(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101162
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】ステーブ冷却水配管破損検知装置および方法、ならびに高炉炉体冷却設備
(51)【国際特許分類】
G01M 3/02 20060101AFI20250630BHJP
G01M 3/26 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
G01M3/02 L
G01M3/26 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217805
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】和木 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】小坂 眞弘
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA11
2G067BB05
2G067BB07
2G067BB11
2G067BB25
2G067CC04
2G067DD04
2G067DD07
2G067DD17
2G067EE12
(57)【要約】
【課題】冷却水配管水圧と炉内圧力の関係によらず、誤差なく確実にステーブの冷却水配管の破損検知が可能であり、また、破損が小さい場合や細い場合にも気泡混入した際の冷却水配管の破損検知が可能な技術を提供する。
【解決手段】ステーブ冷却水配管破損検知装置は、ステーブの冷却水配管の複数の配管系統のそれぞれにおける給水側の流量および排水側の流量の差流量を測定する差流量測定手段と、冷却水を貯留するためのヘッドタンクと、ヘッドタンクからの冷却水を冷却水配管に循環供給する冷却水循環配管と、冷却水循環配管の排水側に設けられた気泡検知器と、ヘッドタンク内の冷却水の水位レベルを測定するレベル測定器と、ヘッドタンク内の冷却水のCOガスを検知するCOガス検知器と、差流量測定手段、気泡検知器、レベル測定器、およびCOガス検知器による測定または検知結果に基づいて冷却水配管の破損を判定する制御部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉炉体冷却設備におけるステーブの冷却水配管の破損を検知するステーブ冷却水配管破損検知装置であって、
前記ステーブの前記冷却水配管の複数の配管系統のそれぞれにおける給水側の流量および排水側の流量の差流量を測定する差流量測定手段と、
前記冷却水配管に供給される冷却水を貯留するためのヘッドタンクと、
前記ヘッドタンクから前記冷却水を前記冷却水配管に循環供給する冷却水循環配管と、
前記冷却水循環配管の排水側に設けられた気泡検知器と、
前記ヘッドタンク内の前記冷却水の水位レベルを測定するレベル測定器と、
前記ヘッドタンク内の前記冷却水のCOガスを検知するCOガス検知器と、
前記差流量測定手段、前記気泡検知器、前記レベル測定器、および前記COガス検知器による測定または検知結果に基づいて前記冷却水配管の破損を判定する制御部と、
を有する、ステーブ冷却水配管破損検知装置。
【請求項2】
前記差流量測定手段は、前記ステーブの前記冷却水配管の複数の配管系統のそれぞれにおける給水側の流量を測定する給水流量計および排水側の流量を測定する排水流量計を有する、請求項1に記載のステーブ冷却水配管破損検知装置。
【請求項3】
前記差流量測定手段は、前記給水流量計の給水流量値を基準として前記排水流量計の排水流量値が閾値を下回ることを検知された場合に、当該検知がなされた配管系統について、前記冷却水配管の破損により炉内浸水が生じたとされる、請求項2に記載のステーブ冷却水配管破損検知装置。
【請求項4】
前記気泡検知器は、内部にフロート式センサを有し、前記冷却水に気泡が混入した際に、内部の水位が下がることによりフロートが作動し、前記冷却水への気泡混入を検知する、請求項1に記載のステーブ冷却水配管破損検知装置。
【請求項5】
