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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010114
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】抗微生物組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 65/08 20090101AFI20250109BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20250109BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20250109BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20250109BHJP
   A01N 43/16 20060101ALI20250109BHJP
   A23B 2/733 20250101ALI20250109BHJP
   A23B 2/746 20250101ALI20250109BHJP
   A23B 2/754 20250101ALI20250109BHJP
【FI】
A01N65/08
A01N31/02
A01P1/00
A01P3/00
A01N43/16 C
A23L3/3472
A23L3/349 501
A23L3/3508
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024108364
(22)【出願日】2024-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2023110960
(32)【優先日】2023-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朱 丹
(72)【発明者】
【氏名】小池 真
【テーマコード(参考)】
4B021
4H011
【Fターム(参考)】
4B021LA41
4B021LW03
4B021LW04
4B021MC01
4B021MK05
4B021MK17
4B021MK18
4B021MK20
4B021MP03
4H011AA01
4H011AA04
4H011BA06
4H011BB03
4H011BB08
4H011BB22
4H011DA13
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】抗微生物活性を有する主成分として食品添加物を用いず、エタノール濃度が低いものであっても、十分な抗微生物活性を有し、かつ調理食品への使用時に当該調理食品本来の風味を保持できる抗微生物組成物の提供。
【解決手段】次の成分(A)及び(B):
(A)茶由来のポリフェノール 総ポリフェノールとして0.075質量%以上
(B)エタノール 23~45質量%
を含有する抗微生物組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)茶由来のポリフェノール 総ポリフェノールとして0.075質量%以上
(B)エタノール 23~45質量%
を含有する抗微生物組成物。
【請求項2】
(A)茶由来のポリフェノールを総ポリフェノールとして0.075~0.3質量%含有する請求項1記載の抗微生物組成物。
【請求項3】
(B)エタノールの含有量に対する(A)茶由来のポリフェノールの含有量(総ポリフェノール)の質量比[(A)/(B)]が1.5×10-3以上6.0×10-3以下である請求項1記載の抗微生物組成物。
【請求項4】
組成物のpHが3.0~6.2である請求項1記載の抗微生物組成物。
【請求項5】
成分(A)として非重合体カテキン類及びテアフラビン類を含有する請求項1記載の抗微生物組成物。
【請求項6】
茶由来の総ポリフェノール中の非重合体カテキン類及びテアフラビン類の合計含有量が30質量%以上である請求項5記載の抗微生物組成物。
【請求項7】
(A)茶由来のポリフェノールを総ポリフェノールとして0.075~0.17質量%、(B)エタノールを32~42質量%含有し、pHが3.0~5.2である請求項1記載の抗微生物組成物。
【請求項8】
微生物が大腸菌群(Escherichia coli)又はブドウ球菌(Staphylococcus)属細菌である請求項1~7のいずれか1項記載の抗微生物組成物。
【請求項9】
微生物がインフルエンザウイルス又はノロウイルスである請求項1~7のいずれか1項記載の抗微生物組成物。
【請求項10】
総ポリフェノールとして0.075質量%以上の(A)茶由来のポリフェノール及び23~45質量%の(B)エタノールを微生物汚染が懸念される対象に適用することを含む、前記対象に抗微生物活性を付与する方法。
【請求項11】
対象が食品である請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗微生物剤は、微生物による製品の汚染や品質劣化の防止、又は感染症の予防等を目的に、医薬品、食品、化粧品、日用品等に用いられている。抗微生物剤の適切な使用は品質管理や公衆衛生の面から非常に有用である。
【0003】
消毒用エタノール(76.9~81.4vol%)は、一般細菌、真菌、ウイルス等に有効で、広域の抗微生物スペクトルを有する消毒薬として知られている。また、カテキン類は、Camellia属の茶葉に含まれるポリフェノールの一種であり、黄色ブドウ球菌や腸炎ビブリオ等の食中毒細菌に対する殺菌作用、インフルエンザウイルス不活化作用等を有することが知られている。例えば特許文献1には、茶の成分である茶ポリフェノールを有効成分とする抗生物質耐性ブドウ球菌感染防止剤が開示されている。
