(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101372
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】ガス回収装置、ガス回収方法および気液接触装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/18 20060101AFI20250630BHJP
【FI】
B01D53/18 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218183
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(71)【出願人】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 耕大
(72)【発明者】
【氏名】高角 章夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 俊一
(72)【発明者】
【氏名】川島 勝
(72)【発明者】
【氏名】チャトロン ヨンシリ
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 総太
【テーマコード(参考)】
4D020
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA08
4D020BA16
4D020BA23
4D020BB03
4D020BC01
4D020CB24
4D020DA01
4D020DA02
4D020DB01
4D020DB04
4D020DB05
4D020DB20
(57)【要約】
【課題】ガス中の特定成分を吸収液により吸収する吸収塔を備えたガス回収装置において、吸収液における特定成分の吸収効率を向上する。
【解決手段】ガス回収装置100は、ガス中の特定成分を吸収液Lに吸収させる吸収塔1を備える。吸収塔1は、吸収塔1の上方から吸収液Lを供給する吸収液供給部21と、吸収塔1の下方からガスGを供給するガス供給部31と、吸収塔1内を上下方向の複数の区画Sに仕切るとともに、吸収液供給部21からの吸収液Lを下方に通過させ、ガス供給部31からのガスGを上方に通過させる貫通孔10hを複数有する上下複数段の多孔板10とを有する。多孔板10は、上段の多孔板11が下段の多孔板13よりも貫通孔10hによる開孔面積が小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中の特定成分を吸収液に吸収させる吸収塔を備えたガス回収装置であって、
吸収塔は、
吸収塔の上方から吸収液を供給する吸収液供給部と、
吸収塔の下方からガスを供給するガス供給部と、
吸収塔内を上下方向の複数の区画に仕切るとともに、吸収液供給部からの吸収液を下方に通過させ、ガス供給部からのガスを上方に通過させる複数の貫通孔を有する上下複数段の多孔板と
を有し、
上段の多孔板が下段の多孔板よりも貫通孔による開孔面積が小さい
ことを特徴する、ガス回収装置。
【請求項2】
上段の多孔板は、貫通孔の大きさおよび/または貫通孔の数が異なることで、下段の多孔板よりも開孔面積が小さい
ことを特徴とする、請求項1に記載のガス回収装置。
【請求項3】
複数の多孔板のうち、少なくとも一つの多孔板は、多孔板における開孔面積を変更可能な開孔面積変更部を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載のガス回収装置。
【請求項4】
多孔板によって上下方向に仕切られた隣接する各区画における気相部分の圧力差を取得する圧力差取得部を有する
ことを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のガス回収装置。
【請求項5】
前記圧力差に基づいて、多孔板における開孔面積、吸収塔内への吸収液の供給量、吸収塔内へのガス供給量の少なくとも一つを調整する調整部を有する
ことを特徴とする、請求項4に記載のガス回収装置。
【請求項6】
吸収塔にて特定成分を吸収した吸収液から特定成分を排出させて吸収液を再生する再生塔をさらに備える
ことを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のガス回収装置。
【請求項7】
吸収塔内を上下方向の複数の区画に仕切るとともに、貫通孔を複数有する多孔板を複数段備え、
上段の多孔板が下段の多孔板よりも貫通孔による開孔面積が小さい吸収塔を備えたガス回収装置を用いるガス回収方法であって、
吸収塔においてガス中の特定成分を吸収液に吸収させる吸収工程を有し、
吸収工程では、貫通孔が吸収塔の上方から供給された吸収液を下方に通過させるとともに、吸収塔の下方から供給されたガスを上方に通過させる
ことを特徴とする、ガス回収方法。
【請求項8】
吸収工程では、
多孔板によって上下方向に仕切られた隣接する各区画における気相部分の圧力差を取得し、
前記圧力差に基づいて、多孔板における開孔面積、吸収塔内への吸収液の供給量、吸収塔内へのガス供給量の少なくとも一つを調整する
