(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101005
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】エンドエフェクタ、収穫ロボットおよび収穫方法
(51)【国際特許分類】
A01D 46/24 20060101AFI20250630BHJP
A01D 46/00 20060101ALI20250630BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
A01D46/24 B
A01D46/00 A
B25J5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217523
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100229736
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 剛
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 功一
(72)【発明者】
【氏名】仲田 崇志
(72)【発明者】
【氏名】今森 久弥
(72)【発明者】
【氏名】中島 諒
【テーマコード(参考)】
2B075
3C707
【Fターム(参考)】
2B075JF02
2B075JF07
2B075JF08
2B075JJ05
3C707AS22
3C707CS08
3C707EU02
3C707HS27
3C707KS01
3C707KT01
3C707KX07
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】果実をより確実に収穫できるエンドエフェクタを提供すること。
【解決手段】本発明のエンドエフェクタは、
第1剪断部(12)を有する第1剪断要素(11)と、
第2剪断部(16)を有する第2剪断要素(15)と、を備える。
第1剪断部(12)および第2剪断部(16)の一方または双方は、共通する軸線(C)を中心にして回転可能とされ、
第1剪断部(12)と第2剪断部(16)による互いに逆向きで平行な力を剪断対象に生じさせる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1剪断部を有する第1剪断要素と、
第2剪断部を有する第2剪断要素と、を備え、
前記第1剪断部および前記第2剪断部の一方または双方は、互いに共通する軸線を中心にして回転可能とされ、
前記第1剪断部と前記第2剪断部による互いに逆向きで平行な力を剪断対象に生じさせるエンドエフェクタ。
【請求項2】
前記第1剪断要素は、
終端に一対の第1接続端を有する円弧状の前記第1剪断部と、
一対の前記第1接続端のそれぞれに連なる第1伝達部と、を備え、
前記第2剪断要素は、
終端に一対の第2接続端を有する円弧状の前記第2剪断部と、
一対の前記第2接続端のそれぞれに連なる第2伝達部と、を備える、
請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
第3剪断部を有する第3剪断要素を備え、
前記第3剪断部は前記軸線を中心にして、前記第1剪断部および前記第2剪断部に対して回転可能とされる、
請求項2に記載のエンドエフェクタ。
【請求項4】
前記第3剪断要素は、
終端に一対の第3接続端を有する円弧状の前記第3剪断部と、
一対の前記第3接続端のそれぞれに連なる第3伝達部と、を備える、
請求項3に記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
前記第1剪断要素と前記第2剪断要素が互いに相似関係を有する、
請求項2に記載のエンドエフェクタ。
【請求項6】
前記第1剪断要素、前記第2剪断要素および前記第3剪断要素が互いに相似関係を有する、
請求項4に記載のエンドエフェクタ。
【請求項7】
前記第1剪断部および前記第2剪断部の一方または双方を、前記第1伝達部および前記第2伝達部の一方または双方を介して回転駆動させる第1駆動部を備える、
請求項2に記載のエンドエフェクタ。
【請求項8】
前記第1剪断部、前記第2剪断部および前記第3剪断部の少なくとも二つを、前記第1伝達部、前記第2伝達部および前記第3伝達部の少なくとも二つを介して回転駆動させる第2駆動部を備える、
請求項4に記載のエンドエフェクタ。
【請求項9】
請求項1に記載のエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタを位置調整可能に支持するとともに、任意の位置に移動可能な台車と、を備える収穫ロボット。
