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2025-100764ポリオール含有組成物、発泡性ポリウレタン組成物、及びポリウレタンフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100764
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】ポリオール含有組成物、発泡性ポリウレタン組成物、及びポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20250626BHJP
   C08G 18/09 20060101ALI20250626BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20250626BHJP
   C08G 18/20 20060101ALI20250626BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20250626BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20250626BHJP
【FI】
C08G18/00 J
C08G18/09 020
C08G18/18
C08G18/20
C08G18/22
C08G101:00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025068273
(22)【出願日】2025-04-17
(62)【分割の表示】P 2021074487の分割
【原出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 康揮
(72)【発明者】
【氏名】玉井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】吉川 悠人翔
(57)【要約】
【課題】液分離が発生せず、かつ、難燃性及び意匠性の高いポリウレタンフォームを製造できるポリオール含有組成物を提供する。
【解決手段】ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール含有組成物であって、前記ポリオール含有組成物が、ポリオール、発泡剤、触媒、難燃剤、及び染料を含有し、かつ前記難燃剤が固体難燃剤を含む、ポリオール含有組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール含有組成物であって、
前記ポリオール含有組成物が、ポリオール、発泡剤、触媒、難燃剤、及び染料を含有し、かつ前記難燃剤が固体難燃剤を含む、ポリオール含有組成物。
【請求項2】
前記固体難燃剤が赤燐系難燃剤を含む、請求項1に記載のポリオール含有組成物。
【請求項3】
前記触媒が三量化触媒を含む、請求項1又は2に記載のポリオール含有組成物。
【請求項4】
前記三量化触媒が4級アンモニウム塩を含む、請求項3に記載のポリオール含有組成物。
【請求項5】
前記触媒がイミダゾール誘導体を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項6】
前記触媒がビスマス又はスズから少なくとも1種選択される金属触媒を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項7】
3日間、40℃の環境下で保管した際に液分離が発生しない、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとを含有する、発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項9】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、難燃剤、及び染料を含有し、かつ前記難燃剤が固体難燃剤を含む、発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項10】
イソシアネートインデックスが200以上である、請求項8又は9に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項11】
吹き付け用途に用いられる、請求項8~10のいずれか1項に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか1項に記載の発泡性ポリウレタン組成物を発泡させてなるポリウレタンフォーム。
【請求項13】
ポリオール、発泡剤、触媒、及び固形難燃剤を含む難燃剤を少なくとも配合してポリオール含有組成物を用意し、
前記ポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートを混合させ、発泡させてポリウレタンフォームを製造するポリウレタンフォームの製造方法であって、
染料を、予めポリオール含有組成物又はポリイソシアネートに添加し、或いは、ポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートを混合させる際に添加するポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール含有組成物、発泡性ポリウレタン組成物、及びポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、その優れた断熱性及び接着性から、例えば、マンションなどの集合住宅、戸建住宅、学校の各種施設、商業ビルなどの建築物の断熱材として用いられている。ポリウレタンフォームは、ポリオール組成物とポリイソシアネートとを混合して発泡させ、スプレー装置などを使用して天井や壁、屋根などの対象物に吹き付けることで得られる。このようなポリウレタンフォームは、建築物に使用されるものである以上、火災が発生した場合においても、火がポリウレタンフォームに燃え移って建築物全体に延焼をもたらすことを防止する為、難燃性が求められる。そのため、ポリウレタンフォームには、難燃効果の高い、赤燐などの固体難燃剤が配合されることがある。
【0003】
また、近年では、こうしたポリウレタンフォームは、用途拡大に伴い、人目につく箇所にも採用されるようになっていることから、表面の意匠性も重要視されるようになってきており、それに伴い、着色されたポリウレタンフォームの需要も高まりつつある。ポリウレタンフォームの着色手段としては、例えば、特許文献1に記載されるように、ポリオールを含有するポリウレタンフォーム製造用組成物に、顔料を含有させる方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表2018/225651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように顔料を使用すると、ポリウレタンフォーム製造用組成物中に顔料が十分分散せず、顔料が沈殿するため、該組成物の液分離が発生し、ポリウレタンフォームが均等に着色されず、意匠性が悪化する問題がある。
【0006】
そこで本発明は、液分離が発生せず、かつ、難燃性及び意匠性の高いポリウレタンフォームを製造できるポリオール含有組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール含有組成物であって、ポリオール、発泡剤、触媒、難燃剤、及び染料を含有し、かつ前記難燃剤が固体難燃剤を含む、ポリオール含有組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、下記[1]~[13]を要旨とする。
[1]ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール含有組成物であって、前記ポリオール含有組成物が、ポリオール、発泡剤、触媒、難燃剤、及び染料を含有し、かつ前記難燃剤が固体難燃剤を含む、ポリオール含有組成物。
[2]前記固体難燃剤が赤燐系難燃剤を含む、[1]に記載のポリオール含有組成物。
[3]前記触媒が三量化触媒を含む、[1]又は[2]に記載のポリオール含有組成物。
[4]前記三量化触媒が4級アンモニウム塩を含む、[3]に記載のポリオール含有組成物。
[5]前記触媒がイミダゾール誘導体を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[6]前記触媒がビスマス又はスズから少なくとも1種選択される金属触媒を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[7]3日間、40℃の環境下で保管した際に液分離が発生しない、[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[8][1]~[7]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとを含有する、発泡性ポリウレタン組成物。
