(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010077
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】生物学的プロセスをモデル化するブーリアンネットワークの較正
(51)【国際特許分類】
G16H 50/00 20180101AFI20250109BHJP
【FI】
G16H50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106535
(22)【出願日】2024-07-02
(31)【優先権主張番号】23306144.9
(32)【優先日】2023-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】500102435
【氏名又は名称】ダッソー システムズ
【氏名又は名称原語表記】DASSAULT SYSTEMES
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント デーマン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ キャストラ
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA00
(57)【要約】
【課題】本開示は、特に、ブーリアンネットワークの較正のためのコンピュータ実装方法を提供する。
【解決手段】ブーリアンネットワークは、ブール関数を有する。ブーリアンネットワークは、生物学的プロセスをモデル化する。本方法は、ブーリアンネットワークを提供するステップを備える。本方法は、生物学的プロセスに関連する実験データを提供するステップをさらに備える。本方法は、実験データに従ってブーリアンネットワークを較正するステップをさらに備える。この較正は、ブール関数をツェガルキン多項式に変換するステップを含む。その較正は、ツェガルキン多項式、ブーリアンネットワーク、および実験データに基づいて、較正ブール命題を構築するステップをさらに含む。較正ブール命題は、ブーリアンネットワークの遷移系および実験データを表す。その較正は、較正ブール命題にSATソルバーを適用するステップをさらに含む。
【選択図】
図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーリアンネットワークの較正のためのコンピュータ実装方法であって、前記ブーリアンネットワークは、ブール関数を有し、前記ブーリアンネットワークは、生物学的プロセスをモデル化するものであり、前記方法は、
以下を提供するステップであって、すなわち
前記ブーリアンネットワークと、
前記生物学的プロセスに関連する実験データと
を提供する、ステップと、
前記実験データに従って前記ブーリアンネットワークを較正するステップであって、前記較正は、
前記ブール関数をツェガルキン多項式に変換するステップと、
前記ツェガルキン多項式、前記ブーリアンネットワーク、および前記実験データに基づいて、前記ブーリアンネットワークの遷移系および前記実験データを表す較正ブール命題を構築するステップと、
前記較正ブール命題にSATソルバーを適用するステップと
を含む、ステップと
を備える、方法。
【請求項2】
前記較正ブール命題は、前記ブーリアンネットワークの遷移系を表す第一のブール命題と、前記実験データを表す第二のブール命題とを含み、前記較正ブール命題は、
前記生物学的プロセスに対する安定性制約を表す第三のブール命題、および/または
真の関数または偽の関数にペナルティを課す第四のブール命題、および/または
事前の生物学的知識制約を表す第五のブール命題
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記安定性制約は、前記遷移系の少なくとも一つの固定点、および/もしくは前記遷移系の少なくとも一つの循環を含み、ならびに/または前記第四のブール命題は、機構学的情報の損失を防ぐことを表し、ならびに/または前記事前の生物学的知識制約は、較正前の前記ブーリアンネットワークを表す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記SATソルバーは、MaxSATソルバーである、請求項1ないし3の何れか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記MaxSATソルバーは、重み付きMaxSATソルバーであり、前記較正ブール命題に含まれる各ブール命題は、それぞれ重みを有する一つまたは複数の論理和ハード節の論理積、または一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積の何れかに対応する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第一のブール命題は、一つまたは複数の論理和ハード節の論理積である、請求項2と組み合わせられる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記較正ブール命題は、前記第三のブール命題をさらに含み、前記第三のブール命題は、一つまたは複数の論理和ハード節の論理積である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記較正ブール命題は、前記第四のブール命題および前記第五のブール命題をさらに含み、
前記第二のブール命題は、前記遷移系の最終状態を表す副命題と、前記遷移系の初期状態を表す副命題とを含み、前記遷移系の前記最終状態を表す前記副命題は、全てのソフト節の中で最大の重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積であり、前記遷移系の前記初期状態を表す前記副命題は、全てのソフト節の中で二番目に大きな重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積であり、前記第二のブール命題は、前記実験データの中間時点を表し、全てのソフト節の中で三番目に大きな重みを有する一つまたは複数の論理和ソフト節も含み、
前記第四のブール命題は、全てのソフト節の中で四番目に大きな重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積であり、
前記第五のブール命題は、全てのソフト節の中で最小の重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、異なるブール命題に対応するソフト節の重みを分離して、これらのソフト節の間に重複が無いようにするステップを備える、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記重みの分離は、以下の通り、すなわち、
前記遷移系の前記最終状態を表す前記副命題の各重みは、前記遷移系の前記初期状態を表す前記副命題節の全ての重みの総和よりも厳密に大きいことと、
前記遷移系の前記初期状態を表す前記副命題の各重みは、前記実験データの前記中間時点を表す前記副命題節の全ての重みの総和よりも厳密に大きいことがあることと、
前記実験データの前記中間時点を表す前記副命題の各重みは、前記第四の命題節の全ての重みの総和よりも厳密に大きいことがあることと、
前記第四の命題の各重みは、前記第五の命題節の全ての重みの総和よりも厳密に大きいことがあることと
である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記実験データは、現実世界における前記生物学的プロセスの物理的測定および/または観察に由来する、請求項1ないし10の何れか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的プロセスは、医学的事象に対する患者の生理学的反応に対応する、請求項1ないし11の何れか一つに記載の方法。
【請求項13】
コンピュータシステムによって実行されると、前記コンピュータシステムに、請求項1ないし12の何れか一つに記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを記録している、コンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項15】
