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特開2025-10144環状プロサポシンペプチドおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010144
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】環状プロサポシンペプチドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20250109BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20250109BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20250109BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20250109BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20250109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
   C07K 7/54 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61K38/12
A61P9/10
A61P17/06
A61P1/04
A61P37/06
A61P27/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P29/00
A61P43/00 111
A61K47/58
A61K47/59
A61K47/61
A61K47/60
A61P35/00
C07K7/54 ZNA
C07K7/54
A61K38/12 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024170459
(22)【出願日】2024-09-30
(62)【分割の表示】P 2023010162の分割
【原出願日】2015-03-26
(31)【優先権主張番号】61/970,853
(32)【優先日】2014-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596115687
【氏名又は名称】ザ チルドレンズ メディカル センター コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ワトニック,ランドルフ,エス.
(57)【要約】
【課題】
本明細書で提供されるのは、環状プロサポシンペプチドならびにその組成物および使用である。
【解決手段】
例示の使用としては、がんの処置または炎症性疾患もしくは障害の処置における使用が挙げられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを有する対象を処置するための方法であって、方法が、
がんを有する対象に対して、がんを処置するための環状ペプチドの有効量を投与することを含み、ここで、該環状ペプチドのアミノ酸配列が、DWLPK(配列番号1)である、前記方法。
【請求項2】
がんが、卵巣がんまたは黒色腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がんの処置に使用するための組成物であって、組成物が環状ペプチドを含み、ここで該環状ペプチドのアミノ酸配列が、DWLPK(配列番号1)である、前記組成物。
【請求項4】
がんが、卵巣がんまたは黒色腫である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
炎症性疾患または障害を有する対象を処置するための方法であって、方法が、
炎症性疾患または障害を有する対象に対して、炎症性疾患または障害を処置するための環状ペプチドの有効量を投与することを含み、ここで、該環状ペプチドのアミノ酸配列が、DWLPK(配列番号1)である、前記方法。
【請求項6】
炎症性疾患または障害が、関節リウマチ、加齢黄斑変性症(AMD)、クローン病、乾癬、またはアテローム性動脈硬化症である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
炎症性疾患または障害が、クローン病である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
炎症性疾患または障害の処置に使用するための組成物であって、組成物が環状ペプチドを含み、ここで該環状ペプチドのアミノ酸配列が、DWLPK(配列番号1)である、前記組成物。
【請求項9】
炎症性疾患または障害が、関節リウマチ、加齢黄斑変性症(AMD)、クローン病、乾癬、またはアテローム性動脈硬化症である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
炎症性疾患または障害が、クローン病である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
トロンボスポンジン-1(Tsp-1)の発現を刺激するための方法であって、方法が、
必要とする対象に対して、Tsp-1の発現を刺激するための環状ペプチドの有効量を投与することを含み、ここで、該環状ペプチドのアミノ酸配列が、DWLPK(配列番号1)である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35 U.S.C. § 119(e)の下で、2014年3月26日に出願された米国仮出願番号61/970,853の利益を主張し、この仮出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援
本発明は、国立衛生研究所から授与されたR01CA135417の下で、政府の支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
がんは、公衆衛生の主要な問題である。例えば、2008年には推定760万人のがんによる死亡が発生した。多くのがんはいまだ処置不可能であるか、または処置は準最適であって、部分的にのみ有効であるか、もしくは毒性などの望ましくない副作用を有する。
炎症性疾患および障害もまた、公衆衛生の主要な問題であり、がんと同様の処置に関する問題を有する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の側面は、環状プロサポシンペプチド、例えば配列DWLPK(配列番号1)を有する環状ペプチドが、直鎖プロサポシンペプチドより、がんの動物モデルの処置により安定かつより効果的であるという発見に、部分的に基づいている。驚くべきことに、環状DWLPK(配列番号1)ペプチドは、in vitroでトロンボスポンジン-1(Tsp-1)を刺激することにおいて、3位にグリシンの置換を有する環状ペプチド(すなわち、DWGPK、配列番号2)と比較して、より有効であることが見出された。このデータは予想外であり、なぜならば、逆の結果が直鎖プロサポシンペプチドを用いて得られたから、すなわち直鎖DWGPK(配列番号2)は、直鎖DWLPK(配列番号1)よりも良好な活性を有することが見出されたからある。さらに、環状DWLPK(配列番号1)ペプチドは、ペプチドで処置したマウスの肝臓または脾臓に対して毒性を引き起こさなかったことも見出された。
本開示の他の側面は、環状DWLPK(配列番号1)が、クローン病のマウスモデルの処置に有効であるとの発見に、部分的に基づく。
【0005】
したがって、本開示の側面は、環状プロサポシンペプチド、例えばDWLPK(配列番号1)に、およびかかるペプチドを利用する組成物および方法に関する。
本開示のいくつかの側面は、がんを有する対象を処置するための方法であって、方法が、がんを有する対象に対して、がんを処置するための環状ペプチドの有効量を投与することを含み、ここで、該環状ペプチドのアミノ酸配列がDWLPK(配列番号1)である、前記方法に関する。いくつかの態様において、がんは、卵巣がんまたは黒色腫である。
他の側面は、がんの処置に使用するための組成物であって、組成物が環状ペプチドを含み、ここで該環状ペプチドのアミノ酸配列がDWLPK(配列番号1)である、前記組成物に関する。いくつかの態様において、がんは、卵巣がんまたは黒色腫である。
本開示のさらに他の側面は、炎症性疾患または障害を有する対象を処置するための方法であって、方法が、炎症性疾患または障害を有する対象に対して、炎症性疾患または障害を処置するための環状ペプチドの有効量を投与することを含み、ここで、該環状ペプチドのアミノ酸配列がDWLPK(配列番号1)である、前記方法に関する。いくつかの態様において、炎症性疾患または障害は、関節リウマチ、加齢黄斑変性症(AMD)、クローン病、乾癬、またはアテローム性動脈硬化症である。いくつかの態様において、炎症性疾患または障害は、クローン病である。
【0006】
本開示の他の側面は、炎症性疾患または障害の処置に使用するための組成物であって、組成物が環状ペプチドを含み、ここで該環状ペプチドのアミノ酸配列がDWLPK(配列番号1)である、前記組成物に関する。いくつかの態様において、炎症性疾患または障害は、関節リウマチ、加齢黄斑変性症(AMD)、クローン病、乾癬、またはアテローム性動脈硬化症である。いくつかの態様において、炎症性疾患または障害は、クローン病である。
本開示の他の側面は、トロンボスポンジン-1(Tsp-1)の発現を刺激するための方法であって、方法が、必要とする対象に対して、Tsp-1の発現を刺激するための環状ペプチドの有効量を投与することを含み、ここで、該環状ペプチドのアミノ酸配列がDWLPK(配列番号1)である、前記方法に関する。
【0007】
本開示の側面は、環状Psapペプチドに関する。いくつかの態様において、環状Psapペプチドは、アミノ酸配列DWLPK(配列番号1)、dWLPK(配列番号3、小文字dはD-アミノ酸を示す)、DWGPK(配列番号2)、またはdWGPK(配列番号4、小文字dはD-アミノ酸を示す)を含む。いくつかの態様において、環状Psapペプチドのアミノ酸配列は、DWLPK(配列番号1)、dWLPK(配列番号3、小文字dはD-アミノ酸を示す)、DWGPK(配列番号2)、またはdWGPK(配列番号4、小文字dはD-アミノ酸を示す)である。いくつかの態様において、環状Psapペプチドは、アミノ酸配列DWLPK(配列番号1)を含む。いくつかの態様において、環状Psapペプチドのアミノ酸配列は、DWLPK(配列番号1)である。
本開示の他の側面は、本明細書に記載の環状Psapペプチドを含む、組成物に関する。いくつかの態様において、組成物は、医薬組成物である。いくつかの態様において、組成物は、本明細書に記載の環状Psapペプチドおよび薬学的に許容し得る担体を含む。
本開示の1または2以上の態様の詳細を、以下の説明に記載する。本開示の他の特徴や利点は、以下の図面およびいくつかの態様の詳細な説明から、また添付の特許請求の範囲から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の側面をさらに実証するために含まれ、本開示は、これらの図面の1または2以上を、本明細書に示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせて参照することにより、よりよく理解することができる。
図1図1は、環状DWLPK(配列番号1)の例示的な概略図である。
図2図2は、異なる環状または直鎖ペプチド(上から下へそれぞれ、配列番号1、3、2、および4)に応答した、細胞におけるトロンボスポンジン-1(Tsp-1)の活性化のレベルを示すウエスタンブロットの写真である。
図3図3は、環状DWLPK(配列番号1)または直鎖dWlP(配列番号5)の、ヒト血漿中でのインキュベーション後のTsp-1を活性化する能力を示すグラフである。
図4図4は、環状ペプチドまたは直鎖ペプチドで処置したマウスにおける、腫瘍体積を示すグラフである。
【0009】
図5図5は、環状ペプチドまたは直鎖ペプチドで処置したマウスにおける、腫瘍体積を示すグラフである。
図6図6は、環状ペプチドまたは対照で処理した後に、マウスに注射されたルシフェラーゼ発現腫瘍細胞の、全光束を示すグラフである。
図7図7は、Tsp-1が、F4/80を発現するマクロファージにおいて発現していることを示す、一連の写真である。
図8図8は、対照または環状DWLPK(配列番号1)を注射したマウスにおける肝臓および脾臓試料の組織学を示す、一連の写真である。
図9図9は、対照で処置、未処置、または環状DWLPK(配列番号1)で処置した、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性のクローン病のマウスモデルにおける、MPO酵素活性(結腸粘膜への好中球浸潤の指標)を示すグラフである。
【0010】
図10図10は、対照で処置、未処置、または環状DWLPK(配列番号1)で処置したクローン病のマウスモデルにおける、体重パーセントを示すグラフである。
図11図11は、対照で処置、未処置、または環状DWLPK(配列番号1)で処置したクローン病のマウスモデルにおける、腸の組織学およびマクロファージの局在を示す、一連の写真である。
図12図12A~12Eは、Tsp-1の刺激ならびに、卵巣がん細胞増殖および生存に及ぼすその影響を示す図である。図12Aは、未処置の(-)、または、天然のDWLP(配列番号6)、L-アミノ酸、プロサポシンペプチド(WT)、dWlP(配列番号5、小文字のdおよび1はD-アミノ酸を示す)プロサポシンペプチド(d1,3)、もしくはDwLp(配列番号7、小文字のwおよびpはD-アミノ酸を示す)プロサポシンペプチド(d2,4)で処置したWI-38肺繊維芽細胞における、Tsp-1およびβアクチンのウエスタンブロットの図である;図12Bは、転移性前立腺がん細胞馴化培地単独で(-)、またはDWLP(配列番号6)プロサポシンペプチド(WT)、もしくはdWlP(配列番号5、小文字のdおよび1はD-アミノ酸を示す)プロサポシンペプチド(d1,3ペプチド)と組み合わせて、10または30mg/kg/日の用量で3日間処置したマウスから採取したマウスの肺組織中の、Tsp-1およびβアクチンのウエスタンブロットの図である;図12Cは、8つの、患者由来の卵巣がん細胞株における、CD36およびβアクチンのウエスタンブロットの図である;図12Dは、1μMの組換えヒトTsp-1(rhTsp-1)で24、48および72時間処置された患者由来卵巣がん細胞株の、Wst-1アッセイによって測定される細胞数のプロットである;および図12Eは、1μMの組換えヒトTsp-1(rhTsp-1)で48時間処置された患者由来卵巣がん細胞株の、アネキシンVおよびPIのFACS分析の図である。
【0011】
図13図13A~13Eは、d-アミノ酸プロサポシンペプチドの、転移性卵巣がんのPDXモデルに対する効果を示す図である。図13Aは、生理食塩水(対照)、シスプラチン4mg/kg/QOD(シスプラチン)、およびdWlP(配列番号5)プロサポシンペプチド4mg/kgQDで処置した転移性PDX卵巣腫瘍の、相対ルシフェラーゼ強度のプロットである;図13Bは、対照で処置した2匹のマウス、およびdWlP(配列番号5)プロサポシンペプチドで処置した2匹のマウスの、17日目(処置0日目)および48日目(処置31日目)における、ルシフェラーゼ画像を示し、各画像は、画像の右にルシフェラーゼのスケールを有し、これはラジアンスの×10単位(p/秒/cm/sr)で示され、スケールの最小は0.05e6であり、スケールの最大は1.00e8である;図13Cは、生理食塩水(対照)またはdWlP(配列番号5)プロサポシンペプチド(ペプチド)で処置した転移性PDX卵巣腫瘍を有するマウスの肝臓の写真の図であり;図13Dは、生理食塩水(対照)またはdWlP(配列番号5)プロサポシンペプチド(ペプチド)で処置した転移性PDX卵巣腫瘍を有するマウスの肝臓の、H&E染色を示す図である。右パネルは5倍の倍率であり、左パネルは20倍の倍率である;および、図13Eは、マウス対照および、dWlP(配列番号5)プロサポシンペプチドで処置した転移性PDX卵巣腫瘍を有するマウスの48日後の、腹水中のGR1/Cd11b細胞の、FACS分析の図である。
【0012】
図14図14A~14Fは、環状プロサポシンペプチドの、Tsp-1発現および転移性卵巣がんのPDXモデルに対する効果を示す図である。図14Aは、未処置(-)、dWlP(配列番号5)プロサポシンペプチドで処置(d1,3、「L」)、または環状DWLPK(配列番号1)プロサポシンペプチドで処置した(「C」)、WI-38肺線維芽細胞における、Tsp-1およびβアクチンのウエスタンブロットの図であり;図14Bは、未処置(-)、dWlP(配列番号5)プロサポシンペプチドで処置(d1,3)、または環状DWLPK(配列番号1)プロサポシンペプチドで処置したWI-38肺線維芽細胞における、ヒト血漿中37℃で24時間までのインキュベーション後の、Tsp-1発現のELISAの図であり;図14Cは、生理食塩水(対照)または環状DWLPK(配列番号1)プロサポシンペプチド(10mg/kgQD)で処置した、転移性PDX卵巣腫瘍の相対ルシフェラーゼ強度のプロットの図であり;図14Dは、生理食塩水(対照)で処置したマウスおよび環状DWLPK(配列番号1)プロサポシンペプチドで処置したマウス(ペプチド)における、平均の転移性病変のプロットの図であり;図14Eは、生理食塩水(対照)で処置したマウスおよび環状DWLPK(配列番号1)プロサポシンペプチドで処置したマウス(ペプチド)の転移性病変における、Gr1およびTsp-1発現の免疫蛍光染色図であり;および図14Fは、対照および環状DWLPK(配列番号1)プロサポシンペプチドで処置したマウス(ペプチド)における、Tsp-1発現の免疫組織化学(一番左のパネル)ならびに、転移性病変のTUNELおよびDAPIの免疫蛍光染色を示す図である。
