(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101022
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】内燃機関の凝縮水処理方法および装置
(51)【国際特許分類】
F02B 29/04 20060101AFI20250630BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20250630BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20250630BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20250630BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20250630BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20250630BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20250630BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20250630BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20250630BHJP
B60K 6/543 20071001ALI20250630BHJP
B60L 50/10 20190101ALI20250630BHJP
【FI】
F02B29/04 P ZHV
F02D43/00 301K
F02D43/00 301H
F02D45/00 360Z
F02D29/06 D
B60K6/46
B60W10/08 900
B60W10/06 900
B60W20/15
B60W10/10 900
B60K6/543
B60L50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217562
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】尼野 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】黒川 隆之
(72)【発明者】
【氏名】八坂 賢治
(72)【発明者】
【氏名】小峠 敦朗
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
3G384
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB32
3D202CC48
3D202DD18
3D202DD22
3D202DD32
3D202DD45
3D202FF05
3G093AA06
3G093AA07
3G093AB02
3G093EA03
3G093EA09
3G093FB01
3G093FB02
3G384AA22
3G384BA02
3G384BA03
3G384CA06
3G384DA21
5H125AA01
5H125AC08
5H125BA00
5H125BD17
5H125EE31
5H125EE42
(57)【要約】
【課題】インタークーラ26に溜まる凝縮水を付加的なデバイスを要さずに処理できるようにする。
【解決手段】シリーズハイブリッド車両において発電用モータジェネレータを駆動する内燃機関2は、ターボチャージャ12を有する。過給吸気を冷却する水冷式インタークーラ26がスロットルバルブ22の下流に配置されている。インタークーラ26に凝縮水が溜まったと判定したら、最小出力相当の運転点を、通常時の第1の運転点から、当該第1の運転点よりもスロットルバルブ22開度が相対的に小さく回転速度が相対的に高い第2の運転点に変更する。スロットルバルブ22の開度縮小に伴うインタークーラ26内の絶対圧の低下により体積流量が大となり、溜まっている凝縮水が減少する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機の下流にスロットルバルブを備え、このスロットルバルブの下流にインタークーラを備えた内燃機関の凝縮水処理方法であって、
上記インタークーラに凝縮水が溜まっているか否かを判定し、
凝縮水が溜まっている場合には、内燃機関の最小出力相当の運転点を、凝縮水が溜まっていないときに用いられる第1の運転点から当該第1の運転点よりもスロットルバルブ開度が相対的に小さく回転速度が相対的に高い第2の運転点に変更する、
内燃機関の凝縮水処理方法。
【請求項2】
上記内燃機関は、シリーズハイブリッド車両において発電機を駆動する内燃機関であり、発電機の制御によって第1の運転点の回転速度と第2の運転点の回転速度とを実現する、 請求項1に記載の内燃機関の凝縮水処理方法。