ことを特徴とする、請求項7に記載のガス回収方法。
【請求項9】
ガス回収装置は、再生塔をさらに備え、
再生塔において、吸収工程にて特定成分を吸収した吸収液から特定成分を排出させて吸収液を再生する再生工程をさらに備える
ことを特徴とする、請求項7または請求項8に記載のガス回収方法。
【請求項10】
前記吸収塔は、特定成分を吸収した吸収液から特定成分を排出させて吸収液を再生する再生塔であり、
前記吸収液供給部は、前記吸収塔の上方から、特定成分を吸収した吸収液を供給し、
前記ガス供給部は、前記吸収塔の下方から高温ガスを供給する
ことを特徴する、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のガス回収装置。
【請求項11】
ガスと液体とを接触させる気液接触塔を備えた気液接触装置であって、
気液接触塔は、
気液接触塔の上方から液体を供給する液供給部と、
気液接触塔の下方からガスを供給するガス供給部と、
気液接触塔内を上下方向の複数の区画に仕切るとともに、液供給部からの液体を下方に通過させ、ガス供給部からのガスを上方に通過させる複数の貫通孔を有する上下複数段の多孔板と
を有し、
上段の多孔板が下段の多孔板よりも貫通孔による開孔面積が小さい
ことを特徴する、気液接触装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス回収装置、ガス回収方法および気液接触装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化炭素、二酸化硫黄などの特定成分を含んだ排ガスなどから化学吸収法により特定成分を分離回収するガス回収装置が提案されている。例えば特許文献1に記載のガス回収装置は、排ガスとアミン系化合物などを含んだ吸収液とを吸収塔内において接触(気液接触)させることで、排ガスからの特定成分として二酸化炭素を吸収液に含ませて分離回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のガス回収装置は、特定成分を含有するガスと、吸収液とを気液接触させる吸収塔に、複数段の吸収部が備えられる。つまり、ガス回収装置は、吸収塔内において多段階で気液接触させる構成を備え、吸収液は各段階において再利用される。これにより、吸収液中における特定成分の濃度を上昇させて、吸収液中における単位量あたりの特定成分の回収量を増加できることで、ガス回収装置は、吸収塔におけるガスの特定成分の吸収効率を向上させる。
【0005】
このような多段階で気液接触させる構成の吸収塔を備えたガス回収装置として、例えば
図8に示すようなガス回収装置900がある。ガス回収装置900の吸収塔9は、吸収塔9内の空間を上下方向に複数の区画S1~S4(S)に分割するように、複数の貫通孔91h~93h(90h)を有する複数段の多孔板91~93(90)を備える。複数の多孔板90は、吸収塔9の下方から供給されるガスGを上方に通過させるとともに、吸収塔9の上方から供給される吸収液Lを下方に通過させる。
【0006】
図8に示すように、各区画Sでは、上方から供給される吸収液Lが各多孔板90上に貯留されて、各々の吸収液Lの水位が、第1~第3水位H91~H93(H9)となる。
【0007】
吸収塔9の下方から供給される被処理ガスGは、各貫通孔90hを上方に通過して、各多孔板90上に貯留された吸収液L中を通過することで、被処理ガスGと吸収液Lとが気液接触する。気液接触することで、被処理ガスG中の特定成分が吸収液Lに吸収される。
【0008】
図9に示すように、一般的に吸収液Lの水位Hが高いほど気液接触の時間が長くなることで、吸収液Lにおける被処理ガスG中の特定成分の吸収効率は向上する。
図9は、従来のガス回収装置900における水位Hと、被処理ガスG中における特定成分の吸収液Lへの移動速度との関係を示す図である。
図9では、特定成分の例を二酸化炭素として、吸収液Lの例としてアミン水溶液を用いた。
【0009】
しかしながら、
図8、
図10Aに示すように、ガス回収塔900の構成では、第3水位H93、第2水位H92、第1水位H91の順に、すなわち上方の区画Sほど、水位Hが低くなる。
図10Aは、従来のガス回収装置900における水位Hの時間変化を示す図である。したがって、上方の区画Sほど、気液接触の時間が短くなることで、気液接触効率が低下し、吸収液Lにおける特定成分の吸収効率が低下する結果、ガス回収塔900は、吸収塔9全体における特定成分の吸収効率が低下するという課題がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被処理ガス中の特定成分を吸収液により吸収する吸収塔を備えたガス回収装置において、吸収液における特定成分の吸収効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面によれば、ガス回収装置は、ガス中の特定成分を吸収液に吸収させる吸収塔を備えたガス回収装置であって、
吸収塔は、
吸収塔の上方から吸収液を供給する吸収液供給部と、
