(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010104
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】筒状フィルター及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20250109BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B01D29/10 510G
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107769
(22)【出願日】2024-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2023109559
(32)【優先日】2023-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】和氣坂 弘二
(72)【発明者】
【氏名】大坪 大輔
【テーマコード(参考)】
4D019
4D116
【Fターム(参考)】
4D019AA03
4D019BA13
4D019BB03
4D019BD01
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4D019CB06
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4D116VV01
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4D116ZZ01
4D116ZZ05
4D116ZZ06
4D116ZZ07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生産コストが低く、かつ基本的なろ過効率及びろ過寿命を有する筒状フィルター及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、筒状繊維集合体で形成されたろ過層を含む筒状フィルターであって、前記ろ過層は、第1の繊維シート51と第2の繊維シート52を交互に筒状に巻き回した筒状繊維集合体B50で形成されたろ過層B5を含み、ろ過層Bの厚み方向において、第1の繊維シートと第2の繊維シートは交互に配置されており、第1の繊維シートは第2の繊維シートを介して接着しており、下記(a)及び(b)の少なくとも一方の要件を満たす筒状フィルターを提供する。
(a)第1の繊維シートの厚みH1は第2の繊維シートの厚みH2より大きい
(b)第1の繊維シートの密度D1は第2の繊維シートの密度D2よりも大きい
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状繊維集合体で形成されたろ過層を含む筒状フィルターであって、
前記ろ過層は、第1の繊維シートと第2の繊維シートを交互に筒状に巻き回した筒状繊維集合体Bで形成されたろ過層Bを含み、
ろ過層Bの厚み方向において、第1の繊維シートと第2の繊維シートは交互に配置されており、第1の繊維シートは第2の繊維シートを介して接着しており、
下記(a)及び(b)の少なくとも一方の要件を満たす、筒状フィルター。
(a)第1の繊維シートの厚みH1は第2の繊維シートの厚みH2より大きい
(b)第1の繊維シートの密度D1は第2の繊維シートの密度D2より大きい
【請求項2】
第1の繊維シートの厚みH1と第2の繊維シートの厚みH2の比H1/H2は1.1以上15.0以下である、請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項3】
第1の繊維シートの密度D1と第2の繊維シートの密度D2の比D1/D2は1.1以上10.0以下である、請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項4】
第1の繊維シートは、幅が15mm以上70mm以下である、請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項5】
第1の繊維シートは、平均繊維径d1が0.3μm以上20μm以下である、請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項6】
第1の繊維シートは、目付W1が15g/m2以上100g/m2以下である、請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項7】
第2の繊維シートは、平均繊維径d2が0.3μm以上30μm以下である、請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項8】
第2の繊維シートは、目付W2が2g/m2以上15g/m2以下である、請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項9】
第1の繊維シートの平均繊維径d1と第2の繊維シートの平均繊維径d2の比d1/d2は0.01以上2.0以下である、請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項10】
第1の繊維シートの目付W1と第2の繊維シートの目付W2の比W1/W2は1.1以上50以下である、請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項11】
第1の繊維シートは、2層以上の繊維シートを含む多層繊維シートである、請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項12】
前記多層繊維シートにおいて、各々の繊維シートは、平均繊維径及び密度が実質的に同一である、請求項11に記載の筒状フィルター。
【請求項13】
前記多層繊維シートは、第1の繊維シートX1及び第1の繊維シートY1を含み、第1の繊維シートX1及び第1の繊維シートY1は、下記(r)及び(s)の少なくとも一方の要件を満たし、
第1の繊維シートX1が第1の繊維シートY1よりも内側になるように巻回されている、請求項11に記載の筒状フィルター。
(r):第1の繊維シートX1の平均繊維径dX1が、第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1より小さい
(s):第1の繊維シートX1の密度DX1が、第1の繊維シートY1の密度DY1より大きい
【請求項14】
第1の繊維シートはメルトブローン不織布、第2の繊維シートはメルトブローンウェブである、請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項15】
前記ろ過層は、ろ過層Bに加えて、ろ過層A及びろ過層Cを含み、
前記筒状フィルターの中心部に存在する内周側の中空部から筒状フィルターの外周側に向け、前記中空部側からろ過層A、ろ過層B、及びろ過層Cの順番に配置されている請求項1~14のいずれかに記載の筒状フィルター。
【請求項16】
ろ過層Aは、平均繊維径が0.3μm以上30μm以下、かつ繊維径のCV値が0.25以上1.0以下の筒状繊維集合体Aで形成され、及び
ろ過層Cは、平均繊維径が3μm以上30μm以下、かつ繊維径のCV値が0.25以上2.5以下の筒状繊維集合体Cで形成されている、請求項15に記載の筒状フィルター。
【請求項17】
ろ過層A、ろ過層B及びろ過層Cの合計質量を100質量%としたとき、ろ過層Aの含有量が30質量%以上70質量%以下であり、ろ過層Bの含有量が15質量%以上50質量%以下であり、及びろ過層Cの含有量が10質量%以上30質量%以下である、請求項15に記載の筒状フィルター。
【請求項18】
第1の繊維シートは、平均繊維径が0.3μm以上3.40μm以下、かつ繊維径のCV値が0.25以上3.0以下である、請求項15に記載の筒状フィルター。
【請求項19】
第1の繊維シートは、平均繊維径が3.40μmより大きく10μm以下、かつ繊維径のCV値が0.25以上3.0以下である、請求項15に記載の筒状フィルター。
【請求項20】
筒状繊維集合体で形成されたろ過層を含む筒状フィルターの製造方法であって、
溶融した熱可塑性樹脂を紡糸ノズルの吐出孔から吐出すると同時に前記吐出孔の周囲から噴出する高温の気体流によって引き延ばしたメルトブローン繊維を一定の速度で回転する回転軸の表面に吹き付けながら、第1の繊維シートを前記回転軸の表面に巻き回し、前記メルトブローン繊維を第1の繊維シートの表面に集積させてメルトブローンウェブにして巻き回すことで、第1の繊維シートとメルトブローンウェブが交互に巻き回された筒状繊維集合体Bを得る工程Bを含む、筒状フィルターの製造方法。
【請求項21】
工程Bに加えて、下記工程A及び工程Cから選ばれる少なくとも一方の工程を含む、請求項20に記載の筒状フィルターの製造方法。
・工程A:前記工程Bの前に、前記メルトブローン繊維のみを一定の速度で回転する回転軸の表面に吹き付け、メルトブローンウェブを形成しながら巻き回し、筒状繊維集合体Aを得る工程
・工程C:前記工程Bの後に、前記メルトブローン繊維のみを回転軸の表面に吹き付け、メルトブローンウェブを形成しながら巻き回し、筒状繊維集合体Cを得る工程
【請求項22】
前記筒状繊維集合体Aの厚みが8mm以上15mm以下になるまで工程Aを行った後、工程Bを行う、請求項21に記載の筒状フィルターの製造方法。
【請求項23】
前記筒状繊維集合体Bの厚みが2mm以上8mm以下になるまで工程Bを行った後、工程Cを行う、請求項21に記載の筒状フィルターの製造方法。
【請求項24】
第1の繊維シートは、第1の繊維シートX1及び第1の繊維シートY1を含む多層繊維シートであり、第1の繊維シートX1及び第1の繊維シートY1は、下記(r)及び(s)の少なくとも一方の要件を満たし、工程Bにおいて、第1の繊維シートX1と第1の繊維シートY1を重ね合わせた状態で、第1の繊維シートX1が第1の繊維シートY1よりも内側になるように巻き回す、請求項20又は21に記載の筒状フィルターの製造方法。
(r):第1の繊維シートX1の平均繊維径dX1が、第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1より小さい
(s):第1の繊維シートX1の密度DX1が、第1の繊維シートY1の密度DY1より大きい
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体のろ過、特に異物を含む液体のろ過に適した筒状フィルター及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維集合体を筒状に巻き回した筒状フィルターは、取扱性に優れることから、飲料、薬液、油脂、塗料、並びに電子部品及び半導体製品の洗浄水等の工業用洗浄水等といった各種液体のろ過に広く用いられている。筒状フィルターは、通常、不織布といった各種繊維シートを心棒(マンドレルとも称される。)に巻き回すことで製造される円筒状の繊維集合物をろ過層としている。例えば、特許文献1には、細繊度不織布と、該細繊度不織布の構成繊維より太い繊度の熱接着性繊維を含む構成繊維からなり、かつ該構成繊維が相互に交絡し少なくともその一部が熱接着している太繊度スパンレース不織布とが互いに実質的に熱接着されていない状態で積層されて筒状に巻き付けられたろ過層を含む筒状フィルターが記載されている。
【0003】
筒状フィルターを製造する他の方法として、樹脂を繊維化し、繊維を直接心棒に巻き付けることで、繊維をシート状にする工程を省いて筒状フィルターを製造する方法が知られている。例えば、特許文献2には、不織布デプスフィルター要素において、管状の部材を備え、前記管状の部材は、この部材の長さ全体にわたって軸方向に伸長する中空の内部と、実質的に連続して絡み合い、合成樹脂材料から成る複数のフィラメントから構成されるフィルター部分とを有し、前記フィルター部分が、中央のサポートゾーン及びろ過ゾーンを有しており、前記中央のサポートゾーンは、前記中空の内部を形成する内側面を有すると共に、前記ろ過ゾーンに対するサポートをもたらすに十分な大きさの直径を有する複数のサポートゾーンのフィラメントから構成されており、前記ろ過ゾーンは、前記中央のサポートゾーンの半径方向外方に位置すると共に、複数のろ過フィラメントから構成される少なくとも1つのろ過レベルを備え、前記サポートゾーンのフィラメント及び前記ろ過フィラメントが、互いに別々であることを特徴とする不織布デプスフィルター要素が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-000851号公報
【特許文献2】特表平8-501976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、2種以上の不織布を用いてろ過層を製造し、これを含む筒状フィルターを開示している。このように各種繊維シートを巻き回して製造される筒状フィルターでは、ろ過の対象物に含まれている異物を段階的に捕集、除去することで、ろ過効率を高め、かつ、ろ過寿命をより長くするため、ろ液の流入側(一次側とも称される。)からろ液の流出側(二次側とも称される。)に向けて、ろ過層を構成する繊維の平均繊維径を徐々に小さくする、或いは、ろ液の流入側からろ液の流出側に向けて、ろ過層を構成する繊維シートの平均孔径を徐々に小さくすることが知られている。このような製造方法で製造された筒状フィルターはろ過層の平均繊維径や平均孔径が徐々に小さくなることで、ろ過効率やろ過寿命に優れた筒状フィルターとなる一方で、それらの性能をより高めるために繊維シートの平均繊維径や平均孔径を多段的に変化させようとすると、平均繊維径や平均孔径が異なる繊維シートを複数用意したうえ、巻き回す繊維シートを変えるときは一度機械を停止させ、巻き回す繊維シートを交換する作業が必要となる。そのため、このような筒状フィルターは生産性が低く、生産コストが高い傾向があった。特許文献2に記載の筒状フィルターは、メルトブローン法で製造された繊維(メルトブローン繊維)を回転する心棒に向けて紡出すると同時に心棒表面に集積、巻き取ることで、紡出された繊維を直接筒状フィルターとしているため、生産効率に優れ、低コストで筒状フィルターを製造できるが、メルトブローン法で製造された繊維を直接円筒状に成型して巻きとる方法は、フィルター全体、特に、フィルターを構成するろ過層の厚み方向(言い換えるならば、ろ過対象物の流入側から流出側へとろ過対象物の流れる方向)における繊維径や孔径に差をつけることが困難であった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、生産効率が高いことから生産コストが低く、かつ基本的なろ過効率及びろ過寿命を有する筒状フィルター及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、筒状繊維集合体で形成されたろ過層を含む筒状フィルターであって、前記ろ過層は、第1の繊維シートと第2の繊維シートを交互に筒状に巻き回した筒状繊維集合体Bで形成されたろ過層Bを含み、ろ過層Bの厚み方向において、第1の繊維シートと第2の繊維シートは交互に配置されており、第1の繊維シートは第2の繊維シートを介して接着しており、下記(a)及び(b)の少なくとも一方の要件を満たす、筒状フィルターに関する。
