(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101466
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】対価支払いシステム、対価支払い通知装置および対価支払い方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20250630BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20250630BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218331
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山野 博之
(57)【要約】
【課題】回収した糞尿に対する対価の支払いを円滑に行うとともに、作業者におけるモチベーションの増進を促す。
【解決手段】対価支払いシステムSは、畜舎において重量計102により糞尿の重量Waxを測定し、測定時の時刻Tax1に関する第1時刻データと、糞尿を重量計102から降ろした際の時刻Tax2に関する第2時刻データと、重量計102により測定した重量Waxに関する第1重量データと、を取得する。重量計102から糞尿を降ろした後、糞尿の重量を回収用の車両Vに備わる重量計103により車両上で測定した際の時刻Tbに関する第3時刻データと、重量計103により測定した重量Wbに関する第2重量データと、を取得する。これらのデータが示す時刻Tax1、Tax2、Tbおよび重量Wax、Wbをもとに、畜舎の作業者に対する対価の支払いに関する通知を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜舎から回収した家畜の糞尿に対する対価の支払いを行う対価支払いシステムであって、
前記畜舎において糞尿の重量を第1重量計により測定した際の時刻に関する第1時刻データと、前記糞尿を前記第1重量計から降ろした際の時刻に関する第2時刻データと、前記第1重量計により測定した前記糞尿の重量に関する第1重量データと、を取得する第1データ取得手段と、
前記畜舎において前記糞尿を前記第1重量計から降ろした後、前記糞尿の重量を回収用の車両に備わる第2重量計により前記車両上で測定した際の時刻に関する第3時刻データと、前記第2重量計により測定した前記糞尿の重量に関する第2重量データと、を取得する第2データ取得手段と、
前記第1データ取得手段により取得した前記第1時刻データ、前記第2時刻データおよび前記第1重量データと、前記第2データ取得手段により取得した前記第3時刻データおよび前記第2重量データと、をもとに、前記畜舎の作業者に対する対価の支払いに関する通知を行う支払い通知手段と、を備える、対価支払いシステム。
【請求項2】
前記作業者が保持する通信手段を含み、
前記支払い通知手段は、前記対価の支払いに関する通知を、前記通信手段を介して行う、請求項1に記載の対価支払いシステム。
【請求項3】
前記作業者が保持する通信端末と、
前記通信端末に対して通信可能に構成されたサーバと、
前記第1重量計による重量の測定後、前記第1時刻データ、前記第2時刻データおよび前記第1重量データを含む第1重量計データを前記サーバへ送信する第1データ送信手段と、
前記第2重量計による重量の測定後、前記第3時刻データおよび前記第2重量データを含む第2重量計データを前記サーバへ送信する第2データ送信手段と、をさらに備え、
前記サーバは、前記第1データ取得手段、前記第2データ取得手段および前記支払い通知手段を備え、前記対価の支払いに関する通知を、前記支払い通知手段を介して前記通信端末に送信する、請求項1に記載の対価支払いシステム。
【請求項4】
前記サーバは、前記第1データ送信手段からの前記第1重量計データの受信後、前記第2データ送信手段に対して前記第2重量計データの送信を指示し、
前記第2データ送信手段は、前記指示後、所定時間内に前記車両上の糞尿の重量に増加があった場合に、前記第2重量計データを前記サーバに送信する、請求項3に記載の対価支払いシステム。
【請求項5】
前記第1時刻データが示す時刻から前記第3時刻データが示す時刻までの時間が第1の所定時間以内であることを第1判定条件とし、前記第2時刻データが示す時刻から前記第3時刻データが示す時刻までの時間が第2の所定時間以内であることを第2判定条件とした場合に、前記第1判定条件および前記第2判定条件が満たされているか否かを夫々判定する時間条件判定手段をさらに有し、
前記支払い通知手段は、前記第1および第2判定条件がいずれも満たされた場合と、前記第1判定条件か前記第2判定条件かの少なくとも一方が満たされていない場合とで、前記対価の支払いに関する通知の内容を異ならせる、請求項1に記載の対価支払いシステム。
【請求項6】
前記第1の所定時間は、前記第2の所定時間よりも長い、請求項5に記載の対価支払いシステム。
【請求項7】
前記第2重量データが示す重量と前記第1重量データが示す重量との差分である第1差分重量を算出する差分重量算出手段と、
前記差分重量算出手段により算出した前記第1差分重量が第1の所定重量以下であるか否かを判定する重量条件判定手段と、をさらに備え、
前記支払い通知手段は、前記第1差分重量が前記第1の所定重量以下である場合とそれ以外の場合とで、前記対価の支払いに関する通知の内容を異ならせる、請求項1に記載の対価支払いシステム。
【請求項8】
前記差分重量算出手段により算出した前記第1差分重量が前記第1の所定重量よりも大きい場合に、前記第1時刻データが示す時刻から、前記第3時刻データが示す時刻後、所定時間が経過するまでの間に、前記第2重量計により測定した前記糞尿の重量に関する複数の前記第2重量データを抽出する第2重量データ抽出手段と、
前記第2重量データ抽出手段により抽出した前記複数の第2重量データが示す重量のうち、前記第1重量データが示す重量に最も近い重量を選択する第2重量データ選択手段と、
