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特開2025-10087フェルラ酸含有粒子、紫外線吸収剤、および、化粧品原料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010087
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】フェルラ酸含有粒子、紫外線吸収剤、および、化粧品原料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20250109BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20250109BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61K8/36
A61Q17/04
A61Q1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107138
(22)【出願日】2024-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2023110951
(32)【優先日】2023-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱谷 梨江
(72)【発明者】
【氏名】大内 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 ひとみ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AC102
4C083AC302
4C083AC471
4C083AC472
4C083BB25
4C083CC19
4C083DD16
4C083DD17
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】紫外線吸収性に優れるフェルラ酸含有粒子、そのフェルラ酸含有粒子を含む紫外線吸収剤、および、そのフェルラ酸含有粒子を含む化粧品原料を提供すること。
【解決手段】フェルラ酸含有粒子は、無機粒子とフェルラ酸とを含む。フェルラ酸の含有割合が、フェルラ酸含有粒子に対して、5質量%以上である。フェルラ酸が、無機粒子に対して均一に分散している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子とフェルラ酸とを含むフェルラ酸含有粒子であって、
前記フェルラ酸の含有割合が、前記フェルラ酸含有粒子に対して、5質量%以上であり、
前記フェルラ酸が、前記無機粒子に対して均一に分散している、フェルラ酸含有粒子。
【請求項2】
SPF値が、20以上である、請求項1に記載のフェルラ酸含有粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフェルラ酸含有粒子を含む、紫外線吸収剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載のフェルラ酸含有粒子を含む、化粧品原料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルラ酸含有粒子、紫外線吸収剤、および、化粧品原料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品には、紫外線吸収性を有する成分が配合されている。
【0003】
紫外線吸収性を有する成分として、例えば、フェルラ酸が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】フェルラ酸カタログ ver.2.2ST、オリザ油化株式会社、2015年1月20日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
化粧品にフェルラ酸を配合する方法としては、フェルラ酸を無機粒子に混合したフェルラ酸含有粒子を、化粧品に配合する方法が検討される。
【0006】
しかし、無機粒子に対して、フェルラ酸を単に混合しただけでは、良好な紫外線吸収性が発現しないという不具合がある。
【0007】
本発明は、紫外線吸収性に優れるフェルラ酸含有粒子、そのフェルラ酸含有粒子を含む紫外線吸収剤、および、そのフェルラ酸含有粒子を含む化粧品原料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、無機粒子とフェルラ酸とを含むフェルラ酸含有粒子であって、フェルラ酸の含有割合が、前記フェルラ酸含有粒子に対して、5質量%以上であり、前記フェルラ酸が、前記無機粒子に対して均一に分散している、フェルラ酸含有粒子である。