メモリに結合されたプロセッサを含むコンピュータシステムであって、前記メモリは、請求項13に記載のコンピュータプログラムを自体上に記録している、コンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンピュータプログラムおよびシステムの分野に関し、より具体的には、生物学的プロセスをモデル化するブーリアンネットワーク(Boolean network)の較正のための方法、システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的システムをモデル化するための解決策が存在する。生物学的システムのモデル化は、医療分野において、例えば、医療従事者の作業において、ならびに/または新規の薬剤(drugs)および/もしくは改良された薬剤および/もしくはワクチン(vaccines)の開発において、医療従事者を支援するための、ソフトウェアの解決策またはソフトウェアベースの解決策などの、解決策の開発において適用されている。このような用途の例としては、以下が含まれる。すなわち、疾患(disease)の広がり、癌(cancer)の広がり、免疫モニタリング(immuno-monitoring)、炎症反応(inflammatory responses)、ワクチンの効果などのモデル化、である。人体およびその機能に関連する、基礎となる生物学的システムは、典型的には、極めて複雑である。
図1は、そのようなシステムの一例であり、アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease)に関与すると考えられる、二つの細胞プロセス(cellular processes)、すなわち、細胞外培地(extracellular medium)におけるアミロイド斑(Amyloid plaques)の形成、および細胞内における神経原線維のもつれ(Neurofibrillary Tangles)の蓄積を、より具体的に例証している。「アルツハイマー病に対する仮説および臨床試験の歴史ならびに進展(History and progress of hypotheses and clinical trials for Alzheimer’s disease)、P.P.リュウ(P.-P Liu)等、シグナル伝達と標的療法(Signal Transduct. Target. Ther.)、4(1)、2019年」を参照されたい。
【0003】
生物学的システムをモデル化するための一般的な手法には、次の型式の微分方程式系の使用が含まれる。すなわち、
【0004】
【0005】
である。しかしながら、このためには、システムの発展を制御する、「フロー」または「フラックス」とも呼ばれる関数Fと、関連するパラメータβとを識別する必要がある。生物学的システム、特に医療分野に関しては、この関数およびこのパラメータに関する知識は、手の届かないところにあり得るか、および/または微分式系によるモデル化が、実行不可能であり得る。実は、この知識を得るために必要になる測定は、手の届かないところにあり得る。
【0006】
しかしながら、生物学的システムは、特に医療分野では、例えば、アルツハイマー病の引き金になる場合などの、生物学的エンティティ(例えば、遺伝子(genes)など)の一連の活性化のような、調節ネットワークおよび/または影響ネットワークを含むことがある。
図2は、このようなネットワークを、単純かつ概略的な図解のケースにおいて、模式的に例証している。ここで、エンティティYは、エンティティXを活性化し、エンティティXは、エンティティZを抑制し、エンティティXおよびZは、エンティティYを活性化する。
【0007】
このようなネットワークは、当該技術分野でよく知られているように、ブーリアンネットワークによってモデル化され得る。ブーリアンネットワークは、一般にグラフとして表現され、以下を含む。すなわち、ノード(TRUE論理状態、FALSE論理状態)、エッジ(活性化、抑制)、および論理演算子
【0008】
【0009】
である。(関数fによって定義される)ブーリアンネットワークは、その状態Xが同期更新スキームにおいて次のように発展することを確かめ得る。すなわち、
【0010】
【0011】
である。例えば、
図2に対応するブーリアンネットワークは、次の通りである。すなわち、
【0012】
【0013】
である。
【0014】
生物学的エンティティとして調節経路を、生物学的エンティティの相互作用、反応、および関係とともに保存するデータベースが、幾つか存在し、以下を含む。すなわち、Reactome、KEGG、SIGNOR、Wikipathways、CellCollectiveなどである。これらのエンティティおよび相互作用は、ブール形式論(Boolean formalism)に適合しないことがある(KEGGにおけるユビキチン化またはリン酸化反応(ubiquitination or phosphorylation reactions)など)が、LIVING MAP(後述される)は、これらの経路をブーリアンネットワークに変換する変換ツールを提供する。例えば、
図3は、Wikipathwaysに由来する経路のスクリーンショットを示しており、SARS-CoV-2の様々な蛋白質によって誘導される宿主細胞のオートファジー(host-cell autophagy)への摂動(perturbation)を表している。
【0015】
ブーリアンネットワークを用いて生物学的システムをモデル化すると、種々の条件下における患者の生理機能(physiology)におけるシミュレーション、例えば、薬剤もしくはワクチンの効果、または疾患の伝播もしくは患者の生物学的反応におけるシミュレーションを実行することを可能になる。
【0016】
ブーリアンネットワークのモデル化用のオンラインツールであるLiving Mapは、BIOVIAという商標の下でダッソーシステム(Dassault Systemes)社から提供されている。このツールは、以下を提供する。すなわち、生物学的ブーリアンネットワークのモデル化用の直感的かつ使い易いツール、AND論理を採用した相互作用ノード、エンティティに対する数式のカスタマイズ、種々の条件(初期状態、遺伝子ノックアウト、薬剤など)下における実験、エンティティおよび相互作用の注釈、知識(例えば、Uniprotデータなど)の集約(部分的に自動化)、である。上記に概説したように、Living Mapには、(上記に説明したように)エンティティおよび相互作用として保存された調節経路をブーリアンネットワークに変換することを可能にする変換ツールも含まれる。
【0017】
図4ないし16は、Living Mapを使用して構築されたアルツハイマー病に関与する細胞シグナル伝達経路(cell signaling pathways)に関する種々のモデルのスクリーンショットを示している。すなわち、カルシウム(calcium)モデル(
図4)、糖尿病(diabetes)モデル(
図5)、炎症(inflammation)モデル(
図6)、APOEモデル(
図7)、マイトファジー(mitophagy)モデル(
図8)、オートファジー(autophagy)モデル(
図9)、軸索輸送(axonal transport)モデル(
図10)、他のカルシウムモデル(
図11)、ER-PSENモデル(
図12)、Wntモデル(
図13)、Fasモデル(
図14)、RAGEモデル(
図15)、およびインスリン(insulin)モデル(
図16)、である。
【0018】
図17は、SARS-Cov-2のMAPKシグナル伝達モデル(Living Mapを使用して構築される)のスクリーンショットを示しており、コロナウィルス(coronavirus)が細胞機構(cell machinery)を乗っ取って、不可視の状態を維持する仕組みをモデル化している。
図18は、SARS-Cov-2のERストレスモデル(Living Mapを使用して構築される)のスクリーンショットを示しており、コロナウィルスが細胞に自身のコピーを増さらに作成させる仕組みをモデル化している。
図19は、SARS-Cov-2の自然免疫(innate immunity)および炎症モデル(Living Mapを使用して構築される)のスクリーンショットを示しており、ウィルスが自然免疫を妨害し、サイトカインストーム(cytokine storm)を引き起こす仕組みをモデル化している。
【0019】
