(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010081
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】混合物、樹脂、フィラメントおよび成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20250109BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250109BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106617
(22)【出願日】2024-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2023109989
(32)【優先日】2023-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】清水 透
(72)【発明者】
【氏名】渡利 久規
(72)【発明者】
【氏名】木村 正宏
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA00W
4J002AC00X
4J002AE03W
4J002BB00Y
4J002BB03W
4J002BB12W
4J002BC03Y
4J002BE02Y
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4J002BG04Y
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4J002CH02Y
4J002CH07Y
4J002CK02X
4J002CL00Y
4J002DA076
4J002DA086
4J002DA096
4J002DA116
4J002DE096
4J002DE116
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE186
4J002DE216
4J002DJ006
4J002GK01
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】本技術は、無機粉末を用いたFFF方式の3次元印刷に好適に使用できる混合物、樹脂、フィラメントおよび成形体を提供することを主目的とする。
【解決手段】本技術の発明者らは鋭意研究した結果、無機粉末と混合する樹脂として、低融点成分と、柔軟性成分と、構造維持成分とを含む3成分系の樹脂を用いることで、3次元プリンタ用フィラメントとして3次元プリンタのノズルから押し出したときに当該3次元プリンタのフィラメント送り部、あるいは射出器内部で折れる頻度を低減し、効率的に3次元印刷を実現し得ることを見出した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉末と樹脂との混合物であって、
前記樹脂は、ワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンから選ばれる1以上の化合物からなる低融点成分と、
EVA、エラストマー、ポリウレタンから選ばれる1以上の化合物からなる柔軟性成分と、
ポリオレフィン、ポリスチレン、PMMA、PLA、PET、フェノール樹脂、ポリプロピレングリコール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリカーボネートから選ばれる構造維持成分と、を含む混合物。
【請求項2】
前記エラストマーが、スチレン系エラストマーである、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記樹脂100vol%に対し、
前記低融点成分が、24~50vol%
前記柔軟性成分が、24~60vol%
前記構造維持成分が、0~36vol%、である請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
前記樹脂100vol%に対し、
前記低融点成分が、40~50vol%
前記柔軟性成分が、24~36vol%
前記構造維持成分が、16~36vol%、である請求項1に記載の混合物。
【請求項5】
前記樹脂100vol%に対し、
前記低融点成分が、40~50vol%
前記柔軟性成分が、24~36vol%
前記構造維持成分が、16~30vol%、である請求項1に記載の混合物。
【請求項6】
前記混合物100vol%に対し、前記無機粉末を35~65vol%含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項7】
前記混合物100vol%に対し、前記無機粉末を40~60vol%含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項8】
前記樹脂は、さらに界面活性剤を含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項9】
前記樹脂100vol%に対し、前記界面活性剤が3vol%以下である、請求項8に記載の混合物。
【請求項10】
請求項1から9に記載の混合物からなるフィラメント。
【請求項11】
請求項1から9に記載の混合物からなる3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項12】
請求項10に記載のフィラメントを用いて製造された成形体。
【請求項13】
ワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンから選ばれる1以上の化合物からなる低融点成分と、
EVA、エラストマー、ポリウレタンから選ばれる1以上の化合物からなる柔軟性成分と、
ポリオレフィン、ポリスチレン、PMMA、PLA、PET、フェノール樹脂、ポリプロピレングリコール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリカーボネートから選ばれる構造維持成分と、を含む樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、混合物、樹脂、フィラメントおよび成形体に関する。より詳しくは、無機粉末を用いたFFF(Fused Filament Fabrication)方式の3次元印刷に適した混合物、樹脂、フィラメントおよび成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無機粉末を用いた3次元印刷に用いる組成物が知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、金属および/またはセラミック粉末と、バインダーと、ポリ(エチレンー酢酸ビニル)とを含む3次元印刷に適した組成物や該組成物を含むフィラメントコイルが開示されている。但し、当該フィラメントは使用する3次元プリンタのノズルからの押し出し条件によっては当該3次元プリンタのフィラメント送り部において高頻度で折れることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本技術は、無機粉末を用いたFFF方式の3次元印刷に好適に使用できる混合物、樹脂、フィラメントおよび成形体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の発明者らは鋭意研究した結果、無機粉末と混合する樹脂として、低融点成分と、柔軟性成分と、構造維持成分とを含む3成分系の樹脂を用いることで、3次元プリンタ用フィラメントとして3次元プリンタのノズルから押し出したときに当該3次元プリンタのフィラメント送り部、あるいは射出器内部で折れる頻度を低減し、効率的に3次元印刷を実現し得ることを見出した。
【0007】
すなわち、本技術では、無機粉末と樹脂との混合物であって、前記樹脂は、ワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンから選ばれる1以上の化合物からなる低融点成分と、EVA、エラストマー、ポリウレタンから選ばれる1以上の化合物からなる柔軟性成分と、ポリオレフィン、ポリスチレン、PMMA、PLA、PETから選ばれる構造維持成分と、を含む混合物を提供する。本技術が提供する混合物が、柔軟性成分として使用するエラストマーは、スチレン系エラストマーであってもよい。
本技術が提供する混合物は、前記樹脂100vol%に対し、前記低融点成分が、24~50vol%、前記柔軟性成分が、24~60vol%、前記構造維持成分が、0~36vol%、であってもよい。また、前記樹脂100vol%に対し、前記低融点成分が、40~50vol%、前記柔軟性成分が、24~36vol%、前記構造維持成分が、16~36vol%、であってもよい。さらには、前記樹脂100vol%に対し、前記低融点成分が、40~50vol%、前記柔軟性成分が、24~36vol%、前記構造維持成分が、16~30vol%、であってもよい。
本技術が提供する混合物は、前記混合物100vol%に対し、前記無機粉末を35~60vol%含んでもよく、前記無機粉末を40~55vol%含んでもよい。 本技術が提供する混合物は、さらに界面活性剤を含んでもよい。本技術が提供する混合物が界面活性剤を含む場合、前記樹脂100vol%に対し、当該界面活性剤が3vol%以下としてもよい。
本技術が提供する混合物は、フィラメント、好ましくは3次元プリンタ用フィラメントとして好適に用いることができる。
さらには、本技術は、本技術に係るフィラメントを用いて製造された成形体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本技術の好ましい実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態は本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、本技術は以下の好ましい実施形態のみに限定されず、本技術の範囲内で自由に変更することができる。
【0010】
<混合物>
本技術に係る混合物は、無機粉末と樹脂とを混合して形成される。ここで、「混合」とは混ぜ合わせることをいう。また、「混合物」とは、複数の物質が混じり合った状態のものをいい、具体的には、無機粉末と樹脂とが混じり合った状態のものをいう。この場合、無機粉末と樹脂とは化学的結合をしないことが好ましい。
【0011】
本技術に係る混合物に含まれる無機粉末は、混合物100vol%に対し、例えば、35vol%以上、40vol%以上、45vol%以上、50vol%以上、55vol%以上、60vol%以上等の任意の範囲で好適に調整することができる。混合物100vol%に対する無機粉末の含有割合を多くすることで樹脂を使用する量が減るため、焼結後の成形体の密度を100%に近づけやすくなる。また、成形体の焼結時の焼結時の収縮率が小さくなるため、成形品の寸法制御が容易になる。
【0012】