【0013】
図15図15A~Nは、ヒト卵巣がん患者のTMAにおける、CD36およびプロサポシンの発現を示す図である。図15A~15Cは、正常なヒト卵巣におけるCD36の発現を示す(倍率:A=5倍、B=10倍、C=20倍);図15D~15Fは、原発ヒト卵巣腫瘍におけるCD36の発現を示す(倍率:A=5倍、B=10倍、C=20倍);図15G~15Iは、ヒト卵巣がん転移におけるCD36の発現を示す(倍率:A=5倍、B=10倍、C=20倍);図15J~15Lは、ヒト卵巣がんリンパ節転移におけるCD36の発現を示す(倍率:A=5倍、B=10倍、C=20倍);図15Mは、正常なヒト卵巣、原発ヒト卵巣腫瘍、ヒト卵巣がん転移、およびヒト卵巣がんリンパ節転移の、CD36染色指数のプロットの図である;図15Nは、正常なヒト卵巣、原発ヒト卵巣腫瘍、ヒト卵巣がん転移、およびヒト卵巣がんリンパ節転移の、プロサポシン(Psap)染色指標のプロットの図である。
【0014】
図16図16は、psapペプチドが、体重に影響を及ぼさなかったことを示す図である。
図17図17は、Tsp-1受容体を発現する膵臓がん細胞を示す図である。
図18図18は、環状プロサポシンペプチドDWLPK(配列番号1)が、直鎖ペプチドよりも約2倍高い活性を有することを示す図である。
図19図19は、環状プロサポシンペプチドDWLPK(配列番号1)が、膵臓がんに対して顕著な抗腫瘍活性を有することを示す図である。
図20図20は、環状プロサポシンペプチドDWLPK(配列番号1)が、転移性膵臓がんを退縮させ、転移を阻害することを示す図である。
【0015】
発明の詳細な説明
最初はサポシンAの断片から誘導されたプロサポシンペプチド(本明細書においてPsapペプチドと呼ぶ)は、直鎖状で使用される場合に複数種類のがんの処置に有効であることが、以前から示されていた(例えば、PCT公開WO2009002931、WO/2011/084685およびWO/2013/096868、および米国特許出願12/640,788および13/516,511を参照、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
本明細書に記載されるように、環状Psapペプチド、特に環状DWLPK(配列番号1)ペプチドは、直鎖Psapペプチドよりも予想外に安定かつより効果的である。さらに、環状DWLPK(配列番号1)は、肝臓または脾臓に毒性作用を有さないことが見出された。さらに、環状DWLPK(配列番号1)は、アミノ酸置換ペプチドの他の環状バージョン(例えば、DWGPK、配列番号2)よりも、よりよい活性を有していた。この所見は驚くべきことであり、なぜならば、置換ペプチドの直鎖バージョンは、DWLPK(配列番号1)の直鎖バージョンよりも活性であることが見出されていたからである。
【0016】
さらに本明細書に記載されるように、環状PsapペプチドDWLPK(配列番号1)は、クローン病のマウスモデルにおいて有効であることが発見された。理論に束縛されることを意図しないが、環状Psapペプチドは、Tsp-1の発現を活性化または増強し、Tsp-1の発現は、クローン病に関連する炎症を減少させると考えられる。Tsp-1は以前に、炎症に応答して分泌され、炎症プロセスの解消を促進し、損傷した細胞の食作用を促進することが示されている(例えば、Lopez-Dee et al. Thrombospondin-1: Multiple Paths to Inflammation. (2011) Mediators of Inflammation; Vol. 2011; Article ID 296069を参照)。このように、環状Psapペプチドの治療効果が、典型的な炎症性疾患であるクローン病のモデルで見られたため、環状Psapペプチドはまた、他の炎症性疾患、例えば関節リウマチおよび乾癬、ならびに炎症が関与する他の疾患、例えば、アテローム性動脈硬化症、および加齢黄斑変性症(AMD)などの炎症性疾患を処置するためにも、有効であろうと考えられている。
したがって、本開示の側面は、環状Psapペプチド、および、がんおよび炎症性障害または疾患、ならびに炎症が関与する他の疾患などの疾患を処置するための、組成物および方法におけるそれらの使用に関する。
【0017】
環状Psapペプチド
プロサポシン(Psap)は、約524~527個のアミノ酸からなるサポシン前駆体タンパク質であり、16アミノ酸のシグナルペプチドを含む。完全長の前駆体ポリペプチドは、小胞体およびゴルジシステムにおいて同時翻訳グリコシル化および修飾を受け、70~72kDaの前駆体タンパク質を生成する。リソソームへの輸送後、カテプシンDは、そのタンパク質分解処理に関与して、35~53kDaの中間の分子形態を、次に13kDaの糖タンパク質を生成し、最終的には個々のサポシン分子の8~11kDaの成熟した部分的グリコシル化形態を生成する(O’Brien J. S., and Kishimoto Y, The FASEB J., 5: 301-8, 1991; Kishimoto Y. et al., J. Lipid Res. 33:1255-67, 1992)。プロサポシンは、4つの切断産物、サポシンA、B、C、およびDに加工される。Psapプレプロタンパク質アイソフォームA、B、およびCのアミノ酸配列、および切断産物サポシンAのアミノ酸配列は、以下の通りである。
【0018】
Psapプレプロタンパク質アイソフォームA
MYALFLLASLLGAALAGPVLGLKECTRGSAVWCQNVKTASDCGAVKHCLQTVWNKPTVKSLPCDICKDVVTAAGDMLKDNATEEEILVYLEKTCDWLPKPNMSASCKEIVDSYLPVILDIIKGEMSRPGEVCSALNLCESLQKHLAELNHQKQLESNKIPELDMTEVVAPFMANIPLLLYPQDGPRSKPQPKDNGDVCQDCIQMVTDIQTAVRTNSTFVQALVEHVKEECDRLGPGMADICKNYISQYSEIAIQMMMHMQPKEICALVGFCDEVKEMPMQTLVPAKVASKNVIPALELVEPIKKHEVPAKSDVYCEVCEFLVKEVTKLIDNNKTEKEILDAFDKMCSKLPKSLSEECQEVVDTYGSSILSILLEEVSPELVCSMLHLCSGTRLPALTVHVTQPKDGGFCEVCKKLVGYLDRNLEKNSTKQEILAALEKGCSFLPDPYQKQCDQFVAEYEPVLIEILVEVMDPSFVCLKIGACPSAHKPLLGTEKCIWGPSYWCQNTETAAQCNAVEHCKRHVWN(配列番号9)
【0019】
Psapプレプロタンパク質アイソフォームB
MYALFLLASLLGAALAGPVLGLKECTRGSAVWCQNVKTASDCGAVKHCLQTVWNKPTVKSLPCDICKDVVTAAGDMLKDNATEEEILVYLEKTCDWLPKPNMSASCKEIVDSYLPVILDIIKGEMSRPGEVCSALNLCESLQKHLAELNHQKQLESNKIPELDMTEVVAPFMANIPLLLYPQDGPRSKPQPKDNGDVCQDCIQMVTDIQTAVRTNSTFVQALVEHVKEECDRLGPGMADICKNYISQYSEIAIQMMMHMQDQQPKEICALVGFCDEVKEMPMQTLVPAKVASKNVIPALELVEPIKKHEVPAKSDVYCEVCEFLVKEVTKLIDNNKTEKEILDAFDKMCSKLPKSLSEECQEVVDTYGSSILSILLEEVSPELVCSMLHLCSGTRLPALTVHVTQPKDGGFCEVCKKLVGYLDRNLEKNSTKQEILAALEKGCSFLPDPYQKQCDQFVAEYEPVLIEILVEVMDPSFVCLKIGACPSAHKPLLGTEKCIWGPSYWCQNTETAAQCNAVEHCKRHVWN(配列番号10)
【0020】
Psapプレプロタンパク質アイソフォームC
MYALFLLASLLGAALAGPVLGLKECTRGSAVWCQNVKTASDCGAVKHCLQTVWNKPTVKSLPCDICKDVVTAAGDMLKDNATEEEILVYLEKTCDWLPKPNMSASCKEIVDSYLPVILDIIKGEMSRPGEVCSALNLCESLQKHLAELNHQKQLESNKIPELDMTEVVAPFMANIPLLLYPQDGPRSKPQPKDNGDVCQDCIQMVTDIQTAVRTNSTFVQALVEHVKEECDRLGPGMADICKNYISQYSEIAIQMMMHMDQQPKEICALVGFCDEVKEMPMQTLVPAKVASKNVIPALELVEPIKKHEVPAKSDVYCEVCEFLVKEVTKLIDNNKTEKEILDAFDKMCSKLPKSLSEECQEVVDTYGSSILSILLEEVSPELVCSMLHLCSGTRLPALTVHVTQPKDGGFCEVCKKLVGYLDRNLEKNSTKQEILAALEKGCSFLPDPYQKQCDQFVAEYEPVLIEILVEVMDPSFVCLKIGACPSAHKPLLGTEKCIWGPSYWCQNTETAAQCNAVEHCKRHVWN(配列番号11)
【0021】
サポシンA
SLPCDICKDVVTAAGDMLKDNATEEEILVYLEKTCDWLPKPNMSASCKEIVDSYLPVILDIIKGEMSRPGEVCSALNLCES(配列番号12)
本開示の側面は、環状Psapペプチド、環状Psapペプチドを含む組成物、およびその使用に関する。いくつかの態様において、環状Psapペプチドは、アミノ酸配列DWLPK(配列番号1)、dWLPK(配列番号3、小文字dはD-アミノ酸を示す)、DWGPK(配列番号2)、またはdWGPK(配列番号4、小文字dはD-アミノ酸を示す)を含む。いくつかの態様において、環状Psapペプチドのアミノ酸配列は、DWLPK(配列番号1)、dWLPK(配列番号3、小文字dはD-アミノ酸を示す)、DWGPK(配列番号2)、またはdWGPK(配列番号4、小文字dはD-アミノ酸を示す)である。いくつかの態様において、環状Psapペプチドは、アミノ酸配列DWLPK(配列番号1)を含む。いくつかの態様において、環状Psapペプチドのアミノ酸配列は、DWLPK(配列番号1)である。
【0022】
いくつかの態様において、環状ペプチドは、10未満、9未満、8未満、7未満、6未満、または5個のアミノ酸の長さである。いくつかの態様において、環状ペプチドは、5~10、5~9、5~8、5~7または5~6の間のアミノ酸の長さである。いくつかの態様において、環状ペプチドは、5個のアミノ酸の長さである。
本明細書に記載のペプチドは、当技術分野で知られている生化学的方法により化学的に合成し単離することができ、該方法は例えば、t-BOC(tert-ブチルオキシカルボニル)またはFMOC(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)保護基を使用する固相ペプチド合成などであって、以下に記載のものである:John Howlによる“Peptide synthesis and applications”、Methods in molecular biology Vol. 298, Ed.およびN. Leo Benoiton, 2005による“Chemistry of Peptide Synthesis”, CRC Press, (ISBN-13: 978-1574444544)およびP. Lloyd-Williams, et al., 1997による“Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins”, CRC-Press, (ISBN-13: 978-0849391422)。R. B. Merrifield, 1963, J. Am. Chem. Soc. 85 (14): 2149-2154が開発した固相ペプチド合成は、ペプチドおよび小タンパク質の化学合成を可能にする、画期的な成果であった。
【0023】
環状Psapペプチドは、当技術分野で知られている任意の方法を用いて合成することができる。合成方法の例としては、限定はされないが、組換え合成、液相合成、固相合成、または化学的ライゲーションが挙げられる(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 2001;Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New York;Schnolzer, M. A., P.; Jones, A.; Alewood, D.; Kent, S.B.H. (2007). "In Situ Neutralization in Boc-chemistry Solid Phase Peptide Synthesis". Int. J. Peptide Res. Therap. 13 (1-2): 31-44;Albericio, F. (2000). Solid-Phase Synthesis: A Practical Guide (1 ed.). Boca Raton: CRC Press. p. 848;およびNilsson BL, Soellner MB, Raines RT (2005). "Chemical Synthesis of Proteins". Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 34: 91-118;および米国特許第4,749,742号、第4,794,150号、第5,552,471号、第5,637,719号、第6,001,966号、第7,038,103号、第7,094,943号、第7,176,282号、および第7,645,858号を参照、これらの全体は、参照により本明細書に組み込まれる)。PsapペプチドおよびPsapペプチドを作製する方法もまた、当技術分野で知られている(例えば、PCT公開WO2009002931、WO/2011/084685およびWO/2013/096868を参照、これらの全体は、参照により本明細書に組み込まれる)。環状ペプチドは、ペプチド結合または他の共有結合で共に連結され、環状構造を形成するポリペプチド鎖である。環状ペプチドの設計および合成の方法は、当分野でよく知られており(例えば、米国特許第5,596,078号、第5,990,273号、第7,589,170号および米国特許公開第20080287649号参照)、市販されている(例えば、環状ペプチドの合成サービスは、次により提供されている:Selleck Chemicals、Abbiotec、Abgent、AnaSpec Global Peptide Services、LLC., INVITROGEN(商標)およびrPeptide、LLCまたはGenScript)。環状ペプチドは、例えば、頭-尾(C末端-N末端)で、頭-側鎖で、側鎖-尾で、または側鎖-側鎖で、環状化することができる(例えば、White et al. Contemporary strategies for peptide macrocyclization. Nature Chemistry (2011); 3:509-524を参照)。環化試薬、例えば、PyBOP(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、BOP(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩)、DIPEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)、DMTMM BF4(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムテトラフルオロボレート)またはFDPP(ペンタフルオロフェニルジフェニルホスフィナート)、またはそれらの組み合わせを、ペプチド合成の間、またはペプチド合成後に使用して、環化を誘導することができる。例示的な方法としては、ペンタペプチドを環化するリング収縮戦略における、光分解性補助剤、例えばHnB(2-ヒドロキシ-6-ニトロベンジル)の使用を含む。この補助剤のペプチドのN末端への導入後、ペプチドをBOPおよびDIPEAと接触させると、分子内OからNへのアシル転移がもたらされ、これは次に、環状ペンタペプチドをもたらす。光分解性補助剤は、その後除去することができる。
【0024】
