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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101583
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】通信制御装置および通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/0453 20230101AFI20250630BHJP
   H04W 72/54 20230101ALI20250630BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20250630BHJP
【FI】
H04W72/0453
H04W72/54
H04W64/00 171
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218534
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 惇太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 誠滋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】石 智樹
(72)【発明者】
【氏名】赤池 和佳
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴治
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067CC02
5K067EE32
5K067EE37
5K067HH22
5K067JJ52
5K067JJ56
(57)【要約】
【課題】最適な通信帯域幅を特定して通信を行うこと。
【解決手段】通信制御装置は、自装置と他装置との間で通信を行う通信部と、自装置の現在の位置情報を取得する位置情報取得部と、他装置の位置情報と、送信出力情報とを取得する他装置情報取得部と、自装置と他装置との間の距離を算出する距離算出部と、算出した距離と、キャリア周波数と、所定の伝搬モデルの計算式とに基づいて、伝搬損失量を算出する伝搬損失算出部と、算出した伝搬損失量と、取得した送信出力情報とに基づいて、受信レベルを算出する受信レベル算出部と、受信レベルと通信帯域幅とがあらかじめ対応付けられており、算出した受信レベルから対応付けられている第1通信帯域幅を特定する通信帯域幅特定部と、他装置に対して第1通信帯域幅を送信するように通信部を制御し、かつ自装置の通信帯域幅を第1通信帯域幅に切り替える通信制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置と他装置との間で通信を行う通信部と、
自装置の現在の位置情報を取得する位置情報取得部と、
ユーザにより選択されたキャリア周波数および所定の帯域幅で、他装置の位置情報と送信出力情報とを取得する他装置情報取得部と、
前記自装置の位置情報と前記他装置の位置情報とに基づいて、前記自装置と前記他装置との間の距離を算出する距離算出部と、
前記距離算出部が算出した距離と、前記キャリア周波数と、所定の伝搬モデルの計算式とに基づいて、伝搬損失量を算出する伝搬損失算出部と、
前記伝搬損失算出部が算出した伝搬損失量と、前記他装置情報取得部が取得した前記送信出力情報とに基づいて、受信レベルを算出する受信レベル算出部と、
通信帯域幅と受信レベルとが対応付けられた通信帯域幅情報テーブルを参照して、前記受信レベル算出部が算出した受信レベルから第1通信帯域幅を特定する通信帯域幅特定部と、
前記通信部を制御して、前記他装置に対して前記第1通信帯域幅を送信するよう制御し、かつ前記自装置の通信帯域幅を前記第1通信帯域幅に切り替えるよう制御する通信制御部と、
を備える、通信制御装置。
【請求項2】
更に、キャリア周波数と通信帯域幅と最低限受信可能とされる受信レベルとが対応付けられた通信帯域幅情報テーブルを記憶する記憶部を備え、
前記通信帯域幅特定部は、前記記憶部に記憶された前記通信帯域幅情報テーブルを参照して、ユーザにより選択されたキャリア周波数と前記受信レベル算出部が算出した受信レベルとから、前記第1通信帯域幅を特定する、
請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記通信帯域幅特定部は、更に、前記第1通信帯域幅の次に広い通信帯域幅を第2通信帯域幅として特定し、
前記通信制御部は、前記通信部を制御して、前記第1通信帯域幅と前記第2通信帯域幅とを前記他装置に送信するよう制御し、かつ前記自装置の通信帯域幅を特定した前記第2通信帯域幅に切り替えるよう制御し、前記他装置との間で通信可能である旨を示す確認情報を受信した場合、第2通信帯域幅での通信を継続し、確認情報を所定時間受信しなかった場合は第1通信帯域幅に切り替えるよう制御する、
