(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101115
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20250630BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20250630BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B41J2/14 101
B41J2/01 401
B41J2/14 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217720
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】手塚 康介
(72)【発明者】
【氏名】小瀬村 透
(72)【発明者】
【氏名】福山 康弘
(72)【発明者】
【氏名】上原 義貴
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
4F041
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC08
2C056EC28
2C056EC69
2C056FA01
2C056FB01
2C056FB10
2C056FC02
2C056HA05
2C057AF21
2C057AG03
2C057AG37
2C057AG51
2C057AJ10
2C057AM11
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA12
4F041BA34
(57)【要約】
【課題】凹凸面に対して高品質に塗布することが可能な液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】液滴吐出装置10は、音響管30の伝搬経路33の屈曲部34にノズル20の先端部を配置し、ノズルからの液滴吐出方向に対して傾斜した方向からノズルの先端部に向けて音響管内の音波を照射することによって、ノズルから吐出される液滴に音圧を印加して液滴を微粒化する構造を有する。液滴吐出装置は、ノズルの吐出面よりも音波伝搬方向上流側位置において、音響管内の音波を、ノズルの音波照射側とは反対側へと回り込ませる迂回伝搬経路35と、迂回伝搬経路35によって回り込んだ音波をノズル20から吐出される液滴に照射する構造と、を有する。そして、液滴吐出装置は、ノズルの外周の迂回伝搬経路の幅を動的に可変自在である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響管の伝搬経路の屈曲部にノズルの先端部を配置し、前記ノズルからの液滴吐出方向に対して傾斜した方向から前記ノズルの前記先端部に向けて前記音響管内の音波を照射することによって、前記ノズルから吐出される液滴に音圧を印加して液滴を微粒化する構造と、
前記ノズルの吐出面よりも音波伝搬方向上流側位置において、前記音響管内の音波を、前記ノズルの音波照射側とは反対側へと回り込ませる迂回伝搬経路と、
前記迂回伝搬経路によって回り込んだ音波を前記ノズルから吐出される液滴に照射する構造と、を有し、
前記ノズルの外周の前記迂回伝搬経路の幅を動的に可変自在である、液滴吐出装置。
【請求項2】
前記ノズルの中心位置に対する前記音響管の相対的な位置を少なくとも一軸以上のアクチュエータによって変えて、前記迂回伝搬経路の幅を可変自在である、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
塗布面のプリセットされたCADの形状データに基づいて、前記迂回伝搬経路の幅を変化させて、液滴の吐出角を変更自在である、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記ノズルの近傍に配置されるジャイロセンサをさらに有し、
