原子を含んでなる基である1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールエステル基;シクロヘキサンポリカルボン酸のエステル;フタル酸のエステル;グリセロールエステルから選択される化合物(B)を1%~99.9重量%とを含んでなる組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の組成物は、速い可塑化速度を有するものの、依然として耐熱性に問題があった。
本発明は、ハロゲン系樹脂組成物に用いられることで、優れた耐熱性を有するハロゲン系樹脂組成物を与える可塑剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の鎖長を有するアルコール由来の構造を有するフタル酸ジエステルからなる可塑剤Aと、特定の鎖長を有するカルボン酸由来の構造を有するイソソルバイドジエステルを含有する可塑剤Bとを含む可塑剤組成物が、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔14〕に関する。
〔1〕 一般式(I)で表されるフタル酸ジエステルからなる可塑剤Aと、一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)を含有する可塑剤Bとを含む、可塑剤組成物。
【化1】
(一般式(I)中、R
1及びR
2は、それぞれ互いに同じでも異なっていてもよい、炭素数8以上14以下の直鎖又は分岐状アルキル基である。)
【化2】
(一般式(II)中、R
3及びR
4は、それぞれ互いに異なる炭素数である直鎖又は分岐状アルキル基である。)
〔2〕 前記一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)において、R
3及びR
4は、それぞれ炭素数7以上9以下の直鎖又は分岐状アルキル基である、〔1〕に記載の可塑剤組成物。
〔3〕 前記一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)が、イソソルバイド(オクタン酸/デカン酸)ジエステルである、〔1〕又は〔2〕に記載の可塑剤組成物。
〔4〕
前記可塑剤Bが、一般式(III)で表されるイソソルバイドジエステル(b2)を更に含有し、
前記可塑剤B中の前記イソソルバイドジエステル(b1)の含有量が10質量%以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の可塑剤組成物。
【化3】
(一般式(III)中、R
5及びR
6は、それぞれ互いに同じ炭素数である直鎖又は分岐状アルキル基である。)
〔5〕 前記一般式(III)で表されるイソソルバイドジエステル(b2)において、R
5及びR
6は、それぞれ炭素数7以上9以下の直鎖又は分岐状アルキル基である、〔4〕に記載の可塑剤組成物。
〔6〕 前記可塑剤Bに対する前記可塑剤Aの質量比(可塑剤A/可塑剤B)が5/95以上85/15以下である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の可塑剤組成物。
〔7〕 〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の可塑剤組成物を含むハロゲン系樹脂組成物。
〔8〕 一般式(I)で表されるフタル酸ジエステルからなる可塑剤Aと、一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)を含有する可塑剤Bとを混合する、可塑剤組成物の製造方法。
【化4】
(一般式(I)中、R
1及びR
2は、それぞれ互いに同じ又は異なる炭素数である炭素数8以上14以下の直鎖又は分岐状アルキル基である。)
【化5】
(一般式(II)中、R
3及びR
4は、それぞれ互いに異なる炭素数である直鎖又は分岐状アルキル基である。)
〔9〕 前記可塑剤Bが、イソソルバイドと、炭素数の異なる直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸を少なくとも2種含むカルボン酸原料とをエステル化することにより得られる、〔8〕に記載の可塑剤組成物の製造方法。
〔10〕 前記炭素数の異なる直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸が、炭素数8以上10以下の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸である、〔9〕に記載の可塑剤組成物の製造方法。
〔11〕
前記炭素数8以上10以下の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸がオクタン酸及びデカン酸である〔10〕に記載の可塑剤組成物の製造方法。
〔12〕 前記カルボン酸原料中の炭素数10の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸に対する炭素数8の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸のモル比(炭素数8のカルボン酸/炭素数10のカルボン酸)が5/95以上92/8以下である、〔10〕又は〔11〕に記載の可塑剤組成物の製造方法。
〔13〕 前記可塑剤Aが、フタル酸原料と、炭素数8以上14以下の直鎖又は分岐状脂肪族アルコールを含むアルコール原料とをエステル化することにより得られる、〔8〕~〔12〕のいずれかに記載の可塑剤組成物の製造方法。
〔14〕 前記アルコール原料中の分岐状脂肪族アルコールに対する直鎖脂肪族アルコールのモル比(直鎖脂肪族アルコール/分岐状脂肪族アルコール)が70/30以上100/0以下である、〔13〕に記載の可塑剤組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハロゲン系樹脂組成物に用いられることで、優れた耐熱性を有するハロゲン系樹脂組成物を与える可塑剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[可塑剤組成物]
本発明の可塑剤組成物は、特定炭素数の直鎖又は分岐状脂肪族アルコールから選ばれる少なくとも1種のアルコール由来の構造を有するフタル酸ジエステルからなる可塑剤Aと、異なる炭素数の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸由来の構造を有するイソソルバイドジエステルを含有する可塑剤Bと、を含む可塑剤組成物である。
