IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図1
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図2
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図3
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図4
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図5
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図6
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図7
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図8A
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図8B
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図8C
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図8D
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図9
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図10
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図11
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図12
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図13
  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101150
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/10 20060101AFI20250630BHJP
【FI】
H03M1/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217779
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 英幸
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA01
5J022AB01
5J022AC04
5J022BA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コストの増大を抑制しながら、分解能を向上させることが可能なAD変換回路を備えた半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、外部端子T1と、クロック信号CLK_ADと、外部端子T1を流れる電流に従った検出電流をオーバーサンプリングし、デジタル信号に変換するAD変換回路8と、記憶回路10に保持された補正データに基づいて、AD変換回路8によって得られたデジタル信号を補正し、出力する補正回路9と、補正回路9から出力されたデジタル信号を平均化する平均化回路11と、平均化回路11によって平均化されたデジタル信号を、ダウンサンプリングするダウンサンプリング回路12と、ダウンサンプリング回路12の出力と目標電流値とに基づいた電流を生成し、外部端子T1に供給する電流生成回路IGCと、補正データを生成する際に、検出電流に分散用電流を重畳させる接続ノードN_cntと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子と、
第1クロック信号と、周波数が前記第1クロック信号の整数分の1の第2クロック信号とを発生する発振回路と、
前記第1クロック信号に従って、前記第1端子を流れる電流に従った検出電流をオーバーサンプリングし、デジタル信号に変換するAD変換回路と、
記憶回路に保持された補正データに基づいて、前記AD変換回路によって得られたデジタル信号を補正し、出力する補正回路と、
前記第1クロック信号に従って動作し、前記補正回路から出力されたデジタル信号を平均化する平均化回路と、
前記平均化回路によって平均化されたデジタル信号を、前記第2クロック信号に従って、ダウンサンプリングするサンプリング回路と、
前記サンプリング回路の出力と目標電流データとに基づいた電流を生成し、前記第1端子に供給する電流生成回路と、
前記補正データを生成する際に、前記検出電流に分散用電流を重畳させる重畳回路と、
を備え、
前記補正データは、前記検出電流に前記分散用電流が重畳されているときの前記サンプリング回路の出力に基づいて生成され、前記記憶回路に保持される、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、
前記検出電流に前記分散用電流が重畳されているときの前記サンプリング回路の出力を、前記半導体装置の外部へ出力する第2端子と、
前記半導体装置の外部において、前記第2端子から出力された前記サンプリング回路の出力に基づいて生成された前記補正データが供給される第3端子と、
を備え、
前記第3端子に供給された前記補正データが前記記憶回路に書き込まれる、
半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、前記分散用電流を生成するDA変換回路を備え、
前記DA変換回路は周期的に変化する前記分散用電流を生成する、
半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、
前記第1端子に接続され、前記第1端子を流れる電流に従った前記検出電流を出力する電流検出回路と、
前記AD変換回路と前記補正回路との間に接続された演算回路と、
を備え、
前記補正データを生成する際に、前記第1端子に所定の電流が供給され、前記電流検出回路からは、前記所定の電流に従った前記検出電流が出力され、前記演算回路には、前記分散用電流が重畳された前記検出電流に対応するデジタル信号と、前記分散用電流を重畳することで生じるオフセットに対応するデジタル信号とが供給され、前記演算回路は、前記分散用電流が重畳された前記検出電流に対応するデジタル信号から前記オフセットに対応するデジタル信号を減算する、
半導体装置。
【請求項5】
(a)半導体基板を準備する工程と、
(b)前記半導体基板の表面に、目標電流データに応じた第1信号を、第1端子を介して出力する第1回路を含む複数の回路を形成する工程と、
(c)前記第1回路を補正する工程と、
を備え、
前記第1回路は、
前記第1端子に接続された電流検出回路と、
前記電流検出回路に接続されたAD変換回路と、
前記AD変換回路に接続された補正回路と、
前記補正回路に接続された平均化フィルタと、
前記平均化フィルタに接続されたダウンサンプラと、
を備え、
前記複数の回路は、さらに、
前記AD変換回路に接続されたオフセット除去回路と、
前記電流検出回路と前記AD変換回路とを接続する第1ノードに接続された電流生成回路と、
を備え、
前記(c)工程は、
(c1)前記電流生成回路で生成した第1周期を有する第2信号を、前記第1ノードにおいて、前記第1信号に重畳し、第3信号を生成する工程と、
(c2)前記(c1)工程の後、前記AD変換回路で、アナログ信号である前記第3信号をデジタル信号に変換し、第4信号を生成する工程と、
(c3)前記(c2)工程の後、前記オフセット除去回路を用いて前記第4信号に含まれる前記第2信号を前記第1信号に重畳することにより発生したオフセットを除去して第5信号を生成する工程と、
(c4)前記(c3)工程の後、前記平均化フィルタを用いて前記第5信号を平均化し、第6信号を生成する工程と、
(c5)前記(c4)工程の後、前記ダウンサンプラを用いて前記第1周期の整数分の1の周期にてデータを間引き、第7信号を生成する工程と、
(c6)前記(c5)工程の後、前記第7信号を外部へ出力する工程と、
を備える、
半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2信号は、三角波状の信号である、
半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
前記電流生成回路は、
カウンタと、
前記カウンタに接続されたデコーダと、
前記デコーダに接続されたDA変換回路と、
を備え、
前記DA変換回路は、前記デコーダの出力によってオン/オフされるスイッチを備えたカレントミラー回路で構成されている、
