(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101337
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】光輝材含有塗膜の形成方法及び形成装置
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20250630BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20250630BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20250630BHJP
B05D 1/12 20060101ALI20250630BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20250630BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20250630BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250630BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
B05D1/36 B
B05D5/06 101A
B05D7/24 303C
B05D1/12
B32B33/00
B32B27/20 A
B32B27/00 E
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218119
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】手塚 康介
(72)【発明者】
【氏名】小瀬村 透
(72)【発明者】
【氏名】福山 康弘
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 洋一
(72)【発明者】
【氏名】上原 義貴
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F100
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC07
4D075AC09
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4F100JB14C
4F100JN21C
4F100JN24C
(57)【要約】
【課題】塗料供給用ノズルにおいて光輝材が詰まることを防止しつつ、塗装品質を向上し得る光輝材含有塗膜の形成方法及び形成装置を提供する。
【解決手段】光輝材含有塗膜の形成方法は、被塗物上に光輝材を含有する塗膜を形成する光輝材含有塗膜の形成方法である。塗膜は、光輝材層と光輝材層の被塗物側及び塗膜表面側に設けられた塗膜層とを備えた積層構造を有する。光輝材含有塗膜の形成方法は、この積層構造を形成する際に、工程(1):塗膜形成材を含有する塗料を供給して塗料層を形成する工程、工程(2):塗料層に光輝材を供給して光輝材層を形成する工程、工程(3):光輝材層に塗料を供給して塗料層を形成する工程、工程(4):工程(1)及び工程(3)で形成された塗料層の塗膜形成材を硬化して塗膜層を形成する工程、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物上に光輝材を含有する塗膜を形成する方法であって、
前記塗膜が、光輝材層と前記光輝材層の被塗物側及び塗膜表面側に設けられた塗膜層とを備えた積層構造を有し、この積層構造を形成する際に、下記の工程(1)~工程(4)
工程(1):塗膜形成材を含有する塗料を供給して塗料層を形成する工程、
工程(2):前記塗料層に光輝材を供給して前記光輝材層を形成する工程、
工程(3):前記光輝材層に前記塗料を供給して塗料層を形成する工程、
工程(4):前記工程(1)及び前記工程(3)で形成された前記塗料層の前記塗膜形成材を硬化して前記塗膜層を形成する工程、を含む
ことを特徴とする光輝材含有塗膜の形成方法。
【請求項2】
前記工程(1)を行った後に、前記工程(2)と前記工程(3)とをこの順で繰り返して行い、前記繰り返しの後に、前記工程(4)を行うことを特徴とする請求項1に記載の光輝材含有塗膜の形成方法。
【請求項3】
前記工程(1)と前記工程(2)と前記工程(3)と前記工程(4)とをこの順で繰り返し行うことを特徴とする請求項1に記載の光輝材含有塗膜の形成方法。
【請求項4】