前記レベル測定器は、前記ヘッドタンクの水位レベルの低下により、前記冷却水配管の破損による前記冷却水の漏出を検知する、請求項1に記載のステーブ冷却水配管破損検知装置。
【請求項6】
前記COガス検知器は、前記冷却水に混入した炉内ガス中のCO濃度を測定して、その値が閾値以上のときに、前記冷却水配管の破損が検知される、請求項1に記載のステーブ冷却水配管破損検知装置。
【請求項7】
ヘッドタンクに貯留された冷却水を冷却水循環配管によりステーブの冷却水配管に循環供給して高炉炉体を冷却する高炉炉体冷却設備におけるステーブ冷却水配管破損検知方法であって、
前記冷却水配管の複数の配管系統のそれぞれにおける給水側の流量および排水側の流量の差流量を測定する工程と、
前記冷却水循環配管の排水側に設けられた気泡検知器により冷却水への気泡混入を検知する工程と、
前記ヘッドタンク内の前記冷却水の水位レベルを測定する工程と、
前記ヘッドタンク内の前記冷却水のCOガスを検知する工程と、
を有し、
前記差流量を測定する工程と、前記気泡混入を検知する工程と、前記水位レベルを測定する工程と、前記COガスを検知する工程とにより、前記冷却水配管の破損を判定する、ステーブ冷却水配管破損検知方法。
【請求項8】
前記差流量を測定する工程は、前記ステーブの前記冷却水配管の複数の配管系統のそれぞれにおける給水側の流量および排水側の流量を測定し、これらに基づいて差流量を測定する、請求項7に記載のステーブ冷却水配管破損検知方法。
【請求項9】
前記差流量を測定する工程は、前記給水流量計の給水流量値を基準として前記排水流量計の排水流量値が閾値を下回ることを検知された場合に、当該検知がなされた配管系統について、前記冷却水配管の破損により炉内浸水が生じたとする、請求項8に記載のステーブ冷却水配管破損検知方法。
【請求項10】
前記気泡混入を検知する工程に用いる前記気泡検知器は、内部にフロート式センサを有し、前記冷却水に気泡が混入した際に、内部の水位が下がることによりフロートが作動し、前記冷却水への気泡混入を検知する、請求項7に記載のステーブ冷却水配管破損検知方法。
【請求項11】
前記水位レベルを測定する工程は、前記ヘッドタンクの水位レベルの低下により、前記冷却水配管の破損による前記冷却水の漏出を検知する、請求項7に記載のステーブ冷却水配管破損検知方法。
【請求項12】
前記COガスを検知する工程は、前記冷却水に混入した炉内ガス中のCO濃度を測定して、その値が閾値以上のときに、前記冷却水配管の破損を検知する、請求項7に記載のステーブ冷却水配管破損検知方法。
【請求項13】
高炉炉体の壁部に設けられたステーブと、前記ステーブに冷却水を供給する冷却水供給設備と、前記ステーブの冷却水配管の破損を検知する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のステーブ冷却水配管破損検知装置と、
を有する、高炉炉体冷却設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステーブ冷却水配管破損検知装置および方法、ならびに高炉炉体冷却設備に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉には、炉体保護を目的としたステーブと呼ばれる冷却機構があり、冷却水配管が各ステーブ間を循環することで炉体鉄皮を常時冷却している。
【0003】
この冷却水配管は破穴(破損)することがあり、冷却水配管が破穴した場合、高炉炉体内への浸水のおそれがある。高炉炉体内への浸水が生じると、炉況の悪化および水素濃度が上昇することによる異常燃焼に繋がるリスクが高まる。このため、冷却水配管の破損を早期検知する技術は、高炉安定操業において重要な役割を担っている。
【0004】
高炉炉体の冷却設備の破損を検知する技術としては、例えば、特許文献1~4に記載されているように、配管破損が発生した際に冷却水配管内に混入するガス気泡を冷却水配管系統毎に設置してあるガス捕集器により採取することにより配管破損を検知するものが知られている。これらの技術では、採取した気泡はいずれも目視およびCOガス検知器による検知をしている。
【0005】