(a)第1の繊維シートの厚みH1は第2の繊維シートの厚みH2より大きい
(b)第1の繊維シートの密度D1は第2の繊維シートの密度D2より大きい
【0008】
本発明は、筒状繊維集合体で形成されたろ過層を含む筒状フィルターの製造方法であって、溶融した熱可塑性樹脂を紡糸ノズルの吐出孔から吐出すると同時に前記吐出孔の周囲から噴出する高温の気体流によって引き延ばしたメルトブローン繊維を一定の速度で回転する回転軸の表面に吹き付けながら、前記回転軸の表面に第1の繊維シートを巻き回し、前記メルトブローン繊維を第1の繊維シートの表面に集積させてメルトブローンウェブにして巻き回すことで、第1の繊維シートとメルトブローンウェブが交互に巻き回された筒状繊維集合体Bを得る工程Bを含む、筒状フィルターの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、生産効率が高いことから生産コストが低く、基本的なろ過効率及びろ過寿命を有する筒状フィルターを提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、基本的なろ過効率及びろ過寿命を有する筒状フィルターの生産性を高め、生産コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の1例の筒状フィルターの模式的部分断面斜視図である。
【
図2】本発明の1例の筒状フィルターのろ過層Bの部分断面図である。
【
図3】本発明で用いる1例の筒状フィルター製造装置の概略斜視図である。
【
図4】本発明の1例の筒状フィルターのろ過層Aとろ過層Bの配置関係を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討した。
一般的に、筒状フィルターの性能に関して、フィルター内部に空隙があると捕捉できる異物量を増やすことができ、ろ過寿命が長くなる。また、構成する繊維を細くして単位厚みにおける繊維の数を増やし、ろ過対象の液体をより多くの繊維を通過させることで、より細かい異物を捕捉できるようになりろ過効率が向上する傾向にある。そのため、この2つの構成を有することで、ろ過寿命、ろ過効率の両方が向上し得ると推測した。その結果、筒状繊維集合体で形成されたろ過層を含む筒状フィルターにおいて、ろ過層が第1の繊維シートと第2の繊維シートを交互に筒状に巻き回した筒状繊維集合体Bで形成されたろ過層Bを含み、ろ過層Bが、ろ過層Bの厚み方向において、第1の繊維シートと第2の繊維シートが交互に配置されており、第1の繊維シートは第2の繊維シートを介して接着しており、ろ過層Bが下記に示す(a)及び(b)の少なくとも一方の要件を満たす構成を有する筒状フィルターとすることで、ろ過寿命、ろ過効率の両方が向上することを見出した。
(a)第1の繊維シートの厚みH1は第2の繊維シートの厚みH2より大きい
(b)第1の繊維シートの密度D1は第2の繊維シートの密度D2より大きい
【0012】
上記の構成を満たす筒状フィルターの製造について、本発明の発明者らは鋭意検討した。その結果、上記構成を満たす筒状フィルターとして、例えば、一定の速度で回転する回転軸に第1の繊維シートを巻き回しながら、ノズルから紡出されたメルトブローン繊維を、第1の繊維シートの表面に向けて吐出し、第1の繊維シートの表面に集積させた直後に、集積したメルトブローン繊維からなるメルトブローンウェブ(第2の繊維シートとなる。)の上に、再び前記第1の繊維シートを重ね合わせるようにしてメルトブローンウェブと第1の繊維シートとを共に巻き回すことで、第1の繊維シートと、第1の繊維シート上に集積したメルトブローン繊維からなるメルトブローンウェブ(すなわち第2の繊維シート)が積層、一体化された状態で連続して巻き回されることで筒状の繊維集合体となった筒状繊維集合体Bを作製することで、高い生産性及び低い生産コストでありながら、厚み及び/又は密度が異なる繊維シートが交互に巻き回された状態となっている筒状繊維集合体で形成されたろ過層を含み、厚み及び/又は密度が大きい第1の繊維シートが、厚み及び/又は密度が小さい第2の繊維シート(メルトブローンウェブ)を介して接着されている筒状フィルターが得られ、該筒状フィルターは基本的なろ過効率及びろ過寿命を有することを見出した。
【0013】
(筒状フィルター)
筒状フィルターは、筒状繊維集合体で形成されたろ過層を含む。本明細書において、筒状繊維集合体は、繊維が筒状に集合した繊維集合体を意味し、繊維シートは、繊維ウェブでもよく、不織布でもよい。
【0014】
ろ過層は、第1の繊維シートと第2の繊維シートを交互に巻き回した筒状繊維集合体Bで形成されたろ過層Bを含む。ろ過層Bの厚み方向において、第1の繊維シートと第2の繊維シートが交互に配置されており、第1の繊維シートは第2の繊維シートを介して接着しており、(a)第1の繊維シートの厚みH1は第2の繊維シートの厚みH2より大きい、及び/又は、(b)第1の繊維シートの密度D1は第2の繊維シートの密度D2より大きい。このように、ろ過層Bの厚み方向において、厚み及び/又は密度が異なる繊維シートが交互に配置され、かつ互いに接着していることにより、第1の繊維シートが液体通過時の圧力によって崩れず、層間が安定することで、基本的なろ過性能を発揮し、例えば、ろ過寿命が400L以上であり、粒径が5.0μmの粒子に対するろ過効率が75.0%以上となる。また、第1の繊維シートを適宜選択すると、異なる物性のろ過対象物、例えば粒子径の小さな粒子が低い濃度で含まれる液体の最終ろ過処理に適するろ過層が得られ、粒径が1.0μmの粒子に対するろ過効率が75%以上であり、ろ過寿命が300L以上となるものも得ることができる。また、第1の繊維シートを平均繊維径が大きいものにすると、粒子径の大きな粒子が高い濃度で含まれる液体の一次ろ過処理に適するろ過層が得られ、粒径が10μmの粒子に対するろ過効率が75%以上であり、ろ過寿命が2000L以上となるものも得ることができる。本明細書において、繊維シートの厚み及び密度、並びに筒状フィルターのろ過寿命及びろ過効率は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0015】
第1の繊維シートの厚みH1と第2の繊維シートの厚みH2の比H1/H2は、特に限定されないが、筒状フィルターのろ過効率やろ過寿命といった各種ろ過性能を高める観点から、1.1以上15.0以下であることが好ましく、1.3以上12以下であることがより好ましく、1.5以上10以下であることがさらに好ましく、1.8以上8以下であることがさらにより好ましく、2.0以上6以下であることがさらにより好ましく、2.0以上4以下であることが特に好ましい。
【0016】
第1の繊維シートの厚みH1は、得られる筒状フィルターのろ過効率やろ過寿命といった各種ろ過性能を高めるという観点から、0.10mm以上0.60mm以下であることが好ましく、0.15mm以上0.45mm以下であることがより好ましく、0.18mm以上0.40mm以下であることがさらに好ましく、0.20mm以上0.37mm以下であることが特に好ましい。
【0017】
第2の繊維シートの厚みH2は、得られる筒状フィルターのろ過効率やろ過寿命といった各種ろ過性能を高めるという観点から、0.04mm以上0.18mm以下であることが好ましく、0.06mm以上0.16mm以下であることがより好ましく、0.07mm以上0.14mm以下であることがさらに好ましく、0.075mm以上0.125mm以下であることが特に好ましい。
【0018】
第1の繊維シートの密度D1と第2の繊維シートの密度D2の比D1/D2は、特に限定されないが、筒状フィルターのろ過効率やろ過寿命といった各種ろ過性能を高める観点から、1.1以上10.0以下であることが好ましく、1.2以上8.0以下であることがより好ましく、1.3以上6.0以下であることがさらに好ましく、1.4以上5.0以下であることがさらにより好ましく、1.5以上4.5以下であることが特に好ましい。
【0019】
第1の繊維シートの密度D1は、得られる筒状フィルターのろ過効率やろ過寿命といった各種ろ過性能を高めるという観点から、0.03g/cm3以上0.5g/cm3以下であることが好ましく、0.04g/cm3以上0.4g/cm3以下であることがより好ましく、0.05g/cm3以上0.35g/cm3以下であることがさらに好ましく、0.06g/cm3以上0.3g/cm3以下であることが特に好ましい。
【0020】
第2の繊維シートの密度D2は、得られる筒状フィルターのろ過効率やろ過寿命といった各種ろ過性能を高めるという観点から、0.01g/cm3以上0.20g/cm3以下であることが好ましく、0.015g/cm3以上0.15g/cm3以下であることがより好ましく、0.02g/cm3以上0.10g/cm3以下であることがさらに好ましく、0.025g/cm3以上0.08g/cm3以下であることが特に好ましい。
【0021】
第1の繊維シートは、得られる筒状フィルターのろ過効率やろ過寿命といった各種ろ過性能を高めるという観点から、目付W1が15g/m2以上100g/m2以下であることが好ましく、18g/m2以上80g/m2以下であることがより好ましく、20g/m2以上60g/m2以下であることがさらにより好ましく、23g/m2以上50g/m2以下であることがさらにより好ましい。本明細書において、繊維シートの目付は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0022】
第2の繊維シートは、得られる筒状フィルターのろ過効率やろ過寿命といった各種ろ過性能を高めるという観点から、目付W2が2g/m2以上15g/m2以下であることが好ましく、3g/m2以上12g/m2以下であることがより好ましく、3.5g/m2以上10g/m2以下であることがより好ましく、4g/m2以上8g/m2以下であることが特に好ましい。
【0023】
第1の繊維シートの目付W1と第2の繊維シートの目付W2の比W1/W2は、特に限定されないが、得られる筒状フィルターのろ過効率やろ過寿命といった各種ろ過性能を高めるという観点から、1.1以上50以下であることが好ましく、1.5以上40以下であることがより好ましく、2.0以上30以下であることがさらに好ましく、2.5以上25以下であることが特に好ましい。
【0024】
第1の繊維シートは、筒状フィルターのろ過効率及びろ過寿命を両立しやすいという観点から、例えば、平均繊維径d1が0.3μm以上20μm以下であることが好ましい。筒状フィルターのろ過効率及びろ過寿命の両立を図るという観点から、第1の繊維シートの平均繊維径d1は、0.5μm以上であることがより好ましく、0.8μm以上であることがさらに好ましく、1.0μm以上であることがさらにより好ましい。また、筒状フィルターにおいて、ろ過効率及びろ過寿命の両立を図る、特に、筒状フィルターをろ過に使用した際、筒状フィルターの内部に空隙が多く存在し、筒状フィルターが短時間で目詰まりせず、より長い時間、ろ過処理に使用できるようにするという観点から、第1の繊維シートの平均繊維径d1は15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましく、8μm以下であることがさらにより好ましく、6μm以下であることがさらにより好ましく、5μm以下であることがさらにより好ましく、4μm以下であることがさらにより好ましく、3.40μm以下であることがさらにより好ましく、3.0μm以下であることが特に好ましい。本明細書において、繊維シートの平均繊維径は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0025】
第1の繊維シートは、ろ過層Bがより粒径の小さい異物を安定して捕捉・捕集するだけでなく、ろ過層Bが目詰まりするまでに要する時間を長時間にすることで筒状フィルターのろ過寿命をより長くするという観点から、繊維径のCV値が0.25以上3.0以下であることが好ましい。ろ過層Bが目詰まりするまでに要する時間を長時間にすることで筒状フィルターのろ過寿命をより長くするという観点から、第1の繊維シートの繊維径のCV値は0.4以上であることがより好ましく、0.6以上であることがさらに好ましく、0.7以上であることが特に好ましい。また、ろ過層Bを構成する第1の繊維シートの繊維径のばらつき適度に抑えることで、筒状フィルターのろ過効率を維持しやすいという観点から、第1の繊維シートの繊維径のCV値は2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましく、1.5以下であることがさらにより好ましく、1.2以下であることが特に好ましい。本明細書において、繊維シートの繊維径のCV値は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0026】
第2の繊維シートは、筒状フィルターのろ過効率及びろ過寿命を両立しやすい観点から、平均繊維径d2が0.3μm以上30μm以下であることが好ましい。筒状フィルターのろ過効率及びろ過寿命の両立を図るという観点から、第2の繊維シートの平均繊維径d2は、1.0μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることがさらに好ましく、2.0μm以上であることがさらにより好ましく、2.5μm以上であることがさらにより好ましく、3.0μm以上であることが特に好ましい。また、筒状フィルターにおいて、ろ過効率及びろ過寿命の両立を図る、特に、筒状フィルターをろ過に使用した際、筒状フィルターの内部に空隙が多く存在し、筒状フィルターが短時間で目詰まりせず、より長い時間、ろ過処理に使用できるようにするという観点から、第2の繊維シートの平均繊維径d2が25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが特に好ましく、12μm以下であることが最も好ましい。
【0027】
筒状フィルターのろ過寿命を高める観点から、第1の繊維シートと第2の繊維シートは平均繊維径が異なることが好ましい。第1の繊維シートの平均繊維径d1と第2の繊維シートの平均繊維径d2の比d1/d2は、0.01以上3.0以下であることが好ましく、0.02以上2.0以下であることがより好ましく、0.03以上1.8以下であることがさらに好ましく、0.05以上1.5以下であることが特に好ましい。
第1の繊維シートの平均繊維径d1と第2の繊維シートの平均繊維径d2の比d1/d2は、得られる筒状フィルターに対して要求するろ過効率を考慮して選択でき、例えば、粒子径が1.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉できるろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートの平均繊維径d1と第2の繊維シートの平均繊維径d2の比d1/d2は、0.05以上1.0以下であることが好ましく、0.1以上0.8以下であることがより好ましく、0.15以上0.60以下であることが特に好ましい。