[9]ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、難燃剤、及び染料を含有し、かつ前記難燃剤が固体難燃剤を含む、発泡性ポリウレタン組成物。
[10]イソシアネートインデックスが200以上である、[8]又は[9]に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
[11]吹き付け用途に用いられる、[8]~[10]のいずれか1項に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
[12][8]~[11]のいずれか1項に記載の発泡性ポリウレタン組成物を発泡させてなるポリウレタンフォーム。
[13]ポリオール、発泡剤、触媒、及び固形難燃剤を含む難燃剤を少なくとも配合してポリオール含有組成物を用意し、前記ポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートを混合させ、発泡させてポリウレタンフォームを製造するポリウレタンフォームの製造方法であって、染料を、予めポリオール含有組成物又はポリイソシアネートに添加し、或いは、ポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートを混合させる際に添加するポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液分離が発生せず、かつ、難燃性及び意匠性の高いポリウレタンフォームを製造できるポリオール含有組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリオール含有組成物]
本発明のポリオール含有組成物は、ポリオール、発泡剤、触媒、難燃剤、及び染料を含有する。
【0011】
<染料>
本発明のポリオール含有組成物中に含有される着色剤は、染料である。染料は、一般的にポリオール含有組成物において溶解して、ポリオール含有組成物中に十分分散される。そのため、顔料ではなく、染料を使用することで、ポリオール含有組成物の液分離を防止でき、ポリウレタンフォームを均等に着色することが可能になる。染料は、溶剤染料、分散染料などを使用できる。
本発明のポリオール含有組成物中に含有される染料は、黒色染料及び青色系染料からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。染料が黒色染料であることで、ポリウレタンフォームの色が黒色又は黒色に近い灰色となるため、後述の難燃剤を含有するなどして、ポリウレタンフォームが赤色やピンク色などの赤色系の色に着色しても、赤色系を有効にマスキングして意匠性を高めることができる。
また、染料が青色系染料であると、該染料が補色効果を奏し、赤色系の色がより効果的にマスキングされ、ポリウレタンフォームの色が灰色又は灰色に近くなり、意匠性を高めることができる。
なお、本発明で用いられる用語「青色系染料」は、青色染料のみならず、青色に近似する色の染料、具体的には、紫色染料、水色染料などであってもよい。
【0012】
本発明で使用する黒色染料または青色系染料としては、1種の化合物単独で黒色、又は青色系の色を発現するものであってもよいが、2種以上の化合物の組み合わせで黒色、又は青色系の色を発現するものであってもよい。
以下、染料として、黒色染料及び青色系染料の具体例をより詳細にいくつか列挙するが、本発明で使用する染料はこれらに限定されず、ポリオール含有組成物中に含有した際に、該組成物の液分離を抑制できるものであれば、以下に列挙するもの以外の染料を使用してもよい。
【0013】
また、黒色染料としては、ニグロシン染料、アゾ染料、アジン系染料などを使用でき、カラーインデックスに記載される各種のソルベントブラック、リアクティブブラック、ディスパースブラックを使用できる。
黒色染料としては、市販品を使用してもよく、例えば、Reactint Black X95AB、Reactint Black 1852、Reactint Black 2256、Reactint Black X77、Reactint Black 454SS(いずれもMilliken&Company社製)などを使用できる。
なお、本発明において黒色染料を使用する際は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
青色系染料は、青色染料であってもよいし、紫色染料であってもよい。また、青色染料は、水色染料であってもよい。
青色染料としては、カラーインデックスに記載される各種のソルベントブルー、リアクティブブルー、ディスパースブルーなどを使用できる。
また、紫色染料としては、カラーインデックスに記載される各種のソルベントバイオレット、リアクティブバイオレット、ディスパースバイオレットなどを使用できる。
青色系染料としては、市販品を使用してもよく、例えば、青色染料として、Reactint Blue X17AB、Reactint Blue X77(いずれもMilliken&Company社製)などが挙げられる。また、青色染料としてはコールダイオールネービーブルー(桂屋ファイングッズ社製)などでもよいし、コールダイオールスカイブルー(桂屋ファイングッズ社製)などの水色染料などでもよい。
また、紫色染料としては、例えば、Reactint Violet X80LT(Milliken&Company社製)などが挙げられる。
なお、本発明において黒色染料を使用する際は、黒色染料と同様、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
本発明では、さらに、本発明の効果を損なわない限り、黒色染料及び青色系染料以外の、赤色、黄色、オレンジ色など第3の色を有する染料(以下、第3の染料と表記)を、黒色染料又は青色系染料と組み合わせて使用してもよい。なお、第3の染料も市販品の染料を使用することができる。市販品としては、例えば、Reactint Red X64、Reactint Orange X94、Reactint Yellow X15、Reactint Yellow X36(いずれもMilliken&Company社製)などが挙げられる。
【0016】
本発明のポリオール含有組成物に含有する染料としては、青色系染料であることがより好ましく、青色染料であることがさらに好ましい。青色系染料は、黒色染料よりも効果的に、難燃剤の赤色を抑制でき、青色系染料を使用することにより、ポリウレタンフォームの意匠性をより一層高めることができ、また、黒色染料を使用した場合よりも含有量が少なくて済むため、生産コストに見合った効果が得られる。
【0017】
染料の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量に対して、0.2~10質量部であることが好ましい。染料の含有量が0.2質量部以上であることで、染料を使用した効果が得られ、ポリウレタンフォームの着色性が良好になる。また、10質量部以下とすることで、配合量に見合った効果が得られて、染料の配合により、ポリウレタンフォームの性能が劣化するなどの不具合が生じにくくなる。
これら観点から、染料の含有量は、例えば黒色染料の場合には、2~10質量部がより好ましく、2~8質量部がさらに好ましい。また、青色系染料の場合には、0.1~8質量部がより好ましく、0.2~6質量部がさらに好ましい。
【0018】
<液分離>
本発明のポリオール含有組成物は、3日間40℃下で保管しても液成分の色分離が発生しないことが好ましい。液成分の色分離が発生しないことで、着色ポリウレタンフォームの濃淡のばらつきを抑制し、ポリウレタンフォームの意匠性が良好になる。なお、液成分の色分離が発生しないとは、液成分の色の分離がなく、外観上、色むらがない状態を意味する。
【0019】
<ポリオール>
ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。ポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、ポリオールは、ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。また難燃性を向上させるという観点から、含ハロゲンポリオールや含リンポリオールなどの使用も好ましい。
このような観点から、ポリオール100質量部のうち、ポリエステルポリオールを20質量部以上とすることが好ましく、50質量部以上とすることがより好ましく、80質量部以上とすることがさらに好ましく、100質量部とすることが特に好ましい。
【0020】
本発明で用いるポリオールの平均水酸基価は、ポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、100~500mgKOH/gが好ましく、150~450mgKOH/gがより好ましく、200~400mgKOH/gがさらに好ましい。
【0021】
なお、平均水酸基価とはポリオールが1種類である場合には、そのポリオールの水酸基価を意味する。また、2種類以上のポリオールを用いる場合は、ポリオールの水酸基価として、当該2種類以上のポリオール化合物の配合比率に従った水酸基の加重平均値を平均水酸基価とする。
