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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101161
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】溶融炉及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20250630BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
F23G5/50 H ZAB
F23G5/50 M
F23G5/50 F
F23G5/00 115A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217804
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】赤阪 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】岡市 真司
(72)【発明者】
【氏名】寳正 史樹
【テーマコード(参考)】
3K062
3K161
【Fターム(参考)】
3K062AA18
3K062AB03
3K062AC01
3K062BA02
3K062CA01
3K062CB05
3K062DA01
3K062DB02
3K062DB05
3K161AA13
3K161CA05
3K161DB04
3K161FA03
3K161FA23
3K161FA32
3K161FA63
3K161FA64
(57)【要約】
【課題】燃料のコストを抑えながら溶融室の内部温度を応答性良く調整可能な溶融炉の運転方法を提供する。
【解決手段】可燃物の燃焼熱により不燃物が溶融される溶融室Mと、溶融室M内に酸素を含む助燃ガスG3を供給するガス供給装置43と、を備えた溶融炉1の運転方法であって、溶融室M内に可燃物及び不燃物を供給する工程と、溶融炉1の運転条件を調整する工程とを含み、溶融炉1の運転条件を調整する工程は、助燃ガスG3における酸素の濃度を調節する工程を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃物の燃焼による上部空間からの輻射熱により下部に堆積する不燃物が溶融される溶融室と、
前記溶融室内に酸素を含む助燃ガスを供給するガス供給装置と、を備えた溶融炉の運転方法であって、
前記溶融室内に可燃物及び不燃物を供給する工程と、
前記溶融炉の運転条件を調整する工程と、
を含み、
前記溶融炉の運転条件を調整する前記工程は、前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する工程を含む溶融炉の運転方法。
【請求項2】
前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する前記工程は、前記溶融室の内部温度に基づいて、前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する工程を含む、請求項1に記載の溶融炉の運転方法。
【請求項3】
前記ガス供給装置は、空気と、空気よりも酸素濃度が高い酸素富化ガスとを供給するものであり、
前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する前記工程においては、前記助燃ガスにおける空気と酸素富化ガスとの比率を変更する、請求項1又は2に記載の溶融炉の運転方法。
【請求項4】
前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する前記工程においては、前記助燃ガスにおける酸素の量が一定となるように、前記助燃ガスにおける空気と酸素富化ガスとの比率を変更する、請求項3に記載の溶融炉の運転方法。
【請求項5】
前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する前記工程は、
前記溶融室内の不燃物の溶融困難度を判定する工程と、
前記溶融困難度に基づいて、前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する工程と、
を含む、請求項1に記載の溶融炉の運転方法。
【請求項6】
前記溶融炉に、不燃物が溶融したスラグが排出される出滓口が更に備えられ、
前記溶融室内の不燃物の溶融困難度を判定する前記工程は、
前記出滓口から排出されたスラグの量を検出する工程と、
前記スラグの量に基づいて溶融困難度を判定する工程と、
を含む、請求項5に記載の溶融炉の運転方法。
【請求項7】
前記溶融室内の不燃物の溶融困難度を判定する前記工程は、
前記溶融室内の不燃物が溶融されて形成した溶融面の熱画像データを生成する工程と、
前記熱画像データが示す温度分布情報に基づいて溶融困難度を判定する工程と、
を含む、請求項5に記載の溶融炉の運転方法。
【請求項8】
前記溶融室内に可燃物及び不燃物を供給する工程は、可燃物と不燃物との混合物を供給する工程を含む、請求項1又は2に記載の溶融炉の運転方法。
【請求項9】
前記溶融炉の運転条件を調整する前記工程は、前記溶融室の内部温度に基づいて、前記溶融室内に供給される可燃物と不燃物との混合比率を変更する工程を更に含む、請求項8に記載の溶融炉の運転方法。
【請求項10】
前記可燃物は廃プラスチックを含む、請求項1又は2に記載の溶融炉の運転方法。