吸収塔の下方からガスを供給するガス供給部と、
吸収塔内を上下方向の複数の区画に仕切るとともに、吸収液供給部からの吸収液を下方に通過させ、ガス供給部からのガスを上方に通過させる複数の貫通孔を有する上下複数段の多孔板と
を有し、
上段の多孔板が下段の多孔板よりも貫通孔による開孔面積が小さいものである。
【0012】
これによると、ガス回収装置は、吸収塔における上段の多孔板の方が下段の多孔板よりも開孔面積が小さいことで、多孔板の貫通孔における吸収液の滴下量は、同一条件下では上段の多孔板の方が少量となる。また、吸収塔における上段の多孔板の方が下段の多孔板よりも開孔面積が小さいことで、ガスの圧力損失が上段の多孔板ほど大きくなり、ガスが多孔板を押し上げる圧力が上方の区画ほど大きくなる。これらにより、上段の多孔板の貫通孔における吸収液の滴下が抑制される。したがって、上段の多孔板上に貯留される吸収液の量は増大し、その水位が高くなる。結果として、ガス回収装置は、吸収塔における吸収液とガスとの気液接触効率を向上できることで、被処理ガス中の特定成分の吸収効率を向上できる。
【0013】
本第2発明によるガス回収装置は、上段の多孔板は、貫通孔の大きさおよび/または貫通孔の数が異なることで、下段の多孔板よりも開孔面積が小さいものである。
【0014】
また、本第3発明によるガス回収装置は、複数の多孔板のうち、少なくとも一つの多孔板は、多孔板における開孔面積を変更可能な開孔面積変更部を有するものである。
【0015】
これらによると、ガス回収装置は、多孔板における貫通孔による開孔面積を変更することができる。よって、ガス回収装置は、多孔板上に貯留される吸収液の量の調整を簡便に行うことができる。
【0016】
本第4発明によるガス回収装置は、多孔板によって上下方向に仕切られた隣接する各区画における気相部分の圧力差を取得する圧力差取得部を有するものである。
【0017】
また、本第5発明によるガス回収装置は、前記圧力差に基づいて、多孔板における開孔面積、吸収塔内への吸収液の供給量、吸収塔内へのガス供給量の少なくとも一つを調整する調整部を有するものである。
【0018】
これらによると、ガス回収装置は、水位と相関のある圧力差に基づいて多孔板における開孔面積などの調整が可能となることで、水位を直接確認することなく、水位を所望の高さに調整することが可能となる。
【0019】
本第6発明によるガス回収装置は、吸収塔にて特定成分を吸収した吸収液から特定成分を排出させて吸収液を再生する再生塔をさらに備えるものである。
【0020】
これによると、ガス回収装置は、吸収液を再生して循環利用することで、吸収塔における被処理ガス中の特定成分の吸収効率を向上できる。
【0021】
本第7発明によるガス回収方法は、吸収塔内を上下方向の複数の区画に仕切るとともに、貫通孔を複数有する多孔板を複数段備え、
上段の多孔板が下段の多孔板よりも貫通孔による開孔面積が小さい吸収塔を備えたガス回収装置を用いるガス回収方法であって、
吸収塔においてガス中の特定成分を吸収液に吸収させる吸収工程を有し、
吸収工程では、貫通孔が吸収塔の上方から供給された吸収液を下方に通過させるとともに、吸収塔の下方から供給されたガスを上方に通過させるものである。
【0022】
これによると、ガス回収方法は、吸収塔のおける上段の多孔板の方が下段の多孔板よりも開孔面積が小さいことで、吸収工程における多孔板の貫通孔における吸収液の滴下量は、同一条件下では上段の多孔板の方が少量となる。また、吸収塔における上段の多孔板の方が下段の多孔板よりも開孔面積が小さいことで、被処理ガスの圧力損失が上段の多孔板ほど大きくなり、被処理ガスが多孔板を押し上げる圧力が上方の区画ほど大きくなる。これらにより、上段の多孔板の貫通孔における吸収液の滴下が抑制される。したがって、上段の多孔板上に貯留される吸収液の量は増大し、その水位が高くなる。結果として、ガス回収装置は、吸収塔における吸収液と被処理ガスとの気液接触効率を向上できることで、被処理ガス中の特定成分の吸収効率を向上できる。
【0023】
本第8発明によるガス回収方法は、吸収工程では、
多孔板によって上下方向に仕切られた隣接する各区画における気相部分の圧力差を取得し、
前記圧力差に基づいて、多孔板における開孔面積、吸収塔内への吸収液の供給量、吸収塔内へのガス供給量の少なくとも一つを調整するものである。
【0024】
これによると、ガス回収方法は、多孔板上の吸収液の水位と相関のある圧力差に基づいて多孔板における開孔面積などの調整が可能となることで、水位を所望の高さに調整することが可能となる。
【0025】
本第9発明によるガス回収方法は、ガス回収装置が再生塔をさらに備え、
再生塔において、吸収工程にて特定成分を吸収した吸収液から特定成分を排出させて吸収液を再生する再生工程をさらに備えるものである。
【0026】
これによると、ガス回収方法は、吸収液を再生して循環利用することで、吸収塔における被処理ガス中の特定成分の吸収効率を向上できる。
【0027】
本第10発明によるガス回収装置は、前記吸収塔が、特定成分を吸収した吸収液から特定成分を排出させて吸収液を再生する再生塔であり、