しかし、特許文献1~4に記載された技術は、いずれも冷却水配管内水圧が炉内圧力よりも低い前提となっており、冷却水配管内水圧が炉内圧力よりも高くなった場合に配管破損を検知することができず、検知が重要な炉内浸水が生じる場合の破損検知が困難である。例えば、ステーブの冷却水配管は、高炉の高さ方向に水流が生じているため、水頭圧の関係で高さにより冷却水配管内の圧力変化が生じており、配管高さによっては冷却水配管内水圧>炉内圧力となる部位があり、そのような部位で配管破損が生じた場合、冷却水配管に気泡混入せず炉内浸水が生じる。さらに、高炉休風時においては、炉内圧力が大気開放となるため全配管破損箇所から炉内浸水が生じ、異常燃焼等のリスクが高まる。しかし、上記技術ではこのような炉内浸水が生じる場合の配管破損検知が困難である。それに加えて、配管破損の大きさが小さい、また破損の幅が細い場合には、気泡混入したガスは小さい気泡となるため、気泡捕集器で採取自体が難しく破損検知そのものが困難となる。
【0006】
また、特許文献5には、高炉の炉頂ガス分析を実施し、炉内ガス組成が変化することを利用してステーブの冷却水配管の破損を検知する技術が記載されている。しかし、この技術では、配管が破損した際における高炉の炉頂ガスの組成変化は炉内浸水以外の要因でも発生することがあり、必ずしも炉頂ガスの組成変化をもって炉内浸水とは特定できない。また、上述したような配管破損時に気泡混入する場合の配管破損検知はできない。
【0007】
さらに、特許文献6には、ステーブの各冷却水配管の排水側に排水流量計を設置し、配管破損による炉内浸水が発生した場合に設定した基準流量よりも排水流量が低下する事象が発生するということを利用して冷却水配管の破損を検知する技術が記載されている。しかし、この技術では、上述したような配管破損時に気泡混入する場合の配管破損検知ができず、かつ本来の基準流量が一定でない場合に誤差が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-283108号公報
【特許文献2】特開2005-179750号公報
【特許文献3】特開平06-347361号公報
【特許文献4】特開平05-320728号公報
【特許文献5】特開昭60-085348号公報
【特許文献6】特開昭57-125337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した通り、高炉ステーブの冷却水配管破損時の事象が冷却水配管水圧と炉内圧力の関係により、気泡混入となるか炉内浸水となるか異なる。上記特許文献1~4のように、配管破損が発生した際に冷却水配管内に混入するガス気泡をガス捕集器で採取することにより配管破損を検知する技術では、冷却水配管内水圧<炉内圧力の場合しか配管破損を検知できず、特許文献5、6の技術のように、炉内浸水自体を検知する技術では、気泡混入した場合には配管破損を検知できない。また、特許文献1~4の技術では、配管の破損の大きさが小さい、また破損の幅が細い場合に小さい気泡となるため、気泡捕集器で採取自体が難しく破損検知そのものが困難となる。さらに、特許文献5の技術では、炉内浸水を確実に検知できず、特許文献6の技術では、本来の基準流量が一定でない場合に誤差が生じるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、冷却水配管水圧と炉内圧力の関係によらず、誤差なく確実にステーブの冷却水配管の破損検知が可能であり、また、破損が小さい場合や細い場合にも気泡混入した際の冷却水配管の破損検知が可能なステーブ冷却水配管破損検知装置および方法、ならびに高炉炉体冷却設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の[1]~[13]の手段を提供する。
【0012】
[1]高炉炉体冷却設備におけるステーブの冷却水配管の破損を検知するステーブ冷却水配管破損検知装置であって、
前記ステーブの前記冷却水配管の複数の配管系統のそれぞれにおける給水側の流量および排水側の流量の差流量を測定する差流量測定手段と、
前記冷却水配管に供給される冷却水を貯留するためのヘッドタンクと、
前記ヘッドタンクから前記冷却水を前記冷却水配管に循環供給する冷却水循環配管と、
