(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101319
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】画像形成システム、処理時間調整方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20250630BHJP
B41J 5/30 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
G06F3/12 343
G06F3/12 315
G06F3/12 360
B41J5/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218087
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 慎也
【テーマコード(参考)】
2C187
【Fターム(参考)】
2C187AC06
2C187AD14
2C187AE03
2C187DB22
(57)【要約】
【課題】大量のバリアブル印刷に対応する際、処理全体に掛かる時間を短縮することが可能な画像形成システム、処理時間調整方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】バリアブル原稿データを生成する生成部(制御部31)と、生成部により生成されたバリアブル原稿データにRIP処理を行うRIP部(画像処理部213)と、RIP部によりRIP処理が行われたバリアブル原稿データに基づいて、用紙に画像を形成する画像形成部23と、バリアブル原稿データの生成から画像の形成までの一連の処理を制御する制御部31と、を備える。制御部31は、生成部によるバリアブル原稿データの生成処理時間とRIP部によるRIP処理時間とが等しくなるように、各処理の実行単位を調整する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリアブル原稿データを生成する生成部と、
前記生成部により生成されたバリアブル原稿データにRIP処理を行うRIP部と、
前記RIP部によりRIP処理が行われたバリアブル原稿データに基づいて、用紙に画像を形成する画像形成部と、
前記バリアブル原稿データの生成から前記画像の形成までの一連の処理を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記生成部による前記バリアブル原稿データの生成処理時間と前記RIP部によるRIP処理時間とが等しくなるように、各処理の実行単位を調整することを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記生成処理時間が前記RIP処理時間よりも長い場合、前記バリアブル原稿データの生成処理の実行単位を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記RIP部は、複数設けられ、
前記制御部は、前記生成処理時間が前記RIP処理時間よりも短い場合、前記RIP処理の実行単位を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記制御部は、各処理の実行単位と処理時間の関係を処理データとしてリアルタイムで取得し、取得した各処理データの近似式の交点となる値を各処理の実行単位とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記生成部は、ウェブサーバーに内蔵されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項6】
各処理の実行単位の初期値を設定する際に、定数を採用する固定値モードと、前記制御部により算出された変数を採用する自動算出モードと、のいずれかを選択可能な設定部を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記自動算出モードは、バリアブル原稿テンプレートごとに管理された過去の各処理の実行単位のデータ群から、前記生成処理時間と前記RIP処理時間とが等しくなる場合の実行単位を抽出するモードであることを特徴とする請求項6に記載の画像形成システム。
【請求項8】
バリアブル原稿データを生成する生成部と、前記生成部により生成されたバリアブル原稿データにRIP処理を行うRIP部と、前記RIP部によりRIP処理が行われたバリアブル原稿データに基づいて、用紙に画像を形成する画像形成部と、を備える画像形成システムの処理時間調整方法であって、
前記バリアブル原稿データの生成から前記画像の形成までの一連の処理を制御する制御工程を含み、