例えば、ポリオールとして、2種類のポリオール(d1)、ポリオール(d2)を用いる場合、ポリオール(d1)の水酸基価をX、配合比率をm、ポリオール(d2)の水酸基価をX、配合比率をmとすると、該平均水酸基価は、以下の式で表される。なお、配合比率は、質量基準である。
平均水酸基価(mgKOH/g)=X×(m/(m+m))+X×(m/(m+m))
水酸基価は、JIS K1557-1:2007に準拠して測定される値である。
【0022】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールは、芳香環を有するポリエステルポリオールでもよいし、脂肪族ポリエステルポリオールでもよいが、得られるポリウレタンフォームの難燃性を考慮した場合、芳香環を有するポリエステルポリオールを使用することが好ましい。芳香環を有するポリエステルポリオールは、o-フタル酸(フタル酸)、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物であることが好ましい。中でも、ポリウレタンフォームの難燃性を高める観点から、ポリオール化合物は、フタル酸とグリコールとの縮合物である、フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことが好ましく、p-フタル酸とグリコールの縮合物である、p-フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことがより好ましい。
グリコールとしては、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のポリエステルポリオールの構成成分として公知の低分子量脂肪族グリコールを使用することが好ましい。
【0023】
ポリエステルポリオールの水酸基価は、100~500mgKOH/gが好ましく、150~450mgKOH/gがより好ましく、200~400mgKOH/gがさらに好ましい。
【0024】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールは、2個以上の活性水素原子を有する開始剤に、アルキレンオキサイドを開環付加重合させて得られたポリオキシアルキレンポリオールである。開始剤としては、具体的には例えば、脂肪族多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどの4官能アルコール類、シュクロース類、ソルビトール類などの高官能類)、脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミンなどのアルキレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン)、芳香族アミン(例えば、アニリン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、マンニッヒ縮合物など)などが挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、芳香環を有することが好ましい。上記のうち、芳香環を有する開始剤を用いて製造したポリエーテルポリオールが、芳香環を有するポリエーテルポリオールであり、例えば芳香族アミンを開始剤として用いて製造したポリエーテルポリオールは、芳香環を有するポリエーテルポリオールである。芳香環を有するポリエーテルポリオールの中でも、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール、マンニッヒ系ポリエーテルポリオールなどを好適に使用することができる。
【0025】
トリレンジアミン系ポリエーテルポリオールとは、開始剤としてトリレンジアミンを用いて製造したトリレンジアミン系ポリエーテルポリオールである。
上記マンニッヒ系ポリエーテルポリオールとは、マンニッヒ反応を利用して得られるものであって、分子内に2個以上の水酸基を有するマンニッヒ縮合物、又はそのようなマンニッヒ縮合物に、アルキレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオールである。より具体的には、フェノール及びそのアルキル置換誘導体の少なくともいずれか、ホルムアルデヒド及びアルカノールアミンのマンニッヒ反応により得られたマンニッヒ縮合物、又はこの化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールである。
【0026】
ポリエーテルポリオールの水酸基価は、200~2000mgKOH/gであることが好ましく、300~1000mgKOH/gであることがより好ましい。
【0027】
<触媒>
(金属触媒(樹脂化金属触媒))
本発明のポリオール含有組成物は、触媒を含有する。触媒は、例えば樹脂化触媒及び三量化触媒の一方又は両方を含有してもよく、両方を含有することが好ましい。
樹脂化触媒は、金属触媒を含有することが好ましい。この金属触媒は、一般的に樹脂化金属触媒と呼ばれるものである。本発明では、上記樹脂化金属触媒を含有することで、ポリオールとポリイソシアネートとの反応が促進され、特に初期反応速度を高めることができる。また、後述する赤燐系難燃剤などのフィラーを一定量以上含有させるとポリウレタンフォームの反応性が阻害され発泡性が低下しやすいが、樹脂化金属触媒を含有させることで、ポリウレタンフォームの発泡性を良好に維持しやすくなる。上記金属触媒は、発泡性などの観点から、ビスマス又はスズを含むことが好ましく、ビスマスを含むことがより好ましい。
【0028】
上記の樹脂化金属触媒は、ビスマス塩及びスズ塩から選択される金属塩が好ましく、ビスマス塩であることがより好ましい。金属塩は、有機酸金属塩であることが好ましく、より好ましくは炭素数5以上のカルボン酸の金属塩である。カルボン酸は、炭素数5以上であることで、発泡剤、特にハイドロフルオロオレフィンに対する安定性が良好となる。また、カルボン酸の炭素数は、触媒活性などの観点から、18以下が好ましく、12以下がより好ましい。カルボン酸は、脂肪族カルボン酸であることが好ましく、飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。カルボン酸は、直鎖であってもよいし、分岐構造を有してもよいが、分岐構造を有することが好ましい。
カルボン酸の具体例としては、オクチル酸、ラウリル酸、バーサチック酸、ペンタン酸及び酢酸等が挙げられ、これらのなかではオクチル酸が好ましい。すなわち、遷移金属塩は、オクチル酸の金属塩が好ましい。これらカルボン酸は、上記の通り直鎖状であってもよいが、分岐構造を有してもよい。なお、分岐構造を有するオクチル酸としては、2-エチルヘキサン酸が挙げられる。
カルボン酸の金属塩としては、カルボン酸のビスマス塩、カルボン酸の錫塩が好ましく、中でもオクチル酸のビスマス塩が好ましい。また、カルボン酸の金属塩は、アルキル金属のカルボン酸塩であってもよい。例えばカルボン酸スズ塩はジアルキル錫カルボン酸塩等であってもよく、好ましくはジオクチルスズカルボン酸塩等である。
カルボン酸の金属塩の具体例としては、ビスマストリオクテート、ジオクチルスズバーサテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチル酸錫等が挙げられ、好ましくはビスマストリオクテート、ジオクチルスズバーサテート、より好ましくはビスマストリオクテートである。
【0029】
ポリオール含有組成物中の上記樹脂化金属触媒の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、0.1~15質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、1.5~8質量部が更に好ましく、2~5質量部がより更に好ましい。
【0030】
(イミダゾール誘導体)
本発明のポリオール含有組成物に使用される触媒は、樹脂化触媒として、樹脂化アミン触媒を含有することが好ましく、樹脂化アミン触媒として、イミダゾール誘導体を含有することがより好ましい。
イミダゾール誘導体は、ハイドロフルオロオレフィンの影響を受けにくく、ポリオール含有組成物の安定性を高めつつポリオールとポリイソシアネートとを反応させやすくする。したがって、ポリオール含有組成物は、上記した金属触媒に加えて、イミダゾール誘導体を含有することで、ポリオールとポリイソシアネートの反応性が高められ、発泡性がさらに良好となる。
イミダゾール誘導体は、好ましくは1位および2位がそれぞれ独立に炭素数8以下のアルキル基で置換されたイミダゾールであり、アルキル基は好ましくは炭素数6以下、より好ましくは炭素数4以下である。イミダゾール誘導体の好適な具体例は、下記一般式(1)で表される。
【0031】
【化1】
(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。)
【0032】