半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記カウンタは、前記第1周期の整数分の1の周期を求めるのに用いられるカウンタと同一である、
半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c6)工程で出力された前記第7信号は、前記外部に設けられたテスタに供給され、前記テスタによって、前記補正回路で用いられる補正データが生成される、
半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記複数の回路は、前記補正回路に接続された記憶回路を備え、
前記記憶回路には、前記テスタによって生成された補正データが格納され、前記補正回路は、記憶回路に格納された前記補正データに基づいて補正を行う、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関し、例えばアナログ・デジタル(以下、ADとも称する)変換回路を備えた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AD変換回路の分解能を向上させる技術として、例えば非特許文献1に示されているような技術がある。非特許文献1には、標本化定理で定まる周波数よりも高い周波数でアナログ信号をサンプリングして、AD変換し、デジタルフィルタで平均化することで、見かけ上の分解能を向上させることが示されている。これにより、低分解能のAD変換回路で、高い分解能の測定を行うことが可能となり、低コスト化を図ることが可能である。なお、以下の説明では、標本化定理で定まる周波数(すなわちアナログ信号の最大周波数の2倍の周波数)よりも高い周波数でサンプリングすることを、オーバーサンプリングと称する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】AN118:Improving ADC Resolution By Oversampling and Averaging、 [online]、 2013 7/13、 Rev.1.3、 Silicon Laboratories、P.1-P.20、 [令和5年11月9日検索]、 インターネット<URL:https://WWW.silabs.com/documents/public/application-note/an118.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AD変換回路を搭載する半導体装置として、例えば、半導体装置から出力される出力信号をAD変換回路で変換し、AD変換回路によって得られたデジタル信号と目標値データとの差に応じたパルス幅で、出力信号の値を調整するものがある。このような半導体装置に搭載されるAD変換回路として、非特許文献1に示されている技術に従ってAD変換回路とデジタルフィルタとを用いれば、分解能の向上を図りながら、半導体装置の低コスト化を図ることが可能である。
【0005】
一方、AD変換回路を含むアナログブロックでは、誤差が発生する。この誤差を低減するために、デジタル補正回路(以下、単に補正回路とも称する)と補正回路に補正データを供給する記憶回路とを半導体装置に搭載することが考えられる。この場合、半導体装置を製造する際のテスト工程で、所定の値をAD変換回路に入力し、AD変換回路によって得られたデジタル信号(所定の値に対応したデジタル信号)を基にして、アナログブロックで発生する誤差を補正する補正データを生成し、記憶回路に書き込むことが考えられる。実際に半導体装置が使用されるときには、補正回路が、補正データを用いて、AD変換回路から出力されたデジタル信号に含まれる誤差を低減するものである。
【0006】
非特許文献1に示されている技術では、デジタルフィルタによる平均化の効果を得るためには、AD変換回路に入力される信号に、ある程度のノイズが載っていることが前提となる。そのため、テスト工程において、AD変換回路に入力される所定の値についても、ある程度のノイズが載っていることが必要となる。そこで、本発明者は、テスト工程において用いるテスタ等によって、交流信号を生成し、これを所定の値としてAD変換回路に入力することを考えた。しかしながら、このようにすると、テストコストが増大すると言う課題が発生することになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される実施の形態のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0008】
すなわち、一実施の形態に係る半導体装置は、第1端子と、第1クロック信号と周波数が第1クロック信号の整数分の1の第2クロック信号とを発生する発振回路と、第1クロック信号に従って、第1端子を流れる電流に従った検出電流をオーバーサンプリングし、デジタル信号に変換するAD変換回路と、記憶回路に保持された補正データに基づいて、AD変換回路によって得られたデジタル信号を補正し、出力する補正回路と、第1クロック信号に従って動作し、補正回路から出力されたデジタル信号を平均化する平均化回路と、平均化回路によって平均化されたデジタル信号を、第2クロック信号に従って、ダウンサンプリングするサンプリング回路と、サンプリング回路の出力と目標電流データとに基づいた電流を生成し、第1端子に供給する電流生成回路と、補正データを生成する際に、検出電流に分散用電流を重畳させる重畳回路とを備える。ここで、補正データは、検出電流に分散用電流が重畳されているときのサンプリング回路の出力に基づいて生成され、記憶回路に保持される。
【0009】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、コストの増大を抑制しながら、分解能を向上させることが可能なAD変換回路を備えた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態1に係る半導体装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態1に係る半導体装置の動作を説明するための波形図である。
図3図3は、実施の形態1に係る分散用電流の重畳を説明するためのブロック図である。
図4図4は、実施の形態1に係るDA変換回路の一例を示す回路図である。
図5図5は、実施の形態1に係る半導体装置のテスト時の動作を説明するための模式的な波形図である。
図6図6は、実施の形態1に係る半導体装置のテスト時の動作を説明するための模式的な波形図である。
図7図7は、実施の形態1に係る比較例を示す波形図である。
図8A図8Aは、実施の形態1に係る半導体装置のテスト時の動作を示す波形図である。
図8B図8Bは、実施の形態1に係る半導体装置のテスト時の動作を示す波形図である。
図8C図8Cは、実施の形態1に係る半導体装置のテスト時の動作を示す波形図である。
図8D図8Dは、実施の形態1に係る半導体装置のテスト時の動作を示す波形図である。
図9図9は、実施の形態2に係る半導体装置を説明するためのブロック図である。
図10図10は、実施の形態2に係る半導体装置の動作を示すための波形図である。
図11図11は、実施の形態3に係る半導体装置を説明するためのブロック図である。
図12図12(A)および図12(B)は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャート図である。
図13図13は、実施の形態1に係るテストボードの一例を示す模式的なブロック図である。
図14図14は、アナログブロックで発生する誤差の低減と、それに伴って発生する課題を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまでも一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。
【0013】
また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0014】
(実施の形態1)
<半導体装置の構成>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置の構成を示すブロック図であり、図2は、実施の形態1に係る半導体装置の動作を説明するための波形図である。実施の形態1に係る半導体装置1は、複数の回路ブロックが周知の半導体製造技術によって形成された1個の半導体基板と、半導体基板に形成された回路ブロックが接続された複数の外部端子(以下、端子とも称する)とを備えている。特に制限されないが、半導体基板は、1個のパッケージによって封止され、複数の外部端子がパッケージから突出している。
【0015】
図1において、一点鎖線で囲まれたCHPは、複数の回路ブロックが形成された半導体基板を示している。半導体基板CHPには、種々の回路ブロックが複数の回路ブロックとして形成されているが、図面が複雑になるのを避けるために、図1には、説明に必要な回路ブロックのみが描かれている。また、図1において、T1~T4は、回路ブロックに接続された外部端子を示している。なお、外部端子についても、回路ブロックと同様に、図1には、説明に必要なもののみが描かれている。