前記制御工程は、前記生成部による前記バリアブル原稿データの生成処理時間と前記RIP部によるRIP処理時間とが等しくなるように、各処理の実行単位を調整することを特徴とする処理時間調整方法。
【請求項9】
バリアブル原稿データを生成する生成部と、前記生成部により生成されたバリアブル原稿データにRIP処理を行うRIP部と、前記RIP部によりRIP処理が行われたバリアブル原稿データに基づいて、用紙に画像を形成する画像形成部と、を備える画像形成システムのコンピュータを、
前記バリアブル原稿データの生成から前記画像の形成までの一連の処理を制御する制御部として機能させ、
前記制御部は、前記生成部による前記バリアブル原稿データの生成処理時間と前記RIP部によるRIP処理時間とが等しくなるように、各処理の実行単位を調整することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム、処理時間調整方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブランドの紙消費の特徴として、安く大量に生産して余った在庫は処分する状況から必要な分だけ生産して消費する状況へと移行している。これにより、デジタル印刷の需要が高まっている。
【0003】
一方、印刷物の生産側からすると、デジタル印刷のオペレーションは、原稿データ生成から印刷完了までの作業が複雑で、いまだに人手が掛かる。特に、1人1人異なる印刷物を生産するバリアブル印刷のオペレーションは、人手が掛かる。そこで、各工程のツールベンダーが他ツール連携を可能とするインターフェースを用意することで、バリアブル原稿作成から印刷完了まで自動実行可能なフローを構築することができる。
【0004】
しかしながら、自動化フローの構築により一度に大量のバリアブル原稿を印刷できるようになると、各処理プロセスに要する時間が増大する。各処理プロセスは、例えば、原稿データ生成プロセス、RIPプロセス、印刷プロセスである。これにより、大目的である、ブランドが求める印刷要望を満たすことの障害となる。
【0005】
特許文献1には、バリアブル原稿データ生成処理とRIP処理とを別装置で実施する構成が開示されている。特許文献1記載の構成によれば、負荷を分散させることができるので、処理の高速化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の構成では、バリアブル原稿データ生成処理とRIP処理のいずれかが律速となる。したがって、バリアブル原稿データ生成から印刷完了までの処理全体に掛かる時間を短縮することは困難である。
【0008】
本発明は、大量のバリアブル印刷に対応する際、処理全体に掛かる時間を短縮することが可能な画像形成システム、処理時間調整方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
画像形成システムにおいて、
バリアブル原稿データを生成する生成部と、
前記生成部により生成されたバリアブル原稿データにRIP処理を行うRIP部と、
前記RIP部によりRIP処理が行われたバリアブル原稿データに基づいて、用紙に画像を形成する画像形成部と、
前記バリアブル原稿データの生成から前記画像の形成までの一連の処理を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記生成部による前記バリアブル原稿データの生成処理時間と前記RIP部によるRIP処理時間とが等しくなるように、各処理の実行単位を調整することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成システムにおいて、
前記制御部は、前記生成処理時間が前記RIP処理時間よりも長い場合、前記バリアブル原稿データの生成処理の実行単位を小さくすることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成システムにおいて、
前記RIP部は、複数設けられ、
前記制御部は、前記生成処理時間が前記RIP処理時間よりも短い場合、前記RIP処理の実行単位を小さくすることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成システムにおいて、
前記制御部は、各処理の実行単位と処理時間の関係を処理データとしてリアルタイムで取得し、取得した各処理データの近似式の交点となる値を各処理の実行単位とすることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成システムにおいて、
前記生成部は、ウェブサーバーに内蔵されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成システムにおいて、