エタノールとカテキン類を併用した例としては、例えば特許文献2に、縮合型タンニンを含むカキ抽出物と、タンニンを含むデーツ種子抽出物と50vol%エタノール水溶液の併用によるノロウイルス及びその代替ウイルスに対する抗ウイルス組成物が開示されている。
【0004】
エタノールとポリフェノール類を併用した例として、例えば特許文献3に、植物由来ポリフェノールを含む植物エキス、具体的にはブドウ種子抽出物や柿タンニン等とエタノール30~80質量%を併用した組成物が、ノンエンベロープウイルスに対する抗ウイルス性能を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3―246227号公報
【特許文献2】特開2020-40907号公報
【特許文献3】特開2022-47531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、抗微生物活性の観点からエタノール濃度を高くすると、エタノール過敏症や不快なエタノール臭の原因になる。また、調理食品への使用により、保存後に調理食品本来の風味が減弱するという問題があった。一方で、エタノール濃度を低くすると、抗微生物活性が不十分であった。
【0007】
特許文献1では、茶ポリフェノールのメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)に対する殺菌作用が示されているが、大腸菌やウイルスに対する効果は明らかではない。
また、特許文献3で使われているブドウ種子抽出物、柿タンニン等は食品添加物であるが、一般に、食品添加物は最終消費者からの受け入れ性が低い傾向がある。
従って、本発明は、抗微生物活性を有する主成分として食品添加物を用いず、エタノール濃度が低いものであっても、十分な抗微生物活性を有し、かつ調理食品への使用時に当該調理食品本来の風味を保持できる抗微生物組成物を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に鑑み種々検討した結果、茶由来のポリフェノール及びエタノールをそれぞれ特定濃度にして併用することにより、抗微生物活性を有し、且つ調理食品へ使用した場合でも当該調理食品本来の風味を良好に維持できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の1)~2)に係るものである。
1)次の成分(A)及び(B):
(A)茶由来のポリフェノール 総ポリフェノールとして0.075質量%以上
(B)エタノール 23~45質量%
を含有する抗微生物組成物。
2)総ポリフェノールとして0.075質量%以上の(A)茶由来のポリフェノール及び23~45質量%の(B)エタノールを微生物汚染が懸念される対象に適用することを含む、前記対象に抗微生物活性を付与する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、抗微生物活性を有しながらも、調理食品への使用時に当該調理食品本来の風味を保持できる抗微生物組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において(A)茶由来のポリフェノールは、酒石酸鉄法により測定されるものをいう。ポリフェノールは、その構造に2個以上のフェノール性水酸基を持つ化合物を意味し、例えば、フラボン類、フラボノール類、イソフラボン類、フラバン類、フラバノール類、フラバノン類、フラバノノール類、カルコン類、アントシアニジン類等のフラボノイド類及びそれらの配糖体や重合体、クマリン類、クルクミン類、リグナン類等が挙げられる。
フラボン類には、アピイン、アピゲニン、オリエンチン、イソオリエンチン等が包含され、フラボノール類には、ケルセチン、ミリセチン、ケンフェロール、ルチン等が包含される。また、フラバノール類には、非重合体カテキン類が包含され、更にその重合体にはテアフラビン類、テアルピジン類等が包含される。
本明細書において「非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びエピガロカテキン等の非ガレート体と、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のガレート体を併せての総称である。
また、「テアフラビン類」とは、テアフラビン、テアフラビン3-O-ガレート、テアフラビン3’-O-ガレート、テアフラビン3,3’-ジ-O-ガレートを併せての総称である。
茶由来の総ポリフェノールは、微生物活性の観点から、フラバノール類から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、非重合体カテキン類及びテアフラビン類から選ばれる少なくとも1種を含有することがより好ましく、非重合体カテキン類及びテアフラビン類を含有することが更に好ましい。茶由来の総ポリフェノール中の非重合体カテキン類及びテアフラビン類の合計含有量は、抗微生物活性増強の観点及び食品の風味の保持の観点から、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。なお、本明細書において、非重合体カテキン類の含有量は上記8種の合計量に基づいて定義され、テアフラビン類の含有量は上記4種の合計量に基づいて定義される。
【0012】
茶は、Camellia属の茶葉、例えば、C.sinensis var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.sinensis var.assamica又はそれらの雑種から得られる茶葉が挙げられる。茶葉は、摘採された生茶葉の他、これを乾燥、凍結等させたもの、又はこれらを製茶したものが包含される。