【請求項11】
前記溶融炉は、
前記溶融室が下方に形成された天井部と、
前記天井部の外周に立設されて前記天井部と共に昇降可能な内筒と、
内側に前記内筒が配置されて前記内筒に対して回転可能な有底の外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面との間に形成された貯留室に位置する可燃物及び不燃物を前記外筒の回転に伴って前記溶融室に案内する、前記内筒の下部に設けられている案内装置と、
を備えた回転式表面溶融炉である、請求項1又は2に記載の溶融炉の運転方法。
【請求項12】
可燃物の燃焼による上部空間からの輻射熱により下部に堆積する不燃物が溶融される溶融室と、
前記溶融室内に酸素を含む助燃ガスを供給するガス供給装置と、
前記溶融室の内部温度を検出する温度センサと、
制御装置と、
を備えた溶融炉であって、
前記制御装置は、前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節するように前記ガス供給装置を制御する、溶融炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃物を溶融させる溶融炉及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような溶融炉の一例としては、可燃物(都市ゴミ等の廃棄物)と不燃物(焼却灰等)とを一定の比率で混合した被処理物が供給された溶融室の内部温度を、バーナーの燃焼炎からの輻射熱によって所定の溶融処理温度に高めて不燃物の溶融処理を開始させた後に、当該溶融処理温度を維持するのに必要な熱の少なくとも一部を、可燃物が燃焼される際に発生する輻射熱によって賄うことで溶融処理を継続させるものが知られている(特許文献1)。
【0003】
上記従来の溶融炉においては、事前の実験の結果や過去の運転の結果等に基づいて設定された可燃物と不燃物との混合比率が適切ではなく、溶融処理時に溶融室の内部温度が所定の溶融処理温度に維持されないことがある。この場合では、溶融室の内部温度を調整するために、これから溶融炉に投入する被処理物を占める可燃物の比率に対する調整が行われることがある。ところで、溶融炉の構造や規模等によっては、投入された被処理物が溶融室内に供給されるまでに時間を要することがあるので、混合比率の調整による温度制御の応答性は低い。そのため、従来の溶融炉では、応答性の低さを補うために、バーナーを併用して溶融室の内部温度を調整していた。
【0004】
また、従来の溶融炉においては、可燃物と不燃物とを混合する機器の動作に起因した局所的な混合比率のムラが生じていたり、可燃物として使用される廃棄物の性状(燃焼熱や水分含有量など)にばらつきが生じていたりすることにより、可燃物が燃焼された際に溶融室内に放出される熱量が安定せず、その結果、溶融処理時に溶融室の内部温度が所定の溶融処理温度に維持されないことがある。この場合においても、従来の溶融炉では、バーナーを併用して溶融室の内部温度を調整していた。
【0005】
また、不燃物は組成により溶融温度が変わるので、従来の溶融炉においては、処理対象となる不燃物の溶融温度を事前の実験により測定し、溶融温度が所定の溶融処理温度よりも高い溶融困難な不燃物については、その溶融温度を下げる薬剤(カルシウム、ケイ素、鉄、マグネシウム、ナトリウム等を不燃物の組成に応じて選択したもの)を混入する処理が行われていた。しかし、作業性などの理由により、不燃物の全量ではなく一部のみに対して実験が行われる場合があり、この場合では、組成変動等により溶融温度が高い組成を比較的多く含む不燃物であるにも拘らず薬剤の混入処理がなされないまま溶融室内に供給されることがある。そこで、従来の溶融炉では、このような溶融困難な不燃物を溶融させるために、バーナーを併用して溶融室の内部温度を調整していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-122523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料と助燃空気の量を調整することによりバーナーの出力を調節すれば溶融室の内部温度を応答性良く調整できるが、バーナー用の燃料の消費量が増えて燃料コストが高くなることがある。また、燃料の消費量が増えると、燃料が化石燃料の場合には燃焼による二酸化炭素の放出量が増えて環境負荷が増加する。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料のコストを抑えながら溶融室の内部温度を応答性良く調整可能な溶融炉及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するための本発明に係る溶融炉の運転方法は、
可燃物の燃焼による上部空間からの輻射熱により下部に堆積する不燃物が溶融される溶融室と、
前記溶融室内に酸素を含む助燃ガスを供給するガス供給装置と、を備えた溶融炉に適用される運転方法であって、
前記溶融室内に可燃物及び不燃物を供給する工程と、
前記溶融炉の運転条件を調整する工程と、
を含み、
前記溶融炉の運転条件を調整する前記工程は、前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する工程を含むことを特徴とする。
【0010】
