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特開2025-101187重合開始剤組成物、重合性組成物、および硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101187
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】重合開始剤組成物、重合性組成物、および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/32 20060101AFI20250630BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20250630BHJP
   C07D 251/22 20060101ALN20250630BHJP
【FI】
C08F4/32
C08F2/50
C07D251/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217840
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 瑛
(72)【発明者】
【氏名】今井 奨
(72)【発明者】
【氏名】矢野 章世
【テーマコード(参考)】
4J011
4J015
【Fターム(参考)】
4J011QA22
4J011RA03
4J011SA76
4J011SA78
4J011SA83
4J011TA03
4J011UA01
4J011UA02
4J011VA01
4J011WA01
4J015BA03
(57)【要約】
【課題】感度に優れながらも良好な線幅再現性が得られる重合開始剤組成物を提供すること。
【解決手段】一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体(a-1)と、一般式(3)で表されるトリアジン化合物(a-2)を含有し、前記トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)のArと前記トリアジン化合物(a-2)のArが、ArおよびArである、ArおよびArである、またはArおよびArである組み合わせである重合開始剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
((一般式(1)中、RおよびRは独立してメチル基またはエチル基、Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表し、Rは置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。Arは下記一般式(2):Ar、Ar、またはArで表されるアリール基である。)
【化2】
(一般式(2)中、mは0から3の整数を表し、R11は独立した置換基であって、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。))で表されるトリアジンペルオキシド誘導体(a-1)と、
一般式(3):
【化3】
((一般式(3)中、RおよびRは独立して置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、塩素原子、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。Arは下記一般式(4):Ar、Ar、またはArで表されるアリール基である。)
【化4】
(一般式(4)中、nは0から3の整数を表し、R12は独立した置換基であって、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。))で表されるトリアジン化合物(a-2)を含有し、
前記トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)のArと前記トリアジン化合物(a-2)のArが、ArおよびArである、ArおよびArである、またはArおよびArである組み合わせであることを特徴とする重合開始剤組成物。
【請求項2】
さらに、
一般式(5):
【化5】
((一般式(5)中、RおよびRは独立してメチル基またはエチル基、Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。Arは下記一般式(6):Ar、Ar、またはArで表されるアリール基である。)
【化6】
(一般式(6)中、lは0から3の整数を表し、R13は独立した置換基であって、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。))で表されるトリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)を含有し、
前記トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)のArと前記トリアジン化合物(a-2)のArと前記トリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)のArが、Ar、Ar、およびArである、Ar、Ar、およびArである、またはAr、Ar、およびArである組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の重合開始剤組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の重合開始剤組成物、およびラジカル重合性化合物(B)を含有することを特徴とする重合性組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の重合性組成物から形成されることを特徴とする硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合開始剤組成物、重合性組成物、および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子等を合成するために、熱または光、酸化-還元により、ラジカル、カチオン、アニオン等の活性種を発生させることのできる重合開始剤が広く用いられている。特に、光重合開始剤は、光等の活性エネルギー線を吸収することで活性種を発生させることができ、重合性化合物の重合開始剤として利用される。
【0003】
上記のような光重合開始剤と重合性化合物からなる重合性組成物は、光照射により速やかに硬化するため、速硬化性や低VOC等の観点から、コーティング剤や塗料、印刷インキ、感光性印刷版、接着剤、各種フォトレジスト等の用途に適用されている。
【0004】
近年では、光重合開始剤として、アシルホスフィンオキシドやα-ヒドロキシケトンなど様々な化合物が使用されている。一方で、重合開始剤として、高圧水銀ランプやLED等のランプから放出される波長365nm等の光を効率よく吸収してラジカルを発生できる光重合性と、熱によりラジカルを発生できる熱重合性を併せ持ち、かつ良好な長期保存安定性を有するトリアジンペルオキシド誘導体が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2023/054225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年ではウェアラブルデバイス等の電子機器の小型化に伴い、パターンの高密度化や、透過率や視認性が高い微細配線を透明基板上に形成することが求められ、より高感度な光重合開始剤の需要が高まっている。しかしながら、光重合開始剤の高感度化は、パターンのにじみや線太りなどの問題を誘発する場合があり、高い感度と良好なパターン転写性(線幅再現性とも称す。)を両立可能な光重合開始剤が求められている。上記課題に対して特許文献1には改善の余地があった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明は、感度に優れながらも良好な線幅再現性が得られる重合開始剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、一般式(1):
【化1】
((一般式(1)中、RおよびRは独立してメチル基またはエチル基、Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表し、Rは置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。Arは下記一般式(2):Ar、Ar、またはArで表されるアリール基である。)
【化2】
(一般式(2)中、mは0から3の整数を表し、R11は独立した置換基であって、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。))で表されるトリアジンペルオキシド誘導体(a-1)と、一般式(3):
【化3】
((一般式(3)中、RおよびRは独立して置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、塩素原子、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。Arは下記一般式(4):Ar、Ar、またはArで表されるアリール基である。)
【化4】
(一般式(4)中、nは0から3の整数を表し、R12は独立した置換基であって、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。))で表されるトリアジン化合物(a-2)を含有し、前記トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)のArと前記トリアジン化合物(a-2)のArが、ArおよびArである、ArおよびArである、またはArおよびArである組み合わせである重合開始剤組成物に関する。
【0009】
さらに、本発明は、一般式(5):
【化5】
((一般式(5)中、RおよびRは独立してメチル基またはエチル基、Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。Arは下記一般式(6):Ar、Ar、またはArで表されるアリール基である。)
【化6】
(一般式(6)中、lは0から3の整数を表し、R13は独立した置換基であって、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。))で表されるトリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)を含有し、
前記トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)のArと前記トリアジン化合物(a-2)のArと前記トリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)のArが、Ar、Ar、およびArである、Ar、Ar、およびArである、またはAr、Ar、およびArである組み合わせであることが好ましい前記重合開始剤組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、前記重合開始剤組成物、およびラジカル重合性化合物(B)を含有する重合性組成物に関する。
【0011】
さらに、本発明は、前記重合性組成物から形成される硬化物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トリアジンペルオキシド誘導体と特定のトリアジン化合物を含有する重合開始剤組成物を用いることで、感度に優れながらも良好な線幅再現性が得られる重合性組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<重合開始剤組成物>
本発明の重合開始剤組成物(重合開始剤組成物(A)とも称す。)は、下記一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体(a-1)と、下記一般式(3)で表されるトリアジン化合物(a-2)を含有し、下記トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)のArと下記トリアジン化合物(a-2)のArが、ArおよびArである、ArおよびArである、またはArおよびArである組み合わせであることを特徴とする。前記重合開始剤組成物(A)は、活性エネルギー線または熱により分解し、発生したラジカルが後述するラジカル重合性化合物(B)の重合(硬化)を開始する働きを有する。トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。また、トリアジン化合物(a-2)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0014】
<トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)>
本発明のトリアジンペルオキシド誘導体(a-1)は、下記一般式(1)で表すことができる。
【化7】
((一般式(1)中、RおよびRは独立してメチル基またはエチル基、Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表し、Rは置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。Arは下記一般式(2):Ar、Ar、またはArで表されるアリール基である。)
【化8】
(一般式(2)中、mは0から3の整数を表し、R11は独立した置換基であって、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。))
【0015】
一般式(1)中、RおよびRは独立してメチル基またはエチル基を表し、前記トリアジンペルオキシド誘導体の過酸化結合の分解温度が高く、重合性組成物の保存安定性が高くなる観点から、メチル基が好ましい。
【0016】
一般式(1)中、Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。前記アルキル基は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、フェニル基、イソプロピルフェニル基等が挙げられる。これらの中でも、前記トリアジンペルオキシド誘導体の合成が容易である観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、フェニル基であることが好ましい。
【0017】
一般式(1)中、Rは置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。上記のRはトリアジンペルオキシド誘導体の吸収波長への影響が小さいため、Rが上記の広範囲であっても、良好な感度を発現する。また、上記の「置換されていてもよい」における「置換基」には、ハロゲン原子、炭素骨格中にエーテル結合やチオエーテル結合を有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環含有基、アシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基などが包含される。上記のRは、重合性組成物の保存安定性が高い観点から、好ましくは、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、または-Y-Rであり、合成が容易である観点から、より好ましくは、-O-Rであって、Rは置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基である。
【0018】
一般式(2)中、mは0から3の整数を表され、合成が容易である観点から、mが0から2であることが好ましく、光を効率よく吸収する観点から、mが1であることがより好ましい。
【0019】
一般式(2)中、R11は置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。また、R11は、隣接する2つの前記-Y-Rにより5~6員環を形成していてもよい。上記の「置換されていてもよい」における「置換基」には、ハロゲン原子、炭素骨格中にエーテル結合やチオエーテル結合を有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環含有基、アシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基などが包含される。上記のR11はトリアジンペルオキシド誘導体の吸収波長への影響が小さいため、R11が上記の広範囲であっても、良好な感度を発現する。上記のR11は、光に対する感度が高い点から、好ましくは、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、-Y-R、であり、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基である。
【0020】
本発明のトリアジンペルオキシド誘導体(a-1)の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【化9】
【0021】
本発明のトリアジンペルオキシド誘導体(a-1)としては、化合物19、化合物23、化合物25、化合物26、化合物27、化合物31、化合物32、化合物33、化合物35、化合物37、化合物38、化合物39、化合物43、化合物44、化合物45、化合物46、化合物47、化合物48、化合物49、化合物50、化合物51、化合物52、化合物53、化合物54、化合物55、化合物56、化合物57、化合物60、化合物61、化合物73、化合物77、化合物78、化合物79、化合物81が好ましい。
【0022】
<トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)の製造方法>
前記一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体(a-1)の製造方法は、特に限定されず、例えば、WO2023/054225号を参考にすればよい。
【0023】
<トリアジン化合物(a-2)>
本発明のトリアジン化合物(a-2)は、下記一般式(3)で表される。
【化10】
((一般式(3)中、RおよびRは独立して置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、塩素原子、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。Arは下記一般式(4):Ar、Ar、またはArで表されるアリール基である。)
【化11】
(一般式(4)中、nは0から3の整数を表し、R12は独立した置換基であって、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。))
【0024】
一般式(3)中、RおよびRは独立して置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、塩素原子、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。上記のRおよびRはトリアジン化合物の吸収波長への影響が小さいため、RおよびRが上記の広範囲であっても、良好な線幅再現性を発現する。また、上記の「置換されていてもよい」における「置換基」には、ハロゲン原子、炭素骨格中にエーテル結合やチオエーテル結合を有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環含有基、アシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基などが包含される。上記のRおよびRは、重合性組成物の保存安定性が高い観点から、好ましくは、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、塩素原子、または-Y-Rであり、合成が容易である観点から、より好ましくは、塩素原子、または-O-Rであって、Rは置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、または水素原子である。
【0025】
一般式(4)中、nは0から3の整数を表され、合成が容易である観点から、nが0から2であることが好ましく、光を効率よく吸収する観点から、nが1であることがより好ましい。
【0026】
一般式(4)中、R12は置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。また、R12は、隣接する2つの前記-Y-Rにより5~6員環を形成していてもよい。上記の「置換されていてもよい」における「置換基」には、ハロゲン原子、炭素骨格中にエーテル結合やチオエーテル結合を有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環含有基、アシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基などが包含される。上記のR12はトリアジン化合物の吸収波長への影響が小さいため、R12が上記の広範囲であっても、良好な線幅再現性を発現する。上記のR12は、線幅再現性の観点から、好ましくは、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、-Y-R、であり、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基である。
【0027】
前記トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)のArと前記トリアジン化合物(a-2)のArは、ArおよびArである、ArおよびArである、またはArおよびArである組み合わせである。前記トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)のArと前記トリアジン化合物(a-2)のArが上記の組み合わせであることにより、前記トリアジン化合物(a-2)は、前記トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)と同様の光吸収特性を示す。これにより、トリアジンペルオキシド誘導体の光吸収が抑制され、トリアジンペルオキシド誘導体の分解によるラジカル発生量が適切に保たれるため、線太りが抑えられ微細パターンの形成が可能となる。前記トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)のArと前記トリアジン化合物(a-2)のArは、線幅再現性の観点から、好ましくは、ArおよびArが同一構造である、ArおよびArが同一構造である、またはArおよびArが同一構造である組み合わせである。
【0028】
前記トリアジン化合物(a-2)は、前記重合開始剤組成物(A)に含まれる重合開始剤成分100質量部において、感度の観点から、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、そして、線幅再現性の観点から、0.3質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、前記トリアジン化合物(a-2)と、前記トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)との重量比(a-2)/(a-1)は、感度の観点から、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、そして、線幅再現性の観点から、0.001以上が好ましく、0.01以上がより好ましい。
【0029】
本発明のトリアジン化合物(a-2)の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【化12】
【0030】
本発明のトリアジン化合物(a-2)としては、化合物100、化合物104、化合物106、化合物107、化合物108、化合物112、化合物113、化合物115、化合物117、化合物118、化合物119、化合物123、化合物124、化合物125、化合物126、化合物127、化合物128、化合物129、化合物130、化合物131、化合物132、化合物133、化合物135、化合物136、化合物137、化合物149、化合物153、化合物154、化合物155、化合物157が好ましい。
【0031】
<トリアジン化合物(a-2)の製造方法>