本技術に係る混合物に含まれる無機粉末の、混合物100vol%に対する含有割合の上限は特に制限されないが、例えば、65vol%以下、60vol%以下、55vol%以下、50vol%以下、45vol%以下、40vol%以下等の任意の範囲で好適に調整することができる。例えば、本技術の混合物を用いたフィラメントの取り回し性、造形性等の機械的特性を向上させるという観点から、本技術の混合物の使用目的や用途に応じて混合物100vol%に対する無機粉末の含有割合の上限を設定することができる。
【0013】
<無機粉末>
本技術の混合物に用いる無機粉末は、焼結可能な無機化合物であれば特に制限されない。例えば、金属粉末および/またはセラミック粉末が挙げられる。ここで、「焼結」とは、粉末を加圧成型し融点以下の温度で熱処理した場合、粉体粒子の間に結合が生じて成形した形で固まる現象をいう。また、「金属粉末およびセラミック粉末」は金属粉末とセラミック粉末の混合粉末を含む。
【0014】
金属粉末の「金属」は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド、アクチニド、遷移金属、貧金属およびメタロイドから選択される周期表のあらゆる元素、対応する原子が金属結合によって結合されているあらゆる化合物を含む。
【0015】
「金属粉末」は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド、アクチニド、遷移金属、貧金属、メタロイド、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物および金属窒化物から選択される1種以上の成分を含むかそれらからなる。例えば、イットリウム、酸化イットリウム、銅、スズ、アルミニウム、セリウム、酸化セリウム、ウラン、酸化ウラン、鉄、酸化鉄、鋼、タングステン、炭化タングステン、チタン酸ストロンチウム、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、二酸化コバルトまたは二酸化マンガンなどの遷移金属酸化物、バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(LZT)およびそれらの混合物等が挙げられる。また、チタン酸塩、フェライト、タンタル酸塩、ニオブ酸塩(nobiates)およびタングステン・ブロンズ化合物、より好ましくはチタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、ビスマスフェライト、タンタル酸リチウムおよびチタン酸ジルコン酸鉛(LZT)から選択される圧電粉末であってもよい。
【0016】
セラミック粉末の「セラミック」は、加熱すると得られるあらゆる粘土ベースの材料またはあらゆる非金属および無機材料を指す。
【0017】
「セラミック粉末」は、炭化物、硫化物、ハロゲン化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、クロム酸塩、硝酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、リン酸塩、ヒ酸塩、バナジウム酸塩、ケイ酸塩およびアルミノケイ酸塩等から選択される1種以上の成分を含むかそれらからなる。
【0018】
<樹脂>
本技術の混合物に用いる樹脂は、低融点成分と柔軟性成分と構造維持成分の少なくとも3成分を含み、前述の無機粉末を塊状にすることができる。さらに、混合物をその後、焼結することによって除去されてもよい。ここで、「樹脂」とは、1以上の高分子化合物をいう。
【0019】
<低融点成分>
本技術の樹脂が含有する低融点成分は、ワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等、溶媒脱脂処理可能な低融点の高分子化合物又はその混合物である。前記ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ビーワックス、カルナバワックス、木蝋、パームワックス等が挙げられる。
【0020】
前記低分子量ポリエチレンは、分子量の上限として、例えば、15,000g/mol以下、12,000g/mol以下、10,000g/mol以下等の化合物を好適に使用できる。また、前記低分子量ポリプロピレンは、分子量の上限として、例えば、15,000g/mol以下、12,000g/mol以下、10,000g/mol以下の化合物を好適に使用できる。
【0021】
上記のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスは、ジクロロメタン、臭素系溶剤であるアブゾール、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、酢酸エチル、エタノール、メタノール、プロパノール、超臨界CO2等による抽出により溶媒脱脂処理可能である。また、低分子ポリエチレンは、シクロヘキサン等による抽出により溶媒脱脂処理可能である。なお、抽出する低融点成分の特性に合わせて、室温、あるいは沸点以下の適切な温度に加温することで好適に溶媒脱脂処理を行うことができる。本技術の樹脂が含有する低融点成分は、1種の高分子化合物であってもよく、複数種の高分子化合物の組み合せであってもよい。
【0022】
溶媒脱脂処理可能とは、溶媒によって対象から樹脂の成分の一部又は全部を溶出できることをいい、具体的には、本技術に係る成形体を溶媒に浸漬することにより、本技術の樹脂を構成する成分の一部又は全部を除去できることをいう。
【0023】
