(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101169
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】テスター及びテスターを収納するケース体
(51)【国際特許分類】
G01R 1/04 20060101AFI20250630BHJP
【FI】
G01R1/04 E
G01R1/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217813
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】大野 寛
(72)【発明者】
【氏名】竹田 修
(57)【要約】
【課題】テスターを収納するケース体の向きが変わっても、表示部を見やすくできるテスター及びこれを収納するケース体を提供する。
【解決手段】テスター本体61と測定値を表示する表示部62とテスター本体61を収納するケース体1とを備え、テスター本体61及び表示部62は前記ケース体1に対して回動機構25を介して回動自在に支持されており、ケース体1の向きが好ましくないときに、表示部62をケース体1に対して回動させて向きを変更できるようにした、ことを特徴とする。テスター。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テスター本体と測定値を表示する表示部とテスター本体を収納するケース体とを備え、
テスター本体及び表示部は前記ケース体に対して回動機構を介して回動自在に支持されており、
ケース体の向きが好ましくないときに、表示部をケース体に対して回動させて向きを変更できる、
ことを特徴とする。
【請求項2】
前記テスター本体に、これと一体的に回動する回動抑止体を設け、前記ケース体に、前記回動抑止体の回動軌跡上の位置にストッパ凸部を設け、テスターの回動角が90度になるように抑制され、かつ、前記回動抑止体とストッパ凸部が当接したときに当接状態が維持できるように係合部を設けた、
ことを特徴とする請求項1に記載のテスター。
【請求項3】
テスター本体及びその表示部を収納する収納するケース体であって、
一方の面が開口されたケース本体と、前記開口部を覆う蓋体とを有し、
前記蓋体は前記ケース本体に対して取外し可能なヒンジを介して取付けられているとともに、
前記蓋体の両面に、一方の面においては長手方向の側縁に、他方の面においては短手方向の側縁に、それぞれ用紙を挟むクリップを設けた、
ことを特徴とするテスターを収納するケース体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器全体の向きを変えたときでもテスターの表示部の向きを見やすい向きに変更できるテスター及びテスターを収納するケース体に関する。
【背景技術】
【0002】
変電設備の点検などの際には、各種計測器、テスター、配電盤等の開閉キーや目印用の各種札などを現場に持って行く必要があり、ツールボックスやケース体などが用いられる。一般的に、テスターなどをケース体に収納する場合、機器の破損を防止するため固定した状態で収納する。
【0003】
また、点検作業の持参物としては、点検内容など必要事項を記録用紙に記載するためのバインダー(紙ばさみ)も必要である。
【0004】
そして、ケース体の開閉蓋に用紙を挟むためのクリップが設けられていれば、バインダーとしての機能を果たし、持参物の点数を削減でき、便利である。
【0005】
ところで、記録用紙には縦向きの場合と横向きの場合とがあり、そのため、縦用と横用のバインダーを用意する必要がある。
【0006】
ケース体にクリップを設けた場合、記録用紙に縦向きと横向きとがあるため、その都度、ケース体の向きも縦向きや横向きに変える必要がある。
【0007】
テスターは、一般的には特許文献1に記載のように、箱状の本体に電圧表示部を備え、その中の指針が目盛の範囲内で回動するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載のテスターにあっては、箱状の本体に固定された状態で指針(表示部)が設けられているため、上述のようなケース体に収納した状態で、ケース体の向きを変えたとき、表示部の向きも変わってしまい、表示部が見にくくなってしまうという問題がある。
【0010】