【請求項3】
上記内燃機関は、無段変速機を介して車両の駆動輪を駆動する内燃機関であり、
変速比の変更によって第1の運転点の回転速度と第2の運転点の回転速度とを実現する、
請求項1に記載の内燃機関の凝縮水処理方法。
【請求項4】
上記第2の運転点は、スロットルバルブ上流側での体積流量が上記第1の運転点と等しくなるように設定される、
請求項1に記載の内燃機関の凝縮水処理方法。
【請求項5】
上記発電機の力行による内燃機関のモータリング中に、上記最小出力相当の運転点として、凝縮水が溜まっていないときは第1の運転点を用い、凝縮水が溜まっている場合は第2の運転点を用いる、
請求項2に記載の内燃機関の凝縮水処理方法。
【請求項6】
過給機の下流にスロットルバルブを備え、このスロットルバルブの下流にインタークーラを備えた内燃機関と、
この内燃機関の運転を制御するコントローラと、
を備え、
上記コントローラは、
上記インタークーラに凝縮水が溜まっているか否かを判定し、
凝縮水が溜まっている場合には、内燃機関の最小出力相当の運転点を、凝縮水が溜まっていないときに用いられる第1の運転点から当該第1の運転点よりもスロットルバルブ開度が相対的に小さく回転速度が相対的に高い第2の運転点に変更する、
内燃機関の凝縮水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の吸気を冷却するインタークーラに溜まった凝縮水を処理する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気を冷却水や外気との熱交換で冷却するインタークーラにあっては、水蒸気を含む吸気が温度低下することで、凝縮水が生じ、インタークーラ内部に溜まることがある。このようにインタークーラ内部に集まった凝縮水は、例えば内燃機関が急加速状態となったときなどに燃焼室内に過度に多く流れ込み、燃焼の悪化を招来することがある。
【0003】
特許文献1には、インタークーラの底部に集まった凝縮水を複数気筒に均等に分配するように、各気筒にそれぞれ凝縮水を導く凝縮水導入通路を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、凝縮水を複数気筒に均等に分配するに過ぎず、凝縮水をできるだけ少なくしようとするものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、過給機の下流にスロットルバルブを備え、このスロットルバルブの下流にインタークーラを備えた内燃機関の凝縮水処理方法であって、
上記インタークーラに凝縮水が溜まっているか否かを判定し、
凝縮水が溜まっている場合には、内燃機関の最小出力相当の運転点を、凝縮水が溜まっていないときに用いられる第1の運転点から当該第1の運転点よりもスロットルバルブ開度が相対的に小さく回転速度が相対的に高い第2の運転点に変更する。
【0007】
スロットルバルブ開度を小さくするとともに回転速度を高くすることで、例えば同一の吸気流量(質量流量)で比較した場合に、スロットルバルブ下流側の絶対圧が低くなり、インタークーラを流れる吸気の体積流量が増大する。そのため、インタークーラに溜まっている凝縮水が徐々に減少していく。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、最小出力相当の運転点の変更によってインタークーラ底部に集まる凝縮水の処理を図ることができ、凝縮水が燃焼室内にまとまって流れ込むことによる燃焼悪化等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】一実施例の処理の流れを示したフローチャート。
【
図4】スロットルバルブ上流の体積流量とインタークーラ内絶対圧とスロットルバルブ開度とをパラメータとして第1の運転点と第2の運転点とを示した特性図。
【
図5】スロットルバルブ上流の体積流量とインタークーラ内絶対圧とスロットルバルブ下流の体積流量とをパラメータとして第1の運転点と第2の運転点とを示した特性図。
【
図6】インタークーラを流れる体積流量とインタークーラに溜まる凝縮水との関係を示した特性図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、この発明が適用される一例としてシリーズハイブリッド車両の構成を概略的に示している。シリーズハイブリッド車両は、主に発電機として動作する発電用モータジェネレータ1と、この発電用モータジェネレータ1を電力要求に応じて駆動する発電用内燃機関として用いられる内燃機関2と、主にモータとして動作して駆動輪3を駆動する走行用モータジェネレータ4と、発電した電力を蓄えるバッテリ5と、を備えて構成されている。内燃機関2が発電用モータジェネレータ1を駆動することによって得られた電力は、図示しないインバータ装置を介してバッテリ5に蓄えられる。走行用モータジェネレータ4は、バッテリ5の電力を用いて駆動制御される。走行用モータジェネレータ4の回生時の電力は、やはり図示しないインバータ装置を介してバッテリ5に蓄えられる。