【0010】
本発明の可塑剤組成物は、ハロゲン系樹脂組成物の耐熱性において優れた効果を発揮する。このような効果を奏する理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明の可塑剤組成物は、炭素数8~14の直鎖又は分岐状脂肪族アルコールから選ばれる少なくとも1種のアルコール由来の構造を有するフタル酸ジエステルからなる可塑剤Aと、それぞれ異なる2つの炭素数の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸由来の構造を有するイソソルバイドジエステルを含有する可塑剤Bと、を含む。可塑剤Aが炭素数8~14の直鎖又は分岐状脂肪族アルコールから選ばれる少なくとも1種のアルコール由来の構造を有するフタル酸ジエステルからなり、可塑剤Bがそれぞれ異なる2つの炭素数の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸由来の構造を有するイソソルバイドジエステルを含有することにより、該フタル酸ジエステルと該イソソルバイドジエステルとの間に、該フタル酸ジエステルとそれぞれ同じ2つのカルボン酸由来の構造を有するイソソルバイドジエステルとの間の相互作用よりも、強い相互作用が生じると考えられる。
そのため、該イソソルバイドジエステルと共に該フタル酸ジエステルがハロゲン系樹脂組成物に均一に拡散するため、ハロゲン系樹脂組成物からの本発明の可塑剤組成物のブリードが抑制され、更に本発明の可塑剤組成物のハロゲン系樹脂組成物からの揮発が抑制されることで、ハロゲン系樹脂組成物が高い耐熱性を有すると考えられる。
【0011】
〔可塑剤A〕
本発明において、可塑剤Aは、一般式(I)で表されるフタル酸ジエステルからなる。
【0012】
【0013】
一般式(I)中、R1及びR2は、それぞれ互いに同じでも異なっていてもよい、炭素数8以上14以下の直鎖又は分岐状アルキル基である。
【0014】
R1及びR2としての炭素数8以上14以下の直鎖アルキル基は、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、及びn-テトラデシル基である。また、R1及びR2としての炭素数8以上14以下の分岐状アルキル基としては、例えば、2-エチルヘキシル基、2-ブチルオクチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基等が挙げられる。ここで、「イソ-」とは、アルキル基の末端でメチル基が分岐している構造を指す。
中でも、R1及びR2としては、ハロゲン系樹脂組成物が優れた耐熱性を奏する観点から、炭素数10以上13以下の直鎖又は分岐状アルキル基から選ばれる基が好ましく、n-デシル基、n-ドデシル基、及びイソトリデシル基から選ばれる基がより好ましい。
【0015】
可塑剤Aを構成する一般式(I)で表されるフタル酸ジエステルは、1種でもよく、2種以上でもよい。好ましくは、可塑剤Aを構成する一般式(I)で表されるフタル酸ジエステルは、1種又は2種である。
【0016】
(可塑剤Aの製造方法)
可塑剤Aは、フタル酸原料と、炭素数8以上14以下の直鎖又は分岐状脂肪族アルコールを含むアルコール原料とをエステル化することにより得られる。
【0017】
フタル酸原料としては、フタル酸、無水フタル酸、ジメチルフタレート等のフタル酸エステル等が挙げられるが、入手性及び生産性の観点から、フタル酸及び無水フタル酸から選ばれる1種以上が好ましく、無水フタル酸がより好ましい。
【0018】
アルコール原料としては、例えば、1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、及び1-テトラデカノールといった炭素数8以上14以下の直鎖脂肪族アルコール;並びに2-エチルヘキサノール、2-ブチルオクタノール、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール、イソウンデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール等の炭素数8以上14以下の分岐状脂肪族アルコールが挙げられる。
【0019】
アルコール原料中の分岐状脂肪族アルコールに対する直鎖脂肪族アルコールのモル比(直鎖脂肪族アルコール/分岐状脂肪族アルコール)は、ハロゲン系樹脂組成物が優れた耐熱性を奏する観点から、好ましくは70/30以上、より好ましくは80/20以上、更に好ましくは85/15以上であり、そして、好ましくは100/0以下、より好ましくは100/0である。
【0020】
アルコール原料の、エステル化反応開始時点における仕込み量は、化学量論量より過剰であることが好ましい。エステル化反応におけるアルコール原料の化学量論量は、フタル酸ジエステルを生成する理論割合であり、用いるフタル酸原料の2倍モル量である。
すなわち、アルコール原料の仕込み量は、反応の促進、反応を完了させる観点から、フタル酸原料1モルに対して、好ましくは2.0倍モル以上、より好ましくは2.1倍モル以上、更に好ましくは2.2倍モル以上であり、好ましくは3.0倍モル以下、より好ましくは2.7倍モル以下、更に好ましくは2.5倍モル以下である。
用いるアルコール原料は、水分の含有量をできるだけ低下させておくことが好ましい。アルコール原料に大量の水分が含まれていると、後述する触媒に対する被毒となり、触媒能を低下させてしまうおそれがある。
【0021】
エステル化反応触媒としては、エステル化能を有する公知のエステル化触媒を使用することができるが、好ましくは有機金属触媒である。
有機金属触媒としては、例えば、スズテトラエチレート、ブチルスズマレート、ジメチルスズオキシド、モノブチルスズオキシド、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド等の有機スズ化合物、チタンテトライソプロポキシド等の有機チタン化合物、酢酸亜鉛等の有機亜鉛化合物等から選ばれる1種以上が挙げられる。中でも、生産性の観点から、有機チタン化合物が好ましく、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ-n-ブトキシド、及びチタンテトラ-2-エチルヘキシルオキシドから選ばれる1種以上が好ましい。
【0022】
