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  • -半導体装置および半導体装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101232
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10D 84/80 20250101AFI20250630BHJP
   H10D 8/25 20250101ALI20250630BHJP
【FI】
H01L27/06 102A
H01L29/90 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217922
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】工藤 弘儀
(72)【発明者】
【氏名】柳川 洋
(72)【発明者】
【氏名】中柴 康隆
【テーマコード(参考)】
5F048
【Fターム(参考)】
5F048AC10
5F048BC06
5F048BG12
5F048BG13
5F048DA10
(57)【要約】
【課題】不純物濃度が低い半導体層を含むダイオードの動作抵抗が増加することを抑制する。
【解決手段】
半導体装置10は、第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層中に設けられ、第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層と、第2半導体層中に設けられ、第2半導体層よりも不純物濃度が高い第2導電型の第3半導体層と、第3半導体層上に設けられた第1導電型の第4半導体層と、第4半導体層上に設けられ、第4半導体層よりも不純物濃度が高い第1導電型の第5半導体層と、第2半導体層中に設けられ、第3半導体層よりも不純物濃度が高い第2導電型の第6半導体層と、深さ方向において第3半導体層と同一の不純物濃度分布を有し、かつ、上面が第6半導体層と接する第2導電型の第7半導体層とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層中に設けられ、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層中に設けられ、前記第2半導体層よりも不純物濃度が高い第3半導体層と、
前記第3半導体層上に設けられた前記第1導電型の第4半導体層と、
前記第4半導体層上に設けられ、前記第4半導体層よりも不純物濃度が高い前記第1導電型の第5半導体層と、
前記第2半導体層中に設けられ、前記第3半導体層よりも不純物濃度が高い前記第2導電型の第6半導体層と、
深さ方向において前記第3半導体層と同一の不純物濃度分布を有し、かつ、上面が前記第6半導体層と接する前記第2導電型の第7半導体層と
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記第3半導体層で構成されるアノードおよびカソードの一方と、前記第4半導体層および第5半導体層で構成される前記アノードおよび前記カソードの他方との間に、空乏層が形成され、
前記第3半導体層に前記第2導電型の不純物のイオンを注入する際に形成される点欠陥が、前記空乏層より深い位置または浅い位置に位置する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2半導体層中に設けられ、前記深さ方向において前記第4半導体層と同一の不純物濃度分布を有する前記第1導電型のLDD(Lightly-Doped Drain)領域とを有するトランジスタをさらに備える
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3半導体層はツェナーダイオードの前記アノードを構成し、前記第5半導体層および前記第6半導体層は前記ツェナーダイオードの前記カソードを構成する
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体装置は、前記ツェナーダイオード、および前記トランジスタが1つの半導体チップに搭載されたIPD(Intelligent Power Device)である
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
第1導電型の第1半導体層中に、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層を形成する工程と、
前記第2半導体層中に、前記第2半導体層よりも不純物濃度が高い前記第2導電型の第3半導体層を形成する工程と、
前記第3半導体層上に前記第1導電型の第4半導体層を形成する工程と、
