IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビトロ フラット グラス エルエルシーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010121
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】低光透過率のグレーガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 4/02 20060101AFI20250109BHJP
   C03C 3/078 20060101ALI20250109BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20250109BHJP
   B60J 7/043 20060101ALI20250109BHJP
   B60J 1/10 20060101ALI20250109BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C03C4/02
C03C3/078
C03C3/087
B60J7/043
B60J1/10 Z
B60J1/00 G
B60J1/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024108718
(22)【出願日】2024-07-05
(31)【優先権主張番号】18/347,902
(32)【優先日】2023-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518301590
【氏名又は名称】ビトロ フラット グラス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホセ グアダループ シド アギラール
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
4G062BB03
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB01
4G062DB02
4G062DB03
4G062DC01
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA01
4G062EB01
4G062EB02
4G062EB03
4G062EB04
4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE03
4G062EE04
4G062EF01
4G062EG01
4G062FA01
4G062FB02
4G062FC01
4G062FD01
4G062FE01
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GB02
4G062GC02
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH04
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH12
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062NN05
4G062NN12
4G062NN13
(57)【要約】
【課題】組成物から形成される低光透過率グレーガラスが開示される。
【解決手段】組成物から形成される低光透過率グレーガラスは、着色剤を含む。着色剤は、1.8重量%~2.3重量%のFe、0.28重量%~1.2重量%のFeO、0.030重量%~0.040重量%のCo、0.0020重量%~0.010重量%のSe、0.00050重量%~0.050重量%のCuO、および0.01重量%~1重量%のTiOを含む。ガラスは、15%未満の可視光線透過率(TLA)、14%未満の直達日射透過率(TDS)、14%未満の赤外線透過率(TIR)、8%未満の紫外線透過率(TUV)、および38%未満の全日射透過率(TTS)を有する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の着色剤を含んで形成される低光透過率グレーガラス:
2.04重量%~2.12重量%のFe
0.28重量%~1.2重量%のFeO、
0.030重量%~0.040重量%のCo
0.0020重量%~0.010重量%のSe、
0.00050重量%~0.050重量%のCuO、および
0.01重量%~1重量%のTiO
【請求項2】
15%未満の可視光線透過率(TLA)を有する、請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
14%未満の直達日射透過率(TDS)を有する、請求項1に記載のガラス。
【請求項4】
14%未満の赤外線透過率(TIR)を有する、請求項1に記載のガラス。
【請求項5】
8%未満の紫外線透過率(TUV)、および38%未満の全日射透過率(TTS)を有する、請求項1に記載のガラス。
【請求項6】
15~40%のレドックス率をさらに有する、請求項1に記載のガラス。
【請求項7】
480~590nmの波長において、3.85mmの厚さで50%以下の刺激純度を有する、請求項1に記載のガラス。
【請求項8】
68重量%~75重量%のSiO
0重量%~5重量%のAl
5重量%~15重量%のCaO、
0重量%~10重量%のMgO、
0重量%~18重量%のNaO、
0重量%~5重量%のKO、および
0.05重量%~0.3重量%のSO
をさらに含む、請求項1に記載のガラス。
【請求項9】
前記着色剤が、0.01重量%~1.0重量%のNaNOをさらに含む、請求項1に記載のガラス。
【請求項10】
前記着色剤が、0重量%~0.07重量%の炭素をさらに含む、請求項1に記載のガラス。
【請求項11】
Feの量が、2.0重量%~2.2重量%である、請求項1に記載のガラス。
【請求項12】
Feの量が、2.04重量%~2.12重量%である、請求項1に記載のガラス。
【請求項13】
D65光源つき積分球を使用して、観測者の角度10°で鏡面反射成分を含んで測定した場合に、以下の色CIELAB値を有する、請求項1に記載のガラス:
46~15の範囲のL*値、
-10~5の範囲のa*値、および
-5.0~15の範囲のb*値。
【請求項14】
従来のフロート非真空ガラス方式を使用して低光透過率グレーガラスを製造する方法であって、
ガラスバッチを溶融させて溶融ガラスのプールを供給する工程と、
前記溶融ガラスのプールを溶融スズ浴上に流す工程と、
前記溶融ガラスを制御可能に冷却し、前記溶融ガラスに力を加えながら、前記溶融ガラスを前記溶融スズ浴の表面上で移動させて所望の厚さのガラスを供給する工程と、
前記溶融スズ浴から前記ガラスを取り除く工程と
を含み、
ガラス着色剤が、
1.8重量%~2.3重量%のFe
0.28重量%~1.2重量%のFeO、
0.030重量%~0.040重量%のCo
0.0020重量%~0.010重量%のSe、
0.00050重量%~0.050重量%のCuO、および
0.01重量%~1重量%のTiO
を含む、方法。
【請求項15】
前記ガラスが15~40%のレドックス率を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ガラスが、
68重量%~75重量%のSiO
0重量%~5重量%のAl
5重量%~15重量%のCaO、
0重量%~10重量%のMgO、
0重量%~18重量%のNaO、
0重量%~5重量%のKO、および
0.05重量%~0.3重量%のSO
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ガラスが、0.01重量%~1.0重量%のNaNOをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ガラスの主波長が480nm~590nmである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本出願は、一般に、ニュートラルグレー色の低透過率ガラスに関し、より具体的には、自動車産業、例えばパノラマルーフおよび後部ドアのサイドウィンドウに使用するためのグレーガラスの組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的考察
着色ガラスは、溶融の過程で金属酸化物が組み込まれる材料である。鉄-コバルト酸化物をセレンと組み合わせて添加して、添加剤の比率に応じて緑がかったグレーまたはニュートラルグレーから黄色がかったグレーまでのガラスの色合いを得ることが一般的である。酸化鉄、酸化コバルト、およびセレンの濃度を制御し、ガラス溶融雰囲気および/または混合物中の酸化還元条件(主に炭素および硝酸ナトリウム濃度)を制御することにより、低光透過率、直達日射透過の所望の遮断、およびプライバシーのためのグレーの着色を有するガラスを得ることができ、このガラスは、車両のパノラマルーフおよび後部ドアのための自動車用途に使用され得る。現在使用されているガラス組成物の欠点としては、所望の材料および光学特性を得るために必要な希土類酸化物の使用コストが高いことが挙げられる。
【0003】
したがって、当業者は、自動車産業で使用するためのグレーガラスの分野において研究開発を継続している。
【発明の概要】
【0004】
組成物から形成される低光透過率グレーガラスが開示される。
【0005】
一例では、低光透過率グレーガラスは、着色剤を含む組成を有する。着色剤は、(ガラスの総重量に対して)1.8重量%~2.3重量%のFe、0.28重量%~1.2重量%のFeO、0.030重量%~0.040重量%のCo、0.0020重量%~0.010重量%のSe、0.00050重量%~0.050重量%のCuO、0.01重量%~1重量%のTiO、および15~40%のレドックスを含む。このガラスは、15%以下の可視光線透過率(TLA)、14%以下の直達日射透過率(TDS)、14%以下の赤外線透過率(TIR)、8%以下の紫外線透過率(TUV)、および38%以下の全日射透過率(TTS)を有する。
【0006】
一例では、低光透過率グレーガラスは、68重量%~75重量%のSiO、0重量%~5重量%のAl、5重量%~15重量%のCaO、0重量%~10重量%のMgO、10重量%~18重量%のNaO、0重量%~5重量%のKO、および0.05重量%~0.3重量%のSO、ならびに着色剤であって、1.8重量%~2.3重量%のFe、0.28重量%~1.2重量%のFeO、0.030重量%~0.040重量%のCo、0.0020重量%~0.010重量%のSe、0.00050重量%~0.050重量%のCuO、0.01重量%~1重量%のTiO、および15~40%のレドックスを含む着色剤を含む組成物から形成される。別の例では、ガラスは、15%以下の可視光線透過率(TLA)、14%以下の直達日射透過率(TDS)、14%以下の赤外線透過率(TIR)、8%以下の紫外線透過率(TUV)、および38%以下の全日射透過率(TTS)を有する。
【0007】
また、従来のフロート非真空ガラス方式を使用して低光透過率グレーガラスを製造する方法も開示される。
【0008】
一例では、この方法は、ガラスバッチを溶融させて溶融ガラスのプールを供給する工程と、溶融ガラスのプールを溶融スズ浴上に流す工程と、溶融ガラスを制御可能に冷却し、溶融ガラスに力を加えながら、溶融ガラスを溶融スズ浴の表面上で移動させて所望の厚さのガラスを供給する工程と、溶融スズ浴からガラスを取り除く工程とを含み、ガラスは、68重量%~75重量%のSiO、0重量%~5重量%のAl、5重量%~15重量%のCaO、0重量%~10重量%のMgO、10重量%~18重量%のNaO、0重量%~5重量%のKO、および0.05重量%~0.3重量%のSO、ならびに着色剤であって、1.8重量%~2.3重量%のFe、0.28重量%~1.2重量%のFeO、0.030重量%~0.040重量%のCo、0.0020重量%~0.010重量%のSe、0.00050重量%~0.050重量%のCuO、0.01重量%~1重量%のTiO、および15~40%のレドックスを含む着色剤を含む。一例では、このガラスは、15%未満の可視光線透過率(TLA)、14%以下の直達日射透過率(TDS)、14%以下の赤外線透過率(TIR)、8%以下の紫外線透過率(TUV)、および38%以下の全日射透過率(TTS)を有する。
【0009】