前記吸収液供給部は、前記吸収塔の上方から、特定成分を吸収した吸収液を供給し、
前記ガス供給部は、前記吸収塔の下方から高温ガスを供給するものである。
【0028】
これによると、ガス回収装置が備える再生塔は、特定成分を吸収した吸収液と高温ガスとの気液接触効率を向上できることで、特定成分を吸収した吸収液を効率よく加熱でき、結果として、吸収液の再生効率を向上させることが可能となる。
【0029】
本第11発明による気液接触装置は、ガスと液体とを接触させる気液接触塔を備えた気液接触装置であって、
気液接触塔は、
気液接触塔の上方から液体を供給する液供給部と、
気液接触塔の下方からガスを供給するガス供給部と、
気液接触塔内を上下方向の複数の区画に仕切るとともに、液供給部からの液体を下方に通過させ、ガス供給部からのガスを上方に通過させる複数の貫通孔を有する上下複数段の多孔板と
を有し、
上段の多孔板が下段の多孔板よりも貫通孔による開孔面積が小さいものである。
【0030】
これによると、気液接触装置は、気液接触塔における上段の多孔板の方が下段の多孔板よりも開孔面積が小さいことで、多孔板の貫通孔における液の滴下量は、同一条件下では上段の多孔板の方が少量となる。また、吸収塔における上段の多孔板の方が下段の多孔板よりも開孔面積が小さいことで、ガスの圧力損失が上段の多孔板ほど大きくなり、ガスが多孔板を押し上げる圧力が上方の区画ほど大きくなる。これらにより、上段の多孔板の貫通孔における吸収液の滴下が抑制される。したがって、上段の多孔板上に貯留される吸収液の量は増大し、その水位が高くなる。結果として、気液接触装置は、気液接触塔における吸収液とガスとの気液接触効率を向上できることで、気液接触処理の効率を向上できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ガス回収装置は、吸収塔における吸収液と被処理ガスとの気液接触効率を向上できることで、被処理ガス中の特定成分の吸収効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るガス回収装置の縦断面図である。
【
図3】同ガス回収装置の部分拡大縦断面図であり、水位に関係する因子を説明する図である。
【
図4】多孔板の開孔面積を複数水準で変更した場合の圧力差と水位との関係を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るガス回収装置のブロック図である。
【
図6】同ガス回収装置における制御部の処理内容の例を示すフローチャートである。
【
図7】同ガス回収装置の変形例を示す横断面図である。
【
図9】従来のガス回収装置における水位とガス中の特定成分の移動速度との関係を示す図である。
【
図10A】従来のガス回収装置における水位の時間軸変化を示す図である。
【
図10B】従来のガス回収装置における水位および圧力差の時間軸変化を示す図である。
【
図10C】従来のガス回収装置における水位と圧力差との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態に係るガス回収装置100について、図面を参照して説明する。なお、図中、同一または相当部分については、同一の参照符号を付すことで、説明を繰り返さない。また、以下の説明において、「上」、「下」、「横」および「縦」等の位置または方向を意味する用語が用いられることもある。これらの用語は、実施形態の理解を容易にするために便宜上用いられるものであり、実際に実施される際の位置または方向に限定されない。
【0034】
〈第1の実施形態〉
[ガス回収装置]
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るガス回収装置100の構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガス回収装置100の縦断面図である。
【0035】
図1より、ガス回収装置100は、被処理ガスG中の特定成分を化学吸収法により吸収液Lに吸収させる吸収塔1を備え、吸収塔1は、吸収塔1内を上下方向の四つの区画S1~S4(S)に仕切る、第1~第3多孔板11~13(10)と、吸収液Lが供給される吸収塔1上部の吸収液供給部21と、被処理ガスGが供給される吸収塔1内下部のガス供給部31と、特定成分を吸収液Lに吸収された処理ガスG1が排出されるガス排出部32と、特定成分を吸収した反応後吸収水L1が排出される塔下部の吸収液排出部22と、吸収塔1内の各区画Sの気相部の圧力値から隣接する区画Sの圧力差ΔPとして第1~第4圧力差ΔP1~ΔP4を測定する圧力差取得部40とを備える。被処理ガスGは、例えばボイラー燃焼後の排ガスなどであり、これに含まれる特定成分は、例えば二酸化炭素、二酸化硫黄などである。本実施形態では、特定成分を二酸化炭素として説明を行う。
【0036】
図1および
図2A~