前記第4半導体層上に、前記第4半導体層よりも不純物濃度が高い前記第1導電型の第5半導体層を形成する工程と、
前記第2半導体層中に、前記第3半導体層よりも不純物濃度が高い前記第2導電型の第6半導体層を形成する工程と
を含み、
前記第3半導体層を形成する工程において、前記第3半導体層の形成と同時に、上面が前記第6半導体層に接し、かつ、前記第2半導体層よりも不純物濃度が高い前記第2導電型の第7半導体層を形成する
半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第3半導体層で構成されるアノードおよびカソードの一方と、前記第4半導体層および第5半導体層で構成される前記アノードおよび前記カソードの他方との間に、空乏層が形成され、
前記第3半導体層を形成する工程で注入される前記第2導電型の不純物のイオンの飛程は、前記空乏層より深い位置または浅い位置に設定される
請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第4半導体層を形成する工程において、前記第4半導体層の形成と同時に前記第2半導体層中に前記第1導電型のLDD(Lightly-Doped Drain)領域を形成する
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第3半導体層はツェナーダイオードの前記アノードを構成し、前記第3半導体層および前記第5半導体層は前記ツェナーダイオードの前記カソードを構成する
請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関し、特に、ダイオードを備える半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ツェナーダイオードのカソードと、トランジスタのソースおよびドレイン領域とを同時に形成することで製造工程の数を減少させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-183039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LDD(Lightly Doped Drain)領域のような不純物濃度の低い領域を有するトランジスタと、ダイオード(例:ツェナーダイオード)とを同時に形成する場合、ダイオードの動作抵抗が増加してしまうという問題がある。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態による半導体装置は、第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層中に設けられ、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層と、前記第2半導体層中に設けられ、前記第2半導体層よりも不純物濃度が高い第3半導体層と、前記第3半導体層上に設けられた前記第1導電型の第4半導体層と、前記第4半導体層上に設けられ、前記第4半導体層よりも不純物濃度が高い前記第1導電型の第5半導体層と、前記第2半導体層中に設けられ、前記第3半導体層よりも不純物濃度が高い前記第2導電型の第6半導体層と、深さ方向において前記第3半導体層と同一の不純物濃度分布を有し、かつ、上面が前記第6半導体層と接する前記第2導電型の第7半導体層とを備える。
【0007】
一実施の形態による半導体装置の製造方法は、第1導電型の第1半導体層中に、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層を形成する工程と、前記第2半導体層中に、前記第2半導体層よりも不純物濃度が高い前記第2導電型の第3半導体層を形成する工程と、前記第3半導体層上に前記第1導電型の第4半導体層を形成する工程と、前記第4半導体層上に、前記第4半導体層よりも不純物濃度が高い前記第1導電型の第5半導体層を形成する工程と、前記第2半導体層中に、前記第3半導体層よりも不純物濃度が高い前記第2導電型の第6半導体層を形成する工程とを含み、前記第3半導体層を形成する工程において、前記第3半導体層の形成と同時に、上面が前記第6半導体層に接し、かつ、前記第2半導体層よりも不純物濃度が高い前記第2導電型の第7半導体層を形成する。
【発明の効果】
【0008】
前記一実施の形態によれば、不純物濃度が低い半導体層を含むダイオードの動作抵抗が増加することを抑制する半導体装置、および半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の比較例にかかる半導体装置の模式断面図である。
図2】第2の比較例にかかる半導体装置の模式断面図である。