前記繰り返しの際の前記工程(4)において前記塗膜形成材の一次硬化を行い、前記繰り返しの後に更に前記塗膜形成材の二次硬化を行うことを特徴とする請求項3に記載の光輝材含有塗膜の形成方法。
【請求項5】
前記工程(2)において前記光輝材を供給する光輝材供給装置の供給方向と前記塗料層の表面とのなす角度を90°未満にすることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つの項に記載の光輝材含有塗膜の形成方法。
【請求項6】
前記工程(2)において前記光輝材を供給する光輝材供給装置の供給方向を前記塗料層の表面に対して平行にすることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つの項に記載の光輝材含有塗膜の形成方法。
【請求項7】
前記工程(2)において前記光輝材を供給する光輝材供給装置の供給方向を前記塗料層における前記光輝材の供給領域に応じて変更することを特徴とする請求項1~4のいずれか1つの項に記載の光輝材含有塗膜の形成方法。
【請求項8】
前記塗膜形成材が熱硬化型であり、前記工程(4)において前記塗膜形成材を加熱して完全硬化の状態にすることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つの項に記載の光輝材含有塗膜の形成方法。
【請求項9】
前記塗膜形成材が光硬化型又は電子線硬化型であり、前記工程(4)において前記塗膜形成材に光又は電子線を照射して前記塗膜形成材を完全硬化の状態にすることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つの項にに記載の光輝材含有塗膜の形成方法。
【請求項10】
前記塗膜形成材が熱硬化型であり、前記繰り返しの際の前記工程(4)において前記塗膜形成材を加熱して一次硬化させ、前記繰り返しの後に前記塗膜形成材を加熱して二次硬化させて完全硬化の状態にすることを特徴とする請求項4に記載の光輝材含有塗膜の形成方法。
【請求項11】
前記工程(2)において、摩擦帯電式フィーダー、コロナ帯電式フィーダー、パウダージェット式フィーダー及び落下式フィーダーからなる群より選ばれた少なくとも1種の光輝材供給装置を用いて前記光輝材を供給することを特徴とする請求項1~4のいずれか1つの項に記載の光輝材含有塗膜の形成方法。
【請求項12】
前記工程(1)及び前記工程(3)において、インクジェットを用いて前記塗料を供給することを特徴とする請求項1~4のいずれか1つの項に記載の光輝材含有塗膜の形成方法。
【請求項13】
被塗物上に光輝材を含有する塗膜を形成する装置であって、
前記塗膜が、光輝材層と前記光輝材層の被塗物側及び塗膜表面側に設けられた塗膜層とを備えた積層構造を有し、
塗膜形成材を含有する塗料を供給して塗料層を形成する塗料供給装置と、
光輝材を供給して前記光輝材層を形成する光輝材供給装置と、
前記塗料層の前記塗膜形成材を硬化する塗膜形成材硬化装置と、
前記塗料供給装置と前記光輝材供給装置と前記塗膜形成材硬化装置の作動順序を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置が、前記塗料供給装置と前記光輝材供給装置とを作動させて前記光輝材層と前記光輝材層の被塗物側及び塗膜表面側に前記塗料層を形成した後に、前記塗膜形成材硬化装置を作動させる
ことを特徴とする光輝材含有塗膜の形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝材含有塗膜の形成方法及び形成装置に係り、さらに詳細には、被塗物に塗料と光輝材とを別々に供給する光輝材含有塗膜の形成方法及び形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インクジェットプリントヘッドの塗装剤ノズルからメタリック塗料やマイカ塗料を吐出する塗装機器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたような塗装機器においては、光輝材を含有する塗料を塗装剤ノズルから吐出する際に、塗装剤ノズルに光輝材が詰まらないようにする必要があるので、ある程度のサイズを有する光輝材よりもノズル口径を十分に大きくする必要がある。一方で、このようにノズル口径を大きくしようとすると、塗装剤ノズルから吐出される塗料の液滴径が大きくなるので、塗膜の表面粗さが大きくなり、塗装品質が低下してしまう。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであって、塗料供給用ノズルにおいて光輝材が詰まることを防止しつつ、塗装品質を向上し得る光輝材含有塗膜の形成方法及び形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、光輝材層と光輝材層の被塗物側及び塗膜表面側に設けられた塗膜層とを備えた積層構造を有する塗膜を塗料と光輝材とを別々に供給する所定の工程を経て被塗物上に形成することにより、前記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の光輝材含有塗膜の形成方法は、被塗物上に光輝材を含有する塗膜を形成する光輝材含有塗膜の形成方法である。
