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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101124
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】溶媒抽出装置及びイオンの分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 11/04 20060101AFI20250630BHJP
【FI】
B01D11/04 101
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217740
(22)【出願日】2023-12-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-04-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構「高効率レアアース分離精製技術開発業務」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】592097244
【氏名又は名称】日本イットリウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 靖英
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄太
(72)【発明者】
【氏名】田中 大介
【テーマコード(参考)】
4D056
【Fターム(参考)】
4D056AB07
4D056AC02
4D056AC09
4D056AC27
4D056BA04
4D056CA06
4D056CA13
4D056CA33
4D056CA40
4D056DA04
(57)【要約】
【課題】有機相と水相との分相性能に優れ、設置容積及び面積を効果的に低減でき、有機相の露出面積が抑制された溶媒抽出装置を提供する。
【解決手段】溶媒抽出装置10は、水相3と、有機相4とが混合されてなる混合液5が導入され、水相3と有機相4とに分離される正立状態のカラム12と、当該カラムに混合液5を導入する液導入部14とを有し、カラム12の有機相排出口48Aと水相排出口47Aの間の高低差Lの二乗の値に対する該カラムの横断面積Cの比率(C/L)が1.0未満であり、且つ液導入部14の液導入位置Xcが、有機相排出口と水相排出口との間の鉛直方向の中央位置Xrよりも、下側に位置するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相と、有機相とが混合されてなる混合液が導入され、当該混合液が前記水相と前記有機相とに分離される正立状態のカラムと、当該カラムに前記混合液を導入する液導入部とを有し、
前記カラムは、前記混合液から分離された前記水相と前記有機相とがそれぞれ排出される水相排出口と有機相排出口とを有し、当該水相排出口と当該有機相排出口との間の高低差Lの二乗の値に対する該カラムの横断面積Cの比率(C/L)が1.0未満であり、且つ、
前記カラムは、前記液導入部の液導入位置が、前記の水相排出口と有機相排出口との間の鉛直方向の中央位置よりも下側である、溶媒抽出装置。
【請求項2】
鉛直方向における前記液導入位置から前記水相排出口までの長さDが、前記高低差Lの0.25以上0.5未満である、請求項1の溶媒抽出装置。
【請求項3】
前記液導入位置から前記有機相排出口までの長さUの二乗の値に対するカラム横断面積Cの比率(C/U)が3.0未満である、請求項1又は2記載の溶媒抽出装置。
【請求項4】
前記混合液を前記カラムに導入した状態において、水相と有機相との界面が前記液導入位置よりも下側に位置するように構成されている、請求項1又は2に記載の溶媒抽出装置。
【請求項5】
前記カラム内の前記有機相の線速度が50cm/分以下であるように構成されている、請求項1又は2記載の溶媒抽出装置。
【請求項6】
前記カラムにおける、少なくとも液導入位置よりも上側に、流体介在物が設けられている、請求項1又は2記載の溶媒抽出装置。
【請求項7】
水相と、有機相とが混合されてなる混合液が導入され、当該混合液が前記水相と前記有機相とに分離される正立状態のカラムと、当該カラムに前記混合液を導入する液導入部とを有する溶媒抽出装置を用いて2種以上のイオンから少なくとも1種を分離する方法であって、
前記水相が分離対象である2種以上のイオンを含み、
前記有機相が、前記2種以上のイオンのうち少なくとも1種と錯形成可能な抽出剤を含み、
前記溶媒抽出装置において、
前記カラムは、前記混合液から分離された前記水相と前記有機相とがそれぞれ排出される水相排出口と有機相排出口とを有し、当該水相排出口と当該有機相排出口との間の高低差Lの二乗の値に対する該カラムの横断面積Cの比率(C/L)が1.0未満であり、且つ、