また、粒子径が3.0μm~5.0μmの粒子をろ過効率が75%となる割合で捕集・捕捉できるろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートの平均繊維径d1と第2の繊維シートの平均繊維径d2の比d1/d2は、0.15以上1.0以下であることが好ましく、0.20以上0.8以下であることがより好ましく、0.25以上0.6以下であることが特に好ましい。
また、粒子径が10.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉できるろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートの平均繊維径d1と第2の繊維シートの平均繊維径d2の比d1/d2は、0.5以上3.0以下であることが好ましく、0.75以上2.5以下であることがより好ましく、1.0以上2.0以下であることが特に好ましい。
【0028】
第1の繊維シートの平均孔径は特に限定されないが、平均孔径が0.5μm以上60μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがより好ましい。第1の繊維シートの平均孔径は、得られる筒状フィルターに対して要求するろ過効率を考慮して選択でき、例えば、例えば、粒子径が1.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉できるろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートの平均孔径は1.2μm以上5μm以下であることが好ましく、1.5μm以上3.5μm以下であることがより好ましく、1.8μm以上3μm以下であることがさらに好ましい。
また、粒子径が3.0μm~5.0μmの粒子をろ過効率が75%となる割合で捕集・捕捉できるろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートの平均孔径は2μm以上25μm以下であることが好ましく、2.5μm以上20μm以下であることがより好ましく、2.8μm以上15μm以下であることがさらに好ましく、2.8μm以上10μm以下であることが最も好ましい。
また、粒子径が10.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉できるろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートの平均孔径は10μm以上60μm以下であることが好ましく、12μm以上50μm以下であることがより好ましく、15μm以上48μm以下であることがさらに好ましい。第1の繊維シートの平均孔径が上記範囲内であると、ろ過精度が高くなりやすい。
【0029】
第1の繊維シートの最大孔径は特に限定されないが、最大孔径が1μm以上90μm以下であることが好ましく、2μm以上50μm以下であることがより好ましく、3μm以上40μm以下であることが特に好ましい。また、第1の繊維シートの最多孔径は特に限定されないが、最多孔径が1.0μm以上40μm以下であることが好ましく、1.0μm以上15μm以下であることがより好ましく、1.5μm以上10μm以下であることがさらに好ましく、1.8μm以上8μm以下であることが特に好ましい。また、第1の繊維シートの最小孔径は特に限定されないが、最小孔径が0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、0.5μm以上15μm以下であることがより好ましく、1μm以上8μm以下であることが特に好ましい。第1の繊維シートの最大孔径、最多孔径及び最小孔径が上記範囲内であると、ろ過精度が高くなりやすい。
なお、得られる筒状フィルターに対し、粒子径が10.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉できるろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートの最大孔径は70μm以上100μm以下であることが好ましく、第1の繊維シートの最多孔径は20μm以上50μm以下であることが好ましく、第1の繊維シートの最小孔径は10μm以上30μm以下であることが好ましい。第1の繊維シートの平均孔径、最大孔径、最多孔径及び最小孔径は、JIS K 3832(1990)(精密ろ過膜エレメント及びモジュールのバブルポイント試験方法)に準じ、Porous Material Inc.製のキャピラリーフローポロメータ「CFP-1200-AEXC-P」を用いて測定することができる。
【0030】
第1の繊維シートの通気度は特に限定されず、設計するろ過効率に基づき適宜設定されるため、例えば、1.5cm3/cm2/秒以上70cm3/cm2/秒以下、2.0cm3/cm2/秒以上35cm3/cm2/秒以下、2.5cm3/cm2/秒以上20cm3/cm2/秒以下、又は、3cm3/cm2/秒以上10cm3/cm2/秒以下でもよい。本明細書において、第1の繊維シートの通気度は、JIS L 1096に準じてフラジール型試験機を用いて測定することができる。
【0031】
第1の繊維シートはメルトブローン不織布であり、第2の繊維シートはメルトブローンウェブであることが好ましい。メルトブローン不織布及びメルトブローンウェブは、繊維径の分布が大きい繊維シートとすることができ、繊維径のCV値が0.25以上になりやすい。メルトブローン不織布及びメルトブローンウェブにおいて、繊維径の大きい繊維によって構成された繊維間空隙では固形物(粒子)が通過しやすく、繊維径の小さい繊維によって構成された繊維間空隙では微小粒子を捕捉するので、メルトブローン不織布とメルトブローンウェブを複数周交互に巻回した繊維集合体をろ過層とすることで、目詰まりし難く、かつ繊維径の細い繊維によって細かい異物も捕捉・捕集できるろ過層が得られやすい。
【0032】
第1の繊維シートは、幅が15mm以上75mm以下であることが好ましく、幅が20mm以上65mm以下であることがより好ましく、25mm以上60mm以下であることがさらに好ましく、28mm以上55mm以下であることが特に好ましい。第1の繊維シートとしては、幅が上述した範囲を満たす不織布を好適に用いることができる。ろ過層Bを構成する第1の繊維シートの幅が前記範囲を満たすことで、第1の繊維シートを巻き回し、ろ過層Bを形成する工程において、その生産性が高くなるだけでなく、巻き回す第1の繊維シートを巻き回す際に巻き皺が発生しにくくなり、第1の繊維シートを筒状フィルターの長手方向に隙間なく巻き回されるようになるため、ろ過効率の高い筒状フィルターが得られやすくなる。
【0033】
第1の繊維シートは、ろ過性能が向上しやすいという観点から、複数の繊維シートが使用されていてもよく、その中でも2層以上の繊維シートを含む多層繊維シートで構成されてもよい。第1の繊維シートが2層以上の繊維シートを含む多層繊維シートで構成されている場合、前記多層繊維シートを構成する各層の繊維シートのそれぞれが第1の繊維シートに該当し、上述した(a)及び(b)の少なくとも一方を満たすことになる。第1の繊維シートが2層以上の繊維シートを含む多層繊維シートで構成されている場合、前記多層繊維シートを構成する各層の第1の繊維シートは、厚み、密度、目付、平均繊維径、及び繊維径のCV値等の物性は、全てが実質的に同一でもよく、一部の物性が実質的に同一でもよく、全てが異なってもよい。多層繊維シートにおいて、生産性及びろ過性能維持の観点から、多層繊維シートを構成する繊維シートの層数は、6以下でもよく、具体的には2~6であってもよく、2~5であってもよく、2~4であってもよく、又は2~3であってもよい。多層繊維シートにおいて、生産性の観点から、各々の繊維シートは互いに接着していないことが好ましい。
【0034】
第1の繊維シートが複数の繊維シートによって構成された多層繊維シートである場合、前記多層繊維シートを構成する各々の繊維シート(第1の繊維シート)の厚み、密度、目付、平均繊維径、及び繊維径のCV値も、上述した第1の繊維シートの厚み、密度、目付、平均繊維径、及び繊維径のCV値の好ましい範囲を満たすことが望ましい。また、第1の繊維シートが複数の繊維シートによって構成された多層繊維シートである場合、多層繊維シートを構成する各々の繊維シート(第1の繊維シート)は、メルトブローン不織布であることが好ましい。
【0035】
第1の繊維シートが複数の繊維シートによって構成された多層繊維シートである場合、得られる筒状フィルターのろ過精度及びろ過寿命を高めやすいという観点から、前記多層繊維シートは第1の繊維シートX1及び第1の繊維シートY1を含む多層繊維シートであり、第1の繊維シートX1及び第1の繊維シートY1は、下記(r)及び(s)の少なくとも一方の要件を満たし、第1の繊維シートX1が第1の繊維シートY1よりも内側になるように巻回されていることが好ましい。
(r):第1の繊維シートX1の平均繊維径dX1が、第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1より小さい
(s):第1の繊維シートX1の密度DX1が、第1の繊維シートY1の密度DY1より大きい
【0036】
第1の繊維シートX1の平均繊維径dX1は、上述した第1の繊維シートの平均繊維径d1の範囲を満たすものであれば特に限定されないが、好ましくは、得られるろ過層Bや、それを含む筒状フィルターに対し要求されるろ過性能、より具体的には、一定の粒子径の異物をどの程度捕集・捕捉できるかといった、いわゆるろ過精度によって調整される。ろ過層B含む筒状フィルターに対し、粒子径が1.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉できるろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートX1の平均繊維径dX1は0.3μm以上3.3μm以下であることが好ましく、0.5μm以上3.0μm以下であることがより好ましく、0.8μm以上2.5μm以下であることが特に好ましく、1.0μm以上2.2μm以下であることが最も好ましい。
ろ過層B含む筒状フィルターに対し、粒子径が3.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉できるろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートX1の平均繊維径dX1は1.5μm以上4.2μm以下であることが好ましく、2.0μm以上3.8μm以下であることがより好ましく、2.2μm以上3.6μm以下であることが特に好ましく、2.5μm以上3.5μm以下であることが最も好ましい。
ろ過層B含む筒状フィルターに対し、粒子径が5.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉できるろ過性能を要求するのであれば、繊維シートX1の平均繊維径dX1は2.5μm以上6.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以上5.5μm以下であることがより好ましく、3.2μm以上5.0μm以下であることが特に好ましく、3.5μm以上4.8μm以下であることが最も好ましい。
ろ過層B含む筒状フィルターに対し、粒子径が10.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉できるろ過性能を要求するのであれば、、第1の繊維シートX1の平均繊維径dX1は5μm以上20μm以下であることが好ましく、8μm以上18μm以下であることがより好ましく、10μm以上16μm以下であることが特に好ましく、12μm以上15μm以下であることが最も好ましい。
【0037】
第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1も、第1の繊維シートX1の場合と同じく上述した第1の繊維シートの平均繊維径d1の範囲を満たすものであれば特に限定されないが、好ましくは、得られるろ過層Bや、それを含む筒状フィルターに対し要求されるろ過性能、より具体的には、一定の粒子径の異物をどの程度捕集・捕捉できるかといった、いわゆるろ過精度によって調整される。また、第1の繊維シートY1は、平均繊維径が実質的に同一またはより小さいものである第1の繊維シートX1の上流側に配置されるため、第1の繊維シートX1の平均繊維径よりも大きいものであってもよい。
従って、ろ過層B含む筒状フィルターに対し、粒子径が1.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉するろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1は0.3μm以上4.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以上3.8μm以下であることがより好ましく、0.8μm以上3.6μm以下であることが特に好ましく、1.0μm以上3.5μm以下であることが最も好ましい。
ろ過層B含む筒状フィルターに対し、粒子径が3.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉するろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1は1.5μm以上5.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以上4.8μm以下であることがより好ましく、2.2μm以上4.5μm以下であることが特に好ましく、2.5μm以上4.2μm以下であることが最も好ましい。
ろ過層B含む筒状フィルターに対し、粒子径が5.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉するろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1は2.5μm以上18μm以下であることが好ましく、3.0μm以上16μm以下であることがより好ましく、3.2μm以上15μm以下であることが特に好ましく、3.5μm以上15μm以下であることが最も好ましい。
ろ過層B含む筒状フィルターに対し、粒子径が10.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉するろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1は5μm以上20μm以下であることが好ましく、8μm以上18μm以下であることがより好ましく、10μm以上18μm以下であることが特に好ましく、12μm以上16μm以下であることが最も好ましい。
【0038】
第1の繊維シートX1の平均繊維径dX1と第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1は実質的に同一でもよいし、第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1のほうが大きくてもよい。第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1が第1の繊維シートX1の平均繊維径dX1よりも大きいと、第1の繊維シートX1と第1の繊維シートY1との間で粗密構造が生じ、ろ過性能をより高めることができうるためである。