溶融炉の運転中に、可燃物の燃焼が可能になるように、溶融室内には酸素を含む助燃ガスが供給されるのであるが、助燃ガスに酸素以外のガスとして不燃性ガスが含まれている場合、不燃性ガスは燃焼反応に寄与することなく、溶融室内の熱によって温められた状態で排ガスとして溶融室から排出される。不燃性ガスの量に応じて、溶融室から持ち去られる熱量が変化し、その結果、溶融室の内部温度が変化するので、溶融室への不燃性ガスの供給量は溶融室の内部温度に影響を与える要因となる。
【0011】
そのため、助燃ガスにおける酸素の濃度を増加又は減少させ、その変化量に応じて、酸素以外のガスとして不燃性ガスの濃度を減少又は増加させるようにすれば、溶融室への不燃性ガスの供給量を調整して溶融室の内部温度を調整することが可能になる。そして、濃度調節が行われると、溶融室への不燃性ガスの供給量が速やかに変化し、それに応じて溶融室の内部温度が変化するので、温度調整の応答性が高い。
【0012】
したがって、助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する工程を含む上記本発明に係る運転方法によれば、バーナーの出力を調節することなく、溶融室の内部温度を溶融処理に適した温度に応答性良く調整することができるので、従来の運転方法と比べて燃料のコスト及び環境負荷を抑えることができる。また、助燃材としての可燃物(例えば廃プラスチックなど)が不燃物とともに溶融室内に供給されて当該可燃物の燃焼熱だけで溶融処理を持続させる、いわゆる自立運転を行う場合には、溶融室の内部温度の調整中にバーナーを稼働させる必要がないため、燃料のコスト及び環境負荷をより抑えることができる。
【0013】
本発明に係る溶融炉の運転方法において、
前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する前記工程は、前記溶融室の内部温度に基づいて、前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する工程を含むと好適である。
【0014】
上記構成によれば、例えば、溶融処理中の溶融室の内部温度が、可燃物と不燃物との比率や可燃物または不燃物の性状などによる影響により目標の溶融処理温度(以下、目標温度)から逸脱した場合に、溶融室に供給される助燃ガスにおける酸素の濃度を調節することにより、溶融室の内部温度を目標温度に調整して維持するような運転が可能になる。
【0015】
本発明に係る溶融炉の運転方法において、
前記ガス供給装置は、空気と、空気よりも酸素濃度が高い酸素富化ガスとを供給するものであり、
前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する前記工程においては、前記助燃ガスにおける空気と酸素富化ガスとの比率を変更すると好適である。
【0016】
上記構成によれば、助燃ガスにおける酸素の濃度を容易に調節できる。
【0017】
本発明に係る溶融炉の運転方法において、
前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する前記工程においては、前記助燃ガスにおける酸素の量が一定となるように、前記助燃ガスにおける空気と酸素富化ガスとの比率を変更すると好適である。
【0018】
上記構成によれば、酸素富化ガスとして使用されたガスの酸素濃度が高いほど、空気と酸素富化ガスとの比率が変更された際に、溶融室内への酸素富化ガスの単位時間当たりの供給量よりも、溶融室内への空気の単位時間当たりの供給量のほうが大きく変化する。例えば、助燃ガスにおける酸素の濃度が上昇するように、空気と酸素富化ガスとの比率を変更した場合、溶融室内への酸素富化ガスの単位時間当たりの供給量の増加分よりも、溶融室内への空気の単位時間当たりの供給量の減少分のほうが大きくなる。反対に、助燃ガスにおける酸素の濃度が減少するように、空気と酸素富化ガスとの比率を変更した場合、溶融室内への酸素富化ガスの単位時間当たりの供給量の減少分よりも、溶融室内への空気の単位時間当たりの供給量の増加分のほうが大きくなる。空気の単位時間当たりの供給量の増減分が大きいほど、空気に含まれる不燃性ガスの単位時間当たりの供給量の増減分も大きくなるので、溶融室の内部温度に対する温度調整の応答性が高くなる。
【0019】
本発明に係る溶融炉の運転方法において、
前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する前記工程は、
前記溶融室内の不燃物の溶融困難度を判定する工程と、
前記溶融困難度に基づいて、前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節する工程と、
を含むと好適である。
【0020】
上記構成によれば、例えば、溶融室に供給された不燃物が溶融困難であると判定された場合に、溶融室に供給される助燃ガスにおける酸素の濃度を調節することにより、溶融室の内部温度を上昇させて溶融困難な不燃物を溶融させるような運転が可能になる。
【0021】
本発明に係る溶融炉の運転方法において、
前記溶融炉に、不燃物が溶融したスラグが排出される出滓口が更に備えられ、
前記溶融室内の不燃物の溶融困難度を判定する前記工程は、
前記出滓口から排出されたスラグの量を検出する工程と、
前記スラグの量に基づいて溶融困難度を判定する工程と、
を含むと好適である。
【0022】
溶融室内の不燃物の溶融困難度が高いほど、出滓口から排出されるスラグの量は減る。したがって、上記構成によれば、スラグの量をもって溶融困難度を判定することが可能である。
【0023】