【0009】
本発明[2]は、SPF値が、20以上である、請求項1に記載のフェルラ酸含有粒子を含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、上記[1]または[2]に記載のフェルラ酸含有粒子を含む、紫外線吸収剤を含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、上記[1]または[2]に記載のフェルラ酸含有粒子を含む、化粧品原料を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフェルラ酸含有粒子において、フェルラ酸の含有割合が、所定値以上であり、フェルラ酸が、無機粒子に対して均一に分散している。そのため、紫外線吸収性に優れる。
【0013】
本発明の紫外線吸収剤は、本発明のフェルラ酸含有粒子を含む。そのため、紫外線吸収性に優れる。
【0014】
本発明の化粧品原料は、本発明のフェルラ酸含有粒子を含む。そのため、紫外線吸収性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例1のフェルラ酸含有粒子のSEM写真を示す。
図2図2は、実施例2のフェルラ酸含有粒子のSEM写真を示す。
図3図3は、実施例3のフェルラ酸含有粒子のSEM写真を示す。
図4図4は、実施例4のフェルラ酸含有粒子のSEM写真を示す。
図5図5は、実施例5のフェルラ酸含有粒子のSEM写真を示す。
図6図6は、比較例1のフェルラ酸含有粒子のSEM写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<フェルラ酸含有粒子>
フェルラ酸含有粒子は、無機粒子とフェルラ酸とを含む。詳しくは、フェルラ酸含有粒子は、無機粒子と、無機粒子に対して均一に分散されているフェルラ酸とを含む。
【0017】
[無機粒子]
無機粒子としては、例えば、化粧品に一般的に使用されるものが挙げられる。無機粒子として、具体的には、タルク、マイカ(天然および合成)、セリサイト、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、および、酸化チタンが挙げられる。無機粒子として、好ましくは、吸油量の観点から、シリカ粒子が挙げられる。
【0018】
無機粒子の平均粒子径は、例えば、0.02μm以上、好ましくは、0.1μm以上、より好ましくは、1.0μm以上、さらに好ましくは、2.0μm以上、また、例えば、50μm以下、好ましくは、10μm以下、より好ましくは、6μm以下である。
【0019】
なお、平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により粒子径分布曲線を作成し、50質量%相当粒子径を算出することにより求めることができる。
【0020】
無機粒子の含有割合は、フェルラ酸含有粒子に対して、例えば、60質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、80質量%以上、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、85質量%以下である。
【0021】
無機粒子は、単独使用または2種以上併用できる。
【0022】
[フェルラ酸]
フェルラ酸は、紫外線吸収性を有する成分である。
【0023】
フェルラ酸としては、trans-フェルラ酸、および、cis-フェルラ酸が構造異性体として挙げられる。フェルラ酸として、好ましくは、trans-フェルラ酸が挙げられる。
【0024】
フェルラ酸の含有割合は、フェルラ酸含有粒子に対して、5質量%以上、好ましくは、8質量%以上、より好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、12質量%以上、とりわけ好ましくは、14質量%以上、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下、より好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、17質量%以下である。
【0025】
フェルラ酸の含有割合が、上記下限以上であれば、紫外線吸収性を向上できる。
【0026】
一方、フェルラ酸の含有割合が、上記下限未満であれば、紫外線吸収性が低下する。
【0027】
なお、フェルラ酸の含有割合は、後述する実施例にて詳述する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、測定できる。
【0028】