前記ジャイロセンサの角度情報から推測した重力方向に基づいて、前記迂回伝搬経路の幅を変化させて、液滴の吐出角を変更自在である、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音波を生成する音源と、音波の伝搬路を有する音響管とを備え、塗料を吐出するノズルの先端を音響管の内部に配置した液滴吐出装置が知られている(特許文献1を参照)。ノズルの先端から滴下する塗料粒子は、音圧(音響力)が印加され、微粒化が促進される。この液滴吐出装置は、音響管の角度により、液滴の吐出方向に角度をつけている。その角度は固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0001439号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ノズルの吐出方向の角度が固定されている場合には、平坦な塗布面に液滴を塗布したときの液滴間の距離と、凹凸面に液滴を塗布したときの液滴間の距離とが異なる。このため、液滴による塗膜品質が低下する。
【0005】
そこで、本発明は、凹凸面に対して高品質に液滴を塗布することが可能な液滴吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の液滴吐出装置は、音響管の伝搬経路の屈曲部にノズルの先端部を配置し、前記ノズルからの液滴吐出方向に対して傾斜した方向から前記ノズルの前記先端部に向けて前記音響管内の音波を照射することによって、前記ノズルから吐出される液滴に音圧を印加して液滴を微粒化する構造を有する。液滴吐出装置は、前記ノズルの吐出面よりも音波伝搬方向上流側位置において、前記音響管内の音波を、前記ノズルの音波照射側とは反対側へと回り込ませる迂回伝搬経路と、前記迂回伝搬経路によって回り込んだ音波を前記ノズルから吐出される液滴に照射する構造と、を有する。そして、液滴吐出装置は、前記ノズルの外周の前記迂回伝搬経路の幅を動的に可変自在である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液滴吐出装置によれば、迂回伝搬経路の幅が大きい側は、幅が小さい側よりも音圧優位となるため、迂回伝搬経路の幅が小さい側に向かう方向の音圧が発生する。ノズルと音響管との相対的な位置を動的に変えることによって、液滴の吐出方向を動的に変更できる。これによって、凹凸面に対して高品質に液滴を塗布することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2A】ノズルと音響管との相対的な位置を変えることによって、ノズルから吐出される液滴に音圧が作用する方向を変化させる原理を示す模式図である。
【
図3A】実施形態の複数の液滴吐出装置を組み込んだマルチノズルの塗装装置の作用を説明するための模式図である。
【
図3B】対比例の複数の液滴吐出装置を組み込んだマルチノズルの塗装装置の作用を説明するための模式図である。
【
図4A】ノズルの中心位置に対する音響管の相対的な位置を変えるアクチュエータの例を示す要部断面図である。
【
図4B】同アクチュエータの他の例を示す要部断面図である。
【
図4C】同アクチュエータのさらに他の例を示す要部断面図である。
【
図4D】同アクチュエータのさらに他の例を示す要部断面図である。
【
図5】複数の液滴吐出装置を組み込んだマルチノズルの塗装装置によって凹凸の塗布面に液滴を塗布している状態を示す模式図である。
【
図6】垂直な塗布面に液滴を塗布している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。よって、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者等により考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範囲、要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0010】
また、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状等について、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数詞を付すこともある。しかしながら、これら序数詞に関する特段の説明がない限りは、説明の便宜上、構成要素を識別するために付したものであって、数又は順序を特定するものではない。
【0012】
<実施形態>