前記冷却水循環配管の排水側に設けられた気泡検知器と、
前記ヘッドタンク内の前記冷却水の水位レベルを測定するレベル測定器と、
前記ヘッドタンク内の前記冷却水のCOガスを検知するCOガス検知器と、
前記差流量測定手段、前記気泡検知器、前記レベル測定器、および前記COガス検知器による測定または検知結果に基づいて前記冷却水配管の破損を判定する制御部と、
を有する、ステーブ冷却水配管破損検知装置。
【0013】
[2]前記差流量測定手段は、前記ステーブの前記冷却水配管の複数の配管系統のそれぞれにおける給水側の流量を測定する給水流量計および排水側の流量を測定する排水流量計を有する、[1]に記載のステーブ冷却水配管破損検知装置。
【0014】
[3]前記差流量測定手段は、前記給水流量計の給水流量値を基準として前記排水流量計の排水流量値が閾値を下回ることを検知された場合に、当該検知がなされた配管系統について、前記冷却水配管の破損により炉内浸水が生じたとされる、[2]に記載のステーブ冷却水配管破損検知装置。
【0015】
[4]前記気泡検知器は、内部にフロート式センサを有し、前記冷却水に気泡が混入した際に、内部の水位が下がることによりフロートが作動し、前記冷却水への気泡混入を検知する、[1]に記載のステーブ冷却水配管破損検知装置。
【0016】
[5]前記レベル測定器は、前記ヘッドタンクの水位レベルの低下により、前記冷却水配管の破損による前記冷却水の漏出を検知する、[1]に記載のステーブ冷却水配管破損検知装置。
【0017】
[6]前記COガス検知器は、前記冷却水に混入した炉内ガス中のCO濃度を測定して、その値が閾値以上のときに、前記冷却水配管の破損が検知される、[1]に記載のステーブ冷却水配管破損検知装置。
【0018】
[7]ヘッドタンクに貯留された冷却水を冷却水循環配管によりステーブの冷却水配管に循環供給して高炉炉体を冷却する高炉炉体冷却設備におけるステーブ冷却水配管破損検知方法であって、
前記冷却水配管の複数の配管系統のそれぞれにおける給水側の流量および排水側の流量の差流量を測定する工程と、
前記冷却水循環配管の排水側に設けられた気泡検知器により冷却水への気泡混入を検知する工程と、
前記ヘッドタンク内の前記冷却水の水位レベルを測定する工程と、
前記ヘッドタンク内の前記冷却水のCOガスを検知する工程と、
を有し、
前記差流量を測定する工程と、前記気泡混入を検知する工程と、前記水位レベルを測定する工程と、前記COガスを検知する工程とにより、前記冷却水配管の破損を判定する、ステーブ冷却水配管破損検知方法。
【0019】
[8]前記差流量を測定する工程は、前記ステーブの前記冷却水配管の複数の配管系統のそれぞれにおける給水側の流量および排水側の流量を測定し、これらに基づいて差流量を測定する、[7]に記載のステーブ冷却水配管破損検知方法。
【0020】
[9]前記差流量を測定する工程は、前記給水流量計の給水流量値を基準として前記排水流量計の排水流量値が閾値を下回ることを検知された場合に、当該検知がなされた配管系統について、前記冷却水配管の破損により炉内浸水が生じたとする、[8]に記載のステーブ冷却水配管破損検知方法。
【0021】
[10]前記気泡混入を検知する工程に用いる前記気泡検知器は、内部にフロート式センサを有し、前記冷却水に気泡が混入した際に、内部の水位が下がることによりフロートが作動し、前記冷却水への気泡混入を検知する、[7]に記載のステーブ冷却水配管破損検知方法。
【0022】
[11]前記水位レベルを測定する工程は、前記ヘッドタンクの水位レベルの低下により、前記冷却水配管の破損による前記冷却水の漏出を検知する、[7]に記載のステーブ冷却水配管破損検知方法。
【0023】
[12]前記COガスを検知する工程は、前記冷却水に混入した炉内ガス中のCO濃度を測定して、その値が閾値以上のときに、前記冷却水配管の破損を検知する、[7]に記載のステーブ冷却水配管破損検知方法。
【0024】