触媒の使用量は、その種類により異なるが、触媒能を十分に発揮させる観点から、反応器に供給するフタル酸原料とアルコール原料の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上、更に好ましくは0.02質量部以上であり、そして、触媒添加効率の観点から、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下である。
【0023】
エステル化反応は、アルコール原料を還流できる設備を備えた公知の反応装置を用いて、アルコールの還流下で行うことができる。
反応温度は、アルコール原料の種類等により異なるが、反応性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、そして、収率の観点から、好ましくは280℃以下、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは240℃以下である。反応温度が100℃以上であると反応の進行が早く、反応温度が280℃以下であると反応副生成物の生成を抑制できる。
反応圧力は、通常、絶対圧力で13.3kPa以上、常圧以下であることが好ましい。反応圧力は用いるアルコール原料の蒸気圧により設定できる。具体的には、反応混合物が沸騰状態を維持する圧力に調整するとよく、さらには、副生する水を系外へ除去することが可能な圧力に調整することが好ましい。
反応時間は、用いるフタル酸原料、アルコール原料、反応温度、触媒の使用量等により異なるが、反応性の観点から、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上である。反応時間が十分であれば、未反応のフタル酸原料や反応中間体であるフタル酸モノエステルの分離工程での負荷が小さくなる。一方、収率の観点から、反応時間は、好ましくは24時間以下、より好ましくは10時間以下である。反応時間が短ければ、副生成物の生成を抑制し、可塑剤Aの品質を向上させることができる。
【0024】
エステル化反応は、上記反応条件において、生成する水をアルコール原料との共沸で反応系から除外し、反応率を100%近くまで向上させ、過剰のアルコール原料を分離した後、アルカリ洗浄、水洗、不純物の吸着、蒸留等の公知の方法で後処理することにより、一般式(I)で表されるフタル酸ジエステルとして可塑剤Aを得ることができる。
【0025】
〔可塑剤B〕
本発明において、可塑剤Bは、一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)を含有する。なお、一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)は全ての立体異性体を有することができ、コストの観点からD-ソルビトール由来の立体構造を有することが好ましい。
【0026】
【0027】
一般式(II)中、R3及びR4は、それぞれ互いに異なる炭素数である直鎖又は分岐状アルキル基である。
【0028】
R3及びR4としての直鎖又は分岐状アルキル基は、R3及びR4が異なる炭素数である直鎖又は分岐状アルキル基であればよく、好ましくは炭素数7以上9以下の直鎖又は分岐状アルキル基である。
炭素数7以上9以下の直鎖アルキル基としては、n-ヘプチル基、n-オクチル基、及びn-ノニル基である。また、R3及びR4としての炭素数7以上9以下の分岐状アルキル基としては、例えば、2-エチルヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基等が挙げられる。
中でも、R3及びR4としては、ハロゲン系樹脂組成物が優れた耐熱性を奏する観点から、炭素数7又は9の直鎖又は分岐状アルキル基から選ばれる基が好ましく、n-ヘプチル基及びn-ノニル基から選ばれる基がより好ましい。
イソソルバイドジエステル(b1)の好ましい例としては、イソソルバイド(オクタン酸/デカン酸)ジエステルが挙げられる。
【0029】
可塑剤Bに含まれる一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)は、1種でもよく、2種以上でもよい。好ましくは、可塑剤Bに含まれる一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)は、1種である。
【0030】
可塑剤Bは、一般式(III)で表されるイソソルバイドジエステル(b2)を更に含有してもよい。なお、一般式(III)で表されるイソソルバイドジエステル(b2)は全ての立体異性体を有することができ、コストの観点からD-ソルビトール由来の立体構造を有することが好ましい。
【0031】
【0032】
一般式(III)中、R5及びR6は、それぞれ互いに同じ炭素数である直鎖又は分岐状アルキル基であればよく、好ましくは炭素数7以上9以下の直鎖又は分岐状アルキル基であり、より好ましくは互いに同じ7以上9以下の直鎖又は分岐状アルキル基である。
【0033】
R5及びR6としての直鎖アルキル基としては、R3及びR4と同様の基が挙げられ、炭素数7以上9以下の直鎖又は分岐状アルキル基から選ばれる基が好ましい。
【0034】
可塑剤Bに含まれる一般式(III)で表されるイソソルバイドジエステル(b2)は、1種でもよく、2種以上でもよい。好ましくは、可塑剤Bに含まれる一般式(III)で表されるイソソルバイドジエステル(b2)は、1種又は2種であり、より好ましくは可塑剤Bに含まれる一般式(III)で表されるイソソルバイドジエステル(b2)は2種である。
【0035】
可塑剤Bは、一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)及び一般式(III)で表されるイソソルバイドジエステル(b2)を含有することが好ましく、一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)及び一般式(III)で表されるイソソルバイドジエステル(b2)からなることが好ましい。
【0036】
可塑剤B中のイソソルバイドジエステル(b1)の含有量は、ハロゲン系樹脂組成物が優れた耐熱性を奏する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは13質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
可塑剤B中のイソソルバイドジエステル(b1)の含有量は、ガスクロマトグラフィー法などにより測定することができる。具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
【0037】
(可塑剤Bの製造方法)