本発明に係る溶融炉の運転方法において、
前記溶融室内の不燃物の溶融困難度を判定する前記工程は、
前記溶融室内の不燃物が溶融されて形成した溶融面の熱画像データを生成する工程と、
前記熱画像データが示す温度分布情報に基づいて溶融困難度を判定する工程と、
を含むと好適である。
【0024】
可燃物の発熱量が不足することにより、溶融処理中の溶融室の内部温度が目標温度よりも低下した場合、不燃物が溶融されて形成した溶融面における低温領域の面積が増える可能性が高く、溶融室内の不燃物が溶融困難な状況にあると判定できる。したがって、上記構成によれば、溶融面の熱画像データが示す温度分布情報に基づいて溶融困難度を判定することが可能である。
【0025】
本発明に係る溶融炉の運転方法において、
前記溶融室内に可燃物及び不燃物を供給する工程は、可燃物と不燃物との混合物を供給する工程を含むと好適である。
【0026】
上記構成によれば、可燃物、不燃物を別々に供給する場合と比べて、可燃物を溶融室内に比較的ムラなく供給することができるので、可燃物が燃焼された際に溶融室内に放出される熱量が比較的安定になり、溶融室の内部温度を溶融処理に適した温度に維持しやすい。
【0027】
本発明に係る溶融炉の運転方法において、
前記溶融炉の運転条件を調整する前記工程は、前記溶融室の内部温度に基づいて、前記溶融室内に供給される可燃物と不燃物との混合比率を変更する工程を更に含むと好適である。
【0028】
上記構成によれば、例えば、可燃物と不燃物との混合比率が適切でないことから、溶融室の内部温度が溶融処理に適した温度に維持されないような場合に、混合比率を変更することにより溶融室の内部温度を調整することが可能になる。
【0029】
本発明に係る溶融炉の運転方法において、
前記可燃物は廃プラスチックを含むと好適である。
【0030】
廃プラスチックは通常、性状が異なる複数種類のプラスチックを含んでいるため、発熱量にばらつきがあり、溶融炉において可燃物として使用される場合には、溶融室の内部温度を不安定にする要因となり得るが、本発明に係る運転方法によれば、内部温度に対する調整が可能であるため、可燃物として廃プラスチックを使用しても、内部温度を安定的に維持することができる。そして、可燃物として廃プラスチックを使用することにより、バーナー用の燃料の消費量を減らして燃料のコストと環境負荷を軽減することができる。
【0031】
本発明に係る溶融炉の運転方法において、
前記溶融炉は、
前記溶融室が下方に形成された天井部と、
前記天井部の外周に立設されて前記天井部と共に昇降可能な内筒と、
内側に前記内筒が配置されて前記内筒に対して回転可能な有底の外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面との間に形成された貯留室に位置する可燃物及び不燃物を前記外筒の回転に伴って前記溶融室に案内する、前記内筒の下部に設けられている案内装置と、
を備えた回転式表面溶融炉であると好適である。
【0032】
上記構成の回転式表面溶融炉においても、前述した各形態の本発明に係る運転方法は好適に実行可能である。
【0033】
上述の目的を達成するための本発明に係る溶融炉は、
可燃物の燃焼による上部空間からの輻射熱により下部に堆積する不燃物が溶融される溶融室と、
前記溶融室内に酸素を含む助燃ガスを供給するガス供給装置と、
前記溶融室の内部温度を検出する温度センサと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置が、前記助燃ガスにおける酸素の濃度を調節するように前記ガス供給装置を制御することを特徴とする。
【0034】
上記構成の溶融炉に前述した本発明に係る運転方法を適用すれば、燃料のコストを抑えながら、溶融室の内部温度を溶融処理に適した温度に応答性良く調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】第一の実施形態の表面溶融炉の概略構成を示す縦断面図である。
図2】第一の実施形態の表面溶融炉の概略構成を示すブロック図である。
図3】溶融室の内部温度の変化を示す図である。
図4】溶融室内に供給される空気の流量と酸素富化ガスの流量との関係(下図)、及び溶融室内の酸素濃度と内部温度との関係(上図)を示す図である。
図5】第三の実施形態の表面溶融炉の概略構成を示す縦断面図である。
図6】第三の実施形態の表面溶融炉の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る溶融炉及びその運転方法の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、ごみ焼却炉などから発生する焼却灰(不燃物の一例)を、廃プラスチック(助燃材としての可燃物の一例)の燃焼熱を利用して溶融させる回転式表面溶融炉を例にしている。
【0037】
〔第一の実施形態〕
<表面溶融炉の構造>
図1及び図2に示すように、表面溶融炉1は、有底の外筒2と、外筒2に対して軸心が一致する状態で外筒2の内側に配置された内筒3と、内筒3の内周面の下部に設けられた天井部4と、表面溶融炉1の運転を制御する制御装置5と、表示装置6と、搬送装置8を備える。
【0038】
