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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101264
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20250630BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
G03G15/20 515
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217986
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】久家 秀喜
(72)【発明者】
【氏名】永田 靖
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】落合 誠
(72)【発明者】
【氏名】鵜川 貴之
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033BB12
2H033BB18
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB35
2H033BB37
2H033CA39
2H270LA70
2H270MA34
2H270MC44
2H270MC70
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】2つの押当部の間の圧力を変更することにより発生する押当部の損傷を抑制する。
【解決手段】接触および離間可能に設けられ、未定着画像が形成された記録材を挟んで回転することにより、記録材に圧力を加えながら送りだす第1押当部および第2押当部と、第1押当部と第2押当部との間の圧力を変更する変更部と、第1押当部を回転駆動する第1押当駆動部と、第2押当部を回転駆動する第2押当駆動部と、変更部、第1押当駆動部、および第2押当駆動部を制御する制御部と、を備え、制御部は、第1押当駆動部および第2押当駆動部による回転駆動を停止させた後に変更部により圧力を変更させることを特徴とする定着装置。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触および離間可能に設けられ、未定着画像が形成された記録材を挟んで回転することにより、当該記録材に圧力を加えながら送りだす第1押当部および第2押当部と、
前記第1押当部と前記第2押当部との間の圧力を変更する変更部と、
前記第1押当部を回転駆動する第1押当駆動部と、
前記第2押当部を回転駆動する第2押当駆動部と、
前記変更部、前記第1押当駆動部、および前記第2押当駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を停止させた後に前記変更部により前記圧力を変更させること
を特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を停止させ、その後予め定められた時間が経過した後に前記変更部により前記圧力を変更させること
を特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1押当部と前記第2押当部とが押し付けられた状態にて前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を停止させ、その後、予め定められた時間が経過した後に前記変更部により前記第1押当部と前記第2押当部とを離間させることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記予め定められた時間は、前記第1押当部および前記第2押当部の回転が停止するのにかかる時間として定められていることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記制御部が前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を停止させる際、前記第1押当部と前記第2押当部とは予め定められた圧力で押し当てられており、
前記予め定められた時間は、前記予め定められた圧力の大きさによって異なることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部を個別に制御できることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を同じタイミングで停止させることを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
未定着画像を記録材に形成する手段と、
前記記録材に形成された前記未定着画像を前記記録材に定着させる請求項1乃至7のいずれか一項に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、表面の一部に像担持体が形成されるシート状媒体に対して圧力を加える加圧装置であって、接近および離間可能に設けられ、シート状媒体を挟んだ状態で少なくとも一方が回転することによりシート状媒体に圧力を加えながら送り出す第1押当部および第2押当部と、第1押当部と第2押当部との間の距離が、設定された目標値となるように駆動部を制御する制御部と、目標値を設定する目標設定部と、を備え、目標設定部は、第1押当部と第2押当部との間にシート状媒体が存在しない場合、目標値を、シート状媒体の厚さよりも長い第1距離に設定し、第1押当部と第2押当部との間にシート状媒体および像担持体が存在する場合、目標値を、シート状媒体に目標圧力を加える第2距離に設定している。これにより、第1押当部および第2押当部の間にシート状媒体を突入させるときの衝撃を無くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-136241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転する2つの押当部の間に未定着画像が形成された記録材を通過させ、この未定着画像を定着させる装置がある。例えば、未定着画像が形成されている記録媒体の種類に応じ、または画像形成装置の使用状況によって、この2つの押当部の間の圧力を変更する制御を行うと、押当部の回転の速度が互いに異なってくる場合がある。押当部の回転の速度が互いに異なってくると、押当部同士の擦れが発生し、例えば押当部に損傷が生じる。