他の例は、以下の詳細な説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用される場合、明細書および特許請求の範囲で使用され、寸法、物性、処理パラメータ、成分の量、反応条件などを表すすべての数字は、すべての場合において「およそ」または「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、それとは異なることが示されない限り、以下の明細書および特許請求の範囲に記載される数値は、本開示が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。少なくとも、また、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなく、各数値は、少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、また、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。さらに、本明細書に開示されるすべての範囲は、範囲の始まりと終わりの値、およびその範囲内に包含されるありとあらゆる部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」と記載された範囲は、最小値1と最大値10との間の(最小値と最大値とを含む)ありとあらゆる部分範囲、すなわち、1以上の最小値で始まり10以下の最大値で終わるありとあらゆる部分範囲、例えば、1~3.3、4.7~7.5、5.5~10などを含むと考えられるべきである。「A」または「an」は、1つ以上を指す。
【0011】
本明細書で使用される場合、「の少なくとも1つ」という語句は、項目の列挙とともに使用される場合、列挙された項目のうちの1つ以上が様々に組み合わせて使用され得、列挙された各項目のうち1つのみが必要であり得ることを意味する。例えば、「項目A、項目B、および項目Cの少なくとも1つ」は、限定するものではないが、項目A、または項目Aおよび項目Bを含み得る。この例はまた、項目A、項目B、および項目C、または項目Bおよび項目Cを含み得る。他の例では、「の少なくとも1つ」は、例えば、限定するものではないが、項目Aが2つ、項目Bが1つ、項目Cが10であるか、項目Bが4つで項目Cが7つであるか、他の適切な組み合わせであり得る。
【0012】
本開示は、着色ガラスを製造するための組成物および方法に関する。着色ガラスは、溶融の過程で金属酸化物が組み込まれる材料である。以前の研究の結果として、鉄-コバルト酸化物をセレンと組み合わせて添加することによって、これらの比率に応じて緑がかったグレーまたはニュートラルグレーから黄色がかったグレーまでのガラスの色合いが得られることが知られている。酸化鉄、酸化コバルト、およびセレンの濃度を制御し、ガラス溶融雰囲気および/または混合物中の酸化還元条件(主に炭素および硝酸ナトリウム濃度)を制御することにより、低光透過率、直達日射透過の所望の遮断、およびプライバシーのためのグレーの着色を有するガラスを得ることができ、このガラスは、車両のパノラマルーフおよび後部ドアのための自動車用途に使用され得る。
【0013】
以下の例に記載されるガラスは、3つの主要な着色剤、すなわち酸化鉄、酸化コバルト、およびセレンをベースとしたニュートラルグレーガラスの一種を指し、その主な機能は、ガラスに日射制御特性を与えることである。
【0014】
以下の特許および刊行物は、様々な金属酸化物を主要な着色剤として利用してグレーガラスを得る例を与え、また、製品の最終的な特性を与える。これらの成分、例えば酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化クロム、または希土類酸化物は、ケイ素-ソーダ-カルシウムガラスのベース配合物に混合される。
【0015】
例えば、Combesらに対する米国特許第5,352,640号(米国再発行特許第RE37,998(E)号)は、主に自動車産業で使用されるグレーガラスを得ることを開示しており、その着色剤の組成は、1.4~4%の全鉄分および0~0.05%の酸化コバルトの範囲であり、酸化鉄が過剰であるが、Feが2%未満である場合にはコバルトは約0.02%であり、場合により0.24重量%未満の含有量でCoO+Se+Crの組み合わせを有することができる。ガラスの物性、例えば光透過率およびエネルギー透過率は、それぞれ、光源A下で20%以下、3.85mmの厚さで12%以下である。
【0016】
Alvarez Casariegoらによる米国特許第5,545,596号では、車両のサイドウィンドウおよびリアウィンドウで使用され、光源Aでの光透過率が20~60%であるグレーガラスについて、全鉄分が0.45~2.5%、CoOが0.001~0.02%、Seが0~0.0025%、Crが0~0.1%の濃度である染料の使用が開示されている。
【0017】
Setoらによる米国特許第7,393,802(B2)号は、着色剤としてのFe、CoO、Se、およびNiOの使用を開示しているが、紫外線の吸収を増加させるために2.0重量%以下の量のCeOおよびTiOの使用も追加している。
【0018】
Longobardoらに譲渡された米国特許第7,622,410号で得られたガラスでは、総含有量0.15~0.45%の酸化鉄、3ppm以下のセレン、および120~240ppmの酸化コバルトに加えて、500~1000ppmの濃度の酸化ニッケル、0.1~0.8%の酸化エルビウム(Er)、および1~20ppmの含有量の酸化クロムが使用される。これらの酸化物の混合物は、ガラスのグレーの着色を全体的に調整するために使用される。この特許のガラスの光透過率は8~25%であり、主波長は435~570nmであり、酸化コバルト/酸化ニッケル比0.22~0.30を使用しており、FeO/Feのレドックス値は0.20~0.40である。これらの開示されたガラスの重大な欠点は、これらのガラスの組成物に必要な希土類酸化物の使用コストが高いことである。
【0019】