【請求項10】
請求項1に記載のエンドエフェクタを用いる収穫対象の収穫方法であって、
前記第1剪断要素の前記第1剪断部および前記第2剪断要素の前記第2剪断部に収穫対象に連なる剪断対象が対応するように前記エンドエフェクタの位置を調整する位置調整ステップと、
前記エンドエフェクタの位置が調整されたままで、前記第1剪断要素および前記第2剪断要素の一方または双方を回転駆動させる剪断ステップと、
を備える収穫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマトなどの果実を自動的に収穫するのに好適なエンドエフェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
労働力不足による農業への影響が懸念されている。そのために、農業の分野、例えば収穫の段階における自動化が積極的に進められている。収穫段階においては、収穫の対象である果実を見つけるセンシング技術の開発、果実を小果梗から離脱させる動作を行うエンドエフェクタ技術の開発などが報告されている。エンドエフェクタ(End Effector)技術としては、果実を離層と呼ばれる部分でもぎ取る方法で収穫することが検討されている。エンドエフェクタとは、ロボットアームの先端に取り付けられ、掴む、加工するなどの動作を行う機器と定義される。
【0003】
一例として、特許文献1は、収穫効率を向上することが可能なエンドエフェクタを備える収穫ロボットを開示する。特許文献1は、エンドエフェクタを構成する収穫リングに果実を挿通させ、かつ果実が実った果梗に補助部材を押し当てた状態で収穫リングを果実から離れる向きに直線的に移動させる。このとき、押し当てた補助部材が支点に、収穫リングの先端部が作用点となることで、収穫対象である果実の離層部の付近に剪断力が発生し、果実が小果梗から離脱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のエンドエフェクタによれば、果実を離層において自動的に分離させることができる。しかし、特許文献1のエンドエフェクタは、果実が挿通された収穫リングを果実から離れる向きに移動させている最中に、補助部材を剪断対象である小果梗に押し当てている必要がある。しかし、狙った小果梗に補助部材を押し当てるのが容易ではない。また、狙った小果梗に補助部材を押し当てられたとしても、収穫リングを移動させている最中に、この収穫リングの移動により小果梗に引張力が作用することで、押し当てていた小果梗が補助部材から逃げることがある。つまり、特許文献1のエンドエフェクタによれば、補助部材を小果梗に押し当てることが不確定要素となることから、果実の収穫をできないことが想定される。
そこで、本発明は、果実をより確実に収穫できるエンドエフェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエンドエフェクタは、
第1剪断部を有する第1剪断要素と、
第2剪断部を有する第2剪断要素と、を備える。
第1剪断部および第2剪断部の一方または双方は、互いに共通する軸線を中心にして回転可能とされ、
第1剪断部と第2剪断部による互いに逆向きで平行な力を剪断対象に生じさせる。
【0007】
第1剪断要素は、好ましくは、
終端に一対の第1接続端を有する円弧状の第1剪断部と、
一対の第1接続端のそれぞれに連なる第1伝達部と、を備える。
第2剪断要素は、好ましくは、
終端に一対の第2接続端を有する円弧状の第2剪断部と、
一対の第2接続端のそれぞれに連なる第2伝達部と、を備える。
【0008】
好ましいエンドエフェクタは、第3剪断部を有する第3剪断要素を備え、
第3剪断部は軸線を中心にして、第1剪断部および第2剪断部に対して回転可能とされる。
【0009】
第3剪断要素は、好ましくは、
終端に一対の第3接続端を有する円弧状の第3剪断部と、
一対の第3接続端のそれぞれに連なる第3伝達部と、を備える。
【0010】
第1剪断要素と第2剪断要素は、好ましくは、互いに相似関係を有する。
【0011】
第1剪断要素、第2剪断要素および第3剪断要素は、好ましくは、互いに相似関係を有する。
【0012】
好ましいエンドエフェクタは、
第1剪断部および第2剪断部の一方または双方を、第1伝達部および第2伝達部の一方または双方を介して回転駆動させる第1駆動部を備える。
【0013】
好ましいエンドエフェクタは、
第1剪断部、第2剪断部および第3剪断部の少なくとも二つを、第1伝達部、第2伝達部および第3伝達部の少なくとも二つを介して回転駆動させる第2駆動部を備える。