本発明は、2つの押当部の間の圧力を変更することにより発生する押当部の損傷を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、接触および離間可能に設けられ、未定着画像が形成された記録材を挟んで回転することにより、当該記録材に圧力を加えながら送りだす第1押当部および第2押当部と、前記第1押当部と前記第2押当部との間の圧力を変更する変更部と、前記第1押当部を回転駆動する第1押当駆動部と、前記第2押当部を回転駆動する第2押当駆動部と、前記変更部、前記第1押当駆動部、および前記第2押当駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を停止させた後に前記変更部により前記圧力を変更させることを特徴とする定着装置である。
請求項2に記載の発明は、前記制御部は、前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を停止させ、その後予め定められた時間が経過した後に前記変更部により前記圧力を変更させることを特徴とする請求項1に記載の定着装置である。
請求項3に記載の発明は、前記制御部は、前記第1押当部と前記第2押当部とが押し付けられた状態にて前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を停止させ、その後、予め定められた時間が経過した後に前記変更部により前記第1押当部と前記第2押当部とを離間させることを特徴とする請求項2に記載の定着装置である。
請求項4に記載の発明は、前記予め定められた時間は、前記第1押当部および前記第2押当部の回転が停止するのにかかる時間として定められていることを特徴とする請求項3に記載の定着装置である。
請求項5に記載の発明は、前記制御部が前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を停止させる際、前記第1押当部と前記第2押当部とは予め定められた圧力で押し当てられており、前記予め定められた時間は、前記予め定められた圧力の大きさによって異なることを特徴とする請求項3に記載の定着装置である。
請求項6に記載の発明は、前記制御部は、前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部を個別に制御できることを特徴とする請求項1に記載の定着装置である。
請求項7に記載の発明は、前記制御部は、前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を同じタイミングで停止させることを特徴とする請求項6に記載の定着装置である。
請求項8に記載の発明は、未定着画像を記録材に形成する手段と、前記記録材に形成された前記未定着画像を前記記録材に定着させる請求項1乃至7のいずれか一項に記載の定着装置と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、2つの押当部の間の圧力を変更することにより発生する押当部の損傷を抑制することができる。
請求項2の発明によれば、停止後すぐに圧力を変更させる場合に比べて、押当部に生じる損傷を抑制することができる。
請求項3の発明によれば、第1押当部と第2押当部との回転速度が慣性力によって異なる状態となることを抑制することができる。
請求項4の発明によれば、第1押当部および第2押当部の回転中に、これらの間の圧力を変更させる場合に比べて、押当部の損傷をより抑制することができる。
請求項5の発明によれば、第1押当部と第2押当部との回転駆動を停止した後の印刷開始を早めることができる。
請求項6の発明によれば、第1押当駆動部と第2押当駆動部とのうちの一方のみ駆動する場合に比べて、用紙搬送時の圧力を軽減できる。
請求項7の発明によれば、停止タイミングが異なることで第1押当部と第2押当部との速度差が生じることを抑制する。
請求項8の発明によれば、定着装置の2つの押当部の間の圧力を変更することにより発生する押当部の損傷を抑制した画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態が適用される画像形成装置を示す図である。
図2】転写胴と把持ユニットとの構成を示す斜視図である。
図3】加圧胴の構成を示す斜視図である。
図4】把持ユニットが記録材を把持した状態を示す斜視図である。
図5】位置変更部の動作により、加熱ロールが離間位置に移動した状態を示す図である。
図6】位置変更部の動作により、加熱ロールが接触位置に移動した状態を示す図である。
図7】制御部の機能構成を示す図である。
図8】制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図9】定着終了後に加熱ロールを離間させる場合の、加圧胴と加熱ロールとの間の圧力と周速度とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔画像形成装置1〕
以下、添付図面を参照して、本実施の形態が適用される画像形成装置について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置1を示す図である。図1に示される画像形成装置1は、記録材Pに文字や画像を形成する画像形成装置の一例である。画像形成装置1は、例えば、記録材Pにトナー像を形成する電子写真式の画像形成装置が例示される。なお、各図に示す矢印Hは鉛直方向であって装置上下方向を示し、矢印Wは、水平方向であって装置幅方向を示し、矢印Dは、装置前後方向(装置奥行方向)を示す。
【0009】