一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基はそれぞれ直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
1及びR2のアルキル基又はアルケニル基の炭素数が前記下限値以上であると、立体障害が大きくなりハイドロフルオロオレフィン等の発泡剤の影響を受けにくくなるため好ましい。一方、R及びRのアルキル基の炭素数が前記上限値以下であると、極端に立体障害が大きくならないためポリオールとポリイソシアネートとの反応を速やかに進行させることが可能になり、発泡性も良好となる。
これらの観点から、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0033】
一般式(1)で表されるイミダゾール誘導体としては、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられ、中でも、ハイドロフルオロオレフィン存在下での触媒の活性を向上させる観点と反応を速やかに進行させる観点から、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾールが好ましい。また、安定性をより高める観点からは1,2-ジメチルイミダゾールがさらに好ましい。
【0034】
ポリオール含有組成物中のイミダゾール誘導体の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、1~20質量部がより好ましく、2~15質量部が更に好ましく、3~10質量部が特に好ましい。イミダゾール誘導体の含有量が前記下限値以上であるとウレタン結合の形成が生じやすくなり、反応が速やかに進行し、かつ発泡性が良好となる。一方、イミダゾール誘導体の含有量が前記上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなるため好ましい。
【0035】
(三量化触媒)
本発明のポリオール含有組成物は、三量化触媒をさらに含有することが好ましい。三量化触媒は、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒である。三量化触媒を含有することで未反応のイソシアネート基の反応を完了させることで良好なポリウレタンフォームが得られるという優位点がある。三量化触媒としては、金属触媒及びアンモニウム塩等が挙げられる。
三量化触媒として使用される金属触媒(三量化金属触媒)としては、有機酸カリウムが挙げられ、好ましくは2-エチルヘキサン酸カリウム等のオクチル酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、ブタン酸カリウム、安息香酸カリウム等の炭素数2~8のカルボン酸カリウムである。
アンモニウム塩としては、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用することができるが、これらのなかでは、4級アンモニウム塩が好ましい。アンモニウム塩は、例えばカルボン酸のアンモニウム塩である。アンモニウム塩におけるカルボン酸としては、例えば炭素数1~10、好ましくは炭素数2~8の飽和脂肪酸が挙げられる。飽和脂肪酸は、炭化水素基が直鎖であってもよいし、分岐を有してもよいが、分岐を有することが好ましい。カルボン酸の具体例としては、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸などが挙げられるが、これらの中では2,2-ジメチルプロパン酸が好ましい。1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
三量化触媒は、少なくとも4級アンモニウム塩を含むことが好ましい。また、4級アンモニウム塩と金属触媒とを併用することがより好ましい。
【0036】
ポリオール含有組成物中の三量化触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.5~30質量部が好ましく、1~25質量部がより好ましく、2~20質量部が更に好ましく、5~15質量部がより更に好ましい。三量化触媒の含有量が前記下限値以上であると、樹脂化と三量化との活性に大きな差が生まれず、発泡が2段階になることを抑制でき、発泡性が良好となる。一方、三量化触媒の含有量が前記上限値以下であると、樹脂化反応が活性に進行することで、樹脂化反応熱によって三量化の活性を助けることができ発泡性が良好となり、良好なポリウレタンフォームを形成することができる。
【0037】
上記観点から、例えば、三量化触媒としてアンモニウム塩を含有した場合、アンモニウム塩の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.3~23質量部が好ましく、0.7~19質量部がより好ましく、1.5~15質量部が更に好ましく、3~11質量部がより更に好ましい。また、三量化触媒として金属触媒を含有した場合、金属触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.2~7質量部が好ましく、0.3~6質量部がより好ましく、0.5~5質量部が更に好ましく、2~4質量部がより更に好ましい。
【0038】
<固体難燃剤>
本発明のポリオール含有組成物は、フィラーとして、固体難燃剤を含有する。ここで、固体難燃剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)において固体である難燃剤であり、一般的にポリオール含有組成物において粒状、粉状として存在する成分である。本発明のポリオール含有組成物は、固体難燃剤を含有させることで、ポリウレタンフォームの難燃性を向上させることができる。
【0039】
固体難燃剤は、常温(23℃)、常圧(1気圧)において、固体であり、かつポリオール含有組成物において溶解しない成分であればよい。固体難燃剤は、ポリウレタンフォームの吸水率を低減させる観点から、吸湿性及び潮解性を有さないものであることが好ましい。なお、上記した触媒は、固体難燃剤には包含されないものとする。
本発明における固体難燃剤として、具体的には、赤燐系難燃剤、ホスフィン酸金属塩、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、塩素含有難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。これらの固体難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(赤燐系難燃剤)
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物等を被膜したものでもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物等を混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないがフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0041】
(ホスフィン酸金属塩)
ホスフィン酸金属塩は、有機ホスフィン酸の金属塩である。ホスフィン酸金属塩の具体例としては、例えば、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどが挙げられる。
【0042】
(リン酸塩含有難燃剤)
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期律表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも1種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩が挙げられる。なお、用語「各種リン酸」は、リン酸のみならず、亜リン酸、次亜リン酸等も含まれる概念である。
周期律表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリン等が挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物として、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
【0043】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。モノリン酸塩としては特に限定されないが、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素ニアンモニウム等のアンモニウム塩、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩、リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩、リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩等が挙げられる。
ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
(臭素含有難燃剤)
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温(23℃)、常圧(1気圧)で固体である化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物等が挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
【0045】
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物等が挙げられる。さらには、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、未架橋又は架橋臭素化ポリスチレン等が挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカン等の臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
(ホウ素含有難燃剤)
本発明で使用するホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
【0047】
(アンチモン含有難燃剤)
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。 本発明に使用するアンチモン含有難燃剤は、酸化アンチモンであることが好ましい。
【0048】
(塩素含有難燃剤)
塩素含有難燃剤は、ポリウレタンフォームに通常用いられるものが挙げられ、例えば、ポリ塩化ナフタレン、クロレンド酸、「デクロランプラス」の商品名で販売されるドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテン等が挙げられる。
【0049】
(金属水酸化物)
本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0050】
本発明のポリオール含有組成物に含有する固体難燃剤としては、ポリウレタンフォームに良好な難燃性を付与する観点から、赤燐系難燃剤及びホスフィン酸金属塩からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、赤燐系難燃剤を少なくとも含むことがより好ましい。
【0051】
ポリオール含有組成物中の固体難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、20~150質量部が好ましく、25~130質量部がより好ましく、30~120質量部が更に好ましい。
固体難燃剤として、赤燐系難燃剤を含有する場合、赤燐系難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、10~60質量部が好ましく、15~50質量部がより好ましく、20~40質量部がさらに好ましい。また、固体難燃剤として、ホスフィン酸金属塩を含有する場合、ホスフィン酸金属塩の含有量は、35~120質量部が好ましく、50~100質量部がより好ましく、60~90質量部がさらに好ましい。
これら固体難燃剤の含有量が上記下限値以上であると、ポリウレタンフォームに良好な難燃性、良好な機械特性を付与することが可能になる。他方、これら固体難燃剤の含有量が上記上限値以下であると、該ポリオール含有組成物をポリイソシアネートと混合する際の取り扱い性や、発泡性が良好になる。
【0052】
<液状難燃剤>
本発明のポリオール含有組成物は、常温(23℃)、常圧(1気圧)にて液体である液状難燃剤を含有してもよい。液状難燃剤としては、具体的にはリン酸エステルが挙げられる。リン酸エステルを使用することで、ポリオール含有組成物の流動性を維持させることができ、ポリウレタンフォームの形成がしやすくなる。
【0053】
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェート等のトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート等の芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート等の酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0054】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0055】
リン酸エステルは、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール含有組成物の粘度を適切にしやすくする観点、及びポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
ポリオール含有組成物におけるリン酸エステルの含有量は、ポリオール100質量部に対して、5~100質量部が好ましく、12~90質量部がより好ましく、20~75質量部がさらに好ましく、30~60質量部がよりさらに好ましい。
【0056】
<無機充填剤>
本発明のポリオール含有組成物に含有するフィラーは、上記した固体難燃剤以外の無機充填剤を使用してもよい。そのような無機充填剤としては、針状フィラー、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、フェライト類、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、タルク、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、イモゴライト、セリサイト、ガラスビーズ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、各種金属粉、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、硫化モリブデン、炭化ケイ素、各種磁性粉、フライアッシュ等を適宜使用できる。これら無機充填剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明で使用する無機充填剤としては、特に限定されないが、ポリウレタンフォームへの良好な機械特性の付与などの観点から、上記したものの中では、針状フィラーを含有することが好ましい。また、ポリオール含有組成物は、赤燐系難燃剤及びホスフィン酸金属塩からなる群から選択される少なくとも1種と、針状フィラーとを含有することがさらに好ましい。
【0057】
(針状フィラー)
針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム含有ウィスカー、珪素含有ウィスカー、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、棒状ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、スラグ繊維、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
これらの針状フィラーは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
本発明に使用する針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。なお、当該アスペクト比は、走査型電子顕微鏡で針状フィラーを観察してその長さと幅を測定して求めることができる。
【0058】
ポリオール含有組成物中の無機充填剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、20~120質量部が好ましく、30~100質量部がより好ましく、40~80質量部が更に好ましい。無機充填剤の含有量が上記下限値以上であると、ポリウレタンフォームに良好な機械特性を付与することが可能になる。他方、無機充填剤の含有量が上記上限値以下であると、該ポリオール含有組成物をポリイソシアネート組成物と混合する際の取り扱い性や、発泡性が良好になる。
また、無機充填材として針状フィラーを使用する場合、針状フィラーの含有量は、ポリオール100質量部に対して、20~100質量部が好ましく、25~95質量部がより好ましく、30~90質量部が更に好ましい。
【0059】
<発泡剤>
発泡剤は、後述の発泡性ポリウレタン組成物の発泡を促進する。発泡剤としては、例えば、水、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、ハイドロフルオロオレフィン(以下「HFO」と記載することがある。)、ジイソプロピルエーテル等のエーテル化合物、あるいはこれらの化合物の混合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。