【0016】
実施の形態1では、半導体装置1として、ユーザーが指定した目標電流値(目標値データ)に応じた電流を、外部端子を介して出力する電流レギュレータを備える半導体装置を例として説明するが、勿論、これに限定されるものではない。
【0017】
図1において、2はユーザーが指定した目標電流値(デジタル値)Isetを出力する目標データ出力回路を示している。目標電流値Isetは、電流生成回路IGCに供給される。
【0018】
電流生成回路IGCは、演算回路3、PID制御回路4、PWM発生回路5、インバータ回路6およびNチャンネル型電界効果トランジスタN1、N2を備えている。なお、以下、電界効果トランジスタはMOSトランジスタと称し、Nチャンネル型MOSトランジスタはNMOSトランジスタと称し、Pチャンネル型MOSトランジスタはPMOSトランジスタと称する。
【0019】
演算回路3は、後で説明する検出電流(デジタル値)Idetと目標電流値Isetとの差分を算出し、算出した差分を制御電流(デジタル値)Icntとして、PID制御回路4に供給する。
【0020】
PID制御回路4は、クロック端子ckに供給されるクロック信号CLK_FSに従って動作し、入力されている制御電流Icntに従った制御信号(デジタル値)PI_Dを生成し、PWM発生回路5に出力する。PWM発生回路5も、クロック端子ckに供給されるクロック信号CLK_FSに従って動作し、PWM制御信号PW_Dを生成し、インバータ回路6およびNMOSトランジスタN1のゲートに出力する。クロック信号CLK_FSの周波数は、例えば16MHzである。PWM発生回路5が出力するPWM制御信号PW_Dは、所定の周波数Fpwmの周期的信号であり、PWM制御信号PW_Dの周期は、図2に示されているように、1/Fpwmである。PID制御回路4とPWM発生回路5とによって、周期1/Fpwmにおいてハイレベルとなっている期間とロウレベルとなっている期間との比率が、制御電流Icntの値に従って変化するPWM制御信号PW_Dが生成される。
【0021】
NMOSトランジスタN1のドレインは電源電圧Vddに接続され、NMOSトランジスタN2のソースは接地電圧Vssに接続され、NMOSトランジスタN1のソースはNMOSトランジスタN2のドレインと外部端子(第1端子)T1に接続されている。また、NMOSトランジスタN2のゲートには、インバータ回路6の出力が供給されている。
【0022】
これにより、PWM制御信号PW_Dがハイレベルの期間では、NMOSトランジスタN1がオン状態で、NMOSトランジスタN2はオフ状態となり、NMOSトランジスタN1を介して、電源電圧Vddと外部端子T1との間を電流I_outが流れる。これに対して、PWM制御信号PW_Dがロウレベルの期間では、NMOSトランジスタN2がオン状態で、NMOSトランジスタN1はオフ状態となり、NMOSトランジスタN2を介して、外部端子T1と接地電圧Vssとの間を電流I_outが流れる。その結果、電流生成回路IGCは、目標電流値Isetと検出電流Idetとに基づいた電流(出力電流)I_outを生成して、外部端子T1へ供給することになる。
【0023】
実施の形態1に係る半導体装置1においては、検出電流Idetを生成するために、外部端子T1を流れる電流と相関した相関電流(アナログ値)Ilが用いられる。相関電流Ilは、電流検出回路7によって検出され、検出電流(アナログ値)Isigとして、電流検出回路7からAD変換回路8へ出力される。
【0024】
AD変換回路8のクロック端子ckには、クロック信号CLK_ADが供給される。AD変換回路8は、入力端子に供給されている検出電流Isigを、クロック端子ckに供給されているクロック信号CLK_ADによってサンプリングし、デジタルの検出信号に変換し、出力端子dから出力する。実施の形態1においては、特に制限されないが、AD変換回路8は、分解能が10ビットのAD変換回路である。
【0025】
標本化定理により定まるAD変換回路8のサンプリング周波数、すなわちクロック端子ckに供給されるクロック信号CLK_ADの周波数は、AD変換回路8の入力端子に供給される検出電流の周波数から、125KHzである。しかしながら、実施の形態1においては、クロック信号CLK_ADの周波数は、1MHzとされている。すなわち、AD変換回路8は、オーバーサンプリングで、アナログの検出電流をデジタル信号に変換する。
【0026】
AD変換回路8の出力端子dから出力された検出信号は、演算回路18に供給される。演算回路18の出力信号(演算回路18の出力端子eにおけるデジタル信号)は、補正回路(以下、キャリブレーション回路とも称する)9に供給される。後で図14を用いて一例を示すが、AD変換回路8を含むアナログブロックでは、誤差が発生する。この誤差を低減するために、補正回路9と補正データC_dataを格納する記憶回路10とが設けられている。後で図12および図13を用いて説明するが、補正データC_dataは、半導体装置1を製造する際のテスト工程で求められ、記憶回路10に書き込まれる。
【0027】
電流生成回路IGCが、目標電流値Isetに応じた電流を生成し、外部端子T1に出力電流I_outとして供給するとき、すなわち、半導体装置1が、実際に電流レギュレータとして動作するとき、補正回路9は、記憶回路10から供給されている補正データC_dataを用いて、演算回路18から供給されている出力信号を補正する。補正回路9による補正によって得られた補正結果の出力信号(デジタル値)が、補正回路9の出力端子fから、平均化回路11に供給される。
【0028】
平均化回路11は、クロック端子ckに供給されるクロック信号に従って動作するデジタルフィルタ(平均化フィルタ)によって構成されている。平均化回路11のクロック端子ckに供給されるクロック信号は、AD変換回路8のクロック端子ckに供給されるクロック信号と同じクロック信号CLK_ADである。平均化回路11は、供給された補正回路9の出力信号を平均化して、出力端子gからアナログの出力信号として出力する。
【0029】
平均化回路11から出力されたアナログの出力信号は、ダウンサンプリング(サンプリング)回路12に供給される。ダウンサンプリング回路(ダウンサンプラ)12は、クロック端子ckに供給されているクロック信号CLK_DSに従って、平均化回路11から供給されているアナログの出力信号をダウンサンプリングし、出力端子hからデジタルの出力信号として出力する。この出力端子hから出力されるデジタルの出力信号が、検出電流Idetとして演算回路3に供給される。
【0030】
クロック信号CLK_DSの周波数は、実施の形態1においては、125KHzとなっている。すなわち、クロック信号CLK_DSの周波数は、クロック信号CLK_ADの周波数の1/8となっており、標本化定理によって定まるサンプリング周波数となっている。
【0031】
図2には、前記したPWM制御信号PW_D以外に、AD変換回路8の出力端子dにおける模式的な波形と、ダウンサンプリング回路12の出力端子hにおける模式的な波形も示されている。次に、出力端子dおよびhにおける模式的な波形を用いて、AD変換回路8の動作とダウンサンプリング回路12の動作を模式的に説明する。図2の出力端子dおよびhの波形において、ALは、AD変換回路8およびダウンサンプリング回路12に入力されるアナログ信号の波形(三角波形)を示している。また、出力端子dの波形において、黒丸(●)SPは、AD変換回路8においてサンプリングが行われるタイミング(サンプリングタイミング)とAD変換回路8から出力されるコード(出力コード)の値を示している。また、出力端子hの波形において、黒丸(●)SDは、ダウンサンプリング回路12においてサンプリングが行われるサンプリングタイミングとダウンサンプリング回路から出力される出力コードの値を示している。
【0032】
AD変換回路8では、オーバーサンプリングが行われるため、アナログ信号ALの1周期(平均化領域AVA)においてサンプリングが行われる回数が、例えば6回(黒丸SPの個数)と多い。これに対して、ダウンサンプリング回路12では、アナログ信号ALの1周期においてサンプリングが行われる回数が、例えば1回(黒丸SD)と少ない。見方を変えると、AD変換回路8によるサンプリングによって得られた出力コードから、ダウンサンプリング回路12によって、少ない出力コードに間引かれると見なすことができる。
【0033】