そこでこの発明は、ケース体を縦向き、横向きに変えた場合でも、テスターの表示部(指針部)を簡単に90度回動可能として、表示部の視認性を高めることができるテスター及びテスターを収納するケース体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、テスター本体と測定値を表示する表示部とテスター本体を収納するケース体とを備え、テスター本体及び表示部は前記ケース体に対して回動機構を介して回動自在に支持されており、ケース体の向きが好ましくないときに、表示部をケース体に対して回動させて向きを変更できる、ことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載のテスターにおいて、前記テスター本体に、これと一体的に回動する回動抑止体を設け、前記ケース体に、前記回動抑止体の回動軌跡上の位置にストッパ凸部を設け、テスターの回動角が90度になるように抑制され、かつ、前記回動抑止体とストッパ凸部が当接したときに当接状態が維持できるように係合部が設けられて、ことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、テスター本体及びその表示部を収納する収納ケースであって、一方の面が開口されたケース本体と、前記開口部を覆う蓋体とを有し、前記蓋体は前記ケース本体に対して取外し可能なヒンジを介して取付けられているとともに、前記蓋体の両面に、一方の面においては長手方向の側縁に、他方の面においては短手方向の側縁に、それぞれ用紙を挟むクリップが設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、テスター本体及び表示部をケース体に対して回動機構を介して設けたので、ケース体の向きが悪く、収納されたテスターの表示部が見にくい場合でも、表示部をケース体に対して回動させることで、その向きを変えることができ、表示部を見やすくすることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、テスター本体に回動抑止体を、ケース体に回動抑止体の回動を抑止するストッパ凸部を設けたので、テスター本体及び表示部の回動を90度に抑制でき、必要な範囲での回動角に抑えたので、無駄な動きによるテスターの故障などを防止することができ、かつ、回動抑止体とストッパ凸部とが当接した状態を維持する係合部を設けたので、携帯時などでも、テスターが動くことはない。
【0016】
請求項3の発明によれば、請求項1及び2と同様に、テスターの向きを自由に変更できる収納するケース体であるとともに、その蓋体の両面に縦向き用紙及び横向き用紙を挟めるクリップを設けたので、バインダーとしての機能を備え、その分、作業に持参するものを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図2とともに、テスターを収納したケース体で、蓋体を開放した状態を示し、本図は縦向きの斜視図である。
【
図2】横向きで蓋体を開放した状態の斜視図である。
【
図3】蓋体を閉め、バインダーとして機能できるようにしたケース体の斜視図である。
【
図4】
図5とともに、蓋体をケース本体から取り外し、収納物を見せ、ヒンジの構成部品を示すもので、本図は縦向きの状態を示す正面図である。
【
図5】横向きで蓋体を取り外した状態を示す正面図である。
【
図6】蓋体のみを取り出し、バインダーとした状態の正面図である。
【
図7】ヒンジの構造を示すもので、(a)が蓋体を取り外した状態、(b)が蓋体を取り付けた状態を示す要部断面図である。
【
図8】ケース体を縦方向から見た側面図であり、(a)は蓋体を取り外した状態を、(b)は蓋体を締めた状態を、(c)は一方の側部をヒンジとして蓋体を開けた状態をそれぞれ示す。
【
図9】縦向きになったテスターとその回動機構を示し、(a)はテスターの正面図、(b)は斜視図である。
【
図10】縦向きに回動機構を示し、(a)正面図、(b)は側面図である。
【
図11】横向きになったテスターとその回動機構を示し、(a)はテスターの正面図、(b)は斜視図である。
【
図12】縦向きに回動機構を示し、(a)正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0019】