いくつかの態様において、Psapペプチドは修飾されてもよく、例えば、オリゴマー化または重合(例えば、二量体、三量体、多量体など)、アミノ酸残基またはペプチド骨格の修飾、架橋、コンジュゲーション、ペグ化、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、追加の異種アミノ酸配列(例えば、抗体または抗体Fcドメイン、血清トランスフェリンもしくはその部分、アルブミン、またはトランスサイレチン)への融合、または、治療活性を実質的に保持または向上させつつ、ペプチドの安定性、溶解性、または他の特性を実質的に変化させる他の修飾などによる。コンジュゲーションは、例えばポリマーに対するものであってもよい。適切なポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、デキストラン、硫酸デキストランを含むデキストラン誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖類、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含むセルロースおよびセルロース誘導体、デンプンおよびデンプン誘導体、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールのコポリマーおよびその誘導体、ポリビニルエチルエーテル、およびα,βポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミドなど、またはこれらの混合物が挙げられる。コンジュゲーションは、リンカー、例えば、ペプチドまたは化学リンカーを介してもよい。ペプチドを修飾する方法は、当技術分野でよく知られている(例えば、米国特許第5,180,816号、第5,596,078号、第5,990,273号、第5,766,897号、第5,856,456号、第6,423,685号、第6,884,780号、第7,610,156号、第7,256,258号、第7,589,170号、および第7,022,673号、およびPCT公開WO 2010/014616を参照;これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0025】
いくつかの態様において、環状Psapペプチドは、安定性を増強するように機能的に修飾されている。いくつかの態様において、Psapペプチドへの化学修飾としては、限定はされないが、以下の包含を含む:アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、アミノジアルキル、ハロゲン、ヘテロ原子、炭素環、カルボシクリル、カルボシクロ、炭素環式、アリール、アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキル、複素環、ヘテロシクリル、複素環式、ヘテロアリール、および/または脂肪族基。
いくつかの態様において、環状ペプチドは、少なくとも1つの治療分子に融合/コンジュゲートされている。
【0026】
いくつかの態様において、1または2以上のD-アミノ酸の類似のLアミノ酸への置換から生じる、環状Psapペプチドのアミノ酸置換バリアントが、本明細書において企図される。いくつかの態様において、1つのD-アミノ酸置換が存在する。いくつかの態様において、2または3以上のD-アミノ酸置換が存在する。いくつかの態様において、3、4、または5個のD-アミノ酸置換が存在する。いくつかの態様において、D-アミノ酸置換は、均一の間隔、例えば1つ置きのアミノ酸である。いくつかの態様において、D-アミノ酸置換は、アスパラギン酸(D)に対する。アミノ酸構成についてのLおよびDの慣例は、アミノ酸自体の光学活性ではなく、そのアミノ酸を理論的にはこれから合成できるところのグリセルアルデヒドの異性体の光学活性を指す(D-グリセルアルデヒドは右旋性であり;L-グリセルアルデヒドは左旋性である)。例示のDアミノ酸置換バリアントとしては、環状dWLPK(配列番号3、小文字dはD-アミノ酸を示す)および環状dWGPK(配列番号4、小文字dはD-アミノ酸を示す)が挙げられる。
【0027】
本明細書に記載の環状ペプチドは、さらに修飾または誘導体化することができる。修飾または誘導体化ポリペプチドは、典型的には、ベースのポリペプチド(修飾/誘導体化の前)の活性を実質的に保持するであろう。修飾および誘導体の例は、ペグ化、グリコシル化、アセチル化、アミド化、およびリン酸化である。アセチル化(例えば、N末端アセチル化)およびアミド化(例えば、C末端アミド化)の方法は、当業者によく知られている。ポリペプチドの修飾、誘導体、および誘導体化の方法は、公開国際出願WO 2010/014616に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
いくつかの態様において、本明細書に記載の環状ペプチドをコンジュゲートするか、またはそうでなければ共有結合で(例えば、化学的リンカーを使用して)他の分子に結合することができる。結合のかかる形態の1つは、非アミド結合(例えば、ジスルフィド結合)を介する。いくつかの態様において、環状ペプチドは、血清半減期を増強するポリマーに連結される。いくつかの態様において、環状ペプチドは、分子の半減期を増強するのに適切な抗体またはそのドメイン(例えば、Fcドメイン内の1つまたは2以上の定常ドメイン)に、共有的に結合されている(例えば、リンカー分子を介して)。いくつかの態様において、ポリペプチドは、Fcドメインに連結されている(例えば、IgG、IgA、IgM、IgDまたはIgE)。
【0028】
いくつかの態様において、本明細書に記載の環状ペプチドは、非アミノ酸ポリマーに連結されている。ポリエチレングリコールなどのポリマーを、血清半減期を向上させる目的のために使用することができる。適切なポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、デキストラン、硫酸デキストランを含むデキストラン誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖類、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含むセルロースおよびセルロース誘導体、デンプンおよびデンプン誘導体、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールのコポリマーおよびその誘導体、ポリビニルエチルエーテル、およびα,βポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミドなど、またはこれらの混合物が挙げられる。かかるポリマーは、独自の生物活性を有してもよく、有しなくてもよい。ポリマーは、共有的または非共有的に、環状ペプチドにコンジュゲートすることができる。血清半減期を増加させるためのコンジュゲーションの方法は当技術分野で知られており、例えば、米国特許第5,180,816号、第6,423,685号、第6,884,780号、および第7,022,673号、にあり、これらはその全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
いくつかの態様において、環状ペプチドは、治療用分子にコンジュゲートされる。いくつかの態様において、治療用分子は、抗血管新生治療用分子、抗VEGF剤、化学療法剤、または抗炎症剤である。
本明細書に記載の環状ペプチドの様々なバージョン、例えば、本開示に包含される、修飾された、コンジュゲートされた、または誘導体化された環状ペプチドは、環状ペプチドにより示される生物学的活性(例えば本明細書の実施例の節で報告されるなど)の、かなりの量を保持することが予想される。いくつかの態様において、約100%の活性が、所与のアッセイにおいて保持される。いくつかの態様において、約90%、80%、70%、60%、または50%の活性が保持される。かかる活性の1つは、Tsp-1の発現を刺激する能力である。発現の刺激とは、本明細書に記載の環状ペプチドの適切な標的細胞との接触から生じる、環状ペプチドと接触していない同一または十分に類似した標的細胞(対照標的細胞)と比較しての、有意な、再現可能な量の発現の増加である。Tsp-1の発現誘導活性を決定するための方法は、本明細書に記載されており、また当業者によく知られている。
【0030】
アミノ酸の略号を、以下に示す。
アラニン、Ala、A
イソロイシン、Ile、I
ロイシン、Leu、L
バリン、Val、V
フェニルアラニン、Phe、F
トリプトファン、Trp、W
チロシン、Tyr、Y
アスパラギン、Asn、N
システイン、Cys、C
グルタミン、Gln、Q
メチオニン、Met、M
セリン、Ser、S
スレオニン、Thr、T
アスパラギン酸、Asp、D
グルタミン酸、Glu、E
アルギニン、Arg、R
ヒスチジン、His、H
リシン、Lys、K
グリシン、Gly、G
プロリン、Pro、P
【0031】
その他の環状ペプチド修飾
本明細書に記載の環状ペプチドの修飾バージョンは、本開示に包含されることが、理解されるべきである。本明細書に記載の環状ペプチドへの修飾は、米国公開出願20080090760および/または米国公開出願20060286636に記載のように実施することができ、これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。以下は、本開示の範囲内に包含される種々の他のペプチド修飾の、非限定的な説明を提供する。
【0032】
本開示に包含されるのは、本明細書に記載の環状ペプチドの化学的誘導体であるが、ただし非誘導体化環状ペプチドの活性を実質的に保持する限りにおいてである。「化学的誘導体」は、本明細書に記載のペプチド誘導体のサブセットであり、官能側基の反応によって化学的に誘導体化された1または2以上の残基を有する、対象環状ペプチドを指す。化学的誘導体は、側基の誘導体化に加えて、1または2以上の骨格修飾を有することができ、例えば、N-メチル、N-エチル、N-プロピルなどのα-アミノ置換、およびチオエステル、チオアミド、グアニジノなどのα-カルボニル置換が挙げられる。かかる誘導体化分子としては、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されて、アミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成するような分子が挙げられる。遊離カルボキシル基は誘導体化されて、塩、メチルおよびエチルエステル、または他の種類のエステルもしくはヒドラジドを形成することができる。遊離ヒドロキシル基は誘導体化されて、O-アシルまたはO-アルキル誘導体を形成することができる。ヒスチジンのイミダゾール窒素は誘導体化されて、N-im-ベンジルを形成することができる。化学的誘導体としてさらに含まれるのは、20種の標準アミノ酸の1または2以上の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するペプチドである。化学的誘導体としてさらに含まれるのは、1または2以上の非限定的な、非天然アミノ酸を含有するペプチドであり、例としては、商業的供給業者(例えば、Bachem Catalog, 2004 pp. 1-276)からのペプチド合成のために利用可能なものが挙げられる。例としては:4-ヒドロキシプロリンは、プロリンと置換されてもよく;5-ヒドロキシリシンは、リシンと置換されてもよく;3-メチルヒスチジンは、ヒスチジンと置換されてもよく;ホモセリンは、セリンと置換されてもよく;オルニチンは、リシンと置換されてもよく;β-アラニンは、アラニンと置換されてもよく;ノルロイシンは、ロイシンと置換されてもよく;フェニルグリシンは、フェニルアラニンと置換されてもよく;および、L-1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸またはH-β-(3-ベンゾチエニル)-Ala-OHは、トリプトファンと置換されてもよい。
【0033】
特定の態様において、ペプチドへの化学修飾としては、限定はされないが、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、アミノジアルキル、ハロゲン、ヘテロ原子、炭素環、カルボシクリル、カルボシクロ、炭素環式、アリール、アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキル、複素環、ヘテロシクリル、複素環式、ヘテロアリール、および/または脂肪族基の含有が挙げられる。
用語「アルキル」、「アルコキシ」、「ヒドロキシアルキル」、「アルコキシアルキル」、および「アルコキシカルボニル」は、単独でまたはより大きな部分の一部として使用される場合、1~12個の炭素原子を含有する直鎖および分枝鎖両方を含む。用語「アルケニル」および「アルキニル」は、単独でまたはより大きな部分の一部として使用される場合、2~12個の炭素原子を含有する直鎖および分枝鎖両方を含むものとする。用語「シクロアルキル」は、単独でまたはより大きな部分の一部として使用される場合、完全に飽和されたか、または1もしくは2以上の不飽和単位を含むが、芳香族ではない、環式C3~C12の炭化水素を含むものとする。低級アルキルは、1~6個の炭素を含有するアルキル基を指す。
【0034】
用語「アミノ」は、NH2基を指す。用語「アルキルアミノ」または「アミノアルキル」は、水素原子の1つがアルキル基で置き換えられているアミノ基を指す。用語「ジアルキルアミノ」または「アミノジアルキル」は、水素原子がアルキル基によって置き換えられているアミノ基を指し、ここでアルキル基は、同一または異なっていてもよい。用語「ハロゲン」は、F、Cl、Br、またはIを意味する。用語「ヘテロ原子」は、炭素環構造を有する窒素、酸素、または硫黄を意味し、窒素および硫黄の任意の酸化形態、ならびに任意の塩基性窒素の四級化形態を含む。また、用語「窒素」は、複素環の置換可能な窒素を含む。一例として、酸素、硫黄または窒素から選択される0~3個のヘテロ原子を有する飽和または部分不飽和の環において、窒素は、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルにおけるような)、NH(ピロリジニルにおけるような)、またはNR+(N-置換ピロリジニルにおけるような)であってよい。本明細書で使用される用語「炭素環」、「カルボシクリル」、「カルボシクロ」、または「炭素環式」は、3~14員を有する脂肪族環系を意味する。用語「炭素環」、「カルボシクリル」、「カルボシクロ」、または「炭素環式」で飽和かまたは部分的に不飽和のものは、任意に置換された環も指す。用語「炭素環」、「カルボシクリル」、「カルボシクロ」、または「炭素環式」はまた、1または2以上の芳香環または非芳香環に縮合している脂肪族環を含み、例えば、デカヒドロナフチルまたはテトラヒドロナフチルにおける場合であり、ここでラジカルまたは結合点は脂肪族環上にある。
【0035】
用語「アリール」は、単独でまたはより大きな部分の一部として使用される場合、例えば「アラルキル」、「アラルコキシ」、または「アリールオキシアルキル」におけるような場合、6~14員を有する芳香環基を指し、例えばフェニル、ベンジル、フェネチル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントラシルおよび2-アントラシルである。用語「アリール」はまた、任意に置換された環を指す。用語「アリール」は、用語「アリール環」と交換可能に使用されてもよい。「アリール」はまた、芳香環が1または2以上の環に縮合している、縮合多環式芳香環系を含む。例としては、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントラシルおよび2-アントラシルが挙げられる。「アリール」という用語の範囲内にさらに含まれるのは、本明細書中で使用する場合、芳香環が1または2以上の非芳香環に縮合している基、例えば、インダニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロナフチルなどの場合であり、ここでラジカルまたは結合点は芳香環上にある。
【0036】
