(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101026
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 41/12 20060101AFI20250630BHJP
A01D 41/127 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
A01D41/12 D
A01D41/12 B
A01D41/127
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217567
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 弘喜
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 成祥
(72)【発明者】
【氏名】加茂田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 鷹人
(72)【発明者】
【氏名】指原 宏彦
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 健豪
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】板山 真
(72)【発明者】
【氏名】五島 一実
(72)【発明者】
【氏名】西崎 宏
(72)【発明者】
【氏名】西山 洋平
【テーマコード(参考)】
2B074
【Fターム(参考)】
2B074AA05
2B074AB01
2B074AC02
2B074AF02
2B074AG01
2B074EA01
2B074EA05
2B074EB01
2B074EB05
2B074ED01
2B074EE05
(57)【要約】
【課題】刈取装置に絡み付く穀稈を抑制することができるコンバインを提供する。
【解決手段】エンジン(E)が搭載された機体フレーム(1)の下側に圃場を走行する走行装置(2)を設け、機体フレーム(1)の前側に穀稈を刈取る刈取装置(3)を設け、刈取装置(3)の後方左側に刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置(4)を設け、刈取装置(3)の後方右側に作業者が搭乗する操縦部(5)を設け、操縦部(5)の後側に穀粒を貯留するグレンタンク(7)を設けたコンバインにおいて、刈取装置(3)の引起装置(3A)の前側の第1撮影画像(75)の穀稈の絡み率が、予め設定した絡み率以下の場合には、走行装置(2)の走行速度を減速し、引起装置(3A)の搬送速度を減速して、予め設定した絡み率を超える場合には、走行装置(2)の走行を停止するコントローラ(50)を設けた。
【選択図】
図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)が搭載された機体フレーム(1)の下側に圃場を走行する走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に穀稈を刈取る刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方左側に刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の後方右側に作業者が搭乗する操縦部(5)を設け、該操縦部(5)の後側に穀粒を貯留するグレンタンク(7)を設けたコンバインにおいて、
前記刈取装置(3)の引起装置(3A)の前側の第1撮影画像(75)の穀稈の絡み率が、予め設定した絡み率以下の場合には、前記走行装置(2)の走行速度を減速し、前記引起装置(3A)の搬送速度を減速して、予め設定した絡み率を超える場合には、前記走行装置(2)の走行を停止するコントローラ(50)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記コントローラ(50)は、前記第1撮影画像(75)よりも前方の第2撮影画像(70)の穀稈の倒伏率が、予め設定した倒伏率以下の場合には、前記走行装置(2)の走行速度を減速し、前記引起装置(3A)の搬送速度を増速して、予め設定した倒伏率を超える場合には、前記走行装置(2)の走行を停止する請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記コントローラ(50)は、前記第2撮影画像(70)に障害物が撮影された場合には、前記走行装置(2)の走行を停止する請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記グレンタンク(7)の穀粒を外部に排出する排出オーガ(8)を設け、
該排出オーガ(8)の前部の排出装置(8A)に右壁に、前記第1撮影画像(75)を撮影する第1カメラ(11B)と、前記第2撮影画像(70)を撮影する第2カメラ(11A)を設けた請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項5】
前記引起装置(3A)の上部を覆うカバー(10)に、前記第1撮影画像(75)を撮影する第1カメラ(11B)と、前記第2撮影画像(70)を撮影する第2カメラ(11A)を設けた請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項6】
前記エンジン(E)と刈取装置(3)の伝動経路の間に、前記エンジン(E)の出力回転速度の増減速と出力回転方向を切替える刈取用無段変速装置(23)を設け、
前記刈取装置(3)の搬送装置(3C)に穀稈の滞留を検出する第1穀稈センサ(15)を設け、
前記コントローラ(50)は、前記第1穀稈センサ(15)が穀稈の滞留を検出した場合には、前記刈取用無段変速装置(23)を介して刈取装置(3)の駆動方向を逆さ方向に切替えた後に、前記刈取装置(3)の駆動を停止し、次に前記エンジン(E)の駆動を停止する請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項7】