ろ過層Bにおいて、第1の繊維シートとして、平均繊維径の異なる第1の繊維シートX1と第1の繊維シートY1を使用する場合、第1の繊維シートXの平均繊維径dX1と第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1の比であるdX1/dY1は、ろ過性能を高める観点から、0.15以上1未満であることが好ましく、0.2以上1未満であることがより好ましく、0.23以上1未満であることがさらに好ましく、0.25以上1未満であることが特に好ましい。なお、ろ過層Bを含む筒状フィルターに対し、粒子径が1.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉するろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートX1の平均繊維径dX1と第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1が異なり、かつ、平均繊維径の差が大きすぎると、ろ過性能に与える影響が大きい。この場合、第1の繊維シートXの平均繊維径dX1と第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1の比であるdX1/dY1は、0.55以上1未満であることが好ましく、0.65以上0.98以下であることがより好ましく、0.70以上0.95以下であることが特に好ましい。
【0039】
第1の繊維シートX1の密度DX1及び第1の繊維シートY1の密度DY1は、ろ過性能を高める観点から、0.03g/cm3以上0.40g/cm3以下であることが好ましく、0.04g/cm3以上0.30g/cm3以下であることがより好ましく、0.05g/cm3以上0.25g/cm3以下であることがさらに好ましく、0.06g/cm3以上0.20g/cm3以下であることが特に好ましい。
第1の繊維シートX1の密度DX1及び第1の繊維シートY1の密度DY1は、好ましくは得られるろ過層Bや、それを含む筒状フィルターに対し要求されるろ過性能、より具体的には、一定の粒子径の異物をどの程度捕集・捕捉できるかといった、いわゆるろ過精度によって調整される。
従って、ろ過層B含む筒状フィルターに対し、粒子径が1.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉できるろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートX1の密度DX1及び第1の繊維シートY1の密度DY1は、ろ過性能を高める観点から、0.05/cm3以上0.22g/cm3以下であることが好ましく、0.06/cm3以上0.20g/cm3以下であることがより好ましく、0.06g/cm3以上0.18g/cm3以下であることがさらに好ましく、0.08g/cm3以上0.16g/cm3以下であることが特に好ましい。
また、ろ過層B含む筒状フィルターに対し、粒子径が3.0μm~10.0μmの粒子をろ過効率が75%以上となる割合で捕集・捕捉できるろ過性能を要求するのであれば、第1の繊維シートX1の密度DX1及び第1の繊維シートY1の密度DY1は、ろ過性能を高める観点から、0.03/cm3以上0.20g/cm3以下であることが好ましく、0.04/cm3以上0.15g/cm3以下であることがより好ましく、0.05g/cm3以上0.10g/cm3以下であることがさらに好ましく、0.06g/cm3以上0.09g/cm3以下であることが特に好ましい。
【0040】
本発明の筒状フィルターにおいて、筒状フィルターはろ過層Bを備えていればよく、ろ過層Bの上流側(言い換えるならば、ろ過層Bよりも流入側)に他のろ過層を備えていてもよいし、ろ過層Bの上流側は意匠性を高めるために各種布帛を数周(具体的には2~5周)巻き回していてもよいし、ろ過層Bがその上流側に、別のろ過層を有していなくてもよい。
ろ過層Bの下流側(言い換えるならばろ過層Bよりも流出側)も同様であり、ろ過層Bの下流側に他のろ過層を備えていてもよいし、ろ過層Bが下流側に多孔性芯材(具体的には熱可塑性樹脂を射出成形や押出成形することで製造される、円筒状の多孔性樹脂成形体)を備えていてもよいし、ろ過層Bの下流側に、別のろ過層や芯材を有していなくてもよい。
しかし、本発明の筒状フィルターにおいて、筒状フィルターのろ過効率やろ過寿命といった各種ろ過性能を高めるだけでなく、本発明の筒状フィルターの生産性を高めるという観点から、本発明の筒状フィルターにおいて、ろ過層は、ろ過層Bに加えて、ろ過層A及びろ過層Cを含み、筒状フィルターの中心部に存在する内周側の中空部から筒状フィルターの外周側に向け、中空部側からろ過層A、ろ過層B、及びろ過層Cの順番に配置されていることが好ましい。
【0041】
本発明の筒状フィルターにおけるろ過層Bにおいて、第1の繊維シートと第2の繊維シートは、重なった状態で当該筒状フィルターの長さ方向に対し、螺旋状に巻き付けられていることが好ましい。前記第1の繊維シートと第2の繊維シートが、螺旋状に巻き付けられていることによって、ろ過層Bを構成する第1の繊維シート及び第2の繊維シートは、筒状フィルターの長さ方向に対して角度がついている。そのため、筒状フィルターの外部から流入した、固形物といった異物を含む液体がろ過層Bを通過する際、当該液体は、ろ過層Bの角度、言い換えるならば、第1の繊維シート及び第2の繊維シートが重なった状態で螺旋状に巻き回されることで生じた、筒状フィルターの長さ方向と、第1の繊維シート及び第2の繊維シートが巻き回される方向とがなす角度に沿って斜めに筒状フィルターを通過するものと考えられる。
【0042】
第1の繊維シートと第2の繊維シートは重なり、例えば、0.5~10mmずつ進みながら厚み方向に交互に配置されていることが好ましい。より好ましくは、1~5mmずつ進みながら、特に好ましくは1~3mmずつ進みながら厚み方向に交互に配置されている。上記の範囲にすると、液体が通過する部分の面積が繊維シートを螺旋状に巻き回していない場合よりも広くなることで、ろ過面積が有効に活用されるようになり、高いろ過効率に寄与すると推定される。ろ過層Bを構成する第1の繊維シートにおいて、第1の繊維シート同士の間に第2の繊維シートが配置された状態で巻き回されていることに加え、筒状フィルターがろ過層Bに加え、その下流側にろ過層A、その上流側にろ過層Cを備えることによって、第1の繊維シート間に空隙が生まれ、その結果、ろ過処理時の急激な圧力上昇を抑えることができ、ろ過寿命の向上に寄与すると推定される。
【0043】
図1は、本発明の1例の筒状フィルターの模式的部分横断面斜視図である。
図1に示されているように、筒状フィルター(1)は、筒状繊維集合体で形成されたろ過層(2)を含み、ろ過層(2)は、筒状フィルター(1)の中心部に存在する内周側の中空部(3)から筒状フィルター(1)の外周側に向け、中空部(3)側から順番に配置されているろ過層A(4)、ろ過層B(5)、及びろ過層C(6)を含む。
【0044】
図2は、本発明の1例のろ過層Bの模式的部分縦断面図である。
図2に示されているように、ろ過層B(5)は、第1の繊維シート(51)と第2の繊維シート(52)を交互に筒状に巻き回した筒状繊維集合体B(50)で形成され、ろ過層B(5)の厚み方向において、厚みが大きい第1の繊維シート(51)と厚みが小さい第2の繊維シート(52)は交互に配置されており、第1の繊維シート(51)同士、言い換えるならば、第1の繊維シート(51)と、当該第1の繊維シートの1周前に巻き回された第1の繊維シートは、1周前に巻き回された第1の繊維シートの上に集積されたメルトブローン繊維である第2の繊維シート(52)を介して接着している。
【0045】
ろ過層Aにおいて、筒状フィルターのろ過効率及びろ過寿命を両立させやすい観点から、筒状繊維集合体Aの平均繊維径は0.3μm以上30μm以下であることが好ましい。筒状フィルターのろ過効率及びろ過寿命の両立を図るだけでなく、筒状フィルター全体に強度を持たせるという観点から、筒状繊維集合体Aの平均繊維径が1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、筒状フィルターにおいて、ろ過効率及びろ過寿命の両立を図る、特に、筒状フィルターをろ過に使用した際、筒状フィルターの内部に空隙が多く存在し、筒状フィルターが短時間で目詰まりせず、より長い時間、ろ過処理に使用できるようにするという観点から、筒状繊維集合体Aの平均繊維径が25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが特に好ましい。
【0046】
ろ過層Aにおいて、筒状フィルターのろ過効率及びろ過寿命を両立させやすい観点から、筒状繊維集合体Aの繊維径のCV値は0.25以上1.8以下であることが好ましい。ろ過層Aを構成する繊維の繊維径にばらつきが生じることで、ろ過層Aが繊維径の太い繊維及び繊維径の細い繊維を幅広く含む筒状繊維集合体となることでろ過層A、即ち筒状繊維集合体Aの内部に大小多くの繊維間空隙が発生するため、ろ過処理を行った際、異物を捕捉、捕集する空間の割合が大きくなることでろ過寿命が向上すると考えられる。ろ過層A(筒状繊維集合体A)がろ過寿命に優れるろ過層になるという観点から、筒状繊維集合体Aの繊維径のCV値が0.30以上であることが好ましく、0.33以上であることがより好ましく、0.35以上であることが特に好ましい。また、筒状繊維集合体Aの繊維径のCV値が1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1.0以下であることが特に好ましい。
【0047】
ろ過層Aにおいて、筒状繊維集合体Aは、複数本の繊維が繊維の長さ方向に接着されて形成した繊維束を含んでいてもよい。ろ過層Aにおいて、複数本の繊維が繊維の長さ方向に接着されて形成した繊維束が存在することで、ろ過層Aは空隙の多い構造となる。これにより、通気圧損や通水圧損といった圧力損失が低減しやすくなるだけでなく、空隙の多い構造になることで、ろ過処理に使用した際、筒状フィルター全体に異物が捕捉・捕集されることで目詰まりを発生させ、筒状フィルターが使用不可になるまでに捕捉できる異物の量が多くなることで、ろ過寿命が長くなりやすい。
【0048】
ろ過層Aにおいて、筒状繊維集合体Aは、溶融した熱可塑性樹脂を紡糸ノズルの吐出孔から吐出すると同時に前記吐出孔の周囲から噴出する高温の気体流によって引き延ばして繊維とするメルトブローン法で得られたメルトブローン繊維が、完全に冷却した後にシートの状態で筒状に巻き回されたものではなく、紡糸ノズルから吐出されたメルトブローン繊維を完全に冷却することなく回転中の回転軸の表面上に集積させながら連続して巻き回すことで、メルトブローン繊維から直接筒状に集合したものであることが好ましい。ろ過層Aにおいて、筒状繊維集合体Aがメルトブローン繊維で構成されると、生産コストが低い上、繊維径の分布が大きく、繊維径のCV値が0.25以上の筒状繊維集合体を容易に得ることができる。メルトブローン法で得られたメルトブローン繊維を冷却してシート状にすることなく、冷却せずに直接筒状に集合さて筒状繊維集合体にするには、紡糸ノズルの吐出孔の吐出方向の延長線上に所定の速度で回転する回転軸(マンドレル又は心棒とも称される。)を設け、溶融状態の熱可塑性樹脂を吐出孔から吐出すると同時に高温の気体流を吹き付けることで溶融状態の熱可塑性樹脂を繊維状に引き延ばすことで得られるメルトブローン繊維を、前記回転軸の表面に集積させつつ連続して巻き回すことで筒状の繊維集合体とする方法が好ましい。
【0049】
ろ過層Bについて、上記で説明した内容については重複する記載を省略する。ろ過層Bの筒状繊維集合体Bにおいて、第1の繊維シートはメルトブローン不織布であり、第2の繊維シートは、第1の繊維シートを筒状繊維集合体Aに巻き回しながら、溶融した熱可塑性樹脂を紡糸ノズルの吐出孔から吐出すると同時に前記吐出孔の周囲から噴出する高温の気体流によって引き延ばして繊維とするメルトブローン法で得られたメルトブローン繊維が第1の繊維シートの表面に直接筒状に集合したメルトブローンウェブであることが好ましい。ろ過層Bを構成する筒状繊維集合体Bにおいて、第2の繊維シートが第1の繊維シートの表面上に直接集積したメルトブローンウェブであると、生産コストが低い上、繊維径の分布が大きく、繊維径のCV値が0.25以上となりやすい。メルトブローン法で得られたメルトブローン繊維を一旦冷却してシート状にした後に筒状に巻き回すのではなく、冷却せずに直接集積させると同時に連続して巻き回すには、紡糸ノズルの吐出孔の吐出方向の延長線上に所定の速度で回転する回転軸を設け、前記回転軸に第1の繊維シートを巻き回しつつ、溶融状態の熱可塑性樹脂を吐出孔から吐出すると同時に高温の気体流で引き延ばされることで繊維状になったメルトブローン繊維を前記回転軸の表面(より具体的には、回転軸に対し、先に巻き回された第1の繊維シートの表面)に筒状に集積させながら連続して巻き回すことで筒状の繊維集合体とする方法が好ましい。
【0050】
ろ過層Cにおいて、筒状フィルターのろ過効率及びろ過寿命の両立を図る、特に粒径の大きい異物を高い割合で捕捉、捕集するという観点から、筒状繊維集合体Cの平均繊維径が3μm以上30μm以下であることが好ましい。ろ過層Cを構成する筒状繊維集合体Cの平均繊維径は4μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、6μm以上であることがさらに好ましい。また、ろ過層Cを構成する筒状繊維集合体Cの平均繊維径は、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。
【0051】
ろ過層Cには、ろ過層A、ろ過層Bよりも上流側、すなわち、ろ過の対象となる流体が捕捉・捕集したい異物をより多く含んだ状態で流れ込んでくる。従って、ろ過層Cにおいて、ろ過層Cを構成する繊維の繊維径にばらつきを生じさせ、ろ過層Cが繊維径の太い繊維、繊維径の細い繊維の両方を含む筒状繊維集合体となり、ろ過寿命に優れるろ過層になるようにするという観点から、筒状繊維集合体Cにおける繊維径のCV値が0.25以上2.5以下である。筒状繊維集合体Cの繊維径のCV値の下限値は、目詰まりしにくく、かつ、ろ過寿命の長い筒状フィルターを得るという観点から、0.3以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。また、筒状繊維集合体Cの繊維径のCV値の上限値は、ろ過寿命が長く、かつ安定したろ過効率を発揮する筒状フィルターを得やすいという観点から、2.0以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましく、1.2以下であることがさらに好ましく、1.0以下であることが特に好ましい。
【0052】
ろ過層Cにおいて、筒状繊維集合体Cは、筒状繊維集合体Aと同様に複数本の繊維が繊維の長さ方向に接着されて形成した繊維束を含んでいてもよい。ろ過層Cにおいても、ろ過層Aと同様、複数本の繊維が繊維の長さ方向に接着されて形成した繊維束が存在することで、ろ過層Cは空隙の多い構造となる。これにより、通気圧損や通水圧損といった圧力損が低減しやすくなるだけでなく、空隙の多い構造になることで、ろ過処理に使用した際、筒状フィルター全体に異物が捕捉・捕集されることで目詰まりを発生させ、筒状フィルターが使用不可になるまでに捕捉できる異物の量が多くなることで、ろ過寿命が長くなりやすい。