これらのうち、発泡剤としての安定性が高く、かつ触媒活性が低下しにくくなり、さらに、環境負荷も低くなるハイドロフルオロオレフィン(HFO)を含むことが好ましい。
【0060】
好適な発泡剤であるHFOとしては、炭素数が3~6個程度であるフルオロアルケン等を挙げることができる。また、HFOは塩素原子を有するハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよく、したがって、炭素数が3~6個程度であるクロロフルオロアルケン等であってもよい。
HFOとしては、例えば、トリフルオロプロペン、HFO-1234等のテトラフルオロプロペン、HFO-1225等のペンタフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、HFO-1233等のクロロトリフルオロプロペン、及びクロロテトラフルオロプロペン等が挙げられる。
より具体的には、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z))、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z))、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z)、)、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E))、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(HFO-1336mzz)等が挙げられる。これらの中ではHFO-1233zd(E)が好ましい。
【0061】
発泡剤の含有量は特に限定されず、ポリオール100質量部に対して、20~80質量部が好ましく、30~70質量部がより好ましく、35~60質量部が更に好ましい。発泡剤の含有量が前記下限値以上であると発泡が促進され、発泡性が良好となり、ポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、発泡剤の含有量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0062】
上記、発泡剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。本発明の発泡性ポリウレタン組成物においては、上述のHFOとそれ以外の発泡剤を併用することが好ましく、例えば、HFOと、取り扱い性に優れる水、酸素ガス、二酸化炭素ガスを併用してもよい。特に、水はイソシアネートインデックスを調整する観点、及び取り扱い容易性の観点から好ましい。
【0063】
HFOの含有量は特に限定されず、ポリオール100質量部に対して、19~75質量部が好ましく、29~67質量部がより好ましく、34~58質量部が更に好ましい。発泡剤の含有量が前記下限値以上であると発泡が促進され、発泡性が良好となり、ポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、発泡剤の含有量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0064】
水の含有量は特に限定されず、ポリオール100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.3~3質量部がより好ましく、0.5~2質量部が更に好ましい。発泡剤の含有量が前記下限値以上であると発泡が促進され、発泡性が良好となり、ポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、発泡剤の含有量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0065】
<整泡剤>
本発明のポリオール含有組成物は、整泡剤を含有してもよい。整泡剤を含有することでポリウレタンフォームの発泡性を良好にでき、例えば、スプレー噴霧においてポリイソシアネートと反応させる際、発泡を促進できる。
整泡剤としては、具体的には界面活性剤、より具体的には、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等を例示することができる。非イオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等が挙げられる。本発明で使用する整泡剤は特に限定されないが、発泡性の観点からシリコーン整泡剤が好ましい。整泡剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0066】
本発明のポリオール含有組成物中の整泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~12質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、2~8質量部が更に好ましい。整泡剤の含有量が前記下限値以上であるとポリオール含有組成物とポリイソシアネート組成物との混合物を発泡させやすくなるため均質なポリウレタンフォームを得ることが可能になる。また、整泡剤の含有量が前記上限値以下であると製造コストと得られる効果のバランスが最適になる。
【0067】
<その他成分>
ポリオール含有組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤(金属不活性化剤)、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、可塑剤、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤等から選択される1種以上を含むことができる。
【0068】
[発布性ポリウレタン組成物、及びポリウレタンフォーム]
本発明は、発泡性ポリウレタン組成物も提供する。本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、ポリオール、発泡剤、触媒、難燃剤、及び染料に加えて、ポリイソシアネートを含有する。
また、発泡性ポリウレタン組成物は、難燃剤以外のフィラー、リン酸エステルなどの液状難燃剤などを含有してもよいし、整泡剤、その他成分などを含有してもよい。
なお、発泡性ポリウレタン組成物に含有される各成分の詳細は、上記のとおりであり、その説明は省略する。
【0069】
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、好ましくは上記ポリオール含有組成物と、ポリ
イソシアネートとを含むものであり、これらを混合して得られる。なお、ポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとは混合する前は、別々の容器に保管しておくとよい。
また、後述する通り、発泡性ポリウレタン組成物は、染料を含有しないポリオール含有組成物と、染料を含有するポリイソシアネートと含むものであってもよく、これらを混合して得られるものであってもよい。
また、発泡性ポリウレタン組成物は、染料を含有しないポリオール含有組成物と、染料を含有しないポリイソシアネートと、染料とが別々に用意され、使用直前にこれらを混合して得られるものであってもよい。
【0070】
<ポリイソシアネート>
本発明におけるポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等が挙げられる。
【0071】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0072】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0073】
これらの中でも、使いやすさの観点、及び入手容易性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックMDI、又はこれらの混合物がより好ましく、中でもジフェニルメタンジイソシアネートがさらに好ましく、特に、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、ポリイソシアネートは、ポリオール含有組成物と混合する前に、ポリイソシアネートに配合される公知の添加剤が適宜配合されてもよい。
【0074】
なお、ポリオール含有組成物と、ポリオール含有組成物と混合されるポリイソシアネートは、互いに体積が実質的に同じであることが好ましい。具体的には、ポリオール含有組成物に対する、ポリイソシアネート組成物の体積比は、0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1がより好ましく、0.95~1.05がさらに好ましい。
【0075】
<イソシアネートインデックス>