[13]高炉炉体の壁部に設けられたステーブと、前記ステーブに冷却水を供給する冷却水供給設備と、前記ステーブの冷却水配管の破損を検知する[1]から[6]のいずれかに記載のステーブ冷却水配管破損検知装置と、を有する、高炉炉体冷却設備。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、差流量測定手段により冷却水配管の破損による炉内浸水を検知することができ、また、気泡検知器により冷却水配管の破損による冷却水配管内への気泡混入を検知することができるので、冷却水配管水圧と炉内圧力の関係によらず、ステーブの冷却水配管の破損検知が可能となる。また、これらの機器は全配管系統に設置しているため、破損した配管系統も知ることができる。加えて、ヘッドタンクに設置している水位レベル計とCOガス検知器により、配管の破損の大きさが小さい、また破損の幅が細い場合や、差流量が検知できないような場合でも、確実に冷却水配管の破損自体を検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る高炉炉体におけるステーブ冷却水配管破損検知装置を含む高炉炉体冷却設備を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るステーブ冷却水配管破損検知方法を示す工程図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るステーブ冷却水配管破損検知方法のフローの具体例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る高炉炉体におけるステーブ冷却水配管破損検知装置を含む高炉炉体冷却設備示す概略構成図である。
【0028】
高炉炉体冷却設備は、ステーブ1と、ステーブ1に冷却水を供給する冷却水供給設備2と、ステーブ冷却水配管破損検知装置3とを有する。
【0029】
ステーブ1は、高炉炉体10の炉壁に設けられている。炉壁は、鉄皮11の内側に耐火物12が内張りされて構成されており、ステーブ1は、耐火物12の内部に設けられている。ステーブ1は、冷却水配管13を母材で鋳込んだ構造を有しており、高さ方向に複数段積み重ねられている。冷却水配管13は複数の配管系統に分かれている。
【0030】
冷却水供給設備2は、ステーブ1の冷却水配管13に接続される冷却水循環配管21と、ヘッドタンク22と、循環ポンプ(図示せず)とを有している。冷却水循環配管21は、ステーブ1の冷却水配管13の入側および出側に接続され、冷却水配管13に冷却水を循環供給するようになっている。ヘッドタンク22は、冷却水循環配管21の途中に介装されており、その内部に冷却水が貯留されている。循環ポンプは冷却水循環配管21に設けられており、循環ポンプによりヘッドタンク22内の冷却水が、冷却水循環配管21を介して下段のステーブ1から順次上段のステーブ1に供給されるように冷却水配管13に通流され、冷却水配管13から排出された冷却水が、再びヘッドタンク22に戻るように循環される。冷却水循環配管21は、冷却水配管13の給水側および排出側において、複数の配管系統に対応するように複数に分岐している。
【0031】
ステーブ冷却水配管破損検知装置3は、給水流量計31と、排水流量計32と、気泡検知器33と、レベル計34aおよび34bと、COガス検知器35と、中央制御装置36とを有する。
【0032】
給水流量計31および排水流量計32は、冷却水配管13の複数の配管系統の供給側および排水側の流量を計測するものであり、これらは各配管系統の給水側流量と排水側流量の差流量を測定する差流量測定手段として機能する。給水流量計31は、冷却水配管13の複数の配管系統の給水側に接続された冷却水循環配管21の給水側部分にそれぞれ設けられている。また、排水流量計32は、冷却水配管13の複数の配管系統の排水側に接続された冷却水循環配管の排水側部分にそれぞれ設けられている。そして、給水流量計31の給水流量値を基準として排水流量計32の排水流量値が閾値を下回ることが検知された配管系統が、冷却水配管13の破損により炉内浸水が生じたとされる。
【0033】
気泡検知器33は、冷却水循環配管21の排水側に設けられ、気泡を検知するものである。気泡検知器33は、例えば、内部にフロート式センサを有するものを用いることができる。フロート式センサは、通常は冷却水が充填されているが気泡が混入した際に、内部の水位が下がることによりフロートが作動し、気泡の混入を検知する仕組みとなっている。