Teyssedreらの米国特許第8,017,538(B2)号では、提示されているガラスは、200~300ppmの酸化コバルトに加えて、400~700ppmまたは1500~1900ppmの濃度の酸化ニッケル、0.7~0.95%の、0.40以下のレドックス値を有する酸化鉄を使用して、グレーの色調整を得ること、また、以下の物性を得ることが知られている:3.85mmのガラス厚に対して、光源A下での光透過率(TLA)が50%以下、かつエネルギー透過率(TE)の平均が45%未満。以前の特許のうちのいくつかで着色剤として使用されている酸化ニッケルの使用は、硫化ニッケル介在物が形成され得るという欠点(容易に検出できない欠陥)を有し、これにより、この材料とガラス状マトリックスの残りの部分との熱膨張係数差に起因して、ガラス板が破損する可能性がある。Kimらによる米国特許第8,551,899号に記載されているガラスは、使用される染料、例えば1.4~2.5%のFe、0.02~0.04%のCoO、0.0001~0.004%のSe、0.005~0.5%のMnO、および0.05~1%のCeOに起因して暗いニュートラルグレー-緑色の着色を有し、光源Aでの光透過率は15%未満である。これらのガラスは、自動車のプライバシーガラスまたはパノラマルーフとして使用されるだけでなく、建設においても使用される。
【0020】
米国特許第7,754,632号、Delmotteらは、他の酸化物、例えば1.1~1.5%(全鉄分)のFe、150~200ppmのCo、25~100ppmのCr、および10~50ppmのSeに加えて、最大600ppmのMnOおよび0.1%未満のTiOの濃度を使用して、4mmの厚さに対して光源Aでの光透過率が20%未満であるという光学特性を実現している。
【0021】
Tsuzukiらに対する米国特許第8,785,338号は、0.70~1.70質量%のFe(全鉄分)、0.15~0.45質量%のFeO(酸化第一鉄)、0~0.8質量%のTiO、100~350ppmのCoO、0~60ppmのSe、100~700ppmのCr、および3~150ppmのMnOの含有量を有し、第一鉄イオンと第二鉄イオンとの比(Fe2+/Fe3+)が0.20~0.80であるケイ素-ナトリウム-石灰(silico-sodic-lime)ガラスの組成物について言及している。この特許は、好ましくは0~0.5%の範囲のTiOを使用することにより、このガラスが十分な透明性に加えて、優れた紫外線吸収性能および赤外線吸収性能(断熱性能)を有することを開示している。
【0022】
米国特許第9,120,695号、Leeらは、以下のガラス組成物を開示している:1.4~2%の、(全鉄分に対して)FeO含有量が10~30%であるFe、0.02~0.035%のCoO、0.0015~0.004%のSe、および0.005~0.5%のMnO。光源Aでの光透過率が15%未満であり、紫外線透過率が2%以下であるという光学特性が報告されている。
【0023】
Choらの米国特許第9,617,182号(2017年4月11日)に開示されている暗緑色ガラスは、染料としての1.2~2%の全Fe、0.0220~0.04%のCoO、0.002~0.0035%のSe、および0.01~0.04%のCrを開示しており、ここで、(CoO+Cr)とSeとの重量比(=[CoO+Cr]/Se)は、13~25であり、CoOとCrとの重量比(=CoO/Cr)は、0.9~1.8である。このガラスは、厚さ4mm基準で測定して、15%以下の可視光線透過率(TLA)、16%以下の直達日射エネルギー透過率(TDS)、および3%以下の紫外線透過率(TUV)を示す。
【0024】
Cid-Aguilarらによる米国特許第7,902,097(B2)号は、0~30ppmのCo、1~20ppmのSe、20~200ppmのCuO、および0.30~0.70%のFeの濃度を使用して、65%を超える光源Aでの光透過率、60%以下の全日射エネルギー透過率、46%未満の紫外線透過率、および主波長490~600nmという光学特性を有するニュートラルグレーのガラスを得ている。この特許は、0.01~0.07%の炭素または0.2~1.2%の硝酸ナトリウムなどの成分を添加して、酸化鉄および酸化銅の酸化還元状態を変更することを開示しているが、これは、この添加が、他の染料と組み合わせて、酸化チタンおよび酸化コバルトの添加を部分的に置き換えてグレーの色相を得るための代替案として使用され得るからである。
【0025】
上述の開示によれば、鉄は、鉄の酸化状態に応じて異なる2つの化合物の形でガラス(ケイ素-ナトリウム-カルシウム(silico-sodic-calcic))中に存在する。すなわち、鉄がFe2+として存在する場合、形成される化合物は酸化第一鉄(FeO)である。鉄がFe3+として存在する場合、形成される化合物は酸化第二鉄(Fe)である。それぞれのイオンは、異なる特性を付与する。すなわち、第一鉄イオンは、1050nmを中心とする広くて強い吸収帯を有し、その結果、赤外線の減少をもたらす。さらに、この吸収帯は可視領域内に延在し、光透過率を減少させ、ガラスに青みを与える。一方、第二鉄イオンは、紫外領域に位置する強い吸収帯を示し、これは、第二鉄イオンがガラスを透過するのを妨げる。さらに、第二鉄イオンは、420~440nmに位置する可視領域に2つの他の弱い吸収帯を示し、これは、光透過率のわずかな減少およびガラスの黄変を引き起こし得る。一般に、ガラス中の鉄、およびその酸化第一鉄の量は、Feの形態で表される。酸化第一鉄または酸化第二鉄の量は、全鉄分に対する百分率として表すことが一般的である。酸化第一鉄と酸化第二鉄との間のバランスは、ガラスの色および透過率特性に直接影響を及ぼし、以下のように表され得る。
【数1】
【0026】
ガラス中に存在する第二鉄イオン(Fe3+)の量が多いほど、紫外線の吸収が大きくなり、光の透過が増加し、また黄色がかった色相になる。Feの化学的還元の結果として第一鉄イオン(Fe2+)の含有量が増加すると、赤外線の吸収は増加するが、紫外線の吸収は減少し、光の透過も減少する。
【0027】
【化1】
【0028】
【化2】
【0029】
Feに関して、FeO濃度の変動は、ガラスの色変化を引き起こす。色相シフトは、黄色から緑色、青色から琥珀色に変化させることができる。色は以下のように変化する(実験結果による):黄色-低第一鉄(12%)-高光透過率(高第二鉄イオン) 黄色-緑色(16%)。緑色-黄色(20%) 緑色(緑色ガラスの標準値25%);ティールグリーン(29%);緑がかった青色(35%);青色(50%);オリーブグリーン(60%) シャンパン(65%);および琥珀色-高第一鉄(75%)-低光透過率(低第二鉄イオン)。