前記支払い通知手段は、前記第2重量データ選択手段により選択した重量と前記第1重量データが示す重量との差分である第2差分重量が、第2の所定重量以下である場合に、前記対価の支払いに関する通知を行う、請求項7に記載の対価支払いシステム。
【請求項9】
前記第2の所定重量は、前記第1の所定重量よりも大きい、請求項8に記載の対価支払いシステム。
【請求項10】
前記支払い通知手段は、前記対価の支払いに関する通知の内容として、対価の支払い方法の選択肢を異ならせる、請求項5から9のいずれか一項に記載の対価支払いシステム。
【請求項11】
畜舎から回収した家畜の糞尿に対する対価の支払いに関する通知を行う対価支払い通知装置であって、
畜舎の作業者に対し、前記畜舎の第1重量計により糞尿の重量を測定した際の時刻に関する第1時刻データおよび前記糞尿の重量に関する第1重量データと、前記糞尿を前記第1重量計から降ろした際の時刻に関する第2時刻データと、の提供を促すとともに、前記畜舎から前記第1時刻データ、前記第2時刻データおよび前記第1重量データの提供を受ける第1データ受取手段と、
前記畜舎の作業者に対し、前記糞尿を前記第1重量計から降ろした後、前記糞尿の重量を回収用の車両に備わる第2重量計により前記車両上で測定した際の時刻に関する第3時刻データおよび前記糞尿の重量に関する第2重量データの提供を促すとともに、前記車両から前記第3時刻データおよび前記第2重量データの提供を受ける第2データ受取手段と、
前記第1データ受取手段および前記第2データ受取手段のそれぞれにより取得したデータを、時刻データまたは重量データごとに照合して、前記作業者が前記糞尿の回収に関して行った作業を評価する評価手段と、
前記評価手段による評価の結果をもとに、前記作業者に対する対価の支払いに関する通知を行う支払い通知手段と、を備える、対価支払い通知装置。
【請求項12】
畜舎から回収した家畜の糞尿に対する対価の支払いを行う対価支払い方法であって、
前記畜舎において糞尿の重量を第1重量計により測定し、
前記第1重量計により測定した前記糞尿の重量に関する第1重量データと、前記第1重量計による測定時の時刻に関する第1時刻データと、前記第1重量計による重量の測定後、前記糞尿を前記第1重量計から降ろした際の時刻に関する第2時刻データと、を前記畜舎外に配置されたデータ処理ユニットに送信し、
前記畜舎において前記糞尿を前記第1重量計から降ろした後、前記糞尿を回収用の車両に備わる第2重量計に載せて、前記糞尿の重量を前記車両上で測定し、
前記第2重量計により測定した前記糞尿の重量に関する第2重量データと、前記第2重量計による測定時の時刻に関する第3時刻データと、を前記データ処理ユニットに送信して、前記データ処理ユニットに対し、前記畜舎の作業者に対する対価の支払いに関する通知の発行を促し、
前記データ処理ユニットにより発行された前記対価の支払いに関する通知を、前記作業者が保持する通信端末を介して受領し、
前記通知は、前記第1時刻データ、前記第2時刻データ、前記第3時刻データ、前記第1重量データおよび前記第2重量データに応じて、前記対価の支払いに関して異なる条件を提示する、対価支払い方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対価支払いシステム、対価支払い通知装置および対価支払い方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜の糞尿は、再生可能な有機性資源である。畜舎から回収した糞尿は、バイオガスプラントにおいてバイオ燃料に変換し、燃料として使用することが可能である。この際、糞尿を提供した畜舎に対し、回収糞尿の量に応じた対価を支払う必要が生じる。従来の対価支払いシステムでは、回収糞尿の重量を記載する紙媒体が用いられる。具体的には、糞尿を回収するそれぞれの畜舎において、畜舎の作業者は、糞尿を各自の重量計により測定し、糞尿の重量を紙媒体に記載する。そして、重量を記載した紙媒体をバイオガスプラントに提出し、回収糞尿の量に応じた対価の支払いを受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のシステムでは、対価の算定および支払いが、紙媒体がバイオガスプラントに提出された後となる。よって、畜舎の作業者は、自身の畜舎における回収作業後、回収糞尿が他の畜舎における回収を経てバイオガスプラントに到達するまで、支払いまたはその通知を待つ必要がある。さらに、回収糞尿がバイオガスプラントに到達した後、個々の畜舎における糞尿の回収量の確認に時間を要する場合は、対価の支払いがさらに先に延びることも懸念される。そして、このような支払いの遅延により、糞尿の回収に対する作業者のモチベーションに低下を来たすことが懸念される。
【0005】
このような実情に鑑み、本発明は、対価の支払いを適時に行うとともに、作業者におけるモチベーションの増進を促し、作業効率の向上を図ることができる対価支払いシステム、対価支払い通知装置および対価支払い方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明の一形態に係る対価支払いシステムは、畜舎から回収した家畜の糞尿に対する対価の支払いを行う対価支払いシステムであって、前記畜舎において糞尿の重量を第1重量計により測定した際の時刻に関する第1時刻データと、前記糞尿を前記第1重量計から降ろした際の時刻に関する第2時刻データと、前記第1重量計により測定した前記糞尿の重量に関する第1重量データと、を取得する第1データ取得手段と、前記畜舎において前記糞尿を前記第1重量計から降ろした後、前記糞尿の重量を回収用の車両に備わる第2重量計により前記車両上で測定した際の時刻に関する第3時刻データと、前記第2重量計により測定した前記糞尿の重量に関する第2重量データと、を取得する第2データ取得手段と、前記第1データ取得手段により取得した前記第1時刻データ、前記第2時刻データおよび前記第1重量データと、前記第2データ取得手段により取得した前記第3時刻データおよび前記第2重量データと、をもとに、前記畜舎の作業者に対する対価の支払いに関する通知を行う支払い通知手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一形態によれば、畜舎における回収作業の終了後、適時に作業を評価し、対価の支払いに関する通知を行うことが可能となる。これにより、作業者におけるモチベーションの増進を促すとともに、回収作業の効率化を通じて、糞尿の回収量の確保および増大、さらに、回収時間の短縮を図ることが可能となる。作業が適切ではなかったり、作業自体が行われていなかったりした場合は、これを把握して、作業の適切な遂行を促すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る対価支払いシステムの全体的な構成を示す概略図である。