本明細書で使用される用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、または「複素環式」は、4~14員、好ましくは5~10員を有する非芳香環系であって、ここで1または2個以上の、好ましくは1~4個の環炭素がそれぞれ、ヘテロ原子によって置き換えられているものを含む。複素環の例としては、3-1H-ベンズイミダゾール-2-オン、(1-置換)-2-オキソ-ベンズイミダゾール-3-イル、2-テトラヒドロ-フラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロピラニル、3-テトラヒドロピラニル、4-テトラヒドロピラニル、[1,3]-ジオキサラニル、[1,3]-ジチオラニル、[1,3]-ジオキサニル、2-テトラヒドロチオフェニル、3-テトラヒドロチオフェニル、2-モルホリニル、3-モルホリニル、4-モルホリニル、2-チオモルホリニル、3-チオモルホリニル、4-チオモルホリニル、1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-ピペリジニル、4-チアゾリジニル、ジオゾロニル、N-置換ジオゾロニル、1-フタリミジニル、ベンズオキサニル、ベンゾピロリジニル、ベンゾピペリジニル、ベンズオキソラニル、ベンゾチオラニル、およびベンゾチアニルが挙げられる。本明細書で使用する場合、用語「ヘテロシクリル」または「複素環式」の範囲内にさらに含まれるのは、非芳香族ヘテロ原子含有環が、1または2以上の芳香環または非芳香環に縮合している基であり、例えば、インドリニル、クロマニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロキノリニルにおける場合であり、ここでラジカルまたは結合点は、非芳香族ヘテロ原子含有環上にある。用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、または「複素環式」は、飽和もしくは部分的不飽和であっても、任意に置換された環も指す。
【0037】
用語「ヘテロアリール」は、単独でまたはより大きな部分の一部として使用される場合、例えば「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルコキシ」におけるような場合、5~14員を有する複素芳香環基を指す。ヘテロアリール環の例としては、2-フラニル、3-フラニル、3-フラザニル、N-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、5-イミダゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサジアゾリル、5-オキサジアゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、1-ピラゾリル、2-ピラゾリル、3-ピラゾリル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ピリミジル、3-ピリダジニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、5-テトラゾリル、2-トリアゾリル、5-トリアゾリル、2-チエニル、3-チエニル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、インドリル、キノリニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、イソキノリニル、インダゾリル、イソインドリル、アクリジニル、およびベンゾイソオキサゾリルが挙げられる。本明細書で使用する場合、用語「ヘテロアリール」の範囲内にさらに含まれるのは、複素芳香環が1または2以上の芳香環または非芳香環に縮合している基であって、ここでラジカルまたは結合点が複素芳香環上にあるものである。例としては、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[3,4-d]ピリミジニルが挙げられる。用語「ヘテロアリール」はまた、任意に置換された環も指す。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」または用語「複素芳香族」と交換可能に使用されてよい。
【0038】
アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどを含む)基またはヘテロアリール(ヘテロアラルキルおよびヘテロアリールアルコキシなどを含む)基は、1または2以上の置換基を含んでいてもよい。アリール、ヘテロアリール、アラルキル、またはヘテロアラルキル基の任意の不飽和炭素原子上の適切な置換基の例としては、ハロゲン、--R0、--OR0、--SR0、1,2-メチレンジオキシ、1,2-エチレンジオキシ、保護OH(アシルオキシなど)、フェニル(Ph)、置換Ph、--O(Ph)、置換--O(Ph)、--CH2(Ph)、置換--CH2(Ph)、CH2CH2(Ph)、置換--CH2CH2(Ph)、--NO2、--CN、--N(R0)2、--NR0C(O)R0、NR0C(O)N(R0)2、NR0CO2R0、--NR0NR0C(O)R0、--NR0NR0C(O)N(R0)2、--NR0NR0C2R0、C(O)C(O)R0、C(O)CH2C(O)R0、--CO2R0、--C(O)R0、--C(O)N(R0)2、--OC(O)N(R0)2、S(O)2R0、--SO2N(R0)2、--S(O)R0、--NR0SO2N(R0)2、--NR0SO2R0、--C(=S)N(R0)2、C(=NH)N(R0)2、(CH2)yNHC(O)R0、および--(CH2)yNHC(O)CH(V--R0)(R0)が挙げられ;式中、各R0は、独立して、水素、置換もしくは非置換脂肪族基、非置換ヘテロアリールまたは複素環、フェニル(Ph)、置換Ph、O(Ph)、置換--O(Ph)、--CH2(Ph)、または置換--CH2(Ph)から選択され;yは0~6であり;およびVはリンカー基である。R0の脂肪族基またはフェニル環上の置換基の例としては、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、ハロゲン、アルキル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、およびハロアルキルが挙げられる。
【0039】
脂肪族基、または非芳香族複素環、または縮合アリールもしくはヘテロアリール環は、1または2以上の置換基を含んでいてもよい。脂肪族基、または非芳香族複素環、または縮合アリールもしくはヘテロアリール環の任意の飽和炭素上の好適な置換基の例としては、アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素について上に列挙されたもの、および以下が挙げられる:=O、=S、=NNHR*、=NN(R*)2、=N-、=NNHC(O)R*、=NNHCO2(アルキル)、=NNHSO2(アルキル)、または=NR*、式中、各R*は独立して、水素、非置換脂肪族基、または置換脂肪族基から選択される。脂肪族基上の置換基の例としては、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、ハロゲン、アルキル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、およびハロアルキルが挙げられる。
【0040】
非芳香族複素環の窒素上の適切な置換基としては、R+、--N(R+)2、--C(O)R+、--CO2R+、--C(O)C(O)R+、--C(O)CH2C(O)R+、--SO2R+、--SO2N(R+)2、C(=S)N(R+)2、--C(=NH)--N(R+)2、および--NR+SO2+が挙げられ;式中、各R+は、独立して、水素、脂肪族基、置換脂肪族基、フェニル(Ph)、置換Ph、--O(Ph)、置換--O(Ph)、--CH2(Ph)、置換--CH2(Ph)、または非置換のヘテロアリールもしくは複素環から選択される。脂肪族基またはフェニル環上の置換基の例としては、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、ハロゲン、アルキル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、およびハロアルキルが挙げられる。
【0041】
特定の態様において、本明細書に記載のペプチドモノマーは、少なくとも1つのリンカー部分への共有結合によって二量体化または多量体化されている。リンカー部分は好ましくは、C1~12連結部分であって、1または2の--NH--結合で任意に終結され、1または2個以上の利用可能な炭素原子において低級アルキル置換基で任意に置換されたものであるが、ただし必ずしもそうでなくてもよい。好ましくは、リンカーは、--NH--R--NH--を含み、この式中、Rは、別の分子部分(例えば、ペプチド合成中の固体支持体の表面上またはPEGなどの薬物動態改質剤に存在することができるようなもの)への結合を可能にする、カルボキシル基またはアミノ基などの官能基で置換された低級(C1~6)アルキレンである。特定の態様において、リンカーは、リシン残基である。特定の他の態様において、リンカーは、各モノマーのC末端アミノ酸に同時に結合することによって、2つのペプチドモノマーのC末端を架橋する。他の態様において、リンカーは、C末端においてではないアミノ酸の側鎖に結合することによって、ペプチドを架橋する。リンカーが、ペプチドのC末端におけるものではないアミノ酸の側鎖に結合する場合、側鎖は好ましくは、リシンに見出されるようなアミンを含み、リンカーは、ペプチドとアミド結合を形成することのできる、2または3以上のカルボキシ基を含む。
【0042】
本開示のペプチドモノマーは、ビオチン/ストレプトアビジン系を用いてオリゴマー化されてもよい。オリゴマー化は、本明細書に記載のペプチドの1または2以上の活性を増強することができる。ペプチドモノマーのビオチン化類似体は、当業者に知られている標準的な技術によって合成することができる。例えば、ペプチドモノマーは、C末端でビオチン化することができる。これらのビオチン化モノマーは、次いで、ストレプトアビジンとのインキュベーション(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはHEPES緩衝RPMI培地(Invitrogen)中、4:1のモル比および室温で1時間)によって、オリゴマー化される。この方法の変形では、ビオチン化ペプチドモノマーは、多数の市販の抗ビオチン抗体のいずれかとインキュベートすることによって、オリゴマー化されてもよい[例えば、Kirkegaard & Perry Laboratories, Inc. (Washington, D.C.)からのヤギ抗ビオチンIgG]。
【0043】
いくつかの側面において、本明細書に記載の環状ペプチドは、物理的に直列に連結されて、ポリマーを形成することができる。かかるポリマーを構成する環状ペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに離間することができる。有用なリンカーペプチドの例としては、これらに限定されないが、グリシン-セリンおよびグリシン-アラニンポリマーを含むグリシンポリマー((G)n)が挙げられる(例えば、(Gly4Ser)n反復、ここで、n=1~8(配列番号8)、好ましくは、n=3、4、5、または6)。本明細書に記載の環状ペプチドはまた、化学結合の結合によって、例えばジスルフィド結合または化学的架橋による結合によって、接合することができる。当業者によく知られている分子生物学的技術を使用して、環状ペプチドのポリマーを作成することができる。本開示のペプチド配列はまた、非ペプチド架橋剤(Pierce 2003-2004 Applications Handbook and Catalog, Chapter 6)、または他の足場、例えばHPMA、ポリデキストラン、多糖類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、糖、および糖アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール)を使用して、一緒に連結することができる。
【0044】
いくつかの態様において、ポリエチレングリコール(PEG)は、リンカーとして機能することができる。さらに別の態様において、リンカー部分は、2つのカルボン酸を含有し、かつ1または2以上の利用可能な原子において追加の官能基、例えば1または2以上のPEG分子に結合することができるアミンなどと任意に置換される分子を、含んでよい。かかる分子は、--CO--(CH2)n-uX--(CH2)m-CO--で表すことができ、式中、nは、0~10の間の整数であり、mは、1~10の間の整数であり、Xは、O、S、N(CH2)pNR1、NCO(CH2)pNR1、およびCHNR1から選択され、R1は、H、Boc(tert-ブチルオキシカルボニル)、Cbzから選択され、pは、1~10の間の整数である。特定の態様において、各ペプチドの1つのアミノ基は、リンカーとアミド結合を形成する。任意に、リンカーは、脂肪酸、ホーミングペプチド、輸送剤、細胞浸透剤、器官標的化剤、またはキレート剤などの好適に活性化された薬物動態(PK)改質剤を用いて誘導体化されることが可能な、1または2以上の反応性アミン含む。
【0045】
本明細書に記載の環状ペプチドはさらに、1または2以上の水溶性ポリマー部分を含んでよい。いくつかの態様において、これらのポリマーは、本開示の環状ペプチドに共有結合している。いくつかの態様において、最終生成調製物の治療的使用のために、ポリマーは、薬学的に許容し得る。当業者は、ポリマー-ペプチドコンジュゲートが治療的に使用されるかどうか、そしてもしそうであれば、所望の用量、循環時間、タンパク質分解に対する抵抗性、およびその他の考慮事項などの考慮事項に基づき、所望のポリマーを選択することができるであろう。水溶性ポリマーは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、ポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、およびポリオキシエチル化ポリオールであってよい。好ましい水溶性ポリマーは、PEGである。
【0046】
ポリマーは任意の分子量であってよく、分枝または非分枝であってよい。本開示で使用するのに好ましいPEGは、約5キロダルトン(kDa)から約60kDaの分子量を有する、直鎖状、非分枝状のPEGである(用語「約」は、PEGの製剤中、一部の分子は示された分子量より多い重量、および一部はこれより少ない重量であることを示す)。より好ましくは、PEGは、約10kDaから約40kDaの分子量を有し、さらにより好ましくは、PEGは、20~30kDaの分子量を有する。他のサイズも、所望の治療プロファイル(例えば、所望の持続放出の持続時間;もしあれば生物学的活性に対する効果;取り扱いの容易さ;抗原性の程度または欠如;および、当業者に知られている治療ペプチドに対する、PEGの他の効果)に応じて用いてよい。
【0047】
結合したポリマー分子の数は、変化し得る;例えば、1、2、3または4以上の水溶性ポリマーが、本開示のペプチドに結合することができる。複数の結合したポリマーは、同一または異なる化学部分であってよい(例えば、異なる分子量のPEG)。
当技術分野で知られているペプチドを安定化するための方法を、本明細書に記載の方法および組成物に使用することができる。例えば、D-アミノ酸を使用し、ペプチド骨格のための還元アミド結合を使用して、および側鎖を連結する非ペプチド結合を使用して、例えばこれに限定はされないが、ピロリノンおよび糖模倣体は、それぞれ安定化を提供することができる。糖足場ペプチド模倣体の設計および合成は、Hirschmann et al.(J. Med. Chem., 1996, 36, 2441-2448, その全体が参照により本明細書に組み込まれる)によって記載されている。さらに、ピロリノンベースのペプチド模倣体は、改善された生物学的利用能特性を有する安定した背景にペプチドファルマコフォアを提示する(例えば、Smith et al., J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 11037-11038を参照)、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
本明細書中に包含されるのは、本明細書中に記載の環状のコンジュゲートである。これらのペプチドは、ポリエチレングリコール(PEG)に加えて、他のポリマーにコンジュゲートすることができる。ポリマーは、独自の生物活性を有してもよく、有しなくてもよい。ポリマーコンジュゲーションのさらなる例としては、限定はされないが、以下のようなポリマーが挙げられる:ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、デキストラン、硫酸デキストランを含むデキストラン誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖類、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含むセルロースおよびセルロース誘導体、デンプンおよびデンプン誘導体、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールのコポリマーおよびその誘導体、ポリビニルエチルエーテル、およびα,β-ポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミドなど、またはこれらの混合物。ポリマーへのコンジュゲーションは、他の効果のうち、血清半減期を向上させることができる。様々なキレート剤を、本明細書に記載のペプチドをコンジュゲートするために使用することができる。これらのキレート剤としては、限定はされないが、以下を含む:エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミノ五酢酸(DTPA)、エチレングリコール-0,0’-ビス(2-アミノエチル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、N,N’-ビス(ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(TITRA)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(TETA)、および1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(TETRA)。コンジュゲーションの方法はよく知られており、例えば、P. E. Thorpe, et. al, 1978, Nature 271, 752-755;Harokopakis E., et. al., 1995, Journal of Immunological Methods, 185:31-42;S. F. Atkinson, et. al., 2001, J. Biol. Chem., 276:27930-27935;ならびに米国特許第5,601,825号、第5,180,816号、第6,423,685号、第6,706,252号、第6,884,780号、および第7,022,673号にあり、これらはその全体が本明細書中に参照により組み込まれる。