前記カラムは、前記液導入部の液導入位置が、前記の水相排出口と有機相排出口との間の鉛直方向の中央位置よりも下側である、イオンの分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離カラムを有する溶媒抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶媒抽出法は、分離対象の金属元素を含む水溶液からなる水相と、特定の金属元素を抽出する金属抽出剤及びそれを希釈するための有機溶媒からなる有機相を接触させることで、金属元素を金属抽出剤に抽出させることで分離する方法である。従来、有機相と水相とを用いて複数の元素の分離を図る溶媒抽出装置として、様々な方式の装置が提案されている。
【0003】
特許文献1では、パルスカラムと呼ばれる縦型多段方式の分離カラムを用いる溶媒抽出装置が提案されている。本方式では、1本の分離カラム中に目皿板が複数枚配置されており、この構成が有機相と水相との接触効率を向上させる。本方式の分離カラムでは、該カラムの下方から有機相が導入されるとともに、該カラムの上方から水相が導入される。当該分離カラムでは、カラム中で有機相と水相とが接触した後、カラムの下方から水相が回収され、カラムの上方から有機相が回収される。
また特許文献2に記載されるように、エマルションフローと呼ばれる技術が知られている。この技術では、分離カラムの下方から有機相を、分離カラムの上方から水相をそれぞれ微小液滴とした状態で導入し、該分離カラム中で両者を接触させる。この方式でも分離カラムは、有機相と水相との接触後、有機相はカラムの上端へ、水相はカラムの下端に移動するように構成されている。
【0004】
特許文献1のような溶媒抽出装置では分離カラム中の目皿板によって有機相と水相とを接触させ、同じカラム中で有機相と水相を分離させるため、有機相と水相との分相の効率は高いものとはいいがたい。特に金属イオン同士を分離する場合には、分離性能を高めるために時間をかけて有機相と水相の分相を行う必要があるため、分相の時間効率が低くなってしまう。
特許文献2の方式も、特許文献1と同様に混合槽と分離槽が一体化しており同じ容器内で水相と有機相と混合及び分相の両方を行う。混合と分相との両方を十分に行うことが難しく、水相と有機相の接触が不十分だったり、静置時間不足による両液の分離不足が生じたり、静置した液が再び別相と接触するなどする事態が生じやすく、安定した分離性能が得られにくい欠点がある。
【0005】
特許文献3及び非特許文献1には、水相と有機相とを混合させる混合槽(ミキサー部)と、その後の比重差により水相と有機相とを分離する分離槽(セトラー部)からなるミキサーセトラー(MS)が記載されている。特許文献3及び非特許文献1に示すように、従来のMSの装置は、一般的に、水相と有機相とを混合する混合槽から排出された混合液を、比重差に基づき、横に広い静置槽で時間をかけて分離させる方式である。本方法によれば、水相と有機相との分相が良好であり、排出部で水相と、有機相とを効率的に回収する。このミキサーセトラー(MS)の抽出単位を複数並列し、多段階で連続抽出処理することで、2種以上の元素を精密に分離精製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06-160587号公報
【特許文献2】特開2020-203267号公報
【特許文献3】特開2022-147876号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「希土類の科学」足立吟也編著(化学同人 1999)p.196
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した通り、特許文献3及び非特許文献1に記載の溶媒抽出装置では元素の分離性能を高めるため、横に広い静置槽で有機相と水相とを時間をかけて分相させる。このため有機相と水相とを分相させるための静置槽の大容積が必要となり、設置面積が必要となる。また、分相中の水相及び有機相を常に静置槽中に滞留させる必要があり、分相の効率が低い。また有機相の露出面積が大きくなるため、有機相の揮発が発生しコスト高になる。
【0009】
本発明の課題は、有機相と水相との分相性能に優れ、設置容積及び面積を効果的に低減でき、有機相の露出面積が抑制された溶媒抽出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、所定条件を満たす形状のカラムを用い、水相と有機相の混合液を当該カラムの所定の位置に導入することで、前記の課題を解決しうることを見出した。
【0011】
本発明は、水相と、有機相とが混合されてなる混合液が導入され、当該混合液が前記水相と前記有機相とに分離される正立状態のカラムと、当該カラムに前記混合液を導入する液導入部とを有し、
前記カラムは、前記混合液から分離された前記水相と前記有機相とがそれぞれ排出される水相排出口と有機相排出口とを有し、当該水相排出口と当該有機相排出口との間の高低差Lの二乗の値に対する該カラムの横断面積Cの比率(C/L)が1.0未満であり、且つ、
前記カラムは、前記液導入部の液導入位置が、前記の水相排出口と有機相排出口との間の鉛直方向の中央位置よりも下側である、溶媒抽出装置を提供する。