【
図2】同上実施形態に係る対価支払いシステムの動作説明図である。
【
図3】同上対価支払いシステムにおいて、畜舎に備わる重量計(据付重量計)が行う動作を示すフローチャートである。
【
図4】同上対価支払いシステムにおいて、糞尿回収用の車両に備わる重量計(車上重量計)が行う動作を示すフローチャートである。
【
図5】同上対価支払いシステムにおいて、バイオガスプラントに備わるサーバが行う動作を示すフローチャートである。
【
図6】同上対価支払いシステムにおいて、サーバが行う評価判定の内容を示すフローチャートである。
【
図7】同上対価支払いシステムにおいて、畜舎の作業者が保持する携帯端末が行う動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る対価支払いシステムSの全体的な構成を示す概略図である。
【0011】
本実施形態に係る対価支払いシステムSは、畜舎から家畜の糞尿をバイオガス施設またはバイオガスプラントPに回収し、回収した糞尿をバイオガスプラントPにおいてバイオガスに変換し、利用する一連の工程において、畜舎またはその作業者に対し、回収した糞尿に応じた対価の支払いを行うシステムである。畜舎は、例えば、牛舎であり、家畜の糞尿は、バイオ資源の一種であり、例えば、牛糞である。この意味で、対価支払いシステムSは、バイオ資源回収システムに組込可能であるとともに、バイオ資源回収システムの一部を構成可能である。
【0012】
本実施形態では、バイオガスプラントPが糞尿の提供を契約した複数の畜舎を、回収用の車両(以下「回収車両」という)Vが巡回する。回収車両Vは、例えば、トラックであり、回収した糞尿を積込可能な荷台を備える。
図1は、回収車両Vが巡回する複数の畜舎のうち、1つにおける作業を模式的に示す。バイオガスプラントPにおいて、畜舎から回収した糞尿を発酵槽に投入する。そして、メタン発酵により発生したバイオガスを消化液から分離し、バイオガスと消化液とを個別に取得する。バイオガスは、例えば、圧縮天然ガス(CNG)として車両の燃料に使用可能であり、消化液は、例えば、液体分を抽出して、有機肥料(液肥)として使用可能である。
【0013】
個々の畜舎では、糞尿は、重量計によりその重量が測定され、確認された後、回収車両Vに積み替えられ、回収される。測定された糞尿の重量は、重量を測定した際の時刻とともに、バイオガスプラントPに報告される。回収車両Vは、1つの畜舎における作業を終了した後、他の契約畜舎を巡回し、糞尿を逐次回収する。その後、回収車両Vは、バイオガスプラントPに到達し、回収した糞尿をバイオガスプラントPに引き渡す。回収車両Vは、バイオガスプラントPが所有する車両であってもよいし、バイオガスプラントPが糞尿の回収を依頼した搬送業者が所有する車両であってもよい。
【0014】
個々の畜舎における糞尿の回収作業をより詳細に説明する。
【0015】
畜舎において、糞尿は、回収用の容器101に収められ、畜舎に据え付けられた重量計(以下「据置重量計」という)102により、その重量が測定される。据置重量計102は、測定対象物を測定台に載せて重量を測定する載置式であってもよいし、測定対象物をフックにより吊り下げて重量を測定する吊下式であってもよいし、その他、適宜の形式であってもよい。容器101は、例えば、バケツである。
【0016】
重量を測定した後、糞尿は、据置重量計102から降ろされ、その後、容器101から回収車両Vの荷台(具体的には、荷台に設けられた回収容器)に積み替えられる。本実施形態において、糞尿(つまり、糞尿を収めた容器101)を据付重量計102から降ろす作業、糞尿を容器101から回収車両Vの荷台に積み替える作業は、畜舎の作業者による。糞尿を据付重量計102から降ろす作業と、糞尿を回収車両Vの荷台に積み替える作業と、を分担し、前者の作業を畜舎の作業者が行い、後者の作業を回収車両Vの運転手、搬送業者の作業者またはバイオガスプラントPの担当者が行うようにしてもよい。ここで、糞尿を、据置重量計102による測定を経て、容器101から回収車両Vの荷台に積み替える一連の行為を、1回の「回収」と規定する。
【0017】
回収車両Vは、据置重量計102とは異なる重量計(以下「車上重量計」という)103が設けられており、車上重量計103により、回収車両Vに積み込まれている糞尿の重量、具体的には、回収車両VがバイオガスプラントPを出発した後、今回の回収までにそれぞれの畜舎において容器101から回収車両Vの荷台に積み替えられた糞尿の総重量が測定される。よって、車上重量計103により測定される重量の今回値と前回値との差分により、今回の回収において容器101から積み替えられた糞尿の重量を把握することが可能である。畜舎において準備された全ての容器101からの糞尿の回収を終了した後、回収車両Vは、この畜舎を離れ、次の畜舎へ向けて移動する。
【0018】