また、出力端子dの波形において、破線AVLは、平均化領域AVAに含まれる6個の出力コード(黒丸SP)の平均値を示している。AD変換回路8によるAD変換によって求められた6個の出力コード(黒丸SP)の平均化が平均化回路11によって行われる。これにより、平均化回路11からの出力信号は、模式的には図2において破線AVLで示されたような波形となる。図2の出力端子dに示したように、分解能が低く、破線AVLをサンプリングするサンプリングタイミングに黒丸SPが存在しなくても、図2の出力端子hに示すように、平均化によって求められた破線AVLを、黒丸SDでサンプリングすることが可能である。すなわち、分解能が低くても、オーバーサンプリングおよび平均化を実施することで、分解能を向上させることが可能である。
【0034】
前記したクロック信号CLK_FS、CLK_ADおよびCLK_DSは、クロック発生回路(発振回路)CLK_GNによって形成される。実施の形態1に係るクロック発生回路CLK_GNは、周波数発生器13、カウンタ14およびPWM周波数生成回路15を備えている。周波数発生器13が、所定の周波数のクロック信号CLK_FSおよびCLK_ADを発生する。クロック信号(第1クロック信号)CLK_ADは、前記したようにAD変換回路8および平均化回路11のクロック端子ckに供給されるとともに、カウンタ14に供給される。カウンタ14は、クロック信号CLK_ADのパルスをカウントし、カウント値をPWM周波数生成回路15に供給する。PWM周波数生成回路15は、供給されているカウント値に基づいて、クロック信号(周波数が、第1クロック信号の整数分の1の第2クロック信号)CLK_DSを生成し、前記したようにダウンサンプリング回路12のクロック端子ckに供給する。
【0035】
また、半導体装置1は、制御レジスタ(図示せず)を備えた制御回路22と、制御回路22から出力されるテストイネーブル信号(以下、単にテスト信号とも称する)Test_enによってスイッチ制御されるスイッチ21と、制御回路22に接続された外部端子(第4端子)T4と、スイッチ21を介してダウンサンプリング回路12の出力端子hに接続された外部端子(第2端子)T2と、記憶回路10に接続された外部端子(第3端子)T3とを備えている。
【0036】
さらに、半導体装置1は、論理回路19、20と、論理回路20を介してカウンタ14の出力端子caに接続されたデコーダ16と、デコーダ16の出力信号(デジタル値)dinをアナログ値に変換するデジタル・アナログ(以下、DAとも称する)変換回路17とを備えている。
【0037】
制御回路22、スイッチ21、外部端子T2~T4、論理回路19、20、デコーダ16およびDA変換回路17については、後で説明するので、ここでは省略する。
【0038】
図1において、符号LLは、外部端子T1と接地電圧Vssとの間に接続された模式的な負荷を示している。
【0039】
<<電流レギュレータの動作概要>>
半導体装置1が動作すると、電流生成回路IGCが、出力電流I_outを生成し、これを外部端子T1から負荷LLに供給する。電流検出回路7によって、出力電流I_outに相間した相関電流Ilが検出され、電流検出回路7は、相間電流Ilに従った検出電流Isigを出力する。検出電流Isigは、AD変換回路8によってオーバーサンプリングでサンプリングされ、デジタルの検出信号に変換される。その後、デジタルの検出信号は、補正回路9によって補正され、平均化回路11によって平均化される。この平均化によって求められたアナログの出力信号が、ダウンサンプリング回路12によって、ダウンサンプリングされ、検出電流Idetが生成される。電流生成回路IGCにおいては、検出電流Idetが、目標電流値Isetと一致するように、NMOSトランジスタN1、N2がオン状態となっている期間が制御される。これが繰り返されて、目標電流値Isetに応じた値の出力電流I_outが、外部端子T1から負荷LLに供給される。
【0040】
<半導体装置の製造>
実施の形態1に係る半導体装置1は、ユーザーに提供する前の製造工程において、テストが実施される。このテストによって測定された検出電流に基づいて補正データが生成され、半導体装置1の記憶回路10に書き込まれる。
【0041】
図12は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャート図である。ここで、図12(A)は、製造方法の全体を示すフローチャート図であり、図12(B)は、図12(A)のステップS3の詳細を示すフローチャート図である。
【0042】
図12(A)に示したステップS0で、半導体装置1の製造が開始する。ステップS1は、半導体基板を準備する準備工程である。準備工程S1で準備された半導体基板上に、形成工程であるステップS2において、周知の半導体製造方法により、図1に示した回路ブロックを含む複数の回路ブロック等が形成される。また、このステップS2において、図1に示した外部端子T1~T4等が回路ブロックに接続されるとともに、パッケージによって封止されて、半導体装置1が完成する。
【0043】
次に、ステップS3で、半導体装置1のテストが実施される。ステップS3のテスト工程は、図12(B)で説明するので、ここでは説明を省略する。ステップS3の後のステップS4において、半導体装置1が、ユーザーに提供され、ステップS5で半導体装置の製造が終了する。
【0044】
<<テスト工程>>
ステップS3のテスト工程では、実施の形態1に係る半導体装置1は、テストボードに実装され、テストが実施されるとともに、補正データの書き込みが実施される。
【0045】
図13は、実施の形態1に係るテストボードの一例を示す模式的なブロック図である。図13において、破線TTBは、テストボードを模式的に示している。テストボードTTBには、ステップS2で完成した複数の半導体装置1_0~1_n(それぞれが図1の半導体装置1に該当)が実装され、テスタTSTによってテストと、補正データの生成と、補正データの書き込みが行われる。図13では、1個の半導体装置1_0がテスタTSTに接続されている状態が示されているが、他の半導体装置(1_n等)も同様である。
【0046】
テスタTSTも、複数の回路ブロックによって構成されているが、図13には、説明に必要な回路ブロックのみが描かれている。図13において、CNTは制御回路を示し、WRCは書き込み回路を示し、TS_T1~TS_T4はテスタTSTの外部端子を示している。
【0047】
制御回路CNTは、テストの際に、テスト用電流I_tstを生成し、外部端子TS_T1を介して、半導体装置1_0の外部端子T1に供給する。このテスト用電流I_tstは、所定の固定電流である。また、テストの際に、制御回路CNTは、テスト信号Test_enを生成するためのテスト設定データTT_enと、後で説明するオフセット値Offsetとを、外部端子TS_T4を介して、半導体装置1_0の外部端子T4に供給する。さらに、テストの際、制御回路CNTには、半導体装置1_0の外部端子T2に接続された外部端子TS_T2を介して、検出電流Idetが供給される。制御回路CNTは、テスト用電流I_tstと検出電流Idetとに基づいて、補正データC_dataを生成し、書き込み回路WRCに供給する。書き込み回路WRCは、供給された補正データC_dataを、外部端子TS_T3を介して、半導体装置1_0の外部端子T3に供給する。
【0048】
図12(B)において、ステップS3_B0~S3_B2は、主に図13に示したテスタTSTで実行されるステップを示し、ステップS3_LSは、主に図13に示した半導体装置1_0(図1の半導体装置1に対応)で実行されるステップを示している。
【0049】
ステップS3_B0において、テスタTSTの制御回路CNT(図13)は、テスト設定データTT_enとオフセット値Offsetとを半導体装置1_0の外部端子T4を介して、制御回路22(図1)内のレジスタ(図示せず)に格納する。これにより、制御回路22はスイッチ21をオン状態にするテスト信号Test_enを発生するとともに、制御回路22は、オフセット値Offsetを出力する。また、制御回路CNTは、テスト用電流I_tstを生成し、半導体装置1_0の外部端子T1(図13)に供給する。これにより、半導体装置1_0では、このテスト用電流I_tstに相間した相関電流Il(図1)が、電流検出回路7に供給され、電流検出回路7は、テスト用電流I_tstに応じた値の検出電流Isigを出力する。
【0050】
ステップS3_LSにおいて、半導体装置1_0では、AD変換回路8(図1)が、電流検出回路7から出力されている検出電流Isigを、オーバーサンプリングでデジタル信号に変換する。この変換によって得られたデジタルの検出信号(出力端子dからの出力)は、演算回路18、補正回路9、平均化回路11およびダウンサンプリング回路12を介して、テスト用電流I_tstに対応する検出電流Idetとして出力される。このとき、スイッチ21(図1)がオン状態であるため、検出電流Idetは、スイッチ21を介して、半導体装置1_0の外部端子T2およびテスタTSTの外部端子TS_T2を介して、テスタTSTの制御回路CNTに供給されることになる。
【0051】
ステップS3_B1において、テスタTSTの制御回路CNTは、供給された検出電流Idetが、テスト用電流I_tstをAD変換した際の理想値と一致するような補正データC_dataを生成し、書き込み回路WRCへ出力する。