【0030】
日射制御ガラスを得るために必要な酸化第一鉄と酸化第二鉄との間のバランスを制御するためには、混合および溶融雰囲気中での条件を確立することが有益である。一態様では、炭素などの還元剤、ならびに硫酸ナトリウムおよび硝酸ナトリウムなどの酸化剤の濃度が選択的に調整され得る。溶融条件に関する限り、熱性能やガラスの所望の色合いに応じて、より多いか、またはより少ない酸素含有量に雰囲気を調整することが有益であり得る。
【0031】
また、酸化チタンは着色剤としても作用することがよく知られており、Feと組み合わせて使用することで、所望の視認性の透過が実現される点まで、紫外線透過率のさらなる低下を得ることができる。
【0032】
K.M.Fylesは、論文「現代の自動車用ガラス(Modern Automotive Glasses)」、Glass Technology、第37巻、1996年2月、2~6頁において、鉄は、望ましくない紫外線(第二鉄イオン)や、さらには大量の赤外線(第一鉄イオン)を吸収する、低価格で入手可能な成分であるため、自動車用ガラスにおいて最も重要な着色剤であると開示している。
【0033】
Gordon F.Brestermらは、論文「様々な組成の鉄含有ガラスの色(The color of iron-containing glasses of varying composition)」、Journal of the Society of Glass Technology、ニューヨーク、米国、1950年4月、332~406頁において、鉄含有シリカートガラスおよび非シリカガラスの組成を体系的に変化させることによって生じる色変化であって、視覚的な色、分光透過率、および色度に関して評価される色変化を開示している。
【0034】
ガラス中の酸化第一鉄と酸化第二鉄との間のバランスの重要性を開示する他の論文としては、N.E.Densemによって著された論文「ガラス中の酸化第一鉄と酸化第二鉄との間の平衡(The equilibrium between ferrous and ferric oxides in glasses)」、Journal of the Society of Glass Technology、グラスゴー、イングランド、1937年5月、374~389頁や、J.C.HostetterおよびH.S.Roberts、「ガラスに溶解した酸化第二鉄の解離、およびその鉄含有ガラスの色との関係に関する注記(Note on the dissociation of Ferric Oxide dissolved in glass and its relation to the color of iron-bearing glasses)」、Journal of the American Ceramic Society、米国、1921年9月、927~938頁が挙げられる。紫外線および赤外線の吸収特性を有する着色ガラスの組成については、多くの科学書および論文が発表されている。
【0035】
C.R.Bamfordは、書籍「ガラスにおける発色および色制御、ガラスの科学技術(Color Generation and Control in Glass,Glass Science and Technology)」(Elsevier Science Publishing Co.、アムステルダム、1977年)において、ガラスの着色方法の原理および用途を記載している。この書籍では、著者は、3つの要素、すなわち、入射光の色、ガラスとその入射光との相互作用、および透過光と観測者の眼との相互作用が、ガラスによって透過される光の色を支配すると考えている。この手順は、対応するガラス厚および視野角とともに、ガラスの分光透過率データを必要とする。
【0036】
ケイ素-ナトリウム-カルシウム(silico-sodic-calcic)ガラス中の酸化チタン(TiO)に関して、ガラス中のチタンの最も安定な形態は4価(Ti4+)である。3価形態は着色を与え得るが、この効果は、ケイ素-ナトリウム-カルシウム(silico-sodic-calcic)ガラスではみられない。Beals MDによる論文「二酸化チタンがガラスに及ぼす効果(Effects of Titanium Dioxide on Glass)」、The Glass Industry、1963年9月、495~531頁には、二酸化チタンがガラスの成分として示されてきたことへの関心が記載されている。二酸化チタンを用いることによる効果として、TiOが屈折率を大きく増加させ、紫外領域の光の吸収を増加させることや、粘度や表面張力が低下するとのコメントがある。エナメルにおける二酸化チタンの使用に関するデータから、TiOが化学的耐久性を高め、フラックスとして作用することが観察された。一般に、二酸化チタンを含有する透明ガラスは、すべての一般的なガラス形成系(ボラート、シリカート、およびホスファート)に見出すことができる。論点の整理は、二酸化チタン含有ガラス自体の構成というよりも、むしろこのガラスの使用の特性に基づいているので、二酸化チタン含有系のための様々なガラス形成領域は、ひとまとめにされていない。一方、ケイ素-ナトリウム-石灰ガラスへのセレンの添加は、セレン原子の存在に起因して、ピンク色の着色を生じさせ得る。セレンは、望ましくない不純物として原料中に混入した微量の鉄を含むガラスについて、最も広く使用される物理的漂白剤の1つである。これは、セレンによる着色が、ガラス中に存在する第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを中和するためである。ケイ素-ソーダ-石灰ガラス中の酸化鉄とセレンとの組み合わせは、490~500nmの可視領域に位置する吸収帯(セレン原子と同様の吸収帯)に起因して、赤褐色の着色および光透過率の低下をもたらす。この吸収帯は紫外領域内に延び、ガラスにおいてこの種の透過率の低下ももたらす。ガラスの着色の濃さおよび最終特性は、ガラスにおける酸化鉄およびセレンの濃度の関数である。
【0037】