【0014】
本願において、以上のいずれかのエンドエフェクタを備える収穫ロボットが提供される。
この収穫ロボットは、
エンドエフェクタを位置調整可能に支持するとともに、任意の位置に移動可能な台車を備える。
【0015】
本願において、以上のいずれかのエンドエフェクタを用いる収穫対象の収穫方法が提供される。
この収穫方法は、
第1剪断要素の第1剪断部および第2剪断要素の第2剪断部に収穫対象に連なる剪断対象が対応するようにエンドエフェクタの位置を調整する位置調整ステップと、
エンドエフェクタの位置が調整されたままで、第1剪断要素および第2剪断要素の一方または双方を回転駆動させる剪断ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエンドエフェクタによれば、少なくとも二つの剪断部で小果梗を挟んで小果梗を剪断することができる。この剪断の過程において剪断対象である例えば小果梗は二つの剪断部に挟まれているので、剪断を終えるまでに小果梗が逃げるおそれがない。したがって、本発明のエンドエフェクタによれば、果実をより確実に収穫できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係るエンドエフェクタを示す平面図であって、第1剪断要素と第2剪断要素がエンドエフェクタを構成する状態を示す図、第1剪断要素を単体で示す図、第2剪断要素を単体で示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るエンドエフェクタの動作を示す平面図(FP)および正面図(FV)である。
【
図3】第1実施形態に係るエンドエフェクタの動作を果実とともに示す平面図(FP)および正面図(FV)である。
【
図4】第2実施形態に係るエンドエフェクタを示す平面図であって、第1剪断要素、第2剪断要素および第3剪断要素がエンドエフェクタを構成する状態を示す図、第1剪断要素を単体で示す図、第2剪断要素を単体で示す図および第3剪断要素を単体で示す図である。
【
図5】第2実施形態に係るエンドエフェクタの動作を示す平面図(FP)および正面図(FV)である。
【
図6】第3実施形態に係るエンドエフェクタの動作を果実とともに示す平面図(FP)および正面図(FV)である。
【
図7】駆動部を備える第1実施形態に係るエンドエフェクタを示す斜視図である。
【
図9】駆動部を備える第2実施形態に係るエンドエフェクタを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係るエンドエフェクタを説明する。
実施形態に係るエンドエフェクタは、共通する軸線を中心にして異なる向きに回転可能に構成される少なくとも二つの剪断要素を備える。このエンドエフェクタは、収穫対象、例えばトマトを収穫するときに、二つの剪断要素により剪断対象である例えば小果梗を挟んで逃げないように位置決めをして剪断できる。したがって、実施形態に係るエンドエフェクタは、果実をより確実に収穫できる。以下では、剪断対象を小果梗とし、収穫対象を果実として説明する。
以下、エンドエフェクタの剪断要素が二つの例を第1実施形態、剪断要素が三つの例を第2実施形態として説明する。そして、第1実施形態および第2実施形態として駆動部を除いた最小の要素だけのエンドエフェクタについて説明する。その後に駆動部を含むエンドエフェクタを第3実施形態として説明し、さらにエンドエンドエフェクタを備える収穫ロボットの概要を第4実施形態として説明する。
【0019】
〔第1実施形態:
図1,
図2,
図3参照〕
第1実施形態に係るエンドエフェクタ1は、
図1に示されるように、第1剪断要素11と第2剪断要素15を備える。第1剪断要素11および第2剪断要素15は、エンドエフェクタ1を構成するとき、第1剪断要素11の内側に第2剪断要素15が配置される。つまり、第1剪断要素11と第2剪断要素15は好ましい形態として、同じU字状の外観形状を有しており、互いに相似関係をなしている。なお、
図1に示されるように第1剪断要素11の内側に第2剪断要素15が配置され、かつ第1剪断要素11と第2剪断要素15とが平面方向(図面の紙面方向)に平行をなしていることを初期配列という。また、
図1において、両者の存在を明らかにするために第1剪断要素11と第2剪断要素15の間に間隔を設けている。しかし、第1剪断要素11と第2剪断要素15とが後述する動作を行うことができるのであれば、第1剪断要素11と第2剪断要素15とが互いに接していてもよい。
【0020】
[第1剪断要素11,第2剪断要素15の構成:
図1参照]