前記エンジン(E)と刈取装置(3)の伝動経路の間に、前記エンジン(E)の出力回転速度の増減速と出力回転方向を切替える刈取用無段変速装置(23)を設け、
前記刈取装置(3)の搬送装置(3C)に穀稈の滞留を検出する第1穀稈センサ(15)を設け、
前記コントローラ(50)は、前記第1穀稈センサ(15)が穀稈の滞留を検出した場合には、前記刈取用無段変速装置(23)を介して刈取装置(3)の駆動方向を逆さ方向に切替えた後に、前記走行装置(2)の走行と刈取装置(3)の駆動を停止し、次に前記エンジン(E)の駆動を停止する請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項8】
前記引起装置(3A)に穀稈を検出する第2穀稈センサ(13)を設け、
前記コントローラ(50)は、前記コンバインを自動走行させる自動操縦スイッチ(55)が押下され、前記第2穀稈センサ(13)が穀稈を検出しない場合には、前記操縦部(5)のブザー(5A)を鳴らした後、前記自動操縦スイッチ(55)の押下が継続される場合には、前記走行装置(2)の走行を停止する請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項9】
前記コントローラ(50)は、前記走行装置(2)のブレーキ(2A)を操作して、前記刈取装置(3)の分草体(3D)の前後方向に延在する仮想線と、前記圃場におけるコンバインの進行方向に延在する畦の交差角度を小さくする構成とした請求項1又は2記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の穀稈を収穫するコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、予め設定された設定経路に沿ってコンバインを自動走行させる技術が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、コンバインの穀稈を刈取る刈取装置に多くの穀稈が絡み付いた場合には、コンバインの自動走行を停止して絡み付いた穀稈を取除くのに長い時間が係るという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、刈取装置に絡み付く穀稈を抑制することができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、エンジン(E)が搭載された機体フレーム(1)の下側に圃場を走行する走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に穀稈を刈取る刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方左側に刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の後方右側に作業者が搭乗する操縦部(5)を設け、該操縦部(5)の後側に穀粒を貯留するグレンタンク(7)を設けたコンバインにおいて、
前記刈取装置(3)の引起装置(3A)の前側の第1撮影画像(75)の穀稈の絡み率が、予め設定した絡み率以下の場合には、前記走行装置(2)の走行速度を減速し、前記引起装置(3A)の搬送速度を減速して、予め設定した絡み率を超える場合には、前記走行装置(2)の走行を停止するコントローラ(50)を設けたことを特徴とするコンバインである。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記コントローラ(50)は、前記第1撮影画像(75)よりも前方の第2撮影画像(70)の穀稈の倒伏率が、予め設定した倒伏率以下の場合には、前記走行装置(2)の走行速度を減速し、前記引起装置(3A)の搬送速度を増速して、予め設定した倒伏率を超える場合には、前記走行装置(2)の走行を停止する請求項1記載のコンバインである。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記コントローラ(50)は、前記第2撮影画像(70)に障害物が撮影された場合には、前記走行装置(2)の走行を停止する請求項1又は2記載のコンバインである。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記グレンタンク(7)の穀粒を外部に排出する排出オーガ(8)を設け、該排出オーガ(8)の前部の排出装置(8A)に右壁に、前記第1撮影画像(75)を撮影する第1カメラ(11B)と、前記第2撮影画像(70)を撮影する第2カメラ(11A)を設けた請求項1又は2記載のコンバインである。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記引起装置(3A)の上部を覆うカバー(10)に、前記第1撮影画像(75)を撮影する第1カメラ(11B)と、前記第2撮影画像(70)を撮影する第2カメラ(11A)を設けた請求項1又は2記載のコンバインである。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記エンジン(E)と刈取装置(3)の伝動経路の間に、前記エンジン(E)の出力回転速度の増減速と出力回転方向を切替える刈取用無段変速装置(23)を設け、前記刈取装置(3)の搬送装置(3C)に穀稈の滞留を検出する第1穀稈センサ(15)を設け、前記コントローラ(50)は、前記第1穀稈センサ(15)が穀稈の滞留を検出した場合には、前記刈取用無段変速装置(23)を介して刈取装置(3)の駆動方向を逆さ方向に切替えた後に、前記刈取装置(3)の駆動を停止し、次に前記エンジン(E)の駆動を停止する請求項1又は2記載のコンバインである。
【0012】