実施形態の液滴吐出装置は、例えば、自動車ボディの外板や内板、バンパなどの自動車部品を塗装する塗装装置に組み込まれて使用できる。塗装装置は、複数の液滴吐出装置を組み込んでマルチノズルの構成を有することできる。塗料は、特に限定されないが、自動車用塗料である。自動車用塗料は、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂等を基体樹脂とする熱硬化型塗料である。自動車用塗料は、水系塗料又は有機溶剤系塗料を使用できる。自動車用塗料は、必要に応じて、着色顔料や光輝性顔料を含むことができる。自動車部品を塗装する場合、塗布面がほぼ鉛直面になるときがあるため、比較的高粘度の塗料が使用される。
【0013】
図1に示すように、液滴吐出装置10は、塗料の液滴を吐出するノズル20と、ノズル20が配置される音響管30とを有する。
【0014】
ノズル20は、中空形状のハウジング21と、ハウジング21内に配置されるピエゾ素子22とを有する。ノズル20は、音響管30に対する相対的な位置を可変自在に、音響管30に配置される。微小な隙間が、ノズル20の外周と音響管30との間に形成される。ハウジング21は、塗料の吐出部23を先端部(
図1において下端部)に有する。塗料室24は、ハウジング21とピエゾ素子22との間に形成される。塗料は、図示しない塗料供給源から塗料室24に供給される。ピエゾ素子22は、電圧が印加されることによって変形する。塗料室24内の塗料は、ピエゾ素子22の機械的な動きによって、吐出部23から吐出される。
【0015】
音響管30は、音波を導入する入口部31と、ノズル20から吐出される液滴を塗布面に向けて導出する出口部32と、を有する。音源40は、音響管30の入口部31に向かうように配置されている。音源40は、所定の波長及び所定の振幅を有する音波を生成する音波発生装置から構成される。音源40は、生成した音波を音響管30の入口部31に向かって照射する。音響管30は、入口部31と出口部32との間に音波を伝搬する伝搬経路33が形成される。伝搬経路33は、経路途上に屈曲部34を有する。ノズル20の先端部は、音響管30の伝搬経路33の屈曲部34に配置されている。音響管30内の音波は、ノズル20からの液滴吐出方向に対して傾斜した方向からノズル20の先端部に向けて照射される。これによって、ノズル20から吐出される液滴は、音圧が印加されて微粒化される。
【0016】
液滴吐出装置10は、ノズル20の吐出面よりも音波伝搬方向上流側位置において、音響管30内の音波を、ノズル20の音波照射側とは反対側へと回り込ませる迂回伝搬経路35を有する。迂回伝搬経路35は、ノズル20の外周と音響管30との間の隙間から構成される。音響管30内の音波は、入口部31の側に位置する隙間から迂回伝搬経路35に進行し、ノズル20を間に挟んで反対側に位置する隙間に向けて回り込むように進行する。
【0017】
液滴吐出装置10は、迂回伝搬経路35によって回り込んだ音波をノズル20から吐出される液滴に照射する構造を有する。迂回伝搬経路35内を進行した音波は、音響管30内壁に形成したガイド面37に沿って、ノズル20から吐出される液滴に照射される。ノズル20から吐出される液滴は、入口部31から出口部32に向かう伝搬経路33を進行した音波も照射される。
【0018】
そして、液滴吐出装置10は、ノズル20の外周の迂回伝搬経路35の幅を動的に可変自在に構成されている。
【0019】
図2A、
図2B及び
図2Cは、上段に、ノズル20と音響管30との相対的な位置が断面によって示され、下段の四角内に音圧が作用する方向が矢印によって示される。
図2Aは、迂回伝搬経路35の幅がほぼ等しい状態が示される。
図2Bは、迂回伝搬経路35の幅が右側の方が大きい状態が示される。
図2Cは、迂回伝搬経路35の幅が左側の方が大きい状態が示される。
図2B及び
図2Cにおいて破線によって示す円36は、迂回伝搬経路35において高音圧となっている部位を模式的に示している。
【0020】
図2Aに示す状態のときは、迂回伝搬経路35の幅がほぼ等しく、音圧が作用する方向はほぼ真下である。したがって、液滴の吐出方向は
図1において真下に向かう方向となる。
【0021】
図2Bに示す状態のときは、迂回伝搬経路35の幅が大きい右側が、幅が小さい左側よりも音圧優位となる。このため、迂回伝搬経路35の幅が小さい左側に向かう方向の音圧が発生する。したがって、液滴の吐出方向は
図1において左下に向かう方向となる。
【0022】
図2Cに示す状態のときは、迂回伝搬経路35の幅が大きい左側が、幅が小さい右側よりも音圧優位となる。このため、迂回伝搬経路35の幅が小さい右側に向かう方向の音圧が発生する。したがって、液滴の吐出方向は
図1において右下に向かう方向となる。
【0023】