各処理の実行単位の初期値を設定する際に、定数を採用する固定値モードと、前記制御部により算出された変数を採用する自動算出モードと、のいずれかを選択可能な設定部を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の画像形成システムにおいて、
前記自動算出モードは、バリアブル原稿テンプレートごとに管理された過去の各処理の実行単位のデータ群から、前記生成処理時間と前記RIP処理時間とが等しくなる場合の実行単位を抽出するモードであることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、
バリアブル原稿データを生成する生成部と、前記生成部により生成されたバリアブル原稿データにRIP処理を行うRIP部と、前記RIP部によりRIP処理が行われたバリアブル原稿データに基づいて、用紙に画像を形成する画像形成部と、を備える画像形成システムの処理時間調整方法であって、
前記バリアブル原稿データの生成から前記画像の形成までの一連の処理を制御する制御工程を含み、
前記制御工程は、前記生成部による前記バリアブル原稿データの生成処理時間と前記RIP部によるRIP処理時間とが等しくなるように、各処理の実行単位を調整することを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、
バリアブル原稿データを生成する生成部と、前記生成部により生成されたバリアブル原稿データにRIP処理を行うRIP部と、前記RIP部によりRIP処理が行われたバリアブル原稿データに基づいて、用紙に画像を形成する画像形成部と、を備える画像形成システムのコンピュータを、
前記バリアブル原稿データの生成から前記画像の形成までの一連の処理を制御する制御部として機能させ、
前記制御部は、前記生成部による前記バリアブル原稿データの生成処理時間と前記RIP部によるRIP処理時間とが等しくなるように、各処理の実行単位を調整することを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、大量のバリアブル印刷に対応する際、処理全体に掛かる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る画像形成システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る画像形成システムの制御構造を示す機能ブロック図である。
【
図4】固定値モードが選択されたときの情報設定画面の一例を示す図である。
【
図5】自動算出モードが選択されたときの情報設定画面の一例を示す図である。
【
図6】処理時間データベースの一例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る画像形成システムの制御の一例を示すフローチャートである。
【
図8A】生成処理時間がRIP処理時間よりも長い場合の、従来の原稿データ生成処理及びRIP処理に掛かる処理時間を説明する図である。
【
図8B】生成処理時間がRIP処理時間よりも長い場合の、本実施形態の原稿データ生成処理及びRIP処理に掛かる処理時間を説明する図である。
【
図9A】生成処理時間がRIP処理時間よりも短い場合の、従来の原稿データ生成処理及びRIP処理に掛かる処理時間を説明する図である。
【
図9B】生成処理時間がRIP処理時間よりも短い場合の、本実施形態の原稿データ生成処理及びRIP処理に掛かる処理時間を説明する図である。
【
図10】各処理の実行単位と処理時間の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
本実施形態に係る画像形成システム1は、
図1及び
図2に示すように、PC10と、画像形成装置20と、ウェブサーバー30と、を備える。画像形成システム1を構成する各装置は、通信ネットワークNに接続される。通信ネットワークNは、具体的には、インターネットや電気通信事業者等の電話回線網や携帯電話通信網等である。
【0022】
PC10は、画像形成システム1を導入したユーザーが使用する、デスクトップPCやノートPC等の端末装置である。PC10は、
図2に示すように、制御部11と、操作部12と、表示部13と、記憶部14と、通信部15と、を備える。
【0023】
制御部11は、CPU、ROM、RAMなどを備える。制御部11は、RAMの作業領域に展開されたプログラムデータとCPUとの協働により、PC10の各部の動作を統括的に制御する。プログラムデータは、ROMや記憶部14に記憶されている。
【0024】
操作部12は、例えば、文字入力キー、数字入力キーなどを有するキーボード、マウス等のポインティングデバイスなどを備える。操作部12は、ユーザーからの操作入力を受け付けて、操作入力に応じた操作信号を制御部11へと出力する。