銅は、ガラス、セラミック、および着色顔料の製造において重要な役割を果たしてきたことがよく知られている。例えば、ペルシャ陶器の着色は、銅が与える色調によって認識されてきた。陶芸家にとって特に興味深いのは、ターコイズブルー、特にエジプシャンダークブルーとペルシアンダークブルーである(Waldemar A.Weil「着色ガラス(Colored Glasses)」、Society of Glass Technology、英国、154~167頁、1976年)。
【0038】
銅は、ケイ素-ナトリウム-カルシウム(silico-sodic-calcic)の種類のガラスだけでなく、いくつかの他のガラス、例えばボロシリカートを含有するものなどにおいても、ガラス組成物に使用されてきた。したがって、発色する色は、ガラスのベース、その濃度、およびその酸化状態によって決まる。
【0039】
ナトリウム-ケイ素-カルシウム系ガラスの場合、酸化物形態の銅は緑がかった色調の青色の着色、具体的にはターコイズの着色を与えるが、ガラスにおいて、銅はその1価の状態にあることができ、これは色を与えない。したがって、青緑色の着色は、存在する銅の量だけでなく、第一銅状態と第二銅状態との間のイオンバランスによって決まる。酸化銅の最大吸収は780nmを中心とする波長帯にあり、第2の弱い最大ピークは450nmに存在し、これは、高いソーダ含有量(約40重量%)では消失する(C.R.Bamford「ガラスにおける発色および色制御、ガラスの科学技術(Color Generation and Control in Glass,Glass Science and Technology)」、Elsevier Scientific Publishing Company、48~50頁、アムステルダム、1977年)。
【0040】
酸化銅(CuO)を酸化鉄、酸化コバルト、セレン、および酸化チタンと組み合わせて組み込むことは、自動車産業または建設に使用するための低光透過率のグレーの色調を得るための代替案であり、ここで、ガラスは、3.85mmの公称厚さを有する場合、15%以下の低い照明光透過率A(TLA)、14%以下の直達日射透過率(TDS)、14%以下の近赤外線透過率(TIR)、8%以下の紫外線透過率(TUV)、38%以下の全日射エネルギー透過率(TTS)、50%以下の純度、および480~590nmの主波長を有する。工業生産では、厚さ4mmでは120ppm未満、厚さ6mmでは100ppm未満の濃度でCuOを添加することが実現可能であることが確認されている。
【0041】
日射制御は、近紫外(UV;300~380nm)、可視(VIS;380~780nm)、および赤外(IR;780~2500nm)の範囲のスペクトル間隔で、透過または反射する日射量を変更する能力である。日射制御は、初期混合物に様々な吸収性着色剤を添加することによって実現され得る。その結果、ガラスは、赤外線(IR)と紫外線(UV)の両方の日射を吸収して、太陽からの放射によって引き起こされる車両の内部への過剰な熱の通過を低減し、また、太陽からの紫外線による劣化から内部を保護する特性を有する。
【0042】
ガラスはまた、積層系の製造に使用されるガラスなど、様々な厚さで製造することができる。より高濃度のCuOが存在する場合、フロート室内での形成プロセスの間に、このプロセスの雰囲気に起因する還元プロセスが起こることがある。これにより、赤味がかった着色がガラス表面に現れ、これは反射によって観察される。この影響は、ガラスバテン(batten)の滞留時間および前進速度に関係するが、このことは、より低速では、ガラス中のCuO含有量を減少させるか、またはフロート室内の還元条件を調整する必要があることを意味する。
【0043】
本開示は、グレーガラスに関する。一態様では、本開示は、フロート法によって製造され、3.85mmの公称厚さを有する場合、15%以下の低い照明光透過率A(TLA)、14%以下の直達日射透過率(TDS)、14%以下の近赤外線透過率(TIR)、8%以下の紫外線透過率(TUV)、38%以下の全日射エネルギー透過率(TTS)、50%以下の純度、および480~590nmの主波長を有する。
【0044】
別の態様では、本開示は、酸化コバルト(Co)の部分的代替物としての酸化銅の使用に関する。フロート法によって製造される板ガラスへの酸化銅の添加の実現可能性は、スズ室の条件による還元効果なしに120ppmに近いレベルまで実証されている。同様に、TiOも、紫外線透過率をさらに低下させるために、酸化鉄とともにさらなる元素として含まれ得る。別の態様では、本開示は、酸化鉄の酸化還元状態を変更するためのさらなる元素、例えば炭素または硝酸ナトリウムを含む、低光透過率のグレーガラス組成物を得るための方法に関する。
【0045】
本開示のガラスは、コストのかかる着色化合物、例えばニッケル、クロム、マンガン、または希土類酸化物、主に酸化エルビウム(Er)の使用を回避する。
【0046】
本開示はさらに、自動車用途と非自動車用途の両方、例えば建設産業または他の用途などで実施され得るグレーガラス組成物に関し、これは、真空陰極浸食法(MSVD)、化学蒸着(CVD)、または他の技術によって塗布される単層または薄い多層によってコーティングされる基板として使用することができる。
【0047】
フロートガラス法によって形成される自動車産業用のケイ素-ソーダ-カルシウムガラスの典型的な組成物は、ガラスの総重量に対する重量パーセントに基づいて、以下の配合によって特徴付けられる:68重量%~75重量%のSiO、0重量%~5重量%のAl、5重量%~15重量%のCaO、0重量%~10重量%のMgO、10重量%~18重量%のNaO、0重量%~5重量%のKO、および0.05重量%~0.3重量%のSO
【0048】
本開示のガラス組成物は、グレー色を得るために、以下に記載される着色剤のうち1種以上が添加されたシリカ-ソーダ-カルシウムガラスをベースとする。一例では、組成物は、1.8重量%~2.3重量%のFe、好ましくは約2.0重量%~約2.2重量%のFe、またはより好ましくは2.04~2.12重量%のFe、0.28重量%~1.2重量%のFeO、15%~40%、好ましくは17%~30%、より好ましくは19%~25%のレドックス、0.030重量%~0.040重量%のCo、0.0020重量%~0.010重量%のSe、0.00050重量%~0.050重量%のCuO、および0.01重量%~1重量%のTiOを含む。酸化還元を調整するために組成物に添加され得るさらなる薬剤としては、0.01重量%~1.0重量%のNaNOおよび0重量%~0.07重量%の炭素が挙げられる。