また、フェルラ酸は、無機粒子に対して均一に分散している。そのため、紫外線吸収性に優れる。また、「均一に分散」とは、後述する実施例において示されるSEM写真からもわかるように、フェルラ酸が無機粒子の表面に、担持(固定または埋設、好ましくは、無機粒子の細孔内に担持)されており、フェルラ酸が無機粒子から独立して結晶化していない状態をいう。すなわち、フェルラ酸含有粒子は、フェルラ酸が無機粒子から独立した結晶を含まない。フェルラ酸が無機粒子から独立した結晶とは、具体的には、少なくとも、長径が11.0μmを超過するか、または、短径が5.0μmを超過する無機粒子から独立したフェルラ酸の結晶を意味する。
【0029】
また、フェルラ酸含有粒子は、無機粒子の表面に堆積するフェルラ酸の結晶を含むこともできる。無機粒子の表面に堆積するフェルラ酸の結晶の長径は、例えば、11.0μm以下、好ましくは、10.0μm以下、より好ましくは、8.0μm以下、さらに好ましくは、7.0μm以下である。また、無機粒子の表面に堆積するフェルラ酸の結晶の短径は、例えば、5.0μm以下、好ましくは、4.0μm以下、より好ましくは、2.0μm以下である。フェルラ酸含有粒子は、、触感(具体的には、化粧品原料に要求される肌触り感)を向上させる観点から、好ましくは、無機粒子の表面に堆積するフェルラ酸の結晶を含まない。
【0030】
なお、上記長径および上記短径はSEMによって測定することができる。
【0031】
好ましくは、触感(具体的には、化粧品原料に要求される肌触り感)を向上させる観点から、フェルラ酸は、無機粒子の細孔内に担持される。
【0032】
[カルボキシル基含有化合物の塩およびポリビニルピロリドン]
フェルラ酸含有粒子は、好ましくは、カルボキシル基含有化合物の塩、または、ポリビニルピロリドンを含む。
【0033】
フェルラ酸含有粒子が、カルボキシル基含有化合物の塩、または、ポリビニルピロリドンを含むと、詳しくは後述するが、フェルラ酸含有粒子の製造に供するフェルラ酸溶液において、フェルラ酸の析出を抑制できる。これにより、フェルラ酸を、無機粒子に対してより均一に分散させることができる。その結果、紫外線吸収性を向上できる。
【0034】
(カルボキシル基含有化合物の塩)
カルボキシル基含有化合物の塩は、後述するフェルラ酸溶液において、フェルラ酸の析出を抑制する成分である。カルボキシル基含有化合物の塩は、フェルラ酸とともに、無機粒子に対して、分散している。
【0035】
カルボキシル基含有化合物の塩において、カルボキシル基含有化合物として、例えば、水酸基およびカルボキシル基含有化合物、および、水酸基不含カルボキシル基含有化合物が挙げられる。
【0036】
水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、カルボキシル基とともに、さらに、水酸基を含む化合物である。水酸基およびカルボキシル基含有化合物としては、例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、2-ヒドキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、タルトロン酸、グリセリン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、サリチル酸、4-ヒドロキシメチル安息香酸、マンデル酸、および、ベンジル酸が挙げられ、好ましくは、乳酸、クエン酸、および、アスコルビン酸が挙げられる。
【0037】
水酸基不含カルボキシル基含有化合物は、カルボキシル基を含み、水酸基を含まない化合物である。水酸基不含カルボキシル基含有化合物としては、例えば、酢酸、酪酸、および、シュウ酸が挙げられる。
【0038】
カルボキシル基含有化合物として、好ましくは、フェルラ酸の析出をより一層抑制する観点から、水酸基およびカルボキシル基含有化合物が挙げられる。
【0039】
また、カルボキシル基含有化合物の塩において、塩として、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩が挙げられ、好ましくは、ナトリウム塩が挙げられる。
【0040】
そして、カルボキシル基含有化合物の塩として、好ましくは、水酸基およびカルボキシル基含有化合物のナトリウム塩が挙げられる。カルボキシル基含有化合物の塩として、より好ましくは、乳酸のナトリウム塩、クエン酸のナトリウム塩、および、アスコルビン酸のナトリウム塩が挙げられる。カルボキシル基含有化合物の塩として、とりわけ好ましくは、紫外線吸収性を向上させる観点から、乳酸のナトリウム塩が挙げられる。
【0041】
カルボキシル基含有化合物の塩は、単独使用または2種以上併用できる。
【0042】
カルボキシル基含有化合物の塩の含有割合は、フェルラ酸含有粒子に対して、例えば、5質量%以上、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0043】