【0012】
また本発明は、水相と、有機相とが混合されてなる混合液が導入され、当該混合液が前記水相と前記有機相とに分離される正立状態のカラムと、当該カラムに前記混合液を導入する液導入部とを有する溶媒抽出装置を用いて2種以上のイオンから少なくとも1種を分離する方法であって、
前記水相が分離対象である2種以上のイオンを含み、
前記有機相が、前記2種以上のイオンのうち少なくとも1種と錯形成可能な抽出剤を含み、
前記溶媒抽出装置において、
前記カラムは、前記混合液から分離された前記水相と前記有機相とがそれぞれ排出される水相排出口と有機相排出口とを有し、当該水相排出口と当該有機相排出口との間の高低差Lの二乗の値に対する該カラムの横断面積Cの比率(C/L)が1.0未満であり、且つ、
前記カラムは、前記液導入部の液導入位置が、前記の水相排出口と有機相排出口との間の鉛直方向の中央位置よりも下側である、イオンの分離方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、有機相と水相との分相性能に優れ、設置容積及び容積を効果的に低減でき、有機相の露出面積が抑制された溶媒抽出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の溶媒抽出装置の一例を示す模式図である。
図2図2は、溶媒抽出装置のカラムにおける寸法や面積を説明するための模式図である。
図3図3は、本発明のさらに別の形態の溶媒抽出装置を示す模式図である。
図4図4は、本発明のさらに別の形態の溶媒抽出装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。図1は本発明の溶媒抽出装置10の一実施形態を示す。溶媒抽出装置10は、水相3と有機相4が混合された混合液5が導入され、水相3と有機相4とに分離されるカラム12と、当該カラムに混合液5を導入する液導入部14と、を有する。本実施形態では、正立状態に配置されたカラム12の側面に液導入部14が接続されている。本実施形態では、カラム12の側面への液導入部14の接続位置が液導入部14のカラムへの混合液の導入位置Xcとなっている。本発明において、有機相4は、水相3よりも比重が大きくても小さくてもよいが、比重が小さいものを用いることが、有機溶媒の選択が容易であり、所要動力が少ない点で好ましい。
【0016】
図1に示すとおり、液導入部14は、液混合部20とカラム12とを接続する配管を備えている。液混合部20は、水相3と有機相4とが混合される容器21と、容器21内に配置された撹拌手段13を有する。撹拌手段13は、撹拌翼15と、撹拌翼15が取り付けられた回転軸16とからなる。回転軸16の一端は、該回転軸16をその軸周りに回動させるモーター19に接続している。本実施形態では、撹拌手段13により水相3と有機相4とを撹拌混合して得られた混合液5を、液導入部14を通じてカラム12に導入するので、水相3と有機相4との接触効率が良好である。その結果、本実施形態の溶媒抽出装置10は、元素の分離効率に優れたものとなる。
撹拌手段13に代えて、又はそれに加えてポンプによる圧送によって水相3と有機相4とを混合させてもよく、或いはインラインミキサ、スタティックミキサーなどの静的な混合方法を用いたり、目皿やラシヒリング(ラシヒ社製品)、スプレーノズル等を用いて気泡、エマルションを生じさせることによって水相3と有機相4とを混合させてもよい。
【0017】
撹拌手段13が配置された容器21(液混合部20)には、液導入部14が接続されているとともに有機相取入用配管18の一端と水相取入用配管17の一端とがそれぞれ接続されている。有機相取入用配管18中の有機相4と水相取入用配管17中の水相3は、それぞれ不図示のポンプにより液混合部20に向けて圧送されるように構成されている。これらのポンプとしては、本技術分野で使用されるものを特に限定なく使用できる。以上の構造により、有機相4と水相5とが液混合部20の容器21内で合流するとともに撹拌翼15によって撹拌混合され、液導入部14を通じてカラム12に導入されるようになされている。
図1の形態とは異なり、液導入部14に水相と有機相との合流管を接続し、当該合流管の液導入部14と反対側の端部に、有機相取入用配管と水相取入用配管とを接続することで、有機相4と水相3とが合流管を介して液混合部20に流入するように構成してもよい。この場合、本実施形態では予め当該合流管中で水相3と有機相4と合流させ、それによって生じた混合液が圧送されて液混合部20に供給されるので、水相3と有機相4を十分に混合できる。
【0018】
図2に示す通り、液導入部14を通じてカラム12内に導入された混合液5は、比重に基づき、カラム12内で水相3と有機相4が上下にそれぞれ移動して分離される。カラム12内に導入された直後の混合液5は、乳濁混合状態となっていてよい。本実施形態の溶媒抽出装置10は、特許文献3に記載の技術と異なり、液混合部と静置部との間に反応槽を設けずとも、カラム12を特定の形状とし、且つ液導入部14の液導入位置Xc(図1参照)の高さを調整することで、十分な分相性能を得ることができる。図1に示すように、液導入部14の液導入位置Xcは、カラム12の下端12Aよりも上方に位置している。