茶葉は、その加工方法により、不発酵茶葉、半発酵茶葉、発酵茶葉に分類される。不発酵茶葉としては、例えば、煎茶、深蒸し煎茶、焙じ茶、番茶、玉露、かぶせ茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶葉が挙げられる。半発酵茶葉としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の烏龍茶葉が挙げられる。発酵茶葉としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶葉が挙げられる。なかでも、抗微生物活性増強の観点、及び食品風味保持の観点から、緑茶葉が好ましい。
【0013】
茶由来のポリフェノールは、特に限定されず、ポリフェノールを含む茶葉から抽出、分画したものでも、化学合成品でもよい。また、ポリフェノールを含む茶抽出物の形態で含有させることもできる。ここで、「茶抽出物」とは、茶葉から水又は親水性有機溶媒を用いて抽出したものであって、濃縮や精製操作が行われていないものをいう。水としては、例えば、水道水、天然水、蒸留水、膜ろ過水、イオン交換水等が挙げられる。親水性有機溶媒としては、例えば、エタノール等の低級アルコールを挙げることができる。
また、抽出方法としては、ニーダー抽出、撹拌抽出、ドリップ抽出、カラム抽出等の公知の方法を採用することができる。抽出条件は特に限定されず、抽出方法により適宜選択することができる。得られた抽出物は、ろ過や遠心分離処理により、夾雑物等を分離してもよい。また、必要により、抽出物を濃縮又は希釈して濃度調整してもよい。
【0014】
抗微生物組成物中の茶由来のポリフェノールの含有量は、抗微生物活性増強の観点、及び食品風味保持の観点から、総ポリフェノールとして、0.075質量%以上であって、好ましくは0.10質量%以上であり、さらに好ましくは0.13質量%以上であり、また、食品風味保持の観点から、好ましくは0.3質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.17質量%以下、より更に好ましくは0.16質量%以下である。抗微生物組成物中の茶由来のポリフェノールの含有量は、総ポリフェノールとして、好ましくは0.075質量%以上0.3質量%以下、より好ましくは0.075質量%以上0.2質量%以下、さらに好ましくは0.075質量%以上0.17質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以上0.17質量%以下、より更に好ましくは0.13質量%以上0.16質量%以下である。
酒石酸鉄法による総ポリフェノールの測定は、具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられる(B)エタノールは、例えば、発酵エタノール、合成エタノール、バイオエタノール、精製エタノール等の通常のものを用いることができる。
抗微生物組成物中のエタノールの含有量は、抗微生物活性増強の観点、及び食品風味保持の観点から、23質量%以上であって、好ましくは32質量%以上、より好ましくは38質量%以上であり、食品風味保持の観点から、45質量%以下であって、好ましくは42質量%以下である。抗微生物組成物中のエタノールの含有量は、好ましくは23質量%以上45質量%以下、より好ましくは32質量%以上42質量%以下、さらに好ましくは38質量%以上42質量%以下である。
【0016】
本発明の抗微生物組成物において、(B)エタノールの含有量に対する(A)茶由来のポリフェノールの含有量(総ポリフェノール)の質量比[(A)/(B)]は、抗微生物活性増強の観点、及び食品風味保持の観点から、好ましくは1.5×10-3以上であり、より好ましくは2.5×10-3以上、さらに好ましくは3.4×10-3以上であり、また、食品風味保持の観点から、好ましくは6.0×10-3以下であり、より好ましくは4.4×10-3以下、さらに好ましくは4.0×10-3以下である。(B)エタノールの含有量に対する(A)茶由来のポリフェノールの含有量(総ポリフェノール)の質量比[(A)/(B)]は、好ましくは1.5×10-3以上6.0×10-3以下、より好ましくは2.5×10-3以上4.4×10-3以下、さらに好ましくは3.4×10-3以上4.0×10-3以下である。
【0017】
本発明において、抗微生物組成物のpH(20℃)は、抗微生物活性増強の観点、及び食品風味保持の観点から、3.0~6.2が好ましく、3.0~5.2がより好ましく、3.0~4.5がさらに好ましく、3.3~3.8がより更に好ましい。pHは、20℃に温度調整をしてpHメータにより測定するものとする。
抗微生物組成物のpHはpH調整剤により調整することができる。ここで、pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の無機酸;クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸等の有機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアやその誘導体、モノエタノールアミンやジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ剤を、単独又は組み合わせて用いることができる。好ましくは有機酸であり、より好ましくはクエン酸である。
【0018】
後述する実施例に示すように、茶由来のポリフェノール及びエタノールをそれぞれ特定濃度で含有する組成物は、黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対して優れた抗菌効果を示し、また、インフルエンザウイルス及びネコカリシウイルスに対して優れたウイルス不活化効果を示す。ネコカリシウイルスはノロウイルスの代替ウイルスである。