【0025】
表示部13は、例えば、LCDなどのディスプレイを備え、制御部11から出力された表示制御信号に基づいた画像を表示画面に表示する。表示部13は、例えば、バリアブル原稿データの印刷(画像形成)に必要な情報を設定するための画面(情報設定画面G1)を表示する。ユーザーは、情報設定画面G1において、操作部12を介して、リストデータ141の保存先情報と各処理の実行単位の初期値を設定することができる。リストデータ141は、バリアブル原稿データの生成に必要となる情報である。リストデータ141は、記憶部14に記憶されている。各処理は、バリアブル原稿データを生成する原稿データ生成処理と、バリアブル原稿データのRIP処理である。
【0026】
図3に、リストデータ141の一例を示す。
リストデータ141は、案件ナンバーT11、デザインテンプレート番号T12、複数の可変要素(バリアブルデータ)T13、T14…のフィールドを有する。案件ナンバーT11は、リストデータ141に含まれる各印刷用データの識別番号である。デザインテンプレート番号T12は、可変要素を流し込む先となるテンプレートの管理番号である。テンプレートは、例えば、はがきやチラシなどである。可変要素1T13は、名前である。可変要素2T14は、住所である。
【0027】
図4及び
図5に、情報設定画面G1の一例を示す。
情報設定画面G1は、リストデータ保存先領域E1と、実行単位設定モード選択領域E2と、を備える。リストデータ保存先領域E1は、リストデータ141の保存先を設定する領域である。実行単位設定モード選択領域E2は、各処理の実行単位の初期値を設定する際のモードを選択する領域である。また、情報設定画面G1には、バリアブル印刷を開始するための印刷開始ボタンB1が設けられている。ユーザーにより印刷開始ボタンB1が押下されると、指定された印刷用データに則り、バリアブル原稿データ生成から印刷完了までの処理が自動で行われる。
【0028】
各処理の実行単位の初期値を設定する際のモードは、固定値モード又は自動算出モードである。
固定値モードは、各処理の実行単位の初期値として、ユーザーが直接入力した定数を採用するモードである。
自動算出モードは、各処理の実行単位の初期値として、制御部11により自動で算出された変数を採用するモードである。自動算出モードは、バリアブル原稿テンプレートごとに管理された過去の各処理の実行単位のデータ群から、生成処理時間とRIP処理時間とが等しくなる場合の実行単位を抽出するモードである。バリアブル原稿テンプレートは、バリアブル原稿データの可変要素を流し込む先となるテンプレートである。
操作部12は、各処理の実行単位の初期値を設定する際に、固定値モードと、自動算出モードと、のいずれかを選択可能である。すなわち、操作部12は、本発明の設定部として機能する。
【0029】
図4は、実行単位設定モード選択領域E2において、固定値モードが選択されたときの情報設定画面G1である。固定値モードが選択された場合、原稿データ生成処理実行単位入力領域E21と、RIP処理実行単位入力領域E22と、が表示される。原稿データ生成処理実行単位入力領域E21は、原稿データ生成処理の実行単位の初期値を入力可能な領域である。RIP処理実行単位入力領域E22は、RIP処理の実行単位の初期値を入力可能な領域である。
図4に示す例では、原稿データ生成処理実行単位入力領域E21及びRIP処理実行単位入力領域E22の両方に「100」が入力されている。この場合、原稿データ生成処理及びRIP処理の実行単位の初期値が100件であることが示されている。
【0030】
図5は、実行単位設定モード選択領域E2において、自動算出モードが選択されたときの情報設定画面G1である。具体的には、制御部11は、まず、処理時間データベース142(
図6参照)から、今回生成するバリアブル原稿と同一のデザインテンプレートの原稿データ生成処理時間とRIP処理時間を検索する。このとき、制御部11は、今回生成するバリアブル原稿のデザインテンプレート番号に基づいて、各処理時間を検索する。次に、制御部11は、検索した各処理時間の差が±1秒以内に収まっているときの各処理実行単位を取得する。そして、制御部11は、取得した各処理実行単位を、初回の実行単位として自動的に反映させる。
【0031】
記憶部14は、例えば、HDD、半導体メモリなどにより構成される。記憶部14は、プログラムデータや各種設定データ等のデータを制御部11から読み書き可能に記憶する。例えば、記憶部14は、リストデータ141(
図3参照)を記憶する、
また、記憶部14は、処理時間データベース142を格納する。
【0032】
図6に、処理時間データベース142の一例を示す。