図2Cに示すように、各多孔板10は、各多孔板10を厚さ方向に貫通する第1~第3貫通孔11h~13h(10h)をそれぞれ有する。本実施形態では、各多孔板10は、各貫通孔10hの大きさが同一であり、各貫通孔10hの数が第1多孔板11、第2多孔板12、第3多孔板13の順に多くなるように設けられる。よって、各貫通孔10hによる開孔面積は、第3多孔板13、第2多孔板12、第1多孔板11の順に小さくなる。これにより、各多孔板10における開孔率が、第3多孔板13、第2多孔板12、第1多孔板11の順に小さくなる。ここで、開孔率とは、各多孔板10における単位面積あたりの開孔面積である。
【0037】
なお、各多孔板10は、各貫通孔10hの大きさが異なることで、または、各貫通孔10hの大きさおよび数が異なることで、第3多孔板13、第2多孔板12、第1多孔板11の順に開孔面積が小さくなるように構成されてもよい。
【0038】
各多孔板10は、吸収塔1内の空間を第1多孔板11の上方の第1区画S1と、第1多孔板11と第2多孔板12との間の第2区画S2と、第2多孔板12と第3多孔板13との間の第3区画S3と、第3多孔板13の下方の第4区画S4とに仕切る。
【0039】
吸収液供給部21は、吸収塔1内の上部において、第1多孔板11の上方に設けられ、吸収液Lを噴出して供給する複数の供給ノズル21nを有する。複数の供給ノズル21nは、吸収塔1内の下方に向けて吸収液Lを噴出して供給する。図示を省略するが、吸収液供給部21は、バルブ機構などを有し、吸収液Lの供給量を調製可能なように構成される。
【0040】
吸収液Lは、吸収液供給部21から第1区画S1に供給された後、第1多孔板11の貫通孔11hを通過して第2区画S2に滴下される。吸収液Lは、本実施形態では、特定成分(二酸化炭素)を吸収する吸収液Lの例として、アミン水溶液を用いる。アミン水溶液は低温状態で二酸化炭素を吸収し、加温により吸収した二酸化炭素を放散する性質がある。ここで特定成分が例えば硫黄酸化物のときには、吸収液Lは、水酸化マグネシウム、苛性ソーダ、海水などが用いられてもよい。
【0041】
第1区画S1では、第1多孔板11上に吸収液Lが一定量貯留される。第1区画S1に貯留された吸収液Lの水位を第1水位H1と称する。以下、同様に、第2区画S2において第2多孔板上に貯留される吸収液Lの水位を第2水位H2、第3区画S3において第3多孔板上に貯留される吸収液Lの水位を第3水位H3と称する。以下、これらを総称して水位Hと称する。
【0042】
吸収液排出部22は、吸収塔1内の下部において、第3多孔板13の下方に設けられ、被処理ガスGから特定成分を吸収した反応後吸収液L1を塔外に排出する。なお、図示を省略するが、ガス回収装置100は、吸収塔1の他に、反応後吸収液L1を再生する再生塔を備えるように構成されてもよい。再生塔は、塔内で反応後吸収液L1を加温することで、反応後吸収液L1を特定成分(二酸化炭素)と吸収液L(アミン水溶液)とに分離する。これにより、吸収液Lは再生される。分離された二酸化炭素は別途回収または利用され、再生された吸収液Lは、冷却された後、再び吸収塔1の吸収液供給部21に送られる。
【0043】
ガス供給部31は、吸収塔1内の下部の側面において、第3多孔板13の下方に設けられ、吸収塔1の外部から被処理ガスGを吸収塔1内に供給する。すなわち、被処理ガスGは、ガス供給部31から第4区画S4に供給されて、吸収塔1内を上方の区画Sに向かって流れる。図示を省略するが、ガス供給部31は、バルブ機構などを有し、被処理ガスGの供給量を調製可能なように構成される。
【0044】
ガス供給部31からの被処理ガスGは、第4区画S4から第3多孔板13を通過して第3区画S3に供給される。その際、被処理ガスGは、第3多孔板13の貫通孔13hにおいて流路断面積が減少することで、第3多孔板13を通過する前後で圧力損失が発生する。つまり、第3区画S3と第4区画S4との間には圧力差が発生する。
【0045】
以下、同様に、被処理ガスGが第3区画S3から第2多孔板12を通過して第2区画S2に供給される際、および第2区画S2から第1多孔板11を通過して第1区画S1に供給される際に、第3区画S3と第2区画S2との間、および第2区画S2と第1区画S1との間には圧力差が発生する。
【0046】
圧力差取得部40は、前記圧力差を取得する。具体的には、圧力差取得部40は、第1~第4区画S1~S4における気相部分の圧力を測定する第1~第4圧力計P1~P4を有する。圧力差取得部40は、第2圧力計P2の測定値から第1圧力計P1の測定値を差し引いて第1圧力差ΔP1を取得する。同様に、第3圧力計P3の測定値から第2圧力計P2の測定値を差し引いて第2圧力差ΔP2を取得し、第4圧力計P4の測定値から第3圧力計P3の測定値を差し引いて第3圧力差ΔP3を取得する。以下、これらを総称して圧力差ΔPと称する。
【0047】
ガス排出部32からは、各区画Sで吸収液Lにより特定成分を吸収された被処理ガスGが、処理ガスG1として吸収塔1外に排出される。
【0048】
[水位が発生する要因について]
次に、
図3を参照して、各水位Hが発生する要因について説明する。
図3は、ガス回収装置100の部分拡大縦断面図であり、例として第1水位H1に関係する因子を説明する図である。
【0049】