この塗膜は、光輝材層と光輝材層の被塗物側及び塗膜表面側に設けられた塗膜層とを備えた積層構造を有する。
この光輝材含有塗膜の形成方法は、この積層構造を形成する際に、下記の工程(1)~工程(4)を含む。
工程(1):塗膜形成材を含有する塗料を供給して塗料層を形成する工程
工程(2):塗料層に光輝材を供給して光輝材層を形成する工程
工程(3):光輝材層に塗料を供給して塗料層を形成する工程
工程(4):工程(1)及び工程(3)で形成された塗料層の塗膜形成材を硬化して塗膜層を形成する工程
【0008】
また、本発明の光輝材含有塗膜の形成装置は、被塗物上に光輝材を含有する塗膜を形成する光輝材含有塗膜の形成装置である。
この塗膜は、光輝材層と光輝材層の被塗物側及び塗膜表面側に設けられた塗膜層とを備えた積層構造を有する。
この光輝材含有塗膜の形成装置は、塗膜形成材を含有する塗料を供給して塗料層を形成する塗料供給装置と、光輝材を供給して光輝材層を形成する光輝材供給装置と、塗料層の塗膜形成材を硬化する塗膜形成材硬化装置と、塗料供給装置と光輝材供給装置と塗膜形成材硬化装置の作動順序を制御する制御装置と、を備える。
この制御装置は、塗料供給装置と光輝材供給装置とを作動させて光輝材層と光輝材層の被塗物側及び塗膜表面側に塗料層を形成した後に、塗膜形成材硬化装置を作動させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光輝材層と光輝材層の被塗物側及び塗膜表面側に設けられた塗膜層とを備えた積層構造を有する塗膜を塗料と光輝材とを別々に供給する上述の工程を経て被塗物上に形成したため、塗料供給用ノズルにおいて光輝材が詰まることを防止しつつ、塗装品質を向上し得る光輝材含有塗膜の形成方法及び形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の光輝材含有塗膜の形成方法の第1実施形態を模式的に示す説明図である。
【
図2】
図1に示した光輝材供給装置と塗料層の表面との関係の一例を示す説明図である。
【
図3】
図1に示した光輝材供給装置と塗料層の表面との関係の他の例を示す説明図である。
【
図4】
図1に示した光輝材供給装置と塗料層の表面との関係の更に他の例を示す説明図である。
【
図5】第2実施形態の光輝材含有塗膜の形成方法を模式的に示す説明図である。
【
図6】第3実施形態の光輝材含有塗膜の形成方法を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の光輝材含有塗膜の形成方法及び光輝材含有塗膜の形成装置について詳細に説明する。
【0012】
[光輝材含有塗膜の形成方法]
本発明の光輝材含有塗膜の形成方法は、被塗物上に光輝材を含有する塗膜を形成する方法である。ここで、被塗物としては、例えば、鋼製やアルミニウム合金製、樹脂製(例えば、炭素繊維などの繊維を含む繊維強化樹脂等)の自動車の外装パネルや外装部品を挙げることができる。また、塗膜は、光輝材層と光輝材層の被塗物側及び塗膜表面側に設けられた塗膜層とを備えた積層構造を有している。このような塗膜としては、例えば、外装パネルのクリア塗膜の下方に形成されるいわゆるメタリックベース塗膜、パールベース塗膜を挙げることができる。また、このような塗膜の厚みは、例えば、20~60μm程度である。
【0013】
本発明の光輝材含有塗膜の形成方法は、上述の積層構造を形成する際に、下記の工程(1)~工程(4)を含んでいる。
【0014】
工程(1)は、塗膜形成材を含有する塗料を供給して塗料層を形成する工程である。
工程(2)は、塗料層に光輝材を供給して光輝材層を形成する工程である。
工程(3)は、光輝材層に塗料を供給して塗料層を形成する工程である。
工程(4)は、工程(1)及び工程(3)で形成された塗料層の塗膜形成材を硬化して塗膜層を形成する工程である。
【0015】