【0019】
本実施形態では、液混合部20と、カラム12とが、配管である液導入部14を通じて連結されている。換言すれば液混合部20とカラム12とは別容器で構成されている。液混合部20中の混合液は液導入部14中で圧送されてカラム12に導入される。このような構成とすることで均一な混合状態の混合液5がカラム12に安定的に供給されて、安定的な分離抽出が可能となる。これに加えて、溶媒抽出装置10の設置面積を縮小できるという利点もある。
【0020】
液混合部20に供給される有機相4と水相3との送液速度(L/分)の比率は、限定されるものではないが、例えば体積比で表して、有機相4と水相3とで100:10~200の範囲内で自由に選択することができる。
【0021】
カラム12は、混合液5から分離された水相3と有機相4とがそれぞれ排出される水相排出口47Aと有機相排出口48Aとを有する。図1に示すように、本実施形態において、水相排出口47Aはカラム12の下端12A又はその近傍に位置しており、有機相排出口48Aは、カラム12の上端12B又はその近傍に位置している。
図1に示す例では、カラム12には、その上端12B側に、有機相取り出し用配管48が接続されているとともに、その下端12A側に水相取り出し用配管47が接続されている。図1に示す例では、有機相取り出し用配管48のカラム12への接続位置が有機相排出口48Aとなっており、水相取り出し用配管47のカラム12への接続位置が水相排出口47Aとなっている。図1に示す例では、有機相排出口48Aは、鉛直方向Xにおいて、カラム12の上端12Bと同位置又はそれよりも下方に位置しており、水相排出口47Aは、鉛直方向において、カラム12の下端12Aと同位置又はそれよりも上方に位置している。
【0022】
液混合部20からカラム12に導入された混合液5は、カラム12中で上方に向かう有機相4と、下方に向かう水相3とに分離される。有機相4は有機相排出口48Aから有機相取り出し用配管48に導入されてカラム12から取り出される。水相3は水相排出口47Aから水相取り出し用配管47に導入されてカラム12から取り出される。
【0023】
本実施形態においては、カラム12は鉛直方向Xと中心軸Kとが平行となるように設置されている。カラム12は筒状をしている。図2に示すように、本実施形態において、カラム12における水相排出口47Aと有機相排出口48Aとの高低差L(以下、単に「カラム12の前記高低差L」ともいう。)というときは、水相排出口47Aの最上端と有機相排出口48Aの最下端との間の鉛直方向Xの距離のことをいう。また、カラム12の横断面積Cというときは、カラム12におけるX方向と直交する方向に沿う断面のうち液が存在し得る部分の面積のことをいう。具体的には、カラム12の内壁に囲まれた空洞部分の面積のことをいう。
【0024】
カラム12の横断面形状は四角形、三角形、円形及び楕円形などが挙げられ、特に限定されない。カラム12の横断面が例えば多角形であると、カラム12を複数設置したときに隣り合うカラム12の間に隙間が生じにくくなり設置面積を効果的に低減できる。特にカラム12の横断面形状を四角形とすれば、溶媒抽出装置10の設置のために使用するスペースを抑制しながらカラムの容積を大きくしやすいため好ましい。
【0025】
カラム12の横断面積Cは一定であってもよく、或いは一定でなくてもよい。カラム12の横断面積CがX方向に沿って一定でない場合には、カラム12全体の横断面積の平均値を横断面積Cとして用いる。具体的には、カラム12の有機相排出口48Aから水相排出口47AまでX方向に沿って(1/10)Lの間隔ごとに位置する9か所の横断面積Cを測定し、その平均値を用いる。
【0026】
カラム12は、横断面積Cが略一定である筒状をしているか、又は当該筒状において前記液導入位置Xcを含む一部(具体的には、導入位置Xcを含む鉛直方向Xの一部)が幅広になった形状(横断面積Cが大きくなった形状、例えば後述する図3を参照。)をしていることが、カラム12による油水分離効率を高める点や残存気泡を除去できる点で好ましい。本明細書において「横断面積Cが略一定である」とは、横断面積Cの最小値をCmとしたとき、カラム12の前記高低差Lの全体にわたり、(C-Cm)/Cm×100の値が10%以下であることをいう。
前記の幅広形状となった部分は、横断面積Cが略一定とならなくてもよい。例えば、当該幅広形状となった部分においては、横断面積Cが、それ以外の横断面積が略一定となった部分の横断面積の最小値Cmに比して、1~3倍の範囲内となっていてもよい。
【0027】
カラム12の形状は、カラム12の横断面積Cとカラム12の前記高低差Lから定義することができる。カラム12は、前記高低差Lの二乗に対する横断面積Cの割合、即ち「C/L(=カラム横断面積C/(カラム高低差L×カラム高低差L)」が1.0未満であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.1以下であることが更に好ましく、0.01以下であることがさらにより好ましい。この値が1.0よりも小さくなるほど縦長のカラムになり、有機相4と水相3とが良好に分相するようになる。C/Lの値は、小さければ小さいほどよいが0.001以上であることが有機相液の上昇速度と水相液の沈降速度のバランスの点で好ましく、0.005以上であることがより好ましい。