このように、ノズル20の外周の迂回伝搬経路35の幅を動的に可変自在に構成した液滴吐出装置10によれば、迂回伝搬経路35の幅が大きい側は、幅が小さい側よりも音圧優位となるため、迂回伝搬経路35の幅が小さい側に向かう方向の音圧が発生する。ノズル20と音響管30との相対的な位置を動的に変えることによって、液滴の吐出方向を動的に任意に変更できる。これによって、凹凸面に対して高品質に液滴を塗布することが可能となる。
【0024】
図3A及び
図3Bを参照して、マルチノズルの塗装装置の作用について説明する。
【0025】
図3Aの塗装装置は、実施形態の複数(図示例では3個)の液滴吐出装置10が組み込まれている。実施形態のそれぞれの液滴吐出装置10は、液滴の吐出方向に角度をつけ、さらに上述したように液滴の吐出方向の角度を可変に構成されている。
図3Bの塗装装置は、対比例の複数(図示例では3個)の液滴吐出装置100が組み込まれている。対比例のそれぞれの液滴吐出装置100は、液滴の吐出方向に角度をつけているが、液滴の吐出方向の角度は固定されている。
【0026】
図3Bに示すように、対比例の液滴吐出装置100を組み込んだ塗装装置は、破線によって示す平坦な塗布面101を塗装するときには、3個の液滴吐出装置100のそれぞれから吐出された液滴は、過剰に重なったり、過剰に離間したりすることなく平坦な塗布面101に着弾する。平坦な塗布面101に着弾した液滴は、実線で示す中央の液滴と、その両側に破線によって示す左右の液滴によって示される。しかしながら、実線によって示す例えば凹形状の湾曲した塗布面102を塗装するときには、液滴の吐出方向の角度が固定されているため、3個の液滴吐出装置100のそれぞれから吐出された液滴は、互いに過剰に離間して湾曲した塗布面102に着弾する。このため、液滴による塗膜品質が低下する。
【0027】
一方、
図3Aに示すように、実施形態の液滴吐出装置10を組み込んだ塗装装置は、凹形状の湾曲した塗布面102を塗装するときには、ノズル20と音響管30との相対的な位置を動的に変えることによって、液滴の吐出方向を動的に変更できる。したがって、3個の液滴吐出装置10のそれぞれから吐出された液滴は、過剰に重なったり、過剰に離間したりすることなく湾曲した塗布面102に着弾する。このため、液滴による塗膜品質が向上する。
【0028】
図示例の3個の液滴吐出装置10のそれぞれは、ノズル20と音響管30との相対的な位置が次のとおり調整される。中央に示す液滴吐出装置10は、
図2Aに示すように、ノズル20と音響管30との相対的な位置は、迂回伝搬経路35の幅がほぼ等しくなるように調整される。左側に示す液滴吐出装置10は、
図2Cに示すように、ノズル20と音響管30との相対的な位置は、迂回伝搬経路35の幅が左側の方が大きい状態となるように調整される。右側に示す液滴吐出装置10は、
図2Bに示すように、ノズル20と音響管30との相対的な位置は、迂回伝搬経路35の幅が右側の方が大きい状態となるように調整される。
【0029】
図4A、
図4B、
図4C及び
図4Dを参照して、ノズル20の中心位置に対する音響管30の相対的な位置を変えるアクチュエータ50A、50B、50C及び50Dについて説明する。
【0030】
液滴吐出装置10は、ノズル20の中心位置に対する音響管30の相対的な位置を少なくとも一軸以上のアクチュエータ50A、50B、50C及び50Dによって変えて、迂回伝搬経路35の幅を可変自在である。
【0031】
図4Aに示すアクチュエータ50Aは、音響管30の壁部の一部を構成する薄板51と、薄板51をノズル20の中心位置に向けて進退駆動するマイクロアクチュエータ52とを有する。薄板51は、ノズル20の外周面に向けて移動自在に配置される。マイクロアクチュエータ52によって薄板51を進退駆動すると、ノズル20の中心位置に対する音響管30の相対的な位置が変わる。これによって、迂回伝搬経路35の幅を可変自在となる。
【0032】
図4Bに示すアクチュエータ50Bは、音響管30の一部を構成する可動ブロック53と、可動ブロック53をノズル20に向かう方向に駆動するとともに上下方向に駆動するアクチュエータ54とを有する。アクチュエータ54によって可動ブロック53を二軸(
図4Bにおいて上下方向及び左右方向)にわたって駆動すると、ノズル20の中心位置に対する音響管30の相対的な位置が変わる。これによって、迂回伝搬経路35の幅を可変自在となる。
【0033】