本発明によれば、被塗物に塗料と光輝材とを別々に供給することにより、塗料を供給するノズルにおいて光輝材が詰まることを防止できる。
【0016】
さらに、本発明によれば、上述の積層構造を有する塗膜を形成する際に、被塗物に光輝材を供給する前に被塗物に塗料を供給して光輝材層の被塗物側に塗料層を形成することによって被塗物に供給される粉体状の光輝材を塗料層に付着させて、光輝材層を形成することができる。
【0017】
さらに、本発明によれば、上述の積層構造を有する塗膜を形成する際に、光輝材層の塗膜表面側に塗料層を形成する塗料供給装置のノズル口径を光輝材のサイズを考慮せずに小さくできるので、塗料液滴のレベリングが進行し、塗膜の表面粗さを低減でき、塗装品質を向上できる。
【0018】
さらに、本発明によれば、光輝材層と光輝材層の被塗物側及び塗膜表面側に設けられた塗料層とを備えた積層構造を形成した後に、塗料層の塗膜形成材を硬化して塗膜層を形成するので、空隙の発生や塗膜の表面粗さを低減でき、塗装品質を向上できる。
【0019】
以下、光輝材含有塗膜の形成方法の好適形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0020】
(第1実施形態)
本実施形態の光輝材含有塗膜の形成方法においては、工程(1)を行った後に工程(2)と工程(3)とをこの順で繰り返して行い、繰り返しの後に工程(4)を行う。
【0021】
工程(1)~工程(4)についてより具体的に説明する。まず、
図1(A)に示すように、例えばインクジェットのような塗料供給装置51から被塗物1に向けて熱硬化型の粘着材33Aを供給して、粘着層33を形成する。
【0022】
ここで、粘着層33としては、光輝材20Aを付着できるものであれば、特に限定されない。粘着層33としては、例えば、外装パネルの光輝材含有塗膜10の下方に形成されることがある硬化前の中塗り塗膜を利用することができる。また、粘着材33Aとしては、例えば、このような硬化前の中塗り塗膜を形成する熱硬化型の中塗り塗料を挙げることができる。なお、本発明においては熱硬化型の粘着材33Aや粘着層33に替えて、詳しくは後述する熱硬化型の塗料31Aや塗料層31を利用することも可能である。
【0023】
次いで、
図1(B)に示すように、例えばパウダージェット式フィーダーのような光輝材供給装置53から粘着層33に向けて光輝材20Aを供給して、光輝材層20を形成する。さらに、上述した塗料供給装置51から光輝材層20に向けて熱硬化型の塗料31Aを供給して、塗料層31を形成する(工程(1))。
【0024】
このような塗料供給装置51のノズル口径は、塗装品質の更なる向上の観点からは、ある程度のサイズを有する光輝材よりも小さいことが好ましい。光輝材は、例えば、その典型的な形状が鱗片状(薄片状)であり、そのサイズにおける最大長部位が10~100μm、厚さが0.01~0.2μmである。そのため、上述したノズル口径は、例えば、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。上述のような光輝材を用いる場合には、特にノズル口径を10μm以下にすることが好ましい。
【0025】
光輝材層20は、光輝材20Aを含有していれば、特に限定されない。光輝材層20は、例えば、光輝材層20の面内方向において光輝材20Aを分散した状態で含有していることが好ましい。光輝材20Aとしては、従来公知の光輝材を用いることができ、例えば、薄片状のアルミニウム顔料やパール顔料を挙げることができる。また、光輝材20Aは、その供給の際に顕著な凝集が生じない程度であれば、例えば、光輝材に塗膜形成材が被着された状態などで塗膜形成材を含んでいてもよく、光輝材20Aのみの粉体であってもよい。また、粉体状の光輝材20Aの供給は、支燃物となる酸素を含まない雰囲気下、例えば、窒素雰囲気下において行うことが好ましい。
【0026】
また、塗料層31は、図示しない塗膜形成材を含有する塗料31Aを含んでいれば、特に限定されない。さらに、塗料層31は、図示するように光輝材層20における光輝材20A,20A同士の隙間に進入していることが好ましい。熱硬化型の塗料31Aとしては、加熱による熱硬化反応により塗膜層30を形成できる熱硬化型の塗膜形成材を含んでいれば、特に限定されない。塗料31Aとしては、例えば、光輝材を除いた従来公知の光輝材入り塗料を用いることができる。塗料31Aは、例えば、熱硬化反応により架橋する官能基を有するポリマーのような塗膜形成材、ポリマーを分散する分散媒を含んでいる。塗料31Aは、必要に応じて、塗膜形成材として、熱硬化反応に利用される硬化剤、その他の添加剤を含んでいてもよい。