画像形成装置1は、トナー像を形成する画像形成部10と、画像形成部10が形成したトナー像を記録材Pに転写する転写部20と、未定着画像である未定着のトナー像を記録材Pに定着させる定着装置の一例である定着部30と、記録材Pを搬送する搬送部40と、画像形成装置1の各部を制御する制御部100とを備える。
【0010】
〔制御部100〕
制御部100は、画像形成装置1の全体を制御するCPU(Central Processing Unit)101と、演算に際して作業エリアとして用いられるRAM(Random Access Memory)102と、CPU101が実行する各種プログラムや各種設定等を記憶するメモリであるROM(Read Only Memory)103と、を備える。
【0011】
〔画像形成部10〕
図1に示される画像形成部10は、色ごとにトナー像を形成するように複数備えられている。本実施の形態では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の計4色の画像形成部10が設けられている。図1に示す(Y)、(M)、(C)、(K)は、上記各色に対応する構成部分を示している。なお、各色の画像形成部10は、用いるトナーを除き同様に構成されているので、各色の画像形成部10を代表して、図1では画像形成部10(K)の各部に符号を付している。
【0012】
各色の画像形成部10は、図1における反時計回り方向に回転しながら静電潜像が形成される感光体ドラム12を備える。また、各色の画像形成部10は、感光体ドラム12の表面を帯電する帯電器13と、感光体ドラム12を露光する露光装置14と、感光体ドラム12上に形成された静電潜像を現像する現像装置15と、を備える。
【0013】
〔転写部20〕
図1に示される転写部20は、各画像形成部10で形成されたトナー像を記録材Pに転写する装置である。
転写部20は、各画像形成部10の感光体ドラム12で形成された各色のトナー像が転写される中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21の内周側に設けられるロール22とを備える。また、転写部20は、各画像形成部10の各色トナー像を一次転写位置T1にて中間転写ベルト21に転写させる一次転写ロール25と、中間転写ベルト21上に転写されたトナー像を二次転写位置T2にて記録材Pに一括転写させる対向ロール23と転写胴26とを備える。さらに、転写部20は、中間転写ベルト21表面のトナー等を除去するクリーナ28を備える。
【0014】
中間転写ベルト21は、各色の感光体ドラム12からトナー像が外周面に転写される。この中間転写ベルト21は、図1に示されるように、無端状を成すとともに、正面視にて(装置奥行方向に見て)逆三角形状の姿勢となるように、複数のロール22および対向ロール23に巻き掛けられている。中間転写ベルト21は、複数のロール22の少なくとも1個が回転駆動されることで、矢印A方向へ周回する。
【0015】
本実施の形態では、一次転写ロール25と感光体ドラム12との間に一次転写電界が印加されることで、感光体ドラム12に形成されたトナー像が、一次転写位置T1にて中間転写ベルト21に転写される。
【0016】
転写胴26は、中間転写ベルト21を挟んで対向ロール23に対向して配置されている。転写胴26は、記録材Pを把持する把持ユニット45を収容するための凹部26Dが設けられている。
【0017】
クリーナ28は、図1に示されるように、中間転写ベルト21の外周側に配置される。クリーナ28は、中間転写ベルト21の周回方向において、二次転写位置T2より下流側であり、画像形成部10より上流側に配置されている。
【0018】
〔定着部30〕
図1に示される定着部30は、接触および離間可能に設けられ、トナー像が形成された記録材Pを挟んで回転することにより、記録材Pに圧力を加えながら送りだす加圧胴31および加熱ロール32を備える。この加圧胴31が第1押当部の一例であり、加熱ロール32が第2押当部の一例である。また、定着部30は、加圧胴31を回転駆動する第1駆動部33と、加熱ロール32を回転駆動する第2駆動部34とを備える。なお、本実施の形態では2つの第2駆動部34によって加熱ロール32を回転させているが、この第2駆動部34の数は、複数であっても単数であってもよい。この第1駆動部33が第1押当駆動部の一例であり、第2駆動部34が第2押当駆動部の一例である。さらに、定着部30は、加圧胴31と加熱ロール32とが記録材Pを挟み込む前に記録材Pを加熱する加熱部70を備える。
【0019】
加圧胴31は、D方向に伸びる略ロール形状を有する。加圧胴31は、把持ユニット45を収容するための凹部31Dが設けられている。
加熱ロール32は、D方向に伸びる略ロール形状を有する。また、加熱ロール32は、ロール内部にハロゲンランプ等の加熱源32Aを有する。
【0020】
図1に示されるように、加圧胴31および加熱ロール32は、矢印H方向に対して角度を有した上下方向に配置されている。また、図1では、この加圧胴31と加熱ロール32とが記録材Pを挟む挟み領域を符号NPにて示している。この挟み領域NPは、記録材Pの搬送方向に幅を有する領域である。
【0021】
第1駆動部33は、不図示の動力源による動力を加圧胴31に伝達し、加圧胴31を回転させる。本実施の形態では、第1駆動部33の動力源として、例えば、電動モータが用いられる。第1駆動部33は、この電動モータのオン/オフによって制御され、加圧胴31を回転駆動させる場合に電動モータがオンにされる。また、第1駆動部33による加圧胴31の回転駆動中に第1駆動部33による回転駆動を停止させる場合に、電動モータがオフにされる。本実施の形態において、第1駆動部33による回転駆動を停止させるとは、第1駆動部33の動力源を停止させれば足り、加圧胴31の回転運動が完全に停止している状態を示すものではない。一般には、第1駆動部33の動力源を停止した後に加圧胴31は慣性により回転を続ける。
【0022】