前記一般式(3)で表されるトリアジン化合物(a-2)の製造方法は、例えば、下記反応式のように、塩化シアヌル誘導体を得る工程(以下、工程(A)とも称す)と、続いて、得られた塩化シアヌル誘導体から、トリアジン化合物Iおよびトリアジン化合物IIを得る工程(以下、工程(B)および(C)とも称す)を含む方法が挙げられる。なお、上記の各工程は、順番が限定されず、また、各工程は同時に行ってもよい。各工程の前後には、余剰の原料等を減圧留去(除去)する工程や、精製工程を含んでもよい。
【化13】
(上記反応式において、R、RおよびArは前記一般式(3)と同じである。)
【0032】
前記工程(B)および(C)において、前記塩化シアヌル誘導体および前記トリアジン化合物は、市販品を利用できる。なお、市販品がない場合、前記工程(A)、(B)および(C)において、グリニャール反応、リチオ化反応、鈴木カップリング反応、またはフリーデル・クラフツ反応、アルカリ存在下での求核置換反応等の公知の合成法に準じて合成することができる。
【0033】
<グリニャール反応による塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の合成>
前記工程(A)、(B)および(C)において、グリニャール反応により、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を合成する場合、特開平6-179661号公報等に記載の公知の合成法に準じて合成することができる。前記工程(A)におけるAr-Xおよび、前記工程(B)および(C)におけるR-XおよびR-XのXが、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子で表されるハロゲン化合物を使用することができる。ハロゲン化合物とマグネシウムを反応させることでグリニャール試薬を調製し、次いで得られたグリニャール試薬を塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物と反応させることにより塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を合成することができる。
【0034】
上記のグリニャール試薬の調製において、マグネシウムは、ハロゲン化合物1モルに対して、0.8から2.0モル用いることが好ましく、1から1.5モル用いることがより好ましい。反応開始剤として、ヨウ素、ブロモエタン、ジブロモエタン等を用いてもよく、ハロゲン化合物1モルに対して、0.0001から0.01モル用いることが好ましい。反応温度は0から70℃が好ましく、10から60℃がより好ましい。反応時間は30分から20時間が好ましく、1時間から10時間がより好ましい。
【0035】
上記のグリニャール試薬の調製において、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の溶媒を用いることができる。
【0036】
また、上記のグリニャール試薬と、塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の反応において、塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物は、ハロゲン化合物1モルに対して、0.7から1.5モル用いることが好ましく、0.8から1.2モル用いることがより好ましい。反応温度は-30から70℃が好ましく、-10から40℃がより好ましい。反応時間は10分から20時間が好ましく、30分から15時間であることがより好ましい。なお、調製したグリニャール試薬に塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を投入してもよく、塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の溶液にグリニャール試薬を投入してもよい。
【0037】
上記のグリニャール試薬と塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の反応において、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の溶媒を用いることができる。
【0038】
<リチオ化反応による塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の合成>
前記工程(A)、(B)および(C)において、リチオ化反応により、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を合成する場合、WO2012/096263公報等に記載の公知の合成法に準じて合成することができる。前記工程(A)におけるAr-Xおよび、前記工程(B)および(C)におけるR-XおよびR-XのXが、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子で表されるハロゲン化合物を使用することができる。ハロゲン化合物とリチオ化剤を反応させることでリチオ化合物を調製し、次いで得られたリチオ化合物と塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を反応させることにより塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を合成することができる。
【0039】
前記リチオ化剤としては、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等のアルキルリチウム類;フェニルリチウム等のアリールリチウム類;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド等のリチウムアミド類を挙げることができ、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、フェニルリチウムであることが好ましい。
【0040】
上記のリチオ化合物の調製において、リチオ化剤は、ハロゲン化合物1モルに対して、0.8から3.0モル用いることが好ましく、1.0から2.2モル用いることがより好ましい。反応温度は-100から50℃が好ましく、-80から0℃がより好ましい。反応時間は0.2から20時間が好ましく、0.5から10時間がより好ましい。
【0041】
上記のリチオ化合物の調製において、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の溶媒を用いることができる。
【0042】
また、上記のリチオ化合物と塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の反応において、塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物は、ハロゲン化合物1モルに対して、0.7から1.5モル用いることが好ましく、0.8から1.2モル用いることがより好ましい。反応温度は-30から70℃が好ましく、-10から40℃がより好ましい。反応時間は10分から10時間が好ましく、30分から5時間であることがより好ましい。なお、調製したリチオ化合物に塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を投入してもよく、塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の溶液にリチオ化合物を投入してもよい。
【0043】
上記のリチオ化合物と塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の反応において、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の溶媒を用いることができる。
【0044】
<鈴木カップリングによる塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の合成>
前記工程(A)、(B)および(C)において、鈴木カップリング反応により、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を合成する場合、WO2012/096263公報等に記載の公知の合成法に準じて合成することができる。例えば、前述のリチオ化合物をホウ素試薬と反応させることによって、前記工程(A)におけるAr-Xおよび、前記工程(B)および(C)におけるR-XおよびR-XのXが、ボロニル基またはボロン酸に変換されたホウ素化合物を合成することができる。次いで得られたホウ素化合物を塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物と反応させることにより塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を合成することができる。なお、ホウ素化合物の市販品が販売されている場合、そのまま使用することができる。
【0045】
前記ホウ素試薬としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリイソプロピル、2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン等が挙げられる。
【0046】
上記のホウ素化合物の合成において、ホウ素試薬は、リチオ化合物1モルに対して、0.8から3.0モル用いることが好ましく、1.0から2.0モル用いることがより好ましい。反応温度は-100から50℃が好ましく、-80から20℃がより好ましい。反応時間は10分から20時間が好ましく、30分から10時間がより好ましい。
【0047】
上記のホウ素化合物の合成において、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の溶媒を用いることができる。
【0048】
また、上記のホウ素化合物と塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の反応において、塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物は、ホウ素化合物1モルに対して、0.7から1.5モル用いることが好ましく、0.8から1.2モル用いることがより好ましい。反応温度は-30から70℃が好ましく、-10から40℃がより好ましい。反応時間は10分から10時間が好ましく、30分から5時間であることがより好ましい。なお、ホウ素化合物に塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を投入してもよく、塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の溶液にホウ素化合物を投入してもよい。
【0049】
上記のホウ素化合物と塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の反応において、パラジウム触媒およびアルカリを用いることが好ましく、必要に応じて配位子を添加しても良い。
【0050】
前記パラジウム触媒としては、酢酸パラジウム、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、(ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウムジクロリド-塩化メチレン錯体等が挙げられる。
【0051】
前記アルカリとしては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属塩等の無機塩基;トリエチルアミン等の有機塩基が挙げられる。
【0052】
前記配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフタレン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,6’-ジメトキシビフェニル等の有機リン系配位子等が挙げられる。
【0053】
上記のホウ素化合物と塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の反応において、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類;メタノール、2-プロパノール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類等の有機溶媒を用いることができる。前記有機溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。さらに、前記有機溶媒と水との混合溶媒を用いることができる。