図3】第1の比較例および第2の比較例にかかる半導体装置における不純物の濃度分布を示すグラフである。
図4】実施形態1にかかる半導体装置の模式断面図である。
図5】実施形態1にかかる半導体装置の電気特性を示すグラフである。
図6】実施形態1にかかる半導体装置における不純物の濃度分布を示すグラフである。
図7】実施形態1にかかる半導体装置の電気特性のばらつきを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
実施形態にいたる検討
図1は、第1の比較例にかかる半導体装置1の模式断面図である。左側の図はツェナーダイオードが形成される領域(ダイオード領域とも言われる)の模式断面図であり、右側の図はNチャネル型トランジスタが形成される領域(トランジスタ領域とも言われる)の模式断面図である。図1の下方向は深さ方向とも言われる。半導体装置1は、ダイオード領域とトランジスタ領域を含む素子領域とパワートランジスタ領域が1つの半導体チップに搭載されたIPD(Intelligent Power Device)であってもよい。
【0012】
半導体装置1は、半導体基板11、エピタキシャル層12、HV(High Voltage)pウェル13-1、HVpウェル13-2、pウェル14-1、pウェル14-2、ZD(Zener Diode)アノード層15-1、n型半導体層16-1、n型半導体層16-2、n+型半導体層17-1、n+型半導体層17-2、p+型半導体層18-1、p+型半導体層18-2、絶縁膜19、ゲート電極20、およびスペーサ21を備えている。
【0013】
半導体基板11は、例えば、n型の半導体基板である。エピタキシャル層12は、例えば、エピタキシャル成長法により半導体基板11上に形成されたエピタキシャル膜である。半導体基板11はサブストレート端子(Sub)に接続されている。半導体基板11およびエピタキシャル層12は第1半導体層に対応する。
【0014】
左側の図を参照すると、エピタキシャル層12中に、p型のHVpウェル13-1が形成されている。HVpウェル13-1中に、p型のpウェル14-1が形成されている。pウェル14-1の不純物濃度は、HVpウェル13-1の不純物濃度よりも高い。HVpウェル13-1やpウェル14-1は、例えば、パターニングされたレジストをマスクとしたイオン注入により形成される。HVpウェル13-1およびpウェル14-1は、第2半導体層に対応する。
【0015】
pウェル14-1中に、p型の不純物(例:ボロン)が導入されたZDアノード層15-1(第3半導体層)が形成されている。ZDアノード層15-1の不純物濃度は、pウェル14-1の不純物濃度より高い。ZDアノード層15-1の上面は、n型半導体層16-1の下面に接触している。ZDアノード層15-1は、ツェナーダイオードのアノードを構成する。ZDアノード層15-1は、例えば、パターニングされたレジストをマスクとしたイオン注入により形成される。
【0016】
ZDアノード層15-1上に、n型の不純物(例:リン)が導入されたn型半導体層16-1(第4半導体層)が形成されている。n型半導体層16-1の下面は、ZDアノード層15-1およびpウェル14-1に接触している。n型半導体層16-1は、例えば、パターニングされたレジストをマスクとしたイオン注入により形成される。
【0017】
n型半導体層16-1上に、n+型の不純物(例:砒素、リン)が導入されたn+型半導体層17-1(第5半導体層)が形成されている。n+型半導体層17-1の不純物濃度は、n型半導体層16-1の不純物濃度より高い。n型半導体層16-1およびn+型半導体層17-1は、ツェナーダイオードのカソードを構成する。n+型半導体層17-1は、カソード端子(C)に接続される。n+型半導体層17-1は、例えば、レジストをマスクとしたイオン注入により形成される。
【0018】
また、pウェル14-1中にp+型のp+型半導体層18-1(第6半導体層)が形成されている。p+型半導体層18-1の不純物濃度は、ZDアノード層15-1の不純物濃度より高い。p+型半導体層18-1は、アノード端子(A)に接続される。p+型半導体層18-1は、例えば、レジストをマスクとしたイオン注入により形成される。
【0019】
半導体基板11上に絶縁膜19が形成されている。絶縁膜19は、n+型半導体層17-1をp+型半導体層18-1から絶縁している。絶縁膜19は、例えば、LOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)法、またはトレンチ法により形成されてもよい。
【0020】