第2駆動部34は、不図示の動力源による動力を加熱ロール32に伝達し、加熱ロール32を回転させる。本実施の形態では、第2駆動部34の動力源として、例えば、電動モータが用いられる。第2駆動部34は、この電動モータのオン/オフによって制御され、加熱ロール32を回転駆動させる場合に電動モータがオンにされる。また、第2駆動部34による加熱ロール32の回転駆動中に第2駆動部34による回転駆動を停止させる場合に、電動モータがオフにされる。本実施の形態において、第2駆動部34による回転駆動を停止させるとは、第2駆動部34の動力源を停止させれば足り、加熱ロール32の回転運動が完全に停止している状態を示すものではない。一般には、第2駆動部34の動力源を停止した後に加熱ロール32は慣性により回転を続ける。
【0023】
本実施の形態では、第1駆動部33と第2駆動部34とは個別に動力源を有し、第1駆動部33および第2駆動部34とは個別に制御される。
【0024】
〔加熱部70〕
加熱部70は、搬送部40で搬送方向Xに搬送される記録材Pを非接触で加熱する機能を有している。この加熱部70は、加熱ロール32に対する搬送方向の上流側に配置されている。これにより、加熱部70は、記録材Pの表面に形成された未定着のトナー像を、加熱ロール32に先立って、非接触で加熱する。加熱部70は、図1に示されるように、ヒータ72と、反射板73と、を有している。
【0025】
ヒータ72は、搬送部40で搬送方向Xに搬送される記録材Pに対して非接触で記録材Pを加熱する加熱部材である。ヒータ72は、図1に示されるように、搬送方向Xに沿って間隔をあけて複数配置されている。このヒータ72は、例えば、D方向に長さを有する円柱状の赤外線ヒータで構成されている。ヒータ72は、内部に設けられたフィラメント(図示省略)が発熱し、その輻射熱によって記録材Pを加熱する。なお、本実施の形態では、図1に示されるように、ヒータ72は4本設けられ、複数のヒータ72によって加熱が行われる。
【0026】
反射板73は、ヒータ72からの赤外線を装置下方側(すなわち、搬送部40で搬送される記録材P側)へ反射する機能を有している。具体的には、反射板73は、装置下方側が開放された箱状に形成されている。この反射板73は、例えば、アルミニウム板等の金属板を用いて形成されている。
【0027】
〔搬送部40〕
搬送部40は、記録材Pを搬送して、二次転写位置T2と挟み領域NPとを通過させる機能を有している。搬送部40は、転写胴26と加圧胴31とに巻き掛けられ、装置の手前側と奧側とに設けられる一対のチェーン41と、この一対のチェーン41に亘って取り付けられ記録材Pの先端を把持する把持ユニット45と、を備える。また、搬送部40は、送風部80を備える。
【0028】
一対のチェーン41は、それぞれ、環状に形成されている。一対のチェーン41の一方が、転写胴26のD方向手前側の端部と、加圧胴31のD方向手前側の端部と、に巻き掛けられる。また、この一方に対する他方のチェーン41が、転写胴26のD方向奥側の端部と、加圧胴31のD方向奥側の端部と、に巻き掛けられる。
把持ユニット45は、一対のチェーン41に亘って取り付けられ、一対のチェーン41が周回するのに伴って周回する。把持ユニット45は、一対のチェーン41に複数個取付けられる。本実施の形態では3つの把持ユニット45が取付けられている。
【0029】
〔送風部80〕
図1に示される送風部80は、把持ユニット45で搬送される記録材Pに対する加熱部70側(すなわちH方向の上側)とは反対側(すなわちH方向の下側)で、加熱部70に対して対向している。
【0030】
送風部80は、搬送部40で搬送される記録材Pの下面に対して送風する機能を有している。送風部80は、トナー像が形成された表面とは反対側の裏面が非接触状態で、搬送部40によって記録材Pが搬送されるように、記録材Pへの送風により記録材Pを浮かしてこの非接触状態を維持する機能を有している。
【0031】
本実施の形態では、送風部80は、本体82と、送風板83と、送風機84と、を有している。本体82は、上方に開口する空間82Aを内部に有している。
【0032】
送風機84は、本体82の下部に設けられている。送風機84は、本体82の空間82Aに空気を送る。送風機84としては、一例として、軸方向へ送風する軸流送風機が用いられている。なお、送風機84としては、多翼送風機(例えば、シロッコファン)などの、遠心方向へ送風する遠心送風機を用いてもよい。
【0033】
送風板83は、本体82の開口を塞ぐように本体82の上部に設けられている。この送風板83は、搬送部40で搬送される記録材Pに対する加熱部70側(すなわち上方側)とは反対側(すなわち下方側)で、加熱部70に対して対向している。さらに、送風板83は、金属製または樹脂製の板状とされ、H方向に貫通する複数の送風孔83Aを有している。そして、送風板83は、送風機84から本体82の空間82Aに送られた空気を、複数の送風孔83Aで上方へ通過させて記録材Pの下面に当てることで、記録材Pを浮かせることで、記録材Pを支持する。
【0034】
次に図2を用いて、転写胴26と把持ユニット45との構成を詳細に説明する。
図2は、転写胴26と把持ユニット45との構成を示す斜視図である。
転写胴26は、転写胴26の軸方向の両端にそれぞれ第1スプロケット27が設けられている。
第1スプロケット27は、転写胴26の同軸上に配置されており、転写胴26と一体に回転する構成とされている。第1スプロケット27は、円盤状であり、円盤状の端部にチェーン41を掛けるための複数の歯が設けられている。一対の第1スプロケット27のそれぞれに、異なるチェーン41が巻き掛けられている。
転写胴26の凹部26Dは、把持ユニット45が収容される程度の大きさの切り欠き部であり、転写胴26の径方向外側に開口している。
【0035】
把持ユニット45は、手前側と奧側との一対のチェーン41の間に設けられ、記録材Pを掴んで搬送する。この把持ユニット45は、記録材Pの先端を保持する複数のグリッパ46と、複数のグリッパ46を支持する支持部材47と、支持部材47をチェーン41に取り付ける取付台48と、を備える。取付台48は、前側と奧側との一対のチェーン41に対して各々、設けられる。
グリッパ46には、支持部材47が通されるための円形の貫通孔が設けられている。
支持部材47は、断面が円形である棒状の部材である。また、支持部材47の長さは、手前側と奧側との一対のチェーン41の間隔に合わせて形成されている。支持部材47には、複数のグリッパ46が予め定められた間隔で固定されている。