請求項7記載の発明は、前記エンジン(E)と刈取装置(3)の伝動経路の間に、前記エンジン(E)の出力回転速度の増減速と出力回転方向を切替える刈取用無段変速装置(23)を設け、前記刈取装置(3)の搬送装置(3C)に穀稈の滞留を検出する第1穀稈センサ(15)を設け、前記コントローラ(50)は、前記第1穀稈センサ(15)が穀稈の滞留を検出した場合には、前記刈取用無段変速装置(23)を介して刈取装置(3)の駆動方向を逆さ方向に切替えた後に、前記走行装置(2)の走行と刈取装置(3)の駆動を停止し、次に前記エンジン(E)の駆動を停止する請求項1又は2記載のコンバインである。
【0013】
請求項8記載の発明は、前記引起装置(3A)に穀稈を検出する第2穀稈センサ(13)を設け、前記コントローラ(50)は、前記コンバインを自動走行させる自動操縦スイッチ(55)が押下され、前記第2穀稈センサ(13)が穀稈を検出しない場合には、前記操縦部(5)のブザー(5A)を鳴らした後、前記自動操縦スイッチ(55)の押下が継続される場合には、前記走行装置(2)の走行を停止する請求項1又は2記載のコンバインである。
【0014】
請求項9記載の発明は、前記コントローラ(50)は、前記走行装置(2)のブレーキ(2A)を操作して、前記刈取装置(3)の分草体(3D)の前後方向に延在する仮想線と、前記圃場におけるコンバインの進行方向に延在する畦の交差角度を小さくする構成とした請求項1又は2記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、刈取装置(3)の引起装置(3A)の前側の第1撮影画像(75)の穀稈の絡み率が、予め設定した絡み率以下の場合には、走行装置(2)の走行速度を減速し、引起装置(3A)の搬送速度を減速して、予め設定した絡み率を超える場合には、走行装置(2)の走行を停止するコントローラ(50)を設けたので、引起装置(3A)に絡み付く穀稈を抑制し、穀稈を効率良く引起こして脱穀装置(4)に搬送することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、コントローラ(50)は、第1撮影画像(75)よりも前方の第2撮影画像(70)の穀稈の倒伏率が、予め設定した倒伏率以下の場合には、走行装置(2)の走行速度を減速し、引起装置(3A)の搬送速度を増速して、予め設定した倒伏率を超える場合には、走行装置(2)の走行を停止するので、引起装置(3A)で穀稈をより効率良く引起こし脱穀装置(4)に搬送することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、コントローラ(50)は、第2撮影画像(70)に障害物が撮影された場合には、走行装置(2)の走行を停止するので、障害物との接触を防止して、刈取作業を安全に行うことができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、グレンタンク(7)の穀粒を外部に排出する排出オーガ(8)を設け、排出オーガ(8)の前部の排出装置(8A)に右壁に、第1撮影画像(75)を撮影する第1カメラ(11B)と、第2撮影画像(70)を撮影する第2カメラ(11A)を設けたので、第1撮影画像(75)の穀稈の絡み率と第2撮影画像(70)の穀稈の倒伏率を正確に撮影することができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、引起装置(3A)の上部を覆うカバー(10)に、第1撮影画像(75)を撮影する第1カメラ(11B)と、第2撮影画像(70)を撮影する第2カメラ(11A)を設けたので、第1撮影画像(75)の穀稈の絡み率と第2撮影画像(70)の穀稈の倒伏率を正確に撮影することができる。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、エンジン(E)と刈取装置(3)の伝動経路の間に、エンジン(E)の出力回転速度の増減速と出力回転方向を切替える刈取用無段変速装置(23)を設け、刈取装置(3)の搬送装置(3C)に穀稈の滞留を検出する第1穀稈センサ(15)を設け、コントローラ(50)は、第1穀稈センサ(15)が穀稈の滞留を検出した場合には、刈取用無段変速装置(23)を介して刈取装置(3)の駆動方向を逆さ方向に切替えた後に、刈取装置(3)の駆動を停止し、次にエンジン(E)の駆動を停止するので、搬送装置(3C)上に滞留した穀稈を容易、且つ、安全に取り除くことができる。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、エンジン(E)と刈取装置(3)の伝動経路の間に、エンジン(E)の出力回転速度の増減速と出力回転方向を切替える刈取用無段変速装置(23)を設け、刈取装置(3)の搬送装置(3C)に穀稈の滞留を検出する第1穀稈センサ(15)を設け、コントローラ(50)は、第1穀稈センサ(15)が穀稈の滞留を検出した場合には、刈取用無段変速装置(23)を介して刈取装置(3)の駆動方向を逆さ方向に切替えた後に、走行装置(2)の走行と刈取装置(3)の駆動を停止し、次にエンジン(E)の駆動を停止するので、搬送装置(3C)上に滞留した穀稈を容易、且つ、安全に取り除くことができる。
【0022】
請求項8記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、引起装置(3A)に穀稈を検出する第2穀稈センサ(13)を設け、コントローラ(50)は、コンバインを自動走行させる自動操縦スイッチ(55)が押下され、第2穀稈センサ(13)が穀稈を検出しない場合には、操縦部(5)のブザー(5A)を鳴らした後、自動操縦スイッチ(55)の押下が継続される場合には、走行装置(2)の走行を停止するので、コンバインが圃場の畦に衝突するのを防止することができる。
【0023】
請求項9記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、コントローラ(50)は、走行装置(2)のブレーキ(2A)を操作して、刈取装置(3)の分草体(3D)の前後方向に延在する仮想線と、圃場におけるコンバインの進行方向に延在する畦の交差角度を小さくする構成としたので、圃場の畦に沿ってコンバインを簡易に走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図6】コンバインが自動走行する基準経路と設定経路の説明図である。