【0028】
このような溶媒抽出装置10は、特許文献3に記載の従来の静置カラムと異なり、反応槽との仕切り板の上下から有機相4と水相3とが流入される形態ではない。
【0029】
本実施形態の溶媒抽出装置10の別の好ましい特徴の一つとして、有機相4及び水相3の混合液5を、カラム12における有機相排出口48Aと水相排出口47Aとの間の鉛直方向Xの中央位置Xr(前記高低差Lを鉛直方向に2等分する位置)よりも下方位置から導入することが挙げられる。例えば、上述した通り、本実施形態では正立状態のカラム12の側面に液導入部14が接続されているところ、液導入部14の液導入位置Xcが、カラム12の前記中央位置Xrよりも下側であることが好ましい。これにより本実施形態では、例えば、図2に示すように、水相排出口47Aから前記の中央位置Xrまでの鉛直方向Xの長さMに比して、水相排出口47Aから液導入位置Xcまでの鉛直方向Xの長さDが小さくなっている。このような構成とすることで、特にカラム12中を上昇する有機相4に巻き込まれる水相(水滴)を良好に低減させることができ、カラム12の分相効果を最大限活用させることができる。
なお混合液の導入位置Xcとは混合液の導入部の高さ位置をいうが、混合液の導入部が鉛直方向Xの一点ではなく、一定の幅を有する場合はその幅の中央位置を液導入位置Xcという。例えば図1に示す例では、液導入位置Xcは、液導入部14におけるカラム12側面との接続部である液導入口14Aの鉛直方向Xの中央に位置する。
【0030】
水相3と有機相4との分相を一層良好とする観点から、液導入部14の液導入位置Xcとカラム12の下端12AとのX方向に沿う距離D(図2参照)は、カラム12の前記高低差Lに対する比(D/L)を0.2以上0.5未満とすることが好ましい。この位置から混合液を導入することで水相3と有機相4との分離能が著しく高まる。前記の比(D/L)が0.25以上0.45以下であることで有機相4中の水滴の分離が特に良好となるため好ましく、とりわけ0.25以上0.40以下が好ましい。
【0031】
本実施形態においては、混合液5をカラム12に導入した状態において、水相3と有機相4との界面が液導入部14の液導入位置Xcよりも下側に位置するように構成されていることが好ましい。このように構成することで、カラム12中における有機相4の上昇が液導入位置Xcよりも低い位置を起点とすることになるので、有機相4の移動距離を大きくすることができる。通常、有機相4と水相3との分相時には有機相4において水相が混入しやすいため、前記の界面位置Xiの調整により、本実施形態では分相性能が一層優れたものとなる。
上述した通り、通常、混合液5のカラム12への導入中には、カラム12中での液導入部14の液導入位置Xc近傍は水相3と有機相4とが混合状態となっているため、その界面Xiは明確に視認難い。そのような場合には、混合液5のカラム12への導入を一時的に中断することで界面Xi(図2参照)の視認が可能となる。
カラム12として透明な容器を使用する場合には界面Xiの位置は容易に判断可能であるが、カラム12として不透明な容器を使用する場合はカラム12の側面に取り付けたレベル計により界面の高さを測定したり、カラム12の上部からガラス管などで液をサンプリングすることにより界面Xiの位置を判断することができる。
【0032】
界面Xiが液導入位置Xcよりも低い場合、界面Xiと液導入位置XcとのX方向に沿う距離Diは、混合液の線速度やカラム断面積によって定まるが、2.5cm以上であることが好ましく、特に3cm以上であることが分相を一層良好とする点から望ましい。後述する実施例1、2では、前記距離Diは4cmであり、その他の実施例では3~5cmであった。比較例3及び4は2cm、その他の比較例は実施例と同等以下であった。
【0033】
前記の界面Xiを、前記液導入位置Xcよりも下側に位置させるための方法としては、(1)カラム12の下端12Aに接続する水相取出用配管47及び/又はカラム12の上端12Bに接続する有機相取出用配管48のそれぞれに対し、ポンプなどを用いてカラム12からの液の取出速度を調整することで界面位置を調整する方法;(2)水相3及び有機相4それぞれの水頭圧を調整することで界面を調整する方法;(3)水相3と有機相4の混合部20への送液速度を調整する方法等が挙げられる。特に(2)水相3及び有機相4それぞれの水頭圧を調整することで界面を調整する方法が、抽出効率や分相効率を良好にしやすい点で好ましい。
【0034】