第1剪断要素11は、好ましい一例として円弧状の形状を有する第1剪断部12と、第1剪断部12の一対の第1接続端13,13のそれぞれに連なる第1伝達部14,14と、を備える。第1伝達部14は真直ぐな例を示しているが、回転駆動力を伝達できる限り他の形状であってもよい。第2伝達部18も同様である。
第2剪断要素15は、好ましい一例として円弧状の形態を有する第2剪断部16と、第2剪断部16の一対の第2接続端17,17のそれぞれに連なる真直な第2伝達部18,18と、を備える。
第1剪断要素11および第2剪断要素15において、第1剪断部12と第2剪断部16とが小果梗の位置決めおよび剪断に直に関わる部位である。この位置決めおよび剪断を行うために、第1剪断部12および第2剪断部16の一方または双方を回転させる必要がある。第1伝達部14および第2伝達部18は、この回転動作をさせるために例えば回転電機の回転駆動を、第1剪断部12および第2剪断部16に伝達する。
【0021】
第1剪断要素11と第2剪断要素15とが初期配列をなしているときに、平面方向において、第1剪断部12と第2剪断部16とが平行に対向し、第1伝達部14と第2剪断部16とが平行に対向する。初期配列をなしているときに、第1剪断要素11と第2剪断要素15は共通する軸線Cを有し、この軸線Cを中心にして回転が可能とされる。ここでいう回転とは、第1剪断要素11だけが軸線Cを中心として回転する、第2剪断要素15だけが軸線Cを中心として回転する、および、第1剪断要素11と第2剪断要素15が軸線Cを中心にして反対向きに回転する、の3つのパターンを包含する。第1剪断要素11だけが回転する場合には第2剪断要素15は静止しており、第2剪断要素15だけが回転する場合には第1剪断要素11が静止している。3つのパターンのいずれであっても、剪断対象を剪断できる。
【0022】
[第1剪断要素11,第2剪断要素15の寸法:
図1参照]
第1剪断要素11および第2剪断要素15の寸法は任意である。しかし、エンドエフェクタ1による小果梗の剪断は、寸法の小さい第2剪断要素15の内側に小果梗に連なる果実が挿入される必要がある。したがって、少なくとも第2剪断要素15の一対の18,18の間隔、つまり第2剪断部16の直径D17が収穫対象の果実の直径Dfよりも大きくする必要がある。ただし、果実の直径Dfよりも著しく大きいと、第1剪断要素11および第2剪断要素15の位置決めの機能を果たしにくくなるおそれがある。したがって、D17およびDfは以下の関係を有するのが好ましい。
Df≦D17≦1.5Df
【0023】
[第1剪断要素11,第2剪断要素15の構成材料、横断面形状:
図1参照]
第1剪断要素11および第2剪断要素15を構成する材料および横断面形状は、小果梗を位置決めしかつ剪断することができる限り、任意である。
例えば、第1剪断要素11および第2剪断要素15を金属材料から構成することができる。金属材料から構成する場合には、金属材料製の線材に曲げ加工を施すことにより第1剪断要素11および第2剪断要素15を作製することができるし、金属材料製の板材を打ち抜き加工することにより第1剪断要素11および第2剪断要素15を作製することもできる。金属材料を用いる場合、耐食性の優れるステンレス鋼を用いることが好ましい。
また、例えば、第1剪断要素11および第2剪断要素15を樹脂材料から構成することもできる。樹脂材料から構成する場合には、射出成形により第1剪断要素11および第2剪断要素15を作製することができるし、真直ぐな熱可塑性樹脂を曲げ加工することにより第1剪断要素11および第2剪断要素15を作製することもできる。
第1剪断要素11および第2剪断要素15の横断面形状は、円形、多角形などから適宜選択される。
【0024】
[第2剪断要素15の回転動作:
図2参照]
図2を参照して小果梗の剪断を行う際の第1剪断要素11と第2剪断要素15の回転動作を説明する。なお、
図2は、第1剪断要素11を実線で示すとともに第2剪断要素15を破線で示し、第1剪断要素11を回転させずに第2剪断要素15だけを回転させる例を説明する。また、
図2を参照する説明の後に、
図3を参照して小果梗の位置決め、剪断を伴う回転動作を説明する。
【0025】
エンドエフェクタ1における回転動作は第1剪断要素11と第2剪断要素15との初期配列から始まる(S01)。軸線Cを中心にして第2剪断要素15を時計回り(CW)に回転させる。そうすると、初期配列において第1剪断要素11と平面方向に平行をなしている第2剪断要素15は、第1剪断要素11と交差(S02)、第1剪断要素11と直交(S03)および第1剪断要素11と交差(S04)の各段階を経て、第1剪断要素11と平行をなす剪断配列(S05)に至る。以上のように、第2剪断要素15は第1剪断要素11に対して180°だけ回転することで、小果梗を位置決めし、かつ剪断できる。特に、第2剪断要素15が180°だけ回転するのに近づくと第1剪断要素11と第2剪断要素15とで小果梗FSを挟むことで、小果梗FSの位置決めがなされる。