【0049】
硝酸ナトリウム(NaNO)および炭素を組成物に添加することの1つの利点は、鉄の酸化状態を変更して、直達日射透過率(TDS)の最適レベルに達することである。さらに、硝酸ナトリウムは、ガラス中でのセレンの保持を最適化するのに役立つ。このグレーガラスは、例えば1.4~6mm、1.6~5mm、より好ましくは3.85mmの厚さを有する場合、15%以下の可視光線透過率(TLA)、14%以下の直達日射透過率(TDS)、14%以下の赤外線透過率(TIR)、8%以下の紫外線透過率(TUV)、38%以下のエネルギー全日射透過率(TTS)、50%以下の純度、および480~590nmの主波長を有する。本開示のガラスは、着色化合物、例えばニッケル、クロム、マンガン、または希土類酸化物、主に酸化エルビウム(Er)の使用を回避する。
【0050】
本開示は、以下の番号つきの項においてさらに記載される。
【0051】
項1. 以下の着色剤:1.8重量%~2.3重量%のFe、0.28重量%~1.2重量%のFeO、0.030重量%~0.040重量%のCo、0.0020重量%~0.010重量%のSe、0.00050重量%~0.050重量%のCuO、および0.01重量%~1重量%のTiOを含む組成物から形成される低光透過率グレーガラスであって、15%未満の可視光線透過率(TLA)、14%未満の直達日射透過率(TDS)、14%未満の赤外線透過率(TIR)、8%未満の紫外線透過率(TUV)、および38%未満の全日射透過率(TTS)を有する、ガラス。
【0052】
項2. 15~40%のレドックス率をさらに有する、項1に記載のガラス。
【0053】
項3. 480~590nmの波長において、3.85mmの厚さで50%以下の刺激純度を有する、項1または2に記載のガラス。
【0054】
項4. ガラス組成物が、68重量%~75重量%のSiO、最大5重量%のAl、5重量%~15重量%のCaO、最大10重量%のMgO、10重量%~18重量%のNaO、最大5重量%のKO、および0.05重量%~0.3重量%のSOをさらに含む、項1~3のいずれか一項に記載のガラス。
【0055】
項5. 着色剤が、0.01重量%~1.0重量%のNaNOをさらに含む、項1~4のいずれか一項に記載のガラス。
【0056】
項6. 最大0.07重量%の炭素をさらに含む、項1~5のいずれか一項に記載のガラス。
【0057】
項7. 項1~6のいずれか一項に記載のガラスを含むガラス板。
【0058】
項8. D65光源つき積分球を使用して、観測者の角度10°で鏡面反射成分を含んで測定した場合に、以下の色CIELAB値を有する、項7に記載のガラス板:46~15の範囲のL*値、-10~5の範囲のa*値、および-5.0~15の範囲のb*値。
【0059】
項9. 3.85mmの厚さで50%以下の刺激純度を有する、項7または8に記載のガラス板。
【0060】
項10. 主波長が480nm~590nmである、項7~9のいずれか一項に記載のガラス板。
【0061】
項11. フロート法によって形成される、項7~10のいずれか一項に記載のガラス板。
【0062】
項12. 従来のフロート非真空ガラス方式を使用して低光透過率グレーガラスを製造する方法であって、ガラスバッチを溶融させて溶融ガラスのプールを供給する工程と、溶融ガラスのプールを溶融スズ浴上に流す工程と、溶融ガラスを制御可能に冷却し、溶融ガラスに力を加えながら、溶融ガラスを溶融スズ浴の表面上で移動させて所望の厚さのガラスを供給する工程と、溶融スズ浴からガラスを取り除く工程とを含み、ガラスが、1.8重量%~2.3重量%のFe、0.28重量%~1.2重量%のFeO、0.030重量%~0.040重量%のCo、0.0020重量%~0.010重量%のSe、0.00050重量%~0.050重量%のCuO、および0.01重量%~1重量%のTiOを含み、ガラスが、15%未満の可視光線透過率(TLA)、14%未満の直達日射透過率(TDS)、14%未満の赤外線透過率(TIR)、8%未満の紫外線透過率(TUV)、および38%未満の全日射透過率(TTS)を有する、方法。
【0063】
項13. ガラスが15~40%のレドックス率を有する、項12に記載の方法。
【0064】
項14. ガラスが、480~590nmの波長において、3.85mmの厚さで50%以下の刺激純度を有する、項12または13に記載の方法。
【0065】
項15. ガラスが、68重量%~75重量%のSiO、0重量%~5重量%のAl、5重量%~15重量%のCaO、0重量%~10重量%のMgO、10重量%~18重量%のNaO、0重量%~5重量%のKO、および0.05重量%~0.3重量%のSOをさらに含む、項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
項16. ガラスが、0.01重量%~1.0重量%のNaNOをさらに含む、項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【0067】
項17. ガラスの主波長が480nm~590nmである、項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【0068】
項18. 着色剤を含むガラスであって、着色剤が、(ガラスの総重量に対して)1.8重量%~2.3重量%のFe、0.28重量%~1.2重量%のFeO、0.030重量%~0.040重量%のCo、0.0020重量%~0.010重量%のSe、0.00050重量%~0.050重量%のCuO、0.01重量%~1重量%のTiO、および15~40%のレドックスを含む、ガラス。
【0069】
項19. 15%以下の可視光線透過率(TLA)をさらに有する、項18に記載のガラス。
【0070】
項20. 14%以下の直達日射透過率(TDS)をさらに有する、項18または19に記載のガラス。
【0071】
項21. 14%以下の赤外線透過率(TIR)をさらに有する、項18~20のいずれか一項に記載のガラス。
【0072】