可塑剤Bは、イソソルバイドと、炭素数の異なる2種の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸をエステル化することにより得られる。
【0038】
カルボン酸原料としては、例えば、オクタン酸、ノナン酸、及びデカン酸といった炭素数8以上10以下の直鎖脂肪族カルボン酸;並びに2-エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、イソデン酸等の炭素数8以上10以下の分岐状脂肪族カルボン酸が挙げられる。中でも、カルボン酸原料は、炭素数8以上10以下の直鎖脂肪族カルボン酸が好ましく、オクタン酸及びデカン酸がより好ましい。
用いるカルボン酸原料は、水分の含有量をできるだけ低下させておくことが好ましい。カルボン酸原料に大量の水分が含まれていると、後述する触媒に対する被毒となり、触媒能を低下させてしまうおそれがある。
【0039】
可塑剤Bが一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)からなる場合、イソソルバイドの二つの水酸基の一方を保護基により保護したイソソルバイド1モルに対して、炭素数8以上10以下の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸の1種類を1.0倍モル以上1.1倍モル以下仕込むことで一つの水酸基が保護されたイソソルバイドモノエステルを生成し、脱保護を行った後に単離したイソソルバイドモノエステルに対し、前記とは異なる炭素数8以上10以下の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸を1.0倍モル以上1.1倍モル以下仕込むエステル化反応により、一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)を得ることができる。上記保護基としては、水酸基の保護基として通常用いられるものが挙げられる。
【0040】
エステル化反応触媒としては、可塑剤Aの製造方法に挙げたエステル化反応触媒を用いることができ、有機チタン化合物が好ましく、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ-n-ブトキシド、及びチタンテトラ-2-エチルヘキシルオキシドから選ばれる1種以上が好ましい。
【0041】
触媒の使用量は、その種類により異なるが、触媒能を十分に発揮させる観点から、反応器に供給するイソソルバイドとカルボン酸原料の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上、更に好ましくは0.03質量部以上であり、そして、触媒添加効率の観点から、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下である。
エステル化反応は、公知の反応装置を用いて行うことができる。
反応温度は、反応性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、そして、収率の観点から、好ましくは280℃以下、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは240℃以下である。反応温度が100℃以上であると反応の進行が早く、反応温度が280℃以下であると反応副生成物の生成を抑制できる。
反応圧力は、通常、絶対圧力で13.3kPa以上、常圧以下であることが好ましい。具体的には、副生する水を系外へ除去することが可能な圧力に調整することが好ましい。
反応時間は、イソソルバイド、カルボン酸原料、反応温度、触媒の使用量等により異なるが、反応性の観点から、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上である。反応時間が十分であれば、未反応のフタル酸原料や反応中間体であるフタル酸モノエステルの分離工程での負荷が小さくなる。一方、収率の観点から、反応時間は、好ましくは24時間以下、より好ましくは10時間以下である。反応時間が短ければ、副生成物の生成を抑制し、可塑剤Bの品質を向上させることができる。
【0042】
エステル化反応は、上記反応条件において、生成する水を反応系から除外し、反応率を100%近くまで向上させ、過剰のカルボン酸原料を分離した後、アルカリ洗浄、水洗、不純物の吸着、蒸留等の公知の方法で後処理することにより、可塑剤Bとして一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)を得ることができる。
【0043】
可塑剤Bが一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)及び一般式(III)で表されるイソソルバイドジエステル(b2)を含む場合、2種の炭素数8以上10以下の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸を含むカルボン酸原料を用いることができる。この際、用いられるエステル化触媒、反応条件等は、上記エステル化反応と同様とすることができる。
可塑剤Bが一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)及び一般式(III)で表されるイソソルバイドジエステル(b2)を含む場合、カルボン酸原料の、エステル化反応開始時点における仕込み量は、化学量論量より過剰であることが好ましい。エステル化反応におけるカルボン酸原料の化学量論量は、イソソルバイドジエステルを生成する理論割合であり、用いるイソソルバイドの2倍モル量である。すなわち、カルボン酸原料の仕込み量は、反応の促進、反応を完了させる観点から、イソソルバイド1モルに対して、好ましくは2.0倍モル以上、より好ましくは2.1倍モル以上、更に好ましくは2.2倍モル以上、より更に好ましくは2.3倍モル以上であり、好ましくは3.0倍モル以下、より好ましくは2.7倍モル以下、更に好ましくは2.5倍モル以下である。
【0044】
カルボン酸原料中の炭素数10の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸に対する炭素数8の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸のモル比(炭素数8のカルボン酸/炭素数10のカルボン酸)は、ハロゲン系樹脂組成物が優れた耐熱性を奏する観点及び製造コスト削減の観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは8/92以上、更に好ましくは10/90以上であり、そして好ましくは92/8以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下である。