【0054】
<フリーデル・クラフツ反応による塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の合成>
前記工程(A)、(B)および(C)において、フリーデル・クラフツ反応により、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を合成する場合、US5322941公報等に記載の公知の合成法に準じて合成することができる。前記工程(A)におけるAr-Xおよび、前記工程(B)および(C)におけるR-XおよびR-XのXが、水素原子で表される芳香族化合物を使用することができる。塩化アルミニウム等のルイス酸の存在下、芳香族化合物と塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を反応させることにより塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を合成することができる。
【0055】
前記ルイス酸としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化鉄(III)、塩化チタン(IV)、塩化スズ(IV)、塩化亜鉛、ビスマス(III)トリフラート、ハフニウム(IV)トリフラート、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体等を用いることができる。
【0056】
上記の芳香族化合物と塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の反応において、塩化シアヌルは、芳香族化合物1モルに対して、0.7から2.5モル用いることが好ましく、0.8から1.5モル用いることがより好ましい。塩化アルミニウムは、芳香族化合物1モルに対して、1.0から3.0モル用いることが好ましく、1.0から2.0モル用いることがより好ましい。反応温度は-50から60℃が好ましく、0から40℃がより好ましい。反応時間は10分から10時間が好ましく、30分から5時間であることがより好ましい。なお、芳香族化合物と塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の溶液に塩化アルミニウムを加えてもよく、塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物と塩化アルミニウムの溶液に芳香族化合物を加えてもよく、芳香族化合物と塩化アルミニウムの溶液に塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物を加えてもよい。
【0057】
上記の芳香族化合物と塩化シアヌル、塩化シアヌル誘導体およびトリアジン化合物の反応において、例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、キシレン等の溶媒を用いることができる。
【0058】
前記重合開始剤組成物(A)は、下記一般式(4)で表されるトリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)を含有してもよい。前記トリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。前記トリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)を使用する場合、前記トリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)は、前記重合開始剤組成物(A)に含まれる重合開始剤成分100質量部において、感度の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、そして、重合性組成物の保存安定性の観点から、70質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。
【0059】
<トリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)>
本発明のトリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)は、下記一般式(5)で表される。
【化14】
((一般式(5)中、RおよびRは独立してメチル基またはエチル基、Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。Arは下記一般式(6):Ar、Ar、またはArで表されるアリール基である。)
【化15】
(一般式(6)中、lは0から3の整数を表し、R13は独立した置換基であって、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。))
【0060】
一般式(5)中、RおよびRは独立してメチル基またはエチル基を表し、前記トリアジンジペルオキシド誘導体の過酸化結合の分解温度が高く、重合性組成物の保存安定性が高くなる観点から、メチル基が好ましい。
【0061】
一般式(5)中、Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。前記アルキル基は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、フェニル基、イソプロピルフェニル基等が挙げられる。これらの中でも、前記トリアジンジペルオキシド誘導体の合成が容易である観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、フェニル基であることが好ましい。前記トリアジンジペルオキシド誘導体の過酸化結合の分解温度が高いため重合性組成物の保存安定性が高くなり、光に対する感度が高い点から、メチル基、エチル基であることがより好ましい。
【0062】
一般式(6)中、lは0から3の整数を表され、合成が容易である観点から、lが0から2であることが好ましく、光を効率よく吸収する観点から、lが1であることがより好ましい。
【0063】
一般式(6)中、R13は置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基、置換されていてもよい炭素数1~20のアシル基、-Y-R、または-N-RR’であって、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基を表す。また、R13は、隣接する2つの前記-Y-Rにより5~6員環を形成していてもよい。上記の「置換されていてもよい」における「置換基」には、ハロゲン原子、炭素骨格中にエーテル結合やチオエーテル結合を有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環含有基、アシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基などが包含される。上記のR13はトリアジンジペルオキシド誘導体の吸収波長への影響が小さいため、R13が上記の広範囲であっても、良好な感度を発現する。上記のR13は、光に対する感度が高い点から、好ましくは、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、-Y-R、であり、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、RおよびR’は独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数2~20の複素環含有基である。
【0064】
本発明のトリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【化16】
【0065】
本発明のトリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)としては、化合物176、化合物180、化合物182、化合物183、化合物184、化合物188、化合物189、化合物190、化合物192、化合物194、化合物195、化合物196、化合物200、化合物201、化合物202、化合物203、化合物204、化合物205が好ましい。
【0066】
<トリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)の製造方法>
前記一般式(4)で表されるトリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)の製造方法は、特に限定されず、例えば、WO2018/221177号を参考にすればよい。
【0067】
また、前記重合開始剤組成物(A)は、上記の(a-1)~(a-3)成分以外の重合開始剤(以下、他の重合開始剤とも称す)を含有することができる。吸収帯の異なる2種類以上のトリアジンペルオキシド誘導体や他の重合開始剤を使用することで、例えば、高圧水銀ランプ等の複数の波長の光が放射されるランプに対し、重合性組成物の高感度化を図ることができる。また、重合性組成物に含まれるラジカル重合性化合物(B)の重合性、重合性組成物に含まれる光の吸収や散乱を招く顔料等の種類、硬化物の膜厚等を考慮して、他の重合開始剤を用いることで、重合性組成物の表面硬化性や深部硬化性、透明性等を改良することができる。
【0068】
前記他の重合開始剤としては、公知のものが使用でき、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオフェノン、4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒロドキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン等のα―ヒドロキシアセトフェノン誘導体;2-メチル-4’-メチルチオ-2-モルホリノプロピオフェノン、2-ベンジル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン等のα―アミノアセトフェノン誘導体;ジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(メシチルカルボニル)フェニルホスフィナート等のアシルホスフィンオキサイド誘導体;1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[({1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エチリデン}アミノ)オキシ]エタノン、〕、[8-[5-(2,4,6-トリメチルフェニル)-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾイル]][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メタノン-(O-アセチルオキシム)、1-[4-[4-(2-ベンゾフラニルカルボニル)フェニル]チオ]フェニル-4-メチル-1-ペンタノン-1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル誘導体;2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)1,3,5-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチルトリアジン誘導体;2,2-ジメトキシ-2-フエニルアセトフエノン等のベンジルケタール誘導体;イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、4-(4-メチルフェニルチオ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;3-ベンゾイルー7-ジエチルアミノクマリン、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)等のクマリン誘導体;2-(2-クロロフェニル)-1-[2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニル-1,3-ジアゾール-2-イル]-4,5-ジフェニルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;3,3’、4,4’-テトラキス(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-(1-tert-ブチルパーオキシ-1-メチルエチル)-9H-チオキサンテン-9-オン、ジベンゾイルペルオキシド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;カンファーキノン等が挙げられる。他の重合開始剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0069】