図4Cに示すアクチュエータ50Cは、音響管30の壁部の一部を構成するバイメタル55と、バイメタル55を変形駆動するための熱風を通す空気孔56とを有する。バイメタル55は、ノズル20の外周面に向かい合って配置される。空気孔56に熱風を導入すると、バイメタル55が変形し、ノズル20の中心位置に対する音響管30の相対的な位置が変わる。これによって、迂回伝搬経路35の幅を可変自在となる。
【0034】
図4Dに示すアクチュエータ50Dは、音響管30の壁部の一部を構成する誘電板57と、誘電板57に電気信号を送る配線58とを有する。誘電板57は、PVDF系強誘電性材料から形成され、ノズル20の外周面に向かい合って配置される。配線58を通して誘電板57に電気信号を送ると、誘電板57が変形し、ノズル20の中心位置に対する音響管30の相対的な位置が変わる。これによって、迂回伝搬経路35の幅を可変自在となる。
【0035】
このように、液滴吐出装置10は、ノズル20の中心位置に対する音響管30の相対的な位置を少なくとも一軸以上のアクチュエータ50A、50B、50C及び50Dによって変えて、迂回伝搬経路35の幅を調整できる。これによって、凹凸面に対して高品質に液滴を塗布することが可能となる。
【0036】
なお、ノズル20を移動することによって、ノズル20の中心位置に対する音響管30の相対的な位置を変えることができる。
【0037】
図5を参照して、塗布面103のプリセットされた形状データに応じて、凹凸の塗布面103に塗装する形態について説明する。
【0038】
図5に示すマルチノズルの塗装装置は、実施形態の複数(図示例では5個)の液滴吐出装置10が組み込まれている。液滴吐出装置10は、液滴の吐出方向に角度をつけ、上述したように液滴の吐出方向の角度を可変に構成されている。さらに、液滴吐出装置10は、塗布面103のプリセットされたCADの形状データに基づいて、迂回伝搬経路35の幅を変化させて、液滴の吐出角を変更することができる。
【0039】
このように構成すれば、プリセットされた形状データに応じて、液滴の吐出角を自動的に最適値に調整することができる。複数の液滴吐出装置10のそれぞれから吐出された液滴は、過剰に重なったり、過剰に離間したりすることなく湾曲した塗布面103に着弾する。これによって、凹凸面に対して高品質に液液を塗布することが可能となる。
【0040】
図6を参照して、垂直な塗布面104に塗装する形態について説明する。
【0041】
自動車ボディを塗装する場合、サイドドアやフェンダなどの塗布面がほぼ鉛直面になる場合がある。そこで、液滴吐出装置10は、ノズル20の近傍に配置されるジャイロセンサ60をさらに有することができる。液滴吐出装置10は、ジャイロセンサ60の角度情報から推測した重力方向に基づいて、迂回伝搬経路35の幅を変化させて、液滴の吐出角を変更自在である。
【0042】
図6において、実線によって示す液滴は、吐出角の角度補正を行った場合の飛翔を示し、破線によって示す液滴は、吐出角の角度補正を行わない場合の飛翔を示している。吐出角の角度補正を行うことによって、液滴は、ノズル20の吐出部23に向かう正規の位置に着弾する。
【0043】
このように構成すれば、液滴の吐出角を調整することによって重力による影響を補正することができる。これによって、塗布面がほぼ鉛直面になるような塗装であっても、凹凸面に対して高品質に液滴を塗布することが可能となる。
【0044】
以上、本発明の液滴吐出装置10の一実施形態を説明したが、本発明は前述した実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0045】
なお、以下の実施形態も本発明の範囲に含まれる:請求項2の特徴を有する請求項1に記載の液滴吐出装置;請求項3の特徴を有する請求項1に記載の液滴吐出装置;請求項4の特徴を有する請求項1に記載の液滴吐出装置;請求項3の特徴を有する請求項1又は2に記載の液滴吐出装置;請求項4の特徴を有する請求項1~3のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【符号の説明】
【0046】
10 液滴吐出装置
20 ノズル
21 ハウジング
22 ピエゾ素子
23 吐出部
24 塗料室
25 ガイド面
30 音響管
31 入口部
32 出口部
33 伝搬経路
34 屈曲部
35 迂回伝搬経路
40 音源
50A、50B、50C、50D アクチュエータ
60 ジャイロセンサ
101、102、103、104 塗布面