【0052】
次に、ステップS3_B2において、テスタTST内の書き込み回路WRCは、補正データC_dataを、半導体装置1_0の外部端子T3を介して記憶回路10に供給し、記憶回路10に書き込む。
【0053】
これにより、AD変換回路を含むアナログブロックで発生する誤差を補正する補正データC_dataが書き込まれた記憶回路10を備えた半導体装置1_0の製造が完了し、図12(A)のステップS4が実行される。
【0054】
<アナログブロックで発生する誤差の低減と、課題>
図14は、アナログブロックで発生する誤差の低減と、それに伴って発生する課題を説明するためのブロック図である。図14は、図12(B)に示したステップS3_LSが実行されているときの半導体装置1_0の構成を示している。図14は、図1と類似している。主な相違点は、図14では、電流検出回路7、AD変換回路8、補正回路9、記憶回路10、平均化回路11、ダウンサンプリング回路12および外部端子T1~T3のみが示されていることである。
【0055】
電流検出回路7およびAD変換回路8等のアナログブロックでは、製造条件のばらつき等によって、誤差が発生する。誤差は、記憶回路10から供給される補正データC_dataに基づいて補正回路9が補正することになる。
【0056】
補正データC_dataを生成するために、テスタTSTは、所定の固定電流をテスト用電流I_tstとして、半導体装置1_0の外部端子T1に供給し、このとき半導体装置1_0の外部端子T2から出力される検出電流Idetを測定する。すなわち、ノイズの少ない、所定の固定電流であるテスト用電流I_tstに基づいた電流が電流検出回路7によって検出され、検出電流Isigが、オーバーサンプリングされて、デジタル信号に変換されることになる。ノイズが少ないため、オーバーサンプリングしても、それにより求められる複数のデジタル値は、互いに同じ値(出力コード)となっていることが考えられ、平均化回路11による平均化の効果が得られないことが考えれる。平均化の効果が得られないと、ダウンサンプリング回路12の出力は、AD変換回路8の本来の分解能となってしまう。例えば、AD変換回路8が、10ビットの分解能であれば、ダウンサンプリング回路12の出力も、10ビットの精度となってしまう。
【0057】
対策として、テスト用電流I_tstを意図的に変動させることが考えられる。テスト用電流I_tstを意図的に変動させるためには、例えば図13に示したテスタTSTの制御回路CNTが例えば数KHzから数十KHzで変動するテスト用電流を生成するようにする必要がある。あるいは図13に示すようなテスタTSTの代わりに、実際に半導体装置1_0を実装する量産ボードで補正データC_dataを生成する場合には、テスト用電流I_tstを変動させるために、素子(受動素子および能動素子)を量産ボードに追加することが必要となる。いずれの場合にも、半導体装置をテストするためのテストコストの増加となり、現実的ではない。
【0058】
さらに、対策として、高精度(例えば10ビットよりも高分解能)のAD変換回路を半導体装置に実装することも考えられる。しかしながら、この場合には、AD変換回路による占有面積が増加し、半導体チップのコストアップとなり、望ましくない。
【0059】
<分散用電流の重畳およびオフセット除去>
実施の形態1に係る半導体装置においては、図2に示すような分散用電流Idacが、テスト工程で、半導体装置1内において生成される。この分散用電流Idacは、周波数がFpwmで周期(1/Fpwm)的に変化する電流である。生成された分散用電流Idacは、図1に示されているように、電流検出回路7から出力される検出電流Isigに重畳されて、AD変換回路8に供給される。また、分散用電流Idacは、検出電流Isigを基準として、オフセット値Offset分高い値を中心として、上下に変化する。図12(B)のステップS3_LSにおいて、太字で示されているように、分散用電流Idacの重畳(分散用電流重畳)とオフセット値Offsetの除去(オフセット除去)が実行される。
【0060】
すなわち、テスト工程において、分散用電流Idacがテスト用電流I_tstに対応する検出電流Isigに重畳される。言い換えるならば、周期的に変化する分散用電流Idacが周期的なノイズとして、AD変換回路8の入力に重畳されることになる。その結果、AD変換回路8は、オーバーサンプリングによって取得した複数の値を、異なるデジタル値に変換することになり、平均化回路による平均化の効果が得られるようになる。すなわち、AD変換回路8の本来の分解能よりも高い分解能を得ることが可能となる。その結果、テストコストの増加を防ぎ、さらに半導体チップのコストアップを抑制しながら、テスト時にも高精度の検出電流Idetを、外部端子T2を介して取得することが可能となる。これにより、テスタTSTの制御回路CNTにおいて、高精度の補正データC_dataを生成することが可能となり、テスト時に、高精度の補正データC_dataを記憶回路10に書き込むことが可能となる。
【0061】
半導体装置1を実際に使用する際には、高精度の補正データC_dataに基づいてアナログブロックの誤差が補正されるため、精度の良いデジタル信号を取得することが可能となる。図1に示した半導体装置1の例では、目標電流値Isetに対して、より正確に一致した出力電流I_outを出力することが可能となる。
【0062】
また、実施の形態1では、図2に示したオフセット値Offsetに対応するデジタル値が、AD変換回路8の出力に対して減算される。これにより、AD変換回路8の構成を簡単にすることが可能であるとともに、分散用電流Idacを生成する回路ブロックの構成も簡単にすることが可能である。
【0063】
<<分散用電流を生成する構成>>
図1に戻って、分散用電流を生成する構成を具体的に説明する。
【0064】
分散用電流Idacは、論理回路20と、デコーダ16と、DA変換回路17とによって生成される。
【0065】
論理回路20には、カウンタ14の出力端子caから出力される出力信号(カウント値)とテスト信号Test_enとが供給される。論理回路20は、テスト信号Test_enがテスト状態を示しているとき、導通状態となり、カウンタ14からの出力信号をデコーダ16に供給する。デコーダ16は、供給された出力信号をデコードし、分散用電流Idacに対応するデジタルの出力信号dinを出力する。デコーダ16は、特に制限されないが、実施の形態1においては、カウンタ14からの出力信号に基づいた4ビットの並列のデジタル信号din0~din3を出力信号dinとして出力する。カウンタ14に供給されているクロック信号CLK_ADが変化することで、デジタル信号din0~din3の論理値が変化し、図2に示した分散用電流Idacのように、アナログ信号に変換したとき、1周期(1/Fpwm)において三角波形の形状となる出力信号dinを、デコーダ16は出力する。勿論、出力信号dinは4ビットのデジタル信号に限定されるものではない。
【0066】
この出力信号dinは、DA変換回路17によってアナログの分散用電流Idacに変換される。DA変換回路17の出力と電流検出回路7の出力とは、接続ノード(第1ノード)N_cntで接続されており、電流検出回路7から出力される検出電流IsigにDA変換回路17から出力される分散用電流Idacが重畳されて、AD変換回路8に供給される。
【0067】
また、AD変換回路8の出力端子dに接続された演算回路18には、論理回路19の出力が供給されている。この論理回路19には、テスト信号Test_enとオフセット値Offsetとが供給されている。論理回路19は、テスト信号Test_enがテスト状態を示しているとき、導通状態となり、供給されているオフセット値Offsetを演算回路18へ供給する。演算回路18は、AD変換回路8から供給されている出力信号から、オフセット値Offsetを減算し、減算結果を出力端子eから補正回路9へ供給する。
【0068】
オフセット値Offsetは、特に制限されないが、予め求められ、テスタTST(図13)の制御回路CNT(図13)に格納されている。テスト工程であるステップS3(図12(A))において、制御回路CNTが、オフセット値OffsetをテスタTSTの外部端子TS_T4および半導体装置1の外部端子T4を介して、半導体装置1の制御回路22に供給する。
【0069】
<<分散用電流の重畳>>
<<<電流検出回路7の一例>>>
図3は、実施の形態1に係る分散用電流の重畳を説明するためのブロック図である。図3には、図1に示したAD変換回路8、DA変換回路17、論理回路19、演算回路18および電流検出回路7に相当する部分が示されている。図3では、特に、電流検出回路7に相当する部分が詳しく示されている。図3では、テスト時にテスト用電流I_tstがテスタTST(図13)から、電流検出回路7に供給されている状態が示されている。このテスト用電流I_tstは、説明を容易にするために、図3では電流源として示されている。