さらに、当該組成物を調理食品へ使用した場合、当該調理食品本来の風味を損なうことなく良好に維持することができる。
したがって、特定濃度の茶由来のポリフェノール及びエタノールの組み合わせは、微生物に対する抗微生物活性を持つ抗微生物組成物の有効成分となり得、また、抗微生物組成物を製造するために使用することができる。
また、茶由来のポリフェノール及びエタノールをそれぞれ特定濃度で含有する組成物を微生物汚染が懸念される対象に適用すれば、前記対象に抗微生物活性を付与することが可能である。
【0019】
本明細書において、微生物としては、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫等が挙げられる。
細菌は、グラム陰性菌として、S.dysenteria(赤痢菌A亜群),S.flexneri(赤痢菌B亜群),S.boydii(赤痢菌C亜群),S.sonnei(赤痢菌D亜群)等の赤痢属(Shigella)細菌;ブルセラ(Brucella)属細菌;E.coli.O157等の大腸菌群(Escherichia coli);S.typhi(チフス菌),S.paratyphi A(パラチフスA菌),S.paratyphi B(パラチフスB菌),S.Typhimurium(ネズミチフス菌),S.Enteritidis(ゲルトネル菌)等のサルモネラ(Salmonella)属細菌;V.cholerae(コレラ菌),V.parahaemolyticus(腸炎ビブリオ)等のビブリオ(Vibrio)属細菌;緑膿菌(P.aeruginosa)等のシュードモナス(Pseudomonas)属細菌;A.hidrophila(エロモナス・ヒドロフィア),A.sobria(エロモナス・ソブリア),A.caviae(エロモナス・キャビエ),A.salmonicida(エロモナス・サルモニサイダ)等のエロモナス(Aeromonas)属細菌;C.jejuni,C.coli等のカンピロバクター(Campylobacter)属細菌;A.baumannii(アシネトバクター・バウマニー)等のアシネトバクター(Acinetobacter)属細菌;S.marcescens(セラチア・マルセッセンス)等のセラチア(Serratia)属細菌;K.pneumoniae(クレブシエラ・ニューモニエ)等のクレブシエラ(Klebsiella)属細菌等が挙げられる。
【0020】
また、グラム陽性菌として、B.subtilis(枯草菌),炭疽菌B.anthracis(炭疽菌),B.cereus(セレウス菌)等のバシラス(Bacillus)属細菌;L.monocytogenes(リステリア・モノサイトゲネス菌),L.ivanovii(リステリア・イバノヴィ菌),L.seeligeri(リステリア・シーリゲリー菌)等のリステリア(Listeria)属細菌;Al.acidoterrestris(旧B.acidoterrestris)等のアリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属細菌;S.aureus(黄色ブドウ球菌),S.pyogenes等のブドウ球菌(Staphylococcus)属細菌;C.botulinum(ボツリヌス菌),C.perfringens(ウェルシュ菌),C.difficile,C.sporogens等のクロストリジウム(Clostridium)属細菌;Leuconostoc mesenteroides等のリューコノストック(Leuconostoc)属細菌をはじめとする乳酸球菌,Lactobacillus plantarum等のラクトバチルス(Lactobacillu)属細菌をはじめとする乳酸桿菌;Desulfotomaculum nigrificans等のデスルフォマクルム(Desulfotomaculum)属細菌;Enterococcus faecalis等のエンテロコッカス(Enterococcus)属細菌;Y.enterocolitica(エルシニア・エンテロコリチカ)等のエルシニア(Yersinia)属細菌等が挙げられる。
【0021】
真菌としては、Aspergillus fumigatus,Aspergillus flavus,Aspergillus terreus,Aspergillus nidulans,Aspergillus niger,Aspergillus ustus等のアスペルギルス(Aspergillus)属;Blastomyces dermatitidis等のブラストミセス(Blastomyces)属;Saccharomyces cerevisiae等のサッカロミセス(Saccharomyces)属;Candida albicans等のカンジダ(Candida)属;Coccidioides immitis等のコクシジオイデス(Coccidioides)属;Cryptococcus neoformans,Cryptococcus gattii等のクリプトコッカス(Cryptococcus)属;Histoplasma capsulatum等のヒストプラズマ(Histoplasma)属;Paracoccidioides brasiliensis等のパラコクシジオイデス(Paracoccidioides)属;Sporothrix schenckii等のスポロトリクス(Sporothrix)属等の真菌が挙げられる。
【0022】
ウイルスは、核酸の種類(RNA、DNA)及びエンベロープの有無を問わず、すべての種類のウイルスが含まれる。