本技術の樹脂が含有する低融点成分の融点の上限は、例えば、140℃以下、好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。当該ワックスの融点の下限は、特に制限されないが、例えば、60℃以上のワックス、例えばパラフィンワックス、前記パラフィンワックスの分留成分であるマイクロクリスタリンワックスを好適に使用することができる。
【0024】
本技術の樹脂が含有する低融点成分の割合は、樹脂100vol%に対し、例えば、20vol%以上、24vol%以上、28vol%以上、36vol%以上、40vol%以上、44vol%以上等の範囲で好適に調整でき得る。当該低融点成分の樹脂100vol%に対する割合の上限は、例えば、50vol%以下、49vol%以下、48vol%以下等の範囲で好適に調整でき得る。本技術の樹脂は低融点の成分であるワックス等を含有することで、当該樹脂を処理する際の温度を比較的、低温とすることができるため、取り扱い性が向上する。
【0025】
<柔軟性成分>
本技術の樹脂が含有する柔軟性成分は、本技術の樹脂の柔軟性を向上させ得る高分子化合物又はその混合物である。例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エラストマー等が挙げられる。なお、本技術の樹脂が含有する柔軟性成分は、1種の高分子化合物であってもよく、複数種の高分子化合物の組み合せであってもよい。
【0026】
ここで、前述のエチレン酢酸ビニルは、エチレンと酢酸ビニルの共重合体であり、共重合体中の酢酸ビニルの割合によって、一般的に、低酢酸ビニル含有量のEVA、中酢酸ビニル含有量のEVA、高酢酸ビニル含有量のEVAの3つのタイプのエチレン酢酸ビニルがあるが、本技術においてはいずれの酢酸ビニルも好適に使用できる。
【0027】
また、前述のエラストマーは、常温で高弾性の高分子化合物であり、例えば、スチレン系エラストマーやアクリル系エラストマーが挙げられる。スチレン系エラストマーは、スチレンを主成分とするゴム状の高分子材料である。本技術において好適に使用し得るスチレン系エラストマーのスチレンの含有率は、例えば、15~30wt%である。スチレン系エラストマーとしては、例えば、SEPS(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン)、SEEPS(スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン)、SEBS(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン)、TPU(Thermoplastic Polyurethane)、スチレンとブタジエンの共重合体からなる各種のスチレンブロック重合性エラストマー等が挙げられる。アクリル系エラストマーは、アクリル系エステルと主成分とするゴム状の高分子材料である。本技術において好適に使用し得るアクリル系エラストマーのアクリルの含有率は、例えば、20~30wt%である。アクリル系エラストマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルとアクリル酸n-ブチルとの共重合体, メタクリル酸メチルとアクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合体等が挙げられる。
【0028】
本技術の樹脂が含有する柔軟性成分の割合は、樹脂100vol%に対し、例えば、20vol%以上、22vol%以上、24vol%以上等の範囲で好適に調整でき得る。当該柔軟性成分の樹脂100vol%に対する割合の上限は、例えば、68vol%以下、64vol%以下、60vol%以下、40vol%以下、36vol%以下、34vol%以下等の範囲で好適に調整でき得る。柔軟性成分として、主にエチレン酢酸ビニルやスチレン系エラストマーを用いる場合、樹脂100vol%に対する柔軟性成分の割合は、上述の範囲の中でも、柔軟性成分の割合を例えば、30vol%以下等の低い領域で調整してもよい。この場合、樹脂100vol%に対する低融点成分の割合を例えば、40vol%以上等の領域で調整してもよい。一方で、柔軟性成分として、アクリル系エラストマーを用いる場合、樹脂100vol%に対する柔軟性成分の割合は、上述の範囲の中でも、柔軟性成分の割合を例えば、30vol%以上等の高い領域で調整してもよい。
【0029】
<構造維持成分>
本技術の樹脂が含有する構造維持成分は、本技術の樹脂を用いたフィラメント又は成形体の構造強度を担保させ得る高分子化合物又はその混合物である。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、スチロール樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ乳酸(PLA)、PET、フェノール樹脂、ポリプロピレングリコール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0030】
本技術の樹脂が含有する構造維持成分の割合は、樹脂100vol%に対する割合の下限は特に制限されない。例えば、0vol%以上、0vol%超、14vol%以上、16vol%以上、18vol%以上等の範囲で好適に調整でき得る。当該構造維持成分の樹脂100vol%に対する割合の上限は、例えば、38vol%以下、36vol%以下、34vol%以下、32vol%以下、30vol%以下、28vol%以下等の範囲で好適に調整でき得る。
【0031】
<界面活性剤>