外筒2は、内筒3に対して相対回転可能に構成されている。外筒2には回転駆動装置21(周知の構成であるため図1での図示及びその詳細な説明は省略する)が連結しており、回転駆動装置21によって外筒2が内筒3に対して回転駆動される。外筒2の内周面と内筒3の外周面との間には環状の貯留室Rが形成されており、貯留室Rの上方側の開口を覆う蓋7が内筒3の上部に支持されている。蓋7にはホッパー71が設けられており、搬送装置8(一例として混合機及びコンベヤにより構成された装置)において設定の比率で混合された廃プラスチックと焼却灰との混合物が被処理物として、ホッパー71から貯留室R内へ投入されて貯留される。
【0039】
内筒3は、天井部4の外周に立設されており、天井部4と共に昇降可能に構成されている。内筒3には昇降駆動装置31(周知の構成であるため図1での図示及びその詳細な説明は省略する)が連結しており、昇降駆動装置31によって内筒3及び天井部4が外筒2に対して昇降駆動される。内筒3の下部には、切り出し羽根32(案内装置の一例)が周方向に間隔をあけて複数設けられており、切り出し羽根32は、内筒3の外側に位置する貯留室R内の被処理物を、外筒2の回転に伴って内筒3の内側へ切り出すように構成されている。
【0040】
天井部4は、下方に開口する略円錐状をなしており、外筒2の床部22との間に溶融室Mが形成されている。溶融室Mには、被処理物が切り出されることにより断面視で略すり鉢状の被処理物層Lが形成される。天井部4には、燃料を燃焼する際に生じる燃焼炎からの輻射熱によって溶融室M内の温度を目標温度に加熱するためのバーナー41(加熱装置の一例)が設けられており、本実施形態において、バーナー41は溶融室M内の温度を焼却灰の溶流点以上となる1200℃~1400℃に加熱する。溶融室M内の温度は、天井部4の例えば中央部に設けられた、一例では熱電対からなる溶融室温度センサ42によって測定されて信号として制御装置5に送信される。なお、バーナー41の燃料としては、重油、灯油、都市ガス、水素、アンモニア、バイオマスのメタン発酵で生成するバイオガス、粉砕したプラスチック(いわゆるフラフ)などが挙げられる。
【0041】
バーナー41により溶融室M内の上部空間が加熱されることで、溶融室M内の下部に堆積する被処理物層Lは表面側から溶融される。溶融物であるスラグは、自然流下により外筒2の床部22の略中央に位置する出滓口(スラグポート)221から、溶融室M内の排ガスと共に排出される。被処理物層Lの表面は、溶融に伴って後退するのであるが、外筒2が連続的又は定期的に回転して被処理物を新たに切り出すことにより、概ね一定の位置及び形状に維持される。出滓口221から排出されたスラグの量(すなわち表面溶融炉1の処理量)は、スラグセンサ9によって測定されて信号として制御装置5に送信される。
【0042】
また、天井部4には、空気G1の供給源及び空気G1よりも酸素濃度が高い酸素富化ガス(本実施形態では純酸素であるが、酸素富化空気などであってもよい)G2の供給源にそれぞれ接続されたガス供給装置43が、例えば天井部4の外周側に設けられている。ガス供給装置43は、空気G1と酸素富化ガスG2との混合ガスを助燃ガスG3として溶融室M内に供給する。
【0043】
制御装置5は、例えばメモリーからなる記憶部51と、例えばプロセッサからなる処理部52とを有する。記憶部51は、表面溶融炉1の作業者が図示しない入力部を介して設定した目標温度などの情報を示す信号と、溶融室温度センサ42及びスラグセンサ9からの信号とを受信して記憶すると共に、記憶した信号を処理部52からの要求に応じて処理部52に送信する。
【0044】
処理部52は、搬送装置8による被処理物の投入、回転駆動装置21による外筒2の回転、昇降駆動装置31による外筒2の昇降、バーナー41の出力、ガス供給装置43による助燃ガスG3の供給などを制御する。また、処理部52は、後述の運転方法において説明されるように、表面溶融炉1の運転条件を調整する。
【0045】
表示装置6は、所定の情報(例えば目標温度、溶融室Mの温度、ガス供給装置43の流量、溶融室Mから排出されるスラグの量などを含む表面溶融炉1の運転条件と、後述する運転条件に対する調整の結果など)を表面溶融炉1の作業者に提示するためのものであり、一例としてパネルディスプレイによって構成される。
【0046】
<運転方法>
以下、上述した構成の表面溶融炉1の運転方法について説明する。第一の実施形態において、運転方法は、供給工程S1、加熱工程S2及び調整工程S3を含む。
【0047】
供給工程S1は、回転駆動装置21の作動によって外筒2を回転させることで、貯留室R内の被処理物、つまり廃プラスチックと焼却灰との混合物を溶融室Mに切り出して被処理物層Lを形成したり、溶融された分の被処理物を補充したりする工程である。
【0048】
加熱工程S2は、表面溶融炉1の立ち上げ時(図3のt0)に、バーナー41を稼働させて溶融室Mの内部温度を目標温度(一例として1300℃)に上昇させることで、被処理物層Lの表面側に位置する廃プラスチックを燃焼させて焼却灰を溶融させる工程である。溶融室Mの内部温度が目標温度に到達して焼却灰の溶融が開始された後(図3のt1)に、バーナー41の稼働は停止される。バーナー41の稼働停止後に、廃プラスチックの燃焼による輻射熱により焼却灰の溶融が継続され(すなわち自立運転状態になり)、これに並行して供給工程S1による被処理物の供給が連続的又は断続的に行われることで、焼却灰の溶融処理が連続的に行われる。
【0049】