エンベロープを有するウイルスとしては、核酸としてRNAを有する、インフルエンザウイルス;コロナウイルス;SARSコロナウイルス;SARSコロナウイルス-2;RSウイルス;ムンプスウイルス;ラッサウイルス;デングウイルス;風疹ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス、核酸としてDNAを有する、ヒトヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;B型肝炎ウイルス等が挙げられる。
また、エンベロープを有さないウイルスとしては、核酸としてRNAを有する、ノロウイルス;ポリオウイルス;エコーウイルス;A型肝炎ウイルス;E型肝炎ウイルス;ライノウイルス;アストロウイルス;ロタウイルス;コクサッキーウイルス;エンテロウイルス;サポウイルス、核酸としてDNAを有する、アデノウイルス;B19ウイルス;パポバウイルス;ヒトパピローマウイルス等が挙げられる。
【0023】
寄生虫としては、アニサキス、回虫等が挙げられる。
【0024】
本発明においては、上記微生物のうち、細菌及びウイルス、更に大腸菌群(Escherichia coli)、ブドウ球菌(Staphylococcus)属細菌、インフルエンザウイルス及びノロウイルスに対してより有効である。
【0025】
本発明において、抗微生物活性は、細菌に対する抗菌作用、真菌に対する抗真菌作用、ウイルスに対する抗ウイルス作用、寄生虫に対する駆虫作用を含む。抗菌、抗真菌は、微生物を死滅させる殺菌、滅菌、微生物の発生、発育、増殖を抑える静菌、制菌いずれの概念も含む語である。
抗ウイルス作用は、ウイルスの活性を低減又は消失し、宿主細胞への感染力を消失させるウイルスの不活化作用が好ましい。なお、ウイルスの不活化作用は、例えば、試験品とウイルスを接触させた後、ウイルスを宿主細胞に感染させ、そのウイルス感染価を測定すること等により確認することができる。ここで、宿主細胞としては、対象となるウイルスが増殖可能な細胞であればよく、インフルエンザウイルスであれば、例えばイヌ腎臓細胞(MDCK)、アフリカミドリザル腎臓上皮細胞(Vero)、アヒル胚性幹細胞由来株化細胞(EB66)、ヒトコロナウイルスであれば、例えばヒト回盲腺癌細胞(HCT-8)、アフリカミドリザル腎臓上皮細胞(VeroE6)、ヒト肝臓がん由来株化細胞(Huh7)を用いることができる。
【0026】
本発明の抗微生物組成物は、微生物汚染が懸念される対象への適用のしやすさの観点から、液相状態で使用するのが好ましい。
液相状態で使用される抗微生物組成物は、茶由来のポリフェノール及びエタノールから本質的に構成されていてもよいが、茶由来のポリフェノール及びエタノールの他、例えば、基剤(水、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジメチルエーテル、液体プロパン、ワセリン、ラノリン、ヒマシ油、パラフィン系炭化水素(例えば、流動パラフィン等)等)、次亜塩素酸、過酸化水素、銀イオン化合物等の抗菌性物質、カチオン性抗菌剤(塩化ベンゼトニウム等)、殺菌剤(トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等)、界面活性剤等を含んでいてもよい。また、キレート剤、保湿剤、潤滑剤、ビルダー、緩衝剤、研磨剤、電解質、漂白剤、香料、染料、発泡制御剤、腐食防止剤、精油、増粘剤、顔料、光沢向上剤、酵素、洗剤、溶媒、希釈剤、分散剤、pH調整剤、乳化剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、ポリマー、シリコーン、向水性物質等の添加剤を適宜配合することにより調製される。添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
斯かる組成物の形態としては、液状、乳液状、クリーム状、ローション状、ペースト状、ジェル状、シート状(基剤担持)、オイル状等の形態であり得るが、これらに限定されない。組成物の形態は、液状であるのが好ましい。
【0027】
当該抗微生物組成物は、そのまま使用することができるし、品質保持剤、日持ち向上剤、消毒剤、洗浄剤(衣料用洗浄剤、住居用洗浄剤、食器用洗浄剤、洗髪剤、手指洗浄剤、全身用洗浄剤、洗顔料等)、衛生用品(ローション、クリーム、入浴剤、フォーム、制汗剤、消臭剤、腋臭防止剤、口腔衛生用品(例えば、洗口液、歯磨、口中清涼剤、うがい薬)等)等に適宜配合して使用することができる。
なかでも、本発明の抗微生物組成物は、調理食品へ使用した場合でも当該調理食品本来の風味を良好に維持できることから、食品用の抗微生物組成物として好適である。
【0028】
気相状態で使用される抗微生物組成物(例えば、空間除微生物用組成物)は、茶由来のポリフェノール及びエタノールから本質的に構成されていてもよいが、茶由来のポリフェノール及びエタノールの他、例えば、上記基剤や各種添加剤(界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、消臭剤、天然抽出物、シリコーン、増粘剤、染料、顔料、色素、油剤、香料等)を適宜組み合わせて含有させることができる。添加剤の含有量については上述したとおりである。斯かる組成物の形態としては、液状又はゲル状等が挙げられるが、液状であるのが好ましい。
【0029】
本発明における抗微生物組成物によれば、微生物汚染が懸念される対象に適用することにより、前記対象に抗微生物活性を付与することが可能となる。特定濃度の茶由来のポリフェノール及びエタノールが適用される微生物汚染が懸念される対象としては、例えば、微生物が付着する動物の皮膚若しくは粘膜、食品、無生物対象物の硬質若しくは軟質表面、廃棄物等の物体、微生物が飛沫する若しくは浮遊する生活空間が挙げられる。