ここで、畜舎において、据付重量計102により測定された糞尿の重量(以下「車外測定重量」という)Waxと、車上重量計103により測定された糞尿の重量(以下「回収重量」という)Wbとは、それぞれの重量Wax、Wbが測定された際の時刻Tax1、Tbと関連付けてデータ化され、時刻Tax1、Tbに関するデータとともに、畜舎の外部、具体的には、バイオガスプラントPに備わるサーバ104に送信される。そのために、本実施形態では、据付重量計102および車上重量計103のそれぞれに、測定部に加えて送信器121、131が付帯して設けられている。送信器121、131とサーバ104とは、インターネットを介して通信可能であり、送信器121、131により畜舎から発信されたデータは、インターネットを通じてサーバ104に送信される。他の畜舎においても同様に、重量計102、103に測定部に加えて送信器121、131を付設し、送信器121、131とサーバ104とを、インターネットを介して通信可能に構成することが可能である。これに加え、糞尿を据付重量計102から降ろした際、換言すれば、据付重量計102による重量Waxの測定を終了した際の時刻Tax2がデータ化され、時刻Tax1に関するデータとともに、送信器121によりサーバ104に送信される。本実施形態において、据付重量計102および車上重量計103は、タイマ機能を有する計時部122、132を夫々備え、据付重量計102は、計時部122により時刻Tax1、Tax2を測定し、車上重量計103は、計時部132により時刻Tbを測定する。据付重量計102は、本実施形態に係る「第1重量計」を構成し、車上重量計103は、本実施形態に係る「第2重量計」を構成する。
【0019】
このように、据付重量計102に付帯する送信器121を介してサーバ104に送信されるデータ(「第1重量計データ」に相当する)Daは、複数の個別データを内包するデータパッケージであり、個別データとして、糞尿の重量Waxを据付重量計102により測定した際の時刻(以下「車外測定時刻」という)Tax1に関するデータ(「第1時刻データ」に相当する)、糞尿を据付重量計102から降ろした際の時刻(以下「積替時刻」という)Tax2に関するデータ(「第2時刻データ」に相当する)および据付重量計102により測定した糞尿の重量、つまり、車外測定重量Waxに関するデータ(「第1重量データ」に相当する)を含む。車外測定時刻Tax1、積替時刻Tax2および車外測定重量Waxのそれぞれを示すデータは、データDaにおいて互いに関連付けられている。送信器121は、これらの個別データTax1、Tax2、Waxを据付重量計102から取得するとともに、サーバ104との通信状態の確立後、サーバ104に送信する。
【0020】
同様に、車上重量計103に付帯する送信器131を介してサーバ104に送信されるデータ(「第2重量計データ」に相当する)Dbも、複数の個別データを内包するデータパッケージである。データDbは、個別データとして、糞尿の重量Wbを車上重量計103により測定した際の時刻(以下「回収時刻」という)Tbに関するデータ(「第3時刻データ」に相当する)および車上重量計103により測定した糞尿の重量、つまり、回収重量Wbに関するデータ(「第2重量データ」に相当する)を含む。回収時刻Tbおよび回収重量Wbのそれぞれを示すデータは、データDbにおいて互いに関連付けられている。送信器131は、これらの個別データTb、Wbを車外重量計103から取得するとともに、サーバ104との通信状態の確立後、サーバ104に送信する。
【0021】
サーバ104は、受信部を備え、複数の畜舎のそれぞれから、具体的には、複数の畜舎のそれぞれにおいて送信器121、131から送信されたデータ、つまり、データパッケージDa、Dbを、受信部により受信する。そして、サーバ104は、データパッケージDaから、時刻および重量に関する個別データTax1、Tax2、Waxを取得するとともに、データパッケージDbから、時刻および重量に関する個別データTb、Wbを取得する。これにより、サーバ104は、車外測定時刻Tax1、積替時刻Tax2、回収時刻Tb、車外測定重量Waxおよび回収重量Wbのそれぞれを把握可能となる。
【0022】
当然ながら、積替時刻Tax2は、車外測定時刻Tax1よりも後の時刻であり、回収時刻Tbは、積替時刻Tax2よりも後の時刻である。これに対し、車外測定重量Waxと回収重量Wbとは、互いに一致する場合もあるし、相違する場合もある。回収重量Wbが車外測定重量Waxよりも減少している場合は、糞尿を据付重量計102から降ろし、回収車両Vへ積み替える際に、糞尿が容器101からこぼれたり、周囲に飛び散ったりしたことが想定される。他方で、回収重量Wbが車外測定重量Waxよりも増大している場合は、糞尿を据付重量計102から降ろしてから、回収車両Vへ積み替えるまでの間に、容器101に水が注入されるなど、糞尿のかさ増しがあったことが想定される。糞尿のかさ増しは、不正な行為であり、回収作業の評価を行ううえで好ましいことではない。
【0023】
サーバ104は、演算部および送信部をさらに備え、取得した車外測定時刻Tax1、積替時刻Tax2、回収時刻Tb、車外測定重量Waxおよび回収重量Wbをもとに、データDa、Dbの送信元である畜舎において、糞尿の回収作業が適正に行われたか否かを、演算部により判定する。そして、サーバ104は、判定の結果に応じて、回収した糞尿の重量および回収した糞尿に対する対価の支払いに関する通知(以下「対価支払い通知」という)Nxを、送信部によりその畜舎の作業者に送信する。本実施形態において、サーバ104から作業者への通知Nxは、次に述べる作業者の携帯端末105に対して行う。
【0024】
携帯端末105は、畜舎の作業者が保持または保有する通信端末機器である。携帯端末105は、対価支払い通知Nxに関してサーバ104との通信状態が確立すると、サーバ104から対価支払い通知Nxを受信する。そして、対価支払い通知Nxの内容、本実施形態では、回収した糞尿の重量、対価の額およびその支払い条件を、備え付けのディスプレイに表示する。作業者は、ディスプレイ上で行うボタン操作等により、対価支払い通知Nxの受領確認を行うとともに、対価の支払い条件を選択する。作業者による受領確認および支払い条件の選択は、携帯端末105からサーバ104へ送信される。その後、作業者からの受領確認および支払い条件の選択がサーバ104により受信され、バイオガスプラントPは、作業者に対する対価の支払いへ手続きを移行する。携帯端末105として、スマートフォン、タブレットコンピュータおよびその他の携行端末機器を採用可能である。携帯端末105に代えて、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータおよびその他の据置型の通信端末機器を採用することも可能である。