本技術の樹脂は、本技術の混合物の使用目的や用途に応じて、さらに界面活性剤を含んでもよい。本技術に用い得る界面活性は、特に制限されないが、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等を使用用途に合わせて適宜、選択できる。アニオン界面活性剤の例としてはステアリン酸塩、パルミチン酸塩等が挙げられる。
【0032】
本技術の樹脂が界面活性剤を含有する場合における当該界面活性剤の含有割合は、樹脂100vol%に対し、例えば、3vol%以下、2vol%以下、1vol%以下、0.5vol%以下等で好適に調整でき得る。
【0033】
<樹脂の製造方法>
本技術の樹脂の製造方法に制限はなく、例えば、タンブラーやヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの各種混合機を用いて予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法等の公知の樹脂の製造方法を好適に用いることができる。
【0034】
<フィラメント>
本技術の混合物は、任意の直径を有するフィラメントに加工することができる。ここで、「フィラメント」とは、任意の直径を有する円筒形状の成形体であり、例えば、リール等にまかれたコイルの状態で流通する。フィラメントの用途としては、例えば、3次元プリンタ用フィラメントが挙げられる。この場合、当該フィラメントは、3次元プリンタのノズルから押し出されて、該3次元プリンタにより任意の形状を有する成形体に加工される。
【0035】
ここで、本技術の3次元プリンタ用フィラメントの形状は、公知の3次元プリンタの仕様に合わせて、交換可能な供給形態として、任意の形状、例えば、任意の直径の細線の形状等にすることができる。本技術の混合物は、柔軟性と強度のバランスがよく、3次元プリンタ用フィラメントとして用いることで、3次元プリンタのノズルから押し出したときに折れる頻度を低減し、効率的に3次元印刷を実現し得る。さらには、3次元プリンタによる成形体である造形サンプルの造形性も担保し得る。
【0036】
本技術の3次元プリンタ用フィラメントの直径は、前述の通り、3次元プリンタの仕様に合わせた任意の値で調整できる。一般的な3Dプリンタにおいては、例えば、1.65mm以上、1.75mm以下、あるいは3mm以下、2.75mm以上が一般的である。フィラメント径はできる限り均一であることが望ましい。
【0037】
本技術の3次元プリンタ用フィラメントの長さは、3次元プリンタの仕様に合わせた交換可能な供給形態であれば、特に制限されないが、例えば、1m以上、40m以上、80m以上等に調整できる。フィラメントの長さの上限は、例えば、3000m以下、1500m以下、1200m以下等の範囲で調整できる。
【0038】
3次元プリンタ用フィラメントは、容易に屈曲し、かつ壊れにくいことが好ましい。具体的には、本技術の3次元プリンタ用フィラメントは、柔軟性と強度の適度にバランスしていることが望まれる。
【0039】
3次元プリンタ用フィラメントの柔軟性の指標としては、例えば、ループ試験(フィラメントをループさせ、その半径を小さくしていき、破断時の半径から柔軟性制を評価する方法)による評価ができる。本技術の3次元プリンタ用フィラメントは、ループ試験の評価として、フィラメント直径が1.75mmの場合、例えば、40mm以下、好ましくは30mm以下、さらに好ましくは20mm以下を実現し得る。
【0040】
3次元プリンタ用フィラメントの強度の指標としては、例えば、3点曲げ試験(JIS Z2248:2006)を参照して、標点距離5cm、フィラメントの直径1.75mmとした場合の評価を用いることができる。本技術の3次元プリンタ用フィラメントは、標点距離5cm、フィラメントの直径1.75mmとした場合における3点曲げ試験の評価として、例えば、0.55N以上、好ましくは0.65N以上、さらに好ましくは0.75N以上を実現し得る。
【0041】
本技術の3次元プリンタ用フィラメントは、無機粉末と混合する樹脂として、低融点成分と、柔軟性成分と、構造維持成分とを含む3成分系の樹脂を用いることで、柔軟性と強度の適度にバランスしていることにより、好適にコイル状にすることができる。さらに、3次元プリンタのノズルから押し出したときの当該3次元プリンタのフィラメント送り部、あるいは射出器内部で折れる頻度を低減し、効率的に3次元印刷を実現し得る。
【0042】
<3次元プリンタ>
本技術の混合物からなる3次元プリンタ用フィラメントは、例えば、FFF方式の3次元印刷に用いることができる。FFF方式とは、三次元プリンタが上記3次元プリンタ用フィラメントをノズルから射出し、ノズルを運動させることによって、射出物を積み重ねていくことで造形する3次元印刷の方式をいう。
【0043】
本技術の3次元プリンタ用フィラメントを用いた3次元印刷による成形体の製造工程としては、例えば、下記が挙げられるが、これに限定されるものではない。
a)3次元プリンタに本技術の3次元プリンタ用フィラメントを供給する供給工程、次いで
b)焼結前成形体として印刷する印刷工程、次いで
c)任意に、焼結前成形体を溶媒に浸漬することにより本技術の樹脂を除去する溶媒脱脂処理工程、
d)工程(b)の成形体から、または工程(c)の成形体、から樹脂成分を除去する加熱脱脂工程、
e)加熱脱脂体を加熱により焼結し、成形体を得る焼結工程、および
f)任意に、工程(b)の焼結前成形体または工程(e)の成形体を平滑化する平滑化工程
以下、各工程について説明する。
【0044】
<供給工程>