【0027】
そして、
図1(C)に示すように、塗膜の厚みが所望の厚みとなるように、塗料層31に、上述した光輝材供給装置53から光輝材20Aを供給して、光輝材層20を形成し(工程(2))、さらに、光輝材層20に、上述した塗料供給装置51から熱硬化型の塗料31Aを供給して、塗料層31を形成し(工程(3))、工程(2)と工程(3)とをこの順で繰り返して行う。
【0028】
上述の繰り返しの後に、
図1(D)に示すように、工程(1)及び工程(3)で形成された塗料層31の塗膜形成材を、例えばヒーターのような塗膜形成材硬化装置55で加熱して完全硬化の状態にする。これにより、
図1(D)に示すように塗膜層30を形成して、光輝材含有塗膜10を形成する(工程(4))。
【0029】
ここで、本発明において「塗膜形成材が完全硬化の状態である」とは、塗膜層の塗膜表面側が硬化しているだけの状態でなく、塗膜層の塗膜表面側から被塗物側までもが硬化している状態を意味する。
【0030】
なお、
図1(A)~(C)においては、塗料供給装置51や光輝材供給装置53を矢印Xや矢印Yで示すように図中左側に移動させているが、移動方向は、これに限定されない。また、塗料供給装置51や光輝材供給装置53の移動に替えて又は加えて、被塗物1を移動させてもよい。さらに、
図1(B)や
図1(C)においては、説明の都合上、光輝材層20の形成が完了する前に塗料層31を形成しているが、光輝材層20の形成が完了した後に塗料層31を形成してもよいことは言うまでない。
【0031】
図2に示すように、工程(2)においては、光輝材(図示せず)を供給する光輝材供給装置53の図中破線で示す供給方向と塗料層31の表面とのなす角度θを90°未満にすることが好ましい。
【0032】
また、
図3に示すように、工程(2)においては、光輝材20Aを供給する光輝材供給装置53の供給方向を塗料層31の表面に対して平行にすることが好ましい。
【0033】
ここで、本発明において「光輝材供給装置の供給方向が塗料層の表面に対して平行である」とは、供給方向が塗料層の表面に対して完全に平行である場合に限定されず、殆ど平行である場合、具体的には供給方向と塗料層の表面とのなす角度が3°以下、好ましくは2°以下である場合を含むことを意味する。
【0034】
また、
図4に示すように、工程(2)においては、光輝材(図示せず)を供給する光輝材供給装置53の図中破線で示す供給方向を塗料層31における光輝材の供給領域に応じて変更することも可能である。
【0035】
次に、本実施形態の利点について説明する。本実施形態によれば、光輝材含有塗膜10の厚みが所望の厚みとなるように、光輝材層20の形成工程と塗料層31の形成工程を繰り返した後に、一度の加熱によって熱硬化型の塗膜形成材を完全硬化の状態にし、塗膜層30を形成して、光輝材含有塗膜10を形成する(
図1参照)ので、後述する第2及び第3実施形態の光輝材含有塗膜の形成方法によりも、工程を簡略化できるという利点がある。
【0036】
本実施形態によれば、粘着層33として、外装パネルの光輝材含有塗膜10の下方に形成されることがある中塗り塗料(硬化前の中塗り塗膜)を利用するので、光輝材含有塗膜10と中塗り塗膜を一度の加熱によって形成することが可能となるので、工程をより簡略化できるという利点がある。
【0037】
一方、本発明においては、上述したように、粘着層33の替わりに塗料層31を利用することも可能である。この場合、塗料層31の硬化の際に、既に硬化した中塗り塗膜の硬化を考慮する必要がないため、工程(4)における加熱温度、加熱時間などの硬化条件の管理が容易になるという利点がある。
【0038】
本実施形態によれば、工程(2)において光輝材を供給する光輝材供給装置53の供給方向と塗料層31の表面とのなす角度θを90°未満にする(
図2参照)ので、上述した利点に加えて、薄片状の光輝材が配置される角度が揃いやすくなるという利点がある。
【0039】
また、工程(3)において塗料供給装置51から供給される塗料31Aによって、被塗物側の塗料層31に薄片状の光輝材が押さえつけられやすく、薄片状の光輝材が規則正しく平行に並びやすい。その結果、光輝材の配向性をより向上させることができる。このようなメカニズムによって光輝材の配向性を向上できるため、配向性を向上させる助剤を塗料に含有させる必要がないという利点もある。また、このような助剤が光輝性や塗膜の表面粗さなどの塗装品質を低下させる可能性があるものである場合、上述のような助剤を塗料に含有させないことにより、塗装品質を更に向上させることができる。一方、光輝材供給装置53の供給方向と塗料層31の表面とのなす角度θが90°である場合、薄片状の光輝材が配置される角度が揃いにくい。