調整工程S3は、表面溶融炉1の運転条件を調整するための工程であり、本実施形態においては、溶融室Mの内部温度に基づいて助燃ガスG3における酸素の濃度を調節する工程S31を含む。例えば、溶融室Mの内部温度が、目標温度より低い下限温度(一例として1100℃)を下回った場合(図3のt2)、工程S31では、助燃ガスG3における酸素の濃度が上昇するように、助燃ガスG3における空気G1と酸素富化ガス(純酸素)G2との比率を変更する。比率の変更は、空気G1及び酸素富化ガス(純酸素)G2の少なくとも一方の流量を変更することにより行われ、例えば図4の下図に示すように、酸素富化ガス(純酸素)G2の流量を増加させる一方、空気G1の流量を減少させることができる。助燃ガスG3における酸素の濃度の上昇に伴い、酸素以外の不燃性ガスの濃度が低下するので、溶融室M内に供給される不燃性ガスの量が減少することになる。これにより、不燃性ガスが排ガスとして出滓口221から排出される際に持ち去られる熱量が減少するので、図3及び図4の上図に示すように、溶融室Mの内部温度が上昇することになる。このように、本実施形態によれば、バーナー41を用いることなく、溶融室Mの内部温度を目標温度に応答性良く調整することができる。溶融室Mの内部温度に対する調整は、例えば、当該内部温度が目標温度に到達する(図3のt3)まで行われる。なお、溶融室Mの内部温度を目標温度に追従させるための制御は、これに限定されないが、PID制御等のフィードバック制御によって行われてもよい。
【0050】
一方、例えば、溶融室Mの内部温度が、目標温度より高い上限温度(一例として1400℃)を上回った場合(図3のt4)、工程S31では、助燃ガスG3における酸素の濃度が低下するように、助燃ガスG3における空気G1と酸素富化ガス(純酸素)G2との比率を変更する。比率の変更は、空気G1及び酸素富化ガス(純酸素)G2の少なくとも一方の流量を変更することにより行われ、例えば図4の下図に示すように、酸素富化ガス(純酸素)G2の流量を減少させる一方、空気G1の流量を増加させることができる。助燃ガスG3における酸素の濃度の低下に伴い、酸素以外の不燃性ガスの濃度が上昇するので、溶融室M内に供給される不燃性ガスの量が増加することになる。これにより、不燃性ガスが排ガスとして出滓口221から排出される際に持ち去られる熱量が増加するので、図3及び図4の上図に示すように、溶融室Mの内部温度が低下することになる。このように、本実施形態によれば、溶融室Mの内部温度を低下させ、過度な加熱による炉体の損傷を抑えるができる。溶融室Mの内部温度に対する調整は、例えば、当該内部温度が目標温度に到達する(図3のt5)まで行われる。
【0051】
溶融室Mの内部温度に対する上記の調整によれば、バーナー41を用いることなく、溶融室Mの内部温度を目標温度に応答性良く調整することができる。
【0052】
なお、助燃ガスG3における空気G1と酸素富化ガス(純酸素)G2との比率の変更は、助燃ガスG3における酸素の量(つまり、溶融室M内への酸素の単位時間当たりの供給量)が一定となるように行われても良い。酸素富化ガスとして純酸素が使われている本実施形態の場合では、図4に示すように、空気と酸素富化ガスとの比率の変更に伴う、溶融室内への酸素富化ガスの単位時間当たりの供給量の増減分よりも、溶融室内への空気の単位時間当たりの供給量の増減分のほうが大きくなる。そのため、溶融室の内部温度に対する温度調整の応答性が向上する。しかし、助燃ガスG3における空気G1と酸素富化ガス(純酸素)G2との比率の変更は、助燃ガスG3における酸素の量に関係なく行われても良い。例えば、助燃ガスG3における酸素の濃度を上昇させたい場合には、酸素富化ガス(純酸素)G2の流量だけを上昇させても良く、空気G1の流量だけを低下させてもよい。助燃ガスG3における酸素の濃度を低下させたい場合でも同様である。
【0053】
〔第二の実施形態〕
本実施形態は、助燃ガスG3における酸素の濃度に対する調節が、溶融室M内の不燃物の溶融困難度に基づいて行われる点において上記第一の実施形態と異なる。以下の説明では、第一の実施形態と同一である構成についての説明を省略する。
【0054】
具体的に言うと、本実施形態において、運転方法の調整工程S3は、溶融室M内の不燃物の溶融困難度を判定する工程S32と、溶融困難度に基づいて助燃ガスG3における酸素の濃度を調節する工程S33とを含む。
【0055】
そして、溶融室M内の不燃物の溶融困難度を判定する工程S32は、スラグセンサ9により、出滓口221から排出されたスラグの量を検出する工程S321と、スラグの量に基づいて溶融困難度を判定する工程S322とを含む。
【0056】
溶融室M内の不燃物の溶融困難度が高いほど、出滓口221から排出されたスラグの量は減る。そこで、一例として、工程S322においては、処理部52が、スラグセンサ9によって検出された現在のスラグの量と、過去の運転の結果や実験の結果等に基づいて設定された標準のスラグ量とを比較して溶融困難度を判定する。例えば、現在のスラグの量が所定の閾値(例えば標準のスラグ量の10%)を超えて標準のスラグ量を下回った場合に、溶融室M内の不燃物の溶融困難度が高いと判定する。この場合、工程S33においては、助燃ガスG3における酸素の濃度が上昇するように、助燃ガスG3における空気G1と酸素富化ガス(純酸素)G2との比率を変更する。これにより、溶融室Mの内部温度が上昇するので、不燃物の溶融が促進される。このように、本実施形態によれば、バーナー41を用いることなく、溶融室Mの内部温度を、不燃物の溶融に適した温度に応答性良く調整することができる。なお、助燃ガスG3における空気G1と酸素富化ガス(純酸素)G2との比率の変更は、第一の実施形態と同様に行えばよい。
【0057】