このように、ブーリアンネットワークは、医療分野において、例えば、医療従事者の仕事、ならびに/または新しい医薬品および/もしくは改良された医薬品および/もしくはワクチンの開発を支援するための、ソフトウェアの解決策またはソフトウェアベースの解決策などの開発において、関連する生物学的システムをモデル化するための現代的なツールを形成している。
【0020】
しかしながら、このコンテキストの中で、生物学的プロセスをモデル化するブーリアンネットワークの較正(calibration)に対する改良された解決策が必要とされている。較正とは、所与のデータセットに調和する(matching)ブール関数の選択を指している。
【発明の概要】
【0021】
それ故に、ブーリアンネットワークの較正のためのコンピュータ実装方法を提供する。ブーリアンネットワークは、ブール関数を有する。ブーリアンネットワークは、生物学的プロセスをモデル化する。本方法は、ブーリアンネットワークを提供するステップを備える。本方法は、生物学的プロセスに関連する実験データを提供するステップをさらに備える。本方法は、実験データに従ってブーリアンネットワークを較正するステップをさらに備える。この較正は、ブール関数をツェガルキン多項式(Zhegalkin polynomials)に変換するステップを備える。この較正は、ツェガルキン多項式、ブーリアンネットワーク、および実験データに基づいて、較正ブール命題(calibration Boolean proposition)を構築するステップをさらに含む。この較正ブール命題は、ブーリアンネットワークの遷移系(transition system)および実験データを表す。この較正は、較正ブール命題にSATソルバー(SAT solver)を適用するステップをさらに含む。
【0022】
本方法は、以下のうちの一つまたは複数を含み得る。すなわち、
-較正ブール命題は、ブーリアンネットワークの遷移系を表す第一のブール命題と、実験データを表す第二のブール命題とを含み、較正ブール命題は、以下をさらに含む。すなわち、
〇生物学的プロセスに対する安定性制約を表す第三のブール命題、および/または
〇真の関数または偽の関数にペナルティを課す第四のブール命題、および/または
〇事前の生物学的知識制約を表す第五のブール命題。
-安定性制約は、遷移系の少なくとも一つの固定点(fixed point)および/もしくは遷移系の少なくとも一つの循環(cycle)を含み、ならびに/または第四のブール命題(真もしくは偽のペナルティ制約とも呼ばれる)は、機構学的情報(mechanistic information)の損失を防ぎ、および/もしくは事前の生物学的知識制約は、較正前のブーリアンネットワークを表す。
-SATソルバーは、MaxSATソルバーである。
-MaxSATソルバーは、重み付きMaxSATソルバーであり、較正ブール命題に含まれる各ブール命題は、それぞれ重みを有する一つもしくは複数の論理和ハード節(disjunctive hard clauses)、または一つもしくは複数の論理和ソフト節(disjunctive soft clauses)の論理積(conjunction)の何れかに対応する。
-第一のブール命題は、一つまたは複数の論理和ハード節の論理積である。
-較正ブール命題は、第三のブール命題をさらに含み、第三のブール命題は、一つまたは複数の論理和ハード節の論理積である。
-較正ブール命題は、第四のブール命題および第五のブール命題をさらに含む。
〇第二のブール命題は、遷移系の最終状態を表す副命題と、遷移系の初期状態を表す副命題とを含み、遷移系の最終状態を表す副命題は、全てのソフト節の中で最大の重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積であり、遷移系の初期状態を表す副命題は、全ての副命題の中で二番目に大きな重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節であり、第二のブール命題は、実験データの中間時点を表し、全ての副命題の中で三番目に大きな重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節も含む。
〇第四のブール命題は、全てのソフト節の中で四番目に大きな重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積である。
〇第五のブール命題は、全てのソフト節の中で最小の重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積である。
-本方法は、異なるブール命題に対応するソフト節の重みを分離して、これらのソフト節の間に重複が無いようにするステップを備える。
-重みの分離は、以下の通りである。すなわち、
〇遷移系の最終状態を表す副命題の各重みは、遷移系の初期状態を表す副命題節の全ての重みの総和よりも厳密に大きくなる。
〇遷移系の初期状態を表す副命題の各重みは、実験データの中間時点を表す副命題節の全ての重みの総和よりも厳密に大きくなり得る。
〇実験データの中間時点を表す副命題の各重みは、第四の命題節の全ての重みの総和よりも厳密に大きくなり得る。
〇第四の命題の各重みは、第五の命題節の全ての重みの総和よりも厳密に大きくなり得る。
-実験データは、現実世界における生物学的プロセスの物理的測定および/または観察に由来する。
-生物学的プロセスは、医学的事象に対する患者の生理学的反応に対応する。
【0023】
本方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラムをさらに提供する。
【0024】
コンピュータプログラムを自体上に記録しているコンピュータ可読データ記憶媒体をさらに提供する。
【0025】
メモリに結合されたプロセッサを備えるコンピュータシステムであって、そのメモリにコンピュータプログラムが記録されているコンピュータシステムをさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
ここで、添付図面を参照して、非限定的な例を説明することになる。
【0027】
【発明を実施するための形態】
【0028】
ブーリアンネットワークの較正のためのコンピュータ実装方法を提案する。ブーリアンネットワークは、ブール関数を有する。ブーリアンネットワークは、生物学的プロセスをモデル化する。本方法は、ブーリアンネットワークを提供するステップを備える。本方法は、生物学的プロセスに関連する実験データを提供するステップをさらに備える。本方法は、実験データに従ってブーリアンネットワークを較正するステップをさらに備える。この較正は、ブール関数をツェガルキン多項式に変換するステップを含む。その較正は、ツェガルキン多項式、ブーリアンネットワーク、および実験データに基づいて、較正ブール命題を構築するステップをさらに含む。較正ブール命題は、ブーリアンネットワークの遷移系および実験データを表す。その較正は、較正ブール命題にSATソルバーを適用するステップをさらに含む。
【0029】
これは、生物学的ブーリアンネットワークの較正、すなわち、生物学的プロセスをモデル化したブーリアンネットワークの較正のために改良された解決策を構成する。
【0030】
実は、最初の(提供された)ブーリアンネットワークは、生物学的プロセスをモデル化するが、ある程度の一般性レベルを有している。このようなネットワークは、確かに、生物学的知識を使用して、ある程度の一般性において構築され、生物学的プロセスをある程度の一般性においてモデル化するが、例えば、特定の患者、特定の医学研究、または患者グループなどに関連する特定の生物学的コンテキストを考慮する必要は必ずしもない。そのため、最初に提供されたネットワークは、特定の実験的コンテキスト(例えば、特定の患者、特定の医学研究、もしくは患者グループにおける特定の生理学的データおよび/または医学的データ(例えば、測定値等)など)においてプロセスをモデル化するために、完全に適合しない、または正確でないことがある。実は、生物学的プロセスに関する大量の事前知識は、文献もしくは専用データベースにおいて直接的に入手可能であり、または経路および疾患マップ内に集約されている。このような知識は、通常、蛋白質(proteins)、遺伝子、サイトカイン、細胞、組織(tissues)、薬剤の作用機序(drug mode of action)、薬剤耐性(drug resistance)における挙動の基礎となるシグナル伝達(signaling)、代謝(metabolic)、他の分子プロセスを模倣する、生物学的ネットワークを構築するために使用されることがある。しかしながら、このような知識は、モデルの構築を必要とするコンテキストと全く同じコンテキストには一致しないことが多く、網羅的であるとは限らない。その事前知識のみから構築されたネットワークは、一部の機構(mechanisms)を見落とし、特異性を欠き、実験的観察を部分的にしか再現しないことがある。その限界に対処するには、そのコンテキストからの特定のデータが統合され得る。これは、実験データ、すなわち、特定の実験コンテキストから得られる特定の実験データに基づいて、ブーリアンネットワークを較正することによって、本方法が行うことである。