図3より、第1水位H1は、主に第1区画S1に供給される吸収液Lの流量が、供給された吸収液Lのうちの第1多孔板11の貫通孔11hを下方に滴下する吸収液L(以下、滴下吸収液Ld)の流量よりも大きいときに増加する。滴下吸収液Ldの流量に影響する因子としては、主に第1貫通孔11hの開孔面積と、滴下吸収液Ldが第1貫通孔11hを通過する速度である。
【0050】
滴下吸収液Ldの通過速度は、第1多孔板11の下方からの被処理ガスGの流量が大きいほど小さくなる。すなわち、第1多孔板11の下方から第1貫通孔11hを通過して第1区画S1に供給される被処理ガスGの流量が大きいほど、滴下吸収液Ldの滴下が被処理ガスGの供給により阻害され、滴下吸収液Ldの通過速度は小さくなる。つまり、滴下吸収液Ldの通過速度は、被処理ガスGの流量の寄与度が大きい。被処理ガスGの流量は、第1圧力差ΔP1の寄与度が大きい。したがって、滴下吸収液Ldの通過速度は、第1圧力差ΔP1の寄与度が大きい。
【0051】
よって、第1貫通孔11hの開孔面積が一定のとき、すなわち従来のガス回収装置900では、第1水位H1は、第1圧力差ΔP1に拠って発生する。つまり、第1圧力差ΔP1が大きくなり、滴下吸収液Ldの流量が、第1区画S1に供給される吸収液Lの流量よりも小さくなったときに、第1水位H1が発生する。
【0052】
ここで、
図10Bを参照して、従来のガス回収装置900(
図8参照)において、上記で説明したガス回収装置100と同様に、各区画Sにおける前記圧力差ΔP(
図8において図示省略)を取得した結果について説明する。
図10Bは、上記にて説明した、従来のガス回収装置900における各水位Hの時間軸変化を示す
図10Aに、さらに各圧力差ΔPの時間軸変化を追加した図である。
である。
【0053】
図10Bより、従来のガス回収装置100では、圧力差ΔPは、第1圧力差ΔP1、第2圧力差ΔP2、第3圧力差ΔP3の順に大きくなる。上記に説明したように、水位Hは、第1水位H1、第2水位H2、第3水位H3の順に大きくなる。すなわち、圧力差ΔPと水位Hとは相関する。
【0054】
さらに、
図10Cを参照して、従来のガス回収装置900(
図8参照)の各区画Sにおける各水位Hと前記各圧力差ΔP(
図8において図示省略)との関係について説明する。
図10Cは、従来のガス回収装置900における水位Hと圧力差ΔPとの関係を示す図である。
【0055】
図10Cでは、吸収塔9において第1~第3多孔板91~93(90)を用いた場合(図中の「全3段」)、第2および第3多孔板92,93を用いた場合(図中の「全2段」)および第3多孔板93のみを用いた場合(図中の「全1段」)において、被処理ガスGおよび吸収液Lの流量を種々の条件で変化させたときの、被処理ガスGが各多孔板90を通過する前後の圧力差ΔPと、そのときの各水位Hとの関係を示した図である。
【0056】
図10Cより、吸収塔9において多孔板10の段数を変更した場合でも多孔板10の段数に拠らず、また多孔板10の位置に拠らず、圧力差ΔPと水位Hとは高い相関関係にある。
【0057】
以上より、従来のガス回収装置900において、上方の区画Sの水位H9を増加するためには、各区画Sにおける圧力差ΔPを増大することが有効となる。
【0058】
次に、再び
図1および
図2A~
図2Cを参照して、上記に説明した第1の実施形態に係るガス回収装置100の構成による作用について説明する。
【0059】
図1より、吸収塔1の上方から供給された吸収液Lが、各区画Sにおいて一定量貯留されて、各水位Hが発生することで、吸収塔1の下方から供給される被処理ガスGが第3区画S3、第2区画S2、第1区画S1をこの順に通過して上段に供給される。被処理ガスGは、各区画Sに貯留された吸収液L中を通過し、吸収液Lと被処理ガスGとが気液接触して被処理ガスG中の特定成分が吸収液Lに吸収される。
【0060】
この際、各多孔板10は、第3多孔板13、第2多孔板12、第1多孔板11の順に各多孔板10における開孔面積が小さくなるように構成されていることで、各多孔板10の貫通孔10hにおける滴下吸収液Ld(
図3参照)の流量は、同一条件の下では上段の多孔板10ほど小さくなる。これにより、上方の区画Sに貯留される吸収液Lの量を従来のガス回収装置900の場合よりも大きくすることで、ガス回収装置100は、水位Hが従来のガス回収装置900における水位H9よりも高くなるように構成されることができる。
【0061】
また、各多孔板10が上記のように構成されていることで、下方からの被処理ガスGの上方への流路断面積が上段の多孔板10ほど小さくなる。これにより、ガス回収装置100は、上段の多孔板10の通過前後における被処理ガスGの圧力損失、すなわち圧力差ΔPを、従来のガス回収装置900の場合よりも大きくなるように構成されることができる。上記で説明したように、圧力差ΔPと水位Hとは相関するため、ガス回収装置100は、上方の区画Sの水位Hを従来のガス回収装置900の水位H9よりも高くするように構成されることができる。
【0062】
また、ガス回収装置100は、上記の各多孔板10における開孔面積を調整して、各圧力差ΔPのそれぞれが従来のガス回収装置900における場合よりも大きくなるように構成されることで、各水位Hのそれぞれを従来のガス回収装置900における水位H9のそれぞれよりも高く、すなわちガス回収装置100における各水位Hの総和が従来の回収装置900における各水位H9の総和よりも高くなるように構成されることができる。