【
図8】1台のカメラを排出オーガの前部に設けた説明図である。
【
図9】1台のカメラをキャビンの前部に設けた説明図である。
【
図10】
図8のカメラの撮影画像の撮影部位の説明図である。
【
図11】
図9のカメラの撮影画像の撮影部位の説明図である。
【
図12】2台のカメラを排出オーガの前部に設けた説明図である。
【
図13】2台のカメラをキャビンの前部に設けた説明図である。
【
図14】コンバインのコントローラとサーバのコントローラの接続図である。
【
図15】コンバインが設定経路上を自動走行している場合の穀稈情報と絡み情報の比較方法の説明図である。
【
図18】コンバインが設定経路の右側を自動走行している場合の穀稈情報と絡み情報の比較方法の説明図である。
【
図19】コンバインが設定経路の左側を自動走行している場合の穀稈情報と絡み情報の比較方法の説明図である。
【
図20】コンバインの自動走行方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1,2に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に圃場面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を刈取る刈取装置3が設けられ、刈取装置3の後方左側に刈取られた穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側に作業者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0026】
操縦部5の下側にはエンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7の後側には穀粒を外部に排出する上下方向に延在する揚穀部と前後方向に延在する横排出からなる排出オーガ8が設けられている。
【0027】
刈取装置3は、圃場の穀稈を引起す引起装置3Aと、引起こされた穀稈の株元を切断する切断装置3Bと、株元が切断された穀稈を脱穀装置4に搬送する搬送装置3Cと、圃場の穀稈を引起装置3Aに案内する分草体3Dから形成されている。
【0028】
引起装置3Aの上部を覆うカバー10の左右方向の左部には、コンバインの進行方向の前方に位置する圃場に植立された穀稈を撮影するカメラ11が設けられている。
【0029】
図3に示すように、エンジンEの出力回転は、油圧式の走行用無段変速装置20に伝動され走行用無段変速装置20内で増減速され、走行用無段変速装置20で増減速された出力回転は、トランスミッション21に伝動されトランスミッション21内で増減速された後に走行装置2に伝動される。
【0030】
エンジンEの出力回転は、刈取クラッチ22を介して油圧式の刈取用無段変速装置23に伝動され刈取用無段変速装置23内で増減速された後に刈取装置3に伝動される。また、エンジンEの出力回転は、脱穀クラッチ24を介して脱穀装置4に伝動される。
【0031】
図1,2に示すように、操縦部5の座席の前側のフロントパネルの中央部には走行装置2の走行速度等を表示するタッチパネル式のモニタ30が設けられ、モニタ30の右側には走行装置2の左右方向の旋回や刈取装置3を上下方向の昇降を操作する操作レバー31が設けられている。また、操作レバー31の操作姿勢は、操作レバー31の基部に装着されたポテンションメータ等の角度センサによって検出されている。
【0032】
モニタ30と操作レバー31の間には、後述する直線状の基準経路61に沿って走行装置2を自動走行させる直線アシストスイッチ32が設けられている。
【0033】
操縦部5の座席の左側のサイドパネルの前部には走行用無段変速装置20を操作する主変速レバー35が設けられ、主変速レバー35の後方左側には、トランスミッション21を操作する副変速レバー36が設けられ、副変速レバー36の後方右側には、刈取クラッチ22と脱穀クラッチ24を操作する刈脱レバー27が設けられている。また、主変速レバー35の側部には、刈取用無段変速装置23を操作する変速スイッチ38が設けられている。また、主変速レバー35の操作姿勢は、主変速レバー35の基部に装着されたポテンションメータ等の角度センサによって検出され、副変速レバー36の操作姿勢は、副変速レバー36の基部に装着されたポテンションメータ等の角度センサによって検出され、刈脱レバー37の操作姿勢は、刈脱レバー37の基部に装着されたポテンションメータ等の角度センサによって検出されている。
【0034】
エンジンEの出力回転が規定回転数以下の場合には、主変速レバー35を操作に関わらず走行用無段変速装置20内での増速は規制される。これにより、過負荷によってエンジンEが緊急停止するのを防止することができる。また、この場合には、操縦部5のブザー5A等を作動させて作業者に増速が規制中であること認識させるのが好ましい。また、刈取作業のシーンに応じてエンジンEの出力回転を自動的に調整するスイッチ(図示省略)が押下されている場合には走行用無段変速装置20内での増速は規制されない。
【0035】
操縦部5のフロアにおける前側左部にはトランスミッション21のブレーキを作動させて走行装置2の走行を停止する駐車ブレーキ39Aが設けられ、前側右部には枕刈りの畦際で刈取装置3を駆動させる掻込みペダル39Bが設けられている。
【0036】
グレンタンク7の上部には貯留された穀粒が満杯になったことを検出する満杯センサ7Aが装着されている。
【0037】
図4に示すように、RTK-GPS測位方式やデファレンシャル測位方式である測位ユニット40は、複数の測位衛星41A~41Dと、既知の位置に設けられた基地局42と、コンバインに設けられた移動局46から形成されている。これにより、複数の測位衛星41A~41Dから発信される測位用信号を、基地局42と移動局46に配置したGNSS受信機で受信・測位し、移動局46では基地局42からの補正信号を活用した高精度測位の実施により、コンバインの走行位置を正確に得ることができる。
【0038】