処理時間データベース142は、デザインテンプレート番号T21、原稿データ生成処理実行単位T22、原稿データ生成処理時間T23、RIP処理実行単位T24、RIP処理時間T25のフィールドを有する。
図6に示す例では、デザインテンプレート番号T21が37689の各処理時間が検索されている。この中で、各処理時間の差が±1秒以内に収まっているのは、4行目のレコードである。4行目のレコードは、原稿データ生成処理時間T23が20.51[sec]、RIP処理時間T25が20.54[sec]である。すなわち、原稿データ生成処理時間T23とRIP処理時間T25の差が-0.03[sec]で、±1秒以内である。この場合の原稿データ生成処理実行単位T22及びRIP処理実行単位T24は、ともに21である。したがって、
図6に示す例では、原稿データ生成処理及びRIP処理の初回の実行単位として、21件が自動的に設定されることとなる。
【0033】
通信部15は、通信用IC及び通信コネクタなどを有する通信インターフェースである。通信部15は、制御部11の制御の下、所定の通信プロトコルを用いて通信ネットワークNを介したデータ通信を行う。
【0034】
画像形成装置20は、プリントコントローラー21と、操作パネル22と、画像形成部23と、を備える。画像形成装置20は、PC10から受信したジョブに基づいて用紙に画像を形成して出力する。画像形成装置20は、プリントコントローラー21のNIC214を介して、PC10と相互に情報の送受信が可能に接続されている。
【0035】
プリントコントローラー21は、PC10から画像形成装置20に送信される原稿データの管理及び制御を行うものである。プリントコントローラー21は、PC10から送信されたプリント対象の原稿データに所定の画像処理を施して、画像形成部23へと出力する。プリントコントローラー21は、制御部211と、記憶部212と、画像処理部213と、NIC214と、を備える。本実施形態において、プリントコントローラー21は、複数(2つ)設けられている。
【0036】
制御部211は、CPU、ROM、RAMなどを備え、画像形成装置20の各部の動作を統括的に制御する。制御部211は、NIC214を介してPC10から入力される原稿データを画像形成部23に出力する。
制御部211は、バリアブル原稿データの生成から画像の形成までの一連の処理を制御する。
【0037】
記憶部212は、例えば、HDD、半導体メモリなどにより構成される。記憶部212は、プログラムデータや各種設定データ等のデータを制御部211から読み書き可能に記憶する。
【0038】
画像処理部213は、PC10から入力された原稿データにラスタライズ(RIP)処理を施して、CMYK各色の原稿データを生成する。すなわち、画像処理部213は、本発明のRIP部として機能する。RIP処理が施された原稿データは、画像形成部23の像形成ユニット232に出力される。
【0039】
NIC214は、PC10から通信ネットワークNを介してプリント対象の原稿データを受信する通信インターフェースである。
【0040】
操作パネル22は、ユーザーに対して各種情報を表示する表示部221と、ユーザーによる操作入力を受け付ける操作部222と、を備える。
表示部221は、カラー液晶ディスプレイなどで構成される。表示部221は、制御部211から入力される表示制御信号に従って、操作画面等(各種設定画面、各種ボタン、各機能の動作状況等)を表示する。
操作部222は、表示部221の画面上に設けられるタッチパネルと、表示部221の画面周囲に配置される各種ハードキーと、を備える。操作部222は、画面上に表示されたボタンが手指やタッチペン等で押下された場合、まず、押下された位置の座標を電圧値で検出する。次に、操作部222は、検出された位置に対応付けられた操作信号を制御部211に出力する。なお、タッチパネルは感圧式に限らず、例えば静電式や光式等であってもよい。操作部222は、ハードキーが押下された場合、押下されたキーに対応付けられた操作信号を制御部211に出力する。
【0041】
画像形成部23は、画像処理部213によりRIP処理が行われたCMYK各色の原稿データに基づいて、用紙に画像を形成する。
画像形成部23は、中間転写ベルト231と、像形成ユニット232と、転写部233と、定着部234と、を備える。
【0042】
中間転写ベルト231は、複数のローラーに懸架され回転可能に支持された半導電性エンドレスベルトであり、ローラーの回転に伴って回転駆動される。
【0043】
像形成ユニット232は、中間転写ベルト231に沿って配置され、中間転写ベルト231上にトナー像を形成する。像形成ユニット232は、画像処理部213から出力された原稿データの各画素の4色の画素値に応じて、C、M、Y及びK各色のトナー像を形成する。
【0044】