右側の図を参照すると、エピタキシャル層12上にHVpウェル13-2が形成され、HVpウェル13-2上にpウェル14-2(ウェル領域)が形成されている。トランジスタ領域のHVpウェル13-2およびダイオード領域のHVpウェル13-1は同時に形成され、互いに同一の不純物濃度分布を有する。トランジスタ領域のpウェル14-2およびダイオード領域のpウェル14-1は同時に形成され、互いに同一の不純物濃度分布を有する。HVpウェル13-2は、例えば、レジストをマスクとしたイオン注入により形成される。pウェル14-2は、例えば、レジストをマスクとしたイオン注入により形成される。
【0021】
pウェル14-2中に、2つのn型半導体層16-2(LDD領域)が形成され、n型半導体層16-2上にn+型半導体層17-2が形成されている。ダイオード領域のn型半導体層16-1およびトランジスタ領域のn型半導体層16-2は、同時に形成されており、互いに同一の不純物濃度分布を有する。ダイオード領域のn+型半導体層17-1およびトランジスタ領域のn+型半導体層17-2は、同時に形成されており、互いに同一の不純物濃度分布を有する。2つのn+型半導体層17-2の一方はソース端子(S)に接続され、2つのn+型半導体層17-2の他方はドレイン端子(D)に接続されている。n型半導体層16-2は、例えば、ゲート電極20をマスクとしたイオン注入により形成される。n+型半導体層17-2は、例えば、ゲート電極20およびスペーサ21をマスクとしたイオン注入により形成される。
【0022】
ゲート電極20は、2つのn+型半導体層17-2の間に位置し、かつ、pウェル14-2上に形成されている。ゲート電極20は、例えば、レジストをマスクとしてポリシリコンをエッチングすることにより形成される。ゲート電極20の両サイドに、スペーサ21が形成されている。スペーサ21は、例えば、堆積した酸化膜等の異方性エッチングにより形成される。
【0023】
pウェル14-2中に、p+型のp+型半導体層18-2が形成されている。絶縁膜19は、n+型半導体層17-2をp+型半導体層18-2から絶縁している。p+型半導体層18-1およびp+型半導体層18-2は、同時に形成されており、互いに同一の不純物濃度分布を有する。p+型半導体層18-2は、バックゲート端子(BG)に接続されている。p+型半導体層18-2は、例えば、レジストをマスクとしたイオン注入により形成される。
【0024】
LDDを含むソースおよびドレイン層と、ツェナーダイオードのカソードとを同時に製造できるため、第1の比較例にかかる半導体装置1は、製造に必要な工程の数を削減できる。
【0025】
図2は、第2の比較例にかかる半導体装置1aのダイオード領域の模式断面図である。なお、トランジスタ領域の図示を省略している。図1図2とを比較すると、半導体装置1aは、n型半導体層16-1(LDD)を含んでいない。
【0026】
次に、第1の比較例にかかる半導体装置1の第1の課題について説明する。半導体装置1は、不純物濃度が低いn型半導体層16-1を含んでいるため、第2の比較例と比べて、ツェナーダイオードの動作抵抗Ronが高いという問題がある。
【0027】
次に、第1の比較例にかかる半導体装置1の第2の課題について説明する。図3の上段図は、図2のB-B’断面における不純物の濃度分布を示すグラフである。横軸は、表面(ツェナーダイオードが形成される面)からの深さを表す。曲線C11はキャリアの濃度分布を表し、曲線C12はZDアノード層15-1に注入されるp型の不純物の注入直後の濃度分布を表す。点線D1は、空乏層の中心の深さ位置を表す。ZDアノード層15-1を構成するp型の不純物の濃度分布は、所定の深さ位置においてピークを有するように設定される。ピーク位置は、半導体装置1aの表面からイオンが進入する深さ(飛程とも言われる)に対応する。不純物の濃度分布が最大となるピーク位置には、イオン注入による点欠陥が形成される。バツ印は、点欠陥が形成される深さ位置を示している。
【0028】
下段図は、図1のA-A’断面におけるキャリア濃度の分布を示すグラフである。曲線C21はキャリアの濃度分布を表し、曲線C22はZDアノード層15-1に注入されるp型の不純物の濃度分布を表す。点線D2は、空乏層の中心の深さ位置を表す。n型半導体層16-1(LDD)が存在するため、右向き矢印で示されるように、空乏層が、より深い位置にシフトしている。そのため、空乏層中に、イオン注入による点欠陥が形成される。したがって、第1の比較例にかかる半導体装置1では、点欠陥によりツェナーダイオードのリーク電流が増加してしまうという問題がある。
【0029】
実施形態1
図4は、実施形態1にかかる半導体装置10の模式断面図である。図1図3とを比較すると、半導体装置10は、ダイオード領域においてp型半導体層15-2(第7半導体層)をさらに備えている。p型半導体層15-2はZDアノード層15-1を形成する際に同時に形成され、p型半導体層15-2は、ZDアノード層15-1と同一の不純物濃度分布を有する。p型半導体層15-2は、pウェル14-1中に形成されている。p型半導体層15-2の上面は、p+型半導体層18-1の下面に接している。p型半導体層15-2は、例えば、レジストをマスクとしたイオン注入により形成される。