請求項1または2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記通信制御部が前記通信部を制御して前記自装置の通信帯域幅を第1通信帯域幅に切り替えた後、前記自装置の受信レベルに基づいて、前記第1通信帯域幅よりも広い通信帯域幅で通信できる可能性が高いと判定した場合、
前記通信帯域幅特定部は、前記第1通信帯域幅の次に広い通信帯域幅を第2通信帯域幅として特定し、
前記通信制御部は、前記第2通信帯域幅を前記他装置に送信し、かつ前記自装置の通信帯域幅を特定した前記第2通信帯域幅に切り替え、前記他装置との間で送受信する確認情報に基づいて、前記第2通信帯域幅での通信が可能か否かを判定し、
前記通信帯域幅特定部は、前記第2通信帯域幅での通信が可能と判定された場合は、前記第2通信帯域幅での通信を継続するよう制御し、
前記第2通信帯域幅での通信が可能でないと判定した場合は、前記自装置の通信帯域幅を前記第1通信帯域幅に切り替えて通信を行う、
請求項1または2に記載の通信制御装置。
【請求項5】
自装置と他装置との間で通信を行うステップと、
自装置の現在の位置情報を取得するステップと、
所定のキャリア周波数および所定の帯域幅で他装置の位置情報と、送信出力情報とを取得するステップと、
前記自装置の位置情報と、前記他装置の位置情報とに基づいて、前記自装置と前記他装置との間の距離を算出するステップと、
算出した距離と、前記キャリア周波数と、所定の伝搬モデルの計算式とに基づいて、伝搬損失量を算出するステップと、
算出した伝搬損失量と、取得した前記送信出力情報とに基づいて、受信レベルを算出するステップと、
通信帯域幅と受信レベルとが対応付けられた通信帯域幅情報テーブルを参照して、算出した受信レベルから第1通信帯域幅を特定するステップと、
通信部を制御して、前記他装置に対して前記第1通信帯域幅を送信するよう制御し、かつ前記自装置の通信帯域幅を前記第1通信帯域幅に切り替えるよう制御するステップと、
を含む、通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信制御装置および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置において、通信に使用する電波または光の通信帯域幅を変更する技術が知られている。例えば、特許文献1には、複数の通信規格に対応するために搬送波周波数および通信帯域幅を切り替え可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-130052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
端末装置間の通信においては、通信相手と通信する際に、通信相手との距離や接続状況が事前に分からないため、送信出力や通信帯域幅の設定次第では、通信相手と最適な通信を確立することができないことがある。例えば、通信相手までの距離が遠い場合に、送信側では事前に通信相手までの距離が分からないため、送信出力や通信帯域幅の設定によっては、通信相手との間で通信を確立することができないことがある。
【0005】
本開示は、最適な通信帯域幅を特定して通信を行うことのできる通信制御装置および通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の通信制御装置は、自装置と他装置との間で通信を行う通信部と、自装置の現在の位置情報を取得する位置情報取得部と、ユーザにより選択されたキャリア周波数および所定の帯域幅で、他装置の位置情報と送信出力情報とを取得する他装置情報取得部と、前記自装置の位置情報と前記他装置の位置情報とに基づいて、前記自装置と前記他装置との間の距離を算出する距離算出部と、前記距離算出部が算出した距離と、前記キャリア周波数と、所定の伝搬モデルの計算式とに基づいて、伝搬損失量を算出する伝搬損失算出部と、前記伝搬損失算出部が算出した伝搬損失量と、前記他装置情報取得部が取得した前記送信出力情報とに基づいて、受信レベルを算出する受信レベル算出部と、通信帯域幅と受信レベルとが対応付けられた通信帯域幅情報テーブルを参照して、前記受信レベル算出部が算出した受信レベルから第1通信帯域幅を特定する通信帯域幅特定部と、前記通信部を制御して、前記他装置に対して前記第1通信帯域幅を送信するよう制御し、かつ前記自装置の通信帯域幅を前記第1通信帯域幅に切り替えるよう制御する通信制御部と、を備える。
【0007】