転写部233は、二次転写ローラー等により形成されたニップ部を有し、用紙にトナー像(画像)を転写する。
【0045】
定着部234は、定着ローラーにより用紙を加熱及び加圧して、トナー像を用紙に熱定着させる。
【0046】
画像形成部23は、像形成ユニット232により中間転写ベルト231上にCMYK各色のトナー像を重畳してフルカラーのトナー像を形成する。画像形成部23は、転写部233により、中間転写ベルト231上に形成されたトナー像を、内蔵する給紙トレイTR20から搬送された用紙に転写する。画像形成部23は、定着部234により、用紙上に形成されたトナー像を熱定着させる。
【0047】
ウェブサーバー30は、リストデータ141に基づいて、バリアブル原稿データを生成する制御部31を内蔵する。すなわち、制御部31は、本発明の生成部として機能する。ウェブサーバー30は、処理を分割して並列処理することが可能なオートスケーリング機能を有している。
【0048】
制御部31は、CPU、ROM、RAMなどを備える。制御部31は、RAMの作業領域に展開されたプログラムデータとCPUとの協働により、ウェブサーバー30の各部の動作を統括的に制御する。プログラムデータは、ROMや記憶部(図示省略)に記憶されている。
【0049】
次に、本実施形態に係る画像形成システム1の動作について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
図7の動作は、PC10の制御部11が、ユーザーによる印刷開始ボタンB1の押下を検知したことを契機として開始される。
【0050】
まず、制御部11は、記憶部14に記憶されているリストデータ141を読み出す(ステップS101)。
【0051】
次に、制御部11は、各処理の実行単位の初期値を取得する(ステップS102)。各処理の実行単位の初期値は、予め情報設定画面G1(
図4及び
図5参照)において設定されている。
【0052】
次に、制御部11は、残りの印刷件数を確認する(ステップS103)。残りの印刷件数は、リストデータ141に含まれる印刷用データのうち、未だ印刷されていない印刷用データの件数である。
【0053】
次に、制御部11は、残りの印刷件数が1件以上であるか否かを判定する(ステップS104)。
制御部11は、残りの印刷件数が1件以上であると判定した場合(ステップS104:YES)、次のステップS105へと移行する。
一方、制御部11は、残りの印刷件数が1件以上でない(0件である)と判定した場合(ステップS104:NO)、処理を終了する。
【0054】
ステップS105において、制御部11は、ウェブサーバー30に対して、バリアブル原稿データ生成処理の実行を指示する。
ウェブサーバー30の制御部31は、バリアブル原稿データ生成処理を実行する。具体的には、制御部31は、リストデータ141を参照して各可変要素をテンプレートに流し込むことで、バリアブル原稿データを生成する。バリアブル原稿データ生成処理は、原稿データ生成処理の実行単位に基づいて実行される。例えば、実行単位が100件の場合、100件のバリアブル原稿データが生成される。生成されたバリアブル原稿データは、PC10に送信される。
【0055】
次に、制御部11は、生成処理時間を測定する(ステップS106)。生成処理時間は、ウェブサーバー30におけるバリアブル原稿データ生成処理に掛かった時間である。測定された生成処理時間は、処理時間データベース142に記憶される。
【0056】
次に、制御部11は、画像形成装置20に対して、バリアブル原稿データに基づくRIP処理の実行を指示する(ステップS107)。
画像形成装置20(プリントコントローラー21)の制御部211は、画像処理部213を制御して、バリアブル原稿データにRIP処理を施す。RIP処理は、RIPの実行単位に基づいて実行される。例えば、実行単位が100件の場合、100件のバリアブル原稿データにRIP処理が施される。RIP処理が施されたバリアブル原稿データは、画像形成部23に出力される。その後、制御部211は、画像形成部23を制御して、画像形成処理を行わせる。
【0057】
次に、制御部11は、RIP処理時間を測定する(ステップS108)。RIP処理時間は、画像形成装置20におけるRIP処理に掛かった時間である。測定されたRIP処理時間は、処理時間データベース142に記憶される。
【0058】
次に、制御部11は、生成処理時間とRIP処理時間が等しいか否かを判定する(ステップS109)。具体的には、制御部11は、生成処理時間とRIP処理時間の差が±1秒以内に収まっているか否かを判定する。制御部11は、生成処理時間とRIP処理時間の差が±1秒以内に収まっている場合、生成処理時間とRIP処理時間が等しいと判定する。
制御部11は、生成処理時間とRIP処理時間が等しいと判定した場合(ステップS109:YES)、次のステップS110へと移行する。