【0049】
遺伝的にコードされたアミノ酸(または立体異性Dアミノ酸)の天然側鎖を、他の側鎖で、例えば、次のような基:アルキル、低級(C1~6)アルキル、環状4-、5-、6-から7員アルキル、アミド、アミド低級アルキルアミド、ジ(低級アルキル)、低級アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシおよびそれらの低級エステル誘導体、ならびに4-、5-、6-、から7員ヘテロ環で、置き換えることができる。特に、プロリン類似体であって、プロリン残基の環の大きさが、5員から4、6、または7員に変更されたものを使用することができる。環状基は、飽和または不飽和であることができ、不飽和の場合、芳香族または非芳香族であることができる。複素環基は、好ましくは、1または2個以上の窒素、酸素および/または硫黄ヘテロ原子を含む。かかる基の例としては、フラザニル、フリル、イミダゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、モルホリニル(例えばモルホリノ)、オキサゾリル、ピペラジニル(例えば、1-ピペラジニル)、ピペリジル(例えば1-ピペリジル、ピペリジノ)、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル(例えば、1-ピロリジニル)、ピロリニル、ピロリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、チオモルホリニル(例えば、チオモルホリノ)、およびトリアゾリル基が挙げられる。これらの複素環基は、置換または非置換であることができる。基が置換されている場合、置換基は、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、酸素、または置換もしくは非置換のフェニルであることができる。
ペプチドをリン酸化、または他の方法によって、容易に修飾することもできる(例えば、Hruby, et al. (1990) Biochem J. 268:249-262に記載のようにして)。
【0050】
処置
開示の側面は、がんを有する対象を処置するための方法に関する。いくつかの態様において、方法は、がんを有する対象に対して、本明細書に記載の環状Psapペプチドを投与することを含む。いくつかの態様において、環状ペプチドは、アミノ酸配列DWLPK(配列番号1)、dWLPK(配列番号3、小文字dはD-アミノ酸を示す)、DWGPK(配列番号2)、またはdWGPK(配列番号4、小文字dはD-アミノ酸を示す)を含む。いくつかの態様において、環状ペプチドのアミノ酸配列は、DWLPK(配列番号1)、dWLPK(配列番号3、小文字dはD-アミノ酸を示す)、DWGPK(配列番号2)、またはdWGPK(配列番号4、小文字dはD-アミノ酸を示す)である。いくつかの態様において、環状ペプチドは、アミノ酸配列DWLPK(配列番号1)を含む。いくつかの態様において、環状ペプチドのアミノ酸配列は、DWLPK(配列番号1)である。
【0051】
本開示の他の側面は、がんを有する対象を処置するための、組成物および医薬の製造における組成物の使用に関する。いくつかの態様において、組成物は、本明細書に記載の環状Psapペプチド、例えば、アミノ酸配列DWLPK(配列番号1)を有する環状ペプチドを含む。
本明細書で使用する場合、がんを「処置する」または「処置」とは、限定はされないが、がんの発症を予防する、低減する、または停止させる、がんの症状を軽減する、または除去する、がんの増殖を抑制する、または阻害する、既存のがんの転移および/または浸潤を、予防する、または低減する、がんの退縮を促進する、または誘導する、がん細胞の増殖を阻害する、または抑制する、血管新生を低減する、および/またはアポトーシスがん細胞の量を増加させることが挙げられる。
【0052】
本開示の他の側面は、炎症性疾患または障害を有する対象を処置するための方法に関する。いくつかの態様において、炎症性疾患または障害は、炎症性腸疾患(IBD)、例えばクローン病である。いくつかの態様において、方法は、炎症性疾患または障害(例えば、クローン病)を有する対象に対して、本明細書に記載の環状Psapペプチドを投与することを含む。いくつかの態様において、環状ペプチドは、アミノ酸配列DWLPK(配列番号1)、dWLPK(配列番号3、小文字dはD-アミノ酸を示す)、DWGPK(配列番号2)、またはdWGPK(配列番号4、小文字dはD-アミノ酸を示す)を含む。いくつかの態様において、環状ペプチドのアミノ酸配列は、DWLPK(配列番号1)、dWLPK(配列番号3、小文字dはD-アミノ酸を示す)、DWGPK(配列番号2)、またはdWGPK(配列番号4、小文字dはD-アミノ酸を示す)である。いくつかの態様において、環状ペプチドは、アミノ酸配列DWLPK(配列番号1)を含む。いくつかの態様において、環状ペプチドのアミノ酸配列は、DWLPK(配列番号1)である。
【0053】
本開示の他の側面は、炎症性疾患または障害、例えばクローン病を有する対象を処置するための、組成物および、医薬の製造における組成物の使用に関する。いくつかの態様において、組成物は、本明細書に記載の環状Psapペプチド、例えばアミノ酸配列DWLPK(配列番号1)を有する環状ペプチドを含む。
本明細書で使用する場合、炎症性疾患または障害を「処置する」または「処置」とは、限定はされないが、炎症性疾患または障害の発症を予防する、低減する、または停止させる、あるいは炎症性疾患または障害の症状を軽減する、または除去することが挙げられる。
【0054】
有効量は、医学的に望ましい結果、例えばがんまたは炎症性疾患もしくは障害の処置などを提供するのに十分な、環状Psapペプチドの投与量である。有効量は、処置される特定の疾患または障害、処置される対象の年齢および健康状態、状態の重症度、処置の期間、任意の併用療法の性質、投与の特定の経路、および医師の知識と経験の範囲内の類似の要因などに応じて、変化するであろう。ヒトなどの対象への投与のために、約0.001、0.01、0.1、または1mg/kgから、50、100、150、または500mg/kgまたはそれ以上の投与量を、一般的に使用することができる。
【0055】
いくつかの態様において、有効量は、対象に毒性を生じない、環状Psapペプチドの投与量である。いくつかの態様において、有効量は、直鎖Psapペプチドと比較して、対象に低減された毒性を引き起こす、環状Psapペプチドの投与量である。本明細書で使用する場合、用語「無毒性」または「低減された毒性」は、環状Psapペプチドが、投与された対象または、対象の細胞、組織もしくは臓器において、1または2以上の有害反応の発生を誘発しないか、またはその程度を低減することを示す。例えば、本明細書に記載の環状Psapペプチドは、器官もしくは器官系の機能障害を引き起こさないか、または細胞死をもたらさない。例えば、環状Psapペプチドは腎毒性ではなく、脾臓に毒性でなく、および/また肝毒性ではない。毒性を測定するための方法は、当技術分野で知られている(例えば、肝臓、脾臓、および/または腎臓の生検/組織学;肝臓毒性に対するアラニントランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼおよびビリルビンアッセイ;および腎臓毒性に対するクレアチニンレベル)。
【0056】
環状Psapペプチドおよびその組成物は、全身、局所または局部的な投与を含む、種々な投与様式のために製剤化することができる。種々の投与経路が利用可能である。選択された特定の様式は、処置されるがんの種類、および治療効果のために必要な投与量に依存するであろう。本開示の方法は、一般的には、医学的に許容し得る任意の投与様式を用いて実施することができ、これは、臨床的に容認できない副作用を引き起こすことなく、活性化合物の有効レベルを生じさせる任意の様式を意味する。かかる投与様式としては、限定することなく、経口、直腸、局所、経鼻、皮内、または非経口の経路を含む。用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、または注入を含む。本明細書に記載の医薬組成物はまた、腫瘍内、腫瘍周辺、病変内または病変部周辺の経路によって投与されて、局所的ならびに全身的効果を発揮する。
【0057】
技術および処方は、一般に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Pharmaceutical Press; 22nd editionおよび他の類似の参考文献に見出すことができる。投与された場合、Psapペプチドは、薬学的に許容し得る量で、薬学的に許容し得る組成物中で適用することができる。医薬組成物および薬学的に許容し得る担体は、本明細書に記載されている。かかる製剤は、日常的に、塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、および任意に他の治療剤を含有してもよい。医薬において使用される場合、塩は、薬学的に許容し得るべきであるが、薬学的に許容し得ない塩も好都合に、その薬学的に許容し得る塩を調製するために使用されてもよく、本開示の範囲から排除するものではない。かかる薬理学的および薬学的に許容し得る塩としては、限定はされないが、以下の酸から調製されるものが挙げられる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。また、薬学的に許容し得る塩は、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などの、アルカリ金属またはアルカリ土類塩として調製することができる。
【0058】
いくつかの態様において、環状Psapペプチドによる処置は、化学療法剤、放射線、細胞増殖抑制剤、抗VEGF剤、抗血管新生因子、p53再活性剤、および/またはがんの手術、炎症性疾患または障害のための抗炎症剤などの、別の療法と組み合わせることができる。
いくつかの態様において、環状Psapペプチド(例えば、DWLPK(配列番号1))を使用して、必要とする対象においてTspP-1の発現を刺激することができる。いくつかの態様において、方法は、対象に対して、TspP-1の発現を刺激するための環状Psapペプチドの有効量を、投与することを含む。
【0059】
組成物および薬学的に許容し得る担体
本開示の他の側面は、本明細書に記載の環状Psapペプチドを含む組成物に関する。いくつかの態様において、組成物は、医薬組成物である。いくつかの態様において、組成物は、本明細書に記載の環状Psapペプチドおよび薬学的に許容し得る担体を含む。いくつかの態様において、組成物は、がんまたは炎症性疾患もしくは障害の処置に使用するためのものである。いくつかの態様において、組成物は、必要とする対象においてTsp-1を刺激するのに使用するためのものである。いくつかの態様において、組成物は、追加の薬剤、例えば、化学療法剤、細胞増殖抑制剤、抗VEGF剤、抗血管新生因子、p53再活性剤、および/または抗炎症剤を含む。
【0060】
本明細書で使用する用語「薬学的に許容し得る担体」は、1または2以上の、適合性の固体または液体の増量剤、希釈剤、または封入物質であって、ヒトなどの対象への投与に適しているものを意味する。薬学的に許容し得る担体は、製剤の他の成分と適合性であり、対象の組織に有害ではない(例えば、生理学的に適合性、滅菌、生理学的pH値など)という意味で、「許容し得る」。「担体」という用語は、活性成分と組み合わされて適用を容易にする、天然または合成の、有機または無機成分を意味する。医薬組成物の成分はまた、本開示の分子と、および互いに、所望の薬学的有効性を実質的に損なう相互作用がないような様式で、共混入されることができる。薬学的に許容し得る担体として機能できる材料のいくつかの例としては、以下が挙げられる:(1)糖類、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;(3)セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロースおよび酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルク;(8)賦形剤、例えばカカオバターおよび坐薬ワックス;(9)油、例えば落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール(PEG);(12)エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質非含有水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;(22)増量剤、例えばポリペプチドおよびアミノ酸;(23)血清成分、例えば血清アルブミン、HDLおよびLDL;(22)C2~C12アルコール、例えばエタノール;および(23)医薬製剤に用いられる他の非毒性適合性物質。湿潤剤、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、香料剤、保存剤および酸化防止剤もまた、製剤中に存在することができる。
【0061】
医薬組成物は、好都合には単位剤形で提供することができ、薬学の分野で知られている方法のいずれかによって調製することができる。本開示の医薬組成物に関連して使用される用語「単位用量」は、対象に対する単位投薬量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な希釈剤、すなわち、担体、またはビヒクルとの関連で所望の治療効果を生じるように計算された、活性物質の所定量を含む。
【0062】
医薬組成物の製剤化は、投与経路に依存してもよい。非経口投与または腫瘍内、腫瘍周辺、病変内または病変部周辺の投与に適した注射剤は、例えば、滅菌の注射用水性または油性懸濁液を含み、既知の技術に従って、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて製剤化することができる。滅菌の注射用製剤はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、滅菌注射溶液、懸濁液またはエマルジョンであってもよく、例えば、1,3-プロパンジオールまたは1,3-ブタンジオール中の溶液である。使用可能な許容し得るビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌の固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、任意の無刺激性の固定油を使用してよく、合成モノ-またはジ-グリセリドを含む。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製に用途を見出す。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過により、または滅菌剤を組み込むことにより滅菌固体組成物の形態で、滅菌することができ、後者は、使用前に滅菌水または他の滅菌注射媒体に溶解または分散することができる。
【0063】
局所投与のために、医薬組成物は、当技術分野で一般に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル剤、またはクリーム剤に製剤化することができる。局所投与には、当分野で知られている経皮送達システムを利用することができる。例としては、皮膚パッチである。
経口投与に適した組成物は、それぞれが抗炎症剤の所定量を含む、カプセル剤、錠剤、トローチ剤などの各個別の単位として提供することができる。他の組成物としては、シロップ、エリキシルまたはエマルジョンなどの、水性液体または非水性液体中の懸濁液が挙げられる。