基地局42は、固定用の通信機43と、測位衛星41からの位置情報を受信する固定用のGPSアンテナ44と、移動局46に補正用の位置情報を送信する固定用のデータ送信アンテナ45から形成されている。また、基地局42にはサーバ42Aが配置されている。
【0039】
移動局46は、移動用の通信機47と、測位衛星41からの位置情報を受信する移動用のGPSアンテナ48と、基地局42からの補正用の位置情報を受信する移動用のデータ送信アンテナ49から形成されている。
【0040】
図5に示すように、コンバインのコントローラ50は、CPU等からなる処理部51と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部52と、入出力インターフェース回路を有する入出力部53と、クラウドを介してサーバ42Aの通信部84と情報の送受信を行う通信部54から形成されている。
【0041】
入出力部53の入力側には、グレンタンク7に貯留された穀粒が満杯になったことを検出する満杯センサ7Aと、穀稈の穀稈情報や引起装置3Aに絡まる穀稈の絡み情報を撮影するカメラ11と、引起装置3Aで引起こされている穀稈を検出する穀稈センサ(請求項の「第2穀稈センサ」)13と、搬送装置3Cに詰まっている穀稈を検出する穀稈センサ15と、分草体3Dと畦を撮影するカメラ17と、後述する基準経路61や設定経路65に沿ってコンバインを自動走行させる直線アシストスイッチ32と、第1基準点62の設定を行う第1基準点設定スイッチ33Aと、第2基準点63の設定を行う第2基準点設定スイッチ33Bと、第3基準点64の設定を行う第3基準点設定スイッチ33Cと、複数の測位衛星41A~41Dから発信される測位用信号を受信するGPSアンテナ48と、基地局42からの補正信号を受信するデータ送信アンテナ49が所定の入力インターフェース回路を介して接続されている。
【0042】
入出力部53の出力側には、走行装置2の左右一対のクローラを制動するブレーキ2Aと、作業者に警報を行うブザー5Aと、走行用無段変速装置20の出力回転の増減速を行うモータ20Aと、トランスミッション21の出力回転の増減速を行うモータ21Aと、刈取用無段変速装置23の出力回転の増減速を行うモータ23Aと、基準経路61や設定経路65に沿ってコンバインを自動走行させる自動操縦スイッチ55が所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
【0043】
図6に示すように、圃場60の左部に設定された上下方向に延在する基準経路61は、搬入場所60Aの下側に設けられた第1基準点62と、第1基準点62の走行方向の下側に位置する第2基準点63を通る直線を上下方向に延在して設定される。なお、コンバインが搬入場所60Aに到達した時からコントローラ50は測位衛星41A~41Dからの位置情報を受信する。
【0044】
第1基準点62の位置は、作業者がモニタ30に表示される第1基準点設定スイッチ33Aを押下すると、コントローラ50の処理部51が、その押下時に送信されてくる測位衛星41A~41Dと基地局42から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいて算出した後に記憶部52に保存される。
【0045】
第2基準点63の位置は、作業者がモニタ30に表示される第2基準点設定スイッチ33Bを入力操作すると、処理部51が、その入力操作時に送信されてくる測位衛星41A~41Dと基地局42から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいて算出した後に記憶部52に保存される。
【0046】
第3基準点64の位置は、作業者がモニタ30に表示される第3基準点設定スイッチ33Cを入力操作すると、処理部51が、その入力操作時に送信されてくる測位衛星41A~41Dと基地局42から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいて算出した後に記憶部52に保存される。
【0047】
基準経路61は、第1基準点62と第2基準点63を通る上下方向に延在した直線における第1基準点62と第3基準点64の間に位置する部位である。
【0048】
設定経路65は、基準経路61を刈取装置3の左右方向の刈幅だけ右側に移動して設定される
【0049】
基準経路61における第1基準点62と第2基準点63の間の経路では、作業者がコンバインを手動操舵して手動走行させる。また、基準経路61における第2基準点63と第3基準点64の間の経路では、作業者が直線アシストスイッチ32を押下した後に処理部51がコンバインを自動操舵して基準経路61に沿って自動走行させる。これにより、コンバインの蛇行走行を抑制して、コンバインの蛇行走行による隣接する条に植立された穀稈を踏み倒すのを防止することができる。
【0050】
コンバインが第3基準点64に到達した場合には、作業者は、操作レバー31を操作しコンバインを下方左側から上方右側に向かって略半円弧状に旋回させて、コンバインを基準経路61の第3基準点64から離脱させた後に、コンバインを基準経路61の右側に設定された設定経路65の下端部に移動させる。これにより、直線アシストスイッチ32の入力は解除されて、処理部51の自動操舵から作業者の手動操舵に切替わる。
【0051】
作業者は、コンバインを設定経路65の下端部に移動させた後に、直線アシストスイッチ32を押下すると処理部51がコンバインを自動操舵して設定経路65に沿って自動走行させる。これにより、コンバインの蛇行走行を抑制して、コンバインの蛇行走行による隣接する条に植立された穀稈を踏み倒すのを防止することができる。
【0052】
グレンタンク7に装着された満杯センサ7Aによって穀粒が満杯になった場合には、自動走行を停止して、作業者が手動操舵してコンバインを圃場60に設けられた排出場所66に手動走行させる。
【0053】