図2に示す通り、液導入部14の液導入位置Xcからカラム12の有機相排出口48Aの最下端までの長さをUとしたとき、Uの二乗の値に対するカラム横断面積Cの比率(C/U)が3.0未満であることが好ましい。前記のC/Lの比率を所定上限以下とすることに加えて、C/Uの上限を所定値に設定することにより、液導入部14からカラム12の有機相排出口48Aまでの有機相4の長さを確保できることから、有機相4と水相3との分相が一層良好となる。この観点から、前記の比率(C/U)は1.0以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。また、前記の比率(C/U)は0.01以上であることが、溶媒抽出時間を抑制して製造コストの抑制が容易な点で好ましく、0.02以上であることがより好ましい。
【0035】
本実施形態に係る溶媒抽出装置10のカラム12においては、カラム12内を流れる液の流速に相当する線速度(X方向の速度)が所定値以下であることが好ましい。カラム12内での流速が速すぎると、分離すべき水相3の落下分離を阻害してしまう。
液混合部20中に流入する単位時間当たりの水相3と有機相4の体積比率をr:1とし、カラム12への混合液の流入速度をT(cm/分)とし、カラム横断面積をC(cm)としたとき、有機相4の線速度は以下の式から計算できる。
有機相4の線速度(cm/分)=T/C×〔1/(r+1)〕
同様に、水相3の線速度は以下の式から計算できる。
水相3の線速度(cm/分)=T/C×〔r/(r+1)〕
【0036】
例えば、カラム12の内径が5cmの場合のカラム横断面積Cは19.6cm(=2.5×2.5×3.14)であり、液混合部20中に流入する単位時間当たりの水相3と有機相4の体積比率が1:1であり、カラム12への混合液5の流入速度が1L/分である場合、流速は500cm/分(=1000/2)となることから、有機相4の線速度は25.5cm/分(=500/19.6)と算出される。
有機相4の線速度を50cm/分以下とすることで液流れが速すぎることに起因する有機相4中の水相3(水滴)の落下が阻害されにくくなるという利点がある。この観点から、有機相4の線速度は30cm/分以下であることがより好ましく、15cm/分以下であることが更に好ましい。
有機相4の線速度は、1cm/分以上であると、分相に掛ける時間を短縮でき、製造コストが良好となるため好ましい。
【0037】
同様に、水相3中における有機相4(油滴)の浮上が阻害されにくくなる観点から、水相3の線速度は例えば50cm/分以下であることが好ましく、30cm/分以下であることがより好ましく、15cm/分以下であることが更に好ましい。
水相3の線速度は2cm/分以上であることが、分相に掛ける時間を短縮でき、製造コストが良好となるため好ましい。
【0038】
なお水相3と有機相4との分離の際には、通常、有機相4中に水相3が混入しやすいことから、前記の線速度は特に有機相4の線速度が重要である。
【0039】
更に、カラム12の内部構造について特に限定は無いが、必要に応じて、液導入部14の液導入位置Xcの近傍に流体介在物を設置してもよい。例えばカラム12内に目皿板や傾斜板を設けて有機相4と水相3との接触効率を高めてもよい。またカラム12中に混合液の流れを抑制させる構造を付与しても良い。これらの介在物は、カラム12における前記液導入位置Xcよりも少なくとも上側に位置することが、有機相4の線速度を低下させて分相を一層良好としやすい点や水滴同士を凝集させて大粒径化して沈降速度を速める点で好ましい。
【0040】
上述した通り、本実施形態の溶媒抽出装置10においては、有機相4はカラム12中を上方へ向けて移動し、水相3は分離カラム12中を下方へ向けて移動することで両相が分離される。有機相4はカラム12の上端12B又はその近傍に位置する有機相排出口48Aから系外に排出される。水相3は下端12A又はその近傍に位置する水相排出口47Aから系外へ排出される。
【0041】
以下、更に別の形態について説明する。以下の説明では、図1の実施形態と同様の構成は同じ符号を付して説明を省略し、図1の実施形態とは異なる点を主に説明する。図3及び図4は液導入位置の説明のため便宜上、空の状態のカラムに混合液を導入した状態を示している。
図3に示す溶媒抽出装置110において、カラム112は、筒状において液導入位置Xcを含む鉛直方向Xの一部(図3で符号12Wで示す部分)が幅広になった形状をしている。また、図3に示す形態では、液導入部114は、カラム112の側部ではなく、内部に設置されている。具体的には、液導入部114は、カラム112内に設置されて複数の液吹き出し口115を有する液噴出部114Aと、液噴出部114Aをカラム112外の液混合部と連通させて、液混合部からの混合液を液噴出部114Aに導入する配管114Bとからなる。液導入位置Xcは、液噴出部114Aの液吹き出し口115の位置(具体的には、液吹き出し口115における鉛直方向Xの中央の位置)となる。また、図3に示す例では、配管114Bはカラムの底面に固定され、鉛直方向Xに延びるように配置されている。
また、図4に示す溶媒抽出装置210においても、液導入部214はカラム212の側部ではなく、内部に設置されている。この形態においては、配管である液導入部214はカラムの上面に固定され、鉛直方向Xに下方に延びている。混合液は、配管である液導入部214の下端の開口214Aからカラム212内に導入されており、この開口214Aの位置(具体的には、開口214Aの鉛直方向Xの中央位置)が、液導入位置Xcとなる。