【0064】
他の送達システムとしては、時間放出、遅延放出または持続放出送達システムを含むことができる。かかるシステムは、抗炎症薬の反復投与を回避することができ、対象および医師の利便性を増加させる。多くの種類の放出送達システムが利用可能であり、当業者に知られている。それらはポリマーベースのシステムを含み、例えばポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、およびポリ無水物などである。薬物を含む前述のポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許5,075,109に記載されている。送達システムはまた、非ポリマーシステムを含み、これらは以下である:コレステロールなどのステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸またはモノ-、ジ-およびトリ-グリセリドなどの中性脂肪を含む、脂質;ヒドロゲル放出システム;シラスティックシステム;ペプチドベースのシステム;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を使用する圧縮錠剤;部分的に融合されたインプラント;など。具体的な例としては、限定はされないが、以下が挙げられる:(a)抗炎症剤がマトリックス内の形で含まれている侵食システム、例えば、米国特許第4,452,775号、第4,667,014号、第4,748,034号および第5,239,660号に記載されたものなど、および(b)活性成分がポリマーから制御された速度で浸透する拡散システム、例えば、米国特許第3,832,253号および第3,854,480号に記載されたものなど。さらに、ポンプベースのハードウェア送達システムも使用することができ、そのいくつかは移植に適合されている。
【0065】
長期持続放出インプラントの使用は、慢性状態の処置に特に適切であり得る。長期放出とは、本明細書中で使用する場合、インプラントが、活性成分の治療レベルを少なくとも30日間、好ましくは60日間、送達するように構築され配置されていることを意味する。長期持続放出インプラントは当業者によく知られており、上述した放出システムのいくつかを含む。
いくつかの態様において、治療的投与のために使用される医薬組成物は、滅菌でなければならない。滅菌性は、滅菌濾過膜(例えば0.2ミクロン膜)を通して濾過することによって、容易に達成される。代替的に、保存剤を使用して、微生物の増殖または作用を防止することができる。様々な保存剤が知られており、例えば、フェノールおよびアスコルビン酸である。環状Psapペプチドおよび/または医薬組成物は、熱および酸化的変性に対して非常に安定である場合、通常は凍結乾燥形態または水溶液として保存されるであろう。製剤のpHは、典型的には約6~8であり、ただし、これより高いかまたはより低いpH値も、特定の場合に適切であり得る。
【0066】
対象
本開示の側面は、がんを有するヒトなどの対象、およびかかる対象を処置する方法に関する。がんは、良性または悪性であることができ、これは転移していても、転移していなくてもよい。任意の種類のがんが本明細書において意図され、これには、限定はされないが、白血病、リンパ腫、骨髄腫、がん腫、転移性がん腫、肉腫、腺腫、神経系のがんおよび尿生殖器がんを含む。例示的ながんの種類としては、限定はされないが、以下が挙げられる:成人および小児の急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質がん、AIDS関連がん、肛門がん、虫垂のがん、星状細胞腫、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、骨肉腫、線維性組織球腫、脳がん、脳幹神経膠腫、小脳星細胞腫、悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視床下部神経膠腫、乳がん、男性乳がん、気管支腺腫、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、原因不明のがん、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、悪性神経膠腫、子宮頸がん、小児がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸直腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、ユーイングファミリー腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢がん、胃がん、消化管間質腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫、ヘアリーセル白血病、
【0067】
頭頸部がん、肝細胞がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、視床下部および視覚経路の神経膠腫、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓がん、腎細胞がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、原発性中枢神経系リンパ腫、ヴァルデンストレーム型マクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、髄芽細胞腫、黒色腫、メルケル細胞がん、悪性中皮腫、扁平上皮頸部がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、慢性骨髄増殖性疾患、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔咽頭がん、卵巣がん、膵臓がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体芽細胞腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体がん、形質細胞腫瘍、胸膜肺芽細胞腫、前立腺がん、直腸がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん、軟部組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、非黒色腫皮膚がん、小腸がん、扁平上皮がん、扁平上皮頸部がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣がん、咽喉がん、胸腺腫および胸腺がん、甲状腺がん、移行上皮がん、絨毛性腫瘍、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、膣のがん、外陰部がん、またはウィルムス腫瘍。いくつかの態様において、がんは、黒色腫または卵巣がんである。
【0068】
がんを有する対象は、当技術分野で知られている任意の方法を用いて同定することができる(例えば、血液検査、組織学、CTスキャン、X線、MRI、身体検査、細胞遺伝学分析、尿検査、または遺伝子検査)。がんを有する疑いのある対象は、疾患の1または2以上の症状を示す可能性がある。がんの徴候および症状は、当業者に知られている。いくつかの例示的な臨床検査としては、限定はされないが、がんバイオマーカーのテスト、例えば、乳がんのためのがん抗原(CA)15-3、がん胎児性抗原(CEA)およびHER-2、子宮頸がんのためのヒトパピローマウイルス(HPV)E6およびE7がんタンパク質、肝細胞がん(HCC)のためのα-フェトプロテイン(AFP)、AFP画分L3、P4/5および+IIバンド、および肝細胞がん(HCC)のための超音波検査、前立腺がんのための前立腺特異的抗原(PSA)、および卵巣がんおよびHCCのための血清CA-125が挙げられる。
【0069】
本開示の他の側面は、炎症性疾患または障害を有するヒトなどの対象、およびかかる対象を処置する方法に関する。例示的な炎症性疾患または障害としては、限定はされないが、以下が挙げられる:関節リウマチ、黄斑変性症(例えば、加齢性黄斑変性、AMD)、炎症性腸疾患(IBD、例えばクローン病または潰瘍性大腸炎)、乾癬、アテローム性動脈硬化症、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアック病-皮膚炎、慢性疲労症候群、免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集疾患、クレスト症候群、Degos病、皮膚筋炎、皮膚筋炎-若年性、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、グレーブス病、ギランバレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、天疱瘡尋常性、悪性貧血、結節性多発動脈炎、軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症。いくつかの態様において、炎症性疾患または障害は、関節リウマチ、黄斑変性症(例えば、加齢性黄斑変性、AMD)、炎症性腸疾患(IBD、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)、乾癬、またはアテローム性動脈硬化症である。
【0070】
炎症性疾患または障害を有する対象は、当分野で知られている任意の方法(例えば、血液検査、身体検査、CTスキャン、またはMRI)を用いて同定され得る。炎症性疾患または障害を有することが疑われる対象は、疾患または障害の1または2以上の症状を示す可能性がある。炎症性疾患または障害の徴候および症状は、当業者によく知られている。
いくつかの態様において、炎症性疾患または障害は、クローン病などの炎症性腸疾患(IBD)である。IBD、例えばクローン病を有する対象は、当技術分野で知られている任意の方法を用いて同定され得る(例えば、血液検査、身体検査、便潜血検査、大腸内視鏡検査、フレキシブルS状結腸鏡検査、CTスキャン、MRI、カプセル内視鏡検査、ダブルバルーン内視鏡検査、小腸画像診断、またはバリウム注腸)。IBDを有することが疑われる対象は、疾患の1または2以上の症状を示す可能性がある。IBDの徴候および症状は、当業者によく知られている。
【実施例0071】
例1
ペプチドの環式バージョンDWLPK(配列番号1)、dWLPK(配列番号3)、DWGPK(配列番号2)、およびdWGPK(配列番号4)を、当分野で知られている方法に従って合成し(小文字dはD-アミノ酸を示す)、直鎖ペプチドdWlP(配列番号5、小文字のdおよびlはD-アミノ酸を示す)と比較した。
細胞を培養し、4μg/mlまたは10μg/mlの各ペプチドに接触させ、トロンボスポンジン1(Tsp-1)活性化のレベルを、ウエスタンブロットによって測定した。Tsp-1は、サポシンAタンパク質によって活性化されることが、以前に示されている。図2は、環状ペプチドDWLPK(配列番号1)が、Tsp-1のレベルを高めるのに最も効果的であり、dWGPK(配列番号4)がその次に効果的であり、dWLPK(配列番号3)およびDWGPK(配列番号2)が、最も効果的ではなかったことを示す。これは驚くべきことであり、なぜならば、これらのペプチドの直鎖バージョンでの同様の試験では、直鎖DWGPK(配列番号2)が直鎖DWLPK(配列番号1)よりも効果的であることが示されたからである。
【0072】
環状ペプチドDWLPK(配列番号1)を、次に、ヒト血漿中での安定性について、直鎖ペプチドdWlP(配列番号5)と比較して試験した。各ペプチドは、ヒト血漿中37℃で、2、4、8、または24時間インキュベートした。環状ペプチドは、Tsp-1を活性化する能力を、血漿中での24時間のインキュベーション後にも保持することが見出された(図3)。直鎖ペプチドは、D-アミノ酸置換により分解に対して安定化されているにもかかわらず、有意に低い活性を24時間後に有した。
環状ペプチドdWGPK(配列番号4)を、黒色腫のマウスモデルにおいて試験した。黒色腫モデルでは、5×10のB16-BL6黒色腫細胞を、同系のC57BL6マウスに注射した。マウスはその後、環状ペプチドまたは直鎖dWlP(配列番号5)または対照のいずれかで処置した。最初の実験では、ペプチドでの処置をおよそ12日目に開始し、腫瘍の体積を、細胞注射後約20~25日まで経時的に測定した(図4)。第2の実験では、ペプチドでの処置を15日目に開始し、腫瘍の体積は、細胞注射後約27日まで経時的に測定した(図5)。環状ペプチドは、直鎖ペプチドより4倍効果的であることが見出だされたが、これは、環状ペプチドの用量10mg/kgが、直鎖ペプチドの用量40mg/kgと同程度に効果的であったことによる(図4)。これは、第2の実験で確認された(図5)。
【0073】
次に、環状ペプチドDWLPK(配列番号1)を、卵巣がんのマウスモデルにおいて試験した。卵巣がんのマウスモデルでは、ルシフェラーゼを発現する100万個の患者由来の卵巣がん細胞を、マウスに腹腔内注射した。腫瘍負荷は、ルシフェラーゼを用いてin vivoで測定した。環状ペプチドでの処置は40日後に開始し、10mg/kgで10日間投与した。処置の10日後にマウスを安楽死させ、腫瘍を組織学的に分析した。図6に示すように、環状ペプチドで処置したマウスにおけるルシフェラーゼ出力は、処置の10日間にわたって低下し、腫瘍の退縮を示した。環状ペプチド処置したすべての腫瘍は、Tsp-1を発現し、組織学的に観察により、未処置の腫瘍の大きさの25%<であった。
環状ペプチド(配列番号1)はまた、マウスのマクロファージにおけるTsp-1を刺激したことが示され(図7)、環状ペプチドが間質内のTsp-1の発現も誘導できることを示す。
【0074】
最後に、環状ペプチドDWLPKの投与は、組織学を用いて測定されるように、肝臓または脾臓に対していかなる毒性も生じなかった(図8)。
まとめると、これらのデータは、環状Psapペプチドが、直鎖Psapペプチドよりも安定かつ効果的であったことを示す。さらに、環状ペプチドDWLPK(配列番号1)は、in vitroで最大の活性を有するようであり、毒性を誘発しなかった。
【0075】
例2
クローン病のモデルを使用して、環状ペプチドDWLPK(配列番号1)の、クローン病を処置における有効性を試験した。環状ペプチドは、クローン病のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発モデルにおいて試験し、ここでDSSはマウスに対して、飲料水中(3.5%重量:容積)で7日間与えられた。1群のマウスは、環状ペプチドとDSSで同時に処置し、一方他の群は、DSSのみで処置した。環状ペプチドは、このモデルにおける炎症を有意に減少させた(図9)。環状ペプチドで処置したマウスはまた、DSSのみで処置したマウスよりも、体重減少が少なかった(図10)。最後に、環状ペプチドは、Tsp-1を刺激し、これらのマウスにおけるマクロファージの浸潤を阻害することが示された(図11)。これらのデータは、環状Psapペプチド、特に環状DWLPK(配列番号1)が、クローン病を処置するのに有効であることを示唆する。
【0076】
例3
(i)AMDのモデルを使用して、本明細書に記載の環状Psapペプチドの、AMDの処置における有効性を試験する。病変は、マウスの網膜上に、レーザーを用いて作製する。次にマウスを、本明細書に記載の環状Psapペプチド、例えば10または40mg/kgの環状DWLPK(配列番号1)で、またはスクランブルペプチド対照で処置する。処置は、全身的(例えば、静脈内もしくは腹腔内注射)、または硝子体内注射のいずれかによる。病変の治癒速度を経時的に測定する。病変は、環状Psapペプチドで処置したマウスにおいて、対照で処置したマウスよりも早く治癒することが予想される。
【0077】
(ii)コラーゲン誘発関節炎(CIA)のげっ歯類モデル、すなわち関節リウマチに類似する自己免疫モデルを使用して、関節リウマチを処置するための、本明細書に記載の環状Psapペプチドの有効性を試験する。CIAは、近交系DBA/1雄マウスを、フロイント完全アジュバント中の異種または同種コラーゲンII(約50μg)で皮内プライミングし、2週間後にフロイント不完全アジュバント中の同量のコラーゲンIIでブーストすることにより、誘導可能である。関節炎は、プライミング投与後約3週間で発症し、プライミング後8週間以内で最大に達する。マウスは、コラーゲンII特異的抗体、コラーゲンII特異的T細胞ならびに全身性炎症(例えばIL-6、TNFなどの産生)の徴候の高いレベルを有する。関節において局所的に、圧倒的な炎症性浸潤(T細胞、マクロファージ、好中球および線維芽細胞からなる)ならびに軟骨および軟骨下骨の重篤な破壊の両方が、観察される。これらの特徴は、ヒトの関節リウマチで見られるプロセスを良好に模倣する(Myers et al., Life Sciences 61, p 1861-1878, 1997)。次にマウスを、本明細書に記載の環状Psapペプチド、例えば10または40mg/kgの環状DWLPK(配列番号1)で、またはスクランブルペプチド対照で処置する。処置は、全身的(例えば、静脈内または腹腔内注射)、または局所投与のいずれかによる。疾患のいくつかのパラメータ(例えば、臨床徴候および症状、症状の発症、進行、重症度、および寛解)を測定する。環状Psapペプチドで処置したマウスにおいて、対照で処置したマウスよりも、これらのパラメータの1または2以上が改善されること(例えば、臨床的徴候および症状の低減、発症の遅延、進行の遅延、重症度の低減、および/または寛解)が予想される。