【0040】
本実施形態によれば、工程(2)において光輝材を供給する光輝材供給装置53の供給方向を塗料層31の表面に対して平行にする(
図3参照)ので、上述した利点に加えて、薄片状の光輝材を塗料層31の表面に配向させやすく、鏡面のような塗装仕上げにしやすいという利点がある。
【0041】
本実施形態によれば、工程(2)において光輝材を供給する光輝材供給装置53の供給方向を塗料層31における光輝材の供給領域に応じて変更する(
図4参照)ので、上述した利点に加えて、塗料層31の表面に凹凸があっても薄片状の光輝材が配置される角度が揃った均一な塗装仕上げにしやすいという利点がある。
【0042】
一方、本発明においては、工程(2)において光輝材を供給する光輝材供給装置53の供給方向を塗料層31における光輝材の供給領域に応じて変更することによって、例えば、同一塗料層31の表面において、薄片状の光輝材が配置される角度を異ならせることも可能である。
【0043】
本実施形態によれば、工程(2)において光輝材供給装置53としてパウダージェット式フィーダーを用いたので、上述のような供給方向を実現しやすいという利点がある。パウダージェット式フィーダーとしては、例えば、エアー二流体式パウダージェットを挙げることができる。しかしながら、本発明において用いる光輝材供給装置53はこれに限定されない。光輝材供給装置53として、例えば、摩擦帯電式フィーダー、コロナ帯電式フィーダー、落下式フィーダー(オーガー式フィーダー、振動式フィーダー、スクリュー式フィーダー)を用いることもできる。
【0044】
本実施形態によれば、工程(1)及び工程(3)において塗料供給装置51としてインクジェットを用いたので、上述のように塗膜の表面粗さを低減しやすく、塗装品質を向上させやすいという利点がある。
【0045】
本実施形態によれば、熱硬化型である塗膜形成材を用い、工程(4)において熱硬化型である塗膜形成材を上述した塗膜形成材硬化装置55で加熱して完全硬化の状態にしたので、上述した利点に加えて、光硬化型又は電子線硬化型である塗膜形成材を用いる場合よりも、光輝材含有塗膜を厚くしやすいという利点がある。
【0046】
また、本発明において用いる塗膜形成材はこれに限定されない。塗膜形成材として、例えば、光硬化型である塗膜形成材、電子線硬化型である塗膜形成材を用いることもできる。このような場合、工程(4)において光硬化型又は電子線硬化型である塗膜形成材に紫外線照射装置や電子線照射装置によって紫外光又は電子線を照射して塗膜形成材を完全硬化の状態にすればよい。
【0047】
図5及び
図6は、第2及び第3実施形態の光輝材含有塗膜の形成方法を説明する図である。以下の説明では、上述した構成部位と同じ構成部位に同一符号を付して詳細な発明を省略する。
【0048】
(第2実施形態)
図5に示すように、本実施形態の光輝材含有塗膜の形成方法は、工程(1)を行った後に工程(2)と工程(3)とをこの順で繰り返して行い、繰り返しの後に工程(4)を行うのではなく、工程(1)と工程(2)と工程(3)と工程(4)とをこの順で繰り返し行う。
【0049】
工程(1)~工程(4)についてより具体的に説明する。まず、
図5(A)に示すように、上述した塗料供給装置51から被塗物1に向けて熱硬化型の塗料31Aを供給して塗料層31を形成する(工程(1))。
【0050】
上述の工程(1)を行った後に、
図5(B)に示すように、上述した光輝材供給装置53から塗料層31に向けて光輝材20Aを供給して光輝材層20を形成し(工程(2))、上述した塗料供給装置51から光輝材層20に向けて熱硬化型の塗料31Aを供給して塗料層31を形成し(工程(3))、工程(1)及び工程(3)で形成された塗料層31の塗膜形成材を上述した塗膜形成材硬化装置55で加熱して完全硬化の状態にする(工程(4))。
【0051】
そして、
図5(C)に示すように、工程(1)~工程(4)をこの順で繰り返し行うことにより、
図5(D)に示すように、所定の厚みの光輝材含有塗膜10を形成する。
【0052】
なお、
図5(B)、
図5(C)においては、塗料供給装置51、光輝材供給装置53、塗膜形成材硬化装置55を矢印X、矢印Y、矢印Zで示すように図中左側に移動させているが、移動方向は、これに限定されない。また、塗料供給装置51、光輝材供給装置53、塗膜形成材硬化装置55の移動に替えて又は加えて、被塗物1を移動させてもよい。さらに、
図5(B)や