(ポリビニルピロリドン)
ポリビニルピロリドンは、後述するフェルラ酸溶液において、フェルラ酸の析出を抑制する成分である。ポリビニルピロリドンは、フェルラ酸とともに、無機粒子に対して、分散している。
【0044】
ポリビニルピロリドンの数平均分子量は、例えば、1000以上、好ましくは、5000以上、より好ましくは、8000以上、また、例えば、20000以下、好ましくは、15000以下、より好ましくは、12000以下である。
【0045】
ポリビニルピロリドンの数平均分子量が、上記下限以上および上記上限以下であれば、フェルラ酸の析出をより一層抑制できる。
【0046】
なお、ポリビニルピロリドンの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定できる。
【0047】
また、ポリビニルピロリドンは、市販品を用いることもできる。ポリビニルピロリドンの市販品として、例えば、PVP10(Strem Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0048】
ポリビニルピロリドンの含有割合は、フェルラ酸含有粒子に対して、例えば、5質量%以上、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0049】
そして、フェルラ酸含有粒子は、フェルラ酸溶液におけるフェルラ酸の析出を、より一層抑制する観点から、好ましくは、ポリビニルピロリドンを含まず、カルボキシル基含有化合物の塩を含む。
【0050】
[フェルラ酸含有粒子の製造方法]
フェルラ酸含有粒子の製造方法は、フェルラ酸溶液を準備する第1工程と、フェルラ酸溶液および無機粒子を混合する第2工程と、炭素数2以上3以下のアルコール(後述)および水を乾燥させることによりフェルラ酸含有粒子を得る第3工程とを備える。
【0051】
(第1工程)
第1工程では、フェルラ酸溶液を準備する。
【0052】
フェルラ酸溶液は、フェルラ酸と、炭素数2以上3以下のアルコールと、水と、必要により、カルボキシル基含有化合物の塩、または、ポリビニルピロリドンとを含む。すなわち、フェルラ酸溶液は、フェルラ酸と、炭素数2以上3以下のアルコールと、水と、必要により、カルボキシル基含有化合物の塩とを含むか、フェルラ酸と、炭素数2以上3以下のアルコールと、水と、必要により、ポリビニルピロリドンとを含む。好ましくは、フェルラ酸溶液は、フェルラ酸と、炭素数2以上3以下のアルコールと、水と、カルボキシル基含有化合物の塩とからなるか、または、フェルラ酸と、炭素数2以上3以下のアルコールと、水と、ポリビニルピロリドンとからなる。
【0053】
{フェルラ酸}
フェルラ酸の含有割合(フェルラ酸の固形分濃度)は、フェルラ酸溶液に対して、紫外線吸収性を向上させる観点から、例えば、22.0質量%以上、好ましくは、23.0質量%以上、より好ましくは、24.0質量%以上、さらに好ましくは、25.0質量%以上、とりわけ好ましくは、26.0質量%以上、また、例えば、31.8質量%以下、好ましくは、30.0質量%以下である。
【0054】
フェルラ酸の含有割合(フェルラ酸の固形分濃度)が、上記下限以上であれば、上記したフェルラ酸含有粒子に対するフェルラ酸の含有割合を、上記所定値以上にできる。
【0055】
{炭素数2以上3以下のアルコール}
炭素数2以上3以下のアルコール(以下、アルコールと称する場合がある。)としては、例えば、エタノール、1-プロパノール、および、2-プロパノールが挙げられる。アルコールとして、好ましくは、エタノールが挙げられる。アルコールは、より好ましくは、エタノールからなる。
【0056】
アルコールの含有割合は、フェルラ酸溶液に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上、より好ましくは、50質量%以上、また、例えば、70質量%以下である。
【0057】
アルコールは、単独使用または2種以上併用できる。
【0058】
{水}
水は、フェルラ酸を溶解させる溶媒である。
【0059】
水の含有割合は、フェルラ酸溶液に対して、例えば、4質量%以上、6質量%以上、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
【0060】
また、アルコールの水に対する質量比(アルコール/水)は、例えば、1以上、好ましくは、2以上、より好ましくは、5以上、また、例えば、20以下、好ましくは、15以下、より好ましくは、10以下である。
【0061】
上記質量比が、上記下限以上であれば、フェルラ酸溶液において、フェルラ酸を確実に溶解させることができる。
【0062】
{カルボキシル基含有化合物の塩}