本開示の通信制御方法は、自装置と他装置との間で通信を行うステップと、自装置の現在の位置情報を取得するステップと、所定のキャリア周波数および所定の帯域幅で他装置の位置情報と、送信出力情報とを取得するステップと、前記自装置の位置情報と、前記他装置の位置情報とに基づいて、前記自装置と前記他装置との間の距離を算出するステップと、算出した距離と、前記キャリア周波数と、所定の伝搬モデルの計算式とに基づいて、伝搬損失量を算出するステップと、算出した伝搬損失量と、取得した前記送信出力情報とに基づいて、受信レベルを算出するステップと、通信帯域幅と受信レベルとが対応付けられた通信帯域幅情報テーブルを参照して、算出した受信レベルから第1通信帯域幅を特定するステップと、通信部を制御して、前記他装置に対して前記第1通信帯域幅を送信するよう制御し、かつ前記自装置の通信帯域幅を前記第1通信帯域幅に切り替えるよう制御するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、最適な通信帯域幅を特定して通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る通信装置の構成例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る通信帯域幅情報テーブルの一例を示す図である。
図4図4は、第1実施形態に係る通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態に係る通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、第1実施形態に係る通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、第1実施形態に係る通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0011】
[第1実施形態]
(通信システム)
図1を用いて、第1実施形態に係る通信システムの構成例について説明する。図1は、第1実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、通信システム1は、通信装置10-1と、通信装置10-2と、を含む。通信装置10-1と、通信装置10-2とは、ネットワークNを介して、無線通信可能に接続されている。図1に示す例では、通信システム1に2台の通信装置10が含まれているが、通信システム1に含まれる通信装置10の数に制限はない。
【0013】
通信装置10-1は、送信側の通信装置であるものとする。通信装置10-2は、受信側の通信装置であるものとする。通信装置10-1と、通信装置10-2とは、送信出力レベルや送信出力や通信帯域幅の設定次第では、最適な通信を確立することができないことがある。
【0014】
一般的に、無線機による音声通話においては、通信で使用する電波の通信帯域幅を狭くすると、音声の品質が低下する代わりに通信感度を高めることができる。例えば、通信帯域幅が半分になると、通信感度はおよそ3[dB]ほど上昇する。通信感度が3[dB]向上すると、通信可能距離は、およそ√2倍になる。すなわち、通信帯域幅を狭めることで、より遠くの無線機と無線通信が可能になる。しかしながら、通信相手までの距離が分からないと、通信帯域幅をどの程度まで拡大させて通信が可能になるかわからずに、通信距離が最も長くなるように設定された、最も狭い通信帯域幅から変更することが困難になることがある。
【0015】
そこで、本開示では、通信装置10-1と、通信装置10-2とは、あらかじめ決められた所定の通信待機幅で、位置情報を交換する。受信側の通信装置10-2は、通信装置10-1と、通信装置10-2との位置情報に基づいて、最適な通信待機幅を特定する。これにより、本開示は、通信装置10-1と、通信装置10-2とは、最適な通信帯域幅に設定することで、適切に通信することができる。
【0016】
(通信装置)
図2を用いて、第1実施形態に係る通信装置の構成例について説明する。図2は、第1実施形態に係る通信装置の構成例を示す図である。
【0017】
図3に示すように、通信装置10は、入力部20と、表示部22と、マイク24と、スピーカ26と、通信部28と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信部30と、記憶部32と、制御部34と、を備える。通信装置10は、無線通信装置、スマートフォン、携帯電話機などの各種の通信装置で実現され得る。
【0018】
入力部20は、通信装置10に対する各種の入力操作を受け付ける。入力部20は、受け付けた入力操作に応じた操作信号を制御部34に出力する。入力部20は、例えば、タッチパネル、ボタン、スイッチ、PTT(Push-to-Talk)ボタンなどを含む。入力部20としてタッチパネルが用いられる場合には、入力部20は、表示部22上に配置される。
【0019】
表示部22は、各種の映像を表示する。表示部22は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)などを含むディスプレイである。
【0020】
マイク24は、通信装置10の周辺の音声を検出するマイクである。マイク24は、通信装置10を使用するユーザの音声を検出する。マイク24は、検出した音声を音声信号に変換する。
【0021】
スピーカ26は、各種の音声を出力するスピーカである。スピーカ26は、例えば、信先の通信装置10のユーザの音声を出力する。
【0022】
通信部28は、通信装置10と、外部装置との間の通信を実行する通信インタフェースである。通信部28は、通信装置10と、他の通信装置10との間の通信を実行する。