一方、制御部11は、生成処理時間とRIP処理時間が等しくないと判定した場合(ステップS109:NO)、ステップS111へと移行する。
【0059】
ステップS110において、制御部11は、各処理の実行単位を継続することを決定する。その後、制御部11は、ステップS103へと移行する。
【0060】
ステップS111において、制御部11は、各処理の実行単位を見直す。具体的には、制御部11は、バリアブル原稿データの生成処理時間とRIP処理時間とが等しくなるように、各処理(生成処理及びRIP処理)の実行単位を調整する。その後、制御部11は、ステップS103へと移行する。
【0061】
生成処理時間がRIP処理時間よりも長い(生成処理時間-RIP処理時間>1秒)場合、原稿データ生成処理の実行単位を小さくする。これにより、律速が解消される。
【0062】
図8A及び
図8Bに、生成処理時間がRIP処理時間よりも長い場合の処理時間の一例を示す。
図8Aは、従来の原稿データ生成処理及びRIP処理に掛かる処理時間を説明する図である。
図8Bは、本実施形態の原稿データ生成処理及びRIP処理に掛かる処理時間を説明する図である。
【0063】
図8Aには、原稿データ生成処理及びRIP処理の実行単位が100件である場合が例示されている。
図8Aに示す例では、原稿データ生成処理を担うVDPツールが100件の原稿データ生成処理を行った後、プリントコントローラー21が100件のRIP処理を行っている。生成処理時間がRIP処理時間よりも長いので、VDPツールが100件ずつ連続して原稿データ生成処理を行った場合に、プリントコントローラー21においてロスタイム(図中符号D1)が生じている。
【0064】
図8Bには、原稿データ生成処理の実行単位を50件に分割した場合が例示されている。
図8Bに示す例では、原稿データ生成処理を担うウェブサーバー30が有するオートスケーリング機能により、50件の原稿データ生成処理が処理速度を落とさずに並列処理されている。これにより、100件の原稿データ生成処理に掛かる処理時間を大幅に短縮することできる。よって、プリントコントローラー21におけるRIP処理間のロスタイムを低減することができる。
【0065】
生成処理時間がRIP処理時間よりも短い(RIP処理時間-生成処理時間>1秒)場合、RIP処理の実行単位を小さくする。これにより、律速が解消される。
【0066】
図9A及び
図9Bに、生成処理時間がRIP処理時間よりも短い場合の処理時間の一例を示す。
図9Aは、従来の原稿データ生成処理及びRIP処理に掛かる処理時間を説明する図である。
図9Bは、本実施形態の原稿データ生成処理及びRIP処理に掛かる処理時間を説明する図である。
【0067】
図9Aには、原稿データ生成処理及びRIP処理の実行単位が100件である場合が例示されている。
図9Aに示す例では、原稿データ生成処理を担うVDPツールが100件の原稿データ生成処理を行った後、プリントコントローラー21が100件のRIP処理を行っている。生成処理時間がRIP処理時間よりも短いので、VDPツールが100件ずつ連続して原稿データ生成処理を行った場合に、プリントコントローラー21においてRIP待ち状態(図中符号D2)が生じている。
【0068】
図9Bには、RIP処理の実行単位を50件に分割した場合が例示されている。
図9Bに示す例では、複数(2つ)設けられたプリントコントローラー21により、50件のRIP処理が並列処理されている。これにより、100件のRIP処理に掛かる処理時間を大幅に短縮することできる。よって、プリントコントローラー21におけるRIP処理時のRIP待ち状態を低減することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、生成処理時間とRIP処理時間を等しくするため、まず、各処理の実行単位と処理時間の関係を処理データとしてリアルタイムで取得する。次に、取得した各処理データの近似式の交点となる値を算出する。これにより、理論上、生成処理時間とRIP処理時間が等しくなる。したがって、取得した各処理データの近似式の交点となる値を各処理の実行単位とすることで、生成処理時間とRIP処理時間を等しくすることができる。
図10に、各処理の実行単位と処理時間の関係の一例を示す。図中符号L1は、原稿データ生成処理の実行単位と処理時間の関係の一例である。図中符号L2は、RIP処理の実行単位と処理時間の関係である。図中符号F1は、各処理データの近似式の交点である。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る画像形成システム1は、生成部(制御部31)と、RIP部(画像処理部213)と、画像形成部23と、制御部31と、を備える。生成部は、バリアブル原稿データを生成する。RIP部は、生成部により生成されたバリアブル原稿データにRIP処理を行う。画像形成部23は、RIP部によりRIP処理が行われたバリアブル原稿データに基づいて、用紙に画像を形成する。制御部31は、バリアブル原稿データの生成から画像の形成までの一連の処理を制御する。制御部31は、生成部によるバリアブル原稿データの生成処理時間とRIP部によるRIP処理時間とが等しくなるように、各処理の実行単位を調整する。