ここで、食品としては、特に限定されず、食材(魚介類、肉類、豆類、海藻類、野菜類、きのこ類、種実類、穀類、芋類、卵等)、揚げ物(天ぷら、コロッケ、から揚げ、フライドポテト、とんかつ等)、焼き物(ステーキ、餃子、お好み焼き等)、炒め物(野菜炒め、チャーハン等)、煮物(煮魚、肉じゃが、サバの味噌煮等)、蒸し物(酒蒸し、茶わん蒸し等)、酢の物、漬物、汁物(スープ、味噌汁等)、飲料(コーヒー、紅茶、スムージー等)、サラダ、海藻類、米飯、ご飯類(チャーハン、おにぎり、釜めし等)、麺類(ラーメン、焼きそば、パスタ等)、パン類、穀類加工品(シリアル、オートミール等)、菓子類(チョコレート、クッキー、和菓子等)、豆腐・油揚げ類、納豆、食肉製品、牛乳、乳飲料、チーズ、ヨーグルト、アイスクリーム類、インスタント食品(カップラーメン、カップスープ)、各種冷凍食品、缶詰(シーチキン、サバ缶等)、瓶詰食品、レトルト食品(カレー、牛丼等)等の調理食品が挙げられる。
無生物対象物の表面としては、例えば、家庭や事業施設における、カウンタ、シンク、化粧室、トイレ、浴槽、シャワー台、床、窓、ドアノブ、壁、下水口、パイプ等の硬質表面;キッチン用品、食器、家具、電話、玩具等の各種器具、道具、雑貨等の硬質表面;繊維製品(カーペット、エリアラグ、カーテン、布製家具、衣類、マスク等)等の軟質表面が挙げられる。
生活空間としては、玄関、ダイニングキッチン室、寝室、子供室、浴室、トイレ等の一般家庭内、販売店、食堂、旅館、病院、作業場、工場、ごみ集積場、検疫所、畜産農場、市場等の施設内、自動車、電車、航空機等の乗り物内、準密閉空間(ロッカー、物置、押入れ、クローゼット等;収納箱(おもちゃ用、カラオケ用マイク用、食器用、調味料用、筆記具用、文房具用))等が挙げられる。
【0030】
本発明における抗微生物組成物において、特定濃度の茶由来のポリフェノール及びエタノールは、微生物汚染が懸念される対象に適用されるが、その態様は特に限定されず、特定濃度の茶由来のポリフェノール及びエタノールを液相又は気相で微生物と接触又は反応させればよい。
茶由来のポリフェノール及びエタノールは、どちらを先に適用しても、同時に適用してもよい。同時に適用しない場合、それらの適用間隔は、茶由来のポリフェノール及びエタノールの抗微生物活性の増強効果を奏するかぎり適宜選択しうる。
液相で微生物と接触させる方法としては、茶由来のポリフェノール及びエタノール、又はこれらを含有する組成物を処理対象にそのまま塗布する方法、茶由来のポリフェノール及びエタノール、又はこれらを含有する組成物を拡散させて処理対象に振りかける方法、或いは、茶由来のポリフェノール及びエタノール、又はこれらを含有する組成物を含浸させたシート、ガーゼ、タオル、おしぼり、ティッシュ、ウエットティッシュ等で対象表面を拭き取る方法等、の何れでもよい。
また、茶由来のポリフェノール及びエタノール、又はこれらを含有する組成物を、例えば、トリガースプレー容器(直圧又は蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器、耐圧容器を具備したエアゾールスプレー容器等の公知のスプレー容器に充填し、噴霧量を適宜調整して処理対象に噴霧する方法が挙げられる。また、加圧空気霧化噴霧装置、ネブライザー、ディフューザー等の霧化装置、ウオッシャーノズルやミスト機等の拡散装置に充填し、微生物が存在する空間中に噴霧する方法が挙げられる。
【0031】
気相で微生物と接触又は反応させる方法としては、例えば、茶由来のポリフェノール及びエタノールを自然揮散させる形態或いは強制揮散させる形態が挙げられる。これにより、生活空間に存在する微生物除去(除微生物)が行える。
自然揮散を目的として使用する場合、例えば、茶由来のポリフェノール及びエタノール、又はこれらを含有する組成物を芯棒、濾紙等に染み込ませて揮散させる方法や透過膜を用いて揮散させる方法等の従来公知の方法が適用できる。また、樹脂に茶由来のポリフェノール及びエタノール、又はこれらを含有する組成物を混練して使用することもできる。混練しうる樹脂としては、天然系、石油系、合成系のワックス、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル系樹脂等が挙げられる。上記の混練物は、そのまま用いることもできるし、多孔質担体に担持させたり、シート状にしたり、該シート状物を積層体にして用いることもできる。多孔質担体としては、例えば、セルロース、キトサン等の天然高分子、上記の合成樹脂、ケイ酸カルシウム等の無機多孔性物質等を、粒状、シート状等の任意の形状にしたものが挙げられる。上記の混練物や積層体は、例えば、空調設備、トイレ、浴室、居間、病室、病院の待合室、ダストボックス等に設置して、茶由来のポリフェノール及びエタノールを徐々に揮散させながら利用することもできる。また、茶由来のポリフェノール及びエタノール、又はこれらを含有する組成物を紙や不織布等からなる製品(空気清浄器のフィルター等)に担持させて使用することもできる。
強制揮散させる場合、斯かる手段としては、例えば、ファン等を用いて揮散させる方法、ヒーター等を用いた加熱揮散方法、超音波によって揮散させる方法等が挙げられる。
【0032】
上述した実施形態に関し、本発明は以下の態様をさらに開示する。
【0033】
<1>次の成分(A)及び(B):
(A)茶由来のポリフェノール 総ポリフェノールとして0.075質量%以上
(B)エタノール 23~45質量%
を含有する抗微生物組成物。
【0034】
<2>総ポリフェノールとして0.075質量%以上の(A)茶由来のポリフェノール及び23~45質量%の(B)エタノールを微生物汚染が懸念される対象に適用することを含む、前記対象に抗微生物活性を付与する方法。
【0035】