更に、現在のスラグの量が同所定範囲を超えて標準のスラグ量を上回った場合でも、溶融室Mの内部温度に対する調整を行ってよい。具体的には、工程S32において、溶融室M内の不燃物の溶融困難度が低いと判定された場合、これは溶融室Mの内部温度が不燃物の溶融に適した温度を上回っていることを意味するので、工程S33においては、助燃ガスG3における酸素の濃度が低下するように、助燃ガスG3における空気G1と酸素富化ガス(純酸素)G2との比率を変更する。これにより、溶融室Mの内部温度が低下し、過度な加熱による炉体の損傷が抑えられる。なお、以上説明した、溶融室M内の不燃物の溶融困難度に基づく酸素の濃度の調節は、第一の実施形態において説明した、溶融室Mの内部温度に基づく酸素の濃度の調節と併用されてもよい。
【0058】
〔第三の実施形態〕
本実施形態は、溶融室M内の不燃物の溶融困難度の判定が、被処理物層Lが溶融されて形成した溶融面L図5参照)の温度分布情報に基づいて行われる点において上記第二の実施形態と異なる。以下の説明では、第二の実施形態と同一である構成についての説明を省略する。
【0059】
<表面溶融炉の構造>
図5及び図6に示すように、本実施形態において、表面溶融炉1の天井部4には、溶融面Lの少なくとも一部の領域(対象領域E)を撮像してその温度分布を色又は明度で示す熱画像データを生成する赤外線カメラ44が更に設けられている。赤外線カメラ44により生成された熱画像データは、信号として制御装置5に送信される。制御装置5の記憶部51は、赤外線カメラ44からの信号を受信して記憶すると共に、記憶した信号を処理部52からの要求に応じて処理部52に送信する。処理部52は、赤外線カメラ44により生成された熱画像データに対して必要に応じて画像処理を行い、表示装置6に送信して表示させる。また、処理部52は、後述の運転方法において説明されるように、表面溶融炉1の運転条件を調整する。
【0060】
<運転方法>
本実施形態において、溶融室M内の不燃物の溶融困難度を判定する工程S32は、溶融面Lの熱画像データを生成する工程323と、熱画像データが示す温度分布情報に基づいて溶融困難度を判定する工程324とを含む。
【0061】
溶融室の内部温度を目標温度に維持するのに必要な可燃物の発熱量が不十分であること、又は、廃プラスチックの発熱後一定期間が経過したにもかかわらず、不燃物が完全に溶融して排出されずに残存していること、などの理由により、溶融処理中の溶融室Mの内部温度が目標温度よりも低下した場合、溶融室M内の不燃物は、その温度が目標温度よりも低下するので、溶融困難な状況になる。この場合、工程313において生成された対象領域Eの熱画像には、溶融困難な状況にある不燃物を示す低温領域(目標温度よりも温度が低い領域)が現れることになる。そこで、一例として、工程S324においては、処理部52が、熱画像の全領域の面積における低温領域の面積の割合を算出し、算出された数値と所定の閾値(例えば5%)とを比較して溶融室M内の不燃物の溶融困難度を判定する。そして、判定の結果に基づいて、第二の実施形態の工程S33と同様に、溶融困難度に基づいて助燃ガスG3における酸素の濃度を調節する。なお、低温領域の面積は、例えば、熱画像を構成する各画素のデータが保有する温度情報に基づいて算出された低温領域に相当する画素数(データ数)を用いて求めることができる。
【0062】
また、本実施形態において、溶融困難度の判定は、処理部52の代わりに、表面溶融炉1の作業者によって行われてもよい。一例として、工程324においては、表面溶融炉1の作業者が、表示装置6に表示された熱画像データを確認し、主観的な基準(経験など)に基づいて溶融困難度を判定する。
【0063】
〔その他の実施形態〕
上記第一の実施形態において、調整工程S3は、溶融室Mの内部温度に基づいて助燃ガスG3における酸素の濃度を調節する工程S31に加えて、溶融室Mの内部温度に基づいて溶融室M内に供給される可燃物と不燃物との混合比率を変更する工程S34を更に含んでもよい。一例として、溶融室Mの内部温度が目標温度より低い下限温度を下回った場合(図3のt2)、これは、可燃物の発熱量は自立運転を維持するのに不十分であることを意味するので、工程S34では、搬送装置8に投入される廃プラスチックの量を増加させ、これにより、貯留室Rを通ってやがて溶融室M内に供給される被処理物における廃プラスチックの比率を高める。一方、溶融室Mの内部温度が、目標温度より高い上限温度を上回った場合(図3のt4)、工程S34では、搬送装置8に投入される廃プラスチックの量を減少させる。又は、工程S34は、助燃ガスG3における酸素の濃度を調節する工程S31を行っても、溶融室Mの内部温度を目標温度に調整できない場合に行われてもよい。一例として、工程S34は、工程S31を行ってから所定時間が経過するまでの間に、溶融室Mの内部温度が目標温度にならなかった、或いは、溶融室Mの内部温度が上限温度又は下限温度を超えて目標温度に近づいていなかった場合に行われてもよい。
【0064】
上記各実施形態では回転式表面溶融炉を例にして説明していたが、これに限らず溶融炉であれば本発明を適用可能である。そして、回転式表面溶融炉以外の溶融炉の場合、可燃物及び不燃物は混合されることなく別々で溶融室M内に供給されてもよい。
【0065】