【0031】
換言すると、提供されたブーリアンネットワークを前提として、本方法は、そのネットワークの初期トポロジー、すなわち、そのノード群およびそれらの相互接続(相互作用の性質に関係なく)を維持しつつ、そのネットワークのブール関数を変更し、これにより、その連続状態が、実験データの連続状態を可能な限り(例えば、SATソルバーの収束または終了基準まで)再現するようにする。このプロセスは、較正と呼ばれ、上述したように、所与のデータセット(ここでは実験データ)に調和するブール関数の選択を指している。そのため、この較正を行うことにより、本方法は、ブーリアンネットワークを改良し、そのネットワークを特定の実験データ(例えば、測定データなど)により適合させるようにする。これにより、較正されたネットワークは、実験データによって捕捉された特定のコンテキストにおける生物学的プロセスを、特に正確にモデル化する。
【0032】
ここで、本方法は、較正を実行するだけでなく、リソース効率の高い方式において構成を実行する。実は、較正の主な課題は、k個の変数に依存する一つのノードに対して、
【0033】
【0034】
個の可能なブール関数が存在するという事実であり、kが増加すると、それらの列挙が実際には扱い難くなる。例えば、5個の親ノードを有する一つのノードに対して、
【0035】
【0036】
個のブール関数が存在する。そのため、可能性のある関数を全て列挙してテストする、総当たり的なアプローチは使用することができない。この問題を解決するために、本方法は、最初に、ブール関数を簡略化した多項式表現である、ツェガルキン多項式(代数標準形(algebraic normal form)とも呼ばれる)に変換する。換言すると、本方法は、各ブール関数を通常の数値多項式に変換し、ブール関数の真値および偽値を0および1(2を法とする整数(integers modulo 2))に置き換え、論理積
【0037】
【0038】
および排他的論理和
【0039】
【0040】
を古典的な積および和の類似物(analogs)として置き換える。2を法とする算術では、
【0041】
【0042】
であるため、指数(exponents)は冗長になり、唯一の非ゼロ係数は1である。その結果、k個の変数に依存する全てのブール関数は、一旦変換されると、
【0043】
【0044】
個の二進係数のセットによって完全に定義される。これは、
【0045】
【0046】
個の可能性の中から調和するブール関数を探索する代わりに、本方法は、これら
【0047】
【0048】
個の係数の値(0または1)に対する探索を削減することを意味する。換言すると、本方法によって実行される較正は、その探索を、使用可能なコンピュータシステムにおいて計算可能になる組み合わせ問題に軽減する。一方、ツェガルキン多項式に変換することなく、調和するブール関数を直接的に探索する問題は、使用可能なコンピュータシステムでは計算不可能である。
【0049】
変換が完了すると、本方法は、ネットワークの遷移系(ブール関数の多項式形式においてブール関数が現れる)を記述する命題と、実験データから抽出される較正制約とに対して、SATソルバーを適用して、調和する係数を求める。SATソルバーは、SAT(またはブール充足可能性(Boolean Satisfiability))問題を解決するコンピュータプログラムであり、SAT問題は、CNF(論理積標準形(Conjunctive Normal Form))において所与のブール式(Boolean formula)を満たす解釈(interpretation)(すなわち、各変数に割り当てられた二値(binary value))が存在するか否かを判定する問題である。式がCNFであるのは、式が論理積節または論理和節(conjunction or disjunctive clauses)、すなわち、OR群におけるANDである場合である。そのため、SATソルバーをツェガルキン変換(Zhegalkin conversion)と組み合わせて使用することは、特に適合しており、本方法を効率的にする。本方法は、提供された実験データと互換性のある、一つまたは複数の解釈(すなわち、初期ブーリアンネットワーク内の各関数のツェガルキン係数(Zhegalkin coefficients)の各一つに対する値)を生成する。
【0050】
本方法は、ブーリアンネットワークの較正のためのものである。ブーリアンネットワークの概念自体は、既知であり、以前にも説明したことがある。ブーリアンネットワークは、ブール変数の離散的なセットから構成され、各ブール変数には、ブール関数(変数ごとに異なる可能性がある)が割り当てられ、ブール関数は、それらの変数のサブセットから入力を受け取り、ブール関数が割り当てられる変数の状態を決定する出力を行う。上述したように、ブーリアンネットワークは、グラフとして表現され、ノード(TRUE論理状態、FALSE論理状態)、エッジ(活性化、抑制)、および論理演算子
【0051】
【0052】
を含み、その状態Xが同期更新スキームにおいて次のように発展することを確かめ得る(fはネットワークを定義する関数を表す)。すなわち、
【0053】
【0054】
である。さらに換言すると、ブーリアンネットワークは、ブール関数として形式化されたエッジのセットによって相互接続された、二値変数(binary variables)を表すノードのセットによって定義される。「較正」とは、提供されたブーリアンネットワークを前提として、本方法は、そのネットワークの初期トポロジー、すなわちそのノード群およびそれらの相互接続(相互作用の性質に関係なく)を維持しつつ、そのネットワークのブール関数を変更し、これにより、その連続状態が実験データの連続状態を可能な限り再現するようにすることを意味する。較正の(および本方法の)入力は、提供されたブーリアンネットワークおよび実験データであり、出力は、実験データに従って較正されたブーリアンネットワークである。
【0055】
ブーリアンネットワークは、生物学的プロセス、すなわち、任意の生物学的プロセスをモデル化する。生物学的プロセスは、医学的事象に対する患者の生理学的反応に対応し得る。例えば、そのプロセスは、疾患(またはウィルスもしくは任意の同様の医学的状態)の進行、または疾患に関連する特定の進行現象、および/または疾患に関連する事象(例えば、炎症反応)に対する患者の反応を記述し得る。そのモデルは、例えば、アルツハイマー病またはコロナウィルスについて、上述したモデルの何れか一つとし得る。あるいは、治療、薬剤、またはワクチンに対する患者の反応を記述し得る。
【0056】
本方法は、例えば、新規の治療法および/もしくは改良された治療法、薬剤、またはワクチンを開発するための、治療法、薬剤、またはワクチンの監視および/もしくは開発プロセスに含まれ得る。この場合、ブーリアンネットワークは、治療法、薬剤、もしくはワクチンに対する生理学的反応、および/または治癒すべき疾患に関連する生理学的プロセスをモデル化し得る。このプロセスは、以下のうちの1回または複数回の反復処理(例えば、患者ごとに1回など)を含み得る。すなわち、
-本方法を実行するステップであって、任意選択で、実験データが患者に対する物理的測定および/または生理学的測定によって取得される、ステップ。
-較正済みブーリアンネットワークを使用して、シミュレーションを実行するステップであって、例えば、治療法、薬剤、またはワクチンの潜在的な効果を評価する、ステップ。
-任意選択で、シミュレーションの結果を使用して、治療法、薬剤、またはワクチンを開発および/または改善するステップであって、例えば、シミュレーションの結果に基づいて、治療法、薬剤、またはワクチンを物理的に開発および/または改善する、ステップ。