【0023】
GNSS受信部30は、GNSS衛星からのGNSS信号を受信するGNSS受信機などで構成される。GNSS受信部30は、受信したGNSS信号を位置情報取得部40へ出力する。
【0024】
記憶部32は、各種の情報を記憶している。記憶部32は、キャリア周波数において受信する際の通信帯域幅と、通信帯域幅で最低限必要となる最低限受信可能とされる受信レベルとが対応付けられた通信帯域幅情報テーブルを記憶している。通信帯域幅情報テーブルについては、後述する。記憶部32は、制御部34の演算内容、およびプログラム等の情報を記憶する。記憶部32は、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。
【0025】
制御部34は、通信装置10の各部を制御する。制御部34は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの情報処理装置と、RAM又はROMなどの記憶装置とを有する。制御部34は、本発明に係る通信装置10の動作を制御するプログラムを実行する。制御部34は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御部34は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0026】
制御部34は、位置情報取得部40と、他装置情報取得部42と、距離算出部44と、伝搬損失算出部46と、受信レベル算出部48と、通信帯域幅特定部50と、通信制御部52と、を備える。
【0027】
位置情報取得部40は、通信装置10の現在位置を示す位置情報を取得する。位置情報取得部40は、GNSS受信部30が受信した電波に基づいて、通信装置10の現在位置の位置情報を公知の方法によって算出する。位置情報取得部40は、通信部28を介して、取得した位置情報を他の通信装置10に送信する。
【0028】
他装置情報取得部42は、通信部28を介して、他の通信装置10に関する情報を取得する。他装置情報取得部42は、ユーザにより選択されたキャリア周波数および所定の帯域幅で、他の通信装置10の位置情報と、送信出力情報とを取得するここでは、キャリア周波数はユーザにより設定されるように構成しているが、所定のキャリア周波数があらかじめ設定されているように構成されていてもよい。送信出力情報には、他の通信装置10が情報を送信するために設定されている、送信出力の大きさを示す情報が含まれる。また、他装置情報取得部42は、他の通信装置10が特定した通信帯域幅を通信部28を介して受信する。
【0029】
距離算出部44は、自装置と他の通信装置10との間の距離を算出する。距離算出部44は、位置情報取得部40が取得した自装置の位置情報と、他装置情報取得部42が取得した他の通信装置10の位置情報とに基づいて、自装置と他の通信装置10との間の距離を算出する。
【0030】
伝搬損失算出部46は、距離算出部44が算出した距離と、キャリア周波数と、所定の伝搬モデルの計算式とに基づいて、自装置と他の通信装置10との間で送受する電波の伝搬損失量を算出する。所定の伝搬モデルは、例えば、以下の式(1)で表される、自由空間における電波の減衰量を表すモデルである。
【0031】
【数1】
【0032】
式(1)において、Lは自由空間における電波の減衰量[dB]、dは通信装置10と他の通信装置10との間の距離、λは電波の波長[m]である。例えば、d=20[km]、キャリア周波数f=450[MHz]とすると、減衰量Lは、約111.53[dB]と算出される。他の通信装置10までの距離と、キャリア周波数との情報は、あらかじめ記憶部32に記憶されているとよい。
【0033】
なお、本開示において、伝搬モデルは、式(1)に限定されない。所定の伝搬モデルは、奥村-秦式モデル、COST 231 Extended Hata Model、拡張坂上式モデル、Walfisch-池上モデルなどであってもよい。
【0034】
受信レベル算出部48は、伝搬損失算出部46が算出した伝搬損失量と、他装置情報取得部42が取得した送信出力情報とに基づいて、理論上の受信レベルを算出する。例えば、送信出力情報が示す他の通信装置10の送信出力が5[W]とすると、単位を[W]から[dBm]に変換すると、5[W]=+37[dBm]となる。単位を[W]から[dBm]に変換する計算式は、[W]を[mW]とし、[dBm]=10log10[mW]となる。この場合、受信レベル算出部48は、必要な受信レベルを、37-111.53=-74.53[dBm]と算出する。
【0035】