【0053】
ろ過層Cにおいて、筒状繊維集合体Cも、筒状繊維集合体Aと同様、溶融した熱可塑性樹脂を紡糸ノズルの吐出孔から吐出すると同時に前記吐出孔の周囲から噴出する高温の気体流によって引き延ばして繊維とするメルトブローン法で得られたメルトブローン繊維が、一旦冷却してシート状にした後に筒状に巻き回されたものではなく、メルトブローン繊維が冷却されずに直接筒状に集合したものであることが好ましい。ろ過層Cにおいて、筒状繊維集合体Cがメルトブローン繊維で構成されると、生産コストが低い上、繊維径の分布が大きく、繊維径のCV値が0.25以上となる繊維集合体が容易に得ることができる。メルトブローン法で得られたメルトブローン繊維を冷却してシート状にすることなく、冷却せずに直接筒状に集合させて筒状繊維集合体にするには、紡糸ノズルの吐出孔の吐出方向の延長線上に所定の速度で回転する回転軸を設け、溶融状態の熱可塑性樹脂を吐出孔から吐出すると同時に高温の気体流で引き延ばされることで繊維状になったメルトブローン繊維を前記回転軸の表面(より具体的には、筒状繊維集合体Bの表面)に筒状に集積させながら冷却することで筒状の繊維集合体とする方法が好ましい。
【0054】
本発明の筒状フィルターを構成するろ過層において、ろ過層A、ろ過層B及びろ過層Cの合計質量を100質量%としたとき、ろ過層Aの含有量が30質量%以上70質量%以下であり、ろ過層Bの含有量が15質量%以上50質量%以下であり、及びろ過層Cの含有量が10質量%以上30質量%以下であることが好ましく、ろ過層Aの含有量は35質量%以上65質量%以下であり、ろ過層Bの含有量は18質量%以上45質量%以下であり、及びろ過層Cの含有量は12質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。主にろ過効率に影響するろ過層Bの含有量が15質量%以上、好ましくは18質量%以上であると、ろ過効率がより向上する。また、ろ過層Bの含有量が50質量%以下、好ましくは45質量%以下であると、ろ過寿命も長くなりやすい。また、中空部に最も近接するろ過層Aの含有量が70質量%以下、好ましくは65質量%以下であると、ろ過寿命も長くなりやすい。また、ろ過層Aの含有量が30質量%以上、好ましくは35質量%以上であると、ろ過効率も向上しやすい。ろ過層Bの外側に配置され、ろ過層Bを覆っているろ過層Cの含有量が10質量%以上、好ましくは12質量%以上であると、ろ過効率が向上、安定するため好ましい。また、ろ過層Cの含有量が30質量%以下、好ましくは25質量%以下であると、ろ過層Cの割合が大きくなりすぎず、適度な割合となるため、ろ過効率が向上、安定する。
なお、本発明の筒状フィルターを構成するろ過層において、ろ過層A、ろ過層B及びろ過層Cの合計質量を100質量%としたとき、ろ過層A、ろ過層B及びろ過層Cの含有量は、主にろ過効率に影響するろ過層Bの構成によっても各層の好ましい含有量が変化する。すなわち、ろ過層Bが第1の繊維シートを1層含む構成である場合、ろ過層Aの含有量が50質量%以上65質量%以下、ろ過層Bの含有量が15質量%以上40質量%以下、及びろ過層Cの含有量が10質量%以上25質量%以下であることが好ましい。また、ろ過層Bが第1の繊維シートを複数層含む構成である場合、ろ過層Aの含有量が35質量%以上50質量%以下、ろ過層Bの含有量が25質量%以上45質量%以下、及びろ過層Cの含有量が15質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
【0055】
ろ過層A、ろ過層B(第1の繊維シート(第1の繊維シートは単層及び複数の繊維シートを使用した複数層の場合を含む)及び第2の繊維シート)、及びろ過層Cにおいて、各ろ過層を構成する繊維の種類は特に限定されず、天然繊維や合成繊維など特に限定することなく使用できるが、熱可塑性樹脂で構成されている繊維であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン樹脂、アイソタクチック、アタクチック、及びシンジオタクチック等のポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリブテン-1樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン-プロピレン共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール(ポリオキシメチレン樹脂とも称される。)、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド(ポリフェニレンスルフィド、PPSとも称される。)等のエンジニアリング・プラスチック等が挙げられる。ポリエチレン樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、及び超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。ポリプロピレン樹脂は、プロピレンの単独重合体でもよく、プロピレンと他のαーオレフィンとの共重合体でもよい。筒状フィルターを使用する際の耐酸性、耐塩基性、及び各種有機溶剤に対する耐性等の耐薬品性が高いという観点から、ろ過層A、ろ過層B、及びろ過層Cにおいて、繊維はポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリブテン-1樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン-プロピレン共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂で構成されることが好ましく、少なくともポリプロピレン樹脂を含んでいることがさらに好ましい。ポリプロピレン樹脂はポリオレフィン系樹脂の中では比較的高融点の樹脂であることから、ある程度高い温度の液体をろ過できるほか、耐薬品性も良好であり、低コストである。
【0056】
ろ過層A、ろ過層B(第1の繊維シート(第1の繊維シートは単層及び複数の繊維シートを使用した複数層の場合を含む)及び第2の繊維シート)、及びろ過層Cにおいて、これらのろ過層は前記の熱可塑性樹脂で構成される合成繊維からなる繊維シートで構成されていることが好ましいが、より好ましくは前述した熱可塑性樹脂からなる不織布である。ろ過層A、ろ過層B(第1の繊維シート及び第2の繊維シート)、及びろ過層Cを熱可塑性樹脂からなる合成繊維で構成される各種不織布にて構成しようとする場合、使用できる不織布の種類は特に限定されず、例えば長繊維(例えば、110mmよりも長い繊維長を有する繊維や、実質的に連続している繊維)不織布であってもよく、短繊維(例えば、3mm以上110mm以下の繊維長を有する繊維)不織布であってもよい。長繊維不織布としては、例えばスパンボンド不織布、メルトブロー法により得られるメルトブローン不織布、エレクトロスピニング法(静電紡糸法、電界紡糸法とも称す。)を用いて得られる不織布などを用いることができる。短繊維不織布としては、繊維長が3mm以上20mm以下の短繊維を用いた湿式抄紙法、繊維長が3mm以上32mm以下の短繊維を用いたエアレイ法(エアーレイド法とも称す。)、繊維長が24mm以上110mm以下の短繊維を用い、カード機で繊維ウェブを製造するカード法などにより繊維ウェブを作製し、さらにウェブを一体化させることにより得られるものを用いることができる。カード法で繊維ウェブを作製する場合、その製造方法は限定されず、パラレルウェブ、セミランダムウェブ、ランダムウェブ、クロスウェブ及びクリスクロスウェブなどの公知の製造方法で繊維ウェブを作製することができる。繊維ウェブの一体化は、接着剤による接合、繊維を軟化又は溶融させることによる熱接着(サーマルボンド)、ニードルパンチ及び高圧水流処理(スパンレース)から選択される一つ又は複数の方法により実施される。好ましくは、第1の繊維シートは前述した熱可塑性樹脂で構成される不織布、より好ましくは前述した熱可塑性樹脂で構成されるメルトブローン不織布であり、ろ過層A、第2の繊維シート、及びろ過層Cは前述した熱可塑性樹脂で構成されるメルトブローンウェブである。
【0057】
ろ過層Aの厚みは、筒状フィルターの用途や目的等に応じて適宜決めればよく、特に限定されない。例えば、ろ過効率を安定させ、ろ過寿命をより長くするという観点から、5mm以上15mm以下であることが好ましく、6mm以上14mm以下であることがより好ましく、6mm以上12mm以下であることがさらに好ましい。ろ過層Aの厚みはろ過層Aの外径(中空部の直径を含む、ろ過層Aのみの状態の筒状フィルターの外径であり、ろ過層Bの内径と同等である。)及びろ過層Aの内径(中空部の直径と同等である。)の差を2で除した値で示される。
【0058】
ろ過層Bの厚みは、筒状フィルターの用途や目的等に応じて適宜決めればよく、特に限定されない。例えば、ろ過寿命を維持しつつ、ろ過効率をより高めるという観点から、2mm以上12mm以下であることが好ましく、2.5mm以上10mm以下であることがより好ましく、3mm以上9mm以下であることがさらに好ましい。ろ過層Bの厚みに応じて、第1の繊維シート及び第2の繊維シートを2周以上巻き回して筒状繊維集合体Bを形成することができる。ろ過層Bの厚みはろ過層Bの外径(中空部の直径を含む、ろ過層Aとろ過層Bで構成された状態の筒状フィルターの外径であり、ろ過層Cの内径と同等である。)及びろ過層Bの内径(ろ過層Aの外径と同等である。)の差を2で除した値で示される。
【0059】
ろ過層Cの厚みは、筒状フィルターの用途や目的等に応じて適宜決めればよく、特に限定されない。例えば、ろ過効率を安定させ、ろ過寿命をより長くするという観点から、1mm以上6mm以下であることが好ましく、1mm以上5mm以下であることがより好ましく、2mm以上4.5mm以下であることがさらに好ましい。ろ過層Cの厚みはろ過層Cの外径及びろ過層Cの内径(ろ過層Bの外径と同等である。)の差を2で除した値で示される。
【0060】
ろ過層は、本発明の効果を阻害しない範囲において、ろ過層A、ろ過層B及びろ過層Cに加えて、他の部材を含んでもよい。他の部材は、ろ過層Aの内側及び/又はろ過層Cの外側に配置されてもよい。ろ過層Aの内側に配置される他の部材としては、例えば、円筒状の繊維成形品、熱可塑性樹脂製の孔あき筒状体、金属製の孔あき筒状体、及びセラミックス製の孔あき筒状体等が挙げられる。ろ過層Cの外側に配置される他の部材としては、例えば、熱接着性繊維を含む熱接着不織布等の不織布が挙げられる。ろ過層Cの外側、言い換えるならばろ過層Cよりもさらに上流側(流入側)に熱接着不織布を巻き回すことで、筒状フィルターの側面が平滑で毛羽立ちの少ない面となるため、製品の外観の面で好ましいだけでなく、熱接着不織布が筒状フィルターの側面を構成するようになり、筒状フィルターからの繊維脱落を低減することができる。本発明の筒状フィルターにおいて、ろ過層Cのさらに外側に巻き回す不織布は熱接着不織布であれば特に限定されず、高融点の熱可塑性樹脂を芯成分とし、低融点の熱可塑性樹脂を鞘成分とした芯鞘型複合繊維を含む短繊維不織布や長繊維不織布であればよい。前記熱接着不織布の繊度は特に限定されないが、1.1dtex以上8dtex以下の芯鞘型複合繊維を主とする熱接着性不織布であればよい。本発明の筒状フィルターにおいて、ろ過層Cのさらに外側に熱接着不織布を巻き回す場合、熱接着不織布を巻き回す量は1周以上10周以下、好ましくは1周以上6周以下であればよい。
【0061】
筒状フィルターは、基本的なろ過性能を満たす観点から、粒径が5.0μmの粒子に対するろ過効率が80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが特に好ましい。筒状フィルターは、基本的なろ過性能を満たす観点から、ろ過寿命が400リットル以上であることが好ましく、500リットル以上であることがより好ましく、550リットル以上であることがさらに好ましく、580リットル以上であることがさらにより好ましい。
【0062】
筒状フィルターは、長期使用性により優れる観点から、ろ過寿命が800リットル以上であることがより好ましく、950リットル以上であることがさらに好ましく、1000リットル以上であることが特に好ましい。
一方、筒状フィルターに対し、より細かい物を確実に捕集する、言い換えるならば、より高いろ過精度の筒状フィルターを得るという観点から、粒径が1.0μmの粒子に対するろ過効率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。また、この時、ろ過寿命はより長いほうが長期使用性に優れるため、300リットル以上であることが好ましく350リットル以上であることがより好ましく、400リットル以上であることが特に好ましく、420リットル以上であることが最も好ましい。
【0063】
長ろ過寿命の筒状フィルターにおいて、第1の繊維シートは、平均繊維径d1が2.6μm以上10μm以下であることが好ましく、2.8μm以上7.0μm以下であることがより好ましく、3.0μmより大きく6.0μm以下であることがさらに好ましく、3.40μmより大きく5.5μm以下であることが特に好ましい。これにより、筒状フィルター基本的な性能を保持しつつ、ろ過寿命が長くなりやすい。
【0064】
筒状フィルターは、ろ過効率をより高める観点から、粒径が1.0μmの粒子に対するろ過効率が85%以上であることがより好ましく、87%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがさらにより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【0065】
高ろ過効率の筒状フィルターにおいて、第1の繊維シートは、平均繊維径d1が0.3μm以上3.40μm以下であることが好ましく、0.8μm以上3.2μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上3.0μm以下であることがさらに好ましく、1.2μm以上3.0μm以下であることが特に好ましい。これにより、筒状フィルター基本的な性能を保持しつつ、ろ過効率が向上しやすい。
【0066】
(筒状フィルターの製造方法)
筒状フィルターの製造方法は、特に限定されないが、生産性を高め、生産コストを低減する観点から、溶融した熱可塑性樹脂を紡糸ノズルの吐出孔から吐出すると同時に前記吐出孔の周囲から噴出する高温の気体流によって引き延ばしたメルトブローン繊維を一定の速度で回転する回転軸の表面に吹きながら、前記回転軸の表面に第1の繊維シートを巻き回し、前記メルトブローン繊維を第1の繊維シートの表面に集積させてメルトブローンウェブにして巻き回すことで、第1の繊維シートとメルトブローンウェブが交互に巻き回された筒状繊維集合体Bを得る工程Bを含むことが好ましい。筒状フィルターの製造方法は、工程Bに加えて、下記の工程A及び工程Cの少なくとも一方を含むことがより好ましく、両方を含むことがさらに好ましい。