【0045】
また、炭素数8~10の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸とイソソルバイドとの反応速度は、それぞれほとんど差がないため、カルボン酸原料中の炭素数8~10の直鎖又は分岐状脂肪族カルボン酸の含有量(モル%)から、エステル化反応により得られる可塑剤B中のイソソルバイドジエステル(b1)及びイソソルバイドジエステル(b2)のモル基準の含有量を推定することができる。例えば、カルボン酸原料が炭素数8の直鎖脂肪族カルボン酸(以下、「C8カルボン酸」ともいう)及び炭素数10の直鎖脂肪族カルボン酸(以下、「C10カルボン酸」ともいう)を含み、カルボン酸原料中の炭素数8の直鎖脂肪族カルボン酸の含有量がαモル%、炭素数10の直鎖脂肪族カルボン酸の含有量(100-α)モル%である場合、エステル化反応により得られる可塑剤B中のイソソルバイドC8カルボン酸C10カルボン酸ジエステル(b1-1)の含有量は2×〔(α/100)×(1-α/100)〕×100モル%、イソソルバイドC8カルボン酸ジエステル(b2-1)の含有量は(α/100)2×100モル%、イソソルバイドC10カルボン酸ジエステル(b2-2)の含有量は(1-α/100)2〕×100モル%と推定できる。
また、前記b1-1の分子量が426.59、前記b2-1の分子量が398.54、前記b2-2の分子量が454.65であることから、上記可塑剤B中のイソソルバイドジエステル(b1)及びイソソルバイドジエステル(b2)の含有量(モル%)から、これらの含有量(質量%)を算出することができる。
【0046】
〔その他の成分〕
本発明の可塑剤組成物は、通常、ハロゲン系樹脂の可塑剤として用いられている化合物を含んでもよい。
可塑剤としては、ハロゲン系樹脂との相溶性が高いという観点から、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等の炭素数1~7のアルコールのフタル酸エステル系可塑剤;トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリデシル等の炭素数6~10のアルコールのトリメリット酸エステル系可塑剤;アジピン酸エステル系可塑剤、アゼライン酸エステル系可塑剤、セバチン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
【0047】
本発明の可塑剤組成物中の可塑剤A及び可塑剤Bの合計の含有量は、ハロゲン系樹脂組成物が優れた耐熱性を奏する観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは100質量%である。
【0048】
可塑剤組成物中の可塑剤Bに対する前記可塑剤Aの質量比(可塑剤A/可塑剤B)は、ハロゲン系樹脂組成物が優れた耐熱性を奏する観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上であり、そして、好ましくは85/15以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは75/25以下である。
【0049】
(可塑剤組成物の製造方法)
本発明の可塑剤組成物は、一般式(I)で表されるフタル酸ジエステルからなる可塑剤Aと、一般式(II)で表されるイソソルバイドジエステル(b1)を含有する可塑剤Bと、必要に応じて上記その他の成分とを混合することにより得られる。可塑剤Aと可塑剤Bの混合は、可塑剤Aに可塑剤Bを添加して混合してもよく、可塑剤Bに可塑剤Aを添加して混合してもよい。可塑剤組成物が上記その他の成分を含む場合、可塑剤Aと可塑剤Bとの混合物に上記その他の成分を添加して混合してもよく、各成分を順次混合してもよい。
可塑剤組成物は、可塑剤Aと、可塑剤Bと、必要に応じて上記その他の成分とを、例えば、ハンドミキサー、ラボミキサー、モルタルミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダー等の撹拌機により混合し、可塑剤組成物とすることができる。
【0050】
[ハロゲン系樹脂組成物]
本発明のハロゲン系樹脂組成物は、上記可塑剤組成物と、ハロゲン系樹脂とを含む。
【0051】
〔ハロゲン系樹脂〕
本発明において、ハロゲン系樹脂とは、ハロゲンを含有する単量体の単独重合体、共重合体、又はハロゲンにより変性された重合体を意味する。ハロゲン系樹脂として、例えば、入手が容易であるという観点から、塩化ビニル樹脂、エチレン-塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリウレタングラフトポリ塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、クロロスルフォン化ポリエチレン、クロロプレンゴム等が挙げられる。また、ハロゲン系樹脂として、例えば、柔軟性等の観点から、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン、及びクロロプレンゴム等が挙げられる。本発明のハロゲン系樹脂組成物は、好ましくは、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及びクロロプレンゴムから選ばれる1種以上を含む。
【0052】
(塩化ビニル系樹脂)
塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体(塩化ビニル樹脂)のほか、塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体(以下、「塩化ビニル共重合体」ともいう)、該塩化ビニル共重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体等が挙げられる。
前記の塩化ビニルと共重合可能な単量体としては、共重合が容易であるという観点から、分子中に反応性二重結合を有するものであればよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸のエステル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類等が挙げられる。