【0063】
これらの結果として、ガス回収装置100は、吸収塔1における吸収液Lと被処理ガスGとの気液接触効率を向上できることで、吸収液Lにおける特定成分の吸収効率を向上できる。
【0064】
ここで、
図4を参照して、各多孔板10の開孔面積を変更したときの圧力差ΔPと水位Hとの関係について説明する。
【0065】
図4では、開孔面積の開孔率がそれぞれ異なるA,B,Cの3種類の多孔板10を用いて、かつ、吸収液Lおよび被処理ガスGの流量を種々の水準に変更して、各水準における圧力差ΔPと、そのときの水位Hとの関係を確認している。
【0066】
図4より、多孔板10の開孔面積の開孔率を3種類の中で変更しているにもかかわらず、圧力差ΔPと水位Hとは非常に高い相関関係にある。
【0067】
このことから、上記で説明した滴下吸水液Ld(
図3参照)の流量に影響する因子のうち、他の因子より圧力差ΔPの寄与度が非常に大きいことが言える。
【0068】
よって、ガス回収装置100は、水位Hと相関のある圧力差ΔPを取得する圧力差取得部40が設けられていることで、各圧力差ΔPに基づいて水位Hを求めることができる。これにより、ガス回収装置100は、各圧力差ΔPに基づいて多孔板10における開孔面積の調整をすることで、吸収塔1内を目視せずに所望の水位Hを得ることができる。
【0069】
ここで、各区画Sの圧力差ΔPは吸収塔1内への吸収液Lの供給量、吸収塔1内への被処理ガスGの供給量にも依存するため、ガス回収装置100は、取得した圧力差ΔPに基づいて、吸収塔1内への吸収液Lの供給量、吸収塔1内への被処理ガスGの供給量を調製するように構成されてもよい。これにより、ガス回収装置100は、多孔板10における開孔面積の他、吸収液Lの供給量、吸収塔1内への被処理ガスGの供給量を調製して、これらの値を最適化できることで、所望の水位Hを得ることができる。
【0070】
また、ガス回収装置100は、各区画Sにおける圧力差ΔPが同等となるように、すなわち
図1では、第1区画S1における圧力差ΔP1と第2区画S2にける圧力差ΔP2と第3区画S3における圧力差ΔP3とが同等となるように、各多孔板10の開孔面積が決定されるように構成されてもよい。これにより、上方区画Sにおける水位Hの高さが下方区画Sの水位Hと同等となるように、すなわち
図1では、第1区画S1における水位H1と第2区画S2のける水位H2と第3区画S3における水位H3とが同等となるように、多孔板10の開孔面積が最適化されることで、ガス回収装置100は、吸収液Lにおける特定成分の吸収効率を向上できる。
【0071】
さらに、ガス回収装置100は、各区画Sにおける圧力差ΔPの総和が最大となるように、各多孔板10の開孔面積が決定されるように構成されてもよい。これにより、各区画Sにおける水位Hの高さの総和が最大となるように、多孔板10の開孔面積が最適化されることで、ガス回収装置100は、吸収液Lにおける特定成分の吸収効率を向上できる。
【0072】
〈第2の実施形態〉
次に、
図5を参照して、本発明の第2の実施形態に係るガス回収装置200について説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態に係るガス回収装置200のブロック図である。
図5では、吸収塔1の構成のうち第1区画S1の構成を部分的に示す。
【0073】
図5より、ガス回収装置200は、上記にて説明した構成に加えて、第1多孔板11の上部に設けられる第1可動多孔板11Mと、第1可動多孔板11Mを駆動する多孔板駆動部60と、圧力差取得部40からの第1圧力差ΔP1に基づいて多孔板駆動部60を制御する制御部50とを有する。
【0074】
第1可動多孔板11Mは、第1多孔板11と同様の大きさおよび数の貫通孔11hを有し、第1多孔板11の上部において、図示を省略する支持構造によって、水平方向に移動可能に支持される。
【0075】
多孔板駆動部60は、同じく図示を省略するアクチュエータなどによって、第1可動多孔板11Mを水平方向に駆動する。第1可動多孔板11Mが水平方向に駆動されることによって、図中に仮想線で示すように、第1多孔板11の貫通孔11hと第1可動多孔板11Mの貫通孔11Mhとが重なり合う面積が変化し、第1多孔板11の貫通孔11hが部分的に第1可動多孔板11Mの貫通孔11Mhではない部分によって塞がれる。これにより、第1多孔板11における開孔面積が減少する。すなわち、第1可動多孔板11Mおよび多孔板駆動部60は、開孔面積変更部として機能する。
【0076】
制御部50は、圧力差取得部40からの第1圧力差ΔP1に基づいて、第1可動多孔板11Mを水平方向に駆動させる。
【0077】
次に、
図6を参照して、制御部50における処理内容の例について説明する。
図6は、同ガス回収装置200における制御部50の処理内容の例を示すフローチャートである。
【0078】