【0026】
第1剪断要素11と第2剪断要素15が相似関係をなしているため、第2剪断要素15が回転動作する過程で、第1剪断要素11に衝突するといった不具合を回避できる。
【0027】
[エンドエフェクタ1による剪断動作:
図3参照]
次に
図3を参照して、小果梗FSを剪断して果実Fを収穫する手順を、第1剪断要素11と第2剪断要素15が初期配列をなしているところから説明する。ここで、実際の果実Fの収穫の際には、第1剪断要素11と第2剪断要素15とが平行な初期配列にあることが第1剪断要素11および第2剪断要素15を隣接する果実Fの間に差し入れる点で好ましい。しかし、第1剪断要素11と第2剪断要素15とが正面視して交差していても交差角が小さければ無理なく第1剪断要素11と第2剪断要素15を隣接する果実Fの間に差し入れることができる。このことは、第2実施形態によるエンドエフェクタ2おいても同様に当てはまる。
【0028】
第1剪断要素11と第2剪断要素15が初期配列にある状態で、例えば隣接する果実Fと果実Fの間に第1剪断要素11と第2剪断要素15を差し入れる。そして、小果梗FSと果実Fの境界付近に第1剪断部12と第2剪断部16が対応する第1剪断要素11と第2剪断要素15の位置を調整する(S01,位置調整ステップ)。
図3において、好ましい例として小果梗FSが第1剪断要素11と第2剪断要素15に接する形態を示しているが、小果梗FSが第1剪断要素11と第2剪断要素15から離れていてもよい。小果梗FSが第1剪断要素11と第2剪断要素15の範囲内に対応していれば、小果梗FSの剪断は可能である。位置調整がなされる間、果実Fは第2伝達部18,18の間の果実収容域19の範囲に位置している。
【0029】
第1剪断要素11と第2剪断要素15の位置調整を終えたならば、第2剪断要素15を時計回りに回転させる。第2剪断要素15が90°回転(S03)した後に第1剪断要素11と第2剪断要素15が交差すると、小果梗FSは第1剪断部12と第2剪断部16の間に挟まれる(S04)。小果梗FSは、第1剪断部12と第2剪断部16の間に挟まれることで、第1剪断部12と第2剪断部16に対して位置決めがなされる。さらに第2剪断要素15を回転させると、第1剪断部12と第2剪断部16とが平行をなすまでの間に小果梗FSは剪断される(S05)。このとき、第1剪断部12と第2剪断部16による互いに逆向きで平行な力を小果梗に生じさせて小果梗を剪断する。
【0030】
第1剪断部12と第2剪断部16とで小果梗FSを挟んで位置決めをしてから剪断するまでの間、第1剪断要素11と第2剪断要素15を定位置のままで維持することもできる。しかし、白抜き矢印で示すように、小果梗FSから果実Fを引き離す向きに移動させることもできる。そうすれば、小果梗FSにはその長手方向に張力が付与されるので、定位置のままで剪断するのに比べて、剪断に要する力が小さくても剪断を実現できる。このことは、第2実施形態においても同様に当てはまる。
【0031】
[第1実施形態が奏する効果]
<第1の効果>
第1実施形態に係るエンドエフェクタ1は、第2剪断要素15を第1剪断要素11に対して回転させることで、小果梗FSを第1剪断部12と第2剪断部16の間に挟み、挟んだ状態を維持したままで第2剪断部16を第1剪断部12に対してさらに回転させることで小果梗FSを剪断することができる。このように、エンドエフェクタ1によれば、第1剪断部12と第2剪断部16とで小果梗FSを挟んで位置決めをしかつ剪断するので、小果梗FSを確実に剪断できる。
【0032】
<第2の効果>
エンドエフェクタ1を果実Fと果実Fの間に差し入れると、果実Fは一対の第2伝達部18,18の間の果実収容域19に収容されるが、果実Fの周囲には第2剪断部16および第2伝達部18,18が存在する。したがって、エンドエフェクタ1から果実Fが抜け出るおそれがほとんどなく、この観点からもエンドエフェクタ1は小果梗FSを確実に剪断できる。
【0033】
<第3の効果>
エンドエフェクタ1を果実Fと果実Fの間に差し入れると、果実Fは一対の第2伝達部18,18の間の果実収容域19に収容される。そして、小果梗FSが剪断されるまでの間、第2剪断要素15が果実Fの周囲を回転するので、果実Fが果実収容域19から抜け出るのを阻止できる。したがって、エンドエフェクタ1は小果梗FSをより確実に剪断できる。
【0034】
<第4の効果>