【0042】
その他、本発明の溶媒抽出装置10は、例えば、複数のカラムを並列に配置した多段の溶媒抽出装置であってもよい。例えばN段目のカラムにて分離された水相を、N+2段目のカラムで分離した有機相と混合して得られる混合液と共にN+1段目に隣接するカラムに導入して分離させる。N段目のカラムにて分離された有機相をN-2段目のカラムで分離した水相と混合して得られる混合液と共にN-1段目に隣接するカラムに導入して分離させるといった多段階の溶媒抽出を行ってもよい。
このような多段の溶媒抽出装置によれば、有機相と水相との分相が良好であり、水相に含有される複数のイオンを精密に分離することが可能となる。しかも、この形態の溶媒抽出装置では、多段であっても設置面積及び容積を抑制でき、有機相4の露出面積が抑制できる効果を十分に発揮できる。
【0043】
本発明において上記で説明した各実施形態の溶媒抽出装置は、溶媒抽出法に用いることが好ましい。溶媒抽出法とは、分離対象の金属元素を含む水溶液からなる水相と、特定の金属元素を抽出する金属抽出剤及びそれを希釈するための有機溶媒からなる有機相を接触させることで、金属元素を金属抽出剤に抽出させることで分離する方法である。
溶媒抽出法において、前記実施形態の溶媒抽出装置は、2種以上のイオンを分離する方法に使用できる。本分離方法では、水相3が分離対象である2種以上のイオンを含む。有機相4が、前記2種以上のイオンのうち少なくとも1種と錯形成可能な抽出剤を含む。2種以上のイオンは、元素が異なる2種以上の金属イオンであることが好ましく、元素が異なる2種以上の希土類元素のイオンであることがより好ましい。
【0044】
本発明において用いる金属抽出剤としてはTBP(リン酸トリブチル)、カルボン酸(バーサティックアシッド10)、リン酸エステル、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物等が挙げられる。例えば、リン酸エステルとしては、ジ-2-エチルヘキシルリン酸[ethylhexyl-phosphoric-acid(D2EHPA)]等が挙げられる。ホスホン酸化合物としては2-エチルヘキシルリン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル[2-ethylhexyl-phosphoric acid-mono-2-ethylhexyl ester(PC-88A:大八化学工業(株)製商品名)]等が挙げられる。ホスフィン酸化合物としてはビス(2,4,4-トリメチルペンチル)リン酸[bis(2,4,4-trimethylpentyl)phosphoric acid(Cyanex272:CYTEC Industries社製商品名)]等が挙げられる。
【0045】
また、ここで用いる反応溶媒の溶媒抽出における有機相を形成する有機溶媒としては、ナフテン系、パラフィン系、芳香族系のいずれも可能性があり、具体的には、トルエン、キシレン、ヘキサン、イソドデカン、ケロシン及び高級アルコール(例えば、炭素数5~8の直鎖のアルコール)等が挙げられる。
【0046】
なお本発明は本実施形態に限定されない。例えば有機相が下方に、水相が上方に移動する際には、図2の有機相排出口48Aと水相排出口47Aの位置が上下逆となることはいうまでもない。また、図1及び図2では有機相排出口48A及び水相排出口47Aは横向きであったが、縦向きでよいことも、いうまでもない。
【実施例0047】
(実施例1)
本実施例では図1及び図2に示す溶媒抽出装置10を用いて希土類金属イオンの抽出を行った。
12質量%塩酸水溶液120Lに、テルビウム塩とディスプロシウム塩を、テルビウムの濃度が56g/L、ディスプロシウムの濃度42g/Lとなるようにそれぞれ溶解させて重比重液(水相)を調製した。この操作とは別に、塩酸で溶解したテルビウム塩(調製される軽比重液に対して56g/L)とディスプロシウム塩(同42g/L)をpH3に調整し、本調整液とケロシンに抽出剤(PC-88A)20質量%を溶解させた溶液とを混合接触させ、テルビウム塩とディスプロシウム塩を全て油相に付加させて120Lの軽比重液(有機相)を調製した。両液を常に撹拌混合された状態に維持した。
内径10cm及び全長50cmの塩ビ管からなる静置カラムの下端より20cmの位置から上述の撹拌混合液を静置カラムに導入した。撹拌混合液は、定量ポンプによって2L/分の流速、即ち有機相の線速度12.7cm/分で導入した(全液体に対する有機相の体積割合は0.5)。この静置カラムは、上端から有機相が排出され且つ下端から水相が排出され、導入液総量と排出液総量とが常に一致して循環されるようになっている。循環開始から15分後に水相及び有機相をそれぞれメスシリンダーにサンプリングし静置分離して、それらの相に含まれる異相液の含有比率を計測した。