刈取装置3の引起装置3Aの左部と右部には、引起装置3Aで引起こされている穀稈を検出する穀稈センサ13が設けられている。コントローラ50の処理部51は、コンバインの自動走行中に穀稈センサ13が穀稈を検出せずに穀稈センサ13からの入力信号がOFFになった場合には、操縦部5のブザー5Aを作動させる。これにより、コンバインが圃場周辺の畦に接近していることを作業者に認識させてコンバインが畦に衝突するのを防止することができる。
【0054】
処理部51は、作業者が主変速レバー35を操作して走行用無段変速装置20等を介して走行装置2を停止させた場合には、ブザー5Aの作動を停止し、走行装置2を停止させない場合には、ブザー5Aの作動を継続する。また、走行装置2を停止させた後に、穀稈センサ13からの入力信号がOFFにも関わらず直線アシストスイッチ32が押下された場合には、再び操縦部5のブザー5Aを作動させる。これにより、コンバインが圃場周辺の畦に接近していることを作業者に認識させてコンバインが畦に衝突するのをより防止することができる。
【0055】
図7に示すように、理解を容易にするために、コンバインが、基準経路61上と、基準経路61から数えて1,2,4本目の設定経路65上を自動走行(以下、ケース1という。)し、基準経路61から数えて3本目の設定経路65の右側を自動走行(以下、ケース2という。)し、基準経路61から数えて5本目の設定経路65の左側を自動走行(以下、ケース3という。)した場合について説明する。
【0056】
(ケース1の穀稈情報と絡み情報の比較方法)
コンバインの自動走行中に、コントローラ50の処理部51は、コンバインの位置情報と、カメラ11で撮影された撮影画像(請求項の「第2撮影画像」)70と撮影画像(請求項の「第1撮影画像」)75をクラウドを介してサーバ42Aに送信する。
【0057】
カメラ11では刈取装置3の前方をより広範囲に撮影して、コントローラ50の処理部51が、カメラ11で撮影された画像を、刈取装置3の前方の撮影画像70と撮影画像70と刈取装置3の間の撮影画像75に区画し、撮影画像75から引起装置3Aの穀稈の搬送状態を把握するが好ましい。
【0058】
図8,9に示すように、カメラ11を排出オーガ8の排出装置8Aの右壁や操縦部5を覆うキャビン9の上壁の下面における前部の左右方向の中間部に配置することもできる。なお、
図10,11に示すように、撮影画像70は刈取装置3の前方のpn部位の画像であり、撮影画像75は引起装置3Aの前端部から切断装置3Bの前端部の間のhn部位の画像である。
【0059】
また、
図12,13に示すように、撮影画像70を撮影するカメラ(請求項の「第2カメラ」)11Aと撮影画像75を撮影するカメラ(請求項の「第1カメラ」)11Bを設け、これらのカメラ11A,11Bを排出装置8Aの右壁やキャビン9の上壁の下面における前部の左右方向の中間部に設けることもできる。
【0060】
撮影画像70は刈取装置3の前方の画像であり、撮影画像75は刈取装置3の前側、すなわち、撮影画像70と刈取装置3の間の画像である。撮影画像70の左右方向の長さは刈取装置3の刈幅の3倍の長さに設定され、撮影画像75の左右方向の長さは引起装置3Aの左右方向の長さに設定されている。
【0061】
図14に示すように、サーバ42Aのコントローラ80は、高速処理チップであるGPUやFPGA、ASICからなる処理部81と、ROMやRAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部82と、入出力インターフェース回路を有する入出力部83と、クラウドを介してコンバインの通信部54と情報の送受信を行う通信部84から形成されている。また、カメラ11の撮影は所定の時間t(走行距離50cm)毎に行われている。
【0062】
図15に示すように、コントローラ80の処理部81は、撮影画像70を撮影画像70A~70Cに3分割した後に、撮影画像70Bと記憶部82に保存されている撮影画像70Bを比較し、撮影画像70Bの穀稈情報の倒伏率を算出した後に、算出した撮影画像70Bの穀稈情報の倒伏率をクラウドを介してコンバインのコントローラ50に送信する。なお、撮影画像70Aが刈取装置3の前方左側で、撮影画像70Bが刈取装置3の前方で、撮影画像70Cが刈取装置3の前方右側の画像である。
【0063】
図16に示すように、倒伏率は、穀稈が真っすぐに起立している姿勢P1(倒伏率0%)から穀稈が完全に倒伏した姿勢P5(倒伏率100%)まで5段階に層別される。例えば、撮影画像70Bの50%の穀稈が姿勢P1(倒伏率0%)で50%の穀稈が姿勢P3(倒伏率50%)の場合には、これらを按分して倒伏率は25%になる。
【0064】
コントローラ50の処理部51は、受信した穀稈情報の倒伏率に基づいてモータ20Aやモータ21Aを回動させて走行用無段変速装置20やトランスミッション21の出力回転を増減速させる。これにより、穀稈情報の倒伏率に応じて走行装置2の走行速度を増減速して穀稈の刈取を効率良く行うことができる。なお、受信した穀稈情報の倒伏率が増加する場合には、トランスミッション21の出力回転を減速し、走行用無段変速装置20の出力回転を増速して、走行装置2の走行速度を減速し、引起装置3Aの搬送速度を増速させるのが好ましい。
【0065】
倒伏率が0~25%(姿勢P1,2)の場合は、穀稈の穂先が穀稈の株元の切断高さよりも上方に位置しているので、コンバインを自動走行させて穀稈を刈取ることができる。しかし、倒伏率が25%を超える(姿勢P3~5)の場合には、穀稈の穂先が穀稈の株元の切断高さよりも下方に位置しているので向い刈りすることができない。このような場合には、作業者はコンバインの自動走行を停止させて、穀稈を追い刈りできる位置にコンバインを手動走行させるのが好ましい。これにより、穀稈が刈取装置3に絡み付くのを防止して脱粒を抑制することができる。
【0066】
処理部51は、受信した絡み情報の絡み率に基づいてモータ20Aを回動させて走行用無段変速装置20の出力回転を増減速させる。これにより、絡み率に応じて引起装置3Aの搬送速度を増減速して穀稈の引起こしを効率良く行うことができる。なお、受信した絡み情報の絡み率が増加する場合には、トランスミッション21の出力回転を減速し、走行用無段変速装置20の出力回転を減速して、走行装置2の走行速度を減速し、引起装置3Aの搬送速度も減速させるのが好ましい。