工程A:前記工程Bの前に、前記メルトブローン繊維のみを一定の速度で回転する回転軸の表面に吹き付け、メルトブローンウェブを形成しながら巻き回し、筒状繊維集合体Aを得る工程
工程C:前記工程Bの後に、前記メルトブローン繊維のみを回転軸の表面に吹き付け、メルトブローンウェブを形成しながら巻き回し、筒状繊維集合体Cを得る工程
【0067】
具体的には、筒状繊維集合体Aの厚みが5mm以上15mm以下になるまで工程Aを行った後、工程Bを行ってもよい。また、工程Bは、筒状繊維集合体Bの厚みが2mm以上12mm以下になるまで行ってもよく、その後、工程Cを行ってもよい。工程Cは、筒状繊維集合体Cの厚みが1mm以上6mm以下になるまで行ってもよい。
【0068】
熱可塑性樹脂は特に限定されず、上述したろ過層A、ろ過層B及びろ過層Cの繊維を構成することができる熱可塑性樹脂を適宜用いることができる。中でも、コスト及び筒状フィルターを使用する際の耐薬品性が高い観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン樹脂がより好ましい。
【0069】
ろ過層Aを構成する筒状繊維集合体A、ろ過層Cを構成する筒状繊維集合体C及びろ過層Bを構成する筒状繊維集合体Bにおける第2の繊維シートの平均繊維径及び繊維径のCV値が上述した好ましい範囲になりやすい観点から、溶融状態の熱可塑性樹脂の吐出孔1個あたりの吐出量は0.01g/分以上1g/分以下であることが好ましく、0.02g/分以上0.6g/分以下であることがより好ましく、0.05g/分以上0.5g/分以下であることがさらに好ましい。
【0070】
回転軸の回転速度は、回転軸の表面にメルトブローン繊維を集積させると同時に巻き回すことで筒状の繊維集合体にできる回転速度であれば特に限定されないが、回転軸の表面に沿って均一にメルトブローン繊維を集積しやすく、表面状態が平滑な筒状の繊維集合体が得られやすいという観点から、50回転/分以上400回転/分以下であることが好ましく、100回転/分以上300回転/分以下であることがより好ましく、120回転/分以上200回転/分以下であることがさらに好ましい。
【0071】
回転軸の外径は、所望の筒状フィルターの中空部の直径に応じて適宜決めればよく、特に限定されないが、一般的に、20mm以上40mm以下であってもよく、25mm以上35mm以下であってもよく、26mm以上32mm以下であってもよい。
【0072】
吐出孔と回転軸の表面までの距離は、所望とするろ過層A及びろ過層Cの外径(厚み)により適宜調整することができ、特に限定されないが、例えば、筒状フィルターの生産性や得られる筒状フィルターにおける、メルトブローン法で製造されている繊維の繊維径の観点から、吐出孔の中心から回転軸の表面までの距離は8cm以上30cm以下であることが好ましい。吐出孔の中心から回転軸の表面までの距離が8cm以上であると、吐出孔から噴出、引き延ばされた繊維が、溶融状態かつ繊維の形状を維持した状態で回転軸の表面に達しやすく、所望の繊維集合体が得られやすい。また、吐出孔の中心から回転軸の表面までの距離が30cm以下であると、吐出孔から噴出、引き延ばされた繊維が、周囲の空気流の影響で回転軸の方向からずれることが抑制され、回転軸に巻き取られやすくなり、筒状フィルターの生産性(生産効率、歩留まり)が向上しやすい。さらに、吐出孔の中心から回転軸の表面までの距離が30cm以下であると、吐出孔から噴出、引き延ばされた繊維が冷却して完全に固化する前に回転軸の表面に到達しやすく、回転軸に巻き取られた繊維同士が熱接着しやすく、筒状フィルター全体の強度が低下することがなく、ろ過の際、筒状フィルターを通過する液体の圧力によって筒状フィルターが変形することが抑制される。吐出孔の中心から回転軸の表面までの距離は10cm以上28cm以下であると好ましく、12cm以上25cm以下であることがさらに好ましい。
【0073】
図3は、本発明で用いる1例の筒状フィルターの製造装置の概略説明図である。該製造装置10は、押出機11、気体加熱器12、紡糸ノズル13、及び回転軸14を備えている。
【0074】
ギアポンプ(図示なし)にて熱可塑性樹脂を押出機11に供給し、押出機11にて熱可塑性樹脂を所定の温度で溶融混練し、得られた溶融状態の熱可塑性樹脂を紡糸ノズル13に供給する。押出機11は、1軸押出機でもよく、2軸押出機でもよい。溶融混練の温度は、熱可塑性樹脂を溶融し得る温度であればよく、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂の融点をTmとした場合、Tm+50℃以上Tm+200℃以下であることが好ましく、Tm+100℃以上Tm+180℃以下であることがより好ましい。熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂の場合、溶融混練の温度は、200℃以上350℃以下であることが好ましく、250℃以上330℃以下であることがより好ましい。
【0075】
気体加熱器12は、加熱気体を紡糸ノズル13に供給する。加熱気体は、加熱空気でもよく、加熱不活性気体でもよいが、コストの点から、加熱空気が好ましい。加熱気体の温度は、熱可塑性樹脂の溶融混練の温度と同等でもよく、例えば、熱可塑性樹脂の融点をTmとした場合、Tm+10℃以上Tm+150℃以下であることが好ましく、Tm+20℃以上Tm+100℃以下であることがより好ましく、Tm+25℃以上Tm+60℃以下であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂の場合、加熱気体の温度は、180℃以上260℃以下であることが好ましく、185℃以上220℃以下であることがより好ましい。加熱気体の圧力は、安定して溶融樹脂を吐出し、メルトブローン法で作られる繊維について、性能・各種物性値のばらつきを低減するという観点から、例えば、0.02MPa以上0.1MPa以下であることが好ましく、0.03MPa以上0.08MPa以下であることがより好ましい。
【0076】
紡糸ノズル13としては、一般的なメルトブローン繊維の製造に用いるものを適宜用いることができる。紡糸ノズル13は、溶融状態の熱可塑性樹脂を吐出する複数の吐出孔、及び各吐出孔の周囲に配置された高速の加熱気体を吹き付ける気体噴射孔を備えている。吐出孔の孔径は、例えば、0.03mm以上0.80mm以下であってもよく、0.06mm以上0.40mm以下であってもよく、0.10mm以上0.25mm以下であってもよい。また、隣接する吐出孔の間隔は0.1mm以上2.0mm以下でもよいし、0.15mm以上1.8mm以下でもよいし、0.2mm以上1.6mm以下であってもよい。溶融状態の熱可塑性樹脂を吐出孔から吐出すると同時に、気体噴射孔から高速の加熱気体を吹き付けて溶融状態の熱可塑性樹脂を引き延ばすメルトブローン法で、吐出された溶融状態の熱可塑性樹脂を繊維状にし、同時に引き延ばすことで、メルトブローン繊維15を得る。
【0077】
回転軸14としては、一般的なマンドレル等を用いることができる。メルトブローン繊維15を一定の速度で回転する回転軸14の表面に所定時間筒状に集積することで、所定の外径(厚み)を有する筒状繊維集合体A(24)を形成する。筒状繊維集合体A(24)は、複数本のメルトブローン繊維が繊維の長さ方向に接着されて形成した繊維束を含んでいてもよい。筒状繊維集合体Aにおいて、メルトブローン繊維同士は、筒状フィルターの周囲方向及び厚み方向において互いに接着している。
【0078】
次に、筒状繊維集合体A(24)に対し、第1の繊維シート(51)を巻き回しながら、メルトブローン繊維(15)を第1の繊維シート(51)の表面に向けて吐出することで、第1の繊維シート(51)の表面にメルトブローン繊維(15)を集積させると同時に巻き回すことで、第1の繊維シート(51)とメルトブローン繊維(15)からなるメルトブローンウェブ(図示省略)とが交互に配置され、筒状に巻き回された筒状繊維集合体B(25)を形成する。
図2に示されているように、第1の繊維シート(51)の表面に集積したメルトブローン繊維(15)からなるメルトブローンウェブは、第1の繊維シート(51)より厚みが小さい第2の繊維シート(52)となり、厚み方向に隣接する第1の繊維シート(51)はその間に配置されている第2の繊維シート(52)を介して接着している。第1の繊維シート(51)、好ましくは帯状の不織布(51)を幅方向で部分的に重なるように巻き回しながらメルトブローン繊維(15)を第1の繊維シート(51)の表面に集積することで筒状繊維集合体B(25)を形成する。
【0079】
第1の繊維シートとして2層以上の繊維シートを含む多層繊維シート(好ましくは2層以上の不織布を含む多層不織布)を用いる場合、2層以上の繊維シート(好ましくは不織布)を重ね合わせた状態の第1の繊維シート(51)を、筒状繊維集合体A(24)に対して巻きまわしながら、メルトブローン繊維(15)を第1の繊維シート(51)の表面に向けて吐出することで、第1の繊維シート(51)の表面にメルトブローン繊維(15)を集積させると同時に巻き回すことで、第1の繊維シート(51)とメルトブローン繊維(15)からなるメルトブローンウェブが交互に配置され、筒状に巻き回された筒状繊維集合体B(25)を形成する。第1の繊維シート(51)の表面に集積したメルトブローン繊維(15)からなるメルトブローンウェブは、第1の繊維シート(51)より厚みが小さい第2の繊維シート(52)となり、厚み方向に隣接する第1の繊維シート(51)はその間に配置されている第2の繊維シート(52)を介して接着している。第1の繊維シートを構成する多層繊維シートにおいて、2層以上の繊維シートは互いに重ね合わせているだけで、接着していない。第1の繊維シートが第1の繊維シートX1及び第1の繊維シートY1を含む多層繊維シートであり、第1の繊維シートX1となる不織布及び第1の繊維シートY1となる不織布が上述した(r)及び(s)の少なくとも一方の要件を満たす場合、第1の繊維シートX1となる不織布及び第1の繊維シートY1となる不織布を重ね合わせた状態の第1の繊維シートを、第1の繊維シートX1となる不織布が第1の繊維シートY1となる不織布よりも内側になるように巻き回すことが好ましい。
【0080】
なお、筒状繊維集合体Aに対し、第1の繊維シートとなる不織布を巻き回す際、不織布を2つ以上の異なる位置から筒状繊維集合体Aに巻き回してもよい。
【0081】
図4は、本発明の1例の筒状フィルターのろ過層Aとろ過層Bの配置関係を説明する概略説明図である。
図4に示されているように、ろ過層A(4)を構成する筒状繊維集合体A(24)に、第1の繊維シート、好ましくは帯状の不織布(51)を幅方向が部分的に重なるように巻き回しながらその表面にメルトブローン繊維を集積して第2の繊維シート(図示省略)を形成することで筒状繊維集合体B(25)からなるろ過層B(5)を形成することが好ましい。これにより、不織布(51)が筒状フィルターの長さ方向に所定幅ずつ、例えば、0.5~10mmずつ、より好ましくは1~5mmずつ、特に好ましくは1~2mmずつ進みながら巻き回され、螺旋状に重なった不織布(51)とその表面に集積されたメルトブローン繊維からなる第2の繊維シートを含む筒状繊維集合体Bからなるろ過層B(5)を形成することになり、ろ過効率が向上する。第2の繊維シートは、複数本のメルトブローン繊維が繊維の長さ方向に接着されて形成した繊維束を含んでいてもよい。また、
図4に示されているように、幅方向に斜めになるように皺(8)を付けながら、ろ過層A(4)を構成する筒状繊維集合体A(24)に不織布(51)を巻き回すことが好ましい。これにより、ろ過層Bを構成する不織布(51)間に長手方向の空隙が生じず、ろ過効率及びろ過寿命を同時に向上させることができる。
【0082】
次に、筒状繊維集合体B(25)の表面に向けてメルトブローン繊維(15)吐出することで、筒状繊維集合体B(25)の表面にメルトブローン繊維(15)を集積させると同時に巻き回す。これを所定時間連続して行うことで、所定の外径を有する筒状繊維集合体C(26)を形成する。筒状繊維集合体C(26)は、複数本のメルトブローン繊維が繊維の長さ方向に接着されて形成した繊維束を含んでいてもよい。筒状繊維集合体Cにおいて、メルトブローン繊維同士は、筒状フィルターの周囲方向及び厚み方向において互いに接着している。
【0083】
回転軸14の表面に筒状に集積された筒状繊維集合体A(24)、筒状繊維集合体B(25)、及び筒状繊維集合体C(26)は、矢印(16)の方向に移動することで、マンドレルから離れ、筒状繊維集合体A(24)、筒状繊維集合体B(25)、及び筒状繊維集合体C(26)を含む筒状繊維集合体(21)を得ることができる。次に、筒状繊維集合体21を所定の長さに切断することで、筒状繊維集合体A(24)からなるろ過層A(4)、筒状繊維集合体B(25)からなるろ過層B(5)、筒状繊維集合体C(26)からなるろ過層C(6)を含むろ過層を備えた筒状フィルターを得ることができる。
【0084】
筒状フィルターは、液体から固形物を取り除く種々の用途に適しており、例えば、純水、飲料水、薬液、各種油脂、めっき液、塗料溶液及び電子工業用洗浄水等の液体をろ過するのに用いることができる。
【実施例0085】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限られたものではない。
【0086】
実施例及び比較例で用いた測定方法を説明する。
【0087】
(厚み)
繊維シートの厚みは、荷重3gの条件下で測定した。なお、ろ過層Bにおいて、第1の繊維シート及び第2の繊維シートは、フィルターを長さ方向に切断し展開後ろ過層Aを剥離させ、互いが接着した1周分を採取後ピンセット等で破れないように第1の繊維シートと第2の繊維シートを剥離した後に、各々の厚みを測定した。
【0088】
(目付)
繊維シートの目付は、任意の大きさで採取した長方形サンプルの面積と重さから測定した。なお、ろ過層Bにおいて、第1の繊維シート及び第2の繊維シートは、フィルターを長さ方向に切断して展開後、ろ過層Aを剥離させ、互いが接着した1周分を採取後ピンセット等で破れないように第1の繊維シートと第2の繊維シートを剥離して採取し、各々の目付を測定した。
【0089】
(密度)
繊維シートの密度は、上記のように測定した厚み及び目付に基づいて算出した。
密度=目付/厚み
【0090】
(平均繊維径及び繊維径のCV値の測定)
繊維集合体の平均繊維径及び繊維径のCV値は、繊維集合体を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ・アメテックジャパン製、型番「SU3500」、加速電圧:5.00kV、倍率:200倍から400倍)にて拡大観察し、得られた10箇所の写真を画像解析ソフト(ClickMeasure)にて解析して、任意に選択した100個の繊維の繊維径を測定し、その算術平均値を平均繊維径とした。そして、任意に選択した100個の繊維の繊維径を母集団とした標準偏差を算出し、以下の式にて繊維径のCV値を算出した。
繊維径のCV値=繊維径の標準偏差/平均繊維径
【0091】
(平均孔径、最大孔径、最多孔径及び最小孔径)
JIS K 3832(1990)(精密ろ過膜エレメント及びモジュールのバブルポイント試験方法)に準じ、Porous Material Inc.製のキャピラリーフローポロメータ「CFP-1200-AEXC-P」を使用し、繊維集合体の細孔径を測定した。