本発明の発泡性ポリウレタン組成物におけるイソシアネートインデックスに特に制限はないが、200以上が好ましい。イソシアネートインデックスが当該下限値以上であると、ポリオールに対するポリイソシアネートの量が過剰になりポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合が生成し易くなる結果、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。また、難燃性を付与することも可能になる。さらに、上記下限値以上とすると、上記した各種触媒を併用することも相俟って、イソシアヌレート結合を十分に有するポリウレタンフォーム、すなわち、難燃性と断熱性とを高い水準で兼ね備えるポリウレタンフォームを製造しやすい。これらの観点から、イソシアネートインデックスは、250以上がより好ましく、300以上がさらに好ましい。
また、イソシアネートインデックスは、1,000以下が好ましく、800以下がより好ましく、600以下がさらに好ましい。イソシアネートインデックスが前記上限値以下であると、製造コストに十分見合った難燃性が得られる。
【0076】
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス
=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56,100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
【0077】
<総発熱量>
本発明の発泡性ポリウレタン組成物からなるポリウレタンフォームは、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて10分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m以下であることが好ましい。総発熱量が8MJ/m以下であることにより、本発明の発泡性ポリウレタン組成物からなるポリウレタンフォームは、所定の難燃性を有する。
該発泡体の難燃性をより向上させる観点から、上記総発熱量は、7.5MJ/m以下であることがより好ましく、7MJ/m以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の発泡性ポリウレタン組成物からなるポリウレタンフォームは、上記と同様の方法にて20分間加熱したときにおいても総発熱量が8MJ/m以下であることがよりさらに好ましく、7.5MJ/m以下であることが特に好ましい。
【0078】
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、上記ポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとを混合して得たポリウレタンフォームAと、着色剤非含有のポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとを混合して得たポリウレタンフォームBとの色差ΔEが3以上であることが好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましい。該色差ΔEが前記下限値以上であると、ポリウレタンフォームが良好に着色できているといえる。
なお、着色剤非含有のポリオール含有組成物とは、染料などの着色剤を配合しない以外は、ポリオール含有組成物と同じ組成を有するポリオール含有組成物を意味する。
上記色差ΔEは、発泡性ポリウレタン組成物を構成する、ポリオール含有組成物とポリイソシアネートを使用し、また、着色剤非含有ポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとを使用して、実施例記載の方法により、ポリウレタンフォームA,Bを作製し、そのポリウレタンフォームA、Bに対して色差を測定して求めることができる。
【0079】
<用途>
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、好ましくは吹き付け用途に用いることができる。そのため、本発明の発泡性ポリウレタン組成物、及びポリウレタンフォームの用途は、難燃性及び断熱性に優れていることもあり、建築物の壁、天井、屋根、床等の建築物に好適に用いることができ、壁、天井、屋根、床等などを吹付対象面としてポリウレタンフォームを成形するとよい。
【0080】
<ポリウレタンフォームの製造方法>
本発明のポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール、発泡剤、触媒、及び固形難燃剤を含む難燃剤を少なくとも配合してポリオール含有組成物を用意し、次に、ポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートを混合させ、発泡させてポリウレタンフォームを製造するものである。
ポリウレタンフォームの製造方法において、染料は、予めポリオール含有組成物及びポリイソシアネートのいずれかに添加しておいてもよいし、ポリオール含有組成物とポリイソシアネートを混合させる際に、添加してもよい。
【0081】
以下、まず、染料を予めポリオール含有組成物に添加させておく方法を第1の実施形態として説明する。
本発明の第1の実施形態に係るポリウレタンフォームの製造方法は、まず、ポリオール、発泡剤、触媒、固形難燃剤を含む難燃剤、及び染料を少なくとも配合してポリオール含有組成物を調製する。ここで、ポリオール含有組成物の調製方法に特に制限はなく、例えば、各成分を20~40℃程度でホモディスパー等を用いて30秒~20分程度撹拌することにより得ることができる。本方法で調製して得られたポリオール含有組成物は、染料を含有するものであり、その詳細は、上記で述べたとおりである。
そして、そのように調製されたポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートを施工現場に持ち込んで、現場にて混合させ、発泡性ポリウレタン組成物を得て、発泡性ポリウレタン組成物を反応及び発泡させてポリウレタンフォームを製造するとよい。
【0082】
次に、染料を予めポリイソシアネートに添加させておく方法を第2の実施形態として説明する。
本発明の第2の実施形態に係るポリウレタンフォームの製造方法は、まず、ポリオール、発泡剤、触媒、及び固形難燃剤を含む難燃剤を少なくとも配合してポリオール含有組成物を調製する。ここで、ポリオール含有組成物の調製方法は上記で述べたとおりである。また、本方法で調製して得られたポリオール含有組成物は、染料を含有しない以外は、上記で説明したポリオール含有組成物と同様である。
そして、そのように調製されたポリオール含有組成物と、染料を添加したポリイソシアネートを施工現場に持ち込んで、現場にて混合させ、発泡性ポリウレタン組成物を得て、発泡性ポリウレタン組成物を反応及び発泡させてポリウレタンフォームを製造するとよい。
【0083】
さらに、染料を、ポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートを混合させる際に添加する方法を第3の実施形態として説明する。
すなわち、第3の実施形態では、ポリオール、発泡剤、触媒、及び、固形難燃剤を含む難燃剤を少なくとも配合してポリオール含有組成物を用意する。この際、ポリオール含有組成物には、染料が含有されていなくてよい。したがって、本方法で調製して得られたポリオール含有組成物は、染料を含有しない以外は、上記で説明したポリオール含有組成物と同様である。
そして、ポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートと、染料とを、施工現場に持ち込み、施工現場にて、ポリオール含有組成物とポリイソシアネートを混合させる際に、染料を添加(後添加ともいう)する。染料を後添加することで、現場にて好みの色調に調整することができる。
なお、ここでいう、「ポリオール含有組成物とポリイソシアネートを混合させる際」とは、厳密に、ポリオール含有組成物とポリイソシアネートの混合と同時に、染料が添加される必要はなく、施工現場に持ち込まれた混合直前のポリオール含有組成物、又は、ポリイソシアネートに染料を添加する態様も含むものとする。なお、混合直前とは、例えば、混合前1週間以内程度のことをいい、好ましくは3日以内程度、より好ましくは1日以内程度である。なお、一度染料を添加したポリオール含有組成物、又は、ポリイソシアネートは、保管期間に関わらず、再使用時に再攪拌すれば使用することができる。
【0084】
したがって、染料は、施工現場において、ポリオール含有組成物に添加して、その染料を添加したポリオール含有組成物を、さらにポリイソシアネートに混合させてもよい。
また、染料は、施工現場にてポリイソシアネートに添加して、染料が添加されたポリイソシアネートをポリオール含有組成物に混合してもよい。さらに、施工現場にて、染料、ポリオール含有組成物及びポリイソシアネートを同時に混ぜ合わせてもよい。
これらの中では、染料は、施工現場において、ポリオール含有組成物に添加して、その染料を添加させたポリオール含有組成物を、さらにポリイソシアネートに混合させることが好ましい。
【0085】