【0034】
レベル計34a、34bはヘッドタンク22に設置され、ヘッドタンク22内の水位レベルを測定する。冷却水配管13が破損して冷却水が漏出するとヘッドタンク22に戻る水量が減少することでヘッドタンク22内の水位レベルが低下するので、レベル計34a、34bにより水位レベルを測定することにより冷却水配管13の破損が検知される。
【0035】
COガス検知器35はヘッドタンク22に設置され、冷却水に混入した炉内ガス中のCO濃度を測定して、その値が閾値以上のときにCOガス検知状態とし、冷却水配管13の破損を検知する。
【0036】
中央制御装置36は、給水流量計31、排水流量計32の測定結果、気泡検知器33の検知状態、レベル計34a、34bの水位検知結果、COガス検知器35の検知結果を常時監視するものであり、これらから冷却水配管13の破損を判定し、アラーム等の必要な指令を発する。
【0037】
以上のように構成される高炉炉体冷却設備においては、高炉炉体に設けられたステーブ1の冷却水配管13に、冷却水供給設備2のヘッドタンク22から冷却水循環配管21を経て冷却水が循環供給され、高炉炉体の炉壁が冷却される。
【0038】
このとき、ステーブ1の冷却水配管13に破損が生じた場合に、ステーブ冷却水配管破損検知装置3により破損を検知する。
【0039】
ステーブ冷却水配管破損検知装置3においては、以下のようなステーブ冷却水配管破損検知方法を実施する。
図2は、本発明の一実施形態に係るステーブ冷却水配管破損検知方法を示す工程図である。
【0040】
本実施形態に係るステーブ冷却水配管破損検知方法は、
図2に示すように、各配管系統における差流量を測定する工程(ステップST1)と、排水側に設けられた気泡検知器33により冷却水への気泡混入を検知する工程(ステップST2)と、レベル計34aおよび34bによりヘッドタンク22の水位レベルを測定する工程(ステップST3)と、COガス検知器35により冷却水に混入した炉内ガス中のCOガスを検知する工程(ステップST4)とを有する。
図2におけるステップST1~ステップST4の順番は便宜上のものであり、これらの順番は問わない。
【0041】
ステップST1では、給水流量計31と排水流量計32による差流量をとることにより、冷却水配管13内の水圧が炉内圧力より高い場合に、冷却水配管13の破損により冷却水配管13から炉内へ冷却水が侵入したことを検知することができる。例えば、給水流量計31の給水流量値を基準として排水流量計32の排水流量値が閾値を下回ることが検知されることにより、冷却水配管13の破損により圧力が高い冷却水配管13から炉内へ冷却水が侵入したことを直接検知することができる。給水流量計31と排水流量計32は、全ての配管系統に対応して設けられているため、どの配管系統の冷却水配管が破損したかを容易に把握することができる。
【0042】
また、ステップST2では、排水側に設けられた気泡検知器33により冷却水への気泡混入を検知することで、冷却水配管13内の水圧が炉内圧力より低い場合に、冷却水配管13の破損により炉内ガスが冷却水配管13に侵入したことを検知することができる。
【0043】
このようにステップST1およびステップST2により、冷却水配管13内の水圧と炉内圧力の関係によらず、ステーブ冷却水配管破損検知が可能となる。
【0044】
ただし、給水流量計31と排水流量計32が不良、または流量値のハンチング等の何等かの理由で差流置が検知できない場合がある。そのような場合には、ステップST3において、レベル計34aおよび34bによりヘッドタンク22の水位レベルを測定することにより、冷却水配管13の破損により確実に減少するヘッドタンク22に戻る冷却水量を捉えることができ、冷却水配管13の破損自体を確実に検知することができる。
【0045】