取付台48は、一対のチェーン41の内側であって、この一対のチェーン41が向かい合うリンクにそれぞれ取り付けられる。一方の取付台48に支持部材47の一端を取り付け、この一端に対する他端を他方の取付台48に取り付けることで、一対のチェーン41に亘って支持部材47が取付けられている。
【0036】
次に図3を用いて、加圧胴31の構成を詳細に説明する。
図3は、加圧胴31の構成を示す斜視図である。
加圧胴31は、加圧胴31の軸方向の両端にそれぞれ第2スプロケット35が設けられている。
第2スプロケット35は、加圧胴31の同軸上に配置されており、加圧胴31と一体に回転する構成とされている。第2スプロケット35は、円盤状であり、円盤状の端部にチェーン41を掛けるための複数の歯が設けられている。一対の第2スプロケット35のそれぞれに、異なるチェーン41が巻き掛けられている。
加圧胴31の凹部31Dは、把持ユニット45が収容される程度の大きさの切り欠き部であり、加圧胴31の径方向外側に開口している。この凹部31Dにおける回転方向の上流端には、角部31Rが形成されている。この角部31Rは、角が丸められた形状、いわゆるアール状に形成されている。
加圧胴31は、D方向に伸びる略ロール形状を有する。加圧胴31の形状は、ロール形状の軸方向における両端部側の径の長さが、軸方向における中央部の径の長さより、僅かに長くなっている。これにより、加圧胴31の軸方向の端部側の周速度が軸方向中央部の周速度より大きくなり、加圧胴31と加熱ロール32とで加圧される記録材Pは、加圧胴31の両端側にのばされ、記録材Pに生じるしわが抑制される。
【0037】
次に、図4を用いて、把持ユニット45が記録材Pを把持する機能について説明する。
図4は、把持ユニット45が記録材Pを把持した状態を示す斜視図である。
グリッパ46は、爪46Aと爪台46Bとを有し、これらによって記録材Pを把持する。グリッパ46は、例えば、爪46Aが爪台46Bに対してバネ等により押し付けられ、カム等の作用により爪46Aが爪台46Bに対して開閉される。グリッパ46は、記録材Pに対する搬送方向の下流側に配置されており、記録材Pの搬送方向の下流側から記録材Pの先端部を保持する。
【0038】
〔位置変更部90〕
ここで、図5を用いて、加熱ロール32を接触位置と離間位置とに移動させる位置変更部90の構成について説明する。
図5は、位置変更部90の動作により、加熱ロール32が離間位置に移動した状態を示す図である。この離間位置では、加圧胴31に対して加熱ロール32が離間している。例えば、把持ユニット45が加圧胴31と加熱ロール32との間を通る際には、加熱ロール32が離間位置に移動している。また、本実施の形態では、例えば、加圧胴31と加熱ロール32とが接触して負荷が生じるのを防止するために、画像形成装置1がスタンバイ状態のときに加熱ロール32が離間位置に移動している。一方、接触位置では、加圧胴31に対して加熱ロール32が接触している。記録材Pに形成されているトナー像を定着させる際には、加熱ロール32は接触位置に移動した状態にあり、加圧胴31と加熱ロール32とによって定着作業が行われる。位置変更部90は、加熱ロール32を移動させることで、加圧胴31と加熱ロール32との間の圧力を変更する変更部の一例として機能する。
【0039】
位置変更部90は、加熱ロール32を支持し、加熱ロール32を接触位置および離間位置に移動させる。位置変更部90は、加熱ロール32を支持する下部フレーム91と、複数の第2駆動部34を支持する上部フレーム92と、下部フレーム91と上部フレーム92とを連結する連結軸93と、下部フレーム91を介して加熱ロール32の位置を変更するカム94と、を備える。
【0040】
下部フレーム91は、画像形成装置1の幅方向である矢印W方向に伸び、幅方向の一端に下部フレーム91の回転中心となる回転中心孔911が設けられている。また、幅方向の他端には、カム94と接触するカムフォロア912と、バネを取り付けるためのバネ取付部913と、このバネ取付部913に取り付けられる引張コイルバネ914とを備える。また、下部フレーム91は、幅方向の回転中心孔911側にて、加熱ロール32を回転可能に支持している。
【0041】
回転中心孔911は、円形状の貫通孔であり、この貫通孔に連結軸93が挿入されている。回転中心孔911と連結軸93とは固定されず、連結軸93の周りを回転中心孔911が回転可能に取り付けられる。
カムフォロア912は、下部フレーム91の端部に固定され、カム94の外径に接触する。カムフォロア912は、カム94が回転すると、カム94の外径に合わせて、回転中心孔911を中心として移動する。
バネ取付部913は、例えば、円柱状の突起であり、引張コイルバネ914の一端が巻き付けられて固定される。
引張コイルバネ914は、バネ取付部913に取り付けられている一端に対する他端がバネ取付部913の位置よりH方向の上側の位置に取り付けられる。この引張コイルバネ914は、バネの自然長より伸ばした状態で取り付けられる。すなわち、引張コイルバネ914は、バネ取付部913を上側に引っ張り上げるように取り付けられる。
【0042】
上部フレーム92は、上部フレーム92の回転中心となる回転中心孔921と、第2駆動部34を支持する支持部922とを備える。
回転中心孔921は、円形状の貫通孔であり、この貫通孔に連結軸93が挿入されている。回転中心孔921と連結軸93とは固定されず、連結軸93の周りを回転中心孔921が回転可能に取り付けられる。
支持部922は、第2駆動部34が加熱ロール32の上部にそれぞれ接触するように第2駆動部34を支持する。
【0043】
カム94は、カム94を回転させるカム駆動部941を備える。カム駆動部941は、カム94を図5の時計回りおよび反時計回りに回転駆動可能に設けられる。カム駆動部941は、時計回りおよび反時計回りに回転することで、カム94の角度を制御する。カム駆動部941としては、例えば、サーボモータが用いられる。カム94の外径は、カム駆動部941の回転中心からの径が異なる複数の部分を有する。