【0025】
このように、本実施形態では、「第1データ取得手段」、「第2データ取得手段」および「支払い通知手段」がサーバ104に備わる。具体的には、サーバ104に備わる受信部が「第1データ取得手段」および「第2データ取得手段」を構成し、演算部および送信部が「支払い通知手段」を構成する。さらに、据置重量計102に付帯する送信器121が「第1データ送信手段」を構成し、車上重量計103に付帯する送信器131が「第2データ送信手段」を構成する。そして、後に説明するが、サーバ104は、「時間条件判定手段」、「差分重量算出手段」、「重量条件判定手段」、「第2重量データ抽出手段」、「第2重量データ選択手段」および「評価手段」をさらに構成する。
【0026】
図2は、対価支払いシステムSの動作説明図である。以下に、
図2に示す動作説明図を適宜に参照しながら、
図3から
図7に示すフローチャートにより、対価支払いシステムSの動作について説明する。
【0027】
図3は、対価支払いシステムSにおいて、畜舎に備わる据付重量計102が行う動作を示すフローチャートである。
【0028】
S101では、据付重量計102の起動スイッチがオンされたか否かを判定する。起動スイッチがオンされた場合は、S102へ進み、オンされていない場合は、起動スイッチがオンされるまで、その後の処理を待機する。据付重量計102は、起動スイッチがオンされた場合に、重量の測定値を初期値にリセットして、測定の実行を待つとともに、送信器121に対し、サーバ104との通信状態の確立を指示する。据付重量計102の測定初期値は、0(ゼロ)であってもよいし、容器101の重量を加味した値であってもよい。
【0029】
S102では、糞尿が収められた容器101が据付重量計102に載せられ、糞尿の重量、つまり、車外測定重量Waxの測定が終了したか否かを判定する。車外測定重量Waxの測定は、据付重量計102の測定値が安定したことをもって終了したと判定可能である。車上測定重量Waxの測定が終了した場合は、S103へ進み、終了していない場合は、測定値が安定するまでその後の処理を待機し、測定を継続する。
【0030】
S103では、据付重量計102により車外測定重量Waxを測定した時刻、つまり、車外測定時刻Tax1を取得する(時刻t1)。
【0031】
S104では、据付重量計102により測定した糞尿の重量、つまり、車外測定重量Waxを取得する(時刻t1)。
【0032】
S105では、据付重量計102による車外測定重量Waxの測定を終了し、糞尿、換言すれば、糞尿を収めた容器101が据付重量計102から降ろされたか否かを判定する。糞尿が据付重量計102から降ろされたか否かは、据付重量計102の測定値が初期値に復帰したことをもって判定可能である。糞尿が据付重量計102から降ろされた場合は、S106へ進み、降ろされていない場合は、糞尿が据付重量計102から降ろされるまで、その後の処理を待機する。
【0033】
S106では、糞尿を収めた容器101が据付重量計102から降ろされた時刻を、積替時刻Tax2として取得する(時刻t2)。先に述べたように、積替時刻Tax2は、据付重量計102による車外測定重量Waxの測定が実質的に終了した時刻を指標する。このような観点から、積替時刻Tax2は、据付重量計102の測定値が安定してから、容器101が据付重量計102から降ろされるまでの間における適宜の時刻により代替可能である。
【0034】
S107では、送信器121により、車外測定時刻Tax1、積替時刻Tax2および車外測定重量Waxを含むデータパッケージDaをサーバ104へ送信する(時刻t3)。
【0035】
図4は、対価支払いシステムSにおいて、糞尿回収用の車両Vに備わる車上重量計103が行う動作を示すフローチャートである。
【0036】
S201では、車上重量計103の起動スイッチがオンされたか否かを判定する。起動スイッチがオンされた場合は、S202へ進み、オンされていない場合は、起動スイッチがオンされるまで、その後の処理を待機する。車上重量計103は、起動スイッチがオフされた後も直近の測定値を維持する。車上重量計103は、起動スイッチがオンされた場合に、送信器131に対し、サーバ104との通信状態の確立を指示する。
【0037】
S202では、容器101に収められていた糞尿が回収車両Vの荷台に積み替えられ、車上重量計103による糞尿の重量、つまり、回収重量Wbの測定が終了したか否かを判定する。回収重量Wbの測定は、車上重量計103の測定値が安定したことをもって終了したと判定可能である。回収重量Wbの測定が終了した場合は、S203へ進み、終了していない場合は、測定値が安定するまでその後の処理を待機し、測定を継続する。
【0038】
S203では、車上重量計103により回収重量Wbを測定した時刻、つまり、回収時刻Tbを取得する(時刻t6)。
【0039】
S204では、車上重量計103により測定した糞尿の重量、つまり、回収重量Wbを取得する(時刻t6)。
【0040】
S205では、サーバ104からデータパッケージDbの送信が指示された否かを判定する。データパッケージDbの送信が指示された場合は、S206へ進み、指示されていない場合は、データパッケージDbの送信が指示されるまで、その後の処理を待機する。
【0041】
S206では、送信器131により、回収時刻Tbおよび回収重量Wbを含むデータパッケージDbをサーバ104へ送信する(時刻t7)。
【0042】
図5は、対価支払いシステムSにおいて、バイオガスプラントPに備わるサーバ104が行う動作を示すフローチャートである。
【0043】