エンドエフェクタ1は、第1剪断要素11と第2剪断要素15とを互いに平行な初期配列にしておけば、第1剪断部12と第2剪断部16の部分は、2~3mm程度と薄くできる。したがって、隣接する果実Fと果実Fの間に無理なく第1剪断部12と第2剪断部16の部分を差し入れることができる。したがって、エンドエフェクタ1によれば、果実Fの収穫に当たって、エンドエフェクタ1が果実Fを傷つけるおそれが小さい。
【0035】
<第5の効果>
エンドエフェクタ1は、剪断を行う第1剪断部12と第2剪断部16で小果梗FSの位置決めも兼ねるので、小果梗FSの剪断に必要な部材の数を少なくできる。
【0036】
〔第2実施形態:
図4,
図5,
図6参照〕
次に、第2実施形態に係るエンドエフェクタ2について、エンドエフェクタ1との相違点を中心にして説明する。なお、エンドエフェクタ2において、エンドエフェクタ1と同じ要素については、エンドエフェクタ1と同じ符号を付している。
【0037】
[第3剪断要素21の構成:
図4参照]
エンドエフェクタ2は、第1剪断要素11および第2剪断要素15に加えて、第3剪断要素21を備える。第3剪断要素21は、初期配列において、第2剪断要素15の内側に配置される。第3剪断要素21は、好ましい一例として円弧状の形態を有する第3剪断部22と、第3剪断部22の一対の第3接続端23,23のそれぞれに連なる真直な第3伝達部24,24と、を備える。
なお、第3剪断要素21の寸法、構成材料は、第1剪断要素11および第2剪断要素15に従えばよい。
【0038】
[第2剪断要素15,第3剪断要素21の回転動作:
図5参照]
次に、
図5を参照して第2剪断要素15と第3剪断要素21の回転動作を説明する。なお、
図5において、第1剪断要素11を実線、第2剪断要素15を破線、第3剪断要素21を一点鎖線で示し、かつ、第1剪断要素11を回転させずに第2剪断要素15および第3剪断要素21を回転させる例を説明する。
【0039】
エンドエフェクタ2においても回転動作は、第1剪断要素11、第2剪断要素15および第3剪断要素21の初期配列から始まる(S11)。軸線Cを中心にして第2剪断要素15を時計回り(CW)に回転させるとともに、第3剪断要素21を反時計回り(CCW)に回転させる。そうすると、初期配列において第1剪断要素11とそれぞれが平行をなしている第2剪断要素15と第3剪断要素21は、第1剪断要素11と交差(S12)の段階を経て、第1剪断要素11と直交をなす剪断配列(S13)に至る。
以上のように、第2剪断要素15および第3剪断要素21を第1剪断要素11に対して90°だけ回転させることで、小果梗FSを位置決めし、かつ剪断できる。特に、第2剪断要素15および第3剪断要素21が90°だけ回転するのに近づくと第1剪断要素11と第2剪断要素15とで小果梗FSを挟むことで、小果梗FSの位置決めがなされる。
なお、
図5は第2剪断要素15および第3剪断要素21の双方を180°だけ回転させる様子を示しているが、次に説明するように、小果梗FSの剪断は90°だけ回転させればよい。
【0040】
[エンドエフェクタ2による剪断動作:
図6参照]
次に
図3を参照して、小果梗FSを剪断して果実Fを収穫する手順を、第1剪断要素11、第2剪断要素15および第3剪断要素21が初期配列をなしているところから説明する。
【0041】
第1剪断要素11、第2剪断要素15および第3剪断要素21が初期配列にある状態で、隣接する果実Fの間に第1剪断要素11と第2剪断要素15を差し入れ、かつ、小果梗FSと果実Fの境界部分に第1剪断部12、第2剪断部16および第3剪断部22が接するように第1剪断要素11、第2剪断要素15および第3剪断部22の位置を調整する(S11)。
【0042】
第1剪断要素11、第2剪断要素15および第3剪断部22の位置調整を終えたならば、第2剪断要素15を時計回りに回転させるとともに第3剪断部22を反時計回りに回転させる。第2剪断要素15および第3剪断部22が90°だけ回転する直前に、小果梗FSは第1剪断部12と第2剪断部16の間に挟まれる(S12)。小果梗FSは、第2剪断部16と第3剪断部22の間に挟まれることで、第2剪断部16と第3剪断部22に対して位置決めがなされる。さらに第2剪断要素15および第3剪断要素21をそれぞれの向きに回転させると、第2剪断部16と第3剪断部22が第1剪断部12に対して直交するまでの間に小果梗FSは剪断される(S13)。
【0043】
第2剪断部16と第3剪断部22が第1剪断部12に対して直交するときの配列を剪断配列と称する。そうすると、初期配列(S11)から剪断配列(S13)に至る過程において、果実Fは周方向において第1剪断部12、第2剪断部16および第3剪断部22に取り囲まれる。正面視すると、当該過程において、果実Fはその周囲が6本の線材に取り囲まれる。