通信帯域幅特定部50は、受信レベル算出部48が算出した受信レベルに基づいて、受信レベル以下のうち、最も高い受信レベルが対応付けられた通信帯域幅を第1通信帯域幅として特定する。通信帯域幅特定部50と、通信帯域幅で最低限必要となる最低限受信可能とされる受信レベルと、キャリア周波数において受信する際の通信帯域幅と通信帯域幅で最低限必要となる最低限受信可能とされる受信レベルとが対応付けられた通信帯域幅情報テーブルに基づいて、第1通信帯域幅を特定する。図3は、第1実施形態に係る通信帯域幅情報テーブルの一例を示す図である。図3に示す、通信帯域幅情報テーブルTB1は、例えば、記憶部32に記憶されている。通信帯域幅情報テーブルTB1は、「受信レベル」および「通信帯域幅」といった項目を含む。通信帯域幅情報テーブルTB1は、「受信レベル」と「通信帯域幅」とが対応付けられている。「受信レベル」は、「A01」などのように概念的に示しているが、実際には、具体的な数値が示される。「通信帯域幅」は、「B01」などのように概念的に示しているが、実際には、具体的な数値が示される。
【0036】
例えば、通信帯域幅情報テーブルTB1は、受信レベルが「A01」である場合に必要な通信待機幅が「B01」であることを表す。図3に示す例において、受信レベルが「A01」が最も高く、「A02」、「A03」、「A04」、および「A05」の順にレベルが低くなるものとする。通信帯域幅特定部50は、例えば、受信レベルが「A02」と「A03」との間である場合、「A02」と「A03」との間の受信レベル以下のうち、最も高い受信レベルである「A03」に対応付けられた「B03」を第1通信帯域幅として特定する。
【0037】
通信制御部52は、通信部28を介して、他の通信装置10に対して通信帯域幅特定部50が特定した第1通信帯域幅を示す情報を送信する。通信制御部52は、自装置に設定されている通信帯域幅を第1通信帯域幅に切り替える。
【0038】
[通信装置の処理]
図4を用いて、第1実施形態に係る通信装置の処理内容について説明する。図4は、第1実施形態に係る通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【0039】
図4は、受信側の通信装置が、自装置の通信帯域幅を切り替える処理を示している。
【0040】
位置情報取得部40は、自装置の位置情報を取得する(ステップS10)。そして、ステップS12に進む。
【0041】
他装置情報取得部42は、通信部28を介して、他の通信装置10から位置情報と送信出力情報とを取得する(ステップS12)。そして、ステップS14に進む。
【0042】
距離算出部44は、位置情報取得部40が取得した自装置の位置情報と、他装置情報取得部42が取得した他の通信装置10の位置情報とに基づいて、自装置と他の通信装置10との間の距離を算出する(ステップS14)。そして、ステップS16に進む。
【0043】
伝搬損失算出部46は、自装置と他の通信装置10との間で送受する電波の伝搬損失量を算出する(ステップS16)。そして、ステップS18に進む。
【0044】
受信レベル算出部48は、伝搬損失算出部46が算出した伝搬損失量と、他装置情報取得部42が取得した送信出力情報とに基づいて、受信レベルを算出する(ステップS18)。そして、ステップS20に進む。
【0045】
通信帯域幅特定部50は、受信レベル算出部48が算出した受信レベルに基づいて、受信レベル以下のうち、最も高い受信レベルが対応付けられた通信帯域幅を第1通信帯域幅として特定する(ステップS20)。そして、ステップS22に進む。
【0046】
通信制御部52は、通信部28を介して、第1通信帯域幅の情報を他の通信装置10に送信する(ステップS22)。そして、ステップS24に進む。
【0047】
通信制御部52は、自装置の通信帯域幅を第1通信帯域幅に切り替える(ステップS24)。そして、ステップS26に進む。
【0048】
制御部34は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS26)。具体的には、制御部34は、他の通信装置10との間で通信が終了した場合や、自装置の電源がオフされた場合に処理を終了すると判定する。処理を終了すると判定された場合(ステップS26;Yes)、図4の処理を終了する。処理を終了すると判定されない場合(ステップS26;No)、ステップS10に進む。
【0049】
図5を用いて、第1実施形態に係る通信装置の処理内容について説明する。図5は、第1実施形態に係る通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【0050】
図5は、送信側の通信装置が、自装置の通信帯域幅を切り替える処理を示している。
【0051】
ステップS30の処理は、図4に示すステップS10の処理と同じなので、説明を省略する。
【0052】
通信制御部62は、通信部28を介して、自装置の位置情報と送信出力情報とを他の通信装置10に送信する(ステップS32)。そして、ステップS34に進む。
【0053】
通信制御部62は、他の通信装置10から通信帯域幅の情報を受信したか否かを判定する(ステップS34)。他の通信装置10から通信帯域幅の情報を受信したと判定された場合(ステップS34;Yes)、ステップS36に進む。他の通信装置10から通信待機の情報を受信したと判定されない場合(ステップS34;No)、ステップS38に進む。
【0054】