<3>成分(A)として、好ましくはフラバノール類から選ばれる少なくとも1種を含有し、より好ましくは非重合体カテキン類及びテアフラビン類から選ばれる少なくとも1種を含有し、さらに好ましくは非重合体カテキン類及びテアフラビン類を含有する、<1>に記載の抗微生物組成物又は<2>に記載の方法。
<4>茶由来の総ポリフェノール中の非重合体カテキン類及びテアフラビン類の合計含有量が、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である、<3>に記載の抗微生物組成物又は方法。
<5>(A)茶由来のポリフェノールの含有量が、総ポリフェノールとして、0.075質量%以上であって、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.13質量%以上であり、また、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.17質量%以下、より更に好ましくは0.16質量%以下であり、また、好ましくは0.075質量%以上0.3質量%以下、より好ましくは0.075質量%以上0.2質量%以下、さらに好ましくは0.075質量%以上0.17質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以上0.17質量%以下、より更に好ましくは0.13質量%以上0.16質量%以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の抗微生物組成物又は方法。
<6>エタノールの含有量が、23質量%以上であって、好ましくは32質量%以上、より好ましくは38質量%以上であり、また、45質量%以下であって、好ましくは42質量%以下であり、また、好ましくは23質量%以上45質量%以下、より好ましくは32質量%以上42質量%以下、さらに好ましくは38質量%以上42質量%以下である、<1>~<5>のいずれかに記載の抗微生物組成物又は方法。
<7>(B)エタノールの含有量に対する(A)茶由来のポリフェノールの含有量(総ポリフェノール)の質量比[(A)/(B)]が、好ましくは1.5×10-3以上、より好ましくは2.5×10-3以上、さらに好ましくは3.4×10-3以上であり、また、好ましくは6.0×10-3以下、より好ましくは4.4×10-3以下、さらに好ましくは4.0×10-3以下であり、また、好ましくは1.5×10-3以上6.0×10-3以下、より好ましくは2.5×10-3以上4.4×10-3以下、さらに好ましくは3.4×10-3以上4.0×10-3以下である、<1>~<6>のいずれかに記載の抗微生物組成物又は方法。
<8>組成物のpH又は適用時のpHが、好ましくは3.0~6.2、より好ましくは3.0~5.2、さらに好ましくは3.0~4.5、より更に好ましくは3.3~3.8である、<1>~<7>のいずれかに記載の抗微生物組成物又は方法。
<9>微生物が、好ましくは細菌及びウイルスから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは大腸菌群(Escherichia coli)、ブドウ球菌(Staphylococcus)属細菌、インフルエンザウイルス及びノロウイルスから選ばれる少なくとも1種である、<1>~<8>のいずれかに記載の抗微生物組成物又は方法。
<10>微生物汚染が懸念される対象が、好ましくは微生物が付着する動物の皮膚若しくは粘膜、食品、無生物対象物の硬質若しくは軟質表面、廃棄物等の物体、及び微生物が飛沫する若しくは浮遊する生活空間から選ばれる少なくとも1つであり、より好ましくは食品である、<2>~<8>のいずれかに記載の方法。
【実施例0036】
〔総ポリフェノール濃度の測定〕
総ポリフェノールの測定は、酒石酸鉄法により、標準液として没食子酸エチルを用い、没食子酸の換算量として求めた(参考文献:「緑茶ポリフェノール」飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズNO.10)。試料5mLを酒石酸鉄標準溶液5mLで発色させ、リン酸緩衝液で25mLに定溶し、540nmで吸光度を測定し、没食子酸エチルによる検量線から総ポリフェノール量を求めた。
・酒石酸鉄標準液の調製:硫酸第一鉄・7水和物100mg、酒石酸ナトリウム・カリウム(ロッシェル塩)500mgを蒸留水で100mLとした。
・リン酸緩衝液の調製:1/15Mリン酸水素ニナトリウム溶液と1/15Mリン酸ニ水素ナトリウム溶液を混合しpH7.5に調整した。
【0037】
試験例1 黄色ブドウ球菌、大腸菌に対する抗菌効果(1)
1)試験液
茶抽出物(ルナフェノンT-100(花王株式会社);総ポリフェノール37質量%、総ポリフェノール中の非重合体カテキン類及びテアフラビン類の割合は89質量%)、エタノール(エチルアルコール 発酵 トレーサブル95 1級 食品・食品添加物用(日本アルコール産業株式会社);純度99質量%以上)を用いて、総ポリフェノール濃度0.15質量%、エタノール濃度40質量%の試験液を調製した。具体的には、エタノール40質量%の溶解液を作製した。溶解液に対し、総ポリフェノール濃度0.15質量%になるように、ルナフェノンT-100(花王株式会社)を添加し、5分間攪拌して溶解した。溶解液に対し、クエン酸(無水 食品添加物用)でpH3.5となるように調整した。
【0038】
2)供試菌
黄色ブドウ球菌・Staphylococcus aureus NBRC 12732、大腸菌・Escherichia coli NBRC 3972
【0039】
3)試験方法
JIS Z 2801(ISO 22196に準拠)標準試験法に準じて行った。50mm×50mm(厚さ10mm以内)の試験片に、0.2mLの菌液と0.2mLの試験液を塗布し、40mm×40mmのフィルムで被覆した。0.2mLの菌液と0.2mLの生理食塩水を塗布した試験片をコントロールに用いた。この試験片を35±1℃、相対湿度90%以上で24時間培養した。静置後、試験片上の試験菌を洗い出して回収した後、1cmあたりの生菌数を測定した。