【0070】
電流検出回路7は、電源電圧Vddと接地電圧Vssとの間に直列的に接続されたP型MOSトランジスタP1と抵抗素子R1と、電源電圧Vddと接地電圧Vssとの間に直列的に接続されたP型MOSトランジスタP2と電流源I_tstとを備えている。P型MOSトランジスタP2のゲート電極は、P型MOSトランジスタP2のドレイン端子とP型MOSトランジスタP1のゲートとに接続され、P型MOSトランジスタP1、P2によってカレントミラー回路が構成されている。
【0071】
DA変換回路17の出力と、AD変換回路8の入力とが、P型MOSトランジスタP1のドレイン端子と抵抗素子R1との間の接続ノードN_cntに接続されている。DA変換回路17は、次に図4を用いて一例を説明するが、DA変換回路17は、三角波状の分散用電流Idacを形成する。これにより、テスト用電流I_tstに比例した検出電流Isigに、DA変換回路17によって形成された三角波状の分散用電流Idacが重畳され、抵抗素子R1を流れることになる。その結果、抵抗素子R1では、分散用電流Idacが重畳した検出電流Isigに対応した電圧であって、分散用電流Idacの周期的な変化に応じて変化する電圧が発生する。この電圧が、AD変換回路8によってデジタルの出力信号に変換される。なお、接続ノードN_cntは、検出電流Isigに分散用電流Idacを重畳する重畳回路と見なすことができる。
【0072】
<<<DA変換回路17の一例>>>
図4は、実施の形態1に係るDA変換回路の一例を示す回路図である。図4には、図1に示したデコーダ16が、出力信号dinとして4ビットのデジタル信号din0~din3をDA変換回路17に供給する場合が示されている。
【0073】
DA変換回路17は、P型MOSトランジスタP3~P7と、定電流源I_dcと、デコーダ16からの4ビットのデジタル信号によってスイッチ制御される4個のスイッチSS_0~SS_3とを備えている。P型MOトランジスタP3のソースは、電源電圧Vddに接続され、ドレインは、定電流源I_dcを介して接地電圧Vssに接続されているとともにP型MOSトランジスタP4~P7のゲートに接続されている。また、P型MOSトランジスタP4~P7のソースは、電源電圧Vddに接続されている。これにより、P型MOSトランジスタP3~P7によってカレントミラー回路が構成されている。実施の形態1においては、P型MOSトランジスタP4~P7は、同じサイズにされており、対応するスイッチSS_0~SS_3がオン状態となったときに流れる電流は、同じ値となっている。
【0074】
実施の形態1に係るデコーダ16は、出力信号dinとして、デジタル信号din0からdin3に向かって、順にハイレベルとなり、全てのデジタル信号がハイレベルになった後、デジタル信号din3からdin0に向かって、順にロウレベルとなる信号を出力する。これにより、図3に示すような三角波状に変化する分散用電流Idacが形成されることになる。
【0075】
図3に示すように、分散用電流Idacは、検出電流Isigを基準値として、その基準値よりも上側で三角波状に変化する電流である。平均化の効果を得るためには、AD変換回路8に入力する電流は、検出電流Isigを中心として、その上下で変化していることが望ましい。そのため、分散用電流Idacにおいて、基準値から分散用電流Idacの例えば最大値までの間の中間値、すなわち分散用電流Idacのピーク間の中心値が、オフセット値Offsetとされる。
【0076】
テスト時には、論理回路19が、テスト信号Test_enによって導通状態となり、オフセット値Offsetが、演算回路18によって、AD変換回路8の出力信号から減算され、減算結果が、補正回路9および平均化回路11を介して、テスタTSTに供給されることになる。このように、三角波に対応するコードをデジタルで生成し、DA変換回路17でアナログに変換し、検出電流Isigに重畳させているため、占有面積の増加を抑制することが可能である。また、デジタルの演算で、オフセットを除去するため、簡便である。さらに、オフセットの除去は、テスト時のような必要なときのみに行うことが可能である。
【0077】
<<テスト時の模式的な動作波形>>
次に、テスト時の動作を、模式的な波形を用いて説明する。図5および図6は、実施の形態1に係る半導体装置のテスト時の動作を説明するための模式的な波形図である。
【0078】
以下、図1および図4図6を参照して、テスト時の動作を説明する。なお、理解を容易にするために、前記したように図5および図6は模式的な波形図である。
【0079】
以下の説明では、図1で例として示したように、クロック信号CLK_DSの周波数は、クロック信号CLK_ADの周波数の1/8に設定されているものとする。これにより、図5に示されているように、クロック信号CLK_DSの1周期(PWM1周期)に、8周期分のクロック信号CLK_ADが発生することになる。
【0080】
クロック信号CLK_ADが変化することで、デコーダ16からは、図5に示すような出力信号din(din0~din3)が、図4に示したDA変換回路17に供給される。これにより、DA変換回路17は、電流検出回路7からの検出電流Isigを基準値として、PWM1周期において三角波状に変化する分散用電流Idacを出力する。すなわち、分散用電流Idacは、PWMの1/2周期の期間において、検出電流Isigを底辺として、階段状に上昇して最大値(ピーク値)に到達し、その後、残りの期間において、最大値から底辺(Isig)に向けて階段状に降下する。
【0081】
図5において、SP_0~SP_7は、図2の出力端子dで説明した黒丸SPと同様に、AD変換回路8のサンプリングタイミングとAD変換回路8の出力コードの値を示している。
【0082】
図5において、CDE_1~CDE_3は、AD変換回路8の出力コードを示している。ここでは、出力コードCDE_1からCDE_3に向かって、対応するアナログの値が大きくなるものとする。隣接する出力コード(例えば、CDE_2とCDE_3)間が、AD変換回路8の1階調AD_LVに該当する。AD変換回路8は、1階調AD_LVの例えば中心値REF_1、REF_2を閾値とし、サンプリングタイムにおいて取得した値が、閾値を超えているか否かに応じて出力する出力コードを、閾値の上の出力コードまたは下の出力コードとする。すなわち、AD変換回路8は、黒丸SP_0からSP_7の順にサンプリングタイミングで取得したアナログの値を、順次デジタル信号である出力コードに変換するが、変換する出力コードは、取得したアナログの値と閾値との比較により定める。
【0083】
例えば、黒丸(●)SP_0のサンプリングタイムでは、分散用電流Idacが重畳された検出電流Isigの値は、出力コードCDE_1とCDE_2との間の閾値REF_1よりも低いため、AD変換回路8は、閾値REF_1よりも下の出力コードCDE_1を黒丸SP_0の出力コードとして出力する。
【0084】
また、例えば、黒丸(●)SP_1のサンプリングタイムでは、分散用電流Idacが重畳された検出電流Isigの値は、出力コードCDE_1とCDE_2との間の閾値REF_1を超えているため、AD変換回路8は、閾値REF_1よりも上の出力コードCDE_2を黒丸SP_1の出力コードとして出力する。さらに、黒丸(●)SP_2のサンプリングタイムでは、分散用電流Idacが重畳された検出電流Isigの値は、出力コードCDE_2とCDE_3との間の閾値REF_2よりも低いため、AD変換回路8は、閾値REF_2よりも下の出力コードCDE_2を黒丸SP_2の出力コードとして出力する。
【0085】
以下、同様にして、分散用電流Idacが重畳された検出電流Isigの値が、閾値を超えているか否かによって、AD変換回路8は、出力する出力コードを定める。これにより、検出電流Isigの値が変化していなくても、AD変換回路8から出力される出力信号によって表される出力コードは、変化することになる。
【0086】
図5では、分散用電流Idacは検出電流Isigを基準(底辺)として変化している状態が示されている。すなわち、オフセット値Offsetを備えた分散用電流Idacが検出電流Isigに重畳した状態が示されている。実施の形態1においては、図1に示したように、演算回路18によって、AD変換回路8からの出力信号からオフセット値Offsetが減算され、オフセットが除去されたデジタル信号が、補正回路9を介して平均化回路11に供給される。オフセット値Offsetを表すデジタル信号のビット列は、AD変換回路8から出力される出力信号において、最下位ビットLSB側のビットに該当する。そのため、AD変換回路8によって変換した後、演算回路18によってオフセット値OffsetをAD変換回路8の出力信号から減算しても、検出電流Isigに対する影響は少ない。
【0087】
次に、オフセット値Offsetを除去した状態と、平均化を、図6を用いて説明する。