また、塩化ビニル共重合体以外の重合体としては、入手が容易であるという観点から、塩化ビニルをグラフト共重合できるものであればよく、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート-一酸化炭素共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン等が挙げられる。
【0053】
〔添加剤〕
ハロゲン系樹脂組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で、必要に応じて、塩基性無機充填材、安定剤、加工助剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤等の添加剤を含んでもよい。
【0054】
塩基性無機充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、珪酸カルシウム、アルミナ等が挙げられる。塩基性無機充填材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。塩基性無機充填材は、好ましくは、経済性の観点から、炭酸カルシウムを含む。
【0055】
本発明のハロゲン系樹脂組成物が塩基性無機充填材を含む場合、塩基性無機充填材の含有量は、ハロゲン系樹脂100質量部に対して、ハロゲン系樹脂組成物のコスト低減の観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは150質量部以下、より好ましくは140質量部以下、更に好ましくは130質量部以下である。
【0056】
安定剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸化合物、ジメチルスズビス-2-エチルヘキシルチオグリコレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズビスブチルマレエート、ジブチルスズジラウレート等の有機錫系化合物、アンチモンメルカプタイド化合物等が例示される。安定剤の含有量は、ハロゲン系樹脂100質量部に対して0.1~20質量部である。
【0057】
加工助剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ブチルステアレート、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。加工助剤の含有量は、ハロゲン系樹脂100質量部に対して0.1~20質量部である。
【0058】
着色剤としては、カーボンブラック、硫化鉛、ホワイトカーボン、チタン白、リトポン、ベンガラ、硫化アンチモン、クロム黄、クロム緑、コバルト青、モリブデン橙等が挙げられる。着色剤の含有量は、ハロゲン系樹脂100質量部に対して1~100質量部である。
【0059】
酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、テトラキス[メチレン-3-(3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のフェノール系化合物、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾール等の硫黄系化合物、トリスノニルフェニルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト等のリン酸系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛等の有機金属系化合物等が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、ハロゲン系樹脂100質量部に対して0.2~20質量部である。
【0060】
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート等のサリシレート系化合物、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、1-ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物の他、シアノアクリレート系化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、ハロゲン系樹脂100質量部に対して0.1~10質量部である。
【0061】
帯電防止剤としては、アルキルスルフォネート型、アルキルエーテルカルボン酸型又はジアルキルスルホサクシネート型のアニオン性帯電防止剤、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ジエタノールアミン誘導体等のノニオン性帯電防止剤、アルキルアミドアミン型、アルキルジメチルベンジル型等の第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム型の有機酸塩又は塩酸塩等のカチオン性帯電防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型等の両性帯電防止剤等が挙げられる。帯電防止剤の含有量は、ハロゲン系樹脂100質量部に対して0.1~10質量部である。
【0062】
滑剤としては、シリコーン、流動パラフィン、パラフィンワックス、ステアリン酸やラウリン酸等の脂肪酸及びその金属塩、脂肪酸アミド類、脂肪酸ワックス、高級脂肪酸ワックス等が挙げられる。滑剤の含有量は、ハロゲン系樹脂100質量部に対して0.1~10質量部である。
【0063】
[ハロゲン系樹脂組成物の製造方法]
本発明のハロゲン系樹脂組成物の製造方法は、可塑剤組成物と、ハロゲン系樹脂と、必要に応じて各種添加剤と、を混合する工程を含む。可塑剤組成物の混合は、可塑剤A及び可塑剤Bを含む可塑剤組成物を混合してもよく、可塑剤Aと可塑剤Bとをそれぞれ用い、得られるハロゲン系樹脂組成物が可塑剤A及び可塑剤Bを含む可塑剤組成物を含有するように混合してもよい。ハロゲン系樹脂組成物が各種添加剤を含む場合、可塑剤と、ハロゲン系樹脂と、各種添加剤との混合は、これらを一括して添加してもよく、各成分を順次混合してもよい。