【0011】
モータジェネレータ1,4の動作やバッテリ5の充放電および内燃機関2の運転は、コントローラ6によって制御される。コントローラ6は、モータジェネレータ1,4を制御するモータコントローラ7や内燃機関2を制御するエンジンコントローラ8、バッテリ5を管理するバッテリコントローラ9など、互いに通信可能なように接続された複数のコントローラによって構成されている。コントローラ6には、図示しないアクセルペダルの開度や車速等の情報が入力される。またバッテリコントローラ9は、バッテリ5の電圧・電流に基づいてバッテリ5のSOCを求める。SOCが所定の下限レベルまで低下したときには、エンジンコントローラ8を介して内燃機関2が始動され、発電が行われる。このようなシリーズハイブリッド車両の運転モードとしては、内燃機関2の燃焼運転を伴わずにバッテリ5の電力でもって走行するEVモードと、内燃機関2の燃焼運転による発電を行いながら走行を行うHEVモードと、がある。また、バッテリ5のSOCが過剰となると、発電用モータジェネレータ1の力行によって内燃機関2を逆にモータリングすることで電力消費を図る運転モードが実行される。
【0012】
図2は、内燃機関2のシステム構成を示している。この内燃機関2は、ターボチャージャ12を備えた4ストロークサイクルの火花点火式内燃機関(いわゆるガソリン機関)であって、各シリンダ13の天井壁面に、一対の吸気弁14および一対の排気弁15が配置されているとともに、これらの吸気弁14および排気弁15に囲まれた中央部に点火プラグ16が配置されている。吸気弁14の下方には、シリンダ13内へ燃料を供給する燃料噴射弁17が設けられている。点火プラグ16の点火時期および燃料噴射弁17による燃料の噴射時期ならびに噴射量はエンジンコントローラ8によって制御される。燃焼室10は、シリンダ13内を上下に摺動するピストン11によって形成される。なお、吸気ポートへ向かって燃料を噴射するポート噴射型の構成であってもよい。
【0013】
吸気通路21には、エンジンコントローラ8からの制御信号によって開度が制御される電子制御型スロットルバルブ22が設けられている。スロットルバルブ22の上流側に、ターボチャージャ12のコンプレッサ12aが位置し、このコンプレッサ12aよりも上流に、吸入空気量を検出するエアフロメータ24およびエアクリーナ25が配設されている。また、コンプレッサ12aの吐出側と吸入側とを連通するようにリサーキュレーションバルブ27が設けられている。なお、エアフロメータ24としては、例えば、吸入空気量を質量流量として計測する熱線式エアフロメータが用いられる。
【0014】
吸気通路21のコンプレッサ12aよりも下流側に、高温高圧となった吸気を冷却するために、水冷式インタークーラ26が設けられている。特に、インタークーラ26は、スロットルバルブ22の下流側に配置されている。一実施例においては、インタークーラ26は、気筒列方向に細長く構成され、吸気コレクタと実質的に一体に構成されている。インタークーラ26には、冷却水入口通路28および冷却水出口通路29を介して冷却水が通流し、高温高圧となった吸気との熱交換がなされる。インタークーラ26に導入される冷却水の温度を検出するために、冷却水入口通路28にインタークーラ用水温センサ30が設けられている。また、インタークーラ26を通過した後の吸気の温度および吸気の圧力をそれぞれ検出するために、吸気通路21のインタークーラ26出口側に吸気温度センサ31および吸気圧力センサ32が設けられている。
【0015】
なお、インタークーラ26を流れる冷却水は、内燃機関2の本体部分のウォータジャケットを流れる冷却水系統の一部であってもよく、ウォータジャケットを流れる冷却水とは別の冷却水系統であってもよい。
【0016】
排気通路40には、ターボチャージャ12のタービン12bが位置し、その下流側に排気浄化のためのプリ触媒装置41およびメイン触媒装置42が配設されている。プリ触媒装置41はタービン12bの出口に配置されており、メイン触媒装置42は車両の床下に配置されている。排気通路40のタービン12bよりも上流側に、空燃比を検出する空燃比センサ43が配置されている。タービン12bは、過給圧を制御するために過給圧に応じて排気の一部をバイパスするウェストゲートバルブ44を備えている。ウェストゲートバルブ44は、例えば、エンジンコントローラ8によって開度が制御される電動型の構成のものが用いられている。
【0017】
また、排気通路40から吸気通路21へ排気の一部を還流する排気還流装置として、タービン12b下流側からコンプレッサ12aよりも上流側の位置に排気をEGRガスとして還流する排気還流通路45と、EGRガスを冷却する例えば水冷式のEGRガスクーラ47と、EGRガス流量(換言すればEGR率)を制御するEGRバルブ48と、を備えている。なお、タービン12b上流側からコンプレッサ12aよりも下流側の位置に排気を還流する高圧排気還流系統を付加的に備えていてもよい。