【0078】
(iii)乾癬のモデルを使用して、本明細書に記載の環状Psapペプチドの、乾癬の処置における有効性を試験する。イミキモド(IMQ)をマウスの皮膚に適用して、乾癬様皮膚炎を誘導する(例えば、van der Fits et al. Imiquimod-induced psoriasis-like skin inflammation in mice is mediated via the IL-23/IL-17 axis. (2009) J. Immunol.;182(9):5836-45を参照)。次にマウスを、本明細書に記載の環状Psapペプチド、例えば10または40mg/kgの環状DWLPK(配列番号1)で、またはスクランブルペプチド対照で処置する。処置は、全身的(例えば、静脈内または腹腔内注射)、または局所的のいずれかによる。皮膚炎の治癒速度を経時的に測定する。IL-23、IL-17AおよびIL-17Fの上皮発現も、実験の終了時に測定する。環状Psapペプチドで処置したマウスにおいては、対照で処置したマウスよりも、皮膚炎はより早く治癒し、IL-23、IL-17Aおよび/またはIL-17Fのレベルは低下することが予想される。
【0079】
(iv)アテローム性動脈硬化症のモデルを使用して、本明細書に記載の環状Psapペプチドの、アテローム性動脈硬化症の処置における有効性を試験する。アポEまたはLDL受容体(LDLR)遺伝子が欠損したマウスを、アテローム性動脈硬化症のモデルとして使用する。マウスには、高脂肪、高コレステロール西洋型食餌または通常の固形飼料を、8週間以上、好ましくは少なくとも15週間与える。マウスを、本明細書に記載の環状Psapペプチド、例えば10または40mg/kgの環状DWLPK(配列番号1)で、またはスクランブルペプチド対照で処置する。処置は、全身的に送達される(例えば、静脈内または腹腔内注射により)。大動脈基部、腕頭動脈(腕頭)および大動脈の他の枝管、ならびに肺および頚動脈に発症した病変を、マウスにおいて少なくとも8週間後に測定する。環状Psapペプチドで処置したマウスにおいて、対照で処置したマウスよりも、病変はより早く治癒することが予想される。
【0080】
例4
要約
卵巣がんに関連した死亡のほぼ100%が、原発腫瘍からの細胞の転移性播種によりもたらされる、その後の臓器不全によって引き起こされる。しかし、腫瘍転移に関与する生理的プロセスへの理解の深まりにもかかわらず、進行した転移性卵巣がんの処置に重要な有効性を示す、臨床的に承認された薬物はない。Psapは、p53の、および転移部位に動員された骨髄由来細胞における抗腫瘍形成タンパク質トロンボスポンジン-1(Tsp-1)の刺激を介した、腫瘍転移の強力な阻害剤として同定されている。ヒトの漿液性卵巣腫瘍の~100%が、CD36、すなわちTsp-1のアポトーシス促進活性を媒介する受容体を発現することが実証されている。卵巣がんのこの形態の処置に有効であろうPsapに由来するペプチドを調査した。ペプチドの活性および安定性は、Psap由来の薬物様特性を有する、新規環状ペプチドを開発することによって調査した。環状Psapペプチドは、転移性卵巣がんのPDXモデルを大幅に退縮させることができた。
【0081】
緒言
卵巣がんは、最も致命的な婦人科の悪性腫瘍であり、女性のがん死の第4の主要な原因である。病理学的には、卵巣がんは複数のサブタイプに分類され、上皮性卵巣がん(EOC)が症例の90%を占める。EOCの進行を支配する生物学についての理解の増加にもかかわらず、ステージIVのEOCの患者の生存率は、わずか17%である。このように、進行した転移性卵巣がんを特に処置することができる、有効な治療法が必要とされている。多くの患者は、第一選択療法としての白金薬剤に応答を示すが、70%は耐性を生じる(1、2)。現在、これらの患者に対して、全体的な生存率を大きく増加させる、承認された治療法は存在しない。
【0082】
Psapに由来する小ペプチドの開発が、複数種類の腫瘍モデルにおいて腫瘍転移を強力に阻害することが、以前に報告されている(3、4)。具体的には、Psap、およびそれに由来するペプチドは、CD11b/Gr1/Lys6Chi単球において、広く作用する抗腫瘍形成タンパク質トロンボスポンジン-1(Tsp-1)を刺激することにより、腫瘍の転移を阻害する(3)。これらの単球は、前転移ニッチと呼ばれる将来の転移性病変部位に動員され、そこでコロニー形成後も持続して、腫瘍の成長を刺激する。しかしPsapペプチドの全身投与は、これらの細胞におけるTsp-1の産生を刺激し、これが、その部位を将来の転移性コロニー形成に対して不応性にする(3)。これらの結果は、腫瘍微小環境におけるTsp-1の刺激が、将来の転移事象を防ぎ得ることを実証する。多数の卵巣がん患者は、最初の診断時に、転移性疾患を呈する。したがって、転移性病変を退縮させる、または安定化させることができる治療薬が必要である。
転移性かつ白金耐性卵巣がんPDXモデルの微小環境において、Tsp-1を刺激することは、確立された病変の顕著な退縮を誘導できることが実証されている。かかる著名な効果は、漿液性卵巣がん細胞が、Tsp-1に対する受容体であるCD36を発現し、これが内皮細胞で以前に観察されたアポトーシス促進効果を媒介するという事実によって達成される(5)。
【0083】
結果
d-アミノ酸の組み込みは、in vivoでPsapペプチドの活性を高める
全身投与された場合に、ルイス肺がん転移の尾静脈モデルおよび乳がん転移のアジュバントモデルの両方を阻害することができたPsapのサポシンAドメインに由来する4-および5-アミノ酸ペプチド両方の同定は、以前に記載されている(3)。ペプチドの治療有効性は、多くの場合、それらの安定性、またはプロテアーゼによる分解に対する抵抗性により、制限される。in vivoでのペプチドの安定性を高める1つの一般的な方法は、d-アミノ酸を配列中に組み込むことであり、なぜならば、d-アミノ酸は天然に存在するタンパク質中に組み込まれておらず、プロテアーゼはそれらを基質として認識しないからである(6~10)。d-アミノ酸を異なる部分に組み込むことによる、4-アミノ酸Psapペプチドの安定性を調査した。2つのペプチドを、d-アミノ酸を組み合わせて、第1(アスパラギン酸)と第3(ロイシン)または第2(トリプトファン)と第4(プロリン)残基に組み込んで、合成した。これらのペプチドと、天然のl-アミノ酸ペプチドの活性を、in vitroで、WI-38肺繊維芽細胞におけるトロンボスポンジン-1(Tsp-1)を刺激するそれらの能力を測定することにより、試験した。ウエスタンブロット分析により、Tsp-1刺激について、in vitroで3つのペプチドの間に差がなかったことが見出された(図12A)。
【0084】
1,3-d-アミノ酸Psapペプチドおよび天然Psapペプチドの活性を、in vivoで試験した。ペプチドを、PC3M-LN4(LN4)細胞からの馴化培地(CM)で前処理したC57BL6/Jマウスに、全身的に投与した;これは以前に、マウスの肺においてTsp-1の発現を抑制することにより、転移性腫瘍の全身的特性を模倣している(3,4)。LN4 CM単独で、またはd-およびl-アミノ酸ペプチド(独立して)の2つの異なる用量(10mg/kg/日および30mg/kg/日)と組み合わせての処置の3日後に、タンパク質プールを、各処置群の収集した肺から調製した。これらのマウスの肺におけるTsp-1発現のレベルは、ウエスタンブロット分析によって評価した。1,3-d-アミノ酸ペプチドは、Tsp-1を、天然ペプチドよりも3倍刺激したことが観察された(図12B)。天然ペプチドの10mg/kgの用量は、Tsp-1を顕著に刺激しなかった(図12B)。逆に、d-アミノ酸ペプチドの10mg/kgの用量は、天然ペプチドの30mg/kgの用量と同程度にTsp-1を刺激し、d-アミノ酸ペプチドの30mg/kgの用量は、天然ペプチドの同じ用量よりもおよそ3倍強く、Tsp-1を刺激した。2つのペプチドのin vitro活性が、実質的に同一であったという観察に基づいて、in vivoでの活性の違いは、安定性の差によるものであると結論付けた。
【0085】
ヒト漿液性卵巣がん細胞は、Tsp-1媒介性の死滅に感受性である
d-アミノ酸Psapペプチドの有効性を試験するために、ペプチドについての潜在的な臨床適用を表すであろう適切な腫瘍モデルを決定した。Psap、およびそれに由来するペプチドが、転移部位に動員された骨髄由来細胞においてTsp-1を刺激することを考えると、そのアポトーシス促進活性を媒介するTsp-1の受容体であるCD36を発現した特定の種類のがんを、識別することが求められた(5)。漿液性卵巣上皮細胞およびヒト卵巣がん細胞は、CD36を発現することが報告されている(11~13)。CD36の発現のため、白金耐性卵巣がん患者の腹水に由来する、14の初代ヒト卵巣がん細胞株を調査した。患者由来の細胞の全ては、ヒト微小血管内皮細胞で発現されるレベルとほぼ同等の、CD36のレベルを発現した(図12C)。これらの細胞株のうちの3つは、組換えヒトTsp-1で最大72時間まで処置し、細胞数およびアポトーシスに対するその効果を決定した。RhTsp-1処置は、3つ全ての細胞株について、播種した細胞の元の数の50%までの、全細胞数の減少をもたらした(図12D)。さらに、FACS分析により、処置した細胞の30%~60%は、アネキシンV陽性によって明示されるように、Tsp-1処置後にアポトーシス性であることが観察された(図12E)。対照的に、シスプラチン処置の後、卵巣がん細胞のはるかに大きな割合が壊死したことが、低アネキシンVおよび高ヨウ化プロピジウム(PI)染色によって明示されるとおりに観察された(図12E)。これらの所見は、卵巣がん細胞が、Psapペプチドによる処置に良好に応答し得ることを示唆する。
【0086】
Psapペプチドは、卵巣がん転移の確立されたPDXモデルを退縮させる
PsapおよびPsapペプチドは、転移形成を阻害できることが以前に実証された(3,4)。卵巣がん患者の75%は、最初の診断時にすでに、散在する疾患を有する(E. Lengyel, Ovarian cancer development and metastasis. Am J Pathol 177, 1053-1064 (2010))。これらの患者に対し、転移の阻害は、治療上の有益性は限定的であろう。むしろこれらの患者は、既存の転移を退縮させるか、または少なくとも安定化することができる治療薬を必要とする。d-アミノ酸Psapペプチドが、確立された転移性播種のモデルにおいて治療有効性を有するかどうかを調査した。ホタルルシフェラーゼを発現する1×10のDF14細胞を、SCIDマウスの腹腔内に注射し、ヒト卵巣がんの伝播経路を模倣した。リアルタイムでのマウスにおける転移性コロニーの成長は、相対ルシフェラーゼ強度を介してモニタリングし、ルシフェラーゼシグナルの平均強度が0.5~1×10RLUの時に、ビヒクル(生理食塩水)、d-アミノ酸ペプチド(40mg/kgQD)、またはシスプラチン(4mg/kgQOD)による処置を開始した。ペプチドおよびシスプラチンの両方が、ルシフェラーゼ強度によって決定されるように、処置の最初の20日間に、腫瘍体積を退縮することができた(図13Aおよび13B)。しかしこの20日間、シスプラチンで処置したマウスの半分は、40%減少した総体重によって明示されるように、薬物の副作用で死亡した(図13C)。さらに、20日後に、生存したシスプラチン処置マウスの群における腫瘍は、シスプラチンによる継続的な処置にもかかわらず、成長し始め、残りのすべてのマウスは、10日以内に死亡した(図13A)。
【0087】
逆に、体重の損失は、ペプチド処置マウスでは観察されず(図13C)、腫瘍は、48日目にマウスのいずれにおいても検出可能なルシフェラーゼシグナルが存在しなくなるまで、縮小し続けた(図13Aおよび13Bおよび図16)。これらのマウスは、追加の35日間(合計83日間)、対照処置群が病的状態に関連する状態を示すまで、処置した。この処置期間の間、ルシフェラーゼシグナルは再上昇せず、マウスの肉眼的検査では、転移性病変は明らかにならなかった(図13Aおよび13D)。Psapペプチド処置したマウスの肝臓および脾臓を、組織学的に(H&E)検査して、任意の微小転移があったかどうかを決定した。Psapペプチド処置したマウスにおける転移性病変は、特定できなかった(図13E)。
【0088】
腹腔内転移が、肺転移と同様に、Cd11b/Gr1骨髄由来細胞を動員することを調査した(3)。DF14転移を有する対照処置マウスの腹腔から腹水を採取し、および転移の徴候を示さなかったPsapペプチドで処置したマウスの腹腔から体液を採取した。体液はこれらのマウスからFACSで選別し、Cd11b/Gr1骨髄由来細胞の集団を評価した。FACS分析により、対照処置したマウスの腹水中の71~77%の細胞が、Cd11b/Gr1であり(図13Eおよび図16)、一方ペプチドで処置したマウスからの腹水中の細胞の31.4%のみが、Cd11b/Gr1である(図13E)ことが、明らかになった。これらの知見に基づいて、Psapペプチドが、検出可能な病変が発見できなくなるまで、確立された転移を劇的に退縮可能であると、結論付けた。
【0089】
環化は、活性を高めつつPsapペプチドをさらに安定化する
卵巣がんのPDXモデルのペプチドによる処置の結果は、非常に有望であったが、ペプチドの安定性および活性は、より高めることができると仮定された。Psapに由来するペプチドは、ジスルフィド結合(3)によって安定化された2つのヘリックス間の13アミノ酸ループを含有するタンパク質の領域に位置していた。したがって、骨格(N-C)の環化を介して環化された5アミノ酸ペプチドが合成された(図14A、環状DWLPK(配列番号1))。このペプチドのin vitroでの活性を、Tsp-1を刺激する能力に基づいて試験した。環状ペプチドは、Tsp-1を、d-アミノ酸直鎖ペプチドよりも3倍刺激した(図14B)。
【0090】
環化はまた、ペプチドをほとんどの天然に存在するプロテアーゼによって認識されない立体配座に強制することにより、その安定性を高める効果を有する(9、10、14~18)。ヒト血漿中の直鎖d-アミノ酸ペプチドに対して、環状ペプチドの安定性を比較した。ヒト血漿中の両方のペプチドを、37℃で最大24時間までインキュベートし、その後、血漿/ペプチド混合物の、WI-38線維芽細胞でのTsp-1を刺激する能力を試験した。分泌されたTsp-1のレベルを、ペプチド/血漿混合物を用いた処置の後ELISAにより測定し、2つのペプチドによるTsp-1の刺激は、インキュベーションの8時間後まではほぼ同等であることが見出された(図14C)。しかし、ヒト血漿中での24時間のインキュベーションの後に、環状ペプチドは、そのTsp-1刺激活性の70%以上を保持しているが、一方で直鎖ペプチドを含む血漿は、もはやTsp-1を刺激することができなかった(図14C)。このように、環状ペプチドは、直鎖d-アミノ酸ペプチドよりもはるかに活性かつ安定であると結論付けられた。
【0091】
これらの知見に基づき、DF14モデルを用いた環状ペプチドの有効性を試験した。ペプチドの転移性病変に対する効果をさらに調査するために、マウスに、1×10細胞を注射し、ルシフェラーゼシグナルを9×10RLUに到達させた。マウスを、環状ペプチドで10日間だけ処置し、分析するのに十分な腫瘍組織が存在することを確実にした。重要なことには、わずか10日の処置の後に、ペプチド処置したマウスでの平均ルシフェラーゼシグナルは、4×10に減少した(図14D)。肝臓、脾臓および大網を、ペプチドおよび対照で処理したマウス両方で、H&E、およびTsp-1、Gr1およびTUNELについてIHCで分析した。対照処置マウスにおける転移性病変は、平均して、ペプチド処置したマウスのものよりも2.3倍大きかった(図14E)。Psapペプチドの作用機序(MOA)に整合して、ペプチド処置した腫瘍のすべては、Tsp-1(図14F)発現について陽性に染色された。また以前の観察に整合して、Tsp-1発現細胞の全てはまた、Gr1陽性であることが判明した(図14G)(3)。さらに、ペプチド処置したマウスにおける病変のすべては、かなりの割合のTUNEL陽性細胞を含んでおり、平均で40%のTUNEL陽性細胞/病変であった(図14Hおよび14I)。逆に、対照処置腫瘍は、平均してわずか1.4%のTUNEL陽性細胞/病変を含んでいた(図14Hおよび14I)。
【0092】
転移性漿液性卵巣腫瘍は、低レベルのPsapを発現するが、CD36発現は原発腫瘍よりも高い