なお、前記重合開始剤組成物(A)に、前記他の重合開始剤を含む場合、他の重合開始剤の割合は、重合開始剤組成物(A)中、80質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0070】
<重合性組成物>
本発明の重合性組成物は、重合開始剤組成物(A)およびラジカル重合性化合物(B)を含有する。また、重合性組成物は、その他の成分を適宜組み合わせて含有させることができる。
【0071】
<ラジカル重合性化合物(B)>
本発明のラジカル重合性化合物(B)としては、エチレン性不飽和基を有する化合物を好ましく用いることができる。ラジカル重合性化合物(B)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、マレイン酸エステル類、フマル酸エステル類、イタコン酸エステル類、桂皮酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、ビニルケトン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、N-置換マレイミド類、N-ビニル化合物類、不飽和ニトリル類、オレフィン類等が挙げられる。これらの中でも、反応性が高い(メタ)アクリル酸エステル類を含むことが好ましい。ラジカル重合性化合物(B)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0072】
前記(メタ)アクリル酸エステル類は、単官能化合物および多官能化合物を使用することができる。単官能化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2―エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル化合物;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有するモノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等の鎖状または環状のエーテル結合を有するモノマー等;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等の窒素原子を有するモノマー;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するモノマー;リン酸2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル等のリン原子を有するモノマー;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のケイ素原子を有するモノマー;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有するモノマー;(メタ)アクリル酸、コハク酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、マレイン酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有するモノマー等が挙げられる。
【0073】
前記多官能化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル)フルオレン、等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-(メタ)アクリロイルチオフェニル)スルフィド、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸ジルコニウム、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0074】
前記(メタ)アクリル酸エステル類は、重合性組成物の感度の向上、酸素阻害の低減や、硬化物の塗膜の機械的強度や硬度、耐熱性、耐久性、耐薬品性の向上の観点から、前記多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物が好ましく、特に、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
【0075】
なお、前記重合性組成物は、前記ラジカル重合性化合物(B)から得られた共重合体を加えることができる。
【0076】
前記重合性組成物において、前記重合開始剤組成物(A)の含有量は、ラジカル重合性化合物(B)100質量部に対して、0.1から40質量部であることが好ましく、0.5から20質量部であることがより好ましく、1から15質量部であることがさらに好ましい。重合開始剤組成物(A)の含有量は、ラジカル重合性化合物(B)100質量部に対して、0.1質量部未満では硬化反応が進行しないため好ましくない。また、重合開始剤組成物(A)の含有量は、ラジカル重合性化合物(B)100質量部に対して、40質量部より多い場合、ラジカル重合性化合物(B)への溶解度が飽和に達し、重合性組成物の成膜時に重合開始剤組成物(A)の結晶が析出し、皮膜表面の荒れが問題になる場合や、重合開始剤組成物(A)の分解残渣の増加により、硬化物の塗膜の強度が低下する場合があるため、好ましくない。
【0077】
<アルカリ可溶性樹脂(C)>
前記重合性組成物は、さらにアルカリ可溶性樹脂(C)を配合することにより、ネガ型レジストとして好適に使用することができる。アルカリ可溶性樹脂(C)としては、ネガ型レジストに一般的に使用されるものを用いることができ、アルカリ水溶液に可溶な樹脂であれば特に限定されないが、カルボキシル基を含む樹脂であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂(C)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0078】
本発明のアルカリ可溶性樹脂(C)には、例えば、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物、カルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂等が好ましく使用される。
【0079】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物は、前述の(メタ)アクリル酸エステル類の単官能化合物から選ばれる少なくとも1種(但し、前記カルボキシル基を有するモノマーを除く)と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の二量体、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル安息香酸、桂皮酸、コハク酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、マレイン酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、およびそれらの酸無水物等のエチレン性不飽和基含有カルボン酸から選ばれる少なくとも1種を含む共重合物である。
【0080】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物としては、例えば、メチルメタクリレートと、シクロヘキシルメタクリレートと、メタクリル酸の共重合物等が挙げられる。さらに、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等が共重合されても良い。
【0081】
また、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物は、ネガ型レジストの現像性と耐熱性、硬度、耐薬品性等の被膜特性を両立させる観点から、エチレン性不飽和基等の反応性基が側鎖に導入されたカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物も好ましく使用される。上記の側鎖にエチレン性不飽和基を導入する方法として、例えば、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物のカルボキシル基の一部に、グリシジル(メタ)アクリレート等の分子内にエポキシ基とエチレン性不飽和基を有する化合物を付加させる方法や、エポキシ基およびカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物に、メタクリル酸等のエチレン性不飽和基含有モノカルボン酸を付加させる方法や、水酸基およびカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物に、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等の分子内にイソシアネート基とエチレン性不飽和基を有する化合物を付加させる方法等が挙げられる。
【0082】
前記カルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂としては、エポキシ化合物と前記エチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応物であるエポキシアクリレート樹脂に、更に酸無水物を反応させた化合物が好適である。
【0083】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、(o,m,p-)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビスフェニルフルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0084】
前記酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水クロレインド酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物、ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0085】
さらに、カルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂の合成の際に、必要に応じて、無水トリメリット酸等のトリカルボン酸無水物を用いて、反応後に残った酸無水物基を加水分解することにより、カルボキシル基を増やすことができる。また、エチレン性不飽和基含有の無水マレイン酸を用いて、更にエチレン性二重結合を増やすこともできる。
【0086】
前記アルカリ可溶性樹脂(C)の酸価は、20から300mgKOH/gであることが好ましく、40から180mg/KOHであることがさらに好ましい。酸価が20mgKOH/gよりも少ない場合、アルカリ水溶液への溶解性が乏しいため、未露光部の現像が困難となるため好ましくない。また、酸価が300mgKOH/gよりも多い場合、現像時に露光部も基材から脱離しやすい傾向にあるため、好ましくない。
【0087】
前記アルカリ可溶性樹脂(C)の重量平均分子量は、1,000から100,000であることが好ましく、1,500から30,000であることが好ましい。重量平均分子量が1,000よりも小さい場合、露光部の耐熱性や硬度等が乏しいため、好ましくない。重量平均分子量が100,000よりも大きい場合は、未露光部の現像が困難となる場合があるため、好ましくない。尚、前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてHLC-8220GPC(東ソー社製)、カラムとして3本のTSKgelHZM-M(東ソー社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度40℃、流速0.3ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度0.5質量%、注入量10マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0088】