【0018】
上記エンジンコントローラ8には、上記のエアフロメータ24、インタークーラ用水温センサ30、吸気温度センサ31、吸気圧力センサ32、空燃比センサ43、のほか、機関回転速度を検出するためのクランク角センサ、ウォータジャケットを流れる冷却水の温度を検出する水温センサ、外気温を検出する外気温センサ、外気の湿度を検出する湿度センサ、等のセンサ類(いずれも図示せず)の検出信号が入力されている。エンジンコントローラ8は、これらの検出信号や他のコントローラ7,9からの要求に基づき、燃料噴射量および噴射時期、点火時期、スロットルバルブ22の開度、過給圧、等を最適に制御している。
【0019】
内燃機関2は、基本的には、バッテリ5のSOCが所定の下限SOC値まで低下したときに始動され、SOCが所定レベルまで回復すると停止する。すなわち、内燃機関2が発電用モータジェネレータ1を駆動し、発電を行う。発電した電力は走行用モータジェネレータ4によって消費され、余剰の電力は、バッテリ5に蓄えられる。また、車両の減速時や降坂時には、走行用モータジェネレータ4が回生制御され、得られた電力がバッテリ5に回収される。内燃機関2の始動は、内燃機関2に機械的に連動している発電用モータジェネレータ1の力行によって内燃機関2をモータリング(換言すればクランキング)することによって行われる。また、バッテリ5のSOCが過剰となったときには、電力消費のために、発電用モータジェネレータ1の力行によって内燃機関2のモータリングが行われる。
【0020】
次に、本発明の要部である凝縮水処理について説明する。高温高圧となった吸気を冷却するインタークーラ26においては、新気(外気)にもともと含まれている水蒸気やEGRガスに含まれている水蒸気が冷却に伴って凝縮し、凝縮水となってインタークーラ26の底部に溜まる。このように凝縮水が溜まった場合は、内燃機関2の最小出力相当の運転点が、通常使用される第1の運転点から凝縮水処理のための第2の運転点に変更される。これにより、インタークーラ26を流れる吸気の流量(体積流量)が増え、凝縮水の低減が図れる。
【0021】
図3は、エンジンコントローラ8によって実行される一実施例の凝縮水処理の処理の流れを示したフローチャートである。このフローチャートに示すルーチンは、内燃機関2の運転中に繰り返し実行される。
【0022】
最初のステップ1では、インタークーラ26内に溜まっている凝縮水量の推定を行う。例えば、外気温、外気の湿度、EGR率、インタークーラ26に導入される冷却水の温度(インタークーラ用水温センサ30の検出温度)、インタークーラ26通過後の吸気温度(吸気温度センサ31の検出温度)、インタークーラ26内部の吸気圧力(吸気圧力センサ32の検出圧力)、等の条件から単位時間当たりの凝縮水量を算出し、これを積算することによってインタークーラ26に溜まっている凝縮水量を推定する。なお、吸気の流れに伴う凝縮水減少量は、積算時に負の値として加えられる。そして、ステップ2では、この推定値を閾値と比較することによって、所定量溜まっているかどうかを判定する。
【0023】
ステップ2の判定がNOであれば、ステップ3へ進み、内燃機関2の最小出力相当の運転点として通常時用の第1の運転点とする。
【0024】
ステップ1の判定がYESであれば、ステップ4へ進み、内燃機関2の最小出力相当の運転点として凝縮水処理のための第2の運転点とする。
【0025】
シリーズハイブリッド車両の内燃機関2は、上述したように車両側からの発電要求があると運転(燃焼運転)されるが、この発電要求に応じて発電を行う際は、基本的に、燃料消費率が最良となるように要求出力毎に予め設定された所定の運転点(トルクと回転速度の組み合わせ)で内燃機関2が運転される。これに対し、バッテリ5のSOCが十分にあって発電は不要ではあるが内燃機関2の燃焼運転を継続すべき状況が存在し、この場合に、内燃機関2は、エンジンコントローラ8によって最小出力でもって運転される。つまり、上述した最小出力相当の運転点で運転される。
【0026】
図4は、内燃機関2の吸気系におけるスロットルバルブ22上流の体積流量(エアフロメータ24が検出する吸入空気量に実質的に相当する)とインタークーラ26内の絶対圧とスロットルバルブ22開度との相関を示した特性図である。スロットルバルブ22開度は等高線状に示されており、図の左側ほど開度が小さい。なお、図中で最も大きい開度が5°程度である。この
図4に丸印で示す第1の運転点P1が、通常時の最小出力相当の運転点である。これは一般的な内燃機関のアイドル運転点に類似した運転点であり、スロットルバルブ22の開度は小さく(例えば5°以下)、回転速度は比較的低い(例えば1000rpm以下)。また、インタークーラ26内の圧力は負圧である。これにより、燃焼運転であれば、最小限の出力となる。モータリングの場合でも、通常時は、最小出力相当の運転点として、第1の運転点P1が用いられる。
【0027】