【0067】
引起装置3Aに穀稈が絡まない場合には、撮影画像75の中央部と両側部の穀稈に間にうねりは発生しない。一方、引起装置3Aに穀稈が絡む場合には、撮影画像75の中央部と両側部の穀稈の間にうねりが発生し、引起装置3Aに絡む穀稈が増加するに従って撮影画像75の中央部と両側部の穀稈の間のうねりが大きくなる。
【0068】
図17に示すように、絡み情報の絡み率は、撮影画像75の穀稈の穂先が搬送方向に沿って平行な姿勢K1(絡み率0%)から穀稈の穂先が搬送方向に直交する姿勢K5(絡み率100%)まで5段階に層別される。例えば、撮影画像70Bの50%の穀稈の穂先が姿勢K1(絡み率0%)で50%の穀稈の穂先が姿勢K3(絡み率50%)の場合には、これらを按分して絡み率25%になる。
【0069】
絡み率が0~25%(姿勢K1,2)の場合は、引起装置3Aに絡んだ穀稈の穂先が少ないので、引起装置3Aの搬送速度を減速させて穀稈の穂先の絡みを抑制することができる。しかし、絡み率が25%を超える(姿勢K3~5)の場合は、引起装置3Aに絡む穀稈の穂先が多く、多くの穀粒が脱粒するので、作業者は、直線アシストスイッチ32を押下してコンバインの自動走行を停止して、穀稈を追い刈りできる位置にコンバインを手動走行させて移動するのが好ましい。これにより、穀稈が刈取装置3に絡み付いて多くの穀粒が脱粒するのを防止することができる。
【0070】
(ケース2の穀稈情報と絡み情報の比較方法)
コンバインが自動走行中に、コントローラ50の処理部51は、コンバインの位置情報と、カメラ11で撮影された撮影画像70と、カメラ12で撮影された撮影画像75をクラウドを介してサーバ42Aに送信する。
【0071】
図18に示すように、コントローラ80の処理部81は、撮影画像70を撮影画像70A~70Cに3分割する。なお、撮影画像70A~70Cのそれぞれの左右方向の長さを刈取装置3の刈幅に設定されている。
【0072】
次に、処理部81は、記憶部82に保存されている撮影画像70Bに対応する修正撮影画像71の穀稈情報の倒伏率を算出する。なお、修正撮影画像71の穀稈情報の倒伏率は、撮影画像70Bに対応する記憶部82に保存されている撮影画像70B,70Cの倒伏率を按分して算出する。これにより、撮影画像70Bの穀稈情報の倒伏率を正確に算出することができる。
【0073】
例えば、
図18に図示した形態では、撮影画像70Bの左半分が記憶部82に保存されている撮影画像70Bに位置し、撮影画像70Bの右半分が記憶部82に保存されている撮影画像70Cに位置しているので、修正撮影画像71の倒伏率は、記憶部82に保存されている撮影画像70Bの倒伏率と撮影画像70Cの倒伏率の平均値となる。
【0074】
次に、処理部81は、撮影画像70Bと記憶部82に保存されている修正撮影画像71を比較し、撮影画像70Bの穀稈情報の倒伏率を算出した後に、算出した撮影画像70Bの穀稈情報の倒伏率をクラウドを介してコンバインのコントローラ50に送信する。
【0075】
また、処理部81は、撮影画像75と記憶部82に保存されている撮影画像75を比較し、撮影画像75の絡み情報の絡み率を算出した後に、算出した撮影画像75の絡み情報の絡み率をクラウドを介してコンバインのコントローラ50に送信する。
【0076】
コントローラ50の処理部51は、受信した穀稈情報の倒伏率に基づいてモータ20Aやモータ21Aを回動させて走行用無段変速装置20やトランスミッション21の出力回転を増減速させる。
【0077】
また、処理部51は、受信した絡み情報の絡み率に基づいてモータ20Aを回動させて走行用無段変速装置20の出力回転を増減速させる。
【0078】
(ケース3の穀稈情報と絡み情報の比較方法)
コンバインが自動走行中に、コントローラ50の処理部51は、コンバインの位置情報と、カメラ11で撮影された撮影画像70と、カメラ12で撮影された撮影画像75をクラウドを介してサーバ42Aに送信する。
【0079】
図19に示すように、コントローラ80の処理部81は、撮影画像70を撮影画像70A~70Cに3分割する。
【0080】
次に、処理部81は、記憶部82に保存されている撮影画像70Bに対応する修正撮影画像72の穀稈情報の倒伏率を算出する。なお、修正撮影画像72の穀稈情報の倒伏率は、撮影画像70Bに対応する記憶部82に保存されている撮影画像70A,70Bの倒伏率を按分して算出する。これにより、撮影画像70Bの穀稈情報の倒伏率を正確に算出することができる。
【0081】
例えば、
図19に図示した形態では、撮影画像70Bの左半分が記憶部82に保存されている撮影画像70Aに位置し、撮影画像70Bの右半分が記憶部82に保存されている撮影画像70Bに位置しているので、修正撮影画像71の倒伏率は、記憶部82に保存されている撮影画像70Aの倒伏率と撮影画像70Bの倒伏率の平均値となる。
【0082】
次に、処理部81は、撮影画像70Bと記憶部82に保存されている修正撮影画像72を比較し、撮影画像70Bの穀稈情報の倒伏率を算出した後に、算出した撮影画像70Bの穀稈情報の倒伏率をクラウドを介してコンバインのコントローラ50に送信する。
【0083】
また、処理部81は、撮影画像75と記憶部82に保存されている撮影画像75を比較し、撮影画像75の絡み情報の絡み率を算出した後に、算出した撮影画像75の絡み情報の絡み率をクラウドを介してコンバインのコントローラ50に送信する。
【0084】
また、処理部51は、受信した絡み情報の絡み率に基づいてモータ20Aを回動させて走行用無段変速装置20の出力回転を増減速させる。
【0085】
<コンバインの自動走行方法>
図20に示すように、ステップS1で、コンバインのコントローラ50の処理部51は、カメラ11で撮影された撮影画像70Bに作業者や作業用具等の障害物が存在するか否か判断する。撮影画像70Bに障害物が無いと判断した場合にはステップS2に進み、撮影画像70Bに障害物が在ると判断した場合にはステップS5に進む。なお、障害物の判定は、例えば、障害物が穀稈よりも上方や左方に延出している場合には、K平均法や混合ガウス分布等を使用してクラスタリングを行い、穀稈の重心よりも上下方向又は左右方向に他の重心が存在する場合には、障害物が在ると判断し、他の重心が存在しない場合には、障害物がないと判断することができる。