項22. 8%以下の紫外線透過率(TUV)、および38%以下の全日射透過率(TTS)をさらに有する、項18~21のいずれか一項に記載のガラス。
【0073】
項23. 68重量%~75重量%のSiO、0重量%~5重量%のAl、5重量%~15重量%のCaO、0重量%~10重量%のMgO、10重量%~18重量%のNaO、0重量%~5重量%のKO、および0.05重量%~0.3重量%のSOをさらに含む、項18~22のいずれか一項に記載のガラス。
【0074】
項24. Feの量が、2.0重量%~2.2重量%である、項18~23のいずれか一項に記載のガラス。
【0075】
項25. Feの量が、2.04重量%~2.12重量%である、項18~23のいずれか一項に記載のガラス。
【0076】
【0077】
以下の例は、光源Aでの光透過率(TLA)、直達日射透過率(TDS)、近赤外線透過率(TIR)、紫外線透過率(TUV)、全日射透過率(TTS)といった物性を示す。3.85のガラスについての色の透過(L*、a*、およびb*)、色純度、ならびに主波長(l)。
【0078】
表1および表2
【0079】
表1および表2(例1~14)は、酸化鉄(Fe)、酸化コバルト(Co)、セレン(Se)、酸化銅、および酸化チタン(TiO)の組み合わせを用いた本開示の組成物の実験結果を示す。さらに、組成物は、炭素の添加なしに、混合物中に酸化剤として0.66%の硝酸ナトリウム(NaNO)を含有する。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
表3(例15~18)は、酸化鉄(Fe)、酸化コバルト(Co)、セレン(Se)、酸化銅、および酸化チタン(TiO)の組み合わせを用いた本開示の組成物の実験結果を示す。さらに、0.16%の硝酸ナトリウム(NaNO)および0.04%の炭素(コークスタイプ)を混合物に組み込む。
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
表4および表5(例19~31)は、酸化鉄(Fe)、酸化コバルト(Co)、セレン(Se)、酸化銅、および酸化チタン(TiO)の組み合わせを用いた本開示の組成物の実験結果を示す。同様に、組成物は、混合物中に0.16%の硝酸ナトリウム(NaNO)および0.02%の炭素を含有する。
【0087】
【表6】
【0088】
表6(例32~34)は、酸化鉄(Fe)、酸化コバルトまたは四酸化コバルト(CoOまたはCo)、セレン(Se)、酸化銅、および酸化チタン(TiO)の組み合わせを用いた本開示の組成物の実験結果を示す。さらに、組成物は、0.16%の硝酸ナトリウム(NaNO)および0.030%の炭素を含有する。硝酸ナトリウム(NaNO)および炭素を組成物に添加する主目的は、鉄の酸化状態を変更して、直達日射透過率(TDS)の最適レベルに達することである。さらに、硝酸ナトリウムは、ガラス中でのセレンの保持を最適化するのに役立つ。色およびプライバシーは、本開示に記載される染料の百分率を最適化することによって調整される。
【0089】
本開示のさらなる例としては、表7に示す以下のものが挙げられる。
【0090】
表7
【0091】
さらなる実験例を以下の表8に示す。
【表7】
【0092】
【表8-1】

【表8-2】
【0093】
上述の例のレドックス率は0.2~0.3の範囲であり、平均0.25であった。得られたガラスの物性を国際的に認められた基準で評価した。色の決定のための仕様、例えば主波長および刺激純度は、多くの観測者が参加した実験の標準的かつ直接的な結果として、国際照明委員会(C.I.E.)によって採用された三刺激式色彩計値(x、y、およびz)から導出されたものである。これらの仕様は、赤色、緑色、および青色にそれぞれ対応する三刺激式色彩計値の三色係数x、y、およびzを計算することによって決定することができる。三色値を色度図上にプロットし、標準の光であると考えられる光源D65の座標と比較する。比較により、色刺激純度およびその主波長を決定するための情報が与えられる。主波長は色の波長を規定し、その値は380~780nmの可視範囲内であるが、刺激純度については、その値が低いほど中間色になる傾向がある。
【0094】
紫外線透過率(TUV)の計算は、太陽からの紫外線の範囲に調整される。したがって、紫外線透過率は、ISO規格DIS 13837の指示内容に従って、300~400nmの範囲で10nm間隔で評価した。
【0095】
光透過率の評価には、光源「A」(TLA)を用い、400~800ナノメートルの波長範囲で10nm間隔で値を積分した。色の透過(L*、a*、およびb*)は、ASTM E308(C.I.E.D65 観測者の角度10°)に従って計算した。
【0096】
直達日射透過率(TDS)の値は、ISO/DIS 13837規格に従って、300~2500nmの範囲で5、10、および50nmの間隔で評価した。
【0097】
赤外線透過率(TIR)においては、ISO/DIS 13837規格の値を使用して、太陽光スペクトルの放射に含まれる、800~2500nmの範囲を有する範囲(50nm間隔)が考えられる。
【0098】
全日射エネルギー透過率(TTS)は、ISO/DIS 13837規格に従って、風速4m/s(静止)を考慮して300~2500nmの範囲で評価した。
【0099】
本開示のニュートラルグレーガラスは、フロートガラス法によって厚さ1.4mm~6mmで製造することができる。しかしながら、本開示は、この範囲の厚さに限定されず、窓ガラス方式、二重ラミネート加工において焼き戻しとして、または1つ以上の層によって覆われた基板として加工することができる。
【0100】
このガラスは、以下の特性を有する:15%以下の光源Aでの光透過率(TLA)、14%以下の直達日射透過率(TDS)、14%以下の近赤外線透過率(TIR)、8%以下の紫外線透過率(TUV)、38%以下の全日射エネルギー透過率(TTS)、および50%以下の純度。
【0101】
前述の説明に開示された概念から逸脱することなく、本開示に変更が加えられ得ることが、当業者には容易に理解されよう。したがって、本明細書で詳細に記載される特定の例は例示にすぎず、本開示の範囲を限定するものではなく、本開示には、添付の特許請求の範囲およびそのありとあらゆる均等物の全範囲が与えられるべきである。
【外国語明細書】