また、アルカリ可溶性樹脂(C)の割合は、重合性組成物の全固形分中、10から70質量%であることが好ましく、15から60質量%であることがより好ましい。前記割合が10質量%よりも少ない場合、現像性が乏しいため、好ましくない。前記割合が70質量%よりも多い場合、パターン形状の再現性や耐熱性が低下するため、好ましくない。
【0089】
なお、前記アルカリ可溶性樹脂(C)は、合成反応後に有効成分であるアルカリ可溶性樹脂を単離精製したものを用いることができる他、合成反応により得られた反応溶液、その乾燥物等をそのまま用いることもできる。
【0090】
<その他の成分>
前記その他の成分として、硬化促進剤を用いることで、重合性組成物の加熱による硬化を低温で行なうこともできる。硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物、チオ尿素化合物、2-メルカプトベンズイミダゾール系化合物、オルトベンゾイックスルフィミド、第4周期遷移金属化合物合物等を使用することができる。硬化促進剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0091】
前記アミン化合物としては、第三級アミンが好ましく、例えば、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(2-メタクリロイルオキシ)エチル等が挙げられる。
【0092】
前記チオ尿素としては、例えば、アセチルチオ尿素、N,N‘ジブチルチオ尿素等が挙げられる。
【0093】
前記2-メルカプトベンズイミダゾール系化合物としては、例えば、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトメチルベンズイミダゾール、2-メルカプトメトキシベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0094】
前記第4周期遷移金属化合物合物としては、バナジウム、コバルト、銅等の有機酸塩または金属キレート化合物から選択することができ、例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸バナジウム、銅アセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0095】
前記硬化促進剤は、重合性組成物を使用する直前に配合することが好ましい。硬化促進剤の含有量は、ラジカル重合性化合物(B)100質量部に対して、0.1から20質量部であることが好ましく、0.2から10質量部であることがより好ましい。
【0096】
前記その他の成分として、重合性組成物には、コーティング剤や塗料、印刷インキ、感光性印刷版、接着剤、カラーレジストやブラックレジスト等の各種フォトレジスト等の用途で一般的に使用されている添加剤を配合できる。添加剤としては、例えば、増感剤(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、9,10-ジブトキシアントラセン、クマリン、ケトクマリン、アクリジンオレンジ、カンファーキノン等)、重合禁止剤(p-メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、フェノチアジン等)、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、連鎖移動剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、表面調整剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、接着促進剤、可塑剤、エポキシ化合物、チオール化合物、エチレン性不飽和結合を有する樹脂、飽和樹脂、着色染料、蛍光染料、顔料(有機顔料、無機顔料)、炭素系材料(炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、黒鉛化カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル等)、金属酸化物(酸化チタン、酸化イリジウム、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ等)、金属(銀、銅等)、無機化合物(ガラス粉末、層状粘度鉱物、マイカ、タルク、炭酸カルシウム等)、分散剤、難燃剤等が挙げられる。添加剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0097】
前記添加剤の含有量は、使用目的に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、通常、ラジカル重合性化合物(B)100質量部に対して、500質量部以下でありことが好ましく、100質量部以下であることより好ましい。
【0098】
前記重合性組成物には、粘度や塗装性、硬化膜の平滑性の改良のため、更に溶媒を加えることもできる。溶媒は、前記重合開始剤組成物(A)、前記ラジカル重合性化合物(B)、前記アルカリ可溶性樹脂(C)、前記その他の成分を、溶解または分散することができるものであり、乾燥温度において揮発する溶媒であれば、特に制限されるものではない。
【0099】
前記溶媒としては、例えば、水、アルコール系溶媒、カルビトール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、ラクトン系溶媒、不飽和炭化水素系溶媒、セロソルブアセテート系溶媒、カルビトールアセテート系溶媒やプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0100】
前記溶媒の使用量は、重合性組成物の固形分100質量部に対して、10から1000質量部であることが好ましく、20から500質量部であることがより好ましい。
【0101】
<重合性組成物の調製方法>
前記重合性組成物を調整する場合には、収納容器内に前記重合開始剤組成物(A)、前記ラジカル重合性化合物(B)、必要に応じて、前記アルカリ可溶性樹脂(C)や前記その他の成分を投入し、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、2本ロールミル、3本ロールミル等を用いて、常法に従って溶解または分散させればよい。また、必要に応じて、メッシュまたはメンブレンフィルター等を通してもろ過してもよい。
【0102】
なお、前記重合性組成物の調整において、前記重合開始剤組成物(A)は、重合性組成物に最初から添加しておいてもよいが、重合性組成物を比較的長時間保存する場合には、使用直前に重合開始剤組成物(A)を、ラジカル重合性化合物(B)を含む組成物中に溶解または分散させることが好ましい。
【0103】
<硬化物の製造方法>
本発明の硬化物は、前記重合性組成物から形成されるものである。硬化物の製造方法は、重合性組成物を基板上に塗布後、当該重合性組成物を活性エネルギー線で照射する工程、および当該重合性組成物を加熱する工程のいずれかの工程を含む製造方法である。また、前記活性エネルギー線で照射する工程と前記加熱する工程の両方を含む工程を、デュアルキュア工程ともいう。
【0104】
前記塗布方法としては、例えば、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法、スリットコート法、ドクターブレードコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法等の種々の方法が挙げられる。また、前記基板は、例えば、ガラス、シリコンウエハ、金属、プラスチック等のフィルムやシート、および立体形状の成形品等が挙げられ、基板の形状が制限されることは無い。
【0105】
上記の重合性組成物を活性エネルギー線で照射する工程は、電子線、紫外線、可視光線、放射線等の活性エネルギー線の照射により、重合開始剤組成物(A)を分解させて、ラジカル重合性化合物(B)を重合させることで、硬化物を得ることができるものである。
【0106】
活性エネルギー線は、活性エネルギー線の波長が250から450nmの光であることが好ましく、硬化を迅速に行うことができる観点から、350から410nmの光であることがより好ましい。
【0107】
前記光の照射の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線無電極ランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、太陽光、YAGレーザー等の固体レーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザー等のガスレーザー等を使用することができる。なお、重合開始剤組成物(A)の吸収が少ない可視光から赤外光の光を用いる場合には、前記添加剤として、その光を吸収する増感剤を使用することにより硬化を行なうことができる。
【0108】
前記活性エネルギー線の露光量は、活性エネルギー線の波長や強度、重合性組成物の組成に応じて適宜設定すべきである。一例として、UV-A領域での露光量は、10から5,000mJ/cmであることが好ましく、30から1,000mJ/cmであることがより好ましい。なお、上記の硬化物の製造方法として、デュアルキュア工程を適用し、かつ前記活性エネルギー線で照射する工程の後に、加熱する工程を行う場合、重合開始剤組成物(A)が、活性エネルギー線により完全に分解してしまわないように、露光量を適宜設定すべきである。
【0109】
上記の重合性組成物を加熱する工程は、熱により重合開始剤組成物(A)を分解させて、ラジカル重合性化合物(B)を重合させることで、硬化物を得ることができるものである。
【0110】
前記重合性組成物を加熱する工程において、加熱する手法は、例えば、加熱、通風加熱等が挙げられる。加熱の方式としては、特に制限されることはないが、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線照射、電磁波照射等が挙げられる。また、通風加熱の方式としては、例えば、送風式乾燥オーブン等が挙げられる。
【0111】
前記重合性組成物を加熱する工程において、加熱温度は高いほど、重合開始剤組成物(A)の分解速度は加速される。しかし、分解速度が速すぎると、ラジカル重合性化合物(B)の分解残渣が多くなる場合がある。一方、加熱温度は低いほど、重合開始剤組成物(A)の分解速度は遅いため、硬化に長時間を必要とする。よって、加熱温度と加熱時間は、前記重合性組成物の組成により適宜設定すべきである。一例として、加熱温度は、50から230℃であることが好ましく、100から160℃であることがより好ましい。また、前記重合性組成物に、前記硬化促進剤を配合する場合には、その種類や配合量により、加熱温度は室温から160℃で任意に調整することができる。一方、加熱時間は1から180分であることが好ましく、5から120分であることがさらに好ましい。
【0112】
前記硬化物の製造方法として、前記デュアルキュア工程を適用する場合、特に、重合性組成物を活性エネルギー線で照射する工程の後に、加熱する工程を行うことが、光を吸収や散乱する着色顔料を高濃度に含む重合組成物の塗膜の深部や、光が遮光されて光が届いていない箇所の硬化を効率よく行なうことができるため、好ましい。
【0113】
また、前記重合組成物に前記溶媒を含む場合、前記硬化物の製造方法は、乾燥工程を含むことができる。特に、重合性組成物を基板上に塗布後に、続いて、前記活性エネルギー線で照射する工程を適用する場合、当該活性エネルギー線で照射する工程の前に、乾燥工程を設けることが好ましい。
【0114】
前記乾燥工程において、溶媒を乾燥させる手法は、例えば、加熱乾燥、通風加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。加熱乾燥の方式としては、特に制限されることはないが、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線照射、電磁波照射等が挙げられる。また、通風加熱乾燥の方式としては、例えば、送風式乾燥オーブン等が挙げられる。