【0088】
図6は、図5と類似している。主な相違点は、図6では、クロック信号CLK_AD、CLK_DSおよびデコーダ16の出力信号dinが省略されている点と、オフセット値Offsetが除去された後の分散用電流Idac_nfが細い実線で示されている点と、平均化回路11によって一度に平均化される平均化領域AVA_0が示されている点と、サンプリングタイミングと出力コードを示す丸SD_0が追加されている点と、閾値REF_0と出力コードCDE_0とが明示されている点である。
【0089】
オフセット値Offsetを除去することで、分散用電流Idacは、図6に示されているように、下側、すなわち低い値側へ平行移動して、分散用電流Idac_nfとなる。分散用電流Idac_nfが低い値側へ移動したため、出力コードCDE_1よりも小さい出力コードCDE_0と、判定用の閾値REF_0が明示されている。図5に示したサンプリングタイミングおよび出力コードを示す黒丸SP_0~SP_7も、オフセット値Offsetを除去することで、図6に示されているように、低い値側へ移動し、SP_n0~SP_n7となる。
【0090】
平均化回路11は、PWM1周期(平均化領域)に含まれる黒丸SP_n0~SP_n7の出力コードを平均化し、平均値を求める。求められた平均値が、ダウンサンプリング回路12によってサンプリングされる。図6では、ダウンサンプリング回路12によるサンプリングにより得られた出力コード(ダウンサンプリング回路12の出力によって表されるコード)が丸SD_0で示されている。
【0091】
<<<誤差>>>
図5において、破線の丸SP_00~SP_07は、分散用電流Idacを検出電流Isigに重畳せずに、検出電流IsigのみをAD変換回路8で変換したときのサンプリングタイムおよび出力コードを示している。図13で説明したように、テスト時には、所定の固定電流であるテスト用電流I_tstが端子T1に印加されるため、検出電流Isigは一定の値である。図5の例では、検出信号Isigの値は、閾値REF_1よりも低いため、AD変換回路8からは、出力コードCDE_1が、破線の丸SP_00~SP_07のサンプリングタイミングにおける出力コードとして出力されることになる。すなわち、AD変換回路8は、同じ値(CDE_1)の出力コードを出力することになる。そのため、平均化回路によって平均化しても、値は同じとなる。図5において、破線の丸SD_00は、ダウンサンプリング回路12のサンプリングタイミングとダウンサンプリング回路12が出力する出力コードを示している。平均化回路11によって平均化しても値は変化しないため、ダウンサンプリング回路12が出力する出力コードは、破線の丸SD_00に示されているように、CDE_1となる。
【0092】
テストにおいては、破線の丸SD_00の出力コードが、検出電流Idetとして外部端子T2を介してテスタTSTへ出力されることになる。図5に示されているように、破線の丸SD_00(出力コード)と検出電流Isigとの間の差が誤差ERR_00となり、この誤差ERR_00がテスタTSTに伝わることになる。
【0093】
これに対して、実施の形態1のように、分散用電流Idacを検出電流Isigに重畳させると、図6に示されているように、平均化領域AVA_0に含まれる黒丸SP_n0~SP_n7の出力コードは、分散することになる。平均化回路11によって、平均化領域AVA_0に含まれている出力コード(黒丸SP_n0~SP_n7)の平均値が求められ、ダウンサンプリング回路12によって、平均値に相当する出力コード(丸SD_0)が求められる。この求められた丸SD_0の出力コードと検出電流Isigとの間の差が誤差ERR_0となる。図5および図6から理解されるように、実施の形態1によれば、AD変換回路8での誤差を低減することができる。
【0094】
すなわち、コストを抑制しながら、テスト時においても誤差の少ない測定値を取得することが可能である。
【0095】
<<<比較例>>>
図5および図6では、PWMの1周期(=クロック信号CLK_DSの1周期)と、分散用電流Idacの1周期とが一致する例を説明した。これにより、ダウンサンプリングの1周期に対応するPWMの1周期において、検出電流Isigに対して、1周期分の分散用電流Idacの出力コードを重畳することができ、平均化の効果を高くして、図6に示したように、誤差を低減することが可能である。
【0096】
これに対して、例えば分散用電流Idacの1周期が、PWMの複数周期に対応していた場合、分散用電流Idacの出力コードの分散が、PWMの複数周期に渡ることになる。言い換えると、PWMの1周期では、分散用電流Idacの出力コードが偏ることになり、誤差の低減効果が低下することになる。
【0097】
図7は、実施の形態1に係る比較例を示す波形図である。図7は、図6と類似している。主な相違点は、図7では、分散用電流Idacに示されているように、分散用電流Idacの1周期が、PWMの2周期に対応している点である。
【0098】
また、図7では、隣接する2個のサンプリングタイミングにおけるAD変換によって、同じ値の出力コードが、AD変換回路から出力されている点も、図6図7とで相違している。例えば、隣接する2つの黒丸SP_n0とSP_n1とを例にして説明すると、分散用電流Idac(オフセット除去後の分散用電流Idac_nf)の1周期が、図6に比べて2倍となっているため、AD変換回路8は、黒丸SP_n0とSP_n1の両方のサンプリングタイミングにおいて、同じ値の分散用電流Idac_nfをサンプリングすることになる。図7の例では、このときのサンプリングタイミングで取得された値は、閾値REF_0よりも低いため、黒丸SP_n0とSP_n1によって示される出力コードの値は、ともにCDE_0となる。他の黒丸SP_n2~SP_n7によって示される出力コードも、同様に、隣接する2つの黒丸によって示される出力コードの値は同じ値となる。
【0099】
図7に示した黒丸SP_n0~SP_n7から理解されるように、1周期のPWMの期間では、分散用電流Idac_nf(Idac)の出力コードは、増加する(または減少する)だけで、偏ることになる。その結果、平均化領域AVA_0に含まれている出力コードを平均化し、ダウンサンプリングして得られるダウンサンプリング回路の出力コードは、丸SD_0に示されているように、出力コードCDE_1の値となる。その結果、検出電流Isigと丸SD_0で示される出力コードCDE_1との間の差である誤差が大きく、低減効果が低下することになる。
【0100】
低減効果を高めるためには、分散用電流Idacの周期は、PWMの1周期に対して、整数分の1とすることが必要である。
【0101】
<<テスト時の模式的な波形>>
図8A図8Dは、実施の形態1に係る半導体装置のテスト時の動作を示す波形図である。ここで、図8Aは、図1に示したAD変換回路8の出力端子dにおける波形を示しており、図8Bは、図1に示した演算回路18の出力端子eにおける波形を示している。また、図8Cは、図1に示した平均化回路11の出力端子gにおける波形を示し、図8dは、図1に示したダウンサンプリング回路12の出力端子hにおける波形を示している。
【0102】
図8A図8Dのそれぞれは、図5および図6と類似している。すなわち、図8Aには、図5に示した検出電流Isigと分散用電流Idacとが示され、さらにサンプリングタイミングおよび出力コードの値を示す黒丸SP_1~SP_7が示されている。検出電流Isigに分散用電流Idacが重畳され、分散電流が重畳された検出電流が、図8Aに示された黒丸SPのタイミングでサンプリングされ、黒丸SPで示される出力コードの値に変換される。
【0103】
演算回路18によって、出力端子dにおけるデジタル信号から、オフセット値が減算される。これにより、図8Bに示されているように、分散用電流の出力コードの値を示す黒丸SP_n0~SP_n7は、下側に移動する。図8Bにおいて、波形Idac_nは、黒丸SP_n0~SP_n7によって示される出力コードを連結させたものであり、AD変換後にオフセット値を除去することで生成された分散用電流の波形を示している。
【0104】
図8Bに示した分散用電流Idac_nが重畳した検出電流が、補正回路9を介して平均化回路11によって平均化される。図8Cにおいて、AVA_0は、黒丸SP_n0~SP_n7を含む平均化領域である。平均化領域AVA_0に含まれる黒丸SP_n0~SP_n7によって示される出力コードの平均化が、第1タイミングよって平均化回路11によって実行される。第1タイミングおける平均化によって得られた平均値が、丸SD_0で示されている。
【0105】