供給工程は、3次元プリンタに本技術の3次元プリンタ用フィラメントを供給する工程である。本技術の3次元プリンタ用フィラメントの供給方法は、特に制限されず、公知のフィラメントの供給方法を採用することができる。本技術のフィラメントは、柔軟性と強度の適度にバランスしているため、3次元プリンタのノズルから押し出したときの当該3次元プリンタのフィラメント送り部、あるいは射出器内部で、フィラメントが折れる頻度を低減し、効率的に3次元印刷を実現し得る。
【0045】
<印刷工程>
印刷工程は、供給工程により3次元プリンタのノズルから押し出しによって供給された3次元プリンタ用フィラメントを積み重ねていくことで焼結前成形体として造形(3次元印刷)する工程である。本技術の3次元プリンタ用フィラメントを用いた印刷方法は、FFF方式であれば、特に制限されず、公知のFFF方式の3次元印刷を好適に採用することができる。
【0046】
<溶媒脱脂処理工程>
溶媒脱脂処理工程は、前記印刷工程によって造形された焼結前成形体を溶媒に浸漬することにより本技術の樹脂の成分の一部を予備的に除去する工程である。当該工程は任意の工程であり、3次元印刷による成形体の製造工程において必須の工程ではない。
【0047】
焼結前成形体に対し溶媒脱脂処理により、予備的に樹脂を脱脂しておくことで、その後の加熱脱脂工程又は焼結工程で成形体の表面が溶け、形状が変化する、いわゆる「だれ」の発生を抑制し、加熱脱脂工程又は焼結工程で成形体が割れたり、膨れたりすることを防止できる。
【0048】
溶媒脱脂処理工程では、前記焼結前成形体を用いるワックス等の低融点成分に合わせて、例えば、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、ガソリン、酢酸エチル、エタノール、メタノール、プロパノール、ジクロロメタン、アブゾール、超臨界CO2、シクロヘキサンおよび水から選択される1以上の溶媒に浸漬することにより行う。
【0049】
溶媒脱脂処理は、例えば、焼結前成形体を例えば、室温から80℃の溶媒に1時間~72時間浸漬することにより好適に脱脂処理でき得る。
【0050】
<加熱脱脂工程>
加熱脱脂工程は、焼結前成形体から樹脂成分を除去する工程である。3次元印刷による成形体の製造工程が溶媒脱脂処理工程を含まない場合、焼結工程に先立って行われる加熱脱脂工程により技術の樹脂が除去される。また、溶媒脱脂処理を行った場合でも、残留する樹脂成分を十分に除去するため加熱脱脂工程を含む。この場合、当該樹脂の蒸発に伴う起泡形成および/又は焼結中の樹脂のか焼を回避するために、ゆっくりとした加熱勾配で加熱を行うことが好ましい。この場合の加熱勾配の条件としては、例えば、10℃/時間~100℃/時間である。
【0051】
<焼結工程>
焼結工程は、焼結前成形体を加熱により焼結し、成形体を得る工程である。焼結工程は金属の場合は真空条件、あるいは不活性雰囲気下で行ってもよく、セラミックスの場合は大気中で行ってもよい。金属の焼結を行う場合の温度条件は、例えば、800℃~1300℃である。セラミックスの焼結を行う場合の温度条件は、例えば、1300℃~1700℃である。
【0052】
<平滑化工程>
平滑化工程は、焼結前成形体または成形体を平滑化する工程である。平滑化工程は、例えば、焼結前成形体または成形体の表面の凹凸を小さくすることを可能にする溶媒と接触させることにより、平滑化させる。当該工程は任意の工程であり、3次元印刷による成形体の製造工程において必須の工程ではない。
【0053】
平滑化工程において用いる溶媒としては、焼結前成形体または成形体の特性に合わせて、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびそれらの混合物、ガソリン、ホワイトスピリット(ソルベントナフサの異名、脂肪族、開鎖もしくは脂環式C7~C12の炭化水素の混合物)、ベンゼン、トルエン、オルト、パラもしくはメタジメチルベンゼンおよびそれらの混合物、テトラヒドロフラン、2 - メチルテトラヒドロフランおよびそれらの混合物から選択される化合物を用いることができる。
【0054】
焼結前成形体または成形体の表面と溶媒とを接触させる手段としては、公知の手段を好適に用いることができる。例えば、焼結前成形体または成形体を溶媒に浸してもよい。焼結前成形体または成形体の表面に、ブラシ等を用いて溶媒を塗布してもよい。焼結前成形体または成形体の表面に溶媒を噴霧してもよい。
【実施例0055】
以下、実施例を用いて本技術を更に具体的に説明する。なお、本技術は、以下に示す実施例の内容に、何ら限定されるものではない。
【0056】
<原料>
実施例の樹脂および混合物が含有する原料を下記に示す。
[低融点成分]
パラフィンワックス(パラフィンワックス融点66-68℃/和光純薬)
マイクロクリスタリンワックス(HIMIC-1090/日本精蝋)
[柔軟性成分]
(EVA)
エチレン酢酸ビニル(エバフレックスV406/三井・ダウポリケミカル)
(エラストマー)
スチレン系エラストマー
SEPS(SP4033/クラレ)
SEEPS(SP2004F/クラレ)
SEBS(SP8004/クラレ)
高柔軟性スチレン系エラストマー:
ビニルSEEPS(F7311F/クラレ)
アクリル系エラストマー:
Kurarity(LA2140/クラレ)
Kurarity(LA2250/クラレ)
Kurarity(LA2320/クラレ)
(ポリウレタン)
エーテル系ポリウレタン(E380/日本ミラクトラン)[構造維持成分]
ポリプロピレン(J107G/プライムポリマー)
PLA(3D850/NatureWorks)