ケース体1は、一面が開放され、扁平な箱状をしたケース本体20と、ケース本体20の開口面を覆うように取り付けられた蓋体30とから成る。
【0020】
蓋体はケース本体20に対してその両側縁がそれぞれヒンジ4を介して取付けられ、左右両側縁のヒンジ4は分解可能な構造になっており、ヒンジ4を分解することで、蓋体30がケース本体20から着脱可能となっている。
【0021】
また、以下の説明において、方向、向きを言うときは、ケース体1の長手方向を前後方向、短手方向を左右方向、厚さ(高さ)方向を上下方向とする。また、向きについては、長手方向を水平方向に置いたときに横向き、長手方向を垂直方向に置いたときに縦向きとする。
【0022】
ケース体1には、札50、鍵51、ラベル52やその他作業の必要なものが収納されるほか、テスター6が収納されている。テスター6のリード棒7もケース体1内に収納される。
【0023】
テスター6は、テスター6の構成部品(テスター本体61、表示部(メーター)62など)が直接ケース本体20に取り付けられており、テスター6自体の筐体は設けられていない。テスター6については後述する。
【0024】
蓋体30は、紙ばさみ(バインダー)として機能するように、その両面にクリップ31が設けられている。クリップ31については後述する。
【0025】
ケース本体20の左右両側壁の上部開口縁であって前後両端部を除く部分に、やや幅広な厚肉部20aが形成され、厚肉部20aには上方に開口し前後方向に伸びる溝21が前後に分かれて形成されている。
【0026】
ケース本体20の厚肉部20aが形成されていない前後両端部に矩形の切欠部20bとなっている。
【0027】
蓋体30の四隅であって上記切欠部20bに対応する位置に、筒状体32が一体に形成されており、蓋体30をケース本体20に覆いかぶせたときに、筒状体32が上記ケース本体20の切欠部20bに位置するようになっている。
【0028】
厚肉部20aの溝21には前後に分かれてそれぞれスライダー22が前後に摺動自在に設けられ、前側のスライダー22には前方に伸びる挿入ピン23が、また、後方のスライダー22には後方に伸びる挿入ピン23がそれぞれ設けられている。
【0029】
各スライダー22は溝21内に設けられたバネ24により前側のスライダー22は前方に、後側のスライダー22は後方に、それぞれ付勢され、それぞれの挿入ピン23が厚肉部20aの前後両端部から切欠部20b側に突出するようになっている(
図7参考)。
【0030】
そして、スライダー22を前後方向の中央部側にスライドさせると、切欠部20bに突出した挿入ピン23が溝21側に引き込まれるようになっている。なお、詳細は省略するが、スライダー22が上方へ脱しないように溝21の上面はカバー体で覆われている。
【0031】
蓋体30の上記筒状体32にはスライダー22の挿入ピン23が挿入される挿入孔33が形成されている。
【0032】
蓋体30をその各筒状体32をケース本体20の四隅に切欠部20bに位置させるときは、スライダー22を前後方向の中央部側にスライドさせて(
図7(a)参考)、挿入ピン23を溝21側に引き込まれておき、蓋体30の筒状体32を切欠部20bに位置させたときに、スライダー22を前後両側にスライドさせることで、挿入ピン23が筒状体32の挿入孔33に挿入され、蓋体30がケース本体20に取付けられ、ケース本体20の開口を覆うようになっている。
【0033】
そして、左右前後の4つのスライダー22のうち、例えば、左側の2つのスライダー22を上記バネ24に抗するように前後方向の中央部側にスライドさせると(
図7(a)参考)その挿入ピン23が挿入孔33から抜け出て、右側の挿入ピン23と挿入孔33とは係合されたままになっているため、ヒンジ4として機能し、蓋体30をケース本体20の左側を開放することができる。
【0034】
もちろん、右側のスライダー22をスライドさせれば、左側の挿入ピン23と挿入孔33とがヒンジ4として機能し、ケース体2の右側を開放することができる。さらに、すべてのスライダー22を前後方向の中央部側にスライドさせ、挿入ピン23を筒状体32の挿入孔33から抜きことで、蓋体30はケース本体20から取り外すことができる。
【0035】
また、溝21には、スライダー22が挿入ピン23を抜く方向にスライドさせたとき、その状態を保持できるように、スライダー22と上記カバー体(図示せず)とにそれぞれ爪が形成され、ロック機構として機能するようになっている。