カルボキシル基含有化合物の塩の含有割合は、フェルラ酸溶液に対して、例えば、3質量%を超過し、また、例えば、20質量%以下である。
【0063】
また、カルボキシル基含有化合物の塩は、水で希釈し、カルボキシル基含有化合物の塩の水溶液として調製することもできる。カルボキシル基含有化合物の塩の水溶液において、カルボキシル基含有化合物の塩の固形分濃度は、例えば、30質量%以上、好ましくは、50質量%以上、また、80質量%以下である。
【0064】
{ポリビニルピロリドン}
ポリビニルピロリドンの含有割合は、フェルラ酸溶液に対して、例えば、3質量%を超過し、また、例えば、20質量%以下である。
【0065】
{フェルラ酸溶液の準備}
フェルラ酸溶液を準備するには、フェルラ酸と、アルコールと、水と、必要により、カルボキシル基含有化合物の塩またはポリビニルピロリドンとを上記した含有割合となるように、混合し加熱する。このとき、水は、カルボキシル基含有化合物の塩の水溶液における水をそのまま利用することもできる。
【0066】
加熱温度は、60℃以上、好ましくは、65℃以上である。
【0067】
加熱温度が、上記下限以上であれば、フェルラ酸を確実に溶解できる。
【0068】
また、加熱温度の上限は、アルコールの沸点未満の温度である。例えば、アルコールがエタノールである場合には、加熱温度の上限は、78℃以下、好ましくは、70℃以下である。
【0069】
また、加熱時間は、フェルラ酸を確実に溶解する観点から、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上、また、例えば、120分以下、好ましくは、60分以下、より好ましくは、30分以下、さらに好ましくは、20分以下である。
【0070】
これにより、フェルラ酸溶液を準備する。また、フェルラ酸溶液が、カルボキシル基含有化合物の塩またはポリビニルピロリドンを含めば、フェルラ酸溶液において、フェルラ酸の析出を抑制できる。これにより、フェルラ酸を無機粒子に対して、より均一に分散させることができる。その結果、紫外線吸収性を向上できる。
【0071】
(第2工程)
第2工程では、フェルラ酸溶液および無機粒子を混合する。
【0072】
具体的には、無機粒子に対して、フェルラ酸溶液を一括または分割で滴下する。好ましくは、無機粒子に対して、フェルラ酸溶液を分割で滴下する。
【0073】
無機粒子に対して、フェルラ酸溶液を分割で滴下するには、フェルラ酸溶液の一部(例えば、無機粒子100質量部に対して、5質量部以上10質量部以下)を、無機粒子に対して滴下し、攪拌する。
【0074】
攪拌時間は、例えば、10秒以上60秒以下である。
【0075】
そして、このような操作を、複数回(例えば、2回以上、また、例えば、10回以下、好ましくは、7回以下)繰り返す。これにより、フェルラ酸を無機粒子に対して、より均一に分散させることができる。その結果、紫外線吸収性を向上できる。
【0076】
(第3工程)
第3工程では、アルコールおよび水を乾燥させることによりフェルラ酸含有粒子を得る。
【0077】
具体的には、真空乾燥機を用いて、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上、また、例えば、60℃以下で、例えば、12時間以上、好ましくは、18時間以上、また、例えば、48時間以下、好ましくは、36時間以下加熱して、アルコールおよび水を乾燥させる。
【0078】
これにより、フェルラ酸溶液の乾燥物(具体的には、フェルラ酸、および、必要により配合されるカルボキシル基含有化合物の塩またはポリビニルピロリドン)と無機粒子とを含むフェルラ酸含有粒子が得られる。詳しくは、フェルラ酸含有粒子において、上記乾燥物が、無機粒子に対して分散(担持)している。
【0079】
そして、このようなフェルラ酸含有粒子において、フェルラ酸の含有割合が、所定値以上であり、上記乾燥物(フェルラ酸)が、無機粒子に対して均一に分散している。そのため、紫外線吸収性に優れる。
【0080】
具体的には、後述する紫外線吸収性測定において測定されるSPF値が、例えば、15以上、好ましくは、20以上、より好ましくは、22以上、さらに好ましくは、25以上、とりわけ好ましくは、28以上、最も好ましくは、30以上、また、通常、100以下である。なお、SPF値とは、「Sun Protection Factor」の頭文字であり、紫外線のうち、UVB波を遮断する効果の程度を表す指標である。
【0081】
また、後述する紫外線吸収性測定において測定されるUVAPF値が、例えば、6以上、好ましくは、7以上、より好ましくは、8以上、さらに好ましくは、9以上、とりわけ好ましくは、10以上、また、通常、30以下である。なお、UVAPF値とは、「Ultraviolet A Protection Factor」の頭文字であり、紫外線のうち、UVA波を遮断する効果の程度を表す指標である。