また、ステップST2では、冷却水配管13の破損により、炉内ガスが冷却水配管内に混入し、その一部が気泡として気泡検知器33に溜まり始めるが、ある程度以上に大きい破損でなければ、検知が困難な場合や、例えばフロート式センサ等のセンサの作動に時間差が生じる場合がある。そのような場合には、ステップST4において、ヘッドタンク22に設けられたCOガス検知器35を作動させることにより、配管系統は特定できないものの、いち早く冷却水配管13の破損を検知することができる。ステップST4の後、気泡検知器33が作動すれば、ステップST2により冷却水配管13内への気泡混入を検知でき、気泡混入の配管系統も特定することができる。気泡検知器33が作動しない場合でも、CO検知器35により冷却水配管13の破損は検知されているので、破損が放置されることはない。
【0046】
本実施形態に係るステーブ冷却水配管破損検知方法のフローの具体的な例としては、
図3のフローチャートに示すようなものを挙げることができる。
図3の例では、中央制御装置36により、給水流量計31、排水流量計32の測定結果、気泡検知器33の検知状態、レベル計34a、34bの水位レベル検知結果、COガス検知器35の検知結果を常時監視し、以下のようにしてステーブ冷却水配管破損検知を行う。
【0047】
最初に、レベル計34a、34bによりヘッドタンク22の水位レベルを測定し、水位レベルが閾値以下か否かを判定する(ステップST11)。判定の結果、水位レベルが閾値以下である場合は、配管破損が生じたとして、給水流量計31の給水流量値を基準として排水流量計32の排水流量値が閾値を下回る配管系統があるか否かを判定する(ステップST12)。閾値を下回る配管系統があると判定された場合は、その配管系統が破損したとのアラームを発報する(ステップST13)。また、閾値を下回る配管系統が見つからない場合は、配管系統を特定せず、冷却水配管13に破損有りとのアラームを発報する(ステップST14)。
【0048】
また、ステップST11で水位レベルが閾値以下でない場合、ヘッドタンク22のCOガス検知器35がCOガス検知状態か否かを判定する(ステップST15)。COガス検知状態と判定された場合は、配管破損が生じたとして、気泡検知器33が気泡検知状態か否かを判定する(ステップST16)。気泡検知器33が気泡検知状態であると判定された場合は、特定の配管系統が破損したとのアラームを発報する(ステップST17)。また、気泡検知器33が気泡検知状態でないと判定された場合は、配管系統を特定せず、冷却水配管13に破損有りとのアラームを発報する(ステップST18)。
【0049】
ステップST11で水位レベルが閾値以下でなく、ステップST15でヘッドタンク22のCOガス検知器35がCOガス検知状態でない場合、配管破損無と判定する(ステップST19)。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、ステップST1の各配管系統における差流量を検知する工程と、ステップST2の気泡検知器33による冷却水への気泡混入を検知する工程により、冷却水配管水圧と炉内圧力の関係によらず、ステーブの冷却水配管の破損検知が可能である。給水流量計31と排水流量計32が不良、または流量値のハンチング等の何等かの理由で差流置が検知できない場合があるが、そのような場合でも、レベル計34aおよび34bによりヘッドタンク22の水位を検知することにより、冷却水配管13の破損を誤差なく確実に検知することができる。また、ステップST2による気泡検知器33による配管破損の検知は、破損が小さい場合や細い場合には、検知できないことや検知に時間がかかることがあるが、ステップST4において、ヘッドタンク22に設けられたCOガス検知器35を作動させることにより、冷却水配管13の破損が存在することを迅速に検知することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらはあくまで例示に過ぎず、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ステーブ
2 冷却水供給設備
3 ステーブ冷却水配管破損検知装置
10 高炉炉体
11 鉄皮
12 耐火物
13 冷却水配管
21 冷却水循環配管
22 ヘッドタンク
31 給水流量計
32 排水流量計
33 気泡検知器
34a,34b レベル計
35 COガス検知器
36 中央制御装置