【0057】
本方法は、ブーリアンネットワークを提供(取得)するステップを備える。ブーリアンネットワークを提供するステップは、(例えば、Living Mapを使用して)ネットワークを(例えば、最初から)構築するステップ、および/または(例えば、Living Mapを使用して)既に構築されたネットワークを変更するステップを含み得る。ブーリアンネットワークを提供するステップは、代替的に、ネットワークが既に構築されて保存されている(例えば、遠隔の)メモリ、サーバ、またはデータベースから既存のブーリアンネットワークを取得する(例えば、ダウンロードする)ステップを含み得る。
【0058】
本方法は、実験データを提供(取得)するステップを備える。実験データを提供するステップは、データが保存されている(例えば、遠隔の)メモリ、サーバ、またはデータベースから実験データを検索する(例えば、ダウンロードする)ステップを含み得る。実験データは、生物学的プロセスに関連する実験データであり、生物学的プロセス(例えば、患者など)の実験的(例えば、生理学的、医学的などの)観察に対応する。実験データは、現実世界における生物学的プロセスの物理的測定および/または(例えば、医学的コンテキストにおける患者に関する)観察に由来することがある。実験データを提供するステップは、代替的に、例えば、適切な物理的装置を用いて、患者に対して生理学的測定および/または医学的測定を実行することにより、実験データまたはその少なくとも一部を物理的に取得するステップを含み得る。
【0059】
さらに、入力の提供に加えて、本方法は、実験データに従ってブーリアンネットワークを較正するステップ、すなわち、そのネットワークの初期トポロジー、すなわち、そのノード群およびそれらの相互接続(相互作用の性質に関係なく)を維持しつつ、そのネットワークのブール関数を変更し、これにより、その連続状態が、実験データの連続状態を可能な限り再現するようにするステップを備える。
【0060】
この較正は、ブール関数をツェガルキン多項式に変換するステップを含む。ツェガルキン多項式は、代数標準形としても知られており、ブール代数における関数の表現である。これらは、2を法とする整数上の多項式環(polynomial ring)である。モジュラー演算(modular arithmetic)の結果として得られる縮退(degeneracies)により、ツェガルキン多項式は、二進計数(binary coefficients)を有して、指数を有しない、通常の多項式よりも単純になる。係数が二進数(binary)であるのは、1が唯一の非ゼロ係数であるためである。2を法とする算術では、
【0061】
【0062】
であるため、指数は冗長となる。それ故に、
【0063】
【0064】
などの多項式は、xyzと同値(congruent)であり、そのため、xyzと記述し直すことができる。ブール関数をツェガルキン多項式に変換する方法については、(不定係数法(indeterminate coefficients method)、正準論理和正規形(canonical disjunctive normal form)、テーブル法、パスカル法(Pascal method)、和算法(summation method)、カルノー図法(Karnaugh map)、またはhttps://en.wikipedia.org/wiki/Zhegalkin_polynomialにおいて説明される方法による)多くの既知の方法が存在し、その変換は、これらの方法の何れかを実装し得る。本方法は、ネットワークの変数に対して反復処理し、全てのブール関数を反復的に変換し得る。
【0065】
ここで、変換を例証するために例を説明する。この例では、三つの変数A、B、Cと、変数
【0066】
【0067】
用のブール式を有するブーリアンネットワークを検討する。このネットワークは、
図20に例証されるように表すことができる。その変換は、変数に対して反復処理し得る。この場合、変数Cのみが、
【0068】
【0069】
であるブール関数を有する。関連するツェガルキン多項式は、
【0070】
【0071】
である。
【0072】
その較正は、ツェガルキン多項式、ブーリアンネットワーク、および実験データに基づいて、ブーリアンネットワークの遷移系および実験データを表す較正ブール命題を構築するステップを含む。遷移系とは、Xt-1からXtへの更新を可能にする方程式である。各時点について、一つの時点がシステムの1回の更新に相当する場合、
【0073】
【0074】
となる。ただし、数値モデルの連続状態(ここではtによって表現される)は、必ずしも実験データの時間的現実(例えば、0、3、6、24時間など)に対応するとは限らない。N>1を有するスキーム
【0075】
【0076】
は、実時間の時間差がモデルの複数回の更新に対応する可能性を統合することを可能にする。そのネットワークのトポロジーは、各変数の一般的なツェガルキン多項式によって完全に特徴付けられ、各時点についても同じままである。較正ブール命題の構築は、A=Bが
【0077】
【0078】
と同じ真理値表(truth table)を有するという事実に基づき得て、各時点のトポロジー条件を次の命題に変換するステップを含み得る。すなわち、
【0079】
【0080】
である。
【0081】
上記の命題は、第一のブール命題と呼ばれる。これは、較正ブール命題によって構成され、ブーリアンネットワークの遷移系を表し、それによってブーリアンネットワークのトポロジーを表す。また、較正ブール命題の構築は、実験データを、実験データを表す第二のブール命題に変換するステップを含むこともある。第二の命題は、実験データに従って遷移系の最終状態を表すブール副命題、および/または実験データに従って遷移系の初期状態を表すブール副命題、および/または、実験データに従って中間状態を表すブール副命題を含むことがある。例えば、四つの時点において、以下の実験値を有する変数A、すなわち
【0082】
【0083】
は、次の命題に変換される。すなわち、
【0084】
【0085】
である。
【0086】
図20に例証されるネットワークに関する上記の例に戻ると、次のようになる。すなわち、
-実験データは、ネットワークの1回の更新に対応する二つの時点を含む。および、
-最初/初期の時点を示す接尾辞0、および二番目/最後の時点を示すfを有する、これらの二つの時点に対する実験データが、
【0087】
【0088】
である場合、較正ブール命題は、遷移系に対する次の第一の命題
【0089】
【0090】
および実験データに対して次の第二の命題
【0091】
【0092】
を含む。
【0093】
較正ブール命題は、以下をさらに含み得る。すなわち、
-生物学的プロセスに対する安定性制約を表す第三のブール命題、および/または
-真の関数または偽の関数にペナルティを課す第四の論理命題、
-事前の生物学的知識制約を表す第五のブール命題。
【0094】
安定性制約は、遷移系の安定性を表す任意の制約である。安定性制約は、遷移系の少なくとも一つの固定点、および/または遷移系の少なくとも一つの循環を含み得る。固定点および循環の概念自体は、ブーリアンネットワークの分野では知られているが、ここでは、その概念を説明する。N個のノードからなるブーリアンネットワークは、2N個の構成のみを有することができるため、ピジョンホール原理(pigeonhole principle)は、更新スケジュールの十分な反復の後、その系が以前に訪れた構成に戻らなければならないことを意味する。すなわち、
【0095】
【0096】
である。
【0097】
【0098】
は、ブーリアンネットワークのアトラクター(attractor)であり、pはアトラクターの周期であり、dはアトラクターまでの距離と見做すことができる。
【0099】
p=1である場合、アトラクターは、固定点アトラクター(fixed point attractor)である。p>1である場合、アトラクターは、周期pの循環アトラクター(cycle attractor)である。アトラクターの構造は、どのような初期状態が考慮されるかに関係なく、ネットワークトポロジーにのみ依存する。周期的アトラクターを有するためには、 ネットワークに循環が存在する必要がある。幾つかのアトラクターは、実際の平衡状態の多くの特徴を反映していることが示される。アトラクターは、一つの固定点とすることができ、その場合は、それらのアトラクターは、系の状態であるXを有する