S301では、据付重量計102の付帯送信器121から、データパッケージDaを受信したか否かを判定する。データパッケージDaを受信した場合は、S302へ進み(時刻t4)、受信していない場合は、データパッケージDaを受信するまで、その後の処理を待機する。
【0044】
S302では、車上重量計103の付帯送信器131に対し、データパッケージDbの送信を指示する(時刻t5)。
【0045】
S303では、送信器131から、データパッケージDbを受信したか否かを判定する。データパッケージDbを受信した場合は、S306へ進み(時刻t8)、受信していない場合は、S304へ進む。
【0046】
S304では、送信器131に対してデータパッケージDbの送信を指示した後、所定時間PRD1が経過したか否かを判定する。所定時間PRD1が経過した場合は、S305へ進み、経過していない場合は、S303へ戻り、データパッケージDbの受信を待つ。ここで、所定時間PRD1は、データパッケージDbの送信、換言すれば、糞尿を据付重量計102から降ろした後、車上重量計103による回収重量Wbの測定があり得る時間として、充分な長さをもって設定される。本実施形態において、所定時間PRD1は、後に述べる第1の所定時間δTth1よりも長く、例えば、回収車両Vが巡回を終え、バイオガスプラントPに到着するまでの時間を想定して、数時間程度の長さをもって設定される。所定時間PRD1の始点は、送信器131に対してデータパッケージDbの送信を指示した時点(時刻t5)に限らず、送信器131からデータパッケージDaを受信した時点(時刻t4)であってもよいし、据付重量計102による車外測定重量Waxの測定を終了した時点(例えば、糞尿を据付重量計102から降ろした時点(時刻t2))であってもよい。
【0047】
S305では、畜舎の作業者に対し、糞尿の未回収を通知する。換言すれば、送信器131に対するデータパッケージDbの送信指示後、所定時間PRD1を経過してもなおデータパッケージDbを受信していない場合は、容器101から回収車両Vの荷台への糞尿の積み替えがなされておらず、糞尿が回収されていないとして、回収作業の未完了を通知する。
【0048】
S306では、畜舎において作業者が行った回収作業を評価する(時刻t9)。回収作業の評価は、
図6のフローチャートに示す手順による。
【0049】
図6は、対価支払いシステムSにおいて、サーバ104が行う評価判定の内容を示すフローチャートである。
【0050】
S401では、据付重量計102により糞尿の重量Waxを測定してから、容器101に収められた糞尿を回収車両Vの荷台に積み替えるまでの時間(以下「第1作業時間」という)、本実施形態では、車外測定時刻Tax1から回収時刻Tbまでの時間δT1を算出し、第1作業時間δT1が第1の所定時間δTth1以内であるか否かを判定する。第1の所定時間δTth1は、一回収当たりの回収作業全体に要する時間として、比較的長い時間に設定される。第1作業時間δT1が第1の所定時間δTth1以内である場合は、S402へ進み、第1の所定時間δTth1よりも長い場合は、S403へ進む。
【0051】
S402では、据付重量計102による車外測定重量Waxの測定を終了してから、容器101に収められた糞尿を回収車両Vの荷台に積み替えるまでの時間(以下「第2作業時間」という)、本実施形態では、積替時刻Tax2から回収時刻Tbまでの時間δT2を算出し、第2作業時間δT2が第2の所定時間δTth2以内であるか否かを判定する。第2の所定時間δTth2は、容器101から回収車両Vの荷台への糞尿の積み替えに通常要する時間として、第1の所定時間δTth1よりも短い時間に設定される(δTth2<δth1)。第2作業時間δT2が第2の所定時間δTth2以内である場合は、S404へ進み、第2の所定時間δTth2よりも長い場合は、S403へ進む。
【0052】
S401およびS402の処理により、本実施形態に係る「時間条件判定手段」が実現される。
【0053】
S403では、送信器131に対してデータパッケージDbの送信を指示した後、所定時間PRD2が経過するまでの間に、データパッケージDaに対応するデータパッケージ(以下「対応データパッケージ」という)Db’を受信したか否かを判定する。所定時間PRD2は、糞尿を据付重量計102から降ろしてから、回収車両Vの荷台に積み替えるまでの作業に生じる可能性のある遅れを考慮した時間として、第2の所定時間δTth2よりも長い時間に設定され、本実施形態では、先に述べた所定時間PRD1よりも短い時間に設定される。対応データパッケージDb’を受信した場合は、対応データパッケージDb’の個別データが示す時刻および重量を回収時刻Tb、回収重量Wbに設定して、S404へ進む一方、対応データパッケージDb’を受信していない場合は、
図5のフローチャートに示すS305へ進み、畜舎の作業者に対し、糞尿の未回収を通知する。前述同様に、所定時間PRD2の始点は、送信器131に対してデータパッケージDbの送信を指示した時点に限らず、送信器131からデータパッケージDaを受信した時点であってもよいし、据付重量計102による車外測定重量Waxの測定を終了した時点(例えば、糞尿を据付重量計102から降ろした時点)であってもよい。
【0054】
S404では、車上重量計103により測定した糞尿の重量(回収重量)Wbと据付重量計102により測定した糞尿の重量(車外測定重量)Waxとの差分(以下「正規差分重量」という)δW1を算出し、正規差分重量δW1が第1の所定重量δWth1以下であるか否かを判定する。第1の所定重量δWth1は、容器101から回収車両Vの荷台への積み替えに際して糞尿が容器101からこぼれたり、周囲に飛び散ったりすることにより通常生じる可能性のある重量として、比較的小さな重量に設定される。正規差分重量δW1が第1の所定重量δWth1以下である場合は、S405へ進み、第1の所定重量δWth1を超える場合は、S407へ進む。正規差分重量δW1は、本実施形態に係る「第1差分重量」に相当する。
【0055】
S404の処理により、本実施形態に係る「差分重量算出手段」および「重量条件判定手段」が実現される。