ステップS34でYesと判定された場合、通信制御部62は、他の通信装置10から受信した通信帯域幅の情報に基づいて、自装置の通信帯域幅を、通信帯域幅の情報が示す通信帯域幅に切り替える(ステップS36)。そして、ステップS38に進む。
【0055】
制御部34は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS38)。具体的な処理は図4に示すステップS26と同じなので、説明を省略する。処理を終了すると判定された場合(ステップS38;Yes)、図5の処理を終了する。処理を終了すると判定されない場合(ステップS38;No)、ステップS30に進む。
【0056】
図6を用いて、第1実施形態に係る通信装置の処理内容について説明する。図6は、第1実施形態に係る通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
図6は、受信側の通信装置が、より広い通信帯域幅に切り替える処理を示している。図6は、図4に示す処理において、第1通信帯域幅に切り替えた後に実行される処理である。
【0058】
通信帯域幅特定部50は、自装置に現在設定されている通信帯域幅よりも1段階広い通信帯域幅を特定する(ステップS40)。例えば、第1通信帯域幅よりも1段階広い通信帯域幅を第2通信帯域幅と呼ぶこともある。具体的には、通信帯域幅特定部50は、例えば、記憶部32に記憶された通信帯域幅情報テーブルTB1に基づいて、自装置に現在設定されている通信帯域幅の次に広い通信帯域幅を特定する。そして、ステップS42に進む。
【0059】
通信制御部52は、通信部28を介して、ステップS40で特定した1通信帯域幅よりも1段階次に広い通信帯域幅の情報を他の通信装置10に送信する(ステップS42)。そして、ステップS44に進む。
【0060】
通信制御部52は、自装置に設定されている通信帯域幅を、ステップS40で特定した第1通信帯域幅よりも1段階広い通信帯域幅に切り替える(ステップS44)。そして、ステップS46に進む。
【0061】
通信制御部52は、ステップS44で切り替えた通信帯域幅で通信可能か否かを判定する(ステップS46)。具体的には、通信制御部52は、他の通信装置10からステップS42で送信した通信帯域幅の情報に対して、通信可能である旨を示す確認情報を受信した場合に、通信可能であると判定する。通信制御部52は、他の通信装置10からステップS42で送信した通信帯域幅の情報に対して、所定時間の間応答がない場合、または通信不可である旨を示す情報を受信した場合に、通信不可であると判定する。通信可能であると判定された場合(ステップS46;Yes)、ステップS40に進む。通信可能であると負荷であると場合(ステップS46;No)、ステップS48に進む。すなわち、通信帯域幅を切り替えても通信可能である場合には、さらに1段階広い通信帯域幅に切り替え可能であるか否かの処理が実行される。
【0062】
ステップS46でNoと判定された場合、通信制御部52は、自装置に設定されている通信帯域幅を、直前に通信可能と判定された通信帯域幅に切り替えて通信を行う(ステップS48)。そして、ステップS50に進む。
【0063】
制御部34は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS50)。具体的な処理は図4に示すステップS26と同じなので、説明を省略する。処理を終了すると判定された場合(ステップS50;Yes)、図6の処理を終了する。処理を終了すると判定されない場合(ステップS50;No)、ステップS46に進む。
【0064】
図7を用いて、第1実施形態に係る通信装置の処理内容について説明する。図7は、第1実施形態に係る通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【0065】
図7は、送信側の通信装置が、より広い通信帯域幅に切り替える処理を示している。図7は、図5に示す処理において、第1通信帯域幅に切り替えた後に実行される処理である。
【0066】
通信制御部52は、通信部28を介して、他の通信装置10から自装置に現在設定されている通信帯域幅よりも1段階広い通信帯域幅の情報を受信したか否かを判定する(ステップS60)。現在設定されている通信帯域幅よりも1段階広い通信帯域幅の情報を受信したと判定された場合(ステップS60;Yes)、ステップS62に進む。現在設定されている通信帯域幅よりも1段階広い通信帯域幅の情報を受信したと判定されない場合(ステップS60;No)、ステップS70に進む。
【0067】
ステップS60でYesと判定された場合、通信制御部52は、通信可能であるか否かを判定する(ステップS62)。具体的には、通信制御部52は、例えば、電波の強度が弱いなど、所望の通話ができない場合には、通信が不可であると判定する。通信が可能であると判定された場合(ステップS62;Yes)、ステップS66に進む。通信が不可であると判定された場合(ステップS62;No)、ステップS64に進む。
【0068】