【0044】
以上で説明したの動作はあくまで一例であり、3つの剪断要素を用いて小果梗FSを剪断できる限り、その動作は任意である。以上の説明においては第2剪断要素15と第3剪断要素21とで小果梗FSを挟みかつ剪断するが、例えば第2剪断要素15および第3剪断要素21と第1剪断要素11とで小果梗FSを挟みかつ剪断することもできる。
【0045】
[第2実施形態が奏する効果]
第2実施形態によるエンドエフェクタ2によれば、第1実施形態によるエンドエフェクタ1と同様の効果が奏されるほか、以下の効果を奏する。
<第6の効果>
エンドエフェクタ2は、第1剪断要素11、第2剪断要素15および第3剪断要素21という3つのリングを用い、一例として第2剪断要素15および第3剪断要素21を第1剪断要素11に対して軸線Cを中心にして回転させる。この回転動作において、果実Fはその周囲が6本の線材に取り囲まれる。したがって、果実Fは6本の線材で取り囲まれる果実収容域19から抜け出るおそれが極めて小さく、果実Fの確実な剪断が担保される。
【0046】
〔第3実施形態:
図7,
図8,
図9,
図10参照〕
次に、
図7および
図8を参照して、第1駆動部30を備えるエンドエフェクタ1を説明する。
[第1駆動部30の全体構成]
第1駆動部30は、第1剪断要素11を保持する外側保持体31と、第2剪断要素15を保持する内側保持体33と、を備える。また、第1駆動部30は、図示が省略される回転電機を収容する筐体35と、回転電機の回転駆動力により回転する主動歯車37と、主動歯車37と噛み合い、主動歯車37の回転に追従して主動歯車37とは逆向きに回転する従動歯車39と、を備える。エンドエフェクタ1は、その他に、ロボットのアームにエンドエフェクタ1を取り付けて固定するアタッチメント36、収穫対象である果実を撮影するカメラ38などを備えることができる。
【0047】
[外側保持体31,内側保持体33]
外側保持体31は、円環状の形態をなし、筐体35に対して固定される。外側保持体31は、その径方向の両端において、第1剪断要素11の一対の第1伝達部14,14を固定、保持する。第3実施形態における外側保持体31は固定されているので、第1剪断要素11も回転駆動されずに、位置が固定される。
内側保持体33は、円柱状の形態をなし、外側保持体31の内側に配置される。内側保持体33は、回転中心が一致する従動歯車39に軸支されており、従動歯車39の回転に伴って従動歯車39と同じ向きに回転される。内側保持体33は、その径方向の両端において、第2剪断要素15の一対の第2伝達部18,18を固定、保持する。したがって、第2剪断要素15は、従動歯車39を介する主動歯車37の回転に追従して、小果梗の剪断のための回転動作がなされる。
【0048】
[第1駆動部30による効果]
第1駆動部30を備えるエンドエフェクタ1によれば、回転電機による回転駆動力を内側保持体33および第2伝達部18,18を介して第2剪断部16に伝達するという簡易な構成、動作により小果梗を剪断できる。この効果は、第2駆動部40にも同様に当てはまる。第1駆動部30は、特に、第1剪断部12を回転させることなく固定としており、第1剪断部12の回転のための機構が不要である。
【0049】
[第1駆動部30の変形例]
好ましい第1駆動部30を例示したが、種々の変形を加えることができる。例えば、外側保持体31を回転駆動させる一方、内側保持体33を回転不能としてもよいし、外側保持体31および内側保持体33の双方を回転駆動させることもできる。
また、第1駆動部30において、回転電機の回転駆動力が主動歯車37および従動歯車39を介して第2剪断要素15を回転させるが、回転電機の回転駆動力を直に内側保持体33に伝達することができる。
【0050】
第1駆動部30に用いられる回転電機は、一方の向きの回転、例えば正回転だけを行うものであってもよいし、正回転および逆回転を行うものであってもよい。なお、正回転だけを行う回転電機の場合、初期配列から例えば第2剪断要素15が180°だけ正回転すれば第1剪断要素11と平行をなし、実質的に初期配列に戻ることになる。
【0051】
次に、
図9および
図10を参照し、第2駆動部40を備えるエンドエフェクタ2を説明する。なお、第2駆動部40について、第1駆動部30と共通する要素には第1駆動部30と同じ符号が付されており、以下では第1駆動部30との相違を中心にして説明する。
【0052】
[第1剪断要素11などの支持構造]