【0115】
また、前記乾燥工程において、重合性組成物の温度は、溶媒の蒸発潜熱によって、乾燥の設定温度よりも低くなるため、重合性組成物のゲル化するまでの時間を長く確保することができる。このゲル化するまでの時間は、乾燥手法や膜厚等にも影響されるため、溶媒の選定を含めて乾燥温度と時間は適宜設定すべきである。一例として、乾燥温度は、20から120℃であることが好ましく、40から100℃であることがより好ましい。乾燥時間は1から60分であることが好ましく、1から30分であることがより好ましい。また、前記重合禁止剤を使用することで、ゲル化までの時間を長く確保することもできる。なお、前記トリアジンペルオキシド誘導体は熱により分解するが、80℃で5分の加熱した際の当該化合物の分解率は0.1%程度であるため、この程度の条件であれば重合性組成物が増粘やゲル化することはあまりない。
【0116】
前記重合性組成物の乾燥膜厚(硬化物の膜厚)は、用途に応じて適宜設定されるが、0.05から300μmであることが好ましく、0.1から100μmであることがより好ましい。
【0117】
<パターン形成方法>
前記重合性組成物がアルカリ可溶性樹脂(C)を含む場合、フォトリソグラフィー法によりパターンを形成することができる。前述と同様にして重合性組成物を基材に塗布し、必要に応じて、乾燥して乾燥被膜を形成する。そして、乾燥被膜にマスクを介して活性エネルギー線を照射することにより、露光部ではラジカル重合性化合物(B)が重合することで硬化膜となる。一方、レーザーを用いた直接描画により、マスクを介さずに高精度なパターン形状を作製することもできる。
【0118】
上記の露光後、未露光部は、例えば、0.3から3質量%の炭酸ナトリウム水溶液等のアルカリ現像液により現像除去され、パターン化した硬化膜が得られる。さらに、硬化膜と基材との密着性を高めること等を目的に、後乾燥として180から250℃、20から90分でのポストベークが行われる。このようにして、硬化膜に基づく所望のパターンが形成される。
【0119】
本発明の重合性組成物は、ハードコート剤、光ディスク用コート剤、光ファイバー用コート剤、モバイル端末用塗料、家電用塗料、化粧品容器用塗料、光学素子用内面反射防止塗料、高・低屈折率コート剤、遮熱コート剤、放熱コート剤、防曇剤等の塗料・コーティング剤;オフセット印刷インキ、グラビア印刷インキ、スクリーン印刷インキ、インクジェット印刷インキ、導電性インキ、絶縁性インキ、導光板用インキ等の印刷インキ;感光性印刷版;ナノインプリント材料;3Dプリンター用樹脂;ホログラフィー記録材料;歯科用材料;導波路用材料;レンズシート用ブラックストライプ;コンデンサ用グリーンシートおよび電極材料;FPD用接着剤、HDD用接着剤、光ピックアップ用接着剤、イメージセンサー用接着剤、有機EL用シール剤、タッチパネル用OCA、タッチパネル用OCR等の接着剤・シール剤;カラーレジスト、ブラックレジスト、カラーフィルター用保護膜、フォトスペーサー、ブラックカラムスペーサー、額縁レジスト、TFT配線用フォトレジスト、層間絶縁膜等のFPD用レジスト;液状ソルダーレジスト、ドライフィルムレジスト等のプリント基板用レジスト;半導体レジスト、バッファーコート膜等の半導体用材料等の各種用途に使用でき、その用途に特に制限は無い。
【実施例0120】
<合成例1-17>
(1)トリアジンペルオキシド誘導体(a-1)の合成
[合成例1:化合物19の合成]
100mLナスフラスコに、ジフェニルスルフィド3.03g(16.3mmol)、脱水ジクロロメタン30mLを加え、0℃まで冷却した。ここに、塩化シアヌル3.00g(16.3mmol)を加えた後、塩化アルミニウム2.39g(17.9mmol)を10分かけて加え、0℃にて3時間反応させた。反応終了後、反応液を氷冷1M塩酸50mLに注いで撹拌し、水相を分液した。油相を飽和食塩水50mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて脱水した。ろ過後、減圧濃縮し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=4/1から2/1)で精製し、2,4-ジクロロ-6-(4-フェニルチオ-1-フェニル)-1,3,5-トリアジンを得た。
【0121】
100mLナスフラスコに2,4-ジクロロ-6-(4-フェニルチオ-1-フェニル)-1,3,5-トリアジン3.00g(8.98mmol)、メチルエチルケトン30mLを加え、40℃に加温した。25質量%水酸化ナトリウム水溶液4.31g(26.9mmol)を加えた後、メタノール0.32g(9.87mmol)を10分かけて滴下し、40℃で2時間反応させた。40℃以下で69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液1.29g(9.87mmol)を10分かけて滴下し、40℃で1時間反応させた。反応終了後、水相を分液し、油相を氷水50mLに投入した。析出した結晶をろ過し、イオン交換水で洗浄し、減圧下で乾燥させ、化合物19を得た。
【0122】
[合成例2:化合物25の合成]
300mLナスフラスコに、1-メトキシナフタレン5.01g(31.7mmol)、脱水ジクロロメタン100mL、塩化シアヌル6.12g(33.2mmol)を入れ、氷浴下撹拌した。15分後、塩化アルミニウム4.43g(33.2mmol)を加え、室温に昇温した。1時間後、反応液を氷冷1M塩酸75mLに注ぎ、水相を分液した。油相を飽和食塩水100mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて脱水した。ろ過後、減圧濃縮し、粗体を9.59gの黄色固体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/トルエン=4/1から1.5/1)で精製し、2,4-ジクロロ-6-(4-メトキシ-1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジンを得た。
【0123】
100mLナスフラスコに2,4-ジクロロ-6-(4-メトキシ-1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジン2.75g(8.98mmol)、メチルエチルケトン30mLを加え、40℃に加温した。25質量%水酸化ナトリウム水溶液4.31g(26.9mmol)を加えた後、メタノール0.32g(9.87mmol)を10分かけて滴下し、40℃で2時間反応させた。40℃以下で69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液1.29g(9.87mmol)を10分かけて滴下し、40℃で1時間反応させた。反応終了後、水相を分液し、油相を氷水50mLに投入した。析出した結晶をろ過し、イオン交換水で洗浄し、減圧下で乾燥させ、化合物25を得た。
【0124】
[合成例3:化合物35の合成]
ヒートドライ乾燥した100mL三つ口フラスコに、マグネシウム0.44g(17.1mmol)、脱水テトラヒドロフラン15mL、触媒量のヨウ素を入れ、室温下で撹拌した。4-ブロモ-4’-メトキシビフェニル4.29g(16.3mmol)と脱水テトラヒドロフラン15mLの混合溶液を滴下した後、1時間還流撹拌させた。別の100mL三つ口フラスコに、塩化シアヌル3.00g(16.3mmol)、脱水テトラヒドロフラン15mLを加え、0℃まで冷却した。ここに、先に調製した混合溶液を、30分かけて滴下し、室温にあげ、15時間撹拌した。反応液を氷浴で冷却し、1M塩酸を加えて撹拌し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でpHを8に調整した。次いで、酢酸エチルで抽出した。油相を飽和食塩水で1回洗浄した後、硫酸マグネシウムで脱水した。ろ過後、油相を減圧下で濃縮し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=3/1から1/1)で精製し、2,4-ジクロロ-6-[4-(4’-メトキシビフェニル)]-1,3,5-トリアジンを得た。
【0125】
50mLナスフラスコに2,4-ジクロロ-6-[4-(4’-メトキシビフェニル)]-1,3,5-トリアジン1.20g(3.62mmol)、メチルエチルケトン10mLを加え、40℃に加温した。25質量%水酸化ナトリウム水溶液1.74g(10.9mmol)を加えた後、メタノール0.13g(3.98mmol)を5分かけて滴下し、40℃で2時間反応させた。40℃以下で69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液0.52g(3.98mmol)を5分かけて滴下し、40℃で1時間反応させた。反応終了後、水相を分液し、油相を氷水50mLに投入した。析出した結晶をろ過し、イオン交換水で洗浄し、減圧下で乾燥させ、化合物35を得た。
【0126】
[合成例4:化合物48の合成]
化合物48は、合成例3に記載のメタノールをエタノールに、及び69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液を85質量%tert-アミルヒドロペルオキシド溶液に変更したこと以外は、合成例3に記載の方法に準じて合成した。
【0127】
[合成例5:化合物53の合成]
化合物53は、合成例3に記載のメタノールをイソプロピルアルコールに、及び69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液を90質量%tert-ヘキシルヒドロペルオキシド溶液に変更したこと以外は、合成例3に記載の方法に準じて合成した。
【0128】
[合成例6:化合物56の合成]
化合物56は、合成例3に記載のメタノールをtert-ブチルアルコールに、及び69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液を80質量%クメンヒドロペルオキシド溶液に変更したこと以外は、合成例3に記載の方法に準じて合成した。
【0129】
[合成例7:化合物77の合成]
100mLナスフラスコに、アニソール1.76g(16.3mmol)、脱水ジクロロメタン30mLを加え、0℃まで冷却した。ここに、2,4-ジクロロ-6-[4-(4’-メトキシビフェニル)]-1,3,5-トリアジン5.41g(16.3mmol)を加えた後、塩化アルミニウム2.39g(17.9mmol)を10分かけて加え、0℃にて3時間反応させた。反応終了後、反応液を氷冷1M塩酸50mLに注いで撹拌し、水相を分液した。油相を飽和食塩水50mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて脱水した。ろ過後、減圧濃縮し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=4/1から2/1)で精製し、2-クロロ-4-(4-メトキシフェニル)-6-[4-(4’-メトキシビフェニル)]-1,3,5-トリアジンを得た。
【0130】
50mLナスフラスコに25質量%水酸化ナトリウム水溶液1.74g(10.9mmol)を加え、30℃以下で69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液0.52g(3.98mmol)を徐々に加えた。ここに、2-クロロ-4-(4-メトキシフェニル)-6-[4-(4’-メトキシビフェニル)]-1,3,5-トリアジン1.20g(3.62mmol)とテトラヒドロフラン10mLの混合溶液を、10℃で10分かけて滴下し、20℃で3時間反応させた。反応終了後、ジクロロメタン10mLを加え、水相を分液した。油相をイオン交換水で洗浄し、0℃にて無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、油相を減圧下で濃縮し、化合物77を得た。
【0131】
(2)トリアジン化合物(a-2)の合成
[合成例8:化合物106の合成]