患者由来の卵巣がん細胞によって形成された腫瘍に対するPsapペプチドの活性が、CD36を発現したことが以前に示された。ヒト卵巣がん患者におけるCD36発現の有病率、したがって潜在的なPsapに基づく治療薬が、この疾患のために如何に広く適用可能であるかを、調査した。プロサポシンの発現は、腫瘍が転移性のステージに進むにつれて減少するはずであると仮定された。そこで、転移性漿液性卵巣がんを有する139人の患者および、46人の患者からの正常卵巣組織からなる、腫瘍組織マイクロアレイ(TMA)を用いた。CD36およびPsapの発現について組織を染色し、次いで強度を、染色指数(SI)法を使用してスコア付けした(R. Catena et al., Bone marrow-derived Gr1+ cells can generate a metastasis-resistant microenvironment via induced secretion of thrombospondin-1. Cancer Discov 3, 578-589 (2013))。正常な卵巣からの組織の61%は、CD36を、2.39の平均SIで発現した(可能な最大スコアは9)(図15A~15C、15Mおよび表1)。134の原発性卵巣腫瘍の分析により、腫瘍の97%(130/134)がCD36について陽性染色され、平均SIは5.32であった(図15D~15F、15Mおよび表1)ことが明らかになった。134人の患者からの121の内臓転移を調べた。転移性病変の97%(117/121)は、CD36について陽性染色され、平均SIは6.61であった(図15G~15I、15Mおよび表1)。最後に、リンパ節転移の100%(13/13)は、CD36について陽性染色され、平均SIは6.69であった(図15J~15L、15Mおよび表1)。
【0093】
【表1】
【0094】
ヒト卵巣がん患者におけるプロサポシンの発現を、そのレベルがその作用機序に基づき腫瘍の進行とともに低下すると推測して、調査した。卵巣がんTMA試料におけるプロサポシンレベルを調査した。正常な卵巣は、比較的低いレベルのプロサポシンを発現し、平均SIは4.29であった(図15Nおよび表2)。原発性卵巣腫瘍はより高いレベルのプロサポシンを発現し、平均SIは5.17であった(図15Nおよび表2)。驚くべきことに、内臓およびリンパ節転移において、プロサポシンレベルは顕著に低下し、平均SIはそれぞれ4.14および4.07であった(図15Nおよび表2)。したがってこれらを一緒にすると、CD36の発現は原発性卵巣腫瘍において、正常卵巣と比較して増加しており、転移性病変におけるCD36発現は、原発性腫瘍と比較してさらに増加し、一方、プロサポシン発現は、腫瘍の進行とともに減少する。これらの知見は、転移性卵巣腫瘍が、プロサポシンの発現を抑制するがCD36を保持し、これを用いて、プロサポシン由来療法により卵巣がんを効果的に標的化できることを示唆する。
【表2】
【0095】
考察
プロサポシンおよびこれに由来する短い5アミノ酸ペプチドが、転移を強力に阻害できることが、以前に実証された(3、4)。プロサポシン由来の環状ペプチドの開発プロセスは、天然ペプチドよりも顕著に高い活性および安定性で描写されている。d-アミノ酸の、天然の直鎖ペプチドの第1および第3残基における組み込みは、in vivo活性を増加させることが実証された。ペプチドは、これをより薬剤様にするために、骨格N-C環化を介して5アミノ酸ペプチドを環化することによって、さらに修飾された。環状ペプチドは、d-アミノ酸の直鎖ペプチドよりもさらに高いin vivo活性を示す。両方の修飾ペプチドは、卵巣がんのPDXモデルにおける確立された転移を、より強力に退縮できることが実証された。このPDXモデルで使用される細胞は、卵巣がん患者の最も一般的な第一選択の処置である白金に対して抵抗性の患者に由来した。
【0096】
患者の腹水から直接由来するヒト卵巣がん細胞株の分析によって、全ての試験した細胞株は、CD36、すなわちTsp-1の受容体、Psapの下流標的かつ骨髄由来細胞中のペプチドを、発現することが見出された。組換えTsp-1は、CD36を発現するこれらの漿液性卵巣がん細胞において、アポトーシスを誘導することが実証された。Tsp-1の卵巣がん細胞に対するin vitro活性は、卵巣がんのPDXモデルで再現され、ここでは、環状Psapペプチドが、転移保有マウスの腹腔に動員されたCd11b/Gr1骨髄由来細胞におけるTsp-1の発現を刺激した。これらの細胞におけるTsp-1の発現の誘導は、腫瘍細胞におけるアポトーシスの顕著な誘導と、顕著な退縮をもたらした。
【0097】
これらの結果に基づき、Psapペプチドは、すべてがTsp-1の誘導によって媒介される3つの異なるメカニズムを介して、卵巣がんの進行を阻害する可能性を有すると考えられる。ここで実証された第1は、Tsp-1によってトリガーされたCD36からの下流のシグナル伝達によって媒介される、直接細胞死滅である。第2は、Tsp-1の広く確立された抗血管新生活性を介するものである(D. J. Good et al., A tumor suppressor-dependent inhibitor of angiogenesis is immunologically and functionally indistinguishable from a fragment of thrombospondin. Proc Natl Acad Sci U S A 87, 6624-6628 (1990))。第3は、Tsp-1がその別の細胞表面受容体、CD47に結合し、CD47のマクロファージ上のSIRPαへの結合により媒介される「私を食べないで」シグナルを遮断することを介したものである(P. Burger, P. Hilarius-Stokman, D. de Korte, T. K. van den Berg, R. van Bruggen, CD47 functions as a molecular switch for erythrocyte phagocytosis. Blood 119, 5512-5521 (2012);A. Saumet, M. B. Slimane, M. Lanotte, J. Lawler, V. Dubernard, Type 3 repeat/C-terminal domain of thrombospondin-1 triggers caspase-independent cell death through CD47/alphavbeta3 in promyelocytic leukemia NB4 cells. Blood 106, 658-667 (2005))。
【0098】
最後に、漿液性卵巣がんを有する134人の患者からの腫瘍組織の分析は、97%がCD36を発現していること、およびこの発現が、転移性病変で維持されるだけでなく、CD36発現のレベルが、腫瘍の進行に伴って実際に増加することを明らかにした。卵巣がん患者の最も一般的な第1選択の治療戦略は、白金ベースの化学療法である(E. Lengyel, Ovarian cancer development and metastasis. Am J Pathol 177, 1053-1064 (2010))。卵巣がん患者の70%が、この処置に抵抗性を生じる(E. Lengyel, Ovarian cancer development and metastasis. Am J Pathol 177, 1053-1064 (2010))。これらの患者に対して、効果的なFDA承認治療薬は存在せず、したがって生存率は~17%である(E. Lengyel, Ovarian cancer development and metastasis. Am J Pathol 177, 1053-1064 (2010))。ここで提示された所見は、Psapベースの治療薬が、その作用機序および、これらの患者の腫瘍細胞におけるCD36発現の広播性に基づいて、大部分の卵巣がん患者に対して重要な効果を有し得ることを示唆する。
【0099】
参考文献
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
さらに詳述することなく、当業者は、上記の説明に基づいて、本開示を最大限に利用することができると考えられる。したがって特定の態様は、単に例示として解釈され、いかなる方法においても本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用した全ての刊行物は、本明細書に参照された目的または主題について、参照により組み込まれる。
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」および「an」は、明らかに逆が示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解される。
上記の説明から、当業者は、本開示の本質的な特徴を容易に確認することができ、およびその精神および範囲から逸脱することなく、本開示に様々な変更および改変を加えて、種々の用途および条件に適合させることができる。したがって、他の態様もまた、特許請求の範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A-C】
図12D-E】
図13A
図13B
図13C-D】
図13E
図14A-B】
図14C-D】
図14E-F】
図15A-F】
図15G-L】
図15M-N】
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
2025010144000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-10-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性疾患または障害を処置するための医薬の製造のための組成物の使用であって、
ここで処置することが、トロンボスポンジン-1(Tsp-1)の発現を刺激することを含み、
ここで組成物が、配列DWLPK(配列番号1)を有する環状ペプチドを含み、ならびに
ここで炎症性疾患または障害が、関節リウマチ、加齢黄斑変性症(AMD)、クローン病、乾癬、およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される、前記使用。
【請求項2】
炎症性疾患または障害が、クローン病である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ペプチドが、血清半減期を増強するポリマーに連結されている、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、デキストラン、硫酸デキストラン、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖類、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールのコポリマーおよびその誘導体、ポリビニルエチルエーテル、ならびにα,βポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミドからなる群から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
ペプチドが、ペグ化、グリコシル化、アセチル化、アミド化、およびリン酸化からなる群から選択される1以上の修飾を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
炎症性疾患または障害を処置することにおける使用のための組成物であって、ここで処置することが、トロンボスポンジン-1(Tsp-1)の発現を刺激することを含み、
組成物が、環状ペプチドを含み、ここで環状ペプチドのアミノ酸配列が、配列DWLPK(配列番号1)を有し、ならびに
ここで炎症性疾患または障害が、関節リウマチ、加齢黄斑変性症(AMD)、クローン病、乾癬、およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される、前記組成物。
【請求項7】
炎症性疾患または障害が、クローン病である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ペプチドが、血清半減期を増強するポリマーに連結されている、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、デキストラン、硫酸デキストラン、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖類、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールのコポリマーおよびその誘導体、ポリビニルエチルエーテル、ならびにα,βポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミドからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ペプチドが、ペグ化、グリコシル化、アセチル化、アミド化、およびリン酸化からなる群から選択される1以上の修飾を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
がんを処置するための医薬の製造のための組成物の使用であって、
ここで処置することが、トロンボスポンジン-1(Tsp-1)の発現を刺激することを含み、
ここで組成物が、環状ペプチドDWLPK(配列番号1)を含む、前記使用。
【請求項12】
がんを処置することにおける使用のための組成物であって、ここで処置することが、トロンボスポンジン-1(Tsp-1)の発現を刺激することを含み、
組成物が、環状ペプチドを含み、ここで組成物が、環状ペプチドDWLPK(配列番号1)を含む、前記組成物。
【請求項13】
トロンボスポンジン-1(Tsp-1)の発現を刺激するための医薬の製造のための組成物の使用であって、ここで組成物が、環状ペプチドDWLPK(配列番号1)を含む、前記使用。
【請求項14】
DWLPK(配列番号1)からなる群から選択される、環状ペプチド。
【請求項15】
ペプチドが、ペグ化、グリコシル化、アセチル化、アミド化、およびリン酸化からなる群から選択される1以上の修飾を含む、請求項14に記載のペプチド。
【請求項16】
ペプチドが、血清半減期を増強するポリマーに連結されている、請求項14に記載のペプチド。
【請求項17】
ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、デキストラン、硫酸デキストラン、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖類、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールのコポリマーおよびその誘導体、ポリビニルエチルエーテル、ならびにα,βポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミドからなる群から選択される、請求項16に記載のペプチド。
【請求項18】
ペプチドが、血清半減期を増強するポリマーに連結されている、請求項11または13に記載の使用。
【請求項19】
ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、デキストラン、硫酸デキストラン、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖類、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールのコポリマーおよびその誘導体、ポリビニルエチルエーテル、ならびにα,βポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミドからなる群から選択される、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
ペプチドが、血清半減期を増強するポリマーに連結されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項21】
ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、デキストラン、硫酸デキストラン、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖類、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールのコポリマーおよびその誘導体、ポリビニルエチルエーテル、ならびにα,βポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミドからなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
ペプチドが、ペグ化、グリコシル化、アセチル化、アミド化、およびリン酸化からなる群から選択される1以上の修飾を含む、請求項11または13に記載の使用。
【請求項23】
ペプチドが、ペグ化、グリコシル化、アセチル化、アミド化、およびリン酸化からなる群から選択される1以上の修飾を含む、請求項12に記載の組成物。
【外国語明細書】