図5(C)においては、説明の都合上、光輝材層20の形成が完了する前に塗料層31を形成し、塗料層31の形成が完了する前に塗膜形成材を硬化させているが、光輝材層20の形成が完了した後に塗料層31を形成し、塗料層31の形成が完了した後に塗膜形成材を硬化させてもよいことは言うまでない。
【0053】
次に、本実施形態の利点について説明する。本実施形態によれば、光輝材層と光輝材層の被塗物側及び塗膜表面側に設けられた塗料層からなる積層構造を形成した際に、塗料層を逐次硬化させることによって塗料層の硬化を確実に行うことができるので、第1実施形態の利点に加えて、光輝材含有塗膜をより厚膜化させやすいという利点がある。
【0054】
(第3実施形態)
図6に示すように、本実施形態の光輝材含有塗膜の形成方法においては、繰り返しの際の工程(4)において熱硬化型の塗膜形成材を加熱し一次硬化を行って一次硬化塗膜層30’を形成し(
図6中(C)参照)、繰り返しの後に更に熱硬化型の塗膜形成材を加熱して二次硬化を行って完全硬化の状態にした(
図6中(D)参照)こと以外は、第2実施形態の光輝材含有塗膜の形成方法と同様の操作を行う。
【0055】
次に、本実施形態の利点について説明する。本実施形態によれば、熱硬化型の塗膜形成材を加熱して完全硬化の状態にする際に、一次硬化と二次硬化に分けたため、第2実施形態の利点に加えて、熱硬化型の塗膜形成材を一次硬化と二次硬化に分けずに一度の加熱で完全硬化の状態にする場合と比較して、熱硬化に要する時間を短縮することができるという利点がある。
【0056】
[光輝材含有塗膜の形成装置]
本発明の光輝材含有塗膜の形成装置は、上述した本発明の光輝材含有塗膜の形成方法に用いられ、被塗物上に光輝材を含有する塗膜を形成する装置である。ここで、被塗物としては、上述のような自動車の外装パネルや外装部品を挙げることができる。また、塗膜としては、上述のような積層構造を有するベース塗膜を挙げることができる。
【0057】
本発明の光輝材含有塗膜の形成装置50は、例えば、
図5(C)及び
図6(C)に示すように、塗料供給装置51と、光輝材供給装置53と、塗膜形成材硬化装置55と、制御装置57とを備えている。なお、
図1においては、説明の都合上、光輝材含有塗膜の形成装置を示していない。
【0058】
塗料供給装置51は上述のような塗膜形成材を含有する塗料31Aを供給して塗料層31を形成するものであり、光輝材供給装置53は光輝材20Aを供給して光輝材層20を形成するものであり、塗膜形成材硬化装置55は塗料層31の塗膜形成材を硬化するものである。
【0059】
制御装置57は、塗料供給装置51と光輝材供給装置53と塗膜形成材硬化装置55の作動順序を制御するものであり、例えば、塗料供給装置51と光輝材供給装置53とを作動させて光輝材層20と光輝材層20の被塗物側及び塗膜表面側に塗料層30,30を形成した後に、塗膜形成材硬化装置55を作動させる。
【0060】
本発明によれば、上述した制御装置57により、上述した塗料供給装置51と光輝材供給装置53と塗膜形成材硬化装置55の作動順序を制御することにより、上述した本発明の光輝材含有塗膜の形成方法を実行することができる。
【0061】
また、制御装置57は、上述のように各装置の作動順序を制御するだけでなく、例えば、塗料供給装置51(光輝材供給装置53)の塗料(光輝材)供給量や塗料(光輝材)供給速度、移動速度などを制御できることが好ましい。このような制御装置によれば、塗膜形成材硬化装置55の硬化条件(加熱時間、加熱温度、光等の照射時間、照射強度等)を制御することによって、例えば、
図5(C)や
図6(C)に示すように、塗膜形成材を完全硬化させたり、一次硬化させたりすることも可能である。
【0062】
以上、本発明を若干の実施形態によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0063】
従って、例えば、上述した構成要素は、各実施形態に示した構成に限定されるものではなく、被塗物、光輝材含有塗膜、光輝材含有塗膜の形成装置などの仕様や材質の細部を変更することや、一の実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と入れ替えて又は組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 被塗物
10 光輝材含有塗膜
20 光輝材層
20A 光輝材
30 塗膜層
30’ 一次硬化塗膜層
31 塗料層
31A 塗料
33 粘着層
33A 粘着材
50 光輝材含有塗膜の形成装置
51 塗料供給装置
53 光輝材供給装置
55 塗膜形成材硬化装置
57 制御装置