【0092】
(ろ過効率)
JIS Z 8901に準ずる試験用ダスト(JIS11種[中位径2μm]とJIS8種[中位径6.6~8.6μm]を1:1の質量割合で混合したもの)を濃度が30ppmとなるように調整した水分散液を試験用懸濁液として用い、前記試験用懸濁液を濃度が均一になるよう攪拌しながらカートリッジフィルターの外側から中空部に向かって15リットル/分の流量でろ過を行い、ろ過処理前の試験用懸濁液に含まれる1.0μm、3.0μm、5.0μm及び10.0μmの粉体(粒子)の個数M1μm、M3μm、M5μm、M10μmと、ろ過を開始してから1分後の筒状フィルター通過した試験用懸濁液に含まれる粒径が1.0μm、3.0μm、5.0μm及び10.0μmの粒子の個数N1μm、N3μm、N5μm、及びN10μmを精密粒度分布装置(商品名:Multisizer 4e、ベックマン・コールター株式会社製)にて測定し、下記数式にてろ過効率を求めた。
・粒径1.0μmの粒子のろ過効率(%)=((M1μm-N1μm)/M1μm)×100
・粒径3.0μmの粒子のろ過効率(%)=((M3μm-N1μm)/M3μm)×100
・粒径5.0μmの粒子のろ過効率(%)=((M5μm-N5μm)/M5μm)×100
・粒径10.0μmの粒子のろ過効率(%)=((M10μm-N10μm)/M10μm)×100
【0093】
(ろ過寿命)
JIS Z 8901に準ずる試験用粉体(JIS8種試験用粉体とJIS11種試験用粉体を用意し、両者を質量比が1:1になるように混合した粉体を使用)を水に分散させて濃度30ppmの試験用懸濁液を作製した。次に試験用懸濁液を均一に攪拌しながら筒状フィルターの外周側から内周側中空部へ向けて、15リットル/分の流量で通過させ、この流量を維持するための通水圧力が0.2MPaになったときの総通水量(リットル)を筒状フィルターのろ過寿命とした。
【0094】
(ろ過層の質量割合)
筒状フィルターを用意し、最初にろ過層A、B、Cを合わせた合計質量を電子天秤で測定した。次に、筒状フィルターのろ過層に対し、その厚み方向に対して切込みを入れ、繊維が飛散しないようにしてろ過層Cを筒状フィルターから剥がし、第1の繊維シート(具体的には不織布)が現れ、側面が全て不織布となった段階でろ過層Cを分離、回収する作業を終了し、それまでに筒状フィルターから剥がしたろ過層Cを構成する繊維を集め、その質量を電子天秤にて秤量した。次に、筒状フィルターに巻き回されている不織布を剥がし、全ての不織布を剥がし終えたところでろ過層Bを分離、回収する作業を終了し、ろ過層Bを構成する不織布及び繊維の質量を測定した。筒状フィルターからろ過層C及びろ過層Bを剥離した後に残っている部分をろ過層Aとしてその質量を測定した。測定したろ過層A、B、Cの合計質量と各ろ過層の質量に基づいて、ろ過層A、ろ過層B、及びろ過層Cの質量割合を算出した。
なお、筒状フィルターに対し、ろ過層Cの外側にさらに熱接着不織布を巻いているときは、熱接着不織布を除去してからろ過層A、ろ過層B、及びろ過層Cの合計質量を測定する。
【0095】
(通気圧損)
筒状フィルターに対し、空気を流入させ、通気量が400リットル/分の際の筒状フィルターの入口と出口の圧力差(圧損(MPa))を測定し、通気圧損とした。
【0096】
(実施例1)
図3に示す製造装置を用いて筒状フィルターを作製した。具体的には、ポリプロピレン樹脂(融点160℃、JIS K 7210に準ずるメルトフローレート(測定温度230℃、荷重2.16kgf(21.18N))30g/10min)を押出機で紡糸温度330℃にて溶融混錬し、溶融状態のポリプロピレン樹脂を紡糸ノズルに供給した。紡糸ノズルの吐出孔の吐出方向の延長線上にマンドレルが位置し、かつ、マンドレルの長手方向を紡糸ノズルの複数の吐出孔からなる列に対して斜めになるように配置した。マンドレルは、直径(外径)が28mm、回転速度は150回転/分であった。紡糸ノズルは、1.0mm間隔で配置された300個の吐出孔を有する。各吐出孔の孔径は0.3mmであり、吐出孔1個あたりの吐出量が0.25g/分になるように吐出孔から溶融状態の熱可塑性樹脂を吐出すると同時に、吐出孔の周囲に配置された気体噴射孔から温度が200℃、圧力が0.015MPaの加熱空気を吹き付けて、溶融状態の熱可塑性樹脂を繊維状にし、同時に引き延ばすことで得られたメルトブローン繊維をマンドレルの前段の表面に集積させると同時に連続して巻き回した。これを所定時間連続することで、メルトブローン繊維を集積、巻き回すことで筒状に集積させた筒状繊維集合体Aを得た。中空部分(中空部分の直径はマンドレルの外径と一致する。)及び筒状繊維集合体Aからなる円筒状物の外径は50mmであった。その後、メルトブローン不織布(ポリプロピレン樹脂の単一繊維のみからなる市販のメルトブローン不織布、平均繊維径2.02μm、目付30.4g/m
2、厚み0.27mm、JIS L 1096に準じてフラジール型試験機を用いて測定した通気度が4.0cm
3/cm
2/秒、以下、MB不織布1とも記す。)を幅30mmにスリットしたものを、メルトブローン繊維がマンドレルに対して吐出される方向から逆の方向(言い換えるならば、マンドレルを挟んでメルトブローン繊維を吐出する紡糸ノズルとは反対側の方向)から筒状繊維集合体Aに挿入し、1~2mmずつ進ませながら螺旋状に重なるように筒状繊維集合体Aの表面に巻き回すと同時に、巻き回したMB不織布1の表面に向けてメルトブローン繊維を吐出し、MB不織布1の表面にメルトブローン繊維を集積させると同時に巻き回すことで、MB不織布1とメルトブローン繊維からなるメルトブローンウェブとが厚み方向に交互に配置されている筒状繊維集合体Bを得た。筒状繊維集合体Bにおいて、MB不織布1は第1の繊維シートであり、連続して巻き回されているMB不織布1において、厚み方向に隣接するMB不織布1の間、例えば巻き回されたMB不織布1と、当該MB不織布1の1周前に巻き回されたMB不織布1との間に、メルトブローン繊維が集積してメルトブローンウェブとなっており、当該メルトブローンウェブが第2の繊維シートである。そして、第1の繊維シート同士、すなわち、MB不織布1と、当該MB不織布1の1周前に巻き回されたMB不織布1は両者の間に存在する第2の繊維シートを介して接着している。マンドレル、筒状繊維集合体A、及び筒状繊維集合体Bで構成された円筒状物の外径は57mmであった。その後、筒状繊維集合体Bの表面にメルトブローン繊維を連続して集積させながら巻き回すことでメルトブローン繊維を筒状に集積し、筒状繊維集合体Cを形成し、筒状繊維集合体A、筒状繊維集合体B、及び筒状繊維集合体Cからなる筒状繊維集合体(外径65mm)を得た。次に、筒状繊維集合体を長さが250mmになるように切断することで、筒状繊維集合体Aからなるろ過層A(ろ過層Aの厚み:11mm)、筒状繊維集合体Bからなるろ過層B(ろ過層Bの厚み:3.5mm)、筒状繊維集合体Cからなるろ過層C(ろ過層Cの厚み:4mm)を含むろ過層を備えた筒状フィルターを得た。得られた筒状フィルターについて、ろ過層A、ろ過層B、ろ過層Cに分解し、それぞれのろ過層を前記走査型電子顕微鏡を用いて200倍~400倍に拡大し、観察したところ、ろ過層A(筒状繊維集合体A)、ろ過層C(筒状繊維集合体C)、及びろ過層Bに含まれる第2の繊維シートにおいて、複数本の繊維が長さ方向に融着して形成された繊維束が確認された。
【0097】
(実施例2)
幅30mmのMB不織布1に代えて、幅40mmのMB不織布1を用いた以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0098】
(実施例3)
幅30mmのMB不織布1に代えて、幅50mmのMB不織布1を用いた以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0099】
(実施例4)
幅30mmのMB不織布1に代えて、幅30mmのメルトブローン不織布(ポリプロピレン樹脂の単一繊維のみからなる市販のメルトブローン不織布、平均繊維径2.43μm、目付30.0g/m2、厚み0.36mm、JIS L 1096に準じてフラジール型試験機を用いて測定した通気度が5.0cm3/cm2/秒、以下、MB不織布2とも記す。)を用いた以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0100】
(実施例5)
マンドレルを紡糸ノズルの複数の吐出孔からなる列に対して長手方向が平行になるように配置したこと、及び幅30mmのMB不織布1に代えて、幅40mmのMB不織布2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0101】
(実施例6)
幅30mmのMB不織布1に代えて、幅50mmのMB不織布2を用いた以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0102】
(実施例7)
幅30mmのMB不織布1に代えて、幅30mmのメルトブローン不織布(ポリプロピレン樹脂の単一繊維のみからなる市販のメルトブローン不織布、平均繊維径3.90μm、目付30.0g/m2、厚み0.36mm、JIS L 1096に準じてフラジール型試験機を用いて測定した通気度が65.2cm3/cm2/秒、以下、MB不織布3とも記す。)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0103】
(実施例8)
マンドレルを紡糸ノズルの複数の吐出孔からなる列に対して中心軸が平行になるように配置したこと、幅30mmのMB不織布1に代えて、幅30mmのメルトブローン不織布(ポリプロピレン樹脂の単一繊維のみからなる市販のメルトブローン不織布、平均繊維径3.44μm、目付30.0g/m2、厚み0.40mm、JIS L 1096に準じてフラジール型試験機を用いて測定した通気度が28.0cm3/cm2/秒、以下、MB不織布4とも記す。)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0104】
(実施例9)
幅30mmのMB不織布1に代えて、幅40mmのMB不織布4を用いた以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0105】
(実施例10)
幅30mmのMB不織布1に代えて、幅50mmのMB不織布4を用いた以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0106】
(実施例11)
幅30mmのMB不織布1に代えて、幅70mmのMB不織布4を用いた以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0107】
(実施例12)
幅30mmのMB不織布1に代えて、幅40mmのMB不織布3を用いた以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0108】
(実施例13)
幅30mmのMB不織布1に代えて、幅40mmのMB不織布5を用いた以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0109】
(実施例14)
幅30mmのMB不織布1に代えて、2枚の幅40mmのMB不織布1を重ね合わせた状態で用い、筒状繊維集合体Aからなるろ過層Aの厚みが9.3mm、筒状繊維集合体Bからなるろ過層Bの厚みが6.4mm、筒状繊維集合体Cからなるろ過層Cの厚みが3.2mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0110】
(実施例15)
幅30mmのMB不織布1に代えて、1枚の幅40mmのMB不織布1と1枚の幅40mmのMB不織布2を重ね合わせた状態で用い、MB不織布1の方がMB不織布2より内側になるように巻き回し、筒状繊維集合体Aからなるろ過層Aの厚みが8.2mm、筒状繊維集合体Bからなるろ過層Bの厚みが6.9mm、筒状繊維集合体Cからなるろ過層Cの厚みが3.0mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0111】
(実施例16)
幅30mmのMB不織布1に代えて、1枚の幅40mmのMB不織布1と1枚の幅40mmのMB不織布4を重ね合わせた状態で用い、MB不織布1の方がMB不織布4より内側になるように巻き回し、筒状繊維集合体Aからなるろ過層Aの厚みが7.8mm、筒状繊維集合体Bからなるろ過層Bの厚みが8.0mm、筒状繊維集合体Cからなるろ過層Cの厚みが2.9mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0112】
(実施例17)
幅30mmのMB不織布1に代えて、2枚の幅40mmのMB不織布2を重ね合わせた状態で用い、筒状繊維集合体Aからなるろ過層Aの厚みが9.4mm、筒状繊維集合体Bからなるろ過層Bの厚みが5.2mm、筒状繊維集合体Cからなるろ過層Cの厚みが3.7mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0113】
(実施例18)
幅30mmのMB不織布1に代えて、1枚の幅40mmのMB不織布2と1枚の幅40mmのMB不織布4を重ね合わせた状態で用い、MB不織布2の方がMB不織布4より内側になるように巻き回し、筒状繊維集合体Aからなるろ過層Aの厚みが8.1mm、筒状繊維集合体Bからなるろ過層Bの厚みが6.1mm、筒状繊維集合体Cからなるろ過層Cの厚みが3.7mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0114】
(実施例19)
幅30mmのMB不織布1に代えて、2枚の幅40mmのMB不織布4を重ね合わせた状態で用い、筒状繊維集合体Aからなるろ過層Aの厚みが8.1mm、筒状繊維集合体Bからなるろ過層Bの厚みが7.6mm、筒状繊維集合体Cからなるろ過層Cの厚みが3.2mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0115】
(実施例20)
幅30mmのMB不織布1に代えて、1枚の幅40mmのMB不織布4と1枚の幅40mmのMB不織布3を重ね合わせた状態で用い、MB不織布4の方がMB不織布3より内側になるように巻き回し、筒状繊維集合体Aからなるろ過層Aの厚みが8.4mm、筒状繊維集合体Bからなるろ過層Bの厚みが6.3mm、筒状繊維集合体Cからなるろ過層Cの厚みが3.3mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0116】
(実施例21)
幅30mmのMB不織布1に代えて、2枚の幅40mmのMB不織布3を重ね合わせた状態で用い、筒状繊維集合体Aからなるろ過層Aの厚みが8.4mm、筒状繊維集合体Bからなるろ過層Bの厚みが6.2mm、筒状繊維集合体Cからなるろ過層Cの厚みが3.5mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0117】
(実施例22)