【0086】
ステップS2で、処理部51は、サーバ42Aのコントローラ80から送信されてくる撮影画像70Bの穀稈情報の倒伏率について判断する。倒伏率が所定の倒伏率、例えば、25%以下である場合にはステップS3に進み、倒伏率が所定の倒伏率を超えている場合にはステップS5に進む。
【0087】
ステップS3で、処理部51は、コントローラ80から送信されてくる撮影画像75の絡み情報の絡み率について判断する。絡み率が所定の絡み率、例えば、25%以下である場合にはステップS4に進み、絡み率が所定の絡み率を超えている場合にはステップS5に進む。
【0088】
ステップS4で、処理部51は、走行用無段変速装置20の出力回転を増減するモータ20Aとトランスミッション21の出力回転を増減するモータ21Aを操作して、走行装置2の走行速度と刈取装置3の搬送速度を増減速してステップS1に戻る。これにより、穀稈を効率良く収穫して、穀稈を効率良く脱穀装置4に搬送して脱穀選別処理することができる。また、処理部51は、走行装置2の走行速度と刈取装置3の搬送速度の増速時や減速時には警報を鳴らしたり、モニタ30に増速中との表示を行い作業者に注意喚起を行うのが好ましい。さらに、作業者は、予め走行装置2の最高走行速度と刈取装置3の最高搬送速度を設定することができる。これにより、走行装置2の最高走行速度と刈取装置3の最高搬送速度が規制されて作業の安全性を一定以上に維持することができる。
【0089】
ステップS5で、処理部51は、走行用無段変速装置20の出力回転を増減するモータ20Aを操作して、走行装置2と刈取装置3の駆動を停止してステップS6に進む。これにより、コンバインと障害物の衝突や刈取装置3の引起装置3A等に穀稈が絡んで穀粒の脱粒を抑制することができる。
【0090】
ステップS6で、処理部51は、走行装置2の左右一対のクローラを制動するブレーキ2Aを駆動してステップS7に進む。
【0091】
ステップS7で、作業者は、直線アシストスイッチ32を押下し、コンバインの自動走行を停止してステップS1に戻る。なお、作業者は、ブレーキ2Aの制動を解除した後に、コンバインを手動走行させて穀稈の追い刈り作業が可能な位置まで移動させる。次に、第1基準点設定スイッチ33A等を押下して基準経路61と設定経路65を設定し、直線アシストスイッチ32を押下してコンバインの自動走行を再開する。また、コンバインの進行方向に対して穀稈の倒伏方向が交差する場合には、穀稈の生え際側から自動走行を開始するのが好ましい。
【0092】
<刈取装置に詰まった穀稈の取除方法>
刈取装置3の搬送装置3Cには、穀稈の詰まりを検出する回転センサ等の穀稈センサ(請求項の「第1穀稈センサ」)15が設けられている。コントローラ50の処理部51は、穀稈センサ15が穀稈の詰まりを検出して穀稈センサ15からの入力信号がONになった場合には、刈取用無段変速装置23の出力回転の増減や出力回転方向の切替えを行うモータ23Aを操作して、刈取用無段変速装置23の出力回転方向を正転方向から逆転方向に切替えて、脱穀装置4から刈取装置3に向けて穀稈を所定の距離移動させる。これにより、搬送装置3C等に絡み付いた穀稈の絡み付きを弱めることができる。なお、出力回転方向が正転方向の場合には、搬送装置3Cが穀稈を刈取装置3から脱穀装置4に搬送し、出力回転方向が逆転方向の場合には、搬送装置3Cが穀稈を脱穀装置4から刈取装置3に搬送する。
【0093】
次に、処理部51は、モータ23Aを操作して、刈取用無段変速装置23の出力回転が出力されない状態にして、エンジンEを停止させる。これにより、作業者が搬送装置3C等に絡み付いた穀稈を安全に取除くことができる。
【0094】
処理部51は、モータ20Aを操作して、走行用無段変速装置20の出力回転が出力されない状態にして、エンジンEを停止させるのが好ましい。これにより、エンジンEを再度始動した場合に、作業者の意に反して走行装置2の急な走行を防止することができる。
【0095】
また、処理部51は、作業者が駐車ブレーキ39Aや掻込みペダル39Bを踏み込んだ場合には、モータ23Aを操作して、刈取用無段変速装置23の出力回転方向を正転方向から逆転方向に切替える構成にするのが好ましい。これにより、搬送装置3C等に絡み付いた穀稈が過度に多くなるのを抑制することができる。
【0096】
<走行装置の簡易な走行方法>
図2に示すように、刈取装置3のカバー10の右部に、引起装置3Aの右側に設けられた分草体3Dと、コンバインの右側のコンバインの進行方向に沿って延在する畦を撮影するカメラ17を設ける。
【0097】
コントローラ50の処理部51は、走行装置2のブレーキ2Aを操作して分草体3Dの前後方向に延在する仮想線とコンバインの進行方向に沿って延在する畦が平行になるようにする。これにより、測位ユニット40を使用することなくコンバインを圃場の畦に沿って走行させることができる。
【0098】
また、刈取装置3のカバー10の左部に、引起装置3Aの左側に設けられた分草体3Dと、コンバインの左側に植立する未刈穀稈を撮影するカメラを設け、処理部51は、走行装置2のブレーキ2Aを操作して分草体3Dの前後方向に延在する仮想線とコンバインの進行方向に沿って植立する未刈穀稈が平行になるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0099】
1 機体フレーム
2 走行装置
2A ブレーキ
3 刈取装置
3A 引起装置
3C 搬送装置
3D 分草体
4 脱穀装置
5 操縦部
5A ブザー
7 グレンタンク
8 排出オーガ
8A 排出装置
10 カバー
11A カメラ(第2カメラ)
11B カメラ(第1カメラ)
13 穀稈センサ(第2穀稈センサ)
15 穀稈センサ(第1穀稈センサ)
23 刈取用無段変速装置
50 コントローラ
55 自動操縦スイッチ
70 撮影画像(第2撮影画像)
75 撮影画像(第1撮影画像)
E エンジン