第2駆動部40は、第1剪断要素11が筐体35に設けられる筐体保持体41に保持される。第2剪断要素15が外側保持体31に保持され、第3剪断要素21が内側保持体33に保持される。第2駆動部40においては、外側保持体31および内側保持体33の双方が回転駆動される。
【0053】
[回転駆動力伝達構造]
第2駆動部40は、外側保持体31および内側保持体33が互いに逆向きに回転駆動される。この両者の独立した回転駆動は、一例として、筐体35に収容される図示が省略されている二つの回転電機の回転駆動力に基づいている。二つの回転電機のうちの一方の回転電機により、第1駆動部30と同様に主動歯車37および従動歯車39を有する歯車列を介して外側保持体31を回転駆動させ、他方の回転電機により図示が省略される歯車列を介して内側保持体33を回転駆動させることができる。ただし、外側保持体31および内側保持体33を独立して回転駆動させるのに回転電機を二つ用いることはあくまで一例であり、歯車列、その他の機械的な要素を用いることによって、一つの回転電機により外側保持体31および内側保持体33を独立して回転駆動させることができる。
【0054】
〔第4実施形態:
図11参照〕
次に、
図11を参照してエンドエフェクタ1を備える収穫ロボット50の一例を説明する。
収穫ロボット50は、収穫対象である果実Fに対してエンドエフェクタ1を進退および昇降させる位置調整機構51と、収穫される果実Fを一時的に蓄える貯留部53と、エンドエフェクタ1で小果梗から離脱される果実Fを貯留部53まで移送する移送部55と、収穫ロボット50を必要な収穫場所に移動させる台車57と、を備える。台車57は、位置調整機構51、貯留部53および移送部55を搭載している。
位置調整機構51および台車57には、従来公知の機構を用いることができるので、それぞれの説明を割愛する。
【0055】
貯留部53は、果実Fを収容するストッカSが後述する移送部55のスロープ56の終端に配置される。ここを収容位置という。貯留部53には、複数のストッカSを段積みして待機させており、スロープ56に連なるストッカSへの果実Fの収容が規定量に達したならば、規定量に達したストッカSを運び出し、待機している空のストッカSを収容位置に移動させる。移動されたストッカSが、以後に収穫される果実Fを収容する。
【0056】
移送部55は、エンドエフェクタ1で小果梗が剪断され、落下する果実を受け止めるとともに、収容位置にあるストッカSまで下降させるスロープ56を備える。スロープ56は、上流から下流に向けて下り勾配を有しているため、駆動力を与えることなく落下した果実FがストッカSまで搬送される。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。例えば、以下の通りである。
【0058】
[剪断要素の形状]
第1剪断要素11は一対の第1伝達部14,14を備えるが、一方の第1伝達部14のみでも第1剪断部12の回転動作を確保できる。ただし、一対の第1伝達部14,14を備える方が、回転駆動力をより確実に第1剪断部12に伝えることができる。また、第1伝達部14は真直ぐな例を示したが、回転駆動力を伝達できる限り、湾曲していたり、蛇行していたりしてもよい。
【0059】
[剪断部の形状]
ほとんどの果実Fの形状が球状であることに対応して、第1剪断部12~第3剪断部22の形状は円弧状であることが好ましい。しかし、本発明における第1剪断部12と第2剪断部16の形状は円弧状に限らず、例えば多角形状をなしていてもよいし、直線状をなしていてもよい。
【0060】
[剪断部の回転]
例えば、第1実施形態に係るエンドエフェクタ1において、第1剪断要素11、第2剪断要素15および第3剪断部22を互いに逆向きに回転させれば、それぞれが90°ずつ回転した時点で小果梗FSを剪断できる。したがって、二つの第1剪断要素11、第2剪断要素15および第3剪断部22の一方のみを回転させるのに比べて、二つの第1剪断要素11、第2剪断要素15および第3剪断部22の双方を逆向きに回転させる方が、短時間で果実Fを収穫できる。
【符号の説明】
【0061】
1 エンドエフェクタ
2 エンドエフェクタ
11 第1剪断要素
12 第1剪断部
13 第1接続端
14 第1伝達部
15 第2剪断要素
16 第2剪断部
17 第2接続端
19 果実収容域
18 第2伝達部
21 第3剪断要素
22 第3剪断部
23 第3接続端
24 第3伝達部
30 第1駆動部
31 外側保持体
33 内側保持体
35 筐体
37 主動歯車
39 従動歯車
40 第2駆動部
41 筐体保持体
50 収穫ロボット
51 位置調整機構
53 貯留部
55 移送部
57 台車