【0056】
S405では、車上重量計103により測定した回収重量Wbを、畜舎において回収した糞尿の重量Wbxに設定し、畜舎の作業者に通知する(Wbx=Wb)。回収の回数が複数に亘る場合は、各回の回収重量Wbの合計を、畜舎における回収重量Wbxに設定する。
【0057】
S406では、畜舎の作業者に対し、回収した糞尿に対する対価の支払いに関する通知(以下「優良支払い通知」という)Nx1を送信する(時刻t10)。優良支払い通知Nx1は、後に述べる通知Nx2とは、対価の支払いに関して異なる条件を提示する。具体的には、優良支払い通知Nx1は、対価の支払いに関して複数の方法からの選択を許容する。例えば、優良支払い通知Nx1を受けた作業者は、現金による支給、口座への振込、電子通貨または電子決済ポイントでの精算、モバイルサービスポイントによる還元のうち、1つまたは複数の方法による支払いを選択可能である。
【0058】
S407では、据付重量計102により車外測定重量Waxを測定した時刻(車外測定時刻)Tax1から、容器101に収められている糞尿を回収車両Vの荷台へ積み替えた後、所定時間PRD3が経過する時刻(=Tb+PRD3)までの間に、車上重量計103により測定した回収重量Wbi(i=1,2,…)を示すものとして受信した複数の重量データを抽出する。所定時間PRD3は、一回収当たりの回収作業または1つの畜舎における糞尿の回収に通常要する時間として、先に述べた所定時間PRD1よりも短い時間に設定される。所定時間PRD3は、例えば、数分から一時間程度の長さをもって設定可能であり、本実施形態では、第1の所定時間δTth1と等しい長さに設定される。S407の処理は、据付重量計102による車外測定重量Waxの測定後、同一の畜舎における全ての回収作業が終了すると想定される時刻までに車上重量計103により取得された回収重量Wbiを抽出する処理として換言可能である。回収車両Vの荷台への糞尿の積み込みは、容器101により複数回に分けて行われるのが通常であるため、S407の処理により抽出される回収重量Wbiは通常、複数存在する。
【0059】
S408では、S407の処理により抽出した複数の回収重量Wbiと据付重量計102により測定した車外測定重量Waxとの差分重量(以下「対比差分重量」という)δW2iを算出し、対比差分重量δW2iが第2の所定重量δWth2以下であるか否かを判定する。第2の所定重量δWth2は、第1の所定重量δWth1よりも大きな重量に設定される(δWth1<δWth2)。対比差分重量δW2iが第2の所定重量δWth2以下である場合、つまり、抽出された複数の回収重量Wbiに基づく対比差分重量δW2iに、第2の所定重量δWth2以下のものが存在する場合は、S409へ進み、第2の所定重量δWth2以下のものが存在しない場合、つまり、抽出された複数の回収重量Wbiについて算出される対比差分重量δW2iのいずれもが第2の所定重量δWth2を超える場合は、
図5のフローチャートに示すS305へ進み、畜舎の作業者に対し、糞尿の未回収を通知する。この場合は、回収重量Wbiに車外測定重量Waxに対して許容外の大きな変化が認められるため、一回の回収として計上することを留保する。対比差分重量δWiは、本実施形態に係る「第2差分重量」に相当する。
【0060】
S409では、抽出された複数の回収重量Wbiのうち、車外測定重量Waxに最も近い重量を選択する。
【0061】
S407の処理により、本実施形態に係る「第2重量データ抽出手段」が実現され、S408およびS409の処理により、本実施形態に係る「第2重量データ選択手段」が実現される。
【0062】
S410では、選択された回収重量Wbiを、畜舎において回収した糞尿の重量Wbxに設定し(Wbi=Wbx)、畜舎の作業者に通知する。前述同様に、回収の回数が複数に及ぶ場合は、各回の回収重量Wbiの合計を、畜舎における回収重量Wbxに設定する。
【0063】
S411では、畜舎の作業者に対し、回収した糞尿に対する対価の支払いに関する通知(以下「標準支払い通知」という)Nx2を送信する(時刻t10)。標準支払い通知Nx2は、優良支払い通知Nx1と対比すると、対価の支払いに関して提示された複数の方法から、1つまたは限定された数の方法のみの選択を許容する。例えば、標準支払い通知Nx2を受けた作業者は、現金による支給、口座への振込、電子通貨または電子決済ポイントでの精算、モバイルサービスポイントによる還元のうち、1つの方法による支払いのみを選択可能である。
【0064】
S406、S411およびS305の処理により、本実施形態に係る「支払い通知手段」が実現される。
【0065】
S412では、畜舎の作業者から、支払い方法の選択に関する通知を受領する(時刻t12)。
【0066】
図7は、対価支払いシステムSにおいて、作業者が保持する携帯端末105が行う動作を示すフローチャートである。
【0067】
S501では、サーバ104から対価支払い通知Nx(Nx1、Nx2)を受信する(時刻t11)。
【0068】
S502では、対価支払い通知Nxに内包されている回収重量Wbを表示する。
【0069】
S503では、対価の支払いに関する条件(支払いの方法およびその選択要求に関する画像を含む)を、携帯端末105のディスプレイに表示する。
【0070】
S504では、支払いの方法に関する作業者の選択を受け付け、選択された支払い方法をサーバ104に返送する(時刻t12)。
【0071】
本実施形態に係る対価支払いシステムSは、以上の構成を有する。以下に、本実施形態により得られる効果について説明する。
【0072】
第1に、畜舎において糞尿の重量を据付重量計102により測定した際の時刻Tax1および重量Waxに関するデータ(第1時刻データ、第1重量データ)、糞尿を据付重量計102から降ろした際の時刻Tax2に関するデータ(第2時刻データ)を取得するとともに、畜舎において糞尿を据付重量計102から降ろした後、糞尿の重量を回収用の車両Vに備わる車上重量計103により車両上で測定した際の時刻Tbおよび重量Wbに関するデータ(第3時刻データ、第2重量データ)を取得し、これらの時刻データおよび重量データをもとに、畜舎の作業者に対する対価の支払いに関する通知を行う。