【0030】
ツェナーダイオードのブレークダウン後の電流の経路上に、不純物濃度が高いp型半導体層15-2が形成されているため、実施形態1は、ツェナーダイオードの動作抵抗を低減することができる。
【0031】
また、HVpウェル13-1およびHVpウェル13-2が、共通のHVpウェル13に置き換わり、pウェル14-1および14-2が共通のpウェル14に置き換わっている。例えば、半導体チップの下層の全面にHVpウェル13およびpウェル14が配置されてもよい。
【0032】
また、ZDアノード層15-1およびp型半導体層15-2を形成する際のp型の不純物のイオン注入の飛程が、ツェナーダイオードのアノードとカソードの間に形成される空乏層よりも深い位置または浅い位置に設定される。なお、ツェナーダイオードのアノードはZDアノード層15-1で構成され、ツェナーダイオードのカソードはn型半導体層16-1およびn+型半導体層17-1で構成される。ZDアノード層15-1を形成する際に形成された点欠陥が、空乏層よりも深い位置または浅い位置に位置しているため、実施形態1は、ツェナーダイオードのリーク電流を低減することができる。
【0033】
図5は、実施形態1にかかるツェナーダイオードの電気特性を示すグラフである。横軸はツェナー電圧Vz[a.u.]を表し、縦軸はツェナー電流Iz[a.u.]を表す。二点鎖線は実施形態1にかかるツェナーダイオードの電気特性を示し、実線は第2の比較例にかかるツェナーダイオードの電気特性を示す。実施形態1は、第2の比較例にかかるツェナーダイオードの動作抵抗を約24%低減することができることがわかった。
【0034】
図6を参照し、曲線C31は、図4のC-C’断面におけるキャリアの濃度分布を示している。両側矢印はpn接合における空乏層の範囲を示している。
【0035】
曲線C32は、イオンの加速電圧が70keVである場合の不純物の濃度分布を示している。曲線C33は、イオンの加速電圧が150keVである場合の不純物の濃度分布を示している。曲線C34は、イオンの加速電圧が180keVである場合の不純物の濃度分布を示している。イオンの加速電圧が70kevである場合、イオン注入により形成される点欠陥が空乏層内に位置しておりリーク電流が増加してしまう。イオンの加速電圧を150keVとすることで、点欠陥が空乏層より深い位置に形成されるため、リーク電流の増加を抑えることができる。また、イオンの加速電圧を180kevとすることで、右向き矢印で示されるように点欠陥を更に深い位置に形成することができる。なお、加速電圧をより小さくし、イオン注入の飛程を空乏層より浅い位置に設定した場合もリーク電流の増加を抑制することができる。
【0036】
図7の上段図は、イオンの加速電圧が70keVである場合のツェナーダイオードの電気特性のばらつきを示すグラフであり、下段図は、イオンの加速電圧が150keVである場合のツェナーダイオードの電気特性のばらつきを示すグラフである。グラフの縦軸は電流値Ik[a.u.]を表し、横軸は電圧値Vk[a.u.]を表す。イオンの加速電圧を150keVとすることで、電気特性のばらつきを抑え、歩留まりを改善することができる。
【0037】
実施形態1は、ダイオードの動作抵抗を低減することができる。また、実施形態1は、ダイオードに流れるリーク電流を低減することができる。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上記の実施の形態に係るIGBTでは、半導体基板、半導体層、拡散層(拡散領域)などの導電型(p型もしくはn型)を反転させた構成としてもよい。そのため、n型、およびp型の一方の導電型を第1の導電型とし、他方の導電型を第2の導電型とした場合、第1の導電型をp型、第2の導電型をn型とすることもできるし、反対に第1の導電型をn型、第2の導電型をp型とすることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1、1a、10 半導体装置
11 半導体基板
12 エピタキシャル層
13-1、13-2、13 HVpウェル
14-1、14-2、14 pウェル
15-1 ZDアノード層
15-2 p型半導体層
16-1、16-2 n型半導体層
17-1、17-2 n+型半導体層
18-1、18-2 p+型半導体層
19 絶縁膜
20 ゲート電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7