[無機粉末]
ステンレス鋼(SUS316L)(PF3F,PF5F,PF10F,PF20F/エプソンアトミックス)
【0057】
[実施例1]
<フィラメントの製造>
上記の原料を表1に示す割合でそれぞれ配合し、無機粉末(ステンレス鋼粉/PF10F)と合わせてホットプレート(タイガーホットプレートCPH-DI30/タイガー魔法瓶)による加熱条件下で竹製へら(スパチュラ)を用いて160-230℃で混合することで、混合物を得た。なお、無機粉末は混合物100vol%に対し、45vol%を添加した。ここで、
図1の成分図は、表1に示す樹脂の位置を示す。
【0058】
得られた混合物を、押し出し機(WELLZOOM/SHENZHEN Mister Technology)により、直径φ1.75mm、長さ10m以上のフィラメントを得た。
【0059】
【0060】
<3点曲げ試験>
作製したそれぞれのフィラメントを、標点距離5cmとし、試験片以外の条件はJIS Z2248:2006に準拠して測定した。結果を表2に示す。
【0061】
<ループ試験>
作製したそれぞれのフィラメントを、上述の試験法に準拠して測定した。結果を表2に示す。
【0062】
<造形性>
作製したそれぞれのフィラメントを用いて、3次元プリンタ(Creality/Ender-3)を用いた印刷により、焼結前成形体として造形した。作製したそれぞれのフィラメントは、当該3次元プリンタのフィラメント送り部、あるいは射出器内部で折れることなく、好適にノズルから押し出しによって連続的に供給され、積み重ねにより焼結前成形体の造形ができることが確認された。
【0063】
表1に示すA、Dについて、構造維持成分であるポリプロピレンを含有させず、低融点成分であるパラフィンワックスと、柔軟性成分であるエチレン酢酸ビニルの割合は変更しない混合物により、前述の方法により作成したフィラメントを用いて前述の同様の条件により3次元プリンタで焼結前成形体の造形を試みたが、フィラメントが(ノズルに溶着して)連続的に供給されず、造形ができない場合があった。
【0064】
得られた焼結前成形体を、攪拌装置(SH-2/ANZESTER)を用いた40℃での攪拌条件下において、臭素系溶剤(ABZOL(アブゾール)/アルベマール社製)に4時間浸漬させた。この溶媒脱脂処理工程により、それぞれの樹脂の成分の一部を予備的に除去した。
【0065】
その後、焼結前成形体を、焼結炉(ら管型シリコニット電気炉/株式会社シリコニット)により加熱脱脂後、ロータリーポンプによる真空(気圧5Pa程度)を用いた1150℃、2時間の条件で焼結を行い、成形体を得た。
【0066】
造形性については、CreativeTools社の#Benchy3Dとして知られる、小型ボートベンチマーク用モデルの造形体を作成し、下記に示す5つの特徴ポイントを、5名の審査員により、以下の評価基準に基づいて評価した。評価結果は審査員が行った評価点の平均点を算出した。結果を表2に示す。
なお、5つの特徴ポイントは、煙突部、キャビン屋根アンダーカット部、キャビン柱部、バウロープホール部、船体側面である。
5:5つの特徴ポイントの全ての再現性が担保できている。
4:5つの特徴ポイントのうち、4つのポイントの再現性が担保できている。
3:5つの特徴ポイントのうち、3つのポイントの再現性が担保できている。
2:5つの特徴ポイントのうち、2つのポイントの再現性が担保できている。
1:5つの特徴ポイントのうち、1つのポイントの再現性が担保できている。
0:5つの特徴ポイントのうち、再現性が担保できている部分は無い。
【0067】
それぞれのフィラメントについて、3点曲げ試験、ループ試験、造形性の評価結果を下記基準で数値化した。
【0068】
[3点曲げ試験]
3: 1.4N以上
2: 1.2N以上
1: 1.0N以上
0: 1.0N未満
【0069】
[ループ試験]
3: 50mm以下
2: 85mm以下
1: 100mm以下
0: 100mm未満
【0070】
[造形性の評価結果]
3: 4.5以上
2: 4.0以上
1: 2.4以上
0: 2.4未満
【0071】
それぞれのフィラメントについて、上記で数値化した3点曲げ試験、ループ試験、造形性の数値の合計値から、以下の評価基準に基づいて総合評価を行った。結果を表2に示す。
A: 5点以上
B: 4点
C: 3点
D: 2点以下
【0072】
【0073】
[実施例2]
実施例1のそれぞれの成形体に用いた混合体を、表3に示す組み合わせで混合し、実施例1と同じ条件でフィラメントを作製した。得られたそれぞれのフィラメントを用いて実施例1と同じ測定を行った。この場合も、作製したそれぞれのフィラメントは、3次元プリンタのノズルから押し出したときの当該3次元プリンタのフィラメント送り部で折れることなく、好適にノズルから押し出しによって連続的に供給され、積み重ねにより焼結前成形体の造形ができることが確認された。結果を表3に示す。
【0074】
【0075】
[実施例3]
実施例1の成形体Eに用いた樹脂の柔軟性成分として、エチレン酢酸ビニルに代えて表3に示す化合物を用いた他は、実施例1と同じ条件でフィラメントを作製した。得られたそれぞれのフィラメントを用いて実施例1と同じ測定を行った。この場合も、作製したそれぞれのフィラメントは、3次元プリンタのノズルから押し出したときの当該3次元プリンタのフィラメント送り部で折れることなく、好適にノズルから押し出しによって連続的に供給され、積み重ねにより焼結前成形体の造形ができることが確認された。結果を表4に示す。
【0076】
【0077】
[実施例4]