ハロゲン系樹脂組成物は、可塑剤、ハロゲン系樹脂、並びに必要に応じて各種添加剤を、例えば、モルタルミキサー、ラボミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダー等の撹拌機により混合し、ハロゲン系樹脂組成物の混合粉とすることができる。また、コニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、コニーダー型混練機、ロール混練機等の混練機により溶融成形することにより、混合粉、ペレット状、又はペースト状のハロゲン系樹脂組成物を得ることができる。
混合・溶融成形条件としては、通常のハロゲン系樹脂組成物の製造方法で用いられる条件であればよい。
【0064】
ハロゲン系樹脂組成物の混合粉又はペレットを、押出成形、射出成形、カレンダ成形、プレス成形、ブロー成形等の公知の方法により、所望の形状に成形することができる。また、ペースト状のハロゲン系樹脂組成物は、スプレッド成形、ディッピング成形、グラビア成形、スクリーン加工等の公知の方法により、所望の形状に成形することができる。
【0065】
本発明のハロゲン系樹脂組成物は、計器盤(インパネ)表皮、レザーシート、ワイヤーハーネス等の車室内装飾剤;接着剤、シーラント、塗料、プラスチゾル、発泡体、合成皮革、水道管等のパイプ、建築材料、壁紙材、床材、床被覆材、断熱材、屋根膜材等の住宅内装品;食品包装用フィルム等の包装資材;農業用フィルム等の農業用資材;シーリング材、アンダーコート材等の自動車関係材料;下地保護材、布地被覆材、電線被覆材、各種レザー類、各種発泡製品、一般ホース、ガスケット、パッキン類、ブーツ、玩具、食品包装材、チューブや血液バッグ等の医療用品等として有用である。
【実施例0066】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
【0067】
〔可塑剤の製造〕
(可塑剤Aの製造)
製造例1(可塑剤A1の製造)
1L四つ口フラスコに、無水フタル酸(関東化学株式会社製)148.1g(1.00モル)、n-デカノール(花王株式会社製、商品名:カルコール1098)317.8g(2.00モル)、n-ドデカノール(花王株式会社製、商品名:カルコール2098)79.4g(0.43モル)、チタンテトライソプロポキシド(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.14gを入れて混合、加熱し、大気圧下230℃で2.5時間保持して水を留去しながら反応を行った。
反応終了後、90℃まで冷却して蒸留水11.0gを加え、90℃にて1時間攪拌した。その後、215℃まで昇温し、約270Pa(絶対圧力)の減圧条件下にて、過剰のアルコールを留去した後に、常圧に戻し90℃まで冷却し、濾過助剤を敷き詰めたろ紙を用いて吸引濾過し、フタル酸ジエステル混合物として可塑剤A1を得た。
【0068】
可塑剤A1をn-ヘキサンに溶解した10%溶液を用いて、下記のガスクロマトグラフィー法により得られたクロマトグラムのピークの面積の比からフタル酸ジエステル中のアルコール残基が異なるフタル酸ジエステル(以下、「異種アルキルフタル酸ジエステル」ともいう。)の含有量を定量した。なお、定量においては、n-ヘキサンや未反応物に由来する短時間に検出されるピークを除いた、フタル酸ジエステル由来のピークの全面積に対する、フタル酸n-デシル/n-ドデシル由来のピーク面積の比を求め、可塑剤A1中の異種アルキルフタル酸ジエステルの含有量とし、表1に示した。
なお、下記のガスクロマトグラフィー法におけるフタル酸ジエステル混合物中の各成分の相対感度はほぼ同じであることから、得られたクロマトグラムのピークの面積の比は、フタル酸ジエステル混合物中の各成分の質量比とほぼ同じとみなすことができる。
ガスクロマトグラフィー法の測定条件を以下に示す。
・測定装置:Agilent 8890(ガスクロマトグラフ、アジレント・テクノロジー株式会社製)
・カラム:DB-1ht(アジレント・テクノロジー株式会社製)
(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.10μm)
・キャリヤーガス:He(コンスタントフローモード)
・スプリット比:50:1
・検出器:FID
・注入口温度:330℃
・検出器温度:330℃
・測定温度条件:100℃→10℃/minで昇温→350℃で10分保持
・検出感度:取り込み速度、20Hz
・最小ピーク幅、0.01min
・注入量:1μl(スプリット法)
・異種アルキルジエステルの定量
【0069】
製造例2(可塑剤A2の製造)
製造例1において、無水フタル酸を155.5g(1.05モル)用い、n-デカノール及びn-ドデカノールを、n-デカノール336.2g(2.12モル)及びイソトリデカノール(KHネオケム株式会社製、商品名:トリデカノール)64.3g(0.32モル)に変更した他は同様にして、可塑剤A2を得た。
可塑剤A2中のフタル酸n-デシル/イソトリデシルの含有量を、可塑剤A1と同様に測定したところ、クロマトグラムのピークが重複し、含有量を測定できなかった。
【0070】
製造例3(可塑剤A3の製造)
製造例1において、n-デカノール及びn-ドデカノールを、n-デカノール208.0g(1.31モル)及びn-ドデカノール208.0g(1.12モル)に変更した他は同様にして、可塑剤A3を得た。
可塑剤A3中のフタル酸n-デシル/n-ドデシルの含有量を、可塑剤A1と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0071】
【0072】
(可塑剤Bの製造)
製造例4(可塑剤B1の製造)
1L四つ口フラスコに、イソソルバイド(東京化成工業株式会社製)155.0g(1.06モル)、オクタン酸(花王株式会社製、商品名:ルナック8-98)201.4g(1.40モル)、デカン酸(花王株式会社製、商品名:ルナック10-98)201.4g(1.17モル)、チタンテトライソプロポキシド(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.28gを入れて混合、加熱し、大気圧下230℃で5.5時間保持して水を留去しながら反応を行った。
反応終了後、90℃まで冷却して蒸留水11.6gを加え、90℃にて1時間攪拌した。その後、245℃まで昇温し、約400Pa(絶対圧力)の減圧条件下にて、過剰の脂肪酸を留去した後に、常圧に戻し90℃まで冷却し、濾過助剤を敷き詰めたろ紙を用いて吸引濾過し、イソソルバイドジエステル混合物として可塑剤B1を得た。