【0073】
これにより、畜舎における回収作業の終了後、適時かつ迅速に、つまり、他の畜舎における回収作業の終了および回収車両VのバイオガスプラントPへの到着を待たずに、当該畜舎の作業者に対して対価の支払いに関する通知を行うことが可能となる。
【0074】
よって、糞尿の回収に対する作業者のモチベーションの増進を促すとともに、回収作業の効率化を通じて、糞尿の回収量の確保および増大、さらに、回収時間の短縮を図ることが可能となる。
【0075】
そして、作業が適切ではなかったり、作業自体が行われていなかったりした場合は、作業者に対して作業の適切な遂行を促すことが可能となる。
【0076】
さらに、時間および重量夫々のデータの照合を通じて、据付重量計102による重量の測定から糞尿を回収車両Vへ積み替えるまでの間に糞尿のかさ増し等の不正があった場合に、これを把握することが可能となる。これにより、回収作業を畜舎ごとに公平に評価することが可能となり、作業者におけるモチベーションの更なる増進を促すことが可能となる。
【0077】
第2に、対価の支払いに関する通知を、作業者が保持する通信端末機器、例えば、携帯端末105を介して行うことで、作業者における利便性の向上を図り、モチベーションの更なる増進を促すことが可能となる。
【0078】
第3に、作業者が保持する携帯端末105とサーバ104とを通信可能に接続するとともに、畜舎において取得する各種データ(時刻データ、重量データ)を畜舎外のサーバ104に送信し、対価の支払いに関する通知をサーバ104から携帯端末105に送信することで、作業者における利便性の向上を図るとともに、複数の畜舎を巡回して糞尿を回収する場合に、それぞれの畜舎における回収作業を効率的に評価可能とし、回収作業の終了後、対象とする畜舎の作業者に対して適時かつ迅速に対価の支払いに関する通知を行うことが可能となる。
【0079】
第4に、畜舎からバイオガスプラントP(サーバ104)へのデータパッケージDaの送信に対し、畜舎においてデータパッケージDbの送信に関するサーバからの指示を受信し、車両上の糞尿の重量、つまり、回収重量Wbに増加があった場合に、畜舎からサーバ104に対してデータパッケージDbを送信することで、サーバ104からの指示後、車両上の糞尿の重量に増加がないまま長い時間が経過した場合(例えば、重量が一定であったり、減っていたりした場合)に、データパッケージDbの送信を留保する。これにより、サーバ104において、回収作業が適切に行われていないことをデータパッケージDbの未受信をもって容易に判定可能とし、作業者に対して作業の適切な遂行を促すことが可能となる。
【0080】
第5に、糞尿の重量を据付重量計102により測定した際の時刻Tax1から、糞尿の重量を車上重量計103により測定した際の時刻Tbまでの時間に関する判定条件(第1判定条件)と、糞尿を据付重量計102から降ろした際の時刻Tax2から、糞尿の重量を車上重量計により測定した際の時刻Tbまでの時間に関する判定条件(第2判定条件)との2つの判定条件をもとに、回収作業が適切に行われたか否かを判定する。そして、これら2つの判定条件がともに満たされた場合は、回収作業が適切に行われたと判定して、対価の支払いに関する通知を行う。他方で、いずれか一方の判定条件が満たされていない場合は、回収作業が行われはしたが、適切ではなかったか、作業自体が行われていないと判定して、対価の支払いに関して相応の内容の通知を行う。このように、回収作業が適切に行われたか否かを判定し、作業者に対して判定の結果に応じた内容の通知を行うことで、作業者におけるモチベーションの増進を図り、作業の適切な遂行を促すことが可能となる。
【0081】
第6に、据付重量計102により測定した糞尿の重量Waxと、車上重量計103により測定した糞尿の重量Wbと、の差分である差分重量(正規差分重量δW1)を算出し、正規差分重量δW1が第1の所定重量δWth1以下である場合とそれ以外の場合とで、対価の支払いに関する通知の内容を異ならせることで、両者の重量が一致する場合に限らず、容器101から回収車両Vの荷台への積み替えに際して糞尿を漏らしたり、こぼしたりした程度の多少の違いがある場合においても回収作業が適切に行われたと判定し、対価の支払いに関する通知を円滑に行うことが可能となる。
【0082】
第7に、正規差分重量δW1が第1の所定重量δWth1よりも大きい場合に、据付重量計102により重量を測定した際の時刻Tax1から、車上重量計103により重量を測定した際の時刻Tb後、所定時間PRD3が経過するまでの間に、車上重量計103により測定した重量Wbiに関する1または複数の重量データを抽出し、これらの重量データが示す重量Wbiのうち、据付重量計102により測定した重量(車外測定重量)Waxに最も近い重量Wbiを選択する。そして、選択した重量Wbiが車外測定重量Waxに対してなす差分重量(対比差分重量δW2i)が第2の所定重量δWth2以下である場合に、回収作業が行われたと判定し、対価の支払いに関する通知を行う。これにより、糞尿を据付重量計102から降ろした後、車上重量計103に載せるまでの間に糞尿の重量に生じた変動が許容可能な範囲である場合は、対価の支払いに関する通知を行うことにより、回収作業の進捗を図り、作業効率が不要に悪化する事態を回避することが可能となる。
【0083】
第8に、畜舎において取得するデータ(時刻データ、重量データ)に応じて、作業者に対する対価の支払い方法の選択肢を異ならせることで、作業者に対し、より利便性の高い支払い方法が選択可能となることをインセンティブとして付与し、回収作業のより効率的な遂行を促すことが可能となる。
【符号の説明】
【0084】
S…対価支払いシステム、P…バイオガスプラント、V…回収車両、101…容器、102…据置重量計、121…送信器、122…計時部、103…車上重量計、131…送信器、132…計時部、104…サーバ、105…携帯端末。