また、図8Cにおいて、AVA_1は、黒丸SP_n1~SP_n0を含む平均化領域である。平均化領域AVA_1に含まれる黒丸SP_n1~SP_n0によって示される出力コードの平均化が、第1タイミングに続く第2タイミングよって平均化回路11によって実行され、この実行によって得られた平均値が、丸SD_1で示されている。さらに、図8Cにおいて、AVA_2は、黒丸SP_n2~SP_n1を含む平均化領域である。平均化領域AVA_2に含まれる黒丸SP_n2~SP_n1によって示される出力コードの平均化が、第2タイミングに続く第3タイミングよって平均化回路11によって実行され、この実行によって得られた平均値が、丸SD_2で示されている。
【0106】
ダウンサンプリング回路12によるサンプリングによって、平均化回路11によって、第1タイミングで得られた平均値(丸SD_0によって示される値)が、図8Dに示すように取得される。取得された平均値が、スイッチ21および外部端子T2を介して、テスタTST(図13)に供給されることになる。以降、第2タイミングで取得された平均値(破線丸SD_1)、第3タイミングで取得された平均値(破線丸SD_2)の順に、テスタTSTへ供給される。
【0107】
テスタTSTは、供給された平均値等を用いて、補正データC_dataを生成することになる。
【0108】
(実施の形態2)
実施の形態1では、図1に示したように、PWM周波数生成用のカウンタ14の出力を流用して、分散用電流Idacを生成するデジタルの出力信号dinを生成していた。これに対して、実施の形態2においては、出力信号dinを生成する新たなカウンタが追加される。
【0109】
図9は、実施の形態2に係る半導体装置を説明するためのブロック図である。また、図10は、実施の形態2に係る半導体装置の動作を示すための波形図である。図9には、図1に示した回路ブロックのうち、実施の形態2を説明するのに必要な部分のみが描かれている。図1に描かれていて、図9に描かれていない部分は、図1と同じである。
【0110】
図1に示した周波数発生器13は、図9では発振回路(OSC)13_1と分周回路(分周)13_2とによって構成されている。発振回路13_1が、前記したクロック信号CLK_FSとクロック信号CLK_BCとを発生する。クロック信号CLK_BCは、分周回路13_2によって分周され、カウンタ14に供給される。図9では、カウンタ14の出力がクロック信号CLK_DSとしてダウンサンプリング回路12のクロック端子ckに供給されている。勿論、図1と同様に、カウンタ14の出力をPWM周波数生成回路15に供給して、PWM周波数生成回路15によって、クロック信号CLK_DSを生成するようにしてもよい。
【0111】
実施の形態2では、カウンタ23が追加されている。カウンタ23には、発振回路13_1で発生したクロック信号CLK_BCが、論理回路20を介して供給されている。これにより、テスト信号Test_enによってテストが指示されたとき、論理回路20が導通状態となり、クロック信号CLK_BCが、カウンタ23に供給されることになる。その結果、テスト時には、カウンタ23がクロック信号CLK_BCをカウントし、カウント値をデコーダ16に供給する。実施の形態1と同様に、デコーダ16がカウント値をデコードすることで、デジタルの出力信号dinを生成する。出力信号dinは、DA変換回路17に供給され、DA変換回路17が分散用電流Idacを生成する。
【0112】
図10には、図9に示したクロック信号CLK_AD、CLK_DS、出力信号dinおよび分散用電流Idacの波形が示されている。分散用電流Idacを生成するために、専用のカウンタ23を設けたことで、図10に示されているように、クロック信号CLK_DSの1周期の期間において、出力信号dinを2サイクルとすることこが可能となり、三角波状の分散用電流Idacを2回発生させることが可能である。すなわち、クロック信号CLK_DSの1周期における分散用電流Idacの周期を、任意に設定することが可能となる。
【0113】
図5で示したように、PWMの1周期において、分散用電流Idacの周期が1回では、平均化の効果が十分に得られない場合、実施の形態2のように、分散用電流Idacの周期を増加させることで、分散回数を増やし、平均効果を高めることが可能である。
【0114】
(実施の形態3)
実施の形態1では、オフセットの除去をデジタル的に行う例を示したが、実施の形態3では、オフセットの除去をアナログ的に行う例を示す。
【0115】
図11は、実施の形態3に係る半導体装置を説明するためのブロック図である。図11は、図3と類似している。主な相違点は、図11では、AD変換回路8の出力端子dに接続された補正回路9、平均化回路11およびダウンサンプリング回路12が示されている点と、アナログ的にオフセットを除去する構成が示されている点である。
【0116】
アナログ的にオフセットを除去する構成は、P型MOSトランジスタP1のドレインと接地電圧Vssとの間に直列的に接続されたスイッチ24と定電流源Ioffsetとによって構成されている。
【0117】
テスト時に、テスト信号Test_enによってスイッチ24が導通状態とされる。定電流源Ioffsetは、オフセット値Offsetに対応する定電流を生成する電流源である。スイッチ24が導通状態にされることで、分散用電流Idacに含まれるオフセット電流値が、定電流源Ioffsetに流れる。これにより、テスト時には、オフセット除去が行われることになる。また、実施の形態3では、図1に示したような、演算回路18および論理回路19は不要となる。
【0118】
例えば、半導体装置1を製造するプロセスが微細プロセスでない場合には、アナログ的にオフセットを除去する構成の方が占有面積の増加を抑制することが可能である。この場合、前記したように、演算回路18および論理回路19も不要となるため、占有面積の増加を、更に抑制することが可能となる。
【0119】
実施の形態1~3によれば、テストボードに交流信号を生成するための素子(能動素子、受動素子等)を実装する必要がないため、テストの際に実装する半導体装置の個数を増やすことが可能となり、例えば同時に測定する半導体装置の数を向上させることが可能である。また、テストボード上で、交流信号を生成する場合、交流信号の生成および半導体装置への供給等で遅延が発生することが考えられ、テスト時間が長くなることが考えられる。これに対して、実施の形態においては、半導体装置の内部で交流信号に相当する分散用電流が生成、重畳されるため、テスト時間の短縮化が可能である。さらに、テストボード上で交流信号を生成するためのテスト設計が必要となるが、実施の形態1~3では、テスト時に固定の電流を半導体装置に供給するだけで済むため、テストに関する設計工数を削減することが可能である。
【0120】
勿論、高分解能のAD変換回路を、半導体装置に実装しなくても、高分解能の半導体装置を提供することが可能であるため、チップコストの削減を図ることが可能である。
【0121】
図1に示した半導体装置1において、演算回路18は、オフセット値Offsetを除去するオフセット除去回路と見なすことができる。また、カウンタ14または23と、デコーダ16と、DA変換回路17とによって、電流生成回路が構成されていると見なすことができる。
【0122】
このように見なした場合、図12に示したステップS3のテスト工程では、次の工程が実行されていると見なすことができる。
【0123】
電流生成回路(DA変換回路17)は、第1周期(1/Fpwm)の第2信号(分散用電流Idac)を生成する。第2信号は、第1ノード(図1のN_cnt)において、電流検出回路7からの検出電流(Isig:第1信号)に重畳され、第3信号が生成される。
【0124】
第3信号は、AD変換回路8によって、デジタルの第4信号に変換され、第1信号に第2信号を重畳することで発生したオフセットが、オフセット除去回路によって、第4信号から除去されて、第5信号が生成される。
【0125】
生成された第5信号は、平均化フィルタ(平均化回路11)によって平均化され、第6信号が生成される。生成された第6信号は、ダウンサンプラ(ダウンサンプリング回路12)によってダウンサンプリングされ、第1周期の整数分の1の周期のデータに間引かれ、第7信号が生成される。
【0126】
この第7信号が、テスト工程において、半導体装置1からテスタTST(図13)に出力され、テスタTSTにおいて補正データC_dataが生成される。
【0127】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0128】
1 半導体装置
2 目標データ出力回路
3、18 演算回路
4 PID制御回路
5 PWM発生回路
6 インバータ回路
7 電流検出回路
8 AD変換回路
9 補正回路
10 記憶回路
11 平均化回路
12 ダウンサンプリング回路
13 周波数発生器
14 カウンタ
15 PWM周波数生成回路
16 デコーダ
17 DA変換回路
19、20 論理回路
21 スイッチ
22 制御回路
CLK_GN クロック発生回路
IGC 電流生成回路
N1、N2 NMOSトランジスタ
LL 負荷
T1~T4 外部端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13
図14