ステップS62でNoと判定された場合、通信制御部52は、通信不可である旨を示す確認情報を他の通信装置10に送信する(ステップS64)。そして、ステップS70に進む。ステップS64では、例えば。通信制御部52は、電波強度が弱いなどの理由により、あらかじめ設定された所定の時間が経過しても、通信不可である旨を示す確認情報を他の装置に送信できない場合には、ステップS70の処理に進んでもよい。
【0069】
ステップS62でYesと判定された場合、通信制御部52は、通信可能である旨を示す確認情報を他の通信装置10に送信する(ステップS66)。そして、ステップS68に進む。
【0070】
通信制御部62は、ステップS60で他の通信装置10から受信した通信帯域幅の情報に基づいて、自装置の通信帯域幅を切り替える(ステップS68)。そして、ステップS70に進む。
【0071】
制御部34は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS70)。具体的な処理は図4に示すステップS26と同じなので、説明を省略する。処理を終了すると判定された場合(ステップS70;Yes)、図7の処理を終了する。処理を終了すると判定されない場合(ステップS70;No)、ステップS60に進む。
【0072】
上述のとおり、本実施形態では、所定の伝搬モデルに基づいて、伝搬損失量を算出し、算出した伝搬損失量に応じた適切に通信待機幅を特定して、通信装置に設定することができる。これにより、本実施形態は、端末装置間で適切に通信を行うことができる。
【0073】
本開示の実施形態の変形例として次のように構成することもできる。通信帯域幅特定部50は、第1通信帯域幅を特定するとともに、更に、第1通信帯域幅の次に広い通信帯域幅を第2通信帯域幅として特定する。通信制御部52は、通信部28を制御して、第1通信帯域幅と第2通信帯域幅とを他装置に送信するよう制御し、かつ自装置の通信帯域幅を特定した第2通信帯域幅に切り替えるよう制御する。その後、他装置との間で通信可能である旨を示す確認情報を送受信した結果に基づいて、第2通信帯域幅での通信が可能か否かを判定する。第2通信帯域幅での通信が可能と判定された場合は、第2通信帯域幅での通信を継続するよう制御する。第2通信帯域幅での通信が可能でないと判定した場合は、所定時間経過後に自装置の通信帯域幅を第1通信帯域幅に切り替えて通信を行うよう制御する。他装置も同様に、第2通信帯域幅での通信が可能でないと判定した場合は、所定時間経過後に他装置の通信帯域幅を第1通信帯域幅に切り替えて通信を行う。このようにすることで、第1通信帯域幅と第2通信帯域幅とを自装置と他装置との間で共有し、第2通信帯域幅により通信が確立できない場合には、第1通信帯域幅での通信に切り替えることで、端末装置間で適切に通信を行うことができる。
【0074】
本開示の実施形態の別の変形例として次のように構成することもできる。通信制御部52が通信部28を制御して自装置の通信帯域幅を第1通信帯域幅に切り替えた後、自装置の受信レベルに基づいて、第1通信帯域幅よりも広い通信帯域幅で通信できる可能性が高いか否かを判定する。ここでの判定では、第1通信帯域幅と対応付けられている最低限通信可能とされる受信レベルよりも、自装置の現在の受信レベルの方が高い受信レベルであり、第1通信帯域幅と対応付けられている最低限通信可能とされる受信レベルと自装置の現在の受信レベルとの差が所定値以上である場合に、第1通信帯域幅よりも広い通信帯域幅で通信できる可能性が高いと判定するとよい。通信制御部52が第1通信帯域幅よりも広い通信帯域幅で通信できる可能性が高いと判定した場合、通信帯域幅特定部50は、第1通信帯域幅の次に広い通信帯域幅を第2通信帯域幅として特定する。通信制御部52は、特定された第2通信帯域幅を、通信部28を制御して、他装置に送信するよう制御し、かつ自装置の通信帯域幅を特定した第2通信帯域幅に切り替えるよう制御する。その後、他装置との間で送受信する確認情報に基づいて、第2通信帯域幅での通信が可能か否かを判定する。第2通信帯域幅での通信が可能と判定された場合は、通信制御部52は、第2通信帯域幅での通信を継続するよう制御する。第2通信帯域幅での通信が可能でないと判定した場合は、通信制御部52は、自装置の通信帯域幅を第1通信帯域幅に切り替えて通信を行うよう制御する。このようにすることで、端末装置間で適切に通信を行うことができる。
【0075】
図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。なお、この分散・統合による構成は動的に行われてもよい。
【0076】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 通信システム
10 通信装置
20 入力部
22 表示部
24 マイク
26 スピーカ
28 通信部
30 GNSS受信部
32 記憶部
34 制御部
40 位置情報取得部
42 他装置情報取得部
44 距離算出部
46 伝搬損失算出部
48 受信レベル算出部
50 通信帯域幅特定部
52 通信制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7