100mLナスフラスコに2,4-ジクロロ-6-(4-メトキシ-1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジン2.75g(8.98mmol)、メチルエチルケトン30mLを加え、40℃に加温した。25質量%水酸化ナトリウム水溶液4.31g(26.9mmol)を加えた後、メタノール0.86g(26.9mmol)を10分かけて滴下し、40℃で2時間反応させた。反応終了後、水相を分液し、油相をイオン交換水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて脱水した。ろ過後、減圧濃縮し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=4/1から2/1)で精製し、化合物106を得た。
【0132】
[合成例9:化合物108の合成]
300mLナスフラスコに、1,5-ジメトキシナフタレン5.97g(31.7mmol)、脱水ジクロロメタン100mL、塩化シアヌル6.12g(33.2mmol)を入れ、氷浴下撹拌した。15分後、塩化アルミニウム4.43g(33.2mmol)を加え、室温に昇温した。1時間後、反応液を氷冷1M塩酸75mLに注ぎ、水相を分液した。油相を飽和食塩水100mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて脱水した。ろ過後、減圧濃縮し、粗体を9.59gの黄色固体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/トルエン=4/1から1.5/1)で精製し、2,4-ジクロロ-6-(4,8-ジメトキシ-1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジンを得た。
【0133】
100mLナスフラスコに2,4-ジクロロ-6-(4,8-ジメトキシ-1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジン3.02g(8.98mmol)、メチルエチルケトン30mLを加え、40℃に加温した。25質量%水酸化ナトリウム水溶液4.31g(26.9mmol)を加えた後、メタノール0.86g(26.9mmol)を10分かけて滴下し、40℃で2時間反応させた。反応終了後、水相を分液し、油相をイオン交換水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて脱水した。ろ過後、減圧濃縮し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=4/1から2/1)で精製し、化合物108を得た。
【0134】
[合成例10:化合物127の合成]
100mLナスフラスコに、2,4-ジクロロ-6-(4-フェニルチオ-1-フェニル)-1,3,5-トリアジン3.00g(8.98mmol)、メチルエチルケトン30mLを加え、40℃に加温した。25質量%水酸化ナトリウム水溶液2.87g(17.9mmol)を加えた後、メタノール0.32g(9.87mmol)を10分かけて滴下し、40℃で2時間反応させた。反応終了後、水相を分液し、油相をイオン交換水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて脱水した。ろ過後、減圧濃縮し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=4/1から2/1)で精製し、2-クロロ-4-メトキシ-6-(4-フェニルチオ-1-フェニル)-1,3,5-トリアジンを得た。
【0135】
100mLナスフラスコに、2-クロロ-4-メトキシ-6-(4-フェニルチオ-1-フェニル)-1,3,5-トリアジン2.00g(6.06mmol)、テトラヒドロフラン30mLを加え、40℃に加温した。25質量%水酸化ナトリウム水溶液4.85g(30.3mmol)を加え、40℃で2時間反応させた。反応終了後、水相を分液し、油相をイオン交換水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて脱水した。ろ過後、減圧濃縮し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=4/1から2/1)で精製し、化合物127を得た。
【0136】
[合成例11:化合物129の合成]
100mLナスフラスコに、2,4-ジクロロ-6-(4-メトキシ-1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジン2.75g(8.98mmol)、メチルエチルケトン30mLを加え、40℃に加温した。25質量%水酸化ナトリウム水溶液2.87g(17.9mmol)を加えた後、メタノール0.32g(9.87mmol)を10分かけて滴下し、40℃で2時間反応させた。反応終了後、水相を分液し、油相をイオン交換水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて脱水した。ろ過後、減圧濃縮し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=4/1から2/1)で精製し、化合物129を得た。
【0137】
[合成例12:化合物132の合成]
100mLナスフラスコに、2,4-ジクロロ-6-[4-(4’-メトキシビフェニル)]-1,3,5-トリアジン3.00g(9.03mmol)、メチルエチルケトン30mLを加え、40℃に加温した。25質量%水酸化ナトリウム水溶液4.32g(27.1mmol)を加えた後、イソプロピルアルコール0.60g(9.93mmol)を10分かけて滴下し、40℃で2時間反応させた。40℃以下でtert-ブチルアルコール0.74g(9.93mmol)を10分かけて滴下し、40℃で1時間反応させた。反応終了後、水相を分液し、油相をイオン交換水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて脱水した。ろ過後、減圧濃縮し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=4/1から2/1)で精製し、化合物132を得た。
【0138】
[合成例13:化合物133の合成]
化合物133は、合成例10に記載の2,4-ジクロロ-6-(4-メトキシ-1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジンを、2,4-ジクロロ-6-(4-フェニルチオ-1-フェニル)-1,3,5-トリアジンに、及びメタノールをエタノールに変更したこと以外は、合成例10に記載の方法に準じて合成した。
【0139】
[合成例14:化合物153の合成]
化合物153は、合成例10に記載の2,4-ジクロロ-6-(4-メトキシ-1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジンを、2-クロロ-4-(4-メトキシフェニル)-6-[4-(4’-メトキシビフェニル)]-1,3,5-トリアジンに変更したこと以外は、合成例10に記載の方法に準じて合成した。
【0140】
(3)トリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)の合成
[合成例15:化合物176の合成]
化合物176は、合成例8に記載の2,4-ジクロロ-6-(4-メトキシ-1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジンを、2,4-ジクロロ-6-(4-フェニルチオ-1-フェニル)-1,3,5-トリアジンに、及びメタノールを69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液に変更したこと以外は、合成例8に記載の方法に準じて合成した。
【0141】
[合成例16:化合物182の合成]
化合物182は、合成例8に記載のメタノールを69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液に変更したこと以外は、合成例8に記載の方法に準じて合成した。
【0142】
[合成例17:化合物201の合成]
化合物201は、合成例8に記載の2,4-ジクロロ-6-(4-メトキシ-1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジンを、2,4-ジクロロ-6-[4-(4’-メトキシビフェニル)]-1,3,5-トリアジンに、及びメタノールを85質量%tert-アミルヒドロペルオキシド溶液に変更したこと以外は、合成例8に記載の方法に準じて合成した。
【0143】
<重合性組成物の調製>
ラジカル重合性化合物100質量部に対し、表4および5に示す量(質量部)のアルカリ可溶性樹脂、顔料、レベリング剤、溶媒を混合撹拌し、重合開始剤組成物(A)を添加してよく撹拌し、実施例1~15および比較例1~6の重合性組成物を調製した。調製に用いたトリアジンペルオキシド誘導体(a-1)、トリアジン化合物(a-2)、トリアジンジペルオキシド誘導体(a-3)を表1~3に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】
【表3】
【0147】
(感度評価)
上記で調製した重合性組成物を、スピンコーターを用いて、アルミニウム基板上に塗布した。塗布後、アルミニウム基板を90℃のクリーンオーブン中で2.5分間乾燥処理により溶媒を乾燥させ、厚さ1.5μmの均一な塗布膜を作製した。次いで、超高圧水銀灯を光源とするプロキシミティー露光機を用い、マスクパターンを介して10から1000mJ/cmの範囲で、段階露光を行った。露光後のアルミニウム基板を1.0質量%の炭酸ナトリウム水溶液に23℃で60秒間浸漬して、現像による未露光部の除去を行った。続いて純水にて30秒間洗浄を行い、レジストパターンを得た。レジストパターンが形成される最低露光量が50mJ/cm以下のものを◎、50mJ/cmを超え100mJ/cm以下のものを〇、100mJ/cmを超え150mJ/cm以下のものを△、150mJ/cmを超えるものを×とした。結果を表1に示す。なお、各評価は〇以上を合格とした。
【0148】
(線幅再現性評価)
上記で調製した重合性組成物を、スピンコーターを用いてガラス基板上に塗布した。塗布後、ガラス基板を90℃のクリーンオーブン中で2.5分間乾燥処理により溶媒を乾燥させ、厚さ1.5μmの均一な塗布膜を作製した。次いで、超高圧水銀灯を光源とするプロキシミティー露光機を用い、マスクパターンを介して150mJ/cm露光を行った。露光後のガラス基板を1.0質量%の炭酸ナトリウム水溶液に23℃で60秒間浸漬して、現像による未露光部の除去を行った。続いて純水にて30秒間洗浄を行い、レジストパターンを得た。得られたパターンを顕微鏡で観察し、パターン幅からマスク幅を引いた値が±0.5μm以下のものを◎、±0.5μmを超え±1.0μm以下のものを〇、±1.0μmを超え±2.5μm以下のものを△、±2.5μmを超えるものを×とした。結果を表1に示す。なお、各評価は〇以上を合格とした。
【0149】
(重合性組成物の保存安定性評価)
上記で調製した重合性組成物を、褐色のガラス瓶中に入れ、アルミホイルで遮光した後に、40℃に設定した定温恒温機内に静置した。ゲル化に要した日数が100日以上のものを◎、50日以上100日未満のものを〇、50日未満のものを×とした。結果を表1に示す。なお、各評価は〇以上を合格とした。
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
上記表4および5中、Irgacure OXE02は、オキシムエステル系光重合開始剤(BASF社製);
Tinuvin 405は、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製);
DPHAは、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(商品名:アロニックスM-402、東亞合成社製);
RD200は、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/シクロヘキシルマレイミド(質量%:61/14/25)共重合物、重量平均分子量:17,000、酸価:90(合成品);
SG036は、緑色顔料分散液(大成化工社製);
F-477は、フッ素系レベリング剤(商品名:メガファックF-477、DIC社製);
PGMEAは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;を示す。