上記実施形態では、可燃物の例として廃プラスチックを挙げていた。しかし、可燃物は可燃成分を含むものであればよく、例えば、汚泥、木質系バイオマス、農業系廃棄物、RPF、RDF、一般ごみなどであってもよい。なお、可燃成分のみならず不燃成分も含む可燃物は、溶融室M内において燃焼すると不燃物としての灰分が残る。そのため、被処理物として溶融室M内に汚泥などを供給することは、実質的に可燃物と不燃物の両方を供給することになる。また、上記実施形態では、不燃物の例として焼却灰を挙げていたが、これに限らず、汚染土壌、ガラス、飛灰などであってもよい。また可燃物はバーナー用の燃料であってもよく、この場合の被処理物は不燃物のみであっても、不燃物と可燃物との混合物であってもよい。
【0066】
上記各実施形態においては、空気G1と酸素富化ガスG2とを混合して溶融室M内に供給していたが、空気G1と酸素富化ガスG2は混合されることなく別々で溶融室M内に供給されてもよい。この場合でも、空気G1及び酸素富化ガスG2の少なくとも一方の流量を変更することにより、溶融室M内での空気G1と酸素富化ガスG2との比率を変更することが可能である。なお、使用されるガスは、酸素濃度が互いに異なるガスであればよい。例えば、酸素富化ガスG2の代わりに酸素貧化ガスを使ってもよい。又は、純酸素と、窒素等の不燃性ガスとの組み合わせを使ってもよい。これらの場合でも、溶融室M内の酸素濃度の調節が可能である。
【0067】
上記各実施形態の運転方法においては、溶融処理中の溶融室Mの内部温度に対する調整を、酸素濃度の調節のみにより行っていた。この場合、バーナー用燃料の消費量は減るものの、酸素の消費量は増えるので、酸素のコスト次第では、溶融炉1全体の運転コストがむしろ高くなってしまうことも考えられる。そこで、本発明に係る運転方法においては、溶融炉1の運転コストが抑えられるように、酸素濃度の調節と、バーナー出力の調節とを適宜組み合わせて行ってもよい。例えば、燃料のコストよりも酸素のコストが低い場合では、上記各実施形態のように酸素濃度の調節のみを行う。一方、燃料のコストよりも酸素のコストが高い場合では、酸素濃度の調節に加えてバーナー出力の調節を行う。なお、上記各実施形態において説明した構成を備えている本発明に係る溶融炉1は、溶融室Mの内部温度を調整するための動作モードとして、酸素濃度のみを調節するモードと、バーナー出力のみを調節するモードと、酸素濃度及びバーナー出力を組み合わせて調節するモードとを有してもよい。
【0068】
上記各実施形態において、表面溶融炉1の立ち上げ時に溶融室M内には被処理物として廃プラスチックと焼却灰との混合物があらかじめ供給されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、立ち上げ時に溶融室M内には焼却灰のみが供給されていてもよい。この場合では、バーナー41による加熱により溶融室Mの内部温度が目標温度で安定したのちに、溶融室Mへの廃プラスチックの供給を開始するとともに、バーナー41の出力を徐々に低下させていき、廃プラスチックと焼却灰とが設定の比率で安定的に供給されるようになると、バーナー41の稼働を停止させる。そして、バーナー41の稼働停止後に、酸素濃度を調節することにより、溶融室Mの内部温度を目標温度に維持させる。更に、表面溶融炉1の運転中に溶融室M内には廃プラスチックが供給されず焼却灰のみが供給されていてもよい。この場合では、バーナー41による加熱に加えて酸素濃度の調節を行うことにより、溶融室Mの内部温度を目標温度に維持させる。
【0069】
溶融室Mからの排ガスに未燃成分が含まれている場合があり、これは、溶融室Mへの酸素の供給量が不足していることを意味する。また、溶融室Mからの排ガスには、燃焼後の残留酸素が含まれており、残留酸素の濃度が高いことは、溶融室Mへの酸素の供給量が過剰であることを意味する。そこで、上記各実施形態の表面溶融炉1は、排ガスから未燃成分(例えば、一酸化炭素)の濃度及び酸素の濃度の少なくとも一方を検出する検出装置を更に備えてもよく、その運転方法における調整工程S3は、排ガスの成分を検出装置によって検出する工程S35と、検出された排ガスの成分に基づいて溶融室Mへの酸素の供給量を調節する工程S36とをさらに含んでもよい。具体的に、工程S35において検出された未燃成分の濃度が所定の閾値(例えば100ppm)を超えた場合、工程S36においては、溶融室Mへの酸素の供給量が増加するように、助燃ガスG3の供給量を増加させるか、又は助燃ガスG3における酸素の濃度を上昇させる。一方、工程S35において検出された残留酸素の濃度が所定の閾値(例えば5%)を超えた場合、工程S36においては、溶融室Mへの酸素の供給量が減少するように、助燃ガスG3の供給量を減少させるか、又は助燃ガスG3における酸素の濃度を低下させる。そして、この実施形態の場合、溶融室Mの内部温度に基づいて助燃ガスG3における酸素の濃度を調節する工程S31と、溶融室M内の不燃物の溶融困難度に基づいて助燃ガスG3における酸素の濃度を調節する工程S33とは、排ガスにおける未燃成分の濃度及び残留酸素の濃度が上記閾値を超えない範囲内で行われる。
【符号の説明】
【0070】
1 表面溶融炉
2 外筒
21 回転駆動装置
22 床部
221 出滓口
23 周壁部
3 内筒
31 昇降駆動装置
32 切り出し羽根(案内装置)
4 天井部
41 バーナー(加熱装置)
42 溶融室温度センサ
43 ガス供給装置
44 赤外線カメラ
5 制御装置
51 記憶部
52 処理部
6 表示装置
7 蓋
71 ホッパー
8 搬送装置
9 スラグセンサ
R 貯留室
M 溶融室
L 被処理物層
溶融面
E 対象領域
G1 空気
G2 酸素富化ガス
G3 助燃ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6