したがって、本実施形態に係る画像形成システム1によれば、原稿データ生成とRIP処理に掛かる時間を等しくすることができる。これにより、律速の発生を抑制することができる。よって、大量のバリアブル印刷に対応する際、処理全体に掛かる時間を短縮することができる。
【0071】
また、制御部31は、生成処理時間がRIP処理時間よりも長い場合、バリアブル原稿データの生成処理の実行単位を小さくする。
したがって、原稿データ生成とRIP処理に掛かる時間を等しくすることができる。これにより、RIP処理間のロスタイムを低減することができる。よって、大量のバリアブル印刷に対応する際、処理全体に掛かる時間を短縮することができる。
【0072】
また、RIP部は、複数設けられる。制御部31は、生成処理時間がRIP処理時間よりも短い場合、RIP処理の実行単位を小さくする。
したがって、原稿データ生成とRIP処理に掛かる時間を等しくすることができる。これにより、RIP処理時のRIP待ち状態を低減することができる。よって、大量のバリアブル印刷に対応する際、処理全体に掛かる時間を短縮することができる。
【0073】
また、制御部31は、各処理の実行単位と処理時間の関係を処理データとしてリアルタイムで取得し、取得した各処理データの近似式の交点となる値を各処理の実行単位とする。
したがって、理論上、原稿データの生成処理時間とRIP処理時間を等しくすることができる。よって、大量のバリアブル印刷に対応する際、処理全体に掛かる時間を短縮することができる。
【0074】
また、生成部は、ウェブサーバー30に内蔵されている。
したがって、原稿データ生成処理を分割して並列処理することができる。これにより、原稿データ生成処理に掛かる処理時間を大幅に短縮することできる。よって、プリントコントローラー21におけるRIP処理間のロスタイムを低減することができる。
【0075】
また、各処理の実行単位の初期値を設定する際に、定数を採用する固定値モードと、制御部31により算出された変数を採用する自動算出モードと、のいずれかを選択可能な設定部(操作部12)を備える。
したがって、ユーザーが所望する方法で各処理の実行単位の初期値を設定することができる。よって、ユーザーの意に沿った形で処理全体に掛かる時間を短縮することができる。
【0076】
また、自動算出モードは、バリアブル原稿テンプレートごとに管理された過去の各処理の実行単位のデータ群から、生成処理時間とRIP処理時間とが等しくなる場合の実行単位を抽出するモードである。
したがって、ユーザーの手を煩わせることなく、各処理の実行単位の初期値を設定することができる。よって、ユーザーの作業負荷を増やすことなく、処理全体に掛かる時間を短縮することができる。
【0077】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、生成処理時間がRIP処理時間よりも短い場合に、RIP処理の実行単位を分割したケース(
図9参照)を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、RIP処理の実行単位を分割せずに原稿データを一方のプリントコントローラー21に割り振った後、次に生成された原稿データを他方のプリントコントローラー21に割り振るようにしてもよい。すなわち、次に生成された原稿データがRIP待ち状態となる場合に他方のプリントコントローラー21に割り振ることで、RIP待ち状態を解消することができる。これにより、大量のバリアブル印刷に対応する際、処理全体に掛かる時間を短縮することができる。
【0079】
その他、画像形成システムを構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 画像形成システム
10 PC
11 制御部
12 操作部(設定部)
13 表示部
14 記憶部
15 通信部
20 画像形成装置
21 プリントコントローラー
211 制御部
212 記憶部
213 画像処理部(RIP部)
214 NIC
22 操作パネル
221 表示部
222 操作部
23 画像形成部
231 中間転写ベルト
232 像形成ユニット
233 転写部
234 定着部
TR20 給紙トレイ
30 ウェブサーバー
31 制御部(生成部)
N 通信ネットワーク