【0082】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤は、上記フェルラ酸含有粒子を含む。そのため、紫外線吸収性に優れる。
【0083】
<化粧品原料>
化粧品原料は、上記フェルラ酸含有粒子を含む。そのため、紫外線吸収性に優れる。
【0084】
<作用効果>
フェルラ酸含有粒子において、フェルラ酸の含有割合が、所定値以上であり、フェルラ酸が、無機粒子に対して均一に分散している。そのため、紫外線吸収性に優れる。
【0085】
詳しくは、化粧品にフェルラ酸を配合する方法としては、フェルラ酸を無機粒子に混合したフェルラ酸含有粒子を、化粧品に配合する方法が検討される。
【0086】
しかし、無機粒子に対して、フェルラ酸を単に混合しただけでは、良好な紫外線吸収性が発現しないという不具合がある。
【0087】
一方、このフェルラ酸含有粒子では、所定量のフェルラ酸が、無機粒子に対して、均一に分散している。そのため、紫外線吸収性に優れる。
【実施例0088】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0089】
<成分の詳細>
スクリュー管瓶(20mL):マルエム社製マイティ―バイアル(No.5)
スクリュー管瓶(50mL):マルエム社製マイティ―バイアル(No.7)
ハニルミキサー:HANIL LAB.MIXER LM-110T、韓一電機株式会社製
真空低温乾燥機:VOS451-SD、冷却トラップ装置 UT-1000、ダイアフラム型真空ポンプ EVP-1200、東京理科器械株式会社製
フェルラ酸:フェルラ酸、築野ライスファインケミカルズ株式会社製、製造番号F09348
エタノール:エタノール(99.5)、試薬特級、富士フィルム和光純薬株式会社製
水:蒸留水、富士フィルム和光純薬株式会社製
乳酸Na(50%aq):乳酸ナトリウムの塩の水溶液、固形分濃度50質量%
乳酸Na(70%aq):乳酸ナトリウムの塩の水溶液、固形分濃度50質量%
シリカ(GR1):シリカ粒子、商品名「OVEIL GR1」、平均粒子径2.7μm、水澤化学工業株式会社製
シリカ(GR2):シリカ粒子、商品名「OVEIL GR2」、平均粒子径4.6μm、水澤化学工業株式会社製
【0090】
<フェルラ酸含有粒子の製造>
実施例1~実施例5および比較例1
[第1工程]
表1の配合処方に従って、スクリュー管瓶(20mL)に、フェルラ酸、エタノール、水およびカルボキシル基含有化合物の塩を加え、蓋を絞めた後、65℃の温浴下で10分間、振とうしながら加熱した。これにより、フェルラ酸を溶解し、フェルラ酸溶液を得た。
【0091】
[第2工程]
表1の配合処方に従って、ハニルミキサーに、無機粒子を加え、さらに、上記フェルラ酸溶液の一部を、滴下し、30秒撹拌した。滴下撹拌作業は、6回繰り返し、上記フェルラ酸溶液のすべてを滴下した。
【0092】
[第3工程]
真空低温乾燥機にて50℃で一晩乾燥した。これにより、アルコールおよび水を乾燥させ、フェルラ酸含有粒子を得た。
【0093】
比較例1
ハニルミキサーに、OVEIL GR1 30.0g、および、フェルラ酸粉体7.5gを加え、撹拌した後に、真空低温乾燥機にて50℃で一晩乾燥した。これにより、フェルラ酸含有粒子を得た。
【0094】
<評価>
[フェルラ酸含有粒子に対するフェルラ酸の含有割合]
各実施例および各比較例のフェルラ酸含有粒子について、フェルラ酸含有粒子に対するフェルラ酸の含有割合を、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて、以下の条件に基づいて測定した。具体的には、フェルラ酸含有粒子中のフェルラ酸をジメチルスルホキシドに溶出させ、アセトニトリルを用いて希釈し、測定に用いた。その結果を表1に示す。
{条件}
装置:株式会社島津製作所製 LC-20AD/CTO-20AC/SIL-20AC/CBM-20A/DGU-20A/SPD-M20A
カラム:株式会社レゾナック製 Shodex HILICpak VG-50 2D
【0095】
[SEM測定]
各実施例および各比較例のフェルラ酸含有粒子について、SEM測定を実施した。具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)として、日本電子株式会社製「JSM-IT100」を使用し、加速電圧15kV、WD16nmで観察した。観察に際し試験検体表面に金蒸着を実施した。その結果を図1図6に示す。実施例1(図1)および実施例4(図4)では、無機粒子の表面に堆積するフェルラ酸の結晶が観測された。その結晶の長径および短径について、図1および図4に示す。また、比較例1(図6)では、無機粒子から独立したフェルラ酸の結晶が観測された。その結晶の長径および短径について、図6に示す。また、実施例2(図2)、実施例3(図3)および実施例5(図5)では、無機粒子の表面に堆積するフェルラ酸の結晶、および、無機粒子から独立したフェルラ酸の結晶が観測されなかった。