用いたオクタン酸及びデカン酸の合計に対するそれぞれのモル濃度から求めた可塑剤B1中のイソソルバイドジエステル(b1)であるイソソルバイド(オクタン酸/デカン酸)ジエステルの含有量の理論値は49.9質量%であり、可塑剤B1中のイソソルバイド(オクタン酸/デカン酸)ジエステルの含有量のガスクロマトグラフィー法による実測値は50.4%であった。なお、ガスクロマトグラフィー法による測定は、可塑剤A1と同条件で行った。
【0073】
製造例5(可塑剤B2の製造)
製造例4において、オクタン酸及びデカン酸を、オクタン酸43.1g(0.30モル)及びデカン酸388.6g(2.26モル)に変更した他は同様にして、可塑剤B2を得た。
用いたオクタン酸及びデカン酸の合計に対するそれぞれのモル濃度から求めた可塑剤B2中のイソソルバイドジエステル(b1)であるイソソルバイド(オクタン酸/デカン酸)ジエステルの含有量の理論値は19.7質量%であり、可塑剤B2中のイソソルバイド(オクタン酸/デカン酸)ジエステルの含有量のガスクロマトグラフィー法による実測値は18.5%であった。なお、ガスクロマトグラフィー法による測定は、可塑剤A1と同条件で行った。
【0074】
製造例6(可塑剤B3の製造)
製造例4において、イソソルバイドを115.2g(0.79モル)用い、オクタン酸及びデカン酸を、オクタン酸227.1g(1.57モル)及びデカン酸56.8g(0.33モル)に変更した他は同様にして、可塑剤B3を得た。
用いたオクタン酸及びデカン酸の合計に対するそれぞれのモル濃度から求めた可塑剤B3中のイソソルバイドジエステル(b1)であるイソソルバイド(オクタン酸/デカン酸)ジエステルの含有量の理論値は29.9質量%であり、可塑剤B3中のイソソルバイド(オクタン酸/デカン酸)ジエステルのガスクロマトグラフィー法による含有量の実測値は31.7%であった。なお、ガスクロマトグラフィー法による測定は、可塑剤A1と同条件で行った。
【0075】
比較製造例1(可塑剤B11の製造)
製造例4において、イソソルバイドを116.0g(0.79モル)用い、オクタン酸及びデカン酸をオクタン酸274.6g(1.90モル)に変更した他は同様にして、可塑剤B11を得た。
【0076】
比較製造例2(可塑剤B12の製造)
製造例4において、イソソルバイドを181.0g(1.24モル)用い、オクタン酸及びデカン酸をデカン酸509.3g(2.96モル)に変更した他は同様にして、可塑剤B12を得た。
【0077】
【0078】
〔可塑剤組成物の製造〕
実施例1(可塑剤組成物1の製造)
可塑剤A1を50.0g、可塑剤B1を50.0g秤量し、これらを目視で均一になるまで混合して可塑剤組成物1を得た。
【0079】
実施例2~8及び比較例1~7(可塑剤組成物2~8及び11~17の製造)
実施例1において、可塑剤A及び可塑剤Bの種類及び配合比を表3に示すように変更した他は同様にして、可塑剤組成物2~8及び11~17を得た。
なお、表3中、可塑剤A4としてフタル酸ジデシル(花王株式会社製、製品名;ビニサイザー105)を用い、可塑剤A11としてフタル酸ジヘキシル(東京化成工業株式会社製、製品名;ジヘキシルフタレート)を用いた。
【0080】
【0081】
〔ハロゲン系樹脂組成物の製造〕
実施例9~16及び比較例8~14(ハロゲン系樹脂組成物1~8及び11~17の製造)
塩化ビニル樹脂(平均重合度1400、新第一塩ビ株式会社製、商品名:ZEST1400)100部に対し、表4に示す可塑剤組成物80部、Ca/Mg/Zn系塩化ビニル樹脂用安定剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカスタブRUP-103)2部、滑剤(花王株式会社製、商品名:ルナックS-70V)0.5部を、撹拌棒を用いて室温にて混合した。その後、4インチオープンロール型混練機(西村マシナリー株式会社製)を用いて、回転数17rpm、170℃にて混練し、ゲル化させ、ゲル化後5分間混練を継続し、ハロゲン系樹脂組成物を得た。
上記で製造した未成形シートを160℃で5分間予熱後、圧力20MPaで2分間加圧し、さらに15℃で2分間冷却し、厚み0.8mmのハロゲン系樹脂組成物1~8及び11~17の成形シートを得た。
【0082】
[測定]
〔耐熱性評価〕
各ハロゲン系樹脂組成物の成形シートをJIS K6251:2017に規定される3号ダンベル状に打ち抜いた試験片を、JIS K 7212:1999に規定のギア式老化試験機(株式会社上島製作所製、商品名:AG-103)中にて100℃で100時間放置した前後の質量減少率(%)を測定した。数値がゼロに近いほど耐熱性に優れることを示す。結果を表4に示す。
【0083】
【0084】
表4に示すように、本発明の可塑剤組成物は、ハロゲン系樹脂組成物に用いられることで、優れた耐熱を示すことが分かる。また、実施例9と実施例10及び実施例11との結果の比較から、可塑剤組成物中の可塑剤Aの含有量が増えることでハロゲン系樹脂組成物の耐熱性が向上することが分かる。更に、実施例9と実施例12及び実施例13との結果の比較から、可塑剤B中のデカン酸由来の基を多く含む可塑剤b1及びb2の含有量が増えることでハロゲン系樹脂組成物の耐熱性が向上することが分かる。一方、実施例9と実施例14~16との結果の比較から、可塑剤Aの種類は、ハロゲン系樹脂組成物の耐熱性にあまり影響を及ぼさないことが分かった。
一方、フタル酸ジn-ヘキシル(可塑剤A11)及びジオクタン酸イソソルバイド(可塑剤B11)を含む可塑剤組成物11を用いた比較例8のハロゲン系樹脂組成物11は、耐熱性に著しく劣っていた。また、可塑剤A1とジデカン酸イソソルバイド(可塑剤B12)を含む可塑剤組成物12を用いた比較例9のハロゲン系樹脂組成物12、可塑剤A1とジオクタン酸イソソルバイド(可塑剤B11)を含む可塑剤組成物13を用いた比較例10のハロゲン系樹脂組成物13、及び可塑剤A1を含み、ジオクタン酸イソソルバイド(可塑剤B11)とジデカン酸イソソルバイド(可塑剤B12)とを含む可塑剤組成物14を用いた比較例11のハロゲン系樹脂組成物14は、いずれも耐熱性に劣っていた。更に、フタル酸ジn-ヘキシル(可塑剤A11)と可塑剤B1を含む可塑剤組成物15を用いた比較例12のハロゲン系樹脂組成物15、フタル酸ジn-ヘキシル(可塑剤A11)と可塑剤B2を含む可塑剤組成物16を用いた比較例13のハロゲン系樹脂組成物16、及びフタル酸ジn-ヘキシル(可塑剤A11)と可塑剤B3を含む可塑剤組成物17を用いた比較例14のハロゲン系樹脂組成物17は、いずれも極めて耐熱性に劣っており、実施例1、14、及び15の結果との比較から、一般式(I)で表されるフタル酸ジエステルのR1及びR2の炭素数が、本発明の可塑剤組成物を含むハロゲン系樹脂組成物の耐熱性に影響することが分かった。