図1の成分図に示されるGおよびJ~L,O~Rの樹脂について、柔軟性成分をエチレン酢酸ビニルにかえて、前述のスチレン系エラストマーSP4033とアクリル系エラストマー(LA2140/クラレ)とを体積比率で1:2で配合した他は、実施例1と同じ条件でフィラメントを作製した。得られたそれぞれのフィラメントを用いて実施例1と同じ測定を行った。この場合も、作製したそれぞれのフィラメントは、3次元プリンタのノズルから押し出したときの当該3次元プリンタのフィラメント送り部で折れることなく、好適にノズルから押し出しによって連続的に供給され、積み重ねにより焼結前成形体の造形ができることが確認された。結果を表5に示す。さらに、
図1の成分図に示されるGおよびJ~L,O~Rの樹脂について、アクリル系エラストマーとしてLA2140に代えて、LA2250を使用した他は実施例4と同じ条件で作成したフィラメントおよびLA2330を使用した他は実施例4と同じ条件で作成したフィラメントについても、それぞれ3次元プリンタのノズルから押し出したときの当該3次元プリンタのフィラメント送り部で折れることなく、好適にノズルから押し出しによって連続的に供給され、積み重ねにより焼結前成形体の造形ができることを確認した。
【0078】
【0079】
[実施例5]
図1の成分図に示されるRの樹脂について、柔軟性成分をエチレン酢酸ビニルにかえて、スチレン系エラストマー(SP4033/クラレ),アクリル系エラストマー(LA2140/クラレ),ポリウレタン(E380/日本ミラクトラン)とを体積比率で1:2:2で配合した他は、実施例1と同じ条件でフィラメントを作製し、フィラメントR-αとした。
同様に、
図1の成分図に示されるRの樹脂について、柔軟性成分をエチレン酢酸ビニルにかえて、スチレン系エラストマー(SP4033/クラレ),アクリル系エラストマー(LA2140/クラレ)を体積比率で1:2で配合し、構造維持成分をポリプロピレンにかえてPLA(3D850/NatureWorks)とした他は、実施例1と同じ条件でフィラメントを作製し、フィラメントR-βとした。
さらに、
図1の成分図に示されるRの樹脂について、柔軟性成分をエチレン酢酸ビニルにかえて、スチレン系エラストマー(SP4033/クラレ),高柔軟性スチレン系エラストマー(F7311F/クラレ)を体積比率2:1で配合した他は、実施例1と同じ条件でフィラメントを作製し、フィラメントR-γとした。
得られたそれぞれのフィラメントを用いて実施例1と同じ測定を行った。この場合も、作製したそれぞれのフィラメントは、3次元プリンタのノズルから押し出したときの当該3次元プリンタのフィラメント送り部で折れることなく、好適にノズルから押し出しによって連続的に供給され、積み重ねにより焼結前成形体の造形ができることが確認された。結果を表6に示す。
【0080】
【0081】
なお、本技術では、以下の構成を取ることができる。
(1)無機粉末と樹脂との混合物であって、
前記樹脂は、ワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンから選ばれる1以上の化合物からなる低融点成分と、
EVA、エラストマー、ポリウレタンから選ばれる1以上の化合物からなる柔軟性成分と、
ポリオレフィン、ポリスチレン、PMMA、PLA、PET、フェノール樹脂、ポリプロピレングリコール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリカーボネートから選ばれる構造維持成分と、を含む混合物。
(2)前記エラストマーが、スチレン系エラストマーである、(1)に記載の混合物。
(3)前記樹脂100vol%に対し、
前記低融点成分が、24~50vol%
前記柔軟性成分が、24~60vol%
前記構造維持成分が、0~36vol%、である(1)又は(2)に記載の混合物。
(4)前記樹脂100vol%に対し、
前記低融点成分が、40~50vol%
前記柔軟性成分が、24~36vol%
前記構造維持成分が、16~36vol%、である(1)又は(2)に記載の混合物。
(5)前記樹脂100vol%に対し、
前記低融点成分が、40~50vol%
前記柔軟性成分が、24~36vol%
前記構造維持成分が、16~30vol%、である(1)又は(2)に記載の混合物。
(6)前記混合物100vol%に対し、前記無機粉末を35~65vol%含む、(1)から(5)のいずれかに記載の混合物。
(7)前記混合物100vol%に対し、前記無機粉末を40~60vol%含む、(1)から(5)のいずれかに記載の混合物。
(8)前記樹脂は、さらに界面活性剤を含む、(1)から(7)のいずれかに記載の混合物。
(9)前記樹脂100vol%に対し、前記界面活性剤が3vol%以下である、(8)に記載の混合物。
(10)(1)から(9)に記載の混合物からなるフィラメント。
(11)(1)から(9)に記載の混合物からなる3次元プリンタ用フィラメント。
(12)(10)又は(11)に記載のフィラメントを用いて製造された成形体。
(13)ワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンから選ばれる1以上の化合物からなる低融点成分と、
EVA、エラストマー、ポリウレタンから選ばれる1以上の化合物からなる柔軟性成分と、
ポリオレフィン、ポリスチレン、PMMA、PLA、PET、フェノール樹脂、ポリプロピレングリコール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリカーボネートから選ばれる構造維持成分と、を含む樹脂。