【0100】
【0101】
に変換され、または循環の場合は、循環の周期pを有する
【0102】
【0103】
に変換される。第三の論理命題は、固定小数点の場合に、
【0104】
【0105】
になり得て、長さp以下の循環の場合に、
【0106】
【0107】
になり得る。
【0108】
この第四のブール命題の効果は、真の単一のブール関数および偽の単一のブール関数が、上述した制約と同等かそれ以上に調和する、他のブール関数が無い場合にのみ、変数に対して考慮されるということである。そのことに対する理由は、真のブール関数および偽のブール関数の両方に、その変数の親ノードの寄与に関する機構学的情報が含まれていないという事実である。
【0109】
第五のブール命題は、事前の生物学的知識制約を表す。事前の生物学的知識制約は、較正前のブーリアンネットワーク、またはその関数を表すことがある。事前の生物学的知識制約は、較正前のネットワークにおけるブール関数のツェガルキン係数とし得て、この係数は、ある程度の知識を搬送する。そのため、第五のブール命題は、非較正のネットワークの関数の係数が真である命題において構成され得る。
図20に関連する上述した例については、初期係数は、
【0110】
【0111】
(実は
【0112】
【0113】
に変換される)であり、これは、次のように変換される。すなわち、
【0114】
【0115】
である。
【0116】
そのため、例えば、安定性命題、真/偽ブール関数ペナルティ、および事前知識を含む、
図20における以前の例に対して結果として得られる較正ブール命題は、次のようになり得る。すなわち、
【0117】
【0118】
である。
【0119】
較正には、較正ブール命題(ブール関数の多項式形式においてブール関数が現れる)にSATソルバーを適用して、調和する係数を求めるステップもさらに含まれる。SATソルバーは、SAT(またはブール充足可能性)問題を解決するコンピュータプログラムであり、これは、CNF(論理積標準形)における所与のブール式を満たす解釈(すなわち、各変数に割り当てられた二値)が存在するか否かを判定する問題である。式がCNFにあるのは、論理積節または論理和節(conjunction or disjunctive clauses)、すなわち、OR群におけるANDである場合である。本方法には、必要に応じて、SATソルバーを適用する前に、ブール定式(Boolean formulation)をCNFに変換するステップ(例えば、ツェイチン(Tseitin)変換またはクワイン・マクラスキー(Quine-McCluskey)アルゴリズムを使用して)が含まれ得る。SATソルバーは、MaxSATソルバーとし得る。SATソルバーは、全ての節(命題)を満たすことを目的とするのに対し、MaxSATソルバーは、可能な限り多くの節(命題)を満たすことを目的とする。これは、本方法の場合に有利であることがある。実は、実際には、全ての制約が同時に満たされない場合が起こり得る。その理由は、次の通りである。すなわち、
-現実の実験データを使用する場合、測定の不確実性、情報の欠落、個体間の変動による影響を受ける可能性がある。
-データは平均化され、二値化されるため、情報が失われる。
-非較正ネットワークは、トポロジーを固定するが、そのトポロジーは、(多くの場合、汎用的でありながら不完全な経路に基づいて)必ずしも正しいとは限らない。
【0120】
MaxSATソルバーは、重み付きMaxSATソルバーとし得る。この場合、較正ブール命題に含まれる各ブール命題は、一つまたは複数の論理和ハード節(すなわち、満たすことが必須である)の論理積、または、各々が重みを有する一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積の何れかに対応する。「対応する」とは、次のことを意味する。すなわち、ブール命題は、ここではブール方程式(Boolean equations)であり、ブール方程式の体系(system)もブール方程式と見做される。節は論理和節であり、ブール命題がMaxSATソルバー(CNF形式)に入力されると、一つまたは複数の論理和節の論理積になり、それぞれがハードまたはソフトである。本方法は、MaxSATソルバーに入力される各命題をそのような形式 (CNF形式)に変換するステップを備え得る。各ソフト節には重みが与えられ、ソルバーは、それらの重みの総和を最大化する節を満たすことを目的としている。
【0121】
第一のブール命題は、一つまたは複数の論理和ハード節の論理積とし得る。換言すると、ネットワークのトポロジーを含む遷移系は、較正中に固定され、関連する制約は、後に実験データによって制約されるように、明示的に各時点に対するハード節(すなわち、満たすことが必須)としてマークされる。
【0122】
第三のブール命題は、一つまたは複数の論理和ハード節の論理積とし得る。実際、ディリクレのボックス原理(Dirichlet’s box principle)は、システムが2n+1ステップ(2nは、N個の変数を有するシステムの状態数である)未満に安定状態に到達するになることを保証している。この安定状態を実験データと調和させることができるように、安定性制約が、ハード節として明示的に追加される。
【0123】
第二のブール命題は、遷移系の最終状態(アトラクター)を表す副命題、および/または遷移系の初期状態を表す副命題を含み得る。遷移系の最終状態を表す副命題は、全てのソフト節の中で最大の重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積とし得る。換言すると、最後の時点が優先される。遷移系の初期状態を表す副命題は、全てのソフト節の中で二番目に大きな重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積とし得る。これは、Living Mapが同期更新スキームを用いて動作し、そのため、到達されるアトラクターは、システムの初期状態によって決定されることから、有利であることがある。実験データの無い変数は、デフォルトで0に設定され得て、これにより、初期状態が完全に定義されるようになる。第二のブール命題は、実験データの中間時点を表す(すなわち、初期状態および最終状態を含まない)副命題も含む。この副命題は、三番目に大きな重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積とし得る。
【0124】
第四のブール命題は、全てのソフト節の中で四番目に大きな重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積とし得る。
【0125】
第五のブール命題は、全てのソフト節の中で最小の重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積とし得る。換言すると、非較正のブール関数(すなわち、ツェガルキン係数)の形をした生物学的情報は、他の全ての制約が等しく満たされる場合にのみ考慮される。
【0126】
重みは、例えば、SATソルバーを適用する前に、ユーザーによって設定され得るか、または異なるブール命題に対応するソフト節の重みの分離を確立するために代替的に固定され得て、これにより、これらのソフト節の間に重複が無いようにする。後者の場合、所与の命題の各重みは、より低い重み(すなわち、重要度が低い)を有する命題の重みの総和よりも大きくなるように、例えば、重みの総和+1に等しくなるように設定され得る。重みの分離は、次のようにし得る。すなわち、
-遷移系の最終状態を表す副命題の各重みは、遷移系の初期状態を表す副命題の全ての重みの総和よりも厳密に大きくなる。
-遷移系の初期状態を表す副命題の各重みは、実験データの中間時点を表す副命題の全ての重みの総和よりも厳密に大きくなり得る。
-中間時点を表す副命題の各重みは、第四の命題の全ての重みの総和よりも厳密に大きくなり得る。
-第四の命題の各重みは、第五の命題の各重みの総和よりも厳密に大きくなり得る。
【0127】
上記において、「命題の各重み」または「副命題の各重み」とは、命題/副命題に対応する節の各重みを意味する。
【0128】
これは、以下のように記述され得る(そして、上述したように、以下の総和の各々に1を加算することによって実施され得る)。すなわち、
【0129】
【0130】
である。
【0131】