【0036】
テスター6は、円柱状のテスター本体61とテスター本体61の上部に設けられた表示部62とを備え、ケース本体20の底部に回動機構25を介して回動自在に取付けられている。
【0037】
具体的には、ケース本体20の底面に円柱状の軸26が設けられ、テスター本体61の底部に回動抑止体63が設けられており、この回動抑止体63の中心孔63aが上記軸26に嵌合することで、テスター6がケース本体20に回転自在に取付けられている。
【0038】
回動抑止体63は円形の一部を弓状に切り欠いた形状をしており、また、ケース体20底部には、回動抑止体63の軌跡上に中心角が90度の扇状をしたストッパ凸部27が設けられ、回動抑止体63の回動を90度に制限している。
【0039】
また、ストッパ凸部27には、回動抑止体63の当接面にそれぞれ係合突起27aが、回動抑止体63の当該箇所には係合凹部63bが、それぞれ設けられており、これにより、回動抑止体63とストッパ凸部27が当接したときに係合突起27aが係合凹部63bに係合し、その状態が保持されるようになっている。また、その係合を解くには、多少の力で行うことができ、要は、持ち運びの時や使用時に、テスター6がふらつかないようになっていればよい。
【0040】
テスター6には、リード棒7を挿すジャック8があるが、ジャック8はケース本体20の上面に固定されており、テスター本体61の底部から内部に配線コード81で接続されている。この配線コード81は多少余裕がある長さに形成されており、テスター本体61が回動しても、切断されることがないようになっている。
【0041】
ケース体1の蓋体の両面にはそれぞれ用紙などを挟むクリップ31が設けられ、一方の面には長手方向の側端部に、他方の面には短手方向の側端部に位置されている。
【0042】
そして、蓋体30の長手方向の側縁部にクリップ31hが設けられた面は横向きの用紙を挟むバインダーとして、短手方向の側縁部にクリップ31vが設けられた面は縦向きの用紙を挟むバインダーとして、機能する。
【0043】
横向きの用紙を使用する場合は、先ず、ケース体1を横向きにした状態にして、蓋体30の横向きクリップ31hに用紙を挟んだ後、ケース本体20と蓋体30との一方のヒンジ4を、スライダー22をスライドして開放し、他方のヒンジ4で蓋体30をケース本体20から開ける。
【0044】
次に、ケース本体20内のテスター6の表示部62が見やすい向きであるかを確認し、見やすい状態であればその状態のまま、テスター6で所定の機器の測定を行う。表示部62が見にくい状態であったときは、表示部62の上部を把持して90度回すことで、見やすい向きにすることができ、指針、目盛の読み間違いをなくし、精確な値を読み取ることができる。
【0045】
縦向きの用紙を使用するときは、蓋体30の左右のスライダー22をヒンジ4が分解できる方向にスライドさせ、蓋体30を一旦ケース本体20から取外し、反対側の面を表側として縦向きクリップ31vに用紙を挟み、その後は、横向き用紙を使用したときと同様に、テスター6の表示部の向きを見やすい向きにして、測定、表示部の読取、用紙への記入を行う。
【0046】
以上のように、本発明によれば、蓋体30(バインダー)への用紙の取り付けからテスター6による計測、測定、用紙への記入までの一連の動作の中で、ケース体1の向きを変えることなく行うことができ、作業の煩雑さを防止することができ、しかも、見やすい向きでテスター6を使用できるので、精確に、かつ、誤認識することなく正確な値を求めることができる。
【0047】
なお、上記実施の形態においては、ケース体20を点検作業を行う際に用いされる札50、鍵52、各種ラベル53を収納するケース体20として説明したが、本発明はこれに限らず、テスター6自体の専用のケース体であっても良い。要は、そのテスター6を使用する際に何らかの理由でケース体1の向きを固定せざるを得ず、その向きによっては表示部62が見にくくなってしまうことがあるには、ケース体1に対して表示部62の向きを変更できるようにすることは有効である。
【符号の説明】
【0048】
1 ケース体
20 ケース本体
25 回動機構
26 軸
27 ストッパ凸部
27a 係合突起
30 蓋体
31v クリップ縦向き
31h クリップ横向き
4 ヒンジ
6 テスター
61 テスター本体
62 表示部(メーター)
63 回動抑止体
63a 中心孔
63b 係合凹部