図6より、制御部50は、圧力差取得部40から第1圧力差ΔP1を取得する(ステップS11)。次に、制御部50は、取得した圧力差ΔPと参照圧力差ΔPrefとを比較して、圧力差が参照圧力差ΔPrefよりも小さいか確認する(ステップS12)。ここで参照圧力差ΔPrefは、第1区画S1における目標とする圧力差ΔPであり、例えば圧力差取得部40から第2区画S2の第2圧力差ΔP2(
図1参照)を取得して、これを参照圧力差ΔPrefとしてもよいし、事前に制御部50の記憶部(図示省略)に記憶させておいた参照圧力差ΔPrefであってもよい。制御部50は、圧力差ΔPが参照圧力差未満のときは(ステップS12でYes)、多孔板駆動部60に第1可動多孔板11Mを水平駆動させる(ステップS13)。これにより、第1多孔板11における開孔面積が減少することで、被処理ガスGの圧力損失が増加し、第1圧力差ΔP1は増大する。その後、制御部50は所定時間が経過したのち、圧力差取得部40から第1圧力差ΔP1を再度取得して(ステップS14)、処理を繰り返す。制御部50は、第1圧力差ΔP1が参照圧力差ΔPref以上となったときに(ステップS12でNo)、処理は終了する(END)。
【0079】
以上の構成により、ガス回収装置200は、第1多孔板11における開孔面積を可変とするとともに、制御部50によって目標とする参照圧力差ΔPrefとなるように開孔面積を調整することができる。上記にて説明したように、圧力差ΔPと水位Hとは高い相関関係にあるため、所望の圧力差ΔPを参照圧力差ΔPrefに設定することで水位Hを所望の高さに調整することができる。結果として、ガス回収装置200は、上方の区画Sにおける吸収液Lと被処理ガスGとの気液接触効率を向上できることで、吸収液Lにおける特定成分の吸収効率を向上できる。
【0080】
上記の説明では、開孔面積を可変とする多孔板10として、第1多孔板11を用いて説明したが、ガス回収装置200は、第2多孔板12または第3多孔板13の開孔面積を可変とするように、構成されてもよいし、第1多孔板11、第2多孔板12、第3多孔板13のうちの複数または全ての多孔板10の開孔面積を可変とするように構成されてもよい。これにより、任意の多孔板10を対象として、所望の水位Hに設定できることで、ガス回収装置100は、吸収液Lにおける特性成分の吸収効率を向上することができる。
【0081】
なお、第1可動多孔板11Mは、
図7に示すように円周方向に回転するように構成されてもよい。
図7は、ガス回収装置200の変形例であるガス回収装置300の横断面図である。
【0082】
図7の仮想線で示すように、ガス回収装置300は、第1可動多孔板311Mが回転されることで、ガス回収装置200と同様に、第1多孔板11の貫通孔11hと第1可動多孔板311Mの貫通孔311Mhとが重なり合う面積が変化し、第1多孔板11の貫通孔11hが部分的に第1可動多孔板311Mの貫通孔311Mhではない部分によって塞がれて、第1多孔板11における開孔面積が減少する。よって、ガス回収装置300は、第1多孔板11の開孔面積を可変できることで、ガス回収装置200と同様の作用効果を奏することができる。
【0083】
なお、多孔板10における開孔面積を変更する手段は、ガス回収装置200、300で示した実施形態に限られず、貫通孔の大きさおよび/または貫通孔の数を可変とする種々の方法が適用される。
【0084】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0085】
上記実施形態では、吸収塔1を例示したが、吸収液L1を再生する再生塔に吸収塔1と同様の多孔板10を設けて吸収液L1を再生するようにしてもよい。この場合、再生塔の上部に供給する液体は特定ガス成分を吸収した吸収液L1であり、再生塔の下部に供給するガスは吸収液L1を加熱するための水蒸気等の高温ガスとなる。再生塔は、上記と同様の多孔板10が設けられることで、吸収液L1と高温ガスとの気液接触効率が向上するため、吸収液L1を効率よく加熱でき、結果として、吸収液L1の再生効率を向上させることが可能となる。
【0086】
さらには高温ガスを冷却水で冷却する、または高温水をガスで冷却する冷却塔や、ガス中の浮遊固形物を除去して洗浄する洗浄塔などの、気液接触処理一般を行う気液接触塔を備えた気液接触装置において、上記と同様の多孔板10を設けて気液接触処理するようにしてもよい。気液接触装置は、気液接触塔に上記と同様の多孔板10が設けられることで気液接触効率を向上できるため、結果として、高温ガスの冷却効率、高温水の冷却効率、ガスの洗浄効率などの各気液接触処理の効率を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0087】
1 吸収塔
G 被処理ガス
G1 処理ガス
L 吸収液
L1 反応後吸収液
H 水位
H1~H3 第1~第3水位
ΔP 圧力差
ΔP1~ΔP3 第1~第3圧力差
S 区画
S1~S4 第1~第4区画
10 多孔板
11~13 第1~第3多孔板
10h,11h~13h 貫通孔
21 吸収液供給部
22 吸収液排出部
31 ガス供給部
32 ガス排出部
40 圧力差取得部
41~44 第1~第4圧力計