【0044】
〔位置変更部90の動作について〕
次に、図5図6とを用いて、位置変更部90の動作について説明する。
図6は、位置変更部90の動作により、加熱ロール32が接触位置に移動した状態を示す図である。
上述した図5には、把持ユニット45によって挟み領域NP(図1参照)に搬送された記録材Pが示されている。図5の状態で、カム94を図5における時計回りに回転させると、カムフォロア912とカム94とが接触する位置が変わり、図6に示されるように、カム94の長径部分とカムフォロア912とが接触する。カム94の長径部分がカムフォロア912を下側に押し付けることで、下部フレーム91は、回転中心孔911を中心として反時計回りに回転する。これにより、位置変更部90は、加熱ロール32を離間位置から接触位置に移動させる。
【0045】
また、図6の状態で、カム94を図6における反時計回りに回転させると、カムフォロア912とカム94とが接触する位置が変わり、図5に示されるように、カム94の短径部分とカムフォロア912とが接触する。これにより、位置変更部90は、加熱ロール32を接触位置から離間位置に移動させる。
【0046】
また、加熱ロール32が接触位置に位置する状態で、すなわち図6に示す状態で、さらにカム94を時計回りに回転させると、カムフォロア912がさらに下側に押し付けられる。加熱ロール32は、加圧胴31に押し付けられて、加熱ロール32と加圧胴31との間の圧力が高まる。カム駆動部941を制御することにより、記録材Pに加える圧力を変更することができる。これにより、例えば、用紙の種類に応じて加える圧力の大きさを変更することができる。具体的には、加熱ロール32は、記録材Pの用紙の種類が普通紙である場合には、第一荷重にて、記録材Pを加圧胴31とで挟む。そして、記録材Pの用紙の種類が塗工紙である場合に、第一荷重よりも大きい第二荷重にて記録材Pを加圧胴31とで挟むように制御される。
【0047】
〔定着動作について〕
トナー像が転写された記録材Pは、図5で示されるように加熱ロール32が離間位置に位置する状態において、先端部がグリッパ46で保持されたまま、挟み領域NP(図1参照)に搬送される。次に、図6で示されるように、加圧胴31と加熱ロール32とが、挟み領域NPへ搬送された記録材Pを挟む。そして、グリッパ46が、記録材Pの先端部の保持を解除する。加圧胴31と加熱ロール32で、記録材Pを挟んだ状態で、加圧胴31と加熱ロール32とが回転し、記録材Pを搬送する。このように加圧胴31と加熱ロール32とが記録材Pを挟んだ状態で搬送しつつ、記録材Pを加熱および加圧することで、記録材Pに転写されたトナー像を記録材Pに定着する。定着が終了すると、次の記録材Pを挟むために、図6で示されるカム94を反時計回りに回転させて、位置変更部90が加熱ロール32を離間位置に移動させる。
【0048】
〔制御部の機能構成〕
次に、図7を用いて、本実施の形態に係る制御部100の機能構成について説明する。
図7は、制御部100の機能構成を示す図である。
本実施の形態に係る制御部100は、加圧胴31と加熱ロール32との間に加わっている圧力が変化する処理が発生した場合に、加圧胴31と、加熱ロール32との周速度に差が生じることを抑制することを特徴としている。
【0049】
制御部100は、第1駆動部33を制御する第1駆動制御部110と、第2駆動部34を制御する第2駆動制御部120と、カム駆動部941の角度を制御するカム制御部130と、予め定められた制御信号を送信してからの経過時間を計測する時間計測部140と、加圧胴31と加熱ロール32との間の圧力が変化する処理を制御する圧力変化制御部150と、を備える。
【0050】
第1駆動制御部110は、第1駆動部33の駆動源である電動モータを制御する。具体的には、第1駆動制御部110が電動モータに供給される電流のオン/オフを制御する。第1駆動制御部110が電動モータに流れる電流をオフにして、第1駆動部33による回転駆動を停止することが一例として挙げられる。
第2駆動制御部120は、第2駆動部34の駆動源である電動モータを制御する。具体的には、第2駆動制御部120が電動モータに供給される電流のオン/オフを制御する。第2駆動制御部120が電動モータに流れる電流をオフにして、第2駆動部34による回転駆動を停止することが一例として挙げられる。
【0051】
カム制御部130は、カム駆動部941を制御する。具体的には、カム制御部130がカム駆動部941のサーボモータの回転角度を制御する。これにより、加圧胴31と加熱ロール32との圧力を制御する。
【0052】
時間計測部140は、第1駆動制御部110が第1駆動部33による回転駆動を停止させてからの経過時間を計測する。また、時間計測部140は、第2駆動制御部120が第2駆動部34による回転駆動を停止させてからの経過時間を計測する。具体的には、時間計測部140は、第1駆動制御部110によって、第1駆動部33の電動モータに流れる電流を停止させるための信号が発信された時を検出し、この検出された時からの時間経過を計測する。また、時間計測部140は、第2駆動制御部120によって、第2駆動部34の電動モータに流れる電流を停止させるための信号が発信された時を検出し、この検出された時からの時間経過を計測する。
【0053】
圧力変化制御部150は、加圧胴31と加熱ロール32との間の圧力が変化する処理を制御する。この際、圧力変化制御部150は、第1駆動制御部110と、第2駆動制御部120と、カム制御部130と、時間計測部140とを用いて、制御を実行する。圧力変化制御部150が、変更部、第1押当駆動部、および第2押当駆動部を制御する制御部の一例である。
【0054】
圧力変化制御部150は、具体的には、第1駆動制御部110を用いて、第1駆動部33による回転駆動を停止させる。圧力変化制御部150は、第2駆動制御部120を用いて第2駆動部34による回転駆動を停止させる。圧力変化制御部150は、第1駆動部33および第2駆動部34による回転駆動を停止させた後に、カム制御部130を用いて加圧胴31と加熱ロール32との圧力を変更させる。
【0055】