幅30mmのMB不織布1に代えて、1枚の幅40mmのMB不織布3と1枚の幅40mmのMB不織布5を重ね合わせた状態で用い、MB不織布3の方がMB不織布5より内側になるように巻き回し、筒状繊維集合体Aからなるろ過層Aの厚みが8.3mm、筒状繊維集合体Bからなるろ過層Bの厚みが7.3mm、筒状繊維集合体Cからなるろ過層Cの厚みが3.0mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0118】
(実施例23)
幅30mmのMB不織布1に代えて、2枚の幅40mmのMB不織布5を重ね合わせた状態で用い、筒状繊維集合体Aからなるろ過層Aの厚みが7.8mm、筒状繊維集合体Bからなるろ過層Bの厚みが7.3mm、筒状繊維集合体Cからなるろ過層Cの厚みが3.3mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0119】
(比較例1)
筒状繊維集合体Aを形成し続けることで、筒状繊維集合体Aの外径が65mmになるまでメルトブローン繊維を巻き付けることで、筒状繊維集合体B及び筒状繊維集合体Cを形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして筒状フィルターを得た。
【0120】
(比較例2)
芯成分がポリプロピレン樹脂、鞘成分が高密度ポリエチレン樹脂であり、芯成分及び鞘成分が同心円状に配置されている芯鞘型複合繊維(平均繊維径:18.36μm、繊維長:51mm)のみからなるパラレルカード機にて製造したカードウェブ(目付:25.5g/m2)を用意し、前記カードウェブに対し、高圧水流(水圧2MPa)を表面に向けて1回、裏面に向けて1回噴射し、水流交絡処理を行った。次いで120℃の熱風で乾燥した後、140℃の熱風で加熱して、芯鞘型複合繊維の鞘成分を溶融しながら直径30mmの鉄芯に、外径55mmに達するまで連続的に巻き取ることで筒状繊維集合体Iを作製した。
次に、筒状繊維集合体Iの作製にて使用されたものと同じ芯鞘型複合繊維のみからなるパラレルカードウェブ(目付:25.5g/m2)を作製し、高圧水流(水圧2MPa)を表面に向けて1回、裏面に向けて1回噴射し、水流交絡処理を行った。次いで110℃の熱風で乾燥した後、140℃の熱風で加熱して、前記鞘成分を溶融させることで繊維同士の交点を熱接着させて熱接着不織布I(目付:25.5g/m2、厚み:0.33mm、密度:0.078g/cm3)を得た。
上記で得られた筒状繊維集合体Iの外面に向かって、熱接着不織布Iの先端部を140℃に加熱した金属製のへらを押し当てて熱圧着し、次いで筒状繊維集合物を回転させることで熱接着不織布Iの巻き付けを開始し、熱接着不織布Iを2周巻いた後、メルトブローン不織布(ポリプロピレン樹脂の単一繊維のみからなる、平均繊維径:2.01μm、目付:64.0g/m2、厚み:0.9mm、JIS L1096に準じ、フラジール型試験機を用いて測定した通気度:8.5cm3/cm2/秒)を、熱接着不織布Iの下側に重ねた状態(但し、熱接着不織布Iとメルトブローン不織布は重ねた状態で接着していない)で供給しながら熱接着不織布Iと一緒に3周巻き付けて、筒状繊維集合体IIを形成した。
続いて、筒状繊維集合体IIの表面に再び熱接着不織布Iのみを巻き回し、外径が65mmとなるまで巻き付け、最外周の熱接着不織布Iの外周面に、金属棒面に幅1mmの金属フランジが10mm間隔で植設された加熱体(表面温度140℃)を押し当てることにより、金属フランジに当接させた熱接着性繊維の低融点成分である鞘成分を溶融させることにより接着し剥離しないように成形し、筒状フィルターを作製した。
【0121】
(比較例3)
比較例2と同様にして筒状繊維集合体I及び熱接着不織布Iを作製した。
メルトブローン不織布を用いず、筒状繊維集合体Iに熱接着不織布Iのみを巻き回した以外は、比較例2と同様にして筒状フィルターを作製した。
【0122】
実施例及び比較例において、ろ過層Bを形成する繊維集合体における第1の繊維シート及び第2の繊維シートの平均繊維径、繊維径のCV値、厚み、目付及び密度、ろ過層A及びろ過層Cを形成する繊維集合体の平均繊維径及び繊維径のCV値、並びにろ過層の質量割合を上述したとおりに測定した。その結果を下記表1~3、5及び6に示した。また、実施例及び比較例において、筒状フィルターのろ過性能を上述したとおりに測定した。その結果を下記表4及び7に示した。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
上記表1~7から分かるように、実施例の筒状フィルターは、粒径が5.0μmの粒子に対するろ過効率が75.0%以上であり、かつ、ろ過寿命が400リットル以上であったり、粒径が1.0μmの粒子に対するろ過効率が80%以上であり、かつろ過寿命が300L以上であったり、粒径が10μmの粒子に対するろ過効率が80%以上であり、かつろ過寿命が2000L以上となり、基本的なろ過効率及びろ過寿命を有する。
【0131】
一方、ろ過層がメルトブローン繊維を集積した繊維集合体のみからなり、厚み又は密度が異なる繊維シートを交互に巻き回したろ過層を含んでいない比較例1の筒状フィルターは、ろ過性能が悪く、粒径が5.0μmの粒子に対するろ過効率が75.0%未満であるうえ、ろ過寿命を測定することができなかった。ろ過層に熱接着不織布及びメルトブローン不織布を用いた比較例2の筒状フィルターは、厚みが異なるメルトブローン不織布と熱接着不織布が筒状フィルターの厚み方向において交互に配置されているろ過層を有するものの、メルトブローン不織布が熱接着不織布を介して接着しておらず、ろ過寿命が400L未満であり、基本的なろ過性能を発揮することが困難であった。比較例3の筒状フィルターは、厚み又は密度が異なる繊維シートが交互に配置されているろ過層を有しておらず、粒径が5.0μmの粒子に対するろ過効率が75.0%未満であり、基本的なろ過性能を発揮することが困難であった。
【0132】
実施例2と、実施例14~16の対比から分かるように、第1の繊維シートとして多層繊維シートを用いた実施例14~16が、粒径が1.0μmの粒子に対するろ過効率が向上していた。また、第1の繊維シートとして平均繊維径又は密度が異なる第1の繊維シートX1及び第1の繊維シートY1からなる多層繊維シート(2層繊維シート)を、平均繊維径が小さい又は密度が高い第1の繊維シートX1が第1の繊維シートY1よりも内側になるように巻回した実施例15及び16が、第1の繊維シートとして平均繊維径及び密度が同じである第1の繊維シートX1及び第1の繊維シートY1からなる多層繊維シート(2層繊維シート)を用いた実施例14より、ろ過寿命が長く、フィルターの用途等により使い分けが可能である。
実施例5と、実施例17及び18の対比から分かるように、第1の繊維シートとして多層繊維シートを用いた実施例17及び18の方が、粒径が1.0μmの粒子に対するろ過効率が向上していた。また、第1の繊維シートとして平均繊維径又は密度が異なる第1の繊維シートX1及び第1の繊維シートY1からなる多層繊維シート(2層繊維シート)を、平均繊維径が小さい又は密度が高い第1の繊維シートX1が第1の繊維シートY1よりも内側になるように巻回した実施例18が、第1の繊維シートとして平均繊維径が同じである第1の繊維シートX1及び第1の繊維シートY1からなる多層繊維シート(2層繊維シート)を用いた実施例17より、ろ過寿命が長かった。
また、第1の繊維シートの平均繊維径が小さい実施例14~16に比べて、第1の繊維シートの平均繊維径が大きい実施例17及び18の方が、ろ過効率が劣る傾向があるが、通気圧損が低く、ろ過寿命が長かった。
また、第1の繊維シートの平均繊維径が実施例14~18に比べて高い実施例19及び20は、粒径が3.0μmの粒子に対するろ過効率が高く、実施例14~18よりろ過寿命が長いため、小さな粒子は無視し、3.0μm以上の大きさの粒子を遮断する目的において好適である。また、第1の繊維シートY1の平均繊維径を大きくすることでろ過寿命を重視することもできる。
また、第1の繊維シートの平均繊維径が実施例14~20に比べて高い実施例21及び22は、粒径が5.0μmの粒子に対するろ過効率が高く、このサイズの粒子を遮断する目的において好適である。
また、第1の繊維シートの平均繊維径が実施例14~22に比べて高い実施例23は、粒径が10.0μmの粒子に対するろ過効率が高く、ろ過寿命も長いことから、ろ液中に異物が多い、異物のサイズが大きいときに使用するフィルターとして好ましい。
【0133】
本発明は、特に限定されないが、例えば、下記の実施形態を含む。
【0134】
[1]筒状繊維集合体で形成されたろ過層を含む筒状フィルターであって、
前記ろ過層は、第1の繊維シートと第2の繊維シートを交互に筒状に巻き回した筒状繊維集合体Bで形成されたろ過層Bを含み、
ろ過層Bの厚み方向において、第1の繊維シートと第2の繊維シートは交互に配置されており、第1の繊維シートは第2の繊維シートを介して接着しており、
下記(a)及び(b)の少なくとも一方の要件を満たす、筒状フィルター。
(a)第1の繊維シートの厚みH1は第2の繊維シートの厚みH2より大きい
(b)第1の繊維シートの密度D1は第2の繊維シートの密度D2より大きい
[2]第1の繊維シートの厚みH1と第2の繊維シートの厚みH2の比H1/H2は1.1以上15.0以下である、[1]に記載の筒状フィルター。
[3]第1の繊維シートの密度D1と第2の繊維シートの密度D2の比D1/D2は1.1以上10.0以下である、[1]又は[2]に記載の筒状フィルター。
[4]第1の繊維シートは、幅が15mm以上70mm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の筒状フィルター。
[5]第1の繊維シートは、平均繊維径d1が0.3μm以上20μm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の筒状フィルター。
[6]第1の繊維シートは、目付W1が15g/m2以上100g/m2以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の筒状フィルター。
[7]第2の繊維シートは、平均繊維径d2が0.3μm以上30μm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の筒状フィルター。
[8]第2の繊維シートは、目付W2が2g/m2以上15g/m2以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の筒状フィルター。
[9]第1の繊維シートの平均繊維径d1と第2の繊維シートの平均繊維径d2の比d1/d2は0.01以上2.0以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の筒状フィルター。
[10]第1の繊維シートの目付W1と第2の繊維シートの目付W2の比W1/W2は1.1以上50以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の筒状フィルター。
[11]第1の繊維シートは、2層以上の繊維シートを含む多層繊維シートである、[1]~[10]のいずれかに記載の筒状フィルター。
[12]前記多層繊維シートにおいて、各々の繊維シートは、平均繊維径及び密度が実質的に同じである、[11]に記載の筒状フィルター。
[13]前記多層繊維シートは、繊維シートX1及び繊維シートY1を含み、繊維シートX1及び繊維シートY1は、下記(r)及び(s)の少なくとも一方の要件を満たし、繊維シートX1が繊維シートY1よりも内側になるように巻回されている、[11]に記載の筒状フィルター。
(r):繊維シートX1の平均繊維径が、繊維シートY1の平均繊維径より小さい
(s):繊維シートX1の密度が、繊維シートY1の密度より大きい
[14]第1の繊維シートはメルトブローン不織布、第2の繊維シートはメルトブローンウェブである、[1]~[13]のいずれかに記載の筒状フィルター。
[15]前記ろ過層は、ろ過層Bに加えて、ろ過層A及びろ過層Cを含み、
前記筒状フィルターの中心部に存在する内周側の中空部から筒状フィルターの外周側に向け、前記中空部側からろ過層A、ろ過層B、及びろ過層Cの順番に配置されている[1]~[14]のいずれかに記載の筒状フィルター。
[16]ろ過層Aは、平均繊維径が0.3μm以上30μm以下、かつ繊維径のCV値が0.25以上1.0以下の筒状繊維集合体Aで形成され、及び
ろ過層Cは、平均繊維径が3μm以上30μm以下、かつ繊維径のCV値が0.25以上2.5以下の筒状繊維集合体Cで形成されている、[15]に記載の筒状フィルター。 [17]ろ過層A、ろ過層B及びろ過層Cの合計質量を100質量%としたとき、ろ過層Aの含有量が30質量%以上70質量%以下であり、ろ過層Bの含有量が15質量%以上50質量%以下であり、及びろ過層Cの含有量が10質量%以上30質量%以下である、[15]又は[16]に記載の筒状フィルター。
[18]第1の繊維シートは、平均繊維径が0.3μm以上3.40μm以下、かつ繊維径のCV値が0.25以上3.0以下である、[15]~[17]のいずれかに記載の筒状フィルター。
[19]第1の繊維シートは、平均繊維径が3.40μmより大きく10μm以下、かつ繊維径のCV値が0.25以上3.0以下である、[15]~[18]のいずれかに記載の筒状フィルター。
[20]筒状繊維集合体で形成されたろ過層を含む筒状フィルターの製造方法であって、
溶融した熱可塑性樹脂を紡糸ノズルの吐出孔から吐出すると同時に前記吐出孔の周囲から噴出する高温の気体流によって引き延ばしたメルトブローン繊維を一定の速度で回転する回転軸の表面に吹き付けながら、前記回転軸の表面に第1の繊維シートを巻き回し、前記メルトブローン繊維を第1の繊維シートの表面に集積させてメルトブローンウェブにして巻き回すことで、第1の繊維シートとメルトブローンウェブが交互に巻き回された筒状繊維集合体Bを得る工程Bを含む、筒状フィルターの製造方法。
[21]工程Bに加えて、下記工程A及び工程Cから選ばれる少なくとも一方の工程を含む、[20]に記載の筒状フィルターの製造方法
・工程A:前記工程Bの前に、前記メルトブローン繊維のみを一定の速度で回転する回転軸の表面に吹き付け、メルトブローンウェブを形成しながら巻き回し、筒状繊維集合体Aを得る工程
・工程C:前記工程Bの後に、前記メルトブローン繊維のみを回転軸の表面に吹き付け、メルトブローンウェブを形成しながら巻き回し、筒状繊維集合体Cを得る工程
[22]前記筒状繊維集合体Aの厚みが8mm以上15mm以下になるまで工程Aを行った後、工程Bを行う、[21]に記載の筒状フィルターの製造方法。
[23]前記筒状繊維集合体Bの厚みが2mm以上8mm以下になるまで工程Bを行った後、工程Cを行う、[21]又は[22]に記載の筒状フィルターの製造方法。
[24]第1の繊維シートは、第1の繊維シートX1及び第1の繊維シートY1を含む多層繊維シートであり、第1の繊維シートX1及び第1の繊維シートY1は、下記(r)及び(s)の少なくとも一方の要件を満たし、工程Bにおいて、第1の繊維シートX1と第1の繊維シートY1を重ね合わせた状態で、第1の繊維シートX1が第1の繊維シートY1よりも内側になるように巻き回す、[20]~[23]のいずれかに記載の筒状フィルターの製造方法。
(r):第1の繊維シートX1の平均繊維径dX1が、第1の繊維シートY1の平均繊維径dY1より小さい
(s):第1の繊維シートX1の密度DX1が、第1の繊維シートY1の密度DY1より大きい