次式により抗菌活性値を算出した。
抗菌活性値=(コントロール試験片の24時間後の1cmあたりの生菌数の対数値の平均値)-(試験液塗布試験片の24時間後の1cmあたりの生菌数の対数値の平均値)
【0040】
4)結果
黄色ブドウ球菌数は4.3Log以上、大腸菌数は5.7Log以上の菌数低減効果が確認された。
【0041】
試験例2 黄色ブドウ球菌、大腸菌に対する抗菌効果(2)
1)試験液
試験例1と同様の手順で、総ポリフェノール濃度0.075質量%、エタノール濃度40質量%、pH3.5の試験液を調製した。
【0042】
2)供試菌、3)試験方法
試験例1と同様の方法にて試験片を作製し、35±1℃、相対湿度90%以上で24時間培養した。次いで、黄色ブドウ球菌と大腸菌の残存菌数を測定し、抗菌活性値を算出した。
【0043】
4)結果
黄色ブドウ球菌数は4.5Log以上、大腸菌は5.7Log以上の菌数低減効果が確認された。
【0044】
試験例3 液相でのインフルエンザウイルス、ネコカリシウイルスの不活化効果(1)
1)試験液
試験例1の試験液を用いた。
【0045】
2)インフルエンザウイルス不活化試験
ASTM-E1052-20 米国試験材料協会 ウイルス不活性化評価標準試験法に準じて行った。
試験ウイルスとしてA型インフルエンザウイルス(H3N2)ATCC VR-1679を用いた。宿主細胞はMDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)ATCC CCL-34を用い、細胞培養にはEMEM(Minimum Essential Medium Eagle)を用いた。
宿主細胞にインフルエンザウイルスを感染させ、EMEMを加え、34℃で所定時間培養後、遠心処理(1,000g/15min at 4℃)した上清を試験ウイルス懸濁液とした。試験液又は対照液0.9mLに試験ウイルス懸濁液0.1mLを加え、十分に撹拌した後、25℃で静置した。対照液にはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いた。
接触から30秒後、不活化し、EMEMで10倍段階希釈した。0.1mL当たりのウイルス感染価をプラーク測定法にて測定し、1mL当たりのウイルス感染価(PFU/mL)を算出した。
対照の感染価の常用対数平均値から試験の感染価の常用対数平均値を差し引くことで、常用対数値差を求めた。
【0046】
3)ネコカリシウイルス不活化試験
試験ウイルスとしてネコカリシウイルス(F-9)ATCC VR-782を用いた。
宿主細胞はCRFK細胞(ネコ腎臓由来細胞)ATCC CCL-94を用い、細胞培養にはEMEM(Minimum Essential Medium Eagle)を用いた。
宿主細胞にネコカリシウイルスを感染させ、EMEMを加え、37℃で所定時間培養後、遠心処理(1,000g/15min at 4℃)した上清を試験ウイルス懸濁液とした。その後は、試験液又は対照液と試験ウイルス懸濁液を5分間接触させた以外は、上記2)インフルエンザウイルス不活化試験と同様の方法にて対照と試験の常用対数値差を求めた。
【0047】
4)結果
A型インフルエンザウイルス(H3N2)は5.3Log以上、ネコカリシウイルス(F-9)は5.2Log以上のウイルス数低減効果が確認された。
【0048】
試験例4 液相でのインフルエンザウイルス、ネコカリシウイルスの不活化効果(2)
1)試験液
試験例1と同様の手順で、総ポリフェノール濃度0.075質量%、エタノール濃度40質量%、pH3.5の試験液を調製した。
【0049】
2)インフルエンザウイルス不活化試験、3)ネコカリシウイルス不活化試験
試験例3と同様の方法にて試験液のウイルスの不活化を評価した。
【0050】
4)結果
A型インフルエンザウイルス(H3N2)は5.6Log以上、ネコカリシウイルス(F-9)は5.4Log以上のウイルス数低減効果が確認された。
【0051】
試験例5 調理食品の風味評価
1)処方内容
表1に示す処方に従い、茶抽出物(ルナフェノンT-100(花王株式会社);総ポリフェノール37質量%、総ポリフェノール中の非重合体カテキン類及びテアフラビン類の割合は89質量%)、エタノール(エチルアルコール 発酵 トレーサブル95 1級 食品・食品添加物用(日本アルコール産業株式会社);純度99質量%以上)を混合し、本発明組成物(実施例1~11)及び比較組成物(比較例1~3)の調整に、イオン交換水をバランスとして用いた。クエン酸(無水 食品添加物用)で表1に示すpHになるように調整した。
【0052】
2)使用容器
1回のプッシュで0.6g液量をスプレーできるポンプ付き市販容器を用いた。
【0053】
3)試験方法
市販のサバ味噌煮と鶏から揚げ(解凍品)それぞれ50gをプラスチックトレーに乗せ、四角方向より中心に向けて計4回スプレーし、合計2.4gの評価液を噴霧後、サンプルトレーにラップフィルムにて密閉した。室温25℃で1時間保存後、専門パネル2名で喫食し、下記評価基準に従って風味を評価した。2名の協議をもって評点とした。評価液未噴霧の風味を基準品として比較評価した。
(評価基準)
1点:基準品以下
2点:基準品と同等
3点:軽減効果 有
4点:軽減効果 顕著
5点:食材本来の香り
【0054】
結果を表1~表3に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
表1~表3の結果から、茶由来のポリフェノール及びエタノールをそれぞれ特定濃度含む本発明組成物は、調理食品へ使用した場合でも当該調理食品本来の風味を良好に維持できることが確認された。