本実施の形態において、圧力変化制御部150は、第1駆動部33および第2駆動部34による回転駆動を停止させ、その後予め定められた時間が経過した後に、位置変更部90により加圧胴31と加熱ロール32との圧力を変更させる。
ここで、予め定められた時間とは、加圧胴31と加熱ロール32とが回転する慣性力が小さくなるのにかかる時間として定められる。具体的には、加圧胴31と加熱ロール32との間の圧力が弱くなった場合に、加圧胴31と加熱ロール32とが異なる周速度で回転しない速度となる時間である。また、予め定められた時間は、加圧胴31および加熱ロール32の回転が停止するのにかかる時間として定められていてもよい。また、予め定められた時間は、加圧胴31と加熱ロール32との間に加わっている予め定められた圧力の大きさによって異なっていてもよい。一般に、加圧胴31と加熱ロール32との間に加わっている圧力が大きいほど、より短い時間で加圧胴31と加熱ロール32と回転が停止する。そこで、加圧胴31と加熱ロール32とに加わっている圧力が大きいほど、予め定められた時間として、短い時間を設定してもよい。
【0056】
この予め定められた時間は、例えば、実験やシミュレーションによる解析に基づいて設定される。予め定められた時間は、例えば、画像形成装置1の設定として、ROM103(図1参照)に記憶される。また、予め定められた時間をユーザから受け付けて、ROM103に記憶してもよい。
【0057】
〔制御部100の処理〕
図8は、制御部100が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図8のフローチャートにて実行する処理は、具体的には、加熱ロール32を移動させ、加圧胴31と加熱ロール32との間の圧力を変更させる処理である。この処理は、例えば、一枚の記録材Pの定着が終了し、次の記録材Pを挟み領域NPに搬送するために、接触位置にある加熱ロール32を離間位置に移動させる処理が一例として挙げられる。
【0058】
まず、圧力変化制御部150が、圧力を変更させる処理を受け付ける(ステップ1001)。
圧力変化制御部150は、圧力を減少させる処理か否かを判断する(ステップ1002)。圧力を減少させる処理でない場合(ステップ1002でNO)、すなわち、圧力を増加させる処理の場合は、圧力変化制御部150は、カム制御部130に圧力を増加させる処理を行わせて(ステップ1003)、処理が終了する。
ステップ1002で圧力を減少させる処理である場合(ステップ1002でYES)、第1駆動制御部110および第2駆動制御部120が、第1駆動部33および第2駆動部34の回転駆動を停止させる(ステップ1004)。具体的には、第1駆動制御部110が第1駆動部33の電動モータに流れる電流を停止させるための停止信号を発信し、第2駆動制御部120が第2駆動部34の電動モータに流れる電流を停止させるための停止信号を発信する。本実施の形態では、第1駆動制御部110と第2駆動制御部120とが停止信号を発信するタイミングを合わせる。これにより、第1駆動部33および第2駆動部34による回転駆動が同じタイミングで停止される。なお、停止信号を発信するタイミングは厳密に同時である必要はなく、異なっていてもよい。
【0059】
第1駆動制御部110と第2駆動制御部120とが回転駆動を停止させると(ステップ1004)、時間計測部140が時間を計測する(ステップ1005)。具体的には、第1駆動制御部110と第2駆動制御部120とが停止信号を発信した時刻を、時間計測部140が検知し、検知された時刻から経過時間を計測する。
次に、圧力変化制御部150は、予め定められた時間が経過したか否かを判断する(ステップ1006)。予め定められた時間が経過していない場合(ステップ1006でNO)、圧力変化制御部150は、予め定められた時間が経過するまで、再度予め定められた時間が経過したか否かの判断を繰り返す。
圧力変化制御部150は、予め定められた時間が経過したと判断すると(ステップ1006でYES)、カム制御部130に圧力を減少させる処理を行わせて(ステップ1007)、処理が終了する。
〔作用〕
次に、図1および図9を用いて、本実施の形態の作用を説明する。
図9は、定着終了後に加熱ロール32を離間させる場合の、加圧胴31と加熱ロール32との間の圧力と周速度とを示す図である。なお、図9は横軸に経過時間、縦軸に周速度および圧力を示すグラフである。
【0060】
このグラフでは、時刻t1に至るまで、加圧胴31と加熱ロール32とが押し付けられた状態で、加圧胴31と加熱ロール32とが同じ周速度で回転し記録材Pにトナー像を定着させている。そして、時刻t1において、記録材Pの定着が終了し、次の記録材Pを搬送するために、加熱ロール32を離間させる際の加圧胴31と加熱ロール32との間の圧力と、加圧胴31および加熱ロール32の周速度と、が示されている。
【0061】
ここで、時刻t1において、定着が終了すると、次の記録材Pを搬送するために、圧力変化制御部150(図7参照)は、加熱ロール32を離間位置に移動させるための制御を開始する。
圧力変化制御部150は、時刻t2で第1駆動部33と第2駆動部34による回転駆動を停止させる。時刻t2で、第1駆動部33と第2駆動部34による駆動が停止されると、加圧胴31と加熱ロール32とは、すぐに回転が停止せずに慣性によって回転を続けながら徐々に回転速度が減少する。
【0062】
そして、予め定められた時間が経過すると、時刻t3にて、加熱ロール32が離間する。ここで、図9に示されるように加圧胴31と加熱ロール32との間の圧力は、時刻t2から時刻t3までの間は、変化しない。言い換えると、時刻t2において、加圧胴31と加熱ロール32とが押し付けられた状態にて第1駆動部33および第2駆動部34による回転駆動を停止させ、その後、予め定められた時間が経過した後である時刻t3において、位置変更部90により加圧胴31と加熱ロール32とを離間させる。
【0063】
時刻t3において、加熱ロール32の離間が開始されると、加圧胴31と加熱ロール32との間の圧力が減少していく。本実施の形態では、上述したように、予め定められた時間として、加圧胴31と加熱ロール32との回転する慣性力が小さくなるのにかかる時間として定められている。そのため、加圧胴31と加熱ロール32との間の圧力が減少する際に、加圧胴31と加熱ロール32との周速度が変わることが抑制されている。