【0096】
[均一性]
各実施例および各比較例のフェルラ酸含有粒子について、SEMに基づいて、フェルラ酸が無機粒子に均一に分散しているかどうかを、無機粒子から独立したフェルラ酸の結晶(独立結晶)および無機粒子の表面に堆積するフェルラ酸の結晶(堆積結晶)に基づいて、確認した。均一性について、以下の基準に基づいて、評価した。その結果を表1に示す。
{基準}
〇:独立結晶(少なくとも、長径が11.0μmを超過するか、または、短径が5.0μmを超過する結晶)が観測されなかった。また、堆積結晶が観測されなかった。
△:独立結晶(少なくとも、長径が11.0μmを超過するか、または、短径が5.0μmを超過する結晶)が観測されなかった。
また、少なくとも、長径が11.0μmを超過するか、または、短径が5.0μmを超過する堆積結晶は観測されなかったが、長径が11.0μm以下、かつ、短径が5.0μm以下である堆積結晶が観測された。
×:独立結晶(少なくとも、長径が11.0μmを超過するか、または、短径が5.0μmを超過する結晶)が観測された。または、少なくとも、長径が11.0μmを超過するか、または、短径が5.0μmを超過する堆積結晶が観測された。
【0097】
[紫外線吸収性]
各実施例および各比較例のフェルラ酸含有粒子について、紫外線吸収性を測定した。具体的には、厚さ1mmの仕切り用透明PET板を6.5cm×6.5cmに切り出し、その中心部を直径5cmの円形に切り抜いた。次いで、その円が隠れるように3M社製トランスポアテープサージカルテープ(1527-2)を貼った。次いで、3M社製ホワイトサージカルテープ(1534-2)を重ねてはり粘着面に20±1mgのフェルラ酸含有粒子(粉体)を均一に載せ、Labsphere社製SPFアナライザーUV-2000Sでランダムに9点、SPF値およびUVA値を測定した。その結果を表1に示す。
【0098】
[触感]
各実施例および各比較例のフェルラ酸含有粒子を、手の甲に指で塗布した際の触感について評価した。被験者5人が、下記評価基準に従って点数付けをして、その平均値を求めた。触感について、下記基準に基づいて評価した。その結果を表1に示す。なお、表1において、括弧内の数値は、平均値を示す。
{評価基準}
固い粒子は全くなかった。 2点
固い粒子が時々存在した。 1点
明らかに固い粒子が存在した。 0点
{基準}
○:平均値が、1.5点以上であった。
△:平均値が、0.5点以上、1.5点未満であった。
×:平均値が、0.5点未満であった。
【0099】
[フェイスパウダー (ルースタイプ)処方の官能評価]
各実施例および各比較例のフェルラ酸含有粒子40質量部と、マイカ(表面処理品、商品名「LL-5 MICA Y-2300」、大東化成工業株式会社製)40質量部、シリカ(OVEIL DR1、水澤化学工業株式会社製)3.5質量部、顔料級酸化チタン(表面処理品、商品名「LL-5 TiO2 CR-50」、大東化成工業株式会社製)5質量部とを、ハニルミキサー(HANIL LAB.MIXER LM-110T、韓一電機株式会社製)を用いて、1分間の乾式混合を2回実施した後、メドウフォーム油(CROPURE MEADOWFOAM、クローダジャパン株式会社製)1.5質量部を添加し、さらに1分間の混合を3回実施した。これにより、フェルラ酸含有粒子を含むフェイスパウダー(ルースタイプ)を製造した。
【0100】
得られたフェイスパウダーを、手の甲に指で塗布した際の触感について評価した。被験者5人が、下記評価基準に従って点数付けをして、その平均値を求めた。触感について、下記基準に基づいて評価した。その結果を表1に示す。なお、表1において、括弧内の数値は、平均値を示す。
{評価基準}
固い粒子は全くなかった。 2点
固い粒子が時々存在した。 1点
明らかに固い粒子が存在した。 0点
{基準}
○:平均値が、1.5点以上であった。
△:平均値が、0.5点以上、1.5点未満であった。
×:平均値が、0.5点未満であった。
【0101】
<考察>
SEM測定によれば、実施例1~実施例5では、フェルラ酸が、無機粒子に対して均一に分散しているとわかる。そのため、紫外線吸収性を向上できる。
【0102】
一方、比較例1は、無機粒子から独立したフェルラ酸の結晶が析出しており、フェルラ酸が、無機粒子に対して均一に分散していないとわかる。そのため、良好な紫外線吸収性が実現できないとわかる。
【0103】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6