凝縮水が所定量溜まっている場合は、
図4において三角印で示す第2の運転点P2に変更される。第2の運転点P2は、第1の運転点P1よりもスロットルバルブ22の開度が相対的に小さくかつ回転速度が相対的に高い運転点として設定される。第2の運転点P2は、スロットルバルブ22上流の体積流量が第1の運転点P1と等しくなるように設定される。従って、燃焼運転であれば、両者の出力は等しいものとなる。第2の運転点P2では、スロットルバルブ22の開度が小さいことから、第1の運転点P1に比較して、インタークーラ26内の絶対圧が低くなる。なお、発電用モータジェネレータ1の制御によって第1の運転点P1および第2の運転点P2の各々の回転速度が実現される。
【0028】
図5は、スロットルバルブ22上流の体積流量とインタークーラ26内の絶対圧とスロットルバルブ22下流の体積流量との相関を示した特性図である。スロットルバルブ22下流の体積流量は等高線状に示されており、図の右下ほど大である。
図4と同じく、図中の丸印が第1の運転点P1を、三角印が第2の運転点P2を、それぞれ示している。第1の運転点P1に比較して第2の運転点P2では、インタークーラ26内の絶対圧が低くなる。その結果、第1の運転点P1に比較して第2の運転点P2の方がスロットルバルブ22下流の体積流量が大となる。
【0029】
図6は、スロットルバルブ22の下流に位置するインタークーラ26を流れる吸気の体積流量とインタークーラ26に溜まる凝縮水との関係を示した特性図である。やはり、丸印が第1の運転点P1を、三角印が第2の運転点P2を、それぞれ示している。第1の運転点P1に比較して第2の運転点P2では、インタークーラ26を流れる吸気の体積流量が大となることで、インタークーラ26内に溜まる凝縮水量が少なくなる。従って、凝縮水量が所定量に達したときに最小出力相当の運転点として第1の運転点P1から第2の運転点P2へ変更することで、溜まっていた凝縮水が徐々に少なくなっていく。
【0030】
例えば、前述したようにバッテリ5のSOCが十分にあって発電は不要ではあるが内燃機関2の燃焼運転を継続すべき状況においては、内燃機関2が最小出力相当の運転点で運転される。このとき、凝縮水量が多い場合は、第2の運転点P2が選択されるので、凝縮水が徐々に減少していく。最小出力相当の吸気量でのモータリングの場合も同様であり、凝縮水量が多い場合は、第2の運転点P2が選択されるので、凝縮水が徐々に減少していく。凝縮水量が所定量を下回れば、前述した
図3のステップ2,3の処理により、第1の運転点P1に戻る。
【0031】
なお、前述したように、発電用モータジェネレータ1を駆動して発電を行う場合は、要求出力に対し最良燃費点となる運転点で内燃機関2が運転されるが、この最良燃費点となる運転点は、
図4,
図5の範囲外にある。例えば、最良燃費点となる運転点で発電を行っている状態から発電が実質的に不要となって最小出力相当の運転点に移行する際に、凝縮水が少なければ第1の運転点P1に移行し、凝縮水が多ければ第2の運転点P2に移行することとなる。
【0032】
このように、上記実施例によれば、凝縮水処理のための付加的なデバイスを要さずに、スロットルバルブ22の開度縮小および回転速度上昇を伴う運転点の変更のみでインタークーラ26内部の凝縮水を処理することができる。
【0033】
また、凝縮水が多く溜まっていない状況では、スロットルバルブ22の開度が第2の運転点P2よりも相対的に大きい第1の運転点P1で運転されるので、スロットルバルブ22下流側の過度の圧力低下(負圧の発達)に伴う種々の不利益を回避することができる。
【0034】
以上、この発明の一実施例を説明したが、この発明は上記実施例に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、燃焼運転とモータリングのいずれか一方のみで上述した運転点の変更による凝縮水処理を行うようにしてもよい。また、燃焼運転とモータリングの双方で上述した運転点の変更による凝縮水処理を行う場合に、最小出力相当の運転点における吸入空気量(スロットルバルブ22上流の体積流量)がそれぞれ異なっていてもよい。
【0035】
また、本発明は、シリーズハイブリッド車両以外のハイブリッド車両の内燃機関にも適用可能であり、さらには、車両の走行駆動源として用いられる内燃機関にも適用することができる。例えば、惰性走行時の運転点を上述したように第1の運転点P1から第2の運転点P2に変更すればよく、無段変速機を具備した車両であれば、変速比の変更によって回転速度の変更が可能である。あるいは、アイドル運転時のスロットルバルブ開度およびアイドル回転速度を変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…発電用モータジェネレータ
2…内燃機関
5…バッテリ
6…コントローラ
8…エンジンコントローラ
12…ターボチャージャ
21…吸気通路
22…スロットルバルブ
24…エアフロメータ
26…インタークーラ