ポリウレタンフォームは、例えば発泡機を使用して製造することが好ましい。例えば、ポリオール含有組成物を、発泡機などにおいて、ポリイソシアネートと混合させ、得られた混合液(発泡性ポリウレタン組成物)を発泡させることで製造するとよい。発泡機としては、スプレーガンを有するスプレー装置等を用いるとよい。
この際、上記の通り、ポリオール含有組成物及びポリイソシアネートのいずれかには、染料が配合されているとよいが、ポリオール含有組成物に含有されることが好ましい。
ポリオール含有組成物は、発泡機に送液され、別の容器などから送液されたポリイソシアネートと発泡機内部にて衝突混合させるとよい。そして、その混合液(発泡性ポリウレタン組成物)は、スプレーガンなどの吐出口から吐出させ、吐出された発泡性ポリウレタン組成物によりポリウレタンフォームを成形するとよい。
【0086】
本製造方法は、好ましくは吹き付け用途に適用することができる。したがって、発泡機から吐出された混合液は、施工対象面に一定の吐出圧力で吹き付け、発泡させることにより、施工対象面上にポリウレタンフォームを成形するとよい。
【実施例0087】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0088】
[使用材料]
<ポリイソシアネート>
・4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)(万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200)
【0089】
<ポリオール含有組成物>
(ポリオール)
・p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)
【0090】
(触媒)
・アンモニウム塩(三量化触媒)、2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩(エアープロダクツ社、製品名:DABCO(登録商標)TMR7)濃度45~55質量%
・金属触媒(三量化触媒)、2-エチルヘキサン酸カリウム(エアープロダクツ社製、製品名:DABCO(登録商標)K-15)濃度70~80質量%
・樹脂化アミン触媒、1,2-ジメチルイミダゾール(東ソー株式会社製、製品名:TOYOCAT DM70)濃度65~75質量%
・樹脂化金属触媒、ビスマストリオクテート(日東化成社製、製品名:ネオスタン U-600)濃度55~58質量%
・樹脂化金属触媒、ジオクチル(2-エチルヘキシル)スズバーサテート(日東化成社製、製品名:ネオスタン U-830)濃度約99質量%
【0091】
(発泡剤)
・ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(ハネウェル社製、製品名:ソルスティスLBA)
・水
【0092】
(液状難燃剤)
・リン酸エステル系可塑剤 トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP)
【0093】
(固体難燃剤)
・赤燐系難燃剤(燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140)
・ホスフィン酸金属塩(クラリアント社製、製品名:EXOLIT OP930)
【0094】
(無機充填剤)
・ウォラストナイト(SiO2・CaO)(キンセイマテック社製、製品名:SH-1250)
【0095】
(着色剤)
・黒色着色剤:黒色染料(Millilken&Company社製、製品名:REACTINT BLACK X95AB)、黒色顔料(Milliken&Company社製、製品名:DispersiTech Black 2140)
・青色着色剤:青色顔料(Milliken&Company社製、製品名:DispersiTech Blue 2402)
【0096】
[ポリウレタンフォームの製造]
表1に記載の配合にしたがって各成分を混合して、ポリオール含有組成物を作製した。該ポリオール含有組成物とポリイソシアネートを用いて、以下の条件でポリウレタンフォームを製造した。
<製造条件>
・吹付機:グラコ社製吹付装置H-25
・設定(ヒーター設定)
イソシアネートヒーター:38℃
プレミクスヒーター(ポリオール含有組成物加温用):38℃
ホースヒーター(ポリイソシアネート及びポリオール含有組成物の混合前加温用):38℃
圧力:ミストが広域な円形になるよう適宜調整
・基材温度(吹付対象面の温度):20℃±1℃
【0097】
[各物性の評価方法]
1.液分離
ポリオール含有組成物を、3日間マヨネーズ瓶内にて40℃下で保管し、該組成物の液分離状態を目視にて確認した。液分離の評価基準は以下の通りである。
〇:液分離なし
×:液分離あり
【0098】
2.難燃性
上記製造条件にて作製したポリウレタンフォームを、10cm×10cm×5cm四方に切り出し、試験片とする。該試験片を、ISO 5660に準拠し、放射熱強度50kW/mにて10~20分間加熱した際の総発熱量を測定した。難燃性の評価基準は以下の通りである。
〇:加熱開始から20分時点で8MJ/m以下
△:加熱開始から10分時点で8MJ/m以下
×:加熱開始から10分時点で8MJ/m
【0099】
3.着色性
染料を含有するポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとを反応させて形成されたポリウレタンフォームAと、着色剤を含有しないポリオール含有組成物(着色剤非含有ポリオール含有組成物)と、ポリイソシアネートとを反応させて形成されたポリウレタンフォームBをそれぞれ用意した。該ポリウレタンフォームA,Bの、それぞれの表面に色差計(KONICA MINOLTA社製、製品名:SPECTROPHOTOMETER CM-5)を当て、2つのポリウレタンフォームの色差ΔEを得たのち、該色差ΔEにより、表面の着色性を評価した。着色性の評価基準は以下の通りである。
〇:ΔE=3以上、着色あり
×:ΔE=3未満、着色なし
【0100】
[実施例1~12、比較例1~6]
表1に記載の配合にしたがって各成分を混合して、ポリオール含有組成物を作製した。該ポリオール含有組成物及びポリイソシアネートを用いてポリウレタンフォームを製造し、上記評価方法1~3に基づいた評価を行った。結果を表1に示す。ポリオール含有組成物とポリイソシアネートの混合比は体積比で1:1であった。
【0101】
【表1】
触媒の各含有量は、製品としての含有量である。
【0102】
以上の実施例及び比較例の結果から明らかなように、本発明のポリオール含有組成物は液分離が発生せず、また、該組成物から形成されたポリウレタンフォームは、難燃性、着色性いずれも良好なものとなった。
これに対し、比較例1~5のポリオール含有組成物は、着色剤として顔料を含有していたため、液分離が発生した。比較例5のポリオール含有組成物は、液分離が発生したことに加え、固体難燃剤を含有していなかったため、ポリウレタンフォームの難燃性が損なわれた。また、比較例6のポリオール含有組成物は、着色剤を一切含有しなかったため、ポリウレタンフォームに着色することができなかった。
【手続補正書】
【提出日】2025-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール含有組成物であって、
前記ポリオール含有組成物が、ポリオール、発泡剤、触媒、難燃剤、及び染料を含有し、かつ前記難燃剤が固体難燃剤を含み、
前記触媒が樹脂化触媒と、三量化触媒とを含む、ポリオール含有組成物。
【請求項2】
前記固体難燃剤が赤燐系難燃剤を含む、請求項1に記載のポリオール含有組成物。
【請求項3】
前記触媒がイミダゾール誘導体を含む、請求項1又は2に記載のポリオール含有組成物。
【請求項4】
前記触媒がビスマス又はスズから少なくとも1種選択される金属触媒を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項5】
3日間、40℃の環境下で保管した際に液分離が発生しない、請求項1~のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとを含有する、発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項7】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、難燃剤、及び染料を含有し、かつ前記難燃剤が固体難燃剤を含み、前記触媒が樹脂化触媒と、三量化触媒とを含む、発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項8】
イソシアネートインデックスが200以上である、請求項又はに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項9】
吹き付け用途に用いられる、請求項のいずれか1項に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項10】
請求項10のいずれか1項に記載の発泡性ポリウレタン組成物を発泡させてなるポリウレタンフォーム。