その結果、重比重液(水相)には軽比重液(有機相)は全く含まれていなかった。一方、軽比重液(有機相)には0.6質量%の重比重液(水相)が含まれていた。有機相中の水相の含有量及び気泡の有無に基づき、以下のように評価した。
AA:有機相中の水相の含有量が1.0質量%未満、且つ有機相中に気泡は全くない。
A :有機相中の水相の含有量が1.0質量%未満、且つ有機相中に気泡の付着はほぼ無い。
B :有機相中の水相の含有量が1.0質量%以上。
【0048】
有機相中に水相が含まれているということは分離が不完全であることを示すが、一般的な溶媒抽出装置として知られているミキサーセトラー方式で同様の容積の装置で試験を行うと付着水は1.0質量%だったことから、付着水量が1.0質量%未満なら現状の装置より分離は良好であると判断される。
なお、表1中、線速度は、混合液送液量をカラム断面積で割った値を示す。
【0049】
(実施例2~7、比較例1~6)
カラム内径R、カラム高低差L、カラムにおける水相有機相混合液の導入部の液導入位置Xcと水相排出口との距離D及びカラム12の液の流速(線速度)を表1に示すように変更し、カラム上部から排出される有機相液を回収し、その中に含まれる付着水量を測定した。その結果を表1に示した。なお、実施例2~7及び比較例1~3、6において、実施例1と同様に重比重液(水相)には軽比重液(有機相)は含まれなかった。比較例4及び5において、重比重液(水相)に軽比重液(有機相)の混入が確認された。具体的には、比較例4は、水相排出液中に有機相を15 質量%を含有していた。比較例5も、水相排出液中に有機相6.2質量%を含有していた。
【0050】
【表1】
【0051】
以上の実施例及び比較例の評価結果から明らかなように、本発明の溶媒抽出装置10によれば、コンパクトな構成でありながら、従来のミキサーセトラーに比して有機相と水相との分相が良好であり、極めて高性能溶媒抽出装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
3 水相
4 有機相
5 混合液
10 溶媒抽出装置
12 カラム
14 液導入部
47A 水相排出口
48A 有機相排出口
12B カラム上端
L 有機相排出口下端48Aと水相排出口上端47Aの間の高低差L
C カラム横断面積
Xc 液導入部の液導入位置

図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相と、有機相とが混合されてなる混合液が導入され、当該混合液が前記水相と前記有機相とに分離される正立状態のカラムと、当該カラムに前記混合液を導入する液導入部とを有し、
前記カラムは、前記混合液から分離された前記水相と前記有機相とがそれぞれ排出される水相排出口と有機相排出口とを有し、当該水相排出口と当該有機相排出口との間の高低差Lの二乗の値に対する該カラムの横断面積Cの比率(C/L)が1.0未満であり、且つ、
前記カラムは、前記液導入部の液導入位置が、前記の水相排出口と有機相排出口との間の鉛直方向の中央位置よりも下側であり、
鉛直方向における前記液導入位置から前記水相排出口までの長さDが、前記高低差Lの0.25以上0.5未満である、溶媒抽出装置。
【請求項2】
前記液導入位置から前記有機相排出口までの長さUの二乗の値に対するカラム横断面積Cの比率(C/U)が3.0未満である、請求項記載の溶媒抽出装置。
【請求項3】
前記液導入位置から前記有機相排出口までの長さUの二乗の値に対するカラム横断面積Cの比率(C/U )が0.5以下である、請求項1記載の溶媒抽出装置。
【請求項4】
前記液導入部が前記カラムの側面に設けられている、請求項3に記載の溶媒抽出装置
【請求項5】
前記混合液を前記カラムに導入した状態において、水相と有機相との界面が前記液導入位置よりも下側に位置するように構成されている、請求項1又は2に記載の溶媒抽出装置。
【請求項6】
前記カラム内の前記有機相の線速度が50cm/分以下であるように構成されている、請求項1又は2記載の溶媒抽出装置。
【請求項7】
前記カラムにおける、少なくとも液導入位置よりも上側に、流体介在物が設けられている、請求項1又は2記載の溶媒抽出装置。
【請求項8】
水相と、有機相とが混合されてなる混合液が導入され、当該混合液が前記水相と前記有機相とに分離される正立状態のカラムと、当該カラムに前記混合液を導入する液導入部とを有する溶媒抽出装置を用いて2種以上のイオンから少なくとも1種を分離する方法であって、
前記水相が分離対象である2種以上のイオンを含み、
前記有機相が、前記2種以上のイオンのうち少なくとも1種と錯形成可能な抽出剤を含み、
前記溶媒抽出装置において、
前記カラムは、前記混合液から分離された前記水相と前記有機相とがそれぞれ排出される水相排出口と有機相排出口とを有し、当該水相排出口と当該有機相排出口との間の高低差Lの二乗の値に対する該カラムの横断面積Cの比率(C/L)が1.0未満であり、且つ、
前記カラムは、前記液導入部の液導入位置が、前記の水相排出口と有機相排出口との間の鉛直方向の中央位置よりも下側であり、
鉛直方向における前記液導入位置から前記水相排出口までの長さDが、前記高低差Lの0.25以上0.5未満である、イオンの分離方法。