上記において、「初期関数」とは、提供されたままの、すなわち、較正前のブーリアンネットワークの関数を指している。「単一ブール(Single Boolean)」(すなわち、単一ブールペナルティ(single Boolean penalty))とは、第四の命題によって扱われる真の関数および偽の関数を指している。
【0132】
これは、本方法が、例えば、全ての中間状態節を犠牲にして、もう一つの初期状態節を満たす解釈を優先することになることを保証する。さらに、満たされない節は、それらが表す制約カテゴリーまで遡ることができる。
【0133】
次いで、SATソルバー(例えば、重み付きMaxSATソルバーなど)の適用は、提供された較正制約と同等の互換性を有する(すなわち、同じ重みの総和を有する)、一つまたは複数の解釈(すなわち、提供されたブーリアンネットワークにおける各関数の各ツェガルキン係数の値)を生成する。その較正は、さらに、これらのツェガルキン係数をブール式に変換し直し、較正済み関数を用いてブーリアンネットワークを宜更新し得る。
【0134】
較正ブール命題に含まれる五つのブール命題について上記に説明している。その制約または制約のセットが二値変数に対する値の選択に変換可能である限り、他の制約または制約のセットは、較正ブール命題に一つまたは複数の追加のブール命題として追加することができることは、理解されるべきである。
【0135】
本発明者等によって、本方法の実装がテストされている。具体的には、ワクチン誘発性炎症(vaccine-induced inflammation)をモデル化し、関連する細胞型の存在量変化(abundance variations)を可視化するために構築された生物学的ネットワークが、テストされている。非較正のネットワークは、202個のエンティティおよび289個の相互作用を含む。較正プロセスのために、本発明者等は、トランスクリプトーム(transcriptomic)(遺伝子発現に対する)およびサイトメトリー(cytometry)(細胞の存在量に対する)のデータ(MVAワクチンの前臨床試験中に取得され、参考文献「P.ローゼンバウム等、イムノール(Rosenbaum P et al. Immunol.)、12:645210、2021年」に記載され、これは、参照により本明細書に組み込まれる)。そのデータは二値化され、すなわち、連続する時点に亘って測定された連続的な発現には、1(細胞型に対する豊富さ、かつ、遺伝子に対する発現を意味する)または0(細胞型に対する希少さ、かつ、遺伝子に対する非発現を意味する)の値が割り当てられた。結果として得られる較正済みネットワークは、310個の相互作用を含み、実験データに関連付けられる制約を可能な限り満たしている。その結果は、
図21において例証されている。状態#6は、(定常アトラクターに到達している)モデルの最終状態である。初期状態および最終状態は、両方とも、実験データと完全に一致している。遷移状態については、出力メーカーのうちの四つのみが、シミュレーション状態および実験状態の間に違いを示している。ただし、較正済み関数は、それらの関数がリンクされている固定親ノードおよびそれらの挙動(dynamics)に関して、最も調和する関数である。したがって、ネットワークは、適切に較正されていると言うことができる。
【0136】
このテストは、本方法が改良された較正済みブーリアンネットワークを提供し、較正によって次の利点が提供されることを証明している。
【0137】
第一に、本方法は、追加の変換またはモデルチェックの手順を必要とすることなく、初期ネットワークによって与えられたトポロジーと同等に互換性を有する、全てのブーリアンネットワークを出力する。
【0138】
また、本手法は、各変数に割り当てられるブール関数の選択を、所与のパラメータの数に対する0または1の何れかの帰属として変換するため、この選択は、二値の帰属としても形式化することができる、任意の追加制約に関して行うことができる。生物学的ネットワークの較正の場合、これらの追加制約には、常に二値化された較正データが含まれる(ただし、これらに限定されない)。
【0139】
さらに、SAT問題は、古くからあり、非常に徹底的に研究されてきたコンピュータ科学の問題である。この問題の拡張が幾つか定義されており、それらを解列するための計算効率の高い方法が長年に亘って開発されてきた。いわゆるSATソルバーは、本方法に利点をもたらすことができる。特に、拡張の一つである重み付きMaxSAT問題およびその適切なソルバーは、満たされるべきブール式の各節に重みを割り当て、満たされた節の重みの総和を最大化することを目的としているが、全ての節が満たされる必要はない。この問題は、ブール式内の節間の階層を定義すること、すなわち、この場合には、較正プロセスに関連付けられる制約のユーザー制御による優先順位付けと、常に最も調和するネットワーク(の一つ)取得の保証とを可能にする。
【0140】
最後に、解決すべき命題に遷移系およびデータ以外の制約が加わらない場合、ブール関数の形式に関する仮定は行われないため、これにより、ネットワークの過度な単純化が回避される。
【0141】
本方法は、コンピュータによって実装される。これは、方法の手順(または実質的に全ての手順)が、少なくとも1台のコンピュータ、または同様の任意のシステムによって実行されることを意味する。そのため、本方法の手順は、コンピュータによって、おそらく完全に自動的に、または半自動的に実行される。実施例では、本方法の少なくとも一部の手順のトリガーは、ユーザーおよびコンピュータの対話によって実行され得る。必要とされるユーザーおよびコンピュータの対話のレベルは、予測される自動化のレベルに依存し、ユーザーの希望を実現する必要性とバランスを取ることがある。実施例では、このレベルは、ユーザー定義および/または事前定義されることがある。
【0142】
方法のコンピュータ実装の典型的な例は、この目的に適合したシステムを用いて方法を実行することである。本システムは、メモリおよびグラフィカルユーザーインタフェース(GUI)に結合されたプロセッサを備え得て、メモリは、本方法を実行するための命令を含む、コンピュータプログラムを自体上に記録している。また、メモリは、データベースを格納し得る。メモリは、このようなストレージ用に適合した任意のハードウェアであり、複数の物理的に異なる部分(例えば、プログラム用の部分、およびおそらくデータベース用の部分など)を含む可能性がある。
【0143】
図22は、システムの一例を示しており、このシステムは、クライアントコンピュータシステム、例えば、ユーザーのワークステーションなどである。
【0144】
本実施例のクライアントコンピュータは、内部通信バス1000に接続された中央処理ユニット(CPU)1010と、同じくバスに接続されたランダムアクセスメモリ(RAM)1070とを備える。クライアントコンピュータは、バスに接続されたビデオランダムアクセスメモリ1100に関連付けられるグラフィック処理ユニット(GPU)1110をさらに備える。ビデオRAM1100は、当技術分野ではフレームバッファとしても知られている。大容量記憶装置コントローラ1020は、ハードドライブ1030などの大容量記憶装置に対するアクセスを管理する。コンピュータプログラム命令およびデータを有形的に具体化するのに適した大容量記憶装置には、例として、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスクを含む、あらゆる形態の不揮発性メモリが含まれる。上述した何れかは、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)によって補足されるか、または特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)に組み込まれてもよい。ネットワークアダプタ1050は、ネットワーク1060に対するアクセスを管理する。また、クライアントコンピュータは、カーソル制御デバイス、キーボード、または同様のものの触覚デバイス1090を含み得る。カーソル制御デバイスは、ユーザーがディスプレイ1080上の任意の所望位置にカーソルを選択的に配置することができるように、クライアントコンピュータに使用される。さらに、カーソル制御デバイスは、ユーザーが種々のコマンドを選択し、制御信号を入力することを可能にする。カーソル制御デバイスは、システムに制御信号を入力するための多数の信号生成デバイスを含む。典型的には、カーソル制御デバイスはマウスであり、マウスのボタンは、信号を生成するために使用される。代替的または追加的に、クライアントコンピュータシステムは、感応パッド、および/または感応スクリーンを含み得る。