【0064】
ここで、本実施の形態と異なり、予め定められた時間が経過する前、すなわち時刻t2で加熱ロール32を離間した場合を考える。時刻t2で、加熱ロール32を離間させると、加圧胴31と加熱ロール32との周速度が大きい状態で加圧胴31と加熱ロール32との間の圧力が減少し、加圧胴31と加熱ロール32との間に働く摩擦力が小さくなる。時刻t2の直後では、加圧胴31と加熱ロール32との周速度は大きいため、加圧胴31と加熱ロール32との間に働く摩擦力が減少すると、加圧胴31と加熱ロール32とが異なる周速度で回転しやすい。
【0065】
以上、本実施の形態では、定着が終了した後にすぐ加圧胴31から加熱ロール32を離間させる場合に比べて、加圧胴31と加熱ロール32との間の擦れによる損傷が発生することが抑制される。
【0066】
なお、本実施の形態では、一枚の記録材Pを印刷するごとに加熱ロール32が離間しているが、加熱ロール32を離間させずに複数枚の記録材Pを連続して印刷する画像形成装置に、本実施の形態の圧力変化制御部150を適用してもよい。例えば、用紙の種類に応じて押圧する圧力を変更させる場合に、圧力変化制御部150を適用してもよい。また、例えば、印刷ジョブが終了しスタンバイ状態に移行する際に加圧胴31と加熱ロール32との間にかかる負荷を減少させるために加熱ロール32を離間させる場合に、本実施の形態の圧力変化制御部150を適用してもよい。これにより、加圧胴31と加熱ロール32との間の擦れによる損傷が発生することが抑制される。
【0067】
(付記)
(((1)))
接触および離間可能に設けられ、未定着画像が形成された記録材を挟んで回転することにより、当該記録材に圧力を加えながら送りだす第1押当部および第2押当部と、
前記第1押当部と前記第2押当部との間の圧力を変更する変更部と、
前記第1押当部を回転駆動する第1押当駆動部と、
前記第2押当部を回転駆動する第2押当駆動部と、
前記変更部、前記第1押当駆動部、および前記第2押当駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を停止させた後に前記変更部により前記圧力を変更させること
を特徴とする定着装置。
(((2)))
前記制御部は、前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を停止させ、その後予め定められた時間が経過した後に前記変更部により前記圧力を変更させること
を特徴とする(((1)))に記載の定着装置。
(((3)))
前記制御部は、前記第1押当部と前記第2押当部とが押し付けられた状態にて前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を停止させ、その後、予め定められた時間が経過した後に前記変更部により前記第1押当部と前記第2押当部とを離間させることを特徴とする(((2)))に記載の定着装置。
(((4)))
前記予め定められた時間は、前記第1押当部および前記第2押当部の回転が停止するのにかかる時間として定められていることを特徴とする(((3)))に記載の定着装置。
(((5)))
前記制御部が前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を停止させる際、前記第1押当部と前記第2押当部とは予め定められた圧力で押し当てられており、
前記予め定められた時間は、前記予め定められた圧力の大きさによって異なることを特徴とする(((3)))または(((4)))に記載の定着装置。
(((6)))
前記制御部は、前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部を個別に制御できることを特徴とする(((1)))乃至(((5)))のいずれか1つに記載の定着装置。
(((7)))
前記制御部は、前記第1押当駆動部および前記第2押当駆動部による回転駆動を同じタイミングで停止させることを特徴とする(((6)))に記載の定着装置。
(((8)))
未定着画像を記録材に形成する手段と、
前記記録材に形成された前記未定着画像を前記記録材に定着させる(((1)))乃至(((7)))のいずれか1つに記載の定着装置と、
を備える画像形成装置。
【0068】
(((1)))に係る定着装置によれば、2つの押当部の間の圧力を変更することにより発生する押当部の損傷を抑制することができる。
(((2)))に係る定着装置によれば、停止後すぐに圧力を変更させる場合に比べて、押当部に生じる損傷を抑制することができる。
(((3)))に係る定着装置によれば、第1押当部と第2押当部との回転速度が慣性力によって異なる状態となることを抑制することができる。
(((4)))に係る定着装置によれば、第1押当部および第2押当部が回転中に、これらの間の圧力を変更させる場合に比べて、押当部の損傷をより抑制することができる。
(((5)))に係る定着装置によれば、第1押当部と第2押当部との回転駆動を停止した後の印刷開始を早めることができる。
(((6)))に係る定着装置によれば、第1押当駆動部と第2押当駆動部とのうちの一方のみ駆動する場合に比べて、用紙搬送時の圧力を軽減できる。
(((7)))に係る定着装置によれば、停止タイミングが異なることで第1押当部と第2押当部との速度差が生じることを抑制する。
(((8)))に係る画像形成装置によれば、定着装置の2つの押当部の間の圧力を変更することにより発生する押当部の損傷を抑制した画像形成装置を提供できる。
【符号の説明】
【0069】
1…画像形成装置、10…画像形成部、20…転写部、30…定着部、31…加圧胴、32…加熱ロール、33…第1駆動部、34…第2駆動部、40…搬送部、90…位置変更部、94…カム、941…カム駆動部、100…制御部、110…第1駆動制御部、120…第2駆動制御部、130…カム制御部、140…時間計測部、150…圧力変化制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9