【0145】
コンピュータプログラムは、コンピュータによって実行可能な命令を含み得て、この命令は、上記のシステムに本方法を実行させるための手段を含んでいる。プログラムは、システムのメモリを含む、任意のデータ記憶媒体に記録可能とし得る。プログラムは、例えば、デジタル電子回路、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせにおいて実装され得る。プログラムは、装置、例えば、プログラマブルプロセッサによる実行のために、機械可読記憶デバイスに有形的に具体化された製品として実装され得る。方法の手順は、入力データを操作して出力を生成することによって、方法の機能を実行するための命令のプログラムを実行する、プログラマブルプロセッサによって実行され得る。そのため、プロセッサは、データ記憶システム、少なくとも一つの入力デバイス、および少なくとも一つの出力デバイスからデータおよび命令を受信し、データおよび命令をデータ記憶システム、少なくとも一つの入力デバイス、および少なくとも一つの出力デバイスに送信するように、プログラム可能に結合され得る。アプリケーションプログラムは、高レベルの手続き型プログラミング言語もしくはオブジェクト指向プログラミング言語、または必要に応じてアセンブリ言語もしくは機械語において実装され得る。何れの場合も、言語は、コンパイル言語であってもよいし、またはインタプリタ言語であってもよい。プログラムは、フルインストール型プログラムであってもよいし、またはアップデート型プログラムであってもよい。システム上でプログラムを適用すると、何れの場合でも、本方法を実行するための命令が得られる。コンピュータプログラムは、代替的に、クラウドコンピューティング環境のサーバ上に格納されて実行されてもよく、サーバは、一つまたは複数のクライアントとネットワークを介して通信している。このような場合、処理ユニットが、プログラムによって構成される命令を実行し、それによってクラウドコンピューティング環境上で本方法を実行させる。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーリアンネットワークの較正のためのコンピュータ実装方法であって、前記ブーリアンネットワークは、ブール関数を有し、前記ブーリアンネットワークは、生物学的プロセスをモデル化するものであり、前記方法は、
以下を提供するステップであって、すなわち
前記ブーリアンネットワークと、
前記生物学的プロセスに関連する実験データと
を提供する、ステップと、
前記実験データに従って前記ブーリアンネットワークを較正するステップであって、前記較正は、
前記ブール関数をツェガルキン多項式に変換するステップと、
前記ツェガルキン多項式、前記ブーリアンネットワーク、および前記実験データに基づいて、前記ブーリアンネットワークの遷移系および前記実験データを表す較正ブール命題を構築するステップと、
前記較正ブール命題にSATソルバーを適用するステップと
を含む、ステップと
を備える、方法。
【請求項2】
前記較正ブール命題は、前記ブーリアンネットワークの遷移系を表す第一のブール命題と、前記実験データを表す第二のブール命題とを含み、前記較正ブール命題は、
前記生物学的プロセスに対する安定性制約を表す第三のブール命題、および/または
真の関数または偽の関数にペナルティを課す第四のブール命題、および/または
事前の生物学的知識制約を表す第五のブール命題
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記安定性制約は、前記遷移系の少なくとも一つの固定点、および/もしくは前記遷移系の少なくとも一つの循環を含み、ならびに/または前記第四のブール命題は、機構学的情報の損失を防ぐことを表し、ならびに/または前記事前の生物学的知識制約は、較正前の前記ブーリアンネットワークを表す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記SATソルバーは、MaxSATソルバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記MaxSATソルバーは、重み付きMaxSATソルバーであり、前記較正ブール命題に含まれる各ブール命題は、それぞれ重みを有する一つまたは複数の論理和ハード節の論理積、または一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積の何れかに対応する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第一のブール命題は、一つまたは複数の論理和ハード節の論理積である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記較正ブール命題は、前記第三のブール命題をさらに含み、前記第三のブール命題は、一つまたは複数の論理和ハード節の論理積である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記較正ブール命題は、前記第四のブール命題および前記第五のブール命題をさらに含み、
前記第二のブール命題は、前記遷移系の最終状態を表す副命題と、前記遷移系の初期状態を表す副命題とを含み、前記遷移系の前記最終状態を表す前記副命題は、全てのソフト節の中で最大の重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積であり、前記遷移系の前記初期状態を表す前記副命題は、全てのソフト節の中で二番目に大きな重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積であり、前記第二のブール命題は、前記実験データの中間時点を表し、全てのソフト節の中で三番目に大きな重みを有する一つまたは複数の論理和ソフト節も含み、
前記第四のブール命題は、全てのソフト節の中で四番目に大きな重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積であり、
前記第五のブール命題は、全てのソフト節の中で最小の重みを有する、一つまたは複数の論理和ソフト節の論理積である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、異なるブール命題に対応するソフト節の重みを分離して、これらのソフト節の間に重複が無いようにするステップを備える、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記重みの分離は、以下の通り、すなわち、
前記遷移系の前記最終状態を表す前記副命題の各重みは、前記遷移系の前記初期状態を表す前記副命題節の全ての重みの総和よりも厳密に大きいことと、
前記遷移系の前記初期状態を表す前記副命題の各重みは、前記実験データの前記中間時点を表す前記副命題節の全ての重みの総和よりも厳密に大きいことがあることと、
前記実験データの前記中間時点を表す前記副命題の各重みは、前記第四の命題節の全ての重みの総和よりも厳密に大きいことがあることと、
前記第四の命題の各重みは、前記第五の命題節の全ての重みの総和よりも厳密に大きいことがあることと
である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記実験データは、現実世界における前記生物学的プロセスの物理的測定および/または観察に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的プロセスは、医学的事象に対する患者の生理学的反応に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータシステムによって実行されると、前記コンピュータシステムに、請求項1ないし12の何れか一つに記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを記録している、コンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項15】
メモリに結合されたプロセッサを含むコンピュータシステムであって、前記メモリは、請求項13に記載のコンピュータプログラムを自体上に記録している、コンピュータシステム。